説明

埋設管

【課題】強度の向上を図り、複数の種類の管を組み合わせることで、各管の欠点を解消することができるようにする。
【解決手段】埋設管10は、鋼管12と、鋼管12の外側に同心的に一体的に設けられたコンクリート管14と、鋼管の内側に同心的に一体的に設けられた塩化ビニル管16と、を備えた三重管構造をなしている。塩化ビニル管16の一方の端面16aが鋼管12の一方の一般端面12aよりも引き込んでおり、塩化ビニル管16の他方の端面16bが鋼管12の他方の一般端面12bよりも突出しており、鋼管12の一方の端部に突出片12cを有しており、鋼管12の他方の端部に凹部12dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道管等のように地中に埋設して使用される埋設管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道管等の埋設管としては、ヒューム管とも呼ばれるコンクリート管や塩化ビニル管などが知られている。コンクリート管は、ひびが入りやすく割れやすく、割れた場合に、地面が陥没するおそれがある、という欠点がある。また、管内を流れる物質との摩擦による欠損、侵食が発生するという欠点がある。
【0003】
そのため現在は、埋設管として塩化ビニル管が主流に使用されるようになってきている。しかしながら、塩化ビニル管は、日本の四季のように寒暖の変化があると、変形して、ジョイント部分にずれが発生するという欠点がある。
【0004】
また、特許文献1に示すように、ヒューム管において、その内周面に合成樹脂層を被覆することも行われているが、合成樹脂層を被覆するだけでは、その強度の強化としては不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−47915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例年、下水道工事の公共予算には、老朽化した下水道の再構築工事として多大な金額が計上されており、耐久性の低い従来の埋設管によって大変な無駄使いをしていることになる。
【0007】
本発明は、かかる従来の埋設管の問題に鑑みなされたもので、強度の向上を図り、複数の種類の管を組み合わせることで各管の持つ欠点を解消して耐久性の優れた埋設管を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、鋼管と、鋼管の外側に同心的に一体的に設けられたコンクリート管と、鋼管の内側に同心的に一体的に設けられた塩化ビニル管と、を備え三重管構造をなした埋設管であって、
前記塩化ビニル管の一方の端面の少なくとも一部が鋼管の一方の一般端面よりも引き込んでおり、塩化ビニル管の他方の端面の少なくとも一部が鋼管の他方の一般端面よりも突出しており、鋼管の一方の端部に第1嵌合部を有し、鋼管の他方の端部に第2嵌合部を有しており、
埋設管が接続されるときに、一方の埋設管の塩化ビニル管の少なくとも一部の端面が引き込んだ側に対して、隣接する他方の埋設管の塩化ビニル管の少なくとも一部の端面が突出した側を挿入して接着可能となっており、一方の埋設管の鋼管の第1嵌合部と、隣接する他方の埋設管の鋼管の第2嵌合部が嵌め合い可能となっている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の埋設管において、コンクリート管には、第1嵌合部または第2嵌合部が形成されている位置に合わせて第1嵌合部または第2嵌合部を露出させる切欠部が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の埋設管において、鋼管の内側と外側には、それぞれ塩化ビニル管内及びコンクリート管内に埋入するアンカー部材が設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の埋設管において、第1嵌合部及び第2嵌合部のいずれか一方が、鋼管の一般端面よりも突出する突出片であり、第1嵌合及び第2嵌合部のいずれか他方が、鋼管の一般端面よりも引き込んだ凹部であることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の埋設管において、突出片の周面と、凹部の周辺面とに位置合わせ溝がそれぞれ形成されており、一方の埋設管の突出片と他方の埋設管の凹部とが嵌め合ったときに、位置合わせ溝が整列するようになっていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の埋設管において、前記位置合わせ溝には、位置合わせ部材が挿入可能となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、鋼管と、鋼管の外側に同心的に一体的に設けられたコンクリート管と、鋼管の内側に同心的に一体的に設けられた塩化ビニル管と、を備え三重管構造をなした埋設管を、連続的に接続してなる埋設管接続構造を特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の埋設管を接続してなる埋設管接続構造を特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項2記載の埋設管を接続してなる埋設管連結構造であって、前記切欠部に充填材が充填されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、埋設管を、鋼管と、鋼管の外側のコンクリート管と、鋼管の内側の塩化ビニル管とからなる三重管としているために、鋼管によって強度の向上を図ることができる。また、外側のコンクリート管によって土壌とのなじみの良いものとし、且つ、内部の断熱効果を持たせることができる。よって、塩化ビニル管の変形を防ぐことができ、塩化ビニル管の接続を維持することができる。また、内側の塩化ビニル管によって、管内を流れる物質との摩耗、腐食を抑えることができる。
【0018】
こうして、異なる種類の材料からなる管の利点を生かし、耐久性の優れた埋設管とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態による埋設管の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による埋設管の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による埋設管の一部破断斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態による埋設管の部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による埋設管の接続手順を表す部分側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による埋設管の接続手順を表す部分縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による埋設管の斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態による埋設管の接続手順を表す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態による埋設管を表す図である。図において、埋設管10は、鋼管12と、鋼管12の外側のコンクリート管14と、鋼管12の内側の塩化ビニル管16と、から構成された三重管構造となっており、一端開口10aと他端開口10bとを備える。鋼管12は、厚さ10mm程度のものとするとよい。
【0022】
三重管を構成する鋼管12、コンクリート管14及び塩化ビニル管16は、基本的に、互いに同じ軸方向の長さを持って径方向に重なり合っているが、塩化ビニル管16だけは、軸方向に所定距離ずれるように固定される。即ち、埋設管10の一端開口10aにおいては、塩化ビニル管16の端面16aの少なくとも一部(図の例では全部)が鋼管12の一般端面12aよりも引き込んでおり、反対に埋設管10の他端開口10bにおいては、塩化ビニル管16の端面16bの少なくとも一部(図の例では全部)が鋼管12の一端端面12bよりも突出している。この突出量としては、50mm程度とすることができる。
【0023】
また、埋設管10の一端開口10aにおいて、鋼管12にはその一般端面12aよりも突出する嵌合部としての突出片12cが設けられ、埋設管10の他端開口10bにおいては、一般端面12bよりも引き込んだ嵌合部としての凹部12dが設けられる。突出片12c及び凹部12dは、その円周方向に複数個離間して設けることができるが、好ましくは、少なくとも180度間隔で2か所設けるとよい。突出片12cの外周面及び凹部12dの周囲には、それぞれ位置合わせ溝12e、12fが形成される。尚、一般端面12a、12bとは、鋼管12の突出片12cや凹部12dが形成されている部分を除く主たる端面を言うものとする。
【0024】
コンクリート管14の端面には、鋼管12の凹部12dに対応した位置に、切欠部14aが設けられる。
【0025】
図4に示すように、鋼管12の内周面と外周面には、複数のアンカー部材12g、12hが溶接等の任意の手段により固着されている。
【0026】
そして、鋼管12の内側の複数のアンカー部材12gが、塩化ビニル管16内に埋入されており、これによって、塩化ビニル管16が鋼管12の内周面に対してずれることなく、一体的に固定されている。
【0027】
また、鋼管12の外側の複数のアンカー部材12hが、コンクリート管14内に埋入されており、これによって、コンクリート管14が鋼管12の外周面に対してずれることなく、一体的に固定されている。
【0028】
鋼管12の内側に成形により塩化ビニル管16を形成し、鋼管12の外側に成形によりコンクリート管14を形成することができる。
【0029】
以上のように構成される埋設管10を接続するには、図5及び図6に示すように、一方の埋設管10の塩化ビニル管16の端面16aが引き込んだ側に対して、隣接する他方の埋設管10の塩化ビニル管16の端面16bが突出した側を挿入し、且つその際に一方の埋設管10の突出した塩化ビニル管16の外周面及び端面16b及び他方の埋設管10の対向するべき鋼管12の内周面及び塩化ビニル管16の端面16aに接着剤18を塗布して、接着剤18で隣接する塩化ビニル管16同士を固定する。このとき、一方の塩化ビニル管16の端面16aと他方の塩化ビニル管16の端面16bが付き当てられる。
【0030】
また、一方の鋼管12の端面12aと他方の鋼管12の端面12bが付き当てられると同時に、鋼管12の突出片12cと、隣接する埋設管10の鋼管12の凹部12dとが嵌め合わされる。突出片12cと凹部12dとが嵌め合わされたときに、位置合わせ溝12e、12fは整列するように設定されている。よって、整列した位置合わせ溝12e、12fに対して、その溝形状に合致した位置合わせ部材20を挿入する。位置合わせ部材20は、圧入または溶接によって、位置合わせ溝12e、12fに固定するとよい。この作業は、コンクリート管14の切欠部14aを通して行われる。コンクリート管14の端面同士も付き当てられる。
【0031】
次いで、切欠部14aをモルタル22等の充填材で充填して、コンクリート管14と同じ外表面に仕上げる。
【0032】
こうして、隣接する埋設管10との接続が完成する。接続は、塩化ビニル管16と鋼管12とでそれぞれ行われるために、確実となる。即ち、塩化ビニル管16は、接着剤18によって、隣接する塩化ビニル管16の端面16aと16bとが固定され、鋼管12は、突出片12cと凹部12dとの嵌め合わせと位置合わせ部材20によって、隣接する鋼管12同士が固定される。また、鋼管12とコンクリート管14とが一体的になっていることにより、コンクリート管14同士も隙間無く接続されることとなる。
【0033】
こうして接続された埋設管10は、鋼管12を中芯としているために、強度が向上されている。また、コンクリート管14が外側にあるために、土壌とのなじみが良く、且つ内部の断熱効果を持たせることができる。よって、塩化ビニル管16の変形を防ぐことができる。また、内側の塩化ビニル管16によって、管内を流れる物質との摩耗、腐食を抑えることができる。こうして、半永久的に使用できる耐久性の優れた埋設管とすることができる。
【0034】
図7は、本発明の第2実施形態による埋設管を表す図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材・部分は同一の符号を付す。
【0035】
この例では、埋設管10の一端開口10aにおいては、塩化ビニル管16の端面16aが鋼管12の一般端面12aよりも突出しており、反対に埋設管10の他端開口10bにおいては、塩化ビニル管16の端面16bが鋼管12の一端端面12bよりも引き込んでいる点で、第1実施形態と異なっており、従って、端面16aが鋼管12の突出片12cと同じように鋼管12の一般端面12aから突出している。また、端面16bが鋼管12の凹部12dと同じように鋼管12の一般端面12bから引き込んでいる。
【0036】
このように構成される埋設管10においても、図8に示すように、埋設管10の接続作業を第1実施形態と同様に行うことができる。
【0037】
尚、以上の例では、一方の嵌合部としての突出片12cと他方の嵌合部としての凹部12dとが、互いに離間して2か所ずつ設けられていたが、一方と他方の嵌合部を、突出片と凹部とを交互に配置した櫛状のものとして、互いに嵌め合い可能となったものとすることも可能である。
【0038】
また、図示した例では、埋設管は、直線上に延びていたが、これに限るものではなく、湾曲状に延びていてもよい。また、埋設管同士を直接接続していたが、これに限るものではなく、管路継手部分を湾曲させる必要がある場合には、継手として、内側に塩化ビニル管が一体的に設けられた鋼管を用意し、鋼管の外周面にはアンカー部材12hを設け、現場で鋼管の外側をモルタルにて仕上げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 埋設管
12 鋼管
12a 一般端面
12b 一般端面
12c 突出片(嵌合部)
12d 凹部(嵌合部)
12e 位置合わせ溝
12f 位置合わせ溝
12g アンカー部材
12h アンカー部材
14 コンクリート管
14a 切欠部
16 塩化ビニル管
16a 端面
16b 端面
18 接着剤
20 位置合わせ部材
22 モルタル(充填材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、鋼管の外側に同心的に一体的に設けられたコンクリート管と、鋼管の内側に同心的に一体的に設けられた塩化ビニル管と、を備え三重管構造をなした埋設管であって、
前記塩化ビニル管の一方の端面の少なくとも一部が鋼管の一方の一般端面よりも引き込んでおり、塩化ビニル管の他方の端面の少なくとも一部が鋼管の他方の一般端面よりも突出しており、鋼管の一方の端部に第1嵌合部を有しており、鋼管の他方の端部に第2嵌合部を有しており、
埋設管が接続されるときに、一方の埋設管の塩化ビニル管の少なくとも一部の端面が引き込んだ側に対して、隣接する他方の埋設管の塩化ビニル管の少なくとも一部の端面が突出した側を挿入して接着可能となっており、一方の埋設管の鋼管の第1嵌合部と、隣接する他方の埋設管の鋼管の第2嵌合部が嵌め合い可能となっている、ことを特徴とする埋設管。
【請求項2】
コンクリート管には、第1嵌合部または第2嵌合部が形成されている位置に合わせて第1嵌合部または第2嵌合部を露出させる切欠部が形成されることを特徴とする、請求項1記載の埋設管。
【請求項3】
鋼管の内側と外側には、それぞれ塩化ビニル管内及びコンクリート管内に埋入するアンカー部材が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の埋設管。
【請求項4】
第1嵌合部及び第2嵌合部のいずれか一方が、鋼管の一般端面よりも突出する突出片であり、第1嵌合及び第2嵌合部のいずれか他方が、鋼管の一般端面よりも引き込んだ凹部であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の埋設管。
【請求項5】
突出片の周面と、凹部の周辺面とに位置合わせ溝がそれぞれ形成されており、一方の埋設管の突出片と他方の埋設管の凹部とが嵌め合ったときに、位置合わせ溝が整列するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の埋設管。
【請求項6】
前記位置合わせ溝には、位置合わせ部材が挿入可能となっていることを特徴とする請求項5記載の埋設管。
【請求項7】
鋼管と、鋼管の外側に同心的に一体的に設けられたコンクリート管と、鋼管の内側に同心的に一体的に設けられた塩化ビニル管と、を備え三重管構造をなした埋設管を、連続的に接続してなる埋設管接続構造。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の埋設管を連続的に接続してなる埋設管接続構造。
【請求項9】
請求項2記載の埋設管を連続的に接続してなる埋設管連結構造であって、前記切欠部に充填材が充填されてなることを特徴とする埋設管連結構造。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−241950(P2011−241950A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116707(P2010−116707)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(395006672)株式会社イケハタ (6)
【Fターム(参考)】