説明

埋設された障害箇所を備える導光板及び該導光板を製造する方法

本発明は、LCDディスプレイ並びに指示板及び看板のバックライトに適した、エッジにおいて照明される導光板であって、エッジにおいて入光された光を、エッジに対して垂直に位置する両表面の少なくとも一方を介して再放出する導光板を提供する。光源の、エッジにおいて入光された光が、全反射の回避により表面の一方を介して再び導光板を後にすることができるように、光線の向きを導光板内で適当に変えなければならない。導光板は、導光板の両表面の一方に、シート(5)により損傷から保護された光学的な障害箇所(2)を有している。本発明は、付加的に、障害箇所を簡単に被着する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
エッジにおいて照明される導光板であって、エッジにおいて入光された光を、エッジに対して垂直に位置する両表面の少なくとも一方を介して再放出する導光板は、LCDディスプレイ並びに指示板(Hinweisschild)及び看板(Reklameschild)のバックライト等に多方面で使用される(図1参照)。光源(4)の、エッジ(3)において入光された光が、全反射の回避により、上述の表面を介して再び導光板(1)を後にすることができるように、光線の向きを導光板内で適当に変えなければならない。光線の向きを変えるための普及した方法は、導光板の両表面の少なくとも一方に光学的な障害(干渉)箇所(Stoerstelle)を設けて、この光学的な障害箇所に衝突した光を変向又は散乱させて、全反射を回避可能とすることにある。障害箇所(2)として、典型的には、表面の粗面化、表面の彫刻、又は表面の例えばドットパターン等の印刷が使用される。
【0002】
従来技術
印刷された光学的な障害箇所を有する導光板は、光学的な障害箇所が例えば機械的な作用により損傷を被りかねないという欠点を有している。光学的な障害箇所が損傷を被ると、エッジにおいて入射した光を均等に表面を介して再放出するという導光板の役割をもはや果たし得ないことになる。さらに、従来技術に基づいて光学的な障害箇所を導光板に設ける方法は、著しく手間を要する。透明のプレートを製造した後、プレートをまず切断し、次に印刷し、最終的に導光板を研磨及び場合によっては鏡面化により仕上げを行う必要がある。特に、プレートの印刷は、例えばコストの高いスクリーン印刷法により実施されなければならず、そもそもの設備コストが極めて高い。
【0003】
従来技術におけるLCDディスプレイで使用するための導光板を図1に示す。
【0004】
EP1110029号では、特別な変化態様において、障害箇所を、顔料が添加された接着剤の塗布により形成している。この場合も、障害箇所は磨耗から保護されていない。
【0005】
EP1492981号には、室外用途のための、透明のプレートと、透明のプレート上に被着されたプリントとからなる印刷された導光体が記載されている。
【0006】
EP656548号において、ポリマー粒子を散乱体として使用する導光体が公知である。このプレートにおける問題は、輝度の不均質な分布である。
【0007】
さらに、EP1022129号において、拡散性に形成された層が被着された、ポリメチルメタクリレートからなる粒子フリーの導光性の層を備える導光体が公知である。10〜1500μmの範囲の厚さを有する拡散性に形成された層は、硫酸バリウム粒子を含んでいる。この原理によれば、光は、PMMA層を介して導かれ、出力結合は、拡散性の層を通して実施される。しかし、光の出力結合は、拡散性に形成された層に対する境界層を通過した光のみが伝播方向に対して法線方向に散乱されるにすぎないので、まったく制御不能である。これに応じて、この従来技術の場合、導光性の層内の障害ではなく、拡散性の再帰反射(diffuse Rueckreflexion)の問題である。さらに、光の強度の減少は、光源からの間隔が増すにつれて、著しく大きい。
【0008】
EP1022129号に記載の導光体の光源の低い明るさは、光の出射面における掻き傷の形成に対する高い敏感性につながる。この種の掻き傷は、機械的な作用により発生し得る。この場合、掻き傷が光を散乱させてしまうことは問題である。
【0009】
課題
本発明の課題は、LCDディスプレイにおいてバックライトとして使用されるような、従来技術に対して改善された特性を有する新たな導光板、より詳細に言えば、光を伝送するための装置を提供することである。
【0010】
さらに本発明の課題は、光の散乱又は変向のために印刷された光学的な障害箇所(2)を、障害箇所(2)の損傷が防止されるように保護することである。
【0011】
本発明の別の課題は、導光板のための上述の典型的な製造プロセスをより合理的かつより経済的に形成することである。
【0012】
明示しないその他の課題は、以下の説明、特許請求の範囲及び例の全体的な関連から生じる。
【0013】
解決手段
上記課題は、新たな光を伝送するための装置を提供することにより解決される。この装置は、単数又は複数の光源(4)、プレート(1)及びプリント(2)から構成されている。しかし、本発明に係る装置は、付加的に、プリントを保護するためのシート(5)を有している。図2に示すように、プリント(2)は、プレート(1)とシート(5)との間に位置している。プリント(2)は、プレート(1)及びシート(5)により完全に埋封される。このことは、プリント(2)が、磨耗からも、湿気、化学物質又は環境影響等の外的な影響からも保護されているという利点を有している。
【0014】
以下、導光板及び光を伝送するための装置なる概念を同義語として使用し、要素(1)乃至(5)からなる装置全体を指す。導光板及び光を伝送するための装置なる概念と、導光板の例えば押出により製造される構成部分(1)のみを示すプレートなる用語とを混同すべきでない。択一的には、プレートをキャスト法(Cast)あるいは連続キャスト法(Continuous Cast)を介して製造してもよい。
【0015】
以下、障害箇所及びプリントなる概念も互いに同義語として使用する。
【0016】
プレート(1)は、透明のプラスチック、有利にはアクリルガラス、ポリカーボネート又はシクロオレフィンコポリマーから、特に有利にはアクリルガラスからなる。プレート(1)は、1mm〜20mm、有利には2mm〜10mm、特に有利には4mm〜8mmの厚さを有している。好ましい態様において使用されるアクリルガラスの一例は、Evonik Roehm GmbH&Co.KG社からPLEXIGLAS(登録商標)の商品名で商用入手可能なアクリルガラスである。
【0017】
プレートのエッジ(3)は、単数又は複数の光源(4)により照明され、これにより光導入面の機能を果たしている。光は、エッジに対して垂直に位置する両表面の少なくとも一方、すなわち光出射面を介して再放出される。光出射面の概念は、導光体の、光を放射するのに適した面を指している。他方、光導入面は、光を導光板に受容することができる。その結果、導光性の層は、導入された光を、光出射面全体にわたって分配可能である。障害箇所は、光の出力結合に至る。その結果、光は、光出射面全体にわたって出射する。
【0018】
プリント(2)は、好ましくはドットパターン又はラインパターンである。このドットパターンは、導光板の要素としての使用時、障害箇所を形成するために、特に光を変向又は散乱させるために役立つ。最適化された印刷により、光出射面の均等な照光を保証可能である。
【0019】
本明細書において、プレートとシートとは区別される。この関連において、シートとは、十分にフレキシブルあるいは軟性であって、通常の条件下で巻取りが可能な形態と解される。これに対して、プレートとは、通常の条件下では巻取りが不可能な形態と解される。本明細書におけるプレートは、一般に、巻取りを試みると折損しかねない厚さを有している。有利には、シートは、ポリ(メタ)アクリレートからなる。ポリ(メタ)アクリレートとは、この関連において、メタクリレート及び/又はアクリレートのホモポリマーあるいはコポリマーと解される。
【0020】
光を散乱させる印刷パターンの機能を請け負うプリントの成分は、本発明において自由に選択可能であり、各印刷法によってのみ制限されている。
【0021】
本発明の第2の重要な観点は、1mm〜20mm、有利には2mm〜10mm、特に有利には4mm〜8mmの厚さを有する導光板を製造する方法である。導光板のための新たな製造プロセスは、従来技術の確立した方法に対してより合理的かつより経済的である。既述の通り、従来技術における製造は、熱可塑性のプラスチックからのプレートの成形、切断、フレキシブルでない個々のプレートへの例えばスクリーン印刷法での光散乱性プリントを用いた障害箇所の被着、及び加工(研磨、鏡面化等)の4つの工程で実施される。このプロセスでは、個々の導光板のそれぞれの印刷が、時間的かつ取扱的な手間に基づいて特に不都合である。
【0022】
これに対して、本発明に係る方法は、明らかに時間及びコスト面でより効率的に実施可能であり、かつ付加的にプリントの保護につながる。このことは、光学的な障害箇所(2)がまずシート(5)に印刷されることにより達成される。次に、印刷パターンを備えたシート(5)を、光学的な障害箇所(2)がプレートとシートとの間に埋設される(図2参照)ように、全面的にプレート上に積層あるいはラミネートする。この埋設は、上述の保護に至る。
【0023】
より詳細に説明すると、本発明に係る方法(図3参照)は、次のように実施される。従来技術とは異なり、3つの工程のみ、すなわち、同時の積層を伴う押出又はキャスティング、切断、加工からなる。後2つの工程は、統合されて1つの機械で実施されてもよい。本発明に係る方法における特に簡単な点は、印刷が、予め、最適には製造プロセスの統合された構成要素として、まずシート上に被着されることである。その際、使用したい印刷法に関する自由度は、明らかに高い。特に、光散乱性の印刷パターンの形態のプリントが、安価な大量印刷法、例えば凹版輪転印刷により適当なシート(5)上に被着される。次に、この印刷されたシートを、導光性の基板の製造プロセス中、インラインで導光性の基板上に積層する(図3)。
【0024】
プレートは、従来技術と同様に、押出又は(連続的な)キャスト法により製造され、当初、無端の溶融物帯の形態で存在する。溶融物帯は、第1の行程として、押出機(A)の下流において、印刷されたシートと結合されて積層体を形成する。溶融物帯は、ガラス転移温度を上回る温度で良好にシートと結合されるので、接着剤又は定着剤は、通常不要である。この積層工程において重要なことは、プリント(2)がその際にプレート(1)とシート(5)との間にあることである。
【0025】
印刷されたシート(5)と溶融物ストランドとが結合されて積層体を形成した後、積層体は、2つのローラ間を通される。その際、シート側は、案内しているローラ(C)に面している。このローラ(C)は、冷却されている。他方のローラ(B)は、任意選択的にのみ冷却される。シートに面したローラ(C)を介して、積層体は、別の、場合によっては同じく冷却されたローラ(D)へと案内される。
【0026】
プレート、プリント及びシートからなる冷却された積層体は、冷却後、切断され、かつさらに加工されることができる。加工として例えばエッジを研磨することができる。投入される光エネルギのより良好な利用のために、光源が設けられていないエッジ面は、従来技術にしたがって付加的に反射性に形成してもよい。反射性のエッジ面の形成は、例えば反射性の接着テープにより実現可能である。さらに、反射性の塗料をエッジ面に塗布してもよい。
【0027】
最後に、エッジに、従来技術にしたがって単数又は複数の照明ユニットが設けられる。光源は、導光体をより良好に照光するためにリフレクタを有していてよい。
【0028】
こうして製造された導光板あるいは本発明に係る光を伝送するための装置は、有利には、LCDディスプレイにおけるバックライトとして使用可能である。さらに、指示板又は看板のバックライトとしても使用可能である。
【0029】
以下の例は、本発明の説明及びより良好な理解の用に供するものであって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】LCDディスプレイで使用する導光板を示す図である。
【図2】本発明に係る導光板を示す図である。
【図3】本発明に係る製造方法を示す図である。
【図4】本発明に係る製造方法を示す図である。
【0031】

75μmの厚さのPMMAからなるシート上に、0.5mm〜1.5mmの直径を有する、2mm間隔の円形のドットからなるドットパターンを凹版印刷により印刷する。印刷インキとして、アクリレート結合剤をベースとする白色の印刷インキを使用した。
【0032】
1400mmの幅及び1000mの長さを有するPMMAからなる印刷されたシートを、4つのローラを備えるカレンダに供給し、カレンダの3番目の平滑化間隙において、カレンダ内に存在する押出物と接触させる。シートは、シート上のプリントが押出物にカレンダ内で面しているように配置する。シート及び押出物を後続の経路においてカレンダ内で結合し、次に冷却して、プレート、プリント及びシートからなる完成した積層体を形成する(図4参照)。
【0033】
クロスカット試験(Gitterschnittpruefung:DIN EN ISO 2409)により、プレートとシートの非印刷領域との間の付着性及びプレートとシートの印刷領域との間の付着性を測定する。プレートとシートの非印刷領域との結合部及びプレートとシートの印刷領域との結合部は、0のクロスカット特性値を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート(1)、シート(5)、単数又は複数の光源(4)及びプリント(2)を備える、光を伝送するための装置において、
前記プレートが、透明のプラスチックからなり、1mm〜20mmの厚さを有しており、
印刷されたシートが全面的に前記プレート上に積層されており、
前記プリントが前記プレートと前記シートとの間に位置し、
前記プレートのエッジ(3)が照明され、かつ
光が、前記エッジに対して垂直に位置する両表面の少なくとも一方を介して再放出される、
ことを特徴とする、光を伝送するための装置。
【請求項2】
前記プレート(1)が、アクリルガラス、ポリカーボネート又はシクロオレフィンコポリマーからなり、2mm〜10mmの厚さを有している、請求項1記載の光を伝送するための装置。
【請求項3】
前記プリント(2)がドットパターン又はラインパターンであり、該ドットパターン又はラインパターンが、光を変向又は散乱させる障害箇所を形成し、かつ前記プリントが、前記プレート(1)及び前記シート(5)により完全に封入されている、請求項1又は2記載の光を伝送するための装置。
【請求項4】
前記シート(5)がフレキシブルである、請求項1から3までのいずれか1項記載の光を伝送するための装置。
【請求項5】
前記シート(5)が、巻取り可能であり、ポリ(メタ)アクリレートからなる、請求項1から4までのいずれか1項記載の光を伝送するための装置。
【請求項6】
前記プリント(2)が光を散乱又は変向させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の光を伝送するための装置。
【請求項7】
光を伝送するための装置を製造する方法、特に請求項1から6までのいずれか1項記載の1mm〜20mmの厚さを有する導光板を製造する方法において、プリント(2)を有するシート(5)を、透明のプレート(1)の押出又はキャスティング中に該透明のプレート(1)と接合し、前記プリント(2)が接合に際して前記プレートと前記シートとの間にあるようにすることを特徴とする、光を伝送するための装置を製造する方法。
【請求項8】
印刷されたシートを第1の工程において押出機の後方で溶融物ストランドと結合して積層体を形成し、その後、ローラ間を通し、その際、少なくともシート側に面したローラを冷却しておく、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記プレート、前記プリント及び前記シートからなる冷却される積層体を、冷却後に切断する、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
エッジに部分的に反射性の層を設ける、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置の、LCDディスプレイにおけるバックライトとしての使用。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置の、指示板又は看板のバックライトとしての使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−531720(P2012−531720A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518058(P2012−518058)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057108
【国際公開番号】WO2011/000636
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】