説明

型枠装置

【課題】内枠体を成形したブロックからスムーズに引き出すことができる型枠装置を提供する。
【解決手段】外枠体14と、同外枠体内に配置する内枠体15と、同内枠体を外枠体内に出し入れする出し入れ部8とを具備して、直線状の貫通中空孔を有するブロックを成形する型枠装置であって、内枠体15は、外枠体14内において、型枠組み立て状態である拡径姿勢と、成形したブロックから離脱させるための縮径姿勢とに姿勢変更自在となすと共に、出し入れ部8は、内枠体15中に貫通させて同内枠体15を外枠体14から出し入れ自在に支持するアーム体10を具備し、拡径姿勢の内枠体15は、外枠体14に支持されて、同内枠体15の上面成形部が上記アーム体10から一定間隔だけ浮上する一方、縮径姿勢の内枠体15は、浮上していた一定間隔だけ自重で降下してアーム体10に上面成形部が当接支持されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に直線状に貫通する中空孔を有するブロック、例えば、側溝ブロック、暗渠ブロック、ボックスカルバート等のコンクリート製のブロックを成形する型枠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、型枠装置の一形態として、外枠体と、同外枠体内に配置する内枠体と、同内枠体を外枠体内に出し入れする出し入れ部とを具備して、直線状の貫通中空孔を有するブロックを成形するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、かかる型枠装置は、成形したブロックの脱型時には内枠体を縮径させた後、倍力機構を利用して内枠体を押し上げながら外枠体から引き出すことにより、成形したブロックから離脱させるようにしている。
【特許文献1】実公平6−44646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した型枠装置では、成形したブロックの脱型に際して、倍力機構を利用して内枠体を押し上げながら引き出して、成形したブロックから離脱さるようにしているために、成形したブロックの内面が損傷されることや、内枠体がスムーズに離脱されないという不具合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明では、外枠体と、同外枠体内に配置する内枠体と、同内枠体を外枠体内に出し入れする出し入れ部とを具備して、直線状の貫通中空孔を有するブロックを成形する型枠装置であって、内枠体は、外枠体内において、型枠組み立て状態である拡径姿勢と、成形したブロックから離脱させるための縮径姿勢とに姿勢変更自在となすと共に、出し入れ部は、内枠体中に貫通させて同内枠体を外枠体から出し入れ自在に支持するアーム体を具備し、拡径姿勢の内枠体は、外枠体に支持されて、同内枠体の上面成形部が上記アーム体から一定間隔だけ浮上する一方、縮径姿勢の内枠体は、浮上していた一定間隔だけ自重で降下してアーム体に上面成形部が当接支持されるようにしたことを特徴とする型枠装置を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、次の構成にも特徴を有する。
【0007】
(1)出し入れ部には、内枠体の上面成形部を架設状に当接支持する左右一対のアーム体を具備し、両アームの先端部間に先端側連結体を横架すると共に、両アームの基端部間に基端側連結体を横架して枠状に形成し、先端側連結体は、内枠体の引き出し時に同内枠体の一端に係合する一端側係合片となす一方、基端側連結体は、内枠体の押し込み時に同内枠体の他端に係合する他端側係合片となしたこと。
【0008】
(2)外枠体を支持している支持部に、伸縮スライド部を介して出し入れ部をスライド自在に取り付けると共に、伸縮スライド部は、伸長方向に伸延する複数のスライド体を重合状態に配置し、隣接するスライド体同士の略半部が重合状態となるように伸長させて、支持部に伸縮スライド部を介して出し入れ部を張り出し状態に片持ち支持させるようにしたこと。
【発明の効果】
【0009】
(1)請求項1の本発明では、外枠体と、同外枠体内に配置する内枠体と、同内枠体を外枠体内に出し入れする出し入れ部とを具備して、直線状の貫通中空孔を有するブロックを成形する型枠装置であって、内枠体は、外枠体内において、型枠組み立て状態である拡径姿勢と、成形したブロックから離脱させるための縮径姿勢とに姿勢変更自在となすと共に、出し入れ部は、内枠体中に貫通させて同内枠体を外枠体から出し入れ自在に支持するアーム体を具備し、拡径姿勢の内枠体は、外枠体に支持されて、同内枠体の上面成形部が上記アーム体から一定間隔だけ浮上する一方、縮径姿勢の内枠体は、浮上していた一定間隔だけ自重で降下してアーム体に上面成形部が当接支持されるようにしている。
【0010】
このように、成形したブロックの脱型時には、縮径姿勢の内枠体が浮上していた一定間隔だけ自重で降下して成形ブロックから離脱し、アーム体に上面成形部が当接支持されるため、出し入れ部により内枠体を成形ブロック及び外枠体からスムーズに引き出すことができる。従って、その後は外枠体を型開きするだけであるため、成形ブロックを傷つけることなく簡単に取り出すことができる。また、引き出し部により内枠体を引き出す際に、大きな作用力を要しないため倍力機構を設ける必要性がなくなり、型枠装置自体の構造を小型化かつ簡易化することができる。
【0011】
(2)請求項2記載の本発明では、出し入れ部には、内枠体の上面成形部を架設状に当接支持する左右一対のアーム体を具備し、両アーム体の先端部間に先端側連結体を横架すると共に、両アーム体の基端部間に基端側連結体を横架して枠状に形成し、先端側連結体は、内枠体の引き出し時に同内枠体の一端に係合する一端側係合片となす一方、基端側連結体は、内枠体の押し込み時に同内枠体の他端に係合する他端側係合片となしている。
【0012】
このように、左右一対のアーム体と先端側連結体と基端側連結体とを枠状に枠組み形成しているため、片持ち状のアーム体の剛性を確保することができると共に、先端側連結体と基端側連結体がそれぞれ内枠体と係合する係合片としても機能して、同内枠体を確実に出し入れすることができる。
【0013】
(3)請求項3記載の本発明では、外枠体を支持している支持部に、伸縮スライド部を介して出し入れ部をスライド自在に取り付けると共に、伸縮スライド部は、伸長方向に伸延する複数のスライド体を重合状態に配置し、隣接するスライド体同士の略半部が重合状態となるように伸長させて、支持部に伸縮スライド部を介して出し入れ部を張り出し状態に片持ち支持させるようにしている。
【0014】
このように、伸長方向に伸延する複数のスライド体同士の略半部が重合状態となるように伸長させることができるため、成形するブロックの長さに応じて適宜長尺の伸縮スライド部を簡単に形成することができる。従って、内枠体の出し入れ作業を良好に確保することができて、効率よく成形ブロックの脱型を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の最良の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る型枠装置Aの側面説明図、図2は同型枠装置Aの背面説明図である。
【0017】
型枠装置Aは、図1及び図2に示すように、支持部1上に前後方向に伸延する型枠本体2を載設して構成しており、直線状の貫通中空孔を有するブロック(図示せず)を製品として成形可能としている。
【0018】
支持部1は、左右方向に伸延する複数(本実施形態では3個)の枕体3を前後方向に間隔を開けて配置し、これら枕体3の上に前後方向に伸延する左右一対のスライドレール体4,4を載設して構成している。
【0019】
スライドレール体4,4間には伸縮スライド部5を配設しており、同伸縮スライド部5は、図6及び図7にも示すように、伸長方向(本実施形態では前後方向)に伸延させて背面視枠状に形成した複数(本実施形態では2本)のスライド体6,7を入れ子状に重合状態に配置し、隣接するスライドレール体4,4とその内方に配置した基端側のスライド体6の略半部同士が重合状態となるように伸長させ、そして、基端側のスライド体6とその内方に配置した先端側のスライド体7の略半部同士が重合状態となるように伸長させて、支持部1に伸縮スライド部5を介して出し入れ部8を張り出し状態に片持ち支持させるようにしている。4a,7aは、それぞれガイドローラである。
【0020】
出し入れ部8は、図5にも示すように、前記先端側のスライド体7の先端部(後端部)に支柱9を立設して、同支柱9から前方へ向けて左右一対のアーム体10,10を略水平に伸延させ、両アーム体10,10の先端面間に横長四角形板状の先端側連結体11を横架すると共に、両アーム体10,10の基端部間に断面L字状の基端側連結体12を横架して枠状に形成し、先端側連結体11は、後述する内枠体15の引き出し時に同内枠体15の一端に係合する一端側係合片となす一方、基端側連結体12は、内枠体15の押し込み時に同内枠体15の他端に係合する他端側係合片となしている。13は支柱9の後面上部に設けた把持部であり、同把持部13を作業者が把持して、出し入れ部8を伸縮スライド部5を介して前後方向にスライド移動させて、後述する外枠体14内に内枠体15を人力にて出し入れ自在となしている。
【0021】
型枠本体2は、上面開口の外枠体14と中子としての内枠体15と前後一対の鏡面成形体16,16と開口部形成体17とから形成している。
【0022】
そして、外枠体14は、倒立状態に成形されるブロックの上端面を成形する上端面成形片である基底部片14aの左右側縁部に、支点14b,14bを中心として、左右外側面成形片14c,14cを直立状態と外側方への傾斜状態とに開閉自在となして、脱型時には型開き可能となしている。
【0023】
鏡面成形体16には、図5に示すように、倒立状態に成形されるブロックの中空孔と同形状の開口内周縁部16aを設けており、前後に対向させて鏡面成形体16,16を配置して、両鏡面成形体16,16の開口内周縁部16a,16a間に前後方向に伸延する筒状の内枠体15を貫通状態に架設することにより、内枠体15を中子として設置して、同内枠体15により中空孔を成形するようにしている。そして、鏡面成形体16は、前記基底部片14aの前後端部に、支点16b,16bを中心として、鏡面成形体16,16を直立状態と外側方への傾斜状態とに開閉自在となして、脱型時には内枠体15を引き抜いた後に型開き可能となしている。この際、内枠体15の下面中途部は開口部形成体17の凹条上面により支持されるようにしている。
【0024】
内枠体15は、図4に示すように、上面成形部としての、すなわち本実施形態では倒立状態に成形されるブロックの中空孔底面を成形する底面成形片である支持片15aと、中空孔の左右側面を成形する左右一対の側面成形片である拡縮径片15b,15bと、両拡縮径片15b,15bに作用する作用片15cを具備している。
【0025】
そして、支持片15aは前後方向に伸延する板状に形成して、同支持片15aの左右側縁部に拡縮支点部15d,15dを介して拡縮径片15b,15bの基端縁部(上端縁部)を連結している。また、拡縮径片15b,15bは前後方向に伸延する板状に形成して、両拡縮径片15b,15bの先端縁部(下端縁部)間に、前後方向に伸延する帯状に形成した作用片15cを進退自在に介在させている。18は両拡縮径片15b,15bの中途部間に介設した拡縮連結体、19は拡縮連結体18に連動連設した拡縮作動ロッド、図1に示す20は拡縮作動ロッドの後端に連設した拡縮操作体であり、同拡縮操作体20を回動操作することにより、両拡縮径片15b,15bを拡縮径操作することができるようにしている。21,22は作用片固定具であり、これら作用片固定具21,22の基端部は鏡面成形体16,16の下部に枢支部23,24を介して枢支する一方、これら作用片固定具21,22の先端部は作用片15cの前・後端部に突設した固定用突片25,26に係脱自在に係止している。
【0026】
ここで、拡縮径片15b,15bの先端縁部(下端縁部)間に作用片15cを介在させた状態が、拡縮径片15b,15bの拡径状態であり、鏡面成形体16,16の開口内周縁部16a,16aに前後端部が当接した型枠組立状態である。この際、作用片固定具21,22の先端部は作用片15cの固定用突片25,26に係止している。また、拡縮径片15b,15bの先端縁部(下端縁部)間から、作用片15cを上方へスライドさせて退避させた状態、かつ、拡縮径片15b,15bの先端縁部同士が接近した状態が、拡縮径片15b,15bの縮径状態であり、鏡面成形体16,16の開口内周縁部16a,16aから前後端部が離隔した型枠解体状態である。この際、作用片固定具21,22の先端部は作用片15cの固定用突片25,26から係止解除している。
【0027】
支持片15aの下面には背面視T字状の懸架体27を前後方向に間隔を開けて複数垂設して、これら懸架体27を介して前記した左右一対のアーム体10,10間に支持片15aを懸架している。そして、内枠体15の引き出し時に、一端側係合片である先端側連結体11が最前部の懸架体27に当接して係合すると共に、内枠体15の押し込み時に、他端側係合片である基端側連結体12が最後部の懸架体27に当接して係合するようにしている。従って、内枠体15は、前後方向の動きは上記連結体11,12により規制され、かつ、左右方向の動きは懸架体27を介して左右一対のアーム体10,10により規制されるが、上下方向の動きは自由となる。
【0028】
そして、拡縮径片15b,15bの拡径状態では、内枠体15は前後に対向する鏡面成形体16,16の開口内周縁部16a,16a間に支持されると共に、左右一対のアーム体10,10から上方へ一定間隔tだけ浮上するようにしている(図4(a)参照)。具体的には、懸架体27の左右側部27a,27aの下面がアーム体10,10の上面から一定間隔(例えば、2mm)tだけ上方へ離隔するようにしている。
【0029】
また、拡縮径片15b,15bの縮径状態では、内枠体15は浮上していた一定間隔tだけ自重で下方へ降下し、左右一対のアーム体10,10に支持片15aが当接支持されて、内枠体15がアーム体10,10にぶら下がり状態に支持されるようにしている。具体的には、懸架体27の左右側部27a,27aの下面が一定間隔(例えば、2mm)tだけ降下して、アーム体10,10の上面に接触するようにしている。この際、支持片15aと左右一対の拡縮径片15b,15bの表面は、ブロックの中空孔の内周面から一定間隔(例えば、約2mm)tだけ離隔している。従って、内枠体15をブロックからスムーズに引き抜いて離脱させることができる。
【0030】
このように、本実施形態の型枠装置Aでは、中子としての内枠体15を自重で落下させるだけの簡易な構成で、成形したブロックから内枠体15を容易に引き抜いて離脱させることができるため、安価に型枠装置Aを製造することができると共に、同型枠装置Aにより能率良くブロックを成形及び脱型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る型枠装置の側面説明図。
【図2】同型枠装置Aの背面説明図。
【図3】鏡面成形体の背面図。
【図4】(a)内枠体の拡径状態の説明図、(b)内枠体の縮径状態の説明図。
【図5】(a)出し入れ部の平面説明図、(b)出し入れ部の側面説明図。
【図6】(a)伸縮スライド部の伸長状態の平面説明図、(b)伸縮スライド部の短縮状態の平面説明図、(c)(b)のI−I線断面説明図。
【図7】図6(b)のII−II線断面説明図。
【符号の説明】
【0032】
A 型枠装置
1 支持部
2 型枠本体
5 伸縮スライド部
8 出し入れ部
10 アーム体
14 外枠体
15 内枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠体と、同外枠体内に配置する内枠体と、同内枠体を外枠体内に出し入れする出し入れ部とを具備して、直線状の貫通中空孔を有するブロックを成形する型枠装置であって、
内枠体は、外枠体内において、型枠組み立て状態である拡径姿勢と、成形したブロックから離脱させるための縮径姿勢とに姿勢変更自在となすと共に、
出し入れ部は、内枠体中に貫通させて同内枠体を外枠体から出し入れ自在に支持するアーム体を具備し、
拡径姿勢の内枠体は、外枠体に支持されて、同内枠体の上面成形部が上記アーム体から一定間隔だけ浮上する一方、縮径姿勢の内枠体は、浮上していた一定間隔だけ自重で降下してアーム体に上面成形部が当接支持されるようにしたことを特徴とする型枠装置。
【請求項2】
出し入れ部には、内枠体の上面成形部を架設状に当接支持する左右一対のアーム体を具備し、両アームの先端部間に先端側連結体を横架すると共に、両アームの基端部間に基端側連結体を横架して枠状に形成し、
先端側連結体は、内枠体の引き出し時に同内枠体の一端に係合する一端側係合片となす一方、基端側連結体は、内枠体の押し込み時に同内枠体の他端に係合する他端側係合片となしたことを特徴とする請求項1記載の型枠装置。
【請求項3】
外枠体を支持している支持部に、伸縮スライド部を介して出し入れ部をスライド自在に取り付けると共に、伸縮スライド部は、伸長方向に伸延する複数のスライド体を重合状態に配置し、隣接するスライド体同士の略半部が重合状態となるように伸長させて、支持部に伸縮スライド部を介して出し入れ部を張り出し状態に片持ち支持させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の型枠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−17911(P2010−17911A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179272(P2008−179272)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(592133346)有限会社オンガ (2)
【Fターム(参考)】