説明

培養・育成装置

【課題】 小型化が図れて、製作コストや運用コストなどを低廉化でき、機能性や効率性を向上できる培養・育成装置を提供する。
【解決手段】 植物体5を載置可能な複数の棚板6を多段に配置して収容した密閉室3と、この密閉室3の室内環境を調節する調節器8とを有した培養・育成装置1において、各棚板6に、植物体5を照明し室温に影響を与えない冷陰極蛍光ランプ12を設置し、また、密閉室3は、用具を用いることなく室内の全域にほぼ人手が届く大きさに形成するとともに、該密閉室3を形成した一側面を、開閉可能な開閉扉2A,2Bとして構成しており、この開閉扉2A,2Bを開放することにより、密閉室内に入ることなく各段の棚板6上に対する所定の作業を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、細菌類や藻類、陸上植物などの光合成生物としての植物体の培養から育苗までに用いられる培養・育成装置に関し、この培養・育成装置は、植物の収容室を有し、この室内の環境条件を外部環境と分離して所定に制御し、植物の効率的な培養や育成を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、植物の培養から育苗までに用いる人工的な手段として、培養装置や培養室などが知られている。すなわち、これらの培養装置や培養室は、培養や育苗対象である植物体を収容する収容室を有し、この収容室内を、任意の温湿度などの室内環境に制御可能に構成されている。そして、この収容室内には人工光源が設置されており、この室内に収容した植物体に、その生体活動に必要な日照に相当する照明光を与えるようにしている。
【0003】
この人工光源としては、一般的な熱陰極型の蛍光ランプが用いられており、照明を確保したうえで室内への植物体の収容数を増加させるために、たとえば、この蛍光ランプを設置した棚を多段に有した照明器具付き培養棚が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公平7―18320号公報(第1,2頁、図1,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の培養装置や培養室では、照明時に発熱する熱陰極線蛍光ランプで植物体を照明しているので、装置として各種のコストが増加するという不都合が生じた。
【0005】
すなわち、室内空間を大きくして、つまり室温を規定した空気量を多量に確保し、この空気量に対する上記蛍光ランプの発熱の影響を受ける空気量の比率を小さくし、蛍光ランプからの発熱が室内全体の室温に与える影響を軽減させていた。また、点灯した際の蛍光ランプの発熱による急激な室温変動を回避するために、余裕を見込んだ強力な温度調節能力も必要となり、温度調節器が過大気味となる。このため、設備や装置として大型化するので、製作コスト面で不利となる。また大型化に応じて設置スペースつまり装置設置用の床面積が多く必要なので、設置場所が制約されたり、設備コストが増加したりする。
【0006】
他方、植物体への蛍光ランプからの直接的な熱の影響を防止するために、蛍光ランプと植物体との間の距離を充分に確保する制約が生じた。したがって、この制約によって、蛍光ランプを設置した棚板を多段に構成しても、棚板の段数を効果的に増加できない傾向があった。このため、室内に収容可能な植物体の数量や分量が制約され、植物体用の室内空間の利用効率が低下していた。この結果、装置として能率が低かった。
【0007】
さらに、この蛍光ランプの発熱による所定の設定温度からの室温上昇を抑制するために、余分に空調器を冷却動作させる必要があるので、運用コストが増加する。すなわち、電力は、照明時の熱陰極線蛍光ランプからの発熱と、この発熱を除去するための余分な冷却とに消費されるので、電気エネルギーの利用効率面で無駄が生じて好ましくなく、電力消費量が増大していた。
【0008】
そこでこの発明は、従来の装置の問題点を解決し、小型化が図れて、製作コストや運用コストなどを低廉化でき、機能性や効率性を向上できる培養・育成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、植物体を載置可能な複数の棚板を多段に配置して収容した密閉室と、この密閉室の室内環境を調節する調節器とを有した培養・育成装置において、前記各棚板に、前記植物体を照明し室温に影響を与えない冷陰極蛍光ランプを、設置した。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1において、前記密閉室は、用具を用いることなく室内の全域にほぼ人手が届く大きさに形成するとともに、該密閉室を形成した一側面を、開閉可能な開閉扉として構成しており、この開閉扉を開放することにより、前記密閉室内に入ることなく前記各段の棚板上に対する所定の作業を可能にした。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2において、前記調節器として、室内温度を調節する温度調節器だけか、この温度調節器と室内CO濃度を調節するCO濃度調節器との両方か、のいずれかを選択可能にした。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記密閉室には、送風手段が設けられ、この送風手段は、該室内に互いに交差した方向の複数の循環気流を生成し、各棚板間で互いに交差した分岐流を形成して、各棚板間に交差攪拌作用を得た。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記植物体は、無糖の培地を与えて、光独立栄養培養した。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記植物体は、容器に収納されて各棚板に載置され、この容器は、該容器内からの水分の蒸散を抑制した所定の通気性と、透光性とを有するように構成した。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記植物体は、容器に収納されて各棚板に載置され、この容器には、所定成分のガスが供給されて、該容器内の植物体を培養した。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記植物体は、容器に収納されて各棚板に載置され、この容器は、加振されるか、回転されるか、該容器内に攪拌運動した攪拌子を有するか、のいずれかの構成、またはこれらのいくつかを組合わせた構成とした。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記請求項1ないし8のいずれかにおいて、前記植物体に対して、天井面となる棚板の下面か、床面となる棚板の上面のいずれか、または両方に、前記冷陰極蛍光ランプを設置した。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記棚板からの照明は、この棚板の水平方向で、照度勾配を有した照明に構成した。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記請求項1ないし10のいずれかにおいて、前記棚板からの照明は、この棚板の水平方向で、その発光色が各種色に変化した照明に構成した。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、各棚板に、室温に影響を与えない冷陰極蛍光ランプを設置して、植物体を照明しているので、小型化が図れ、製作コストや運用コストなどを低廉化できる。すなわち、照明が、室内環境の一環としての室温に影響を与えることを回避するために必要とした従来の余分な密閉室内の空間を削減できる。他方、室温に影響を与えずに済ませながら、植物体に対して直接的かつ近接させて照明できる。したがって、室内空間を最小限に確保して、装置全体の外形を小型化できる。このように室内容積を減少させているので、この室内空間に対する調節器による温度調節が容易化され、また調節器が消費する調節に要する電気エネルギーを低減できる。すなわち、冷陰極蛍光ランプの照明では、照明による室温変化を抑止するための温度調節用エネルギーを消費せずに済む。むしろ、温度調節機能が乱されずに済むので、より精密かつ正確な室温制御が可能となる。これらの結果、装置全体のコンパクト化や低コスト化、省電力化を図ったうえで、高機能化や高効率化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明の第1の実施形態を図面により説明する。図1は、この培養・育成装置の全体構成を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、図2は同装置の平面図であり、図3は、同装置内の棚構成を主体に示し、(a)は左側面図、(b)は正面図であり、図4は室内気流を示し、(a)は概略正面図、(b)は概略左側面図であり、図5(a)〜(d)は、照明構成の詳細を示した概略図であり、図6は、同装置の操作パネルを示す正面図である。この培養・育成装置は、その室内に、上下方向に所定間隔をおいて多段に配置した棚板を有しており、これらの棚板上に植物体を載置し、この植物体の育成に最適な室内環境を設定し維持できるように構成されている。
【0022】
すなわち、この培養・育成装置1は、図1ないし図3に示すように、装置本体部2を、その内部に装置外部との熱遮蔽性を所定に確保した断熱密閉構造の密閉室3を形成するように構成し、この密閉室3内に、容器4に収納した植物体5を載置する複数の棚板6を多段に有した多段棚7を収容するとともに、この装置本体部2の上部に、密閉室3内の温度環境を調節する温度調節器8と、この温度調節器8の調節動作を制御する図示しない制御部を有した制御ボックス9とを配置した構成とされ、またこの制御ボックス9は、供給源であるCOボンベ10を有したCO調節器11からのCOガス供給動作を制御し、密閉室3内のCO濃度環境を調節して所定濃度に設定するように構成されている。また、この培養・育成装置1では、容器4に収納されて各棚板6に載置された植物体5に対向し、この植物体5の上方位置を占めた天井面となる各棚板6の下面に、該植物体5を照明し室温に影響を与えない冷陰極蛍光ランプ12が、所定に配列されて設置され、密閉室3内の照明環境として効率的に照明できるようにしている。
【0023】
装置本体部2は、薄板状のステンレス板および鋼板を外面に用いて、その外形状を横長で直立した長箱形状に形成し、その内部に密閉性および断熱性を有した所定容積の密閉室3を形成しており、この室内空間を規定した外形寸法は、室内に収容した多段棚7に対して、該室内の内壁面から多段棚7の外形まで最小限に必要な間隙を確保したうえで、作業者が室内に入らなくて、装置外部に留まったままでも、各段棚板6上に植物体5を載置したり、載置した植物体5の状態を確認して管理したりするなどの所定の操作(作業)が可能な外形寸法が確保されている。たとえば、左右の横幅寸法Wが500〜1800mm、奥行き深さ寸法Dが450〜1000mm、高さ寸法Hが1500〜2400mmの範囲内に各寸法を設定して長箱状に形成されている。
【0024】
また、装置本体部2の前面部は、その前面全体が、図1(b)中の中央から左右に分割されてそれぞれ左右横開きに開かれる両開き扉に構成されている。すなわち、前面部は、左右幅方向の略中央で2分割され、その左扉部2Aの左端が、装置本体部2の前面左端角部に設けられたヒンジ部2aに枢支され、このヒンジ部2aによって、縦軸を中心に左方に向けて横開き開閉可能に構成されている。また右扉部2Bは、概略が対称状の同様な構成とされて、そのヒンジ部2bによって、右方に向けて横開き開閉可能に構成されている。
【0025】
したがって、左扉部2Aおよび右扉部2Bを開放して、作業者が該室内に入ることなく各棚板6上にその人手で植物体5を載置するなどの各種の植物育成用作業を可能にしている。他方、多段棚7を、そのまま室内から取り出せる。このため、多段棚7の点検や保守整備を容易にできる。また、照明が故障したり不調になったりした多段棚7を、正常な多段棚7に交換して、培養・育成装置1を、すみやかに正常な動作状態に復帰させることができる。さらに、多段棚7の外形寸法が室内の内形寸法よりも小さければ、適宜、任意の多段棚7を選択して用いることができる。
【0026】
なお、装置本体部2側の開口周縁部や、扉部の周縁部には、弾性変形可能な合成ゴムなどの図示しないシール部材が各周縁に沿って連続的に設けられており、両扉部を閉止した場合には、このシール部材が、対向面に密着して、左扉部2Aと装置本体部2との間、および右扉部2Bと装置本体部2との間に隙間を生じさせずに封止し、室内を外部から遮断した密閉状態に保つようにしている。また、装置本体部2の内面には、断熱材として、図示しない硬質ウレタンフォームがそれぞれの面を覆うように設けられ、上記の密閉性に加えて断熱性が所定に確保されている。
【0027】
多段棚7は、同一の長板形状に形成された複数の棚板6を有し、これらの棚板6を、それぞれ4隅を垂直方向に延在された直管状の支柱13で水平に支持し、かつ上下方向に互いに所定間隔をおいて、多段に重ねた構成とされ、植物体5を載置可能な6段の棚を形成している。また、各段棚板6に載置された植物体5に対して、天井面を形成した部材としての棚板6は、その天井面となる下面に、細径直管状に形成された複数の冷陰極蛍光ランプ12が、所定に配列されて設置されている。なお、このように上方から下方の植物体5を照明した構成における棚板6とは、植物体5が載置される各段を形成して床面となる棚板6に加えて、最上段の天井面を構成した部材を棚板6として含むものとする。
【0028】
冷陰極蛍光ランプ12は、図5(a)〜(c)に示すように、管径が3mmの細径直管で同一の長さに形成されている。なお、管径は、1.6〜3mmの範囲内から、任意に選択できる。各冷陰極蛍光ランプ12は、その管長手方向が、長板としての棚板6の長手方向に向け、かつ棚板6の横方向に均一な所定間隔をおいて、互いに平行な2列4段に配列されている。したがって、天井面を一様な面照明にして、この天井面の上方から、下方の棚板6上に載置された植物体5を照明している。
【0029】
この冷陰極蛍光ランプ12は、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)と略称され、蛍光物質を付着させた透明な管体に、希ガスと微量の水銀とを封入した2端子構造の蛍光ランプであり、熱陰極に比べ構造が簡単で寿命が長いとされている。また、冷陰極蛍光ランプ12は、発光に伴う発熱が極小であり、室温に影響を与えない発光源とされている。このため、室温に影響を与えるものして、温度調節器8による温度調節能力の大きさに対して、室内に設置された複数の冷陰極蛍光ランプ12から生じる発熱総量の大きさが、室温に影響を与えない程度に極小の比率となっている。
【0030】
また、この培養・育成装置1では、このように配列した複数の冷陰極蛍光ランプ12から得られる各棚での照明として、赤色80%、青色20%による赤色波長と3波長よりなる白色光を得られるようにしている。またブルーとかレッドだけだとかのように、適宜、任意の他の発光色を選択できる。さらに任意の照度も選択できる。したがって、このように所定に選択した照明光で植物体5を照明しているので、植物体5の光合成作用を活発化でき、植物体5の成長を促進できる。
【0031】
さらに、各冷陰極蛍光ランプ12が有した図示しないスイッチやその照明強度を調整する図示しない電圧可変型のランプ駆動回路は、図示しない配線を介して、装置側の制御部に接続されている。すなわち、各冷陰極蛍光ランプ12からの配線は集合されて、少数のコネクタを介して、装置側に接続可能にしている。したがって、この制御部が、各冷陰極蛍光ランプ12のスイッチのオン・オフを制御しつまり冷陰極蛍光ランプ12の点灯状態を制御し、この点灯した状態での照明強度を制御している。
【0032】
なお、図5(b)中の12aは各蛍光ランプ用の安定器、12bは、冷陰極蛍光ランプ12と天井面の間に設けられ下方に向けた反射湾曲面を形成した反射板であり、この反射板12bが、ランプから天井面側に向かった照明光を反射して床面側(植物体側)に向わせて照明効率を高めるようにしている。また、冷陰極蛍光ランプ12の下方に、この冷陰極蛍光ランプ12からの照明光を均等化する光拡散板を設けてもよい。
【0033】
また、配列方向に応じて順次、照度が減少する異なる発光照度を有した冷陰極蛍光ランプ12を配列したり、前記の発光照度となるように各冷陰極蛍光ランプ12を制御した構成にして、棚板6からの照明を、この棚板6の水平方向で、照度勾配を有した照明にしてもよい。また、その発光色が各種に異なる冷陰極蛍光ランプ12を所定に配列した構成にして、棚板6からの照明は、この棚板6の水平方向で、その発光色が各種色に変化した照明にしてもよい。
【0034】
棚板6は、再び図1ないし3に示すように、所定の剛性強度を確保して、棚として左右幅が約103cmで、奥行きが約61cm程度の大きさの植物体5を載置可能な床面を形成している。すなわち、この棚板6は、所定の線条部材を配列した格子状に形成され、または薄肉平板に多数の貫通孔を設けたパンチング板により構成されており、床面としての剛性強度を確保したうえで棚板6自体の軽量化を図るとともに、面としての床面に密接して滞留した層状の室内気を生成させずに済むようにしている。また、上下の棚板6同士の間隔は、天井面からの照明光が均一化する間隔、この棚間に室内気流をスムーズに通過させる間隔、棚板6上に載置される植物体5やこの植物体5を収納した容器4の大きさに応じて必要な間隔、棚板6上に植物体5を載置するなどの作業に要する間隔、のいずれか、またはいくつかを考慮した間隔に設定され、いずれにしても、照明に伴い発熱する熱陰極蛍光ランプを天井面に設置した構成に比べて、約半分以下に削減した必要最小限の棚板間隔とされている。したがって、たとえば、多段棚7として同じ外形寸法の場合に、従前の熱陰極蛍光ランプを設置した構成では、3〜4段の棚となるのに対して、この冷陰極蛍光ランプ12を設置して照明した多段棚7では、ほぼ2倍化した6段の棚とできる。
【0035】
そして、このように構成された多段棚7は、装置本体部2の室内に、その前面周縁を扉側に近接させて収容され、室内奥側となるこの多段棚7自体の背面側には、同室内の上下方向に該室内の天井面および底面に直通した気流生成が可能な大きさの最低限の間隙を確保している。したがって、多段棚7とこの多段棚7を収容した室内の内壁面との間隙は、最小限に確保しているので、冷陰極蛍光ランプ12から直接、植物体5に向わずに、内壁面に向ってから植物体5方向に反射した照明光にも、植物体5の生育に寄与する充分な光強度が得られることが期待できる。このため、これによっても、植物体5の利用に供される照明効率が高められる。
【0036】
なお、図1(a)中の14は、室内奧側の側壁面の上部に設けられた防滴型コンセントであり、この防滴型コンセント14は、室内壁面に設置された図示しないコンセント本体を、下方に開口したカバー部材で覆った構成とされ、このカバー部材が、室内天井面に結露して滴下した水分からコンセント本体を防護するように構成されている。したがって、多段棚7からの電気的な配線を一括して簡易に接続し、また簡易にこの接続の解除を可能にするとともに、この多段棚7以外の室内に収容された装置や機器に対する給電を可能にしている。
【0037】
制御ボックス9は、装置本体部2の上部に設置され、室内の環境条件としての温度や、CO濃度、照明状態の現状を表示しこれらの各値を設定入力する操作パネル16と、この操作パネル16から設定入力された環境条件に基づき、各部の動作を所定に制御する制御回路からなる制御部とを有している。
【0038】
すなわち、制御ボックス9の前面には、各種のスイッチや表示計器を有した操作パネル16が設けられ、この操作パネル16によって、作業者が室内の現在環境を把握するとともに、室内の環境設定用に諸設定値を入力して設定できるようにしている。
【0039】
この操作パネル16は、図6に示すように、室内設定温度の変温時点を入力して設定する時計表示式の変温タイマ17Aと、冷陰極蛍光ランプ12の照明時間帯を入力して設定する時計表示式のランプタイマ17Bと、現状の室温を表示するとともに室内設定温度を入力して設定する温度設定器18Aと、現状の室内CO濃度を表示するとともにCO設定濃度を入力して設定するCO濃度設定器18Bと、照明や温度調節器を含めた装置全体の動作電源をオンオフするメインスイッチ17aと、CO調節器の調節動作をオンオフするCOスイッチ17bと、2列3段に配列された各段別の照明設定入力手段19,19とが配置されている。これらの照明設定入力手段19,19は、各段の照度を反映した冷陰極蛍光ランプ12に供給した電圧状態を示した電圧計19aと、オンオフ操作されて各段の冷陰極蛍光ランプ12を点灯・消灯に切換える照明スイッチ19bと、照度を調整する回転式つまみである調整ボリウム19cとからなる。
【0040】
したがって、この培養・育成装置1において、作業者が、室内環境を所定に設定する場合には、操作パネル16に配置された各種のスイッチなどの入力設定手段を操作して、設定温度や、CO設定濃度、照度設定を入力し、また必要に応じて、変温時点や照明時間帯を入力して設定する。
【0041】
温度調節器8は、再び図1ないし図3、および図4に示すように、装置本体部2の上部に設置され、三位置型の調節器とされている。すなわち、温度調節器8は、この器内に形成した風路8aに、順次、室内気を冷却して所定の温度に調整する冷却器8Aと、この調整した室内気を室内に送給する供給ファン8Bとを配設した構成を主体にしている。この温度調節器8は、制御部に配線接続され、冷却器8Aはその冷却動作が制御部によって制御されるとともに、供給ファン8Bの送風動作も制御部が制御している。また装置本体部2の室内上部には、この室内に向けて開口した吹出し口を有した吹出しダクト21が設置され、温度調節器8は、吹出しダクト21を介して、所定の温度に冷却して調整した室内気を室内に供給可能にしている。
【0042】
また、密閉室3内における奥側となる側壁面の上部で、吹出しダクト21を回避した装置正面における左右方向の略中央箇所には、温風器22が設置されており、この温風器22は、所定の送風能力を有した図示しない送風ファンと、所定の加温能力を有した図示しない加温ヒータとを有している。この温風器22は、制御部に配線接続され、この制御部によって、送風ファンの送風動作が制御され、また加温ヒータの加温動作が制御されている。この加温ヒータの加温動作時には、加温ヒータが常時、比例制御されて発熱動作し、ヒータ発熱容量を調節しているので、精密に加温制御している。
【0043】
室内の適宜箇所には、常時、温度測定が可能な図示しない温度センサが設けられ、その出力線が制御部に配線接続されて、検出した室内温度が制御部に入力されている。したがって、この温度センサが検出した実際の室内温度に基づき、制御部が、冷却器8Aの冷却動作や温風器22の加温動作を制御して、室内温度を所定の設定温度に保つようにしている。
【0044】
また送風手段としてのこれらの温度調節器8および温風器22は、室内の多段棚7の周囲に、互いに交差した方向の関係を有した2つの循環気流を形成し、各循環気流が段方向の上下方向における一方の方向に進む過程でそれぞれの気流から各段棚板6間に分岐流を分流させ、かつ他方の方向に進む過程で各段棚板6間から分岐流を合流させて、この棚板6間で互いに交差した方向に進む分岐流によって、各段棚板6間に交差攪拌作用を得るようにしている。つまり、略リング状の2つの循環気流は、平面視で直交した方向に向けられており、互いに交差した方向の関係となっている。この温度調節器8は、図4(a)に示すように、密閉室3内の多段棚7の周囲を左右方向の右回りに進む循環気流、つまり天井面、右側内壁面、底面、左側内壁面を巡回して、これらの面に沿って進んだ幅広ベルト状で、密閉室3内における左右方向で右回りに循環した気流を生成するように構成しているのに対して、温風器22は、図4(b)に示すように、同密閉室3内の多段棚7の周囲を前後方向の右回りに進む循環気流、つまり奥側内壁面、底面、手前側内壁面、天井面を巡回して、これらの面に沿って進んだ幅広ベルト状で、同室3内における前後方向で右回りに循環した気流を生成するように構成し、各棚板6間で互いに交差した分岐流を形成して、交差攪拌作用を得られるようにしている。
【0045】
これらの温度調節器8の送風方向と温風器22の送風方向とは、互いに交差した関係である左方向と下方向とに、それぞれが向けられている。すなわち、この温度調節器8の送風方向を規定した吹出しダクト21の開口ダクト付近は、天井面付近で同図中の右向きの水平方向に向けられて、横長扁平形状の吹出し口が形成されており、この向きの反対側となる吹出しダクト21の天井面には、吸込み口が開口されており、この吸込み口は、温度調節器8内の風路8aに連通接続されている。また温風器22は、室内の奥側となる側壁面の上部付近で、この側壁面に沿った下向きの垂直方向に向けられて吹出し口が形成されており、温風器22の吸込み口が、温度調節器8の吹き出し口よりも下方に位置されて設けられている。したがって、温度調節器8の吹出しダクト21から吹出される気流と、温風器22の吸込み口に吸込まれる気流とは、上下方向に分離されて形成されるので、互いに干渉させずに済む。
【0046】
このように送風方向を構成した温度調節器8および温風器22がそれぞれ室内に生成した気流は、該室内を循環し、かつこの循環過程でこの循環した本流から各段の棚板6間ごとに分流した分岐流が、互いに交差してこの交差箇所の周囲を攪拌することになる。すなわち、温風器22から送出された室内気は、図4(a)中に示されるように、室内の左右方向における同図中の概略右回りに室内壁面に沿って室内を巡回した本流を有した循環気流と、同図4(b)中に示されるように、室内の前後方向における同図中の概略右回りに室内壁面に沿って室内を巡回した本流を有した循環気流との、2つの循環気流が形成される。そして、各棚板6間を下方に向う過程で、各棚板6間に対応した分岐流が自然に派生し、それぞれの本流から分流した分岐流が、各棚板6間を通過して、それぞれの本流に復帰する。すなわち、各棚板6間には、温度調節器8が生成した循環気流から派生した室内の左方向に進む分岐流と、温風器22が生成した循環気流から派生した室内の前方向に進む分岐流と、が形成され、これらの2つの分岐流は、互いに交差した方向に進むことになる。したがって、これらの各棚板6間を、2つの分岐流が通過する過程で、互いに交差して、各分岐流自身だけでなく交差した箇所周囲を攪拌することになる。
【0047】
したがって、以前よりも上下の棚板6間隔を狭めて段数を増加したこの培養・育成装置1においても、各棚板6間に、室内気を滞留させずに済むだけではなく、左右方向および前後方向の分岐流が互いに接して接触箇所の周囲を攪拌するので、常時、室内の温度やCO濃度が片寄ることなく、室内全体および各棚板6間全体で安定して均一な分布とできるとともに、新たな設定温度やCO濃度を有した室内気を各棚板間の隅々まで行き渡らせることができる。この結果、各棚板6に載置された植物体5に、正確かつ安定した設定温度やCO濃度などからなる室内環境を与えることができ、植物体5の生体活動に最適な環境または正確に所定条件を設定した環境とできる。
【0048】
なお、このような2つの循環気流は、室内底部付近で交差するが、この場合にも、該底部に到達するまで分流されて勢力が低下しているので、互いに相手を遮って衝突することなく、両気流は整然と上下に分かれて互いに迂回して進み続ける気流となり、循環気流として途切れずに済む。
【0049】
また、この培養・育成装置1における温度に関した制御では、中立帯を設けて、装置としての消費電力を低減させている。すなわち、検出した現状の室内温度が、設定温度からある範囲内に収まっている場合には、冷却器8Aおよび加温ヒータのいずれも稼動させることなく停止し、送風ファンの送風動作だけを継続するように制御している。したがって、冷却器8Aを常時稼動させて冷却器8Aで調整した温度を、加温ヒータで再度調整させて室内温度を設定温度にした制御に比べて、電気エネルギー消費の無駄を省くことができ、省電力化を図れる。
【0050】
したがって、このように構成された培養・育成装置1では、5℃から45℃の範囲内の任意の設定温度を設定して、省電力化を図りながら、この設定温度に、室内環境の1つである室温を維持できる。すなわち、培養・育成装置1は、制御部が、常時、室温を把握しているので、該室温の変動に応じて、冷却器8Aの冷却量か、加温ヒータの発熱量かのいずれかを微調整して、所定の設定温度に保持する。すなわち、各植物体5が、微小量でも発熱や吸熱する場合でも、制御部が室温を常時、把握して、加温ヒータの加温動作や、冷却器8Aの冷却動作を制御しているので、所定の設定温度に維持することができる。特に、植物体5が、その成長段階によっては、発熱量や吸熱量が変動しても、室温を所定に維持することができる。このため、植物体5の育成に最適となる。
【0051】
なお、このように送風ファンと加温ヒータとを有した温風器22に構成したが、これに限られることなく、送風ファンと加温ヒータとを別体に構成してもよい。また、温度調節器8に加温機能を追加して、温風器22から加温ヒータを除外した構成にしてもよい。
【0052】
CO調節器11は、図2に示すように、COガス供給源であるCOボンベ10と、このCOボンベ10から室内に至るガス供給路として略表記した配管24の途中に設けられた電磁弁25とを主体に構成され、ガス供給路を開放・遮断する動作としての電磁弁25の開閉動作を、制御部が制御して、室内のCO濃度を所定の設定濃度に保持するようにしている。
【0053】
すなわち、COボンベ10は、所定容量の耐圧性を確保した密閉容器であり、所定量のCOガスが充填され、所定圧で貯蔵されている。このCOボンベ10の吐出口は、配管24を介して室内に至るように接続されており、この配管24の途中には、電磁弁25が設けられている。この電磁弁25は、図示しない配線を介して制御部に電気的に接続され、その開閉動作が制御部によって制御されている。また図1(a)中に示されるように室内の適宜箇所には、CO濃度測定が可能な赤外線方式などのCO濃度センサ26が設けられ、その検出値の出力線が制御部に配線接続されて、常時、検出したCO濃度が制御部に入力されている。
【0054】
したがって、このように構成されたCO調節器11では、CO濃度センサ26が検出した実際の室内CO濃度に基づき、制御部が、電磁弁25の開閉動作を制御して、室内のCO濃度を所定の設定濃度に保持する。すなわち、制御部は、CO濃度が設定濃度よりも低下したと判断した場合に、電磁弁25を開動作させ、配管24を介してCOボンベから室内にCOガスが放出され、低下した濃度分のCOガスが室内に補充される。この補充の際には、電磁弁25の開度設定や開時間などによって、0〜4800ppmの範囲内で任意の室内濃度に設定するために必要な濃度に相当する微流量を増減可能に制御しているので、精密に濃度を調節できる。
【0055】
このため、この培養・育成装置1では、現時点での地球環境上が300〜400ppmのCO濃度であるのに対して、室内濃度を800〜4800ppmの範囲内の設定濃度に、常時、安定して保持できるので、室内に収容した植物体5の光合成作用を活発化させて、成長を促進させることができる。
【0056】
さらに、この培養・育成装置1においては、上記した温度環境や照明環境を、互いに連動して変化させた昼夜サイクルを生成するように設定できる。すなわち、この昼夜サイクルの設定する場合には、操作パネル16のランプタイマを操作して、冷陰極蛍光ランプ12を点灯した昼間時間または消灯した夜間時間を入力し、昼夜の時間帯を設定する。次に、操作パネル16の変温タイマを操作して、昼夜の切換時点に応じた変温時点を設定する。したがって、この場合には、所定時間で昼夜が切換わることが繰り返され、この昼夜切換えに応じて室内は、それぞれの昼間用または夜間用の設定温度に切換わる。
【0057】
なお、上記のように棚板に載置された植物体5に対して、天井面となる棚板6の下面に、冷陰極蛍光ランプ12を設置して照明した構成としたが、これに限られることなく、床面となる棚板6の上面だけに冷陰極蛍光ランプ12を設置した構成や、またはこれらの両方に設置した構成としてもよい。
【0058】
すなわち、棚板6の上面だけに冷陰極蛍光ランプ12を設置した構成としては、図5(d)に示すように、棚板6の上面に、この上面と所定間隔を確保して、水平な床面として所定の剛性強度と透光性とを有したガラス板などの平板形状の透光性部材28を設置するとともに、この透光性部材28と棚板6との間には、所定に配列した冷陰極蛍光ランプ12を設置した構成としている。これらの透明な床面下に設置した複数の冷陰極蛍光ランプ12は、上記の天井面に設置した冷陰極蛍光ランプ12と同様に配線されて装置本体側に電気的に接続されており、制御部によって、その発光動作が制御されている。
【0059】
したがって、このように透光性部材28からなる床面下に冷陰極蛍光ランプ12を配列して設置し下方から植物体5を照明した構成によれば、棚板6間の気流の通流性を充分に確保しながら、植物体5と冷陰極蛍光ランプ12と間の距離を最小限にでき、照明効率をより高めることができる。このため、植物体5の一種としての組織体を組織培養するのに最適となる。他方、冷陰極蛍光ランプ12を気流に接触させずに済むので、より細径の冷陰極蛍光ランプ12の設置が可能となる。すなわち、低温の影響を受けやすい細径の冷陰極蛍光ランプ12を設置した場合に、この低温状態に室内設定温度が変化しても、この冷陰極蛍光ランプの照度変化を抑制できる。また、たとえば細径の冷陰極蛍光ランプ12を、より多数配列した構成とすれば、より面照明に近づけることができ、照明の質を高めることができる。特に、これらの上方および下方の両方から植物体5を照明した構成とすれば、この植物体5が受ける照度として概略2倍の照度を確保できることになる。
【0060】
このように温度、照明、CO濃度からなる各種の環境条件を室内に設定可能な培養・育成装置1では、植物体5は、所定の容器4に収納されて棚板上に載置されており、容器4単位での植物体5の各種の管理を可能にしている。
【0061】
すなわち、この培養・育成装置1では、容器4として、該容器4内からの水分の蒸散を抑制した所定の通気性と、透光性とを有する構成を選択可能とされ、このように構成した容器4を用いることにより、その容器4内に収納した植物体5の育成などに要する管理の手間を軽減するようにしている。
【0062】
この容器として大型から中型のものは、図7(a)に示されるように、適宜、有底の円筒状または角筒状に形成した容器4や、ガラス&プラスチック製のペトリシャーレや、三角フラスコ、バイオポット、同図7(b)に示されるように、大型サイズなどの各種サイズのバットなどの容器4を、その上部の開口を、通気性、採光性を有したシート膜蓋4Aで封止したものであり、高圧蒸気滅菌で滅菌処理できる培養皿とされている。すなわち、このシート膜蓋4Aは、容器4内からの水分の蒸散を抑制し、かつCOなどのガス成分だけを通過させる通気性と、光を透過させる透光性としての採光性とが、植物体5の生育に必要でかつ充分な量を確保できる特性を有している。このシート膜蓋4Aとしては、フィルム状膜または不織布などが挙げられる。
【0063】
したがって、この培養・育成装置1において、シート膜蓋4Aで開口を封止した容器4に植物体5を収納して育成すれば、容器内の植物の光合成、同化作用を良好な効率で促進できる。すなわち、適度の湿気を容器内に保持でき、水分補充の手間が省けるとともに、培地の交換を抑制できる。このため、一旦、無菌状態にして容器4に収納した植物体5は、そのまま無菌状態を維持して、無菌的に生育できる。他方、この生育に必要な作業を大幅に省力化できる。
【0064】
また小型から中型の容器としては、図示しないが、容器の外壁面を構成した全面が、上記のシート膜蓋4Aと同様な採光性、通気性のある容器を用いている。たとえば、これらの採光性、通気性を有したビトロン(商品名)などの薄膜を袋状に形成し、この膜内側から枠体で支持した構成の容器としてもよく、この構成の場合には、縦長の角柱形状などのように、任意の外形状に形成した枠体を薄膜で被覆することにより、自在な内形状を有した容器を形成でき、容器に収納する植物の外形状に適合させた容器にできる。したがって、この容器を構成している膜が、ガスと光の透過性がよいことから、容器内での植物の光合成、同化作用を効率よく促進させることができるとともに、培地の交換を抑制し、しかも無菌的に植物体の育成や培養できる。また、容器内は適度の湿気を保持できることから、水分を補充する手間を省け、長期にわたりメンテナンスフリーとなる。このように省力化ができる容器を用いて、効率よく植物体の育成や培養を行える。
【0065】
また、この培養・育成装置1では、容器に、植物体と、液状または流動状態にした流動性の培地とを収納した場合に、この培地を直接的に流動させて攪拌した方法か、または間接的に流動させて攪拌した方法かの、いずれかを選択可能している。
【0066】
すなわち、この培養・育成装置1では、容器内に所定成分のガスを強制的に導入して、該容器内の植物体を培養する構成を、選択可能にしている。この容器には、室内気の成分と異なる成分のガスや、室内気と同一成分でも高濃度のガスが、所定圧で供給されており、該ガスを容器内に強制的に導入するように構成されている。
【0067】
この容器4では、図8(a)〜(d)に示すように、流動状の培地5Aを用いて、図示しない植物体を培養や育成しており、この培地中に植物体の一部または全部が浸漬されている。この培地5Aは、液状、半固形状、または該室内環境で流動状態となる培地とされている。また、容器4内に供給されるガスは、2酸化炭素(CO)や、酸素(O)、窒素(N)などのいずれかを単一成分で有したガス、または所定の成分比率で有したガスとされている。
【0068】
すなわち、この所定成分ガスを容器内に強制的に導入した構成30は、図8(a)に示すように、ガス供給源として所定成分のガスが充填されて貯蔵した耐圧性を有した所定容量のボンベ31と、このボンベ31から供給されるガスに所定の供給圧を付与するコンプレッサ32と、多数の分岐管33aを有しこれらの分岐管33aに供給ガスを分配可能にした集合パイプ33と、この分岐管33aに該容器用のチューブ34を介して接続された該容器4が有したガス導入パイプ35とを主体に構成され、このガス導入パイプ35は、所定長さの管体とされ、容器4の上部開口を異物の侵入を防止して封止した栓36にその上端側が支持されて、垂直姿勢に保持されており、その下端の放出口が、培地5Aの最深部となる該容器4の底面近傍に位置されている。
【0069】
なお、集合パイプ33から側方に突設された分岐管33aの先端には、図示しない閉止弁が設けられ、この閉止弁は、分岐管33aにチューブ34を接続しない場合には、分岐管33aの開放端を閉止するように構成されている。また、同図中の36aは、培地5A以外の容器内空間と容器外を連通した圧抜きパイプであり、37は、チューブ34の途中に配設されたクランプ式のガス流量微調整弁であり、この微調整弁は、枠体とこの枠体を貫通して螺着されて該枠体内の間隙を増減可能にしたクランプネジとを有し、この間隙にチューブ34を通過させた構成としており、該クランプネジの押圧力の加減によって所定に弾性変形可能な可撓性を有したチューブ34の横断面積を増減し、チューブ34内を流れるガス流量をその容器専用で個別に微調整するようにしており、38は、同チューブの流量調整弁よりも下流側に配設されたフィルタであり、このフィルタ38は、HEPA方式などのフィルタが用いられ、容器4内に供給するガスから最終的にガス以外の不純物を捕集して除去するようにしている。
【0070】
したがって、この構成30によれば、容器4内の流動状の培地5Aに、直接、所定成分のガスが供給され、しかも培地5Aの最深部から培地中にガスを放出させているので、微泡化したガス自体による培地5Aの攪拌作用を充分に得ることができる。このため、この培地5Aへの安定して効率的なガス成分の浸透が図れる。したがって、培地中に溶存させたガス成分として、安定して所定の濃度に保持できるとともに、培地全体での濃度を偏在させずに均一化できる。この結果、植物体の生体活動などによって消費された培地中のガス成分を、充分かつ確実に安定して補充でき、植物体の培養や成長を促進できる。なお、培地を攪拌するためだけに、上記のボンベ31を除外して、コンプレッサ32で室内気を送給してもよい。
【0071】
さらに、この培養・育成装置1では、容器自体を加振した構成を、選択可能にして、上記のガス成分の浸透作用と攪拌作用とを得られるようにしている。
【0072】
すなわち、この構成40は、図8(b)に示すように、棚板6上に加振器41が設置され、この加振器41が有した台座41a上に容器4が載置されている。この加振器41は、その上部に所定数の台座41aを配列して設けるとともに、これらの台座41aを所定に振動運動させる図示しない加振機構をその内部に設けた構成とされている。この台座41aは、所定の平面形状に形成され、その外周縁には台座41a上から容器4の脱落を防止した外枠が立設されている。加振機構は、電動モータや圧電素子などを振動発生源として有し、発生させた振動を台座41aに伝達して、容器4が載置された台座41aだけを左右方向などに所定に振動運動させるようにしている。
【0073】
したがって、この構成40によれば、容器4を所定に加振して振動させているので、この振動が伝達された培地5Aへのガス浸透作用や、培地自体の攪拌作用を充分に得ることができる。すなわち、培地5Aが振動することによって、培地5Aとガスとの接触界面を、静止した固定的な状態から、常に変動した動的な状態にできるので、容器4内の培地5Aに対する所定ガス成分の浸透を充分に図ることができる。他方、このように振動した培地5A自体も、同様に動的に流動した状態となるので、攪拌作用が得られ、この攪拌作用によって、培地全体での濃度分布の均一化を図れる。また、上記の接触界面付近に、ガス成分の溶存濃度が高い培地5Aだけを偏在させずに済み、これによっても培地5Aに対するガス成分の浸透作用が高まる。この結果、培地中のガス成分を、充分かつ確実に安定して補充でき、植物体の培養や成長を促進できる。さらに、容器4の上部開口を所定の栓などによって異物の侵入を防止し所定の通気性を確保して封止した場合にも、容器4を振動運動させているので、容器外から容器内への室内気を取り込んだり、排出したりする換気を活発にできることになる。
【0074】
さらに、この培養・育成装置1では、容器自体を回転した構成を、選択可能にして、上記のガス成分の浸透作用と攪拌作用とを得られるようにしている。
【0075】
すなわち、この構成45は、図8(c)に示すように、棚板6上に回転駆動器46が設置され、この回転駆動器46が有した台座46a上に容器4が載置されている。この回転駆動器46は、その上部に所定数の台座46aを配列して設けるとともに、これらの台座46aを各台座46aの中心を軸にして水平方向に所定に回転運動させる図示しない回転機構をその内部に設けた構成とされている。この台座46aは、所定の平面形状に形成され、その外周縁には台座46a上から容器4の脱落を防止した外枠が立設されている。回転機構は、電動モータなどを回転駆動源として有し、生成した回転力を台座46aに伝達して、容器4が載置された台座46aを所定に回転運動させるようにしている。
【0076】
したがって、この構成45によれば、容器4を所定に回転させているので、この回転した容器4内の培地5Aへのガス浸透作用や、培地自体の攪拌作用を充分に得ることができる。すなわち、回転された容器4は、その容器4の内側壁が回転方向に移動し続け、この側壁に接している培地5Aの一部が追従して移動するので、この周辺部の培地5Aの移動を培地全体に影響させることができる。したがって、培地5Aとガスとの接触界面を、静止した固定的な状態から、常に変動した動的な状態にできる。このため、容器4内の培地5Aに対する所定ガス成分の浸透を充分に図ることができる。他方、このように培地自体も、同様に動的に流動した状態となるので、攪拌作用が得られ、この攪拌作用によって、培地全体での濃度分布の均一化を図れる。また、上記の接触界面付近に、ガス成分の溶存濃度が高い培地5Aだけを偏在させずに済み、これによっても培地5Aに対するガス成分の浸透作用が高まる。この結果、培地中のガス成分を、充分かつ確実に安定して補充でき、植物体の培養や成長を促進できる。さらに、容器4の上部開口を所定の栓などによって異物の侵入を防止し所定の通気性を確保して封止した場合にも、容器4を回転運動させているので、容器内への換気を活発にできることになる。
【0077】
さらに、この培養・育成装置1では、容器内の培地5Aを、直接攪拌した構成を、選択可能にして、上記のガス成分の浸透作用と攪拌作用とを得られるようにしている。
【0078】
すなわち、この構成50は、培地中にこの培地5Aを直接攪拌する攪拌運動した攪拌子51を配置し、この攪拌子51に所定に変化する変動磁界を作用させて攪拌子51に攪拌運動させるようにしており、図8(d)に示すように、棚板6上に変動磁界として水平な回転方向に変化する回転磁界を生成した電磁攪拌器52が設置され、この電磁攪拌器52の上面に容器4が載置され、この容器4の培地中には攪拌子51が配置されている。この攪拌子51は、テフロン(登録商標)などで防水や耐蝕コートした弱磁性体を矩形状などの所定形状に形成した小片とされ、培地中に浮遊可能に形成されている。この電磁攪拌器52は、その上部に所定数の容器4を載置可能な外形状に形成されるとともに、これらの容器4を載置する箇所に対応して、各箇所に回転磁界を生成して攪拌子51を駆動する電磁駆動機構をその内部に設けた構成とされている。電磁駆動機構は、前記の箇所に磁力を到達させて磁界を形成した磁石と、この磁石を水平方向に回転駆動する電動モータとを有し、磁石が形成した磁界を、容器4が載置される箇所で、所定に水平方向に回転運動させるようにしている。したがって、この構成50では、電磁攪拌器52からの回転磁界を受けた攪拌子51は、容器4内の培地中で回転運動して、培地5Aを直接攪拌する。
【0079】
このように、この構成50によれば、容器4内の培地中に攪拌子51を配置しこの攪拌子51を磁力で所定に回転させて、培地5Aを直接攪拌しているので、この攪拌した培地5Aへのガス浸透作用を充分に得ることができる。すなわち、培地5Aとガスとの接触界面を、静止した固定的な状態から、常に変動した動的な状態にできる。このため、容器4内の培地5Aに対する所定ガス成分の浸透を充分に図ることができる。他方、直接的な攪拌作用によって、培地全体での濃度分布の均一化を図れる。特に、粘性が低く流動しにくい培地5Aに対する攪拌に有利となる。また、上記の接触界面付近に、ガス成分の溶存濃度が高い培地5Aだけを偏在させずに済み、これによっても培地5Aに対するガス成分の浸透作用が高まる。この結果、培地中のガス成分を、充分かつ確実に安定して補充でき、植物体の培養や成長を促進できる。
【0080】
さらに磁力によって、攪拌子51を駆動して、容器4自体には、いかなる外力も加えずに済むようにしているので、外力による所定運動をさせにくい培地5Aを含めた重量が嵩んだ容器や、外力に抵抗する剛性強度が低く変形して内部に収納した植物体に影響を与えるおそれがある軽量薄型の容器などを使用でき、容器4の選択幅を広げることができる。さらに、容器4の上部開口を所定の栓などによって異物の侵入を防止し所定の通気性を確保して封止した場合にも、容器4内の培地5Aを直接攪拌して運動させているので、容器内への換気を活発にできることになる。
【0081】
また、上記の構成50では、攪拌子51の攪拌運動として、水平方向に一定の回転運動させた構成を説明したが、これに限られることなく、攪拌子51に作用させる磁力を機械的にまたは電気的に制御して、その回転方向を反転したり、回転速度に強弱を付与したり、さらには前後、左右、上下のいずれか、またはいくつかを組み合わせた振動運動をさせてもよく、いずれにしても、これらの運動を適宜、攪拌子51の攪拌運動として含むものとする。
【0082】
なお、上記の図8(a)〜(d)の構成で、室内に収容された作動に電力が必要な機器は、バッテリなどの独立電源を内蔵することなく、装置本体部2の室内に設置された防滴型コンセント14から電力を供給されている。また、上記の図8(a)〜(d)のいずれかの構成を選択するだけではなく、必要に応じて、これらのいくつかを適宜、組合わせて用いてもよい。すなわち、上記した作用効果を増強して得られるようにして、植物体の培養や成長に関連した生体活動を活性化してもよい。
【0083】
さらに、この培養・育成装置1は、光独立栄養生長による培養方法(以降、光独立栄養培養と称する)が選択可能で、この光独立栄養培養を用いて、植物体5を効率的に生長させることができるようにしている。
【0084】
すなわち、培地に糖などの炭素源を添加した場合には、コンタミネーションと呼ばれる雑菌汚染が生じて、この雑菌汚染によって植物体5の損失が生じるおそれがある。また、有糖培養に植物体5が依存してしまうと、植物体5が従属栄養状態になり、この培養期間中の植物体5の生長速度が低下する。さらに、所定に成長した植物体5を培地から他の環境に移植した場合に、従属栄養状態から光独立栄養状態に切り換わる間は、植物体5の生長が停滞する。
【0085】
これに対して、光独立栄養培養とすれば、上記の3つの問題を一挙に解消できる。すなわち、この光独立栄養培養は、無糖の培地を用いており、植物体5は、室内の二酸化炭素を必要な炭素源としている。したがって、この二酸化炭素と光と水分だけによる植物体5の光合成能力を積極的に助長させて、植物体5自体の光合成作用を活発化させることができる。このため、雑菌汚染を防止し、従属栄養状態による生長速度の低下を回避でき、移植する場合にも、光独立栄養状態が継続されて、植物体5の生長速度の維持が図れる。なお、培地としては、液状、固形状、半固形状のいずれでも、植物体5に必要なものを適宜、選択してよい。
【0086】
したがって、このように上記の構成の容器4に植物体5を収納して光独立栄養培養させた培養・育成装置1は、植物のクローン培養に最適な装置となる。すなわち、この培養・育成装置1で培養する植物体5としての培養組織は、たとえば細胞培養や生長点培養などをして得た植物組織に初代培養、継代培養を行ない、この培養した組織体に早生分枝法、プロトコーム様体法、苗条原基法などを適用して形成した小植物体や多芽体を用いることができる。また、葉を有する節(node)や植物体5の茎部を、適宜選択し、これらの複数の節を節単位で切断した組織体、なども好適に用いることができる。なお、このように培養可能な植物体5としては、あらゆる草本類、花卉類、木本類等の植物を含むものとする。
【0087】
以上のように、この培養・育成装置によれば、冷陰極蛍光ランプは、照明時の発熱量が少ないので、棚板の周囲を囲んだ間隙距離を削減して、装置の外形をスリム化できる。他方、このようにスリム化したうえで、上下の棚板間隔を減少して、以前の構成よりも、段数を増加することができる。したがって、室内の棚板総面積を拡大できる。このため、培養・育成装置の設置に要した設置面積でその単位床面積当たりの、培養・育成装置が育成可能な植物体の個数や、総容積、総重量を増加できる。この結果、培養・育成装置の装置としての生産能力を向上できる。
【0088】
また、この培養・育成装置は、各棚板に載置した植物体に対して天井面となる棚板の下面に複数の冷陰極蛍光ランプを所定に配列して設置した構成なので、冷陰極蛍光ランプと植物体との間に何も介在させることなく、しかも植物体の直上で該植物体に近接させた照明が可能となる。すなわち、照明に伴い発熱する熱陰極蛍光ランプを設置した構成に比べて、棚板同士の上下間隔を約半分以下に削減できる。したがって、発光源と被照射物との距離が半減するので、被照射物に到達する光量が倍増する。このため、以前と同一の照度を植物体に受けさせる条件下では、冷陰極蛍光ランプに必要な発光強度を、半減以下にできる。すなわち、冷陰極蛍光ランプの消費電力として、熱陰極蛍光ランプに比べて約40%削減できる。このように、ランプ消費電力に対して植物体に得られる照度の割合が大きくなり、照明効率が高まるので、植物体に必要な照度を確保したうえで、消費電力を削減した省電力化を図れる。
【0089】
他方、冷陰極蛍光ランプは、長管状でこの管長手方向に光分布が均一であり、また細径に形成し、間隔を密にして平行に並べた配列が可能なので、一様な面照明の光源を形成できる。このため、植物体に対して直上の天井面から、面照明として植物体を照射できる。この結果、植物体に対する照明の質を向上できる。特に、屋外環境の光の影響を受ける生物としての植物体は、屋外環境と同様な上方向からの光を受けることになるので、この植物体育成用の照明として最適となる。
【0090】
さらに、各棚間隔に生じた狭いスペースを有効に活用でき、特に、植物体の育成において、冷陰極蛍光ランプの直下まで植物体が成長しても、熱による影響が少なくなる。したがって、このように熱による影響を受けやすい植物体に対して、棚間スペースをより広く有効的に利用することができる。
【0091】
また、照明に伴う発熱が少なくなるので、この発熱を除去するために本来は不必要な冷却負荷を削減できる。このため、電力エネルギーの利用効率が高まる。この結果、小電力消費の省エネルギー化が図れる。
【0092】
さらに、冷陰極蛍光ランプは、耐用寿命が長いので、メンテナンスの手間が掛からずに済み、使い勝手を向上できる。すなわち、従来の熱陰極蛍光灯に比べ、4〜10倍の寿命があることになる。たとえば、熱陰極蛍光ランプの耐用寿命時間は5000〜12000時間であるのに対して、冷陰極蛍光ランプの耐用寿命時間は50000時間となっている。そして、一般的な育苗装置などでの使用形態では、昼夜切換え運転して、1日当たりの点灯時間が限定されている。したがって、この使用条件下では、従来構成における熱陰極蛍光ランプが1〜2年で交換が必要となるのに対して、この培養・育成装置では、冷陰極蛍光ランプは最低9〜10年、ランプ交換が不要となる。したがって、メンテナンスの手間が省け、耐久消耗部品のコスト負担を軽減できる。このため、培養・育成装置として、全体のランニングコストを大幅に低減できる。すなわち、以前の熱陰極蛍光灯を用いた装置に比べて、約1/3以下に低コスト化を図れる。この結果、省エネルギー、省コストの多段棚式培養・育成装置となる。
【0093】
また、冷陰極蛍光ランプは、発光色を自由に選択でき、また明暗度の細かい調光が可能となる。このため、植物体が必要とする、または試験条件として要請する照明環境を、適宜得ることができる。この結果、培養から育苗までの多様な植物体に対する各種の条件に応じた照明環境を整備できる。
【0094】
このように、培養・育成装置を、研究開発あるいは生産用に、個別に数多く設置して、それぞれの環境条件下での植物の培養から育苗までを数多くできることとなり、生産の効率化が図られる。すなわち、各培養・育成装置における、それぞれの環境条件として、照明の発光色、照度を変えたり、また、温度のバイオリズムを変化させたり、またCOガスを導入したり、CO濃度を変化させたりできる。このため、培養・育成装置は、機能的にも、経済的にも、優れたシステム装置であり、研究開発、種苗生産、施設園芸、植物工場における培養・育成装置として画期的な装置となることが期待できる。
【0095】
なお、上記の実施形態では、密閉室とは別体で、所定段数の棚板を有した多段棚に構成した例を説明したが、これに限られることなく、各棚板だけを室内に取り付け取り外し可能に構成してもよい。すなわち、多段棚としての周囲に密閉室内壁と所定の間隙を設けたうえで、各棚板を上下に所定の棚板間隔で保持する支持部材を、密閉室側に固定して配置した構成としてもよく、この支持部材として、棚板の各隅部を支持する金具状の部材や、棚板の長手方向両端部を支持した水平アーム状の部材を、適宜、用いてよい。
【0096】
したがって、このように各棚板だけを装置と別体にした構成によれば、各棚板を1つの棚板単位で個別に、密閉室内に収容したり、取り出したりできるので、棚板に設けた照明の故障や修理交換を簡易かつ迅速にでき、保守整備性を向上できる。また、所定の照度勾配や、所定種類の照明光を有した照明構成を設けた棚板を、任意に選択して交換可能となり、この選択した照明構成で植物体を照明できる。たとえば、任意に選択した各段ごとに異なる照明環境を作成できる。このため、植物体に対する照明環境の選択幅を広げることができる。この結果、多種多様な植物体の要望や、様々な照明条件の設定に応じることができる。他方、棚板上に植物体や、植物体を収納した容器を載置したまま、棚板を密閉室内に収容したり、取り出したりでき、使い勝手を向上できる。
【0097】
また、上記の実施形態では、培養・育成装置が、その室内に設定可能な室内環境として、照度や、波長成分などで規定された照明光の種類、温度、室内ガス成分や室内ガス濃度を列挙したが、これに加えて、室内湿度を設定できるようにしてもよい。すなわち、室内湿度を適宜制御して、所定の湿度に設定する湿度調整器を室内に設置したり、湿度調整機能を追加した温度調節器を用いてもよい。したがって、この構成によれば、装置として設定可能な室内環境を、さらに多種多様にできるので、適用範囲を拡大できるとともに、さらなる高機能化が図れる。
【0098】
また、上記の実施形態では、植物体の例を説明したが、これに限られることなく、各棚に載置可能なものであれば、所定の日照や温度、湿度、室内ガス成分や室内ガス濃度などを任意に組み合わせた室内環境を要する植物以外の生物や、無生物にこの装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】この発明の実施形態の培養・育成装置の全体構成を示し、(a)は培養・育成装置の左側面図、(b)は正面図である。
【図2】この実施形態の培養・育成装置の全体構成を示し、培養・育成装置の平面図である。
【図3】この実施形態の培養・育成装置内の棚構成を主体に示し、(a)は側壁面を省略した左側面図、(b)は左右扉部を省略した正面図である。
【図4】この実施形態の培養・育成装置の室内に形成した室内気流の状態を示し、(a)は概略正面図、(b)は概略左側面図である。
【図5】この実施形態の培養・育成装置の照明構成を示し、(a)は、棚板の天井面への照明配置を示した一部拡大側面図、(b)は、天井面の照明配置を示した(a)中におけるb−b矢視方向の平面図、(c)は、冷陰極蛍光ランプを示す概略外形図、(d)は、棚板の床面への照明配置を示した一部拡大側面図である。
【図6】この培養・育成装置の操作パネルの詳細を示し、各種の表示計器やスイッチ類の配置を示した正面図である。
【図7】この培養・育成装置の植物体を収納する容器の概略を示し、(a)は有底の筒状容器の側面図、(b)は平皿状容器の概略斜視図である。
【図8】この培養・育成装置における培地を用いた植物体を収納した容器の例を示し、(a)は、所定成分ガスを容器内に強制的に導入した構成を示した拡大概略図、(b)は、容器自体を加振した構成をを示した拡大概略図、(c)は、容器自体を回転した構成を示した拡大概略図、(d)は、容器内の培地を直接攪拌した構成を示した拡大概略図である。
【符号の説明】
【0100】
1 培養・育成装置 2 装置本体部
2A,2B 左右扉部 3 密閉室
4 容器 5 植物体
5A 培地 6 棚板
7 多段棚 8 温度調節器
8A 冷却器 8B 供給ファン
9 制御ボックス 10 COボンベ
11 CO調節器 12 冷陰極蛍光ランプ
16 操作パネル 21 吹出しダクト
22 温風器 24 配管(CO供給路)
25 電磁弁 26 CO濃度センサ
28 透光性部材
30 所定成分ガスを容器内に強制的に導入した構成
40 容器を加振した構成 45 容器を回転した構成
50 培地を直接攪拌した構成

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体を載置可能な複数の棚板を多段に配置して収容した密閉室と、この密閉室の室内環境を調節する調節器とを有した培養・育成装置において、
前記各棚板に、前記植物体を照明し室温に影響を与えない冷陰極蛍光ランプを、設置したことを特徴とする培養・育成装置。
【請求項2】
前記密閉室は、用具を用いることなく室内の全域にほぼ人手が届く大きさに形成するとともに、該密閉室を形成した一側面を、開閉可能な開閉扉として構成しており、この開閉扉を開放することにより、前記密閉室内に入ることなく前記各段の棚板上に対する所定の作業を可能にしたことを特徴とする請求項1の培養・育成装置。
【請求項3】
前記調節器として、室内温度を調節する温度調節器だけか、この温度調節器と室内CO濃度を調節するCO濃度調節器との両方か、のいずれかを選択可能にしたことを特徴とする請求項1または2記載の培養・育成装置。
【請求項4】
前記密閉室には、送風手段が設けられ、この送風手段は、該室内に互いに交差した方向の複数の循環気流を生成し、各棚板間で互いに交差した分岐流を形成して、各棚板間に交差攪拌作用を得たことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項5】
前記植物体は、無糖の培地を与えて、光独立栄養培養したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項6】
前記植物体は、容器に収納されて各棚板に載置され、この容器は、該容器内からの水分の蒸散を抑制した所定の通気性と、透光性とを有するように構成したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項7】
前記植物体は、容器に収納されて各棚板に載置され、この容器には、所定成分のガスが供給されて、該容器内の植物体を培養したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項8】
前記植物体は、容器に収納されて各棚板に載置され、この容器は、加振されるか、回転されるか、該容器内に攪拌運動した攪拌子を有するか、のいずれかの構成、またはこれらのいくつかを組合わせた構成としたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項9】
前記植物体に対して、天井面となる棚板の下面か、床面となる棚板の上面のいずれか、または両方に、前記冷陰極蛍光ランプを設置したことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項10】
前記棚板からの照明は、この棚板の水平方向で、照度勾配を有した照明に構成したことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の培養・育成装置。
【請求項11】
前記棚板からの照明は、この棚板の水平方向で、その発光色が各種色に変化した照明に構成したことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の培養・育成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75088(P2006−75088A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263090(P2004−263090)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(591221134)株式会社日本医化器械製作所 (9)
【Fターム(参考)】