説明

埋設金属パイプラインのカソード防食システム

【課題】地中電位勾配の中心部を通過するように埋設された金属パイプラインをカソード防食するに際して、中央部の等電位面間隔が密で周辺部での等電位面間隔が疎になる地中電位勾配内のパイプラインに対して直流電食リスクや過防食リスクが生じないようにする。
【解決手段】埋設金属パイプラインPのカソード防食システムは、地中電位勾配の中心部においてパイプラインPの近傍に設置され、パイプラインPのコーティング欠陥を模擬するクーポン10と、パイプラインPに接続され、地中電位勾配の存在する領域を対象に防食電流を供給する外部電源装置20と、クーポン10におけるクーポン流入直流電流密度を設定値と比較して外部電源装置20の出力を調整することで、クーポン10におけるクーポン流入直流電流密度がクーポン電流密度を指標としたカソード防食管理基準内になるように制御する制御部30を備え、制御部30は、クーポン流入直流電流密度の最小値IDCminを設定時間毎に求め、最小値IDCminを設定値と比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源方式による埋設金属パイプラインのカソード防食システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設された金属パイプライン(以下単にパイプラインという)のカソード防食管理は、パイプラインの周辺の地表面に設置された照合電極(例えば、飽和硫酸銅電極)とパイプラインとを電気的に接続し、パイプラインと照合電極との間の電位差として定義される管対地電位が、防食電位に合格しているか否かで管理されている。このような防食電位を指標としたカソード防食管理の下では、外部電源方式によるパイプラインのカソード防食システムは、パイプライン周辺の電気的な状況変化に対して計測される管対地電位が常に防食電位に合格するように、パイプラインに接続された外部電源装置のアノードから出力される防食電流を調整する制御(定電位制御)が行われる。
【0003】
一方、電気絶縁性の高いプラスチックコーティングが施されたパイプラインに対しては、クーポン(Coupon)を用いたカソード防食管理が行われている。クーポンとは、パイプラインのコーティング欠陥を模擬したものであり、パイプラインと同一材質の金属面を有した金属片をパイプラインに電線を介して接続し、この金属面がパイプライン近傍の電解質に接するように設置したものである。クーポンを用いたカソード防食管理の一つとして、クーポン流入直流電流密度の計測に基づく直流電食リスクの管理がある。このような管理の下では、外部電源方式によるパイプラインのカソード防食システムは、パイプライン周辺の電気的な状況変化に対して計測されるクーポン流入直流電流密度(IDC)が常にカソード防食管理基準(0.1〜40A/m2)に合格するように、パイプラインに接続された外部電源装置のアノードから出力される防食電流を調整する制御が行われる(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−80842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中を流れる直流電気鉄道のレール漏れ電流は、この直流電流によって地中電位勾配を生じさせる。特に、直流電気鉄道の踏切部では、レールと交差する方向に沿って、踏切部のレールを中心にして同心球状の等電位面を有する地中電位勾配が生じ、その等電位面は踏切部のレールに近いほど密になり、踏切部のレールから離れるほど疎になる。
【0006】
一方、近年の直流電気鉄道は回生制動車両を含み、踏切部を通過する車両の力行時には踏切部のレールから地中にレール漏れ電流が流出する傾向になり、踏切部を通過する車両の回生制動時には踏切部のレールに地中を流れる電流が引き寄せられる傾向になる。この際、踏切部のレールを中心にした地中電位勾配は、踏切部を通過する車両が力行時と回生制動時とで極性が反転することになる。
【0007】
このような同心球状の等電位面を有する地中電位勾配の中心部を通過するように埋設されたパイプラインを対象にして、従来技術のように、クーポン流入直流電流密度がカソード防食管理基準に合格するように外部電源装置を制御するカソード防食を行う場合には、クーポンの設置位置によって適正なカソード防食を行うことができない場合がある。すなわち、クーポンの設置位置が踏切部のレールから離れている場合には、地中電位勾配の影響によるクーポン流入直流電流密度の変化が小さくなり、モニタされるクーポン流入直流電流密度がカソード防食管理基準に合格するように外部電源装置を制御したとしても、等電位面の間隔が密になる地中電位勾配の中央部においては、局部的にパイプラインの直流腐食リスクが高くなることが生じうる。
【0008】
より具体的には、踏切部の周辺に設置したクーポンによってモニタされたクーポン流入直流電流密度がカソード防食管理基準に合格していたとしても、踏切部を通過する車両の力行時には、埋設パイプラインにおける踏切部のレール下では過防食リスクが生じる可能性があり、踏切部を通過する車両の回生制動時には埋設パイプラインにおける踏切部のレール下では直流電食リスクが生じる可能性がある。
【0009】
また、踏切部のレールが複線の場合などでは、一つの踏切部を回生制動車両と力行車両が同時期に通過することがある。このような場合には、踏切部における地中電位勾配の経時的な変化は頻繁且つ複雑になる。このような状況で、モニタしたクーポン流入直流電流密度の変化に応じて単純に防食電流を増加・減少すると、レール漏れ電流が大きくなると防食電流の出力が低下することになり、レール漏れ電流が大きくなった直後にレール側に向けて電流を引き寄せるような極性反転が生じると、応答遅れによってレール側に向けて電流を引き寄せるように地中電位勾配が反転した時点で防食電流が低く抑えられている状態になり、極めて直流電食リスクの高い状態を作ってしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、カソード防食がなされていない状態で同心球状の等電位面を有する地中電位勾配が存在し且つこの地中電位勾配の極性が経時的に反転する状況下で、この地中電位勾配の中心部を通過するように埋設されたパイプラインをカソード防食するに際して、地中電位勾配内のパイプラインに対して直流電食リスクや過防食リスクが生じないようにすること、また、地中電位勾配の経時的な変化が頻繁且つ複雑に生じる場合であっても、地中電位勾配内のパイプラインを常に直流電食リスクが生じないようにすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明による埋設金属パイプラインのカソード防食システムは、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0012】
同心球状の等電位面を有する地中電位勾配が存在し且つこの地中電位勾配の極性が経時的に反転する状況下で、この地中電位勾配の中心部を通過するように埋設された金属パイプラインをカソード防食するためのシステムであって、前記地中電位勾配の中心部において前記パイプラインの近傍に設置され、当該パイプラインのコーティング欠陥を模擬するクーポンと、前記パイプラインに接続され、前記地中電位勾配の存在する領域を対象に防食電流を供給する外部電源装置と、前記クーポンにおけるクーポン流入直流電流密度を設定値と比較して前記外部電源装置の出力を調整することで、前記クーポンにおけるクーポン流入直流電流密度がクーポン電流密度を指標としたカソード防食管理基準内になるように制御する制御部を備え、前記制御部は、前記クーポン流入直流電流密度の最小値を設定時間毎に求め、該最小値を前記設定値と比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような特徴を有する埋設金属パイプラインのカソード防食システムは、同心球状の等電位面を有する地中電位勾配が存在し且つこの地中電位勾配の極性が経時的に反転する状況下で、この地中電位勾配の中心部を通過するように埋設されたパイプラインをカソード防食するに際して、地中電位勾配の中心部にクーポンを設置し、このクーポンにおけるクーポン流入直流電流密度がカソード防食管理基準内になるようにパイプラインに接続した外部電源装置の出力を制御するので、地中電位勾配内でパイプラインの直流電食リスクや過防食リスクが生じないようにすることができる。
【0014】
また、地中電位勾配の中心部に設置されたクーポンにおけるクーポン流入直流電流密度をカソード防食管理基準内に制御する制御部が、クーポン流入直流電流密度の最小値を設定時間毎に求め、この最小値を設定値と比較する制御を行うので、地中電位勾配の経時的な変化が頻繁且つ複雑に生じる場合であっても、地中電位勾配内のパイプラインを常に直流電食リスクが生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るカソード防食システムの構成例を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカソード防食システムにおける制御部の具体的な構成例を示した説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカソード防食システムにおける演算処理部の処理動作例を示した説明図である。
【図4】踏切部下を埋設金属パイプラインが横断する場合におけるパイプラインの直流電食リスクを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るカソード防食システムの構成例を示した説明図である。本発明の実施形態に係るカソード防食システムは、埋設された金属パイプラインPを対象として設置されるものであるが、パイプラインPの絶縁区画された防食範囲全体を対象とするものではなく、特異な直流電食リスクが生じうる限定的な範囲を対象にして部分的にパイプラインPにカソード防食を施すものである。以下に示すパイプラインPは、電気絶縁性の高いプラスチックコーティング(例えば、ポリエチレン被覆)が施された鋼製パイプラインを例にして説明する。
【0017】
ここでの防食対象は、カソード防食がなされていない状態で同心球状の等電位面を有する地中電位勾配が存在し且つこの地中電位勾配の極性が経時的に反転する状況下で、この地中電位勾配の中心部を通過するように埋設されたパイプラインPであり、そのパイプラインPにおいて地中電位勾配の影響を受けている範囲を対象にしている。より具体的には、直流電気鉄道の踏切部の下にレールRと交差する方向に埋設されたパイプラインPにおいて、レールを中心にして生じる地中電位勾配の影響を受けている範囲が対象になる。
【0018】
踏切部ではレールRの上面を路面Sと一致させるための溝Gが形成されており、その溝Gに水等の電解質が溜まりやすいことから、レール漏れ抵抗が低い状態になり易い。このようにレール漏れ抵抗が低い踏切部においては、局部的なカソード防食がなされていない状態では、レール漏れ電流によってレールRを中心として同心球状の等電位面V1を有する地中電位勾配が生じる。この地中電位勾配は中心部で等電位面V1の間隔が密になり、周辺部で等電位面V1の間隔が疎になる。
【0019】
また、近年、直流電気鉄道の回生制動車両の普及によって、踏切部の下にはレールRからレール漏れ電流が地中に流出する傾向にある状態とレールRに向かって地中を流れる電流が流入する傾向にある状態が出現し、この相反する状態によってレールRを中心に生じる地中電位勾配はその極性が経時的に反転する。
【0020】
本発明の実施形態に係るカソード防食システムは、このような地中電位勾配の中心部を通過するように埋設された金属パイプラインPに対して設置され、地中電位勾配の中にあるパイプラインPを部分的にカソード防食するものであり、クーポン10と外部電源装置20と制御部30を備える。
【0021】
クーポン10は、地中電位勾配の中心部においてパイプラインPの近傍に設置され、パイプラインPに電線11を介して接続されている。このクーポン10はパイプラインPのコーティング欠陥を模擬するものである。図示の例では、踏切部のレールRの下にクーポン10が設置されている。踏切部を横切るパイプラインPは一般にケーシングCに覆われているが、その場合にはクーポン10はケーシングC内の電解質に金属面が接するように配置される。クーポン10とパイプラインPとを接続する電線11にはクーポン流入直流電流密度をモニタするための電流計12が備えられている。
【0022】
外部電源装置20は、パイプラインPに接続され、地中電位勾配の存在する領域を対象にしてパイプラインPに防食電流を供給するものである。図示の例では、外部電源装置20は踏切部外側の地中にアノード21を埋設しており、アノード21とパイプラインPとを接続する電線22には直流電源23と出力調整器(例えば可変抵抗器)24が直列に接続されている。ここでの直流電源23は交流電源からの交流入力を変圧器や整流器を介して直流出力にしたものであってもよく、この場合の出力調整器24は整流器の位相調整を行うものになる。
【0023】
制御部30は、クーポン10におけるクーポン流入直流電流密度を設定値と比較して外部電源装置20の出力を調整することで、クーポン10におけるクーポン流入直流電流密度がクーポン電流密度を指標としたカソード防食管理基準内になるように制御するものである。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るカソード防食システムにおける制御部30の具体的な構成例を示した説明図である。この例では、外部電源装置の直流電源23は、交流電源からの交流入力を変圧器23Aとサイリスタ23Bによって直流出力に変換している。制御部30には、クーポン10とパイプラインPとを接続する電線11に設けられたクーポン電流検出用シャント抵抗12Aからクーポン電流が入力される。制御部30に入力されたクーポン電流はローパスフィルタ31と増幅器32を経て演算処理部33に入力される。演算処理部33は、クーポン流入直流電流密度の最小値を設定時間毎に求めて出力する。
【0025】
演算処理部33から出力されたクーポン流入直流電流密度の最小値は設定時間(例えば10sec)毎に比較増幅器34に入力され、比較増幅器34で設定値と比較される。比較増幅器34は演算処理部33から出力されたクーポン流入直流電流密度の最小値と設定値との差の信号をパルス制御回路35に出力する。パルス制御回路35は、比較増幅器34から出力された信号と、直流電源23の直流出力のフィードバック信号に応じてサイリスタ23Bの位相を調整して直流電源23の直流出力を調整する。直流電源23の直流出力は出力電流検出用シャント抵抗23Cによって検出され、クーポン電流制御回路36を介して電流値に変換された信号がパルス制御回路35にフィードバックされる。
【0026】
図3は演算処理部33の処理動作例を示した説明図である。制御部30は、クーポン電流検出用シャント抵抗12Aから0.1msのサンプリング間隔でクーポン電流Iを検出する。そして、20msの単位時間毎に200個のクーポン電流I(I1,I2,I3,…,I198,I199,I200)の検出値から一つのクーポン流入直流電流密度IDCを下記式(1)によって求める(但し、A:クーポンの断面積、In:n番目にサンプリングされたクーポン電流の検出値)。
【0027】
【数1】

【0028】
20msの単位時間毎に一つのクーポン流入直流電流密度IDCを求めると、10sの設定時間では500個のクーポン流入直流電流密度IDC(IDC1,IDC2,IDC3,…,IDC498,IDC499,IDC500)が求められるが、演算処理部33は500個のクーポン流入直流電流密度IDC(IDC1,IDC2,IDC3,…,IDC498,IDC499,IDC500)を比較し、その中の最小値IDCminを10sの設定時間毎に出力する。計測時間を例えば1hに設定すると、10sの設定時間毎に360個の最小値IDCminが演算処理部33から出力されることになる。
【0029】
演算処理部33の動作としては、例えば、一つの単位時間(20ms)で求められるクーポン流入直流電流密度の値IDC1を記憶手段に記憶し、この記憶手段に記憶した値と次の単位時間(20ms)で求められるクーポン流入直流電流密度の値IDC2とを比較して、より小さい値を記憶手段に記憶する動作を繰り返し、設定時間(10s)内で最後に記憶手段に記憶した値を最小値IDCminとして出力する。このようにすることで、少ない記憶容量で最小値IDCminを求めることが可能になる。
【0030】
以下に、踏切部を埋設金属パイプラインが横断する場合を例にして、本発明の実施形態に係るカソード防食システムの作用を説明する。図4は、踏切部下を埋設金属パイプラインが横断する場合におけるパイプラインの直流電食リスクを示した説明図である。
【0031】
図4(a)は、踏切部でレール漏れ電流が発生している場合であり、例えば、踏切部を通過する車両T1の力行時にこのような状態になりやすい。この場合には、踏切部のレールRの下ではパイプラインPにはレール漏れ電流が流入する傾向になり、パイプラインP内に流入した電流は管内を流れ、レールRから離れた地点で地中に流出する傾向になる。すなわち、レールRを中心に生じる地中電位勾配の外側に直流電食リスクが生じる。
【0032】
一方、図4(b)は、踏切部のレールRに向かって地中の電流が流入する場合であり、例えば、踏切部を通過する車両T2の回生制動時にこのような状態になりやすい。この場合には、踏切部のレールRを中心に生じる地中電位勾配の外でパイプラインPに電流が流入すると、この電流は管内を流れ、地中電位勾配の中心部(踏切部のレールRの下)でパイプラインPからレールRに向かって地中に流出する傾向になる。すなわち、踏切部のレールRの下に直流電食リスクが生じる。
【0033】
踏切部では、図4(a)に示した状態と図4(b)に示した状態が異なるタイミングで出現するので、ある場合には、図4(a)に示す状態で非常に大きなレール漏れ電流が発生している状態から急に図4(b)に示すような地中の電流がレールRに引き寄せられる状態に切り替わることがある。このような場合に、レールRの下に設置したクーポンによって計測されるクーポン流入直流電流密度の変化を単純に利用して防食電流を増減させると、図4(a)に示した状態では防食電流を大きく減少させる制御がなされ、その直後に図4(b)に示した状態に切り替わったときに防食電流を増大させる制御が間に合わず、防食電流を減少させた状態で地中の電流がレールRに引き寄せられる状態になり、踏切部のレールRの下で深刻な直流電食リスクを招くことになる。
【0034】
一方、本発明の実施形態に係るカソード防食システムは、常に設定時間(10s間)のクーポン流入直流電流密度の最小値IDCminを設定値と比較して防食電流を調整するので、図4(a)に示した状態でレール漏れ電流が瞬間的に大きくなったとしても、防食電流を過剰に低下させることがない。したがって、レール漏れ電流が大きい図4(a)に示した状態から急に図4(b)に示すような地中の電流がレールRに引き寄せられる状態に切り替わったとしても、防食電流はある程度の大きさで供給されており、踏切部のレールRの下で深刻な直流電食リスクを招くことがない。
【0035】
また、本発明の実施形態に係るカソード防食システムは、中心部で等電位面の間隔が密になり周辺部で等電位面の間隔が疎になる地中電位勾配の中心部にクーポン10を設置しているので、地中電位勾配の外(踏切部の外)にクーポンを設置する場合と比較して、極性が反転する地中電位勾配の影響を感度良くクーポン流入直流電流密度の変化で検出することができ、経時的に極性が反転する地中電位勾配に対してパイプラインPのカソード防食状態を適正に管理することができる。
【0036】
更に、本発明の実施形態に係るカソード防食システムは、クーポン流入直流電流密度がクーポン電流密度を指標としたカソード防食管理基準(0.1〜40A/m2)内になるように制御するものである。その際に、設定時間(10s間)のクーポン流入直流電流密度の最小値IDCminと比較される設定値は、カソード防食管理基準である0.1〜40A/m2の中間値、例えば、1.0〜5.0A/m2の範囲で設定することが好ましい。このような値に設定することで、地中電位勾配の極性が急に反転する場合であっても、過防食リスクと直流電食リスクの両方を回避することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
10:クーポン,11,電線,12:電流計,
12A:クーポン電流検出用シャント抵抗,
20:外部電源装置,21:アノード,22:電線,23:直流電源,
23A:変圧器,23B:サイリスタ,
23C:出力電流検出用シャント抵抗,24:出力調整器,
30:制御部,31:ローパスフィルタ,32:増幅器,
33:演算処理部,34:比較増幅器,35:パルス制御回路,
36:クーポン電流制御回路,
P:パイプライン,R:レール,G:溝,S:路面,C:ケーシング,
V1:等電位面,T1,T2:車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心球状の等電位面を有する地中電位勾配が存在し且つこの地中電位勾配の極性が経時的に反転する状況下で、この地中電位勾配の中心部を通過するように埋設された金属パイプラインをカソード防食するためのシステムであって、
前記地中電位勾配の中心部において前記パイプラインの近傍に設置され、当該パイプラインのコーティング欠陥を模擬するクーポンと、
前記パイプラインに接続され、前記地中電位勾配の存在する領域を対象に防食電流を供給する外部電源装置と、
前記クーポンにおけるクーポン流入直流電流密度を設定値と比較して前記外部電源装置の出力を調整することで、前記クーポンにおけるクーポン流入直流電流密度がクーポン電流密度を指標としたカソード防食管理基準内になるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記クーポン流入直流電流密度の最小値を設定時間毎に求め、該最小値を前記設定値と比較することを特徴とする埋設金属パイプラインのカソード防食システム。
【請求項2】
前記中心部が直流電気鉄道における踏切部のレール下であることを特徴とする請求項1に記載された埋設金属パイプラインのカソード防食システム。
【請求項3】
前記設定値を1.0〜5.0A/m2の範囲で設定することを特徴とする請求項1に記載された埋設金属パイプラインのカソード防食システム。
【請求項4】
前記クーポンは、前記パイプラインを覆うケーシング内に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された埋設金属パイプラインのカソード防食システム。
【請求項5】
前記パイプラインは高電気絶縁性のプラスチックコーティングが施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された埋設金属パイプラインのカソード防食システム。
【請求項6】
前記制御部は、一つの単位時間で求められるクーポン流入直流電流密度の値を記憶手段に記憶し、該記憶手段に記憶した値と次の単位時間で求められるクーポン流入直流電流密度の値とを比較して、より小さい値を記憶手段に記憶する動作を繰り返し、前記設定時間内で最後に記憶手段に記憶した値を前記最小値として出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された埋設金属パイプラインのカソード防食システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−153918(P2012−153918A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12007(P2011−12007)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】