説明

型枠構造

【課題】柱部材と連結部材とを一体的に製造可能とする型枠構造を提供すること。
【解決手段】アンテナを支持する柱状の塔状構造物を構成する柱構成部材を製造するための型枠構造であって、前記柱構成部材が、PHC又はPRC製の柱部材と、前記柱部材の一方の端部に設けられ、隣接する別の前記柱構成部材を連結するための連結部材と、を備え、前記連結部材が、前記柱部材の端部を囲む環状部と、前記環状部に接続され、他の前記柱構成部材と連結されるフランジ部と、を備え、前記型枠構造は、前記柱部材を構成する鉄筋籠を囲む第1型枠と、前記第1型枠と、前記フランジ部の外側に配置され、プレテンション力を負担する緊張端側の支持部材と、の間に介在し、前記連結部材がプレテンション力の作用方向に変位可能に、前記フランジ部及び緊張端側のエンドプレートを囲む第2型枠と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナを支持する塔状構造物を構成する柱構成部材の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを支持する塔状構造物のうち、特にパラボラアンテナ等を支持する塔状構造物は、その振れが少ないことが必要とされる。このため、塔状構造物には高い剛性が要求される。剛性を確保するため、従来では鉄骨トラス構造等の鉄骨造が採用されることが多い(特許文献1)。しかし、鉄骨造とするとコストが高く、工期も長くなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−291968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コストと工期の点で、高強度コンクリートを遠心締固めによって製造したコンクリート(PHC)製又はコピタ型プレテンション式高強度プレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)製の柱部材を上下に連結して塔状構造物を構築する方法が考えられる。この方法であれば、鉄骨造の場合に比べてコストを削減でき、また、工期の短縮化も図り得る。
【0005】
柱部材間の連結には、建て入れ調整が可能となる点で、柱部材の端部にフランジ継手タイプの連結部材を設けてボルト締結することが好ましい。ここで、フランジ継手タイプの連結部材を既製の柱部材に装着して固定する方式とすると、その組み付け作業が必要となって製造効率の点で好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、柱部材と連結部材とを一体的に製造可能とする型枠構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、アンテナを支持する柱状の塔状構造物を構成する柱構成部材を製造するための型枠構造であって、前記柱構成部材が、PHC又はPRC製の柱部材と、前記柱部材の一方の端部に設けられ、隣接する別の前記柱構成部材を連結するための連結部材と、を備え、前記連結部材が、前記柱部材の端部を囲む環状部と、前記環状部に接続され、他の前記柱構成部材と連結されるフランジ部と、を備え、前記型枠構造は、前記柱部材を構成する鉄筋籠を囲む第1型枠と、前記第1型枠と、前記フランジ部の外側に配置され、プレテンション力を負担する緊張端側の支持部材と、の間に介在し、前記連結部材がプレテンション力の作用方向に変位可能に、前記フランジ部及び緊張端側のエンドプレートを囲む第2型枠と、を備えたことを特徴とする型枠構造が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、アンテナを支持する柱状の塔状構造物を構成する柱構成部材を製造するための型枠構造であって、前記柱構成部材が、PHC又はPRC製の柱部材と、前記柱部材の一方の端部に設けられ、隣接する別の前記柱構成部材を連結するための連結部材と、を備え、前記連結部材が、前記柱部材の端部を囲む環状部と、前記環状部に接続され、他の前記柱構成部材と連結されるフランジ部と、前記環状部の周囲に複数設けられ、前記環状部と前記フランジ部とに接続された補強リブ部と、を備え、前記型枠構造は、前記柱部材を構成する鉄筋籠を囲む第1型枠と、前記第1型枠と、前記フランジ部の外側に配置され、プレテンション力を負担する固定端側のエンドプレートと、の間に介在し、前記フランジ部及び前記補強リブ部を囲む第2型枠と、を備えたことを特徴とする型枠構造が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柱部材と連結部材とを一体的に製造可能とする型枠構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は塔状構造物の概略図、(B)は該塔状構造物の分解図。
【図2】(A)は図1(A)の線I−Iに沿う断面図、(B)は連結部材の斜視図。
【図3】(A)は本発明の一実施形態に係る型枠構造の断面図、(B)は型枠の斜視図。
【図4】本発明の別実施形態に係る型枠構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
はじめに、本発明の実施形態に係る型枠構造により製造される柱構成部材を用いた塔状構造物について説明する。図1(A)は塔状構造物Aの概略図、図1(B)は塔状構造物Aの柱体1の分解図である。塔状構造物Aは複数の柱構成部材10、20、30を上下に連結した柱体1を備える。本例では3つの柱構成部材10、20、30を連結して柱体1を構成しているが4以上の柱構成部材を連結して構成してもよく、また、2つの柱構成部材を連結して構成してもよい。
【0012】
柱構成部材10、20、30は、柱構成部材10が最下部に位置し、柱構成部材30が最上部に位置し、柱構成部材20が中間部に位置している。柱構成部材30にはアンテナ取付具35が固定されており、パラボラアンテナ等のアンテナ(不図示)がアンテナ取付具35を介して支持される。柱構成部材10はその下部が鉄筋コンクリート造の基礎2に埋め込まれており、基礎2は柱体1全体を支持する。
【0013】
本例の場合、柱体1の地上高としては、30m程度を想定しており、基礎2による柱体1の支持モデルは固定モデルである場合を想定している。しかし、支持モデルをピン形式とし、コンクリート基礎2は柱体1の鉛直荷重のみを支持する一方、柱体1と基礎2との間にケーブルを張設して柱体1の傾倒を防止する構成でもよい。
【0014】
柱構成部材10、20、30は、それぞれ、PRC製で円筒の柱部材11、21、31を基本的な構成要素としている。PRCは剛性が高いため、それにより柱体1をより細くしながら、振れを少なくすることができる。これは、材料削減に役立つと共に塔状構造物Aの周辺の景観を損なうことを低減できる。また、柱部材11、21、31を円筒とすることができ、中実の場合よりも軽量化を図れる。なお、本例では柱部材11、21、31をPRC製としたがPHC製としてもよい。また、例えば、最上部に位置する柱構成部材を鉄骨造としてもよい。
【0015】
本例の場合、柱体1はその下側から上側へ向かって段階的に縮径している。具体的には、縮径部位1a、1bにおいて2段階で縮径している。本例では2段階で縮径した構成としたが3段階以上としてもよい。縮径部位は、それぞれ、柱部材21、31の途中の部位となっている。
【0016】
柱部材11は、全体としてその径(外径)が軸方向に同径となっており、柱部材21の下部22と外径が同径である。柱部材11の下端部には端板16が設けられており、また、柱部材11の下部は金属製(例えば鋼製)の環状部17により囲まれている。環状部17は円筒形状をなしており、柱部材11の下部のコンクリート12を拘束してその強度を向上する。なお、柱部材11、21、31の周面にはフィーダ線等の付属物を設置するためのインサート(不図示)を複数個所において埋め込まれている。
【0017】
柱部材21は、下部22と、上部23と、これらの間の径変化部24と、を備える。下部22、上部23は、それぞれ、その径(外径)が軸方向に同径であるが、上部23は下部22よりも小径となっている。径変化部24は、下部22と上部23との径の差を埋める部分をなしており、この径変化部24は縮径部位1aを構成している。径変化部24は、本例の場合、応力集中を避ける点で、急激に径が変化する段差状とせず、徐々に径が変化したテーパ状としている。
【0018】
柱部材31は、柱部材21と同様の構造を有している。すなわち、柱部材31は、下部32と、上部33と、これらの間の径変化部34と、を備える。下部32、上部33は、それぞれ、その径(外径)が軸方向に同径であるが、上部33は下部32よりも小径となっている。下部32は柱部材21の上部23と外径が同径である。径変化部34は、下部32と上部33との径の差を埋める部分をなしており、この径変化部34は縮径部位1bを構成している。径変化部34は、本例の場合、応力集中を回避するため、急激に径が変化する段差状とせず、徐々に径が変化したテーパ状としている。
【0019】
柱部材11と柱部材21とは、フランジ継手タイプの連結部材40、40を介して連結されている。図2(A)は図1(A)の線I−Iに沿う断面図、図2(B)は連結部材40の斜視図である。
【0020】
図2(B)を参照して連結部材40は、金属製(例えば鋼製)の部材であって、円筒状の環状部41と、環状部41の端面に接続された端板42と、を備える。端板42の一部は、環状部41の径方向外方に突出したフランジ部42’を構成している。フランジ部42’にはボルト穴44が複数設けられている。
【0021】
本例の場合、連結部材40は、更に、補強リブ43を備える。補強リブ43は環状部41の周囲に複数設けられ、環状部41とフランジ部42’とに接続されている。補強リブ43を設けたことで連結部材40の強度と剛性の向上を図ることができる。
【0022】
図2(A)を参照して、連結部材40は柱部材21の下端部と、柱部材11の上端部とにそれぞれ設けられている。
【0023】
柱部材21は、内部空間21aを有して円筒状のコンクリート部25と、コンクリート部25内に埋設されている主筋27、帯筋28、PC鋼線26と、を備える。PC鋼線26の下端は柱部材21側の連結部材40の端板42に連結されている。なお、PC鋼線26の上端は柱部材21の上部に設けられる連結部材50に連結されている。
【0024】
柱部材11は、内部空間11aを有して円筒状のコンクリート部12と、コンクリート部12内に埋設されている主筋14、帯筋15、PC鋼線13と、を備える。PC鋼線13の上端は柱部材11側の連結部材40の端板42に連結されている。なお、PC鋼線13の下端は柱部材21の下部の端板16に連結されている。
【0025】
各連結部材40の環状部41、41は、それぞれ、柱部材21の下端部、柱部材11の上端部を囲んで、各コンクリート部25、12を拘束している。これにより、柱部材21と柱部材11との連結部位においてコンクリート部25、12の強度が高まり、連結強度を高めることができる。
【0026】
柱部材21の主筋27、帯筋28及びPC鋼線26は、相対的に小径の上部23の外径を基準として配筋されている。このため、柱部材21の下部22においては、かぶり厚が厚くなっている。よって、環状部41の厚みを厚くして更なる強度向上を図る場合に、環状部41と主筋27、帯筋28及びPC鋼線26が干渉することを回避し易くなっている。なお、環状部41と端板42を厚くすることにより、補強リブ43による補強をせずに強度と剛性を向上させることもできる。
【0027】
連結部材40、40を介した、互いに隣接した柱部材21、11間の連結は、互いの端板42のボルト穴44に不図示のボルトを挿入して不図示のナットで締結することで行う。端板42、42間に鉄板を挟むことで、建て入れ調整を行うことができる。
【0028】
連結部材50の構成は、後述する図3(A)に示すように連結部材40と同様であり、ただ径が異なるだけである。柱部材21と柱部材31の連結構造は柱部材21と柱部材11との連結構造と同様であり、柱部材21の上端部、柱部材31の下端部にそれぞれ連結部材50、50を設けて連結する。柱部材31内の内部構造も柱部材21と同様である。
【0029】
以上の構成からなる塔状構造物Aでは、その柱体1が下側から上側へ向かって全体的には縮径しているので、地震や風力による振れを低減できる。また、柱部材21、31はその下部22、32が相対的に大径であることから、連結部分の剛性を確保することができる。
【0030】
柱部材間の連結はフランジ部を有する連結部材40、50を介して行ったことから、建て入れ調整が可能であり、また、上部より相対的に太径の環状部41の存在により連結部分の剛性を更に向上できる。径変化部24(縮径部位1a)は環状部41よりも上方に位置していることから、柱部材21の太い部分(下部22)が環状部41で補強され、相乗的に剛性を向上できる。柱体1は全体として円筒体であり、中実の場合よりも軽量化が図れることから、特に、上部の重量を負担する下部において、必要な剛性を低下させることができる。
【0031】
次に、柱部材21に連結部材40、50を一体的に設ける例について説明する。図3(A)は本発明の一実施形態に係る型枠構造の断面図を示しており、この型枠構造は柱部材21に連結部材40、50を一体的に設けて柱構成部材20を製造するためのものである。
【0032】
この型枠構造は、型枠60と、型枠60に対して固定端側に位置する型枠70と、緊張端側に位置する型枠80と、を主要な構成としている。型枠60は、半割りの部材を組み付けることで構成される、全体として円筒状の部材であって、柱部材21を構成する鉄筋籠(主筋27、帯筋28)を、その長手方向両端部を除いて囲む。図3(A)はコンクリート部25を構成するコンクリートの投入前の状態を示し、破線L1はコンクリート部25の内周の位置を示しており、型枠60の内周面は、コンクリート部25の外周面を形成することになる。
【0033】
型枠60は、柱部材21の下部22に対応した大径部61と、上部23に対応した小径部62と、径変化部24に対応した径変化部63と、を有している。大径部61と小径部62の各端部には、それぞれフランジ部61a、62aが形成されている。また、型枠60の外周面には、その長手方向の複数個所に設けられ、遠心力成形時にローラRが当接して型枠60を回転させるための円環状のタイヤ部64が設けられている。
【0034】
図3(A)に加えて図3(B)を参照して型枠70について説明する。図3(B)は型枠70の斜視図である。型枠70は半割りの部材70a、70bを組み付けることで構成される、全体として円筒状の部材であり、連結部材40のフランジ部42’、補強リブ43及び環状部41の一部を囲んでいる。
【0035】
型枠70は、円筒部71と円筒部71の両端部に設けられたフランジ部72、73とを備える。フランジ部72は円筒部71の半径方向外方にのみ突出し、フランジ部73は円筒部71の半径方向外方及び内方の双方に突出している。
【0036】
フランジ部73の内方突出部分には、ボルト穴73aが設けられている。型枠60のフランジ部61aには不図示のボルト穴が設けられており、フランジ部73の内方突出部分とフランジ部61aを当接して、このボルト穴とボルト穴73aにボルトを挿入してナットで締結することで両者を固定することができる。
【0037】
このように本実施形態では、型枠60に対して型枠70を分離可能としているが、溶接等により固着してもよい。但し、分離可能とすることで型枠70を交換することで、異なる連結部材40にも対応可能となる。
【0038】
フランジ部73の内方突出部分の内径と、型枠60の大径部61の内径とは同径となっており、フランジ部73の内方突出部分の内周面は連結部材40の環状部41の外周面に当接している。
【0039】
型枠70の外周部と内周部とには、それぞれ、補強リブ71a、74が複数設けられている。補強リブ71aはフランジ部72、73及び円筒部71の外周面に接続されており、円筒部71の周方向に離間して複数設けられている。補強リブ74はフランジ部73及び円筒部71の内周面に接続されており、円筒部71の周方向に離間して複数設けられている。補強リブ74は、連結部材40の補強リブ43と干渉しない位置に設けられている。これらの補強リブ71a、74を設けたことで型枠70の剛性を向上できるが、これらを設けない構成も採用可能である。
【0040】
連結部材40のフランジ部42’(端板42)の外側には、プレストレス力を負担する固定端側のエンドプレート100が設けられている。エンドプレート100は円板上をなした金属製(例えば鋼製)の部材であって、不図示のボルト及びナットにより端板42に締結されて固定されており、プレストレス力の作用時に端板42を補強する。
【0041】
型枠70のフランジ部72はエンドプレート100の周縁部に当接する一方、上記のとおり、フランジ部73の内方突出部分は型枠60のフランジ部61aに当接する。このため、型枠70は型枠60とエンドプレート100との間に介在してエンドプレート100や型枠60と共にプレストレス力を負担する。
【0042】
次に、図3(A)を参照して型枠80について説明する。型枠80は、型枠70と同様の構成であり、半割りの部材を組み付けることで構成される、全体として円筒状の部材であり、連結部材50の一部及びエンドプレート101を囲んでいる。
【0043】
連結部材50は、上記連結部材40と同様の構成の、金属製(例えば鋼製)の部材であって、円筒状の環状部51と、環状部51の端面に接続された端板52と、を備え、端板52の一部は、環状部51の径方向外方に突出したフランジ部52’を構成している。フランジ部52’にはボルト穴44が複数設けられている。フランジ部52’にボルト穴(不図示)が設けられる点、及び、補強リブ53が設けられる点も連結部材40と同様であり、補強リブ53は環状部51の周囲に複数設けられ、環状部51とフランジ部52’とに接続されている。型枠80は連結部材50のフランジ部52’、補強リブ53及び環状部51の一部を囲んでいる。
【0044】
連結部材50のフランジ部52’(端板52)の外側には、プレテンション力が作用する緊張端側のエンドプレート101が設けられている。エンドプレート101は円板上をなした金属製(例えば鋼製)の部材であって、不図示のボルト及びナットにより端板52に締結されて固定されており、プレテンション力の作用時に端板52を補強する。
【0045】
型枠80は、円筒部81と円筒部81の両端部に設けられたフランジ部82、83とを備え、型枠70と同様の構成であるが、円筒部81の全長が円筒部71よりも長めとなっている。フランジ部82は円筒部71の半径方向外方にのみ突出し、フランジ部83は円筒部81の半径方向外方及び内方の双方に突出している。
【0046】
フランジ部83の内方突出部分には、ボルト穴(不図示。ボルト穴73aと同様。)が設けられている。型枠70のフランジ部62aには不図示のボルト穴が設けられており、フランジ部83の内方突出部分とフランジ部62aを当接して、これらのボルト穴にボルトを挿入してナットで締結することで両者を固定することができる。
【0047】
このように本実施形態では、型枠60に対して型枠80も分離可能としているが、溶接等により固着してもよい。但し、分離可能とすることで型枠80を交換することで、異なる連結部材50にも対応可能となる。
【0048】
フランジ部83の内方突出部分の内径と、型枠60の小径部62の内径とは同径となっており、フランジ部83の内方突出部分の内周面は連結部材50の環状部51の外周面に当接している。また、円筒部81の内径と、連結部材50のフランジ部52’の外径及びエンドプレート101の外径とは同径となっており、フランジ部52’の外周面及びエンドプレート101の外周面は円筒部81の内周面に当接している。このため、エンドプレート101に対して矢印d1方向にプレテンション力が作用した場合に、エンドプレート101及び連結部材50は、矢印d1方向に変位可能となっている。エンドプレート101及び連結部材50はPC鋼線26の伸び量だけ変位し、円筒部81の全長はこの変位が許容されるように、余裕を持って設定される。
【0049】
型枠80の内周部には、補強リブ84が複数設けられている。補強リブ84はフランジ部83及び円筒部81の内周面に接続されており、円筒部81の周方向に離間して複数設けられている。補強リブ84は、連結部材50の補強リブ53と干渉しない位置に設けられている。また、型枠70の補強リブ71aと同様の補強リブ(不図示)が型枠80にも設けられる。これらの補強リブを設けたことで型枠80の剛性を向上できるが、これらを設けない構成も採用可能である。
【0050】
型枠80のフランジ部83は、上記のとおり、その内方突出部分が型枠60のフランジ部62aに当接する一方、フランジ部82は支持部材90の一方端部のフランジ部91に当接し、型枠80は型枠60と支持部材90との間に介在する。本実施形態の場合、支持部材90は在来の型枠を利用したものであって、半割の部材を組み付けることで構成される、全体として円筒状の部材であり、緊張端側においてプレテンション力を負担する。支持部材90は、連結部材50のフランジ部52’(端板52)の外側に配置されており、その他方端部は固定される。型枠80の外周面にもタイヤ部92が設けられている。
【0051】
型枠90の内部には、棒状の引張部材102が挿通しており、引張部材102の端部はエンドプレート101に連結されている。引張部材102は不図示の引張装置に連結されて矢印d1方向に引っ張られ、これによりエンドプレート101及び連結部材50が矢印方向に引っ張られる。その際、支持部材90、型枠60、70、80、エンドプレート100及び連結部材40は不動である一方、エンドプレート101及び連結部材50は型枠80内でd1方向に変位してPC鋼線26が緊張する。こうしてプレテンション力が付与される。
【0052】
その後、引張部材102を適宜方法にて支持部材90に固定し、PC鋼線26の緊張状態を維持した状態として引張装置から分離し、コンクリートの投入、ローラR上での遠心力成形を行い、柱構成部材20を製造することができる。
【0053】
本実施形態では、このようにして柱部材21と連結部材40、50とを一体的に製造することができる。特に、緊張端側において型枠80を設け、その内部をエンドプレート101及び連結部材50が変位可能としたことから、緊張端側に連結部材(50)を柱部材(21)に一体的に設けることが可能となった。このため、柱部材(21)の両端部に連結部材(40、50)を有する柱構成部材(20)を製造することが容易化する。
【0054】
また、型枠70、80が連結部材40、50の補強リブ43、53を囲むように構成したことから、連結部材(40、50)に補強リブ(43、53)を設けた構成においても、これらと型枠が干渉することを回避して、プレテンション力を負担させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、柱部材21がその途中で外径が変化した構成の場合を例に挙げたが、軸方向全体に渡って同径の柱部材と連結部材とを一体的に製造する場合等、型枠形状の変更により、各種形状の柱部材と連結部材とを一体的に製造する場合にも、上記の型枠構造が適用可能である。
【0056】
また、型枠80の端部の外径ないし構成は、支持部材90に応じて適宜変更可能である。図4は別実施形態の型枠構造を示しており、図3(A)の例とは型枠80、支持部材90の構成が若干異なっている。
【0057】
図4の実施形態では、型枠80に代えて型枠80’が、支持部材90に代えて支持部材90’がそれぞれ採用されている。支持部材90’は、型枠60の小径部62と同径の在来型枠を利用した構成となっている。型枠80’は、型枠80のフランジ部82を、フランジ部83と同様の構成のフランジ部82’としており、また、補強リブ84’をフランジ部82’と円筒部81とに接続している。円筒部81は図3(A)の実施形態の円筒部81よりも若干長くなっている。
【0058】
図4の実施形態の利点は、型枠80’の両側の型枠60、支持部材90’について同径の型枠を利用可能とする点にある。例えば、柱部材21が軸方向全体に渡って同径の柱部材である場合、型枠60及び支持部材90’に相当する部分を在来の型枠をそのまま利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
A 塔状構造物
1 柱体
10、20、30 柱構成部材
11、21、31 柱部材
60、70、80 型枠
100、101 エンドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを支持する柱状の塔状構造物を構成する柱構成部材を製造するための型枠構造であって、
前記柱構成部材が、
PHC又はPRC製の柱部材と、
前記柱部材の一方の端部に設けられ、隣接する別の前記柱構成部材を連結するための連結部材と、を備え、
前記連結部材が、
前記柱部材の端部を囲む環状部と、
前記環状部に接続され、他の前記柱構成部材と連結されるフランジ部と、を備え、
前記型枠構造は、
前記柱部材を構成する鉄筋籠を囲む第1型枠と、
前記第1型枠と、前記フランジ部の外側に配置され、プレテンション力を負担する緊張端側の支持部材と、の間に介在し、前記連結部材がプレテンション力の作用方向に変位可能に、前記フランジ部及び緊張端側のエンドプレートを囲む第2型枠と、
を備えたことを特徴とする型枠構造。
【請求項2】
アンテナを支持する柱状の塔状構造物を構成する柱構成部材を製造するための型枠構造であって、
前記柱構成部材が、
PHC又はPRC製の柱部材と、
前記柱部材の一方の端部に設けられ、隣接する別の前記柱構成部材を連結するための連結部材と、を備え、
前記連結部材が、
前記柱部材の端部を囲む環状部と、
前記環状部に接続され、他の前記柱構成部材と連結されるフランジ部と、
前記環状部の周囲に複数設けられ、前記環状部と前記フランジ部とに接続された補強リブ部と、を備え、
前記型枠構造は、
前記柱部材を構成する鉄筋籠を囲む第1型枠と、
前記第1型枠と、前記フランジ部の外側に配置され、プレテンション力を負担する固定端側のエンドプレートと、の間に介在し、前記フランジ部及び前記補強リブ部を囲む第2型枠と、
を備えたことを特徴とする型枠構造。
【請求項3】
前記連結部材が、前記環状部の周囲に複数設けられ、前記環状部と前記フランジ部とに接続された補強リブ部を備え、
前記第2型枠は前記補強リブ部を囲むことを特徴とする請求項1に記載の型枠構造。
【請求項4】
前記第2型枠の内周部において、前記補強リブ部と干渉しない位置に型枠用補強リブ部を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の型枠構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−67024(P2013−67024A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205214(P2011−205214)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】