培地へのペプチドの直接発現
【課題】本発明は、有効な発現ベクターによって高い収量でペプチドを生産すること、及び高収率培養技術及び細胞膜の無欠性を過度に損なうことなしに、培地から排出された重要なペプチドの高収率回収を与える他の改善を提供することを求める。
【解決手段】2つの転写カセットを縦列で含む発現ベクターであって、それぞれのカセットは、(a)OmpA、pelB、OmpC、OmpF、OmpT、β−la、PhoA、PhoS、及びStaphAから選択されるシグナルペプチドをコードしている核酸の読み枠3’に結合したペプチド生産物をコードしている核酸を持ったコード化領域;及び(b)tacプロモーターがlacプロモーターの上流に存在する2つのプロモーターを縦列で有し、且つ少なくとも1のリボソーム結合サイトを含む、該コード化領域と操作可能に結合した制御領域;を含み、前記発現ベクターは、SecE、SecY、及びprlA−4から選択される少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードする核酸を更に含む、発現ベクター。
【解決手段】2つの転写カセットを縦列で含む発現ベクターであって、それぞれのカセットは、(a)OmpA、pelB、OmpC、OmpF、OmpT、β−la、PhoA、PhoS、及びStaphAから選択されるシグナルペプチドをコードしている核酸の読み枠3’に結合したペプチド生産物をコードしている核酸を持ったコード化領域;及び(b)tacプロモーターがlacプロモーターの上流に存在する2つのプロモーターを縦列で有し、且つ少なくとも1のリボソーム結合サイトを含む、該コード化領域と操作可能に結合した制御領域;を含み、前記発現ベクターは、SecE、SecY、及びprlA−4から選択される少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードする核酸を更に含む、発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド生産物を発現する宿主細胞を一般的に処理する培地中にペプチド生産物を直接発現することに関する。とりわけ、本発明は、高い収量で宿主外方から該培地に外分泌されるペプチド生産物を生産するための、発現ベクター、宿主細胞及び/又は発酵方法に関する。幾つかの実施態様において、本発明は、C末端グリシン、それは後で上記グリシンが置換したアミノ基を有するアミド化ペプチドに変換される、を有するペプチド生産物の直接発現に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の技術が、ペプチド生産物、即ち分子構造がペプチド結合によって結合した複数のアミノ酸を含む何れかの化合物の組換えによる生産のために存在する。
【0003】
その外来のペプチド生産物が小さい場合の問題は、そのペプチドを発現するために使用した宿主細胞の細胞質又はペリプラズム中の内因性プロテアーゼによってそれがしばしば容易に分解されることである。他の問題は、十分な収量を達成すること、及びそれの三次元構造を変えること無しに、相対的に純粋な形においてそのペプチドを回収することを含む(その基本的な機能を実行するためのそれの能力を不適当に減じ得る)。小さいサイズの問題を克服するために、従来技術では、別の(通例はより大きな)ペプチドとの融合タンパク質として重要なペプチド生産物を度々発現し且つ細胞質内にこの融合タンパク質を蓄積している。他のペプチドは、幾つかの機能、例えば宿主の細胞質中に存在するプロテアーゼにさらすことから重要なペプチドを保護するために奉仕し得る。そのような発現系の一つは、Rayら,Bio/Technology,Vol.11,64-70頁,(1993)中に記載される。
【0004】
しかしながら、そのような技術を用いるペプチド生産物の分離は、融合タンパク質の切断と宿主の細胞質中に通常的に存在する全てのペプチドからの精製を要する。これは、そのプロセスの効率を全般的に減じ得る幾つかの工程を必要とするだろう。例えば、従来技術の融合タンパク質が細胞質中で蓄積される場合、その細胞は通例、収穫し且つ溶解し、且つその細胞の残骸は精製化工程で除去する必要がある。この全てが、重要なペプチド生産物が培地内に直接発現され且つ回収される、本発明に従って回避される。
【0005】
従来技術において、それの融合パートナーから重要なペプチドを分離するために更に切断を受ける必要がある、融合タンパク質を精製するためのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用することがしばしば必要である。例えば、上記と同じく、Bio/Technology文献において、サケカルシトニン前駆体は臭化シアンを用いてその融合パートナーから切断される。その切断工程は、サケカルシトニン前駆体の位置1から7でシステインのスルフィドリル基を保護するために更なる補足の工程を必要とする。スルホン化が、システイン用の保護基を提供するために使用された。当該のそれは、その前駆体の連続して起こる再生(及び勿論、保護基の除去)を要求するサケカルシトニン前駆体の三次元構造を変更した。
【0006】
本発明のペプチド生産物は、シグナル配列によってのみ発現され、且つ大きな融合パートナーによって発現されない。本発明は、「直接発現」の結果である。
【0007】
それは、そのN末端側に接合したシグナル領域により最初に発現される。しかしながら、そのシグナル領域は、細胞のペリプラズムへのペプチド生産物の分泌の間を通して翻訳後に切断される。その後、該ペプチド生産物は放散され、またはさもなければ細胞外方の培地にペリプラズムから排出され、それは適切な三次構造において回収され得る。それは、たとえ本発明の幾つかの実施態様において、スルホン化が該ペプチド生産物の精製の間を通してシステインのスルフィドリル基を保護するために使用されるとしても、それは細胞溶解化での分解又は修飾化の除去が最初に要求される何れかの融合パートナーに結合しない。
【0008】
細胞内にペプチド生産物を蓄積する従来技術が持つ他の問題は、その生産物の蓄積が、その細胞に対する毒となり得ること、それ故に合成することができる融合タンパク質の量が制限されることである。このアプローチが伴う別の問題は、より大きな融合パートナーがその収量の大部分を通例は構成することである。例えば、生産物収量の90%がより大きな融合パートナーとなり、かくして重要なペプチドについての収量はほんの10%の結果となる。このアプローチが伴う更に別の問題は、その融合タンパク質が細胞内に不溶性含有体を形成し得ること、及び切断後の該含有体の可溶化は生物学的活性ペプチドを生じ得ないことである。
【0009】
従来技術は、ペリプラズムの中に分泌されるべき望まれるペプチド生産物を導くためにそのN末端に付着したシグナルペプチドと一緒に発現することを試みた(EP 177,343,Genentech社を参照)。幾つかのシグナルペプチドが同定されている(Watson,M.Nucleic Acids Research,Vol 12,No.13,pp:5145-5164)。例えば、Hsiung等(Biotechnology,Vol 4,November 1986,pp:991-995)は、ペリプラズム中にある種のペプチドを導くための大腸菌の外層膜プロテインA(OmpA)のシグナルペプチドを用いた。大抵は、ペリプラズムに分泌されるペプチドは、培地への最小限の分泌を止める傾向がしばしばある。外層膜を崩壊する又は透過化するための望ましくない更なる工程は、ペリプラズムの構成成分の十分な量を放出することが望まれ得る。幾つかの従来技術は、透過性の又は漏れやすい外層膜を生じるペプチドタンパク質を溶解することに加えてシグナルペプチドを含んでいる望まれるペプチド生産物を同時に発現する宿主を有していることにより外層膜バリアの無欠性を傷つけることを包含している細胞の外方の培地にペリプラズムからペプチドを排出することを試みた(米国特許第4,595,658号)。しかしながら、それは細胞の無欠性を損なうこと及び細胞を殺すことを無くするため溶解性ペプチドタンパク質生産の量を慎重にする必要がある。重要なペプチドの精製もまた、この技術によってより困難となり得る。
【0010】
上述した外層膜不安定化技術から離れて、グラム陰性細菌の外層膜の透過性増加のためのより劣ったストリンジェント手段がある。これらの方法は、より低い細胞生活力に至り得る外層膜の破壊を必然的に生じるものではない。これらの方法は、しかし、カチオン性剤(Martti Vaara.,Microbiological Reviews,Vol.56,395-411頁(1992))及びグリシン(Kaderbhai等,Biotech.Appl.Biochem,Vol.25,53-61頁(1997))の使用を制限してはいない。カチオン性剤は、外層膜のリポポリサッカリドバックボーンと相互作用すること及びダメージを与えることによって外層膜の透過性を増加する。ダメージと破壊の量は、使用した濃度に基づいて非致命的又は致命的となり得る。グリシンは、ペプチドグリカンのペプチド構成成分中のアラニン残基を置換し得る。ペプチドグリカンは、グラム陰性細菌の外層細胞壁の構成成分の一つである。グリシンの高濃度での大腸菌の増殖は、不完全な細胞壁の結果を生じるグリシン-アラニン置換の頻度を増加せしめ、かくして透過性を増す。
【0011】
望まれるペプチド生産物の排出を生じる別な従来技術の方法は、培地中に通常的に排出される(hemolysin)又は外層膜状で発現した完全なタンパク質(例えば、ompfタンパク質)である担体タンパク質に該生産物を融合することを含む。例えば、ヒトβ-エンドルフィンは、ompFタンパク質のフラグメントに結合した場合、大腸菌細胞によって融合タンパク質として排出され得る(EMBO J.,Vol 4,No.13A,pp:3589-3592,1987)。望まれるペプチド生産物の分離は困難であるが、しかしながら、それが担体ペプチドから分離され、且つその欠点の幾つか(全てではないが)を含んでいるために、細胞質中に融合ペプチドの発現と結び付けられる。
【0012】
更に別な従来技術のアプローチは、何れかのペリプラズムのペプチド又はタンパク質を保有することが相対的にできない透過性の外層膜を有する新規の株を創作するための宿主細胞の遺伝学的変更である。しかしながら、これらの新規の株は、維持することが困難で且つ望まれるペプチド生産物の収量に不利な影響を及ぼすストリンジェントな条件を要し得る。
【0013】
Raymond Wong等(米国特許第5,223,407号)は、ompAシグナルペプチドをコードしているDNAを持つ読枠に結合した異種タンパク質をコードしているDNAとtacプロモーターを含む制御領域を含む組換えDNA構築物を作製することによるペプチド生産物の排出のための更に別なアプローチを考案した。このシステムは、本発明を用いて達成可能である収量よりも優位に劣る収量を報告する。
【0014】
たとえ従来技術が、ペリプラズムから培地まで輸送されるべきタンパク質を与え得るとしても、これは、望ましい高い密度にまで容易に増殖できない不健全な細胞を生じる結果となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,595,658号
【特許文献2】米国特許第5,223,407号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Rayら,Bio/Technology,Vol.11,64-70頁,(1993)
【非特許文献2】Watson,M.Nucleic Acids Research,Vol 12,No.13,pp:5145-5164)
【非特許文献3】Hsiung等、Biotechnology,Vol 4,November 1986,pp:991-995
【非特許文献4】Martti Vaara.,Microbiological Reviews,Vol.56,395-411頁(1992))
【非特許文献5】Kaderbhai等,Biotech.Appl.Biochem,Vol.25,53-61頁(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、有効な発現ベクターによって高い収量でペプチドを生産すること、及び高収率培養技術及び細胞膜の無欠性を過度に損なうことなしに、培地から排出された重要なペプチドの高収率回収を与える他の改善を提供することを求める。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、ペプチド生産宿主細胞を培養している培地中に良好な収量でペプチド生産物蓄積を有することが本発明の目的である。これは、その培地が多くの細胞のペプチド夾雑物を相対的に含んでいないことから有効である。
【0019】
遺伝的に処理した宿主細胞によって発現したペプチド生産物の収量を増加するための改善された発酵方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0020】
本発明の新規発現ベクターを発現するために特に有用である遺伝的に操作した宿主細胞を提供することが本発明の別の目的である。
【0021】
サケカルシトニンの発現のために利用した発現ベクターに関わりなく、サケカルシトニン前駆体の生産のために特に適した宿主細胞を提供することが本発明の別の目的である。
【0022】
C末端グリシンを有する前駆体ペプチド、前駆体は本発明に従い培地中での直接発現に続いてアミド化される、を利用するアミド化ペプチドの生産のための改善された方法を提供することが本発明の更に別の目的である。
【0023】
一つの実施態様において、本発明は、(a)シグナルペプチドをコードしている核酸の読枠3’に結合したペプチド生産物をコードしている核酸を持つたコード化領域;及び(b)該コード化領域と操作可能に結合した制御領域、上記制御領域は、複数のプロモーターと少なくとも1のリボソーム結合サイトを含み、少なくとも1の上記プロモーターはtacである、を含む発現ベクターを提供する。該ベクターによって形質転換され(transformed)又は形質移入された(transfected)宿主細胞は、その宿主細胞を培養することによってペプチド生産物の直接発現の方法として提供される。
【0024】
別な実施態様において、本発明は、サケカルシトニン前駆体、又はカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体を発現するための遺伝子を含む発現ベクターによって形質転換した宿主細胞を、上記宿主細胞は大腸菌BLR株とされる;及び培地中で上記前駆体を得るために同じく培養する方法を提供する。
【0025】
別な実施態様において、本発明は、ここで報告した何れかのベクター、宿主、又は発酵方法を用いてC末端グリシンを有する前駆体を生産すること;及びその後に、ペプチドアミドを精製するため上記グリシンをアミノ基に変換することによってアミド化ペプチド生産物を製造する方法を提供する。
【0026】
別な実施態様において、本発明は、(a)上記培地中で、時間当たり0.05と0.20倍化の範囲内にとどめるように上記宿主細胞の増殖が制御される条件下でシグナルペプチドと一緒に上記ペプチド生産物を発現する、遺伝的に操作した宿主細胞を上記培地中で培養すること;ここでインデューサーを上記制御した培養の期間のいずれかの間存在させる;及び(b)シグナルペプチドの細胞内切断後に培地から上記ペプチド生産物を回収すること、の工程を含む培地へのペプチド生産物の直接発現のための方法を提供する。
【0027】
別の実施態様において、外層膜の透過性を増加する及びペプチド生産物の排出を増すために、直接発現発酵の過程を通してグリシンが加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A−1】図1Aは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図1A−2】図1Aは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図1B−1】図1Bは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図1B−2】図1Bは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図2A】図2Aは、pSCT-019ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-025の構築において使用した該LAC-OMPASCTGLYカセットは、pSCT-019の部分のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって作製した。
【図2B】図2Bは、pSCT-019ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-025の構築において使用した該LAC-OMPASCTGLYカセットは、pSCT-019の部分のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって作製した。
【図3A】図3Aは、ベクターpSCT-029A、pSCT-025A、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用した、pSCT-025ベクターの構築の概略図を示す。
【図3B】図3Bは、ベクターpSCT-029A、pSCT-025A、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用した、pSCT-025ベクターの構築の概略図を示す。
【図4A】図4Aは、ベクターpSCT-038とpSCT-034の構築において使用したpSCT-029Aベクターの構築の概略図を示す。加えて、pSCT-029Aは、大腸菌BLRを形質転換するために及び新規ジジェニック(digenic)UGL 165クローンを生産するために使用した。
【図4B】図4Bは、ベクターpSCT-038とpSCT-034の構築において使用したpSCT-029Aベクターの構築の概略図を示す。加えて、pSCT-029Aは、大腸菌BLRを形質転換するために及び新規ジジェニック(digenic)UGL 165クローンを生産するために使用した。
【図5A】図5Aは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpSEC-Eベクターの構築の概略図を示す。
【図5B】図5Bは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpSEC-Eベクターの構築の概略図を示す。
【図6A】図6Aは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpPRLA4ベクターの構築の概略図を示す。
【図6B】図6Bは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpPRLA4ベクターの構築の概略図を示す。
【図7A】図7Aは、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用したpSEC-EYベクターの構築の概略図を示す。
【図7B】図7Bは、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用したpSEC-EYベクターの構築の概略図を示す。
【図8A】図8Aは、pSCT-037及びpSCT-038ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-037は、大腸菌BLRを形質転換するため及びモノジェニックUGL 702クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、大腸菌BLRを形質転換するため及びジジェニックUGL 703クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、新規ジジェニック発現ベクターを作製する、OmpA-sCTglyオペロン(サケカルシトニン前駆体と一緒にOmpAシグナルをコードしている)の2つのコピーを含む。それはまた、膜内からペリプラズムの空間を横切るトランスロケーションを増す2つのsec機構タンパク質をコードしている遺伝子のコピーを含む。以下は図8のこの記載しているベクターにおいて用いた略語のリストである。 TAC−トリプトファンEとlacオペレーター配列のハイブリッドプ ロモーター; LACP/O−βガラクトシダーゼ遺伝子のlacプロモーターとla cオペレーターを含んでいる領域; LAC-IQ−lacプロモーターとtacプロモーターのオペレータ ー配列に結合するlacリプレッサーをコードしている遺伝子。IPT Gはlacリプレッサーと競合し且つtacプロモーターとlacプロ モーターの両方のオペレーター領域へのlacリプレッサーの結合を抑 制し、かくして上記プロモーターを誘導する。 TRPP/O−トリプトファンE遺伝子のプロモーターオペレーター領 域; OMPA-SCTGLY−外層膜タンパク質Aの分泌シグナル配列とグ リシン延長化サケカルシトニンのコード化配列を含む遺伝子融合(その サケカルシトニン前駆体); SEC-E("PrlG"としても知られる)−大腸菌の分泌因子Eをコードし ている遺伝子。それはタンパク質を含むシグナル配列が細胞質からペリ プラズムまで転移されることによってsec通路の内方膜トランスロケ ーションドメインを形成するためにprlA[secYとしても知られる]又 はprlA-4と結合する。 PRLA-4−prlA遺伝子の変異体対立遺伝子; RRNB T1-T2−大腸菌リボソームのタンパク質遺伝子からの縦列転写 ターミネーター1と2;及び KAN-R−カナマイシン耐性遺伝子。
【図8B】図8Bは、pSCT-037及びpSCT-038ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-037は、大腸菌BLRを形質転換するため及びモノジェニックUGL 702クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、大腸菌BLRを形質転換するため及びジジェニックUGL 703クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、新規ジジェニック発現ベクターを作製する、OmpA-sCTglyオペロン(サケカルシトニン前駆体と一緒にOmpAシグナルをコードしている)の2つのコピーを含む。それはまた、膜内からペリプラズムの空間を横切るトランスロケーションを増す2つのsec機構タンパク質をコードしている遺伝子のコピーを含む。以下は図8のこの記載しているベクターにおいて用いた略語のリストである。 TAC−トリプトファンEとlacオペレーター配列のハイブリッドプ ロモーター; LACP/O−βガラクトシダーゼ遺伝子のlacプロモーターとla cオペレーターを含んでいる領域; LAC-IQ−lacプロモーターとtacプロモーターのオペレータ ー配列に結合するlacリプレッサーをコードしている遺伝子。IPT Gはlacリプレッサーと競合し且つtacプロモーターとlacプロ モーターの両方のオペレーター領域へのlacリプレッサーの結合を抑 制し、かくして上記プロモーターを誘導する。 TRPP/O−トリプトファンE遺伝子のプロモーターオペレーター領 域; OMPA-SCTGLY−外層膜タンパク質Aの分泌シグナル配列とグ リシン延長化サケカルシトニンのコード化配列を含む遺伝子融合(その サケカルシトニン前駆体); SEC-E("PrlG"としても知られる)−大腸菌の分泌因子Eをコードし ている遺伝子。それはタンパク質を含むシグナル配列が細胞質からペリ プラズムまで転移されることによってsec通路の内方膜トランスロケ ーションドメインを形成するためにprlA[secYとしても知られる]又 はprlA-4と結合する。 PRLA-4−prlA遺伝子の変異体対立遺伝子; RRNB T1-T2−大腸菌リボソームのタンパク質遺伝子からの縦列転写 ターミネーター1と2;及び KAN-R−カナマイシン耐性遺伝子。
【図9】図9は、大腸菌BLRを形質転換するため及びトリジェニックUGL 168クローンを生産するために使用したpSCT-034ベクターの概略図を示す。
【図10】図10は、インデューサーの存在中で典型的な1リットル発酵後の経時的な細胞増殖とUGL 165クローンのsCTgly生産(大腸菌BLR中にプラスミドpSCT029A)を示す。細胞増殖は、600nmの波長での光吸収によって測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。時間ゼロは、本発明の宿主細胞が培養されている培地中にインデューサーを最初に添加した時点を示す。図10は、インデューサーが本発明の宿主細胞が培養されている培地中に最初に加えられた後、20と25.5時間の間にUGL 165によるsCTgly生産の大部分が生じることを示す。
【図11】図11は、インデューサーの存在中で典型的な1リットル発酵後の経時的な細胞増殖とUGL 703クローンのsCTgly生産(大腸菌BLR中にプラスミドpSCT038)を示す。細胞増殖は、600nmの波長での光吸収によって測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。時間ゼロは、本発明の宿主細胞が培養されている培地中にインデューサーを最初に添加した時点を示す。図11は、インデューサーが本発明の宿主細胞が培養されている培地中に最初に加えられた後、20と26時間の間にUGL703によるsCTgly生産の大部分が生じることを示す。
【図12】図12は、600nmの波長での吸光度によって測定したインデューサーの存在中でのインキュベーション後の経時的な典型的1リットル発酵におけるUGL 172クローン(大腸菌BLR中プラスミドpSCT 025)、UGL 165クローン及びUGL 168クローン(大腸菌BLR中プラスミドpSCT 034)の細胞増殖の比較を示す。図12は、UGL 165とUGL 172の細胞増殖速度において有意の差が無いことを示す一方、UGL 168は、この個々の実験での細胞増殖速度において僅かな減少を示す。
【図13】図13は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告したインデューサーの存在中でのインキュベーション後の典型的な1リトル発酵における経時的なUGL 172クローン、UGL 165クローン及びUGL 168クローンによるsCTgly生産の比較を示す。図13は、ジジェニックUGL 165クローンが、sCTglyの生産のために最も好適であり、トリジェニッククローンはモノジェニックUGL 173クローンを越えて2番目に良好であったことを示す。
【図14】図14Aと14Bは、UGL 165クローン及び空気の供給での酸素補給の有無のいずれか一方によって、インデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の経時的なsCTgly生産(14A)と細胞増殖(14B)の比較を示す。細胞増殖は、インキュベーション培地のリットル当たりの細胞湿重量のgとして測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図14Aと14Bは、発酵培地中に加えた酸素がUGL 165の細胞増殖に決定的なものではないが、しかしsCTglyの生産を増加することにおいて非常に重要であることを示す。
【図15】図15Aと15Bは、大腸菌WA837及びBLR株、それぞれの株はpSCT-029Aベクター(それぞれUGL164とUGL 165)を発現している、によって、インデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の経時的な細胞増殖(15A)とsCTgly生産(15B)の比較を示す。細胞増殖は600nmの波長での光吸収により測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図15Aと15Bは、大腸菌BLR株が、大腸菌WA837株よりもsCTgly生産のためにより好適であることを示す。
【図16】図16は、大腸菌株WA837、BLR、BL21及びB834、それぞれの株はpSCT-029ベクター(それぞれ、UGL164、UGL 165、UGL167及びUGL 166)を発現している、によってインデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の経時的なsCTgly生産の比較を示す。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図16は、大腸菌BLR株が、大腸菌WA837、BL21及びB834株のそれぞれよりもsCTgly生産のためにより好適であることを示す。
【図17】図17は、UGL 165(BLR中pSCT-029A)、UGL 168(BLR中pSCT-034)、UGL 172(BLR中pSCT-025)、UGL 702(BLR中pSCT-037)及びUGL 703(BLR中pSCT-038)クローンによってインデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の異なる実験から観測した最良のsCTgly生産の比較を示す。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図17は、ジジェニックUGL 703とUGL 165クローンが、モノジェニックUGL 172とUGL 702クローン及びトリジェニックUGL 168クローンよりも、sCTgly生産のためにより好適であることを示した。図17はまた、分泌因子を発現するジジェニックUGL 703クローンが、分泌因子を発現しないジジェニックUGL 165クローンよりもsCTgly生産のためにより好適であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、培地のリットル当たり100mgを超えるペプチド生産物収量を与える。それは新規の発現ベクター、新規め宿主(本発明に従い形質転換され、形質移入され又は使用されるような)、新規発酵方法、又は上記の2又はそれ以上の組合せによりなされる。
【0030】
好ましい発現ベクターの概観 一つの実施態様において、本発明はコード化領域と制御領域を含む発現ベクターを提供する。そのコード化領域は、シグナルペプチドをコードしている核酸から下流の読み枠に結合した重要なペプチド生産物のための核酸を含む。制御領域は、該コード化領域に操作可能に結合し、且つ複数のプロモーターと少なくとも1のリボソーム結合サイトを含み、ここで少なくとも1のプロモーターはtac及びlacからなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、該ベクターは、縦列で配された複数の転写カセットを含み、それぞれのカセットは本発明の制御領域とコード化領域を有する。そのようなジジェニックベクター又はマルチジェニックベクターは、ジシストロニック又はマルチシストロニック発現ベクターよりも良好な発現を提供するものと確信する。これは、従来技術により示唆されると確信することができないジシストロニック又はマルチシストロニック発現を越える驚くべき改善である。
【0032】
該ベクターは、プレッサーオペレーターが制御領域中のプロモーターの1又はそれ以上と結合したリプレッサーペプチドをコードしている配列、転写ターミネーター領域、選択可能なマーカー領域及び/又は少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードしている領域を任意に更に含むことができる。代替的に、幾つかの実施態様において、リプレッサーペプチドと分泌促進ペプチドをコードしている核酸は、ペプチド生産物を発現しているベクターと同じ宿主細胞中に共発現した離れたベクター上に存在させ得る。
【0033】
構築した発現ベクター、及びそのような発現ベクターを構築するための方法の特有の実施例が、この中に記載される。多くの商業的に利用可能なベクターは、本発明の好ましいベクターのための出発ベクターとして利用され得る。本発明のベクターの好適な領域の幾つかは、本発明のベクターを得るために要求される多数の変更が相対的に控えめとなるように開始ベクター中に既に包含され得る。好ましい出発ベクターは、しかしそれに制限されないが、pSP72とpKK233-2を含む。
【0034】
本発明の新規のベクターは、そのベクターに固有である効果を授けること、及び、たとえ、ここにおいて特に有用であるとして同定した特有の宿主以外の宿主細胞においてそのベクターが利用される場合でも、及び個々に記載した改善された発酵方法が利用されるかどうかに関わらず、それの予期されない効果が提供されるであろうことを確信する。
【0035】
同様に、ある実施態様においては、特有の宿主細胞が、サケカルシトニン前駆体及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体のようなペプチドの発現において特に有用であるとして同定される。ここで同定した特有な宿主細胞を特に利用することによって与えられた効果は、その発現ベクターがここに記載した新規ベクターの一つであるかどうか、又はここに記載した新規の発酵方法が利用されるかどうかに関わりなく存在するものと確信される。換言すれば、これらの宿主細胞が、従来技術の発酵又は従来技術のベクターを利用することでも顕著な予測されない効果を与えるであろうと確信される。
【0036】
新規発酵方法は、該発酵方法によって授けられた固有の効果のために増加した重量を提供すると確信する。これらの効果は、好ましい宿主細胞及び/又はここに記載した新規ベクターが利用されるかどうかに関わりなく供与されるであろうと確信される。
【0037】
前述に関わらず、本発明の一つの好適な実施態様は、本発明の特に同定した及びここに記載した好ましい発酵発明を利用して発現した宿主細胞に形質転換した本発明の改善された発現ベクターを同時に利用する。これら3つの発明の全てが組合せにおいて使用される場合、生産物の収量と回収の顕著な増加が、従来技術に対して達成できると確信される。
【0038】
制御領域 制御領域は、コード化領域に操作可能に結合され、複数のプロモーターと少なくとも1のリボソーム結合サイトとを含み、少なくとも1のプロモーターはlacとtacからなる群から選択される。単一の制御領域中のプロモーターの上記組合せが、コード化領域によって生産されたペプチド生産物の収量を顕著に増加することが、驚くべきことに見出されている(この中により詳細に記載した通り)。2つのそのようなプロモーターが重複機能を大部分は提供し、且つ何れかの付加的な又は相乗的な効果を提供しないであろうことが予期されている。出願人により実施された実験は、驚くべきことに、プロモーターの請求した組合せを用いることにおいて相乗作用を示している。他のプロモーターは当該分野で周知であり、且つ本発明に従うtac又はlacプロモーターとの組合せにおいて使用され得る。そのようなプロモーターは、制限されることなく、lpp,ara B,trpE,gal Kを含む。
【0039】
好ましくは、該制御領域は、厳密に2つのプロモーターを含む。プロモーターの一方がtacである場合、そのtacプロモーターが制御領域中の別なプロモーターの5’にあることが好適である。プロモーターの一方がlacである場合、そのlacプロモーターは制御領域中の別なプロモーターの3’が好適である。一つの実施態様において、制御領域はtacプロモーターとlacプロモーターの両方を、好ましくはlacプロモーターがtacプロモーターの3’とされている、を含む。
【0040】
コード化領域
コード化領域は、シグナルペプチドをコードしている核酸から下流の読み枠に結合した重要なペプチド生産物をコードしている核酸を含み、それによって該コード化領域は、シグナル及びペプチド生産物のN末端からC末端までに、それぞれ含んでいるペプチドをコードする。理論に結び付けるべき意図無しに、そのシグナルは、ペリプラズムへのそれの分泌に酸化することに加え、蛋白分解的な分解からペプチド生産物のいずれかの保護を提供し得ると確信する。
【0041】
多くのペプチドシグナル配列が知られ、且つ本発明に従い使用され得る。これらは、良く特徴付けされた宿主細胞の外層膜タンパク質のシグナル配列、及びペリプラズムへのペプチド生産物の転移が、及びその転移の結果として該宿主によって後転写的に(post-translationally)切断されることが可能な何れかの配列を含む。有用なシグナルペプチドは、制限されること無しに、Omp A,pel B,Omp C,Omp F,Omp T,β-la,Pho A,Pho S及びStaph Aを含む。
【0042】
該ペプチド生産物は、本発明にない、それが従来技術を用いる融合パートナーを通例要求するであろうように十分小さいことが好適である。典型的に、そのペプチド生産物は、10kDaよりも小さい分子量を有する。とりわけ、そのペプチド生産物はC末端グリシンを有し、且つそのC末端グリシンをアミノ基に変換する、その結果アミド化ペプチドを生じる酵素的アミド化反応の前駆体として使用される。そのような変換は、この中により詳細に記載される。多数の生物学的に重要なペプチドホルモン及び神経伝達物質が、このタイプのアミド化ペプチドである。例えば、コード化領域によってコードしたペプチド生産物は、サケカルシトニン前駆体又はカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体、C末端グリシンを有する両者及び成熟サケカルシトニン又は成熟カルシトニン遺伝子関連ペプチドに酵素学的にアミド化され得る両者とされ得る。本発明に従い生産され得る他のアミド化ペプチドは、制限されること無しに、成長ホルモン放出因子、血管作用性腸ポリペプチド及びガラニンを含む。他のアミド化ペプチドは、当該分野で周知である。
【0043】
副甲状腺ホルモンの類似物もまた、本発明に従い生産することができる。例えば、副甲状腺ホルモンの最初の34アミノ酸を有するペプチドは、34アミノ酸類似物のアミド化版として、副甲状腺ホルモンそれ自身のものと類似した機能を提供できる。その後者は、ここに記載した1又はそれ以上の発現系及び方法に従い、副甲状腺ホルモンの最初の34アミノ酸、それに続くグリシン-35を発現することにより生産され得る。ここに記載したような酵素的アミド化は、グリシンをアミノ基に変換することができた。
【0044】
ここに記載した直接発現系の好適な実施態様でC末端グリシンを有するペプチドを生産する限りにおいて、何れかのペプチドが、ここに記載したベクター、宿主及び/又は発酵技術を利用することで良好な収量及び容易な回収を享受するであろう。
【0045】
本発明の好適なベクターの又は本発明のベクターと同じ宿主中で発現されるべき他のベクターの他の任意の態様リプレッサー 任意の、本発明の好適なベクターは、少なくとも1のプロモーターにより制御した発現を抑制することができるリプレッサーペプチドをコードしている核酸を含み得る。代替的に、しかしながら、リプレッサーペプチドをコードしている核酸は、本発明のベクターと宿主細胞中の分離ベクター上に存在され得る。適当なリプレッサーは、多数のオペレーターとして当該技術において周知である。好ましくは、そのリプレッサーをコードしている核酸は、少なくとも1つのプロモーターが本発明の好適なベクターに常時存在する、tacとlacプロモーターの両方に含まれるlacオペレーターを抑制するために、本発明の好適な実施態様におけるlacリプレッサーをコードする。
【0046】
選択可能なマーカー 非常に多数の選択可能マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性をコードしている遺伝子)のいずれかが本発明のベクター中に存在することが好ましい。これは、本発明の新規ベクターによって効果的に形質転換され又は形質移入される宿主細胞の適切な特異的選択を与えるであろう。
【0047】
分泌促進ペプチド
少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードしている核酸は、本発明のベクター中に任意に存在する。代替的に、該分泌促進ペプチドをコードしているペプチドは、ペプチド生産物をコードしているベクターとして同じ宿主細胞中で発現した分離ベクター上に存在し得る。好ましくは、分泌促進ペプチドは、SecY(prlA)又はprlA-4からなる群から選択される。SecYとprlAは同一であり、その2つの用語は当該分野において別称として使用されていることが指摘される。prlA-4は、prlAの周知の変形であり且つ同様の機能を有する。別の好適な分泌促進ペプチドは、"prlG"としても知られるSecEである。最も好ましくは、複数の分泌促進ペプチドは、SecEと、SecY(prlA)及びprlA-4からなる群から選択されるその他の少なくとも1つとがコードされる。その2つは、細胞質からペリプラズムまでのペプチド生産物のトランスロケーションを助力するように相互作用すると確信される。
【0048】
理論による結び付けを意図しないで、これらの分泌促進ペプチドは、それの分泌促進機能に加えて細胞質プロテアーゼからペプチド生産物を保護することに助力し得る。
【0049】
宿主細胞
本発明はまた、本発明の何れかのベクターによって形質転換され又は形質移入された宿主細胞をも提供する。好ましくは、宿主細胞は細菌の細胞である。より好ましくは、該宿主細胞はグラム陰性細菌である。更により好ましくは、該宿主細胞は大腸菌(E.coli)である。より好ましくは、その大腸菌は、BLR,BL21又はWA837株である。また最も好ましくは、該宿主細胞は、少なくとも1の分泌促進ペプチドを発現する。
【0050】
本発明は、サケカルシトニン前駆体またはカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体を含む発現ベクターによって形質転換した宿主、該宿主は大腸菌BLR株とされる、を更に提供する。これら2つのペプチドのBLR発現は、従来技術のベクターがその発現のために使用されても特に有効となるであろう。換言すれば、ここに報告した新規の発現ベクターは、BLR宿主中のこれら2つのペプチドの良好な発現のために要求されると確信されない。
【0051】
異種ペプチドの生産方法
新規の発酵条件が、高い収率で培地中にペプチド生産物の放散又は排出を与える培養条件下に非常に高い細胞密度で宿主細胞を増殖するために提供される。
【0052】
該新規発酵法において有用な宿主細胞は、制限されること無しに、上述した宿主細胞、及び/又は上述した1又はそれ以上の新規発現ベクターによって形質転換した又は形質移入した宿主細胞を含む。シグナル領域と一緒にペプチド生産物を発現するように遺伝的に操作した他の宿主細胞が使用され得る。その細胞は、空気又は他のガス、炭素源、及び培地への他の成分を供給する適当な手段及びプロモーターの導入のための手段を好ましくは含む発酵槽中に配される。酸素濃度、細胞密度、pHなどをモニターするための適当な手段も好適である。
【0053】
出願人は、培地への直接発現したペプチド生産物の有意に改善された収量が、時間当たり0.05と0.20倍化(doublings)の間の臨界範囲内に平均細胞増殖速度を注意深く制御することによって得られることを見出している。この制御された増殖は、培養の遅滞期のより早期に始めることが好適である。発酵期間を通して(即ち、培養がここに記載した通り制御されている期間を通して)、時間当たり0.10と0.15倍化の間、より好ましくは時間当たり0.13倍化の平均細胞増殖速度に維持することがより好ましい。増殖速度は、この中の「sCTgly(発酵)の生産」と題したセクション中に記載した何れかのパラメーター、特に多数の他のパラメーターに対する供給率"Q"の等式、を調整することによって制御され得る。出願人は、発酵細胞に供給している炭素源の割合を変化することが、該臨界範囲内に該増殖速度を維持するための有効な方法であることを見出している。相対的に定常の増殖速度を維持するために、発酵槽の中に供給する炭素源の量は、細胞の数における上昇に比例して増加する傾向にある。
【0054】
出願人はまた、有意に改善された収量が制御した増殖の上記発酵期間を通してインデューサーを供給することで得ることができることを発見している。炭素源と同様に、適切な量のインデューサーの供給は、細胞の数の増殖に関して供給の割合に比例して増加することを含む。炭素源とインデューサーの両方の供給が細胞増殖に結び付く手法において好んで増加することから、出願人は、供給及びインデューサーと共にミックスすること及び細胞増殖を制御する(炭素源によって)ための適当な割合でその2つの混合物を供給すること、かくして、炭素源の量に対して一定の割合にとどめるインデューサーの継続供給を同時に維持することが有効であることを見出している。しかしながら、それは勿論、炭素源とインデューサーを別々に供給することも可能である。しかしながら、大量で細胞に毒となり得る化学インデューサーが使用されるなら、そのインデューサーと炭素源は、インデューサーの重量比が、該発酵方法の全体を通して加えた炭素源の量に対して該発酵方法(制御した増殖期間)の全体を通して加えたインデューサーの量の比率から、同じ時間投薬量が50%より大きく変化しないで加える炭素源に対して何れか与えられた時間で加えられるような量で、培養の各時間を通して添加される。その50%変数は、比較される2つの比のより低い割合から測定される。例えば、全体の発酵のためのインデューサーに対する炭素源の比率が2から1である場合、いずれか与えられた時間での比率は、3から1より高くなく、1.333から1より低くはないことが好ましい。培養の温度のシフト又は特有な化合物又は栄養源の濃度の変更のような他の手段によって増殖を通しての1又はそれ以上のプロモーターを誘導することもまた可能である。
【0055】
外因的な炭素源の供給が細胞増殖の制御方法として使用される場合、培地中に最初からあるいずれかの炭素源が細胞増殖は最初に外因性の炭素供給なしに、もはや支持することができないその時点まで消耗されるまで(外因的な炭素供給の前)待つことが有効とされる。これは外因的な供給は、最初の(無供給)炭素源からの顕著な妨害なしに細胞増殖を直接制御している。酸素源は、測定されている溶存酸素によって発酵培地中に継続的に好ましくは供給される。酸素レベルにおける上方への急増は、最初の炭素源の消耗をその結果示すことができる細胞増殖の顕著な落下及び外部供給を始める時であることを示す。
【0056】
ペプチド生産物収量が、増加する発酵培地の酸素飽和度と同じく増加することが予期せずに見出されている。これは、たとえ低い酸素飽和レベルが細胞増殖を維持するために十分であるとしても真実である。かくして、全体の発酵方法を通して、酸素又は酸素に富むソースが発酵培地に供給され、且つ少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%酸素飽和度が達成される。ここで用いたような「酸素飽和度」は、その培地が通常は空気によって完全に飽和された場合の発酵培地中の酸素のパーセンテージを意味する。換言すれば、発酵培地は100%の「酸素飽和度」を有する空気によって飽和した。100%より高い顕著な、即ち空気の酸素含量より以上の発酵培地の酸素飽和度を維持することが困難とされる場合、これは可能であり、且つより高い酸素含量がより高い収量を提供することに鑑みて一様に望ましい。これは、空気より高い酸素含量を有するガスによってその培地をスプレーすることによって達成される。
【0057】
顕著な収量の改善が70%より低くない、特に80%より低くない、発酵培地中の酸素飽和度を維持することにより達成され得る。それらのレベルは、相対的に容易に維持される。
【0058】
早い撹拌は酸素飽和を増加するのを促進できる。その発酵培地が一度濃密化を始めると、酸素飽和度を維持することがより困難となり、且つそれは少なくともこの状態で空気よりもより高い酸素含量を持つガスを供給することが推奨される。出願人は、普通の空気が、発酵期間において相対的に後期まで良好な酸素飽和度を十分に維持することができることを見出している。出願人は、発酵期間中の最後部で50%酸素供給又は100%酸素供給を伴う空気供給で増強している。
【0059】
好ましくは、その宿主細胞は、20と32時間(制御した増殖を開始した後)の間、好ましくは22と29時間の間、最も好ましくは約24−27時間の期間、培養される。
【0060】
宿主細胞は、20と35℃の間、より好ましくは28と32℃の間、より好ましくは29.5と30.5℃の間の温度でインキュベーションされる。30℃の温度が、出願人により実施された幾つかの発酵において至適であることが見出されている。
【0061】
好ましくは、培地のpHは、6.0と7.5、より好ましくは6.6と7.0、特に好ましくは6.78−6.83(例えば6.8)とされる。
【0062】
好適な実施態様において、発酵は、tacとlacプロモーターの両方を含む制御領域及びサケカルシトニン前駆体をコードしているヌクレオチドの上流にシグナルペプチドをコードしているヌクレオチドを含むコード化領域を有する発現ベクターによって形質転換した宿主を用いて実行される。そのような発現ベクターは、複数の、特に2つの転写カセットを縦列で好ましくは含む。ここで用いたような、用語「縦列で転写カセット」は、制御又はコード化領域が、少なくとも1の補足の制御領域と、第1のコード化領域と同じペプチド生産物をコードしている少なくとも1の補足のコード化領域に続いていることを意味する。これは、単一の制御領域が、コード化領域中の2つのコピーの発現を制御するジシストロニックな(dicistronic)発現と区別すべきである。その定義は、ペプチド生産物に関係していないコード化領域の変更、例えば、第2の転写カセット中の、第1の転写カセット中にコードされる以外の異なるシグナルペプチドをコードしているヌクレオチドの挿入、を与えるであろう。
【0063】
非常にたくさんの炭素源が当該分野で知られる。グリセリンは有効であることが見出されている。本発明の好適な方法は、IPTG及び/又はラクトースのような化学インデューサーの添加を含む。温度シフト又は栄養物のレベルにおける変更のような他の方法が使用され得る。その制御領域中のオペレータ又はプロモーター(又は該制御領域中に1以上が生じるように使用されている多数のプロモーターの一つ)に適切な他の誘導技術もまた使用され得る。
【0064】
ペプチド生産物の生産は、発酵培地中の細胞の増殖が上述した好ましい増殖速度の範囲内を容認できなくなるとほぼ同時に顕著に落下する。その時点で、発酵は中止され、炭素源とインデューサ一供給および酸素フローが止められる。好ましくは、その培養物はプロテアーゼの活性化を防ぐため、そしてペプチド生産物の分解を減じるために急速に冷却される。それはまた、蛋白分解活性を実質的に減じるレベルにまでpHを修正することも望ましい。サケカルシトニン前駆体が、本発明の好ましいベクターと宿主細胞を用いて生産される場合、蛋白分解活性はpHが低下されるようにして減じられる。この酸性化は、培地の冷却と同時に好ましくは成される。1好ましいpH範囲は、以下により詳細に記載される。発酵生産物を測定するために使用されると同じアッセイは、異なるpHレベルで分解を測定するために使用すること、かくして得られたペプチド及びその不純物のために至適なpHを確立することが可能である。
[1又は細菌細胞の除去後に実行され得る]
【0065】
異質なペプチドの回収
本発明は、培地から宿主細胞を除去すること、及びその後に、ゲル濾過、イオン交換(好ましくはそのペプチドがカルシトニンである場合にはカチオン交換)、逆相、アフィニティー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーからなる群から選択されるクロマトグラフィーの少なくとも1のタイプに該培地をかけることを含むペプチド生産物を回収するための方法を更に提供する。システイン残基を含むペプチドにおいて、S-スルホン化は、ペプチドの集団化を防ぎ且つモノメリックペプチドの収量を増加するために精製工程の前にまたはその間に実行され得る。
【0066】
好ましくは、3つのクロマトグラフィー工程が以下の順序において使用される:イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー及び他のイオン交換クロマトグラフィー。
【0067】
発酵が完成した後、培地のpHは、蛋白分解活性を減じるために任意に変えられる。生産物の生産を測定するために便用したアッセイはまた、生産物の分解を測定するため及び安定化のための最良のpHを決定するために使用可能である。
【0068】
サケカルシトニン前駆体が本発明に従い生産される場合、2.4と4.0の間、特に3.0と3.5の間のpHが好適である。これらのpH範囲はまた、カチオン交換カラム上にサケカルシトニン前駆体を保持を促進するため、かくして個々に記載した好ましい精製技術の間の良好な精製を提供すると確信する。
【0069】
また、任意に、発酵か完了した後の培地の温度は、10℃より下の温度にまで、好ましくは3℃と5℃の間、最も好ましくは4℃に低下される。これはまた、望ましくない蛋白分解活性を減じるものと確信する。
【0070】
本発明は、次の工程:C末端グリシンを有するペプチド生産物を発現する本発明のいずれかの宿主細胞を、培地中で培養すること;上記培地から上記ペプチド生産物を回収すること;ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ、又はペプチジルグリシンα-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼの存在中で酸素と還元剤とを上記ペプチド生産物と接触することにより上記ペプチド生産物をアミド化すること、を含むアミド化ペプチド生産物を生産するための方法を更に提供する。もしペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼを上記において使用しないなら、及びもしその反応混合物がそれまでに塩基性でないなら、そのpHが塩基性となるまで該反応混合物のpHを増加する。アミド化ペプチドはその後に、後述の実施例6中に記載した精製技術を好ましくは利用してその反応混合物から回収され得る。
【0071】
好ましくは、その宿主細胞は、インデューサーの存在において、同時に時間当たり0.05と0.20倍化の間の培養を通しての平均細胞培養速度を維持しつつ培地中で培養される。
【0072】
実験の詳細
pSCT-037とpSCT-038クローン化方法 pSCT-037とpSCT-038の構築は、最終的に望む発現プラスミドを構築するのに必要な中間のベクターを創製するために収束した8つのパートよりなる。このプロジェクト用の記載テキストの外に使用した又は構築した全ての遺伝子とフラグメントを表1中にリスト化した。
【0073】
パートI
pSCT-018Dの構築 TACプロモーターカートリッジ(表1)は、pGEM11ZF+TACを創製するHind III-Bam HIフラグメントとしてpGEM11ZF+(表1)内にサブクローンした。pelB-sCTgly cas2遺伝子(表1)は、発現ベクターpSCT-013Bを創製するためのBam HIサイト内のtacプロモーターの下流に結紮した。そのtac-pelBsCTglyオペロンは、Hind IIIとEco RIを用いてpSCT-013Bから切断した。このフラグメントは、pSCT-015Bを創製するpSP72(表1)内に、Hind III-Pst Iアダプターと一緒に結紮した。
【0074】
そのカナマイシン耐性遺伝子は、pSCT-016Bを創製する、pSCT-015BのPst Iサイト内に結紮した。β-ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)の5’コード化及び制御領域は、pSCT-017Bを創製する再結紮に続いてPvuIIとFsp Iにより該ベクターを切断することにより削除した。pSP72 T1-T2(表1)からのT1-T2転写ターミネーターは、pSCT-018Bを創製するSal IとBgl IIサイトを用いて切断し且つPSCT-017B内に結紮した。Bam HIとEco RIサイトを含むLAC-IQ遺伝子(表1)は、pSCT-018Dを創製するためPSCT-018BのBgl II-Eco RIサイト内に結紮した(図1Aと1B参照)。
【0075】
パートII
pSCT-019の構築 pSCT-013B(tac-pelBsCTglyを含んでいる)からのサイトPst IとHind IIIとHind III-Eco RIフラグメントを持ったlac P/O(表1)は、pSCT-015Aを創製するpSP72のPst IとEco RIサイトの中に、3つの結紮手法で挿入した。pSCT-017Bの構築において記載した通り、Kan-R遺伝子を挿入し且つβ-ラクタマーゼ遺伝子を、pSCT-016AとpSCT-017Aを創製するためにpSCT-015Aから取り外した。lpp-lac-ompAsCTgly(表1)Pst I-Acc Iフラグメント(sCTglyの5’コード化配列の17塩基対もまたある)は、pSP72-OMPAから切断し、pSCT-019を創製するためにpSCT-017A中の両立性サイト内に結紮した(図2を参照)。
【0076】
パートIII
pSCT-025の構築 PCR増幅したオペロンlac-ompAsCTgly(表1)のBam HIフラグメントは、pSCT-023(-)を創製するpelBsCTgly遺伝子を置換している、pSCT-018DのBam HIサイト内に結紮した。その(-)は、挿入物がtacプロモーターとの関係において逆方向に挿入されたことを表す。lac-ompAsCTglyオペロンは、pSCT-023(-)からBam HIとSal Iを用いて切断し、pSCT-017 DELTAを創製するpSCT-017Bの両立サイト内に結紮した。カナマイシン耐性遺伝子、tac-lacプロモーター及びompAsCTglyを含む、より大きなBgl I-Bgl IIフラグメントを、pSCT-017 DELTAから切断し、pSCT-025を創製するためpSCT-018DのBgl I-Bam HIサイト内に結紮した(図3参照)。
【0077】
パートIV
pSCT-029Aの構築 Xho IとEco RIサイトを含むRRNB T1-T2-02(表1)のPCR生産物は、pSCT-025Aを創製するpSCT-025のSal I-Eco RIサイト内に結紮した。tac-lac-ompAsCTgly RRNB T1-T2ターミネーター遺伝子カートリッジを含んでいるpSCT-025から切り出したHind III-Sac Iフラグメントは、pCPM-01を創製するpSP72の両立サイト内に結紮した。pCPM-01Aベクターは、pSCT-025Aについて記載したと同じ方法を用いて構築した。pSCT-025AとpCPM-01Aプラスミドは、RRNB T1-T2転写ターミネーターの上流と下流にある制限サイトのタイプにおいてpSCT-025とpCPM-01プラスミドと異なる。tac-lac-ompAsCTgly RRNB T1-T2ターミネーター遺伝子カートリッジを含んでいるXho I-Eco RIフラグメントは、pCPM-01Aから切断し且つジジェニック発現ベクターpSCT-029Aを創製するためpSCT-025AのSal I-Eco RIのサイト内に結紮した(図4)。pSCT-029Aを創製するために用いた方法は、pSCT034の構築のために以下に示した通り、補足のポリジェニック発現ベクターを創製するために繰り返すことができる。
【0078】
パートV
pSEC-Eの構築 ベクターpCPM-01は、次いでpSP72の両立サイト内に結紮される、lac P/Oを削るためにPst IとXba Iによって消化した。Xba IとBam HIクローン化サイトを含んでいるPCR増幅したsecE遺伝子(表1)は、pCM-SECEを創製するompAsCTgly T1-T2シストロンクローン化ベクター(表1)の両立サイト内に結紮した。secE及びT1-T2ターミネーターは、Xho I-Eco RIフラグメントのようにpCM-SECEから切断し、pSEC-Eを創製するためpSP72のSal I-Eco RIサイト内に、lac P/O(pSP72-lacから切断した)を含むXba I-Sal Iフラグメントと一緒に結紮した(図5参照)。
【0079】
パートVI
pPRLA-4の構築(prlA-4はprlA又はcexY遺伝子の変異体対立遺伝子である) ompAsCTgly T1-T2シストロンベクターのT1-T2ターミネーター領域は、BamHIとSma Iを用いて削り、PRLA4-INT中間体クローン化ベクターを創製するpSP72のPvu IIとBam HIサイト内に結紮された。そのlacP/Oは、Xba IとSac IによりpSP72-LACから切断し、pPRLA-4を創製するためPRLA4-INTのSac I-Bam HIサイト内に、Xba IとBam HI制限サイトを含む、pr1A-4 PCRフラグメント(表1)と一緒に結紮した(図6参照)。
【0080】
パートVII
pSEC-EYの構築 trpE P/O配列を含む合成オリゴヌクレオチド(表1)は、pCPM-08を創製するためpCPM-01AのXho I-Xba Iサイト内にサブクローンした。prlA-4とT1-T2配列は、Xba IとXho IによりpPRLA-4から切断し、pSEC-EYを創製するためpCPM-08のXba IとEco RIサイト内に、lac-secE-T1-T2オペロンを含むpSEC-EからのSal I-Eco RIフラグメントと結紮した(図7参照)。
【0081】
パートVIII
pSCT-037とpSCT-038の構築 secEとprlA-4コード化領域は、Xho IとBgl IIによってpSEC-EYから切断した。その残りのフラグメントは、それぞれpSCT-037とpSCT-038を創製するため、pSCT-025AとpSCT-029AのSal I-Bgl IIサイトに結紮した(図8参照)。
【0082】
pSCT-034の構築
pSCT-034は、Tac-Lac-ompAsCTgly RRNB T1-T2転写カセットの3つのコピーを含むトリジェニック発現プラスミドである。このベクター(図9参照)は、その発現カートリッジの第3のコピーに加えpSCT-029AのSal IとEco RIサイト内にpCM-01Aからの記載したカートリッジを挿入することによって構築した。構築の方法は、pCM-01AとpSCT-025AからのpSCT-029Aの構築のための方法と同じである。その3’Sal IとEco RIサイトは、該カートリッジのより多いコピーを加えるために必要なサイトを提供するよう再創製される。
【0083】
【表1】
★ pelB−Erwinia carotovoraからのペクタートリアーゼB(pectate lyase B)のシグナル配列。
++該pRLA41ベクターは、プリンストン大学でTom Silhavyにより提供された。
【0084】
prlA-4変異対立遺伝子は異種ペプチドとタンパク質のより容易なトランスロケーションを与える特性を有し得る。しかしながら、自然prlA(secY)遺伝子は、同様に機能化されるだろう。
【0085】
pSCT-029A又はpSCT-038による大腸菌の形質転換 pSCT-029A又はpSCT-038プラスミドの構築後、即ち各種のDNAフラグメントの結紮後、それはプラスミドの増殖のため及び将来のタンパク質発現作業のために大腸菌宿主株を形質転換するための最終結紮混合物を使用することが必要である。この形質転換を実行するために、DNAを受容するための能力のある大腸菌細胞を作製する必要がある。その受容可能細胞の調製は、CaCl2処理及び電気穿孔法のような各種の方法によって成すことができる。好ましい細胞系、UGL 165とUGL 703の最終調製のために、我々は以下のプロトコールに連続して従う両方の方法を用いる。
【0086】
I.大腸菌K-12宿主、BB4への第1の形質転換 この第1の形質転換は、必須ではないが、しかし大腸菌BB4 K-12宿主が望ましい各種のクローンと同一の非常に多数の形質転換体及び高い蓋然性の結果を生じる高い形質転換能力を有するために好適である。
【0087】
A. CaCl2処理による受容体BB4細胞の調製 BB4遺伝子型...LE392.32[F'lacIQZΔMI5proAB Tn 10(TetR)]
1.宿主細胞の一晩飽和した培養物を調製する。
2.0.5%(v/v)までの培地の100mlに接種することによる新鮮宿主細胞 培養物の調製及び0.02-0.03のA600nmまでの増殖。
3.0.15-0.3のA600nm、ほぼ3倍化までの該培養物の増殖。
4.10分間該細胞を氷上で保管する。
5.5k rpm x 10分、遠心分離によって培地から細胞を取り除く。
6.氷冷0.1M CaCl2の0.5x容量での細胞の再懸濁と塊状化、30分 間氷上保存、次いで上記の細胞の塊状化。
7.0.1M CaCl2の0.lx容量で塊状化した細胞の再懸濁;使用の前 の1時間氷上で保管する。
【0088】
B.形質転換プロトコール
1.記載の通り調製した受容細胞の100μlにプラスミドベクターDNA の2-10ngを理想的に含むであろう結紮混合物の1-2μlを加える。
2.30分間氷上で該混合物を保存する。
3.37℃で加熱ブロック又は水浴中に配することで該混合物を熱ショ ックする。
4.予備加熱した培地1mlに該混合物を加え、37℃で30-60分間該混合物 をインキュベートする。
5.必要な選択抗生物質を含む適当な固体培地上に形質転換混合物を適 量散布し、且つコロニー出現まで18-24時間その平板をインキュベート する。
【0089】
II.第2形質転換
形質転換体は各種の方法により同定される。幾つかのクローンは第2宿主、大腸菌B宿主BLR株への転移のために選択される。BLRは、選択又は発酵とタンパク質発現の宿主株である。
【0090】
BLRの遺伝子型は、F-omoT hsdSB(rB-・mB-)gal dcmΔ(srl-recA)306::Tn10(TcR)である。大腸菌細胞は、制御した且つ指定した条件下で電場にさらされた後DNAを受け入れるであろう。大腸菌B宿主株は、結紮混合物でなくて完全なプラスミドによってより容易に形質転換され、且つCaCl2処理によるよりも電気穿孔法により受容させる場合に外来DNAをより受け入れる。
【0091】
A.次の電気穿孔法のための受容大腸菌BLR細胞の調製
1.宿主細胞の一晩飽和培養物を調製する。
2.1.0%(v/v)に培地の100mlを接種することによって新鮮な宿主細胞 培養物を調製し、0.3-0.5のA600nmまで培養する。
3.15分間氷上で培養物を冷却した後に遠心分離によって細胞を収穫 する。
4.可能な限り多くの培地を除去するよう上清をデキャンタする。氷冷 10%グリセリン水溶液、w/v(グリセリンは特級品とすべきである)の100 mlsの全量中に該細胞を再懸濁する。再懸濁した細胞を直ちに再遠心分 離する。
5.氷冷10%グリセリン(w/v)の50mls中に細胞を再懸濁する。再遠心分 離。
6.氷冷10%グリセリン(w/v)の25mls中に細胞を再懸濁する。再遠心分 離。
7.工程6を繰り返す。
8.氷冷10%グリセリン(w/v)の2mlsの最終容量中に細胞を再懸濁する 。最終細胞濃度は1-3x1010細胞/mlとなるであろう。細胞は−80℃で1 年まで保存できる。
【0092】
B.電気穿孔法による形質転換
1.滅菌キュベットと白色チャンバースライドを氷上で10分間インキ ュベートする。また数本のポリプロピレン管もインキュベートする。
2.100pg/μlの適当な濃度でTris/EDTA中にプラスミドDNAを含む溶 液の1-2μl溶液と細胞懸濁液の40μlを混合する。(DNA混合物は装置 のアーチング(arcing)を防ぐために可能な限り塩分フリーとする必要が ある。)溶液を良く混合し0.5-1.0分氷上でインキュベートする。
3.25μFでGene-Pulser装置にセットする。200オームでパルス制御器 抵抗をセットする。0.2cmキュベットで2.5Kv又は1.0cmキュベットを用 いる場合、1.5-1.8KvにGene-Pulser装置をセットする。
冷やした電気穿孔キュベットに細胞とDNAの混合物を移し、全ての気 泡を除去するためキュベットの底までの懸濁物を振る。冷やした安全チ ャンバースライド中にキュベットを配置し、キュベットがチャンバーの 基部中の接触部の間に固定されるまで、チャンバーにスライドを押す。
4.上記セッティングでキュベットを一度パルスする。
5.キュベットにSOC(20gトリプトン、5g酵母エキス、0.5gNaCl、 1L H2O及び20mMグルコース)緩衝化培地1mlを直ちに加え、細胞を 再懸濁する。
6.滅菌17x100mmポリプロピレン管に懸濁物を移し、37℃で1時間イ ンキュベートする。
7.選択培地平板上で電気穿孔した混合物を平板培養する。
【0093】
sCTglyの生産(発酵)
発酵バッチ培地は表2中に載せた成分を用いて調製される。発酵は接種培地(表2)中で増殖した対数期後期培養物により接種される。接種容量は、0.015と0.24の間に発酵槽内のイニシャルA600nmが達するまでに要した接種物の量(細胞の数)により決定される。発酵作動のためのpH、DO2、及び温度パラメータは、表3中にリスト化される。発酵の供給バッチ段階は、バッチ培地中のグリセリンが消耗した時に開始した。[グリセリン消耗は溶存酸素の急増及び/又はグリセリン測定により測定され得る。]供給率は、グリセリン消耗の時点で細胞量(細胞乾物重量)に基づく一定の細胞分裂速度を維持するようにセットした。供給率は以下の式に基づいている:
【数1】
式中:
Mu=増殖速度(時間当たり倍化)
dcw=個々の大腸菌株のための経験的に決定した供給開始での培地のリットル当たり乾物細胞重量グラム
t=時間での経時
Yx/s=宿主用のグリセリン利用定数(大腸菌WA837で0.327;BLRで相似)
v=リットルでの培養容量
[feed]=供給培地のリットル当たりのグラムグリセリン(個々に記載し た全ての実施例でリットル当たり629グラムを用いた)。
Q=グリセリン供給率、リットル/時間
【0094】
該誘導方法はセットした増殖速度に適合するよう経時でインデューサー(IPTG)を増加する供給率と結びつけた濃度勾配導入を用いて達成される。
【0095】
発酵の進行は600nmでの吸光度、g/lでの細胞湿重量、加えてmg/lでのsCTglyの存在と濃度のために培地サンプルのCEXクロマトグラフィー分析を測定することによりモニターされる。
【0096】
グリシンは、外層膜透過性を増加するために発酵に加えることができる。グリシンはバッチ培地に又は供給物に加えネことができる。好ましくは、グリシンは、発酵培地中のグリシン濃度が細胞増殖速度に伴って増加するような供給量で加えられる。グリシンの至適濃度は、発酵の最終段階で100ml当たり0.1-1グラムの範囲内とすべきである。実施において、供給物に加えられるグリシンの量は、発酵の終わりでの望まれるグリシン濃度が達成されるように計算される。グリシンの実際の量は、発酵の時間の長さ、誘導後、及び望まれる最終グリシン濃度に基づいている。我々が使用している方法は:グリシンの24g/lを、誘導後26時間で5g/lの最終グリシン濃度の結果になるように発酵供給物に加えた。我々は、供給物へのグリシンの添加が、バッチ培地にグリシンを加えるよりもより有効であることを見出している。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
sCTglyの分離
条件付けた培地は、タンジェンシャルフロー濾過(Tangential Flow Filtration)又は培地から採集するための遠心分離と該細胞の廃棄のいずれかを用いて培地から細胞を分離することで収穫される。排出されたsCTglyは、3.0の最終pHまで2.0N HClを加えることによって培地中で安定化される。グリシン-延長化サケカルシトニンは、pH3.0時点で延長した期間、安定である。細胞除去とpH安定化の後、該ペプチドはカチオン交換及び逆相クロマトグラフィー法を用いて精製される。カチオン交換クロマトグラフィーに続く逆相クロマトグラフィーは、良好な精製を提供でき、最初のカチオン交換工程もまた逆相液体クロマトグラフィーの前に含めることも好適である。大型の精製のために、これは逆相クロマトグラフィーのかける容量を減じ、かくしてアセトニトリルのような有機溶媒の高い容量を用いる必要性に起因する環境及び安全性の心配を減じる。
【0100】
別の好ましい変形例は、モノメリックペプチドの収量を改善するために精製前に又はその間を通してのサケカルシトニンペプチドのシステイン残基のS-スルホン化である。
【0101】
クローンの記載
モノジェニックUGL 172クローンは、C末端グリシンを持ったサケカルシトニン(sCTgly)をコードしている一つの転写カセット(モノジェニック)を含むベクターpSCT-025Aを含む大腸菌BLR宿主株である。2 ジジェニックUGL 165クローンは、C末端グリシンを持ったサケカルシトニン(sCTgly)をそれぞれコードしている縦列で2つのカセットを有する(ジジェニック)ベクターpSCT-029Aを含む大腸菌BLR宿主株である。トリジェニックUGL 168クローンは、C末端グリシンを持ったサケカルシトニン(sCTgly)をそれぞれコードしている縦列で3つのカセットを有する(トリジェニック)ベクターpSCT-034を含む大腸菌BLR株である。モノジェニックUGL 702クローンは、1つのカセットと分泌因子遺伝子を含むベクターpSCT-037を含む大腸菌BLR株である。ジジェニックUGL 703クローンは、縦列に2つのカセットと、分泌因子遺伝子を含むベクターpSCT-038を含む大腸菌BLR株である。
【0102】
2 好ましい転写カセットは、転写ターミネーター配列rmB T1-T2に続くsCTglyの配列に続くOmpAシグナル配列の配列に続くリボソーム結合サイトに続く2重tac/lacプロモーターを含む。
【実施例】
【0103】
実施例1−1LスケールでのUGL 165発酵
UGL 165クローンの発酵は、実験の詳細に記載した通り実行した。表4は、発酵パラメーターと結果を要約した。概略は、UGL 165クローン細胞を、接種用培地中で培養し、0.06のイニシャルA600nmを与えるようにバッチ培地の1リットルを含む発酵槽を播種するために使用した。細胞は、該培地中のグリセリンが消耗されるまで6.25時間培養した。次いで、発酵の供給バッチ段階を開始し、25.5時間、供給培地を連続して補充した。ゼロ時点での条件は(供給と誘導の開始の)、以下の通り:酸素飽和度、94%;温度30℃;及びpH6.8。発酵の終了での条件は(25.5時間)、以下の通り:酸素飽和度40%;温度31℃;及びpH6.8。また、発酵の終了時に、600nmでの吸光度は、113.3に等しく、1リットル当たりのgでの細胞湿重量は168gであった。発酵終了時のsCTgly生産物もまた、222mg/培地のリットルとして測定された(図10と表4参照)。
【0104】
【表4】
** 実施例4に記載した通りCEX-HPLCを用いて測定したsCTgly
***撹拌は1450rpm一晩@2時間供給開始後とした
【0105】
実施例2−1LスケールでのUGL 703発酵
組換え大腸菌UGL 703は、特許手続の目的のために微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定に従い、ATCC 98395としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されている。UGL 703クローンの発酵は、実験の詳細に記載した通り実行した。表5は、この発酵の条件を要約した。概略は、UGL 703クローン細胞を、接種用培地中で培養し、0.06の(好ましくは0.06から0.12)イニシャルA600nmを与えるようにバッチ培地の1リットルを含む発酵槽を播種するために使用した。細胞は、該培地中のグロセリンが消耗されるまで6.25時間(好ましくは6.0から7.0時間)増殖した。次いで、発酵の供給バッチ段階を開始し、26時間、供給培地を連続して補充した。ゼロ時点での条件は(供給と誘導の開始の)、以下の通り:酸素飽和度、95%;温度30℃;及びpH6.8。発酵の終了での条件は(26時間)、以下の通り:酸素飽和度80%;温度31℃;及びpH6.8。また、発酵の終了時に、600nmでの吸光度は、80.9に等しく、1リットル当たりのgでの細胞湿重量は129.1gであった。発酵終了時のsCTgly生産物もまた、284mg/培地のリットルとして測定された(図11と表5参照)。
【0106】
【表5】
**sCTglyは、実施例4中に記載したCEX-HPLCアッセイを用いて測定した。
【0107】
結論
他の実験は、UGL 172、UGL 168及びUGL 702クローンを用い、全体的に類似の条件下で実行した。図12と13は、ジジェニックUGL 165クローンが、sCTglyの生産のために最適であることを、トリジェニックUGL 165クローンがモノジェニックUGL 173クローンを越えて二番目に良好であることと併せて示す。しかしながら、UGL 165によるsCTglyの生産は、共−発現分泌因子(UGL 703)の存在において更に改善され得る(図10と11と17に比較する)。
【0108】
発酵を通しての酸素飽和度に関して、図14Aと14Bは、発酵培地中に加えた酸素は、細胞増殖においては重要でないが、sCTglyの生産を増加することにおいて非常に重要であるとの結論を裏付ける。
【0109】
図15A、15B、及び16は、大腸菌BLR株がsCTglyの生産のために最良であることを示す。
【0110】
sCTglyの生産は、供給成分の添加としてグリシンの添加によって更に一層増加できる。
【0111】
実施例3−UGL 165培地からのsCTglyの精製:カチオン交換クロマトグラフィー#1:
タンジエンシャルフロー濾過又は遠心分離のいずれか一方で収穫されている培地のほぼ1000Lは、pHを3.0に減少するために2N塩酸の十分な量で酸性化した。該培地は、≦7.5mSにまで導電率を減じるよう十分な量の水で連続希釈した。
【0112】
希釈した培地は、25L/分(3.25cm/分)の流速で、10mMクエン酸pH3.0で平衡させているカチオン交換カラム(Pharmacia SP-Sepharose Big Beads,99.0cm x 13.0cm)にロードした。ローディングが完結した後、そのカラムは10mMクエン酸pH3.0によりほぼ40分間8L/分(1.0cm/分)で(3床容量)、又は安定したUVベースラインが達成されるまで洗浄した。その生産物(sCTgly)は、8L/分(1.0cm/分)の流速で10mMクエン酸、350mM塩化ナトリウムpH3.0によって溶出した。そのカラムは洗浄し且つ0.5M水酸化ナトリウムで衛生化した。8L/分(1.0cm/分)で60分(5.0床容量)1.0M塩化ナトリウム。
【0113】
結果として得られたCEX#1溶出液(ほぼ100L)を含む撹拌タンクは、トロメタミンの60.57グラムが加えられる。その溶液は全ての固体が溶解するまで撹拌される。その溶液のpHは2M NaOHを用いて8.25[範囲:8.0から8.5]に調節されるトリス・塩酸(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン塩酸)の23.64グラムが加えられ、全ての固体が溶解するまで撹拌される。トリス・塩酸中に溶解した硫酸ナトリウムの1.0kgの溶液とトリス・塩酸中に溶解したテトラチオン酸ナトリウムの200g溶液か撹拌しつつそのタンクに加えられる。その反応は15分間撹拌することで成される。もし必要であれば、そのpHを2M NaOHによって8.25[範囲:8.0から8.5]に調節される。その反応混合物は、室温で一晩撹拌される。その反応混合物のpHは、2M HClにより2.25[範囲:2.0から2.5]に調節される。
【0114】
逆相クロマトグラフィー#1(RP#1):
得られたS-スルホン化反応混合物(約100L)は、2.0L/分(4.0cm/分)で、0.1%トリフルオロ酢酸によって平衡化されている逆相カラム(Toso Haas Amberchrom CG300md,25.0cm x 18.0cm)に直接ロードした。ローディングが完結した後、そのカラムは0.1%トリフルオロ酢酸により750ml/分(1.5cm/分)で安定したUVベースラインが達成されるまで洗浄した。そのカラムは、0.1%トリフルオロ酢酸、20%アセトニトリルによって750ml/分(1.5cm/分)で、主要な不純物ピークが完全に無くなるまで洗浄した。その生産物(sCTgly)は、0.1%トリフルオロ酢酸、40%アセトニトリルによって750ml/分(1.5cm/分)で溶出した。そのカラムは750ml/分(1.5cm/分)で30分間、0.1%トリフルオロ酢酸、80%アセトニトリルによって洗浄した。
【0115】
カチオン交換クロマトグラフィー#2(CEX#2):
得られたRP#1溶出液(ほぼ8.0L)を、25mM MES(2-[N-モルホリノ]-エタンスルホン酸)pH5.8で平衡化されているカチオン交換カラム(E.Merck Fractogel EMD SO3 650M,18.0cm x 24.0cm)に500ml/分(2.0cm/分)で直接ロードした。ローディングが完結した後、そのカラムは25mM MES(2-[N-モルホリノ]-エタンスルホン酸)pH5.8によって750ml/分(3.0cm/分)で、カラム溶出液がpH5.8(範囲5.6-5.9)に復帰するまで洗浄した。そのカラムは25mM MES(2-[N-モルホリノ]-エタンスルホン酸)pH5.8によって750ml/分(3.0cm/分)で主要なペプチド干純物を除去するために補足の30分間洗浄した。その生産物(sCTgly)は、25mM MES、100mM塩化ナトリウムpH5.8により、750ml/分(3.0cm/分)で溶出した。その生産物フラクションは直後のアミド化までに1.0M HClでpH3.0-5.0に調整される。そのカラムは0.1M水酸化ナトリウム、0.1M塩化ナトリウムによって750ml/分(3.0cm/分)で60分間洗浄し且つ衛生化した。
【0116】
アミド化反応
得られたpH調節したCEX#2溶出液は、sCTglyの真性のサケカルシトニンへのインビトロでの変換において使用するための適当な基質溶液である精製したsCTglyを含み、その反応は以下の実施例5中に示した通り、ペプチジルグリシンα-アミド化酵素(PAM)により促進される。
【0117】
実施例4sCTglyの定量化のための分析用カチオン交換HPLC:
採集したクロマトグラフィーフラクション中のsCTglyは、分析用CEX-HPLCによって同定し且つ定量分析した。各フラクションのアリコートは、10mMリン酸ナトリウムpH5.0で平衡化したカチオン交換カラム(The Nest Group,ポリスルホエチルアスパルタミド,4.6mm x 50mm)に、1.2ml/分の流速でロードした。分離は、10mMリン酸ナトリウムpH5.0から10mMリン酸ナトリウム,250mM塩化ナトリウムpH5.0までの直線的濃度勾配を1.2ml/分で15分間にわたり実行することによって達成した。そのカラム溶出液は、220nmでUV吸収によりモニターした。sCTglyは、精製したsCTgly参照標準品のそれに対してその保持時間の比較により同定した。
【0118】
sCTglyは、sCTgly参照標準品との比較としてピーク面積により定量した。この分析方法はまた、発酵培地からのSCTglyを定量するためにも使用した。
【0119】
実施例5−α-アミド化酵素を用いるグリシン延長化サケカルシトニンの真性サケカルシトニンへの変換
アミド化サケカルシトニンの至適収量を得るために、以下の臨界パラメーターが観測される:
1)そのアミド化反応は、反応容器に対するペプチドの非特異的な吸収を防止するためにシラン化したガラス容器中で実行される。
2)溶解した酸素の高いレベルは、拡散及び/又は振混ぜにより反応混合物中に維持される。好ましくは溶解した酸素のレベルは≧75%である。
3)アミド化を通してインキュベーション温度は35℃−39℃に維持される。
4)アミド化反応のpHは6.0と6.5の間に維持される。
5)アミド化反応中のグリシン延長化サケカルシトニンの開始濃度は3.5−10.5mg/ml(0.95mMから2.9mM)の間とすべきである。
6)実質的にプロテアーゼ無しのα-アミド化酵素(ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ、ここでは"PAM"と記す)の12,000-24,000単位/mlが反応混合物に加えられ且つ基質の濃度が上記5)中に示された通りである場合、その反応は4-6時間実行される。しかしながら、その反応時間は、生産物への有害な作用無しに24時間まで更に増加できる。
7)アスコルビン酸塩制限化の精製からアミド化反応を防止するため、アスコルビン酸塩の補足の同等物が該反応のほぼ中間点で加えられる。
【0120】
アミド化反応混合物の成分は以下のものである:
S-スルホン化、グリシン延長サケカルシトニンの3.5-10.5mg/ml
30mM MES緩衝液、pH6.0-6.5
0.5から1.0μM CuSO4(例えば0.5)
4-15mM KI(例えば5)
1-5%エタノール(例えば1%)
10-100μg/mlカタラーゼ(例えば35)
1.5-3.0mMアスコルビン酸塩(例えば1.5)
ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ(反応混合物のml当たり12,000-24,000単位。1単位はpH7で37℃で生産されるダンシルTyr-Val-Gly基質の変換の分当たりの1ピコモルである)。PAM酵素は、Millerら,ABB 298:380-388(1992)米国特許第4,708,934号、欧州公開0 308 067と0 382 403、及びBiotechnology Vol.II(1993)pp.64-70中に記載された通り得ることができ、その開示は参考によりここに加えられる。
【0121】
グリシン延長化サケカルシトニンは、実施例1と実施例2中に記載した通りの発酵法により生産し、アミド化の前に実施例3に記載したように精製できる。
【0122】
アミド化に用いた酵素がペプチジルグリシンα-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ(PHM)である場合には、PAMをPHM上述したそれと同じ反応混合物が使用される。加えて4から6時間のインキュベーション期間の終わりで、反応混合物のpHは塩基の添加により8と9の間にまで増加される。その反応混合物は、反応を終結するまでの補足の4から8時間の期間撹拌される。ペプチジルグリシンα-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼは、PAMのN末端部分(ほぼ最初の40dKa)のみを発現することにより得ることができる。例えば、ミズノ等,BBRC Vol.148,No.2,pp.546-52(1987)を参照、それがミズノの"AE 1"に関係するその開示は参考によってここに合併される。カエル皮膚は自然にPHMを発現することが知られる。
【0123】
アミド化反応が終止されている後、その反応物は十分な量の水で3.0mg/ml以下となる最終ペプチド濃度になるように希釈する。十分な1M TRIS pH9.0がほぼ100mMにTRISの最終濃度になるように混合物に加えられる。もし必要なら、pHが2M NaOHで[8.0から9.0]に調整される。SO3-sCTの最終濃度を超える、L-システインの3.0倍過量がその反応混合物に撹拌しつつゆっくりと加えられる。
【0124】
もし必要なら、pHが2M NaOHで[8.0から9.0]に調整される。その再生反応物は室温で1時間、撹拌される。その反応は、pH2.0[1.9から2.3]に10%リン酸で酸性化することにより終止させる。
【0125】
実施例6アミド化後の精製
カチオン交換クロマトグラフィー#3(CEX#3):このカラムはα-アミド化と再生化に続きsCTを精製するために使用した。α-アミド化/再生化の後の主要な不純物はsCTGである。CEX#3クロマトグラフィーは、Toyopearl SP650S樹脂を充填したAmicon Vantage-Aカラム(18.0x16.0cm)を用いる。単位操作は注入用の水(WFI)と150mMリン酸ナトリウムpH5.5と一緒に0.5M,50mM及び175mM塩化ナトリウムを用いて達成される。その方法の工程の概略に記載は以下の通り:
1)操作流速は750ml/分にセットする。
2)クロマトグラフィーをモニターするために用いた以下のパラメーターがLC系制御装置を用いてセットされる:
UV波長230nm
範囲0.64 AUFS
導電率x1000
3)そのカラムは750ml/分の流速で少なくとも5分間、WFIによって最初に洗浄される。
4)希釈ポンプ(150mMリン酸ナトリウムpH5.0)は、50ml/分にセットし、且つそのカラムは安定なpHベースラインが観測されるまで750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで平衡化される。
5)そのカラムは、6.0以下の安定なpHベースラインが達成されるまで750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで再平衡化される。(注:もしカラムのpHが6.0以下でないなら、150mMリン酸ナトリウム洗浄が要求される。)もし150mMリン酸ナトリウム洗浄が実行されるなら、そのカラムは次の工程の操作の前に10mMリン酸ナトリウムpH5.5を用い再平衡化する必要がある。
6)再平衡化に続き、そのカラムは175mM塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5により750ml/分の流速で4分間、ブランク溶出にかけられる。
7)そのカラムは安定なpHベースラインが達成されるまで750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで再平衡化される。
8)一度平衡化が達成された10-25グラムのsCTを含むアミド化/再生化処理液は、2N水酸化ナトリウムを用い3.5にpH調整され、且つ400ml/分でCEX#3カラムにロードされる。そのサンプルのロードはWFIの500mlによってロードコンテナーを濯ぐことによって続行される。
9)そのロードに続き、カラムは750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで30分間、又はそのカラムのpHが5.0以上で安定化されるまで洗浄される。
10)カラムのpHが5.0以上で安定化しているそのカラムは、750ml/分の流速で50mm塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5で100分間又はsCTglyピークが出現するまで洗浄される。
11)100分間が満了し175mm塩化ナトリウムがその系に続けられる。
そのカラムは、750ml/分の流速で175mM塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5で洗浄し、次いで生産物が溶出される。全体の生産物ピークが一つの容器に採集される。CEX3溶出液材料の重量が測定され、次いで1N酢酸(10%フラクション重量)がそのフラクションに加えられる。
12)そのカラムは750ml/分の流速で15分間、0.5M塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5で脱着化した。
13)脱着されているそのカラムに1.0M塩化ナトリウム/0.25N水酸化ナトリウムが該系に接続される。希釈ポンプは0.000ml/分にセットされ、該カラムは1.0M塩化ナトリウム/0.25N水酸化ナトリウムにより600ml/分の流速で少なくとも30分洗浄される。
14)そのカラムは750ml/分の流速で5分間WFIにより洗浄される。
15)そのカラムは500ml/分の流速で10mM水酸化ナトリウムにより30分間洗浄される。そのカラムはこれらの条件下で保存される。
【0126】
逆相クロマトグラフィー(Rp#2):この工程はCEX#3に続き、凍結乾燥の前の塩と緩衝液交換工程として用いられる。該工程の主要な目的は、酢酸塩と塩とを交換することである。RP#2クロマトグラフィーは、Amberchrom CG300md樹脂を充填したAmicon Vantage-Aカラム(13.0x12.5cm)を用いる。単位操作は、注入用尾水、エチルアルコール、250mM酢酸ナトリウムと0.5%酢酸を用いて達成される。
操作工程の概略記載は以下の通り:
1)CEX#3溶出液(ほぼ4リットル)は、リン酸によりpH2.0に酸性化し、333mM酢酸ナトリウム溶液の3等量により希釈し、少なくとも1時間放置させる。
2)流速は320ml/分にセットされ、一方希釈ポンプ(0.5%酢酸)は400ml/分の全般的な操作流速のために80ml/分にセットされる。
3)クロマトグラフィーをモニターするために用いた以下のパラメーターがLC系制御装置を用いてセットされる:
UV波長230nm
範囲2.54AUFS
導電率x1000
4)そのカラムは400ml/分の流速で安定な導電率が観測されるまで0.1%酢酸によって最初に洗浄される。
5)そのカラムは、安定したpHベースラインが観測されるまで400ml/分の流速で80%エチルアルコール、0.1%酢酸によって脱着される。
6)そのカラムは、安定したpHベースラインが観測されるまで0.1%酢酸によって洗浄される。
7)その洗浄の後、カラム試験が樹脂洗浄をたどるために実行される。
該カラムは40%エチルアルコール;0.1%酢酸によって400ml/分の流速で6分間、ブランク溶出にかけられる。そのカラム試験から採集された溶出液は分析試験のQCに従う。
8)そのカラムは400ml/分の流速で、安定した導電率ベースラインが観測されるまで0.1%酢酸によって洗浄される。
9)その洗浄の完了したなら、WFIがその入り口から外され、250mM酢酸ナトリウムが接続される。希釈ポンプは0.000ml/分にセットされる。そのカラムは、安定したpHベースラインか観測されるまで、400ml/分の流速で250mM酢酸ナトリウムにより平衡化される。
10)平衡が達成されたなら、CEX#3溶出液が、400ml/分で該RP#2カラムにロードされる。そのサンプルロードは、250mM酢酸ナトリウムの1.0リットルによってロードコンテナーを濯ぐことによって追出される。
11)そのカラムは、400ml/分の流速で60分間、250mM酢酸ナトリウムを用いて洗浄される。
12)酢酸ナトリウム洗浄に続き、その酢酸ナトリウムは入口から取り外され、WFIが接続される。希釈ポンプは80ml/分の流速に戻され、そのカラムは0.1%酢酸によって400ml/分の流速で25分間、洗浄される。
13)0.1%酢酸洗浄に続き、その生産物は、400ml/分の流速で40%エチルアルコール;0.1%酢酸によって溶出される。生産物ピークの全体を採集し、精製されたsCT粉末を得るために凍結乾燥にかけられる。
14)そのカラムは、少なくとも20分間、400ml/分の流速で80%エチルアルコール;0.1%酢酸によって脱着される。
15)脱着に続き、希釈ポンプは0.000ml/分にセットされ、そのカラムは少なくとも5分間、400ml/分の流速でWFIにより洗浄される。
16)WFI洗浄の後、WFIが入口から取り外され、0.5N水酸化ナトリウムが接続される。そのカラムは、少なくとも20分間、400ml/分の流速で0.5N水酸化ナトリウムによって洗浄される。
17)0.5N水酸化ナトリウムが該系から分離され且つWFIが接続される。そのカラムは400ml/分の流速で少なくとも20分間、50%エチルアルコールで洗浄される。そのカラムはこれらの条件下で保存される。
18)そのRP#3溶出液は、2から8℃で保存される。
【0127】
本発明がそれの特有の実施態様に関して記載されているとしても、多くの他の変形及び修正及び他の使用は当業者に明らかとなるであろう。本発明はそれ故に、ここでの特異的な開示に限定されること無しに、添付したクレームにのみある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド生産物を発現する宿主細胞を一般的に処理する培地中にペプチド生産物を直接発現することに関する。とりわけ、本発明は、高い収量で宿主外方から該培地に外分泌されるペプチド生産物を生産するための、発現ベクター、宿主細胞及び/又は発酵方法に関する。幾つかの実施態様において、本発明は、C末端グリシン、それは後で上記グリシンが置換したアミノ基を有するアミド化ペプチドに変換される、を有するペプチド生産物の直接発現に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の技術が、ペプチド生産物、即ち分子構造がペプチド結合によって結合した複数のアミノ酸を含む何れかの化合物の組換えによる生産のために存在する。
【0003】
その外来のペプチド生産物が小さい場合の問題は、そのペプチドを発現するために使用した宿主細胞の細胞質又はペリプラズム中の内因性プロテアーゼによってそれがしばしば容易に分解されることである。他の問題は、十分な収量を達成すること、及びそれの三次元構造を変えること無しに、相対的に純粋な形においてそのペプチドを回収することを含む(その基本的な機能を実行するためのそれの能力を不適当に減じ得る)。小さいサイズの問題を克服するために、従来技術では、別の(通例はより大きな)ペプチドとの融合タンパク質として重要なペプチド生産物を度々発現し且つ細胞質内にこの融合タンパク質を蓄積している。他のペプチドは、幾つかの機能、例えば宿主の細胞質中に存在するプロテアーゼにさらすことから重要なペプチドを保護するために奉仕し得る。そのような発現系の一つは、Rayら,Bio/Technology,Vol.11,64-70頁,(1993)中に記載される。
【0004】
しかしながら、そのような技術を用いるペプチド生産物の分離は、融合タンパク質の切断と宿主の細胞質中に通常的に存在する全てのペプチドからの精製を要する。これは、そのプロセスの効率を全般的に減じ得る幾つかの工程を必要とするだろう。例えば、従来技術の融合タンパク質が細胞質中で蓄積される場合、その細胞は通例、収穫し且つ溶解し、且つその細胞の残骸は精製化工程で除去する必要がある。この全てが、重要なペプチド生産物が培地内に直接発現され且つ回収される、本発明に従って回避される。
【0005】
従来技術において、それの融合パートナーから重要なペプチドを分離するために更に切断を受ける必要がある、融合タンパク質を精製するためのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用することがしばしば必要である。例えば、上記と同じく、Bio/Technology文献において、サケカルシトニン前駆体は臭化シアンを用いてその融合パートナーから切断される。その切断工程は、サケカルシトニン前駆体の位置1から7でシステインのスルフィドリル基を保護するために更なる補足の工程を必要とする。スルホン化が、システイン用の保護基を提供するために使用された。当該のそれは、その前駆体の連続して起こる再生(及び勿論、保護基の除去)を要求するサケカルシトニン前駆体の三次元構造を変更した。
【0006】
本発明のペプチド生産物は、シグナル配列によってのみ発現され、且つ大きな融合パートナーによって発現されない。本発明は、「直接発現」の結果である。
【0007】
それは、そのN末端側に接合したシグナル領域により最初に発現される。しかしながら、そのシグナル領域は、細胞のペリプラズムへのペプチド生産物の分泌の間を通して翻訳後に切断される。その後、該ペプチド生産物は放散され、またはさもなければ細胞外方の培地にペリプラズムから排出され、それは適切な三次構造において回収され得る。それは、たとえ本発明の幾つかの実施態様において、スルホン化が該ペプチド生産物の精製の間を通してシステインのスルフィドリル基を保護するために使用されるとしても、それは細胞溶解化での分解又は修飾化の除去が最初に要求される何れかの融合パートナーに結合しない。
【0008】
細胞内にペプチド生産物を蓄積する従来技術が持つ他の問題は、その生産物の蓄積が、その細胞に対する毒となり得ること、それ故に合成することができる融合タンパク質の量が制限されることである。このアプローチが伴う別の問題は、より大きな融合パートナーがその収量の大部分を通例は構成することである。例えば、生産物収量の90%がより大きな融合パートナーとなり、かくして重要なペプチドについての収量はほんの10%の結果となる。このアプローチが伴う更に別の問題は、その融合タンパク質が細胞内に不溶性含有体を形成し得ること、及び切断後の該含有体の可溶化は生物学的活性ペプチドを生じ得ないことである。
【0009】
従来技術は、ペリプラズムの中に分泌されるべき望まれるペプチド生産物を導くためにそのN末端に付着したシグナルペプチドと一緒に発現することを試みた(EP 177,343,Genentech社を参照)。幾つかのシグナルペプチドが同定されている(Watson,M.Nucleic Acids Research,Vol 12,No.13,pp:5145-5164)。例えば、Hsiung等(Biotechnology,Vol 4,November 1986,pp:991-995)は、ペリプラズム中にある種のペプチドを導くための大腸菌の外層膜プロテインA(OmpA)のシグナルペプチドを用いた。大抵は、ペリプラズムに分泌されるペプチドは、培地への最小限の分泌を止める傾向がしばしばある。外層膜を崩壊する又は透過化するための望ましくない更なる工程は、ペリプラズムの構成成分の十分な量を放出することが望まれ得る。幾つかの従来技術は、透過性の又は漏れやすい外層膜を生じるペプチドタンパク質を溶解することに加えてシグナルペプチドを含んでいる望まれるペプチド生産物を同時に発現する宿主を有していることにより外層膜バリアの無欠性を傷つけることを包含している細胞の外方の培地にペリプラズムからペプチドを排出することを試みた(米国特許第4,595,658号)。しかしながら、それは細胞の無欠性を損なうこと及び細胞を殺すことを無くするため溶解性ペプチドタンパク質生産の量を慎重にする必要がある。重要なペプチドの精製もまた、この技術によってより困難となり得る。
【0010】
上述した外層膜不安定化技術から離れて、グラム陰性細菌の外層膜の透過性増加のためのより劣ったストリンジェント手段がある。これらの方法は、より低い細胞生活力に至り得る外層膜の破壊を必然的に生じるものではない。これらの方法は、しかし、カチオン性剤(Martti Vaara.,Microbiological Reviews,Vol.56,395-411頁(1992))及びグリシン(Kaderbhai等,Biotech.Appl.Biochem,Vol.25,53-61頁(1997))の使用を制限してはいない。カチオン性剤は、外層膜のリポポリサッカリドバックボーンと相互作用すること及びダメージを与えることによって外層膜の透過性を増加する。ダメージと破壊の量は、使用した濃度に基づいて非致命的又は致命的となり得る。グリシンは、ペプチドグリカンのペプチド構成成分中のアラニン残基を置換し得る。ペプチドグリカンは、グラム陰性細菌の外層細胞壁の構成成分の一つである。グリシンの高濃度での大腸菌の増殖は、不完全な細胞壁の結果を生じるグリシン-アラニン置換の頻度を増加せしめ、かくして透過性を増す。
【0011】
望まれるペプチド生産物の排出を生じる別な従来技術の方法は、培地中に通常的に排出される(hemolysin)又は外層膜状で発現した完全なタンパク質(例えば、ompfタンパク質)である担体タンパク質に該生産物を融合することを含む。例えば、ヒトβ-エンドルフィンは、ompFタンパク質のフラグメントに結合した場合、大腸菌細胞によって融合タンパク質として排出され得る(EMBO J.,Vol 4,No.13A,pp:3589-3592,1987)。望まれるペプチド生産物の分離は困難であるが、しかしながら、それが担体ペプチドから分離され、且つその欠点の幾つか(全てではないが)を含んでいるために、細胞質中に融合ペプチドの発現と結び付けられる。
【0012】
更に別な従来技術のアプローチは、何れかのペリプラズムのペプチド又はタンパク質を保有することが相対的にできない透過性の外層膜を有する新規の株を創作するための宿主細胞の遺伝学的変更である。しかしながら、これらの新規の株は、維持することが困難で且つ望まれるペプチド生産物の収量に不利な影響を及ぼすストリンジェントな条件を要し得る。
【0013】
Raymond Wong等(米国特許第5,223,407号)は、ompAシグナルペプチドをコードしているDNAを持つ読枠に結合した異種タンパク質をコードしているDNAとtacプロモーターを含む制御領域を含む組換えDNA構築物を作製することによるペプチド生産物の排出のための更に別なアプローチを考案した。このシステムは、本発明を用いて達成可能である収量よりも優位に劣る収量を報告する。
【0014】
たとえ従来技術が、ペリプラズムから培地まで輸送されるべきタンパク質を与え得るとしても、これは、望ましい高い密度にまで容易に増殖できない不健全な細胞を生じる結果となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,595,658号
【特許文献2】米国特許第5,223,407号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Rayら,Bio/Technology,Vol.11,64-70頁,(1993)
【非特許文献2】Watson,M.Nucleic Acids Research,Vol 12,No.13,pp:5145-5164)
【非特許文献3】Hsiung等、Biotechnology,Vol 4,November 1986,pp:991-995
【非特許文献4】Martti Vaara.,Microbiological Reviews,Vol.56,395-411頁(1992))
【非特許文献5】Kaderbhai等,Biotech.Appl.Biochem,Vol.25,53-61頁(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、有効な発現ベクターによって高い収量でペプチドを生産すること、及び高収率培養技術及び細胞膜の無欠性を過度に損なうことなしに、培地から排出された重要なペプチドの高収率回収を与える他の改善を提供することを求める。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、ペプチド生産宿主細胞を培養している培地中に良好な収量でペプチド生産物蓄積を有することが本発明の目的である。これは、その培地が多くの細胞のペプチド夾雑物を相対的に含んでいないことから有効である。
【0019】
遺伝的に処理した宿主細胞によって発現したペプチド生産物の収量を増加するための改善された発酵方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0020】
本発明の新規発現ベクターを発現するために特に有用である遺伝的に操作した宿主細胞を提供することが本発明の別の目的である。
【0021】
サケカルシトニンの発現のために利用した発現ベクターに関わりなく、サケカルシトニン前駆体の生産のために特に適した宿主細胞を提供することが本発明の別の目的である。
【0022】
C末端グリシンを有する前駆体ペプチド、前駆体は本発明に従い培地中での直接発現に続いてアミド化される、を利用するアミド化ペプチドの生産のための改善された方法を提供することが本発明の更に別の目的である。
【0023】
一つの実施態様において、本発明は、(a)シグナルペプチドをコードしている核酸の読枠3’に結合したペプチド生産物をコードしている核酸を持つたコード化領域;及び(b)該コード化領域と操作可能に結合した制御領域、上記制御領域は、複数のプロモーターと少なくとも1のリボソーム結合サイトを含み、少なくとも1の上記プロモーターはtacである、を含む発現ベクターを提供する。該ベクターによって形質転換され(transformed)又は形質移入された(transfected)宿主細胞は、その宿主細胞を培養することによってペプチド生産物の直接発現の方法として提供される。
【0024】
別な実施態様において、本発明は、サケカルシトニン前駆体、又はカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体を発現するための遺伝子を含む発現ベクターによって形質転換した宿主細胞を、上記宿主細胞は大腸菌BLR株とされる;及び培地中で上記前駆体を得るために同じく培養する方法を提供する。
【0025】
別な実施態様において、本発明は、ここで報告した何れかのベクター、宿主、又は発酵方法を用いてC末端グリシンを有する前駆体を生産すること;及びその後に、ペプチドアミドを精製するため上記グリシンをアミノ基に変換することによってアミド化ペプチド生産物を製造する方法を提供する。
【0026】
別な実施態様において、本発明は、(a)上記培地中で、時間当たり0.05と0.20倍化の範囲内にとどめるように上記宿主細胞の増殖が制御される条件下でシグナルペプチドと一緒に上記ペプチド生産物を発現する、遺伝的に操作した宿主細胞を上記培地中で培養すること;ここでインデューサーを上記制御した培養の期間のいずれかの間存在させる;及び(b)シグナルペプチドの細胞内切断後に培地から上記ペプチド生産物を回収すること、の工程を含む培地へのペプチド生産物の直接発現のための方法を提供する。
【0027】
別の実施態様において、外層膜の透過性を増加する及びペプチド生産物の排出を増すために、直接発現発酵の過程を通してグリシンが加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A−1】図1Aは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図1A−2】図1Aは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図1B−1】図1Bは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図1B−2】図1Bは、ベクターpSCT-025の構築において当該に使用されるpSCT-018Dベクター(1B)の構築において使用されるpSCT-016Bベクター(1A)の構築の概略図を示す。
【図2A】図2Aは、pSCT-019ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-025の構築において使用した該LAC-OMPASCTGLYカセットは、pSCT-019の部分のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって作製した。
【図2B】図2Bは、pSCT-019ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-025の構築において使用した該LAC-OMPASCTGLYカセットは、pSCT-019の部分のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって作製した。
【図3A】図3Aは、ベクターpSCT-029A、pSCT-025A、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用した、pSCT-025ベクターの構築の概略図を示す。
【図3B】図3Bは、ベクターpSCT-029A、pSCT-025A、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用した、pSCT-025ベクターの構築の概略図を示す。
【図4A】図4Aは、ベクターpSCT-038とpSCT-034の構築において使用したpSCT-029Aベクターの構築の概略図を示す。加えて、pSCT-029Aは、大腸菌BLRを形質転換するために及び新規ジジェニック(digenic)UGL 165クローンを生産するために使用した。
【図4B】図4Bは、ベクターpSCT-038とpSCT-034の構築において使用したpSCT-029Aベクターの構築の概略図を示す。加えて、pSCT-029Aは、大腸菌BLRを形質転換するために及び新規ジジェニック(digenic)UGL 165クローンを生産するために使用した。
【図5A】図5Aは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpSEC-Eベクターの構築の概略図を示す。
【図5B】図5Bは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpSEC-Eベクターの構築の概略図を示す。
【図6A】図6Aは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpPRLA4ベクターの構築の概略図を示す。
【図6B】図6Bは、ベクターpSEC-EYの構築において使用したpPRLA4ベクターの構築の概略図を示す。
【図7A】図7Aは、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用したpSEC-EYベクターの構築の概略図を示す。
【図7B】図7Bは、pSCT-037及びpSCT-038の構築において使用したpSEC-EYベクターの構築の概略図を示す。
【図8A】図8Aは、pSCT-037及びpSCT-038ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-037は、大腸菌BLRを形質転換するため及びモノジェニックUGL 702クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、大腸菌BLRを形質転換するため及びジジェニックUGL 703クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、新規ジジェニック発現ベクターを作製する、OmpA-sCTglyオペロン(サケカルシトニン前駆体と一緒にOmpAシグナルをコードしている)の2つのコピーを含む。それはまた、膜内からペリプラズムの空間を横切るトランスロケーションを増す2つのsec機構タンパク質をコードしている遺伝子のコピーを含む。以下は図8のこの記載しているベクターにおいて用いた略語のリストである。 TAC−トリプトファンEとlacオペレーター配列のハイブリッドプ ロモーター; LACP/O−βガラクトシダーゼ遺伝子のlacプロモーターとla cオペレーターを含んでいる領域; LAC-IQ−lacプロモーターとtacプロモーターのオペレータ ー配列に結合するlacリプレッサーをコードしている遺伝子。IPT Gはlacリプレッサーと競合し且つtacプロモーターとlacプロ モーターの両方のオペレーター領域へのlacリプレッサーの結合を抑 制し、かくして上記プロモーターを誘導する。 TRPP/O−トリプトファンE遺伝子のプロモーターオペレーター領 域; OMPA-SCTGLY−外層膜タンパク質Aの分泌シグナル配列とグ リシン延長化サケカルシトニンのコード化配列を含む遺伝子融合(その サケカルシトニン前駆体); SEC-E("PrlG"としても知られる)−大腸菌の分泌因子Eをコードし ている遺伝子。それはタンパク質を含むシグナル配列が細胞質からペリ プラズムまで転移されることによってsec通路の内方膜トランスロケ ーションドメインを形成するためにprlA[secYとしても知られる]又 はprlA-4と結合する。 PRLA-4−prlA遺伝子の変異体対立遺伝子; RRNB T1-T2−大腸菌リボソームのタンパク質遺伝子からの縦列転写 ターミネーター1と2;及び KAN-R−カナマイシン耐性遺伝子。
【図8B】図8Bは、pSCT-037及びpSCT-038ベクターの構築の概略図を示す。pSCT-037は、大腸菌BLRを形質転換するため及びモノジェニックUGL 702クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、大腸菌BLRを形質転換するため及びジジェニックUGL 703クローンを生産するために使用した。pSCT-038は、新規ジジェニック発現ベクターを作製する、OmpA-sCTglyオペロン(サケカルシトニン前駆体と一緒にOmpAシグナルをコードしている)の2つのコピーを含む。それはまた、膜内からペリプラズムの空間を横切るトランスロケーションを増す2つのsec機構タンパク質をコードしている遺伝子のコピーを含む。以下は図8のこの記載しているベクターにおいて用いた略語のリストである。 TAC−トリプトファンEとlacオペレーター配列のハイブリッドプ ロモーター; LACP/O−βガラクトシダーゼ遺伝子のlacプロモーターとla cオペレーターを含んでいる領域; LAC-IQ−lacプロモーターとtacプロモーターのオペレータ ー配列に結合するlacリプレッサーをコードしている遺伝子。IPT Gはlacリプレッサーと競合し且つtacプロモーターとlacプロ モーターの両方のオペレーター領域へのlacリプレッサーの結合を抑 制し、かくして上記プロモーターを誘導する。 TRPP/O−トリプトファンE遺伝子のプロモーターオペレーター領 域; OMPA-SCTGLY−外層膜タンパク質Aの分泌シグナル配列とグ リシン延長化サケカルシトニンのコード化配列を含む遺伝子融合(その サケカルシトニン前駆体); SEC-E("PrlG"としても知られる)−大腸菌の分泌因子Eをコードし ている遺伝子。それはタンパク質を含むシグナル配列が細胞質からペリ プラズムまで転移されることによってsec通路の内方膜トランスロケ ーションドメインを形成するためにprlA[secYとしても知られる]又 はprlA-4と結合する。 PRLA-4−prlA遺伝子の変異体対立遺伝子; RRNB T1-T2−大腸菌リボソームのタンパク質遺伝子からの縦列転写 ターミネーター1と2;及び KAN-R−カナマイシン耐性遺伝子。
【図9】図9は、大腸菌BLRを形質転換するため及びトリジェニックUGL 168クローンを生産するために使用したpSCT-034ベクターの概略図を示す。
【図10】図10は、インデューサーの存在中で典型的な1リットル発酵後の経時的な細胞増殖とUGL 165クローンのsCTgly生産(大腸菌BLR中にプラスミドpSCT029A)を示す。細胞増殖は、600nmの波長での光吸収によって測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。時間ゼロは、本発明の宿主細胞が培養されている培地中にインデューサーを最初に添加した時点を示す。図10は、インデューサーが本発明の宿主細胞が培養されている培地中に最初に加えられた後、20と25.5時間の間にUGL 165によるsCTgly生産の大部分が生じることを示す。
【図11】図11は、インデューサーの存在中で典型的な1リットル発酵後の経時的な細胞増殖とUGL 703クローンのsCTgly生産(大腸菌BLR中にプラスミドpSCT038)を示す。細胞増殖は、600nmの波長での光吸収によって測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。時間ゼロは、本発明の宿主細胞が培養されている培地中にインデューサーを最初に添加した時点を示す。図11は、インデューサーが本発明の宿主細胞が培養されている培地中に最初に加えられた後、20と26時間の間にUGL703によるsCTgly生産の大部分が生じることを示す。
【図12】図12は、600nmの波長での吸光度によって測定したインデューサーの存在中でのインキュベーション後の経時的な典型的1リットル発酵におけるUGL 172クローン(大腸菌BLR中プラスミドpSCT 025)、UGL 165クローン及びUGL 168クローン(大腸菌BLR中プラスミドpSCT 034)の細胞増殖の比較を示す。図12は、UGL 165とUGL 172の細胞増殖速度において有意の差が無いことを示す一方、UGL 168は、この個々の実験での細胞増殖速度において僅かな減少を示す。
【図13】図13は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告したインデューサーの存在中でのインキュベーション後の典型的な1リトル発酵における経時的なUGL 172クローン、UGL 165クローン及びUGL 168クローンによるsCTgly生産の比較を示す。図13は、ジジェニックUGL 165クローンが、sCTglyの生産のために最も好適であり、トリジェニッククローンはモノジェニックUGL 173クローンを越えて2番目に良好であったことを示す。
【図14】図14Aと14Bは、UGL 165クローン及び空気の供給での酸素補給の有無のいずれか一方によって、インデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の経時的なsCTgly生産(14A)と細胞増殖(14B)の比較を示す。細胞増殖は、インキュベーション培地のリットル当たりの細胞湿重量のgとして測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図14Aと14Bは、発酵培地中に加えた酸素がUGL 165の細胞増殖に決定的なものではないが、しかしsCTglyの生産を増加することにおいて非常に重要であることを示す。
【図15】図15Aと15Bは、大腸菌WA837及びBLR株、それぞれの株はpSCT-029Aベクター(それぞれUGL164とUGL 165)を発現している、によって、インデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の経時的な細胞増殖(15A)とsCTgly生産(15B)の比較を示す。細胞増殖は600nmの波長での光吸収により測定した。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図15Aと15Bは、大腸菌BLR株が、大腸菌WA837株よりもsCTgly生産のためにより好適であることを示す。
【図16】図16は、大腸菌株WA837、BLR、BL21及びB834、それぞれの株はpSCT-029ベクター(それぞれ、UGL164、UGL 165、UGL167及びUGL 166)を発現している、によってインデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の経時的なsCTgly生産の比較を示す。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図16は、大腸菌BLR株が、大腸菌WA837、BL21及びB834株のそれぞれよりもsCTgly生産のためにより好適であることを示す。
【図17】図17は、UGL 165(BLR中pSCT-029A)、UGL 168(BLR中pSCT-034)、UGL 172(BLR中pSCT-025)、UGL 702(BLR中pSCT-037)及びUGL 703(BLR中pSCT-038)クローンによってインデューサーの存在中で典型的1リットル発酵後の異なる実験から観測した最良のsCTgly生産の比較を示す。sCTgly生産は、インキュベーション培地のリットル当たり排出されたsCTglyのmgとして報告した。図17は、ジジェニックUGL 703とUGL 165クローンが、モノジェニックUGL 172とUGL 702クローン及びトリジェニックUGL 168クローンよりも、sCTgly生産のためにより好適であることを示した。図17はまた、分泌因子を発現するジジェニックUGL 703クローンが、分泌因子を発現しないジジェニックUGL 165クローンよりもsCTgly生産のためにより好適であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、培地のリットル当たり100mgを超えるペプチド生産物収量を与える。それは新規の発現ベクター、新規め宿主(本発明に従い形質転換され、形質移入され又は使用されるような)、新規発酵方法、又は上記の2又はそれ以上の組合せによりなされる。
【0030】
好ましい発現ベクターの概観 一つの実施態様において、本発明はコード化領域と制御領域を含む発現ベクターを提供する。そのコード化領域は、シグナルペプチドをコードしている核酸から下流の読み枠に結合した重要なペプチド生産物のための核酸を含む。制御領域は、該コード化領域に操作可能に結合し、且つ複数のプロモーターと少なくとも1のリボソーム結合サイトを含み、ここで少なくとも1のプロモーターはtac及びlacからなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、該ベクターは、縦列で配された複数の転写カセットを含み、それぞれのカセットは本発明の制御領域とコード化領域を有する。そのようなジジェニックベクター又はマルチジェニックベクターは、ジシストロニック又はマルチシストロニック発現ベクターよりも良好な発現を提供するものと確信する。これは、従来技術により示唆されると確信することができないジシストロニック又はマルチシストロニック発現を越える驚くべき改善である。
【0032】
該ベクターは、プレッサーオペレーターが制御領域中のプロモーターの1又はそれ以上と結合したリプレッサーペプチドをコードしている配列、転写ターミネーター領域、選択可能なマーカー領域及び/又は少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードしている領域を任意に更に含むことができる。代替的に、幾つかの実施態様において、リプレッサーペプチドと分泌促進ペプチドをコードしている核酸は、ペプチド生産物を発現しているベクターと同じ宿主細胞中に共発現した離れたベクター上に存在させ得る。
【0033】
構築した発現ベクター、及びそのような発現ベクターを構築するための方法の特有の実施例が、この中に記載される。多くの商業的に利用可能なベクターは、本発明の好ましいベクターのための出発ベクターとして利用され得る。本発明のベクターの好適な領域の幾つかは、本発明のベクターを得るために要求される多数の変更が相対的に控えめとなるように開始ベクター中に既に包含され得る。好ましい出発ベクターは、しかしそれに制限されないが、pSP72とpKK233-2を含む。
【0034】
本発明の新規のベクターは、そのベクターに固有である効果を授けること、及び、たとえ、ここにおいて特に有用であるとして同定した特有の宿主以外の宿主細胞においてそのベクターが利用される場合でも、及び個々に記載した改善された発酵方法が利用されるかどうかに関わらず、それの予期されない効果が提供されるであろうことを確信する。
【0035】
同様に、ある実施態様においては、特有の宿主細胞が、サケカルシトニン前駆体及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体のようなペプチドの発現において特に有用であるとして同定される。ここで同定した特有な宿主細胞を特に利用することによって与えられた効果は、その発現ベクターがここに記載した新規ベクターの一つであるかどうか、又はここに記載した新規の発酵方法が利用されるかどうかに関わりなく存在するものと確信される。換言すれば、これらの宿主細胞が、従来技術の発酵又は従来技術のベクターを利用することでも顕著な予測されない効果を与えるであろうと確信される。
【0036】
新規発酵方法は、該発酵方法によって授けられた固有の効果のために増加した重量を提供すると確信する。これらの効果は、好ましい宿主細胞及び/又はここに記載した新規ベクターが利用されるかどうかに関わりなく供与されるであろうと確信される。
【0037】
前述に関わらず、本発明の一つの好適な実施態様は、本発明の特に同定した及びここに記載した好ましい発酵発明を利用して発現した宿主細胞に形質転換した本発明の改善された発現ベクターを同時に利用する。これら3つの発明の全てが組合せにおいて使用される場合、生産物の収量と回収の顕著な増加が、従来技術に対して達成できると確信される。
【0038】
制御領域 制御領域は、コード化領域に操作可能に結合され、複数のプロモーターと少なくとも1のリボソーム結合サイトとを含み、少なくとも1のプロモーターはlacとtacからなる群から選択される。単一の制御領域中のプロモーターの上記組合せが、コード化領域によって生産されたペプチド生産物の収量を顕著に増加することが、驚くべきことに見出されている(この中により詳細に記載した通り)。2つのそのようなプロモーターが重複機能を大部分は提供し、且つ何れかの付加的な又は相乗的な効果を提供しないであろうことが予期されている。出願人により実施された実験は、驚くべきことに、プロモーターの請求した組合せを用いることにおいて相乗作用を示している。他のプロモーターは当該分野で周知であり、且つ本発明に従うtac又はlacプロモーターとの組合せにおいて使用され得る。そのようなプロモーターは、制限されることなく、lpp,ara B,trpE,gal Kを含む。
【0039】
好ましくは、該制御領域は、厳密に2つのプロモーターを含む。プロモーターの一方がtacである場合、そのtacプロモーターが制御領域中の別なプロモーターの5’にあることが好適である。プロモーターの一方がlacである場合、そのlacプロモーターは制御領域中の別なプロモーターの3’が好適である。一つの実施態様において、制御領域はtacプロモーターとlacプロモーターの両方を、好ましくはlacプロモーターがtacプロモーターの3’とされている、を含む。
【0040】
コード化領域
コード化領域は、シグナルペプチドをコードしている核酸から下流の読み枠に結合した重要なペプチド生産物をコードしている核酸を含み、それによって該コード化領域は、シグナル及びペプチド生産物のN末端からC末端までに、それぞれ含んでいるペプチドをコードする。理論に結び付けるべき意図無しに、そのシグナルは、ペリプラズムへのそれの分泌に酸化することに加え、蛋白分解的な分解からペプチド生産物のいずれかの保護を提供し得ると確信する。
【0041】
多くのペプチドシグナル配列が知られ、且つ本発明に従い使用され得る。これらは、良く特徴付けされた宿主細胞の外層膜タンパク質のシグナル配列、及びペリプラズムへのペプチド生産物の転移が、及びその転移の結果として該宿主によって後転写的に(post-translationally)切断されることが可能な何れかの配列を含む。有用なシグナルペプチドは、制限されること無しに、Omp A,pel B,Omp C,Omp F,Omp T,β-la,Pho A,Pho S及びStaph Aを含む。
【0042】
該ペプチド生産物は、本発明にない、それが従来技術を用いる融合パートナーを通例要求するであろうように十分小さいことが好適である。典型的に、そのペプチド生産物は、10kDaよりも小さい分子量を有する。とりわけ、そのペプチド生産物はC末端グリシンを有し、且つそのC末端グリシンをアミノ基に変換する、その結果アミド化ペプチドを生じる酵素的アミド化反応の前駆体として使用される。そのような変換は、この中により詳細に記載される。多数の生物学的に重要なペプチドホルモン及び神経伝達物質が、このタイプのアミド化ペプチドである。例えば、コード化領域によってコードしたペプチド生産物は、サケカルシトニン前駆体又はカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体、C末端グリシンを有する両者及び成熟サケカルシトニン又は成熟カルシトニン遺伝子関連ペプチドに酵素学的にアミド化され得る両者とされ得る。本発明に従い生産され得る他のアミド化ペプチドは、制限されること無しに、成長ホルモン放出因子、血管作用性腸ポリペプチド及びガラニンを含む。他のアミド化ペプチドは、当該分野で周知である。
【0043】
副甲状腺ホルモンの類似物もまた、本発明に従い生産することができる。例えば、副甲状腺ホルモンの最初の34アミノ酸を有するペプチドは、34アミノ酸類似物のアミド化版として、副甲状腺ホルモンそれ自身のものと類似した機能を提供できる。その後者は、ここに記載した1又はそれ以上の発現系及び方法に従い、副甲状腺ホルモンの最初の34アミノ酸、それに続くグリシン-35を発現することにより生産され得る。ここに記載したような酵素的アミド化は、グリシンをアミノ基に変換することができた。
【0044】
ここに記載した直接発現系の好適な実施態様でC末端グリシンを有するペプチドを生産する限りにおいて、何れかのペプチドが、ここに記載したベクター、宿主及び/又は発酵技術を利用することで良好な収量及び容易な回収を享受するであろう。
【0045】
本発明の好適なベクターの又は本発明のベクターと同じ宿主中で発現されるべき他のベクターの他の任意の態様リプレッサー 任意の、本発明の好適なベクターは、少なくとも1のプロモーターにより制御した発現を抑制することができるリプレッサーペプチドをコードしている核酸を含み得る。代替的に、しかしながら、リプレッサーペプチドをコードしている核酸は、本発明のベクターと宿主細胞中の分離ベクター上に存在され得る。適当なリプレッサーは、多数のオペレーターとして当該技術において周知である。好ましくは、そのリプレッサーをコードしている核酸は、少なくとも1つのプロモーターが本発明の好適なベクターに常時存在する、tacとlacプロモーターの両方に含まれるlacオペレーターを抑制するために、本発明の好適な実施態様におけるlacリプレッサーをコードする。
【0046】
選択可能なマーカー 非常に多数の選択可能マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性をコードしている遺伝子)のいずれかが本発明のベクター中に存在することが好ましい。これは、本発明の新規ベクターによって効果的に形質転換され又は形質移入される宿主細胞の適切な特異的選択を与えるであろう。
【0047】
分泌促進ペプチド
少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードしている核酸は、本発明のベクター中に任意に存在する。代替的に、該分泌促進ペプチドをコードしているペプチドは、ペプチド生産物をコードしているベクターとして同じ宿主細胞中で発現した分離ベクター上に存在し得る。好ましくは、分泌促進ペプチドは、SecY(prlA)又はprlA-4からなる群から選択される。SecYとprlAは同一であり、その2つの用語は当該分野において別称として使用されていることが指摘される。prlA-4は、prlAの周知の変形であり且つ同様の機能を有する。別の好適な分泌促進ペプチドは、"prlG"としても知られるSecEである。最も好ましくは、複数の分泌促進ペプチドは、SecEと、SecY(prlA)及びprlA-4からなる群から選択されるその他の少なくとも1つとがコードされる。その2つは、細胞質からペリプラズムまでのペプチド生産物のトランスロケーションを助力するように相互作用すると確信される。
【0048】
理論による結び付けを意図しないで、これらの分泌促進ペプチドは、それの分泌促進機能に加えて細胞質プロテアーゼからペプチド生産物を保護することに助力し得る。
【0049】
宿主細胞
本発明はまた、本発明の何れかのベクターによって形質転換され又は形質移入された宿主細胞をも提供する。好ましくは、宿主細胞は細菌の細胞である。より好ましくは、該宿主細胞はグラム陰性細菌である。更により好ましくは、該宿主細胞は大腸菌(E.coli)である。より好ましくは、その大腸菌は、BLR,BL21又はWA837株である。また最も好ましくは、該宿主細胞は、少なくとも1の分泌促進ペプチドを発現する。
【0050】
本発明は、サケカルシトニン前駆体またはカルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体を含む発現ベクターによって形質転換した宿主、該宿主は大腸菌BLR株とされる、を更に提供する。これら2つのペプチドのBLR発現は、従来技術のベクターがその発現のために使用されても特に有効となるであろう。換言すれば、ここに報告した新規の発現ベクターは、BLR宿主中のこれら2つのペプチドの良好な発現のために要求されると確信されない。
【0051】
異種ペプチドの生産方法
新規の発酵条件が、高い収率で培地中にペプチド生産物の放散又は排出を与える培養条件下に非常に高い細胞密度で宿主細胞を増殖するために提供される。
【0052】
該新規発酵法において有用な宿主細胞は、制限されること無しに、上述した宿主細胞、及び/又は上述した1又はそれ以上の新規発現ベクターによって形質転換した又は形質移入した宿主細胞を含む。シグナル領域と一緒にペプチド生産物を発現するように遺伝的に操作した他の宿主細胞が使用され得る。その細胞は、空気又は他のガス、炭素源、及び培地への他の成分を供給する適当な手段及びプロモーターの導入のための手段を好ましくは含む発酵槽中に配される。酸素濃度、細胞密度、pHなどをモニターするための適当な手段も好適である。
【0053】
出願人は、培地への直接発現したペプチド生産物の有意に改善された収量が、時間当たり0.05と0.20倍化(doublings)の間の臨界範囲内に平均細胞増殖速度を注意深く制御することによって得られることを見出している。この制御された増殖は、培養の遅滞期のより早期に始めることが好適である。発酵期間を通して(即ち、培養がここに記載した通り制御されている期間を通して)、時間当たり0.10と0.15倍化の間、より好ましくは時間当たり0.13倍化の平均細胞増殖速度に維持することがより好ましい。増殖速度は、この中の「sCTgly(発酵)の生産」と題したセクション中に記載した何れかのパラメーター、特に多数の他のパラメーターに対する供給率"Q"の等式、を調整することによって制御され得る。出願人は、発酵細胞に供給している炭素源の割合を変化することが、該臨界範囲内に該増殖速度を維持するための有効な方法であることを見出している。相対的に定常の増殖速度を維持するために、発酵槽の中に供給する炭素源の量は、細胞の数における上昇に比例して増加する傾向にある。
【0054】
出願人はまた、有意に改善された収量が制御した増殖の上記発酵期間を通してインデューサーを供給することで得ることができることを発見している。炭素源と同様に、適切な量のインデューサーの供給は、細胞の数の増殖に関して供給の割合に比例して増加することを含む。炭素源とインデューサーの両方の供給が細胞増殖に結び付く手法において好んで増加することから、出願人は、供給及びインデューサーと共にミックスすること及び細胞増殖を制御する(炭素源によって)ための適当な割合でその2つの混合物を供給すること、かくして、炭素源の量に対して一定の割合にとどめるインデューサーの継続供給を同時に維持することが有効であることを見出している。しかしながら、それは勿論、炭素源とインデューサーを別々に供給することも可能である。しかしながら、大量で細胞に毒となり得る化学インデューサーが使用されるなら、そのインデューサーと炭素源は、インデューサーの重量比が、該発酵方法の全体を通して加えた炭素源の量に対して該発酵方法(制御した増殖期間)の全体を通して加えたインデューサーの量の比率から、同じ時間投薬量が50%より大きく変化しないで加える炭素源に対して何れか与えられた時間で加えられるような量で、培養の各時間を通して添加される。その50%変数は、比較される2つの比のより低い割合から測定される。例えば、全体の発酵のためのインデューサーに対する炭素源の比率が2から1である場合、いずれか与えられた時間での比率は、3から1より高くなく、1.333から1より低くはないことが好ましい。培養の温度のシフト又は特有な化合物又は栄養源の濃度の変更のような他の手段によって増殖を通しての1又はそれ以上のプロモーターを誘導することもまた可能である。
【0055】
外因的な炭素源の供給が細胞増殖の制御方法として使用される場合、培地中に最初からあるいずれかの炭素源が細胞増殖は最初に外因性の炭素供給なしに、もはや支持することができないその時点まで消耗されるまで(外因的な炭素供給の前)待つことが有効とされる。これは外因的な供給は、最初の(無供給)炭素源からの顕著な妨害なしに細胞増殖を直接制御している。酸素源は、測定されている溶存酸素によって発酵培地中に継続的に好ましくは供給される。酸素レベルにおける上方への急増は、最初の炭素源の消耗をその結果示すことができる細胞増殖の顕著な落下及び外部供給を始める時であることを示す。
【0056】
ペプチド生産物収量が、増加する発酵培地の酸素飽和度と同じく増加することが予期せずに見出されている。これは、たとえ低い酸素飽和レベルが細胞増殖を維持するために十分であるとしても真実である。かくして、全体の発酵方法を通して、酸素又は酸素に富むソースが発酵培地に供給され、且つ少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%酸素飽和度が達成される。ここで用いたような「酸素飽和度」は、その培地が通常は空気によって完全に飽和された場合の発酵培地中の酸素のパーセンテージを意味する。換言すれば、発酵培地は100%の「酸素飽和度」を有する空気によって飽和した。100%より高い顕著な、即ち空気の酸素含量より以上の発酵培地の酸素飽和度を維持することが困難とされる場合、これは可能であり、且つより高い酸素含量がより高い収量を提供することに鑑みて一様に望ましい。これは、空気より高い酸素含量を有するガスによってその培地をスプレーすることによって達成される。
【0057】
顕著な収量の改善が70%より低くない、特に80%より低くない、発酵培地中の酸素飽和度を維持することにより達成され得る。それらのレベルは、相対的に容易に維持される。
【0058】
早い撹拌は酸素飽和を増加するのを促進できる。その発酵培地が一度濃密化を始めると、酸素飽和度を維持することがより困難となり、且つそれは少なくともこの状態で空気よりもより高い酸素含量を持つガスを供給することが推奨される。出願人は、普通の空気が、発酵期間において相対的に後期まで良好な酸素飽和度を十分に維持することができることを見出している。出願人は、発酵期間中の最後部で50%酸素供給又は100%酸素供給を伴う空気供給で増強している。
【0059】
好ましくは、その宿主細胞は、20と32時間(制御した増殖を開始した後)の間、好ましくは22と29時間の間、最も好ましくは約24−27時間の期間、培養される。
【0060】
宿主細胞は、20と35℃の間、より好ましくは28と32℃の間、より好ましくは29.5と30.5℃の間の温度でインキュベーションされる。30℃の温度が、出願人により実施された幾つかの発酵において至適であることが見出されている。
【0061】
好ましくは、培地のpHは、6.0と7.5、より好ましくは6.6と7.0、特に好ましくは6.78−6.83(例えば6.8)とされる。
【0062】
好適な実施態様において、発酵は、tacとlacプロモーターの両方を含む制御領域及びサケカルシトニン前駆体をコードしているヌクレオチドの上流にシグナルペプチドをコードしているヌクレオチドを含むコード化領域を有する発現ベクターによって形質転換した宿主を用いて実行される。そのような発現ベクターは、複数の、特に2つの転写カセットを縦列で好ましくは含む。ここで用いたような、用語「縦列で転写カセット」は、制御又はコード化領域が、少なくとも1の補足の制御領域と、第1のコード化領域と同じペプチド生産物をコードしている少なくとも1の補足のコード化領域に続いていることを意味する。これは、単一の制御領域が、コード化領域中の2つのコピーの発現を制御するジシストロニックな(dicistronic)発現と区別すべきである。その定義は、ペプチド生産物に関係していないコード化領域の変更、例えば、第2の転写カセット中の、第1の転写カセット中にコードされる以外の異なるシグナルペプチドをコードしているヌクレオチドの挿入、を与えるであろう。
【0063】
非常にたくさんの炭素源が当該分野で知られる。グリセリンは有効であることが見出されている。本発明の好適な方法は、IPTG及び/又はラクトースのような化学インデューサーの添加を含む。温度シフト又は栄養物のレベルにおける変更のような他の方法が使用され得る。その制御領域中のオペレータ又はプロモーター(又は該制御領域中に1以上が生じるように使用されている多数のプロモーターの一つ)に適切な他の誘導技術もまた使用され得る。
【0064】
ペプチド生産物の生産は、発酵培地中の細胞の増殖が上述した好ましい増殖速度の範囲内を容認できなくなるとほぼ同時に顕著に落下する。その時点で、発酵は中止され、炭素源とインデューサ一供給および酸素フローが止められる。好ましくは、その培養物はプロテアーゼの活性化を防ぐため、そしてペプチド生産物の分解を減じるために急速に冷却される。それはまた、蛋白分解活性を実質的に減じるレベルにまでpHを修正することも望ましい。サケカルシトニン前駆体が、本発明の好ましいベクターと宿主細胞を用いて生産される場合、蛋白分解活性はpHが低下されるようにして減じられる。この酸性化は、培地の冷却と同時に好ましくは成される。1好ましいpH範囲は、以下により詳細に記載される。発酵生産物を測定するために使用されると同じアッセイは、異なるpHレベルで分解を測定するために使用すること、かくして得られたペプチド及びその不純物のために至適なpHを確立することが可能である。
[1又は細菌細胞の除去後に実行され得る]
【0065】
異質なペプチドの回収
本発明は、培地から宿主細胞を除去すること、及びその後に、ゲル濾過、イオン交換(好ましくはそのペプチドがカルシトニンである場合にはカチオン交換)、逆相、アフィニティー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーからなる群から選択されるクロマトグラフィーの少なくとも1のタイプに該培地をかけることを含むペプチド生産物を回収するための方法を更に提供する。システイン残基を含むペプチドにおいて、S-スルホン化は、ペプチドの集団化を防ぎ且つモノメリックペプチドの収量を増加するために精製工程の前にまたはその間に実行され得る。
【0066】
好ましくは、3つのクロマトグラフィー工程が以下の順序において使用される:イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー及び他のイオン交換クロマトグラフィー。
【0067】
発酵が完成した後、培地のpHは、蛋白分解活性を減じるために任意に変えられる。生産物の生産を測定するために便用したアッセイはまた、生産物の分解を測定するため及び安定化のための最良のpHを決定するために使用可能である。
【0068】
サケカルシトニン前駆体が本発明に従い生産される場合、2.4と4.0の間、特に3.0と3.5の間のpHが好適である。これらのpH範囲はまた、カチオン交換カラム上にサケカルシトニン前駆体を保持を促進するため、かくして個々に記載した好ましい精製技術の間の良好な精製を提供すると確信する。
【0069】
また、任意に、発酵か完了した後の培地の温度は、10℃より下の温度にまで、好ましくは3℃と5℃の間、最も好ましくは4℃に低下される。これはまた、望ましくない蛋白分解活性を減じるものと確信する。
【0070】
本発明は、次の工程:C末端グリシンを有するペプチド生産物を発現する本発明のいずれかの宿主細胞を、培地中で培養すること;上記培地から上記ペプチド生産物を回収すること;ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ、又はペプチジルグリシンα-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼの存在中で酸素と還元剤とを上記ペプチド生産物と接触することにより上記ペプチド生産物をアミド化すること、を含むアミド化ペプチド生産物を生産するための方法を更に提供する。もしペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼを上記において使用しないなら、及びもしその反応混合物がそれまでに塩基性でないなら、そのpHが塩基性となるまで該反応混合物のpHを増加する。アミド化ペプチドはその後に、後述の実施例6中に記載した精製技術を好ましくは利用してその反応混合物から回収され得る。
【0071】
好ましくは、その宿主細胞は、インデューサーの存在において、同時に時間当たり0.05と0.20倍化の間の培養を通しての平均細胞培養速度を維持しつつ培地中で培養される。
【0072】
実験の詳細
pSCT-037とpSCT-038クローン化方法 pSCT-037とpSCT-038の構築は、最終的に望む発現プラスミドを構築するのに必要な中間のベクターを創製するために収束した8つのパートよりなる。このプロジェクト用の記載テキストの外に使用した又は構築した全ての遺伝子とフラグメントを表1中にリスト化した。
【0073】
パートI
pSCT-018Dの構築 TACプロモーターカートリッジ(表1)は、pGEM11ZF+TACを創製するHind III-Bam HIフラグメントとしてpGEM11ZF+(表1)内にサブクローンした。pelB-sCTgly cas2遺伝子(表1)は、発現ベクターpSCT-013Bを創製するためのBam HIサイト内のtacプロモーターの下流に結紮した。そのtac-pelBsCTglyオペロンは、Hind IIIとEco RIを用いてpSCT-013Bから切断した。このフラグメントは、pSCT-015Bを創製するpSP72(表1)内に、Hind III-Pst Iアダプターと一緒に結紮した。
【0074】
そのカナマイシン耐性遺伝子は、pSCT-016Bを創製する、pSCT-015BのPst Iサイト内に結紮した。β-ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)の5’コード化及び制御領域は、pSCT-017Bを創製する再結紮に続いてPvuIIとFsp Iにより該ベクターを切断することにより削除した。pSP72 T1-T2(表1)からのT1-T2転写ターミネーターは、pSCT-018Bを創製するSal IとBgl IIサイトを用いて切断し且つPSCT-017B内に結紮した。Bam HIとEco RIサイトを含むLAC-IQ遺伝子(表1)は、pSCT-018Dを創製するためPSCT-018BのBgl II-Eco RIサイト内に結紮した(図1Aと1B参照)。
【0075】
パートII
pSCT-019の構築 pSCT-013B(tac-pelBsCTglyを含んでいる)からのサイトPst IとHind IIIとHind III-Eco RIフラグメントを持ったlac P/O(表1)は、pSCT-015Aを創製するpSP72のPst IとEco RIサイトの中に、3つの結紮手法で挿入した。pSCT-017Bの構築において記載した通り、Kan-R遺伝子を挿入し且つβ-ラクタマーゼ遺伝子を、pSCT-016AとpSCT-017Aを創製するためにpSCT-015Aから取り外した。lpp-lac-ompAsCTgly(表1)Pst I-Acc Iフラグメント(sCTglyの5’コード化配列の17塩基対もまたある)は、pSP72-OMPAから切断し、pSCT-019を創製するためにpSCT-017A中の両立性サイト内に結紮した(図2を参照)。
【0076】
パートIII
pSCT-025の構築 PCR増幅したオペロンlac-ompAsCTgly(表1)のBam HIフラグメントは、pSCT-023(-)を創製するpelBsCTgly遺伝子を置換している、pSCT-018DのBam HIサイト内に結紮した。その(-)は、挿入物がtacプロモーターとの関係において逆方向に挿入されたことを表す。lac-ompAsCTglyオペロンは、pSCT-023(-)からBam HIとSal Iを用いて切断し、pSCT-017 DELTAを創製するpSCT-017Bの両立サイト内に結紮した。カナマイシン耐性遺伝子、tac-lacプロモーター及びompAsCTglyを含む、より大きなBgl I-Bgl IIフラグメントを、pSCT-017 DELTAから切断し、pSCT-025を創製するためpSCT-018DのBgl I-Bam HIサイト内に結紮した(図3参照)。
【0077】
パートIV
pSCT-029Aの構築 Xho IとEco RIサイトを含むRRNB T1-T2-02(表1)のPCR生産物は、pSCT-025Aを創製するpSCT-025のSal I-Eco RIサイト内に結紮した。tac-lac-ompAsCTgly RRNB T1-T2ターミネーター遺伝子カートリッジを含んでいるpSCT-025から切り出したHind III-Sac Iフラグメントは、pCPM-01を創製するpSP72の両立サイト内に結紮した。pCPM-01Aベクターは、pSCT-025Aについて記載したと同じ方法を用いて構築した。pSCT-025AとpCPM-01Aプラスミドは、RRNB T1-T2転写ターミネーターの上流と下流にある制限サイトのタイプにおいてpSCT-025とpCPM-01プラスミドと異なる。tac-lac-ompAsCTgly RRNB T1-T2ターミネーター遺伝子カートリッジを含んでいるXho I-Eco RIフラグメントは、pCPM-01Aから切断し且つジジェニック発現ベクターpSCT-029Aを創製するためpSCT-025AのSal I-Eco RIのサイト内に結紮した(図4)。pSCT-029Aを創製するために用いた方法は、pSCT034の構築のために以下に示した通り、補足のポリジェニック発現ベクターを創製するために繰り返すことができる。
【0078】
パートV
pSEC-Eの構築 ベクターpCPM-01は、次いでpSP72の両立サイト内に結紮される、lac P/Oを削るためにPst IとXba Iによって消化した。Xba IとBam HIクローン化サイトを含んでいるPCR増幅したsecE遺伝子(表1)は、pCM-SECEを創製するompAsCTgly T1-T2シストロンクローン化ベクター(表1)の両立サイト内に結紮した。secE及びT1-T2ターミネーターは、Xho I-Eco RIフラグメントのようにpCM-SECEから切断し、pSEC-Eを創製するためpSP72のSal I-Eco RIサイト内に、lac P/O(pSP72-lacから切断した)を含むXba I-Sal Iフラグメントと一緒に結紮した(図5参照)。
【0079】
パートVI
pPRLA-4の構築(prlA-4はprlA又はcexY遺伝子の変異体対立遺伝子である) ompAsCTgly T1-T2シストロンベクターのT1-T2ターミネーター領域は、BamHIとSma Iを用いて削り、PRLA4-INT中間体クローン化ベクターを創製するpSP72のPvu IIとBam HIサイト内に結紮された。そのlacP/Oは、Xba IとSac IによりpSP72-LACから切断し、pPRLA-4を創製するためPRLA4-INTのSac I-Bam HIサイト内に、Xba IとBam HI制限サイトを含む、pr1A-4 PCRフラグメント(表1)と一緒に結紮した(図6参照)。
【0080】
パートVII
pSEC-EYの構築 trpE P/O配列を含む合成オリゴヌクレオチド(表1)は、pCPM-08を創製するためpCPM-01AのXho I-Xba Iサイト内にサブクローンした。prlA-4とT1-T2配列は、Xba IとXho IによりpPRLA-4から切断し、pSEC-EYを創製するためpCPM-08のXba IとEco RIサイト内に、lac-secE-T1-T2オペロンを含むpSEC-EからのSal I-Eco RIフラグメントと結紮した(図7参照)。
【0081】
パートVIII
pSCT-037とpSCT-038の構築 secEとprlA-4コード化領域は、Xho IとBgl IIによってpSEC-EYから切断した。その残りのフラグメントは、それぞれpSCT-037とpSCT-038を創製するため、pSCT-025AとpSCT-029AのSal I-Bgl IIサイトに結紮した(図8参照)。
【0082】
pSCT-034の構築
pSCT-034は、Tac-Lac-ompAsCTgly RRNB T1-T2転写カセットの3つのコピーを含むトリジェニック発現プラスミドである。このベクター(図9参照)は、その発現カートリッジの第3のコピーに加えpSCT-029AのSal IとEco RIサイト内にpCM-01Aからの記載したカートリッジを挿入することによって構築した。構築の方法は、pCM-01AとpSCT-025AからのpSCT-029Aの構築のための方法と同じである。その3’Sal IとEco RIサイトは、該カートリッジのより多いコピーを加えるために必要なサイトを提供するよう再創製される。
【0083】
【表1】
★ pelB−Erwinia carotovoraからのペクタートリアーゼB(pectate lyase B)のシグナル配列。
++該pRLA41ベクターは、プリンストン大学でTom Silhavyにより提供された。
【0084】
prlA-4変異対立遺伝子は異種ペプチドとタンパク質のより容易なトランスロケーションを与える特性を有し得る。しかしながら、自然prlA(secY)遺伝子は、同様に機能化されるだろう。
【0085】
pSCT-029A又はpSCT-038による大腸菌の形質転換 pSCT-029A又はpSCT-038プラスミドの構築後、即ち各種のDNAフラグメントの結紮後、それはプラスミドの増殖のため及び将来のタンパク質発現作業のために大腸菌宿主株を形質転換するための最終結紮混合物を使用することが必要である。この形質転換を実行するために、DNAを受容するための能力のある大腸菌細胞を作製する必要がある。その受容可能細胞の調製は、CaCl2処理及び電気穿孔法のような各種の方法によって成すことができる。好ましい細胞系、UGL 165とUGL 703の最終調製のために、我々は以下のプロトコールに連続して従う両方の方法を用いる。
【0086】
I.大腸菌K-12宿主、BB4への第1の形質転換 この第1の形質転換は、必須ではないが、しかし大腸菌BB4 K-12宿主が望ましい各種のクローンと同一の非常に多数の形質転換体及び高い蓋然性の結果を生じる高い形質転換能力を有するために好適である。
【0087】
A. CaCl2処理による受容体BB4細胞の調製 BB4遺伝子型...LE392.32[F'lacIQZΔMI5proAB Tn 10(TetR)]
1.宿主細胞の一晩飽和した培養物を調製する。
2.0.5%(v/v)までの培地の100mlに接種することによる新鮮宿主細胞 培養物の調製及び0.02-0.03のA600nmまでの増殖。
3.0.15-0.3のA600nm、ほぼ3倍化までの該培養物の増殖。
4.10分間該細胞を氷上で保管する。
5.5k rpm x 10分、遠心分離によって培地から細胞を取り除く。
6.氷冷0.1M CaCl2の0.5x容量での細胞の再懸濁と塊状化、30分 間氷上保存、次いで上記の細胞の塊状化。
7.0.1M CaCl2の0.lx容量で塊状化した細胞の再懸濁;使用の前 の1時間氷上で保管する。
【0088】
B.形質転換プロトコール
1.記載の通り調製した受容細胞の100μlにプラスミドベクターDNA の2-10ngを理想的に含むであろう結紮混合物の1-2μlを加える。
2.30分間氷上で該混合物を保存する。
3.37℃で加熱ブロック又は水浴中に配することで該混合物を熱ショ ックする。
4.予備加熱した培地1mlに該混合物を加え、37℃で30-60分間該混合物 をインキュベートする。
5.必要な選択抗生物質を含む適当な固体培地上に形質転換混合物を適 量散布し、且つコロニー出現まで18-24時間その平板をインキュベート する。
【0089】
II.第2形質転換
形質転換体は各種の方法により同定される。幾つかのクローンは第2宿主、大腸菌B宿主BLR株への転移のために選択される。BLRは、選択又は発酵とタンパク質発現の宿主株である。
【0090】
BLRの遺伝子型は、F-omoT hsdSB(rB-・mB-)gal dcmΔ(srl-recA)306::Tn10(TcR)である。大腸菌細胞は、制御した且つ指定した条件下で電場にさらされた後DNAを受け入れるであろう。大腸菌B宿主株は、結紮混合物でなくて完全なプラスミドによってより容易に形質転換され、且つCaCl2処理によるよりも電気穿孔法により受容させる場合に外来DNAをより受け入れる。
【0091】
A.次の電気穿孔法のための受容大腸菌BLR細胞の調製
1.宿主細胞の一晩飽和培養物を調製する。
2.1.0%(v/v)に培地の100mlを接種することによって新鮮な宿主細胞 培養物を調製し、0.3-0.5のA600nmまで培養する。
3.15分間氷上で培養物を冷却した後に遠心分離によって細胞を収穫 する。
4.可能な限り多くの培地を除去するよう上清をデキャンタする。氷冷 10%グリセリン水溶液、w/v(グリセリンは特級品とすべきである)の100 mlsの全量中に該細胞を再懸濁する。再懸濁した細胞を直ちに再遠心分 離する。
5.氷冷10%グリセリン(w/v)の50mls中に細胞を再懸濁する。再遠心分 離。
6.氷冷10%グリセリン(w/v)の25mls中に細胞を再懸濁する。再遠心分 離。
7.工程6を繰り返す。
8.氷冷10%グリセリン(w/v)の2mlsの最終容量中に細胞を再懸濁する 。最終細胞濃度は1-3x1010細胞/mlとなるであろう。細胞は−80℃で1 年まで保存できる。
【0092】
B.電気穿孔法による形質転換
1.滅菌キュベットと白色チャンバースライドを氷上で10分間インキ ュベートする。また数本のポリプロピレン管もインキュベートする。
2.100pg/μlの適当な濃度でTris/EDTA中にプラスミドDNAを含む溶 液の1-2μl溶液と細胞懸濁液の40μlを混合する。(DNA混合物は装置 のアーチング(arcing)を防ぐために可能な限り塩分フリーとする必要が ある。)溶液を良く混合し0.5-1.0分氷上でインキュベートする。
3.25μFでGene-Pulser装置にセットする。200オームでパルス制御器 抵抗をセットする。0.2cmキュベットで2.5Kv又は1.0cmキュベットを用 いる場合、1.5-1.8KvにGene-Pulser装置をセットする。
冷やした電気穿孔キュベットに細胞とDNAの混合物を移し、全ての気 泡を除去するためキュベットの底までの懸濁物を振る。冷やした安全チ ャンバースライド中にキュベットを配置し、キュベットがチャンバーの 基部中の接触部の間に固定されるまで、チャンバーにスライドを押す。
4.上記セッティングでキュベットを一度パルスする。
5.キュベットにSOC(20gトリプトン、5g酵母エキス、0.5gNaCl、 1L H2O及び20mMグルコース)緩衝化培地1mlを直ちに加え、細胞を 再懸濁する。
6.滅菌17x100mmポリプロピレン管に懸濁物を移し、37℃で1時間イ ンキュベートする。
7.選択培地平板上で電気穿孔した混合物を平板培養する。
【0093】
sCTglyの生産(発酵)
発酵バッチ培地は表2中に載せた成分を用いて調製される。発酵は接種培地(表2)中で増殖した対数期後期培養物により接種される。接種容量は、0.015と0.24の間に発酵槽内のイニシャルA600nmが達するまでに要した接種物の量(細胞の数)により決定される。発酵作動のためのpH、DO2、及び温度パラメータは、表3中にリスト化される。発酵の供給バッチ段階は、バッチ培地中のグリセリンが消耗した時に開始した。[グリセリン消耗は溶存酸素の急増及び/又はグリセリン測定により測定され得る。]供給率は、グリセリン消耗の時点で細胞量(細胞乾物重量)に基づく一定の細胞分裂速度を維持するようにセットした。供給率は以下の式に基づいている:
【数1】
式中:
Mu=増殖速度(時間当たり倍化)
dcw=個々の大腸菌株のための経験的に決定した供給開始での培地のリットル当たり乾物細胞重量グラム
t=時間での経時
Yx/s=宿主用のグリセリン利用定数(大腸菌WA837で0.327;BLRで相似)
v=リットルでの培養容量
[feed]=供給培地のリットル当たりのグラムグリセリン(個々に記載し た全ての実施例でリットル当たり629グラムを用いた)。
Q=グリセリン供給率、リットル/時間
【0094】
該誘導方法はセットした増殖速度に適合するよう経時でインデューサー(IPTG)を増加する供給率と結びつけた濃度勾配導入を用いて達成される。
【0095】
発酵の進行は600nmでの吸光度、g/lでの細胞湿重量、加えてmg/lでのsCTglyの存在と濃度のために培地サンプルのCEXクロマトグラフィー分析を測定することによりモニターされる。
【0096】
グリシンは、外層膜透過性を増加するために発酵に加えることができる。グリシンはバッチ培地に又は供給物に加えネことができる。好ましくは、グリシンは、発酵培地中のグリシン濃度が細胞増殖速度に伴って増加するような供給量で加えられる。グリシンの至適濃度は、発酵の最終段階で100ml当たり0.1-1グラムの範囲内とすべきである。実施において、供給物に加えられるグリシンの量は、発酵の終わりでの望まれるグリシン濃度が達成されるように計算される。グリシンの実際の量は、発酵の時間の長さ、誘導後、及び望まれる最終グリシン濃度に基づいている。我々が使用している方法は:グリシンの24g/lを、誘導後26時間で5g/lの最終グリシン濃度の結果になるように発酵供給物に加えた。我々は、供給物へのグリシンの添加が、バッチ培地にグリシンを加えるよりもより有効であることを見出している。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
sCTglyの分離
条件付けた培地は、タンジェンシャルフロー濾過(Tangential Flow Filtration)又は培地から採集するための遠心分離と該細胞の廃棄のいずれかを用いて培地から細胞を分離することで収穫される。排出されたsCTglyは、3.0の最終pHまで2.0N HClを加えることによって培地中で安定化される。グリシン-延長化サケカルシトニンは、pH3.0時点で延長した期間、安定である。細胞除去とpH安定化の後、該ペプチドはカチオン交換及び逆相クロマトグラフィー法を用いて精製される。カチオン交換クロマトグラフィーに続く逆相クロマトグラフィーは、良好な精製を提供でき、最初のカチオン交換工程もまた逆相液体クロマトグラフィーの前に含めることも好適である。大型の精製のために、これは逆相クロマトグラフィーのかける容量を減じ、かくしてアセトニトリルのような有機溶媒の高い容量を用いる必要性に起因する環境及び安全性の心配を減じる。
【0100】
別の好ましい変形例は、モノメリックペプチドの収量を改善するために精製前に又はその間を通してのサケカルシトニンペプチドのシステイン残基のS-スルホン化である。
【0101】
クローンの記載
モノジェニックUGL 172クローンは、C末端グリシンを持ったサケカルシトニン(sCTgly)をコードしている一つの転写カセット(モノジェニック)を含むベクターpSCT-025Aを含む大腸菌BLR宿主株である。2 ジジェニックUGL 165クローンは、C末端グリシンを持ったサケカルシトニン(sCTgly)をそれぞれコードしている縦列で2つのカセットを有する(ジジェニック)ベクターpSCT-029Aを含む大腸菌BLR宿主株である。トリジェニックUGL 168クローンは、C末端グリシンを持ったサケカルシトニン(sCTgly)をそれぞれコードしている縦列で3つのカセットを有する(トリジェニック)ベクターpSCT-034を含む大腸菌BLR株である。モノジェニックUGL 702クローンは、1つのカセットと分泌因子遺伝子を含むベクターpSCT-037を含む大腸菌BLR株である。ジジェニックUGL 703クローンは、縦列に2つのカセットと、分泌因子遺伝子を含むベクターpSCT-038を含む大腸菌BLR株である。
【0102】
2 好ましい転写カセットは、転写ターミネーター配列rmB T1-T2に続くsCTglyの配列に続くOmpAシグナル配列の配列に続くリボソーム結合サイトに続く2重tac/lacプロモーターを含む。
【実施例】
【0103】
実施例1−1LスケールでのUGL 165発酵
UGL 165クローンの発酵は、実験の詳細に記載した通り実行した。表4は、発酵パラメーターと結果を要約した。概略は、UGL 165クローン細胞を、接種用培地中で培養し、0.06のイニシャルA600nmを与えるようにバッチ培地の1リットルを含む発酵槽を播種するために使用した。細胞は、該培地中のグリセリンが消耗されるまで6.25時間培養した。次いで、発酵の供給バッチ段階を開始し、25.5時間、供給培地を連続して補充した。ゼロ時点での条件は(供給と誘導の開始の)、以下の通り:酸素飽和度、94%;温度30℃;及びpH6.8。発酵の終了での条件は(25.5時間)、以下の通り:酸素飽和度40%;温度31℃;及びpH6.8。また、発酵の終了時に、600nmでの吸光度は、113.3に等しく、1リットル当たりのgでの細胞湿重量は168gであった。発酵終了時のsCTgly生産物もまた、222mg/培地のリットルとして測定された(図10と表4参照)。
【0104】
【表4】
** 実施例4に記載した通りCEX-HPLCを用いて測定したsCTgly
***撹拌は1450rpm一晩@2時間供給開始後とした
【0105】
実施例2−1LスケールでのUGL 703発酵
組換え大腸菌UGL 703は、特許手続の目的のために微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定に従い、ATCC 98395としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されている。UGL 703クローンの発酵は、実験の詳細に記載した通り実行した。表5は、この発酵の条件を要約した。概略は、UGL 703クローン細胞を、接種用培地中で培養し、0.06の(好ましくは0.06から0.12)イニシャルA600nmを与えるようにバッチ培地の1リットルを含む発酵槽を播種するために使用した。細胞は、該培地中のグロセリンが消耗されるまで6.25時間(好ましくは6.0から7.0時間)増殖した。次いで、発酵の供給バッチ段階を開始し、26時間、供給培地を連続して補充した。ゼロ時点での条件は(供給と誘導の開始の)、以下の通り:酸素飽和度、95%;温度30℃;及びpH6.8。発酵の終了での条件は(26時間)、以下の通り:酸素飽和度80%;温度31℃;及びpH6.8。また、発酵の終了時に、600nmでの吸光度は、80.9に等しく、1リットル当たりのgでの細胞湿重量は129.1gであった。発酵終了時のsCTgly生産物もまた、284mg/培地のリットルとして測定された(図11と表5参照)。
【0106】
【表5】
**sCTglyは、実施例4中に記載したCEX-HPLCアッセイを用いて測定した。
【0107】
結論
他の実験は、UGL 172、UGL 168及びUGL 702クローンを用い、全体的に類似の条件下で実行した。図12と13は、ジジェニックUGL 165クローンが、sCTglyの生産のために最適であることを、トリジェニックUGL 165クローンがモノジェニックUGL 173クローンを越えて二番目に良好であることと併せて示す。しかしながら、UGL 165によるsCTglyの生産は、共−発現分泌因子(UGL 703)の存在において更に改善され得る(図10と11と17に比較する)。
【0108】
発酵を通しての酸素飽和度に関して、図14Aと14Bは、発酵培地中に加えた酸素は、細胞増殖においては重要でないが、sCTglyの生産を増加することにおいて非常に重要であるとの結論を裏付ける。
【0109】
図15A、15B、及び16は、大腸菌BLR株がsCTglyの生産のために最良であることを示す。
【0110】
sCTglyの生産は、供給成分の添加としてグリシンの添加によって更に一層増加できる。
【0111】
実施例3−UGL 165培地からのsCTglyの精製:カチオン交換クロマトグラフィー#1:
タンジエンシャルフロー濾過又は遠心分離のいずれか一方で収穫されている培地のほぼ1000Lは、pHを3.0に減少するために2N塩酸の十分な量で酸性化した。該培地は、≦7.5mSにまで導電率を減じるよう十分な量の水で連続希釈した。
【0112】
希釈した培地は、25L/分(3.25cm/分)の流速で、10mMクエン酸pH3.0で平衡させているカチオン交換カラム(Pharmacia SP-Sepharose Big Beads,99.0cm x 13.0cm)にロードした。ローディングが完結した後、そのカラムは10mMクエン酸pH3.0によりほぼ40分間8L/分(1.0cm/分)で(3床容量)、又は安定したUVベースラインが達成されるまで洗浄した。その生産物(sCTgly)は、8L/分(1.0cm/分)の流速で10mMクエン酸、350mM塩化ナトリウムpH3.0によって溶出した。そのカラムは洗浄し且つ0.5M水酸化ナトリウムで衛生化した。8L/分(1.0cm/分)で60分(5.0床容量)1.0M塩化ナトリウム。
【0113】
結果として得られたCEX#1溶出液(ほぼ100L)を含む撹拌タンクは、トロメタミンの60.57グラムが加えられる。その溶液は全ての固体が溶解するまで撹拌される。その溶液のpHは2M NaOHを用いて8.25[範囲:8.0から8.5]に調節されるトリス・塩酸(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン塩酸)の23.64グラムが加えられ、全ての固体が溶解するまで撹拌される。トリス・塩酸中に溶解した硫酸ナトリウムの1.0kgの溶液とトリス・塩酸中に溶解したテトラチオン酸ナトリウムの200g溶液か撹拌しつつそのタンクに加えられる。その反応は15分間撹拌することで成される。もし必要であれば、そのpHを2M NaOHによって8.25[範囲:8.0から8.5]に調節される。その反応混合物は、室温で一晩撹拌される。その反応混合物のpHは、2M HClにより2.25[範囲:2.0から2.5]に調節される。
【0114】
逆相クロマトグラフィー#1(RP#1):
得られたS-スルホン化反応混合物(約100L)は、2.0L/分(4.0cm/分)で、0.1%トリフルオロ酢酸によって平衡化されている逆相カラム(Toso Haas Amberchrom CG300md,25.0cm x 18.0cm)に直接ロードした。ローディングが完結した後、そのカラムは0.1%トリフルオロ酢酸により750ml/分(1.5cm/分)で安定したUVベースラインが達成されるまで洗浄した。そのカラムは、0.1%トリフルオロ酢酸、20%アセトニトリルによって750ml/分(1.5cm/分)で、主要な不純物ピークが完全に無くなるまで洗浄した。その生産物(sCTgly)は、0.1%トリフルオロ酢酸、40%アセトニトリルによって750ml/分(1.5cm/分)で溶出した。そのカラムは750ml/分(1.5cm/分)で30分間、0.1%トリフルオロ酢酸、80%アセトニトリルによって洗浄した。
【0115】
カチオン交換クロマトグラフィー#2(CEX#2):
得られたRP#1溶出液(ほぼ8.0L)を、25mM MES(2-[N-モルホリノ]-エタンスルホン酸)pH5.8で平衡化されているカチオン交換カラム(E.Merck Fractogel EMD SO3 650M,18.0cm x 24.0cm)に500ml/分(2.0cm/分)で直接ロードした。ローディングが完結した後、そのカラムは25mM MES(2-[N-モルホリノ]-エタンスルホン酸)pH5.8によって750ml/分(3.0cm/分)で、カラム溶出液がpH5.8(範囲5.6-5.9)に復帰するまで洗浄した。そのカラムは25mM MES(2-[N-モルホリノ]-エタンスルホン酸)pH5.8によって750ml/分(3.0cm/分)で主要なペプチド干純物を除去するために補足の30分間洗浄した。その生産物(sCTgly)は、25mM MES、100mM塩化ナトリウムpH5.8により、750ml/分(3.0cm/分)で溶出した。その生産物フラクションは直後のアミド化までに1.0M HClでpH3.0-5.0に調整される。そのカラムは0.1M水酸化ナトリウム、0.1M塩化ナトリウムによって750ml/分(3.0cm/分)で60分間洗浄し且つ衛生化した。
【0116】
アミド化反応
得られたpH調節したCEX#2溶出液は、sCTglyの真性のサケカルシトニンへのインビトロでの変換において使用するための適当な基質溶液である精製したsCTglyを含み、その反応は以下の実施例5中に示した通り、ペプチジルグリシンα-アミド化酵素(PAM)により促進される。
【0117】
実施例4sCTglyの定量化のための分析用カチオン交換HPLC:
採集したクロマトグラフィーフラクション中のsCTglyは、分析用CEX-HPLCによって同定し且つ定量分析した。各フラクションのアリコートは、10mMリン酸ナトリウムpH5.0で平衡化したカチオン交換カラム(The Nest Group,ポリスルホエチルアスパルタミド,4.6mm x 50mm)に、1.2ml/分の流速でロードした。分離は、10mMリン酸ナトリウムpH5.0から10mMリン酸ナトリウム,250mM塩化ナトリウムpH5.0までの直線的濃度勾配を1.2ml/分で15分間にわたり実行することによって達成した。そのカラム溶出液は、220nmでUV吸収によりモニターした。sCTglyは、精製したsCTgly参照標準品のそれに対してその保持時間の比較により同定した。
【0118】
sCTglyは、sCTgly参照標準品との比較としてピーク面積により定量した。この分析方法はまた、発酵培地からのSCTglyを定量するためにも使用した。
【0119】
実施例5−α-アミド化酵素を用いるグリシン延長化サケカルシトニンの真性サケカルシトニンへの変換
アミド化サケカルシトニンの至適収量を得るために、以下の臨界パラメーターが観測される:
1)そのアミド化反応は、反応容器に対するペプチドの非特異的な吸収を防止するためにシラン化したガラス容器中で実行される。
2)溶解した酸素の高いレベルは、拡散及び/又は振混ぜにより反応混合物中に維持される。好ましくは溶解した酸素のレベルは≧75%である。
3)アミド化を通してインキュベーション温度は35℃−39℃に維持される。
4)アミド化反応のpHは6.0と6.5の間に維持される。
5)アミド化反応中のグリシン延長化サケカルシトニンの開始濃度は3.5−10.5mg/ml(0.95mMから2.9mM)の間とすべきである。
6)実質的にプロテアーゼ無しのα-アミド化酵素(ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ、ここでは"PAM"と記す)の12,000-24,000単位/mlが反応混合物に加えられ且つ基質の濃度が上記5)中に示された通りである場合、その反応は4-6時間実行される。しかしながら、その反応時間は、生産物への有害な作用無しに24時間まで更に増加できる。
7)アスコルビン酸塩制限化の精製からアミド化反応を防止するため、アスコルビン酸塩の補足の同等物が該反応のほぼ中間点で加えられる。
【0120】
アミド化反応混合物の成分は以下のものである:
S-スルホン化、グリシン延長サケカルシトニンの3.5-10.5mg/ml
30mM MES緩衝液、pH6.0-6.5
0.5から1.0μM CuSO4(例えば0.5)
4-15mM KI(例えば5)
1-5%エタノール(例えば1%)
10-100μg/mlカタラーゼ(例えば35)
1.5-3.0mMアスコルビン酸塩(例えば1.5)
ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ(反応混合物のml当たり12,000-24,000単位。1単位はpH7で37℃で生産されるダンシルTyr-Val-Gly基質の変換の分当たりの1ピコモルである)。PAM酵素は、Millerら,ABB 298:380-388(1992)米国特許第4,708,934号、欧州公開0 308 067と0 382 403、及びBiotechnology Vol.II(1993)pp.64-70中に記載された通り得ることができ、その開示は参考によりここに加えられる。
【0121】
グリシン延長化サケカルシトニンは、実施例1と実施例2中に記載した通りの発酵法により生産し、アミド化の前に実施例3に記載したように精製できる。
【0122】
アミド化に用いた酵素がペプチジルグリシンα-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ(PHM)である場合には、PAMをPHM上述したそれと同じ反応混合物が使用される。加えて4から6時間のインキュベーション期間の終わりで、反応混合物のpHは塩基の添加により8と9の間にまで増加される。その反応混合物は、反応を終結するまでの補足の4から8時間の期間撹拌される。ペプチジルグリシンα-ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼは、PAMのN末端部分(ほぼ最初の40dKa)のみを発現することにより得ることができる。例えば、ミズノ等,BBRC Vol.148,No.2,pp.546-52(1987)を参照、それがミズノの"AE 1"に関係するその開示は参考によってここに合併される。カエル皮膚は自然にPHMを発現することが知られる。
【0123】
アミド化反応が終止されている後、その反応物は十分な量の水で3.0mg/ml以下となる最終ペプチド濃度になるように希釈する。十分な1M TRIS pH9.0がほぼ100mMにTRISの最終濃度になるように混合物に加えられる。もし必要なら、pHが2M NaOHで[8.0から9.0]に調整される。SO3-sCTの最終濃度を超える、L-システインの3.0倍過量がその反応混合物に撹拌しつつゆっくりと加えられる。
【0124】
もし必要なら、pHが2M NaOHで[8.0から9.0]に調整される。その再生反応物は室温で1時間、撹拌される。その反応は、pH2.0[1.9から2.3]に10%リン酸で酸性化することにより終止させる。
【0125】
実施例6アミド化後の精製
カチオン交換クロマトグラフィー#3(CEX#3):このカラムはα-アミド化と再生化に続きsCTを精製するために使用した。α-アミド化/再生化の後の主要な不純物はsCTGである。CEX#3クロマトグラフィーは、Toyopearl SP650S樹脂を充填したAmicon Vantage-Aカラム(18.0x16.0cm)を用いる。単位操作は注入用の水(WFI)と150mMリン酸ナトリウムpH5.5と一緒に0.5M,50mM及び175mM塩化ナトリウムを用いて達成される。その方法の工程の概略に記載は以下の通り:
1)操作流速は750ml/分にセットする。
2)クロマトグラフィーをモニターするために用いた以下のパラメーターがLC系制御装置を用いてセットされる:
UV波長230nm
範囲0.64 AUFS
導電率x1000
3)そのカラムは750ml/分の流速で少なくとも5分間、WFIによって最初に洗浄される。
4)希釈ポンプ(150mMリン酸ナトリウムpH5.0)は、50ml/分にセットし、且つそのカラムは安定なpHベースラインが観測されるまで750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで平衡化される。
5)そのカラムは、6.0以下の安定なpHベースラインが達成されるまで750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで再平衡化される。(注:もしカラムのpHが6.0以下でないなら、150mMリン酸ナトリウム洗浄が要求される。)もし150mMリン酸ナトリウム洗浄が実行されるなら、そのカラムは次の工程の操作の前に10mMリン酸ナトリウムpH5.5を用い再平衡化する必要がある。
6)再平衡化に続き、そのカラムは175mM塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5により750ml/分の流速で4分間、ブランク溶出にかけられる。
7)そのカラムは安定なpHベースラインが達成されるまで750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで再平衡化される。
8)一度平衡化が達成された10-25グラムのsCTを含むアミド化/再生化処理液は、2N水酸化ナトリウムを用い3.5にpH調整され、且つ400ml/分でCEX#3カラムにロードされる。そのサンプルのロードはWFIの500mlによってロードコンテナーを濯ぐことによって続行される。
9)そのロードに続き、カラムは750ml/分の流速で10mMリン酸ナトリウムで30分間、又はそのカラムのpHが5.0以上で安定化されるまで洗浄される。
10)カラムのpHが5.0以上で安定化しているそのカラムは、750ml/分の流速で50mm塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5で100分間又はsCTglyピークが出現するまで洗浄される。
11)100分間が満了し175mm塩化ナトリウムがその系に続けられる。
そのカラムは、750ml/分の流速で175mM塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5で洗浄し、次いで生産物が溶出される。全体の生産物ピークが一つの容器に採集される。CEX3溶出液材料の重量が測定され、次いで1N酢酸(10%フラクション重量)がそのフラクションに加えられる。
12)そのカラムは750ml/分の流速で15分間、0.5M塩化ナトリウム;10mMリン酸ナトリウムpH5.5で脱着化した。
13)脱着されているそのカラムに1.0M塩化ナトリウム/0.25N水酸化ナトリウムが該系に接続される。希釈ポンプは0.000ml/分にセットされ、該カラムは1.0M塩化ナトリウム/0.25N水酸化ナトリウムにより600ml/分の流速で少なくとも30分洗浄される。
14)そのカラムは750ml/分の流速で5分間WFIにより洗浄される。
15)そのカラムは500ml/分の流速で10mM水酸化ナトリウムにより30分間洗浄される。そのカラムはこれらの条件下で保存される。
【0126】
逆相クロマトグラフィー(Rp#2):この工程はCEX#3に続き、凍結乾燥の前の塩と緩衝液交換工程として用いられる。該工程の主要な目的は、酢酸塩と塩とを交換することである。RP#2クロマトグラフィーは、Amberchrom CG300md樹脂を充填したAmicon Vantage-Aカラム(13.0x12.5cm)を用いる。単位操作は、注入用尾水、エチルアルコール、250mM酢酸ナトリウムと0.5%酢酸を用いて達成される。
操作工程の概略記載は以下の通り:
1)CEX#3溶出液(ほぼ4リットル)は、リン酸によりpH2.0に酸性化し、333mM酢酸ナトリウム溶液の3等量により希釈し、少なくとも1時間放置させる。
2)流速は320ml/分にセットされ、一方希釈ポンプ(0.5%酢酸)は400ml/分の全般的な操作流速のために80ml/分にセットされる。
3)クロマトグラフィーをモニターするために用いた以下のパラメーターがLC系制御装置を用いてセットされる:
UV波長230nm
範囲2.54AUFS
導電率x1000
4)そのカラムは400ml/分の流速で安定な導電率が観測されるまで0.1%酢酸によって最初に洗浄される。
5)そのカラムは、安定したpHベースラインが観測されるまで400ml/分の流速で80%エチルアルコール、0.1%酢酸によって脱着される。
6)そのカラムは、安定したpHベースラインが観測されるまで0.1%酢酸によって洗浄される。
7)その洗浄の後、カラム試験が樹脂洗浄をたどるために実行される。
該カラムは40%エチルアルコール;0.1%酢酸によって400ml/分の流速で6分間、ブランク溶出にかけられる。そのカラム試験から採集された溶出液は分析試験のQCに従う。
8)そのカラムは400ml/分の流速で、安定した導電率ベースラインが観測されるまで0.1%酢酸によって洗浄される。
9)その洗浄の完了したなら、WFIがその入り口から外され、250mM酢酸ナトリウムが接続される。希釈ポンプは0.000ml/分にセットされる。そのカラムは、安定したpHベースラインか観測されるまで、400ml/分の流速で250mM酢酸ナトリウムにより平衡化される。
10)平衡が達成されたなら、CEX#3溶出液が、400ml/分で該RP#2カラムにロードされる。そのサンプルロードは、250mM酢酸ナトリウムの1.0リットルによってロードコンテナーを濯ぐことによって追出される。
11)そのカラムは、400ml/分の流速で60分間、250mM酢酸ナトリウムを用いて洗浄される。
12)酢酸ナトリウム洗浄に続き、その酢酸ナトリウムは入口から取り外され、WFIが接続される。希釈ポンプは80ml/分の流速に戻され、そのカラムは0.1%酢酸によって400ml/分の流速で25分間、洗浄される。
13)0.1%酢酸洗浄に続き、その生産物は、400ml/分の流速で40%エチルアルコール;0.1%酢酸によって溶出される。生産物ピークの全体を採集し、精製されたsCT粉末を得るために凍結乾燥にかけられる。
14)そのカラムは、少なくとも20分間、400ml/分の流速で80%エチルアルコール;0.1%酢酸によって脱着される。
15)脱着に続き、希釈ポンプは0.000ml/分にセットされ、そのカラムは少なくとも5分間、400ml/分の流速でWFIにより洗浄される。
16)WFI洗浄の後、WFIが入口から取り外され、0.5N水酸化ナトリウムが接続される。そのカラムは、少なくとも20分間、400ml/分の流速で0.5N水酸化ナトリウムによって洗浄される。
17)0.5N水酸化ナトリウムが該系から分離され且つWFIが接続される。そのカラムは400ml/分の流速で少なくとも20分間、50%エチルアルコールで洗浄される。そのカラムはこれらの条件下で保存される。
18)そのRP#3溶出液は、2から8℃で保存される。
【0127】
本発明がそれの特有の実施態様に関して記載されているとしても、多くの他の変形及び修正及び他の使用は当業者に明らかとなるであろう。本発明はそれ故に、ここでの特異的な開示に限定されること無しに、添付したクレームにのみある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの転写カセットを縦列で含む発現ベクターであって、それぞれのカセットは、
(a)OmpA、pelB、OmpC、OmpF、OmpT、β−la、PhoA、PhoS、及びStaphAから選択されるシグナルペプチドをコードしている核酸の読み枠3’に結合したペプチド生産物をコードしている核酸を持ったコード化領域;及び
(b)tacプロモーターがlacプロモーターの上流に存在する2つのプロモーターを縦列で有し、且つ少なくとも1のリボソーム結合サイトを含む、該コード化領域と操作可能に結合した制御領域;
を含み、
前記発現ベクターは、SecE、SecY、及びprlA−4から選択される少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードする核酸を更に含む、発現ベクター。
【請求項2】
上記ペプチド生産物のC末端アミノ酸がグリシンである、請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
請求項1または2記載のベクターにより形質転換した又は形質移入した宿主細胞。
【請求項4】
上記宿主細胞が大腸菌である、請求項3記載の宿主細胞。
【請求項5】
上記ペプチド生産物がサケカルシトニン前駆体であって、且つ上記宿主が大腸菌BLR株である、請求項4記載の宿主細胞。
【請求項6】
培地中で請求項3から5のいずれか一項記載の宿主細胞を培養すること、次いで該宿主細胞が培養されている培地からペプチド生産物を回収することを含む、ペプチド生産物の製造方法。
【請求項7】
(a)炭素源の存在する培地中で請求項3から5のいずれか一項記載の宿主細胞を培養すること、及びペプチド生産物の発現を誘導すること、同時に時間当たり0.05と0.20倍化の間の増殖率で上記宿主細胞の増殖を制御すること;及び
(b)その後培地からペプチド生産物を回収すること;
の工程を含む、ペプチド生産物の製造方法。
【請求項8】
膜透過量のグリシンを、上記制御した増殖の少なくとも一部の期間、培地に存在させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記ペプチド生産物を回収することが:
(a)培地から宿主細胞を分離すること;及び
(b)その培地を逆相液体クロマトグラフィーにかけること及びペプチド生産物を含んでいるフラクションを回収すること;及び
(c)工程(b)の上記フラクションをカチオン交換クロマトグラフィーにかけること;及び
(d)その後にペプチド生産物を含んでいるフラクションを回収すること;
を含む、請求項6から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
(a)上記宿主細胞がC末端グリシンを有するペプチド生産物を発現し;且つ
(b)上記ペプチド生産物がC末端グリシンをアミノ基に換えることによってアミド化ペプチドに変換される;
請求項7記載の方法。
【請求項11】
上記ペプチド生産物が、
(a)ペプチジルグリシンα−アミド化モノオキシゲナーゼ、又はペプチジルグリシンα−ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼの存在中で酸素及び還元剤と上記ペプチド生産物とを接触することによって反応混合物を形成すること;
(b)もし工程(a)でペプチジルグリシンα−アミド化モノオキシゲナーゼを使用しないなら、及びもしその反応混合物がそれまでに塩基性でないなら、それのpHが塩基性となるまで該反応混合物のpHを増加すること;及び
(c)上記反応混合物から上記アミド化ペプチドを回収すること;
によってアミド化ペプチドに変換される、請求項10記載の方法。
【請求項1】
2つの転写カセットを縦列で含む発現ベクターであって、それぞれのカセットは、
(a)OmpA、pelB、OmpC、OmpF、OmpT、β−la、PhoA、PhoS、及びStaphAから選択されるシグナルペプチドをコードしている核酸の読み枠3’に結合したペプチド生産物をコードしている核酸を持ったコード化領域;及び
(b)tacプロモーターがlacプロモーターの上流に存在する2つのプロモーターを縦列で有し、且つ少なくとも1のリボソーム結合サイトを含む、該コード化領域と操作可能に結合した制御領域;
を含み、
前記発現ベクターは、SecE、SecY、及びprlA−4から選択される少なくとも1の分泌促進ペプチドをコードする核酸を更に含む、発現ベクター。
【請求項2】
上記ペプチド生産物のC末端アミノ酸がグリシンである、請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
請求項1または2記載のベクターにより形質転換した又は形質移入した宿主細胞。
【請求項4】
上記宿主細胞が大腸菌である、請求項3記載の宿主細胞。
【請求項5】
上記ペプチド生産物がサケカルシトニン前駆体であって、且つ上記宿主が大腸菌BLR株である、請求項4記載の宿主細胞。
【請求項6】
培地中で請求項3から5のいずれか一項記載の宿主細胞を培養すること、次いで該宿主細胞が培養されている培地からペプチド生産物を回収することを含む、ペプチド生産物の製造方法。
【請求項7】
(a)炭素源の存在する培地中で請求項3から5のいずれか一項記載の宿主細胞を培養すること、及びペプチド生産物の発現を誘導すること、同時に時間当たり0.05と0.20倍化の間の増殖率で上記宿主細胞の増殖を制御すること;及び
(b)その後培地からペプチド生産物を回収すること;
の工程を含む、ペプチド生産物の製造方法。
【請求項8】
膜透過量のグリシンを、上記制御した増殖の少なくとも一部の期間、培地に存在させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記ペプチド生産物を回収することが:
(a)培地から宿主細胞を分離すること;及び
(b)その培地を逆相液体クロマトグラフィーにかけること及びペプチド生産物を含んでいるフラクションを回収すること;及び
(c)工程(b)の上記フラクションをカチオン交換クロマトグラフィーにかけること;及び
(d)その後にペプチド生産物を含んでいるフラクションを回収すること;
を含む、請求項6から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
(a)上記宿主細胞がC末端グリシンを有するペプチド生産物を発現し;且つ
(b)上記ペプチド生産物がC末端グリシンをアミノ基に換えることによってアミド化ペプチドに変換される;
請求項7記載の方法。
【請求項11】
上記ペプチド生産物が、
(a)ペプチジルグリシンα−アミド化モノオキシゲナーゼ、又はペプチジルグリシンα−ヒドロキシル化モノオキシゲナーゼの存在中で酸素及び還元剤と上記ペプチド生産物とを接触することによって反応混合物を形成すること;
(b)もし工程(a)でペプチジルグリシンα−アミド化モノオキシゲナーゼを使用しないなら、及びもしその反応混合物がそれまでに塩基性でないなら、それのpHが塩基性となるまで該反応混合物のpHを増加すること;及び
(c)上記反応混合物から上記アミド化ペプチドを回収すること;
によってアミド化ペプチドに変換される、請求項10記載の方法。
【図1A−1】
【図1A−2】
【図1B−1】
【図1B−2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1A−2】
【図1B−1】
【図1B−2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−24108(P2012−24108A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245398(P2011−245398)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願平10−544308の分割
【原出願日】平成10年4月15日(1998.4.15)
【出願人】(503195300)ユニジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願平10−544308の分割
【原出願日】平成10年4月15日(1998.4.15)
【出願人】(503195300)ユニジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】
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