垂直な開口部を持つ2つのサスペンションアームを備える自動車用後車軸
【課題】サスペンションアームにかかる応力を制限することができる簡便かつ経済的なショックアブソーバ取付部を備える後車軸を提供すること。
【解決手段】本発明は、前方に位置する軸の周りをほぼ垂直な平面内で揺動し、それぞれのアーム部の後方に後輪(34)を支えるハブブラケット(24)を持つ2つのサスペンションアーム(22)を備える自動車用後車軸(31)であって、2つのサスペンションアーム(22)を連結するトーションビーム(8)をさらに備える後車軸(31)において、それぞれのサスペンションアームが、ビームとハブブラケットの間のハブブラケット中心軸よりも前方のアーム部の幅の中に配置された閉輪郭のほぼ垂直な開口部であって、サスペンションアーム(22)に連結される下部固定部を持つショックアブソーバ(10)を受ける開口部を備えることを特徴とする後車軸(31)を対象とする。
【解決手段】本発明は、前方に位置する軸の周りをほぼ垂直な平面内で揺動し、それぞれのアーム部の後方に後輪(34)を支えるハブブラケット(24)を持つ2つのサスペンションアーム(22)を備える自動車用後車軸(31)であって、2つのサスペンションアーム(22)を連結するトーションビーム(8)をさらに備える後車軸(31)において、それぞれのサスペンションアームが、ビームとハブブラケットの間のハブブラケット中心軸よりも前方のアーム部の幅の中に配置された閉輪郭のほぼ垂直な開口部であって、サスペンションアーム(22)に連結される下部固定部を持つショックアブソーバ(10)を受ける開口部を備えることを特徴とする後車軸(31)を対象とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用後車軸、およびその車軸が装備された自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は一般に車体に連結された後車軸を備えており、後車軸は、サスペンションがストロークできるように後車輪の案内を果たしながら、その車輪のハブを支える。
【0003】
既知の形式の後車軸で、トーションビーム式と呼ばれる後車軸は、車両の両側に配置された2つの長手方向のサスペンションアームを持ち、それぞれのアームの前部が、ほぼ横断方向の軸に従って回動できるように弾性連結により車体に連結されている。車輪のハブはそれぞれのアームの後部に固定されている。
【0004】
弾性連結は、走行時に車輪から来る振動を減衰することを可能にし、それによって振動が車体に伝わるのを防ぐとともに騒音を抑える。
【0005】
後車軸は「H」形の全体形状を持ち、横断方向に配設されたトーションビームがその両端でそれぞれのサスペンションアームの中央部分に固定される。このトーションビームは、サスペンションアームの幾何形状を保持するとともに、ねじり変形によってアンチロールバー機能を果たして車体のロール角を制限する。
【0006】
トーションビーム式後車軸は、一般に絞り加工部材および溶接部材の機械化溶接によって製作される。この種のトーションビーム式後車軸は、十分な後輪の案内とコスト抑制の間の折り合いに優れており、 広く普及している。
【0007】
車体は、それぞれがサスペンションアーム後部に支えを得る2つのサスペンションコイルスプリングによって支持される。それぞれのサスペンションアームに対してスプリングと平行に油圧式ショックアブソーバが配設され、それによって車体の振動を緩和し、快適性およびロードホールディングを確保する。サスペンションスプリングおよびショックアブソーバからサスペンションアームへは比較的大きな応力が伝えられるため、アームは変形が抑えられるように設計する必要がある。
【0008】
サスペンションアームで応力を分散させ、ねじり変形を防ぐためには、とりわけ仏国特許第2636571号などにより、サスペンションスプリングの支承をアームの中心線上に配置することが知られている。サスペンションアーム上部のサスペンションアーム中心線にほぼ沿った位置にそのアームの厚みのおよそ半分の窪みが設けられ、サスペンションスプリングの基部を受ける支承が形成される。
【0009】
しかし、ショックアブソーバの下部固定部を、そのショックアブソーバの反力によるアーム内の応力が同様に制限されるようにする目的で、同じくサスペンションアームの中心線上にほぼセンタリングされる形で用意することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第2636571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、とりわけ、先行技術におけるそうした不都合をなくし、サスペンションアームにかかる応力を制限することができる簡便かつ経済的なショックアブソーバ取付部を備える後車軸を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、前方に位置する軸の周りをほぼ垂直な平面内で揺動し、それぞれのアーム部の後方に後輪を支えるハブブラケットを持つ2つのサスペンションアームを備える自動車用後車軸であって、2つのサスペンションアームを連結するトーションビームをさらに備える後車軸において、それぞれのサスペンションアームが、ビームとハブブラケットの間のハブブラケット中心軸よりも前方のアーム部の幅の中に配置された閉輪郭のほぼ垂直な開口部であって、サスペンションアームに連結される下部固定部を持つショックアブソーバを受ける開口部を備えることを特徴とする後車軸を提案する。
【0013】
有利には、前記開口部をショックアブソーバが端から端まで貫く。実際、本発明による後車軸の利点は、ショックアブソーバがサスペンションアームをそのアーム部の幅の中で通り抜けるようにすることで、そのショックアブソーバの基部をサスペンションアームの下でセンタリングした形で固定することができ、それによって反力を均衡させることができるところにある。
【0014】
さらに、本発明による後車軸は、互いに組み合わせることもできる以下のいずれか1つまたは複数の特徴を備えることができる。
【0015】
有利には、サスペンションアームは、互いに心合わせされて開口部を形成する穴をそれぞれ持つ上板と下板とを備えており、その開口部を貫く補強管がその2つの板に固定される。
【0016】
補強管の基部は、固定軸を通すように横断方向に心合わせされた2つの穴を有する切断端を持つことができ、ショックアブソーバの下部固定部を囲い込んでサスペンションアームと連結するキャップをそれによって構成する。
【0017】
1つの実施形態では、それぞれのサスペンションアームは、「U」字形の全体形状を持つ断面に従って絞り加工された板材からなる長手方向本体を持ち、上板および下板にそれぞれ相当するほぼ水平な2つの翼を備える。
【0018】
補強管は、「U」字形断面の2つの翼の穴の縁に溶接することができる。
【0019】
補強管は、穴の中に入るように巻いた薄板からなることができる。
【0020】
サスペンションアームに設けられた開口部は長手方向に引き伸ばされた形状を持つことができ、ショックアブソーバの下部固定部はその開口部の長手に沿ってほぼセンタリングされる。
【0021】
トーションビームはその両端でサスペンションアームの中央部分に固定することができる。
【0022】
1つの変形によれば、それぞれのサスペンションアームはアーム前半部とアーム後半部とを備え、それぞれがトーションビームに直接固定される。
【0023】
もう1つの変形によれば、トーションビームは、一体型のサスペンションアーム後半部を形成する後方に曲がった両端を有しており、前方を向いた2つのサスペンションアーム前半部がそのビームに固定される。
【0024】
本発明は、上述したような後車軸を備える自動車もまたその対象とする。
【0025】
以下に添付の図面を参照しながら参考として与える説明を読めば、本発明についての理解が促され、その他の特徴や利点もまたより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】先行技術による後車軸半分の斜視図である。
【図2】本発明の第1の形態による後車軸半分の斜視図である。
【図3】その後車軸半分のサスペンションアームの詳細図である。
【図4】本発明の第2の形態による後車軸半分の斜視図である。
【図5】本発明の第3の形態による後車軸半分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1(従来技術)は、車両側方に長手方向に配置されたサスペンションアーム2を備える後車軸半分の右側方部を示す。このサスペンションアーム2の前部は、中心軸がほぼ横断方向に配置された輪4を備えており、この輪が車体に固定されたキャップに挿入される弾性ブロックを受け、それによって振動を減衰する弾性継手をなす。
【0028】
サスペンションアーム2の後部は、後輪を受ける横断方向の軸を軸受によって支承するハブブラケット6を備える。
【0029】
トーションビーム8は、その両端がサスペンションアーム2の中心点でサスペンションアームに固定される。このトーションビーム8はサスペンションアーム2の幾何形状を保ち、両アームのストロークの差を制限するねじりばねをなす。
【0030】
サスペンションアーム2は、絞り加工された板材によって形成されるほぼ水平な支持面12を後部に備えており、その支持面がサスペンションコイルスプリングの下端を受ける。
【0031】
上端が車体に固定された摺動シリンダを備える油圧ショックアブソーバ10は、ハブブラケット6の直近前方でサスペンションアーム2の外側面の横を通る。
【0032】
この油圧ショックアブソーバ10の下端は、ゴム製内環を持つ輪を備える。サスペンションアーム2にはこの環を通る横断方向軸が固定されており、それによって弾性連結が果たされる。この横断方向軸は、サスペンションアーム2の側面に溶接された円筒形部材の穴にねじ込まれる固定ねじを持つことができる。
【0033】
本体がある程度の直径を持つ油圧ショックアブソーバ10は、サスペンションのストローク時に接触することがないように、並行するサスペンションアーム2から十分に隔てられている。ショックアブソーバ10基部の固定用横断方向軸はキャップ内に取り付けることができるが、その場合には後車軸の製作は複雑になる。
【0034】
横断方向軸は片持ちで取り付けることもできる。その場合は、軸は曲げ応力を受けることになるため、軸は荷重を支えるために大きな直径を持たなければならない。
【0035】
変形として、ショックアブソーバ10をサスペンションアーム2内側のトーションビーム8の近くに配置することができる。その場合、ショックアブソーバ10の固定軸を受ける円筒形部材をサスペンションアーム2の内側に心合わせして溶接することは容易でない。
【0036】
これらの解決方法では、ショックアブソーバ10の下部固定部はサスペンションアーム2の中心線に対してオフセットしているため、そのアームのねじりは、ショックアブソーバ10をその固定部の心合わせがずれた状態で動作させることになる。このずれは、固定部のゴム環を疲労させ、ショックアブソーバ10の内部摩擦やさらに重度の摩耗を生じさせる。
【0037】
いずれの場合も、曲げ応力に耐えるためにサスペンションアーム2に必要となる厚手の板材または補強材は後車軸の重量の増大を招くことになる。
【0038】
図2および3は、本発明による後車軸31について、前方輪4とハブブラケット24とを連結する長手方向本体22であって、ビーム8が溶接された長手方向本体22を持つサスペンションアーム20を示す。
【0039】
長手方向本体22は、その本体に沿って延びるほぼ「U」字形の断面に従って絞り加工された板材を備える。この本体22の「U」字形断面は水平な2つの翼を持ち、その断面の開放側が車両の外側を向く。単一の板材からなるサスペンションアーム2の本体22は経済的である。
【0040】
トーションビーム8は断面の閉じた方の側面に内側から溶接される。車輪34を支えるハブブラケット24と、サスペンションコイルスプリングの基部を受ける支持面26は、それぞれ本体22に溶接された絞り加工板材からなる。
【0041】
本体22の「U」字形断面のそれぞれの翼は、トーションビーム8とハブブラケット24の中心軸の間のハブブラケット24の中心軸よりも前方に、互いに心合わせされた穴を持っており、それらがサスペンションアーム20を貫くほぼ垂直な開口部を形成する。
【0042】
この開口部は、サスペンションアーム20の本体22を端から端まで貫いて両側に突き抜ける補強管30を受けるもので、補強管30は本体22の両翼の2つの穴にぴったりと取り付ける。本体22の2つの翼の穴の縁で行う溶接により、両翼は補強管30と接合される。
【0043】
こうして、補強管30が本体22の2つの翼に溶接されて2つの翼が連結され、サスペンションアーム20に大きな補強が与えられることで、剛体のアセンブリが完成する。
【0044】
補強管30の基部は、車両の横断方向軸に心合わせされて補強管30を貫く固定ねじ32が通る穴をそれぞれ有する2つの下部突起を持つ切断端を備える。突起は、ショックアブソーバ10の基部をその内部に受けるキャップを形成し、固定ねじ32は、補強管30によって両側を支えられたショックアブソーバ10の下部輪を貫く。
【0045】
有利には、補強管30は薄板を巻いたものからなるが、これは経済的な方法である。
【0046】
こうして、応力を均衡させるキャップ形取付部が形成され、固定ねじ32は曲げ応力を受けることがない。固定ねじ32は、片持ちの取付部と比べてその直径および長さを小さくすることができる。
【0047】
さらに、サスペンションアーム20のほぼ中心線上を通るショックアブソーバ10によって伝えられる応力は、そのアームにほとんどねじり応力を与えない。本体22は薄めの絞り加工板材からより容易に製作することができ、製品はより軽量でより精度の高いものとすることができる。
【0048】
サスペンションアーム20の本体22の翼に設けた開口部は、長手方向に引き伸ばされた形状を持つ。固定ねじ32はその引き伸ばされた形状の中央にセンタリングして、サスペンションが休止状態にあるときにショックアブソーバ10の基部が長手方向にその開口部のほぼ中心に配置されるようにする。
【0049】
それにより、ショックアブソーバ10は、サスペンションがストロークしてサスペンションアーム20が動くときに、引き伸ばされた開口部の中でそのアームに対して前後に振れることができる。
【0050】
さらに、補強管30の長手方向の直径は、下方に狭まり、上方に広がるようにして、補強管30の断面をショックアブソーバ10の動きを確保するのに必要な最小限まで小さくすることができる。
【0051】
図4は、変形として、後ろ向きのサスペンションアーム後半部44と接続する前向きのサスペンションアーム前半部40を端部に溶接されて備えるトーションビーム42を具備する後車軸41を示す。互いに接合される2つの半アーム40、44は、前述のサスペンションアームと同じ機能を持つアーム一式を形成し、前方に弾性継手を、後方にハブブラケット24を備える。
【0052】
アーム後半部44の長手方向本体も、同様に、開放側が車両外側を向いたほぼ「U」字形の断面に従って絞り加工された板材によってなることができる。
【0053】
アーム後半部44の「U」字形断面の両翼は、サスペンションアーム20を貫く補強管30を受ける垂直な開口部を形成する穴をそれぞれ持つ。したがって、ショックアブソーバ10の取付けおよびサスペンションアーム後半部44の補強に関して前述と同様の利点を得る。
【0054】
図5は、第2の変形として、両端が後方に曲げられて、2つの一体型サスペンションアーム後半部を形成するトーションビーム52を備える後車軸51を示す。このトーションビーム52が湾曲する部位に前向きのサスペンションアーム前半部40が溶接される。
【0055】
そうすることで、後車軸51を構成する部品点数が減らされ、その生産管理が容易となる。
【0056】
アーム後半部を構成する端部を含むトーションビーム52は、開放側が車両前方を向いたほぼ「U」字形の断面に従って絞り加工された板材からなる。
【0057】
アーム後半部の「U」字形断面の両翼も同様に補強管30を受ける。
【符号の説明】
【0058】
2、20 サスペンションアーム
4 前方輪
6、24 ハブブラケット
8、42、52 トーションビーム
10 ショックアブソーバ
12 支持面
22 長手方向本体
26 支持面
30 補強管
31、41、51 後車軸
32 固定ねじ
34 車輪
40 サスペンションアーム前半部
44 サスペンションアーム後半部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用後車軸、およびその車軸が装備された自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は一般に車体に連結された後車軸を備えており、後車軸は、サスペンションがストロークできるように後車輪の案内を果たしながら、その車輪のハブを支える。
【0003】
既知の形式の後車軸で、トーションビーム式と呼ばれる後車軸は、車両の両側に配置された2つの長手方向のサスペンションアームを持ち、それぞれのアームの前部が、ほぼ横断方向の軸に従って回動できるように弾性連結により車体に連結されている。車輪のハブはそれぞれのアームの後部に固定されている。
【0004】
弾性連結は、走行時に車輪から来る振動を減衰することを可能にし、それによって振動が車体に伝わるのを防ぐとともに騒音を抑える。
【0005】
後車軸は「H」形の全体形状を持ち、横断方向に配設されたトーションビームがその両端でそれぞれのサスペンションアームの中央部分に固定される。このトーションビームは、サスペンションアームの幾何形状を保持するとともに、ねじり変形によってアンチロールバー機能を果たして車体のロール角を制限する。
【0006】
トーションビーム式後車軸は、一般に絞り加工部材および溶接部材の機械化溶接によって製作される。この種のトーションビーム式後車軸は、十分な後輪の案内とコスト抑制の間の折り合いに優れており、 広く普及している。
【0007】
車体は、それぞれがサスペンションアーム後部に支えを得る2つのサスペンションコイルスプリングによって支持される。それぞれのサスペンションアームに対してスプリングと平行に油圧式ショックアブソーバが配設され、それによって車体の振動を緩和し、快適性およびロードホールディングを確保する。サスペンションスプリングおよびショックアブソーバからサスペンションアームへは比較的大きな応力が伝えられるため、アームは変形が抑えられるように設計する必要がある。
【0008】
サスペンションアームで応力を分散させ、ねじり変形を防ぐためには、とりわけ仏国特許第2636571号などにより、サスペンションスプリングの支承をアームの中心線上に配置することが知られている。サスペンションアーム上部のサスペンションアーム中心線にほぼ沿った位置にそのアームの厚みのおよそ半分の窪みが設けられ、サスペンションスプリングの基部を受ける支承が形成される。
【0009】
しかし、ショックアブソーバの下部固定部を、そのショックアブソーバの反力によるアーム内の応力が同様に制限されるようにする目的で、同じくサスペンションアームの中心線上にほぼセンタリングされる形で用意することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第2636571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、とりわけ、先行技術におけるそうした不都合をなくし、サスペンションアームにかかる応力を制限することができる簡便かつ経済的なショックアブソーバ取付部を備える後車軸を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、前方に位置する軸の周りをほぼ垂直な平面内で揺動し、それぞれのアーム部の後方に後輪を支えるハブブラケットを持つ2つのサスペンションアームを備える自動車用後車軸であって、2つのサスペンションアームを連結するトーションビームをさらに備える後車軸において、それぞれのサスペンションアームが、ビームとハブブラケットの間のハブブラケット中心軸よりも前方のアーム部の幅の中に配置された閉輪郭のほぼ垂直な開口部であって、サスペンションアームに連結される下部固定部を持つショックアブソーバを受ける開口部を備えることを特徴とする後車軸を提案する。
【0013】
有利には、前記開口部をショックアブソーバが端から端まで貫く。実際、本発明による後車軸の利点は、ショックアブソーバがサスペンションアームをそのアーム部の幅の中で通り抜けるようにすることで、そのショックアブソーバの基部をサスペンションアームの下でセンタリングした形で固定することができ、それによって反力を均衡させることができるところにある。
【0014】
さらに、本発明による後車軸は、互いに組み合わせることもできる以下のいずれか1つまたは複数の特徴を備えることができる。
【0015】
有利には、サスペンションアームは、互いに心合わせされて開口部を形成する穴をそれぞれ持つ上板と下板とを備えており、その開口部を貫く補強管がその2つの板に固定される。
【0016】
補強管の基部は、固定軸を通すように横断方向に心合わせされた2つの穴を有する切断端を持つことができ、ショックアブソーバの下部固定部を囲い込んでサスペンションアームと連結するキャップをそれによって構成する。
【0017】
1つの実施形態では、それぞれのサスペンションアームは、「U」字形の全体形状を持つ断面に従って絞り加工された板材からなる長手方向本体を持ち、上板および下板にそれぞれ相当するほぼ水平な2つの翼を備える。
【0018】
補強管は、「U」字形断面の2つの翼の穴の縁に溶接することができる。
【0019】
補強管は、穴の中に入るように巻いた薄板からなることができる。
【0020】
サスペンションアームに設けられた開口部は長手方向に引き伸ばされた形状を持つことができ、ショックアブソーバの下部固定部はその開口部の長手に沿ってほぼセンタリングされる。
【0021】
トーションビームはその両端でサスペンションアームの中央部分に固定することができる。
【0022】
1つの変形によれば、それぞれのサスペンションアームはアーム前半部とアーム後半部とを備え、それぞれがトーションビームに直接固定される。
【0023】
もう1つの変形によれば、トーションビームは、一体型のサスペンションアーム後半部を形成する後方に曲がった両端を有しており、前方を向いた2つのサスペンションアーム前半部がそのビームに固定される。
【0024】
本発明は、上述したような後車軸を備える自動車もまたその対象とする。
【0025】
以下に添付の図面を参照しながら参考として与える説明を読めば、本発明についての理解が促され、その他の特徴や利点もまたより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】先行技術による後車軸半分の斜視図である。
【図2】本発明の第1の形態による後車軸半分の斜視図である。
【図3】その後車軸半分のサスペンションアームの詳細図である。
【図4】本発明の第2の形態による後車軸半分の斜視図である。
【図5】本発明の第3の形態による後車軸半分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1(従来技術)は、車両側方に長手方向に配置されたサスペンションアーム2を備える後車軸半分の右側方部を示す。このサスペンションアーム2の前部は、中心軸がほぼ横断方向に配置された輪4を備えており、この輪が車体に固定されたキャップに挿入される弾性ブロックを受け、それによって振動を減衰する弾性継手をなす。
【0028】
サスペンションアーム2の後部は、後輪を受ける横断方向の軸を軸受によって支承するハブブラケット6を備える。
【0029】
トーションビーム8は、その両端がサスペンションアーム2の中心点でサスペンションアームに固定される。このトーションビーム8はサスペンションアーム2の幾何形状を保ち、両アームのストロークの差を制限するねじりばねをなす。
【0030】
サスペンションアーム2は、絞り加工された板材によって形成されるほぼ水平な支持面12を後部に備えており、その支持面がサスペンションコイルスプリングの下端を受ける。
【0031】
上端が車体に固定された摺動シリンダを備える油圧ショックアブソーバ10は、ハブブラケット6の直近前方でサスペンションアーム2の外側面の横を通る。
【0032】
この油圧ショックアブソーバ10の下端は、ゴム製内環を持つ輪を備える。サスペンションアーム2にはこの環を通る横断方向軸が固定されており、それによって弾性連結が果たされる。この横断方向軸は、サスペンションアーム2の側面に溶接された円筒形部材の穴にねじ込まれる固定ねじを持つことができる。
【0033】
本体がある程度の直径を持つ油圧ショックアブソーバ10は、サスペンションのストローク時に接触することがないように、並行するサスペンションアーム2から十分に隔てられている。ショックアブソーバ10基部の固定用横断方向軸はキャップ内に取り付けることができるが、その場合には後車軸の製作は複雑になる。
【0034】
横断方向軸は片持ちで取り付けることもできる。その場合は、軸は曲げ応力を受けることになるため、軸は荷重を支えるために大きな直径を持たなければならない。
【0035】
変形として、ショックアブソーバ10をサスペンションアーム2内側のトーションビーム8の近くに配置することができる。その場合、ショックアブソーバ10の固定軸を受ける円筒形部材をサスペンションアーム2の内側に心合わせして溶接することは容易でない。
【0036】
これらの解決方法では、ショックアブソーバ10の下部固定部はサスペンションアーム2の中心線に対してオフセットしているため、そのアームのねじりは、ショックアブソーバ10をその固定部の心合わせがずれた状態で動作させることになる。このずれは、固定部のゴム環を疲労させ、ショックアブソーバ10の内部摩擦やさらに重度の摩耗を生じさせる。
【0037】
いずれの場合も、曲げ応力に耐えるためにサスペンションアーム2に必要となる厚手の板材または補強材は後車軸の重量の増大を招くことになる。
【0038】
図2および3は、本発明による後車軸31について、前方輪4とハブブラケット24とを連結する長手方向本体22であって、ビーム8が溶接された長手方向本体22を持つサスペンションアーム20を示す。
【0039】
長手方向本体22は、その本体に沿って延びるほぼ「U」字形の断面に従って絞り加工された板材を備える。この本体22の「U」字形断面は水平な2つの翼を持ち、その断面の開放側が車両の外側を向く。単一の板材からなるサスペンションアーム2の本体22は経済的である。
【0040】
トーションビーム8は断面の閉じた方の側面に内側から溶接される。車輪34を支えるハブブラケット24と、サスペンションコイルスプリングの基部を受ける支持面26は、それぞれ本体22に溶接された絞り加工板材からなる。
【0041】
本体22の「U」字形断面のそれぞれの翼は、トーションビーム8とハブブラケット24の中心軸の間のハブブラケット24の中心軸よりも前方に、互いに心合わせされた穴を持っており、それらがサスペンションアーム20を貫くほぼ垂直な開口部を形成する。
【0042】
この開口部は、サスペンションアーム20の本体22を端から端まで貫いて両側に突き抜ける補強管30を受けるもので、補強管30は本体22の両翼の2つの穴にぴったりと取り付ける。本体22の2つの翼の穴の縁で行う溶接により、両翼は補強管30と接合される。
【0043】
こうして、補強管30が本体22の2つの翼に溶接されて2つの翼が連結され、サスペンションアーム20に大きな補強が与えられることで、剛体のアセンブリが完成する。
【0044】
補強管30の基部は、車両の横断方向軸に心合わせされて補強管30を貫く固定ねじ32が通る穴をそれぞれ有する2つの下部突起を持つ切断端を備える。突起は、ショックアブソーバ10の基部をその内部に受けるキャップを形成し、固定ねじ32は、補強管30によって両側を支えられたショックアブソーバ10の下部輪を貫く。
【0045】
有利には、補強管30は薄板を巻いたものからなるが、これは経済的な方法である。
【0046】
こうして、応力を均衡させるキャップ形取付部が形成され、固定ねじ32は曲げ応力を受けることがない。固定ねじ32は、片持ちの取付部と比べてその直径および長さを小さくすることができる。
【0047】
さらに、サスペンションアーム20のほぼ中心線上を通るショックアブソーバ10によって伝えられる応力は、そのアームにほとんどねじり応力を与えない。本体22は薄めの絞り加工板材からより容易に製作することができ、製品はより軽量でより精度の高いものとすることができる。
【0048】
サスペンションアーム20の本体22の翼に設けた開口部は、長手方向に引き伸ばされた形状を持つ。固定ねじ32はその引き伸ばされた形状の中央にセンタリングして、サスペンションが休止状態にあるときにショックアブソーバ10の基部が長手方向にその開口部のほぼ中心に配置されるようにする。
【0049】
それにより、ショックアブソーバ10は、サスペンションがストロークしてサスペンションアーム20が動くときに、引き伸ばされた開口部の中でそのアームに対して前後に振れることができる。
【0050】
さらに、補強管30の長手方向の直径は、下方に狭まり、上方に広がるようにして、補強管30の断面をショックアブソーバ10の動きを確保するのに必要な最小限まで小さくすることができる。
【0051】
図4は、変形として、後ろ向きのサスペンションアーム後半部44と接続する前向きのサスペンションアーム前半部40を端部に溶接されて備えるトーションビーム42を具備する後車軸41を示す。互いに接合される2つの半アーム40、44は、前述のサスペンションアームと同じ機能を持つアーム一式を形成し、前方に弾性継手を、後方にハブブラケット24を備える。
【0052】
アーム後半部44の長手方向本体も、同様に、開放側が車両外側を向いたほぼ「U」字形の断面に従って絞り加工された板材によってなることができる。
【0053】
アーム後半部44の「U」字形断面の両翼は、サスペンションアーム20を貫く補強管30を受ける垂直な開口部を形成する穴をそれぞれ持つ。したがって、ショックアブソーバ10の取付けおよびサスペンションアーム後半部44の補強に関して前述と同様の利点を得る。
【0054】
図5は、第2の変形として、両端が後方に曲げられて、2つの一体型サスペンションアーム後半部を形成するトーションビーム52を備える後車軸51を示す。このトーションビーム52が湾曲する部位に前向きのサスペンションアーム前半部40が溶接される。
【0055】
そうすることで、後車軸51を構成する部品点数が減らされ、その生産管理が容易となる。
【0056】
アーム後半部を構成する端部を含むトーションビーム52は、開放側が車両前方を向いたほぼ「U」字形の断面に従って絞り加工された板材からなる。
【0057】
アーム後半部の「U」字形断面の両翼も同様に補強管30を受ける。
【符号の説明】
【0058】
2、20 サスペンションアーム
4 前方輪
6、24 ハブブラケット
8、42、52 トーションビーム
10 ショックアブソーバ
12 支持面
22 長手方向本体
26 支持面
30 補強管
31、41、51 後車軸
32 固定ねじ
34 車輪
40 サスペンションアーム前半部
44 サスペンションアーム後半部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に位置する軸の周りをほぼ垂直な平面内で揺動し、それぞれのアーム部の後方に後輪(34)を支えるハブブラケット(24)を持つ2つのサスペンションアーム(22、44)を備える自動車用後車軸(31、41、51)であって、前記2つのサスペンションアーム(22、44)を連結するトーションビーム(8、42、52)をさらに備える後車軸(31、41、51)において、それぞれのサスペンションアーム(22、44)が、前記ビーム(8、42、52)と前記ハブブラケット(24)の間の前記ハブブラケット(24)中心軸よりも前方の前記アーム部の幅の中に配置された閉輪郭のほぼ垂直な開口部であって、前記サスペンションアーム(22、44)に連結される下部固定部を持つショックアブソーバ(10)を受ける開口部を備えることを特徴とする後車軸(31、41、51)。
【請求項2】
前記開口部を前記ショックアブソーバ(10)が端から端まで貫くことを特徴とする、請求項1に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項3】
前記サスペンションアーム(22、44)が、互いに心合わせされて前記開口部を形成する穴をそれぞれ持つ上板と下板とを備え、その開口部を貫く補強管(30)がその2つの板に固定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項4】
前記補強管(30)の基部が、固定軸(32)を通すように横断方向に心合わせされた2つの穴を有する切断端を持ち、前記ショックアブソーバ(10)の前記下部固定部を囲い込んで前記サスペンションアーム(22,44)と連結するキャップをそれによって構成することを特徴とする、請求項3に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項5】
前記サスペンションアームが、「U」字形の全体形状を持つ断面に従って絞り加工された板材からなる長手方向本体(22、44)を持ち、上板および下板にそれぞれ相当するほぼ水平な2つの翼を備えることを特徴とする、請求項3または4に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項6】
前記補強管(30)が「U」字形断面の前記2つの翼の穴の縁に溶接されることを特徴とする、請求項5に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項7】
前記補強管(30)が前記穴の中に入るように巻いた薄板からなることを特徴とする、請求項3から6のいずれか一項に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項8】
前記サスペンションアーム(22、44)に設けられた前記開口部が長手方向に引き伸ばされた形状を持ち、前記ショックアブソーバ(10)の前記下部固定部がその開口部の長手に沿ってほぼセンタリングされることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項9】
前記トーションビーム(8)がその両端でサスペンションアーム(22)の中央部分に固定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後車軸(31)。
【請求項10】
それぞれのサスペンションアームがアーム前半部(40)とアーム後半部(44)とを備え、それぞれが前記トーションビーム(42)に直接固定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後車軸(41)。
【請求項11】
前記トーションビーム(52)が、一体型サスペンションアーム後半部を形成する後方に曲がった両端を有しており、前方を向いた2つのサスペンションアーム前半部(40)がそのビーム(52)に固定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後車軸(51)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の後車軸(31、41、51)を備える自動車。
【請求項1】
前方に位置する軸の周りをほぼ垂直な平面内で揺動し、それぞれのアーム部の後方に後輪(34)を支えるハブブラケット(24)を持つ2つのサスペンションアーム(22、44)を備える自動車用後車軸(31、41、51)であって、前記2つのサスペンションアーム(22、44)を連結するトーションビーム(8、42、52)をさらに備える後車軸(31、41、51)において、それぞれのサスペンションアーム(22、44)が、前記ビーム(8、42、52)と前記ハブブラケット(24)の間の前記ハブブラケット(24)中心軸よりも前方の前記アーム部の幅の中に配置された閉輪郭のほぼ垂直な開口部であって、前記サスペンションアーム(22、44)に連結される下部固定部を持つショックアブソーバ(10)を受ける開口部を備えることを特徴とする後車軸(31、41、51)。
【請求項2】
前記開口部を前記ショックアブソーバ(10)が端から端まで貫くことを特徴とする、請求項1に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項3】
前記サスペンションアーム(22、44)が、互いに心合わせされて前記開口部を形成する穴をそれぞれ持つ上板と下板とを備え、その開口部を貫く補強管(30)がその2つの板に固定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項4】
前記補強管(30)の基部が、固定軸(32)を通すように横断方向に心合わせされた2つの穴を有する切断端を持ち、前記ショックアブソーバ(10)の前記下部固定部を囲い込んで前記サスペンションアーム(22,44)と連結するキャップをそれによって構成することを特徴とする、請求項3に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項5】
前記サスペンションアームが、「U」字形の全体形状を持つ断面に従って絞り加工された板材からなる長手方向本体(22、44)を持ち、上板および下板にそれぞれ相当するほぼ水平な2つの翼を備えることを特徴とする、請求項3または4に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項6】
前記補強管(30)が「U」字形断面の前記2つの翼の穴の縁に溶接されることを特徴とする、請求項5に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項7】
前記補強管(30)が前記穴の中に入るように巻いた薄板からなることを特徴とする、請求項3から6のいずれか一項に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項8】
前記サスペンションアーム(22、44)に設けられた前記開口部が長手方向に引き伸ばされた形状を持ち、前記ショックアブソーバ(10)の前記下部固定部がその開口部の長手に沿ってほぼセンタリングされることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の後車軸(31、41、51)。
【請求項9】
前記トーションビーム(8)がその両端でサスペンションアーム(22)の中央部分に固定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後車軸(31)。
【請求項10】
それぞれのサスペンションアームがアーム前半部(40)とアーム後半部(44)とを備え、それぞれが前記トーションビーム(42)に直接固定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後車軸(41)。
【請求項11】
前記トーションビーム(52)が、一体型サスペンションアーム後半部を形成する後方に曲がった両端を有しており、前方を向いた2つのサスペンションアーム前半部(40)がそのビーム(52)に固定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後車軸(51)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の後車軸(31、41、51)を備える自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2011−230619(P2011−230619A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101862(P2010−101862)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(507274799)プジョー シトロエン オートモビル エス アー (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(507274799)プジョー シトロエン オートモビル エス アー (72)
【Fターム(参考)】
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