埋設型有孔管による固定式浚渫装置と浚渫工法
【課題】本発明は、埋設型有孔管による固定式浚渫装置に関し、従来の埋設型有孔管による浚渫装置では、高土厚の場合に、土砂の吸引ができなくなるという課題があり、それを本発明によって解決することである。
【解決手段】管の長手方向に沿って適宜間隔で管の一部に孔を設けてなる有孔部1cを有する有孔管1bによる固定式浚渫装置であって、前記有孔部1cの上流側に配設され水中3の水を管内に吸水する吸水部14dと、水面下の堆積土砂2の中に鉛直に埋設される前記有孔管の有孔部1cと、前記有孔部後端から折り返され前記堆積土砂の上に配置され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する、前記有孔部1cの下流側に配設される輸送部1eとでなる埋設型有孔管による固定式浚渫装置1とするものである。
【解決手段】管の長手方向に沿って適宜間隔で管の一部に孔を設けてなる有孔部1cを有する有孔管1bによる固定式浚渫装置であって、前記有孔部1cの上流側に配設され水中3の水を管内に吸水する吸水部14dと、水面下の堆積土砂2の中に鉛直に埋設される前記有孔管の有孔部1cと、前記有孔部後端から折り返され前記堆積土砂の上に配置され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する、前記有孔部1cの下流側に配設される輸送部1eとでなる埋設型有孔管による固定式浚渫装置1とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖や湖沼に堆積する土砂の浚渫を行うための埋設型有孔管による固定式浚渫装置と浚渫工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダム湖や湖沼に堆積した土砂の浚渫は、ダム等の貯水能力維持のために必要であり、特に水力発電用のダムでは、取水口付近の堆積土砂が問題となる。そこで、従来の埋設型有孔管による浚渫工法としては、例えば、特許文献1に記載されている水中堆積物の吸引搬送装置およびその吸引搬送方法(MHS排砂管工法と称する)がある。また、特許文献2に記載されている堆積物の吸引流送設備がある。このような埋設型有孔管による浚渫工法は、有孔管を水面下の堆積土中に予め埋設しておき、前記有孔管の上に堆積した土砂を、ダム湖水位と排出口先との高低差をエネルギーとしてサイフォンを利用して吸引するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−2609号公報
【特許文献2】特開2009−215877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の埋設型有孔管による浚渫工法においては、サイフォンによる土砂吸引力は、有孔部周辺にしか作用せず、吸引時に生じる浸透流または土粒子自重による土砂の崩壊による有孔部周辺に土砂が集積されてくるシステムである。そして、図5に示すように、ダム湖上流の狭窄部などの設置範囲が限られる場合において、管上堆積土砂2の厚さが大きくなると、土砂の粘性あるいはアーチアクション効果等により、土砂の崩壊が生じにくくなって吸引できなくなる。
【0005】
また、障害物の管内残置により、土砂吸引の妨げとなることがあり、管内の清掃や管の交換を行うには維持管理コストが嵩むものである。更に、掘削,埋設作業により有孔管11を堆積土砂2に埋設するので、土厚が大きくなると施工コストが嵩むことになる。
【0006】
このように、埋設型有孔管では大土厚に対する吸引において安定性に欠けるとともに、施工や維持管理にコストが嵩むという課題がある。本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、管の長手方向に沿って適宜間隔で管の一部に孔を設けてなる有孔部を有する有孔管による固定式浚渫装置であって、前記有孔部の上流側に配設され水中の水を管内に吸水する吸水部と、水面下の堆積土砂の中に鉛直に埋設される前記有孔管の有孔部と、前記有孔部後端から折り返され前記堆積土砂の上に配置され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する前記有孔部の下流側に配設される輸送部とでなることである。
【0008】
前記吸水部の端部における開口部に、遠隔操作によって前記開口部の開閉量を変化させて管内流量を制御できるバルブが設けられていることである。
また、堆積土砂に埋設される有孔部と該堆積土砂中で前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、鋼管の内部に配設されているとともに、前記有孔部の孔位置に対応して連通させる貫通孔が鋼管に穿設されているものである。
【0009】
更に、有孔部と前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、密閉された鋼管の内部空間を管軸に沿って仕切る隔壁によって形成されていることも含まれるものである。
【0010】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫工の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、本発明に係る前記埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂することである。
【0011】
また、本発明の埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の埋設型有孔管による固定式浚渫装置と浚渫工法によれば、有孔部を鉛直にして堆積土砂に埋設させるので、大きな土厚を何層かに分割して吸引することになり、大きな土厚の吸引が可能となる。よって、設計浚渫土量が大きい場合,ダム湖上流の狭窄部など浚渫装置の設置範囲が限られる場合でも、浚渫工事が対応可能となる。
【0013】
また、吸引対象となる有孔部周辺に障害物が残置されず、吸引の進行にあわせて障害物が鉛直下方向に移動するため、吸引部近くに残らず、障害物を吸引するリスクを低くすることが可能となる。
【0014】
埋設型有孔管における吸水部のバルブによって、管内の流量を調節することで管内に発生する脈動流(プラグ流)の効果が得られて、吸引土砂の管内閉塞を回避するとともに、吸引土砂の効率的な輸送を可能とする。
【0015】
埋設型有孔管における輸送部を、堆積土砂の表面に配置できるので、掘削・埋め戻しによる埋設作業が不要となり、施工性が向上する。また、有孔管を鋼管と一体化または鋼管半割断面を利用する等によって、従来の掘削,設置,埋め戻しの工程を杭打設のみの施工が可能となり、施工性が大幅に向上する。
【0016】
固定式浚渫装置の維持管理において、従来の装置は有孔部から輸送部まで堆積土砂に埋設してあるので、埋設部全体にわたり維持管理のために掘削・交換作業などが必要であったが、本発明により埋設部が一箇所であるので、維持・管理のための掘削・交換作業場所が集中することになり、更に従来の工法と比較して作業船の移動などが不要となって、維持管理作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置1の概要を示す斜視図(A)と、A−A線に沿った断面図(B)である。
【図2】同本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置の第2実施例に係る斜視図(A)と、B−B線に沿った断面図(B)である。
【図3】同本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置の第3実施例に係る斜視図(A)と、B−B線に沿った断面図(B)である。
【図4】本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置1で、堆積土砂を浚渫する様子を示す説明用断面図である。
【図5】従来例に係る固定式浚渫装置10で、堆積土砂を浚渫する様子を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置1は、図1(A)に示すように、土砂の吸引部である有孔部1cが設けられた有孔管1bを、堆積土砂2(図4参照)の中に鉛直に埋設させて、使用するものである。
【実施例1】
【0019】
図1(A)に示すように、管の長手方向に沿って適宜間隔で孔1aを有孔管1bの一部に有する、有孔管による固定式浚渫装置1を形成する。この詳細な構成は、同図1(A)に示すように、有孔部1cの上流側で水中3(図4参照)の水を管内に吸水する吸水部1dと、水面下の堆積土砂2(図4参照)の中に鉛直に打設して埋設される前記有孔管の有孔部1cと、前記有孔部1c後端から折り返され前記堆積土砂2の上に配設され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する、前記有孔部1cの下流側に配設される輸送部1eとでなる。
【0020】
前記吸水部1dの端部における開口部1gに、図外の制御装置による遠隔操作によって、前記開口部1gの開閉量を変化させて管内流量を制御できるバルブ(図示せず)が設けられている。前記管内流量の変化により、脈動流(プラグ流)を発生させて吸引土砂による管内閉塞を防止するものである。
【0021】
また、堆積土砂2に埋設される有孔部1cと該堆積土砂2中で前記有孔部1cから連通して折り返される輸送部の埋設部分1fとが、鋼管杭4の内部に配設されている。そして、前記有孔部1cの孔位置に対応して連通させる位置に貫通孔4aが前記鋼管杭4に配設されている。
【0022】
これにより、鋼管杭4とともに、浚渫装置1を打設機で打設して堆積土砂2に埋設することができる。なお、鋼管杭4の打設方向における先端部は、施工しやすくするために、尖塔状にするのが好ましい。
【実施例2】
【0023】
第2実施例に係る浚渫装置5は、図2(A),(B)に示すように、有孔管1bにおける吸水部1dおよび輸送部1eと、鋼管杭4bとの出入り口部分を鋼管杭4bの側壁面に貫通させたものである。このようにすれば、鋼管杭4bの上端面から有孔管1bが突出せずに邪魔にならず、鋼管杭4bの上端全面を打設機で容易に打設することができる。この浚渫装置5は、通常の地盤用に打設するものである。
【実施例3】
【0024】
第3実施例に係る浚渫装置6は、図3(A),(B)に示すように、有孔部1cと、前記有孔部1cから連通して折り返される輸送部の埋設部分1fとが、鋼管杭7の密閉された内部空間を管軸に沿って仕切る隔壁7bによって形成されているものである。
【0025】
前記鋼管杭7の下部は、打設しやすいように尖塔状先端部7aとなっており、上部には、上蓋7cが閉蓋されている。前記隔壁7bは、その上部が前記上蓋7c下面に溶接などによって固着され、下部は、鋼管杭7の下端まで届くことなく、水や吸引した土砂が流れるように、連通部を形成している。
【0026】
前記鋼管杭7の有孔部となる側に孔7dが鉛直方向に複数箇所で設けられている。また、吸水部1dと輸送部1eも、鋼管杭7の側壁面に設けられている。このように、鋼管杭7自体に、有孔部1cおよび輸送部の埋設部分1fを一体にして形成することで、例えば、軟弱地盤用に使用することができて、鋼管杭7の自重によって自沈することも期待できて、埋設作業が容易となる。
【実施例4】
【0027】
本発明に係る埋設型有孔管による浚渫工法について説明する。上記浚渫装置1,5,6を形成して、この浚渫装置を作業台船等に乗せて、ダム湖の土砂堆積した場所に移動して、図4に示すように、堆積土砂2に浚渫装置1,5,6のいずれかを打設機で打設する。
【0028】
そして、前記浚渫装置1,‥いずれかの有孔部1cを、水中3に堆積した堆積土砂2の中に、打設機によって打設して鉛直に埋設させる。前記吸水部1dおよび輸送部1eは共に堆積土砂2の表面上にある。更に、輸送部1eは、適宜に首尾連結して浚渫対象地域の外に端部を導出させ配設する。
【0029】
そして、吸水部1dからの吸水により有孔部1cの上位置の孔1aから下位置の孔1aへと、順に土砂を排砂する。図4に示すように、大きな土厚の堆積土砂2を何層かに分割して、例えば、図中の安定(安息)線2a,2b,2c,‥に示すように分割して排砂する。こうして、大きな土厚の堆積土砂にも容易に浚渫作業をできるようになる。
【0030】
前記排砂作業において、制御装置で吸水部1dのバルブの操作を行って脈動流を発生させて管内閉塞を防止する。前記有孔部1cを堆積土砂2内に鉛直に埋設したことで、有孔部周辺に障害物が残置されず、吸引の進行に合わせて障害物が鉛直下方向に移動するようになり、障害物を吸引するリスクが低減される。
【0031】
前記輸送部1eを堆積土砂2表面に配置できるので、堆積土砂の掘削・埋め戻しによる埋設作業が不要となって施工性が大幅に向上するのである。また、鋼管杭の利用によりこれを打設機で打設するのみで有孔部1cの施工ができるので、施工性が大幅に向上することになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置は、ダム湖に限らず湖沼や港湾などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 埋設型有孔管による固定式浚渫装置(浚渫装置)、
1a 孔、 1b 有孔管、
1c 有孔部、 1d 吸水部、
1e 輸送部、 1f 輸送部の埋設部分、
1g 開口部、
2 堆積土砂、
2a,2b,2c, 安定(安息)線、
3 水中、
4 鋼管杭、 4a 貫通孔、
4b 鋼管杭、
5 第2実施例の浚渫装置、
6 第3実施例の浚渫装置、
7 鋼管杭、 7a 尖塔状先端部、
7b 隔壁、 7c 上蓋、
10 従来の浚渫装置、
11 有孔管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖や湖沼に堆積する土砂の浚渫を行うための埋設型有孔管による固定式浚渫装置と浚渫工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダム湖や湖沼に堆積した土砂の浚渫は、ダム等の貯水能力維持のために必要であり、特に水力発電用のダムでは、取水口付近の堆積土砂が問題となる。そこで、従来の埋設型有孔管による浚渫工法としては、例えば、特許文献1に記載されている水中堆積物の吸引搬送装置およびその吸引搬送方法(MHS排砂管工法と称する)がある。また、特許文献2に記載されている堆積物の吸引流送設備がある。このような埋設型有孔管による浚渫工法は、有孔管を水面下の堆積土中に予め埋設しておき、前記有孔管の上に堆積した土砂を、ダム湖水位と排出口先との高低差をエネルギーとしてサイフォンを利用して吸引するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−2609号公報
【特許文献2】特開2009−215877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の埋設型有孔管による浚渫工法においては、サイフォンによる土砂吸引力は、有孔部周辺にしか作用せず、吸引時に生じる浸透流または土粒子自重による土砂の崩壊による有孔部周辺に土砂が集積されてくるシステムである。そして、図5に示すように、ダム湖上流の狭窄部などの設置範囲が限られる場合において、管上堆積土砂2の厚さが大きくなると、土砂の粘性あるいはアーチアクション効果等により、土砂の崩壊が生じにくくなって吸引できなくなる。
【0005】
また、障害物の管内残置により、土砂吸引の妨げとなることがあり、管内の清掃や管の交換を行うには維持管理コストが嵩むものである。更に、掘削,埋設作業により有孔管11を堆積土砂2に埋設するので、土厚が大きくなると施工コストが嵩むことになる。
【0006】
このように、埋設型有孔管では大土厚に対する吸引において安定性に欠けるとともに、施工や維持管理にコストが嵩むという課題がある。本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、管の長手方向に沿って適宜間隔で管の一部に孔を設けてなる有孔部を有する有孔管による固定式浚渫装置であって、前記有孔部の上流側に配設され水中の水を管内に吸水する吸水部と、水面下の堆積土砂の中に鉛直に埋設される前記有孔管の有孔部と、前記有孔部後端から折り返され前記堆積土砂の上に配置され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する前記有孔部の下流側に配設される輸送部とでなることである。
【0008】
前記吸水部の端部における開口部に、遠隔操作によって前記開口部の開閉量を変化させて管内流量を制御できるバルブが設けられていることである。
また、堆積土砂に埋設される有孔部と該堆積土砂中で前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、鋼管の内部に配設されているとともに、前記有孔部の孔位置に対応して連通させる貫通孔が鋼管に穿設されているものである。
【0009】
更に、有孔部と前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、密閉された鋼管の内部空間を管軸に沿って仕切る隔壁によって形成されていることも含まれるものである。
【0010】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫工の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、本発明に係る前記埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂することである。
【0011】
また、本発明の埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の埋設型有孔管による固定式浚渫装置と浚渫工法によれば、有孔部を鉛直にして堆積土砂に埋設させるので、大きな土厚を何層かに分割して吸引することになり、大きな土厚の吸引が可能となる。よって、設計浚渫土量が大きい場合,ダム湖上流の狭窄部など浚渫装置の設置範囲が限られる場合でも、浚渫工事が対応可能となる。
【0013】
また、吸引対象となる有孔部周辺に障害物が残置されず、吸引の進行にあわせて障害物が鉛直下方向に移動するため、吸引部近くに残らず、障害物を吸引するリスクを低くすることが可能となる。
【0014】
埋設型有孔管における吸水部のバルブによって、管内の流量を調節することで管内に発生する脈動流(プラグ流)の効果が得られて、吸引土砂の管内閉塞を回避するとともに、吸引土砂の効率的な輸送を可能とする。
【0015】
埋設型有孔管における輸送部を、堆積土砂の表面に配置できるので、掘削・埋め戻しによる埋設作業が不要となり、施工性が向上する。また、有孔管を鋼管と一体化または鋼管半割断面を利用する等によって、従来の掘削,設置,埋め戻しの工程を杭打設のみの施工が可能となり、施工性が大幅に向上する。
【0016】
固定式浚渫装置の維持管理において、従来の装置は有孔部から輸送部まで堆積土砂に埋設してあるので、埋設部全体にわたり維持管理のために掘削・交換作業などが必要であったが、本発明により埋設部が一箇所であるので、維持・管理のための掘削・交換作業場所が集中することになり、更に従来の工法と比較して作業船の移動などが不要となって、維持管理作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置1の概要を示す斜視図(A)と、A−A線に沿った断面図(B)である。
【図2】同本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置の第2実施例に係る斜視図(A)と、B−B線に沿った断面図(B)である。
【図3】同本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置の第3実施例に係る斜視図(A)と、B−B線に沿った断面図(B)である。
【図4】本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置1で、堆積土砂を浚渫する様子を示す説明用断面図である。
【図5】従来例に係る固定式浚渫装置10で、堆積土砂を浚渫する様子を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置1は、図1(A)に示すように、土砂の吸引部である有孔部1cが設けられた有孔管1bを、堆積土砂2(図4参照)の中に鉛直に埋設させて、使用するものである。
【実施例1】
【0019】
図1(A)に示すように、管の長手方向に沿って適宜間隔で孔1aを有孔管1bの一部に有する、有孔管による固定式浚渫装置1を形成する。この詳細な構成は、同図1(A)に示すように、有孔部1cの上流側で水中3(図4参照)の水を管内に吸水する吸水部1dと、水面下の堆積土砂2(図4参照)の中に鉛直に打設して埋設される前記有孔管の有孔部1cと、前記有孔部1c後端から折り返され前記堆積土砂2の上に配設され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する、前記有孔部1cの下流側に配設される輸送部1eとでなる。
【0020】
前記吸水部1dの端部における開口部1gに、図外の制御装置による遠隔操作によって、前記開口部1gの開閉量を変化させて管内流量を制御できるバルブ(図示せず)が設けられている。前記管内流量の変化により、脈動流(プラグ流)を発生させて吸引土砂による管内閉塞を防止するものである。
【0021】
また、堆積土砂2に埋設される有孔部1cと該堆積土砂2中で前記有孔部1cから連通して折り返される輸送部の埋設部分1fとが、鋼管杭4の内部に配設されている。そして、前記有孔部1cの孔位置に対応して連通させる位置に貫通孔4aが前記鋼管杭4に配設されている。
【0022】
これにより、鋼管杭4とともに、浚渫装置1を打設機で打設して堆積土砂2に埋設することができる。なお、鋼管杭4の打設方向における先端部は、施工しやすくするために、尖塔状にするのが好ましい。
【実施例2】
【0023】
第2実施例に係る浚渫装置5は、図2(A),(B)に示すように、有孔管1bにおける吸水部1dおよび輸送部1eと、鋼管杭4bとの出入り口部分を鋼管杭4bの側壁面に貫通させたものである。このようにすれば、鋼管杭4bの上端面から有孔管1bが突出せずに邪魔にならず、鋼管杭4bの上端全面を打設機で容易に打設することができる。この浚渫装置5は、通常の地盤用に打設するものである。
【実施例3】
【0024】
第3実施例に係る浚渫装置6は、図3(A),(B)に示すように、有孔部1cと、前記有孔部1cから連通して折り返される輸送部の埋設部分1fとが、鋼管杭7の密閉された内部空間を管軸に沿って仕切る隔壁7bによって形成されているものである。
【0025】
前記鋼管杭7の下部は、打設しやすいように尖塔状先端部7aとなっており、上部には、上蓋7cが閉蓋されている。前記隔壁7bは、その上部が前記上蓋7c下面に溶接などによって固着され、下部は、鋼管杭7の下端まで届くことなく、水や吸引した土砂が流れるように、連通部を形成している。
【0026】
前記鋼管杭7の有孔部となる側に孔7dが鉛直方向に複数箇所で設けられている。また、吸水部1dと輸送部1eも、鋼管杭7の側壁面に設けられている。このように、鋼管杭7自体に、有孔部1cおよび輸送部の埋設部分1fを一体にして形成することで、例えば、軟弱地盤用に使用することができて、鋼管杭7の自重によって自沈することも期待できて、埋設作業が容易となる。
【実施例4】
【0027】
本発明に係る埋設型有孔管による浚渫工法について説明する。上記浚渫装置1,5,6を形成して、この浚渫装置を作業台船等に乗せて、ダム湖の土砂堆積した場所に移動して、図4に示すように、堆積土砂2に浚渫装置1,5,6のいずれかを打設機で打設する。
【0028】
そして、前記浚渫装置1,‥いずれかの有孔部1cを、水中3に堆積した堆積土砂2の中に、打設機によって打設して鉛直に埋設させる。前記吸水部1dおよび輸送部1eは共に堆積土砂2の表面上にある。更に、輸送部1eは、適宜に首尾連結して浚渫対象地域の外に端部を導出させ配設する。
【0029】
そして、吸水部1dからの吸水により有孔部1cの上位置の孔1aから下位置の孔1aへと、順に土砂を排砂する。図4に示すように、大きな土厚の堆積土砂2を何層かに分割して、例えば、図中の安定(安息)線2a,2b,2c,‥に示すように分割して排砂する。こうして、大きな土厚の堆積土砂にも容易に浚渫作業をできるようになる。
【0030】
前記排砂作業において、制御装置で吸水部1dのバルブの操作を行って脈動流を発生させて管内閉塞を防止する。前記有孔部1cを堆積土砂2内に鉛直に埋設したことで、有孔部周辺に障害物が残置されず、吸引の進行に合わせて障害物が鉛直下方向に移動するようになり、障害物を吸引するリスクが低減される。
【0031】
前記輸送部1eを堆積土砂2表面に配置できるので、堆積土砂の掘削・埋め戻しによる埋設作業が不要となって施工性が大幅に向上するのである。また、鋼管杭の利用によりこれを打設機で打設するのみで有孔部1cの施工ができるので、施工性が大幅に向上することになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る埋設型有孔管による固定式浚渫装置は、ダム湖に限らず湖沼や港湾などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 埋設型有孔管による固定式浚渫装置(浚渫装置)、
1a 孔、 1b 有孔管、
1c 有孔部、 1d 吸水部、
1e 輸送部、 1f 輸送部の埋設部分、
1g 開口部、
2 堆積土砂、
2a,2b,2c, 安定(安息)線、
3 水中、
4 鋼管杭、 4a 貫通孔、
4b 鋼管杭、
5 第2実施例の浚渫装置、
6 第3実施例の浚渫装置、
7 鋼管杭、 7a 尖塔状先端部、
7b 隔壁、 7c 上蓋、
10 従来の浚渫装置、
11 有孔管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の長手方向に沿って適宜間隔で管の一部に孔を設けてなる有孔部を有する有孔管による固定式浚渫装置であって、
前記有孔部の上流側に配設され水中の水を管内に吸水する吸水部と、
水面下の堆積土砂の中に鉛直に埋設される前記有孔管の有孔部と、
前記有孔部後端から折り返され前記堆積土砂の上に配置され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する前記有孔部の下流側に配設される輸送部とでなること、
を特徴とする埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項2】
吸水部の端部における開口部に、遠隔操作によって前記開口部の開閉量を変化させて管内流量を制御できるバルブが設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項3】
堆積土砂に埋設される有孔部と該堆積土砂中で前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、鋼管の内部に配設されているとともに、前記有孔部の孔位置に対応して連通させる貫通孔が鋼管に穿設されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項4】
有孔部と前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、鋼管の密閉された内部空間を管軸に沿って仕切る隔壁によって形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至2に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、
前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂すること、
を特徴とする埋設型有孔管による固定式浚渫工法。
【請求項6】
請求項3〜4に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、
前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂すること、
を特徴とする埋設型有孔管による固定式浚渫工法。
【請求項1】
管の長手方向に沿って適宜間隔で管の一部に孔を設けてなる有孔部を有する有孔管による固定式浚渫装置であって、
前記有孔部の上流側に配設され水中の水を管内に吸水する吸水部と、
水面下の堆積土砂の中に鉛直に埋設される前記有孔管の有孔部と、
前記有孔部後端から折り返され前記堆積土砂の上に配置され浚渫地域の外部へと土砂を排砂する前記有孔部の下流側に配設される輸送部とでなること、
を特徴とする埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項2】
吸水部の端部における開口部に、遠隔操作によって前記開口部の開閉量を変化させて管内流量を制御できるバルブが設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項3】
堆積土砂に埋設される有孔部と該堆積土砂中で前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、鋼管の内部に配設されているとともに、前記有孔部の孔位置に対応して連通させる貫通孔が鋼管に穿設されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項4】
有孔部と前記有孔部から連通して折り返される輸送部の埋設部分とが、鋼管の密閉された内部空間を管軸に沿って仕切る隔壁によって形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至2に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、
前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂すること、
を特徴とする埋設型有孔管による固定式浚渫工法。
【請求項6】
請求項3〜4に記載の埋設型有孔管による固定式浚渫装置を形成し、
前記浚渫装置を、その有孔部を鉛直に配置して、水中に堆積した土砂の中に埋設させ、吸水部からの吸水により前記有孔部の上位置の孔から下位置の孔へと、順に土砂を排砂すること、
を特徴とする埋設型有孔管による固定式浚渫工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−229528(P2012−229528A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96922(P2011−96922)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000172961)あおみ建設株式会社 (21)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)
【出願人】(390032517)株木建設株式会社 (7)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(000155034)株式会社本間組 (15)
【出願人】(599027312)株式会社 吉田組 (5)
【出願人】(503275129)りんかい日産建設株式会社 (9)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000172961)あおみ建設株式会社 (21)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)
【出願人】(390032517)株木建設株式会社 (7)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(000155034)株式会社本間組 (15)
【出願人】(599027312)株式会社 吉田組 (5)
【出願人】(503275129)りんかい日産建設株式会社 (9)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
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