説明

埋め込み型ボルタ電池

本発明は、被験体の体内に埋め込むためのボルタ電池を提供する。そのボルタ電池は、酸化性の生体物質を酸化し、動作するよう電流を生成する。ボルタ電池は、内部仕切りを有する生物的に不活性な殻を備える。その内部仕切りは、カソード環境及びアノード環境を含み、殻の外側表面にあるアノード環境は、体液に接触する。コネクタはアノード環境をカソード環境へ接続し、アノード環境とカソード環境の間で抵抗を与えるコンポーネントを有する。殻は、殻内に配置された少なくとも一つの塩橋を備える。その塩橋は、内部仕切りと体液の間で小イオンの通過を可能にする。その結果、回路が完全となる。本発明はまた、グルコース測定器のような装置を提供する。その装置は、連続的にグルコースを検出し、信号を外部装置へ送信する。外部装置は、血糖値のようなアウトプットを提供する。同様に方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化性生体物質に機能する埋め込み型バッテリ装置に関する。より詳細には、本発明は、グルコースの酸化によって電流を生成するボルタ電池に関する。装置は一般に、埋め込み型医療装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年5月5日に出願した米国仮出願番号60/797,680の利益を主張する。その開示は、その全てについて参照によってここに組み込まれる。
【0003】
疾病対策センター(CDC)によると、米国だけで2000万人を超える糖尿病患者が存在する。この数字は、1年あたり推定11%の割合で増加している。CDCによると、落ち度のある糖尿病管理から生じた合併症の治療に年間で数十億ドルが費やされている。特定(正常血糖)の範囲内における血糖値の厳格な管理が、短期から中期までの糖尿病性合併(例えば、糖尿病性ケトアシドーシス)だけでなく長期の合併症(例えば、糖尿病性網膜症による失明、手足などの切断、循環器疾患、腎機能障害など)を防止することに極めて重要であることをその医学文献は示している。しかしながら、標準的に良いとされている管理は、現在のところ、1日に何度か指に痛みを伴わせることを必要とする。その管理は、患者に対して、被験体自身でランセットを刺すことである。多くの糖尿病患者は、「ピンを刺すような感じがある」と述べている。そして、投与計画を監視する毎日は、よくても受け入れがたいものであり、ある場合には我慢できないものであることが分かる。
【0004】
多くの場合、糖尿病を管理するために血糖値を人前で監視しなければならないことは、糖尿病患者を当惑させる。そして、指へ突き刺すこと及び血液の絞り取りは、他の人を不愉快にし、しばしば、感染病にさらされていることについて心配されている。ある特定の社会は、彼らの糖尿病を汚名と結びつける。それは、患者が、汚名を着せられることを恐れて、糖尿病としての状況を知っている家族、友達、又は、近隣の人を欲しがらなくなるほどである。これは、落ち度のある糖尿病管理に関連した血糖値の不適切な監視、及び合併症のリスクをしばしば引き起こす。これは、糖尿病の母集団における疾病率及び死亡率の増加に対する大きな一因となる。汚名についての不安は、十代の若者にとっては特に重大となる可能性がある。それは、青年期の始まりにより、糖尿病治療における思いがけない質の悪化を生じ、毎年多くの十代が糖尿病によって死亡するという結果に結びつく。
【0005】
従って、糖尿病患者は、血糖値を監視するために、単純で、使い勝手が良く、非侵襲的、かつ不連続な手段を待ち望んでいる。
【0006】
いくつかの方法は、現在のところ、最も一般的である指にランセットを刺す方法を用いて血糖値を測定することが利用されている。指にランセットを刺すことは、小さいランセットを用いて指に突き刺すこと、そして、傷から少量の血液を絞り出すことを含む。その血液は検査片で吸い取る(外部のグルコース測定器内に検査片を入れる)。または、少量の血液を外部のグルコース測定器に直接入れる。この投与計画は、痛みを伴い、不便であって、患者の糖尿病の状態に対して注意を喚起する。
【0007】
その他の糖尿病管理装置は、インスリンポンプを含む。インスリンポンプは、本質的には患者によって取り付けられたグルコース測定器である。そのグルコース測定器は、プラスチック管を有する。そのプラスチック管は、患者の腹部における解放孔を介して直接通し、そして、患者の体液内の血糖値の連続的なサンプリングを可能にする。インスリンポンプは、血糖値を連続的に監視し、インスリンポンプ内のコンピュータプログラムによって決定された通りの適切なインスリンの投与量を注入する。これは、理論上は円滑なインスリン投与と良好な糖尿病管理を可能にする。しかしながら、装置が、誤動作する可能性や、患者を重篤な合併症又は低血糖による死に導く可能性がある。また、感染症のリスクも存在する。それら装置は、高価であり、患者の保険によっては保証されない可能性があり、定期的な整備、修理、調整が必須となる。
【0008】
患者の血糖値濃度のリアルタイム監視を確実に提供する安価かつ埋め込み型グルコース測定器のための技術的必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概要
本発明は、日常的に指にランセットを刺すことの必要を伴うことなく血糖値を監視するための埋め込み型グルコース測定器を提供する。問題の解決策は、体液内の生体物質によって電力を供給するバッテリのより一般的な発明を提供する。
【0010】
従って、本発明は、酸化性生体物質によって電力を供給するボルタ電池を提供する。そのような発明は、被験体の体内で用いるボルタ電池を提供する。そのボルタ電池は、内部仕切りを定義する生物的に不活性な殻を含み、内部仕切りが、還元反応を仲介するイオン溶液を含む。内部仕切りは、イオン溶液内に少なくとも一つのカソード(カソード環境)を含み、殻は、その外表面に取り付けられた少なくとも一つのアノード(アノード環境)を有する。そのアノードは、埋め込まれた場合、被験体の体液と接触する。アノードは、生体物質が酸化した場合、酸化反応により電子を受け取る。ボルタ電池は、ワイヤのようなコネクタを有する。そのコネクタは、アノードをカソードに接続し、そして、アノードとカソード間で抵抗を具備するコンポーネントを有する。殻はまた、殻内に配置された少なくとも一つの塩橋を備える。その塩橋は、内部仕切りと体液の間でイオンの通過を可能にする。その結果、回路を完全にする。
【0011】
酸化性生体物質は、被験体内で得られる酸化可能な任意の生体物質とすることができる。例えば、これらに限定しないが、その物質は、グルコース、炭水化物、コレステロール、脂肪酸、アミノ酸、ポリペプチド、脂質、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体などである。好ましくは、その物質はグルコースである。
【0012】
本発明のある実施例において、ボルタ電池は、ウイルス、バクテリア、寄生生物、プリオンなどの外来微粒子又は感染粒子や、クマディン(商標)又は合成プロスタサイクリンなどの薬剤のためのセンサーとなるよう適用される。
【0013】
ある実施例において、ボルタ電池は、複数のアノードとカソードのどちらか一方、又は、それらの両方を有する。ある実施例において、カソードは、非磁性物質(これらに限定しないが、銀、アルミニウム、鉛、マグネシウム、プラチナ、金、酸化スズ、二酸化チタン、タングステン、金属合金、非金属合金、半導体、半金属)から構成される。ある実施例において、アノードはアンモニア分子と錯体を形成し、酸化反応のポテンシャルを変化させる。ある実施例において、アノードは、触媒と錯体を形成し、酸化反応の活性化エネルギーを変化させる。
【0014】
ボルタ電池の殻は、生物的に不活性かつ不透過性の物質から形成することが可能である。その殻は、複数の塩橋を備える。また、その殻は、内部仕切りのイオン溶液と、周りの体液との間でイオンの通過を可能にする半透過性の物質から構成することも可能であり、その結果、実質的に多くの塩橋を有する殻として機能する。
【0015】
ボルタ電池内のコネクタはワイヤとすることができるが、電流の導通を可能にする任意の接続部は、本発明のコネクタに適している。
【0016】
ある実施例において、ボルタ電池のアノードは、アノードを覆う不活性なバリアを有する。そのバリアは、アノードのバイオファウリングを防止するよう酸化性生体物質のみがアノードにアクセスすることを可能にする。ある実施例において、この不活性層は、アノードにだけ存在する。他の実施例において、被膜は、アノード上の不活性バリアを形成する殻の外側表面に適用することができ、小イオン及び酸化性物質のみが、アノード及び塩橋にアクセスすることを可能にする。
【0017】
アノードとカソードとの間で抵抗を具備するコンポーネントは、標準的なレジスタとすることができる。また、そのコンポーネントは例えば、マイクロ無線送信機のような装置とすることも可能である。その送信機は、電流を電波に変換する。
【0018】
ある実施例において、アノード環境は殻内で区画化され、カソード環境は殻の外側部分に配置される。
【0019】
本発明はまた、被験体内の血糖の連続的な監視を可能にする埋め込み型グルコース測定器を提供する。グルコース測定器は、酸化/還元反応が体内で自己永続的であるように自己的に持続する。本発明のグルコース測定器は、酸化性生体物質としてグルコースを用いるよう適用された本発明のボルタ電池と、体外の検出装置を備える。検出装置は、埋め込まれたグルコース測定器の近傍に配置することができ、グルコース測定器によって生成された信号を検出することが可能である。被験体の血糖値を決定できるようにするために、検出された信号は、血糖値に対して自動的に装置により関係付けされ、そして、その血糖値は、装置によってアウトプットとして提供される。監視は、間欠的又は連続的とすることができ、そして、埋め込まれたグルコース測定器のごく近く又は遠隔操作で実行することが可能である。さらに、装置からのアウトプットは、装置それ自体によって表示することができ、さらに、一又は二以上の他の装置(これらに限定しないが、コンピュータ端末、アラーム装置、携帯電話のような遠隔計測装置、手持ち型無線装置などである)へ送信することも可能である。
【0020】
ある実施例において、検出装置は、電流を検出する電流計である。ボルタ電池が無線送信機を備える、ある実施例において、検出装置は、グルコース測定器によって生成された電波を検出する無線受信機である。
【0021】
本発明はまた、本発明のボルタ電池を被験体内に埋め込むことによって、さらに、ボルタ電池によって生成された信号を検出することによって、被験体の体内における生体物質のレベルを監視する方法を提供する。その方法は、信号と被験体における体液内の生体物質の量とを関連付けし、被験体における体液内の生体物質の量に関する値のアウトプットを提供する。
【0022】
ある実施例において、本発明は、グルコース測定器を用いて被験体における血糖値の監視のための方法を提供する。血糖値は、間欠的又は連続的に監視してもよい。そして、血糖値は、自動的に監視してもよい。
【0023】
本発明はまた、埋め込み型医療装置に電力を供給するための方法を提供する。この方法において、本発明の一又は二以上のボルタ電池は、埋め込まれる装置に操作可能に接続され、装置にバッテリ電力を供給する。直列又は並列に配置される複数のボルタ電池によって、装置に電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ここに参照された任意の参考文献、特許、特許出願、及び/又は科学論文は、当業者の知識を明確にし、それらの全てについての参照によってここに組み込まれる。ここに言及された任意の参考文献と、本明細書の詳細な教示との間で矛盾が生じる場合には、本明細書によって確認されるものとする。
【0025】
多数の定義は、本明細書内で明確に示す。単語は通常、当業者によって理解される通りの意味を有するものとする。特に、定義した単語は、ここに定められた定義で付される意味を有する。技術的に理解される明らかな意味と、ここに具体的に示される明らかな意味との間で矛盾が生じる場合には、本明細書で具体的に示された定義については、技術的に認められている定義を優先すべきである。表題は、単に便宜のために用いられ、任意の方法における開示を制限するように解釈されるべきではない。
【0026】
標準的な基準は、一般原則の説明をもたらす。当業者に既知である電気化学は、Champe, P. & Harvey, R. LIPPINCOTT'S ILLUSTRATED REVIEWS, 2ND ED. Lippincott, Williams and Wilkins, 1994 and Brown, et al. CHEMISTRY: THE CENTRAL SCIENCE, 10TH EDITION. Pearson Education, 2006を含み、参照によってここに組み込まれる。
【0027】
ここで用いられる用語「酸化性生体物質」(oxidizable biological material)は、被験体の体内に生じる有機物質を意味するものとする。その物質は、体内において、より陽性となったその物質の任意の構成原子の酸化状態に影響を受けやすい。
【0028】
ここで「グルコースの酸化」に言及する場合、これは、グルコースの任意の酸化生成物を形成するグルコース分子内における任意の原子の、より陽性となった酸化状態を含む。
【0029】
ここで「還元」に言及する場合、これは、より少ない陽性(より陰性)となった酸化体の酸化状態(還元)を含む。
【0030】
ここで用いられる用語「ボルタ電池」は、塩橋によって接続されている分離したアノード及びカソード環境のバッテリに適用する。それはまた、ガルバニ電池又は電気化学電池と呼ばれる。
【0031】
ここで用いられる用語「生体適合性」は、物質が無毒性あるという状況、かつ、被験体の体が物質に対して免疫反応が起こらないという状況に適用される。
【0032】
ここで用いられる用語「被験体」は、哺乳動物のような動物に適用され、望ましくは人間である。
【0033】
ここで用いられる用語「アノード」は、基本的な酸化を発生させる電極に適用される。「アノード環境」は、アノードとして機能する酸化環境に適用される。
【0034】
ここで用いられる用語「カソード」は、基本的な還元を発生させる電極に適用される。「カソード環境」は、カソードとして機能する還元環境に適用される。
【0035】
ここで用いられる用語「塩橋」は、電気化学セルの分離した環境間のイオン伝導性経路に適用される。塩橋は伝導性物質又は伝導性ゲルを含むことが可能である。
【0036】
ここで用いられる用語「半透過性」は、ある物質が、特定の分子に対して、その物質を介して流れることを可能にするが、他の分子では流れないという状況に適用される。
【0037】
ここで用いられる用語「不透過性」は、ある物質が、その物質を介した任意の分子又は大きい原子の流れを認めない状況に適用される。
【0038】
ここで用いられる用語「小イオン」は、H+、O2(技術的には、O2はイオンでは無いが、ここでは、「小イオン」によって含まれる)、そして、回路を完全にするのに必要である任意のイオンに適用される。小イオンは塩橋を介して流れることができる。小イオンには、高分子(例えば、繊維素、高分子錯体、酵素、共同因子など)又は、より大きいイオン(例えば、銀イオンなど)は含まれない。
【0039】
ここで用いられる用語「レジスタ」は、抵抗の固定値を有する電気回路の要素に適用される。
【0040】
ここで用いられる用語「電流計」は、電流を検出する装置に適用される。
【0041】
ここで用いられる用語「無線受信機」は、無線送信機によって発せられた電波を検出する装置に適用される。
【0042】
ここで用いられる用語「糖」は、単糖類、アルドース、ケトース、二糖類、オリゴ糖、ホモ多糖、ヘテロ多糖類、配糖体、複合糖質などに適用される。
【0043】
ここで用いられる用語「グルコース」は、単糖類、コモンヘキソース糖に適用される。ここでは、「血糖」及び「血清グルコース」は同意語として用いられる。
【0044】
ここで用いられる用語「ポリペプチド」は、アミノ酸から形成される天然化合物に適用され、タンパク質及びタンパク小片を含む。
【0045】
ここで用いられる用語「ポリヌクレオチド」は、重合核酸に適用され、DNA及びRNAを含む。
【0046】
ここで用いられる用語「ヌクレオチド」は、一つのヌクレオチド、複数のヌクレオチド、又は、それぞれの派生物に適用される。
【0047】
ここで用いられる用語「コレステロール」は、細胞膜に見られえる、式10,13-dimethyl-17-(6-methylheptan-2-yl)-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-ol (C27H46O)のステロールに適用され、動物の血中内で運ばれる。コレステロールの酵素的酸化は、オキシステロールを形成する。
【0048】
ここで用いられる用語「グルコース測定器」は、被験体の血糖値を測定する装置に適用される。本発明のグルコース測定器は、埋め込み可能な部分を有し、その埋め込み可能な部分は、グルコースの酸化から電流を生成することによってグルコースを「検出」する。外部装置は、電流を検出する。その外部装置はさらに、電気信号を血糖値のための相関性を有する値に変換するデータの操作を介して、リアルタイムで被験体の血糖値を示すアウトプットを提供する。グルコース測定器は、例えば、より完全にここに記載されているような低血糖又は高血糖を表すアラームなどの追加の機能を有することができる。
【0049】
ここで用いられる用語「グリコトクシシティ」(glycotoxicity)は、さまざまな病的代謝プロセスに続発する長期にわたる高血糖による組織毒性に適用され、過剰なグルコースがソルビトールへ転化することを含む。これや他の細胞有毒代謝体は、網膜(失明を引き起こす)、脈管構造(脳梗塞、心筋梗塞、無気力などのような循環器疾患を引き起こす)、神経(体肢の痛み又はうずき、そして、結果として生じるこれら組織の知覚麻痺を伴う糖尿病性神経障害を引き起こす。適切な血流の欠如において、感染症及び組織の損傷は、回避不能であり最終的に生じる壊疽及び切断を積み重ねることとなる)に取り返しのつかないダメージを時間をかけて与える。
【0050】
ここで用いられる用語「検体」は、分析可能な生体液内の物質に適用される。検体は、体内に自然に生じる物質とすることができ、病原体(ウイルス、寄生生物、バクテリアなどである)や病原体の生成物とすることも可能である。それはまた、薬剤であっても良い。
【0051】
ここで用いられる用語「約」は、所定の基準値の+/−10%に適用される。
【0052】
本発明は、生体物質の酸化によって電力を供給する埋め込み型ボルタ電池を提供する。ボルタ電池については、酸化反応及び還元反応が、分離した環境内で生じる。
【0053】
本発明の特定の実施例において、ボルタ電池はグルコース測定器である。本発明のグルコース測定器は、糖尿病患者の被験体における経時的な血糖値を外部の受信機に送信する血糖監視装置である。最初の埋め込みの後、本発明のグルコース測定器は、指にランセットを刺す必要性を有することなく、非侵襲的な測定を可能にする。この技術は、痛みのないグルコース監視を可能にし、間欠的に、連続的に、そして、患者又は医療スタッフによって一定間隔で判断された都合が良い時に要求に応じることができる。さらに、患者自身で投与量を計算することが困難である患者のために特に、必要なインスリン投与量を計算するよう適応させることができる。これは、血糖値の絶妙な制御を可能にする。従って、長期間にわたる糖尿病における度重なるグリコトクシシティの続発症を未然に防ぎ回避する。また、血液の代謝の病的酸性化における生死に関わるスパイラル(a life-threatening spiral of metabolic pathological acidification of the blood)である糖尿病性ケトアシドーシスなどの高血糖による短期間の合併症を回避することにも役立たせることができる。ケトアシドーシスの発病は、糖尿病管理における実にわずかな過ち(インスリン投与ミスや、投与忘れ)から急激な血糖値の上昇に続いて発生する。
【0054】
本発明の方法は、被験体における検体の濃度を監視することを備え、また、生体物質の酸化から生じる電流を用いて装置に電力を与える。
【0055】
次に、より詳細な本発明のボルタ電池のコンポーネントを説明する。
【0056】
ボルタ電池の殻
埋め込み部は、酸化還元反応部の半分が生物反応を生じない殻に含まれているボルタ電池である。その殻の生物反応が生じないという性質は、殻に対して免疫反応が起こる(アレルギー反応、過敏症、繊維症、ボルタ電池の免疫破壊が起こることなど)ことから被験体を回避し、さらに、カソード環境からアノード環境の分離を可能にする。
【0057】
殻は生体適合性物質からなり、その生体適合性物質は、例えば、ポリマー(例えば、テフロン(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、PEG/PEO、など)、そして、生体適合性のためにコーティング又は隙間を埋めることによって処理されたプラスチックなどである。他の有機的又は無機的な生体適合性を有する非導電性物質も用いることができ、その物質は、処理された非免疫原性のシリコン又はグリコサミノグリカン/軟骨性物質(例えば、軟骨/ヒアルロン酸など)又は溶かして精製されたそれら、処理された非免疫原性のプロテオグリカン物質、そして、炭素系分子足場(carbon-based molecular scaffolds)(例えば、炭素系ナノチューブ、炭素系フラーレン(例えば、バックミンスターフラーレン構造))などである。
【0058】
殻は一般的に不透過性にすることができ、殻内に少なくとも一つの塩橋を有する。ある実施例において、不透過性は、複数の塩橋を含むことが可能である。他の実施例において、殻は反透過性である。これにより、殻の有孔性は、イオンが殻を行き来することを可能にすることによって塩橋としての役目を果す。反透過性の膜は、これらに限定しないが、反透過性ポリマー、寒天、多孔質無機プレート(ガラスやシリコンなど)、有機膜(炭素系など)、脂質系膜(膜の透過性を調節するために荷電を行う又は荷電を行わない)などの物質から作られる(一部分において、生体適合性、費用、イオン透過性プロファイル、毒性プロファイル(理想は無毒である)、そして、免疫原性プロファイルに応じる)。殻に用いられる物質に応じて、反透過性膜は、多孔質的、局部的、又は拡散的に小イオンの透過性を考慮することが可能である(例えば、回路を完全にするのに必要であるH+、 O2、又は他のイオンは通すが、高分子(例えば、繊維素、高分子錯体体、酵素、共同因子など)又は、より大きいイオン(例えば、銀イオンなどのような)の流入は認めない)。
【0059】
殻の形状(一般的なボルタ電池)は制限されないが、ある形状は、被験体の体内で特別な実用的特徴を有することができる。従って、ボルタ電池は、チューブ管状、円筒形状、円錐形状、ドーナツ形状、U形状、V形状、ひし形状、球状、卵形状、長方形状、そして、四次元超立方体形状とすることができ、メッシュ、U形状のメッシュ、円錐形状のメッシュ、ドーナツ形状のメッシュ、チューブ管状のメッシュなどの形となる電池の塊を形成することが可能である(実施例を説明した図5を参照)。
【0060】
カソード
「カソード」は一般にカソード環境である。ボルタ電池の殻内に含まれるカソードが少なくとも一つ存在する。そのカソードは還元半反応(reduction half-reaction)を起こすイオン溶液と接触する。カソードは望ましくは磁気を帯びておらず、そして、これらに限定しないが、銀、アルミニウム、鉛、マグネシウム、プラチナ、金、酸化スズ、二酸化チタン、タングステン、そして、ステンレス鋼、黄銅、半金属、半導体のような非磁性の合金などの金属から形成される。カソードは、還元反応において作用する能力がある非金属から形成することも可能である。ある実施例において、ボルタ電池は単一のカソードを備える。他の実施例において、ボルタ電池は、複数のカソード又はカソードとしてそれ自身が機能するカソード環境を備える。
【0061】
イオン溶液
ボルタ電池のイオン溶液は、銀ジアンミン錯体[Ag(NH3)2+]、銀、銅、鉄塩を含むことができる。イオン溶液における銀の使用は、以下でより完全に説明される。
【0062】
糖のカルボニル基の酸素が任意の他の化学構造に結合されていない場合、糖は還元糖であり、そして、ボルタ電池を駆動する酸化還元反応における酸化還元対の還元剤として作用することができる。アルデヒド又はαヒドロキシメチルケトンを含む炭水化物は、Cu(II)イオンによって酸化することができ、そして、還元糖(例としては、グルコース及びフルクトースである)として分類される。それらは、Cu(II)イオンをCu(I)に還元する。

【0063】
従って、バッテリにおいて、殻内のイオン溶液のAg +陽イオンは、Cu2+によって置き換えられ、発電反応を駆動するように新しい酸化還元対を設定する(ここでは、体液又は溶液内の還元糖の存在を判別する手段であるベネディクト検査を根拠とする。この検査は以前、糖尿病の診断において用いられていた)。さらに、アノードセンサーにおける酵素触媒を用いた膜は、活性化エネルギーを低下させることによって、反応を容易にするよう適応させることが可能である。しかし、酵素基質なしでも、自然発生する熱力学的反応は効果がある。体液内の還元糖は、体液と接触するアノードにおいて、酸化することとなる。そして、電子は、殻内のカソードにおいて銅陽イオンを還元するようコネクタを介してアノードにおける糖から流れる。他の実施例と同様に、細孔(塩橋などの)は、回路、及び、装置又はレジスタを完全にするよう採用することができる。その装置又はレジスタは、電力を供給又は信号を送信するように動作する回路に配置される。Cu及び触媒の修飾又は錯体は、このボルタ電池の熱力学的現象や、活性化エネルギー、性能を変化させるよう用いることができる。
【0064】
アノード
殻の外部表面に少なくとも一つのアノードが存在する。そのアノードは体液と接触し、酸化反応を発生させる。アノードは望ましくは、非磁性の金属から形成される。その非磁性の金属は、これらに限定しないが、銀、アルミニウム、鉛、マグネシウム、プラチナ、金、酸化スズ、二酸化チタン、タングステン、そして、ステンレス鋼、黄銅、半金属、半導体のような非磁性の合金などである。アノードは、酸化反応において作用する能力がある非金属から形成することも可能である。ある実施例において、ボルタ電池は単一のアノードを備える。他の実施例において、ボルタ電池は、複数のアノードを備える。本発明のアノードは、酵素と錯体を形成することができる。その酵素は、関心のある生体物質の酸化に触媒作用を及ぼす。オキシダーゼは、技術的に既知であり、最適な特定のシステム用に適切に選択され得る。酵素のアノードへの結合はまた、技術的に既知であり、任意の既知の手段によって選択され得る。例えば、酵素は透過層に適用することができ、そして、その透過層は選択的に安定剤(stabilizers)を含むことが可能である。酵素はまた、この層において固定化させることが可能である。
【0065】
コネクタ
カソード及びアノードは、コネクタによって他の一つに接続される。コネクタは、例えば、ワイヤとすることができるが、アノードからカソードへの電流の流入を可能にする任意の接続部とすることもできる。コネクタは望ましくは、非磁性の導電性金属から形成される。コネクタはまた、接続部に沿って抵抗を具備するコンポーネントを備える。コンポーネントは、例えば、単一のレジスタとすることができる。コンポーネントは、電流を電波に変換するマイクロ無線のような無線送信機とすることも可能である。コンポーネントは、ボルタ電池によって電力が供給される、その他の装置とすることも可能である。
【0066】
塩橋
塩橋には殻内に任意の開口部が存在する。開口部は、小イオンの通過を可能にする。塩橋には、殻内において小さい孔を存在させることができ、選択的に小イオンの通過を可能にする。ボルタ電池の殻は、少なくとも一つの塩橋を備える。ある実施例において、殻は複数の塩橋を備える。他の実施例において、殻は半透過性であり、殻は、事実上、多数の塩橋を備えることとなる。
【0067】
任意的要素
ボルタ電池は任意で、生物学的に適合した境界層である不活性境界層をさらに含むことが可能である。その不活性境界層は、殻の外部表面上のアノードに配置される。不活性境界層は、巨大分子のアノードへのアクセスを抑制し、アノードに到達するように小イオンの通過のみを可能にする。この層は、ボルタ電池のバイオファウリングを防止するよう境界を形成する。ある実施例において、境界層はアノードのみを覆う。他の実施例において、境界層は、殻の表面上の層として適用される。このような場合は、境界層の適用の結果、殻の塩橋の障害物が存在しないこととなる。一般に、バイオファウリングを防止する境界層には任意のものを用いることができる。境界層は立体障害、サイズ排除、表面張力、物質移動、その他任意の技術的に既知である手段によって機能することができる。例えば、境界層は、多孔質ポリマーから成るものとすることが可能であり、その多孔質ポリマーは、巨大分子を排除するが、グルコース及び他の検体の通過を可能にする。ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレンテレフタル酸エステル)(PET)、そして、脂質層などの物質を採用することが可能である。
【0068】
ボルタ電池はまた、抗凝固剤で覆われるようにすることでき、殻周辺の血液の凝固を防止する。抗凝固剤は技術的に既知であり、抗凝固剤を用いたコーティング装置及び、その埋め込まれる物体も技術的に既知である。抗凝固剤は、浴することや、吹き掛けること、浄化すること、浸漬、化学的又は他の方法で内部に固定化すること、あるいは、装置の表面又は他の任意の部分に組み込むことによって適用することが可能である。抗凝固剤はまた、装置又は装置の任意の部分に適用された浸漬膜とすることができる。さまざまな抗凝固剤は、技術的に既知である。ヘパリンは、本発明の使用に適した例である。
【0069】
ボルタ電池はまた、コラーゲン沈着又は他の基質タンパク質の沈着についての抑制剤で覆われるものとすることができ、ボルタ電池のカプセル化を防止する。ポリエチレングリコール(PEG)又はフェノールの化学構造は、適切な抑制剤の例である。その抑制剤は、ボルタ電池の表面からタンパク質の付着を抑制するよう用いることが可能である。
【0070】
ボルタ電池は、電気回路内に追加の電子コンポーネント又は電気物理コンポーネントを含むことができ、そのコンポーネントは、例えば、キャパシタ、半導体、トランジスタ、整流器、送信機、受信機、レジスタ、基準電極などであり、ボルタ電池の利用に応じて埋め込まれる。当業者であれば、特定の利用のためのボルタ電池の性能を最適化するよう所望の効果を達成する回路について熟知している。
【0071】
触媒(酵素又はその他のもの)は、電極又は酸化還元反応の生じるある場所で任意に提供することができ、活性化エネルギーの変更及び/又はボルタ電池の性能の調節を行う。例えば、酸化酵素は、電池におけるアノード又はその近くで、錯体を形成することが可能である。生体物質を酸化させる酵素の例は、これらに限定しないが以下のものを含む。
【0072】

【0073】
従って、ボルタ電池のアノード部分に錯体を形成することが可能な酵素の非限定的な例は、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、1-アミノ酸オキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、ウリカーゼ、乳酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、プトレッシンオキシダーゼ、そして、ポリアミンオキシダーゼを含む。さらに、酸化還元メディエータ、酸化還元リミッタ、そして、酸化還元アンプは、必要又は希望に応じて提供されることが可能である。
【0074】
外部装置
ボルタ電池は被験体の体内、望ましくは皮下に埋め込まれており、ボルタ電池が生成した信号を検出する外部装置への容易なアクセスを可能にする。一般に、外部装置は、ボルタ電池から信号を検出し、アウトプットを出力する。ある実施例において、検出対象の信号は電流である。他の実施例において、検出対象の信号は無線である。他の実施例において、信号は磁束である(外部装置が、インダクタンスを通して、埋め込まれた装置に対して、問い合わせすることを可能にする)。他の実施例において、埋め込まれたボルタ電池から遠隔測定的に信号を受信する。外部装置は回路を備えることが可能であり、その回路は、装置から受信したデータを基準化し、フィルターにかけ、クリーニングを行い、平滑化し、増幅し、又は、記憶する。外部装置はまた、受信データを分析することができ、ボルタ電池が検出した検体の濃度を計算することが可能である。例えば、外部装置は、外部装置によって実行されるプログラムによる計算及び/又はアルゴリズムに基づいて、ボルタ電池が検出した血糖濃度を計算することができる。外部装置はデータを記憶することも可能であり、データを他の装置(例えば、コンピュータ、モニター、アラーム、携帯電話、ブラックベリー(商標)などのような無線手持ち型装置など)へ送信することもさらに可能である。この外部装置の機能は制限されず、ボルタ電池の利用のために適切かつ有用な任意のものとすることできる。
【0075】
ある実施例において、外部装置は電流計である。他の実施例において、外部装置は、無線受信機である。外部装置は、ボルタ電池の信号を要求に応じて間欠的又は連続的に監視することができる。外部装置は、ボルタ電池にごく近接して配置することができる(例えば、埋め込まれたボルタ電池が存在する被験体の領域に手持ち型外部装置をかざすなど)。外部装置は、被験体によって取り付けることができる。そして、外部装置は、腕時計のような装置、首輪(とりわけ、被験体が動物の場合)、ベルト、そして、被験体に取り付けるのにその他適した形状の形態をとることが可能である。外部装置はまた、より遠隔に存在させることができる。例えば、その遠隔地は、壁に取り付ける、テーブルの天板、そして、ボルタ電池から信号を検出するよう被験体に十分近い他の位置などである。そのような装置は、病院、クリニック、養護施設、教室、家、犬小屋などにおける被験体の近くに都合よく配置することができる。そのような装置は、とりわけ、被験体が自分自身で確実な監視ができない(特に子供、お年寄り、身体障害者、病気などによって行動能力を奪われた者、精神障害者、動物など)場合に被験体の監視を可能にする。
【0076】
外部装置は、測定された検体(血糖など)の濃度の測定値を提供することができ、そして、アラームや、測定値に基づいて薬剤を摂取するための指示(インスリン投与)などを提供することができる。そのようなものとして、ボルタ電池は、装置が得た測定値に基づいて薬剤を投与する装置に接続することが可能である。薬剤投与装置は、ボルタ電池に接続することができ、又は、被験体から離れて接続することもできる。そして、外部装置が生成した信号に応答することも可能である。
【0077】
本発明のボルタ電池は、他の埋め込み型装置に電力を与えるバッテリとして用いることができる。ボルタ電池は、埋め込み型装置に対して操作可能に接続することができ、そして、準備済みの生体物質源(グルコース)を用いて電力を供給させることができる。ボルタ電池は、所望の利用法に応じて、静電容量が増加するよう、そして、電圧が維持するように並列で配置させることができる。また、静電容量を維持する間、電圧が上昇するように直列に配置することもできる。
【0078】
測定対象の検体
本発明のボルタ電池の原理は、幅広い適用性を有し、生体物質の酸化を検出可能な信号へ変換する装置として用いることが可能である。従って、本発明のボルタ電池は、多種多様な検体のための検出装置として用いることができる。本発明のボルタ電池は、少なくとも一つの検体を検出可能であり、複数の検体を検出するよう構成させることができる。検出対象の検体は、ボルタ電池のアノードにおいて酸化可能な任意の生体物質を含むことができる。生体物質はこれらに限定しないが、グルコース、糖、脂肪酸、コレステロール、脂質、ポリヌクレオチド、アミノ酸(フェニールケトン尿症患者におけるフェニルアラニン)、ポリペプチド(例えば、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンのようなホルモン(例えば、ホルモン療法、妊娠、そして、排卵検出中の場合に、監視することができる)、転移又は再発を検知するために監視可能な癌細胞の癌特異的タンパク質マーカー、前立腺特異抗原(PSA)のような病気の初期マーカーを含む)を含む。検体は、クマディン(商標)や合成プロスタサイクリンなどのような薬剤とすることもできる。
【0079】
さらに、チャンネルに対して操作可能に取り付けられたレセプタに特定の検体が結合する時のみ、アノードが検体に触れるように開いて電流の生成を行うゲートチャンネルを提供するボルタ電池を適応することによって、本発明のボルタ電池は、ウイルス、バクテリア、寄生生物、プリオンなどの外来微粒子又は感染粒子の検出に適している。ボルタ電池は、HIV及び他のウイルスにおけるウイルス量の監視と、細菌感染/寄生生物による感染症及び抗生物質による治療の監視などに用いることができる。
【0080】
例えば、一実施例において、膜貫通タンパク質は、関心のあるウイルスタンパクのためのレセプタへ操作可能に連結されたチャンネルを備える。埋め込まれているタンパク質を用いた膜は、アノードを覆い、検出可能な検体(グルコースなど)の接近を防止する。循環しているウイルスタンパクが可逆的にレセプタに結合する場合、チャンネル内で構造変化が生じ、グルコースがアノードにアクセスすることを可能にする。そして、酸化が始まる。電流はボルタ電池内で生成される。外部装置は、検体内のウイルス量を示す有益なアウトプットを提供する。その外部装置は、信号(例えば、電流、又は、無線送信機が用いられている場合は電波)をウイルスタンパク濃度のしるしに変換するよう事前に基準化されている。
【0081】
本発明のボルタ電池は、被験体の血流内における薬剤用センサーとして適用させることもできる。センサーは、少なくとも一つの薬剤又はそれに関する代謝体を検出することが可能であり、データを外部装置へ送信することができる。この実施例は、クマディン(商標)や、エポプロステノール、疼痛処理薬剤、抗がん治療のような治療薬剤の安全レベルのために被験体を監視することについて有効である。同様に、薬剤の誤用の監視についても有効である。それら実施例において、レセプタを備えるボルタ電池を用いることで、レセプタが薬剤又はそれに関する代謝体の存在を検知する。
【0082】
ボルタ電池の一般原則
ボルタ電池は、酸化還元反応を介して電流を生成し、電圧発生及びこれに伴う電流については、ネルンストの式で説明される。

E = E0 - RT/nF ln Qc

ここで、Eは反応によって生成されたポテンシャル(例えば、電圧)、E0は2電極間の標準電位、Rは一般気体定数、Tは絶対温度、nは電極反応の電荷数(反応における電荷のモルの数)、Fはファラデー定数である。Qcは、電極反応における酸化側に現れる化学種の濃度に対する、電極反応における還元側に現れる化学種の濃度の比率を示す(lnの表記は、生成したポテンシャルが、この比率の自然対数に関連しているということを意味する)。
【0083】
提示されているボルタ電池内における血清グルコースによる電流発生のためのメカニズムを提供する酸化還元反応は、以下のグルコースの酸化電位及びAg+の還元電位に基づく。

2 Ag(NH3)2+ + e- → Ag + 2 (NH3) Eored = 0.373 V
+ C6H12O6 + H2O → C6H12O7 + 2 H+ + 2e- Eoox = 0.600 V
2 Ag(NH3)2+ + C6H12O6 + H2O → 2 Ag + C6H12O7 + 2 NH4+ Eo = 0.973 V

この還元酸化反応の組み合わせは、トレンス反応として既知であり、溶液中の銀イオンから鏡面を生成する古くからの手段である。
【0084】
ボルタ反応の半分のポテンシャルは、酸化還元対の化学種のどちらか一方が修飾された場合に変化させることができる。例えば、銀カチオン(Ag+)の単純還元における半電池電位は以下のように示される。

Ag+ + e- → Ag Eored = 0.800 V

そして、グルコース分子の単純還元における半電池電位は以下のように示される。

C6H12O6 + H2O → C6H12O7 + 2 H+ + 2 e- Eoox = -0.050 V

グルコース分子の単純酸化は熱力学的に不向きであるように思えるが(マイナスであるため自発的には発生しない)、0,750Vである反応全体の全電池電位は、熱力学的に有効であり自発的に発生し、反応全体によって全体的に正の電気(プラスである)を供給する。
【0085】
銀イオンがNH3と錯体を形成するとき、例えば、本発明のグルコース測定器と同様に、銀ニアンモニアカチオン錯体の還元における半電池電位は大きく異なる。

Ag(NH3)2+ + e- → Ag + 2 NH3 Eored = 0.373 V
【0086】
修飾種の反応は、さらに自発的かつ熱力学的に好ましいが、純銀カチオンと同等のものより著しく小さい。
【0087】
反応が一つのフラスコ内で全て発生した場合、NH3分子の存在は、全体の反応液のpHを上昇させる。それにより、グルコースの酸化における半電池電位にも影響を及ぼす。これは、ルシャトリエの原理から論理的に得られる。グルコースの酸化反応の試験を行うことは、方程式の右辺はH+(酸性の)イオンを含み、そして、反応が、pH環境を高くする(例えば、NH3分子の存在から塩基性を上昇させる)ことを可能にすることは、H+イオンが消費されることを意味し、最終的に、反応は、右辺へ導かれることとなる。これは、アンモニアの存在でグルコースの酸化が熱力学的に好ましくなっていることを意味すると考えられる。そして実際に、以下で観測される。

C6H12O6 + H2O → C6H12O7 + 2 H+ + 2 e- Eoox = 0.600 V
【0088】
以上のように、グルコースの酸化反応は、塩基性環境(高pH)において正となる(自発的かつ熱力学的に好ましい)。アンモニアの存在によって、銀錯体及びグルコースの酸化還元反応全体の全ポテンシャルは以下の通りに示される。

2 Ag(NH3)2+ + C6H12O6 + H2O → 2 Ag + C6H12O7 + 2 NH4+ Eo = 0.973 V
【0089】
単に熱力学的に有益なだけでは無く、この反応による電池ポテンシャルは、単純銀カチオン及びグルコース酸化還元対の酸化還元反応と比較して、著しく増加する。
【0090】
電池の電位を決定する酸化還元反応の一般原則が存在する。当業者は、本発明に従ってボルタ電池を生成するのに適したイオン溶液及びアノード/カソード構成に精通している。半反応における標準状態の電池電位は、本発明に好適であるイオン溶液及びアノード/カソードとして既知である。ある通常の半反応のための標準状態の電池電位を表1にリストする。
【0091】
表1

【0092】
表1(続き)

【0093】
ボルタ電池のグルコース測定器版に関して、ある実施例において、反応は、0.750Vの全電池電位を用いて自然発生的に始まる(アンモニアなしで)ことが可能である。しかしながら、実際には、これは、カソード上の均一かつ制御された銀の被膜より、溶液内にコロイド銀球の構造となる傾向がある。加えて、Ag2O(酸化銀(1))のようなカソード溶液内にNH3を有することが望ましい。そのAg2Oは、カソードにおける銀元素がカソード環境中に広がっている分子酸素によって酸化する際に、塩橋上で作り出され得る。Ag2Oは、水に対して最低限の溶解性(0.0013 g/100 ml (20℃ から 0.0017 g/ 100 mlまで)があるが、アルカリ性水酸化物の水溶液中では、Ag(OH)2-であるイオンを構成するため、より溶解性がある。カソード環境にNH3を加えることによって、NH3のある部分は、H2Oと反応して、水酸化アンモニウム(NH4OH)を生じる。これは、溶液中に酸化銀を維持し、カソードでの還元の周期に再び入ることとなる。従って、反応を永続化させるのに役立つ。コロイド銀の構造が、時間とともに装置の機能を妨げるかどうか不明であるが、操作性について特定の理論にしなければならないということは無い。現在のところ、カソード上に銀を被膜することは、より望ましいと考えられている。
【0094】
他の実施例において、カソード上の銀の還元及び被膜が採用される。それらの実施例において、殻内のイオン溶液は、高濃度のアンモニアを含むような塩基性化合物を含む。その他の塩基性種も用いることができるが、反応の熱力学現象を変化させる可能性がある。その結果、当業者は、特定の利用に適した溶液を選択すると考えられる。そして、そのような技術は、当業者の技術の範囲に十分に含まれる。グルコース酸化半反応は、血液の中性におけるpHの近くで発生する。これは、約0.323Vの全電池電位を生じる。それでも、これは自然反応であるとはいえ、この反応の熱力学的好適さは、より小さい規模である。
【0095】
本発明の他の実施例では、膜はアノードにおいて沈殿又は結合が起こる。そのアノードは、酸化還元反応の熱力学現象の触媒となるようNH3分子や、その他の分子種に浸透又は錯体を形成する。例えばNH3については、アノードに対して、この種と錯体を形成すること(又は電極と結合する膜)は、より高い全電池電位を生じることとなる(0.973V)。
【0096】
他の実施例において、アノードは、その表面に錯体を形成したNH3(又はその他任意の塩基性分子又は塩基性イオン)を有することができる。そのアノードは、グルコースの酸化が、高いpH環境で生じるようにすることを可能にするが、殻の内部にアンモニアを供給しないことによってコロイド銀の形成を許容する。これは、1.4Vの反応の予測全電池電位を生じさせることとなる。
【0097】
従って、アノード、カソード、そのどちらでも無い、又はその両方における環境のpHを変更することによって、半反応のポテンシャルを調節することが可能である。
【0098】
グルコースは、本発明のボルタ電池によく適している高エネルギーの生体物質である。しかしながら、本発明は、グルコースの酸化によるエネルギー利用に制限されない。人体は、本発明のボルタ電池を適応することによって用いることが可能である高エネルギーの物質を多く有し、任意の高エネルギーの生体分子における電力は、生化学酸化還元対を引き離すことによって、電気エネルギーを提供するよう利用することが可能である。生体酸化還元反応対の間で自然に移動する電子がコネクタを介して流動可能となった場合、電流が生成される。
【0099】
生体物質の代謝は、既知の酵素触媒及び生化学反応によって促進される。例えば、これらには、以下のものが含まれる。
(a)ベータ酸化、脱炭酸、加水分解/水酸化などによる脂肪酸(トリアシルグリセロール、プロスタグランジン、ステロイドなど)
(b)加水分解、アセチルcoAへの変換、酸化、解糖、クエン酸回路などによる炭水化物(単糖類、アルドース、ケトース、二糖類、オリゴ糖、ホモ多糖、ヘテロ多糖類、配糖体、複合糖質など)
(c)アミノ基転移、脱アミノ反応/酸化的脱アミノ反応、酸化的脱炭酸反応、脱水素化などによるアミノ酸(グルコース生成、ケトン原性、オキサロ酢酸生成、アルファ-ケトグルタル酸生成、ピルビン酸塩及びフマル酸塩生成、サクシニルCo生成、アセチルcoA生成、そして、アセトアセチルCoA生成など)及びタンパク質(糖タンパク質、リポタンパク質を含む)
(d)酸化、加水分解、変換などによる(蓄えられた脂肪の動員からの)グリセロール、ピルビン酸塩/乳酸塩、ATP/ADP、そして、ケトン体(アセトアセテート、ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、アセトン)のようなその他の高エネルギー生体分子及び代謝体
【0100】
これら分子の代謝は、(レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、シンターゼなどを介して)電子をニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)に提供し、それぞれ、NADH及びFADH2の還元した電子(エネルギー)が豊富な分子を形成する。
【0101】
これら還元酸化反応は、ATP(電池内で機能するよう用いられる主要なエネルギー通貨分子)を生成することにおける物体の主要な手段の第一段階である。いったん、NADH及びFADH2が脂肪酸、アミノ酸、炭水化物(そして、それら前述のものに限定されない、その他の基質)などの代謝から生成されると、それらは、補酵素を介して電子伝達系に沿って、それらの電子を結合力が強い電子アクセプタである酸素に提供する。これは、酸化的リン酸化反応又は細胞呼吸の基礎を形成し、これにより、CO2及びH2Oへの脂肪酸、アミノ酸、炭水化物の酸化は、O2へ電子を移動させる。そのO2は、H2Oに還元される。
【0102】
これは、ボルタ装置で用いる生物学的酸化還元対の基礎を形成する。十分に説明してきたアノードは、ミトコンドリアにおける膜間の空間の脂肪酸、アミノ酸、炭水化物の代謝(レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、シンターゼ、クエン酸回路の酵素など)のための固定化され可逆的な酵素、そして、錯体I、錯体II、補酵素Qを含んでおり、体液と接触している。

錯体Iは、NAD+/NADH、FMN/FMNH2、NADHデヒドロゲナーゼを含む。

錯体IIは、NAD+/NADH、FAD/FADH2、フマル酸エステル/コハク酸エステル、コハク酸デヒドロゲナーゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼを含む。

補酵素Q: キニーネ誘導体(また、生物系において至る所に存在している事から、ユビキノンとしても知られている)は、FMNH2及びFADH2の両方を酸化させ(それらから電子を取得し)、それらを錯体IIII及び錯体IVに移動させる。

水素イオン(陽イオン、陰イオンともに)は、血流内で容易に利用でき、反応領域を灌流するほど十分に小さく、反応物質間の水素イオンのやりとりを介して電子の移動を可能にさせる。FMN/FMNH2対は、NADHをNAD+に酸化させる(FMNをFMNH2に還元することによって)電子伝達系における可逆的中間体である。次に、この酸化還元反応により電子は、FMNH2から補酵素Qへ、FMNへのFMNH2の酸化及びCoQH2へのCoQの還元を通じて移動する。同様に、FADH2をFADHへ酸化し、CoQをCoQH2に還元する。
【0103】
電子伝達系の錯体III、錯体IV、そして、シトクロムcは、カソードを構成する。錯体のシステムの構成要素は、鉄原子を含むポルフィリン環でできたヘム基を含むシトクロムb、シトクロムc、シトクロムa+a3である。その鉄原子は、酸化還元反応を介して、第二鉄(Fe3+)から第一鉄(Fe2+)の状態に可逆的に変換される。従って、可逆的な電子のキャリアとして機能する。

錯体IIIは、(還元によって)補酵素Qから電子を受け、CoQH2からCoQへ酸化するシトクロムbを含む。

シトクロムcは、錯体IIIから錯体IVへ電子を移動させる。

錯体IVは、シトクロムa+a3を含み、シトクロムcから電子を(還元によって)受け、シトクロムcの金属族を酸化する。シトクロムa+a3は、シトクロムのみであり、そのシトクロムにおいて、ヘム鉄は、容易にO2と反応することが可能である遊離リガンドを有する。このシトクロムはまた、反応に必要な結合済み銅原子を含む。電子は、H2Oに還元するO2に移動し、そのO2はシトクロムa+a3の金属族を酸化させる。

他の実施例として、O2分子(及び水素イオン)は、殻の細孔/塩橋によって自然に灌流し、カソードにおけるH20への還元に利用が可能である。O2分子は、殻の外側のアノードにおいて、酸素がそこで十分に利用可能であるにも関わらず、十分には還元されない。理由は、(1)反応する遊離リガンドであるシトクロム鉄部分が存在しないからであり、(2)電子伝達系は、源泉から離れるように機能するからである。つまり、いったん、電子が水素イオンを介して系内の次の中間体に引き継がれると、電子は、熱力学的に不利であるため、系の源泉へ逆行して移動することはできないからである。電子は、シトクロムa+a3に依存して流れる。シトクロムa+a3は、カソードで酸素に反応する未使用の電子の迅速な供給を提供する。酸化還元対を分離すること、そして、電子伝達系における最初の構成要素への電子の不加逆的な流れを促進することによって、カソードにおける酸素は、電子となり、さらに、電子を受け取りそこで簡単に利用可能となる。
【0104】
他の実施例において、血流に接触しているアノード環境は、カソード環境から離れており、コネクタによって接続される。コネクタを介した電子の流れは、電流を生成する。カソード環境は、錯体I及び錯体IIの構成要素に対して、不透過性とするべきであって、理想的には、代謝の媒介は、水素原子及びCl-のようなO2及び小イオンを介して自由に通過可能にすべきである。
【0105】
この反応のネルンスト熱力学は好都合である。これは、電力の生成を自然に生じさせ、利用することが可能であることを意味する。

【0106】
本発明のボルタ電池は、NADH、FADH2又はFMNH2のような電子供与体、グルタチオン又はアスコルビン酸塩のような抗酸化物質(アスコルビン酸やビタミンC)、そして、水素化ホウ素ナトリウム(NBH4)のような活性還元体を含むアノード環境を分けて構成することが可能である。カソード環境は、血流と接触している。それによって、コネクタを介して電子供与体、抗酸化物質、還元体から酸化体へ通る電流を用いて、血流(体液)内の酸化体の還元によってボルタ電池に電力を供給する。その結果、電流が生成される。この実施例において、コネクタを介した規則的な電子の流れを可能にするために、O2又は酸素ラジカル、H2O2、酸化窒素種(NO2/NO)、Fe3+、 Ca3+、 Mg3+などのような負電荷を有する種からアノード環境を隔離することが好ましい。
【0107】
既知の技術として、ボルタ電池はまた、カソード環境において既に用いられた酸化体を再度、酸化させるよう逆行して動作させることができる。これは、電気分解と呼ばれる。それによって、例えば磁気インダクタンスの場合、外部電源は電子を上方に押し出す。この逆反応が始まると、慣例によって、「カソード環境」及び「アノード環境」が逆転して呼ばれる。明確にするために、私達は、いずれにしても電子が何時でもアノードからカソードに向かって動く事を念頭に置いておく。
【0108】
本発明の特定の実施例は、図面に関連して説明することが可能である。
【0109】
基本のボルタ電池を図1に示す。ボルタ電池は、仕切りを定義する生体適合性のある殻10を有する。その仕切りは、イオン溶液内にカソード12を取り込む。殻10は、イオン溶液と殻10の外側の体液との間でイオンの通過を可能にする少なくとも一つの塩橋16を有する。ボルタ電池はまた、ボルタ電池の外表面に配置した少なくとも一つのアノード14を有する。アノード14は、コネクタ18(ワイヤのような)によってカソードに接続されている。抵抗20を具備するコンポーネントは、アノードとカソードとの間に配置される。大きい矢印は、ボルタ電池を取り囲む体液を表す。
【0110】
実際には、埋め込まれた電池の外側表面は、被験体の体液(血液)と接触する。血糖は、アノード14で酸化し、電子は、コネクタ18に沿ってカソード12へ流れる。殻内のイオン溶液におけるAg+イオンは還元され、カソード12上に被膜される。小イオンが殻を介して流れることを可能にする塩橋16が提供され、回路を完全にする。この環境において、酸素は、塩橋16を通して広がり、カソード12で銀は再度、酸化する。銀は、Ag+/[Ag(NH3)2+]として、イオン溶液へ戻る。反応が始まると、電子は、アノード14からカソード12へコネクタ18に沿って流れる。抵抗(レジスタのような)を具備する装置20は、コネクタ18に沿って配置される。電流は、ボルタ電池を通して流れ、被験体の体の外側に配置された外部装置は電流を検知することができる。
【0111】
図2に示すその他の実施例における基本のボルタ電池を示す。ボルタ電池は、仕切りを定義する生体適合性のある殻10を有する。その仕切りは、イオン溶液内にカソード12を取り込む。殻10は、イオン溶液と殻10の外側の体液との間で小イオンの通過を可能にする少なくとも一つの塩橋16を有する。ボルタ電池はまた、ボルタ電池の外表面に配置した少なくとも一つのアノード14を有する。アノード14は、コネクタ18(ワイヤのような)によってカソードに接続されている。この場合、抵抗21を具備するコンポーネントは、アノードとカソードとの間に配置されるマイクロ無線送信機である。大きい矢印は、ボルタ電池を取り囲む体液の経路を表す。実際には、ボルタ電池を流れる電流は、装置から発せられる電波に変換される。被験体の体の外側に配置された無線受信機を用いて、これら電波を検出することができる。
【0112】
図3は、バッテリとして用いられるボルタ電池のその他の実施例を示す。そのバッテリは、不透過性の殻10、複数のアノード14、複数のカソード12、塩橋16、そして、アノード14とカソード12を接続するコネクタ18を含む。アノード14とカソード12は、コネクタ18によって接続される。そのコネクタ18は、コネクタに沿って配置された抵抗20を具備する装置を有し、ボルタ電池によって電力が供給される。
【0113】
図4は、血管内の使用のために適用されたボルタ電池の実施例を示す。殻10は、イオン溶液と殻10の外側の体液との間で小イオンの通過を可能にする少なくとも一つの塩橋16を有する。殻10は、血流のための中央の経路を有する円筒を含むような管として形成されている。殻の内部仕切りは、複数のカソード12を含む。経路は、殻10の表面に配置された複数のアノード14を含む。その殻10の表面は、血液の流れに接触する面に配置されている。差込図は、コネクタ18によって、アノード14に接続されたカソード12を示す。コネクタ18は、それの上に抵抗20を具備する要素を有する。ボルタ電池は塩橋16を有し、その塩橋16は、イオン溶液を含む内部仕切りと血流との間のイオンの流れを可能にするよう殻10上に配置されている。
【0114】
図5は、格子状のメッシュを成すよう複数のボルタ電池が織り合わせられた実施例を示す(パネルA)。各ボルタ電池のメッシュは、複数のアノードを有する(黒い円で示す)。複数のアノードは、コネクタによって、内部のカソードに接続される。メッシュは、被験体の体内に直接埋め込むことが可能であり、特定の形状を形成することも可能である。さらに、体内の所望の場所への埋め込みのために適応させることもできる。図5(パネルB)は、メッシュにより形成されるコーン形状の装置を示す。図5(パネルC)は、メッシュにより形成されるU形状の管装置を示す。図5(パネルD)は、メッシュにより形成されるコップ形状の管装置を示す。
【0115】
図6は、殻10の表面上におけるアノード14の図を示す。アノード14は、生物学的不活性境界物質30で覆われている。その生物学的不活性境界物質30は、バイオファウリングを起こす大きな分子のバリアを形成するが、小さい分子及び小さい検体が細孔32に入ることと、アノード14に接触することを可能にする。アノード14は、コネクタ18を用いてカソード12に接続され、コネクタ18はレジスタ20を有する。
【0116】
図7は、アノード環境が代謝酵素を含み、「代謝環境」を形成する本発明の実施例を表す。この場合、この環境は、体液と接触する代謝環境/アノード環境である(点線は体液へのアクセスを示す)。そして、この環境はまた、体液と接触する代謝酵素(体液から酸化性生物物質を代謝するのに使用する錯体I、錯体II、補酵素Q、及び、任意のオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、そして、リガーゼ)を含む。その結果、代謝環境/アノード環境での代謝は、構造的に発生する。カソード環境は、錯体III、シトクロムc、そして、錯体IVを含み、還元部分を仲介する。レジスタを有するコネクタは、代謝環境/アノード環境、及びカソード環境との間で動作する。そして、塩橋が提供され、小イオンの流れが回路を完全にすることを可能にする。
【0117】
図8は、代謝環境が、不透過性の層によってアノード環境から分離した実施例を示す。その不透過性の層は、関心のある検体のためのレセプタに対して操作可能に結合されたゲートチャンネルを含む。この環境において、血流内の自由な検体は、レセプタに接触した状態にあり、レセプタへ結合する。結合した検体が無い場合(左のチャンネル)、チャンネルは閉じられ、代謝環境内の代謝の電子は、アノード環境内に流れることができない。検体がレセプタと結合した場合、チャンネルは開き(右のチャンネル)、電子がアノード環境に流れることを可能にし、コネクタに沿ってカソード環境へ流れることも可能にする。塩橋は、小イオンの流れが回路を完全にすることを可能にする。
【0118】
図9は、アノード環境が「代謝環境」を形成するよう代謝酵素を含む本発明の実施例を示す。この場合、この環境は、不透過性のバリアによって体液から隔離された代謝環境/アノード環境である(実線は流体にアクセスしていないことを示す)。そして、この環境はまた、不透過性のバリアによって体液から隔離された代謝酵素(体液から酸化性生物物質を代謝するのに使用する錯体I、錯体II、補酵素Q、及び、任意のオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、そして、リガーゼ)を含む。その結果、代謝環境/アノード環境での代謝は、構造的に発生しない。不透過性のバリアは、関心のある検体のためのレセプタに対して操作可能に結合されたゲートチャンネルを含む。この実施例において、血流内の自由な検体は、レセプタに接触した状態にあり、レセプタへ結合する。結合した検体が無い場合(左のチャンネル)、チャンネルは閉じられ、酸化性生体物質が、代謝環境/アノード環境に流れることはできない。検体がレセプタと結合した場合、チャンネルは開き(右のチャンネル)、酸化性生体物質が、代謝環境/アノード環境に流れることを可能にする。そして、生成された電子は、コネクタに沿ってカソード環境へ流れる。塩橋は、小イオンの流れが回路を完全にすることを可能にする。
【0119】
本発明の望ましい所定の実施例を、ここに説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、ここに示し説明した各種の実施例の変更や変形を行うことは、当業者であれば明らかである。示した例は、単に本発明の説明のためだけのものであり、制限するものとして解釈すべきでは無い。
【実施例1】
【0120】
本発明の実施例において、殻は、アンモニア水溶液内に非磁性のカソード(銀のような)を備える。非磁性のワイヤは、カソードを殻の外側にあるアノードに接続する(殻の短絡及び電流が発生しなくなることを防止する)。反応の合計電位(Eo = 0.323 V)は、溶液内の水性のジアンミン銀錯体[Ag(NH3)2+]から銀元素(純銀金属)までのグルコースの酸化及びAg+の還元における反応の全体の熱力学的好適さを表す。
【0121】
グルコースの酸化は、炭水化物内に蓄えられた高電位の化学エネルギーのための熱力学的に極めて好ましい反応である(これのおかげで、グルコースは、生きるためのエネルギーを生成する体内の主要な手段となる)。それは、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される前述のボルタメカニズムである。従って、装置の周りの血流として、アノードの近くを通る血液内のグルコースは、銀の還元をもたらすグルコン酸に酸化する(グルコースから電子が取られる)。よって、電子は、グルコース分子によってアノードとカソードを接続するコネクタを渡って流れ、カソード上でAg+は還元され、被膜される。装置は血液又は他の体液(尿、間質液、腹水など)にさらすことだけを必要とする。例としては、毛細血管とすることができる。静脈や動脈内に埋め込む必要は無い。
【0122】
水素原子(H+イオン)のようなイオンは、回路を完全にする塩橋として機能する殻内の半透過性の膜を介して又は殻の中に設計された塩橋を介して貫流することが可能である。この環境において、酸素は、酸化還元反応において還元された銀元素を再度、酸化するよう塩孔を渡って広がる傾向がある。その銀元素は、Ag+/[Ag(NH3)2+]として溶液に戻り、永続的に機能する回路を可能にする。これは、永久的に続くエネルギー装置を示してはいない。システムの再充電のためのエネルギーは、グルコース酸化反応(特に糖尿病の、血流内で容易に利用可能なグルコースから)の高エネルギーによって生じ、そして、酸素元素による熱力学的に好ましい銀の酸化からも生じる。酸素元素による熱力学的に好適である銀の酸化の理由は、銀が時間とともに緑青を自然に発達させることである。
【0123】
信号は、様々な方法で送られる。例えば、上昇した血中グルコース濃度に起因するグルコースの酸化上昇によってボルタ電池内で電流が生成され、その電流は、外部の電流計(電流検出器)によって検出される。その電流計は、血中グルコース濃度の特定の漸進的な上昇として、電流の漸進的な増加を解釈するように調整される(図1)。この場合、グルコース測定器装置(事実上、意図的なバイオボルタ統合バッテリ装置又は生物系統合バッテリ装置である)によって生成される電流は、外部の電流計によって測定されることが可能である。これは、皮下のすぐに埋め込まれた物における電流強度の変化に基づいて磁束を測定することができる。従って、磁場の強度及び磁束の大きさは、電流の大きさに比例して変化する(電流は移動している電荷として定義され、移動している電荷は磁場を設定し、磁場の変化は磁束の変化によって距離を通じて計測することができる。これは、通常の磁気計の原理である。)。
【0124】
他には、マイクロ無線は、ボルタ電池内に組み込まれ、そして、グルコースの酸化から生成された回路(図2)によって電力が供給される。この無線は、より高い周波電波を発生する(「より高い周波電波」は、より高いエネルギー波であり、このエネルギー増加は、より大きい電流によってもたらされる(グルコースは高エネルギー分子であることにより、グルコース濃度の上昇から生じる利用可能な電気ポテンシャルエネルギーが上昇する))。より高い周波電波は、血中グルコース濃度の上昇、そして、酸化還元活性の高まりに続く電流上昇の時に発生する。これらの波は、外部の無線受信機によって検出され、無線周波数の増加を血中グルコース濃度における漸進的な上昇の情報に変換するよう調整される。その血中グルコース濃度は埋め込み物によって計測される。これは、固体半導体物理学に基づいて塩基性を用いて達成することが可能である。例えば、アナログマイクロトランジスターは、(グルコースの酸化に基づいて)装置によって生成される交流電流から生じる無線周波数を安定させ増幅させるよう用いることが可能である。交流電流がワイヤを移動する時、無線信号は発生する。単純な送信機は、このシステムをアンテナに接続することによってもたらされる。無線を受信するように用いることができ、そして、検体のレベルを算出、かつ、アウトプットを提供するよう適用された無線受信機は、技術的に既知である。米国出願番号2005/02457299、米国特許番号6,585,644で見られる例は、参照によってここに組み込まれる。
【0125】
調和振動数ろ過は、インダクタ及キャパシタの組み合わせを通して達成することが可能である。バイポーラ接合トランジスタは、電流の測定を目的とするのに適切である。それ以外には、電圧を測定する電界効果トランジスタであるハイゲイントランジスタ又はデジタルトランジスタは、同様に採用することが可能である。さまざまな半導体(化合物、合金など)のトランジスタにおける、その他のタイプ(デュアルゲート、トランジスタアレイ又はその組み合わせ、MOSFET、IGBT、IGFETなど)もまた採用することができる。
【0126】
ある実施例において、トランジスタは、集積回路の一部である。他の場合には、装置の個々のトランジスタを使用することが望ましい。アノードにおける血(血中)糖の酸化から生成された電流は、アノードからトランジスタのインプット端子へ流れ、他の2つの端子間の導電率を調節する場合には、それにより、これら端子間の電流の流れを調節し、増幅を可能にし、さらに、電流変化を無線周波数に変換することも可能にする。一般的なトランジスタの例において、電流が大きくなればなるほど(埋め込まれたグルコース測定器の場合には、次第により高くなる装置の外側の血糖値は、徐々により大きくなる連続的な電流を生成し得る)、端子間の導電率は大きくなり、電流を無線周波数に変換する能力も高くなる。その無線周波数は、広範囲にわたって利用可能で有用な外部の無線周波数受信機によって、その時々で正確な血糖値を表示するために測定することができる。その無線周波数は、患者に対して、いったん調整すると、この外部装置による適切なインスリン投与量の計算を可能にする。
【0127】
デジタルトランジスタは、マイクロプロセッサとして機能する装置を準備することができる。そのマイクロプロセッサはさらに、グルコースを介して生成した電流についての情報を様々なデータの形態にその装置内で処理することができ、そして、それらデジタルデータの外部装置への送信も可能にする。また、マイクロプロセッサは、外部装置の一部とすることもできる。他の実施例においては、マイクロプロセッサは、埋め込まれた装置と外部装置の両方に含まれる。
【0128】
電圧の検出や、無線周波数又は他の無線通信を介するような遠隔測定検出を用いた場合、外部受信機は、血糖値の上昇を解釈するよう調整される。このことから、関連する血中グルコース濃度のための適切なインスリン投与量を得るよう共通かつ単純な臨床アルゴリズム(clinical algorithms)によって、受信機(電流計、無線受信機など)をプログラムすることができる。患者間のわずかな生理的かつ代謝的相違点のために、受信機の取り付けの時に調整することができる。そして、指先で行ったグルコース測定器の測定値を常にチェックすることによって、受信機の正確性(重要な安全基準を表す)を即時に監視することが可能である。
【0129】
デポ避妊装置(depo birth control devices)の取り付けと同様に、装置は、臨床医によって目立たないような腕又は腹部の皮下に取り付けることができる。患者が、自身の血糖値をチェックしたいと思った時、患者は、受信機を埋め込み物の上にかざすことができる。その受信機は、埋め込み物の電流又は無線周波数を血糖値と同時に読み取ることができる。
【実施例2】
【0130】
本発明のボルタ電池のグルコース測定器は、自分自身のインスリン値を監視及び調節が可能である糖尿病患者の皮下に埋め込まれる。グルコース測定器は、患者の血糖値を連続的に監視する電波を放出する。信号は、患者の血糖値を表示する腕時計タイプの受信機として付けられた無線受信機によって受信される。腕時計受信機はまた、時刻を表示し、患者に警告を行うアラームを備える。患者への警告は、自身の血糖値が低血糖になるポイントに低下した時、又は、高血糖の処置や防止のためにインスリン投与を必要とする時に行われる。
【実施例3】
【0131】
本発明のボルタ電池のグルコース測定器は、自分自身のインスリン値を監視及び調節ができない糖尿病患者の皮下に埋め込まれる。この患者は、病気などによって行動能力を奪われた入院者である。グルコース測定器は、患者の血糖値を連続的に監視する電波を放出する。信号は、患者の病床の近くに備え付けられた(又は埋め込まれた装置にごく近接して取り付けられる)無線受信機によって受信される。埋め込まれたグルコース測定器により放出された信号は、外部受信機によって受信される。その外部受信機は、患者の血糖値を連続的に算出及び表示を行う。加えて、受信機はさらに、データをナースステーションのコンピュータへ無線通信によって送信する。ナースステーションのコンピュータは、バイタルサインや血糖値のような患者の情報を表示する。コンピュータは、患者が低血糖や、高血糖となった場合にアラートを提供することができ、インスリンが必要である時を示することが可能である。加えて、患者上又は患者近くの無線受信機はまた、低血糖又は高血糖を示すアラームを供えることが可能である。このように、看護師又は医療スタッフは、採血して血糖値を検査する必要無く、病気などによって行動能力を奪われた状態である糖尿病患者の世話をすることができ、その結果、より手軽かつ効率的に患者の血糖値のより良い制御を保つことができる。
【実施例4】
【0132】
ボルタ電池のアノードの表面に錯体を形成するコレステロール酸化酵素を有するボルタ電池は、重度の高コレステロール血症を患っている患者の内部に埋め込まれる。ボルタ電池は、患者の血液に接触する。そして、その電池のアノードのそばを流れるコレステロールが酸化し、電子はコネクタを介してボルタ電池の殻内のカソードへ流れる。生成した電流は、高周波電波に変換される。その高周波電波は、外部の無線受信機によって受信される。その無線受信機は、患者の血中コレステロールレベルを算出かつ表示するようプログラムされ、そして、調整される。患者のコレステロール値は、心臓発作や脳卒中の予防を促進するために、コレステロール降下剤を用いた食事制限及び治療への患者の反応を検討するよう監視される。
【実施例5】
【0133】
糖尿病の犬に、首筋の皮下に埋め込まれるボルタグルコース測定器を取り付ける。ボルタ電池のグルコース測定器は、ボルタ電池内において電流を生成する犬の血糖値を検出する。電流は、犬の首輪として付けられた電流計によって検出される。電流計は、犬が低血糖又は高血糖になった時に犬の飼い主に警告するアラームを備え、そして、血糖値を表示する。その後、犬に餌を与えるために又は低血糖に関する獣医を呼び出すためや、高血糖の犬にインスリンを投与するために、犬の飼い主へ警告する。
【0134】
ここに記載された特定の実施例は、本発明の他の実施例に一般的に適用可能であって、記載した特定の実施例のみに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】単一のアノード及び単一のカソードを用いた本発明の基本的なボルタ電池を示す。単一のレジスタが、アノードとカソードとの間でコネクタ上に配置される。
【図2】単一のアノード及び単一のカソードを用いた本発明の基本的なボルタ電池を示す。無線送信機が、アノードとカソードとの間でコネクタ上に配置される。
【図3】装置に電力を供給するボルタ電池の実施例を示す。この実施例では、装置に電力を供給するために、アノードとカソードとの間に配置されたワイヤが、装置まで達する。
【図4】ボルタ電池が中央の経路を有する円筒のような形状をしている本発明の実施例を示す。このボルタ電池は血管内に配置するように適用された形状をしている。電池は、複数のカソード及びアノードを備える。拡大部分は、アノード、カソード、そして、コネクタ間の接続を示す。
【図5】パネルAは、複数の各ボルタ電池から形成された格子状のメッシュの配置を示す。パネルBは、格子状のメッシュから形成されたコーン形状の埋め込み物を示す。パネルCは、格子状のメッシュから形成されたU形状の管を示す。
【図6】生物学的不活性境界層で覆われたアノードを示す。その層は、アノードのバイオファウリングから巨大分子を抑えるが、関心のある小さい検体がアノードへアクセスすることを可能にする。
【図7】アノード環境が酵素及び共同因子を含む代謝によるボルタ電池を示す。その酵素及び共同因子は、オキシダーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、シンターゼ、及び、クエン酸回路の酵素など、同様に錯体I、錯体II、及び、補酵素Q (ユビキノン)を含む。カソード環境は、シトクロムb、シトクロムc、シトクロムa+a3、イオン原子を含みヘムを含有するポルフィリン環、そして錯体III及び錯体IVを含む。コネクタは、アノード環境とカソード環境を接続する。そして、コネクタは、レジスタを備える。塩橋は、アノード環境とカソード環境間に配置される。
【図8】代謝環境がアノード環境上に配置された代謝によるボルタ電池を示す。代謝環境は酵素及び共同因子を含む。その酵素及び共同因子は、オキシダーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、シンターゼ、及び、クエン酸回路の酵素など、同様に錯体I、錯体II、及び、補酵素Q (ユビキノン)を含む。カソード環境は、シトクロムb、シトクロムc、シトクロムa+a3、イオン原子を含みヘムを含有するポルフィリン環、そして錯体III及び錯体IVを含む。コネクタは、アノード環境とカソード環境を接続する。そして、コネクタは、レジスタを備える。塩橋は、アノード環境とカソード環境間に配置される。アノード環境は、ゲートチャンネルによって代謝環境から分離している。そのゲートチャンネルは、体液内に広がるある検体のためのレセプタに操作可能に結合されている。その検体がレセプタに結び付いた場合、チャンネルは開き、代謝環境からの電子はアノード環境内に流れる。
【図9】代謝環境がアノード環境である代謝によるボルタ電池を示す。代謝環境/アノード環境は酵素及び共同因子を含む。その酵素及び共同因子は、オキシダーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、シンターゼ、及び、クエン酸回路の酵素など、同様に錯体I、錯体II、及び、補酵素Q (ユビキノン)を含む。カソード環境は、シトクロムb、シトクロムc、シトクロムa+a3、イオン原子を含みヘムを含有するポルフィリン環、そして錯体III及び錯体IVを含む。コネクタは、アノード環境とカソード環境を接続する。そして、コネクタは、レジスタを備える。塩橋は、アノード環境とカソード環境間に配置される。アノード環境は、不透過性層内に含まれ、その層は、体液からバリアを形成する。不透過性層は、体液内に広がるある検体のためのレセプタに操作可能に結合されているゲートチャンネルを含む。その検体がレセプタに結び付いた場合、チャンネルは開き、酸化性の生体物質は、代謝環境/アノード環境内に流れて酸化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の体内において使用するためのボルタ電池であって、
内部仕切りを定義し、内側表面及び外側表面を有する生物的に不活性な殻であって、該内部仕切りは還元反応を仲介するイオン溶液を含み、該内側表面は該イオン溶液と接触する、前記生物的に不活性な殻と、
前記殻内にあり、前記イオン溶液に接触するカソード環境と、
前記殻の前記外側表面に取り付けられたアノード環境であって、体液と接触し、該体液内の少なくとも一つの酸化性生体物質を用いた酸化反応から電子を受け取る前記アノード環境と、
前記アノード環境と前記カソード環境とを接続するコネクタと、
前記アノードと前記カソードとの間で前記コネクタに沿って配置された抵抗を具備するコンポーネントと、
前記殻内に配置され、前記内部仕切りと前記体液との間でイオンの通過を可能にする少なくとも一つの塩橋と、
を備えるボルタ電池。
【請求項2】
前記カソード環境は、少なくとも一つのカソードを備えることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項3】
前記アノード環境は、少なくとも一つのアノードを備えることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項4】
前記アノード環境は、少なくとも一つのアノードを備えることを特徴とする請求項2に記載のボルタ電池。
【請求項5】
前記酸化性生体物質は、炭水化物、コレステロール、脂肪酸、アミノ酸、ポリペプチド、脂質、ホルモン、及び、ポリヌクレオチドから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項6】
前記炭水化物は、グルコースであることを特徴とする請求項5に記載のボルタ電池。
【請求項7】
前記ホルモンは、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンから成る群から選択されることを特徴とする請求項5に記載のボルタ電池。
【請求項8】
前記ポリペプチドは、前立腺特異抗原又は癌特異的ポリペプチドであることを特徴とする請求項5に記載のボルタ電池。
【請求項9】
前記イオン溶液は、ジアンミン銀錯体[Ag(NH3)2] +、銀、銅、鉄塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項10】
複数のカソードを備えることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項11】
複数のアノードを備えることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項12】
複数のカソードを備えることを特徴とする請求項11に記載のボルタ電池。
【請求項13】
前記殻は、複数の塩橋を含むことを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項14】
前記コネクタは、ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項15】
前記カソードは、非磁性の金属であることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項16】
前記カソードは、銀、アルミニウム、鉛、マグネシウム、プラチナ、金、酸化スズ、二酸化チタン、タングステン、非磁性合金、半導体、半金属、有機金属錯体から成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のボルタ電池。
【請求項17】
前記殻は、不透過性の物質から形成されることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項18】
前記殻は、半透過性の物質から形成されることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項19】
バイオファウリングを起こす分子を排除するよう選択的透過性を有する不活性なバリアをさらに備え、該バリアは前記アノードを覆うことを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項20】
前記バリアは、前記殻の前記外側表面を覆う層を備えることを特徴とする請求項19に記載のボルタ電池。
【請求項21】
抵抗を具備する前記コンポーネントは、マイクロ無線又はマイクロプロセッサから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項22】
前記アノードは、アンモニア(NH3)分子と錯体を形成することを特徴とする請求項3に記載のボルタ電池。
【請求項23】
前記アノードは、前記酸化性生体物質を酸化させる酵素を含むことを特徴とする請求項3に記載のボルタ電池。
【請求項24】
前記酵素は、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、1-アミノ酸オキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、ウリカーゼ、乳酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼから成る群から選択されることを特徴とする請求項18に記載のボルタ電池。
【請求項25】
前記殻の外部表面に配置され、前記アノード環境上に層状に重ねられ、複数の酸化性生体物質を酸化させる複数の代謝酵素及び代謝共同因子を含む代謝環境をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のボルタ電池。
【請求項26】
前記代謝環境は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、補酵素、共同因子、補欠分子族から成る群から選択された代謝酵素及び代謝共同因子を含むことを特徴とする請求項25に記載のボルタ電池。
【請求項27】
複数の前記代謝酵素及び前記代謝共同因子は、オキシダーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、シンターゼ、クエン酸回路酵素、NAD+/NADH、FMN/FMNH2、NADHデヒドロゲナーゼ、FAD/FADH2、フマル酸エステル/コハク酸エステル、コハク酸デヒドロゲナーゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、ユビキノンを含むことを特徴とする請求項26に記載のボルタ電池。
【請求項28】
前記カソード環境は、シトクロムb、シトクロムc、シトクロムa+a3、鉄を含有するポルフィリン、ユビキノンを含むことを特徴とする請求項27に記載のボルタ電池。
【請求項29】
単一層は、前記代謝環境及び前記アノード環境を含むことを特徴とする請求項25に記載のボルタ電池。
【請求項30】
前記代謝環境は、不透過性の境界層によって前記代謝環境から分離している前記アノード環境の外側部分上の層に配置され、前記体液に接触しており、前記境界層は、ある検体のためのレセプタに操作可能に接続されているゲートチャンネルを備え、前記レセプタは前記チャンネルと前記体液との間に広がっており、前記検体が前記レセプタと結びつくことにより、前記チャンネルを開くようにし、さらに、アノード環境へ電子を流すようにすることを特徴とする請求項25に記載のボルタ電池。
【請求項31】
前記アノード環境は、前記アノード環境と前記体液との間に不透過性の境界層を備え、
前記境界層は、ある検体のためのレセプタに操作可能に接続されるゲートチャンネルを備え、前記レセプタは前記チャンネルと前記体液との間に広がっており、前記検体が前記レセプタと結びつくことにより、前記チャンネルを開くようにし、さらに、前記アノード環境へ前記酸化性生体物質を流すようにすることを特徴とする請求項28に記載のボルタ電池。
【請求項32】
第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを備える埋め込み型グルコース測定器であって、
前記第1のコンポーネントは、
内部仕切りを定義し、内側表面及び外側表面を有する生物的に不活性な殻であって、該内部仕切りは還元反応を仲介するイオン溶液を含み、該内側表面は該イオン溶液と接触する、前記生物的に不活性な殻と、
前記殻内にあり、前記イオン溶液に接触するカソード環境と、
前記殻の前記外側表面上のアノード環境であって、体液と接触し、該体液内のグルコースの酸化反応から電子を受け取る前記アノード環境と、
前記アノード環境と前記カソード環境とを接続するコネクタと、
前記アノード環境と前記カソード環境との間で前記コネクタに沿って配置された抵抗を具備するコンポーネントと、
前記殻内に配置され、前記内部仕切りと前記殻の外側部分とを接続する少なくとも一つの塩橋と、
を備え、
前記第2のコンポーネントは、
検出装置を備え、
前記検出装置は、前記第1の装置から信号を検出し、前記被験体内の血糖値に関連する値を提供することを特徴とするグルコース測定器。
【請求項33】
前記カソード環境は、少なくとも一つのカソードを備えることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項34】
前記アノード環境は、少なくとも一つのアノードを備えることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項35】
前記カソード環境は、少なくとも一つのカソードを備えることを特徴とする請求項34に記載のグルコース測定器。
【請求項36】
前記第2のコンポーネントは電流計であることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項37】
抵抗を具備する前記コンポーネントは、マイクロ無線又はマイクロプロセッサであることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項38】
前記アノードを覆い、小イオンのために選択的透過性を有する不活性なバリア層をさらに備えることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項39】
前記アノード環境はグルコースオキシダーゼを含むことを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項40】
前記グルコースオキシダーゼは、少なくとも一つのアノードに錯体を形成することを特徴とする請求項39に記載のグルコース測定器。
【請求項41】
前記アノード環境はアンモニアを含むことを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項42】
前記アンモニアは、少なくとも一つのアノードに錯体を形成することを特徴とする請求項41に記載のグルコース測定器。
【請求項43】
前記イオン溶液は、ジアンミン銀錯体[Ag(NH3)2] +、銀、銅、鉄塩を含むことを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項44】
前記殻は、複数の塩橋を含むことを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項45】
前記コネクタは、ワイヤであることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項46】
前記カソードは、非磁性の金属であることを特徴とする請求項33に記載のグルコース測定器。
【請求項47】
前記カソードは、銀、アルミニウム、鉛、マグネシウム、プラチナ、金、酸化スズ、二酸化チタン、タングステン、非磁性合金、半導体、半金属、有機金属錯体から成る群から選択されることを特徴とする請求項33に記載のグルコース測定器。
【請求項48】
前記殻は、不透過性の物質から形成されることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項49】
前記殻は、半透過性の物質から形成されることを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項50】
バイオファウリングを起こす分子を排除するよう選択的透過性を有する不活性なバリアをさらに備え、該バリアは前記アノードを覆うことを特徴とする請求項32に記載のグルコース測定器。
【請求項51】
前記バリアは、前記殻の前記外側表面を覆う層を備えることを特徴とする請求項50に記載のグルコース測定器。
【請求項52】
血糖値を測定する方法であって、
被験体の体内に第1の装置が埋め込まれており、これによって血液と該第1の装置が接触し、
前記第1の装置が、前記血液内のグルコースと接触することを可能にし、これによって前記第1の装置と接触するグルコースの酸化が、前記第1装置内に電流を発生させ、
第2の装置を用いて、前記電流を検出することを含み、
前記第1の装置は、請求項32に記載のグルコース測定器を備え、かつ、
前記第2の装置は、電流を検出し、前記被験体内の血糖値のしるしを提供することを特徴とする方法。
【請求項53】
前記第2の装置は、電流計であることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
抵抗を具備する前記コンポーネントは無線エミッターであり、前記第2の装置は無線受信機であることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項55】
埋め込み型医療装置に電力を供給する方法であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのボルタ電池に前記装置を接続することを含む方法。
【請求項56】
複数のボルタ電池は、並列に備えられることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
被験体の体内において使用するためのボルタ電池であって、
内部仕切りを定義し、内側表面及び外側表面を有する生物的に不活性な殻であって、該内部仕切りは酸化反応を仲介する溶液を含み、該内側表面は該溶液と接触する、前記生物的に不活性な殻と、
電子供与体、抗酸化物質、又は、活性還元体を含み、前記殻内にあるアノード環境と、
前記殻の前記外側表面上にあり、体液と接触するカソード環境と、
前記アノード環境と前記カソード環境とを接続するコネクタと、
前記アノードと前記カソードとの間で前記コネクタに沿って配置された抵抗を具備するコンポーネントと、
前記殻内に配置され、前記内部仕切りと前記体液との間でイオンの通過を可能にする少なくとも一つの塩橋と、
を備えるボルタ電池。
【請求項58】
前記電子供与体は、NADH、FADH2、及び、FMNH2を含むことを特徴とする請求項57に記載のボルタ電池。
【請求項59】
前記抗酸化物質は、グルタチオン又はアスコルビン酸塩を含むことを特徴とする請求項57に記載のボルタ電池。
【請求項60】
前記活性還元体は、水素化ホウ素ナトリウムを含むことを特徴とする請求項57に記載のボルタ電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2009−536441(P2009−536441A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509824(P2009−509824)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/011144
【国際公開番号】WO2007/130694
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508330054)
【Fターム(参考)】