説明

埋設杭の抜去装置

【課題】構造が簡単で且つ作動上の信頼性及び確実性の高い埋設杭の抜去装置を提供する。
【解決手段】クレーン装置に鉛直軸回りに非回動状態で吊下支持されたオーガと、該オーガの下端に連結された油圧スイベルジョイントと、埋設杭9の外側に所定の隙間をもって嵌挿可能な内径寸法をもち且つその下端には複数の掘削爪36が周方向に所定間隔で取付けられたケーシング3を備えるとともに、ケーシング3の下端部3bには、該ケーシング3内に嵌挿された上記埋設杭9をその外側から挟圧可能な複数の挟圧ユニット10を備え、ケーシング3を、オーガにより回転駆動し掘削爪36で埋設杭9の周囲の土を掘削しながら降下させ、各挟圧ユニット10によって埋設杭9を挟圧保持した状態でクレーン装置によってケーシング3を引き上げることで上記埋設杭9を抜去するように構成したので、埋設杭9の抜去作業を効率良く行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地中に埋設された埋設杭の抜去作業に使用される埋設杭の抜去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土中に埋設された埋設杭を抜去するための装置あるいは工法として、従来から種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜4 参照)。
【0003】
特許文献1に示されるものは、下端に短管を備えたシートパイルを振動式杭打機によって埋設杭の周囲に打ち込み、上記短管にセットしてあるワイヤーを埋設杭に掛け回し、該ワイヤーを引き上げることで埋設杭を抜去するものである。
【0004】
特許文献2に示されるものは、下端に掘削爪を備えたケーシング内に、その下端にオーガビットを備えたオーガスクリュウを内装一体化し、これをオーガマシンによって回転させて埋設杭の周囲を掘削するとともに、上記オーガビットで埋設杭を破砕しながら降下させ、さらに埋設杭の残部を上記ケーシング側に設けた係止爪によってその側方から係止し、これを引き上げることで抜去するものである。
【0005】
特許文献3に示されるものは、ケーシングを埋設杭の周囲に打ち込むとともに、該ケーシング側に設けたチャックを上記埋設杭の外周面に押圧させて該埋設杭を挟持し、該ケーシングを引き上げることで該ケーシングと共に上記埋設杭を抜去するものである。
【0006】
特許文献4に示されるものは、杭打機によってケーシングを埋設杭の周囲に打ち込み、これが埋設杭の下端部に達した時点で、上記ケーシング側に設けた掛止爪を上記埋設杭の下端傾斜面に掛止させ、上記ケーシングを引き上げることで該ケーシングと共に上記埋設杭を抜去するものである。
【0007】
【特許文献1】特開2004−308338号公報
【特許文献2】特開2001−3363号公報
【特許文献3】特開2006−37657号公報
【特許文献4】特開2004−339892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に示されるものでは、埋設杭へのワイヤーの掛け回し作業が掘削穴の底側で行なわれることから、作業の確実性及び信頼性という点において問題がある。
【0009】
特許文献2に示されるものでは、上記係止爪がその係止位置において埋設杭の表面に若干食い込んだ状態で係止されるものの、上記ケーシングの引上力が上記係止爪の上記埋設杭側への食い込み力を増大させる構造とはなっていないことから、上記ケーシングの引上げに伴って上記埋設杭の表面が上記係止爪の部分で欠けて該埋設杭が滑り落ちることが懸念され、作業の確実性及び信頼性という点において問題が残る。
【0010】
特許文献3に示されるものでは、ケーシングの内面側においてその周方向に離間して設けられた複数個のチャックをそれぞれ個別の油圧シリンダで駆動させる構成であることから、各油圧シリンダ相互の同期調整が難しく、場合によっては上記各チャックによる埋設杭の把持作用が損なわれるという恐れがある。
【0011】
特許文献4に示されるものでは、上記ケーシング側に設けた掛止爪が上記埋設杭の下端傾斜面より下方側に位置するまで該ケーシングを打ち込む必要があることから、作業性という点において改善の余地がある。
【0012】
そこで本願発明は、構造が簡単で且つ作動上の信頼性及び確実性の高い埋設杭の抜去装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0014】
本願の第1の発明に係る埋設杭の抜去装置では、クレーン装置60に鉛直軸回りに非回動状態で吊下支持されたオーガ1と、該オーガ1の下端に連結された油圧スイベルジョイント2と、土中に埋設された埋設杭9の外側に所定の隙間をもって嵌挿可能な内径寸法をもち且つその下端には複数の掘削爪36が周方向に所定間隔で取付けられたケーシング3を備えるとともに、上記ケーシング3の下端部3bには、該ケーシング3内に嵌挿された上記埋設杭9をその外側から挟圧可能な複数の挟圧ユニット10を備え、上記ケーシング3を、上記オーガ1により回転駆動し上記掘削爪36で上記埋設杭9の周囲の土を掘削しながら降下させ、上記各挟圧ユニット10によって上記埋設杭9を挟圧保持した状態で上記クレーン装置60によって上記ケーシング3を引き上げることで上記埋設杭9を抜去するように構成したことを特徴としている。
【0015】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る埋設杭の抜去装置において、上記挟圧ユニット10を、上記埋設杭9の外周面に当接可能な湾曲面状の当接面25aをもつ挟圧板25と、上記ケーシング3側に上下方向へ回動可能に連結されるとともにその先端側に上記挟圧板25が連結され、その第1位置では上記ケーシング3の内径側へ向けて上昇傾斜した状態で上記挟圧板25を上記埋設杭9の外周面に当接させ、第2位置では上記ケーシング3の径方向外方側へ後退して上記挟圧板25を上記埋設杭9の外周面から離間させる作動腕12と、上記作動腕12を上記第1位置から第2位置側へ回動させる位置変更手段4を備えて構成したことを特徴としている。
【0016】
本願の第3の発明では、上記第2の発明に係る埋設杭の抜去装置において、上記挟圧板25の上記当接面25aに、周方向に延びる複数の掛止突条26を上下方向に多段に設けたことを特徴としている。
【0017】
本願の第4の発明では、上記第2の発明に係る埋設杭の抜去装置において、上記挟圧ユニット10を同期作動させる同期手段35を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0019】
(a)本願の第1の発明に係る埋設杭の抜去装置によれば、クレーン装置60に鉛直軸回りに非回動状態で吊下支持されたオーガ1と、該オーガ1の下端に連結された油圧スイベルジョイント2と、土中に埋設された埋設杭9の外側に所定の隙間をもって嵌挿可能な内径寸法をもち且つその下端には複数の掘削爪36が周方向に所定間隔で取付けられたケーシング3を備えるとともに、上記ケーシング3の下端部3bには、該ケーシング3内に嵌挿された上記埋設杭9をその外側から挟圧可能な複数の挟圧ユニット10を備え、上記ケーシング3を、上記オーガ1により回転駆動し上記掘削爪36で上記埋設杭9の周囲の土を掘削しながら降下させ、上記各挟圧ユニット10によって上記埋設杭9を挟圧保持した状態で上記クレーン装置60によって上記ケーシング3を引き上げることで上記埋設杭9を抜去するように構成しているので、
(a−1)先端に掘削爪36を備えたケーシング3をオーガ1によって回転駆動し、既設杭9の周囲の土を掘削しながら土中に降下させる掘削作業と、上記各挟圧ユニット10によって上記埋設杭9を挟圧保持する挟圧保持作業と、上記ケーシング3を上記クレーン装置60によって引き上げる引上げ作業によって、上記埋設杭9を土中から抜去することができ、埋設杭9の抜去作業を効率良く行なうことができる、
(a−2)上記クレーン装置60によって上記オーガ1及びケーシング3を吊下支持して作業を行なうものであって、例えば、リーダ等の重機の使用を必須とする抜去装置に比して、作業の簡便性あるいは汎用性が向上する、
等の効果が得られる。
【0020】
(b)本願の第2の発明に係る埋設杭の抜去装置によれば、上記第1の発明に係る埋設杭の抜去装置において、上記挟圧ユニット10を、上記埋設杭9の外周面に当接可能な湾曲面状の当接面25aをもつ挟圧板25と、上記ケーシング3側に上下方向へ回動可能に連結されるとともにその先端側に上記挟圧板25が連結され、その第1位置では上記ケーシング3の内径側へ向けて上昇傾斜して上記挟圧板25を上記埋設杭9の外周面に当接させ、第2位置では上記ケーシング3の径方向外方側へ後退して上記挟圧板25を上記埋設杭9の外周面から離間させる作動腕12と、上記作動腕12を上記第1位置から第2位置側へ回動させる位置変更手段4で構成しているので、
(b−1)上記作動腕12が第1位置に設定された状態では、該作動腕12が上記ケーシング3の内径側へ向けて上昇傾斜した状態で上記挟圧板25を上記埋設杭9の外周面に当接させているので、この状態から上記ケーシング3が上方へ引き上げられると、この引上げ力が上記作動腕12を介して上記挟圧板25を上記埋設杭9の外周面に押圧する力として働き、上記挟圧ユニット10による上記埋設杭9の挟圧保持性能が高められ、上記埋設杭9の滑落等の無い信頼性あるいは確実性の高い抜去作業が実現される、
(b−2)上記作動腕12が第2位置に設定された状態では、上記各挟圧ユニット10の挟圧板25が上記埋設杭9の外周面から離間することから、該埋設杭9の周囲への上記ケーシング3の掘削降下作業が何等支障なく容易に行なわれるとともに、上記埋設杭9の抜去後における該埋設杭9の取り外し作業が容易に行なえ、埋設杭9の抜去作業を通しての作業性が向上する、
等の効果が得られる。
【0021】
(c) 本願の第3の発明に係る埋設杭の抜去装置では、上記第2の発明に係る埋設杭の抜去装置において、上記挟圧板25の上記当接面25aに、周方向に延びる複数の掛止突条26を上下方向に多段に設けているので、
(c−1)上記支持筒3の引上げに伴って上記挟圧ユニット10の挟圧板25が上記埋設杭9の外周面に押圧される際、上記掛止突条26が上記埋設杭9の外周面に食い込み、この食い込み部分の掛止作用によって上記埋設杭9の滑落がより一層確実に防止され、作業上の信頼性が向上する、
(c−2)上記挟圧板25に上記掛止突条26が上下方向に多段に設けられていることで、上記埋設杭9は上記挟圧板25によって上下方向の比較的広い範囲で挟圧保持されその傾倒が阻止されることとなり、たとえ上記各挟圧ユニット10が上下方向の同一位置に設けられていたとしても、上記埋設杭9は傾倒することなく略鉛直姿勢のまま抜去され、作業上の安全性が確保される、
等の効果が得られる。
【0022】
(e)本願の第4の発明に係る埋設杭の抜去装置では、上記第2の発明に係る埋設杭の抜去装置において、上記各挟圧ユニット10を同期作動させる同期手段35を設けているので、該各挟圧ユニット10の挟圧板25によって上記埋設杭9が確実に挟圧保持され、上記埋設杭9の滑落な無い安全性の高い作業が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0024】
図1及び図2には、本願発明の実施形態に係る埋設杭の抜去装置Zを示している。
【0025】
「構成」
上記抜去装置Zは、図4に示すように、クレーン装置60のブーム61の先端に備えられたブームヘッド61aの先端に力水平方向に向けて取付けたピン39を介して吊下支持された状態で使用されるものであって、上記ブームヘッド61aに上記ピン39によって連結され且つ鉛直軸回りに非回動とされたオーガ1と、該オーガ1の下端に同軸状に連結された油圧スイベルジョイント2と、該油圧スイベルジョイント2の下端に端板34を介して該油圧スイベルジョイント2と同軸状に連結されたケーシング3を備えて構成される。
【0026】
上記ケーシング3は、所定の内径(即ち、その内部に環状の隙間をもって上記埋設杭9を嵌挿し得る径寸法)をもつ鋼管で構成される。このケーシング3の上部3aには、その軸心を挟んで対向する外周面上の二位置にそれぞれ油圧シリンダ4が略鉛直下方へ向けて取付けられている。そして、この油圧シリンダ4のシリンダロッドには、操作ロッド6が連結されている。
【0027】
一方、上記ケーシング3の下端部3bには、次述する挟圧ユニット10が三個配置されている。
【0028】
上記挟圧ユニット10は、上記ケーシング3の内側に嵌挿される上記埋設杭9をその周方向の三箇所から挟圧してこれを保持するものであって、図3に示すように、上記ケーシング3の下端部に設けた開口17の下縁部分にブラケット11を設け、このブラケット11に支点ピン21を介して所定長さの作動腕12を上記ケーシング3の径方向に沿う面上で回動自在に連結するとともに、該作動腕12の先端部に後述の挟圧板25とリンクバー13の一端を支点ピン22によって同時に支承している。また、上記リンクバー13の他端は、次述のリング体35に連結されている。
【0029】
上記リング体35は、特許請求の範囲の「同期手段」に該当するものであって、図3に示すように、上記ケーシング3の径方向外側に遊嵌する短い円管35bと該円管35bの上端に取付けられた環状板35aで構成され、該環状板35aの下面側の周方向の三箇所に設けられたブラケット37に、上記挟圧ユニット10の上記リンクバー13の他端が連結されている。
【0030】
さらに、リング体35の上記環状板35aの中心を径方向に挟んで対向する二位置には、上記操作ロッド6の下端が連結されている。従って、上記一対の油圧シリンダ4、4が伸縮作動することで、上記各操作ロッド6を介して上記リング体35が上下方向に移動され、このリング体35の移動に伴って、上記各挟圧ユニット10の上記リンクバー13及び上記作動腕12がそれぞれ同期して折曲作動し、これらを連結する上記支点ピン22に取付けられた次述の挟圧板25は、上記ケーシング3の径方向に進退移動されることになる。即ち、上記油圧シリンダ4は、特許請求の範囲」中の「位置変更手段」として機能する。
【0031】
ここで、上記挟圧板25の具体的構成を説明すると、該挟圧板25は、上記既設杭9の外周面の湾曲形状に沿うような曲率の湾曲面をもつ湾曲板で一体形成され、その内周面25a(即ち、上記既設杭9の外周面に当接する面)には、周方向へ延びる掛止突条26が上下方向に所定間隔で複数段に形成されている。
【0032】
そして、この挟圧板25は、その第1位置では、図3(イ)の左半部に示すように、上記作動腕12が上昇傾斜した状態で径方向内側へ延出し、上記挟圧板25の内周面25aが上記既設杭9の外周面に当接し、且つ上記各掛止突条26が上記既設杭9の外周面に食い込むような姿勢とされる。
【0033】
これに対して、第2位置では、図3(イ)の右半部に示すように、上記作動腕12が上記第1位置における姿勢から径方向外方側へ後退回動し、これに伴って上記挟圧板25は上記既設杭9の外周面の位置より径方向外側へ後退し、上記既設杭9の外周面に対して非接触の状態とされる。
【0034】
なお、上記挟圧板25の上記第1位置は、上記油圧シリンダ4が伸長作動して上記操作ロッド6を介して上記リング体35が降下されることで実現される。また、上記第2位置は、上記油圧シリンダ4が縮小作動して上記操作ロッド6を介して上記リング体35が引き上げられることで実現される。
【0035】
また、上記第2位置においては、上記挟圧板25は、上記作動腕12側に突設したストパー支点ピン27が上記挟圧板25に係合することで略鉛直姿勢(即ち、上記挟圧板25の内周面25aが上記既設杭9の外周面と略平行となる姿勢)に保持される。
【0036】
一方、図1に示すように、上記オーガ1側には地上側に設置したジエット供給源58から延びるジエットホース51が引き込まれる。さらに、このジエットホース51は、ここでジエット管52に接続され、該ジエット管52は、上記ケーシング3の内面に沿って下方へ引き出され、該ケーシング3の下端部分3bにおいて下方に指向して開口しており、該開口部分から下方へ向けてジエット(水と加圧空気の混合流体)が噴出される。
【0037】
「使用状態の説明」
続いて、図4〜図7を参照して、上記抜去装置Zを使用して土中に埋設された既設杭9の抜去作業を説明する。
【0038】
A:事前作業(図4参照)
抜去作業に際しては、先ず、図4に示すように、地面Gの杭埋設部を掘削機(図示省略)によって掘削して掘削穴Ga内に上記既設杭9の上端部分を露出させる。
【0039】
また、クレーン装置60を上記掘削穴Gaの近傍の所定位置に設置し、そのブーム61の先端のブームヘッド61aに上記抜去装置Zを吊下支持させ、その下端部分、即ち、上記ケーシング3の下端部3b部分を、上記既設杭9の上端部の直上に位置させる。この抜去装置Zの位置決め作業は、上記ブーム61の伸縮動及び起伏動によって行なう。
【0040】
また、この事前作業時には、地面G側に設置されたジエット供給源58から延びるジエットホース51を上記オーガ1側に、また油圧源59から延びる油圧ホース53を上記油圧スイベルジョイント2側に、それぞれ接続する。
【0041】
B:掘削作業(図5参照)
事前作業の完了後、上記油圧シリンダ4を縮小させて上記挟圧ユニット10の挟圧板25を第2位置に設定し、各挟圧ユニット10の挟圧板25の内側へ上記既設杭9が進入し得るようにする。
【0042】
しかる後、図5に示すように、上記オーガ1を駆動し上記ケーシング3を回転させながら上記抜去装置Zを徐々に降下させるとともに、上記ジエット管52からジエットを噴出させる。すると、上記ケーシング3は、ジエット噴流による土の軟化崩壊作用と、上記掘削爪36による掘削作用の相乗作用で、次第に上記既設杭9の外周側を穿孔しながら降下する。この掘削作業は、図6に示すように、上記ケーシング3の下端部3bが既設杭9の先端部9aに達するまで、継続される。
【0043】
C:杭保持作業(図6及び図3参照)
上記ケーシング3の下端部3bが既設杭9の先端部9aに達して、掘削作業が完了すると、杭保持作業へ移行する。即ち、図3に示すように、上記抜去装置Zの上記ケーシング3の下端部3bが既設杭9の先端部9aに達した時点で、上記抜去装置Zの降下を停止させる。そして、この時点で、上記油圧シリンダ4を伸長させて上記各挟圧ユニット10の各上記挟圧板25を、それぞれ第2位置から第1位置へ位置変更させ、該各挟圧板25によって上記既設杭9を挟圧保持させる。
【0044】
この場合、上記リング体35を介して上記各挟圧ユニット10の挟圧板25が同期作動されることで、該各挟圧板25による上記埋設杭9の挟圧保持が確実ならしめられる。
【0045】
また、上記各挟圧板25の掛止突条26が上記既設杭9の外周面に適度に食い込むことで、該既設杭9に対する挟圧保持作用が確保される。
【0046】
D:抜去作業(図7参照)
次に、上記クレーン装置60のブーム61を伸長させながら起仰させて、上記抜去装置Zに対して鉛直上方への引上げ力を付与する。この際、上述のように、上記挟圧ユニット10においては、上記挟圧板25を支持する上記作動腕12が上昇傾斜していることから、上記ケーシング3が上方へ引上げられるとき、この引上げ力によって上記作動腕12に水平方向への回動力が作用し、この回動力によって上記挟圧板25がさらに上記既設杭9側に押圧される。従って、上記掛止突条26の食込みによる掛止作用と、上記挟圧板25を上記既設杭9に押圧することによる摩擦掛止作用が相乗的に働き、上記各挟圧ユニット10による上記既設杭9の挟圧保持降下がさらに高められ、引抜き途中での上記既設杭9の滑落が確実に防止され、作業上の高い信頼性と確実性が担保される。
【0047】
また、この場合、上記挟圧板25に上記掛止突条26が上下方向に多段に設けられていることで、上記埋設杭9は上記挟圧板25によって上下方向の比較的広い範囲で挟圧保持されその傾倒が阻止されることとなり、たとえ上記各挟圧ユニット10が上下方向の同一位置に設けられていたとしても、上記埋設杭9は傾倒することなく略鉛直姿勢のまま抜去され、作業上の安全性が確保される。
【0048】
そして、図7に示すように、上記既設杭9と共に上記抜去装置Zが土中から完全に引抜かれると、これを地面G側に移動させ、この状態で上記油圧シリンダ4を縮小させて上記各挟圧ユニット10の挟圧板25を第1位置から第2位置に位置変更させることで、上記既設杭9は上記抜去装置Z側から容易に離脱される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本願発明の実施の形態に係る埋設杭の抜去装置の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII部の拡大図である。
【図4】埋設杭の抜去作業における第1工程説明図である。
【図5】埋設杭の抜去作業における第2工程説明図である。
【図6】埋設杭の抜去作業における第3工程説明図である。
【図7】埋設杭の抜去作業における第4工程説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ・・オーガ
2 ・・油圧スイベルジョイント
3 ・・ケーシング
4 ・・油圧シリンダ(位置変更手段)
5 ・・支持体
6 ・・操作ロッド
9 ・・埋設杭
10 ・・挟圧ユニット
11 ・・ベース
12 ・・作動腕
13 ・・リンクバー
15 ・・ガイド材
16 ・・ガイド溝
17 ・・開口
21 ・・支点ピン
22 ・・支点ピン
23 ・・支点ピン
25 ・・挟圧板
26 ・・掛止突条
27 ・・ストッパー
34 ・・端板
35 ・・リング体(同期手段)
36 ・・掘削爪
37 ・・ブラケット
39 ・・ピン
51 ・・ジエットホース
52 ・・ジエット管
53 ・・油圧ホース
58 ・・ジエット供給源
59 ・・油圧源
60 ・・クレーン装置
61 ・・ブーム
Z ・・抜去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン装置(60)に、鉛直軸回りに非回動状態で吊下支持されたオーガ(1)と、
該オーガ(1)の下端に連結された油圧スイベルジョイント(2)と、
土中に埋設された埋設杭(9)の外側に所定の隙間をもって嵌挿可能な内径寸法をもち且つその下端には複数の掘削爪(36)が周方向に所定間隔で取付けられたケーシング(3)を備えるとともに、
上記ケーシング(3)の下端部(3b)には、該ケーシング(3)内に嵌挿された上記埋設杭(9)をその外側から挟圧可能な複数の挟圧ユニット(10)を備え、
上記ケーシング(3)を、上記オーガ(1)により回転駆動し上記掘削爪(36)で上記埋設杭(9)の周囲の土を掘削しながら降下させ、上記各挟圧ユニット(10)によって上記埋設杭(9)を挟圧保持した状態で上記クレーン装置(60)によって上記ケーシング(3)を引き上げることで上記埋設杭(9)を抜去するように構成されたことを特徴とする埋設杭の抜去装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記挟圧ユニット(10)が、
上記埋設杭(9)の外周面に当接可能な湾曲面状の当接面(25a)をもつ挟圧板(25)と、
上記ケーシング(3)側に上下方向へ回動可能に連結されるとともにその先端側に上記挟圧板(25)が連結され、その第1位置では上記ケーシング(3)の内径側へ向けて上昇傾斜した状態で上記挟圧板(25)を上記埋設杭(9)の外周面に当接させ、第2位置では上記ケーシング(3)の径方向外方側へ後退して上記挟圧板(25)を上記埋設杭(9)の外周面から離間させる作動腕(12)と、
上記作動腕(12)を上記第1位置から第2位置側へ位置変更させる位置変更手段(4)を、
備えて構成されたことを特徴とする埋設杭の抜去装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記挟圧板(25)の上記当接面(25a)には、周方向に延びる複数の掛止突条(26)が上下方向に多段に設けられていることを特徴とする埋設杭の抜去装置。
【請求項4】
請求項2において、
上記各挟圧ユニット(10)を同期作動させる同期手段(35)が設けられていることを特徴とする埋設杭の抜去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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