埋戻し構造及び埋戻し工法
【課題】覆工板を使用することなく、地表面より直接形成した空洞部を短時間で容易に埋め戻すことが可能な埋戻し構造及び方法を提供する。
【解決手段】埋戻し構造10は、円柱状の空洞部1の底に形成された底用砕石部11と、底用砕石部11の上に設置された高さ調整材4と、高さ調整材4の上に設置された鉄板14と、鉄板14の上に敷設された舗装部15と、を備える。
【解決手段】埋戻し構造10は、円柱状の空洞部1の底に形成された底用砕石部11と、底用砕石部11の上に設置された高さ調整材4と、高さ調整材4の上に設置された鉄板14と、鉄板14の上に敷設された舗装部15と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路・通路に形成された空洞部を埋戻す埋戻し構造及び埋戻し工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内に杭を形成したり、埋設されている杭や地中内の障害物を撤去したりする場合は、地盤を掘削して空洞部を形成した後に、杭の形成作業や撤去作業を行う。このような作業は1日では完了せず数日にわたって継続されることが多い。また、これらの作業を道路・通路など、日常の往来がある箇所で行う必要がある場合は、施工箇所にあらかじめ覆工板を設置し、夜間の往来が少なくなる時間帯に覆工板周辺を立ち入り禁止状態に占有し、覆工板を取り外して覆工板下の地盤に空洞部を形成する作業などを行い、朝の時点で覆工板を戻して占有を開放し、昼間は工事を休止するという方法を取ることが通常である(特許文献1における従来の技術参照)。
【0003】
覆工板を設置する覆工作業について図9を参照して説明すると、まず、土留め杭108を打設した後に、覆工板105を設置する箇所の路面舗装を取り壊し、土留め杭108の上端が露出するまで空洞103を掘削する。ひき続いて、土留め杭108の上端に桁受部材102を取り付け、さらに桁受部材102の上部に覆工桁104を取り付ける。その後、覆工桁104の上に覆工板105を敷設するとともに、覆工板105の端部と既設路面106との間のすきまを埋め戻し、すりつけ舗装107を舗装する順序で行われている(非特許文献1の525頁〜527頁参照)。
【0004】
覆工板を設置する覆工作業は、通常、夜間の往来が少なくなる時間帯に行う。また、設置範囲は、一晩の工事で覆工板が設置可能な範囲とし、範囲が広い場合は複数晩にわたって分割施工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−147712号公報
【非特許文献1】計画、設計、施工、維持管理のための地下構造物ハンドブック、地下構造物ハンドブック編集委員会編集、昭和59年3月10日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、道路・通路を人や車が通行できるようにしながら空洞部を形成するにあたってこの覆工板を使用する工法を採用すると、当然のことながら覆工板設置の工種について工期が伸び、工費が高くなるという問題点があった。この問題点は、一定の範囲の中に複数の空洞部を形成する場合、特に顕著となり、各空洞部に個別に覆工体を設置するにしても、各空洞部を包括するように広い範囲に覆工板を設置するにしても、工期が伸び、工費が高くなるという問題点があった。
【0007】
一方、覆工板を使用する工法では、夜間の空洞部を形成する作業などが終了した後、覆工板を戻すだけで往来を可能にできるという利点がある。また、覆工板を戻す作業は、極めて短時間で実施できるので、限られた夜間の他の作業時間を消費することがない。
【0008】
これに対し、覆工板を使用せずに地表面より直接空洞部を形成した場合、往来を可能にするには、空洞部を埋め戻し材などで埋め戻すことが考えられるが、この場合、作業時間がかかるという問題点があった。また、埋め戻しの転圧が不完全だと沈下が生じ、往来に支障をきたすという問題点があった。さらに、埋め戻した翌晩、空洞部を形成する作業等を再開する場合、空洞部内の埋め戻し材を再度撤去する必要があり、手間がかかるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、覆工板を使用することなく、地表面より直接形成した空洞部を短時間で容易に埋め戻すことが可能な埋戻し構造及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように前記空洞部内に設置された蓋材と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材が敷設された間詰め部と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記高さ調整材は、
前記空洞部に積み重ねられた複数の柱状体からなることとしてもよい。
【0013】
また、本発明において、前記柱状体は、
所定の大きさに形成された柱状体本体と、
一端が前記柱状体本体に接続されたロープと、
内方に前記ロープが挿通された中空の筒体と、
前記柱状体本体の上部に形成されて横倒しになった前記筒体を収納可能な溝と、
を備えることとしてもよい。
【0014】
本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように蓋材を前記空洞部内に設置する蓋材設置工程と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材を敷設して間詰め部を形成する間詰め部形成工程と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、覆工板を使用することなく、地表面より直接形成した空洞部を短時間で容易に埋め戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる埋戻し構造を示す断面図である。
【図2】図1のA部斜視図である。
【図3】(a)はブロックを溝に沿って縦方向に切断した断面図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図である。
【図4】埋戻し構造の構築工程を示す図である。
【図5】(a)は空洞部形成工程及び底用砕石部形成工程を示す図、(b)はブロック設置工程を示す図、(c)は鉄板設置工程を示す図、(d)は舗装部形成工程を示す図である。
【図6】本実施形態にかかる埋戻し構造を示す断面図である。
【図7】埋戻し構造の構築工程を示す図である。
【図8】ブロック本体とワイヤーロープとを接続する他の構造を示す図である。
【図9】従来の覆工体の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第一実施形態にかかる埋戻し構造10を示す断面図である。
本図に示すように、埋戻し構造10は、円柱状の空洞部1の底に形成された底用砕石部11と、底用砕石部11の上に設置された高さ調整材4と、高さ調整材4の上に設置された鉄板14(蓋材に相当)と、鉄板14の上に敷設された舗装部15と、を備える。
【0020】
底用砕石部11は、空洞部1の底に砕石が敷設された後、転圧されて形成される。詳細は後述するが、転圧は最下段に設置されたブロック12を利用して行う。
【0021】
高さ調整材4は、底用砕石部11の上面から所定の深度までケーシング2(土留めに相当)内に複数段となるように積み重ねられたブロック12(柱状体に相当)から構成されている。
【0022】
図2は、ブロック12の斜視図である。また、図3(a)はブロック12を溝12cに沿って縦方向に切断した断面図、図3(b)は(a)のB矢視図、図3(c)は(b)のC矢視図である。
【0023】
これらの図に示すように、ブロック12は、円柱状のブロック本体12a(柱状体本体に相当)と、ブロック本体12aを吊り下げるためのワイヤーロープ12bと、ワイヤーロープ12bとブロック本体12aとを接続するためのブラケット12d及びシャックル12fと、ワイヤーロープ12bを溝12c(後述する)内に導くためのガイド管12e(筒体に相当)と、を備える。
【0024】
ブロック本体12aは、プレキャストコンクリートからなり、その直径は、ケーシング2内への挿入・撤去が容易となるように、ケーシング2の内径よりも短く形成される。したがって、ブロック本体12aとケーシング2との間には隙間13(図1参照)が形成されている。
【0025】
ブロック本体12aの上面には、当該上面の中心点を通過する凹状の溝12cが形成されている。そして、この溝12cにU字型のブラケット12dが配置されるとともに、ブラケット12dの両端がそれぞれブロック本体12aに固定されている。
【0026】
ブラケット12dは、ブロック12を水平に吊り下げるために、ブロック本体12aの中心点付近に設けられている。
【0027】
ブラケット12dには、シャックル12fを介してワイヤーロープ12bの一端が係止されている。
【0028】
また、ワイヤーロープ12bを内包するように筒状のガイド管12eが配置されている。
【0029】
したがって、ワイヤーロープ12bでブロック本体12aを吊り下げるとワイヤーロープ12bが緊張して鉛直になるため(図3(a)参照)、ガイド管12eもワイヤーロープ12bに沿って鉛直になる。一方、ワイヤーロープ12bを緩めると、ガイド管12eは自重によって図3(a)の左右側の何れか一方に倒れるため、ワイヤーロープ12bとともに溝12c内に収納される。
【0030】
そして、ワイヤーロープ12bは、ブロック本体12aに接続されたまま、ガイド管12eが溝12cに収納された状態で、空洞部1内に埋設されている(図1参照)。具体的には、ワイヤーロープ12bの一端部、中央部、他端部は、それぞれ溝12c内、隙間13内、舗装部15内に埋設されている。
【0031】
ガイド管12eの外径は、溝12cの深さよりも短く形成されている。これにより、ガイド管12eは溝12c内に収納された状態でブロック本体12aの上面よりも上方に突出しない。
【0032】
また、ガイド管12eの長さは、ブロック本体12aの半径よりも短く形成されている。これにより、ガイド管12eが溝12c内に収納された状態でブロック本体12aの側面よりも外方に突出しない。
【0033】
鉄板14は、最上段のブロック12の上面及びケーシング2の上面を覆うように設置されている。
【0034】
また、鉄板14は、円盤状で、その直径が空洞部1の内径とほぼ同一に形成されているので、舗装部15の砕石等が隙間13に入り込むことはない。
【0035】
鉄板14の側面には切り欠き部が設けられており、複数のワイヤーロープ12bがその切り欠き部内を挿通するように配置されている。
【0036】
舗装部15は、鉄板14の上に砕石が敷設された舗装用砕石部15aと、舗装用砕石部15aの上にアスファルトが敷設されたアスファルト部15bと、を備え、アスファルト部15bの上面が道路3の路面3aと面一になるように形成されている。
【0037】
以下に、上述した埋戻し構造10の構築方法を施工手順に従って説明する。
【0038】
図4は、埋戻し構造10の構築工程を示す図である。本図に示すように、空洞部形成工程S10から舗装部形成工程S50までを実施することにより、埋戻し構造10を構築する。これらの工程は、例えば、道路3の一部を占有して夜間一晩で行い、明け方の道路3の占有を解放しなければならない時間には作業を終了する。
【0039】
以下、各工程について図5を利用しながら説明する。
【0040】
まず、空洞部形成工程S10を実施する。この工程では、道路3の路面3aより、例えば、鋼製のケーシング2を圧入しながら、その内部の土砂をクラブバケットですくい出すことにより、図5(a)に示すように、空洞部1を形成する。
【0041】
空洞部形成工程S10は、一般に道路3の占有を解放しなければならない時刻から底用砕石部形成工程S20、ブロック設置工程S30、鉄板設置工程S40及び舗装部形成工程S50に必要と推測される時間を前倒しした時刻まで行う。
【0042】
次に、底用砕石部形成工程S20を実施する。この工程では、図5(a)に示すように、空洞部1の底部に砕石を敷設して底用砕石部11を形成する。
【0043】
次に、ブロック設置工程S30(調整材設置工程に相当)を実施する。この工程では、図5(b)に示すように、ブロック12をワイヤーロープ12bで吊り下げながら空洞部1内に挿入して設置する。
【0044】
最初のブロック12(すなわち、最下段に配置されるブロック12)を挿入する際は、ブロック12を上下させて底用砕石部11を転圧しながら、その上面を略水平に均す。かかる際に、ブロック12の側面とケーシング2との間には、隙間13が存在しているので、ブロック12をスムーズに上下移動させることができる。
【0045】
底用砕石部11の転圧が終了したら、そのまま底用砕石部11の上にブロック12を設置する。その後、ワイヤーロープ12bを緩めてガイド管12eを溝12c内に収納する。緩めたワイヤーロープ12bの上端は、空洞部1の上端付近に仮止めする。
【0046】
次に、新たなブロック12を挿入して既設のブロック12上に設置する。個別のブロック12にはそれぞれワイヤーロープ12bが取り付けられているため、新たなブロック12を挿入して既設のブロック12上に設置する毎に新たなブロック12に取り付けられていたワイヤーロープ12bの上端を空洞部1の上端付近に仮止めする。このように、ブロック12を空洞部1内に挿入して積み重ねる作業を繰り返し実施して、積み重ねられたブロック12の上面の高さが予め設計等によって決定された所定の深度に到達したら、設置作業を終了する。
【0047】
次に、鉄板設置工程S40(蓋材設置工程に相当)を実施する。この工程では、図5(c)に示すように、最上段のブロック12の上に鉄板14を設置する。
かかる際に、鉄板14の切り欠き部にワイヤーロープ12bを挿通させながら、鉄板14を設置する。
【0048】
最後に、舗装部形成工程S50を実施する。この工程では、図5(d)に示すように、舗装部15を形成して空洞部1の上を通行可能な状態にする。舗装部15は、まず、鉄板14の上に砕石を敷設して転圧した舗装用砕石部15aを形成し、次に、舗装用砕石部15aの上にアスファルトを敷設してアスファルト部15bを形成する。舗装用砕石部15aを構築する際は、上記ブロック設置工程S30において、空洞部1の上端付近に仮止めしたワイヤーロープ12bの他端を舗装用砕石部15a内に埋め込む。
【0049】
以上説明したように、空洞部形成工程S10から舗装部形成工程S50までを実施することにより、空洞部1が形成された道路3を、覆工板を使用することなく埋戻して通行可能にすることができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、蓋材として鉄板14を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、強化プラスチック等からなるものを用いてもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、蓋材として円盤状の鉄板14を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、リング状の鉄板を用いてもよい。要は、舗装用の砕石が隙間13に入ることを防止できる形状であればよい。
【0052】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0053】
以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0054】
図6は、本実施形態にかかる埋戻し構造20を示す断面図である。
本図に示すように、埋戻し構造20は、底用砕石部11と、高さ調整材4と、高さ調整材4とケーシング2との間に形成された間詰め部23と、舗装部15と、を備える。
【0055】
間詰め部23は、ブロック12とケーシング2との間の隙間13内に二液混合の硬化材(間詰め材に相当)を敷設することにより形成される。間詰め部23が形成されているので、舗装部15の砕石等が隙間13に入り込むことはない。
【0056】
ワイヤーロープ12bは、ブロック本体12aに接続されたまま、ガイド管12eが溝12cに収納された状態で、空洞部1内に埋設されている。具体的には、ワイヤーロープ12bの一端部、中央部、他端部は、それぞれ溝12c内、間詰め部23内、舗装部15内に埋設されている。
【0057】
以下に、上述した埋戻し構造20の構築方法を施工手順に従って説明する。
【0058】
図7は、埋戻し構造20の構築工程を示す図である。本図に示すように、空洞部形成工程S10から舗装部形成工程S50までを実施することにより、埋戻し構造20を構築する。
【0059】
まず、第一実施形態と同様に、空洞部形成工程S10からブロック設置工程S30までを実施する。
【0060】
次に、間詰め部形成工程S45を実施する。この工程では、ブロック12とケーシング2との間の隙間13内に二液混合の硬化材を敷設して間詰め部23を形成する。
【0061】
最後に、第一実施形態と同様に、舗装部形成工程S50を実施する。
【0062】
以上説明した各実施形態における埋戻し構造10、20によれば、空洞部1が形成された道路3を、覆工板を使用することなく埋戻して通行可能にすることができる。
【0063】
また、ブロック12として、プレキャストコンクリートのものをあらかじめ製作しておき、これらを空洞部1内に設置することで、空洞部1の大半の部分を埋戻すことができるので、埋戻し作業の施工時間を大幅に短縮することができる。
【0064】
さらに、ブロック12として高さが異なる2〜3種のものをそれぞれ数個用意しておけば、空洞部1の深度を気にすることなく、これらブロック12の組み合わせの設置で、あらかじめ設計等により決定された舗装部15の下端深度まで空洞部1を埋め戻すことができる。
【0065】
また、個別のブロック12にはそれぞれワイヤーロープ12bが接続されているので、埋め戻し時にはワイヤーロープ12bの撤去の時間が必要なく迅速に埋め戻しを実施することができる。そして、ブロック12の撤去時には舗装部15を除去して個別のワイヤーロープ12bの他端を取り出し、この他端をクレーン等に接続するだけなので、短時間でブロック12の撤去作業を行うことができる。
なお、通常の方法では、個別のブロック12にワイヤーロープ12bをつけたままでブロック12を重ねていくとブロック12とワイヤーロープ12bとの取り付け部、あるいは、ワイヤーロープ12bが隣接するブロック12間に挟みこまれてブロック12のがたつきの原因になると考えられるが、本願発明では、ブロック12とワイヤーロープ12bとの取り付け部は、溝12c内にあり、また、ワイヤーロープ12bもガイド管12eにより溝12c内に収納されるので、ブロック12のがたつきを防ぐことができる。
【0066】
なお、上述した各実施形態においては、コンクリートからなるブロック12を用いた場合について説明したが、ブロック12の材料はこれに限定されるものではなく、鋼材を加工したものを使用してもよい。ただし、ブロック状に形成された際に、舗装部15及び車等の重量が作用しても破損しない強度を備えていることが必要である。
【0067】
また、上述した各実施形態においては、円柱状のブロック12を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、角柱状のブロックを用いてもよい。
【0068】
また、上述した各実施形態においては、円柱型の高さ調整材4を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、上述した複数の角柱状のブロックからなる高さ調整材を用いてもよい。
【0069】
さらに、上述した各実施形態においては、U字型のブラケット12d及びシャックル12fで、ブロック本体12aとワイヤーロープ12bとを接続する構造としたが、これに限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、1対のブラケット12gと、当該両ブラケット12gを貫通するとともに、ワイヤーロープ12bの折り返し部分内を挿通するボルト12hと、ナット12jと、からなる構造としてもよい。
【0070】
なお、上述した各実施形態の他に、既設の杭を撤去する場合にも本発明を適用することが可能である。かかる場合には、既設の杭の周囲を囲うようにケーシング2を設置し、次に、ケーシング2内の土砂を掘削しながらその杭を抜いた後、上述した第一実施形態や第二実施形態の何れかを実施する。
【符号の説明】
【0071】
1 空洞部
2 ケーシング
3 道路
3a 路面
4 高さ調整材
10 埋戻し構造
11 底用砕石部
12 ブロック
12a ブロック本体
12b ワイヤーロープ
12c 溝
12d ブラケット
12e ガイド管
12f シャックル
12g ブラケット
12h ボルト
12j ナット
13 隙間
14 鉄板
15 舗装部
15a 舗装用砕石部
15b アスファルト部
20 埋戻し構造
23 間詰め部
102 桁受部材
103 空洞部
104 覆工桁
105 覆工板
106 既設路面
107 すりつけ舗装
108 土留め杭
S10 空洞部形成工程
S20 底用砕石部形成工程
S30 ブロック設置工程
S40 鉄板設置工程
S45 間詰め部形成工程
S50 舗装部形成工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路・通路に形成された空洞部を埋戻す埋戻し構造及び埋戻し工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内に杭を形成したり、埋設されている杭や地中内の障害物を撤去したりする場合は、地盤を掘削して空洞部を形成した後に、杭の形成作業や撤去作業を行う。このような作業は1日では完了せず数日にわたって継続されることが多い。また、これらの作業を道路・通路など、日常の往来がある箇所で行う必要がある場合は、施工箇所にあらかじめ覆工板を設置し、夜間の往来が少なくなる時間帯に覆工板周辺を立ち入り禁止状態に占有し、覆工板を取り外して覆工板下の地盤に空洞部を形成する作業などを行い、朝の時点で覆工板を戻して占有を開放し、昼間は工事を休止するという方法を取ることが通常である(特許文献1における従来の技術参照)。
【0003】
覆工板を設置する覆工作業について図9を参照して説明すると、まず、土留め杭108を打設した後に、覆工板105を設置する箇所の路面舗装を取り壊し、土留め杭108の上端が露出するまで空洞103を掘削する。ひき続いて、土留め杭108の上端に桁受部材102を取り付け、さらに桁受部材102の上部に覆工桁104を取り付ける。その後、覆工桁104の上に覆工板105を敷設するとともに、覆工板105の端部と既設路面106との間のすきまを埋め戻し、すりつけ舗装107を舗装する順序で行われている(非特許文献1の525頁〜527頁参照)。
【0004】
覆工板を設置する覆工作業は、通常、夜間の往来が少なくなる時間帯に行う。また、設置範囲は、一晩の工事で覆工板が設置可能な範囲とし、範囲が広い場合は複数晩にわたって分割施工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−147712号公報
【非特許文献1】計画、設計、施工、維持管理のための地下構造物ハンドブック、地下構造物ハンドブック編集委員会編集、昭和59年3月10日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、道路・通路を人や車が通行できるようにしながら空洞部を形成するにあたってこの覆工板を使用する工法を採用すると、当然のことながら覆工板設置の工種について工期が伸び、工費が高くなるという問題点があった。この問題点は、一定の範囲の中に複数の空洞部を形成する場合、特に顕著となり、各空洞部に個別に覆工体を設置するにしても、各空洞部を包括するように広い範囲に覆工板を設置するにしても、工期が伸び、工費が高くなるという問題点があった。
【0007】
一方、覆工板を使用する工法では、夜間の空洞部を形成する作業などが終了した後、覆工板を戻すだけで往来を可能にできるという利点がある。また、覆工板を戻す作業は、極めて短時間で実施できるので、限られた夜間の他の作業時間を消費することがない。
【0008】
これに対し、覆工板を使用せずに地表面より直接空洞部を形成した場合、往来を可能にするには、空洞部を埋め戻し材などで埋め戻すことが考えられるが、この場合、作業時間がかかるという問題点があった。また、埋め戻しの転圧が不完全だと沈下が生じ、往来に支障をきたすという問題点があった。さらに、埋め戻した翌晩、空洞部を形成する作業等を再開する場合、空洞部内の埋め戻し材を再度撤去する必要があり、手間がかかるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、覆工板を使用することなく、地表面より直接形成した空洞部を短時間で容易に埋め戻すことが可能な埋戻し構造及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように前記空洞部内に設置された蓋材と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材が敷設された間詰め部と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記高さ調整材は、
前記空洞部に積み重ねられた複数の柱状体からなることとしてもよい。
【0013】
また、本発明において、前記柱状体は、
所定の大きさに形成された柱状体本体と、
一端が前記柱状体本体に接続されたロープと、
内方に前記ロープが挿通された中空の筒体と、
前記柱状体本体の上部に形成されて横倒しになった前記筒体を収納可能な溝と、
を備えることとしてもよい。
【0014】
本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように蓋材を前記空洞部内に設置する蓋材設置工程と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明は、周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材を敷設して間詰め部を形成する間詰め部形成工程と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、覆工板を使用することなく、地表面より直接形成した空洞部を短時間で容易に埋め戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる埋戻し構造を示す断面図である。
【図2】図1のA部斜視図である。
【図3】(a)はブロックを溝に沿って縦方向に切断した断面図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のC矢視図である。
【図4】埋戻し構造の構築工程を示す図である。
【図5】(a)は空洞部形成工程及び底用砕石部形成工程を示す図、(b)はブロック設置工程を示す図、(c)は鉄板設置工程を示す図、(d)は舗装部形成工程を示す図である。
【図6】本実施形態にかかる埋戻し構造を示す断面図である。
【図7】埋戻し構造の構築工程を示す図である。
【図8】ブロック本体とワイヤーロープとを接続する他の構造を示す図である。
【図9】従来の覆工体の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第一実施形態にかかる埋戻し構造10を示す断面図である。
本図に示すように、埋戻し構造10は、円柱状の空洞部1の底に形成された底用砕石部11と、底用砕石部11の上に設置された高さ調整材4と、高さ調整材4の上に設置された鉄板14(蓋材に相当)と、鉄板14の上に敷設された舗装部15と、を備える。
【0020】
底用砕石部11は、空洞部1の底に砕石が敷設された後、転圧されて形成される。詳細は後述するが、転圧は最下段に設置されたブロック12を利用して行う。
【0021】
高さ調整材4は、底用砕石部11の上面から所定の深度までケーシング2(土留めに相当)内に複数段となるように積み重ねられたブロック12(柱状体に相当)から構成されている。
【0022】
図2は、ブロック12の斜視図である。また、図3(a)はブロック12を溝12cに沿って縦方向に切断した断面図、図3(b)は(a)のB矢視図、図3(c)は(b)のC矢視図である。
【0023】
これらの図に示すように、ブロック12は、円柱状のブロック本体12a(柱状体本体に相当)と、ブロック本体12aを吊り下げるためのワイヤーロープ12bと、ワイヤーロープ12bとブロック本体12aとを接続するためのブラケット12d及びシャックル12fと、ワイヤーロープ12bを溝12c(後述する)内に導くためのガイド管12e(筒体に相当)と、を備える。
【0024】
ブロック本体12aは、プレキャストコンクリートからなり、その直径は、ケーシング2内への挿入・撤去が容易となるように、ケーシング2の内径よりも短く形成される。したがって、ブロック本体12aとケーシング2との間には隙間13(図1参照)が形成されている。
【0025】
ブロック本体12aの上面には、当該上面の中心点を通過する凹状の溝12cが形成されている。そして、この溝12cにU字型のブラケット12dが配置されるとともに、ブラケット12dの両端がそれぞれブロック本体12aに固定されている。
【0026】
ブラケット12dは、ブロック12を水平に吊り下げるために、ブロック本体12aの中心点付近に設けられている。
【0027】
ブラケット12dには、シャックル12fを介してワイヤーロープ12bの一端が係止されている。
【0028】
また、ワイヤーロープ12bを内包するように筒状のガイド管12eが配置されている。
【0029】
したがって、ワイヤーロープ12bでブロック本体12aを吊り下げるとワイヤーロープ12bが緊張して鉛直になるため(図3(a)参照)、ガイド管12eもワイヤーロープ12bに沿って鉛直になる。一方、ワイヤーロープ12bを緩めると、ガイド管12eは自重によって図3(a)の左右側の何れか一方に倒れるため、ワイヤーロープ12bとともに溝12c内に収納される。
【0030】
そして、ワイヤーロープ12bは、ブロック本体12aに接続されたまま、ガイド管12eが溝12cに収納された状態で、空洞部1内に埋設されている(図1参照)。具体的には、ワイヤーロープ12bの一端部、中央部、他端部は、それぞれ溝12c内、隙間13内、舗装部15内に埋設されている。
【0031】
ガイド管12eの外径は、溝12cの深さよりも短く形成されている。これにより、ガイド管12eは溝12c内に収納された状態でブロック本体12aの上面よりも上方に突出しない。
【0032】
また、ガイド管12eの長さは、ブロック本体12aの半径よりも短く形成されている。これにより、ガイド管12eが溝12c内に収納された状態でブロック本体12aの側面よりも外方に突出しない。
【0033】
鉄板14は、最上段のブロック12の上面及びケーシング2の上面を覆うように設置されている。
【0034】
また、鉄板14は、円盤状で、その直径が空洞部1の内径とほぼ同一に形成されているので、舗装部15の砕石等が隙間13に入り込むことはない。
【0035】
鉄板14の側面には切り欠き部が設けられており、複数のワイヤーロープ12bがその切り欠き部内を挿通するように配置されている。
【0036】
舗装部15は、鉄板14の上に砕石が敷設された舗装用砕石部15aと、舗装用砕石部15aの上にアスファルトが敷設されたアスファルト部15bと、を備え、アスファルト部15bの上面が道路3の路面3aと面一になるように形成されている。
【0037】
以下に、上述した埋戻し構造10の構築方法を施工手順に従って説明する。
【0038】
図4は、埋戻し構造10の構築工程を示す図である。本図に示すように、空洞部形成工程S10から舗装部形成工程S50までを実施することにより、埋戻し構造10を構築する。これらの工程は、例えば、道路3の一部を占有して夜間一晩で行い、明け方の道路3の占有を解放しなければならない時間には作業を終了する。
【0039】
以下、各工程について図5を利用しながら説明する。
【0040】
まず、空洞部形成工程S10を実施する。この工程では、道路3の路面3aより、例えば、鋼製のケーシング2を圧入しながら、その内部の土砂をクラブバケットですくい出すことにより、図5(a)に示すように、空洞部1を形成する。
【0041】
空洞部形成工程S10は、一般に道路3の占有を解放しなければならない時刻から底用砕石部形成工程S20、ブロック設置工程S30、鉄板設置工程S40及び舗装部形成工程S50に必要と推測される時間を前倒しした時刻まで行う。
【0042】
次に、底用砕石部形成工程S20を実施する。この工程では、図5(a)に示すように、空洞部1の底部に砕石を敷設して底用砕石部11を形成する。
【0043】
次に、ブロック設置工程S30(調整材設置工程に相当)を実施する。この工程では、図5(b)に示すように、ブロック12をワイヤーロープ12bで吊り下げながら空洞部1内に挿入して設置する。
【0044】
最初のブロック12(すなわち、最下段に配置されるブロック12)を挿入する際は、ブロック12を上下させて底用砕石部11を転圧しながら、その上面を略水平に均す。かかる際に、ブロック12の側面とケーシング2との間には、隙間13が存在しているので、ブロック12をスムーズに上下移動させることができる。
【0045】
底用砕石部11の転圧が終了したら、そのまま底用砕石部11の上にブロック12を設置する。その後、ワイヤーロープ12bを緩めてガイド管12eを溝12c内に収納する。緩めたワイヤーロープ12bの上端は、空洞部1の上端付近に仮止めする。
【0046】
次に、新たなブロック12を挿入して既設のブロック12上に設置する。個別のブロック12にはそれぞれワイヤーロープ12bが取り付けられているため、新たなブロック12を挿入して既設のブロック12上に設置する毎に新たなブロック12に取り付けられていたワイヤーロープ12bの上端を空洞部1の上端付近に仮止めする。このように、ブロック12を空洞部1内に挿入して積み重ねる作業を繰り返し実施して、積み重ねられたブロック12の上面の高さが予め設計等によって決定された所定の深度に到達したら、設置作業を終了する。
【0047】
次に、鉄板設置工程S40(蓋材設置工程に相当)を実施する。この工程では、図5(c)に示すように、最上段のブロック12の上に鉄板14を設置する。
かかる際に、鉄板14の切り欠き部にワイヤーロープ12bを挿通させながら、鉄板14を設置する。
【0048】
最後に、舗装部形成工程S50を実施する。この工程では、図5(d)に示すように、舗装部15を形成して空洞部1の上を通行可能な状態にする。舗装部15は、まず、鉄板14の上に砕石を敷設して転圧した舗装用砕石部15aを形成し、次に、舗装用砕石部15aの上にアスファルトを敷設してアスファルト部15bを形成する。舗装用砕石部15aを構築する際は、上記ブロック設置工程S30において、空洞部1の上端付近に仮止めしたワイヤーロープ12bの他端を舗装用砕石部15a内に埋め込む。
【0049】
以上説明したように、空洞部形成工程S10から舗装部形成工程S50までを実施することにより、空洞部1が形成された道路3を、覆工板を使用することなく埋戻して通行可能にすることができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、蓋材として鉄板14を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、強化プラスチック等からなるものを用いてもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、蓋材として円盤状の鉄板14を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、リング状の鉄板を用いてもよい。要は、舗装用の砕石が隙間13に入ることを防止できる形状であればよい。
【0052】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0053】
以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0054】
図6は、本実施形態にかかる埋戻し構造20を示す断面図である。
本図に示すように、埋戻し構造20は、底用砕石部11と、高さ調整材4と、高さ調整材4とケーシング2との間に形成された間詰め部23と、舗装部15と、を備える。
【0055】
間詰め部23は、ブロック12とケーシング2との間の隙間13内に二液混合の硬化材(間詰め材に相当)を敷設することにより形成される。間詰め部23が形成されているので、舗装部15の砕石等が隙間13に入り込むことはない。
【0056】
ワイヤーロープ12bは、ブロック本体12aに接続されたまま、ガイド管12eが溝12cに収納された状態で、空洞部1内に埋設されている。具体的には、ワイヤーロープ12bの一端部、中央部、他端部は、それぞれ溝12c内、間詰め部23内、舗装部15内に埋設されている。
【0057】
以下に、上述した埋戻し構造20の構築方法を施工手順に従って説明する。
【0058】
図7は、埋戻し構造20の構築工程を示す図である。本図に示すように、空洞部形成工程S10から舗装部形成工程S50までを実施することにより、埋戻し構造20を構築する。
【0059】
まず、第一実施形態と同様に、空洞部形成工程S10からブロック設置工程S30までを実施する。
【0060】
次に、間詰め部形成工程S45を実施する。この工程では、ブロック12とケーシング2との間の隙間13内に二液混合の硬化材を敷設して間詰め部23を形成する。
【0061】
最後に、第一実施形態と同様に、舗装部形成工程S50を実施する。
【0062】
以上説明した各実施形態における埋戻し構造10、20によれば、空洞部1が形成された道路3を、覆工板を使用することなく埋戻して通行可能にすることができる。
【0063】
また、ブロック12として、プレキャストコンクリートのものをあらかじめ製作しておき、これらを空洞部1内に設置することで、空洞部1の大半の部分を埋戻すことができるので、埋戻し作業の施工時間を大幅に短縮することができる。
【0064】
さらに、ブロック12として高さが異なる2〜3種のものをそれぞれ数個用意しておけば、空洞部1の深度を気にすることなく、これらブロック12の組み合わせの設置で、あらかじめ設計等により決定された舗装部15の下端深度まで空洞部1を埋め戻すことができる。
【0065】
また、個別のブロック12にはそれぞれワイヤーロープ12bが接続されているので、埋め戻し時にはワイヤーロープ12bの撤去の時間が必要なく迅速に埋め戻しを実施することができる。そして、ブロック12の撤去時には舗装部15を除去して個別のワイヤーロープ12bの他端を取り出し、この他端をクレーン等に接続するだけなので、短時間でブロック12の撤去作業を行うことができる。
なお、通常の方法では、個別のブロック12にワイヤーロープ12bをつけたままでブロック12を重ねていくとブロック12とワイヤーロープ12bとの取り付け部、あるいは、ワイヤーロープ12bが隣接するブロック12間に挟みこまれてブロック12のがたつきの原因になると考えられるが、本願発明では、ブロック12とワイヤーロープ12bとの取り付け部は、溝12c内にあり、また、ワイヤーロープ12bもガイド管12eにより溝12c内に収納されるので、ブロック12のがたつきを防ぐことができる。
【0066】
なお、上述した各実施形態においては、コンクリートからなるブロック12を用いた場合について説明したが、ブロック12の材料はこれに限定されるものではなく、鋼材を加工したものを使用してもよい。ただし、ブロック状に形成された際に、舗装部15及び車等の重量が作用しても破損しない強度を備えていることが必要である。
【0067】
また、上述した各実施形態においては、円柱状のブロック12を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、角柱状のブロックを用いてもよい。
【0068】
また、上述した各実施形態においては、円柱型の高さ調整材4を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、上述した複数の角柱状のブロックからなる高さ調整材を用いてもよい。
【0069】
さらに、上述した各実施形態においては、U字型のブラケット12d及びシャックル12fで、ブロック本体12aとワイヤーロープ12bとを接続する構造としたが、これに限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、1対のブラケット12gと、当該両ブラケット12gを貫通するとともに、ワイヤーロープ12bの折り返し部分内を挿通するボルト12hと、ナット12jと、からなる構造としてもよい。
【0070】
なお、上述した各実施形態の他に、既設の杭を撤去する場合にも本発明を適用することが可能である。かかる場合には、既設の杭の周囲を囲うようにケーシング2を設置し、次に、ケーシング2内の土砂を掘削しながらその杭を抜いた後、上述した第一実施形態や第二実施形態の何れかを実施する。
【符号の説明】
【0071】
1 空洞部
2 ケーシング
3 道路
3a 路面
4 高さ調整材
10 埋戻し構造
11 底用砕石部
12 ブロック
12a ブロック本体
12b ワイヤーロープ
12c 溝
12d ブラケット
12e ガイド管
12f シャックル
12g ブラケット
12h ボルト
12j ナット
13 隙間
14 鉄板
15 舗装部
15a 舗装用砕石部
15b アスファルト部
20 埋戻し構造
23 間詰め部
102 桁受部材
103 空洞部
104 覆工桁
105 覆工板
106 既設路面
107 すりつけ舗装
108 土留め杭
S10 空洞部形成工程
S20 底用砕石部形成工程
S30 ブロック設置工程
S40 鉄板設置工程
S45 間詰め部形成工程
S50 舗装部形成工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように前記空洞部内に設置された蓋材と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする埋戻し構造。
【請求項2】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材が敷設された間詰め部と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする埋戻し構造。
【請求項3】
前記高さ調整材は、
前記空洞部に積み重ねられた複数の柱状体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋戻し構造。
【請求項4】
前記柱状体は、
所定の大きさに形成された柱状体本体と、
一端が前記柱状体本体に接続されたロープと、
内方に前記ロープが挿通された中空の筒体と、
前記柱状体本体の上部に形成されて横倒しになった前記筒体を収納可能な溝と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の埋戻し構造。
【請求項5】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように蓋材を前記空洞部内に設置する蓋材設置工程と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする埋戻し工法。
【請求項6】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材を敷設して間詰め部を形成する間詰め部形成工程と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする埋戻し工法。
【請求項1】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように前記空洞部内に設置された蓋材と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする埋戻し構造。
【請求項2】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し構造であって、
前記空洞部の底部から所定の深度まで前記土留め内に設置された高さ調整材と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材が敷設された間詰め部と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に敷設された舗装部と、
を備えることを特徴とする埋戻し構造。
【請求項3】
前記高さ調整材は、
前記空洞部に積み重ねられた複数の柱状体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋戻し構造。
【請求項4】
前記柱状体は、
所定の大きさに形成された柱状体本体と、
一端が前記柱状体本体に接続されたロープと、
内方に前記ロープが挿通された中空の筒体と、
前記柱状体本体の上部に形成されて横倒しになった前記筒体を収納可能な溝と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の埋戻し構造。
【請求項5】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間の上面を覆うように蓋材を前記空洞部内に設置する蓋材設置工程と、
前記蓋材及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする埋戻し工法。
【請求項6】
周囲を土留めで支持された空洞部を埋戻す埋戻し工法において、
前記空洞部の底部から所定の深度まで高さ調整材を前記土留め内に設置する調整材設置工程と、
前記高さ調整材と前記土留めとの間の隙間に間詰め材を敷設して間詰め部を形成する間詰め部形成工程と、
前記間詰め部及び前記高さ調整材を覆うように前記空洞部内に舗装部を形成する舗装部形成工程と、
を備えることを特徴とする埋戻し工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−36616(P2012−36616A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176654(P2010−176654)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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