説明

型取り用液状ゴム組成物

【課題】より光沢感が高く、タイヤ外観の判定性に優れた型取り用液状ゴム組成物を提供する。
【解決手段】加硫後の表面における、明度L*が22以下、色度a*が0.5〜1.0、色度b*が0.5〜1.0である型取り用液状ゴム組成物である。本発明の型取り用液状ゴム組成物は、好適には、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン;100質量部、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;1〜20質量部、(C)比表面積50m/g以上のシリカ微粉末;30〜60質量部、(D)白金族金属系触媒;(A)および(B)成分の総量に対し白金族金属の質量換算で5〜300ppm、および、(E)平均粒子径1μm以下のカーボンブラック;1〜30質量部、が混合されてなるものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型取り用液状ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」とも称する)に関し、詳しくは、タイヤの外観判定用に用いられる型取り用液状ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造するに際しては、成形された生タイヤに内側から圧力をかけて、その外表面を加熱された金型の内壁に密着させ、熱と圧力により生ゴムを加硫する加硫用モールド(以下、「タイヤモールド」と称する)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、かかるタイヤモールドに起因するタイヤの外観不良の程度を把握するために、タイヤモールドに型取り用の液状ゴムを流し込んで、それを硬化させて判定することが行われている。このモールド、すなわちタイヤ外観の判定に用いられる液状ゴムとしては、従来より一般に、チオコールゴムが用いられてきた。
【特許文献1】特開平10−044155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来使用されているチオコールゴムは、加硫後の黒々光沢感が不十分であり、タイヤ外観の判定性には劣るものであった。したがって、より光沢感の高い型取り用液状ゴム組成物の実現が求められていた。
【0005】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、より光沢感が高く、タイヤ外観の判定性に優れた型取り用液状ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、下記配合からなるゴム組成物により上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の型取り用液状ゴム組成物は、加硫後の表面における、明度L*が22以下、色度a*が0.5〜1.0、色度b*が0.5〜1.0であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のゴム組成物は、好適には、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;1〜20質量部、
(C)比表面積50m/g以上のシリカ微粉末;30〜60質量部、
(D)白金族金属系触媒;(A)および(B)成分の総量に対し白金族金属の重量換算で5〜300ppm、および、
(E)平均粒子径1μm以下のカーボンブラック;1〜30質量部、
が混合されてなるものである。また、本発明のゴム組成物においては、組成物の調製から、40℃において180分放置した後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が90〜120分放置後の時点であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成としたことにより、より光沢感が高く、タイヤ外観の判定性に優れた型取り用液状ゴム組成物を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適実施形態について、詳細に説明する。
本発明の型取り用液状ゴム組成物は、加硫後の表面における、明度L*が22以下、例えば18〜20であって、色度a*が0.5〜1.0、色度b*が0.5〜1.0である点に特徴を有する。ここで、明度L*、色度a*および色度b*は、JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系の指標である。
【0011】
加硫後の表面における明度および色度が上記範囲を満足するものとすることで、従来のチオコールゴムに比し光沢感が高く、したがってタイヤ外観に近い黒々光沢感を有するゴム組成物とすることができる。そのため、かかる本発明のゴム組成物を用いてタイヤモールドの型取りを行うことで、従来に比し、タイヤモールド(タイヤ外観)の判定性を向上することが可能となった。
【0012】
本発明のゴム組成物においては、加硫後の表面が上記明度L*、色度a*および色度b*に関する条件を満足するものであれば、その具体的な配合については特に制限されるものではない。本発明のゴム組成物としては、具体的には例えば、以下の(A)〜(E)成分を含むシリコーンゴム組成物が、好適に挙げられる。
【0013】
本発明で(A)成分のベースポリマーとして使用する、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、通常の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に主原料(ベースポリマー)として使用されている公知のオルガノポリシロキサンである。
【0014】
このようなオルガノポリシロキサンは、一般に平均組成式RSiO(4−a)/2(但し、Rは、通常炭素数1〜10、特には炭素数1〜6の置換または非置換の1価炭化水素基を表し、これは分子中のシロキサン構造を形成するケイ素原子に結合するものである。また、aは1.9〜2.4、特には1.95〜2.05の数である。)で示され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個程度含有し、また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは10000〜20000、より好ましくは13000〜20000程度の、基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0015】
前記組成式において、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル等のアルキル基;ビニル、アリル、プロぺニル、イソプロペニル、ブテニル等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基;およびクロロメチル、ブロモエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、シアノエチル等のハロゲン置換またはシアノ基置換炭化水素基から選ばれ、各置換または非置換の1価炭化水素基は、異なっていても同一であってもよい。ここでアルケニル基としては、ビニル基が好ましく、また、その他の炭化水素基としては、メチル基、フェニル基およびトリフルオロプロピル基が好ましく、特にアルケニル基以外の置換または非置換の1価炭化水素基のうち95〜100モル%がメチル基であることが好ましい。アルケニル基の含有量は、全有機基(即ち、上記の置換又は非置換1価炭化水素基)R中、通常0.0001〜20mol%、好ましくは0.001〜10mol%、特には0.01〜5mol%程度とする。なお、1分子中に2個以上含有されるアルケニル基は、分子鎖両端のケイ素原子または分子鎖途中のケイ素原子のいずれかに結合したものであっても、双方に結合したものであってもよいが、シリコーンゴム硬化物の物性等の点から、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものであることが好ましい。
【0016】
このオルガノポリシロキサンは、主鎖がジオルガノシロキサン単位(RSiO2/2単位)の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノシロキサンであり、主鎖の一部に若干のRSiO3/2単位および/またはSiO4/2単位を含む分岐状構造を許容するものであるが、通常は、主鎖がジオルガノシロキサン単位(RSiO2/2単位)のみの繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(RSiO1/2単位)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体などが挙げられる。
【0017】
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、これらの分子構造を有する単一の重合体、またはこれらの重合体の混合物である。(A)成分のアルニケル基含有オルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用しても、2種以上併用してもよい。なお、重量平均分子量の異なる2種以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン成分を併用する場合には、これらの2種以上の成分を併用、混合した混合物全体としての重量平均分子量の値が前記範囲内となることが好ましい。
【0018】
(A)成分の好適例としては、例えば、以下のものが挙げられる。

ここでRは、上記の置換または非置換の1価炭化水素基と同じであり、またn、mは、個々の単一の分子については、それぞれ上記の重量平均分子量を与える正の整数であり、重合度に分布を持った混合物としての均一成分については、平均値として上記の重量平均分子量を与える範囲の正数である。
【0019】
本発明で(B)成分として使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用するものである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、平均組成式R’SiO(4−c−d)/2(但し、R’は脂肪族不飽和基を除く、置換または非置換の1価炭化水素基であり、cは0.8〜2、dは0.01〜1、c+dは0.81〜3)で表され、25℃における粘度が0.5〜1000cP、特には1〜500cP程度のものが挙げられ、一分子中のケイ素原子の数(または重合度)は2〜300、特には3〜200程度のものを使用することができる。その分子構造に特に制限はなく、従来の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に通常使用されるものと同様、例えば、直鎖状、環状、分岐状および三次元網状(レジン状)構造等各種のものが使用可能であるが、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に少なくとも2個(通常、2〜200個程度)、好ましくは3個以上(例えば、3〜100個程度)含む必要がある。また、この化合物の水素原子以外のケイ素原子に結合する1価の有機基(例えば、上記平均組成式におけるR’基)としては、(a)成分のオルガノポリシロキサンにおける置換または非置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられるが、特にアルケニル基等の脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基、特にはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0020】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられるが、特に、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適である。
【0021】
この(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、1〜20質量部、特には5〜20質量部である。この添加量が少なすぎると、架橋密度が低くなりすぎ、その結果、硬化したシリコーンゴムの型取り転写形状の精度に悪影響を与えることがある。また、多すぎると、表面が鏡面状にならなかったり、あるいは同様に型取り転写形状の精度に悪影響を与えるおそれがある。また、この(B)成分の添加量は、上記と同様の理由で、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜10モル、好ましくは1〜5モルとなるように配合することもできる。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種を単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明で使用する(C)成分のシリカ微粉末は、シリコーンゴムの補強性充填剤として、従来から周知とされているものが使用可能であり、この目的のためにはBET吸着法による比表面積が50m/g以上であることが必要であり、好ましくは100〜400m/gである。このシリカ微粉末としては、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示され、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)が好ましい。また、これらのシリカ微粉末の表面に多数存在するシラノール基をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してシリカ微粉末の表面をエーテル結合したアルキル基等の有機基で被覆した疎水性シリカがより好ましい。この疎水化処理は、未処理の(C)成分を組成物の他の成分の一種以上と配合する前に予め上記処理剤と加熱下に混合することで行ってもよく、また、組成物を調製する際に未処理の(C)成分を他の成分および上記処理剤とともに加熱下に混合することによって組成物の調製と同時に行ってもよい。これらのシリカは1種単独でも2種以上併用してもよい。疎水性シリカとしては、具体的には、AerosilR−812、R−812S、R−972、R−974(Degussa社製)、RheorosilMT−10(徳山曹達社製)、Nipsil SSシリーズ(日本シリカ(株)製)などを挙げることができる。
【0023】
この(C)成分のシリカの添加量は、(A)成分100質量部に対し、30〜60質量部である。この添加量が少なすぎると、十分な強度と硬度が得られず、また耐クリープ性の改善効果も不十分である。また多すぎると、ゴム組成物の粘度が高くなりすぎ、注型を行うのが困難となる。
【0024】
本発明で使用する(D)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒である。
【0025】
この白金族金属系触媒としては、白金ブラック;塩化白金酸;塩化白金酸のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサンまたはアセチレンアルコール類等との錯体等の白金化合物;およびロジウム、パラジウム等の白金族金属を含有する化合物等を挙げることができる。特に好ましくは、(A)成分および(B)成分との相溶性の点から、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体等のシラン、シロキサン変性物である。なお、この場合、白金族金属と錯体を形成している配位子としてのビニルシロキサンは白金族金属系触媒の一構成要素であり、前記(A)成分には該当しないものである。この白金族金属系触媒の配合量は、白金族金属の質量換算で(A)および(B)成分の合計質量に対して通常5〜300ppm、好ましくは20〜30ppmである。この添加量が少なすぎると、架橋開始温度が高くなりすぎ、終了時間の遅延につながる。また多すぎると、注型が完全に終わる前に架橋が開始されるおそれがある。
【0026】
本発明で使用する(E)成分のカーボンブラックは、加硫後のゴム組成物においてタイヤと同様の黒々さを確保するために配合される。かかるカーボンブラックとしては、平均粒子径が1μm以下、好適には0.1〜0.9μmであるものであれば、特に制限されず、ゴム用添加剤として一般に用いられるGPF,FEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等のグレードのものを適宜用いることができる。カーボンブラックの平均粒子径が1μmを超えると、明度L*が22以下、色度a*が0.5〜1.0、色度b*が0.5〜1.0という本発明の要件を満足することが困難となるため、好ましくない。
【0027】
この(E)成分のカーボンブラックの添加量は、(A)成分100質量部に対し、1〜30質量部、好適には10〜20質量部である。この添加量が少なすぎると、十分な黒々光沢度が得られず、また多すぎると、40℃において180分放置した後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が120分以上となり、いずれも本発明の効果が得られない。
【0028】
また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて任意に(F)成分として金属粉体を添加することができる。かかる金属粉体としては、ゴム組成物中の熱伝導率を高めることのできる金属粉体であれば、特に制限されることはなく、アルミニウム、金、銀、銅等の純粋金属粉体を好適に使用することができる。かかる金属粉体は、好ましくは10〜500μm、より好ましくは100〜200μmの粒径を有する球状物とする。金属粉体が針状や板状の場合には、得られる架橋物の物性に異方性が現れ、好ましくない。この(F)成分の金属粉体の添加量は、(A)成分100質量部に対して、通常、10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。この添加量が少なすぎると、ゴム組成物中の熱伝導率を十分に高めることができず、架橋反応の進行が表面と内部とで異なることになる場合がある。また多すぎると、ゴム組成物の粘度が高くなりすぎ、細部へのゴム組成物の充填が困難となる場合がある。また注型時間が延びて作業性が悪くなり、さらにはタイヤモールドへの濡れ性が低下する場合がある。
【0029】
さらに、本発明のゴム組成物には、必要に応じて任意に(G)成分として無機粉体を添加することができる。かかる無機粉体は、前記(C)シリカ、(E)カーボンブラックおよび(F)金属粉体以外のものであり、前記ゴム組成物の熱収縮率を調整する作用を有する。無機粉体の種類は特に制限されることはなく、例えば、マイカ、滑石、石こう、方解石、ホタル石、リン灰石、長石等の鉱物性粉体や、カオリン等の粘土、ゼオライト、ガラス粉体等を使用することができる。この(G)成分の無機粉体の添加量は、(A)成分100質量部に対し、通常、5質量部以下(即ち、0〜5質量部)、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1〜2質量部である。この添加量が少なすぎると、ゴム組成物に対する調整効果が不十分となる場合があり、また多すぎると、ゴム組成物の粘度が高くなりすぎ、所期の効果を奏し得なくなる場合がある。
【0030】
その他、本発明のゴム組成物には、必要に応じて従来のゴム組成物に使用される各種添加剤を適宜添加することができる。例えば、常温での可使時間を延長させるなど、硬化時間の調整を行うための制御剤や、シランカップリング剤等を必要に応じて添加することができる。
【0031】
本発明のゴム組成物の架橋反応は、20〜70℃、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃の温度で、2〜6時間、好ましくは2.5〜3.5時間にて好適に行うことができる。
【0032】
また、本発明のゴム組成物は、組成物の調製から、40℃において180分放置した後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が90〜120分放置後の時点であることが好ましい。この特性を満足するものとすることにより、夏場等の高温条件下であっても、実際のゴム型製作工程において、組成物を調製後にタイヤモールドに流し込むまでの時間を、確実に確保することが可能となる。
【0033】
本発明のゴム組成物の製造は、上記(A)〜(E)成分および必要に応じて加えられる1種または2種以上の任意成分を、プラネタリーミキサー、品川ミキサー等の公知の混合手段を用いて、任意の混合順序で混合することにより容易に行うことができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例>
実施例のシリコーンゴム組成物を調製して、40℃、3.0時間で加硫、硬化させることにより、加硫ゴムサンプルを作製した。
【0035】
<従来例>
従来例のチオコールゴム組成物を調製して、60℃、16時間で加硫、硬化させることにより、加硫ゴムサンプルを作製した。
【0036】
従来例および実施例の加硫ゴムサンプルの表および裏の表面につき、それぞれ5点を取って、コニカミノルタセンシング(株)製の色彩色差計CR−400を用いて、明度L*、色度a*および色度b*の測定を行った。その結果を、下記の表中に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
また、実施例および従来例の各ゴム組成物を用いて、タイヤモールドの型取りを行い、タイヤ外観の判定を行ったところ、実施例のゴム組成物では判定性が良好であったが、従来例のゴム組成物では、黒々光沢感が不足して、判定性が十分ではなかった。結果として、本発明に係る条件を満足する実施例のゴム組成物においては、より高い光沢感が得られ、タイヤ外観の判定性に優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫後の表面における、明度L*が22以下、色度a*が0.5〜1.0、色度b*が0.5〜1.0であることを特徴とする型取り用液状ゴム組成物。
【請求項2】
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;1〜20質量部、
(C)比表面積50m/g以上のシリカ微粉末;30〜60質量部、
(D)白金族金属系触媒;(A)および(B)成分の総量に対し白金族金属の質量換算で5〜300ppm、および、
(E)平均粒子径1μm以下のカーボンブラック;1〜30質量部、
が混合されてなる請求項1記載の型取り用液状ゴム組成物。
【請求項3】
組成物の調製から、40℃において180分放置した後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が90〜120分放置後の時点である請求項1または2記載の型取り用液状ゴム組成物。

【公開番号】特開2010−751(P2010−751A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163212(P2008−163212)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】