説明

型内被覆方法

【課題】 特殊な設備、金型を用いなくても被覆材と樹脂成形品の密着性を高めることができる型内被覆方法を提供する。
【解決手段】 金型1,2内に被覆材4を注入し、樹脂成形品6の表面6aを被覆する型内被覆方法であって、所定量の被覆材4をキャビティ7内に注入する定量注入工程と、この定量注入工程において得られたキャビティ7内の圧力が所定値P以上に維持されるよう被覆材4をキャビティ7内に注入する保圧注入工程を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形と平行して金型内に被覆材を注入し、樹脂成形品の表面を被覆材でコーティングする型内被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の型内被覆方法としては、樹脂成形品の表面に被覆材を被覆するために、樹脂成形品の表面が被覆材に対し、その注入・流動圧力に耐え得る適正硬化または固化の時点で、成形型をそのままの状態に保持しながら、成形型内表面と樹脂成形品との境界に、所要の注入速度パターンで多段の可変速度により被覆材を注入して樹脂成形品の表面を被覆する工程と、被覆材を硬化させる工程とを有する型内被覆方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−328504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、樹脂成形品の硬化が被覆材注入の条件になっているため、樹脂の硬化時間を必要とし、樹脂の硬化後に被覆材を注入するためサイクルタイムが長くなってしまうという問題がある。また、被覆材を定量供給するため、樹脂の収縮にバラツキが発生した場合には対応することができない点や十分な密着性を得ることができない点などから成形不良が発生する虞があるという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特殊な設備、金型を用いなくても被覆材と樹脂成形品の密着性を高めることができる型内被覆方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、金型内に被覆材を注入し、樹脂成形品の表面を被覆する型内被覆方法であって、被覆材を金型内に注入する注入工程と、この注入工程において得られた金型内の圧力が所定値以上に維持されるよう被覆材を金型内に注入する保圧注入工程を備えたものである。
【0007】
請求項1記載の型内被覆方法において、前記注入工程は所定量の被覆材を金型内に注入する定量注入工程としてもよいし、または金型内の圧力が設定圧になるまで被覆材を金型内に注入する定圧注入工程としてもよい。
【0008】
請求項4に係る発明は、金型内に被覆材を注入し、樹脂成形品の表面を被覆する型内被覆方法であって、被覆材を金型内に注入する注入工程と、この注入工程において得られた被覆材供給装置の注入圧力が所定値以上に維持されるよう被覆材を金型内に注入する保圧注入工程を備えたものである。
【0009】
請求項4記載の型内被覆方法において、前記注入工程は所定量の被覆材を金型内に注入する定量注入工程としてもよいし、または被覆材供給装置の注入圧力が設定圧になるまで被覆材を金型内に注入する定圧注入工程としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特殊な設備、金型を用いなくても被覆材と樹脂成形品の密着性を高めることができる。また、樹脂の収縮と被覆材自体の収縮に対応することができ、ヒケなどの不具合がなくなり品質が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る型内被覆方法を実施する装置の構成図
【図2】被覆材供給装置の構成図
【図3】溶融樹脂射出工程の説明図
【図4】第1実施の形態の説明図で、(a)は定量注入工程、(b)は保圧注入工程、(c)は金型内の圧力波形
【図5】樹脂成形品の表面に被覆材がコーティングされた状態の説明図
【図6】第2実施の形態の説明図で、(a)は定圧注入工程、(b)は保圧注入工程、(c)は金型内の圧力波形
【図7】第3実施の形態の説明図で、(a)は定量注入工程、(b)は保圧注入工程、(c)は被覆材供給装置側の圧力波形
【図8】第4実施の形態の説明図で、(a)は定圧注入工程、(b)は保圧注入工程、(c)は被覆材供給装置側の圧力波形
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る型内被覆方法を実施する装置は、図1に示すように、固定金型1、可動金型2、スプルー3、被覆材4を金型1,2内に注入する被覆材供給装置5などを備えてなる。固定金型1と可動金型2により、樹脂成形品6を成形するためのキャビティ7が形成される。また、固定金型1にはキャビティ7内の圧力を検出する圧力センサ8が設置されている。9はスプルー3に溶融樹脂10を供給する射出成形機のノズルである。
【0013】
被覆材供給装置5は、図2に示すように、被覆材タンク11、ポンプ12、注入ガン13、コントローラ14などを備えて構成されている。被覆材供給装置5は、被覆材タンク11に貯留してある被覆材4を所望の圧力で所望の量だけキャビティ7に供給することができる。また、被覆材供給装置5は、圧力センサ8の検出信号をフィードバックして、キャビティ7内の圧力が所望値になるまで、または所望の範囲内になるよう被覆材4をキャビティ7に供給することもできる。
【0014】
以上のように構成される装置が実施する本発明に係る型内被覆方法の第1実施の形態は、図3に示すように、固定金型1と可動金型2によりキャビティ7を形成し、このキャビティ7に射出成形機のノズル9から供給される溶融樹脂10を、スプルー3を介して射出し、樹脂成形品6を成形する(溶融樹脂射出工程)。
【0015】
次いで、溶融樹脂射出工程で樹脂成形品6にスキン層が形成された段階で、図4(a)に示すように、樹脂成形品6と固定金型1により形成される隙間16に、被覆材供給装置5がポンプ12を駆動して注入ガン13から所定量の被覆材4を注入する(定量注入工程)。
【0016】
次いで、図4(b)に示すように、被覆材供給装置5が定量注入工程におけるキャビティ7内の最大圧力Pと目標値とを設定すると共に、キャビティ7内の圧力が所定値P以上に維持されるようポンプ12を駆動して注入ガン13から被覆材4をキャビティ7に注入する(保圧注入工程)。
【0017】
キャビティ7内の圧力は、図4(c)に示すように、定量注入工程及び保圧注入工程において被覆材供給装置5により制御される。保圧注入工程では、キャビティ7内の圧力が、目標値になるように制御される(矢印A)か、または目標値と所定値Pの間になるように制御される(矢印B)。なお、所定値Pは、0.05MPa≦Pを満たすのが好ましい。すると、図5に示すように、樹脂成形品6の表面(意匠面)6aに被覆材4がコーティングされる。
【0018】
また、本発明に係る型内被覆方法の第2実施の形態は、図3に示す第1実施の形態と同様に、固定金型1と可動金型2によりキャビティ7を形成し、このキャビティ7に射出成形機のノズル9から供給される溶融樹脂10を、スプルー3を介して射出し、樹脂成形品6を成形する(溶融樹脂射出工程)。
【0019】
次いで、溶融樹脂射出工程で樹脂成形品6にスキン層が形成された段階で、図6(a)に示すように、樹脂成形品6と固定金型1により形成される隙間16に、被覆材供給装置5がポンプ12を駆動して注入ガン13からキャビティ7内の圧力が設定圧になるまで被覆材4をキャビティ7に注入する(定圧注入工程)。
【0020】
次いで、図6(b)に示すように、被覆材供給装置5が定圧注入工程における設定圧Pと目標値とを設定すると共に、キャビティ7内の圧力が所定値P以上に維持されるようポンプ12を駆動して注入ガン13から被覆材4をキャビティ7に注入する(保圧注入工程)。
【0021】
キャビティ7内の圧力は、図6(c)に示すように、定圧注入工程及び保圧注入工程において被覆材供給装置5により制御される。保圧注入工程では、キャビティ7内の圧力が、目標値になるように制御される(矢印A)か、または目標値と所定値Pの間になるように制御される(矢印B)。なお、所定値Pは、0.05MPa≦Pを満たすのが好ましい。すると、図5に示すように、樹脂成形品6の表面(意匠面)6aに被覆材4がコーティングされる。
【0022】
また、図1及び図2に示す上述の第1及び第2実施の形態では、キャビティ7内の圧力を検出して被覆材供給装置5のコントローラ14にフィードバックしているが、被覆材供給装置5側の圧力、例えば注入ガン13の入力側の被覆材4の圧力を検出してコントローラ14にフィードバックすることもできる。
【0023】
本発明に係る型内被覆方法の第3実施の形態は、図3に示す第1実施の形態と同様に、固定金型1と可動金型2によりキャビティ7を形成し、このキャビティ7に射出成形機のノズル9から供給される溶融樹脂10を、スプルー3を介して射出し、樹脂成形品6を成形する(溶融樹脂射出工程)。
【0024】
次いで、溶融樹脂射出工程で樹脂成形品6にスキン層が形成された段階で、図7(a)に示すように、樹脂成形品6と固定金型1により形成される隙間16に、被覆材供給装置5がポンプ12を駆動して注入ガン13から所定量の被覆材4を注入する(定量注入工程)。
【0025】
次いで、図7(b)に示すように、被覆材供給装置5が定量注入工程における注入ガン13の入力側の最大圧力Pと目標値とを設定すると共に、注入ガン13の入力側の圧力が所定値P以上に維持されるようポンプ12を駆動して注入ガン13から被覆材4をキャビティ7に注入する(保圧注入工程)。
【0026】
注入ガン13の入力側の圧力は、図7(c)に示すように、定量注入工程及び保圧注入工程において被覆材供給装置5により制御される。保圧注入工程では、注入ガン13の入力側の圧力が、目標値になるように制御される(矢印A)か、または目標値と所定値Pの間になるように制御される(矢印B)。なお、所定値Pは、0.05MPa≦Pを満たすのが好ましい。すると、図5に示すように、樹脂成形品6の表面(意匠面)6aに被覆材4がコーティングされる。
【0027】
また、本発明に係る型内被覆方法の第4実施の形態は、図3に示す第1実施の形態と同様に、固定金型1と可動金型2によりキャビティ7を形成し、このキャビティ7に射出成形機のノズル9から供給される溶融樹脂10を、スプルー3を介して射出し、樹脂成形品6を成形する(溶融樹脂射出工程)。
【0028】
次いで、溶融樹脂射出工程で樹脂成形品6にスキン層が形成された段階で、図8(a)に示すように、樹脂成形品6と固定金型1により形成される隙間16に、被覆材供給装置5がポンプ12を駆動して注入ガン13から注入ガン13の入力側の圧力が設定圧になるまで被覆材4をキャビティ7に注入する(定圧注入工程)。
【0029】
次いで、図8(b)に示すように、被覆材供給装置5が定圧注入工程の設定圧Pと目標値とを設定すると共に、注入ガン13の入力側の圧力が所定値P以上に維持されるようポンプ12を駆動して注入ガン13から被覆材4をキャビティ7に注入する(保圧注入工程)。
【0030】
注入ガン13の入力側の圧力は、図8(c)に示すように、定圧注入工程及び保圧注入工程において被覆材供給装置5により制御される。保圧注入工程では、注入ガン13の入力側の圧力が、目標値になるように制御される(矢印A)は、または目標値と所定値Pの間になるように制御される(矢印B)。なお、所定値Pは、0.05MPa≦Pを満たすのが好ましい。すると、図5に示すように、樹脂成形品6の表面(意匠面)6aに被覆材4がコーティングされる。
【0031】
ここで、被覆材4を注入する際の圧力検出の対象としては、上述のように金型内(キャビティ7内)または被覆材供給装置5側のどちらでもよいが、望ましいのは金型内(キャビティ7内)の方である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、特殊な設備、金型を用いなくても被覆材と樹脂成形品の密着性を高めることができ、且つヒケなどの不具合がなくなり品質が大幅に向上する型内被覆方法が提供され、利用拡大が期待される。
【符号の説明】
【0033】
1…固定金型、2…可動金型、3…スプルー、4…被覆材、5…被覆材供給装置、6…樹脂成形品、7…キャビティ、8…圧力センサ、9…ノズル、10…溶融樹脂、11…被覆材タンク、12…ポンプ、13…注入ガン、14…コントローラ、16…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に被覆材を注入し、樹脂成形品の表面を被覆する型内被覆方法であって、被覆材を金型内に注入する注入工程と、この注入工程において得られた金型内の圧力が所定値以上に維持されるよう被覆材を金型内に注入する保圧注入工程を備えたことを特徴とする型内被覆方法。
【請求項2】
請求項1記載の型内被覆方法において、前記注入工程が所定量の被覆材を金型内に注入する定量注入工程であることを特徴とする型内被覆方法。
【請求項3】
請求項1記載の型内被覆方法において、前記注入工程が金型内の圧力が設定圧になるまで被覆材を金型内に注入する定圧注入工程であることを特徴とする型内被覆方法。
【請求項4】
金型内に被覆材を注入し、樹脂成形品の表面を被覆する型内被覆方法であって、被覆材を金型内に注入する注入工程と、この注入工程において得られた被覆材供給装置の注入圧力が所定値以上に維持されるよう被覆材を金型内に注入する保圧注入工程を備えたことを特徴とする型内被覆方法。
【請求項5】
請求項4記載の型内被覆方法において、前記注入工程が所定量の被覆材を金型内に注入する定量注入工程であることを特徴とする型内被覆方法。
【請求項6】
請求項4記載の型内被覆方法において、前記注入工程が被覆材供給装置の注入圧力が設定圧になるまで被覆材を金型内に注入する定圧注入工程であることを特徴とする型内被覆方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−228355(P2010−228355A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79921(P2009−79921)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】