説明

埋め込み情報を有するホログラムシート、ホログラムシートが貼付された偽造防止媒体及びその読み取り方法並びにその読み取り装置

【課題】 本発明は、埋め込み情報を有するホログラムシート、ホログラムシートが貼付された偽造防止媒体及びその読み取り方法並びにその読み取り装置に関するものである。
【解決手段】 回折格子パターン及び光反射性層を有するホログラムシートであって、ホログラムシートに埋め込み情報が形成され、埋め込み情報は光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とするホログラムシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重品に適用することが可能な埋め込み情報を有するホログラムシート、ホログラムシートが貼付された偽造防止媒体及びその読み取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重品は、その価値を保証及び維持するために、偽造防止技術が施されている。そのため、このような貴重品には、その基材の表面にホログラム等の転写箔を貼付して真偽判別を行っている。光学的変化素子から成るスレッド又はホログラム等は、複写防止及び複製防止の観点から特に有効な偽造防止エレメントの一つであるため、多くの貴重品に適用されてきている。
【0003】
ホログラムが用いられている技術として、例えば、基材の表面にホログラム転写箔層が付着形成された偽造防止ラベルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ホログラムの金属蒸着層に情報を付与する技術として、少なくとも透明プラスチックフィルム基材、回折格子パターン、金属蒸着層及び粘着剤層とから成るラベル材であって、金属蒸着層が溶融された固有情報としての印字パターンを有する偽造防止ラベル材としたものであり、金属蒸着層を、透明プラスチックフィルム基材面よりYAG又はCO 等のレーザビームの照射により非接触にて溶融し、固有情報としての印字パターンとすることを特徴とする偽造防止ラベル材が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、ホログラムと微細な孔を組み合わせた技術としては、基材と、基材の一面に貼り付けられた光学的変化素子のシートとから構成される貴重印刷物であって、基材は、シートの貼り付けられた部分を含む範囲において、レーザビームにより孔が貫通して形成されており、そのシートは、両面に特定の情報が付与されて成り、シートの情報は、シートを貼り付けた表面側から確認できると共に、基材を貫通して形成された孔を通して裏面側からも確認でき、シートを剥離しようとすると、基材は多数の微細な孔が形成されているために破壊して復元が困難となるような構成としたことを特徴とする貴重印刷物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−182580号公報(第1頁、第1−4図)
【特許文献2】特開平10−333574号公報(第1−4頁、第1、2図)
【特許文献3】特許第3336378号公報(第1−6頁、第5、6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、誰でもホログラム等の原理を知ることができるようになってきており、一見しただけでは判別できないほどに、再現性の良いホログラムが偽造又は複製されてきている。よって、特許文献1のように基材にホログラムを貼付しただけでは、容易に偽造又は改竄が可能となる。特許文献2の固有情報は、容易に偽造ができないため偽造防止効果に優れるが、埋め込み情報については記載されておらず、印字パターンの大きさによっては、ホログラム効果(回折格子パターンの出現)が損なう問題があった。特許文献3は、ホログラムシート自体を貫通して形成されているためホログラムシートの耐久性に問題があった。
【0008】
本発明は前述した問題点を解決することを目的としたもので、ホログラム効果(回折格子パターンの出現)を損なうことなく、通常の観察下では埋め込み情報の視認が困難であり、ホログラムシートに埋め込み情報を形成することが可能な埋め込み情報を有するホログラムシート、ホログラムシートが貼付された偽造防止媒体及びその読み取り方法並びにその読み取り装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回折格子パターン及び光反射性層を有するホログラムシートであって、ホログラムシートに埋め込み情報が形成され、埋め込み情報は光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とするホログラムシートである。
【0010】
また、本発明の埋め込み情報はバーコード、二次元バーコード又は電子透かしであることを特徴とするホログラムシートである。
【0011】
また、本発明は、光透過性画素の形状が、円、楕円、正方形、多角形及び特殊形状の少なくとも一つで形成されたことを特徴とするホログラムシートである。
【0012】
また、本発明は、光透過性画素の径が、40〜1000μmで形成されたことを特徴とするホログラムシートである。
【0013】
また、本発明は、ホログラムシートが、印刷基材に接着されたことを特徴する偽造防止媒体である。
【0014】
また、本発明は、ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法であって、照明部からホログラムシートに付与された埋め込み情報を含む領域に対して照明を照射し、照明が照射された埋め込み情報を含む領域を撮影部によって透過光画像データを取得し、取得した透過光画像データを画像処理部によって、埋め込み情報画像データに変換し、変換された埋め込み情報画像データを埋め込み情報変換部によって埋め込み情報データに変換することを特徴としたホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法である。
【0015】
また、本発明は、ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置であって、ホログラムシートに付与された埋め込み情報を含む領域に対して照明を照射する照射部と、照明が照射された埋め込み情報を含む領域をよって透過光画像データを取得する撮影部と、取得した透過光画像データから埋め込み情報画像データに変換する画像処理部と、変換された埋め込み情報画像データから埋め込み情報データに変換する埋め込み情報変換部から成ることを特徴としたホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のホログラムシートは、反射光では埋め込み情報が視認されることなく、回折格子パターンのみが出現するため、埋め込み情報によって回折格子パターンの出現を低下させることがない。また、ホログラムシートに形成された埋め込み情報は、機械読み取りが可能であり、コード情報又は周波数スペクトルに変換することができる。よって、ある特定の領域内に回折格子パターンと、コード情報又は周波数スペクトルの二つの情報を付与することができる。
【0017】
以上のことから、本発明の埋め込み情報を有するホログラムシートは、複製防止及び真偽判別効果に優れるため、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重品に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0019】
(ホログラムシート)
図1に埋め込み情報を有するホログラムシートA1とその断面図を示す。図1に示すようにホログラムシートは、保護層1、回折格子パターン2、光反射性層3及び粘着層4から成る。本発明の用いるホログラムシートは、前述の構成に限定されることなく、少なくとも回折格子パターン及び光反射性層を有していればよい。また、ホログラムシートの形状は、円形、楕円形、多角形、星形等の特殊形状、スレッド状及び窓開スレッド状等、特に限定されるものではない。よって、ホログラムシート自体は、透過光及び磁気等の少なくとも一つのセンサで読み取り可能となる。
【0020】
ホログラムシートに形成される埋め込み情報5は、ホログラムシートの光反射性層3の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素6によって形成される。埋め込み情報5は、バーコード、二次元バーコード又は電子透かし等が形成できる。また、埋め込み情報5の一つ一つを構成する光透過性画素6の形状が、円、楕円、正方形、多角形及び特殊形状の少なくとも一つで形成され、光透過性画素の径が40〜1000μmで形成されることが好ましい。さらに好ましくは40〜120μm程度である。また、光透過性画素と非光透過性画素のピッチは、1:1以上であることが好ましい。さらに好ましくは、光透過性画素と非光透過性画素のピッチが1:2以上である。光透過性画素の径が120μm以上であると、反射光では埋め込み情報が視認され、回折格子パターンの出現を損なう問題が生じる。
【0021】
図2に示すように、ホログラムシートA1は、反射光で肉眼により観察した場合に光透過性画素6から成る埋め込み情報5が視認されることなく、回折格子パターン2のみが確認できる。
【0022】
ただし、50μm以下で光透過性画素6を形成した場合は、反射光又は窓からの光や室内の光に透かした状態で肉眼で観察した場合に、光透過性画素6から成る埋め込み情報5は視認されることなく、回折格子パターン2のみが確認できる。
【0023】
図3に示すように、強力光源の下で透過光で肉眼により観察した場合に、光透過性画素6から成る埋め込み情報5が視認できる。また、後述するように、埋め込み情報は機械読み取りが可能であり、コード情報又は周波数スペクトル等に変換することができる。
【0024】
光透過性画素6によって二次元バーコードを形成する場合、図4(a)に示すように、ホログラムシートA2内のある特定領域に一つ又は複数個を埋め込んでも良いし、また、複数個を埋め込んだ場合は、同一のデータであるコード情報又は異なったデータであるコード情報でも良い。図4(b)のように、ホログラムシートA3内の全面に複数個埋め込んでも良い。ホログラムシートA1の全面に複数個配列する場合は、二次元バーコードの配列の間隔P1は、光透過性画素6の径よりも大きい間隔を空ける必要がある。ホログラムシートA1内の全面に配列して埋め込んだ方が、反射光で肉眼で観察した場合に光透過性画素6から成る埋め込み情報5は、カムフラージュ性が向上し視認され難い。また、二次元バーコードの一辺S1は、一辺5mm以上で作製することが好ましい。
【0025】
光透過性画素6によって電子透かしを形成する場合、図5(a)に示すように、ホログラムシートA4内の特定領域に一つだけ埋め込んでも良いし、図5(b)のように、ホログラムシートA5内の全面に埋め込んでも良い。ホログラムシートA1の全面に埋め込んだ方が反射光で肉眼で観察した場合に、光透過性画素6から成る埋め込み情報5が視認され難い。また、電子透かしは、光透過性画素6の一辺S2が64画素以上であることが好ましい。
【0026】
例えば、電子透かしの埋め込み情報データは、原画像(背景画像)データと、埋め込み情報である二値画像データ(二重円)とを入力し、高速ハートレー変換により原画像データを二次元の実数データ配列に変換し、二値画像データの配列並べ替えにより二値画像データを生成し、二次元の実数データ配列と二値画像データとの合成により二次元の実数データ配列を生成し、逆高速ハートレー変換により、二次元の実数データ配列を二値画像データ潜像化済み画像データ変換した二値画像データ潜像化済み画像データを用いて光透過性画素6を形成することができる。
【0027】
電子透かしは周波数変換によって周波数スペクトルが抽出可能である。例えば、フーリエ変換やハートレー変換等の周波数変換は、時系列の関数を周波数域の関数へ変換することである。これにより、関数をフーリエ級数で書き表すこと(すなわち、三角関数の和の形として表現すること)が可能になり、例えば、「ある波(関数)について、どういった周波数成分がどの程度含まれるのか」といった事項を調べることができる。
【0028】
ホログラムシートの光反射性層3の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素6は、機械的方法又は化学的方法で作製可能であり、例えば、機械的方法は、レーザ加工機のYVOレーザ又はYAGレーザ等の短波長レーザ(波長1.06μm)によって光反射性層の光反射性基材が除去することができる。化学的方法は、20〜50℃の5%の苛性ソーダ溶液を含む溶剤等によって光反射性層の一部が除去し、光透過性画素を形成することができる。また、埋め込み情報は、レーザ加工機によって形成するため、1枚、1枚ごとに異なった可変情報が容易に形成可能となる。例えば、1枚目は「12345」、2枚目を「12346」の埋め込み情報を付与することができる。
【0029】
また、図6に示すように埋め込み情報が付与されたホログラムシートを印刷基材7に接着することで、貴重印刷物として利用可能な偽造防止媒体となる。印刷基材の種類は、光を透過できるものであれば、紙又はプラスチック等、特に限定されるものではない。紙の場合の坪量は、10〜100g/m2程度が好ましい。多層紙のような構造にしても良い。また、基材の厚さは50〜1000μm程度が好ましい。
【0030】
印刷基材7の一方の面にホログラムシートが付与された場合に、ホログラムシートが付与された領域の基材の一方の面及び/又は他方の面に地紋、彩紋等の印刷模様を形成することができる。特に、印刷模様は反射光で肉眼で観察した場合、埋め込み情報のカムフラージュ効果を有する。
【0031】
(ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置)
図7に示すホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置8によって読み取ることができる。ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置8は、透明基材から成るホログラムシート設置台9、埋め込み情報5を含む領域に対して照明を照射する照明部10、透過光画像データ5aを取得する撮影部11、埋め込み情報画像データ5bに変換する画像処理部12、埋め込み情報データ5cに変換する埋め込み情報変換部13及び埋め込み情報データ5cを報知する報知部14を有する。ただし、透明基材から成るホログラムシート設置台9は必要に応じて設ければよい。
【0032】
埋め込み情報5を含む領域に対して照明を照射する照明部10の光源として、白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ(High Discharge Lamp)、赤外線ランプ又は赤外LED等の光を照射するものから適宜選択すれば良い。
【0033】
図11(a)及び図12(a)に示す透過光画像データ5aは、撮影部11によって取得する。撮影部11は、可視光領域下の透過光の透過光画像データ5aを取得する。撮影部の種類は特に限定されるものではないが、例えば、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等が挙げられる。
【0034】
図11(b)及び図12(b)に示す埋め込み情報画像データ5bは、画像処理部12によって取得する。画像処理部12は、撮影部11で得られた透過光画像データ5aを埋め込み情報画像データ5bに変換する。画像処理部12は、撮影部11で得られた透過光画像データ5aを必要に応じて二値化処理、ぼかし処理又はシャープネス処理を行う必要がある。
【0035】
さらに、外乱光による照明条件の空間的不均一性による照明ムラや、暗電流等による撮像エリア内の不均一性による濃度ムラがある場合、この影響を取り除くため、階調変換の一つである濃度ムラ除去処理を行う。画像上の空間的な濃度ムラの画像成分を除去する方法として、シェーディング補正処理手法等の背景画像を減算又は除算することにより実行する方法や、FFT等を用いて濃度ムラの周波数成分をカットする方法がある。
【0036】
さらに場合によっては、ノイズの影響を低減させるS/N比向上処理、所定の波長領域における吸収箇所と所定の波長領域における反射箇所との濃度差を大きくするための階調変換の一つであるコントラスト増幅処理等を行っても良い。
【0037】
得られた埋め込み情報画像データ5bから埋め込み情報変換部13によって、図11(c)及び図12(c)に示す埋め込み情報データ5cに変換する。埋め込み情報5がバーコード又は二次元バーコード等のコード情報である場合は、デコード処理によってコード情報である埋め込み情報データ5cが得られる。電子透かしの場合は、ハートレー変換又はフーリエ変換等の周波数解析処理が行われ、周波数スペクトルである埋め込み情報データ5cが得られる。
【0038】
報知部14は、表示、音声又は印刷によって報知することができる。表示は、ディスプレイ、液晶画面等で表示可能であり、出力は、異常製品への記号等による印刷を行ってもよい。
【0039】
(ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証装置)
図8に示すホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証装置15によって本物か否か真偽判別することができる。ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証装置15は、透明基材から成るホログラムシート設置台9、埋め込み情報5を含む領域に対して照明を照射する照明部10、透過光画像データ5aを取得する撮影部11、埋め込み情報画像データ5bを抽出する画像処理部12、埋め込み情報データ5cに変換する埋め込み情報変換部13、真正情報データがあらかじめ記憶されている記憶部16、埋め込み情報データ5cと真正情報データを比較する演算部17及び比較結果を報知する報知部14を有する。ただし、透明基材から成るホログラムシート設置台9は必要に応じて設ければよい。
【0040】
ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証装置のホログラムシート設置台9、照明部10、撮影部11、画像処理部12、埋め込み情報変換部13及び報知部14は、ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置と同様である。
【0041】
埋め込み情報データ5cと真正情報データを比較する演算部17は、読み取られた埋め込み情報データ5cと、記憶部にあらかじめ記憶された真正情報データが一致している場合は「真」と判断され、一致していない場合は「偽」と判断し、報知部によって報知する。一致又は不一致は、一例としてパターンマッチング方法を用いて行うことができる。パターンマッチングとは、入力画像の中からあらかじめ用意した標準パターンと同じものがあるか、又は近いものがあるかを検出することである。あらかじめ用意した標準パターンをテンプレートと呼び、入力画像にテンプレートを重ねながら移動し、画素データレベルの相関を調べることをテンプレートマッチングという。
【0042】
LAN、WAN又はインターネット等のネットワーク上においても認証が可能であり、例えば、読み取り部をクライアント側に設け、あらかじめ記憶された真正情報データを認証サーバ端末内に登録しておき、クライアント側から送られたデータとあらかじめ記憶された真正情報データを認証サーバ端末で真偽判別し、真偽判別結果についてネットワークを介して通信することも可能である。
【0043】
(ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法)
ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法は、図9に示すように、ステップ1では、照明部10からホログラムシートに付与された埋め込み情報5を含む領域に対して照明を照射し、照明が照射された埋め込み情報5を含む領域を撮影部11によって透過光画像データ5aを取得し、ステップ2ではステップ1で取得した透過光画像データ5aを画像処理部12によって埋め込み情報画像データ5bに変換し、ステップ3ではステップ2で抽出された埋め込み情報画像データ5bを埋め込み情報変換部13によって埋め込み情報データ5cに変換し、ステップ4ではステップ3で変換した埋め込み情報データ5cを報知部14によって報知する。
【0044】
ステップ2は、ステップ1で取得した透過光画像データ5aを画像処理部12によって埋め込み情報画像データ5bに変換する。撮影部11で得られた透過光画像データ5aを必要に応じて二値化処理、ぼかし処理又はシャープネス処理を行う必要がある。
【0045】
さらに、外乱光による照明条件の空間的不均一性による照明ムラや、暗電流等による撮像エリア内の不均一性による濃度ムラがある場合、この影響を取り除くため、階調変換の一つである濃度ムラ除去処理を行う。画像上の空間的な濃度ムラの画像成分を除去する方法として、シェーディング補正処理手法等の背景画像を減算又は除算することにより実行する方法や、FFT等を用いて濃度ムラの周波数成分をカットする方法がある。
【0046】
さらに、場合によっては、ノイズの影響を低減させるS/N比向上処理又は所定の波長領域における吸収箇所と所定の波長領域における反射箇所との濃度差を大きくするための階調変換の一つであるコントラスト増幅処理等を行っても良い。
【0047】
得られたコントラスト増幅処理されため込み情報画像データ5bから埋め込み情報変換部13によって埋め込み情報データ5cに変換する。埋め込み情報5がバーコード又は二次元バーコード等のコード情報である場合、デコード処理によって変換される。電子透かしの場合は、ハートレー変換又はフーリエ変換等の周波数解析処理が行われる。
【0048】
さらに、報知部14は、表示、音声又は印刷によって報知することができる。表示は、ディスプレイ、液晶画面等で表示可能であり、出力は、異常製品への記号等による印刷を行ってもよい。
【0049】
(ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証方法)
ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証方法は、図10に示すように、ステップ1では、照明部10からホログラムシートに付与された埋め込み情報5を含む領域に対して照明を照射し、照明が照射された埋め込み情報5を含む領域を撮影部11によって透過光画像データ5aを取得し、ステップ2では、ステップ1で取得した透過光画像データ5aを画像処理部12によって埋め込み情報画像データ5bを抽出し、ステップ3では、ステップ2で抽出された埋め込み情報画像データ5bを埋め込み情報変換部13によって埋め込み情報データ5cを取得する。ステップ4では記憶部16にあらかじめ記憶されている真正情報データを読み出し、ステップ5でステップ3で取得した埋め込み情報データ5cと、ステップ4で読み出された真正情報データを演算部17で比較する。ステップ6では読み取られた埋め込み情報データ5cと、記憶部16にあらかじめ記憶された真正情報データが一致している場合は「真」と判断され、一致していない場合は「偽」と判断し、報知部14によって報知する。
【0050】
埋め込み情報が、二次元バーコードの場合は、図11(a)に示すような透過光画像データ5aが得られ、次に、透過光画像データ5aは、必要に応じて二値化処理、ぼかし処理又はシャープネス処理等を行い、図11(b)に示すような埋め込み情報画像データ5bに変換され、埋め込み情報画像データ5bはデコード処理によって図11(c)に示すようなコード情報である埋め込み情報データ5cが得られる。
【0051】
埋め込み情報が、電子透かしの場合は、図12(a)に示すような透過光画像データ5aが得られ、次に、透過光画像データ5aは、必要に応じて二値化処理、ぼかし処理、シャープネス処理等を行い、図12(b)に示すような埋め込み情報画像データ5bに変換され、埋め込み情報画像データ5bからフーリエ変換又はハートレー変換等の周波数解析によって図12(c)に示すような周波数スペクトル18である埋め込み情報データ5cが得られる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
図13(a)に示すように、ホログラムシートは、保護層1、回折格子パターン2、光反射性層3及び粘着層4から成る。ホログラムシートに形成される埋め込み情報5、レーザ加工機のYVOレーザによってホログラム2の光反射性層5の光反射性基材を除去して形成した。光反射性基材を除去することで直径40μmの穿孔及び穿孔間隔127μmの光透過性画素6を複数個形成した。複数の光透過性画素6によって二次元バーコードを3画素分の間隔でホログラムシート全面に配置し、ホログラムシートB1を得た。
【0054】
ホログラムシートB1は、反射光で肉眼により観察した場合に、光透過性画素6から成る埋め込み情報5は視認されることなく、回折格子パターン2のみが確認できた。また、埋め込み情報を含む領域をスポット光(可視光)で照射し、透過光画像をQRコードスキャナで直接読み取り、図13(b)に示すコード情報である埋め込み情報データ5cが得られた。
【0055】
(実施例2)
図14(a)に示すように、ホログラムシートは、保護層1、回折格子パターン2、光反射性層3及び粘着層4から成る。ホログラムシートに形成される埋め込み情報5は、レーザ加工機のYVOレーザによってホログラム2の光反射性層5の光反射性基材を除去して形成した。光反射性基材を除去することで直径40μmの穿孔及び穿孔間隔127μmの光透過性画素6を複数個形成した。複数の光透過性画素6によってハートレー変換を使用した電子透かしをホログラムシート全面に配置しホログラムシートB2を得た。
【0056】
ホログラムシートB2は、反射光で肉眼により観察した場合に光透過性画素6から成る埋め込み情報5は視認されることなく、回折格子パターン2のみが確認できた。また、埋め込み情報を含む領域を赤外透過光を使用したスキャナで取り込み、画像処理部によって二値化処理及びシャープネス処理を行い、埋め込み情報画像データに変換し、変換した埋め込み情報画像データを埋め込み情報変換部によって図14(b)に示す周波数スペクトル18(二重円)である埋め込み情報データ5cが得られた。
【0057】
(実施例3)
図15(a)に示すように、ホログラムシートは、保護層1、回折格子パターン2、光反射性層3及び粘着層4から成る。ホログラムシートに形成される埋め込み情報5は約30℃の5%の苛性ソーダ溶液を含む溶剤によってホログラム2の光反射性層5の光反射性基材を除去して形成した。光反射性基材を除去することで直径100μmの穿孔及び穿孔間隔250μmの光透過性画素6を複数個形成した。複数の光透過性画素6によって二次元バーコードをホログラムシートに配置しホログラムシートB3を得た。
【0058】
ホログラムシートB3では、反射光で肉眼により観察した場合に光透過性画素6から成る埋め込み情報5は視認されることなく、回折格子パターン2のみが確認できた。また、埋め込み情報を含む領域をスポット光(可視光)で照射し、透過光画像をQRコードスキャナで直接読み取り、図15(b)に示すコード情報である埋め込み情報データ5cが得られた。
【0059】
(実施例4)
図16(a)に示すように、ホログラムシートは、保護層1、回折格子パターン2、光反射性層3及び粘着層4から成る。ホログラムシートに形成される埋め込み情報5は、約30℃の5%の苛性ソーダ溶液を含む溶剤によってホログラム2の光反射性層5の光反射性基材を除去して形成した。光反射性基材を除去することで直径85μmの穿孔及び穿孔間隔200μmの光透過性画素6を複数個形成した。複数の光透過性画素6によってハートレー変換を使用した電子透かしをホログラムシートに配置しホログラムシートB4を得た。
【0060】
ホログラムシートB4は、反射光で肉眼で観察した場合に光透過性画素6から成る埋め込み情報5は視認されることなく、回折格子パターン2のみが確認できた。また、埋め込み情報を含む領域を赤外透過光を使用したスキャナで取り込み、画像処理部によって二値化処理及びシャープネス処理を行い、埋め込み情報画像データに変換し、変換した埋め込み情報画像データを埋め込み情報変換部によって図16(b)に示す周波数スペクトル18(二重円)である埋め込み情報データ5cが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】埋め込み情報を有するホログラムシートA1とその断面図を示す図である。
【図2】ホログラムシートA1を反射光で肉眼で観察した場合を示す図である。
【図3】ホログラムシートA1を透過光で肉眼で観察した場合を示す図である。
【図4】光透過性画素6によって二次元バーコードを形成する変形例を示す図である。
【図5】光透過性画素6によって電子透かしを形成する変形例を示す図である。
【図6】印刷基材7に埋め込み情報が付与されたホログラムシートが接着された図である。
【図7】ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置8を示す図である。
【図8】ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証装置15を示す図である。
【図9】ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法のフロー図である。
【図10】ホログラムシートに形成された埋め込み情報の認証方法のフロー図である。
【図11】埋め込み情報が、二次元バーコードの場合を示す図である。
【図12】埋め込み情報が、電子透かしの場合を示す図である。
【図13】レーザ加工機で形成した埋め込み情報を有するホログラムシートB1及び埋め込み情報データを示す図である。
【図14】レーザ加工機で形成した埋め込み情報を有するホログラムシートB2及び埋め込み情報データを示す図である。
【図15】化学的手段で形成した埋め込み情報を有するホログラムシートB3及び埋め込み情報データを示す図である。
【図16】化学的手段で形成した埋め込み情報を有するホログラムシートB4及び埋め込み情報データを示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 保護層
2 回折格子パターン
3 光反射性層
4 粘着層
5 埋め込み情報
5a 透過光画像データ
5b 埋め込み情報画像データ
5c 埋め込み情報データ
6 光透過性画素
7 印刷基材
8 ホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置
9 透明基材から成るホログラムシート設置台
10 照明部
11 撮影部
12 画像処理部
13 埋め込み情報変換部
14 報知部
15 認証装置
16 記憶部
17 演算部
18 周波数スペクトル
A1、A2、A3、A4、A5、B1、B2、B3、B4 ホログラムシート
P1 間隔
S1 二次元バーコードの一辺
S2 電子透かしの一辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子パターン及び光反射性層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラムシートに埋め込み情報が形成され、
前記埋め込み情報は前記光学的変化素子の前記光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
前記埋め込み情報はバーコード、二次元バーコード又は電子透かしであることを特徴とする請求項1記載のホログラムシート。
【請求項3】
前記光透過性画素の形状が、円、楕円、正方形、多角形及び特殊形状の少なくとも一つで形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載のホログラムシート。
【請求項4】
前記光透過性画素の径が、40〜1000μmで形成されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のホログラムシート。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載のホログラムシートが、印刷基材に接着されたことを特徴する偽造防止媒体。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法であって、
照明部から前記ホログラムシートに付与された埋め込み情報を含む領域に対して照明を照射し、
前記照明が照射された前記埋め込み情報を含む領域を撮影部によって透過光画像データを取得し、
前記取得した透過光画像データを画像処理部によって、埋め込み情報画像データに変換し、
前記変換された埋め込み情報画像データを埋め込み情報変換部によって埋め込み情報データに変換することを特徴としたホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5記載のホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置であって、
前記ホログラムシートに付与された埋め込み情報を含む領域に対して照明を照射する照射部と、
前記照明が照射された前記埋め込み情報を含む領域をよって透過光画像データを取得する撮影部と、
前記取得した透過光画像データから埋め込み情報画像データに変換する画像処理部と、
前記変換された埋め込み情報画像データから埋め込み情報データに変換する埋め込み情報変換部から成ることを特徴としたホログラムシートに形成された埋め込み情報の読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−268776(P2008−268776A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114946(P2007−114946)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】