説明

型枠およびそれを用いたコンクリート板の製法

【課題】 製作毎の型枠の組立および解体を不要とでき、しかも厚板の製作にも適用できる型枠およびそれを用いたコンクリート板の製法を提供する。
【解決手段】 側型枠部材20が、下部部材21と上部部材22と、上部部材22の外方への開きを可能とする下部部材21および上部部材22との間に一体化させて配設された中間部材23と、上部部材22の外方への開きを規制して型枠10を所定形状に維持する形状維持機構24とを有してなる型枠10である。そして、上部部材22の外方への開きを可能とした状態で型枠10内にコンクリートCを打設し、ついで形状維持機構24により上部部材22の外方への開きを規制して型枠10を所定形状とし、しかる後形状維持機構24による上部部材22の規制を解除して脱型をなすものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型枠およびそれを用いたコンクリート板(面材)の製法に関する。さらに詳しくは、脱型が型枠を解体せずしてなし得る型枠およびそれを用いたコンクリート板の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート製の外壁面材の製法においては、型枠が用いられ概略次のような手順によりその製作がなされている。
【0003】
手順1:定盤の上に型枠をセットする。
【0004】
手順2:型枠内にコンクリートを打設する。
【0005】
手順3:所定期間養生を行う。
【0006】
手順4:型枠からコンクリート板を取り出す。つまり、脱型する。
【0007】
手順5:コンクリート板の美装を行う。
【0008】
ここで、手順4における脱型に用いられる手法としては、型枠を解体して脱型をなすものと、図10に示すように、型枠100内面を逆台形状に形成しておいて型枠100を解体することなく脱型をなすものとが知られている。
【0009】
しかしながら、前者にあっては、コンクリート板の製作毎に型枠の組立および解体が必要となるため、生産効率が悪く生産コストも高いという問題がある。また、コンクリート板の製作毎に型枠の組立をなすところから、コンクリート板の仕上がり寸法におけるバラツキが大きいという問題もある。
【0010】
一方、後者にあっては、コンクリート板の製作毎に型枠100の組立および解体は不要であるものの、図11に示すように、コンクリート板110の側面に勾配が生じ、それにより目地部120において内外寸法差が生じるため、厚板の製作には適用できないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、製作毎の型枠の組立および解体を不要とでき、しかも厚板の製作にも適用できる型枠およびそれを用いたコンクリート板の製法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の型枠は、側型枠部材を備えてなる型枠であって、該側型枠部材が、下部部材と、上部部材と、該上部部材の外方への開きを可能とする前記下部部材および上部部材との間に一体化させて配設された中間部材と、前記上部部材の外方への開きを規制して型枠を所定形状に維持する形状維持機構とを有してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の型枠においては、形状維持機構は、例えば、ノックピンと、該ノックピンが挿通される下部部材および上部部材に配設された筒状部材またはリング状部材とからなるものとされる。
【0014】
一方、本発明のコンクリート板の製法は、前記型枠を用いたコンクリート板の製法であって、上部部材の外方への開きを可能とした状態で型枠を定盤にセットする手順と、型枠内にコンクリートを打設する手順と、形状維持機構により前記上部部材の外方への開きを規制して型枠を所定形状とする手順と、所定の養生の後、前記形状維持機構による上部部材に対する前記規制を解除する手順と、脱型する手順とを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、板厚が厚いコンクリート板であっても、製作毎の型枠の組立および解体を不要とでき、しかも表面と裏面とに寸法差を生じさせることもないという優れた効果が得られる。また、製作毎の型枠の組立および解体を不要とできるので、製品間の寸法のバラツキを小さくできるという優れた効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
実施形態1
本発明の実施形態1に係る型枠を図1に断面図で示す。
【0018】
型枠10は、図1に示すように、側端に配置される側型枠部材20と、前端または後端に配置される端型枠部材30と、底面に配置される模様型枠部材40とを備えてなるものとされる。なお、模様型枠部材40は必要に応じて設けられるもので、そのため必ずしも設けられる必要はない。また、端型枠部材30は、従来の型枠と同様とされているので、以下、側型枠部材20について説明する。
【0019】
図2に、側型枠部材20を拡大して示す。
【0020】
側型枠部材20は、図2に示すように、模様型枠部材40と例えばボルト接合にて接合される下部部材21と、上部部材22と、下部部材21と上部部材22との間に配設された中間部材23とを一体化して備えてなるものとされる。
【0021】
下部部材21と上部部材22とは例えば鋼製とされ、中間部材23は適度の弾力性を有する材質のもの、例えば軟質合成ゴムとされる。中間部材23がかかる材質とされていることにより、上部部材22は打設されたコンクリートの側圧で外方に開くよう動作することが可能とされる。また、側型枠部材20には、この上部部材22の開きを規制して型枠10を所定形状に維持する形状維持機構24が外側に配設されている。この形状維持機構24は、例えば側型枠部材20の中央部および両端部に設けられる。
【0022】
形状維持機構24は、例えばノックピン25と、このノックピン25を挿通する下部部材21と上部部材22とのそれぞれに設けられた筒状部材(またはリング状部材)26,27とからなるものとされる。この場合、ノックピン25と筒状部材26,27とのクリアランスは、上部部材22の開きを規制する点から必要最小限とされる。また、図2に示すように、ノックピン25に降下量を規制するストッパー25aを設けてもよい。なお、形状維持機構24は、ノックピン25と筒状部材26,27との組み合わせに限定されるものではなく、上部部材22の開きを規制できる各種機構とできる。
【0023】
次に、図3〜図8を参照しながら、かかる構成とされた型枠10を用いたコンクリート板(面材)の製法について説明する。
【0024】
手順1:型枠10を定盤Jにセットする(図3参照)。この状態では、形状維持機構24による側型枠部材20の上部部材22の開きは規制されていない。例えば、ノックピン25はまだ筒状部材26,27に挿通されてはいない。
【0025】
手順2:型枠10内にコンクリートCを打設する(図4参照)。この場合、上部部材22は打設されたコンクリートCの側圧により若干外方に開く(図5参照)。
【0026】
手順3:形状維持機構24により上部部材22の外方への開きを規制して型枠10を所定形状とする。例えば、ノックピン25を筒状部材26,27に挿通する(図6参照)。このとき、上部部材22の外方への開きにより形成された傾斜部に存在している水分過多のコンクリートCは、上部部材22の正規位置への復帰の際に型枠10外に排出される。それにより、従来のように、製作されたコンクリート板側部がポーラスとなるということはない。つまり、従来の型枠を用いた製法の欠点の一つが解消される。
【0027】
手順4:所定の養生の後、形状維持機構24による上部部材22に対する規制を解除する。例えば、ノックピン25を筒状部材26,27から抜き取る(図7参照)。これにより、上部部材22は、コンクリート板Mの側圧により外方に若干開く(図8参照)。
【0028】
手順5:コンクリート板Mを型枠10から引き上げて脱型する。この場合、上部部材22は外方に若干開いているので、型枠10を解体することなく脱型がなし得る。
【0029】
手順6:コンクリート板Mの美装を行う。
【0030】
これら一連の手順によりコンクリート板Mの製作がなされる。
【0031】
このように、この実施形態1によれば、側型枠部材20を下部部材21と中間部材23と上部部材22とにより構成し、中間部材23を弾力性を有する材質として上部部材22の外方への開きを可能としているので、型枠10を解体することなく脱型がなし得る。そのため、コンクリート板Mの生産性が向上して生産コストが低減される。また、製作毎の型枠10の組立が不要となるので、コンクリート板Mの寸法のバラツキを小さくができる。
【0032】
また、コンクリートCの打設時には下部部材21、中間部材23および上部部材22の内面は定盤Jに対して垂直とされているので、コンクリート板Mの表面と裏面とに寸法差が生ずることもない。したがって、このコンクリート板Mを用いても目地部に内外寸法差を生ずることもない。つまり、厚板の場合にも問題を生ずることもない。
【0033】
さらに、コンクリート板Mの側部がポーラスになることもないので、コンクリート板Mの強度が上がり製品性能が向上する。
【0034】
実施形態2
本発明の実施形態2に係る側型枠部材20Aを図9に示す。
【0035】
この実施形態2は実施形態1を改変してなるものであって、下部部材21を硬質ゴムとして中間部材23と一体成型してなるものとされる。そのため、側型枠部材20Aの生産性が向上する。なお、実施形態2のその余の構成および作用・効果は実施形態1と同様とされるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。例えば、端型枠部材も側型枠部材と同様の構成とされてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、各種板厚のコンクリート板の製作に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態1に係る型枠の概略図である。
【図2】同実施形態に係る側型枠部材の概略図である。
【図3】同実施形態における製作工程の説明図であって、型枠を定盤にセットした状態を示す。
【図4】同実施形態における製作工程の説明図であって、型枠内にコンクリートを打設した状態を示す。
【図5】打設されたコンクリートの側圧により上部部材が外方に開いた状態を示す。
【図6】同実施形態における製作工程の説明図であって、ノックピンを筒状部材に挿通して型枠を正規形状とした状態を示す。
【図7】同実施形態における製作工程の説明図であって、ノックピンを筒状部材から抜き取った状態を示す。
【図8】コンクリート板の側圧により上部部材が外方に開いた状態を示す。
【図9】本発明の実施形態2に係る型枠の側型枠部材の概略図である。
【図10】従来の型枠の一例の概略図である。
【図11】図10に示す型枠により製作されたコンクリート板による目地部の概略図である。
【符号の説明】
【0039】
10 型枠
20 側型枠部材
21 下部部材
22 上部部材
23 中間部材
24 形状維持機構
25 ノックピン
26,27 筒状部材、リング状部材
30 端型枠部材
40 模様型枠部材
C コンクリート
J 定盤
M コンクリート板(面材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側型枠部材を備えてなる型枠であって、
該側型枠部材が、下部部材と、上部部材と、該上部部材の外方への開きを可能とする前記下部部材および上部部材との間に一体化させて配設された中間部材と、前記上部部材の外方への開きを規制して型枠を所定形状に維持する形状維持機構とを有してなることを特徴とする型枠。
【請求項2】
形状維持機構が、ノックピンと、該ノックピンが挿通される下部部材および上部部材に配設された筒状部材またはリング状部材とからなることを特徴とする請求項1記載の型枠。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の型枠を用いたコンクリート板の製法であって、
上部部材の外方への開きを可能とした状態で型枠を定盤にセットする手順と、
型枠内にコンクリートを打設する手順と、
形状維持機構により前記上部部材の外方への開きを規制して型枠を所定形状とする手順と、
所定の養生の後、前記形状維持機構による上部部材に対する前記規制を解除する手順と、
脱型する手順
とを含んでいることを特徴とするコンクリート板の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−256012(P2006−256012A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74842(P2005−74842)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】