説明

培養された細胞増殖の迅速な検出および評価方法

非液体、培地における微生物の固体群の細胞性微生物の増殖および代謝の迅速、かつ、正確な検出のための方法およびシステムが提供されている。同様にその中に含有される微生物の酸素含有量(分圧)をリン光の酸素依存性消光により計測する無毒性、水溶性、リン光化合物を含有するゲル化培地がさらに提供されており;または、このゲルは、微生物の増殖を発光スペクトルにおけるpH依存性強度変化または波長シフトにより示す蛍光pH指示薬を含有する。培地中の望ましくない微生物またはコロニーを、周囲の微生物に損傷を与えることなく死滅させるためのシステムおよび方法がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、酸素消光性リン光化合物または蛍光pH指示薬を用いる、ゲル化培地材料内に固定された微生物の増殖を迅速に検出および監視する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
増殖特徴は、各微生物毎に幅広く異なる。例えば、比較的急速に増殖するマイコバクテリア(Mycobacteria)は、増殖を示すためにおよそ1週間必要であり、一方で、比較的よりゆっくりと増殖する結核菌(M. tuberculosis)、ウシ結核菌(M. bovis)およびトリ結核菌(M. avium)などのAIDS患者に現れることで知られる結核病原体は、標準的な方法によって増殖が検出されるまで、従来の条件下での少なくとも8〜10週間のインキュベーションを必要とすると見積もられている。そのため、種々の微生物の細胞増殖の迅速な検出および正確な計測のための方法は、産業発酵プロセスにおける微生物の産生における収率の監視、および病原性微生物の早期の検出を含む様々な目的のために有用である。
【0003】
微生物を液体培地中で増殖することは周知の技術である。例えば、Sambrookら(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York);Ausubelら(1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York);およびGerhardtら(eds., 1994, Methods for General and Molecular Bacteriology, American Society for Microbiology, Washington, DC)を参照のこと。微生物が液体培地中で増殖されるとき、液体培地における酸素欠乏速度の正確な計測を用いて、培養液における、接種後の生存している生物の存在、ならびに培養液におけるその生物の増殖速度を確認することが可能である(例えば、米国特許第6,165,741号明細書を参照のこと)。
【0004】
液体培地における増殖は、しかしながら、ゆっくり増殖する微生物の迅速な同定、特に、微生物の混合物があり、個々のクローンコロニーを同定しようとする場合には、あまり有用ではない。微生物の培養期間が長いほど、通常は、増殖の速い細菌、イースト菌または真菌類による汚染のリスクが高まる。増殖の速い微生物は増殖の遅い微生物との競合に勝り、および培養物を過剰増殖させて、増殖の遅い微生物を覆ってしまう傾向にある。しかも、このような微生物の混合物において、個々の細胞の個別の増殖について同定し、選択することは、もはや可能でない。
【0005】
寒天の層上または他の増殖培地への微生物のプレーティングが、個々の微生物を分離するために、および個々の細胞のクローン増殖の単離を許容するために長い間用いられてきた。このような技術は、当業者に周知である。例えば、Sambrookら、上記を参照、1989年;Ausubelら、上記を参照、1997年;Gerhardtら、上記を参照、1994年)を参照のこと。しかし、増殖の遅い微生物のプレーティングは、従来の手段によって、増殖を検出するために長期のインキュベーション期間を未だ必要としており、時間の経過による汚染と増大する手間のリスクを高めている。
【0006】
培養液またはゲルにおける微生物の細胞増殖を視覚的に示すための方法を記載する米国特許第5,523,214号明細書等のように、細胞増殖の検出のための数々の方法が公知である。微生物としては、尿試料、創傷および膿瘍、血液、痰等からの物質から得られる、例えば、真菌、イースト菌および、マイコバクテリア(Mycobacteria)、非発酵菌、球菌、棹菌、球棹菌、腸内細菌等を含む細菌が挙げられる。しかしながら、’214号特許に記載の検出方法は、培地中に酸化還元指示薬を利用し、微生物の増殖を示すために必要とされる酸化還元指示薬の量は細胞に有毒でもあり得、および/またはこのような方法は毒性を回避すると共に不当なネガティブな結果を防ぐために過量の注意を必要とするために、この方法は、商業的に実用的ではないことを意味している。しかも、すべての他の従来技術方法のように、’214号の方法が培養において増殖の遅い細胞の増殖を検出するために用いられる場合、細胞は、微生物性細胞増殖が示されるまで培養中に数週間を必要とする。今まで、本発明者自身の研究を除き、わずかに1日または2日のうちに培養における細胞増殖の迅速、かつ、信頼性のある検出をもたらす有効な検出方法はない。
【0007】
酸素が水性液体増殖培地におけるリン光を消光させるという原理に基づいて、米国特許第6,165,741号明細書は、培養における微生物の増殖または代謝を検出するための1つの方法を提供する。溶解した酸素消光性リン光化合物を有する液体培地においては、微生物性サンプルが増殖するに伴って酸素が消費され、リン光化合物の酸素消光が低減する。換言すると、微生物の増殖または代謝の指標であるリン光は細胞増殖と正比例して増加し、培地中で計測可能なレベルで定量的に検出可能である。しかしながら、標準的なプレートまたは’741号特許における容器での細胞の増殖に用いられる液体培地の典型的な体積は、相当な体積の試薬およびマーカー材料の使用を必要とし、他の方法よりは迅速である一方、この方法を用いて信頼性のある数値を提供するためには数日間が必要とされる。しかも、液体培地技術が用いられているため、’741号特許は、個々のクローンコロニーの迅速な同定および単離が可能ではない。
【0008】
Hooijmansら((1990)Appl. Microbiol. Biotechnol. 33:611-618)は、ゲルビーズまたは円柱状の管ゲルに固定化されたの大腸菌(E. coli)の時間依存性の酸素濃度勾配の計測を教示する。酸素は、フローチャンバ、マイクロマニピュレータおよび立体顕微鏡を含む酸素マイクロセンサを用いて計測され、次いで、計測されたデータがコンピュータによって取得される。しかしながら、この方法の複雑さ、および酸素マイクロセンサを含む専門的な器具を使用する必要性が、これを迅速な増殖検出の目的には不適としている。
【0009】
Laehdesmaekiら((1989) Analyst 125:1889-1895)は、物理的担体と電気化学的pHセンサの表面との間に挟まれたアガロースマトリックスへの細胞の固定化を開示する(Cytosensor Microphysiometer)。蛍光技術が、増殖している微生物のpHの変化を監視するために用いられている。加えて、研究者は、電気化学的pHセンサとの使用のために蛍光pH指示薬で標識化されたマイクロキャリアビーズ上で増殖される細胞の使い捨てのサンプルの使用を開示する。しかしながら、この方法は、他の従来技術方法と同一の欠点を被る。蛍光指示薬が用いられるが、細胞が固定化されていないため、開示の方法は、個々の細胞またはコロニーを培地から単離する手段を提供することができない。
【0010】
Jeffreyら(米国特許第6,777,226号明細書)は、微生物を検出するためのセンサ装置を開示する。センサ装置は、微生物を固定化するためのマトリックス層および、微生物の増殖の監視に用いられる蛍光指示薬を含むセンサ層を有する多層構築物を開示する。しかしながら、’226号特許においては、センサ層は、固定化マトリックス層とは個別の構成要素である。
【0011】
それ故、本発明以前においては、複雑なマイクロセンサ、層化、または誤ったネガティブな結果をもたらす可能性がある細胞への毒性のリスクが不要であり、その一方で、さらなる増殖、操作および評価のために個々のコロニーの採取を同時に許容する単純なシステムを用いる細胞増殖の監視および迅速な検出方法について、未だ対処されていない必要性が当該技術分野において残っていた。好ましくは、このような検出方法は、1日以内で信頼性のある結果をもたらし、サンプルあたりの生物の数の観点で統計的限界まで、細胞増殖の迅速、かつ、高感度の検出を許容するであろう。しかも、このような方法は、自動化形態に至適に適応するはずである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、少なくとも1種の微生物の細胞の固体群を、微生物に無毒性である溶解された酸素消光性リン光化合物を含む水性ゲル化培地中に固定化すること;これにより、リン光化合物が培地における酸素圧力に応答性であるよう、各細胞と周囲の培地における酸素感受性リン光体との間の伝達可能な接触を維持すること;リン光を発するよう、溶解されたリン光化合物を励起すること;およびゲル化培地においてリン光を検出することを含む固定化細胞性微生物の増殖または代謝を迅速に検出する方法を提供し、ここで、リン光の増加は、微生物の増殖または代謝の指標である。無毒性、可溶性、酸素消光性リン光化合物は、好ましくはポルフィリン化合物であり、より好ましくは、以下により詳細に開示されているとおり、第1、第2、第3、第4または第5世代デンドリマーである。
【0013】
少なくとも1種の嫌気性微生物の細胞の固体群を、微生物に無毒性である溶解された酸素消光性蛍光pH指示化合物を含む水性ゲル化培地中に固定化すること;これにより消光性蛍光pH指示薬が培地における水素イオン変化に応答性であるよう、各細胞と周囲の培地における酸素消光性蛍光pH指示薬との間の伝達可能な接触を維持すること;蛍光を発するよう、溶解された蛍光指示薬を励起すること、およびゲル化培地における、蛍光pH指示薬による蛍光発光の変化を検出することを含む固定化嫌気性微生物の増殖または代謝を検出する方法もまた提供されており、ここで、蛍光発光の変化は微生物の増殖または代謝からもたらされる水素イオン変化の指標である。それ故、以下にさらに記載されるであろうとおり、他と同様に上述の要求が満たされる。
【0014】
加えて、本発明は、予め形成または予め成形され得る、または必要に応じて形成され得るものであり、無菌、使い捨て、耐破壊性プラスチック培養バッグをさらに含み得る、微生物の増殖または代謝の迅速な検出に用いられるための中空型枠グロースチャンバを提供する。代替的に、培養バッグが空型枠チャンバの代わりであり得る。
【0015】
グロースチャンバ内のゲルに固定化された1種または複数種の望ましくない微生物を死滅させるためのシステムがさらに提供され、ここで、システムは:励起光源、光検出器、平行レーザダイオード、グロースチャンバ装置を前記平行レーザダイオードと相対的に位置させるための手段、ならびに励起光源、光検出器および平行レーザダイオードを操作可能に相互接続する処理手段を含む。本発明の一実施の形態において、励起光源はグロースチャンバ内の光輝性分子を励起し、次いで、光検出器は光輝性分子から放射される光を検出し、そして処理手段が検出された発光に応答して平行レーザダイオードの照準を定めると共に、周囲の所望の微生物を死滅させることなくグロースチャンバ内に固定化された1種または複数種の選択された望ましくない微生物を死滅させるに十分な強度までレーザダイオードを駆動する。本システムのグロースチャンバ内に固定された1種または複数種の望ましくない微生物を、その中に含有される他の所望の微生物を損傷させることなく死滅させる方法もまた提供されている。
【0016】
さらに、少なくとも1種の固定化微生物の増殖または代謝の迅速な検出に用いられるキットが提供されている。
【0017】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特性の一部が、以下に続く明細書、実施例および図面に記載されることとなり、それらのすべてが単に例示的目的であることが意図されており、本発明をいかようにも制限することを意図しない。そして、下記の検証で当業者に明らかになることとなり、または本発明の実施により教示され得る。
【0018】
前述の概要、ならびに以下の本発明の詳細な説明は、非限定的であることが意図される添付の図面と併せて読まれるときにより良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(ある好ましい実施の形態の詳細な説明)
本発明は、非液体培地における微生物増殖の増殖を迅速、かつ正確に実証するための方法を提供する。さらに、増殖または代謝の指標を包含することにより、および微生物をゲル中に固定化することにより迅速な検出が促進され、一方で、同時に、従来技術の遅い液体培養方法において対照的に必要である付加的な処置によって度々もたらされる汚染のリスクを著しく低減させる。したがって、好ましい実施の形態において、ゲル化培地は、リン光の酸素依存性消光により酸素含有量(分圧)を計測する無毒性、水溶性、リン光化合物を含有し、他においては、発光スペクトルにおけるpH依存性強度変化または波長シフトにより増殖を示す蛍光pH指示薬を含有する。
【0020】
培養において増殖する微生物は酸素を消費するため、無菌培養(例えば、その中で増殖する微生物のない)と比較して、接種培地における細胞増殖を検出することが可能である。それ故、酸素消費速度に基づいて、生存微生物の存在下では、局所的な酸素の低減が、固定された、非液体培地において増殖する各細胞またはクローンコロニー付近の領域で検出可能である。さらに、特定の生物の各々に対する局所的な酸素消費速度を定量化することも可能である。したがって、1種または複数種の、無毒性、水溶性および/またはそうでなければ生理学的培地に可溶性のリン光化合物が、化合物のリン光の酸素依存性消光(酸素の分圧)による酸素含有量を計測するために、培地に含まれている。リン光は、以下により詳細に記載されるであろうとおり化合物の励起の後に計測可能である。この方法は、好気性生物および細胞の代謝の迅速な検出に有用である。
【0021】
しかしながら、多くの病原体は偏性嫌気性菌または通気性嫌気性菌であり、酸素がきわめて低レベルであるか、酸素圧力がゼロである培地において培養しなければならない。すべての生存微生物は、細胞分裂および増殖の過程で酸性代謝産物を培地に産生する。したがって、細胞を増殖させる弱緩衝固定、非液体培地においては、細胞付近のゲルにおいてpHの局所的な低下が生じる。結果的に、このような微生物の増殖は、蛍光pH指示薬での蛍光発光の局所的な変化、または色pH指示薬の吸収の局所的な変化を迅速に検出することにより、本発明の方法によって判定され、さらに、これにより、増殖している微生物の位置も示す。したがって、嫌気性培地における病原体増殖の迅速な検出について設計された少なくとも1つの実施の形態においては、以下により詳細に記載されるであろうとおり、1種または複数種の可溶性蛍光または色pH指示化合物が、酸産生微生物の増殖を示すために含まれる。
【0022】
本発明のさらに他の実施の形態においては、無毒性、水溶性および/またはそうでなければ生理学的培地に可溶性のリン光化合物および蛍光化合物が混合可能であり、培地において一緒に用いられる方法が提供されている。
【0023】
さらに、個々の細胞またはコロニーが同定され、さらなる処置のために個別に採取され得るよう、増殖している微生物の位置は、本発明のゲル化培地において固定されている。一態様において、病原体増殖の、迅速な増殖の検出が提供されている。例えば、結核を有していると疑われる患者の場合には、疾病介入を早急に提供するため、および他の患者および医療スタッフの保護のために隔離が必要であるかを判定するために伝染性マイコバクテリア(Mycobacteria)の増殖を可能な限り早期に検出することが重要である。一旦生物が検出されたら、本方法は、例えば、細胞の特徴付けおよび同定といった微生物の単離物のさらなるテストを実施する能力、または感染患者の適切な医学的治療を促進するために同定した細胞の抗生物質感受性を判定する能力を、有利に提供する。
【0024】
本発明は、接種における微生物の増殖のきわめて迅速な検出を、有利に可能にする。典型的には、本方法は、迅速な倍化時間の細菌の増殖の検出にわずかに約1〜2時間、より遅い倍化時間の1つを有する結核菌(M. tuberculosis)にわずかに約12〜72時間までしか必要としない。迅速な検出能力は、微生物を含有するゲル内に酸素感受性リン光体、蛍光pH指示薬、または色pH指示薬を有することにより達成された、きわめて高い感受性からもたらされる。それ故、細胞は固定的な位置にあるため、細胞増殖は、直近、および細胞コロニー周囲の培地の領域において、酸素が消費され、またはpHの変化が生じるに伴って検出可能である。さらに、本発明のゲル化培地は取り扱いが容易であり、および酸素感受性リン光体またはpH指示薬がその中に含有されているため、接種微生物の生存度の判定、ならびに単離した細胞またはコロニーの移動およびその後の処置が簡素化される。
【0025】
本発明の実施の形態において、増殖または代謝が迅速に検出された後、増殖している細胞または細胞コロニーの位置がマークまたは記載され、次いで、個々の生存クローンコロニーが採取され、純粋なクローン培養としてさらに増殖される。それ故、本方法は、特にこれらに限定されないが、抗生物質感受性の判定および、PCRまたはプローブハイブリダイゼーションなどのDNA分析を含む微生物の同定および特徴付けのためのいずれかの公知のまたは未発見の方法の使用を有利に促進する。
【0026】
他の実施の形態においては、特に、圧倒的に増殖の遅い微生物の増殖を判定することが、通常きわめて困難である、微生物の混合物を含有する培養において、本方法は微生物自体の倍化時間を利用している。例えば、増殖の遅い細胞が倍化する前に数回倍化する、急速に増殖するほとんどの細菌などの生物は早期に検出される。それ故、増殖の速い微生物が研究の標的である場合、増殖の遅い微生物がコロニーを形成し始める前にすでに、選択し得る。しかしながら、標的細胞が増殖の遅い微生物である場合、混合培養における増殖の速い微生物がゲル化培地中の栄養分および酸素を消費してしまい、より増殖の遅い細胞の増殖をマスクしてしまう。しかしながら、その場合、本方法は、例えば平行レーザダイオードからの紫外光の短時間の照射によって、不必要な増殖の速いものを死滅させて、増殖の遅い微生物の非常により純粋な固体群の増殖のために、ゲル化培地をきれいにすることが可能である。
【0027】
(微生物)
本発明において、テストサンプルにおける微生物の固体群が、選択されたリン光体または蛍光または色pH指示薬を含有するゲル化培地に導入される。テスト微生物(本明細書において、単に「微生体」または「生物」または「細胞」としても称される)は、分析前に段階希釈を必要とする、大きい体液体積中に低細菌数を有する血液または小体積の体液中に高細菌数を有する尿あるいは創傷滲出液などのいずれかの生物学的サンプルに見出され得る単細胞生物である。テスト微生物としては、特にこれらに限定されないが、尿試料、創傷および膿瘍由来の物質、または血液、組織および痰サンプルなどの患者からの病原性サンプルが挙げられる。
【0028】
本明細書において用いられるところ、「微生物」は、少なくとも約3回の倍化で細胞のクローンコロニーとしてインビトロで増殖し得る1種または複数種の生物を指す。これは、例えば、特にこれらに限定されないが:細菌、放線菌目、シアノバクテリア(単細胞藻類)、真菌、原生動物、動物細胞、植物細胞およびウイルスを含む。例示的な細菌としては、これらに限定されないが:バチルス属(Bacillus)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、メタノモナス属(Methanomonas)、プロタミノバクター属(Protaminobacter)、メチロコッカス属(Methylococcus)、アンスロバクター属(Arthrobacter)、メチロモナス属(Methylomonas)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、アセトバクター属(Acetobacter)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、アクロモバクター属(Achromobacter)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、メチロサイナム属(Methylosinum)、メチロシスティス属(Methylocystis)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、およびこれらの混合物からの種が挙げられる。例示的な真菌としては:サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、およびアオレオバシジウム属(Aureobasidium);および例えばクロレラ属(Chlorella)といった藻類からの種が挙げられる。例示的な昆虫細胞としては、ヨトウガ(Spodopterafrugiperda)(例えば、Sf9およびSf21株細胞)およびショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞が挙げられる。例示的な哺乳類細胞としては:BHK細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT10細胞、VERO細胞、−COS1細胞、COS7細胞、チャイニーズハムスター(Chinese hamster)卵巣細胞(CHO)細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、293細胞、HEPG2細胞、HeLa細胞、L細胞、MDCK細胞、HEK293細胞、W138細胞、マウスES株細胞(例えば、菌株129/SV、C57/BL6、DBA−1、129/SVJ由来)、K562細胞、ジャーカット(Jurkat)細胞、およびBW5147細胞が挙げられる。形質転換体、形質移入体、一次および二次細胞培養、ならびにハイブリドーマおよび他の融合細胞もまた、本発明における使用のために意図される。他の哺乳類株細胞が周知であり、American Type Culture Collection (ATCC)(米国バージニア州マナサス(Manassas, Va., USA))およびCoriell Cell Repositories (米国ニュージャージー州カムデン(Camden, NJ., USA))のNational Institute of General Medical Sciences(NIGMS) Human Genetic Cell Repositoryから容易に入手可能である。
【0029】
本発明の迅速な検出特性は、細胞増殖の実証/同定に典型的に必要な時間を、有利に短縮する。本発明の方法は、AIDS患者に現れ得る結核菌(M. tuberculosis)およびウシ結核菌(M. bovis)、ならびにトリ結核菌(M. avium)などの増殖の遅い結核病原体についてさえも、増殖の迅速な実証(約12〜72時間)に特に好適である。従来の、液体培地方法を用いて、同一の微生物について細胞増殖が明らかになるまでに必要な時間、すなわち、典型的には少なくとも8〜10週間のインキュベーションと比して、≦72時間で増殖が検出可能であることは、相当により迅速である。
【0030】
それ故、本発明の方法はまた、化学的転換、タンパク質調製、化学反応/化学化合物製造を含む多様な目的(その実施例が米国特許第4,411,997号明細書において考察されている)について幅広く用いられる、発酵プロセスにおける微生物の産生の監視に有用である。このような微生物は、好気性および好気性タイプの代謝の間で切り替えることが可能である微生体である通気性嫌気性菌、または偏性嫌気性菌のいずれかであり得る。非限定的な例示的な細菌性嫌気性菌としては:バクテロイド属(Bacteroides)、プレボテラ属(Prevotella)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、デサルフォビブリオ属(Desulfovibrio)、デサルフロモナス属(Desulfuromonas)、デサルホトマキュルム属(Desulfotomaculum)、スポロサルチーナ属(Sporosarcina)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、ベイロネラ属(Veillonella)、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、メタノバクテリウム属(Methanobacterium)、メトアノコッカス属(Methoanococcus)、およびアーケオグロブス属(Archaeoglobus)が挙げられる。
【0031】
本発明はまた、潜在的な形質転換体または形質移入体の増殖の迅速な検出に有用である。形質転換体は、例えば、特にこれらに限定されないが、抗生物質を含む増殖選択剤の培地への添加により選択され得る。
【0032】
本発明の方法によれば、テストのために選択されたテスト微生物または微生体含有サンプルは、以下により詳細に記載の方法により、ゲル化培地の全体に均一に分布されなければならない。液体培地がゲル化した後での微生物接種物の添加はこのような分布は可能とはならず、それ故、細胞は、培地が未だ液体状態である間に分布されなければならない。
【0033】
(培地)
本発明は、微生物の細胞増殖の迅速な検出のために「ゲル化」培地を用い、これにより、標準的な液体培地またはプレーティング法を超える利点を提供する。本明細書において用いられるところ、「ゲル」は、重合されて固体または半固体マトリックスとなる初期の液体培地を指す。本明細書において用いられるところ、「液体培地」は、微生物接種物の増殖に必要な少なくとも1種の成分を含有する水性培地を指す。固体または半固体マトリックスの形成前における、液状のゲル(ゲル化材料および液体培地を含む)は、本明細書において「ゲル化培地」として称される。
【0034】
認知されている「ゲル化材料」は、液体培地の重合を開始して、ゲルを形成し、そして、本発明における使用のためには、無毒性であると共に、細胞増殖および代謝に適合性でなければならない。このようなゲル化材料は、天然および合成成分を含む、単独でまたは組み合わせて用いられ得る1種以上の組成物または化合物を含む。ゲル化材料の非限定的な実施例としては:寒天、アガロース、カラギーナン、ベントナイト、アルギン酸塩、コラーゲン、ゼラチン、溶融ケイ酸、水溶性デンプン、ポリアクリレート、セルロース、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリアクリルアミド、多糖類、ヒドロゲル粉末、またはいずれかの他のゲル化または粘度増強材が挙げられる。
【0035】
いくつかのゲル化材料は、ゲル化材料を液体培地中に溶解するために高温への加熱を必要とするが、このような高温はほとんどの微生物に対して致死的であろう。臨界温度未満への冷却で、加熱ゲル化培地はゲル化を生じるであろう。しかしながら、細胞は、細胞に死または外傷をもたらす可能性のある高温に露出されることができないと認識され、本方法は、微生物は、ゲル化培地の全体に均一に分布されていることを必要とする。したがって、微生物接種物は、ゲル化の前であるが、すでに加熱された培地が細胞増殖に好適な温度に冷却した後に液体培地に添加されていなければならない。しかしながら、ゲル化材料および液体培地の選択は、微生物を液体培地に添加するために好適な温度パラメータの判定と共に、細胞生物学の当業者には周知であろう。
【0036】
好ましいゲル化材料は、低濃度のゲル化材料でゲル化し、テストされているサンプル中の細胞が、ゲルによって物理的に制限されずに少なくとも約3回分裂(または倍化)することができる三次元マトリックスを形成する。多数の細胞を必要とする実施の形態において、微生物は、および少なくとも約8回の倍化、およびより好ましくは、少なくとも約10回の倍化で増殖することができるべきである。他の実施の形態において、ゲルは、含まれる細胞のその後の増殖に悪影響を及ぼさないプロセスによって、容易に消化されることが可能であるゲル化材料から形成されることが好ましい。当業者にとって利用可能なゲル化材料は公知であり、テストに選択されたサンプル中の微生物または微生体の増殖に好適であるゲル化材料を選択することが可能であろう。
【0037】
重合前に、液体培地は、テストされるサンプル中の微生物または微生体の細胞分裂および増殖に必要な、少なくとも1種の成分、好ましくはすべての成分を含有する。このような成分の非限定的な実施例としては:細胞増殖用の栄養分、ホルモンおよび増殖因子、および血清が挙げられる。栄養分としては、これらに限定されないが:有機および無機塩、必須アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質、脂肪酸、糖質、デンプン、核酸、窒素化合物、微量元素およびビタミンが挙げられる。
【0038】
加えて、培地は、例えば、これらに限定されないが、pH緩衝材、抗生物質、選択剤、発現誘導剤および、酸素消費反応の酵素−基質組み合わせなどの酸素含有量を低減させる薬剤を含有し得る。このような酵素−基質組み合わせとしては、これらに限定されないが:グルコース、グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼ、およびアスコルビン酸およびアスコルビン酸オキシダーゼが挙げられる。選択薬剤および発現誘導剤は、本発明において形質転換体を迅速に同定するために特に有用であり、当業者に周知である。培地はまた、細胞増殖および培養における当業者に公知であろうとおり、特にこれらに限定されないが、酸素濃度、二酸化炭素濃度およびpHなどの特性に関して、微生物増殖のために必要に応じて調節され得る。
【0039】
添加の薬剤として、栄養分または他の化合物が本発明のゲル化培地に添加され、これらは、添加物が、最終ゲル化培地において均質に分布されており、および細胞分裂および増殖の最中に細胞に利用可能であろう形態、少なくとも3回の倍化に十分な量で存在する限りにおいて、ゲル化材料または液体培地のいずれか、またはその両方に最初から添加されていてもよい。添加の順番は示唆されない。
【0040】
本明細書において用いられるところ、「接種混合物」とは、増殖または代謝指示薬を含有し、すべての必要な増殖添加剤およびゲル化剤がその中に溶解され、および微生物のテストサンプルが添加されたゲル化前のゲル化培地を指す。指示薬および微生物のゲル化培地への添加の順番は、しかしながら、示唆されない。実際には、増殖または代謝指示薬は、最終ゲルの形成の前に、液体培地またはゲル化培地のいずれかに添加され得る。指示薬または微生物のいずれかがゲル化培地にそれ以上添加され得ない時点は、添加物がそれ以上は均一または均質に培地の全体に分布し得ないような程度までゲルが重合した時点である。しかしながら、この時点までは、細胞生物学に精通した当業者によって容易に認識されるであろうとおり、いずれの順番でも添加を行うことが可能である。
【0041】
好ましくは、培地に添加された微生物の数は、このシステムの最大検出限界を超えず、より好ましくはそれ未満である。システムの最大検出限界の推定は以下により詳細に考察されている。
【0042】
生物学的サンプル中の微生物の濃度が不明または例えば尿サンプルなどのように大きいと考えられる一定の実施の形態においては、公知の方法により、適切な、無菌、等張、水溶液を用いて、ゲル化培地への添加の前にサンプルの希釈系を調製することが有用である。次いで、各希釈物が、増殖および検出の目的のために、本発明による無菌ゲル化培地の個別の一定分量に添加される。このような希釈系は、増殖検出システムの有効性およびその後の個々のクローンコロニーの採取を低減させ得る、個別の細胞が相互に直ぐ隣接して増殖する可能性を低減させるであろう。
【0043】
(ゲルマトリックスの形成および使用)
本発明のゲルマトリックスを形成するために、培養、指示薬および細胞増殖、代謝および分裂を少なくとも3回以上の倍化を許容するために必要なすべての添加剤を含む「接種混合物」が、以下により詳細に記載の例示の形態のものなどの中空型枠グロースチャンバ中におかれる。一旦、接種混合物がゲル化を生じ、固体または半固体マトリックスを形成したら、これは、本明細書において、同義的に、「ゲル化培地」または単に「ゲル」として称される。ゲル化培地は、基本的に、細胞の増殖および分裂も許容しながらも、2つ以上の細胞が各々の増殖領域内にくるような程度まで、著しく動き、移動しまたは拡散しないように、その中に含有される各細胞を固定化させるよう機能する。
【0044】
「増殖領域」とは、細胞を囲むゲル化培地中の栄養分、酸素および他の成分の三次元領域または暈を指し、本方法による3回以上の倍化の最中に細胞により消費される(3回の倍化の後には、当然、クローンコロニーが形成されていることとなり、もはや単一の細胞ではないが、細胞への参照が続けられることとなり、これは、細胞の分裂から増殖したいずれかのコロニーを含むことを意味する)。一旦、1つの細胞の周囲の暈が他の無関係の細胞の周囲の暈と重畳すると、他の細胞によってすでに消費された利用可能な栄養分または酸素の欠乏は、細胞に必要な増殖材料の低減、およびこのような低減の長さおよび程度に応じて、不都合なことに最終増殖分析に影響する可能性がある。したがって、繰り返すが、本発明の目的は、正確なデータの提供を可能にすることであり、微生物サンプル内の細胞が良好に離間されていなければならず、個々の無関係の細胞または細胞コロニーあるいは各々の周囲の増殖領域の重畳があってはならない。
【0045】
ゲル化培地はまた、サンプル中の微生物の増殖しているコロニーとゲル中の酸素感受性リン光体または蛍光pH指示薬との伝達可能な接触を維持するよう機能する。「伝達可能な接触」という用語は、本明細書において用いられるところ、選択された指示薬が、各細胞またはコロニーに関連する増殖領域における酸素圧力が検出可能な方法で指示薬に影響するよう各細胞またはコロニーと接触している、または各細胞またはコロニーのすぐ周囲の増殖領域内にあることを意味している。
【0046】
中空型枠は、内部に形成されたゲル中に、酸素消光性リン光またはpH感受性蛍光または吸収変化が検出可能である限り、いずれのサイズまたは形状であってもよい。この中空型枠は、接種混合物をゲル化プロセスの最中に含有し、「グロースチャンバ」(「培養チャンバ」または単に「チャンバ」としても称される)を形成し、および一定の実施の形態において、ゲル表面の空気への露出をも最低限とし、これにより、汚染、または外気を介したゲル界面への新たな酸素の拡散を制限する。好ましくは、中空型枠は、ゲル化培地に付与される、均一な円柱状のまたは矩形厚板形状を画定する。円柱状または「管」状ゲルは、例えば好ましくは約1〜3mm以下の直径を有するポリプロピレンまたはガラス管で形成されていてもよい。通常はポリエチレンまたはポリプロピレンであって、好ましくは清透または透光性である、所望の長さに容易に切断される生物学的に適合性の標準的な管類が、増殖している微生物の検出の後に、個々のコロニーの分離を容易にするために好ましい。
【0047】
中空型枠が矩形厚板形状チャンバを画定する場合、このような形態で得られるゲルは、「スラブ(厚板)ゲル」として称される。図1Aに図式的に示されているとおり、矩形厚板形状について、中空型枠10は、相互に平行であると共にそれらの間に配置されたサイドスペーサ14によって分離されている2枚の同等の平坦なプレート12を備える。スペーサは、0.2〜2.0ミリメートル(mm)厚、好ましくは約0.5mm厚の範囲である。厚さは、有用に変化可能であり、ここで、より薄いことは、より速い検出および、検出が行われるときのコロニー中のより少ない細胞を意味する。したがって、より多くの細胞数が所望される場合があり得、この場合には、より大きい空間が所望されることとなる。それ故、一対のスペーサの厚さは、ゲルの厚さを画定するよう、さらに接種混合物を中空型枠内に含有するよう、また、混合物がゲル化を待つ、あるいはゲル化している間の漏れを低減するよう機能する。図1Bは、図1Aの中空型枠の断面を示し、中空型枠10のスペーサ14によって画定されたチャンバ空間の比較的均一な厚さを示している。
【0048】
実施の形態において、2枚のサイドスペーサ14に加えて、平坦なプレート12は、図1Aに示されるとおり、随意的な底部スペーサ16によってさらに分離されている。底部スペーサ16は、特にこれらに限定されないが、寒天、アガロースまたはワセリン系材料の薄いプラギング層を含む、底縁部をシールする手段(混合物がゲル化する間中空型枠チャンバ内に接種混合物を維持するため)により代替的に置き換えられてもよい。さらに他の実施の形態において、1つまたは複数のスペーサが、1つまたは複数の平坦なプレートに、例えば接着、溶接等により永久的に固定されており、またはこれらは、最初から結合して製造される。側部および底部スペーサは、好ましくは、組み立てられた中空型枠10においては、平坦なプレート12の縁部と位置あわせされる。側部スペーサ14は、任意により、混合物がゲル化する間液体接種混合物をさらに含有するようシールされる。アセンブリの最中、中空型枠10は、プレートおよびスペーサの相互に密接な接触が維持されるよう例えばクランプにより固定される。部品の間の結合部がシールされれば、クランプは使用中に取り外し得、または代わりに、そのまま残っていてもよい。複数の組み立てた中空型枠グロースチャンバを保持するよう設計されたデバイスもまた意図される。
【0049】
いくつかの実施の形態において、平坦なプレート12は、酸素不透過性材料製の剛性または半剛性プレートである一方、他の場合において平坦なプレート12は、剛性または半剛性酸素透過性材料製である。ガラス、ポリカーボネートおよびPlexiglas(登録商標)などの透明なプラスチック、および透明なセラミックが、本発明におけるプレート12またはスペーサ14および16での使用に好適な材料の非限定的な実施例である。任意により、2枚の平坦なプレート12は異なる材料である。このような実施の形態においては、少なくとも一方のプレートは、リン光体を励起するためおよびリン光を検出するため、または蛍光を励起しおよび検出するため、または色変化を検出するために透光性でなければならない。他方のプレートは、励起または検出ステップのいずれにも干渉してはならない。さらに、半剛性プレートが中空型枠の一部を形成するために用いられる場合、いくつかの実施の形態においては、剛性である第3のプレート12をその隣に置くことにより面として維持され得る。このような実施の形態において、剛性プレートは、単に、半剛性プレートを平坦に維持し、これにより、ゲルの厚さを実質的に均一に維持するよう役立つ。
【0050】
いくつかの実施の形態において、内部プレート表面の1つまたは複数が、ゲルに接触するプレート表面で、ゲルのプレートへの固着を低減または防止するよう前処理されている。この前処理は、ゲル中での増殖が検出された微生物を除去する前のプレートの移動を容易とする。シリコン−ベースの前処理が非限定的な実施例である。生物学的増殖と適合性の他のこのような材料は、当業者に公知であろう。
【0051】
平坦なプレート12は、すべての場合において同等のサイズである必要はない。いくつかの実施の形態において、平坦なプレート12は異なる長さである。長さの差は、接種混合物の中空型枠チャンバへの挿入を補助し得る。好ましくは矩形であるが、プレートは、四角形、円形または楕円形を含む他の形状のものであってもよい。ゲル電気泳動法用のゲルの形成に用いられるスタンドおよびプレートは、ゲルを含有する中空型枠として用いられることが可能である装置のタイプの非限定的な実施例を提供する。
【0052】
電気泳動法ゲルの形成と同様に、接種混合物は、ゲル中での気泡の形成が最低限である/防止されるような方法で中空型枠チャンバ中に置かれる。混合物は、次いで、微生物の実質的に均一または均質な分散体をその中に維持し、または生成している間にゲル化され、これにより、均一な分散体が固体または半固体ゲルで維持される。ゲル中の微生物の実質的に均一な分散は、本方法により同定された個別のクローンコロニーの同定および採取に役立つであろう。
【0053】
アガロースを含むゲル化培地の粘度は、ゲル化培地へ生物学的サンプルをかき混ぜることによって得られる、典型的な細菌の分散を維持するに十分なものである。他のゲル化培地、および実質的に異なる密度の微生物について、その平坦なプレートの一方の上に接種混合物を含有する中空型枠を、水平面上に置いて、好ましい実質的に均一な分散の維持を補助することが有用である。円柱状の中空型枠については、型枠を水平面上で実質的に水平に置くことは分散体の維持に有用である。
【0054】
グロースチャンバ全体(固定化微生物および増殖または代謝指示薬を含有するゲル化培地を含む中空型枠)が、次いで、定温インキュベータ中に置かれ、微生物の増殖に適切な温度で維持される。好ましくは、光輝性指示薬については、インキュベーション中のグロースチャンバの光への露出は最低限にされる。いくつかの実施の形態において、底部スペーサまたはシールは取り外される。
【0055】
一態様においては、露出されたゲル縁部が、特にこれらに限定されないが、寒天またはアガロースまたはワセリン系材料を含む材料でシールされて、この縁部の乾燥が抑制または防止され得るが、必須ではない。しかしながら、空気に露出されるゲルの可能な限り最小の表面積が、検出結果に影響するであろう、汚染またはゲルへの相当な酸素拡散の可能性を最低限とするために維持される。
【0056】
理論的には、一旦培地がゲル化したら、細胞は固定化され、またはその位置に「閉じ込め」られ、これは、各々が、基本的に固定され、存在し得る他の細胞のいずれかと相対的にサンプル内を移動することができないことを意味する。それ故、各細胞は、インキュベーションの最中に1つの増殖領域または部位でのみ、酸素を消費または酸性代謝産物を放出することとなる。細胞が分裂してコロニーを形成するに伴って、新たな細胞もまたその部位に残ることとなる(典型的には、細胞はクローンコロニー内で相互に接触したままである)。一旦、細胞または細胞コロニーの位置が、酸素の欠乏またはpH変化の一方を介してその直接的環境において判明したら、一方の平坦なプレートを取り外すことにより、ゲル内の各細胞の細胞位置に影響することなく、板状のゲルを露出させることが可能である。管ゲルについて、ゲルは、中空型枠から圧力を用いて押し出され得、または機械的に取り出され得る。
【0057】
代替的なおよび好ましい実施の形態において、平坦な側面を有する蓋のされた、無菌ガラスまたはプラスチック増殖ボトル(すなわち、ニュージャージー州マウントローレル(Mt. Laurel NJ)のLaboratory Supply Distributorsから入手可能である、例えば、Bellco BiotechnologyまたはThomas Scientific製のいずれかのサイズまたは形状、広口または狭口のRoux培養ボトル)を、中空型枠の代わりにグロースチャンバの形成に用いることが可能である。これは、調製時間を著しく短縮させると共に、本発明の合成充填手法を簡素化するが、市販されている「ボトル」すべてのサイズでは入手可能ではない。典型的には、このようなボトルは、本発明の迅速な検出方法で用いられることになるものより大きい容積を有する。したがって、壁から壁までの空間は、本件で必要とされるより大きい。しかしながら、ボトルは、0.5cm以下の内部壁から壁までの離間距離、および平坦で、透明な側面を有するものが、本発明における使用に対する商業的目的のために特異的に形成されることが可能である。ボトル表面の酸素浸透性は選択される材料によって制御され、蓋付きボトルでは乾燥はもはや問題ではない。しかも、これらのボトルは自己支持性であると共に使い捨てであるため、迅速な検出システムは、簡便で、容易に再現可能であり、および実施が安価である。
【0058】
予め形成されたボトルの使用において、選択されたマーカーおよびすべての必要な増殖添加剤を含有する適切な培地が無菌ボトル中に採取され、培地充填ボトルがゲル化温度超とされ、およびゲル化剤が添加される実験室に移される。次いで、加熱された培地の温度が周囲温度に戻り、より細胞親和的レベルに達する(例えば、ほとんどの細胞について40℃〜45℃)に伴って、微生物サンプルが添加され、ゲル化の前に分散される。細胞にとっての典型的な増殖温度は約37℃である。しかしながら、選択されたサンプルにおける典型的な細胞がゲル化が生じるまで生存するであろう最高温度と、増殖および細胞分裂に至適温度との両方は、精通した細胞生物学者および他の実務者に公知である。当然ながら、上述のとおり、中空型枠チャンバを用いるシステムでは、添加の順番は、状況によって指示されるとおり異なり得、およびボトルは必ずしも位置を変えなくてもよい。
【0059】
好ましい実施の形態において、ゲル化接種混合物を含有するボトルは、ラックにさらに置かれ、ここで、マーカー、例えば、リン光またはpHマーカーが活性化され、カメラにより見られまたは画像化されることが可能な位置に周期的に移動される。追加の実施の形態において、画像分析プログラムは画像を分析し、検出されたコロニーの数、検出時間等を報告する。そのため、システムはほぼ完全に自動化され、信頼性のあるものである。
【0060】
「ボトル」の実施の形態における、今後の同定または培養のためのコロニーの採取は、上述の中空型枠システムより洗練されたプロセスを必要とするが、2つの部品で形成されて、クランプされ、スナップシールされ、または一緒に接着されたボトルは、この目的に適応可能である。接着剤が溶剤に溶解し、またはクランプがはずれ、またはスナップシールが破損した場合には、「ボトル」の半分が分離することが可能であり、ゲル化した接種混合物を未だ含有するボトルの他の半分からの1つの平坦で、透明な側部により形成された蓋が効果的に持ち上げられる。それ故、コロニーは、容易に回収および/または試験することが可能である。
【0061】
一実施の形態においては、選択された増殖している細胞、または細胞のコロニー、または複数の細胞またはコロニーが、これらが増殖しているゲルの一片を切り取ることにより選択的に単離される。例えば、切断可能な材料から形成された中空型枠中に形成された管状ゲルはスライスされて、個々のコロニーを有するゲル片が得られる。選択された部域内の細胞の位置が、リン光または蛍光指示薬により検出されおよび確認される。ゲル片は、一実施の形態においては、さらなる分析のために細胞を遊離させるために消化/溶解される。他の実施の形態において、ゲル片は、直接的に液体培地中に入れられ、ゲル片中に含有される細胞は継続的に増殖が許容される。
【0062】
代替的な実施の形態において、切断したゲル片は、液体培地への添加の前に、ガラス棒、爪楊枝、金属環または金属スパチュラなどの無菌用具で穏やかに破壊または粉砕されて、細胞を傷つけずに遊離させる。
【0063】
他の実施の形態において、コロニーは、無処置ゲルまたはゲル片から無菌用具を用いて「摘み取られる」か、取り出されてもよい。コロニーは、次いで、好ましい実施の形態において、増殖のための液体培地に移され、認知された細胞線条接種技術により増殖プレート上に線条接種され、または寒天プラグまたは斜面などの保管培地中に挿入される。このような摘み取りまたは取り出しは、当該技術分野において公知である方法により手作業またはロボット制御でなされ得る。
【0064】
無菌技術および滅菌方法は、当該技術分野において、および当業者に周知である。例えばSambrookら、上記を参照、1989年;Ausubelら、上記を参照、1997年;Gerhardtら、上記を参照、1994年を参照のこと。同様に、潜在的に感染性の微生物の適切な扱いおよび封じ込めは当業者に周知である。例えば、連邦ガイドラインでは、潜在的に感染性の薬剤を扱うすべての施設は、これらの病原体の封じ込めを確実とするために厳しい手法を堅守しなければならない。微生物を移すことが可能である容易さに応じて、これらは、BSL−1、BSL−2、BSL−3またはBSL−4として分類され、BSL−4が、感染症のもっとも高いリスクを有する。
【0065】
(同一のサンプルにおける増殖の速い生物からの増殖の遅い生物の選択)
他の実施の形態において、結核菌(M. tuberculosis)および他の増殖の遅い病原体への培養に度々混入する増殖の速い生物は、検出され死滅される。より急速に増殖する生物は、典型的に培養で異常増殖し、より遅く増殖する病原体の検出の可能性を排除し、または重度に損なわせる。急速に増殖する生物は、増殖の遅いものより早期に容易に検出され、平行レーザダイオードからの紫外光の短時間の照射を用いて選択的に死滅させることが可能である。紫外レーザダイオード(例えば、375nm)は市販されており、このビームは、集束させて100〜200ミクロンの直径とすることが可能である。レーザを用いて、望ましくない、急速に増殖するコロニーを、検出したスポットの各々の核を紫外光の短時間のフラッシュで照射することにより、選択的に死滅させる。増殖スポット当たり約100ミリ秒のビームへの露光が典型的には十分である。しかしながら、プロセスは、必要に応じて反復されてもよい。
【0066】
このレーザ処理プロセスは自動化することが可能であると共に、安価である。より速く増殖する生物が一旦排除されたら、次いで、より遅く増殖する病原体が、増殖の速い生物の存在によっては汚染されてない状態でそれらの特徴的な時間で現れる。
【0067】
(細胞増殖指示薬)
指示薬は、培地に溶解可能であるように好ましくは水溶性である。好ましくは、少なくとも1種の増殖または代謝指示薬は、本発明の培地に添加され、ゲル化の前に均一に分散される光輝性分子である。増殖または代謝指示薬は、培養におけるテストサンプル接種物から増殖している細胞の直ぐ周囲の環境(増殖領域)において、センサとして作用する分子である。光輝性プロセスは、リン光および蛍光の2つの異なるプロセスに分かれる。好ましくは、指示薬は、酸素消光性リン光体または蛍光pH指示薬のいずれかである。pHの変化に応答して色が変化するpH指示薬もまた用いられる。好ましい指示薬が以下により詳細に考察されている。
【0068】
(好気性生物の検出および選択)
好気性生物の検出および選択について、ゲル中の酸素感受性リン光体からのリン光が、約10分間から1時間の間隔で、検出器の赤外光を用いて、強度または寿命のいずれかにより画像化される。リン光寿命の計測は本発明の絶対的な要件ではない。しかしながら、寿命計測を用いることで、培地の蛍光または吸収における汚染的変化のほとんどまたはそのすべてを排除することが可能である。それゆえ、これは、本発明のほとんどの用途について好ましい検出方法である。さらに、リン光寿命は、蛍光からリン光を判別するために有用である。この実施の形態は、例えば、特にこれに限定されないが緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカー遺伝子を担持する形質転換体または形質移入体を同定する場合に特に有用である。
【0069】
細胞が増殖して酸素を消費するに伴って、小さい酸素欠乏性「ウェル」が、ゲル中の細胞増殖領域に形成される。これらの酸素が枯渇した「ウェル」は、ウェル内の低下した酸素圧力によりその箇所で生じるリン光強度および/またはリン光寿命の増加によって観察される。厚板ゲルの最大の面を画像化する際、ゲル中の増殖している細胞の位置は、最高のリン光強度/最長のリン光寿命を有する中心の核が、リン光強度/寿命が中心核からの距離で連続的に低下する段階的な環によって囲まれている、ディスク状、円形または点として現れることとなる。ディスクのサイズおよび、核の外側からの寿命/強度における勾配が、酸素消費速度の尺度である。酸素の存在がリン光を低減させるため、酸素圧力が最低の点(最高リン光/最長寿命)が細胞に一番近い。
【0070】
培養インキュベーションの時間が長くなるに連れて、増殖領域の円盤は、増殖している細胞の各々が継続して増殖および分裂するに伴って、それらの周囲に着実に拡大する。増殖領域の円盤または球の中心にある細胞が重度の低酸素状態になる前に(典型的には≦2%〜5%の酸素、または当業者によって認識されるとおり)、ウェルは、約500ミクロン以上の直径とかなり大きくなっている。細胞による継続的な酸素の摂取が細胞の近接した環境における酸素を低下させ、細胞の周囲の酸素欠乏性の増殖領域を形成させる。最終的に、増殖領域の中心での酸素圧力はゼロに落ち込み、中心にある細胞は増殖を停止し、最後には死んでしまう。酸素ウェル程度およびその制限的な直径は、ウェルの中心にある細胞による酸素消費速度および酸素が周囲のゲル化培地から酸素拡散によって補充される速度に応じる。核から縁部への酸素勾配の斜度(mm Hg酸素/mmゲル)は、培地における酸素の拡散係数の指標である。典型的な細胞の増殖は、中心点の酸素圧力が、ゼロ(約3mm Hg未満を意味する)に接近しなければ阻害されない。
【0071】
理論に拘束されることは望まないが、本発明のきわめて迅速で、かつ高感度の検出は、ゲル中への固定化の結果による細胞が利用可能な酸素供給の制限によると考えられている。上に考察したとおり、酸素は、ゲル化培地において増殖している細胞の周囲の近接した部域で消費される。増殖している細胞の近接した位置の外側からの酸素が、その部域にある程度で拡散するであろうが、拡散速度は、ゲルマトリックス自体の特性によって制限されている。ゲルのいずれかの表面の空気への露出もまた最低限であることが好ましく、これにより、酸素のゲルへの補充が低減される。したがって、代謝の最中、増殖している細胞が、その近接した環境にある制限された酸素供給のみを消費した酸素を補充するために利用するよう、本発明は設計されている。
【0072】
ゲルにおける細胞の位置を検出するために必要な最短時間として定義されるこのシステムの感度は、それ故、プレート間の距離が低減することにより、ゲルの厚さが低減すると共に増加する。例えば、典型的な細菌は、0.1〜2mmゲルの厚さよりかなり小さい。プレートが互いに近づくに伴って、細胞によって使用される酸素を補充するために利用可能なゲル化培地の体積が低減し、酸素拡散勾配は球対称から平面的へと移行する。より厚いゲルにおいて、酸素は、三次元から増殖している細胞の周囲領域に拡散し、それ故、球状の酸素供給がある。しかしながら、好ましい実施の形態におけるように、ゲルがより薄くされると、そこから酸素が拡散するゲルの体積は、細胞の周囲の二次元的な円に近づく。これは、酸素の利用可能な量を劇的に制限し、それ故、より迅速な検出能力をもたらすが、消費された栄養分および酸素が補充されない限りより短い細胞寿命をもたらす。
【0073】
ガラスプレート(非酸素透過性)を用い、およびゲルが約200〜500ミクロン厚である場合、サンプル内で増殖するすべての生物は数時間以内に検出可能である。典型的な細菌について、検出までの時間は約120分間未満であり、その一方で、増殖の遅いマイコバクテリア(Mycobacteria)については、検出までの時間はおよそ数時間から1日であろう。
【0074】
酸素感受性リン光体の使用はまた、システムの高感度に寄与する。このようなリン光体は、酸素分圧の低減に伴って、大きいリン光強度/寿命増加(例えば、約10〜100倍)を有する。
【0075】
上述のとおり、検出までの時間は、周囲の培地中の酸素の量に直接的に関連している。周囲の培地中の酸素の量は、プレート間の距離のみならず、微生物の呼吸数にも応じる。したがって、細胞の酸素の消費が速いほど、これらはより早く検出可能になる。プレートが1mmで離間している場合、例えば、1mmの細胞またはコロニー内のゲル化培地の体積はおよそ3μlであるが、プレートの離間距離が0.2mmである場合、この体積は約0.6μlに低減される。ゲル化培地の体積がより大きいことは、増殖するコロニーが、そこから引き出す、より大きい体積の酸素を有することを意味する。したがって、酸素圧力の低減、およびそれ故、リン光の検出可能な上昇が遅延する。同等に重要なことに、細胞に酸素が拡散してくる方向は、より薄いゲルではさらに制限的になり、微生物増殖が検出される感度をさらに向上させる。例えば、スペーサ厚さの0.15または0.1mmへのさらなる低減は、1mmのセル内の体積をさらに、それぞれ、およそ0.45および0.3μlに低減させることとなる。
【0076】
いくつかの実施の形態において、ゲルの厚みの低減は、テストされるべき生物学的サンプルのサイズ、それ故テストされるべき生物学的サンプル内の微生物の予期される濃度によってによって制限される。例えば、血液においては、病原体の数はかなり低い可能性がある。したがって、大きな体積のこのような生物学的サンプルをテストして、統計的に関連性のある結果を確実にすることが好まれるであろう。より大きいゲル体積、それ故ゲル厚さは、したがって、血液サンプルなどの少ない数の微生物を有する大きい体積の生物学的サンプルのテストを収容する必要があり得る。代替的に、より大きいゲル体積を収容するために、より大きい長さおよび/または幅寸法を有するが、かなり小さいゲルに用いられるものと同一の厚さのスペーサ14を用いる中空型枠が好まれ得る。実施例4も参照されたい。
【0077】
ゲル化培地に接種される微生物の数は、好ましくは、与えられたその長さおよび幅寸法で、ゲル中で個別に検出されることが可能である最大数を超えるべきではない。厚板ゲルの三次元的厚みの中で、相互に重畳した、または「積み重なった」2つの細胞は、2つの個別のコロニーとして検出されないであろう。それ故、本発明において好ましいとおり薄い厚板ゲルにおいては、最大検出数は、用いられるゲルの表面積によって表される。例えば、16cm×16cmの厚板ゲルの表面積は256cmである。各細胞/コロニーがおよそ0.2cm×0.2cm(0.04cm)の面積を占有するであろうと仮定すると、個々のコロニーを選択すること可能性が残されるであろう最大コロニー数は、およそ6,400(256÷0.04)である。
【0078】
「占有する」という用語は、酸素が引き出されるゲル内の細胞または細胞コロニーのおおよその増殖領域を意味し;ウェルの0.2cm計測幅が、ウェルの中央部における酸素低減について、増殖している微生物の明白な同定のための増加したリン光の迅速に検出されるスポットを提供するに十分である。それ故、16cm×16cmの長さおよび幅を有するゲルについて、約6400以下の微生物が、中空型枠の厚さにかかわらず、ゲル化培地に接種され、およびその全体に均質に分散されている(より厚いゲルでは、これらは、なお同一の面上で重畳するであろうため)。コロニーに関連する酸素が枯渇した体積またはウェルの重畳を回避するために、より少ない微生物が接種されることが好ましい。
【0079】
既述のとおり、希釈系を用いることが可能である。中空型枠の長さおよび幅寸法(それ故、増殖または培養チャンバの寸法)は、各用途に対する必要性に応じて、本開示を踏まえて当業者により変更されることが可能である。検出される個々のコロニーの所望の最低の数は統計学的/汚染考慮により設定されるが、10コロニー/生物学的サンプルと少数であることが可能である。
【0080】
この新たなシステムは、さらなる増殖および評価のための個々のコロニーのその後の採取を有利に可能としながら、自動化され、生物数/サンプルでの統計学的限界までの生物の検出が可能となるであろう。
【0081】
(好気性病原体に対する検出および抗生物質感受性判定)
ガラスプレートを用いる上述の超高速検出システムでは、細胞増殖のための酸素の取得可能性は、個々のコロニーが少数の細胞にのみ増殖することとなるよう十分に制限されている。検出速度は顕著な利点であるが、他の実施の形態において、生物の抗生物質感受性を知ることが必要である場合、より長期の時間をかけてより多くの数の細胞にコロニーを成長させることが有利である。これは、ガラスまたは厚いプラスチックプレートを、最大流量は限定されているが、継続的に酸素源を提供する、薄い酸素透過性プラスチックプレートと置き換えることにより達成される。
【0082】
増殖しているコロニーの検出はこの実施の形態ではそんなに迅速ではないであろうが、より多くの酸素供給は、より大きなサイズのコロニーの増殖を許容する。より大きいコロニーサイズは、中間増殖ステップを必要とすることなく、抗生物質感受性テストなどのさらなる分析を有利に許容するであろう。200細胞もの多数から500細胞以下、またはさらには1,000細胞以下の範囲のコロニー中のより多くの数の細胞は、例えば、各コロニーの取り出し、液体培地への希釈を許容し、次いで、一定量を直ぐに抗生物質含有培地に蒔くことが可能であるであろう。例えば、約500細胞のコロニーを分割し、重複して5つの異なるプレートに蒔き、これにより、テストすべき、各々異なる抗生物質を培地中に含有する4つのプレートと、それに加えて、1つの対照プレートとが可能となる。この場合には、約50生物/プレートがあるであろう。それ故、各プレートは、各結果の組を統計的に信頼性とするに十分な微生物を有するであろう。
【0083】
したがって、本発明のこのような方法は、個々のコロニーの各々を特徴づけるために必要な全体の時間を有利に短縮し、これにより、生物の検出および微生物に感染している患者に対する適切な処理の判定が加速される。酸素感受性リン光指示薬は、好気性微生物に対する検出システムにおいて細胞増殖を検出する好ましい方法を提供する。
【0084】
(偏性嫌気性菌(例えば病原体)についての検出および抗生物質感受性テスト)
本発明のさらに他の実施の形態において、中空型枠を形成し、ゲルを含有するために、酸素不透過性プレートまたは管を用いる上述のシステムは、培地における酸素消費反応をさらに含むよう改良される。例えば、酸素消費反応は、ゲル化培地への、グルコース、ならびにグルコースオキシダーゼおよびカタラーゼの添加(得られる過酸化水素を除去するために)、またはアスコルビン酸、ならびにアスコルビン酸オキシダーゼの添加であることが可能である。酸素消費を触媒する基質および酵素が培地のゲル化の直前に添加される。成分は、液体培地に混合され、また、微生物のサンプルおよび指示薬(水溶性、無毒性蛍光pH指示薬または水溶性、無毒性色pH指示薬のいずれか)とも混合され、次いで、酸素不透過性プレート12の間に注入される。本発明のこの実施の形態について、プレートは、ガラス、プラスチック、またはセラミックなどの酸素不透過性材料製である。反応は急速に培地中の酸素を消費し、嫌気性菌の増殖に必要な無酸素環境が提供される。
【0085】
異なる波長での発光シグナルの比を確立することにより系のpHが判定される場合には、蛍光pH指示薬が好ましい。蛍光/吸収強度の大きな変化がpHの変化に関与している場合にもこれは有効である。いずれかのタイプのpH感受性蛍光指示薬は、局所的なpHの変化に応答することとなり、それにより、上述した好気性菌による酸素欠乏と同様の方法で、蛍光/吸収パターンが、その代謝からもたらされるその近接した環境におけるpHの変化に基づいて、増殖している細胞の各々の位置を明確に示す。
【0086】
好ましい配合物において、蛍光pH指示薬は、ゲル化剤自体またはデキストランなどのゲル中の低拡散能分子に結合する。他の実施の形態において、蛍光pH指示薬自体は、ゲル化培地中で低拡散能を有する分子である。いずれの場合においても、最大の感受性が、きわめて弱く緩衝化された増殖培地で達成される。有利には、蛍光pH指示薬は、ある範囲のpKaをカバーするものが入手可能である。
【0087】
蛍光pH指示薬の選択は、ゲル化培地に接種されるテストサンプルにおける選択された微生物に関連する増殖条件に基づいている。pH指示薬のpKaは、中性のpH範囲、例えば約pH5〜8、より好ましくは約pH6.5〜7.5にあることが好ましい。
【0088】
「pH感受性蛍光化合物」および「蛍光pH指示薬」という用語は、本明細書において、蛍光または蛍光波長のレベルがpHによって影響される化合物を指すために同義的に用いられている。それ故、細胞増殖を支持するために用いられる培地におけるpHの変化は、蛍光の変化に直接的に関連している。pH感受性蛍光化合物の非限定的な例としては:2’,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−5(および6)−カルボキシフルオレセイン(BCECF)、N−(フルオレセインチオ−ウレアニル(ureanyl))−グルタメート(FTUG)および8−ヒドロキシ−1,3,6−ピレントリスルホネート(ピラニン)などのフルオレセイン−イソチオシアネート(FITC)誘導体、SNARF(登録商標)指示薬、Oregon Green(登録商標)514カルボン酸およびOregon Green(登録商標)488カルボン酸などのフルオレセインのフッ素化類似体、および5−(および6−)カルボキシ−2’,7’−ジクロロフルオレセインが挙げられる。
【0089】
代替的実施の形態において、色pH指示薬が用いられる。可視波長において生じる変色は、吸収を用いて画像化される。色pH指示薬は、増殖している細胞に対して水溶性および無毒性である必要がある。ゲル化培地中における低レベルの拡散性を有し、または低拡散係数を有する分子に結合されている。分子はゲル化材料であってもよい。
【0090】
上記のとおり、色pH指示薬の選択は、ゲル化培地に接種されるテストサンプルにおける選択された微生物に関連する増殖条件に基づいている。色pH指示薬の選択は、ゲル化培地に接種されるべき生物の増殖条件に基づいてなされることが好ましい。pH指示薬のpKaは、関心のある細胞/生物の増殖に至適なpHに近いことが好ましい。典型的には、これは、中性のpH範囲、例えば、約pH5〜8、より頻繁に、約pH6.5〜7.5であろう。
【0091】
(リン光)
良好に理解されたプロセスにおいて、(例えば;公知の方法を用いて)励起が停止された後も持続する、励起された種から放射される光は、「リン光」、または残光として称される。この励起後の残留性は、リン光と蛍光との間の顕著な差であり、これら2つの間での励起状態における基礎的な差異を反映している。蛍光は、一重項励起状態にある分子がフォトンの発光を伴いながら基底状態に戻るときに放射される。リン光では、励起三重項状態にある分子はフォトンの発光を伴いながら基底状態に戻る。前者ではなく後者が、「スピン禁制」遷移である。その結果、前者(蛍光)は、典型的には、10ナノ秒未満の寿命を有するが、他方で、後者は、数時間の寿命を有し得る。本用途について最も有用性に優れるリン光体は、数マイクロ秒〜数ミリ秒の寿命を有する。
【0092】
本発明の好ましい実施の形態によれば、1種または複数種の水溶性、無毒性リン光化合物(「リン光体」)が、ゲル化培地と混合され、またはそうでなければその中に溶解され、さらに、微生物が接種される。ゲル化に続いて、ゲル化培地および分布された微生物のサンプルが、その後、リン光体を励起する光源に露光される。それ故、本方法は、ゲル化培地における酸素濃度の定性的差に直接的に関連するリン光強度の変化の、迅速で、かつ、高感度の光学的な検出方法を提供する。
【0093】
リン光の酸素による消光は、例えば、米国特許第5,279,297号明細書、米国特許第6,165,741号明細書、米国特許第6,274,086号明細書、米国特許第6,362,175号明細書、および米国特許第6,701,168号明細書に記載のとおりStern-Volmer式に従う:
/I=τ/τ=1+k×τ×pO (式1)
式中、IおよびIは、リン光強度(それぞれ、ゼロ酸素での、および酸素圧力pO下での計測値)であり、τおよびτは、リン光体の環境における、酸素の非存在下(酸素圧力がゼロのとき)および酸素圧力pO下でのリン光寿命である。本明細書において用いられるところ、下付き文字「o」は、リン光体環境において酸素がないとき(酸素の非存在下)の強度「I」および寿命(τ)を示す。他方で、kは、励起状態のリン光体分子と分子酸素との衝突の頻度に関連する二次速度定数である。それ故、式は、リン光寿命を酸素圧力に転換するために用いられる。
【0094】
リン光は、本発明によりいずれかの利用可能な手段により計測され得る。しかしながら、定量的な酸素計測のためには、光学的干渉(蛍光、吸収等)のほとんどを排除するため、リン光寿命が計測される。米国特許第6,165,741号明細書は、例えば、酸素感受性リン光体を用い、パルス法またはフェース法のいずれかを用いる酸素レベルの定量的測定の情報を提供する。しかしながら、リン光強度が、酸素の良好な定性的計測であり、本発明の方法における微生物の増殖の検出のために好ましい。
【0095】
(リン光光度計および蛍光光度計)
光源は種々の異なるデバイスのいずれかである。好ましい形態において、リン光の励起および検出に用いられる光源は発光ダイオード(LED)またはレーザダイオードであり、後者は、前者の特殊なものである。より好ましくは、励起光源は、可能な限り均一な光でゲルを照射する高輝度LEDである。波長は、ゲル化培地におけるリン光体の励起に好適であるよう選択され、典型的には、Oxyphor-G2-ベースのリン光体について450nmである。光検出器(以下により詳細に記載される)は、リン光体の発光波長未満の波長のすべての光を排除するためにろ過される。例えば、Oxyphor-G2-ベースのリン光体について、カメラは、750nm未満の波長を排除するためにフィルタ処理される。光の放射は、システムの露光を最低限とするためにゲルの画像化の間のみ作動されることが好ましい。同一の理由のため、プレートは、高い光強度への長期の露出を回避するために、リン光計測の間は暗中にインキュベートされることが好ましい。リン光体が照射されるときにはきわめて低いが検出可能である酸素消費があり、励起光が常に残留してれば、これはゲルにおける酸素圧力の累進的な低下もたらし得る。
【0096】
蛍光を励起し検出するために用いられるデバイスである蛍光光度計は、上述のリン光光度計と実質的に同じ方策で操作されるが、これは、当該技術分野において公知であろうとおり、正確な励起波長を提供すると共に蛍光発光波長を検出するために適切なフィルタを有する。色pH指示薬が用いられる場合には、可視波長画像化デバイスを用いて吸収の変化が検出される。
【0097】
(リン光および蛍光発光の計測)
リン光を計測するために、リン光は集束され、適切なフィルタを透過され、および検出器に導かれる。蛍光は、同様に集束され、および検出され得る。リン光強度または寿命、蛍光強度または発光、または吸収変化の2次元マップを生成することが可能であるいずれの検出システムも用いられることが可能である。光検出器(PD)は、例えば、光電子倍増管、アバランシェ発光ダイオードまたは発光ダイオードである。PDは、高解像度赤外線または近赤外カメラであることが好ましい。好ましいデザインは、ISG-750増幅CCDカメラ(ニューヨーク州ホワイトプラインズ(White Plains, NY)のITT Industries)またはオンチップ増幅器CCDアレイ−ベースのカメラ(英国ケルムスフォード(Chelmsford, UK)のE2V Technologies)である。
【0098】
(水溶性、酸素消光性リン光化合物)
本発明において有用である水溶性、酸素消光性リン光化合物(リン光体)は、例えば、本明細書において参照により援用される米国特許第4,947,850号明細書、米国特許第6,165,741号明細書、および米国特許第6,362,175号明細書に記載されている。このようなリン光体において、例えばPdPorphおよびPtPorphといったリン光発色団は、吸光により三重項状態(T)に転換されることが可能であり、続いて、発光またはリン光を生じながら基底状態に戻るリン光体のリン光性部分である。
【0099】
使用に好適であるべきリン光体について、とりわけ、本発明における微生物増殖および同定の判定において、リン光体は、微生物に無毒性、または無視可能な程度の毒性でなければならない。リン光体はまた、サンプル微生物の計測可能な増殖を示す信頼でき、かつ、正確な酸素計測を提供するために、酸素分子が増殖している微生物に到達可能であり、リン光発光の適切な消光を可能とするようゲル化培地に十分に溶解性のものであるべきである。
【0100】
本発明による酸素計測および付随する微生物増殖同定に特に好適な種類のリン光体が、VinogradovおよびWilson, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2:103-111(1995)、およびその各々が本明細書において参照により援用される米国特許第6,362,175号明細書の一部継続出願である米国特許第5,837,865号明細書に報告されている。リン光体は、PdおよびPtなどの第VIII族金属の、ポルフィリンまたは例えば、テトラベンゾポルフィリン、テトラナフタロポルフィリン、テトラアントラポルフィリンなどの伸展ポルフィリンおよび種々のこれらの誘導体との錯体である。テトラベンゾポルフィリンおよびテトラナフタロポルフィリンのPd錯体が特に所望される。さらに、Pdテトラベンゾポルフィリン(PdTBP)およびそれらの誘導体が、8〜10%の量子収率での長寿命のリン光(約250ミリ秒)を有することが示されている。
【0101】
高度に効率的であると共に、不活性球状構造に囲まれた高度に溶解性のリン光化合物である前述のリン光体の樹状誘導体が、本発明における使用により好ましい。非限定的な実施例は、デンドリマーとして公知である三次元の超分子構造によって囲まれている変性PdTBDである。このような化合物は、例えば上記米国特許第5,837,865号明細書に記載されている。
【0102】
本発明において有用であるデンドリマーリン光体は、本発明において、核に結合した内部層を有する酸素計測性リン光体である、開始剤−官能基化核として含まれる三次元、超分子、放射対称性分子である。内部層は、例えば3つまたは4つのアームを含み、ここで、各々のアームは反復単位から構成されており、および各アームにおける反復単位の層は、デンドリマーの世代としてみなされる。最も外側の世代は、典型的には、最も外側の世代に結合した第1級アミンなどの末端官能基を含有する。デンドリマー分子のサイズおよび形状、およびその中に存在する官能基は、開始剤核、世代の数、および各世代で利用されている反復単位の性質の選択によって制御されることが可能である。
【0103】
コンバージェント成長アプローチおよびダイバージェント成長アプローチの少なくとも2つの方法が、デンドリマー高分子構造の合成のために公知である。両方が本発明において有用であるリン光体の製造に用いられると意図される。
【0104】
樹状巨大分子およびこれらの製造方法に関する他の文献は、例えば、米国特許第4,568,737号明細書;米国特許第5,041,516号明細書;米国特許第5,098,475号明細書;米国特許第5,256,193号明細書;米国特許第5,393,795号明細書;米国特許第5,393,797号明細書;および米国特許第5,418,301号明細書に見出すことが可能であり、これらの各々の全開示は、本明細書において参照により援用される。
【0105】
以下に記載のとおり、ダイバージェント法で、新規な、変性メタロ−伸展ポルフィリン酸素計測リン光体化合物の周囲に合成される一層、二層、および三層ポリグルタミン酸樹状ケージは、広いpH範囲にわたって高度に水溶性であると共に、脱酸素水溶液中にリン光寿命の狭い分布を示すリン光体をもたらす。以下にさらに示されるとおり、リン光体誘導体とリン光体の周囲環境として用いられるデンドリマーとの組み合わせは、信頼性があり、かつ、高速の培養増殖検出および同定のためのゲル化培地における、正確で、かつ、信頼性のある酸素計測用のリン光プローブの種類を提供する。
【0106】
樹状リン光体は、米国特許第6,362,175号明細書;およびVinogradovおよびWilson、上記を参照、1995年に記載のリン光体から調製され、好ましくは、以下の式のものである:
【化1】

式中、Rは水素または置換もしくは非置換のアリールであり;RおよびRは、独立して水素であるか、または一緒に結合されて置換もしくは非置換のアリールを形成し;およびMは、Hまたは金属である。RおよびRが一緒に結合されてアリールシステムを形成する場合、アリール系は、対応するピロール基質に対して縮合関係にある必要性がある。
【0107】
Mは、好ましくは、Lu、Pd、Pt、Zn、Al、Sn、YおよびLa、およびこれらの誘導体からなる群から選択される金属であり、Pd、PtおよびLuが最も好ましい。好適な金属誘導体の非限定的な実施例としては、Pdテトラベンゾポルフィリン(PdTBP)、Pdテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTPTBP)、およびPtTBP、PtTPTBP、LuTBPおよびLuTPTBPおよび、例えばLuTNPおよびPdTPTNPなどのナフタロポルフィリンが挙げられ、これらのすべてが米国特許第6,362,175号明細書に記載されている。
【0108】
一定の好ましい実施の形態において、リン光体は、上記式Iの化合物に対応するテトラベンゾポルフィリン(本明細書において以下「TBP」)化合物であり、ここで、近接するRおよびR基が一緒に結合されて、対応するピロール環に縮合するベンゼン環を形成している。テトラナフトポルフィリン(本明細書において以下「TNP」)およびテトラアントラポルフィリン(本明細書において以下「TAP」)化合物もまた好ましく、ここで、近接するRおよびR基は、一緒に結合されて、ナフタレンおよびアントラセン環系をそれぞれ形成する。縮合ベンゼン環と同様に、ナフタレンおよびアントラセン環系は、対応するピロール環に縮合されている。他にそうでないと記載されていない限りにおいて、または開示から明らかではない限りにおいて、「TBP」化合物に対する本明細書におけるさらなる言及は、標準のポルフィリン、TNPおよびTAP化合物をも指すと理解される。
【0109】
好ましいTBP化合物は、以下の式を有する:
【化2】

式中、RおよびMは上に定義のとおりである。特に好ましいTBP化合物は、Mが上述のとおり金属または金属誘導体である、メタロテトラベンゾポルフィリン(本明細書において以下「MTBP」)化合物である。
【0110】
TBP化合物の中でも、上記式Iの化合物が特に好ましく、ここで、少なくとも1つのRは置換もしくは非置換のフェニルである。これらの化合物は、本明細書において以下、フェニルテトラベンゾポルフィリン(本明細書において以下「PhTBP」)化合物として称される。好ましいPhTBP化合物は、以下の式を有する、メソ−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(本明細書において以下「m−TPhTBP」)化合物を含む置換もしくは非置換のテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(本明細書において以下「TPTBP」)化合物を含む:
【化3】

式中、R、RおよびMは上に定義のとおりであり、Rは置換基であり、およびxは、0〜3の整数である。TPTBP化合物は式IIIの置換化合物が特に好ましく、ここで、xは1〜3の整数である。
【0111】
本発明の好ましい置換化合物に関して、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンおよびクロロホルム(CHCI)などの非プロトン性溶剤、および水などのプロトン性溶剤を含む極性溶剤中への溶解度などの所望の特性を化合物に付与するために、置換基が所望される。置換の程度および置換基の性質は、所望の程度の溶解度、ならびに所望の溶剤または溶媒混合物への溶解度を得るために調整され得る。
【0112】
本発明において有用であるリン光体は、熱に不安定ではないことが好ましい。いくつかの実施の形態において、リン光体は、本発明において用いられるために適切な酸素消光定数を提供するために追加の成分を必要とするであろう。例えば、Oxyphor G2は、ウシ血清アルブミン(BSA)を必要とする。BSAのOxyphor G2への結合は、酸素の三重項状態への接近を制限し、それ故、酸素感受性を低下させ、および消光定数を約4000から約400に低下させる。より低い消光定数は、酸素圧力が低下したときの大きな強度の増加を保持したまま、より強い強度シグナルにより、さらに感度性の計測を可能とする。しかしながら、本発明における使用に好適な、BSAの添加を必要としない他のリン光体もまたある。例えば、設計に応じてデンドリマーは、BSAに結合するのと同じ効果を消光定数に対してことが可能である。これらのリン光体は、より緊密にフォールドされたデンドリマーコートを有し、外部はポリエチレングリコールなどの不活性コートでコートされている。これらの消光定数は、4000〜100未満の値に選択的に設定されることが可能である。例えば、米国特許第5,837,865号明細書および米国特許第6,362,175号明細書を参照のこと。
【0113】
(デバイスおよびキット)
本発明は、本発明の微生物の増殖または代謝を迅速に検出する方法において使用されるグロースチャンバ装置をさらに含む。グロースチャンバ装置は、中空型枠および/または縦寸法を有すると共に空間を画定するバッグ、並びに中空型枠またはバッグ内の水性ゲル化材料を含む。本明細書において用いられるところ、「中空型枠」という用語は、成形し、およびゲル化材料または接種混合物をゲル化するまで含有するための固体の組み立て型枠を包含するのみではなく、本明細書に記載のとおり予め形成された中空型枠および、固定された中空型枠に追加され得るまたは単独で使用され得る実施例3に記載のものなどの無菌バッグをも広く包含する。これらのすべてが、「中空型枠」という用語の使用により、成形しおよび液体ゲル化材料または接種されたゲル化材料がゲルに形成されるまで含有するために用いられるいずれかの他の手段と同様に、包含されることになる。
【0114】
微生物および、溶解された酸素消光性リン光化合物および溶解された蛍光または色pH指示薬の一つを含有するゲル化培地が、中空型枠内に入れられ、その内部の空間が充填される。好ましい実施の形態において、グロースチャンバ装置は、中空型枠内の空間の縦面を確定する2枚の平行なプレート、および矩形空間が画定されるよう2枚の平坦なプレートの間のスペーサをさらに含む。
【0115】
本発明は、グロースチャンバ装置内にある個々のコロニーを選択的に排除するためのデバイスをさらに含む。選択的排除デバイスは、より速く増殖する生物を早期に死滅させて、より遅く増殖する生物を負かすほどの異常増殖を回避するための本発明の方法の実施の形態において特に有用である。図2に概略的に図示されているとおり、デバイス20は、グロースチャンバ装置24を平行レーザダイオード26と相対的に保持し、正確に配置するための手段22を含む。平行レーザダイオード26は、操作可能に処理手段28に接続されている。デバイスは、共に処理手段28に操作可能に接続されている励起光源30および検出器32をさらに含む。
【0116】
一実施の形態において、検出器によって検出されたリン光(または蛍光)画像は、検出された生物の位置が正確な座標を有するよう、座標系に関連付けられる。次いで、処理手段が用いられて、これらの座標に対して、平行レーザダイオードが、検出された生物に正確に照準が定められ、周囲の所望の微生物に損傷を与えることなく、検出された望ましくない生物またはコロニーを死滅させるに十分な時間で、平行レーザダイオードが短時間作動する。他の実施の形態において、追加的な構成要素である照準レーザが用いられる。照準レーザは検出器によって検出される波長の微光であって、および死滅レーザと一緒に共アラインされている。これにより、照準レーザが、その照射スポットが関心のある増殖上に正確にあるように照準が定められ、次いで平行レーザダイオード26が、増殖を死滅させるために必要とされる時間の間だけ作動され、照射される。
【0117】
「リン光光度計および蛍光光度計」に記載されているとおり、励起光源30は、発光ダイオードまたはレーザダイオードであることが好ましい。検出器32は、発光ダイオード、光電子倍増管または増幅CCDアレイである。処理手段28は、データを収集し、それをアルゴリズムに従って処理することが可能であるコンピュータである。配置手段22は、平行レーザダイオード26の照準が、検出器32の座標系からの、または既述のとおり照準レーザの使用により示された特定の位置に定められ得るよう、正確にグロースチャンバ装置24を保持し、または固定する。グロースチャンバ装置24の縦面は、平行レーザダイオード26のレーザビームに垂直に保持されることが好ましい。配置手段22は、グロースチャンバ装置24が置かれるプレートまたは面であり得る。いくつかの実施の形態は、グロースチャンバ装置を固定して、その動きを防止または低減させるクランプ、クリップ、弾性バンドまたは類似の拘束メカニズムをさらに含む。代替的に、配置手段は、グロースチャンバ装置24が滑合され得る溝穴あるいは、図2に図式的に示されているものなどの、グロースチャンバ装置を固定的にはさむ二又フォークを含む。
【0118】
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットおよび、キットを用いるための詳細な説明を提供する説明書を含む。一実施の形態においては、このキットは、微生物の固定化に好適であるゲル化材料(好ましくは無菌)、水溶性、無毒性酸素消光性リン光体または水溶性、無毒性蛍光pH指示薬または色pH指示薬の少なくとも1つ、および任意により、中空型枠を含む。中空型枠は、ゲル化培地、固定化微生物および酸素消光性リン光体または蛍光pH指示薬を有するゲルを形成し、保持するために用いられる。型枠は、再使用を可能とする滅菌可能であり、または下記のとおり培養バッグを備えていてもよい。
【0119】
本明細書において用いられるところ、「説明書」は、水溶性、無毒性酸素消光性リン光体または水溶性、無毒性蛍光pH指示薬の1つを含むゲル化培地中への微生物の固定化、および微生物の増殖または代謝を検出する方法を伝達するために用いられ得る刊行物、記録、図、または、表現のためのいずれかの他の媒体を含む。本発明のキットの説明書は、例えば、ゲル化材料および/または酸素消光性リン光体、蛍光pH指示薬、または色pH指示薬を含むコンテナに添付されても、またはゲル化材料および/または酸素消光性リン光体、蛍光pH指示薬、または色pH指示薬を有する含むコンテナと一緒に送付されてもよい。代替的に、説明書は、受け取り人によって、説明書および組成物が一緒に用いられることを意図して、コンテナとは別に送付されてもよい。
【0120】
本発明の更なる目的、利点および新規な機構が、一部が明細書および以下の実施例に記載され、および一部は以下の試験で当業者に明らかになり、または本発明の実施により教示され得るであろう。以下の実施例は、しかしながら、単に例示的であり、添付の特許請求の範囲の範囲を制限するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
本発明による個々の増殖または代謝指示薬についての毒性評価を、以下のとおり簡便に実施した。リン光体粉末、2層のグルタメートデンドリマーを有するPd−メソ−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリンを、5ミリリットルの蒸留、脱イオンおよびフィルタ−滅菌水に溶解におよび0.2ミクロンフィルタを通してろ過して、8mM濃度およびpH7.4のフィルタ−滅菌溶液を提供した。3つの希釈物を8mM溶液から形成してストック溶液を生成し、同等の体積の各ストック溶液を用いて、培地における最終濃度に希釈した。テストした最終濃度は、それぞれ4、8および16μMであった。対照管には、同一の体積の無菌水をリン光体希釈物の代わりに供給した。
【0122】
最終リン光体希釈物の各々(それぞれ、1:500、1:1000および1:2000)を二組調製した。一対の管に、2つの異なる濃度のヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)培養物:1,000,000細胞/mlおよび10,000細胞/mlを接種した。同一の細菌濃度を、リン光体を含まない対照管に接種した。加えて、リン光体希釈物を単独で含む3つの非接種管を、陰性対照として立ち上げた。
【0123】
高接種菌管のすべてがインキュベーション(リン光体を含むものおよび含まないものの両方)5日目に陽性に転じ、および低接種菌管は、(リン光体を含むものおよび含まないものの両方)7日目に陽性になった。非接種対照管は無菌のままであった。
【0124】
したがって、好ましい濃度範囲内のリン光体の使用は、結核菌(M. tuberculosis)のテストした液体培地での増殖に影響しなかった。比較テストプロトコルは、蛍光pH指示薬および色pH指示薬の毒性のテストに当業者によって用いられるとき、これらもマーカーもまた安全であり、および本発明における使用に有効であることを証明する。
【0125】
(実施例2)
0.5mm厚のスペーサで離間させた2枚の3インチ×4インチ(7.6cm×10cm)のガラスプレートを用いて中空型枠を組み立てて、矩形空間を形成した。アガロースを、1%アガロース(wt/vol)の最終濃度に、生理学的生理食塩水、カゼイン加水分解物およびグルコースを含有する液体培地(pH7.2)に添加した。混合物を沸点付近まで約30分間過熱してゲル化培地を形成した。ゲル化培地を約40℃に冷却させ、次いで、リン光体およびウシ血清アルブミン(BSA)を添加した。リン光体、Oxyphor G2、Pd−テトラ(4−カルボキシフェニル)テトラベンゾポルフィリンデンドリマー(Dunphyら、Anal. Biochem. 310:191-198(2002))を、2マイクロモルの最終濃度で添加した。滅菌していないBSAを、1%(wt/vol)の最終濃度に添加した。
【0126】
本発明において有用であるリン光体は、一般に、熱に不安定ではない。しかしながら、易熱性であるOxyphor G2は、本発明における酸素計測に好適な消光定数をリン光体に付与するための結合のために、BSAを必要とする。それ故、Oxyophor G2およびBSAを、ゲル化培地が冷却した後に添加した。本発明における使用に好適であるが、BSAの添加を必要としない他のリン光体は、加熱したゲル化培地に、またはそれが冷却した後に添加することが可能である。
【0127】
およそ3.8mLのゲル化培地を皮下注射針を用いて中空型枠に注入し、この型枠を、重力流により充填した。このプロセスの最中の急速なゲル化のため、いくつかの気泡が形成された。中空型枠のガラスプレートの加温またはこの空間の底の開口からの中空型枠の充填が代替的な、気泡の形成を避ける非限定的な方法である。当業者は、ゲル中の気泡を回避する方法を知っているであろう。
【0128】
ゲルを室温でインキュベートし、およびリン光強度画像を周期的に撮影して、微生物増殖を検出した。450nm LEDを用いて酸素消光性リン光体がリン光を発するよう励起し、得られたリン光を、695nm長のガラスパスフィルタを備えたXybion Gen 3増幅カメラ(カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego, CA)のITT Industries, Inc.)で検出した。ゲル化培地には微生物を計画的に接種しなかった。しかしながら、増殖している微生物が検出され、非−無菌BSAから導入された可能性が最も高い。検出された微生物の識別性はこの実験では判定しなかった。
【0129】
微生物の増殖を30分で検出した(図3A)。リン光で縁取られたきわめて暗い領域はゲルの注入中に形成された気泡であることに注意されたい。増殖の追加のコロニーを、インキュベーションの進行時間として検出した(図3B、35分間のインキュベーション;図3C、105分間のインキュベーションおよび図3D、120分間のインキュベーション)。105分間で、数多くの個別のコロニーが、強いリン光のおよそ円形の区域として明らかに検出された。ゲルの酸素圧力マップもまた、105分で、周波数領域画像化リン光光度計でのリン光寿命画像化を用いて、撮影した。図4に示されるとおり、暗いスポットは、増殖している微生物による酸素の消費によりもたらされるリン光画像におけるリン光体の寿命の増加により検出された低下した酸素圧力の局在化領域である。
【0130】
(実施例3)
本検出/同定方法が、少数の病原体を大体積の体液中に有している血液などの生物学的体液に適用されるとき、臨床的要求は、初期において、大体積のサンプルを用いることが必要とされる。これは、構築し、検出システムを、清掃することが困難であると共に、そのサイズを大型にし、および作業を煩雑にする可能性がある。したがって、この特殊な必要性を満たすために、サンプルホルダーは、既述のとおり、1つまたは複数のスペーサで離間され、好適なクランプまたはフレームで一緒に保持された2枚の平坦なガラスまたはプラスチックプレートを有する、または上述のとおり予め形成された中空型枠である。しかしながら、プレートの間に、その中に接種混合物が入れられる、単純な、無菌であるが、使い捨ての、耐破壊性プラスチックバッグ(「培養バッグ」)が挿入される(上述の接種混合物は、増殖または代謝指示薬とのゲル化の前に水性形態のゲル化培地を含み、すべての必要な増殖添加剤およびゲル化剤がその中に溶解されており、および微生物のテストサンプルが添加されている)。
【0131】
バッグは、次いで、プレート間の空間内に完全に適合するよう無菌ガスで膨らまされる。代替的には、バッグは、正圧のガスで予め膨らまされており、次いで接種混合物が充填され、または増殖培地自体がバッグを膨らませるのに用いられる。その結果、中空型枠ホルダーは、培地に実際には接触していないため、僅かな維持管理およびわずかな洗浄のみを必要とする。したがって、汚染される可能性、またはその後の培養を汚染する可能性が低い。それ故、培養システムは、高度に特殊な配慮を必要とせず、耐久性があり、および代替品を必要としない。
【0132】
使い捨て可能で、かつ、安価な培養バッグは、薄いプラスチックから調製され、寒天または他のゲル化剤を含有する、収納されている培地における増殖の光学的計測に干渉しない。収納されている培養ゲルは、中空型枠からバッグ中に取り外され、次いで選定された場合には、バッグが切られ、または押圧シールが開放され、選択され、同定された培養されたコロニーが、さらなる計測または独立した増殖のために切除される。バッグまたは培地に添加された感光性染料(例えば、ゲル化剤に結合して)およびレーザマーカーまたは他のマーカーは、増殖している生物の各コロニーの位置が、採取および/またはコロニー内の細胞の染色を促進するためにマークされることを可能にする。
【0133】
この特定のグロースチャンバ設計および培養へのプラスチックバッグの使用は、主に、本テクノロジーの大体積のサンプル体積との使用を促進することを意図している一方で、これはまた、前述の用途のいずれにも適合され得る。1mLの培地当たりきわめて少数で生じる、比較的大体積が生物の検出/同定に用いられる、血液培養中の微生物の同定において、0.5cmの離間距離を20cm×20cmのプレートの間に有するグロースチャンバは200mLの培養体積を生成し、これは、その規模を拡大または縮小することが可能である。このシステムは、1生物/20mL培養体積未満を、複数のより小さいチャンバを同時に調製すると共に用いた場合よりも僅かに長い時間のみで検出することが可能であろう。しかしながら、培地を収容するために使い捨てプラスチック培養バッグを用いることにより、システムの使用は簡素化され、その使用がかなり容易とされると共に、既存の大型の体積培養方法のいずれよりも安価とされ、および接種混合物における微生物のより早期での検出を可能とする。それ故、テスト微生物の特徴付けが、特に大体積/低微生物数サンプルにおいて促進される。
【0134】
本明細書において引用した、または記載の各特許、特許出願および刊行物の開示は、ここに、本明細書において参照により、それらの全体が援用される。
【0135】
前述の明細書は一定の好ましい実施の形態に関して記載してきたが、多くの詳細が例示の目的のために記載されてきており、当業者には明らかであろう本発明の思想および範囲から逸脱することなく、本発明は、種々の改良および追加の実施の形態がなされ得、および本明細書に記載の一定の詳細は、本発明の基本的な原理から逸脱することなく、相当に変更されることが可能である。このような改良および追加の実施の形態はまた、添付の特許請求の範囲内に属することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1A−1B】本方法による微生物を含有するゲルを形成するための中空型枠(図1A)の例示的な実施の形態を図示する。図1Bは、図1Aにおける中空型枠チャンバの断面を図示する。
【図2】本発明の方法において有用である装置の例示的な実施の形態の概略図である。
【図3A−3D】ゲル化培地における細菌性増殖のリン光強度の画像である。画像は、細胞−接種混合物を矩形中空型枠グロースチャンバ内に挿入した後30分間(図3A)、35分間(図3B)、105分間(図3C)および120分間(図3D)で取得した。
【図4】図3Cに示されるものと同一のゲルの105分間のインキュベーションで取得した酸素圧力マップの画像である。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化細胞性微生物の増殖または代謝を迅速に検出する方法であって:
少なくとも1種の微生物の細胞の固体群を、前記微生物に無毒性である溶解された酸素消光性リン光化合物を含む水性ゲル化培地中に固定化すること;これにより、
前記リン光化合物が前記培地における酸素圧力に応答性であるよう、各細胞と周囲の前記培地における前記酸素感受性リン光体との間の伝達可能な接触を維持すること;
前記溶解されたリン光化合物をリン光を発するまで励起すること;および
前記ゲル化培地における前記リン光を検出することを含み、
リン光の増加が、前記微生物の増殖または代謝の指標である方法。
【請求項2】
前記固定化するステップが:
無菌の液体状の水性ゲル化培地と前記少なくとも1種の微生物の細胞の固体群を一緒に混合して、接種混合物を形成すること;
前記接種混合物を中空型枠グロースチャンバ内の空間に挿入すること;および
前記接種混合物のゲル形成を許容し、これにより、その中に含有されている細胞を固定化すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増殖または代謝の指標であるリン光の増加により検出された前記少なくとも1種の微生物の少なくとも1つのコロニーを前記ゲルから選択して取り出すことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択して取り出した微生物を個別の無菌培地において繁殖させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記個別の培地が抗生物質をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記無毒性、可溶性、酸素消光性リン光化合物が、式:
【化1】

を有するポルフィリン化合物であって、
式中:
は水素原子または置換もしくは非置換のアリールであり;
およびRは、独立して水素であるか、または一緒に結合されて置換もしくは非置換のアリールを形成し;および
MはHまたは金属である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Mが、Zn、Al、Sn、Y、La、Lu、PdおよびPtからなる群から選択される金属である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポルフィリンが、ポルフィリン、テトラベンゾポルフィリン、テトラナフトポルフィリン、テトラアントラポルフィリンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
Mが、Zn、Al、Sn、Y、La、Lu、PdおよびPtからなる群から選択される金属である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が第1、第2、第3、第4または第5世代デンドリマーである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物が、バチルス属(Bacillus)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、メタノモナス属(Methanomonas)、プロタミノバクター属(Protaminobacter)、メチロコッカス属(Methylococcus)、アンスロバクター属(Arthrobacter)、メチロモナス属(Methylomonas)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、アセトバクター属(Acetobacter)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、アクロモバクター属(Achromobacter)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、メチロサイナム属(Methylosinum)、メチロシスティス属(Methylocystis)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物が、結核病原体ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ウシ結核菌(M. bovis)およびトリ結核菌(M. avium)からなる群からさらに選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固定化嫌気性微生物の増殖または代謝を迅速に検出する方法であって:
少なくとも1種の嫌気性微生物の細胞の固体群を、前記微生物に無毒性である溶解された酸素消光性蛍光pH指示化合物を含む水性ゲル化培地中に固定化すること;これにより、
前記消光性蛍光pH指示薬が前記培地における水素イオン変化に応答性であるよう、各細胞と周囲の前記培地における前記酸素消光性蛍光pH指示薬との間の伝達可能な接触を維持すること;
溶解された前記蛍光指示薬が蛍光を発するまで励起すること、および
前記ゲル化培地における、前記蛍光pH指示薬による蛍光発光の変化を検出することを含み、
蛍光発光における変化が、前記微生物の増殖または代謝からもたらされる水素イオン変化の指標である方法。
【請求項14】
前記固定化するステップが:
無菌の液体状の前記水性ゲル化培地と前記少なくとも1種の微生物の細胞の固体群を一緒に混合して、接種混合物を形成すること;
前記接種混合物を中空型枠グロースチャンバ内の空間に挿入すること;および
前記接種混合物のゲル形成を許容し、これにより、その中に含有されている細胞を固定化すること
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
増殖または代謝の指標である蛍光の増加により検出された前記少なくとも1種の微生物の少なくとも1つのコロニーを前記ゲルから選択しおよび取り出すことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記選択して取り出した微生物を個別の無菌培地において繁殖させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
微生物の増殖または代謝の迅速な検出に使用される中空型枠グロースチャンバであって:
空間を画定する中空型枠;および
前記中空型枠の前記空間内の水性ゲル化培地、
を含み、
前記ゲル化培地が、少なくとも1種の微生物の細胞の固体群と、溶解された酸素消光性リン光化合物または溶解された蛍光pH指示化合物の一方をさらに含むチャンバ。
【請求項18】
前記中空型枠が:前記空間の縦面を画定する2枚の平行なプレートおよびそれらの間に配置された少なくとも2つのスペーサをさらに含み、これにより、矩形として前記空間を画定する、請求項17に記載のチャンバ。
【請求項19】
前記中空型枠が、必要な前記空間を画定するため、予め形成または予め成形されている、請求項17に記載のチャンバ。
【請求項20】
前記チャンバが、無菌、使い捨て、耐破壊性プラスチック培養バッグを含む、請求項17に記載のチャンバ。
【請求項21】
前記中空型枠が、その中に挿入された無菌、使い捨て、耐破壊性プラスチック培養バッグをさらに含む、請求項17に記載のチャンバ。
【請求項22】
グロースチャンバ内のゲルに固定化された1種または複数種の望ましくない微生物を死滅させるためのシステムであって:
励起光源、
光検出器、
平行レーザダイオード、
前記平行レーザダイオードと相対的にグロースチャンバ装置を配置する手段、および
前記励起光源、前記光検出器および前記平行レーザダイオードを操作可能に相互接続する処理手段
を含むシステム。
【請求項23】
前記励起光源が前記グロースチャンバ内の光輝性分子を励起し、前記光検出器が前記光輝性分子から放射される光を検出し、および前記処理手段が、前記検出された発光に応答して前記平行レーザダイオードの照準を定めると共に前記グロースチャンバ内に固定化された1種または複数種の微生物を死滅させるに十分な強度まで前記レーザダイオードを作動させる請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
請求項22に記載のシステムの前記グロースチャンバ内に固定された1種または複数種の望ましくない微生物を、その中に含有される他の所望の微生物を損傷させることなく死滅させる方法であって:
前記励起光源を作動させ、光輝性分子を励起させて前記グロースチャンバ内で発光させること;
前記光輝性分子からの放射光を前記検出器で検出すること;
前記検出された放射光に応答して、前記処理手段によって前記平行レーザダイオードの標準を定めること;
前記グロースチャンバ内に固定化された前記1種または複数種の望ましくない微生物を死滅させるに十分な強度まで前記レーザダイオードを作動させること;次いで
前記1種または複数種の望ましくない微生物を、前記グロースチャンバ内に固定化された所望の微生物に損傷を与えることなく死滅させて、これにより未損傷の前記微生物の継続した増殖および代謝を許容すること
を含む方法。
【請求項25】
前記死滅されるべき微生物が、選択された微生物の固体群中の望ましくない微生物であり、前記方法が、前記励起光を作動させる前に:
無菌の液体状の水性ゲル化培地を微生物の固体群と一緒に混合して、1種または複数種の望ましくない微生物を含有し得る接種混合物を形成すること;
前記接種混合物を前記中空型枠グロースチャンバ内の空間に挿入すること;
前記接種混合物をゲル化させ、これにより、その中に含有されている前記細胞を固定化すること;次いで、前記ゲルが形成された後に、
前記細胞の固体群が1種または複数種の望ましくない微生物を含有するかを判定すること
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
溶解後にゲル化する粉末形態の水性ゲル化培地;
無毒性、水溶性、酸素消光性リン光化合物または蛍光pH指示薬、もしくは両方;
グロースチャンバ;および
説明書
を含む、少なくとも1種の固定化微生物の増殖または代謝の迅速な検出に用いられるキット。

【図4】
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【公表番号】特表2009−523447(P2009−523447A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551408(P2008−551408)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/001410
【国際公開番号】WO2007/084655
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508216666)オキシジェン エンタープライゼス,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】