説明

型枠

【課題】インサートナットなどの筒状体を、強固に、容易に、かつ安全に型枠のせき板内面に取り付ける。
【解決手段】棒状又はワイヤー状の引張部材をせき板の外側から内側に貫通して突出させ、そのせき板内側の外周に弾性筒部材を装着する。引張部材の、弾性筒部材の装着された部分の先端側にフランジ部が形成され、作動手段で引張部材を外側方向に引張移動させたときに、弾性筒部材がせき板内面とフランジ部で圧縮されて増径し、引張部材がせき板の内側方向に移動したときに弾性筒部材が縮径するようにすることで、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートナットや貫通孔を形成する筒などの筒状体を埋設したコンクリート製品を成形する型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
インサートなどの筒状体を型枠に取り付け、筒状体をコンクリート製品に埋設する技術は、例えば、下記特許文献1,2に開示されている。
このような技術の最も一般的なものは、せき板の外側から内側に向かってボルトを突出させ、このボルトにせき板の内側からインサートナットを螺着し、インサートナットをせき板内面に固定するものである。
コンクリート製品の脱型に際しては、ボルトを回転してインサートナットとの螺着を解除し、しかる後コンクリート製品を型枠から取り除く。
また、せき板内面に弾性体でなるボスを突出させておき、このボスにインサートナットなどの筒状体を押し込んで固定する技術もある。この場合、ボスの外径は筒状体の内径よりもやや大きくなっており、ボスの弾性により筒状体を型枠内面に確実に固定できるようにするのが一般的である。
脱型は、ボスはそのままの状態でコンクリート製品をボスの軸線方向に無理矢理引き抜く方法(一般的方法)と、ボスをせき板から外側に引き抜いた後にコンクリート製品を型枠から取り除く方法がある。
【特許文献1】特開2000−210926号公報
【特許文献2】特開2002−36218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の、ボルトでインサートナットをせき板内面に固定する方法は、インサートナットを強固に固定できるので、コンクリートを型枠に投入する衝撃などで、インサートナットがせき板から浮き上がり又は脱落したり、曲がって埋設されてしまうおそれがない。
しかし、ボルトを螺着し/取り外す作業(ボルトを回転する作業)がきわめて煩雑なばかりか、型枠の下側などの手の届かない場所に用いることが出来ず、また、このような場所で無理に作業を行うのは危険であるという問題があった。
前記の、せき板内面のボスに筒状体を押し込んで固定する方法は、せき板内面に比較的簡単に筒状体を固定することができるが、強固な固定とはならず、コンクリートを型枠に投入する衝撃などで、筒状体がせき板内面から浮き上がり又は脱落したり、曲がった状態で埋設されてしまうおそれがあった。
【0004】
本発明は、インサートナットなどの筒状体を、強固に、容易に、かつ安全に型枠のせき板内面に取り付けられるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔請求項1〕
本発明は、インサートナットなどの筒状体を埋設したコンクリート製品を成形する型枠であって、
前記筒状体を取り付ける筒状体取付部を備え、
該筒状体取付部は、せき板の外側から内側に貫通して突出する棒状又はワイヤー状の引張部材と、せき板の内側において前記引張部材の外周に装着された弾性筒部材と、前記引張部材をその軸線方向に移動させる作動手段を有し、
前記引張部材の前記弾性筒部材の装着された部分の先端側にフランジ部が形成され、
前記引張部材を前記作動手段によりせき板の外側方向に引張移動させたときに、前記弾性筒部材がせき板内面と前記フランジ部で圧縮されて増径し、前記引張部材がせき板の内側方向に移動したときに前記弾性筒部材が縮径することを特徴とする型枠である。
【0006】
インサートナットなどの筒状体を弾性筒部材に差し込んで装着し、引張部材を作動手段によりせき板の外側方向に移動させると、弾性筒部材がせき板内面とフランジ部で圧縮されて増径し、弾性筒部材の外面が筒状体の内面に押圧され、筒状体がせき板内面に強固に固定される。
コンクリート製品を脱型するときは、引張部材を作動手段により強制的にせき板の内側方向に移動させるか、又は、作動手段の引張を解除すると、弾性筒部材の圧縮が解除され、弾性筒部材が元通りに縮径し、コンクリート製品を型枠から容易に取り出すことができる。
【0007】
引張部材は、ボルトなどの棒状部材、ワイヤー、棒状部材とワイヤーの組み合わせとすることができる。
弾性筒部材の材質としては、例えば、反撥弾性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れたポリエステル系ウレタンプレポリマーやポリエーテル系ウレタンプレポリマーなどが好適である。
【0008】
〔請求項2〕
また本発明は、インサートナットなどの筒状体を埋設したコンクリート製品を成形する型枠であって、
前記筒状体を取り付ける筒状体取付部を備え、
該筒状体取付部は、せき板の外側から内側に貫通して突出する棒状又はワイヤー状の引張部材と、せき板の内側において前記引張部材の外周に装着された弾性筒部材と、該弾性筒部材の外周に装着され該弾性筒部材よりも高硬度で弾性的に増径・縮径可能な外側筒部材と、前記引張部材をその軸線方向に移動させる作動手段を有し、
前記引張部材の前記弾性筒部材の装着された部分の先端側にフランジ部が形成され、
前記引張部材を前記作動手段によりせき板の外側方向に引張移動させたときに、前記弾性筒部材がせき板内面と前記フランジ部で圧縮され、前記弾性筒部材と前記外側筒部材が増径し、前記引張部材がせき板の内側方向に移動したときに前記弾性筒部材と前記外側筒部材が縮径することを特徴とする型枠である。
【0009】
インサートナットなどの筒状体を外側筒部材に差し込んで装着し、引張部材を作動手段によりせき板の外側方向に移動させると、弾性筒部材がせき板内面とフランジ部で圧縮され、弾性筒部材及び外側筒部材が増径し、外側筒部材の外面が筒状体の内面に押圧され、筒状体がせき板内面に強固に固定される。
コンクリート製品を脱型するときは、引張部材を作動手段によりせき板の内側方向に移動させるか、又は、作動手段の引張を解除すると、弾性筒部材の圧縮が解除され、弾性筒部材及び外側筒部材が元通りに縮径し、コンクリート製品を型枠から容易に取り出すことができる。
弾性筒部材を単独で用いると、表面に油が付着して摩擦が低下したり、締固めのバイブレーターの振動などにより、筒状体がせき板表面から浮き上がるおそれがあるが、弾性筒部材と、これよりも高硬度(ビッカース硬さ)の外側筒部材の二重構造とすることで、筒状体をしっかりと固定でき、このようなおそれがなくなる。また、弾性筒部材の摩擦による劣化が緩和され、耐久性も向上する。
【0010】
〔請求項3〕
また本発明は、前記外側筒部材の内周面及び外周面が粗面となっている請求項2に記載の型枠である。
【0011】
外側筒部材の内周面及び外周面を粗面とすることで、外側筒部材と弾性筒部材、及び外側筒部材と筒状体の摩擦が増大し、筒状体をより強固にせき板内面に固定できる。
粗面はRaで20〜80μm程度、Ryで100〜200μm程度が適当である。
【0012】
〔請求項4〕
また本発明は、前記粗面が、前記外側筒部材の内周面及び外周面において円周方向に形成された多数の溝によって形成されている請求項3に記載の型枠である。
【0013】
粗面が、外側筒部材の内周面及び外周面において円周方向に多数の溝を形成したものとすると、外側筒部材と弾性筒部材、及び外側筒部材と筒状体の軸方向の引き抜き力に対する摩擦抵抗がさらに大きくなり、筒状体をより強固にせき板内面に固定できる。
【0014】
〔請求項5〕
また本発明は、前記外側筒部材が、全長に亘る長さ方向の切断部を有する金属製筒である請求項1〜4のいずれかに記載の型枠である。
【0015】
外側筒部材を金属製とすることで、外側筒部材の耐久性が大きくなる。この金属素材は、例えば鋼のような、硬く、しかも弾性に富んだものがよい。全長に亘る長さ方向の切断部を設けることにより、弾性的に増径・縮径可能となる。「弾性的に増径・縮径可能」とは、弾性筒部材が増径したときに、これに伴って弾性変形により増径し、弾性筒部材が縮径したときに、これに伴って縮径(弾性復帰)することである。
【0016】
〔請求項6〕
また本発明は、前記フランジ部が前記引張部材に螺着したナットである請求項1〜5のいずれかに記載の型枠である。
【0017】
フランジ部を引張部材に螺着したナットとすることで、フランジ部の位置の調整を容易に行うことができ、弾性筒部材や外側筒部材の交換も容易に行うことができる。
なお、この場合の「ナット」にはナットとワッシャーの組み合わせも含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の型枠は、弾性筒部材又は外側筒部材の外周面が筒状体の内面に強制的に押圧されるので、筒状体をせき板内面に強固に固定できる。弾性筒部材と外側筒部材を併用すると、筒状体をせき板内面に非常に強固に固定でき、コンクリートを型枠に投入する衝撃や締固めのバイブレーターの衝撃などで、筒状体がせき板内面から浮き上がり又は脱落したり、曲がった状態で埋設されてしまうおそれがない。
また、筒状体の装着や脱型は、作動手段で引張部材をその軸方向に移動させることで容易に行うことができ、作動手段を操作する位置は、型枠の下側などの危険な場所を避けて容易に設定できるので、安全に作業することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例に関する図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1,2は本発明における筒状体取付部の要部断面図、図3は弾性筒部材の斜視図、図4は外側筒部材の斜視図、図5は外側筒部材の周壁を縦断した端面拡大図、図6は外側筒部材の略側面図、図7は筒状体を埋設したコンクリート製品の略断面図、図8は実施例の型枠イの略断面図、図9は実施例の型枠ロの略断面図、図10は図9におけるA−A線断面図である。
【0020】
図1,2は型枠の一部(インサートナットなどの筒状体を取り付ける筒状体取付部付近)の断面図で、せき板7はコンクリートをせき止めてキャビティーを形成し、同図においてせき板7の上側が内側(キャビティー側)、下側が外側になっている。
図1,2に示す筒状体取付部は、せき板7の外側(図1,2の下側)から内側(図1,2の上側)に貫通して内側に突出する引張部材1と、せき板7の内側において引張部材1の外周に装着された弾性筒部材4と、弾性筒部材4の外周に装着された外側筒部材5と、引張部材1をせき板7の内外方向(引張部材1の軸線方向)に作動させる作動手段を有する。作動手段は、引張部材1の下部に設けられているが、図1,2では作動手段は省略して表している。
【0021】
引張部材1は、ボルトなどの棒状の部材(この場合はM12ボルト)であればよく、その下部は任意の作動手段に接続され、これによりせき板7の内外方向(引張部材1の軸線方向)に移動可能となっている。
【0022】
弾性筒部材4は、引張部材1と同じかやや大きな内径と、せき板に取り付けるインサートナットなどの筒状体6の内径よりも小さな外径を有する筒状の部材で、その材質は、ポリエステル系ウレタンプレポリマーなどの反撥弾性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れたものから適宜選択される。
図3は弾性筒部材4の一例で、ポリエステル系ウレタンプレポリマー製の筒である。肉厚は、特に制限はないが、例えば3〜20mm程度とすることができる。
【0023】
外側筒部材5は、弾性筒部材4の外径とほぼ同じ内径と、せき板に取り付けるインサートナットなどの筒状体6の内径よりもやや小さな外径を有する筒状の部材で、弾性筒部材4よりもビッカース硬さの硬い材質であって、ある程度弾性を備え、耐摩耗性、耐衝撃性に優れた、例えば金属やエンジニアリングプラスチックなどから適宜選択される。外側筒部材5は、弾性筒部材4が増径したとき、これに伴って増径するように弾性変形し(図2)、弾性筒部材4が縮径したとき、それに伴って自らの弾性により縮径(もとに復帰)する(図1)。
図4は、外側筒部材5の一例である。これは、金属製(鋼製)筒で、その全長に亘って長さ方向の切断部8を有するので、弾性的に増径・縮径可能である。外側筒部材の肉厚に特に制限はないが、例えば0.3〜2.0mm程度とすることができる。図5に示されるように、その周壁の内周面及び外周面において、円周方向に深さ0.1〜0.2mmの多数の溝が形成されている。この外側筒部材は、例えば内径25mmのインサートナットを装着する場合に用いられる。
図6は外側筒部材5の他例で、周壁が多数の穴5を有することにより網目状となっており、これにより弾性的に増径・縮径可能となっている。
外側筒部材の長さは、弾性筒部材が圧縮できるように、その圧縮量以上、弾性筒部材の長さよりも短くなっている。
【0024】
引張部材1の弾性筒部材4の装着された部分の先端側にはフランジ部が形成されている。この場合、フランジ部はナット2及びワッシャー3の組み合わせであるが、円板状の板を溶接などで引張部材1に取り付けるなどしてもよい。
フランジ部の外径は、弾性筒部材4を圧縮するために、弾性筒部材4の内径よりも大きければよいが、充分圧縮するために弾性筒部材4の外径とほぼ同じ程度とすることが望ましい。ただし、筒状体6を装着するために、その内径よりも小さくなければならない。
【0025】
図1は、引張部材1がせき板7の内側に移動している状態で、弾性筒部材4と外側筒部材5は縮径状態にある。この状態で、インサートナットナットなどの筒状体6を外側筒部材5の周囲に装着する。この状態では、外側筒部材5の外径は筒状体6の内径よりも小さいので、筒状体を容易に装着できる。
【0026】
図2は、図1の状態から、図示されない作動手段により引張部材1をせき板の外側方向(図1,2の下側方向)に引張移動した状態である。引張部材1の移動に伴ってフランジ部(ナット2及びワッシャー3)が下側に移動し、弾性筒部材4が軸方向に圧縮されると共に半径方向に増径するように弾性変形する。これに伴って外側筒部材5も増径するように弾性変形し、その外周面が筒状体6の内面に押し付けられる。これにより、筒状体6はせき板7の内面に強固に固定される。
なお、外側筒部材5を用いない場合は、弾性筒部材4が増径するように弾性変形し、その外周面が筒状体6の内面に押し付けられる。これにより、筒状体6はせき板7の内面に強固に固定される。
【0027】
図2の状態で、型枠のキャビティー内にコンクリートが投入される。筒状体6はせき板内面に強固に固定されているので、コンクリート投入の衝撃で浮き上がり又は脱落したり曲がったりするおそれがない。
コンクリートが硬化し、コンクリート製品が成形された後、脱型が行われる。脱型に先立って、図示されない作動手段を操作して引張部材1をせき板の内側方向(図1,2の上側方向)に移動すると、弾性筒部材4の軸方向の圧縮が解除され、半径方向に縮径するように弾性復帰する。これに伴って外側筒部材5も縮径するように弾性復帰し、図1の状態になる。この状態においては、筒状体6を抵抗なく外側筒部材5の周囲から抜き取ることができるので、コンクリート製品を型枠から容易に抜き出し、脱型することができる。
図7は脱型した後のコンクリート製品Cの略断面図で、インサートナットなどの筒状体6がコンクリート製品Cの断面に埋め込まれている状態である。
【0028】
図8の型枠イは、基礎ブロックを上下反転した状態で成形するもので、基礎ブロックには各種機器を固定するためのインサートナット(筒状体6)が2個埋め込まれる。
せき板7で囲まれた部分がキャビティーで、インサートナットはせき板の下面(基礎ブロックの上面)に装着される。インサートナットを装着する機構は、図1,2と同様である。せき板7は基台13の上に載置固定されている。基台13は、H形鋼、L形鋼(いわゆるアングル)、コ字形鋼(いわゆるチャンネル)などの鋼材などで周知のごとく製作すればよい。
【0029】
この場合の作動手段はカム11である。カム11は回転軸12を中心に回転する略楕円形状のものである。回転軸12は基台13に軸着され、端部には回転させるためのハンドル(図示せず)が設けられている。2本の引張部材1の下端は棒状又は板状の連結部10に固定されている。連結部10の上面はカム12に接している。
【0030】
図8に実線で示すのは、引張部材1が型枠の内側(上側)に移動している状態で、この状態でインサートナット(筒状体6)を装着する(図1)。その後、ハンドルでカム11を回して鎖線で示す状態にすると、連結部10が下側に押し下げられ、引張部材1は下側に引っ張られるので、引張部材1はせき板の外側方向に引張移動し、インサートナット(筒状体6)がせき板の内面に固定される(図2)。
脱型に際しては、ハンドルでカム11を回して図8の実線に示すようにすると、連結部10の押し下げ及び引張部材1の引張が解除され、弾性筒部材、外側筒部材(図1,2)の弾性により連結部10及び引張部材1が上方に移動して、実線で表した状態に戻り、弾性筒部材及び外側筒部材は縮径して図1の状態となる。
このように、作動手段は、引張部材1を強制的に外側に移動させその状態を保持させる必要があるが、内側に移動させる場合は作動手段が引張部材を引っ張っている状態を解除して弾性筒部材4や外側筒部材5の弾性を利用してもよい。
【0031】
図9,10の型枠ロは、2個の枕木ブロックを上下反転した状態で同時に成形するもので、図9はその幅方向の略断面図である。それぞれの枕木ブロックの上面(型枠の下面)には、レールを固定するためのインサートナット(筒状体6)が片方の端部付近に2個、両側で4個埋め込まれる。
せき板7で囲まれた部分がキャビティーで、左右それぞれ1本ずつの枕木ブロックを成形する。インサートナットはせき板の下面(基礎ブロックの上面)に装着される。インサートナットを装着する機構は、図1,2と同様である。せき板7は基台13の上に載置固定されている。基台13は、H形鋼、L形鋼(いわゆるアングル)、コ字形鋼(いわゆるチャンネル)などの鋼材などで周知のごとく製作すればよい。
【0032】
この場合の作動手段は、作動桿14、ボルト受17、ナット20、ボルト22などである。
作動桿14は、基台13に設けた支軸15により基台に枢着され、支軸15を中心にしてシーソーのように揺動可能となっている。
作動桿14の左側端部は、4個の引張部材1の下端を連結する連結部10の垂下部10aにピン16により枢着されている。この枢着部において、ピン16が挿入される穴は作動桿14の軸方向の長穴となっており、作動桿14はその軸方向に多少移動することができる。
作動桿14の右側端部には、ボルト受17がその側面に突出形成されたピン18により枢着されている。ボルト受17にはボルト孔17aが形成され、ボルト孔17aにはボルト22が上から挿通されている。ボルト22の、ボルト受17の下側には鍔部23が形成されており、ボルト22が上下動すると、作動桿14の右側端部も上下動するようになっている(図10)。鍔部23は、ナットやドーナツ状板をボルトに溶接固定するなどして形成できる。
ボルト22の下部はナット20に螺着されている。ナット20は、基台13のアングル13aの外面に固定された支持片19に、ナット20の側面に突出形成されたピン21により枢着されている(図10)。
【0033】
図9に実線で示すのは、引張部材1が型枠の内側(上側)に移動している状態で、この状態でインサートナット(筒状体6)を装着する(図1)。その後、ボルト22をラチェットなどの工具で左回りに回転させると、ナット20に螺合している関係で、ボルト22が上昇し、鍔部23に押し上げられて作動桿14の右側も上昇する。すると、作動桿14の左側は下降し、連結部10及び引張部材1は下側に押し下げられて、引張部材1はせき板の外側に移動し、図9に鎖線で示した状態となるので、インサートナット(筒状体6)がせき板の内面に固定される(図2)。
脱型に際しては、ボルト22を右回りに回転させると、ナット20に螺合している関係で、ボルト22が下降し、ボルト頭部に押し下げられて作動桿14の右側も下降する。すると、作動桿14の左側は上昇し、連結部10及び引張部材1が上方に移動して、実線で表した状態に戻り、弾性筒部材及び外側筒部材は縮径して図1の状態となる。
この作動手段は、引張部材1を強制的に外側又は内側に移動させるものである。
【0034】
本発明において、作動手段は、実施例に示したものに限らず、引張部材をその軸線方向に移動させる種々の周知機構(例えばジャッキ、シリンダーなど)を採用できる。
また、1つの作動手段で1つの引張部材を作動させてもよいし、実施例のように、1つの作動手段で複数の引張部材を作動させてもよい。
【0035】
型枠ロについて、筒状体取付部の引張部材の外周にポリエステル系ウレタンプレポリマー製の弾性筒部材のみを装着し、インサートナットを埋設した枕木ブロックを製造した結果、バイブレーターの振動などにより、一部のインサートナットがせき板表面から僅かに浮き上がった。
型枠ロについて、筒状体取付部の引張部材の外周にポリエステル系ウレタンプレポリマー製の弾性筒部材を装着し、さらにその外周にS45C製の図4,5に示す外側筒部材を装着してインサートナットを埋設した枕木ブロックを製造した結果、インサートナットの浮き上がりは完全に解消された。
これにより、外側筒部材を用いることで、インサートナットなどの筒状体をより強固に固定できることが実証された。
【0036】
本発明の型枠で成形するコンクリート製品は、実施例の基礎ブロックや枕木ブロックに限らず、側溝用ブロック、擁壁用ブロックなどあらゆるコンクリート製品の成形に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明における筒状体取付部の要部断面図である。
【図2】本発明における筒状体取付部の要部断面図である。
【図3】弾性筒部材の斜視図である。
【図4】外側筒部材の斜視図である。
【図5】外側筒部材の周壁を縦断した端面拡大図である。
【図6】外側筒部材の略側面図である。
【図7】筒状体を埋設したコンクリート製品の略断面図である。
【図8】実施例の型枠イの略断面図である。
【図9】実施例の型枠ロの略断面図である。
【図10】図9におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 引張部材
2 ナット
3 ワッシャー
4 弾性筒部材
5 外側筒部材
6 筒状体
7 せき板
8 切断部
9 穴
10 連結部
11 カム
12 回転軸
13 基台
14 作動桿
15 支軸
16 ピン
17 ボルト受
18 ピン
19 支持片
20 ナット
21 ピン
22 ボルト
23 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートナットなどの筒状体を埋設したコンクリート製品を成形する型枠であって、
前記筒状体を取り付ける筒状体取付部を備え、
該筒状体取付部は、せき板の外側から内側に貫通して突出する棒状又はワイヤー状の引張部材と、せき板の内側において前記引張部材の外周に装着された弾性筒部材と、前記引張部材をその軸線方向に移動させる作動手段を有し、
前記引張部材の前記弾性筒部材の装着された部分の先端側にフランジ部が形成され、
前記引張部材を前記作動手段によりせき板の外側方向に引張移動させたときに、前記弾性筒部材がせき板内面と前記フランジ部で圧縮されて増径し、前記引張部材がせき板の内側方向に移動したときに前記弾性筒部材が縮径することを特徴とする型枠。
【請求項2】
インサートナットなどの筒状体を埋設したコンクリート製品を成形する型枠であって、
前記筒状体を取り付ける筒状体取付部を備え、
該筒状体取付部は、せき板の外側から内側に貫通して突出する棒状又はワイヤー状の引張部材と、せき板の内側において前記引張部材の外周に装着された弾性筒部材と、該弾性筒部材の外周に装着され該弾性筒部材よりも高硬度で弾性的に増径・縮径可能な外側筒部材と、前記引張部材をその軸線方向に移動させる作動手段を有し、
前記引張部材の前記弾性筒部材の装着された部分の先端側にフランジ部が形成され、
前記引張部材を前記作動手段によりせき板の外側方向に引張移動させたときに、前記弾性筒部材がせき板内面と前記フランジ部で圧縮され、前記弾性筒部材と前記外側筒部材が増径し、前記引張部材がせき板の内側方向に移動したときに前記弾性筒部材と前記外側筒部材が縮径することを特徴とする型枠。
【請求項3】
前記外側筒部材の内周面及び外周面が粗面となっている請求項2に記載の型枠。
【請求項4】
前記粗面が、前記外側筒部材の内周面及び外周面において円周方向に形成された多数の溝によって形成されている請求項3に記載の型枠。
【請求項5】
前記外側筒部材が、全長に亘る長さ方向の切断部を有する金属製筒である請求項1〜4のいずれかに記載の型枠。
【請求項6】
前記フランジ部が前記引張部材に螺着したナットである請求項1〜5のいずれかに記載の型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−76267(P2010−76267A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247350(P2008−247350)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(593059429)トヨタ工機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】