説明

型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子、二次発泡粒子及びポリ乳酸系樹脂発泡成形体

【課題】 本発明は、型内発泡成形によってポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を提供する。
【解決手段】 本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、所定のポリ乳酸系樹脂を押出発泡させたポリ乳酸系樹脂押出物を粒子状に切断して得られた型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、この型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有し且つ40〜120℃における吸熱量(ΔHe)が1〜20J/gであると共に、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有し且つ120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が25J/g以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内発泡成形によって耐熱性及び機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子(以下「ポリ乳酸系樹脂発泡粒子」と略することがある)、この型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を二次発泡させて得られる二次発泡粒子、及び、これらの発泡粒子を用いて得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸系樹脂は、天然に存在する乳酸を重合されて得られた樹脂であり、自然界に存在する微生物によって分解可能な生分解性樹脂であると共に、常温での機械的特性についても優れていることから注目を集めている。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂は、一般に、D−乳酸及び/又はL−乳酸を重合させるか、或いは、L−ラクチド、D−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって製造されている。
【0004】
そして、得られるポリ乳酸系樹脂は、該ポリ乳酸系樹脂中に含有されるD体成分或いはL体成分の含有比率によって物性、特に結晶性が変化する。具体的には、得られるポリ乳酸系樹脂は、該ポリ乳酸系樹脂中に含有されるD体成分或いはL体成分のうちの少ない方の光学異性体の含有割合が多くなるにしたがって結晶性が低下し、やがて非結晶性となる。
【0005】
又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法としては、型内発泡成形が提案されている。上記型内発泡成形とは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型内に充填し、熱水や水蒸気などの熱媒体によってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡圧によって発泡粒子同士を融着一体化させて所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法である。
【0006】
具体的には、特許文献1には、L体とD体のモル比が95/5〜60/40、又は40/60〜5/95であるポリ乳酸にイソシアネート基≧2.0当量/モルのポリイソシアネート化合物を該ポリ乳酸に対して0.5〜5重量%配合し反応させた樹脂組成物を所定条件で熟成させてなる樹脂組成物が開示されている。そして、上記樹脂組成物から粒子を製造し、この粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させ、得られた発泡性粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を金型に充填して発泡させて所望形状を有する成形体を成形することが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記樹脂組成物を構成するポリ乳酸系樹脂は、そのL体成分又はD体成分のうちの少ない方の光学異性体成分のモル比が5モル%以上であり、ポリ乳酸系樹脂は結晶性が低いか或いは非結晶性であって耐熱性に劣っていた。従って、この樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性は充分ではなく、せいぜい50℃程度であって、実用上で問題が生じた。
【0008】
そこで、上記方法において、樹脂組成物を構成するポリ乳酸系樹脂として、L体又はD体のうちの少ない方の光学異性体のモル比が5モル%未満である結晶性の高いポリ乳酸系樹脂を用いることが考えられる。しかしながら、上記樹脂組成物からなる粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子とし、この発泡性粒子を加熱して予備発泡させているため、この予備発泡過程で加えられる熱によってポリ乳酸系樹脂の結晶化が進行する。その結果、得られる予備発泡粒子は結晶化度の高い予備発泡粒子となり、融着性が低下する。従って、このような予備発泡粒子を用いて得られる成形体は、融着性が悪くて機械的強度が低いといった問題点があった。
【0009】
又、上記方法は、気泡が比較的微細な予備発泡粒子を得ることができるものの、樹脂組成物から粒子を製造する工程と、この粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させ、得られた発泡性粒子を予備発泡させる工程とを必要とすることから、生産性に劣るといった問題点があった。
【0010】
特許文献2には、乳酸成分単位を50モル%以上含むポリ乳酸からなる発泡粒子であって、該発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定における吸熱量(ΔHendo:Bead)と発熱量(ΔHexo:Bead)との差(ΔHendo:Bead−ΔHexo:Bead)が0J/g以上30J/g未満であり、且つ該吸熱量(ΔHendo:Bead)が15J/g以上であるポリ乳酸発泡粒子が開示されている。
【0011】
しかしながら、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造にあたって、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることによって発泡性粒子としており、例えば、樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させる際の圧力が0.5〜10MPaであることから、樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させる際にポリ乳酸系樹脂の結晶化が進行してしまい、得られる発泡性粒子の熱融着性が低下するという問題点を有する。特に、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂からなる樹脂粒子の場合には結晶化が進行してしまい、得られる発泡性粒子が発泡しないという問題点を有する。
【0012】
【特許文献1】特開2000−17038号公報
【特許文献2】特開2004−83890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、型内発泡成形によって外観が良好で耐熱性、機械的強度及び寸法安定性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子、並びに、上記型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子又は二次発泡粒子を用いて得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して押出発泡させたポリ乳酸系樹脂押出物を粒子状に切断して得られた型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、この型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有し且つ40〜120℃における吸熱量(ΔHe)が1〜20J/gであると共に、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有し且つ120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が25J/g以上であることを特徴とする。
【0015】
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線から測定される吸熱量とは、熱流束示差走査熱量測定により試験片が溶融平衡状態から室温平衡状態に構造変化する際に生じる、エンタルピー緩和量と結晶が溶融する際の融解熱量とを意味している。
【0016】
エンタルピー緩和量が大きいポリ乳酸系樹脂発泡粒子ほどポリ乳酸系樹脂発泡粒子はその製造工程中において急冷され結晶化度が低いことを意味し、結晶化が進んでいないことから、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、熱融着性に優れており、型内発泡成形性に優れていることを意味する。そして、本発明において、吸熱量(ΔHe)は、エンタルピー緩和量を意味する。
【0017】
又、結晶が溶融する際の融解熱量が大きい程、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形をした際に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が進行する度合いが大きいことを意味し、即ち、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度と、このポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形して得られた発泡成形体の結晶化度との差が大きいことを意味する。従って、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形前は結晶化度が低く、型内発泡成形時に加えられる熱によって大きく結晶化が進行し、耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができることを示している。そして、本発明において、吸熱量(ΔHm)は、結晶が溶融する際の融解熱量を意味する。
【0018】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC(示差走査熱量計)曲線において、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とをこの順序で有している。このように、吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを低温側から高温側に向かってこの順序で有していることによって、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が向上し、優れた寸法安定性、外観及び機械的強度を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0019】
更に、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC(示差走査熱量計)曲線において、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が高く、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱融着性が低く、このポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形して得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は機械的強度及び外観に劣り、高くても、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の性能に殆ど差異はないので、1〜20J/gに限定され、5〜15J/gが好ましい。
【0020】
そして、上記40〜120℃における吸熱量(ΔHe)は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造する過程で加えられる加熱条件及び冷却条件によって変化し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造する際の冷却条件で制御することが好ましく、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造時に急冷することによって吸熱量(ΔHe)を大きくすることができる一方、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造時に緩やかに冷却又は冷却をしないことによって吸熱量(ΔHe)を小さくすることができる。
【0021】
又、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC(示差走査熱量計)曲線において、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有している。このように、発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを低温側から高温側に向かってこの順序で有していることによって、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が向上し、優れた寸法安定性、外観及び機械的強度を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0022】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC(示差走査熱量計)曲線において、120〜200℃における吸熱量(ΔHm)は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形して得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下するので、25J/g以上に限定され、25〜60J/gが好ましく、25〜55J/gがより好ましく、25〜50J/gが特に好ましい。
【0023】
上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)は下記の要領で調整することができる。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂が、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満である場合には、例えば、ポリ乳酸系樹脂中における少ない方の光学異性体の含有量を少なくすることによって、上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を大きくすることができる一方、ポリ乳酸系樹脂中における少ない方の光学異性体の含有量を多くすることによって、上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を小さくすることができる。
【0024】
又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂が構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有している場合には、下記の要領で上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を調整することができる。
【0025】
例えば、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造するに際して、ポリ乳酸系樹脂と共に架橋剤を押出機に供給し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂を架橋すればよく、押出機に供給する架橋剤を少なくすることによって上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を大きくすることができる一方、押出機に供給する架橋剤を多くすることによって上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を小さくすることができる。
【0026】
又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造するに際して、ポリ乳酸系樹脂と共に充填剤を押出機に供給してポリ乳酸系樹脂の結晶化速度を調整してもよく、押出機に供給する充填剤を少なくすることによって上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を大きくすることができる一方、押出機に供給する充填剤を多くすることによって上記120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を小さくすることができる。
【0027】
上記架橋剤としては、例えば、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物、イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0028】
上記エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物としては、構成モノマー成分として、エポキシ基を有するアクリル系単量体と、スチレン系単量体とを含有してなるビニル重合体が好ましい。
【0029】
そして、上記エポキシ基を有するアクリル系単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレートなどが挙げられる。又、スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどが挙げられる。
【0030】
更に、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物は、エポキシ基を有するアクリル系単量体及びスチレン系単量体以外の単量体を構成モノマー成分として含有していてもよく、このような単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレートなどが挙げられる。
【0031】
なお、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物は、例えば、東亜合成社から商品名「ARUFON UG−4000」「ARUFON UG−4010」「「ARUFON UG−4030」「ARUFON UG−4040」「ARUFON UG−4070」で市販されている。
【0032】
又、上記多価イソシアネート化合物としては、イソシアネート基が二個以上有しておればよいが、ポリ乳酸系樹脂が多価イソシアネート化合物を中心とした分岐構造をとり、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性が大きく向上することから、イソシアネート基を三個以上有する多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0033】
上記イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物としては、多官能芳香族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートの何れであってもよく、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(p−イソシアナトフェニル)チオフォスファイト、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
上記充填剤としては、例えば、ガラス粉末、ガラス繊維、セラミックファイバー、ウイスカー、カーボンブラック、金属粉末、タルク、シリカなどが挙げられる。
【0035】
なお、本発明において、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC(示差走査熱量計)曲線は、JIS K7122−1987に準拠して熱流束示差走査熱量測定を行うことによって得られた曲線をいい、このDSC曲線に基づいて下記要領にて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)及び120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が測定される。但し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子1〜4mgを試験片とし、試験片の状態調節及び熱流束示差走査熱量測定は下記の手順で行う。
【0036】
先ず、試験片をDSC装置の容器に供給し、試験片に熱処理を施さずに、試験片を昇温速度5℃/分にて40〜200℃まで昇温して、例えば、図1に示したようなDSC曲線を得る。
【0037】
上記DSC曲線において、40〜120℃にて生じる吸熱ピーク曲線の低温側の始点をAとし、この吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線の高温側の終点をCとする。そして、点Aと点Cとを結ぶ直線がDSC曲線と交差する点をBとする。そして、点Aと点Bとを結ぶ直線と、吸熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から40〜120℃における吸熱量(ΔHe)を算出する。なお、本発明においては、点A及び点Cは40〜120℃の温度範囲内に存在している必要がある。
【0038】
同様に、上記DSC曲線において、120〜200℃にて生じる発熱ピーク曲線の低温側の始点をDとし、この発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線の高温側の終点をFとする。そして、点Dと点Fとを結ぶ直線がDSC曲線と交差する点をEとする。そして、点Eと点Fとを結ぶ直線と、吸熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出する。なお、本発明においては、点D及び点Fは120〜200℃の温度範囲内に存在している必要がある。
【0039】
次に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造する要領を一例を挙げて説明する。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造に用いられる製造装置について説明する。図2中、1は、押出機の前端に取り付けられたノズル金型である。このノズル金型は、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させて均一微細な気泡を形成でき好ましい。そして、図3に示したように、ノズル金型2の前端面1aには、ノズルの出口部11、11・・・が複数個、同一仮想円A上に等間隔毎に形成されている。なお、押出機の前端に取り付けるノズル金型は、ノズル内においてポリ乳酸系樹脂が発泡しなければ、特に限定されない。
【0040】
ノズル金型1のノズルの数は、少ないと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造効率が低下する一方、多いと、互いに隣接するノズルから押出発泡されるポリ乳酸系樹脂押出物同士が接触して合体したり、或いは、ポリ乳酸系樹脂押出物を切断して得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士が合体することがあるので、2〜80個が好ましく、5〜60個がより好ましく、8〜50個が特に好ましい。
【0041】
ノズル金型1におけるノズルの出口部11の直径は、小さいと、押出圧力が高くなりすぎて押出発泡が困難となることがある一方、大きいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の径が大きくなって金型への充填性が低下するので、0.2〜2mmが好ましく、0.3〜1.6mmがより好ましく、0.4〜1.2mmが特に好ましい。
【0042】
そして、ノズル金型1におけるノズルの出口部11におけるポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低下し或いはポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が粗大となることがある一方、大きいと、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがあるので、1000〜30000sec-1が好ましく、2000〜25000sec-1がより好ましく、3000〜20000sec-1が特に好ましい。
【0043】
なお、ノズル金型のノズルの出口部11における剪断速度は、下記式に基づいて算出されたものをいう。
剪断速度(sec-1)=4×Q/(πr3
但し、Qは、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量(cm3/sec)であり(Qを質量押出量(g/sec)から算出する場合は、ポリ乳酸系樹脂の密度は1.0g/cm3とする)、rは、ノズルの半径(cm)である。
【0044】
又、フラクチャーを低減させるために、ノズル金型1のランド部の長さは、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の直径の4〜30倍が好ましく、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の直径の5〜20倍がより好ましい。これは、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口部直径に比較して小さいと、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがある一方、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口部直径に比較して大きいと、ノズル金型に大きな圧力が加わり過ぎて押出発泡ができない場合があるからである。
【0045】
そして、ノズル金型1の前端面1aにおけるノズルの出口部11、11・・・で囲まれた部分には、回転軸2が前方に向かって突出した状態に配設されており、この回転軸2は、後述する冷却部材4を構成する冷却ドラム41の前部41aを貫通してモータなどの駆動部材3に連結されている。
【0046】
更に、上記回転軸2の後端部の外周面には一枚又は複数枚の回転刃5、5・・・が一体的に設けられており、全ての回転刃5は、その回転時には、ノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態となる。なお、回転軸2に複数枚の回転刃5、5・・・が一体的に設けられている場合には、複数枚の回転刃5、5・・・は回転軸2の周方向に等間隔毎に配列されている。又、図3では、一例として、四個の回転刃5、5・・・を回転軸2の外周面に一体的に設けた場合を示した。
【0047】
そして、回転軸2が回転することによって回転刃5、5・・・は、ノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら、ノズルの出口部11、11・・・が形成されている仮想円A上を移動し、ノズルの出口部11、11・・・から押出されたポリ乳酸系樹脂押出物を順次、連続的に切断可能なように構成されている。
【0048】
又、ノズル金型1の少なくとも前端部と、回転軸2とを包囲するように冷却部材4が配設されている。この冷却部材4は、ノズル金型1よりも大径な正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設された円筒状の周壁部41bとを有する有底円筒状の冷却ドラム41とを備えている。
【0049】
冷却部材4を形成する材料としては、金属、合成樹脂、木などが挙げられるが、加工性、耐久性、寸法精度を考慮すると、金属が好ましい。金属のなかでも加工性や性能を考慮すると鉄、アルミニウムがより好ましい。
【0050】
更に、冷却ドラム41の周壁部41bにおけるノズル金型1の外方に対応する部分には、冷却液42を供給するための供給口41cが内外周面間に亘って貫通した状態に形成されている。冷却ドラム41の供給口41cの外側開口部には冷却液42を冷却ドラム41内に供給するための供給管41dが接続されている。
【0051】
冷却液42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給されるように構成されている。そして、冷却液42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進む。そして、冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却液42によって全面的に被覆された状態となるように構成されている。
【0052】
なお、冷却液42としては、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を冷却することができれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられるが、使用後の処理を考慮すると、水が好ましい。
【0053】
そして、冷却ドラム41の周壁部41bの前端部下面には、その内外周面間に亘って貫通した状態に排出口41eが形成されており、この排出口41eの外側開口部には排出管41fが接続されており、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び冷却液42を連続的に排出できるように構成されている。
【0054】
次に、本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂について説明する。本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、一般に市販されているポリ乳酸系樹脂を用いることができ、具体的には、D−乳酸及びL−乳酸をモノマーとして共重合させるか、D−乳酸又はL−乳酸の何れか一方をモノマーとして重合させるか、或いは、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって得ることができ、何れのポリ乳酸系樹脂であってもよい。
【0055】
そして、ポリ乳酸系樹脂を製造するに際して、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体若しくはL体のうちの少ない方の光学異性体の割合が5モル%未満である場合、又は、モノマーとしてD体若しくはL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを用いた場合、即ち、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有している場合は、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が高くなり融点が高くなる一方、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体又はL体のうちの少ない方の割合が5モル%以上である時は、少ない方の光学異性体が増加するにしたがって、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が低くなり、やがて非結晶となる。
【0056】
従って、本発明では、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂か、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を用いる。このようなポリ乳酸系樹脂を用いることによって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の耐熱性を高いものとすることができる。
【0057】
更に、D体とL体をモノマーとして併用して重合させて得られたポリ乳酸系樹脂としては、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が4モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂が好ましく、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が3モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂がより好ましく、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が2モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂が特に好ましい。
【0058】
即ち、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が4モル%未満であるポリ乳酸系樹脂が好ましく、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が3モル%未満であるポリ乳酸系樹脂がより好ましく、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が2モル%未満であるポリ乳酸系樹脂が更に好ましい。
【0059】
そして、構成モノマー成分としてD体及びL体を含有するポリ乳酸系樹脂は、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が少なくなればなる程、ポリ乳酸系樹脂は、その結晶性のみならず融点も上昇する。よって、発泡粒子を金型内に充填して発泡させて得られる発泡成形体の耐熱性も向上し、発泡成形体は高い温度であってもその形態を維持することができる。従って、発泡成形体を金型から高い温度のまま取り出すことが可能となって発泡成形体の金型内における冷却時間が短縮され、発泡成形体の生産効率を向上させることもできる。
【0060】
ここで、ポリ乳酸系樹脂中におけるD体又はL体の含有量は以下の方法によって測定することができる。ポリ乳酸系樹脂を凍結粉砕し、ポリ乳酸系樹脂の粉末200mgを三角フラスコ内に供給した後、三角フラスコ内に1Nの水酸化ナトリウム水溶液30ミリリットルを加える。そして、三角フラスコを振りながら65℃に加熱してポリ乳酸系樹脂を完全に溶解させる。しかる後、1N塩酸を三角フラスコ内に供給して中和し、pHが4〜7の分解溶液を作製し、メスフラスコを用いて所定の体積とする。
【0061】
次に、分解溶液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した後、液体クロマトグラフを用いて分析し、得られたチャートに基づいてD体及びL体由来のピーク面積から面積比を存在比としてD体量及びL体量を算出する。そして、上述と同様の要領を5回繰り返して行い、得られたD体量及びL体量をそれぞれ相加平均して、ポリ乳酸系樹脂のD体量及びL体量とした。
【0062】
HPLC装置(液体クロマトグラフ):日本分光社製 商品名「PU-2085 Plus型システ
ム」
カラム:住友分析センター社製 商品名「SUMICHIRAL OA5000」(4.6mmφ×250mm)
カラム温度:25℃
移動相:2mMCuSO4水溶液と2-プロパノールとの混合液
(CuSO4水溶液:2-プロパノール(体積比)=95:5)
移動相流量:1.0ミリリットル/分
検出器:UV 254nm
注入量:20マイクロリットル
【0063】
そして、上記ポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後、押出機の前端に取り付けたノズル金型1からポリ乳酸系樹脂押出物を押出発泡させる。
【0064】
なお、上記押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられる。
【0065】
又、上記発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。
【0066】
そして、押出機に供給される発泡剤量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある一方、多いと、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態のポリ乳酸系樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができなかったり或いはポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡倍率が高過ぎて結晶化度を制御できなくなる場合があるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
【0067】
なお、押出機には気泡調整剤が添加されることが好ましいが、気泡調整剤の多くは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶核剤として作用するため、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進しない気泡調整剤を用いることが好ましく、このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0068】
又、押出機に供給される気泡調整剤の量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が粗大となり、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観が低下することがある一方、多いと、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させる際に破泡を生じてポリ乳酸系樹脂発泡粒子の独立気泡率が低下することがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。
【0069】
そして、ノズル金型1から押出されたポリ乳酸系樹脂押出物は引き続き切断工程に入る。ポリ乳酸系樹脂押出物の切断は、回転軸2を回転させ、ノズル金型1の前端面1aに配設された回転刃5、5・・・を2000〜10000rpmの一定の回転数で回転させて行う。
【0070】
全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら回転しており、ノズル金型1から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出物は、回転刃5と、ノズル金型1におけるノズルの出口部11端縁との間に生じる剪断応力によって、一定の時間間隔毎に大気中において切断されてポリ乳酸系樹脂発泡粒子とされる。この時、ポリ乳酸系樹脂押出物の冷却が過度とならない範囲内において、ポリ乳酸系樹脂押出物に水を霧状に吹き付けてもよい。
【0071】
本発明では、ノズル金型1のノズル内においてポリ乳酸系樹脂が発泡しないようにしている。そして、ポリ乳酸系樹脂は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後は、未だに発泡しておらず、吐出されてから僅かな時間が経過した後に発泡を始める。従って、ポリ乳酸系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する、未発泡部に先んじて押出された発泡途上の発泡部とからなる。
【0072】
ノズル金型1のノズルの出口部11から突出されてから発泡を開始するまでの間、未発泡部はその状態を維持する。この未発泡部が維持される時間は、ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力や、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力が高いと、ポリ乳酸系樹脂押出物はノズル金型1から押出されてから直ぐに発泡することはなく未発泡の状態を維持する。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力の調整は、ノズルの口径、押出量、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度及び溶融張力によって調整することができる。発泡剤量を適正な量に調整することによって金型内部においてポリ乳酸系樹脂が発泡することを防止し、未発泡部を確実に形成することができる。
【0073】
ポリ乳酸系樹脂の押出温度(押出機の先端部におけるポリ乳酸系樹脂の温度)は、ポリ乳酸系樹脂の融点よりも10〜50℃高い温度が好ましく、ポリ乳酸系樹脂の融点よりも15〜45℃高い温度がより好ましく、ポリ乳酸系樹脂の融点よりも20〜40℃高い温度が特に好ましい。これは、ポリ乳酸系樹脂の押出温度が低いと、フラクチャーが生じ、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士が付きやすくなり、ポリ乳酸系樹脂の押出温度が高いと、ポリ乳酸系樹脂の分解が促進し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性及び連続気泡率が低下し易くなるからである。
【0074】
そして、全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態でポリ乳酸系樹脂押出物を切断していることから、ポリ乳酸系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部において切断されてポリ乳酸系樹脂発泡粒子が製造される。
【0075】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、ポリ乳酸系樹脂押出物をその未発泡部で切断していることから、切断部の表面には気泡断面は存在しない。そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の表面全面は、気泡断面の存在しない表皮層で被覆されている。従って、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡ガスの抜けがなく優れた発泡性を有していると共に連続気泡率も低く、更に、表面の熱融着性にも優れている。
【0076】
そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に用いた時、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の表面は、気泡断面が露出していない表皮層から形成されていることから、発泡粒子同士の熱融着性が良好であり、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、表面ムラがなく外観に優れていると共に優れた機械的強度を有している。
【0077】
又、上述したように、回転刃5は一定の回転数で回転しているが、回転刃5の回転数は、2000〜10000rpmに限定され、3000〜9000rpmが好ましく、4000〜8000rmpがより好ましい。
【0078】
これは、回転刃5が2000rpmを下回ると、ポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃5によって確実に切断することができず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士が合体したり、或いは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の形状が不均一となるからである。
【0079】
一方、回転刃5の回転数が10000rpmを上回ると下記の問題点を生じるからである。第一の問題点は、回転刃による切断応力が大きくなって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子がノズルの出口部から冷却部材に向かって飛散される際に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の初速が速くなる。その結果、ポリ乳酸系樹脂押出物を切断してから、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が冷却部材に衝突するまでの時間が短くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡が不充分となってポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低くなる。第二の問題点は、回転刃及び回転軸の摩耗が大きくなって回転刃及び回転軸の寿命が短くなるからである。
【0080】
そして、上述のようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、回転刃5による切断応力によって切断と同時に外方或いは前方に向かって飛散され、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に直ちに衝突する。ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、冷却ドラム41に衝突するまでの間も発泡をし続けており、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は発泡によって略球状に成長している。
【0081】
冷却ドラム41の周壁部41bの内周面は全面的に冷却液42で被覆されており、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に衝突したポリ乳酸系樹脂発泡粒子は直ちに冷却されて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡は停止する。このように、ポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃5によって切断した後に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を直ちに冷却液42によって冷却していることから、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇するのを防止していると共に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が過度に発泡するのを防止している。
【0082】
従って、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形時に優れた発泡性及び熱融着性を発揮する。そして、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を上昇させて、ポリ乳酸系樹脂の耐熱性を向上させることができ、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、優れた耐熱性を有している。
【0083】
なお、冷却液42の温度は、低いと、冷却ドラム41の近傍に位置するノズル金型が過度に冷却されて、ポリ乳酸系樹脂の押出発泡に悪影響が生じることがある一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が高くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱融着性が低下することがあるので、0〜45℃が好ましく、5〜40℃がより好ましく、10〜35℃が特に好ましい。
【0084】
そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の冷却液42による冷却は、短いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の冷却が不充分となり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の内部の結晶化度が高くなると共にポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率が高くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内発泡成形性が低下することがあり、長くても、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造効率が低下するだけであるので、2〜30秒が好ましい。
【0085】
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形における発泡時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子に必要な発泡力を付与することができない虞れがある一方、大きいと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が不充分となることがあるので、0.02〜0.6g/cm3が好ましく、0.03〜0.5g/cm3がより好ましく、0.04〜0.4g/cm3が特に好ましい。
【0086】
そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、高いと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子が殆ど発泡せず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低くなって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるので、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率の調整は、押出機からのポリ乳酸系樹脂の押出発泡温度、押出機への発泡剤の供給量などを調整することによって行われる。
【0087】
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率は下記の要領で測定される。先ず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の全重量A(g)を測定する。次に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子全体の体積B(cm3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
【0088】
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
【0089】
そして、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見掛け体積E(cm3)を算出し、この見掛け体積Eと上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子全体の体積B(cm3)に基づいて下記式によりポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率を算出することができる。なお、水1gの体積を1cm3 とした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
【0090】
又、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒径は、小さいと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下することがある一方、大きいと、型内発泡成形時に金型内へのポリ乳酸系樹脂発泡粒子の充填性が低下することがあるので、0.5〜5.0mmが好ましく、1.0〜4.5mmがより好ましく、1.5〜4mmが特に好ましい。
【0091】
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒径は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の直径を直接、ノギスを用いて測定することができる。具体的には、各ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の切断面における最も長い直径(長径)及び最も短い直径(短径)を測定すると共に、各ポリ乳酸系樹脂発泡粒子における切断面に直交する方向の長さを測定し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の長径、短径及び長さの相加平均値をポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒径とする。
【0092】
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させることによって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに融着一体化させると共にポリ乳酸系樹脂の結晶化度を上昇させて、融着性及び耐熱性に優れた所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0093】
なお、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風、温水などが挙げられるが、60〜100℃の水を用いることが好ましい。これは、水は、液体状であって比熱が大きいことから、温度が低くても金型内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡に必要な高い熱量を充分に付与することができるからである。
【0094】
従って、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱し過ぎることなく、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充分に加熱、発泡させることができ、加熱媒体として水蒸気や熱風を用いた時に生じたようなポリ乳酸系樹脂発泡粒子表面の熱収縮を生じさせることなく、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士をそれらの発泡力によって互いに強固に熱融着一体化させることができ、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、優れた機械的強度を有していると共に外観にも優れている。
【0095】
そして、高圧の水蒸気を用いるのに比べて、低い圧力で型内発泡成形を行うことができるので、金型の設計強度を低く抑えることができ、複雑な形状を有する金型を容易に製作することができると共に、金型自体もコンパクトなものとして取扱性の向上を図ることができ、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産性の向上を図ることができる。
【0096】
加熱媒体として用いる水の温度は、低いと、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡が不充分となりポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が低下して得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度や外観性が低下することがある一方、高いと、水を高圧状態としなければならず、ボイラーなどの大掛かりな設備を要するので、60〜100℃が好ましく、70〜99℃がより好ましく、80〜98℃が特に好ましい。
【0097】
金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子に60〜100℃の水を供給してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)従来から用いられている型内発泡成形機において水蒸気の代わりに60〜100℃の水を金型内に供給する方法、(2)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した金型を、60〜100℃の水中に浸漬してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に水を供給する方法などが挙げられ、複雑な形状の金型であっても金型全体、即ち、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を全体的に均一に加熱、発泡させることができることから、上記(2)の方法が好ましい。
【0098】
金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子の水による加熱時間は、短いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱が不充分となってポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の熱融着が不充分となり、或いは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が不充分に上昇せず、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下することがある一方、長いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産性が低下するだけであるので、20秒〜1時間が好ましい。
【0099】
そして、60〜100℃の水でポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して型内発泡成形を行った後、金型内に形成されたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却した上で金型を開放して所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0100】
金型内に形成されたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の冷却は、高いと、金型内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子が充分に固化しておらず、金型から取り出した時に膨らんで金型のキャビティ形状通りのポリ乳酸系樹脂発泡成形体とならない虞れがあるので、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面温度が好ましくは50℃以下となるように、より好ましくは0〜45℃となるように、特に好ましくは0〜40℃となるように、最も好ましくは0〜35℃となるように冷却する。
【0101】
ここで、金型内に形成されたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却する方法としては、特に限定されないが、(1)金型を50℃以下の雰囲気中に放置する方法、(2)金型に50℃以下の水又は空気を吹き付ける方法、(3)金型を50℃以下の水中に浸漬させる方法が挙げられ、複雑な形状の金型であっても金型全体を均一に冷却することができることから、上記(3)の冷却方法が好ましい。なお、冷却時間は、冷却方法や金型の大きさなどに応じて適宜、調整されればよく、例えば、50℃以下の水中に金型を浸漬させる場合には、1〜10分が好ましい。
【0102】
なお、金型を形成している材料としては、特に限定されず、例えば、鉄系金属、アルミニウム系金属、銅系金属、亜鉛系金属などが挙げられ、熱伝導性及び加工性の観点からアルミニウム系金属が好ましい。
【0103】
そして、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体において、このポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、120〜200℃での吸熱量(ΔHm)が25J/g以上で且つ40〜200℃での各ピークにおける発熱量及び40〜120℃での吸熱量(ΔHe)がそれぞれ0〜7J/gであることが好ましい。
【0104】
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、その熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において120〜200℃の範囲内において吸熱ピーク曲線を一つ有している。
【0105】
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線から測定される吸熱量とは、熱流束示差走査熱量測定により試験片が溶融平衡状態から室温平衡状態に構造変化する際に生じる、エンタルピー緩和量と結晶が溶融する際の融解熱量とを意味している。
【0106】
そして、結晶が溶融する際の融解熱量が大きい程、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を構成している発泡粒子の結晶化が進んでおり、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が優れていることを意味している。
【0107】
又、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体のエンタルピー緩和量が小さいか又は無い程、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度が進んでいることを意味し、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた耐熱性、熱融着性、寸法安定性、外観及び機械的強度に優れていることを示している。
【0108】
更に、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線から測定される発熱量は、熱流束示差走査熱量測定により試験片の結晶化が促進され、この試験片の結晶化に伴って放出される熱量を意味し、発熱量が小さい程、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、これを構成している発泡粒子の結晶化が既に進んでおり、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた耐熱性、熱融着性、寸法安定性、外観及び機械的強度に優れていることを示している。
【0109】
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、120〜200℃での吸熱量(ΔHm)は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度が小さく、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低いので、25J/g以上が好ましく、25〜60J/gが好ましく、25〜55J/gがより好ましく、25〜50J/gが特に好ましい。
【0110】
又、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃での吸熱量(ΔHe)は、大きいと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を構成している発泡粒子の結晶化が充分に進んでおらず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の耐熱性が低いので、0〜7J/gが好ましく、0〜6J/gがより好ましく、0〜5J/gが特に好ましい。即ち、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃での吸熱量(ΔHe)は、無いか又は7J/g以下であることが好ましく、無いか又は6J/g以下であることがより好ましく、無いか又は5J/g以下であることが特に好ましい。
【0111】
更に、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜200℃での各ピークにおける発熱量は、大きいと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を構成している発泡粒子の結晶化が充分に進んでおらず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の耐熱性が低いので、0〜7J/gが好ましく、0〜6J/gがより好ましく、0〜5J/gが特に好ましい。即ち、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜200℃での各ピークにおける発熱量は、無いか又は7J/g以下であることが好ましく、無いか又は6J/g以下であることがより好ましく、無いか又は5J/g以下であることが特に好ましい。
【0112】
なお、本発明において、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC(示差走査熱量計)曲線は、JIS K7122−1987に準拠して熱流束示差走査熱量測定を行うことによって得られた曲線をいい、このDSC曲線に基づいて下記要領にて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)、120〜200℃における吸熱量(ΔHm)及び40〜200℃における発熱量が測定される。但し、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体から切り出した発泡体片1〜4mgを試験片とし、試験片の状態調節及び熱流束示差走査熱量測定は下記の手順で行う。
【0113】
先ず、試験片をDSC装置の容器に供給し、試験片に熱処理を施さずに、試験片を昇温速度5℃/分にて40〜200℃まで昇温して、例えば、図4に示したようなDSC曲線を得る。図4のDSC曲線は、40〜120℃において吸熱ピーク曲線及び発熱ピーク曲線が発現していない場合を示している。
【0114】
図4のDSC曲線において、120〜200℃にて生じる吸熱ピーク曲線の低温側の始点をGとし、この吸熱ピーク曲線の終点をHとする。そして、点Gと点Hとを結ぶ直線と、吸熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出する。なお、本発明においては、点G及び点Hは120〜200℃の温度範囲内に存在している必要がある。
【0115】
次に、図5に示したようなDSC曲線を得た場合について説明する。図5に示したDSC曲線は、40〜120℃において吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線が低温側から高温側に向かってこの順序で発現していると共に、120〜200℃において発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線が低温側から高温側に向かってこの順序で発現している場合を示している。
【0116】
図5のDSC曲線において、40〜120℃にて生じる吸熱ピーク曲線の低温側の始点をIとし、この吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線の高温側の終点をKとする。そして、点Iと点Kとを結ぶ直線がDSC曲線と交差する点をJとする。そして、点Iと点Jとを結ぶ直線と、吸熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から40〜120℃における吸熱量(ΔHe)を算出する。なお、本発明においては、点I及び点Kは40〜120℃の温度範囲内に存在している必要がある。
【0117】
同様に、図5のDSC曲線において、120〜200℃にて生じる発熱ピーク曲線の低温側の始点をLとし、この発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線の高温側の終点をNとする。そして、点Lと点Nとを結ぶ直線がDSC曲線と交差する点をMとする。そして、点Mと点Nとを結ぶ直線と、吸熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出する。なお、本発明においては、点L及び点Nは120〜200℃の温度範囲内に存在している必要がある。
【0118】
又、図5のDSC曲線において、点Jと点Kとを結ぶ直線と、発熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から40〜120℃での各ピークにおける発熱量を算出する。同様に、点Lと点Mとを結ぶ直線と、発熱ピーク曲線とで囲まれた部分の面積から120〜200℃での各ピークにおける発熱量を算出する。
【0119】
更に、型内発泡成形前に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に更に不活性ガスを含浸させて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。このようにポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させることにより、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が向上し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、上記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
【0120】
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス雰囲気下にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を置くことによってポリ乳酸系樹脂発泡粒子中に不活性ガスを含浸させる方法が挙げられる。このような場合、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型内に充填する前に不活性ガスを含浸させてもよいが、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス雰囲気下に置き、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させてもよい。
【0121】
そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の温度は−40〜25℃が好ましく、−10〜20℃がより好ましい。これは、温度が低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が冷却され過ぎて、型内発泡成形時においてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充分に加熱することができず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が低下し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。一方、温度が高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子への不活性ガスの含浸量が低くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に充分な発泡性を付与することができないことがあると共に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化が促進され、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱融着性が低下し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。
【0122】
又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の圧力は0.2〜1.6MPaが好ましく、0.28〜1.2MPaがより好ましい。不活性ガスが二酸化炭素である場合には、0.2〜1.5MPaが好ましく、0.25〜1.2MPaがより好ましい。これは、圧力が低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子への不活性ガスの含浸量が低くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に充分な発泡性を付与することができず、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。
【0123】
一方、圧力が高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が上昇し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱融着性が低下し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるからである。
【0124】
更に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時間は、20分〜24時間が好ましく、1〜18時間がより好ましく、3〜8時間が特に好ましい。不活性ガスが二酸化炭素である場合には、20分〜24時間が好ましい。これは、含浸時間が短いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを充分に含浸させることができないからである。一方、含浸時間が長いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造効率が低下するからである。
【0125】
このように、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを−40〜25℃で且つ0.2〜1.6MPaの圧力下にて含浸させることによって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度の上昇を抑えつつ、発泡性を向上させることができ、よって、型内発泡成形時に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士を充分な発泡力で強固に熱融着一体化させることができ、機械的強度、特に、衝撃強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0126】
又、上記のように、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させた場合、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子をこのまま、金型内にて加熱、発泡させてもよいが、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型内に充填する前に加熱して二次発泡させて、更に高発泡の二次発泡粒子とした上で金型内に充填して加熱、発泡させてもよい。このような二次発泡粒子を用いることによって、高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱する加熱媒体としては、乾燥した空気が好ましい。
【0127】
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて二次発泡粒子とする際の温度としては、高いと、ポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇して、二次発泡粒子同士の熱融着性が低下し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度及び外観性が低下するので、70℃未満が好ましい。
【0128】
二次発泡粒子の嵩密度は、小さいと、二次発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形における発泡時に二次発泡粒子に必要な発泡力を付与することができない虞れがある一方、大きいと、得られる二次発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時における二次発泡粒子の発泡性が不充分となることがあるので、0.015〜0.4g/cm3が好ましく、0.02〜0.3g/cm3がより好ましく、0.03〜0.2g/cm3が特に好ましい。
【0129】
そして、二次発泡粒子の連続気泡率は、高いと、型内発泡成形時に二次発泡粒子が殆ど発泡せず、二次発泡粒子同士の融着性が低くなって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるので、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましい。なお、二次発泡粒子の連続気泡率の調整は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率の調整及び二次発泡条件を調整することによって行われる。二次発泡粒子の連続気泡率は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率の測定方法と同様の要領で測定することができる。
【0130】
上記二次発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線においても、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子と同様の理由で、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有していることが好ましく、又、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)が1〜20J/gであることが好ましく、5〜15J/gがより好ましい。
【0131】
そして、二次発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子と同様の理由で、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有していることが好ましく、又、120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が25J/g以上であることが好ましく、25〜60J/gがより好ましく、25〜55J/gが特に好ましく、25〜50J/gが最も好ましい。
【0132】
なお、二次発泡粒子を金型内に充填し成形する場合にも、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる場合と同様の条件及び同様の要領にて、二次発泡粒子に不活性ガスを含浸して二次発泡粒子の発泡性を向上させることが好ましい。
【0133】
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子の双方に不活性ガスを含浸させる場合、不活性ガスは同一であっても相違してもよいが、同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0134】
本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びこの型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を所定条件下にて二次発泡させて得られた二次発泡粒子は、上述の如く、熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有し且つ40〜120℃における吸熱量(ΔHe)が1〜20J/gであると共に、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有し且つ120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が25J/g以上であるので、結晶化度が低く、熱融着性及び発泡性に優れ、型内発泡成形によって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子又は二次発泡粒子同士が互いに強固に融着一体化し、外観、機械的強度及び寸法安定性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0135】
そして、本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子は、型内発泡成形時に加えられる熱によって結晶化度が大きく進行するので、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた耐熱性を有している。
【0136】
更に、ポリ乳酸系樹脂として、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂か、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を用いているので、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、その結晶性が高くて耐熱性に優れている。
【0137】
従って、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次粒子は、型内発泡成形において、優れた発泡性及び熱融着性を発揮し、得られるポリ乳酸系樹脂成形体は、外観性、耐熱性及び機械的強度に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】ポリ乳酸系樹脂発泡粒子のDSC曲線の一例を示したグラフである。
【図2】ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造装置の一例を示した模式断面図である。
【図3】マルチノズル金型を正面から見た模式図である。
【図4】ポリ乳酸系樹脂発泡成形体のDSC曲線の一例を示したグラフである。
【図5】ポリ乳酸系樹脂発泡成形体のDSC曲線の一例を示したグラフである。
【符号の説明】
【0139】
1 ノズル金型
2 回転軸
3 駆動部材
4 冷却部材
41 冷却ドラム
42 冷却液
5 回転刃
【発明を実施するための最良の形態】
【0140】
本発明においてポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子の嵩密度、並びに、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率、見掛け密度、耐熱性及び外観は下記の要領によって測定されたものをいう。
【0141】
(ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子の嵩密度)
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子の嵩密度を測定した。
【0142】
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子又は二次発泡粒子の嵩密度(g/cm3
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕
/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
【0143】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率)
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を折り曲げて所定箇所から切断する。そして、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の切断面に露出している発泡粒子の全粒子数N1を目視により数えると共に、材料破壊した発泡粒子、即ち、分割された発泡粒子の粒子数N2を目視により数え、下記式に基づいて融着率を算出することができる。そして、下記基準に基づいて評価することができる。
融着率(%)=100×材料破壊した発泡粒子の粒子数N2/発泡粒子の全粒子数N1
◎・・・融着率が50%以上であった。
○・・・融着率が20%以上で且つ50%未満であった。
△・・・融着率が0%を超え且つ20%未満であった。
×・・・融着率が0%であった。
【0144】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の見掛け密度)
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の見掛け密度は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法で測定されたものをいう。
【0145】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性)
得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を120℃に維持された電気オーブン内に22時間に亘って放置した。そして、電気オーブン内に放置する前後のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の寸法を測定し、下記式に基づいて寸法変化率を算出し耐熱性として下記基準に基づいて評価した。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の寸法は、縦方向、横方向及び高さ方向の寸法の相加平均値とした。
寸法変化率(%)=100×(加熱後の寸法−加熱前の寸法)/加熱前の寸法
◎・・・寸法変化率が0%以上で且つ3%未満であった。
○・・・寸法変化率が3%以上で且つ5%未満であった。
△・・・寸法変化率が5%以上で且つ7%未満であった。
×・・・寸法変化率が7%以上であった。
【0146】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観)
得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観を目視観察して下記の基準に基づいて評価した。
○・・・発泡成形体の表面に斑模様(ムラ)が見られない。
×・・・発泡成形体の表面に斑模様(ムラ)が見られた。
【0147】
なお、表面に気泡断面を有するポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面において、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡断面部分に相当する部分は、光沢が低く黒っぽく見える一方、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の表皮層に相当する部分は光沢があり白っぽく見える。従って、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面は、白っぽく見える部分と、黒っぽく見える部分とによって白黒の斑模様を呈し、外観が低下する。一方、表面に気泡断面を有しないポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面は、全体的に光沢があり白っぽく見え、外観に優れている。
【0148】
(実施例1)
図1及び図2に示した製造装置を用いて型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造した。先ず、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC HV−6250H」、融点(mp):169.1℃、D体比率:1.2モル%、L体比率:98.8モル%)100重量部及び気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子社製 商品名「フルオンL169J」)0.1重量部を口径が65mmの単軸押出機に供給して溶融混練した。なお、単軸押出機内において、ポリ乳酸系樹脂を始めは190℃にて溶融混練した後に220℃まで昇温させながら溶融混練した。
【0149】
続いて、単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリ乳酸系樹脂100重量部に対して1.0重量部となるように溶融状態のポリ乳酸系樹脂に圧入して、ポリ乳酸系樹脂中に均一に分散させた。
【0150】
しかる後、押出機の先端部において、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を200℃に冷却した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型1の各ノズルから剪断速度7639sec-1でポリ乳酸系樹脂を押出発泡させた。なお、マルチノズル金型1の温度は200℃に維持されていた。
【0151】
なお、マルチノズル金型1は、出口部11の直径が1.0mmのノズルを10個有しており、ノズルの出口部11は全て、マルチノズル金型1の前端面1aに想定した、直径が139.5mmの仮想円A上に等間隔毎に配設されていた。
【0152】
そして、回転軸2の後端部外周面には、四枚の回転刃5が回転軸2の周方向に等間隔毎に一体的に設けられており、各回転刃5はマルチノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で仮想円A上を移動するように構成されていた。
【0153】
更に、冷却部材4は、正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設され且つ内径が315mmの円筒状の周壁部41bとからなる冷却ドラム41を備えていた。そして、供給管41d及びドラム41の供給口41cを通じて冷却ドラム41内に冷却水42が供給されており、周壁部41bの内面全面には、この内面に沿って20℃の冷却水42が前方に向かって螺旋状に流れていた。
【0154】
そして、マルチノズル金型1の前端面1aに配設した回転刃5を4800rpmの回転数で回転させてあり、マルチノズル金型1の各ノズルの出口部11から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃5によって切断して略球状のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造した。ポリ乳酸系樹脂押出物は、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。そして、ポリ乳酸系樹脂押出物は、ノズルの出口部11の開口端において切断されており、ポリ乳酸系樹脂押出物の切断は未発泡部において行われていた。
【0155】
なお、上述のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造にあたっては、先ず、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付けず且つ冷却部材4をマルチノズル金型1から退避させておいた。この状態で、単軸押出機からポリ乳酸系樹脂押出物を押出発泡させ、ポリ乳酸系樹脂押出物が、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなることを確認した。次に、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付け且つ冷却部材4を所定位置に配設した後、回転軸2を回転させ、ポリ乳酸系樹脂押出物をノズルの出口部11の開口端において回転刃5で切断してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造した。
【0156】
このポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、回転刃5による切断応力によって外方或いは前方に向かって飛ばされ、冷却部材4の冷却ドラム41の内面に沿って流れている冷却水42に衝突して直ちに20秒間に亘って冷却された。
【0157】
冷却されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、冷却ドラム41の排出口41eを通じて冷却水42と共に排出された後、脱水機にて冷却水42と分離された。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、その粒径が2.2〜2.6mmであり、表1に示した嵩密度及び連続気泡率を有していた。
【0158】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子について熱流束示差走査熱量測定を行ってDSC曲線を得た。このDSC曲線は、図1に示したように、40〜120℃にて、吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有していると共に、120〜200℃にて、発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有していた。
【0159】
上記DSC曲線に基づいて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)及び120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出し、その結果を表1に示した。
【0160】
次に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に二酸化炭素を密閉容器内のゲージ圧力が表1となるように圧入して表1に示した容器内雰囲気温度とした上で表1に示した時間だけ放置してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に二酸化炭素を含浸させた。
【0161】
続いて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子をアルミニウム製の金型のキャビティ内に充填した。なお、金型のキャビティの内寸は、縦30mm×横300mm×高さ300mmの直方体形状であった。又、金型に、この金型のキャビティ内と金型外部とを連通させるために、直径が8mmの円形状の供給口を20mm間隔毎に合計252個、形成した。なお、各供給口には、開口幅が1mmの格子部を設けてあり、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子がこの供給口を通じて金型外に流出しないように形成されている一方、金型の供給口を通じて金型外からキャビティ内に水を円滑に供給することができるように構成されていた。
【0162】
そして、加熱水槽内に90℃に維持された水を溜め、この加熱水槽内の水中にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した金型を完全に180秒間に亘って浸漬して、金型の供給口を通じて金型のキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子に水を供給し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱、発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士を熱融着一体化させた。
【0163】
次に、加熱水槽内から金型を取り出した。そして、別の冷却水槽に20℃に維持された水を溜め、この冷却水槽内に金型を完全に5分間に亘って浸漬して、金型内のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却した。
【0164】
金型を冷却水槽から取り出して金型を開放して直方体形状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子発泡成形体は、非常に優れた外観を有していた。
【0165】
(実施例2〜4)
実施例1と同様の要領で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に二酸化炭素を密閉容器内のゲージ圧力が表1となるように圧入して表1に示した容器内雰囲気温度とした上で表1に示した時間だけ放置してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に二酸化炭素を含浸させた。
【0166】
二酸化炭素を含浸させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を温風発生装置に供給して、二酸化炭素を含浸させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を表1に示した温度にて表1に示した時間だけ二次発泡させて二次発泡粒子を製造した。
【0167】
二次発泡粒子をポリ乳酸系樹脂発泡粒子の代わりに金型に充填して表2に示した時間だけ金型を水中に浸漬したこと以外は実施例1と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子発泡成形体は、非常に優れた外観を有していた。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び二次発泡粒子の嵩密度及び連続気泡率を表1に示した。
【0168】
得られた二次発泡粒子について熱流束示差走査熱量測定を行ってDSC曲線を得た。このDSC曲線は、図1に示したように、40〜120℃にて、吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有していると共に、120〜200℃にて、発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有していた。
【0169】
上記DSC曲線に基づいて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)及び120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出し、その結果を表1に示した。
【0170】
(比較例1)
結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC HV−6250H」、融点:169.1℃、D体比率:1.2重量%、L体比率:98.8重量%)100重量部及び気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子社製 商品名「フルオンL169J」)0.1重量部を口径が65mmの単軸押出機に供給して200℃にて溶融混練した。
【0171】
しかる後、単軸押出機の先端に取り付けたマルチノズル金型の各ノズルからストランド状に押出し、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出体を直ちに25℃の水面上に浮かせて冷却した。なお、マルチノズル金型は、出口部の直径が1.0mmのノズルが15個、配設されており、ランド部の長さは7mmであった。
【0172】
そして、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出体を充分に水切りした後、このポリ乳酸系樹脂押出体をファンカッタ式のペレタイザーを用いて2.3mm毎に円柱状に切断してポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
【0173】
得られたポリ乳酸系樹脂粒子を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に二酸化炭素を密閉容器内のゲージ圧力が3MPaとなるように圧入して容器内雰囲気温度を15℃とした上で1.5時間だけ放置してポリ乳酸系樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させた後、密閉容器内を大気圧とした上で発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
【0174】
得られた発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を圧力調整弁が設けられた密閉容器内に充填した後、70℃の水蒸気を密閉容器内に5秒間に亘って供給して発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を予備発泡させてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得た。なお、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度及び連続気泡率を便宜上、表1のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の欄に示した。
【0175】
得られたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子について熱流束示差走査熱量測定を行ってDSC曲線を得た。このDSC曲線は、40〜200℃にて二つの吸熱ピークのみを有していた。
【0176】
上記DSC曲線に基づいて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)及び120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出し、その結果を便宜上、表1のポリ乳酸系樹脂発泡粒子のΔHe及びΔHmの欄に示した。
【0177】
このポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子をポリ乳酸系樹脂発泡粒子の代わりに用いて表2に示す時間だけ金型を水中に浸漬したこと以外は実施例1と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造しようとしたが、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子が発泡せず、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造することができなかった。
【0178】
(比較例2)
ポリ乳酸系樹脂として、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC HV−6250H」、融点(mp):169.1℃、D体比率:1.2モル%、L体比率:98.8モル%)50重量部、及び、非結晶性のポリ乳酸系樹脂(三井化学社製 商品名「レイシアH−280」)50重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、その粒径が2.2〜2.6mmであり、表1に示した嵩密度及び連続気泡率を有していた。
【0179】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子について熱流束示差走査熱量測定を行ってDSC曲線を得た。このDSC曲線は、図1に示したように、40〜120℃にて、吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有していると共に、120〜200℃にて、発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有していた。
【0180】
上記DSC曲線に基づいて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)及び120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出し、その結果を表1に示した。
【0181】
上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に二酸化炭素を密閉容器内のゲージ圧力が表1となるように圧入して表1に示した容器内雰囲気温度とした上で表1に示した時間だけ放置してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に二酸化炭素を含浸させ、この二酸化炭素を含浸させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を温風発生装置に供給して、二酸化炭素を含浸させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を表1に示した温度にて表1に示した時間だけ二次発泡させて二次発泡粒子を製造した。なお、二次発泡粒子の嵩密度及び連続気泡率を表1に示した。
【0182】
得られた二次発泡粒子について熱流束示差走査熱量測定を行ってDSC曲線を得た。このDSC曲線は、図1に示したように、40〜120℃にて、吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有していると共に、120〜200℃にて、発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有していた。
【0183】
上記DSC曲線に基づいて、40〜120℃における吸熱量(ΔHe)及び120〜200℃における吸熱量(ΔHm)を算出し、その結果を表1に示した。
【0184】
この二次発泡粒子をポリ乳酸系樹脂発泡粒子の代わりに金型に充填して金型を表2に示した時間だけ水中に浸漬したこと以外は実施例1と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。
【0185】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体について熱流束示差走査熱量測定を行い、得られたDSC曲線に基づいて、40〜120℃での吸熱量(ΔHe)、120〜200℃での吸熱量(ΔHm)、40〜120℃での発熱量L、及び、120〜200℃での発熱量Hを算出した。
【0186】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率、見掛け密度、耐熱性及び外観を上述の要領で測定し、その結果を表2に示した。
【0187】
【表1】

【0188】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明の製造方法によって製造されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形において、優れた発泡性及び熱融着性を発揮する。従って、得られるポリ乳酸系樹脂成形体は、外観性、耐熱性及び機械的強度に優れており、建材、自動車内装材などの用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して押出発泡させたポリ乳酸系樹脂押出物を粒子状に切断して得られた型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、この型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有し且つ40〜120℃における吸熱量(ΔHe)が1〜20J/gであると共に、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有し且つ120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が25J/g以上であることを特徴とする型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
押出機の前端に取り付けたノズル金型からポリ乳酸系樹脂押出物を押出し、このポリ乳酸系樹脂押出物を発泡させながら回転刃によって切断して製造された粒子であることを特徴とする請求項1に記載の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
嵩密度が0.02〜0.6g/cm3で且つ連続気泡率が20%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に不活性ガスを−40〜25℃で且つ0.2〜1.6MPaの圧力下にて含浸させた後に二次発泡させて得られた二次発泡粒子であって、二次発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、40〜120℃にて吸熱ピーク曲線とこの吸熱ピーク曲線に連続する発熱ピーク曲線とを有し且つ40〜120℃における吸熱量(ΔHe)が1〜20J/gであると共に、120〜200℃にて発熱ピーク曲線とこの発熱ピーク曲線に連続する吸熱ピーク曲線とを有し且つ120〜200℃における吸熱量(ΔHm)が25J/g以上であることを特徴とする二次発泡粒子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子又は請求項4に記載の二次発泡粒子を金型内に充填して上記発泡粒子を加熱することによって発泡させて得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体であって、このポリ乳酸系樹脂発泡成形体の熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線において、120〜200℃での吸熱量(ΔHm)が25J/g以上で且つ40〜200℃での各ピークにおける発熱量及び40〜120℃での吸熱量(ΔHe)がそれぞれ0〜7J/gであることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
【請求項6】
金型内の発泡粒子を60〜100℃の水で加熱することによって発泡させたことを特徴とする請求項5に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−111615(P2011−111615A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272481(P2009−272481)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】