説明

埋込型医療器具の表面処理方法

表面誘電体絶縁層を備える埋込型医療器具の表面処理方法であって、イオンが、静電荷を形成し、前記埋込型医療器具の表面の少なくとも一部に付随する電場を局所的に作り出すために、液体を前記表面に触れさせ、前記イオンを前記誘電体絶縁層上に存在させるステップを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込型医療器具の表面処理方法、及びその方法により処理された医療器具の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプの埋込型(implanted)医療器具(例えば、整形外科インプラント、茎状スクリュ、歯科インプラント、脊椎インプラント及びセンサ)では、負荷伝達及び応力伝達のために、器具の表面と周囲組織(最も一般的には骨)との間に強い相互作用を有することが望ましい。このような器具は、骨折部位を安定化し、弱い骨を補強し、補綴物を固定するのに使用されている。
【0003】
このような器具(以後「インプラント」と総称する)の表面は、骨で囲まれている場合、オッセオインテグレート(osseointegrate)することが示されてきた。オッセオインテグレーション(インプラントと周囲の生きている骨との間の構造的な結合の形成)は、インプラントの実装(placement)に続いて、新たな骨の形成又はインプラントの表面と直接的に接触している既存の骨の再構築の結果として起こる。骨は、インプラント表面上に直接形成されることもあり、又は極めて薄い介在タンパク質層が存在する場合もある。このようなオッセオインテグレーションは、多くの研究において、組織学的に、X線写真により、また引抜き、除去トルク、共鳴周波数解析及び他の機械試験を用いて実証されている。
【0004】
インプラントは典型的に、純粋金属、合金又はセラミックの器具である。チタン、ジルコニア、ハフニウム、タンタル、ステンレス鋼及びコバルトクロム合金が、一般的に使用される材料である。インプラントの表面形状(粗さ、ランダムであるか又は繰返しであるかという表面特性)は、インプラント−組織境界面における骨形成の速度及び質に影響を与える可能性があるとはっきりと認識される。概して、ナノメートル及びマイクロメートルのスケールで粗面化されたインプラントが、骨形成の速度及び質を上げることができると考えられている。結果として生じる、治癒及びオッセオインテグレーションにかかる時間の短縮は強く望まれるものであり、早期充填及び治療時間の短縮を可能とする。加えて、インプラント−骨境界面の強度及び剛性が、或る特定の形状を有する表面でより大きくなり得る。
【0005】
インプラントの表面形状又は表面粗さを変更するための、十分に裏付けされた方法が数多く存在している。これらとしては、粒子ブラスト法(粗粒子、サンド及び他の砥粒)、酸エッチング、プラズマ溶射、陽極酸化、マイクロアーク酸化、又はこれらの組合せが挙げられ得る。これにより、1nm〜100μmのスケールの範囲の単一の粗さレベル又は複数の様々な粗さレベルをもたらすことができる。これらのタイプの形状及び特性は、商用製品から、例えば特許文献1から既知である。
【0006】
上記に記載される表面改質プロセスは、表面の化学特性も変更することができる。典型的に、金属は、空気及び水に曝されて酸化皮膜を形成する。このような曝露は、製造又は外科的な実装若しくは処置中に起こり得る。水との反応は、ヒドロキシル基が形成されるインプラント表面で起こり得る(非特許文献1)。化学的に、インプラントの表面は、金属自体、金属の酸化物又はヒドロキシル化された表面、例えば、チタン、酸化チタン又はチタンヒドロキシルであり得る。製造、貯蔵又は処置手法の結果として、炭素及び他の不純物がインプラント表面上に存在する可能性もある。
【0007】
インプラントを組織又は骨に入れる場合には、インプラントを身体の天然組織液で十分に湿潤させることが大いに望ましい。組織液には、養分、電解質、タンパク質、増殖因子、並びに治癒及び骨形成プロセスに不可欠な他の物質が含有されている。インプラントはまた、例えば製造中又は処理前に、液体又はゲル、増殖因子で事前に処理することもできる。インプラントと接触させる任意の液体、ゲル又は溶液は、該表面を十分に湿潤させ、任意の形状的特徴を透過するものでなければならない。
【0008】
基材又はインプラント表面上には、生体適合性と、生体接着と、表面張力又は接触角との間の相関関係が存在することが示されている(非特許文献2)。粗面を有するインプラントに関する主な問題の1つは、潜在的な疎水性、すなわち、液体をインプラントに塗布した場合に表面が適切に湿潤しないことである。この原因は、有機材料又は疎水性材料による表面の異物混入、又は表面張力に起因して流体の透過を妨げる表面の幾何学形状にある可能性がある。接触角として測定される表面の湿潤、親水性及び疎水性は、ゴニオメータ又はウィルヘルミ(Wihelmy)プレート法を用いて容易に推論することができる。
【0009】
組織液又は塗布した液体が表面の形状に完全に透過し、養分、タンパク質及び増殖因子により、細胞代謝、治癒及び骨形成が維持され得ることを確実なものとすることは不可欠である。しかしながら、表面の形状又は特性の性質も重要である。表面の粗さが増すと、空気が液体層の下に閉じ込められ、湿潤を妨げる原因となるおそれがある。加えて、アスペクト比(それらの幅又は外周に対する、溝又は穿孔の高さ又は深さ)によっては、流体がこのような特徴を透過することができずにブリッジング(bridging)及びブリッジ形成を起こすおそれがあるため、形状のアスペクト比は重大なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0388576号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Boehm H.P., 1971 Acidic and basic properties of hydroxylated metal oxide surfaces, Discussions of the Faraday Society, 52, 264-275
【非特許文献2】Baier, 1972, The role of surface energy in thrombogenesis, Bull. N.Y. Acad. Med. 48, 257-272
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、インプラント表面の親水性又は湿潤を増大させ、表面上への液体の透過率を向上させる、インプラントを処理する方法を提供することである。代替的に又は加えて、特異的な生体分子を表面に引き寄せることができる。これらの目的は、インプラントの表面の一部又は全部にわたって達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、表面誘電体絶縁層を備える埋込型医療器具の表面処理方法であって、液体が前記埋込型医療器具の表面に触れる(アプリケーション)ことで、イオンが静電荷を形成して前記表面の少なくとも一部に付随する電場を局所的に作り出すために、前記イオンを前記誘電体絶縁層上に存在させる(アプリケーション)ステップを含む方法が提供される。
【0014】
一実施の形態において、上記電場は、例えば電気泳動によって、特異的な生体分子を上記誘電体絶縁層に引き寄せるために使用される。生体分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、RNA、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA、リボザイム、遺伝子、炭水化物、血管新生因子、細胞周期阻害剤及び抗再狭窄剤(anti-restenosis agents)を含む群から選択されることが好ましい。好ましくは、上記液体は電解液である。
【0015】
上記イオンを存在させるステップは、上記誘電体絶縁層の全体ではなく一部分上で存在させることが好ましい。誘電体絶縁層をイオンでコーティング、すなわち完全に覆う必要はない。
【0016】
一実施の形態において、上記存在させたイオンが、上記埋込型医療器具の表面の少なくとも一部の湿潤性を改善することができる。
【0017】
上記方法は、上記イオンが存在する上記誘電体絶縁層上に電極パターン及び/又は電極形状的特徴を形成するステップをさらに含むことができる。
【0018】
好ましくは、上記静電荷が、電気分解を起こす程のものではない。
【0019】
好ましい一形態では、上記誘電体絶縁層が、上記インプラントの表面に、金属部分と導電性流体との間に介在する部分に設けられる。誘電体絶縁層が、金属酸化物層、例えば酸化チタンを含むことができ、及び/又は1nm〜100μmの範囲の厚みを有することができる。
【0020】
一実施の形態において、誘電体絶縁層が、疎水性コーティング、例えばガラス、セラミック又は非晶質フルオロポリマーコーティングを含む。
【0021】
一実施の形態において、上記インプラントに上記イオンの水溶液を噴霧するか、浸漬する(immersing)か、又は部分的に浸す(dipping)ことによって、上記水溶液を上記誘電体絶縁層に適用し、該水溶液が好ましくは揮発性有機化合物を含有する。さらに上記水溶液が、好ましくは0.1%〜2.0%濃度の生理的に等張(生体内の液体と等浸透圧)の塩溶液であり得る。
【0022】
イオンを、プラズマ蒸着によって上記誘電体絶縁層に存在させることができる。
【0023】
好ましくは、イオンが、生来体液中に含まれるイオンを含む。一実施の形態において、上記イオンが、Naカチオン若しくはKカチオン若しくはMg2+カチオン又はClアニオン若しくはPOアニオンを含む。
【0024】
好ましくは、上記存在させたイオンが、1nm〜100μmの範囲の厚みを有する。
【0025】
例えば高い温度を加えたり、乾燥剤を供給したり、又はインプラントを空気流又は他のガス流中に置くことによって、インプラントを乾燥させるステップを好ましくはさらに含む。
【0026】
代替的な実施の形態において、上記静電荷は、外部交流電源又は外部直流電源、好ましくは10mV〜400Vの範囲の電圧を用いて印加され、及び/又は上記静電荷は、0kHz〜20kHzの範囲の周波数を有する。上記静電荷は、正弦波形、矩形波形、三角波形又はランプ波形を有し得る。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、先行する段落のいずれかの表面処理方法により処理された埋込型医療器具が提供される。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、埋込型医療器具、より好ましくは歯科インプラントであって、表面誘電体絶縁層が上部に据えられる金属層を備え、液体を前記埋込型医療器具の表面に触れさせると、前記表面の少なくとも一部に付随して電場を局所的に作り出す静電荷を形成するイオンを前記誘電体絶縁層の上に有する、埋込型医療器具が提供される。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、埋込型医療器具の湿潤性を改善する方法であって、
埋込型医療器具を上述のいずれかに記載の方法により処理するステップと、
処理された器具を液体と接触させるステップであって、それにより、エレクトロウェッティングが開始するステップと
を含む、埋込型医療器具の湿潤性を改善する方法が提供される。
【0030】
好ましくは、上記医療器具の埋込み中にエレクトロウェッティングが開始する。代替的には、エレクトロウェッティングが開始する前に、上記医療器具が埋め込まれる。好ましくは、上記液体が、体液、例えば血液である。
【0031】
本発明のさらなる特徴は添付の特許請求の範囲に記載する。
【0032】
ここで、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、ほんの一例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法により処理されたインプラントの一部の概略断面図である。
【図2】本発明の方法により処理されたインプラントの表面に作り出された表面電荷を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
エレクトロウェッティング(electrowetting)は、外部から印加された電場を用いて疎水性表面の湿潤特性を改善することができる、デジタルマイクロ流体力学分野において既知の方法である。
【0035】
エレクトロウェッティングプロセスは、静電荷(電荷又は電圧)が印加されると、接触角の変動、液滴形状の変化、流体の動き及び全体的な表面湿潤性の増大をもたらす、基材表面上の好適な電極パターン又は形状的特徴の製作によって、行うことができる。
【0036】
このようなエレクトロウェッティングは、流体の操作、及び制御可能な湿潤性を有する表面の形成を可能にする。エレクトロウェッティングがとても上手くいくと、常に数十度の接触角の変動を達成することができる。
【0037】
歯科インプラントを含む埋込型医療器具の分野において、静電荷の外部印加は、実用的でなく、及び/又は望ましくない。したがって、一態様において、本発明は、外部から印加された静電荷の必要性を排除する、埋込型医療器具用の表面処理方法に関する。
【0038】
図1は、以下に記載されるプロセスによって処理された埋込型医療器具の一部の概略断面を示す。インプラント1は、表面上に絶縁性誘電体層(insulating dielectric layer)3を有する金属インプラント体又は金属合金インプラント体2を備える。インプラント体2は、粗粒子ブラスト及びエッチングされ、又はさもなければテクスチャ加工された(textured)表面を有し得る。誘電体層3は、例えば、チタン医療用インプラントに一般的に存在する酸化チタン等の金属酸化物層であり得る。誘電体層は、表面に固有に存在するもの(例えば、上述の金属酸化物層)である可能性もあり、又はインプラント体2を疎水性表面薄膜コーティングで覆うことを伴うプロセス工程によって作製される可能性もある。可能なコーティングとしては、ガラス、セラミック及び非晶質フルオロポリマーが挙げられるが、他のものを想定することもできる。誘電体層3は、1nm〜100μmの範囲の典型的な厚みを有し得る。
【0039】
上記プロセスにおける次の工程は、インプラントの表面をイオンで処理することを含む。一実施形態では、インプラント1を1%のMgCl・6HOの溶液に浸すか又は浸漬し、超音波撹拌して、確実に気泡が粗面に閉じ込められないようにする。イオンを存在させるのに好適な他の溶液を想定することもできる。例えば、ClイオンをNaClの塩溶液から存在させることができる。
【0040】
イオンは、インプラントに電解質の水溶液を噴霧するか、浸漬するか、又は部分的に又は完全に浸すことによって、インプラント表面に存在させることができる。プラズマ蒸着を代替的に使用してもよい。溶液は、電解質及び水だけであってもよく、又は揮発性有機化合物を添加して透過率を向上させることもできる。電解質の濃度は可変的なものであり得る。一例は、生理的に等張の0.9%の塩溶液である。加えて、有機化合物の量も様々な値をとり得る。
【0041】
その後、湿潤させたインプラントを、例えば炉内において5分〜15分間、50℃〜90℃で乾燥させて、水を追い出し、イオンをインプラントの表面上に残す。インプラントの乾燥は、数ある実現可能な方法、例えば、高温で、循環空気若しくは乾燥剤の存在下、又はガス流若しくは空気流中において行うことができる。乾燥は、イオンを表面のくぼみ(pits)、孔(pores)及び細管特徴に引き付けかつ堆積させるために重要なものである。
【0042】
乾燥させたインプラント1は目下、その表面上にイオン4を有する。イオン4は、従来の認識ではインプラントの表面をコーティングするものでない。すなわち、イオンは、インプラントの表面全体を覆う必要がない。格別ではあるものの限定的なものではない、インプラント表面の粗面化部分のくぼみ、孔及び細管特徴へのイオンの存在は、かかるイオンの局所的な濃度を作り出すと考えられる。存在させるイオンの厚みは、可変的なものであってもよく、1nm〜100μmの範囲であり得る。存在させるイオンは、インプラントのためのあらゆる種類の保護コーティング機能を発揮するのに十分なものではない。
【0043】
処理されたインプラントの表面上のイオンは、液体を表面に触れさせると、誘電体上のエレクトロウェッティング(electrowetting on dielectric)(EWOD)として既知の技法を用いて、表面上に静電荷を形成し、またインプラントの表面の少なくとも一部に付随する電場を局所的に作り出すことができる。
【0044】
電圧を金属表面電極と電解液との間に印加すると、電気分解が開始せずに、固体−液体界面に、金属表面上の電荷と、界面の液体側に存在する、反対に帯電した対イオンの雲とからなる電気二重層が自然と構築される。これによって、湿潤性の望ましい増大がもたらされる。このようなエレクトロウェッティングは、ブリッジング及び細管抵抗を克服する、接触角及び表面張力の減少、表面形状の親水性及び透過率の増大をもたらす。
【0045】
処理されたインプラントにおいて、インプラント体2は電極を含む。EWODを起こすために、処理されたインプラントを、液体、例えば導電性電解液に浸すか、コーティングするか、さもなければ接触させることができる。液体は、処理されたインプラントに存在するイオンと接触すると導電性となる非導電性液体であり得る。誘電体絶縁層3は、EWODに使用される電解液からインプラント体電極を絶縁している。このEWOD配置では、誘電体−電解質界面に電気二重層が構築される。
【0046】
EWODに使用される電解液は、組織液、血液、生理食塩水、又は薬を担持するキャリア液、増殖因子等であり得る。電解液のタイプ又は濃度は、湿潤性に有意な影響を与えない。したがって、溶液は、単一の塩、又は塩の組合せであり得る。典型的に、対応するイオンであるCl、POを伴う、Na又はK等のアルカリ金属カチオンが多くの好適なものの例である。故に、このような塩溶液には、身体の組織液が含まれ得る。
【0047】
このように、電解液と接触すると、処理されたインプラントによって、外部電圧の印加なしに局所的な静電気力が発生するため、表面の親水性が増大し、また液体が表面形状を完全に透過することを可能にし得る。
【0048】
図2は、処理されたインプラントを、血液、組織液又は生理食塩水等の好適な液体と接触させた場合に作り出される電荷を示す(矢印は、インプラントが液体と接触した時点を示す)。液体がインプラント表面に引き込まれるため、電圧は経時的に減少する。
【0049】
インプラント表面に適用されるイオンがNaCl塩からのものであれば、さらなる利点は、該塩が電解液に溶解することであり、体液が全く害を受けなければ、塩はこのような体液又は生理液の構成成分である。
【0050】
EWODプロセスは、in vivoと等しくin vitroでも申し分なく実施することができる。
【0051】
一実施形態において、局所的に作り出された電場は、特異的な生体分子を表面に引き寄せるのに使用され得る。これによって、表面に直に隣接する特別有利な高いレベルの骨形成が可能となり得る。例示的な生体分子の限定的なリストとしては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、RNA、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA、リボザイム、遺伝子、炭水化物、血管新生因子、細胞周期阻害剤及び抗再狭窄剤が挙げられる。
【0052】
代替的な実施形態において、誘電体層及び好適な流体(これは、組織液、又は薬を担持するキャリア液、増殖因子等であってもよい)と共に金属インプラント表面を備える回路に印加される電圧は、エレクトロウェッティングを引き起こし、ブリッジング及び細管抵抗を克服する、接触角の減少、表面形状の親水性及び透過率の増大をもたらす。代替的に又は加えて、プロセスは、上記で挙げたもの等の特異的な生体分子を表面に引き寄せるのに使用することができる。印加電圧は直流電流又は交流電流に由来し、10mV〜400V及び周波数0kHz〜20kHzの範囲で、正弦波形、矩形波形、三角波形、ランプ波形又は任意のものであり得る。
【0053】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通じて、語句「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」及びそれらの変形は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味し、それらは、他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を除外するように意図されるものでない(またこれらを除外するものでもない)。本明細書中の説明及び特許請求の範囲全体を通じて、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数形は複数形を包含する。とりわけ、不定冠詞を使用する場合、本明細書は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数と同様に複数についても考えるものと解されるべきである。
【0054】
本発明の特定の態様、実施形態又は例と併せて記載される、特徴、整数、特性、化合物、化学的部分又は群は、矛盾しない限り、本明細書中に記載される他のあらゆる態様、実施形態又は例にも適用できると解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴の全て、並びに/又はそのように開示される任意の方法及びプロセスの工程の全ては、かかる特徴及び/又は工程の少なくとも幾つかが互いに排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本発明は、上述のいずれかの実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴の、任意の新規な特徴若しくは任意の新規な組合せに、又はそのように開示される任意の方法若しくはプロセスの工程の、任意の新規な工程、若しくは任意の新規な組合せにも及ぶ。
【0055】
読み手の注意は、本出願に関連して、本明細書と同時に又は先立って提出され、かつ本明細書と共に公衆の閲覧に付される、全ての論文及び書類に向けられるものであり、全てのこのような論文及び書類の中身は、参照により本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面誘電体絶縁層を備える埋込型医療器具の表面処理方法であって、液体が前記埋込型医療器具の表面に触れることで、イオンが静電荷を形成して前記表面の少なくとも一部に付随する電場を局所的に作り出すために、前記イオンを前記誘電体絶縁層上に存在させるステップを含む方法。
【請求項2】
前記電場が、例えば電気泳動によって、特異的な生体分子を前記誘電体絶縁層に引き寄せるために使用され、好ましくは該生体分子が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、RNA、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA、リボザイム、遺伝子、炭水化物、血管新生因子、細胞周期阻害剤及び抗再狭窄剤を含む群から選択される請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記液体が電解液である請求項1又は2に記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記イオンを存在させるステップが、前記誘電体絶縁層の全体ではなく一部分上で存在させる請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項5】
前記存在させたイオンが、前記埋込型医療器具の表面の少なくとも一部の湿潤性を改善するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理プロセス。
【請求項6】
前記イオンが存在する前記誘電体絶縁層上に電極パターン及び/又は電極形状的特徴を形成するステップをさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項7】
前記静電荷が、電気分解を起こす程のものではない請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項8】
前記誘電体絶縁層が、前記インプラントの表面であって、金属部分と導電性流体との間に介在する部分に設けられる請求項1〜7のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項9】
前記誘電体絶縁層が、金属酸化物層、例えば酸化チタンを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項10】
前記誘電体絶縁層が、1nm〜100μmの範囲の厚みを有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項11】
前記誘電体絶縁層が、疎水性コーティング、例えばガラス、セラミック又は非晶質フルオロポリマーコーティングを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項12】
前記インプラントに前記イオンの水溶液を噴霧するか、浸漬するか、又は部分的に浸すことによって、前記水溶液を前記誘電体絶縁層に適用する請求項1〜11のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項13】
前記水溶液が揮発性有機化合物を含有する請求項12に記載の表面処理方法。
【請求項14】
前記水溶液が、好ましくは0.1%〜2.0%濃度の生理的に等張の塩溶液である請求項12又は13に記載の表面処理方法。
【請求項15】
前記イオンをプラズマ蒸着によって前記誘電体絶縁層に存在させる請求項1〜11のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項16】
前記イオンが、体液中に含まれるイオンを含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項17】
前記イオンが、Naカチオン、Kカチオン又はMg2+カチオンを含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項18】
前記イオンが、Clアニオン又はPOアニオンを含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項19】
前記存在させたイオンが、1nm〜100μmの範囲の厚みを有する請求項1〜18のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項20】
例えば高い温度を加えたり、乾燥剤を供給したり、又は前記インプラントを空気流又は他のガス流中に置くことによって、前記インプラントを乾燥させるステップをさらに含む請求項1〜19のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項21】
外部電源を用いて前記静電荷を印加する、請求項2に、又は請求項2に従属する請求項3〜20のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項22】
前記静電荷が、10mV〜400Vの範囲の電圧である請求項21に記載の表面処理方法。
【請求項23】
前記静電荷が直流電流から発生する請求項21又は22に記載の表面処理方法。
【請求項24】
前記静電荷が、0kHz〜20kHzの範囲の周波数を有する請求項21又は22に記載の表面処理方法。
【請求項25】
前記静電荷が、正弦波形、矩形波形、三角波形又はランプ波形を有する請求項21〜23のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項26】
添付の図面を参照しかつこれで示したように実質的に本明細書中に記載される、埋込型医療器具の表面処理方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の表面処理方法により処理された埋込型医療器具。
【請求項28】
埋込型医療器具であって、表面誘電体絶縁層が上部に据えられる金属層を備え、液体を前記埋込型医療器具の表面に触れさせると、前記表面の少なくとも一部に付随して電場を局所的に作り出す静電荷を形成するイオンを前記誘電体絶縁層の上に有する、埋込型医療器具。
【請求項29】
歯科インプラントである請求項28に記載の器具。
【請求項30】
埋込型医療器具の湿潤性を改善する方法であって、
前記埋込型医療器具を請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法により処理するステップと、
前記処理された器具を液体と接触させるステップであって、それにより、エレクトロウェッティングが開始するステップと
を含む、埋込型医療器具の湿潤性を改善する方法。
【請求項31】
前記医療器具の埋込み中にエレクトロウェッティングが開始する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
エレクトロウェッティングが開始する前に、前記医療器具が埋め込まれる請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記液体が、体液、例えば血液である請求項31又は32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−517877(P2012−517877A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550650(P2011−550650)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050285
【国際公開番号】WO2010/094968
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(503366472)ネオス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】