説明

型内被覆組成物及び型内被覆成形体

【課題】熱硬化性成形樹脂や熱可塑性成形樹脂に対して、優れた付着性を有する型内被覆組成物及び導電性被膜が効果的に金型内で被覆された型内被覆成形体を提供すること。
【解決手段】(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)成分と共重合可能なモノマーと
(C)導電性金属酸化物粒子を無機粒子表面に被覆した導電性粒子と
(D)有機過酸化物重合開始剤と
を含有してなり、かつ、
(A)成分と(B)成分との質量割合(A)/(B)=20/80〜80/20、
(C)成分の質量割合(C)/{(A)+(B)}=5/100〜50/100、
(D)成分の質量割合(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100
である型内被覆組成物及び該組成物を用いた型内被覆成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型内被覆組成物及び型内被覆成形体に関する。更に詳しくは、熱可塑性プラスチック成形材料又は熱硬化性プラスチック成形材料を射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法あるいは反応射出成形法により、金型内で成形し、得られた成形体の表面と金型キャビティ面との間に型内被覆組成物を注入し、この型内被覆組成物を前記金型内で硬化させて、プラスチック成形体の表面に型内被覆組成物が密着した一体成形体を製造する、いわゆる金型内被覆成形法(IMC法あるいはインモールドコーティング法とも呼ばれる)により得られる、型内被覆成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建設機械、建材等に使用されるプラスチックス成形体の表面の傷つき性を向上させたり、あるいは耐候性を高めて製品の長寿命化を図ることを目的として、成形体の表面に塗装を施すことは従来から広く利用されている。この際、上塗り塗装時に塗着効率の向上や揮発性有機化合物(VOC)の大気への排出削減のため、静電塗装が一般的となってきた。しかしプラスチック成形体の体積固有抵抗値は通常1010Ω/cm以上であるために、このものに静電塗装法を用いても塗料を均一に塗装することは困難である。したがって、これらの成形体に静電塗装を行うにあたり、導電性を有する塗膜を形成することを目的として、導電性プライマー塗料がスプレー塗装されている。しかし、近年環境問題に強い関心が寄せられるなか、塗装工場からの揮発性有機物、いわゆるVOCの大気への放出が厳しく制限される傾向が強まってきていることから従来の導電性プライマーに代わる技術の開発が急務となっている。
【0003】
このような状況において、金型内で成形したプラスチック成形体の表面と金型のキャビティ面との間に塗料を注入した後、塗料を金型内で硬化させてプラスチック成形体表面に塗膜が密着した一体成形体を製造する金型内被覆成形方法が注目されている。
【0004】
金型内被覆成形方法は金型内で塗膜を形成するため、被覆組成物は無溶剤であり、金型内で100%塗膜となるため、VOCの大気への放出がなく、廃棄物も少なく、環境に対する負荷が少ない工法である。また、塗膜の形成も金型の熱及び熱可塑性樹脂が持っている樹脂可塑化の熱、熱硬化性樹脂が持っている反応熱によってラジカル反応で硬化するため、一般的な乾燥炉の熱や紫外線照射による反応に比べて塗膜形成のエネルギー消費も少なく、優れた塗装方法と言える。
【0005】
金型内被覆成形用に用いられる塗料は、金型内で塗膜を形成させるため、無溶剤で且つ短時間で硬化することが要求されるため、一般の塗料に比べ開発が難しく、金型内被覆成形方法に用いられる導電塗料として既に開発されているものとしては、導電材としてカーボンブラックが使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
しかし、近年、意匠性や色調が重視されるに伴い、上塗り塗料の塗色として、特に淡彩色メタリック塗料や淡彩色パール塗料には、導電性淡彩色を有する金型内被覆成形用塗料が求められている。このような目的としては、導電材としてグラファイトが主に使用されており、淡彩色にするため着色顔料としての二酸化チタンを含有している。硬化塗膜は灰色を呈すが、上塗りに隠蔽力が小さく、明度の高い白色系塗料を塗装する場合は、白色度、明度ともに不十分であった(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
一方、白色導電性塗料は、有機溶剤を含む塗料が一般的である(例えば、特許文献4〜8参照)。しかしこれらは前記したように、塗装時にVOCを多量に大気中に放出し、近年の環境対応の点から無溶剤型塗料の開発が望まれている。
【特許文献1】特開昭60−212467号公報
【特許文献2】特開平04−226116号公報
【特許文献3】特開平06−320681号公報
【特許文献4】特開2004−75735号公報
【特許文献5】特開2004−217872号公報
【特許文献6】特開2004−262988号公報
【特許文献7】特開2005−171024号公報
【特許文献8】特開2006−232884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、SMC(シートモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、あるいはジシクロペンタジエンを主成分とする熱硬化性成形樹脂やABS樹脂、ポリアミド樹脂、PPE樹脂、PC/PET、PC/PBT、PC/ABSアロイ等の熱可塑性成形樹脂に対して、優れた付着性を有する型内被覆組成物及び、白色の導電性被膜が効果的に金型内で被覆された型内被覆成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の構成により、上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0010】
即ち、本発明に従って、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)成分と共重合可能なモノマーと
(C)導電性金属酸化物粒子を無機粒子表面に被覆した導電性粒子と
(D)有機過酸化物重合開始剤と
を含有してなり、かつ、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、
前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=5/100〜50/100であり、
前記(D)成分の質量割合が、(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100であることを特徴とする型内被覆組成物が提供される。
【0011】
また、本発明に従って、成形法として、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型を型締めする工程と、
金型キャビティ内で樹脂を成形する工程と、
キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した型内被覆組成物を硬化させる工程と、
型内被覆組成物が硬化した後に被覆された成形体を金型から取り出す工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱硬化性成形樹脂又は熱可塑性成形樹脂の成形体表面に、金型内で型内被覆組成物を硬化させて、淡彩色導電性被膜を有し、付着性に優れた被膜を有した型内被覆成形体を提供することができ、その後の上塗り静電塗装により明度に優れた上塗り塗膜の発色を可能とする。また、金型内被覆成形法により金型表面を忠実に転写することが可能となり、通常塗装では解決できない成形樹脂の収縮に伴うリブやボス部に生じるヒケや、ウエルドラインを効果的に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の型内被覆成形体について、具体的に説明する。
【0014】
本発明に係わる型内被覆成形体は、熱硬化性成形樹脂又は熱可塑性成形樹脂からなる成形体と、その表面に形成された型内被覆組成物の被膜からなっている。
【0015】
前記熱硬化性成形樹脂としては、従来より公知の成形材料が使用でき、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂をマトリックスとするSMC、BMCと呼ばれる繊維強化プラスチック成形材料、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシ樹脂をマトリックスとするRTM成形材料、ジシクロペンタジエン、ウレタン等を用いたRIM成形材料等が挙げられる。
【0016】
前記熱可塑性成形樹脂としては、従来より公知の各種成形材料を使用することができ、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ABS樹脂あるいはこれらのアロイ材が挙げられる。
【0017】
このような成形材料は、用途に応じた特性を満足するように、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維や炭酸カルシウムウィスカー等の強化材、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤等を含有することができる。
【0018】
次に、本発明で用いられる型内被覆組成物について説明する。
【0019】
本発明で用いられる型内被覆組成物は、(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)成分と共重合可能なモノマーと
(C)導電性金属酸化物粒子を無機粒子表面に被覆した導電性粒子と
(D)有機過酸化物重合開始剤とを含有してなり、
かつ、前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、
前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=5/100〜50/100であり、
前記(D)成分の質量割合が、(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100である
ことを必須成分として含有し、更に必要に応じて炭酸カルシウムやタルク等の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下である無機粒子、二酸化チタン等の着色顔料、ジアリルフタレートオリゴマー、飽和ポリエステル樹脂やポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂等の低収縮剤、離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、重合防止剤、硬化促進剤等の任意成分を含むものである。
【0020】
(a)(A)成分について
本発明で用いられる型内被覆用組成物に使用される(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0021】
(a−1)(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0022】
これらのオリゴマーの質量平均分子量は、それぞれの種類により変動し得るが、一般に、約300〜30,000、好ましくは、500〜10,000とするのが適当である。上記(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を、1分子中に、少なくとも2個〜8個、好ましくは、2個〜6個有することが適当である。
【0023】
(a−1−1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、(1)有機ジイソシアネート化合物と、(2)有機ポリオール化合物と、(3)ヒドロシキアルキル(メタ)アクリレートとを、NCO/OH比が、例えば、0.8〜1.0、好ましくは、0.9〜1.0となるような存在比で混合し、通常の方法により製造することができる。水酸基が過剰に存在する場合や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを多量に使用することにより、水酸基を多く有するオリゴマーが得られる。
【0024】
具体的には、(1)有機ジイソシアネート化合物と、(2)有機ポリオール化合物等とを例えば、ジブチル錫ラウレート等のウレタン化触媒の存在下で反応させて、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得る。次いで、ほとんど遊離イソシアネート基が反応するまで、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させることにより、上記ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを製造することが出来る。なお、(2)有機ポリオール化合物と、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの割合は、後者1モルに対し、例えば、前者0.1〜0.5モル程度が適当である。
【0025】
上記の反応に使用される(1)有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−ジイソシアナトエタン、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン等を使用することができる。これら有機ジイソシアネート化合物は、単独で用いても、また、それらの2種以上の混合物として使用することもできる。
【0026】
上記反応で使用される(2)有機ポリオール化合物は、好ましくは、有機ジオール化合物として、例えば、アルキルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等を挙げることができる。アルキルジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチルブタン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、4,8−ジヒドロキシトリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等を代表的なものとして挙げることができる。
【0027】
有機ジオール化合物としてのポリエーテルジオールは、例えば、既知の方法により、アルデヒドや、アルキレンオキサイド、グリコール等の重合により合成することができる。
【0028】
例えば、ホルムアルデヒドや、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を適当な条件下でアルキルジオールに付加重合させることによって、ポリエーテルジオールが得られる。有機ジオール化合物としてのポリエステルジオールとしては、例えば、飽和又は不飽和のジカルボン酸及び/又はそれらの酸無水物と、過剰のアルキルジオールとを反応させて得られるエステル化反応生成物、及びアルキルジオールにヒドロキシカルボン酸及び/又はその分子内エステルであるラクトン及び/又は分子間エステルであるラクチドを重合させて得られるエステル化反応生成物を用いることができる。これらの有機ポリオール化合物は単独で用いても、それらの2種以上を併用して使用することもできる。
【0029】
上記(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。その他、本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と、有機ジイソシアネート化合物とを、NCO/OHの比が、例えば、0.9〜1.0の割合で、例えば、ジブチル錫ジラウリレート等のウレタン化触媒の存在下で反応しても製造することができる。
【0030】
(a−1−2)ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと、不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。このようなポリエステルポリオールは、代表的には飽和又は不飽和のジカルボン酸又はその酸無水物と、過剰量のアルキレンジオールとをエステル化反応することによって製造することができる。使用されるジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸や、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸等が代表的なものとして挙げられる。また、使用されるアルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等が代表的なものとして挙げることができる。ここで、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸や、メタクリル酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0031】
(a−1−3)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、エポキシ化合物と、上記のような不飽和カルボン酸とを、エポキシ基1当量当たりのカルボキシル基当量を、例えば、0.5〜1.5となるような割合で用い、通常のエポキシ基への酸の開環付加反応によって製造させたものである。ここで使用されるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、フェノール性ノボラック型エポキシ等を好適に挙げることができる。
【0032】
(a−1−4)ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。
【0033】
(a−2)不飽和ポリエステル樹脂
一方、本発明において、(A)成分として使用される不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、有機ポリオール化合物と、不飽和カルボン酸とを、公知の方法により反応させ、更に必要に応じて、飽和ポリカルボン酸を反応させて製造することができる。使用される有機ポリオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ビスフェノールA等が代表的なものとして挙げることができる。また、使用される不飽和ポリカルボン酸としては、例えば、(無水)マレイン酸や、(無水)フマル酸、(無水)イタコン酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0034】
これら(A)成分としては、上記(メタ)アクリロイル基含有オリゴマーと、不飽和ポリエステル樹脂とを併用しても良い。
【0035】
(b)(B)成分について
本発明で使用される(B)成分は、上記(A)成分と共重合することができる不飽和モノマーである。
【0036】
このような不飽和モノマーとしては、例えば、スチレンや、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)クリル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等が代表的なものとして挙げられる。
【0037】
好ましくは、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−HDDA)のような脂肪族(メタ)アクリレートモノマー、並びにシクロヘキシルメタアクリレートのような脂環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)等である。
【0038】
(B)成分としては、上記不飽和モノマーを単独で使用してもよく、又は、これらの混合物として使用することができる。特に、1分子内に1個のエチレン性二重結合を有するモノマーと、2個以上のエチレン性二重結合を有するモノマーとを含むことにより、形成した被膜の硬度が上がり擦り傷がつき難くなるので好ましい。また、1分子内に1個のエチレン性二重結合を有するモノマーとして、スチレンモノマーを{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対し0.2質量部以上、5質量部以下の量を含むことによって、ポットライフが著しく伸びるので好ましい。
【0039】
上記(A)成分と上記(B)成分の質量割合は、(A)成分及び(B)成分として使用される化合物等の種類にもよるが、通常、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、更に33/67〜67/33が好ましい。この範囲であれば、硬化特性が良く堅牢な硬化塗膜が得られる、また、被覆組成物の型内での流動性が良く、気泡の混入もなく均一な被覆が得られる。
【0040】
(c)(C)成分について
本発明で使用される(C)成分は、導電性金属酸化物粒子で針状二酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカー又は雲母等の無機粒子表面を被覆した導電性粒子を挙げることができる。
【0041】
(C)成分の導電性金属酸化物粒子で被覆された無機粒子は、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、チタン酸アルカリ、雲母から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0042】
導電性金属酸化物粒子が、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウムのいずれかで被覆した、針状−酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカー又は鱗片状雲母であることが好ましい。
【0043】
前記アンチモンドープ酸化錫が、リン、アルミニウム、モリブデンの少なくとも1種を酸化物として0.1〜5質量%含有していることが好ましい。
【0044】
更には、硬化塗膜の導電性を発現させるため、前記導電性粒子(C)のアスペクト比が3〜200であることがより好ましい。
【0045】
特に(C)成分は、{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、5〜50質量部であり、より好ましくは、7〜30質量部で使用することが適当である。(C)成分の量が、5質量部以上であれば、その硬化塗膜は十分な導電性を有しており、上塗り静電塗装を効率良く行うことが可能となるので好ましい。一方、(C)成分の量が、50質量部以下であれば、粘度上昇を限度内に抑えることができ、金型内での適度の流動性を持っており好ましい。
【0046】
(d)(D)成分について
本発明で使用される(D)成分は、フリーラジカルを発生し、前記(A)成分及び(B)成分を重合させるために使用する有機過酸化物重合開始剤である。特に有機過酸化物重合開始剤として、1分間半減期温度が85℃以上95℃未満のものと、95℃以上170℃未満の有機過酸化物重合開始剤を含むことが好ましい。
【0047】
1分間半減期温度が、85℃以上95℃未満の有機過酸化物重合開始剤としては、例えば、イソブチリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられ、特にビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートが好ましい。1分間半減期温度が、95℃以上170℃未満の有機過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が代表的なものとして挙げられ、特にt−ブチルパーオキシベンゾエートやt−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが好ましい。
【0048】
(D)成分の有機過酸化物重合開始剤の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、より好ましくは、0.5〜3質量部であることが適当である。(D)成分の有機過酸化物重合開始剤の配合量が、0.1質量部未満であると(A)、(B)成分の反応がうまく進まず、硬化不良となり正常な塗膜が得られない。また、5質量部を超えると被覆組成物のポットライフが著しく短くなる。
【0049】
(e)その他成分について
本発明で使用される型内被覆組成物は、更に必要に応じ炭酸カルシウムやタルク等の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下である無機粒子の少なくとも1種を含むことができる。このようなものとして、例えば、炭酸カルシウムや、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー等を好適に挙げることができる。これら無機粒子は、被膜硬化に伴う収縮応力を分散させ、成形体との付着性を向上させたり、表面の凹凸を平滑にしたり、成形体表面の外観を改良する目的で配合する。
【0050】
本発明で使用される型内被覆組成物は、更に必要に応じ着色顔料の少なくとも1種を含むことができる。着色顔料としては、従来から通常プラスチックス用、塗料用として使用されている各種着色顔料を使用することができる。
【0051】
例えば、白色系顔料では、二酸化チタンや酸化亜鉛、黄系では、チタンイエロー等の着色顔料を使用することができる。
【0052】
これら淡彩色系着色顔料は、型内被覆用組成物の硬化塗膜を白色ないし淡彩色に着色し、隠蔽力に乏しく、明色系上塗り塗料が塗装されても、目的とする色を発現する目的で配合する。
【0053】
本発明では、硬化塗膜を金型からスムーズに離型させるために、任意に、離型剤を併用することができる。離型剤は、例えば、ステアリン酸や、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩、大豆油レシチン、シリコーン油、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール二塩基酸エステル類等を挙げることができる。これら離型剤の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、例えば、0.1〜5質量部、更には、0.2〜2質量部であることが好ましい。この範囲内においては、金型からの離型効果が好適に発揮される。
【0054】
本発明では、各種基材樹脂との付着性を向上させる目的で、改質樹脂を配合することができる。このような目的で使用される改質樹脂として、例えば、塩素化ポリオレフィン、マレイン酸変性ポリオレフィン、アクリルオリゴマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタアクリレート、アリルエステルオリゴマー等を挙げることができる。
【0055】
本発明に使用される型内被覆組成物には、更に必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤等の各種添加剤等を配合してもよい。
【0056】
<型内被覆成形体の製造方法>
以下、本発明の型内被覆成形体の製造方法について、それを実施するための成形機の構成、成形型及び被覆組成物注入装置を、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明の範囲はこのような具体的な成形機、成形型及び被覆組成物注入装置によって何ら限定されるものではない。
【0057】
図1は、例えばSMCと呼ばれるガラス繊維強化熱硬化性成形材料を用いた圧縮成形法を実施する装置を示す。その成形方法としては金型内で成形する従来の方法が特に制限無く利用できるが、好適には特公昭55−9291号公報、特開昭61−273921号公報に記載の方法を用いることができる。
【0058】
図1に示す装置において、割り型の上型1及び下型2はそれぞれ互いに対向する成形用型部材である。上型1及び下型2はそれぞれ型締め装置の可動盤3及び固定盤4に固定されており、可動盤3は型締めシリンダ5によって進退動作する構成となっている。上型1及び下型2により所要形状の割り型キャビティ6を形成できるようになっており、上型1の移動で型内成形体の型内被覆する表面方向へのキャビティの拡張が可能である。この型内被覆する表面が1面であっても、2面以上であってもよく、従って、この型内被覆する表面方向へのキャビティの拡張は1方向であっても、2方向以上であってもよい。上型1と下型2との間に上記のガラス繊維強化プラスチック成形材料を入れ、型締めシリンダ5を動作させ、上型1と下型2とを接近させて該成形材料をキャビティの形状に成形し、型締め圧を付加して硬化させる。
【0059】
また、図1に示す装置においては、型内被覆用組成物の注入手段であるシャットオフピン7Aを備えたインジェクタ7、インジェクタ7に所定量の型内被覆用組成物を供給する計量シリンダ8及び型内被覆用組成物をその貯蔵部10から計量シリンダ8に供給するための供給ポンプ9が整備されている。なお、計量シリンダ8には型内被覆用組成物注入用のプランジャーレギュレータ8Aが備えられている。
【0060】
成形に際しては、まず型締めシリンダ5を動作させて上型1を下型2から離間し、下型2の上に前記のガラス繊維強化プラスチック成形材料を乗せ、その後、型締めシリンダ5を動作させ、上型1と下型2とを接近させて該成形材料をキャビティの形状に成形し、型締め圧を付加する。この型締め圧は通常4〜15MPaである。成形温度は、成形時間、成形材料の種類等に応じて任意に決定されるが、通常120〜180℃が適当であり、成形材料を入れる前に金型を予め上記の温度にセットし、後記する硬化被膜が得られるまで該温度を維持するようにしておくのが望ましい。
【0061】
次いで、上記のキャビティ内の成形体が型内被覆用組成物の注入圧力、流動圧力に耐え得る程度に硬化した段階で、上記の型締め圧をそのまま維持しながら、又は上記の型締め圧を減圧した後、又は下記の所望の硬化被膜厚よりも大きいが、上型1と下型2との嵌合を離脱させることがない距離だけ、好ましくは0.2〜5mmだけ上型1を成形体の表面から離した後、所望の膜厚、好ましくは20〜1,000μmの硬化被膜が得られるだけの量の型内被覆用組成物をインジェクタ7から上型1の内壁と成形体の型内被覆する表面との間に注入する。
【0062】
型内被覆用組成物を注入した後、シャットオフピン7Aで注入口を閉じ、必要に応じて型締めシリンダ5を動作させ型締め操作を行い、キャビティ6内の成形体の表面上で型内被覆用組成物を硬化させる。型内被覆用組成物が成形体表面を均一に被覆するように、通常約1〜10MPaに(再)加圧し、その圧力を硬化被膜が形成されるまで、通常約10〜300秒程度保持する。このようにして成形体表面に硬化被膜が形成された後、型締めシリンダ5を動作させ、上型1及び下型2を離間して、硬化被膜を有する成形体を金型から取り出す。
【0063】
図2は熱可塑性樹脂成形材料の射出成形法の場合の態様を示すものである。図2において、符号11は射出成形機の型締め装置の固定盤、12は可動盤であり、それぞれ互いに対向する成形型部材である固定金型部13及び可動金型部14を備えている。可動盤12が型締めシリンダ15によって進退動作される構成になっている。そして、固定金型部13及び可動金型部14の嵌合個所には、所要形状のキャビティ16が形成されていて、このキャビティ16中に溶融もしくは軟化状態の熱可塑性樹脂成形材料を射出、充填し固化させるのである。溶融樹脂成形材料を射出、充填する場合、上記キャビティ16にはスクリューを有する射出シリンダ17から、ノズル18及びスプルー19を介して樹脂成形材料が射出できるようになっている。なお、図2中、符号20はリブ部(ボス部)、21は離型時のエジェクタピンである。
【0064】
また、図2において型内被覆用組成物の注入手段としては、シャットオフピン22Aを備えたインジェクタ22、上記インジェクタ22に所定量の型内被覆用組成物を供給する計量シリンダ23及び型内被覆用組成物をその貯蔵部24から上記計量シリンダ23に供給するための供給ポンプ25が装備されている。なお、上記計量シリンダ23には型内被覆用組成物注入用のプランジャーレギュレータ23Aが備えられている。
【0065】
成形に際しては、先ず型締めシリンダ15を動作して、固定金型部13と可動金型部14を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は樹脂成形材料の射出圧力に対抗できる必要がある。通常この射出圧力はノズル18の部分で40〜250MPaの高圧である。この過程で供給ポンプが動作し、計量シリンダ23に必要な量の被覆剤を供給しておく。
【0066】
次いで、溶融もしくは軟化状態の樹脂成形材料を射出シリンダ17からノズル18及びスプルー19を介してキャビティ16内に射出する。上記樹脂成形材料が金型内で、型内被覆用組成物の注入圧力、流動圧力に耐える程度に固化した段階で、上記型締め圧を減圧するか、又は下記の所望の硬化被膜厚よりも大きいが、固定金型部13と可動金型部14との嵌合を離脱させることがない距離だけ、好ましくは0.2〜5mmだけ可動金型部14を後退させる。次いで、シャットオフピン22Aを動作させてインジェクタ22の注入口を開放する。次いで、計量シリンダ23の型内被覆用組成物注入用のプランジャーレギュレータ23Aを動作させ、キャビティ16、すなわち固定金型部13の内壁と樹脂成形体の型内被覆する表面との間に所望の膜厚、好ましくは20〜1,000μmの硬化被膜が得られるだけの量の型内被覆用組成物を注入する。
【0067】
型内被覆用組成物を注入した後、再びシャットオフピン22Aで注入口を閉じ、必要に応じて型締めシリンダ15を動作させ型締め操作を行い、型内で型内被覆用組成物を押し広げ成形体表面への被覆を行い、キャビティ16の成形体の表面上で型内被覆用組成物を硬化させる。次いで、型締めシリンダ15を動作させ、固定金型部13と可動金型部14を離間して、硬化被膜を有する成形体を金型から取り出す。
【0068】
図3はウレタンやジシクロペンタジエン成形材料のRIM成形法の場合の態様を示すものである。図3において、符号26及び27はそれぞれ互いに対抗する成形用型部材である。
【0069】
成形用型部材26(固定型)及び27(可動型)はそれぞれ型締め装置の固定盤及び可動盤に固定されており、可動盤には型締めシリンダによって進退動作される構成になっている。図3では、型締め装置の固定盤、可動盤及び型閉めシリンダは省略してある。そして、両成形用型部材26及び27により、所要形状のキャビティ28が形成されていて、この中にジシクロペンタジエンを主成分とする成形材料が充填され、硬化される。ジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を充填する場合、ジシクロペンタジエン及び触媒からなるA液と、ジシクロペンタジエン及び活性化剤からなるB液を主成分とする原料は、それぞれ貯蔵タンク29及び30で温度調節された後、計量シリンダ31及び32で油圧シリンダ35及び36により、50〜200バールに昇圧され、ミキシングヘッド38中の対抗したノズルから噴出し、互いに衝突することで混合される。
【0070】
一方、図3の態様では、被覆剤の注入手段として、シャットオフピン39Aを備えたインジェクタ39、上記インジェクタ39に所定量の被覆剤を供給する被覆剤計量シリンダ40及び被覆剤をその貯蔵部41から上記計量シリンダ40に供給するための供給ポンプ42が装備されている。なお、上記計量シリンダ40には被覆剤注入用のプランジャーレギュレータ40Aが備えられている。
【0071】
成形に際しては、先ず型締めシリンダを動作して、金型(成形用型部材26及び27)を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は通常0.5〜1MPaである。次いで、ミキシングヘッド38からジシクロペンタジエンを主原料とした成形材料が、キャビティ28内に射出される。この過程で、供給ポンプ42が作動し、計量シリンダ40に必要な量の被覆剤を供給する。上記成形材料が、金型内で適正に(被覆剤の注入・流動圧力に耐える程度に)硬化した段階で、上記型締め圧をそのまま、又は低減する。次いでインジェクタ39は、そのシャットオフピン39Aを動作し、その注入口を開放する。次いで計量シリンダ40の被覆剤注入用のプランジャーレギュレータ40Aを動作し、キャビティ28即ち型部材26の内壁と成形品表面との間に被覆剤を充填させる。
【0072】
再びシャットオフピン39Aを閉じた後、必要に応じ、型締めシリンダを動作させ型締め操作を行い、型内で被覆剤を硬化させる。
【0073】
次いで、型締めシリンダを動作させ、両型部材26及び27を離間し、被覆された成形品を金型から取り出す。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明について更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0075】
<ウレタンオリゴマーの合成>
ウレタンオリゴマーは各種公知の方法で重合して作製することができる。合成例として、表1に示す量の(A)成分に、(A)〜(C)成分の合計量100質量部当たり0.02質量部となる量のジブチル錫ジラウレートを仕込み、40℃に保ちつつ、表1に示す量の(B)成分を滴下し、十分な時間反応させた後、表1に示す(C)成分に(A)〜(C)成分の合計量100質量部当たり0.1質量部となる量のハイドロキノンを溶解させたものを滴下して、更に十分な時間75℃で加熱攪拌を続け、ウレタンオリゴマーUAC−1〜UAC−3を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
<エポキシオリゴマーの合成>
エポキシ化合物(商品名:エピコート828(油化シェルエポキシ社製))1,000質量部、メタクリル酸490質量部、トリエチルアミン3質量部、ハイドロキノン0.01質量部を反応器中に入れ、125℃、3時間反応させ、エポキシオリゴマーEAC−1を得た。
【0078】
<導電性粒子(C)の作製>
導電性粒子(C)は各種公知の方法で作製することができる。
【0079】
・導電性粒子EC−1の作製
ルチル型二酸化チタン粉末(商品名:R−310、堺化学工業(株)製)(TiO97%以上、平均一次粒子径0.20μm)100gを純水0.3リットルに分散し、これにpH緩衝材としてトリクロル酢酸16g、トリクロル酢酸ナトリウム19gを加える。
【0080】
90℃に保持しながら塩化第二錫17gと塩化アンチモン(III)2.5gとを含む塩酸酸性水溶液と水酸化ナトリウム水溶液(75g/リットル)とを30分に亘って同時に添加し、酸化錫、酸化アンチモンの水酸化共沈物を被覆した。水洗、ろ過、乾燥を行った後、550℃で1時間焼成した。得られた110gの白色粉末(被覆量10質量%)は白色度83、体積抵抗率4Ω・cmであった。
【0081】
・導電性粒子EC−2の作製
鱗片状フッ素雲母粉末(商品名:MK−100、コープケミカル(株)製)(白色度95、平均粒子径2μm、アスペクト比20〜30)100gを純水0.3リットルに分散し、90℃に保持し、塩化第二錫3.5gを含む塩酸酸性水溶液を添加後、水酸化ナトリウム水溶液(75g/リットル)をpHが2〜4になるように10分間かけて徐々に滴下し、加水分解させて前記粉末上に錫水和物の被膜を形成した。
【0082】
次に前記の溶液を90℃に保持し、塩化第二錫14gと塩化アンチモン(III)5gとを含む塩酸酸性水溶液と水酸化ナトリウム水溶液(75g/リットル)とを、pHが2〜4になるように30分間に亘って同時に滴下し、錫、アンチモンの水和共沈物を、前記錫水和物の被膜を持つ粉末に被覆した。得られた粉末をろ過、水洗、乾燥した後、550℃で1時間焼成した。得られた111gの白色粉末(被覆量11質量%)で、白色度83、体積抵抗率370Ω・cmであった。
【0083】
・導電性粒子EC−3の作製
ルチル型針状二酸化チタン粉末(商品名:FTL−100、石原産業(株)製)(繊維長1.68μm、繊維径0.13μm)100gを純水0.3リットルに分散し、これにpH緩衝材としてトリクロル酢酸16g、トリクロル酢酸ナトリウム19gを加える。
【0084】
90℃に保持しながら塩化第二錫17gと塩化アンチモン(III)2.5gとを含む塩酸酸性水溶液と水酸化ナトリウム水溶液(75g/リットル)とを30分に亘って同時に添加し、酸化錫、酸化アンチモンの水酸化共沈物を被覆した。水洗、ろ過、乾燥を行った後、550℃で1時間焼成した。得られた110gの白色粉末(被覆量10質量%)は白色度88、体積抵抗率6Ω・cmであった。
【0085】
・導電性粒子EC−4の作製
ルチル型二酸化チタン粉末(商品名:R−310、堺化学工業(株)製)(TiO97%以上、平均一次粒子径0.20μm)100gを純水0.3リットルに分散し、これを90℃に保持しながら塩化第二錫34gと三塩化アンチモン5gとを含む塩酸酸性水溶液と、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.7gを含む水酸化ナトリウム水溶液(500g/リットル)50ミリリットルとを、30分間に亘って同時に滴下することにより、リンを含む酸化錫、酸化アンチモンの水酸化共沈物で被覆した。水洗、ろ過、乾燥を行った後、600℃で1時間焼成した。得られた121gの白色粉末(リン1質量%を含む被覆量20質量%)で、白色度87、体積抵抗率7Ω・cmであった。
【0086】
・導電性粒子EC−5の作製
導電性粒子C−3と同様に、アルミン酸ナトリウム0.3gを含む水酸化ナトリウム水溶液を用い白色粉末を作製した。得られた120gの白色粉末(アルミニウム0.8質量%を含む被覆量20質量%)は白色度86、体積抵抗率2Ω・cmであった。
【0087】
<実施例1〜4及び比較例1〜5>
長さ800mm、幅300mm、高さ50mm、板厚3mmの製品形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型150℃、下型135℃に設定し、まずSMC成形材料を下型の上に置き、2400KNの型締め圧力で型締めし、80秒間保持し、得られたSMC成形体の表面が型内被覆用組成物の注入、流動圧力に耐え得る程度に硬化させた。次いで型締め圧力を360KNまで減圧した後、表3に記載した組成の各々の型内被覆用組成物36cmを金型表面と成形体の表面との間に、約1.5秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒かけて1440KNまで加圧し10秒間保持し、次いで型締め圧力を960KNに減圧し、80秒間保持して型内被覆用組成物を硬化させた。
【0088】
得られた成形体の被覆膜の外観、表面抵抗値、JIS Z 8729に規定されるL表示系に基づくL値及び基材と被覆膜との付着性を測定した。それらの結果を表4に示す。
【0089】
更に得られた成形体を表2の条件にて静電塗装を行い、上塗り塗装後の塗膜外観を評価した。用いた上塗り塗料は、デリコン#1500ホワイト(大日本塗料(株)製)であった。
【0090】
【表2】

【0091】
〔被覆膜の外観〕
被覆膜のツヤ、流れスジ、均一性等を目視にて、以下に従い外観を評価した。
【0092】
○…ツヤのムラ、流れスジがなく、外観が均一であるもの
△…わずかにツヤのムラ、流れスジが見られるもの
×…ツヤのムラ、流れスジが著しく、外観が不均一であるもの
【0093】
〔L値〕
JIS Z 8729に規定されるL表示系に基づくL値を測定した。
【0094】
〔表面抵抗値〕
被覆膜の表面抵抗値は、23±2℃、50±5%RHの室内に24時間放置後、ハイレスターUP MCP−HT450型測定器(三菱化学(株)製)を用いて測定した。
【0095】
〔基材と被覆膜との付着性〕
JIS K 5600−5−6:付着性(クロスカット法)に従って初期の塗膜付着性試験を実施した。塗膜の付着性はJIS K 5600−5−6に記載の試験結果の分類に基づき下記の0〜5の6段階で評価した。
【0096】
〈6段階評価〉
0…カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1…カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2…塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び又は数カ所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
5…はがれの程度が分類4を超える場合。
【0097】
〔上塗り塗装後の塗膜外観〕
○…下地のスケ、ツヤのムラがなく、外観が均一であるもの
×…下地のスケ、ツヤのムラがあり、外観が不均一であるもの
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
<実施例5及び6>
長さ300mm、幅200mm、高さ30mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図2に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。金型温度は固定金型を100℃に、可動金型を80℃に設定し、バレル温度を180℃に加熱し、まずゴム変性ポリプロピレン樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,000KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1.5秒かけて射出し、40MPaの保圧を5秒間かけた。型締め圧力をかけた状態で40秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆用組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。次いで、可動金型を約0.5mm離間させた後、表5に記載した各被覆用組成物9cmを金型表面と成形体の表面との間に約0.5秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒間かけて200KNまで加圧し120秒間保持し、型内被覆用組成物を硬化させた。
【0101】
【表5】

【0102】
得られた成形体の被覆膜の外観、表面抵抗値、JIS Z 8729に規定されるL表示系に基づくL値及び基材と被覆膜との付着性を前記実施例と同様測定した。それらの結果を表6に示す。
【0103】
更に得られた成形体を前記と同一の条件にて静電塗装を行い、上塗り塗装後の塗膜外観を評価した。この場合、用いた上塗り塗料は、プラニット#3600PAホワイト(大日本塗料(株)製)であった。
【0104】
【表6】

【0105】
<実施例7〜13及び比較例6〜8>
長さ300mm、幅200mm、高さ30mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図2に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。金型温度は固定金型を95℃に、可動金型を75℃に設定し、バレル温度を200℃に加熱し、まずABS樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,500KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、30秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆用組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。
【0106】
次いで、可動金型を約1mm離間させた後、表7に記載した各被覆用組成物13cmを金型表面と成形体の表面との間に約0.5秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒間かけて200KNまで加圧し60秒間保持し、型内被覆用組成物を硬化させた。
【0107】
【表7】

【0108】
得られた成形体の被覆膜の外観、表面抵抗値、JIS Z 8729に規定されるL表示系に基づくL値及び基材と被覆膜との付着性を前記実施例と同様測定した。それらの結果を表8に示す。
【0109】
更に得られた成形体を前記と同一の条件にて静電塗装を行い、上塗り塗装後の塗膜外観を評価した。この場合、用いた上塗り塗料は、プラニット#3600PAホワイト(大日本塗料(株)製)であった。
【0110】
【表8】

【0111】
<実施例14〜17及び比較例9>
長さ400mm、幅400mm、高さ30mmの箱形状のジシクロペンタジエンを主原料とする樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図3に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型95℃、下型60℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、160KNの型締め圧力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0112】
次いで、型締め圧力をそのままで、表9に記載した各被覆用組成物32cmを金型表面と成形体の表面との間に約1秒かけて注入した。注入完了後200秒間保持し、型内被覆用組成物を硬化させた。
【0113】
【表9】

【0114】
得られた成形体の被覆膜の外観、表面抵抗値、JIS Z 8729に規定されるL表示系に基づくL値及び基材と被覆膜との付着性を前記実施例と同様測定した。それらの結果を表10に示す。
【0115】
更に得られた成形体を前記と同一の条件にて静電塗装を行い、上塗り塗装後の塗膜外観を評価した。この場合、用いた上塗り塗料は、プラニット#3600PAホワイト(大日本塗料(株)製)であった。
【0116】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】SMCと呼ばれるガラス繊維強化熱硬化性成形材料を用いた圧縮成形法を実施する装置の概略図である。
【図2】熱可塑性樹脂成形材料の射出成形法を実施する装置の概略図である。
【図3】ウレタンやジシクロペンタジエン成形材料のRIM成形法を実施する装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)成分と共重合可能なモノマーと
(C)導電性金属酸化物粒子を無機粒子表面に被覆した導電性粒子と
(D)有機過酸化物重合開始剤と
を含有してなり、かつ、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、
前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=5/100〜50/100であり、
前記(D)成分の質量割合が、(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100であることを特徴とする型内被覆組成物。
【請求項2】
前記(C)成分の導電性金属酸化物粒子で被覆された無機粒子が、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、チタン酸アルカリ、雲母から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の型内被覆組成物。
【請求項3】
前記(C)成分の無機粒子表面を被覆する導電性金属酸化物粒子が、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の型内被覆組成物。
【請求項4】
前記アンチモンドープ酸化錫が、リン、アルミニウム、モリブデンの少なくとも1種を酸化物として0.1〜5質量%含有する請求項3に記載の型内被覆組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の導電性粒子のアスペクト比が3〜200である請求項1〜4のいずれかに記載の型内被覆組成物。
【請求項6】
前記(C)成分の導電性金属酸化物粒子で被覆された無機粒子が、針状酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカー又は鱗片状雲母である請求項1〜5のいずれかに記載の型内被覆組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の前記(A)成分と共重合可能なモノマーにおいて、少なくともスチレンモノマーを含有し、その含有量が質量比で(スチレンモノマー)/{(A)+(B)}=0.2/100〜5/100である請求項1〜6のいずれかに記載の型内被覆組成物。
【請求項8】
前記(D)成分の有機過酸化物重合開始剤として、1分間半減期温度が85℃以上95℃未満のものと、95℃以上170℃未満の有機過酸化物重合開始剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載の型内被覆組成物。
【請求項9】
成形法として、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型を型締めする工程と、
金型キャビティ内で樹脂を成形する工程と、
キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した型内被覆組成物を硬化させる工程と、
型内被覆組成物が硬化した後に被覆された成形体を金型から取り出す工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜8のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138248(P2010−138248A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314713(P2008−314713)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】