説明

垂直磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録装置

【課題】ディスクリートトラックを有する垂直磁気記録媒体において、ガードバンド部への非磁性材の充填と、媒体表面の平滑化処理を必要としない構成にすることにより、高トラック密度を実現するディスクリートトラック媒体を安価に提供する。
【解決手段】垂直磁気記録媒体1は、非磁性基板10上に、少なくとも軟磁性下地層11と、磁性を有する結晶粒子とそれを取り巻く酸化物を主成分とする非磁性結晶粒界から構成された第1の記録層13と、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第2の記録層14と、第1の記録層と第2の記録層との間に、少なくとも1層以上の非磁性層15とを備え、情報を磁気的に記録する記録トラック部19と、隣接する記録トラックの間に設けられたガードバンド部18とを有する。ガードバンド部18の非磁性層の総厚t1と、記録トラック部19の非磁性層の総厚t2との関係を、t1>t2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体及びその製造方法、並びに垂直磁気記録媒体を搭載する磁気記録装置に係り、特に、ディスクリートトラックを有する垂直磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置を中心とした磁気記録装置の適用範囲の拡大に伴い、装置のさらなる小型、大容量化が要求されている。この要求に答えるため、これらの装置に用いられる磁気記録媒体における記録密度の向上は必須である。
線記録密度を高める技術として、従来の面内磁気記録方式にかわり、垂直磁気記録方式が広く用いられるようになった。垂直磁気記録方式は、記録媒体の磁化を媒体面に垂直に、かつ隣り合う記録ビット内の磁化が互いに反平行になるように記録ビットを形成する方式である。垂直磁気記録方式では、磁化遷移領域での反磁界が小さいため面内磁気記録方式に比べて急峻な磁化遷移領域が形成され、高密度で磁化が安定する。したがって、面内磁気記録方式と比較して、同じ記録分解能を得るために膜厚を大きくして磁性粒子体積を大きくすることができ、記録された磁化の経時的な減衰、すなわち熱減磁を抑制できる。さらに単磁極ヘッドと、垂直記録層と軟磁性下地層を備えた垂直磁気記録媒体との組み合わせにおいて高い記録磁界が得られ、垂直記録層に磁気異方性エネルギーの高い材料を選択することが可能となり、熱減磁をさらに抑制することができる。
【0003】
垂直磁気記録方式に用いられる媒体の磁気記録層としては、結晶粒の周囲を酸化物や窒化物などの非磁性化合物で取り囲んだグラニュラ構造が提案されている。例えば、特許文献1には、Co-Cr-Pt合金を主体としてSi酸化物を含有し、かつ、そのSiの含有量がSi原子に換算して8at.%以上16at.%以下であるような記録層を有する磁気記録媒体が開示されている。また、非特許文献1には、厚さ160nmのCo-Ta-Zrからなる軟磁性下地層上に、Ta/Ru中間層を介してCo-Cr-Pt-Si-Oからなる記録層を形成し、記録層中の酸素濃度を15%程度とした場合に保磁力が最大となり、SN比が向上することが報告されている。
【0004】
これらの技術は、非磁性の酸化物を結晶粒界に偏析させて磁性粒子を磁気的に孤立させることにより、SN比を向上させるのが目的である。しかし、高SN比と熱安定性とを両立するためには、磁性粒子の磁気異方性を大きくする必要があり、この場合保磁力が高くなりすぎて単磁極ヘッドによる記録が困難になるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、酸化物を結晶粒界に偏析させたグラニュラ構造の記録層に、酸化物を含まない強磁性合金層を積層した構造が提案されている。例えば、特許文献2にはCoを主成分とするとともにCrを含み酸化物を含まない層と、Coを主成分とするとともにPt及び酸化物を含んだ層とからなる垂直磁気記録層の構成が開示されている。酸化物を含まない強磁性層は、グラニュラ構造を有する記録層と比較して、強磁性層内の磁性粒子間の磁気結合力が高く、磁界により磁化が反転しやすい性質を有している。この酸化物を含まない強磁性層を、グラニュラ層に積層することにより、記録層全体の保磁力が低下し、熱安定性に優れ、かつ単磁極ヘッドによる記録が容易で、高いSN比を有する垂直磁気記録媒体が実現可能となる。
【0006】
また、垂直磁気記録媒体に情報を記録する磁気ヘッドにおいて、記録磁界勾配を向上させるために、従来の単磁極型ヘッドの構造に、少なくとも主磁極のトラック方向トレーリング側に非磁性のギャップ層を介して磁気シールドが設けられた構造を有する磁気ヘッドが提案されている。以下ではこの磁気シールドをトレーリングシールドと呼び、トレーリングシールドを設けた記録ヘッドをトレーリングシールド型記録ヘッドと呼ぶ。例えば特許文献3あるいは特許文献4にトレーリングシールド型記録ヘッドの例が開示されている。トレーリングシールド型記録ヘッドは、記録磁界強度は低下するものの、記録磁界勾配を高めることができるため、上記の垂直磁気記録媒体との組み合わせにおいて、さらに高い線記録密度を実現できる。
【0007】
ところで、上記の垂直磁気記録方式の採用による線記録密度の向上と同時に、トラック密度を増加して面記録密度を向上する努力も行われている。しかし、トラックの間隔の狭小化に伴い、隣接するトラックに記録された磁気的情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズとなって、SN比が低下する問題が顕在化している。また、記録ヘッドから発生する磁界分布に起因する記録トラック端部の書きにじみ(フリンジ)が顕著となり、隣接するトラックの磁気的情報を消去する問題がある。
【0008】
上記の問題を解決する方法として、ディスクリートトラック技術が注目されている。ディスクリートトラック媒体は、隣接する記録トラックを物理的に分離し、記録時の書きにじみと、再生時の隣接信号の干渉とを抑制し、トラック密度を大幅に増加することを可能とする。ディスクリートトラック媒体は大別して、基板に凹凸加工を施して、情報を磁気的に記録する記録トラック部が凸に、隣接する記録トラック部の間に設けられたガードバンド部が凹になるように、情報を記録する磁性部材の表面に段差を設けるものと、ガードバンド部の磁性部材の一部、または全部を切削してガードバンド部への記録を不可能とするものとに分けられる。前者の技術として、例えば特許文献5において、エッチング法により基板に同心円状の凹凸を形成し、下地層としてCr、磁性層としてCo-Cr-Pt-Ta合金、第1の非磁性膜としてCr、第2の非磁性膜としてSiO2を順次形成し、凹凸をもつ第2の非磁性膜の表面を、Crが表出するまで研磨、平滑加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が開示されている。後者の技術として、例えば特許文献6において、磁性部材でつくられた情報を磁気的に記録する記録トラック部と、互いに隣接する記録トラック部間に非磁性の材料でつくられたガードバンド部を備え、ガードバンド部材の下方領域には、磁性部材が存在しないか、記録トラック部をなす磁性部材の厚みとは異なる厚みの磁性部材が設けられることを特徴とする磁気ディスク媒体が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2002-342908号公報
【特許文献2】特開2004-310910号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0176214号明細書
【特許文献4】特開2005-190518号公報
【特許文献5】特開2000-195042号公報
【特許文献6】特開平9-97419号公報
【特許文献7】特開2006-196143号公報
【非特許文献1】IEEE Transactions on Magnetics, Vol.40, No.4, July 2004, pp. 2498-2500, “Role of Oxygen Incorporation in Co-Cr-Pt-Si-O Perpendicular Magnetic Recording Media.”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献5、特許文献6に開示されているディスクリート媒体の製造方法において、ディスクリートトラックを形成する工程の後、ガードバンド部に非磁性材料を充填する工程と、媒体表面を平坦化する工程とを経て、保護膜を形成する。これらの工程は記録、再生時に磁気ヘッドが媒体表面上で安定に浮上走行するために不可欠である。上記の工程において、非磁性材料を充填する工程の後、記録トラック部の磁性層の上部に形成される余剰の層を除去し、記録トラック部とガードバンド部との間に生じる段差を少なくし、かつ媒体表面全体の面粗さを十分に小さくするためには、多くの工程数と、各工程の厳密な制御性とを必要とする。例えば、特許文献7において、ディスクリートトラックの形成に用いるマスク層と、ガードバンド部に充填する非磁性材料とのエッチング選択比を利用して表面を平坦化するディスクリート媒体の製造方法が開示されているが、媒体の全面において、ガードバンド部の充填材表面と記録トラック部の記録層表面との間に生じる段差を小さくしながら、記録トラック部に残留するマスク層を一様になくすためには、工程の条件と時間を厳密に制御する必要がある。従って、従来のディスクリートトラック媒体の製造方法において、工程数の増加と、工程の複雑さに起因する歩留の低下によって、製造コストが著しく上昇する問題があった。これは、従来のディスクリートトラック媒体において、ディスクリートトラック形成工程の直後に、記録トラック部の磁性層表面と、ガードバンド部最上面との間に段差を有する構造に起因している。
【0011】
本発明の目的は、ガードバンド部に非磁性材を充填する必要のない垂直磁気記録媒体及びその製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、ガードバンド部に非磁性材を充填する必要がなく、かつ媒体表面の平滑化処理を必要としない垂直磁気記録媒体及びその製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、安価な垂直磁気記録媒体を用いて、面記録密度を向上する磁気記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的な垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に、少なくとも軟磁性下地層と、磁性を有する結晶粒子とそれを取り巻く酸化物を主成分とする非磁性結晶粒界から構成された第1の記録層と、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第2の記録層とを備え、情報を磁気的に記録する記録トラック部と、隣接する記録トラックの間に設けられたガードバンド部とを有する垂直磁気記録媒体において、前記第1の記録層と第2の記録層との間に少なくとも1層以上の非磁性層を有し、前記ガードバンド部の非磁性層の総厚t1と、前記記録トラック部の非磁性層の総厚t2との間に、t1>t2の関係が成り立つことを特徴とする。このとき、ガードバンド部の第1の記録層および第2の記録層の層厚はともに0よりも大きい。また、t2=0、すなわち記録トラック部には非磁性層がなく、ガードバンド部にのみ非磁性層を有する構造でもよい。また、ガードバンド部の第2の記録層の表面と、記録トラック部の第2の記録層の表面との間に生じる段差が2nm以下であり、好ましくは1nm以下であることが望ましい。
【0013】
本発明の代表的な垂直磁気記録媒体の製造方法は、
非磁性基板上に軟磁性下地層を形成する工程と、
前記軟磁性下地層の上部に、磁性を有する結晶粒子とそれを取り巻く酸化物を主成分とする非磁性結晶粒界から構成される第1の記録層を形成する工程と、
前記第1の記録層の上に、記録トラック部に対応する部分と、記録トラック部間のガードバンド部に対応し、記録トラック部に対応する部分よりも層厚が大きい部分を有する非磁性層を形成する工程と、
前記非磁性層の上に強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第2の記録層を形成する工程と、
前記第2の記録層の上に保護層を形成する工程と、
前記保護層の上に潤滑層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の代表的な磁気記録装置は、上記の垂直磁気記録媒体を搭載し、さらに主磁極と、主磁極を励磁するためのコイルと、主磁極のトレーリング側に配置されたトレーリングシールドと、主磁極のリーディング側に配置された再生素子とを備える磁気ヘッドを搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ディスクリートトラック媒体のガードバンド部に非磁性材料を充填する必要がないので、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体を安価に提供することができる。また、媒体表面の平滑化処理を必要としないので、さらに安価なディスクリートトラック媒体とすることができる。また、安価な垂直磁気記録媒体を用いて、高い面記録密度を実現する磁気記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施例による垂直磁気記録媒体、およびその製造方法について説明する。
図1は実施例1による垂直磁気記録媒体の断面構造の模式図である。垂直磁気記録媒体1は非磁性基板10上に軟磁性下地層11と、非磁性の中間層12と、酸化物を含む第1の記録層13と、酸化物を含まない第2の記録層14と、媒体保護層16と、媒体保護層16に塗布された潤滑層17とを有する。第1の記録層13と、第2の記録層14との間に非磁性層15が積層されている。垂直磁気記録媒体1にはガードバンド部18が設けられており、隣接するガードバンド部18の間が記録トラック部19を構成している。ガードバンド部18における非磁性層15の厚さt1は、第1の記録層13と、第2の記録層14との間に生じる磁気的相互作用を小さくして、ガードバンド部18の下部において記録ヘッドからの磁界による磁化反転が困難になる程度に十分大きく設定されている。記録トラック部19における非磁性層15の厚さt2は、第1の記録層13と、第2の記録層14との間に生じる磁気的相互作用によって、記録ヘッドからの磁界による磁化反転が容易になる範囲で設定すればよく、t1>t2の関係が成り立つ。ここでt2=0、すなわちガードバンド部18にのみ非磁性層15を設ける構造でもよい。
【0017】
次に図2を参照して上記垂直磁気記録媒体1の、第1の製造方法の概略について説明する。
まず、図2(A)に示すように、非磁性基板10上に軟磁性下地層11、非磁性の中間層12、酸化物を含むグラニュラ記録層(第1の記録層)13、非磁性層15をスパッタ法等により順次形成する。
続いて、図2(B)に示すように、非磁性層15上に、レジスト2を塗布する。
続いて、図2(C)に示すように、所望の間隔の記録トラック部、ガードバンド部を形成するために凹凸加工された金型(スタンパ)3をレジスト2に密着し、高圧でプレスして、記録トラック部19を形成する部分のレジストの厚さを、ガードバンド部18を形成する部分のレジストの厚さよりも小さくする(以降インプリント工程と呼ぶ)。
続いて、図2(D)に示すように、反応性イオンエッチング等を用いて記録トラック部19を形成する部分のレジスト2の凹部を除去する。
続いて、図2(E)に示すように、レジスト2をマスクとして、イオンミリングや反応性イオンエッチング等を用いて、記録トラック部19を形成する部分の非磁性層15を除去する。なお、この工程では、記録トラック部19を形成する部分の非磁性層15を完全に除去してt2=0としたが、図1に示すように、t1>t2の関係を満たす条件で薄く残しても良い。
続いて、図2(F)に示すように、反応性イオンエッチング等を用いてガードバンド部のレジスト2を除去する。
続いて、図2(G)に示すようにスパッタ法、CVD法等により第2の記録層14、および媒体保護層16を形成し、媒体保護層16の上に液体潤滑層17を塗布する。
【0018】
次に図3を参照して上記垂直磁気記録媒体1の、第2の製造方法の概略について説明する。
まず、図3(A)に示すように、非磁性基板10上に軟磁性下地層11、非磁性の中間層12、酸化物を含むグラニュラ記録層(第1の記録層)13を、スパッタ法等により順次形成する。
続いて、図3(B)に示すように、第1の記録層13上に、レジスト2を塗布する。
続いて、図3(C)に示すように、インプリント工程により、ガードバンド部18を形成する部分のレジストの厚さを、記録トラック部19を形成する部分のレジストの厚さよりも小さくする。
続いて、図3(D)に示すように、反応性イオンエッチング等を用いてガードバンド部18を形成する部分のレジスト2の凹部を除去する。
続いて、図3(E)に示すように、スパッタ法、CVD法等を用いて非磁性層15を形成する。
続いて、図3(F)に示すように、記録トラック部19上のレジスト2と、非磁性層15とを剥離する(以下、リフトオフ工程と呼ぶ)。
続いて、図3(G)に示すようにスパッタ法、CVD法等により第2の記録層14、および媒体保護層16を形成し、媒体保護層16の上に液体潤滑層17を塗布する。
【0019】
次に、上記製造方法の詳細について説明する。
非磁性基板10にはAl-Mg合金などの非磁性金属や、結晶化ガラス、アモルファスガラス、Si、樹脂などの材料を用いることができる。実施例1においては、直径63.5 mmのガラス基板を用いた。
【0020】
軟磁性下地層11にはFe、Co、Niを含む軟磁性材料を用いることができ、CoTaZr合金、CoNbZr合金、FeCoB合金などを用いることができる。また、複数の軟磁性薄膜の間に非磁性薄膜を挿入し、各軟磁性薄膜が非磁性薄膜を介して強磁性、または反強磁性的に結合した多層膜構造とすることで、軟磁性下地層から発生する磁気的ノイズを低減することができる。実施例1では、FeCoTaZr合金を20 nmと、Ruを0.4 nmと、FeCoTaZr合金を20 nmとを、スパッタ法によりに順次形成し、軟磁性下地層11を三層からなる構成とした。軟磁性下地層11の膜厚は、記録を行う際に十分なオーバーライト特性が得られる範囲内で選択すればよく、10 nmから300 nmの範囲であれば問題ない。軟磁性下地層11の下に、FeMnや、IrMnのような、軟磁性下地層11の磁区を固定するための磁区制御層を設けた構造を用いても良い。
【0021】
中間層12は、第1の記録層13の結晶配向性や結晶粒径を制御し、結晶粒間の交換結合を制御する役割を果たす。中間層12の膜厚、構成、材料は、上記効果が得られる範囲で設定すればよく、特に、膜厚、構成、材料を限定するものではない。実施例1においては、膜厚7 nmのNiWと、膜厚17 nmのRuとを順次形成した。
上記中間層構成においてNiW層の役割はRu層の結晶粒径の制御と、膜面垂直方向のc軸配向性を高めることである。これが満足される範囲で膜厚を設定すればよく、3 nm から10 nm程度の値が望ましい。NiWの代わりに、NiCr、NiCrW、NiVなどを用いることができる。また、面心立方格子(fcc)構造を有するPd、Pt、Cuやこれらを含有する合金、NiFeなどの強磁性fcc材料を用いても良く、NiTaなどのアモルファス構造を有する材料を用いてもよい。
Ru層の役割は第1の記録層13の結晶粒径、結晶配向性の制御と結晶粒間の交換結合の低減である。これが満足される範囲で膜厚を設定すればよく、3 nm から30 nm程度の値が望ましい。また、Ruの代わりにRuを含む合金や、RuにSiO2などの酸化物を含有させたものを用いても良い。
【0022】
第1の記録層13は、強磁性粒子を、酸化物で取り囲むグラニュラ構造を有する薄膜であり、例えばCoCrPtB合金、CoCrPtMo合金、CoCrPtNb合金、CoCrPtTa合金と、Si酸化物、Ta酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Cr酸化物などからなるグラニュラ膜を用いることができる。これらの酸化物を粒界に偏析させることで、低ノイズのグラニュラ層を形成できる。また、第1の記録層13は、異方性エネルギー、結晶粒間の交換結合の制御を目的として、異なる組成、または異なる酸化物からなる複数のグラニュラ層で構成してもよい。第1の記録層13の膜厚は十分なオーバーライト特性と、良好なSN比と、熱安定性とが満足される範囲内で設定すればよく、8 nmから20 nm程度の値が望ましい。第1の記録層13の飽和磁化としては300 kA/mから650 kA/m程度の値を用いると、低ノイズ性と熱安定性を両立できるので好ましい。実施例1においては、第1の記録層13は67at.%Co-21at.%Cr-18at.%Pt合金とSiO2を94mol:6molの割合で含有する複合型ターゲットを用い、アルゴンと酸素の混合ガスを用いてスパッタ法により形成した。第1の記録層13の膜厚は13 nmとした。
【0023】
非磁性層15の加工に用いるレジスト2は広く工業的に使用されているフォトレジスト等を使用することができる。スピンコートやディップ法などを用いて薄く均一に塗布し、レジストを加熱して不要な有機溶剤などを除去する。
【0024】
スタンパ3は、金属板に電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものであり、材料としては所望のトラックパターンの形成が容易であること、およびインプリント工程に耐えうる硬度、耐久性が必要である。本実施例1においては、Niスタンパを使用したが、前述の目的に合致するものであれば材料は問わない。
【0025】
非磁性層15の役割は第1の記録層13と第2の記録層14との間に生じる磁気的相互作用を弱め、保磁力を高くして、磁気ヘッドの記録磁界による磁化反転を困難にすることである。非磁性層15の材料としては、Cr、Cu、Ru、Al、Ti、Ta等の金属やCoRu、CoCr、CrTi、CrTa等の合金、SiO2、AlO3、TiO、Si、C等の酸化物や非金属を用いることができるが、第1の記録層13とのエッチング選択比、表面平坦性、耐食性などを考慮して材料を選択するのが望ましい。また、非磁性層15を、異なる材料、組成からなる複数の層で構成してもよく、そのうちの1層を、非磁性層15を加工するときのエッチングストップ層として用いることもできる。実施例1では非磁性層15としてSiO2をスパッタリング法で1 nm形成した。
【0026】
第1の製造方法においては、インプリント工程によりトラックパターンが形成されたレジスト2をマスクとして、反応性イオンエッチング等により記録トラック部19の非磁性層15を除去するが、具体的には、非磁性層15としてSiO2を1nm堆積し、CF4ガスを用いた反応性イオンエッチングにより記録トラック部の非磁性層15を除去した。また、記録トラック部19の非磁性層15をすべて除去したが、記録トラック部19における第1の記録層13と、第2の記録層14との間の磁気的相互作用が大きく、ヘッド磁界による磁化反転が容易である範囲において、記録トラック部19の非磁性層15が残留してもよい。
【0027】
第2の製造方法においては、リフトオフ工程により記録トラック部のレジスト2と、非磁性層15とを同時に剥離している。このリフトオフ工程において、有機溶媒によるウェット法、または酸素ガス雰囲気中による反応性イオンエッチング等を用いるドライ法を選択することができる。
【0028】
第2の記録層14を構成する、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない層を構成する材料としては、CoCr合金、CoCrPt合金、CoCrB合金、CoCrMo合金、CoCrNb合金、CoCrTa合金、CoCrPtB合金、CoCrPtMo合金、CoCrPtNb合金、CoCrPtTa合金、などを用いることができる。また、第2の記録層14は、記録トラック部19における第1の記録層13との交換結合の制御を目的として、異なる組成、材料からなる複数の層で構成してもよい。第2の記録層14の膜厚は、第1の記録層13との組み合わせにおいて、十分なオーバーライト特性と、良好なSN比と、熱安定性とが満足される範囲内で設定すればよく、3 nmから10 nm程度の値が望ましい。実施例1においては、60at.%Co-12at%Cr-16at.%Pt-12at.%B合金ターゲットを用いてスパッタ法により膜厚4 nmの第2の記録層14を形成した。
【0029】
ガードバンド部18の第1の記録層13と、第2の記録層14との間に非磁性層15を挿入することにより、第1の記録層13と、第2の記録層14との磁気的相互作用が小さくなり、保磁力が高くなる。従って、ガードバンド部において記録ヘッドの磁界による磁化反転が困難となり、隣接する記録トラックへの磁気的干渉が抑制され、トラック間隔の狭小化が可能となる。
【0030】
図4に、実施例1の垂直磁気記録媒体1において、非磁性層15のエッチング工程を行わず、ガードバンド部18および記録トラック部19の非磁性層15の膜厚を変化させたときの、オーバーライトの変化を示す。オーバーライトは、20.8 kfr/mmの下地パターン上に3.5 kfr/mmのパターンを上書きした後の、下地パターンの残留出力の、上書き前の出力に対する比と定義し、dBを単位として表した。オーバーライトの数値が小さいほど、記録層の磁化反転が容易であることを表す。図4の結果により、実施例1においてガードバンド部18の非磁性層15の膜厚t1を0.6 nm以上、記録トラック部19の非磁性層15の膜厚t2を0 nmから0.4 nm、好ましくは0 nmから0.2 nm、とすることで、記録トラック部19において磁化反転が容易で、ガードバンド部18において磁化反転が困難な垂直磁気記録媒体が得られることが判る。
【0031】
第2の記録層14を形成後、磁気ヘッドとの衝突による記録層の破損を抑止することを目的として、媒体保護膜16を形成する。ここで、非磁性層15を含むガードバンド部18の全膜厚と、記録トラック部19の全膜厚との差によって生じる、第2の記録層表面の段差が2 nm以下、好ましくは1 nm以下であれば、非磁性材料の充填や表面の平滑化処理を行うことなく、第2の記録層14の形成直後、連続的に媒体保護膜16の形成が可能となる。上記のとおり、ガードバンド部18の非磁性層15の膜厚t1を0.6 nmから2.0nm、記録トラック部19の非磁性層15の膜厚t2を0 nmから0.4 nmとすることで、第2の記録層表面の段差を2 nm以下とすることができる。また、非磁性層15の膜厚が厚く、ガードバンド部18の第2の記録層14の表面と、記録トラック部19の第2の記録層14の表面との間に生じる段差が大きくなる場合は、エッチングや化学機械研磨(CMP)等の方法を用いて表面を研磨し、段差を小さくしてから媒体保護膜16を形成することも可能である。記録、再生時の磁気ヘッド−記録層間距離が小さいことが高密度記録実現に有効であるため、媒体保護膜16の厚さは可能な限り薄く、5 nm以下であるのが望ましい。実施例1においては、媒体保護層16として、CVD法によりDLC膜を3.5 nm形成した。
【0032】
潤滑層17を形成するための潤滑剤としては、現在の磁気記録媒体に用いられている液体潤滑剤を用いてよく、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
【0033】
次に本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例と共通する箇所の符号は同一とし、共通する工程については説明を省略する。
実施例2による垂直磁気記録媒体1′の断面構造の模式図を図5に示す。第1の記録層13と、非磁性層15との間に、強磁性金属を含み、酸化物を含まない第3の記録層20が積層されている。その他は実施例1と同様の構成である。図5のように、酸化物を含まない第3の記録層20と、第2の記録層14との間に非磁性層15を挿入し、ガードバンド部18の保磁力を高くし、ディスクリートトラックを形成することも可能である。第3の記録層20として、第2の記録層14と同様に、CoCr合金、CoCrPt合金、CoCrB合金、CoCrMo合金、CoCrNb合金、CoCrTa合金、CoCrPtB合金、CoCrPtMo合金、CoCrPtNb合金、CoCrPtTa合金等を用いることができる。第3の記録層20の膜厚は、第1の記録層13と第3の記録層20との交換結合と、第3の記録層20と第2の記録層14との交換結合とを考慮して設定される。すなわち、第3の記録層20の膜厚は、第1の記録層13と第3の記録層20からなる磁性層の保磁力が磁気ヘッドによる記録が困難になる程度に高く、第1の記録層13と第3の記録層20と第2の記録層14からなる磁性層の保磁力が、磁気ヘッドによる記録が可能になる程度に低くなる範囲で設定されればよい。実施例2において、実施例1の第1の製造方法と同様の方法で第1の記録層13を形成後、連続的に72at.%Co-28at.%Cr合金ターゲットを用いてスパッタ法により膜厚2 nmの第3の記録層20を形成した。非磁性層15の形成工程の後、60at.%Co-12at%Cr-16at.%Pt-12at.%B合金ターゲットを用いてスパッタ法により膜厚3 nmの第2の記録層14を形成した。他の工程は実施例1の第1の製造方法と同一とした。
【0034】
次に、実施例1および実施例2の垂直磁気記録媒体の、記録再生特性を評価した。
使用した磁気ヘッドは図6に示すように、トレーリングシールド型記録ヘッド61と、TMR再生ヘッド68からなる複合型ヘッド60を用いた。記録ヘッド61において、主磁極62の先端部の幾何学的なトラック幅は90nmとした。主磁極62とトレーリングシールド63間の距離64は50nmとした。トレーリングギャップ64を介し、主磁極62に対向するトレーリングシールド63の媒体対向面(ABS)からの高さは100nmとした。主磁極62はヨーク65に接続され、ヨーク65と副磁極66との間にコイル67が配置されている。TMR再生ヘッド68は、上下の磁気シールド69の間にTMR膜70が設けられたもので、TMR膜70の幾何学的なトラック幅は70nmとした。
【0035】
記録再生特性は市販の垂直磁気記録装置に用いられている信号処理回路を搭載したスピンスタンドを用いて評価を行った。39.4 kbits/mmの線記録密度で記録トラック部にデータを記録して、108ビットのデータを読み出したときの(誤りビット数)/(読み出しビット数)をビット誤り率(BER)とした。また、所定の記録トラック部にデータを記録後、隣接する記録トラック部の全周にわたり10000回記録(ダミーライト)を行い、再び所定の記録トラック部で測定したBERを、隣接トラック干渉後のBER(BER_ATI)とした。BERとBER_ATIの比が小さいほど、隣接するトラックからの磁気的干渉が小さいことを意味する。
【0036】
図7に実施例1、2および比較例1、2の垂直磁気記録媒体の記録再生特性の結果を示す。実施例1、実施例2について、記録トラック部19の幅Dを70 nm、ガードバンド部18の幅dを50 nmとした。実施例1、実施例2において、ガードバンド形成工程(図2(A)〜図2(F)、図3(B)〜図2(F))を行わず、その他の工程を同一としたものをそれぞれ比較例1、比較例2とした。
【0037】
比較例1、2において、ガードバンド部を形成しない場合、隣接するトラックへの記録によってデータが消去され、BER_ATIが著しく劣化した。一方、実施例1、2において、BER、BER_ATIともに良好な結果が得られ、従来のディスクリートトラック媒体と同等以上の性能を有することが明らかとなった。
【0038】
以上の説明のとおり、実施例1、2によれば、ガードバンド部において第1の記録層と、第2の記録層との間に少なくとも1層以上の非磁性層を挿入することにより、非磁性材料の充填工程と表面平滑化工程を行うことなく、ガードバンドとして十分に機能するガードバンド部を有する垂直磁気記録媒体を実現することができる。すなわち、安価な垂直磁気記録媒体を得ることができる。また、この垂直磁気記録媒体はディスクリートトラック媒体であり、高トラック密度を実現することができる。なお、実施例2による垂直磁気記録媒体では、第3の記録層20を有する分、実施例1よりもBER、BER_ATIが良好である。
【0039】
次に、図8、図9を参照して本発明の垂直磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置(磁気ディスク装置)を説明する。図8は、媒体面から見た筐体内部を模式的に示している。図9は、媒体側面から見た筐体内部を模式的に示している。筐体80内には上記実施例による垂直磁気記録媒体1(1′)、媒体1(1′)を支持、回転する手段としてのスピンドルモータ86、媒体1(1′)に対して情報の記録および再生を行う磁気ヘッド60を搭載したヘッドスライダ82、ヘッドスライダ82を先端に支持したヘッド・ジンバル・アッセンブリ83、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ83を回転自在に支持する回転軸84、回転軸84を介してヘッド・ジンバル・アッセンブリ83を回転させ、かつ磁気ヘッド60の、垂直記録媒体1(1′)上での位置決めを行うボイスコイルモータ(VCM)87およびプリアンプ85が収納されている。磁気ヘッド60は図6に示したものと同じタイプの複合型ヘッドであり、トレーリングシールド型記録ヘッド61と、シールド型MR再生素子(GMR膜、TMR膜など)を用いた再生ヘッド68とを含む。筐体80の下部(外部)には、信号処理回路、ディスク回転制御回路、ヘッド位置決め制御回路などが実装されたパッケージボード88が搭載されている。スピンドルモータ86によって回転する媒体1(1′)上で、ヘッドスライダ82が極低位置で浮上走行することにより、磁気ヘッド60が媒体1(1′)の表面で近接対向する。ヘッド・ジンバル・アッセンブリ83に取り付けられたVCM87によって、磁気ヘッド60を垂直磁気記録媒体1(1′)の任意の半径位置(トラック)に位置決めする。任意のトラックに磁気ヘッド60が位置決めされた後、垂直磁気記録方式により情報が垂直磁気媒体1(1′)に記録される。
【0040】
上記磁気記録装置は、上記実施例による垂直磁気記録媒体1(1′)と、磁界勾配が急峻な磁気ヘッド60を搭載することにより、安価な垂直磁気記録媒体を用いて高い面記録密度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1による垂直磁気記録媒体の断面構造を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施例1による垂直磁気記録媒体の第1の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例1による垂直磁気記録媒体の第2の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の実施例1による垂直磁気記録媒体におけるオーバーライトと非磁性層の層厚との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施例2による垂直磁気記録媒体の断面構造を模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施例による垂直磁気記録媒体の記録再生特性の評価に用いた磁気ヘッドの構成図である。
【図7】本発明の実施例及び比較例の記録再生特性の評価結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例による垂直磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置を媒体面から見た筐体内部を模式的に示す図である。
【図9】図8の磁気記録装置を媒体側面から見た筐体内部を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1…垂直磁気記録媒体、2…レジスト、3…スタンパ、10…非磁性基板、11…軟磁性下地層、12…中間層、13…第1の記録層、14…第2の記録層、15…非磁性層、16…媒体保護層、17…液体潤滑層、18…ガードバンド部、19…記録トラック部、20…第3の記録層、60…磁気ヘッド、61…トレーリングシールド型記録ヘッド、62…主磁極、63…トレーリングシールド、64…トレーリングギャップ、65…ヨーク、66…副磁極、67…コイル、68…再生ヘッド、69…磁気シールド、70…TMR再生素子、80…筐体、82…ヘッドスライダ、83…ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、84…回転軸、85…プリアンプ、86…スピンドルモータ、87…ボイスコイルモータ、88…パッケージボード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に、少なくとも軟磁性下地層と、磁性を有する結晶粒子とそれを取り巻く酸化物を主成分とする非磁性結晶粒界から構成された第1の記録層と、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第2の記録層とを備え、情報を磁気的に記録する記録トラック部と、隣接する記録トラック部の間に設けられたガードバンド部を有する垂直磁気記録媒体において、前記第1の記録層と前記第2の記録層との間に少なくとも1層以上の非磁性層を有し、前記ガードバンド部の非磁性層の総厚t1と、前記記録トラック部の非磁性層の総厚t2との間に、t1>t2の関係が成り立つことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記記録トラック部の非磁性層の総厚t2が0であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記ガードバンド部の第2の記録層の最上面と、前記記録トラック部の第2の記録層の最上面との間に生じる段差が2nm以下であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記第1の記録層は、CoCr合金にSi酸化物,Ta酸化物,Nb酸化物,Ti酸化物,Cr酸化物の中のいずれか一種を含有するグラニュラ層であり、前記第2の記録層はCoCr合金層であり、前記非磁性層はCr,Cu,Ru,Al,Ti,Ta,CoRu,CoCr,CrTi,CrTa,SiO2,AlO3,TiO,Si,Cの中の少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第1の記録層と前記非磁性層との間に、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第3の記録層を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項6】
前記記録トラック部の非磁性層の総厚t2が0であることを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項7】
前記ガードバンド部の第2の記録層の最上面と、前記記録トラック部の第2の記録層の最上面との間に生じる段差が2nm以下であることを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項8】
前記第1の記録層は、CoCr合金にSi酸化物,Ta酸化物,Nb酸化物,Ti酸化物,Cr酸化物の中のいずれか一種を含有するグラニュラ層であり、前記第2の記録層及び第3の記録層はCoCr合金層であり、前記非磁性層はCr,Cu,Ru,Al,Ti,Ta,CoRu,CoCr,CrTi,CrTa,SiO2,AlO3,TiO,Si,Cの中の少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項9】
非磁性基板上に軟磁性下地層を形成する工程と、
前記軟磁性下地層の上部に、磁性を有する結晶粒子とそれを取り巻く酸化物を主成分とする非磁性結晶粒界から構成される第1の記録層を形成する工程と、
前記第1の記録層の上に、記録トラック部に対応する部分と、記録トラック部間のガードバンド部に対応し、前記記録トラック部に対応する部分よりも層厚が大きい部分を有する非磁性層を形成する工程と、
前記非磁性層の上に強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第2の記録層を形成する工程と、
前記第2の記録層の上に保護層を形成する工程と、
前記保護層の上に潤滑層を形成する工程と、
を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記記録トラック部に対応する部分と、ガードバンド部に対応する部分を有する非磁性層を形成する工程は、
前記第1の記録層の上に非磁性層を形成する工程と、
前記非磁性層の上にレジストを塗布する工程と、
前記塗布されたレジストに、記録トラック部とガードバンド部に対応する凹凸を有するスタンパをプレスする工程と、
前記プレス工程により凹凸が形成されたレジストの、凹部(記録トラック部を形成する部分)を除去する工程と、
前記レジストをマスクとして、エッチングにより前記記録トラック部を形成する部分の非磁性層を除去する工程と、
前記工程において残存する非磁性層の上のレジストを除去する工程と、
を含むことを特徴とする請求項9記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
前記記録トラック部に対応する部分と、ガードバンド部に対応する部分を有する非磁性層を形成する工程は、
前記第1の記録層の上にレジストを塗布する工程と、
前記塗布されたレジストに、ガードバンド部と記録トラック部に対応する凹凸を有するスタンパをプレスする工程と、
前記プレス工程により凹凸が形成されたレジストの、凹部(ガードバンド部を形成する部分)を除去する工程と、
前記レジストをマスクとして、非磁性層を形成する工程と、
前記レジストのマスクと、その上に形成された非磁性層を除去する工程と、
を含むことを特徴とする請求項9記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
非磁性基板上に、少なくとも軟磁性下地層と、磁性を有する結晶粒子とそれを取り巻く酸化物を主成分とする非磁性結晶粒界から構成された第1の記録層と、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第2の記録層とを備え、情報を磁気的に記録する記録トラック部と、隣接する記録トラック部の間に設けられたガードバンド部を有し、前記第1の記録層と前記第2の記録層との間に少なくとも1層以上の非磁性層を有し、前記ガードバンド部の非磁性層の総厚t1と、前記記録トラック部の非磁性層の総厚t2との間に、t1>t2の関係が成り立つ垂直磁気記録媒体と、
主磁極と、前記主磁極を励磁するためのコイルと、前記主磁極のトレーリング側に配置されたトレーリングシールドと、前記主磁極のリーディング側に配置された再生素子とを備える磁気ヘッドと、
を有することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項13】
前記垂直磁気記録媒体の記録トラック部の非磁性層の総厚t2が0であることを特徴とする請求項12記載の磁気記録装置。
【請求項14】
前記垂直磁気記録媒体のガードバンド部の第2の記録層の最上面と、前記記録トラック部の第2の記録層の最上面との間に生じる段差が2nm以下であることを特徴とする請求項12記載の磁気記録装置。
【請求項15】
前記垂直磁気記録媒体の第1の記録層は、CoCr合金にSi酸化物,Ta酸化物,Nb酸化物,Ti酸化物,Cr酸化物の中のいずれか一種を含有するグラニュラ層であり、前記第2の記録層はCoCr合金層であり、前記非磁性層はCr,Cu,Ru,Al,Ti,Ta,CoRu,CoCr,CrTi,CrTa,SiO2,AlO3,TiO,Si,Cの中の少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項12記載の磁気記録装置。
【請求項16】
前記垂直磁気記録媒体の第1の記録層と非磁性層との間に、強磁性金属を主成分とし酸化物を含まない第3の記録層を有することを特徴とする請求項12載の磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−87446(P2009−87446A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255602(P2007−255602)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】