培養用基体及び該培養用基体の使用方法
【課題】本発明は、培養用基体及び該培養用基体の使用方法に関する。
【解決手段】本発明の培養用基体は、細胞を培養することに用いられる。該培養用基体は、カーボンナノチューブ構造体及び親水層を含み、該親水層が前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成される。また本発明は、培養用基体の使用方法を提供する。
【解決手段】本発明の培養用基体は、細胞を培養することに用いられる。該培養用基体は、カーボンナノチューブ構造体及び親水層を含み、該親水層が前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成される。また本発明は、培養用基体の使用方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養用基体及び該培養用基体の使用方法に関して、特に細胞を播種することができる培養用基体及び該培養用基体を使用して、細胞を培養する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日々の生活の中で起こる様々な事故や災害によって、皮膚又は神経系が損傷することがある。その場合、広範囲にわたる皮膚の損傷に対しては、皮膚移植の方法を採用する。皮膚移植は、自分の体の目立たない場所から皮膚を移植する方法と、他人の体から皮膚を移植する方法があるが、皮膚のソースは少なく、しかもその方法はとても複雑である。
【0003】
現在、神経系が損傷した場合、神経移植体を移植して、神経系を修復する。これは、神経外科の手術において、損傷を修復するための重要な方法である。従来技術の神経移植体とは、神経系において、損傷した部分の両端を繋ぎ合わせた神経管である。該神経管は、生物分解が可能な物質からなる管状構造体である。神経系について損傷した部分の一端に位置する神経細胞は、前記神経管の内壁に沿って神経突起を成長させ、該神経突起は、前記神経系において損傷した部分のもう一つの端に位置する神経細胞に到達する。
【0004】
従って、前記神経管は、神経細胞の支持体であり、神経系において損傷された部分の神経細胞の神経突起が損傷すると、神経細胞が前記神経管の支持によって神経突起を成長させて、損傷した神経系の修復を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101239712B号明細書
【特許文献2】特開2008−297195号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第101284662A号明細書
【特許文献4】特許第3868914号公報
【特許文献5】特許第4486060号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、損傷した部分の神経細胞が死亡した場合、該神経細胞が損傷した部分に、神経管を移植しても、損傷した神経系を修復することはできない。
【0008】
従って、本発明は、細胞を播種することができる培養用基体及び該培養用基体を使用して、細胞を培養する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
培養用基体は、細胞を培養することに用いられ、カーボンナノチューブ構造体及び親水層を含み、該親水層は、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成される。
【0010】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブからなり、隣接するカーボンナノチューブは、分子間力で接続され、自立構造を形成する。
【0011】
前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造体である。
【0012】
前記親水層は、親水性を有する金属酸化物又は酸化物の半導体材料である。
【0013】
培養用基体の使用方法は、培養用基体を提供するステップであって、該培養用基体がカーボンナノチューブ構造体及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された親水層を含むステップと、前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップと、前記親水層の極性化表面に複数の細胞を播種するステップと、複数の前記細胞を培養するステップと、を含む。
【0014】
前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップにおいて、前記親水層に対して、殺菌処理をするサブステップと、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液で殺菌処理された前記親水層を処理するサブステップとを含む。
【0015】
培養用基体は、細胞を培養することに用いられ、カーボンナノチューブ構造体、親水層及び極性層を含み、該親水層は、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成され、前記極性層は、前記親水層の前記カーボンナノチューブ構造体とは反対側の表面に設置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の培養用基体におけるカーボンナノチューブ構造体が弾性及び延展性に優れ且つ質量も軽いので、前記培養用基体は、弾性及び延展性に優れ且つ生物体内に直接移植することができる。前記カーボンナノチューブ構造体は、優れた電気伝導性、熱伝導性、音発生特性を有する。細胞の成長も、電気伝導性、熱伝導性及び音発生特性の影響を受けるので、前記カーボンナノチューブ構造体を含む前記培養用基体に細胞を成長させることは、電気伝導性、熱伝導性及び音発生特性などの細胞に対する影響を研究することができる。前記培養用基体は、細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えないので、該培養用基体を直接に利用し、細胞を培養することができる。
【0017】
本発明における培養用基体の表面が極性化処理された後、該培養用基体の表面に細胞を直接播種し、培養することができるので、簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る神経移植体の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る神経移植体における、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図3】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図4】積層された複数のカーボンナノチューブフィルムが形成された層状構造体を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る神経移植体における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図6】本発明の実施例1に係る神経移植体における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例1に係る神経移植体における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例1に係る神経移植体における、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図9】本発明の実施例1に係る神経移植体における、ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図10】本発明の実施例1に係る培養用基体の製造方法のフローチャートである。
【図11】本発明の実施例1に係る培養用基体の使用方法のフローチャートである。
【図12】本発明の第二実施例に係る培養用基体の断面図である。
【図13】本発明の第二実施例に係る培養用基体のTEM写真である。
【図14】本発明の実施例3に係る培養用基体の断面図である。
【図15】本発明の実施例3に係る培養用基体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0020】
(実施例1)
図1を参照すると、本発明の実施例1は、培養用基体10を提供する。該培養用基体10は、カーボンナノチューブ構造体12及び親水層14を含み、細胞を播種することに用いられる。前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に設置される。該カーボンナノチューブ構造体12は、複数のカーボンナノチューブからなる。
【0021】
前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12における少なくとも一部のカーボンナノチューブの表面に形成される。具体的には、前記親水層14を、前記カーボンナノチューブ構造体12の内部に浸透させてもよく、前記親水層14を、前記カーボンナノチューブ構造体12の一つの表面に形成されたカーボンナノチューブの表面に形成してもよい。前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に親水性をもたせ、細胞の成長のための条件を提供する。前記親水層14の厚さは制限されず、1〜100ナノメートルであることが好ましい。この時、前記培養用基体10は、優れた強靭性及び延展性を有する。また前記親水層14の厚さが1〜50ナノメートルである場合(例えば10ナノメートル)、前記親水層14の材料は、例えば、金属酸化物、酸化物の半導体などの親水性を有する無機材料であるが、二酸化珪素、二酸化チタンまたは鉄の酸化物などであることが好ましい。前記親水層14の厚さは制限されず、1〜100ナノメートルであることが好ましい。この時、前記培養用基体10は、優れた強靭性及び延展性を有する。また前記親水層14の厚さが1〜50ナノメートルである場合(例えば10ナノメートル)、前記親水層14の材料は、例えば、金属酸化物、酸化物の半導体などの親水性を有する無機材料であるが、二酸化珪素、二酸化チタンまたは鉄の酸化物などであることが好ましい。
【0022】
前記細胞は、動物細胞及び植物細胞を含む。前記動物細胞が、神経細胞、筋肉細胞又は皮膚細胞などである。前記親水層14は、無機材料であり、保存しやすく、変質しにくいので、前記培養用基体10も保存しやすく、変質しにくいため、細胞の成長に適する。また前記親水層14は、物理的方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に形成されるので、細胞を影響、損傷する汚染物質を導入することがない。従って、前記親水層14は、細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えない。
【0023】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接続され、自立構造を形成する。自立構造とは、支持体を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体12を独立的に利用するというものである。前記カーボンナノチューブ構造体12は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体からなるフィルム状構造体である。前記カーボンナノチューブ構造体12が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、該複数のカーボンナノチューブフィルムは、積層して設置されている。隣接するカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で接続される。前記カーボンナノチューブ構造体12が少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体は、折られ、交差し、編まれ、又は織られ、カーボンナノチューブフィルム状構造体に形成される。該カーボンナノチューブ構造体12の厚さは、実際の応用によって形成される。
【0024】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接続されるので、軽く、弾性及び延展性に優れている。従って、前記カーボンナノチューブ構造体12は、容易に切り又は引き伸ばすことができる。
【0025】
また、前記カーボンナノチューブは、優れた導電性、熱伝導性、音発生特性を有するので、前記カーボンナノチューブ構造体12も、優れた電気伝導性、熱伝導性、音発生特性を有する。細胞の成長も、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性の影響を受けるので、前記カーボンナノチューブ構造体12を含む前記培養用基体10に細胞を成長させることによって、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性などの細胞に対する影響を研究することができる。一般的に、前記カーボンナノチューブ構造体12におけるカーボンナノチューブは、化学又は物理処理を行わないカーボンナノチューブである。即ち、前記カーボンナノチューブは、純粋なカーボンナノチューブである。
【0026】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体12は、非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。
【0027】
前記非配向型のカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。前記配向型のカーボンナノチューブ構造体は、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、配向型のカーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブの中の一種又はこれらの組み合わせである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0028】
具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体12は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含む。
【0029】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図2を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0030】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブの割合は、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブに比べて小さい。
【0031】
図3を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。また前記カーボンナノチューブフィルム143aの透光率も75%以上程度まで達することができる。
【0032】
前記カーボンナノチューブ構造体が複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む場合、該複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aは積層して、設置、層状構造体を形成するが、該層状構造体の厚さは制限されない。図4を参照すると、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°以上の角度で交差する場合、前記複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブは、互いに交差して、網状構造体を形成し、前記カーボンナノチューブ構造体の機械性能を高める。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含み、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。即ち、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブの延長方向は、垂直している。前記カーボンナノチューブフィルム143aの構造及び製造方法については、特許文献1を参照。前記カーボンナノチューブ構造体における、前記カーボンナノチューブフィルム143aが少ない場合、例えば、10枚より少ない前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む際、特に、一枚の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む際、前記カーボンナノチューブ構造体は、優れた透光率を有する。
【0033】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図5又は図6を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0034】
図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置されている。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含み、隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。また該カーボンナノチューブ構造体は、平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長する基板に垂直な方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0035】
図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されている。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押すと、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0036】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜角は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面は、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜角も大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係し、0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが高くなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが低くなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは小さくなる。前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの構造及び製造方法については、特許文献2を参照。
【0037】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合い、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、複数の微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径は、1ナノメートル〜500ナノメートルである。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの構造及び製造方法については、特許文献3を参照。
【0038】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含むことができる。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一つの非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、少なくとも一つのねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又は非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ及びねじれ状カーボンナノチューブワイヤの組み合わせである。
【0039】
図8を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列され、隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に結合されている。前記複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。前記カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は0.5ナノメートル〜1ミリメートルである。
【0040】
前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを、有機溶剤で処理して形成したものである。前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、前記図2に示すようなカーボンナノチューブフィルム143aを、有機溶剤で処理することにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aをカーボンナノチューブワイヤに形成させる。
【0041】
具体的には、有機溶剤を前記カーボンナノチューブフィルム143aの表面に滴下し、該有機溶剤を前記カーボンナノチューブフィルム143aに浸漬させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。従って、前記有機溶剤の表面張力によって、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおける複数のカーボンナノチューブを縮ませて、該カーボンナノチューブワイヤが形成される。該カーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブフィルム143aより、比表面積が小さくなり、接着性が低くなる。
【0042】
図9を参照すると、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。各々の前記カーボンナノチューブセグメントは、分子間力で端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0043】
前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、機械外力で図2に示すような前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aを処理して形成されたものである。具体的には、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aの両端を異なる方向に沿って絞る。該ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、接着性を有するので、該カーボンナノチューブフィルム143aは、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤに形成することができる。更に、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0044】
前記カーボンナノチューブワイヤの構造及び製造方法については、特許文献4及び特許文献5を参照。
【0045】
前記カーボンナノチューブ構造体12の厚さが薄い場合、前記親水層14が前記カーボンナノチューブ構造体12における各々のカーボンナノチューブの表面に形成される。前記カーボンナノチューブ構造体12の厚さが厚い場合、前記親水層14が前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に位置するカーボンナノチューブの表面に分布し、前記カーボンナノチューブ構造体12(例えば、前記カーボンナノチューブ構造体12が複数の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含み、特に10枚以上の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む)の内部に位置するカーボンナノチューブの表面には到達しにくい。
【0046】
本実施例において、前記カーボンナノチューブ構造体12は、三十枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aが積層してなるものである。隣接する前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、90°の角度で交差している。前記親水層14は、厚さが10ナノメートルの二酸化珪素層である。前記二酸化珪素層は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に位置するカーボンナノチューブの表面に分布した二酸化珪素の粒子が連続的に形成されたものである。前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に親水性をもたせるので、細胞の成長に適する。また前記親水層14は無機材料からなり、保存しやすく、変質しにくいので、前記培養用基体10も保存しやすく、変質しにくくなり、細胞の成長に有利である。また前記親水層14は物理的方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に形成されるので、細胞を影響、損傷する汚染物質が侵入することができない。従って、前記二酸化珪素層も細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えない。
【0047】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、優れた強靭性及び延展性を有し、前記親水層14の厚さが100ナノメートル以下であるので、前記培養用基体10は優れた強靭性及び延展性を有する。特に、前記カーボンナノチューブ構造体12がドローン構造カーボンナノチューブフィルムである場合、前記培養用基体10は、より優れた強靭性及び延展性を有する。また、前記親水層が二酸化珪素層または二酸化チタン層である場合、前記培養用基体10は、生物体内に直接移植することができ、損傷した部分の両端又は縁部に位置する細胞を成長させ、再び繋げることができる。従って、神経系の欠損部分の修復が実現できる。
【0048】
前記カーボンナノチューブ構造体12及び前記親水層14が透明材料である場合、前記培養用基体10も透明である。前記カーボンナノチューブ構造体12が十枚、又は十枚より少ない積層されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムである場合、該カーボンナノチューブ構造体12は透明である。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体12が一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、前記親水層14が二酸化珪素層である場合、前記培養用基体10は透明構造体である。前記透明な培養用基体10を利用して、支持体として、細胞を培養する場合、染色剤で細胞を染色しなくても、光学顕微鏡を利用して、前記細胞の成長状況を観測することができる。
【0049】
前記培養用基体10は、さらに支持体を含むことができる。この場合、前記カーボンナノチューブ構造体12は、前記支持体の表面に設置され、前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の前記支持体とは反対側の表面に設置される。また前記支持体は、前記カーボンナノチューブ構造体12及び前記親水層14を支持することにも用いられる。前記支持体の具体的な形状、材料及び厚さは、前記カーボンナノチューブ構造体12の形状及び厚さによって決定される。該支持体は、平面構造体であっても、曲面構造体であってもよい。前記支持体の材料は、プラスチック、生物分解が可能な材料、生物毒性がない材料である。前記プラスチックは、ポリスチレンである。前記生物分解が可能な材料は、熱可塑性の澱粉プラスチック、脂肪族のポリエステル、ポリ乳酸又は澱粉/ポリビニルアルコールである。前記生物毒性がない材料は、シリカゲルである。前記支持体は、プラスチックの時計皿、培養器皿、四角形のプラスチック板である。前記支持体が、プラスチックの時計皿又は培養器皿である場合、前記培養用基体10は、容易に保存できる。且つ前記培養用基体10を直接利用し、細胞を培養することができ、培養用基体10を設置するほかの器皿を使用する必要がない。
【0050】
前記支持体の材料が、生物分解が可能な材料又は生物毒性がない材料である場合、該培養用基体10を生物体内に直接移植することができる。前記支持体の表面の面積及び形状は、前記カーボンナノチューブ構造体12の面積及び形状と基本的に同じである。前記カーボンナノチューブ構造体12の厚さが薄い場合、該カーボンナノチューブ構造体12は、小さい機械強度及び大きな比表面積を有する。従って、前記カーボンナノチューブ構造体12は、外力作用によって破損しやすく、ほかの物体に接着しやすい。そこで前記カーボンナノチューブ構造体12を前記支持体の表面に設置することによって、前記カーボンナノチューブ構造体12を、移動に便利で、外力作用によって破損されにくく且つ他の物体に接着することを防止するようにする。
【0051】
図10を参照すると、本発明の実施例1は、培養用基体の製造方法を提供する。該製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ10:カーボンナノチューブ構造体を提供する。
ステップ20:前記カーボンナノチューブ構造体の表面に親水層を形成する。
【0052】
前記ステップ10では、前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続され、自立構造が形成される。前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含み、該カーボンナノチューブフィルムは、例えば、図2に示すようなドローン構造カーボンナノチューブフィルム、図7に示すような綿毛構造カーボンナノチューブフィルム、又は図5又は図6に示すようなプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムである。前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ線状構造であってもよく、該カーボンナノチューブ線状構造は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤを含み、該カーボンナノチューブワイヤは、図9に示すようなねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又は図8に示すような非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。
【0053】
前記ステップ20では、蒸着、スパッタリング、吹付け塗装などの物理的方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に前記親水層を形成して、該親水層は、前記細胞を培養することに用いる。該親水層の前記カーボンナノチューブ構造体とは反対側の表面に、細胞を播種する。前記親水層の厚さは、1ナノメートル以上、100ナノメートル以下である。しかし懸架されている前記カーボンナノチューブ構造体の表面に前記親水層を形成することが好ましく、前記カーボンナノチューブ構造体の構造特性の保持にさらに有利である。例えば、懸架されている前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列する場合、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面に形成された前記親水層も配向して配列する。前記親水層の材料は、金属酸化物又は酸化物の半導体などの親水性を有する材料である。具体的には、前記親水層の材料は、二酸化珪素、二酸化チタンまたは鉄の酸化物などである。物理的方法のみを利用するので、容易に前記カーボンナノチューブ構造体の表面に親水層を形成することができる。
【0054】
前記培養用基体の製造方法は、更にステップ30を含む。支持体を提供し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置する。該ステップ30は、前記ステップ20の後に行うことができる。即ち、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体に設置する。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させるように、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置する。具体的には、まず、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に加工する。その後、所定の形状を有するカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置して、該カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させる。前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に緊密に吸着させるために、有機溶剤で該カーボンナノチューブ構造体を処理する。前記支持体は、前記カーボンナノチューブ構造体に対して優れた吸着性を有する必要があるため、特に前記支持体は、平らな表面を有する必要がある。例えば、該支持体は、プラスチックの時計皿、培養器皿、四角形のプラスチック板である。
【0055】
また、前記ステップ30は、前記ステップ20の前に行うことができる。即ち、カーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置した後、該カーボンナノチューブ構造体の表面に前記親水層を形成する。
【0056】
本実施例において、積層された三十枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体を提供し、該カーボンナノチューブ構造体における隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させるために、該カーボンナノチューブ構造体をフレームに固定する。電子ビーム蒸着法を採用して、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に厚さが10ナノメートルである二酸化珪素層を形成する。厚さが10ナノメートルである二酸化珪素層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を四角形に切断した後、該カーボンナノチューブ構造体をプラスチックの培養器皿の底部に配置する。該カーボンナノチューブ構造体は、前記培養器皿の底部と接触する。アルコールで前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬して、該カーボンナノチューブ構造体を前記培養器皿の底部に緊密に接着させる。
【0057】
また図11を参照すると、本実施例は、前記培養用基体10を利用し、細胞を培養する方法を提供する。該方法は、以下のステップを含む。
ステップ10:培養用基体を提供し、該培養用基体は、カーボンナノチューブ構造体及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された親水層を含む。
ステップ20:前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行う。
ステップ30:前記親水層の極性化表面に複数の細胞を播種する。
ステップ40:複数の前記細胞を培養する。
【0058】
前記ステップ20において、前記親水層に対して、極性化処理を行い、該親水層の表面に培養する細胞と異なる電荷極性をもたせる。具体的には、前記ステップ20は、以下のサブステップを含む。
【0059】
ステップB1では、前記親水層に対して、殺菌処理を行う。前記殺菌処理の方法は制限されず、該親水層及びカーボンナノチューブ構造体にある細菌を殺菌することが可能であれば、どの処理方式でもよい。例えば、高温殺菌又は紫外線殺菌の方式で、前記親水層及び前記カーボンナノチューブ構造体に対して、殺菌処理を行う。一般的に、前記親水層及び前記カーボンナノチューブ構造体に対して、紫外線殺菌をすることが好ましい。
【0060】
前記培養用基体が更に支持体を含み、該支持体が細胞を直接培養することができる容器である場合、前記ステップ20において、ステップB1を行う。前記培養用基体が支持体を含まない、又は前記培養用基体の支持体が細胞を直接培養することができる容器ではない場合、ステップB1を行う前に、前記培養用基体を支持体の表面に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体の前記親水層とは反対側の表面が前記支持体の表面と直接接触する。前記支持体は、細胞を直接培養することができる容器である。
【0061】
ステップB2では、アミノ酸ポリマー(Polyamion acid)溶液又はポリエーテルイミド(Polyetherimide)溶液で殺菌処理された前記親水層を処理する。具体的には、まず、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液を前記親水層の表面に滴下して、該親水層を被覆させ、10時間以上放置する。これによって、前記親水層の表面がアミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液で極性化され、該親水層の表面に播種しようする細胞の電荷極性と異なる電荷極性を有する極性化表面を形成して、前記細胞への吸着性を増加させ、該細胞を播種するための条件を提供する。その後、無菌の脱イオン水で前記親水層の表面に形成されたアミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液を洗浄して、該親水層の極性化表面を露出させる。従って、前記アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液は、前記細胞の成長に影響を与えない。前記アミノ酸ポリマー溶液は、ポリ-D-リシン(PDL)溶液である。アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液が分布された支持体の表面での細胞の成長を防止するために、前記カーボンナノチューブ構造体の周辺には、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液がないことが好ましい。
【0062】
前記ステップ20の実施方法は制限されず、前記親水層に極性をもたせ、細胞を吸着することが可能であれば、いかなる方法でもよい。
【0063】
前記ステップ30及びステップ40における細胞は、動物細胞又は植物細胞である。前記動物細胞が、神経細胞、筋肉細胞又は皮膚細胞などである。細胞の種類によって、該細胞の播種及び培養方法が異なる。
【0064】
本発明の実施例1は、前記培養用基体を利用して、海馬神経細胞を培養する方法であり、下記のステップを含む。
【0065】
培養用基体を提供し、該培養用基体は、積層された三十枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体、及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された、厚さが10ナノメートルである二酸化珪素層からなる。該カーボンナノチューブ構造体における隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。
【0066】
二酸化珪素層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を四角形に加工した後、該カーボンナノチューブ構造体をプラスチックの培養器皿の底部に配置して、該カーボンナノチューブ構造体を、前記培養器皿の底部と接触させる。前記二酸化珪素層の厚さは10ナノメートルである。アルコールで前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬して、該カーボンナノチューブ構造体を前記培養器皿の底部に緊密に接着させる。前記カーボンナノチューブ構造体及び前記プラスチックの培養器皿を殺菌インキュベーターに置き、前記二酸化珪素層、前記カーボンナノチューブ構造体及び前記プラスチックの培養器皿を紫外線で30分間照射する。その後、殺菌処理された二酸化珪素層の表面に濃度が20μg/mlであるポリ-D-リシン溶液を滴下して、該ポリ-D-リシン溶液で前記二酸化珪素層の表面を被覆し、12時間放置する。これによって、前記二酸化珪素層の表面が極性化され、極性化表面が形成される。その後、無菌の脱イオン水で前記親水層の表面に形成されたポリ-D-リシン溶液を洗浄して、該二酸化珪素層の極性化表面を露出させる。該二酸化珪素層の極性化表面は、播種しようする海馬神経細胞と異なる電荷極性を有する。
【0067】
無菌の環境下で、前記二酸化珪素層の極性化表面に海馬神経細胞用培養液を滴下して、該二酸化珪素層を被覆し、該海馬神経細胞用培養液における海馬神経細胞を前記二酸化珪素層の表面に播種させる。前記海馬神経細胞用培養液は、分化していない海馬神経細胞を培養液に分散して形成されたものである。
【0068】
前記海馬神経細胞が培養された培養器皿を炭酸ガスインキュベーターの中に放置し、培養して、時間によって培養液を入れ替える。前記炭酸ガスインキュベーターにおける炭酸ガスの含有量は5%であり、その温度は37℃である。
【0069】
(実施例2)
図12を参照すると、本発明の第二実施例は、培養用基体20を提供する。該培養用基体20は、支持体26、カーボンナノチューブ構造体22及び親水層14を含む。前記培養用基体20は、実施例1における培養用基体10と基本的に同じであるが、異なる部分は、該培養用基体20が更に支持体26を含み、該支持体26がプラスチックの培養器皿であり、前記カーボンナノチューブ構造体22が前記親水層14と前記支持体26との間に設置されることである。前記カーボンナノチューブ構造体22は、単層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、前記親水層14は、二酸化珪素層である。図13を参照すると、二酸化珪素の粒子が前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける各々のカーボンナノチューブの表面に連続的に形成され、各々のカーボンナノチューブを被覆する。
【0070】
前記培養用基体20における単層のドローン構造カーボンナノチューブフィルム、二酸化珪素層及び培養用容器が透明であるので、該培養用基体20も透明である。従って、前記培養用基体20を利用して細胞を培養する場合、前記細胞を染色しなくても、光学顕微鏡を利用して、細胞の成長状況を観測することができる。
【0071】
前記培養用基体20の製造方法及び使用方法は、実施例1に係る前記培養用基体10の製造方法及び使用方法と基本的に同じである。
【0072】
(実施例3)
図14を参照すると、本発明の実施例3は、培養用基体30を提供する。前記培養用基体30は、実施例1における培養用基体10と基本的に同じであるが、異なる部分は、該培養用基体30が更に極性層36を含み、該極性層36は、前記親水層14の前記カーボンナノチューブ構造体12とは反対側の表面に設置され、即ち、前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12と前記極性層36との間に設置されることである。
【0073】
前記極性層36は、前記親水層14の表面に極性をもたせ、前記培養用基体30の極性と、該培養用基体30に接着する細胞の極性と異ならせるので、前記培養用基体30は、前記細胞を播種して、培養するための条件を提供する。前記極性層36は、前記細胞の電荷極性と異なる電荷極性を有するので、細胞への吸着を高めることができる。前記極性層36は、アミノ酸ポリマー層又はポリエーテルイミド層であり、前記親水層14の表面の極性を変えることができるが、前記アミノ酸ポリマー層はポリ-D-リシン層であることが好ましい。本実施例において、前記極性層36は、ポリ-D-リシン層である。
【0074】
また、図15を参照すると、本発明の実施例3は、培養用基体30の製造方法を提供する。該製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ10:カーボンナノチューブ構造体を提供する。
ステップ20:前記カーボンナノチューブ構造体の表面に親水層を形成する。
ステップ30:前記親水層の表面に極性層を形成する。
【0075】
ステップ30では、まず、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させるように、親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置する。具体的には、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に加工する。その後、所定の形状を有するカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置して、該カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させる。前記支持体は、前記カーボンナノチューブ構造体に対して優れた吸着性、及び平らな表面を有する必要があるため、例えば、該支持体は、プラスチックの時計皿又は培養器皿である。前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に緊密に接着させるように、有機溶剤で該カーボンナノチューブ構造体を処理する。その後、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液を前記親水層の表面に滴下して、該親水層を被覆して、10時間以上放置し、極性層を形成する。該極性層は、細胞の電荷極性と異なる電荷極性を有するため、細胞への吸着性を高める。前記アミノ酸ポリマー溶液は、ポリ-D-リシン溶液である。アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液が分布された支持体の表面での細胞の成長を防止するために、前記カーボンナノチューブ構造体の周辺に、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液がないことが好ましい。
【0076】
本実施例において、二酸化珪素層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を四角形に加工した後、該カーボンナノチューブ構造体をプラスチックの培養器皿の底部に置いて、該カーボンナノチューブ構造体を、前記培養器皿の底部と接触させる。前記二酸化珪素層の厚さは10ナノメートルである。アルコールで前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬して、該カーボンナノチューブ構造体を前記培養器皿の底部に緊密に接着させる。濃度が20μg/mlであるポリ-D-リシン溶液を滴下して、該ポリ-D-リシン溶液に前記二酸化珪素層の表面を被覆して、12時間放置する。
【0077】
前記ステップ30は、更に紫外線で前記極性層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を照射して、殺菌を行う。
【0078】
前記培養用基体30の使用方法は、前記実施例1に係る培養用基体30の使用方法と基本的に同じである。
【0079】
本発明の実施例における培養用基体の製造方法は、物理的方法を利用するので、容易に親水層をカーボンナノチューブ構造体の表面に形成することができるし、また細胞を影響、損傷する汚染物質を導入することができない。従って、前記親水層が細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えないので、該培養用基体は、細胞を培養することができる。
【0080】
本発明の実施例におけるカーボンナノチューブ構造体が弾性及び延展性に優れ且つ質量も軽いので、前記培養用基体は、弾性及び延展性に優れ且つ生物体に直接移植することができ、損傷部分の両端又は縁部に位置する細胞を成長させ、再び繋げることができる。従って、神経系の欠損部分の修復が実現できる。前記カーボンナノチューブ構造体は、優れた電気伝導性、熱伝導性、発声特性を有する。細胞の成長も、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性の影響を受けるので、前記カーボンナノチューブ構造体を含む前記培養用基体に細胞を成長させることで、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性などの細胞に対する影響を研究することができる。また前記培養用基体が透明構造体であるので、該培養用基体を利用して、細胞を培養する場合、染色剤で細胞を染色しなくても、光学顕微鏡を利用して、前記細胞の成長状況を観測することができる。前記親水層が無機材料からなり、前記親水層及び前記カーボンナノチューブ構造体が安定であるので、前記培養用基体は、保存しやすく、変質しにくくなり、細胞の成長に適する。前記培養用基体は、さらに支持体を含むことができ、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置することによって、前記カーボンナノチューブ構造体を、移動に便利で、外力作用によって破損されにくく且つ他の物体に接着することを防止するようにすることができる。また前記支持体を含む培養用基体を直接利用し、細胞を培養することができ、培養用基体を設置するためのほかの器皿を使用する必要がない。
【0081】
本発明の実施例における培養用基体において、その表面が極性化処理された後、該培養用基体の表面に細胞を直接播種し、培養することができるので、簡単である。
【符号の説明】
【0082】
10、20、30 培養用基体
12、22 カーボンナノチューブ構造体
14 親水層
16 極性化表面
26 支持体
36 極性層
143a ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養用基体及び該培養用基体の使用方法に関して、特に細胞を播種することができる培養用基体及び該培養用基体を使用して、細胞を培養する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日々の生活の中で起こる様々な事故や災害によって、皮膚又は神経系が損傷することがある。その場合、広範囲にわたる皮膚の損傷に対しては、皮膚移植の方法を採用する。皮膚移植は、自分の体の目立たない場所から皮膚を移植する方法と、他人の体から皮膚を移植する方法があるが、皮膚のソースは少なく、しかもその方法はとても複雑である。
【0003】
現在、神経系が損傷した場合、神経移植体を移植して、神経系を修復する。これは、神経外科の手術において、損傷を修復するための重要な方法である。従来技術の神経移植体とは、神経系において、損傷した部分の両端を繋ぎ合わせた神経管である。該神経管は、生物分解が可能な物質からなる管状構造体である。神経系について損傷した部分の一端に位置する神経細胞は、前記神経管の内壁に沿って神経突起を成長させ、該神経突起は、前記神経系において損傷した部分のもう一つの端に位置する神経細胞に到達する。
【0004】
従って、前記神経管は、神経細胞の支持体であり、神経系において損傷された部分の神経細胞の神経突起が損傷すると、神経細胞が前記神経管の支持によって神経突起を成長させて、損傷した神経系の修復を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101239712B号明細書
【特許文献2】特開2008−297195号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第101284662A号明細書
【特許文献4】特許第3868914号公報
【特許文献5】特許第4486060号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、損傷した部分の神経細胞が死亡した場合、該神経細胞が損傷した部分に、神経管を移植しても、損傷した神経系を修復することはできない。
【0008】
従って、本発明は、細胞を播種することができる培養用基体及び該培養用基体を使用して、細胞を培養する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
培養用基体は、細胞を培養することに用いられ、カーボンナノチューブ構造体及び親水層を含み、該親水層は、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成される。
【0010】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブからなり、隣接するカーボンナノチューブは、分子間力で接続され、自立構造を形成する。
【0011】
前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造体である。
【0012】
前記親水層は、親水性を有する金属酸化物又は酸化物の半導体材料である。
【0013】
培養用基体の使用方法は、培養用基体を提供するステップであって、該培養用基体がカーボンナノチューブ構造体及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された親水層を含むステップと、前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップと、前記親水層の極性化表面に複数の細胞を播種するステップと、複数の前記細胞を培養するステップと、を含む。
【0014】
前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップにおいて、前記親水層に対して、殺菌処理をするサブステップと、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液で殺菌処理された前記親水層を処理するサブステップとを含む。
【0015】
培養用基体は、細胞を培養することに用いられ、カーボンナノチューブ構造体、親水層及び極性層を含み、該親水層は、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成され、前記極性層は、前記親水層の前記カーボンナノチューブ構造体とは反対側の表面に設置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の培養用基体におけるカーボンナノチューブ構造体が弾性及び延展性に優れ且つ質量も軽いので、前記培養用基体は、弾性及び延展性に優れ且つ生物体内に直接移植することができる。前記カーボンナノチューブ構造体は、優れた電気伝導性、熱伝導性、音発生特性を有する。細胞の成長も、電気伝導性、熱伝導性及び音発生特性の影響を受けるので、前記カーボンナノチューブ構造体を含む前記培養用基体に細胞を成長させることは、電気伝導性、熱伝導性及び音発生特性などの細胞に対する影響を研究することができる。前記培養用基体は、細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えないので、該培養用基体を直接に利用し、細胞を培養することができる。
【0017】
本発明における培養用基体の表面が極性化処理された後、該培養用基体の表面に細胞を直接播種し、培養することができるので、簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る神経移植体の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る神経移植体における、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図3】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図4】積層された複数のカーボンナノチューブフィルムが形成された層状構造体を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る神経移植体における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図6】本発明の実施例1に係る神経移植体における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例1に係る神経移植体における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例1に係る神経移植体における、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図9】本発明の実施例1に係る神経移植体における、ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図10】本発明の実施例1に係る培養用基体の製造方法のフローチャートである。
【図11】本発明の実施例1に係る培養用基体の使用方法のフローチャートである。
【図12】本発明の第二実施例に係る培養用基体の断面図である。
【図13】本発明の第二実施例に係る培養用基体のTEM写真である。
【図14】本発明の実施例3に係る培養用基体の断面図である。
【図15】本発明の実施例3に係る培養用基体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0020】
(実施例1)
図1を参照すると、本発明の実施例1は、培養用基体10を提供する。該培養用基体10は、カーボンナノチューブ構造体12及び親水層14を含み、細胞を播種することに用いられる。前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に設置される。該カーボンナノチューブ構造体12は、複数のカーボンナノチューブからなる。
【0021】
前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12における少なくとも一部のカーボンナノチューブの表面に形成される。具体的には、前記親水層14を、前記カーボンナノチューブ構造体12の内部に浸透させてもよく、前記親水層14を、前記カーボンナノチューブ構造体12の一つの表面に形成されたカーボンナノチューブの表面に形成してもよい。前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に親水性をもたせ、細胞の成長のための条件を提供する。前記親水層14の厚さは制限されず、1〜100ナノメートルであることが好ましい。この時、前記培養用基体10は、優れた強靭性及び延展性を有する。また前記親水層14の厚さが1〜50ナノメートルである場合(例えば10ナノメートル)、前記親水層14の材料は、例えば、金属酸化物、酸化物の半導体などの親水性を有する無機材料であるが、二酸化珪素、二酸化チタンまたは鉄の酸化物などであることが好ましい。前記親水層14の厚さは制限されず、1〜100ナノメートルであることが好ましい。この時、前記培養用基体10は、優れた強靭性及び延展性を有する。また前記親水層14の厚さが1〜50ナノメートルである場合(例えば10ナノメートル)、前記親水層14の材料は、例えば、金属酸化物、酸化物の半導体などの親水性を有する無機材料であるが、二酸化珪素、二酸化チタンまたは鉄の酸化物などであることが好ましい。
【0022】
前記細胞は、動物細胞及び植物細胞を含む。前記動物細胞が、神経細胞、筋肉細胞又は皮膚細胞などである。前記親水層14は、無機材料であり、保存しやすく、変質しにくいので、前記培養用基体10も保存しやすく、変質しにくいため、細胞の成長に適する。また前記親水層14は、物理的方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に形成されるので、細胞を影響、損傷する汚染物質を導入することがない。従って、前記親水層14は、細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えない。
【0023】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接続され、自立構造を形成する。自立構造とは、支持体を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体12を独立的に利用するというものである。前記カーボンナノチューブ構造体12は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体からなるフィルム状構造体である。前記カーボンナノチューブ構造体12が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、該複数のカーボンナノチューブフィルムは、積層して設置されている。隣接するカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で接続される。前記カーボンナノチューブ構造体12が少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体は、折られ、交差し、編まれ、又は織られ、カーボンナノチューブフィルム状構造体に形成される。該カーボンナノチューブ構造体12の厚さは、実際の応用によって形成される。
【0024】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接続されるので、軽く、弾性及び延展性に優れている。従って、前記カーボンナノチューブ構造体12は、容易に切り又は引き伸ばすことができる。
【0025】
また、前記カーボンナノチューブは、優れた導電性、熱伝導性、音発生特性を有するので、前記カーボンナノチューブ構造体12も、優れた電気伝導性、熱伝導性、音発生特性を有する。細胞の成長も、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性の影響を受けるので、前記カーボンナノチューブ構造体12を含む前記培養用基体10に細胞を成長させることによって、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性などの細胞に対する影響を研究することができる。一般的に、前記カーボンナノチューブ構造体12におけるカーボンナノチューブは、化学又は物理処理を行わないカーボンナノチューブである。即ち、前記カーボンナノチューブは、純粋なカーボンナノチューブである。
【0026】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体12は、非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。
【0027】
前記非配向型のカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。前記配向型のカーボンナノチューブ構造体は、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、配向型のカーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブの中の一種又はこれらの組み合わせである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0028】
具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体12は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含む。
【0029】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図2を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0030】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブの割合は、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブに比べて小さい。
【0031】
図3を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。また前記カーボンナノチューブフィルム143aの透光率も75%以上程度まで達することができる。
【0032】
前記カーボンナノチューブ構造体が複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む場合、該複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aは積層して、設置、層状構造体を形成するが、該層状構造体の厚さは制限されない。図4を参照すると、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°以上の角度で交差する場合、前記複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブは、互いに交差して、網状構造体を形成し、前記カーボンナノチューブ構造体の機械性能を高める。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含み、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。即ち、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブの延長方向は、垂直している。前記カーボンナノチューブフィルム143aの構造及び製造方法については、特許文献1を参照。前記カーボンナノチューブ構造体における、前記カーボンナノチューブフィルム143aが少ない場合、例えば、10枚より少ない前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む際、特に、一枚の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む際、前記カーボンナノチューブ構造体は、優れた透光率を有する。
【0033】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図5又は図6を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0034】
図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置されている。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含み、隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。また該カーボンナノチューブ構造体は、平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長する基板に垂直な方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0035】
図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されている。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押すと、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0036】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜角は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面は、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜角も大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係し、0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが高くなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが低くなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは小さくなる。前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの構造及び製造方法については、特許文献2を参照。
【0037】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合い、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、複数の微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径は、1ナノメートル〜500ナノメートルである。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの構造及び製造方法については、特許文献3を参照。
【0038】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含むことができる。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一つの非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、少なくとも一つのねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又は非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ及びねじれ状カーボンナノチューブワイヤの組み合わせである。
【0039】
図8を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列され、隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に結合されている。前記複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。前記カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は0.5ナノメートル〜1ミリメートルである。
【0040】
前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを、有機溶剤で処理して形成したものである。前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、前記図2に示すようなカーボンナノチューブフィルム143aを、有機溶剤で処理することにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aをカーボンナノチューブワイヤに形成させる。
【0041】
具体的には、有機溶剤を前記カーボンナノチューブフィルム143aの表面に滴下し、該有機溶剤を前記カーボンナノチューブフィルム143aに浸漬させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。従って、前記有機溶剤の表面張力によって、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおける複数のカーボンナノチューブを縮ませて、該カーボンナノチューブワイヤが形成される。該カーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブフィルム143aより、比表面積が小さくなり、接着性が低くなる。
【0042】
図9を参照すると、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。各々の前記カーボンナノチューブセグメントは、分子間力で端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0043】
前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、機械外力で図2に示すような前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aを処理して形成されたものである。具体的には、前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aの両端を異なる方向に沿って絞る。該ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、接着性を有するので、該カーボンナノチューブフィルム143aは、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤに形成することができる。更に、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0044】
前記カーボンナノチューブワイヤの構造及び製造方法については、特許文献4及び特許文献5を参照。
【0045】
前記カーボンナノチューブ構造体12の厚さが薄い場合、前記親水層14が前記カーボンナノチューブ構造体12における各々のカーボンナノチューブの表面に形成される。前記カーボンナノチューブ構造体12の厚さが厚い場合、前記親水層14が前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に位置するカーボンナノチューブの表面に分布し、前記カーボンナノチューブ構造体12(例えば、前記カーボンナノチューブ構造体12が複数の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含み、特に10枚以上の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む)の内部に位置するカーボンナノチューブの表面には到達しにくい。
【0046】
本実施例において、前記カーボンナノチューブ構造体12は、三十枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aが積層してなるものである。隣接する前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、90°の角度で交差している。前記親水層14は、厚さが10ナノメートルの二酸化珪素層である。前記二酸化珪素層は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に位置するカーボンナノチューブの表面に分布した二酸化珪素の粒子が連続的に形成されたものである。前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に親水性をもたせるので、細胞の成長に適する。また前記親水層14は無機材料からなり、保存しやすく、変質しにくいので、前記培養用基体10も保存しやすく、変質しにくくなり、細胞の成長に有利である。また前記親水層14は物理的方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体12の表面に形成されるので、細胞を影響、損傷する汚染物質が侵入することができない。従って、前記二酸化珪素層も細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えない。
【0047】
前記カーボンナノチューブ構造体12は、優れた強靭性及び延展性を有し、前記親水層14の厚さが100ナノメートル以下であるので、前記培養用基体10は優れた強靭性及び延展性を有する。特に、前記カーボンナノチューブ構造体12がドローン構造カーボンナノチューブフィルムである場合、前記培養用基体10は、より優れた強靭性及び延展性を有する。また、前記親水層が二酸化珪素層または二酸化チタン層である場合、前記培養用基体10は、生物体内に直接移植することができ、損傷した部分の両端又は縁部に位置する細胞を成長させ、再び繋げることができる。従って、神経系の欠損部分の修復が実現できる。
【0048】
前記カーボンナノチューブ構造体12及び前記親水層14が透明材料である場合、前記培養用基体10も透明である。前記カーボンナノチューブ構造体12が十枚、又は十枚より少ない積層されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムである場合、該カーボンナノチューブ構造体12は透明である。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体12が一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、前記親水層14が二酸化珪素層である場合、前記培養用基体10は透明構造体である。前記透明な培養用基体10を利用して、支持体として、細胞を培養する場合、染色剤で細胞を染色しなくても、光学顕微鏡を利用して、前記細胞の成長状況を観測することができる。
【0049】
前記培養用基体10は、さらに支持体を含むことができる。この場合、前記カーボンナノチューブ構造体12は、前記支持体の表面に設置され、前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12の前記支持体とは反対側の表面に設置される。また前記支持体は、前記カーボンナノチューブ構造体12及び前記親水層14を支持することにも用いられる。前記支持体の具体的な形状、材料及び厚さは、前記カーボンナノチューブ構造体12の形状及び厚さによって決定される。該支持体は、平面構造体であっても、曲面構造体であってもよい。前記支持体の材料は、プラスチック、生物分解が可能な材料、生物毒性がない材料である。前記プラスチックは、ポリスチレンである。前記生物分解が可能な材料は、熱可塑性の澱粉プラスチック、脂肪族のポリエステル、ポリ乳酸又は澱粉/ポリビニルアルコールである。前記生物毒性がない材料は、シリカゲルである。前記支持体は、プラスチックの時計皿、培養器皿、四角形のプラスチック板である。前記支持体が、プラスチックの時計皿又は培養器皿である場合、前記培養用基体10は、容易に保存できる。且つ前記培養用基体10を直接利用し、細胞を培養することができ、培養用基体10を設置するほかの器皿を使用する必要がない。
【0050】
前記支持体の材料が、生物分解が可能な材料又は生物毒性がない材料である場合、該培養用基体10を生物体内に直接移植することができる。前記支持体の表面の面積及び形状は、前記カーボンナノチューブ構造体12の面積及び形状と基本的に同じである。前記カーボンナノチューブ構造体12の厚さが薄い場合、該カーボンナノチューブ構造体12は、小さい機械強度及び大きな比表面積を有する。従って、前記カーボンナノチューブ構造体12は、外力作用によって破損しやすく、ほかの物体に接着しやすい。そこで前記カーボンナノチューブ構造体12を前記支持体の表面に設置することによって、前記カーボンナノチューブ構造体12を、移動に便利で、外力作用によって破損されにくく且つ他の物体に接着することを防止するようにする。
【0051】
図10を参照すると、本発明の実施例1は、培養用基体の製造方法を提供する。該製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ10:カーボンナノチューブ構造体を提供する。
ステップ20:前記カーボンナノチューブ構造体の表面に親水層を形成する。
【0052】
前記ステップ10では、前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続され、自立構造が形成される。前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含み、該カーボンナノチューブフィルムは、例えば、図2に示すようなドローン構造カーボンナノチューブフィルム、図7に示すような綿毛構造カーボンナノチューブフィルム、又は図5又は図6に示すようなプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムである。前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ線状構造であってもよく、該カーボンナノチューブ線状構造は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤを含み、該カーボンナノチューブワイヤは、図9に示すようなねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又は図8に示すような非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。
【0053】
前記ステップ20では、蒸着、スパッタリング、吹付け塗装などの物理的方法を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に前記親水層を形成して、該親水層は、前記細胞を培養することに用いる。該親水層の前記カーボンナノチューブ構造体とは反対側の表面に、細胞を播種する。前記親水層の厚さは、1ナノメートル以上、100ナノメートル以下である。しかし懸架されている前記カーボンナノチューブ構造体の表面に前記親水層を形成することが好ましく、前記カーボンナノチューブ構造体の構造特性の保持にさらに有利である。例えば、懸架されている前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列する場合、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面に形成された前記親水層も配向して配列する。前記親水層の材料は、金属酸化物又は酸化物の半導体などの親水性を有する材料である。具体的には、前記親水層の材料は、二酸化珪素、二酸化チタンまたは鉄の酸化物などである。物理的方法のみを利用するので、容易に前記カーボンナノチューブ構造体の表面に親水層を形成することができる。
【0054】
前記培養用基体の製造方法は、更にステップ30を含む。支持体を提供し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置する。該ステップ30は、前記ステップ20の後に行うことができる。即ち、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体に設置する。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させるように、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置する。具体的には、まず、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に加工する。その後、所定の形状を有するカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置して、該カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させる。前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に緊密に吸着させるために、有機溶剤で該カーボンナノチューブ構造体を処理する。前記支持体は、前記カーボンナノチューブ構造体に対して優れた吸着性を有する必要があるため、特に前記支持体は、平らな表面を有する必要がある。例えば、該支持体は、プラスチックの時計皿、培養器皿、四角形のプラスチック板である。
【0055】
また、前記ステップ30は、前記ステップ20の前に行うことができる。即ち、カーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置した後、該カーボンナノチューブ構造体の表面に前記親水層を形成する。
【0056】
本実施例において、積層された三十枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体を提供し、該カーボンナノチューブ構造体における隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させるために、該カーボンナノチューブ構造体をフレームに固定する。電子ビーム蒸着法を採用して、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に厚さが10ナノメートルである二酸化珪素層を形成する。厚さが10ナノメートルである二酸化珪素層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を四角形に切断した後、該カーボンナノチューブ構造体をプラスチックの培養器皿の底部に配置する。該カーボンナノチューブ構造体は、前記培養器皿の底部と接触する。アルコールで前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬して、該カーボンナノチューブ構造体を前記培養器皿の底部に緊密に接着させる。
【0057】
また図11を参照すると、本実施例は、前記培養用基体10を利用し、細胞を培養する方法を提供する。該方法は、以下のステップを含む。
ステップ10:培養用基体を提供し、該培養用基体は、カーボンナノチューブ構造体及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された親水層を含む。
ステップ20:前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行う。
ステップ30:前記親水層の極性化表面に複数の細胞を播種する。
ステップ40:複数の前記細胞を培養する。
【0058】
前記ステップ20において、前記親水層に対して、極性化処理を行い、該親水層の表面に培養する細胞と異なる電荷極性をもたせる。具体的には、前記ステップ20は、以下のサブステップを含む。
【0059】
ステップB1では、前記親水層に対して、殺菌処理を行う。前記殺菌処理の方法は制限されず、該親水層及びカーボンナノチューブ構造体にある細菌を殺菌することが可能であれば、どの処理方式でもよい。例えば、高温殺菌又は紫外線殺菌の方式で、前記親水層及び前記カーボンナノチューブ構造体に対して、殺菌処理を行う。一般的に、前記親水層及び前記カーボンナノチューブ構造体に対して、紫外線殺菌をすることが好ましい。
【0060】
前記培養用基体が更に支持体を含み、該支持体が細胞を直接培養することができる容器である場合、前記ステップ20において、ステップB1を行う。前記培養用基体が支持体を含まない、又は前記培養用基体の支持体が細胞を直接培養することができる容器ではない場合、ステップB1を行う前に、前記培養用基体を支持体の表面に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体の前記親水層とは反対側の表面が前記支持体の表面と直接接触する。前記支持体は、細胞を直接培養することができる容器である。
【0061】
ステップB2では、アミノ酸ポリマー(Polyamion acid)溶液又はポリエーテルイミド(Polyetherimide)溶液で殺菌処理された前記親水層を処理する。具体的には、まず、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液を前記親水層の表面に滴下して、該親水層を被覆させ、10時間以上放置する。これによって、前記親水層の表面がアミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液で極性化され、該親水層の表面に播種しようする細胞の電荷極性と異なる電荷極性を有する極性化表面を形成して、前記細胞への吸着性を増加させ、該細胞を播種するための条件を提供する。その後、無菌の脱イオン水で前記親水層の表面に形成されたアミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液を洗浄して、該親水層の極性化表面を露出させる。従って、前記アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液は、前記細胞の成長に影響を与えない。前記アミノ酸ポリマー溶液は、ポリ-D-リシン(PDL)溶液である。アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液が分布された支持体の表面での細胞の成長を防止するために、前記カーボンナノチューブ構造体の周辺には、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液がないことが好ましい。
【0062】
前記ステップ20の実施方法は制限されず、前記親水層に極性をもたせ、細胞を吸着することが可能であれば、いかなる方法でもよい。
【0063】
前記ステップ30及びステップ40における細胞は、動物細胞又は植物細胞である。前記動物細胞が、神経細胞、筋肉細胞又は皮膚細胞などである。細胞の種類によって、該細胞の播種及び培養方法が異なる。
【0064】
本発明の実施例1は、前記培養用基体を利用して、海馬神経細胞を培養する方法であり、下記のステップを含む。
【0065】
培養用基体を提供し、該培養用基体は、積層された三十枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体、及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された、厚さが10ナノメートルである二酸化珪素層からなる。該カーボンナノチューブ構造体における隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。
【0066】
二酸化珪素層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を四角形に加工した後、該カーボンナノチューブ構造体をプラスチックの培養器皿の底部に配置して、該カーボンナノチューブ構造体を、前記培養器皿の底部と接触させる。前記二酸化珪素層の厚さは10ナノメートルである。アルコールで前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬して、該カーボンナノチューブ構造体を前記培養器皿の底部に緊密に接着させる。前記カーボンナノチューブ構造体及び前記プラスチックの培養器皿を殺菌インキュベーターに置き、前記二酸化珪素層、前記カーボンナノチューブ構造体及び前記プラスチックの培養器皿を紫外線で30分間照射する。その後、殺菌処理された二酸化珪素層の表面に濃度が20μg/mlであるポリ-D-リシン溶液を滴下して、該ポリ-D-リシン溶液で前記二酸化珪素層の表面を被覆し、12時間放置する。これによって、前記二酸化珪素層の表面が極性化され、極性化表面が形成される。その後、無菌の脱イオン水で前記親水層の表面に形成されたポリ-D-リシン溶液を洗浄して、該二酸化珪素層の極性化表面を露出させる。該二酸化珪素層の極性化表面は、播種しようする海馬神経細胞と異なる電荷極性を有する。
【0067】
無菌の環境下で、前記二酸化珪素層の極性化表面に海馬神経細胞用培養液を滴下して、該二酸化珪素層を被覆し、該海馬神経細胞用培養液における海馬神経細胞を前記二酸化珪素層の表面に播種させる。前記海馬神経細胞用培養液は、分化していない海馬神経細胞を培養液に分散して形成されたものである。
【0068】
前記海馬神経細胞が培養された培養器皿を炭酸ガスインキュベーターの中に放置し、培養して、時間によって培養液を入れ替える。前記炭酸ガスインキュベーターにおける炭酸ガスの含有量は5%であり、その温度は37℃である。
【0069】
(実施例2)
図12を参照すると、本発明の第二実施例は、培養用基体20を提供する。該培養用基体20は、支持体26、カーボンナノチューブ構造体22及び親水層14を含む。前記培養用基体20は、実施例1における培養用基体10と基本的に同じであるが、異なる部分は、該培養用基体20が更に支持体26を含み、該支持体26がプラスチックの培養器皿であり、前記カーボンナノチューブ構造体22が前記親水層14と前記支持体26との間に設置されることである。前記カーボンナノチューブ構造体22は、単層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、前記親水層14は、二酸化珪素層である。図13を参照すると、二酸化珪素の粒子が前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける各々のカーボンナノチューブの表面に連続的に形成され、各々のカーボンナノチューブを被覆する。
【0070】
前記培養用基体20における単層のドローン構造カーボンナノチューブフィルム、二酸化珪素層及び培養用容器が透明であるので、該培養用基体20も透明である。従って、前記培養用基体20を利用して細胞を培養する場合、前記細胞を染色しなくても、光学顕微鏡を利用して、細胞の成長状況を観測することができる。
【0071】
前記培養用基体20の製造方法及び使用方法は、実施例1に係る前記培養用基体10の製造方法及び使用方法と基本的に同じである。
【0072】
(実施例3)
図14を参照すると、本発明の実施例3は、培養用基体30を提供する。前記培養用基体30は、実施例1における培養用基体10と基本的に同じであるが、異なる部分は、該培養用基体30が更に極性層36を含み、該極性層36は、前記親水層14の前記カーボンナノチューブ構造体12とは反対側の表面に設置され、即ち、前記親水層14は、前記カーボンナノチューブ構造体12と前記極性層36との間に設置されることである。
【0073】
前記極性層36は、前記親水層14の表面に極性をもたせ、前記培養用基体30の極性と、該培養用基体30に接着する細胞の極性と異ならせるので、前記培養用基体30は、前記細胞を播種して、培養するための条件を提供する。前記極性層36は、前記細胞の電荷極性と異なる電荷極性を有するので、細胞への吸着を高めることができる。前記極性層36は、アミノ酸ポリマー層又はポリエーテルイミド層であり、前記親水層14の表面の極性を変えることができるが、前記アミノ酸ポリマー層はポリ-D-リシン層であることが好ましい。本実施例において、前記極性層36は、ポリ-D-リシン層である。
【0074】
また、図15を参照すると、本発明の実施例3は、培養用基体30の製造方法を提供する。該製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ10:カーボンナノチューブ構造体を提供する。
ステップ20:前記カーボンナノチューブ構造体の表面に親水層を形成する。
ステップ30:前記親水層の表面に極性層を形成する。
【0075】
ステップ30では、まず、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させるように、親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置する。具体的には、前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に加工する。その後、所定の形状を有するカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置して、該カーボンナノチューブ構造体を前記支持体に接触させる。前記支持体は、前記カーボンナノチューブ構造体に対して優れた吸着性、及び平らな表面を有する必要があるため、例えば、該支持体は、プラスチックの時計皿又は培養器皿である。前記親水層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に緊密に接着させるように、有機溶剤で該カーボンナノチューブ構造体を処理する。その後、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液を前記親水層の表面に滴下して、該親水層を被覆して、10時間以上放置し、極性層を形成する。該極性層は、細胞の電荷極性と異なる電荷極性を有するため、細胞への吸着性を高める。前記アミノ酸ポリマー溶液は、ポリ-D-リシン溶液である。アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液が分布された支持体の表面での細胞の成長を防止するために、前記カーボンナノチューブ構造体の周辺に、アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液がないことが好ましい。
【0076】
本実施例において、二酸化珪素層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を四角形に加工した後、該カーボンナノチューブ構造体をプラスチックの培養器皿の底部に置いて、該カーボンナノチューブ構造体を、前記培養器皿の底部と接触させる。前記二酸化珪素層の厚さは10ナノメートルである。アルコールで前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬して、該カーボンナノチューブ構造体を前記培養器皿の底部に緊密に接着させる。濃度が20μg/mlであるポリ-D-リシン溶液を滴下して、該ポリ-D-リシン溶液に前記二酸化珪素層の表面を被覆して、12時間放置する。
【0077】
前記ステップ30は、更に紫外線で前記極性層が形成されたカーボンナノチューブ構造体を照射して、殺菌を行う。
【0078】
前記培養用基体30の使用方法は、前記実施例1に係る培養用基体30の使用方法と基本的に同じである。
【0079】
本発明の実施例における培養用基体の製造方法は、物理的方法を利用するので、容易に親水層をカーボンナノチューブ構造体の表面に形成することができるし、また細胞を影響、損傷する汚染物質を導入することができない。従って、前記親水層が細胞を損傷せず、細胞の成長に影響を与えないので、該培養用基体は、細胞を培養することができる。
【0080】
本発明の実施例におけるカーボンナノチューブ構造体が弾性及び延展性に優れ且つ質量も軽いので、前記培養用基体は、弾性及び延展性に優れ且つ生物体に直接移植することができ、損傷部分の両端又は縁部に位置する細胞を成長させ、再び繋げることができる。従って、神経系の欠損部分の修復が実現できる。前記カーボンナノチューブ構造体は、優れた電気伝導性、熱伝導性、発声特性を有する。細胞の成長も、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性の影響を受けるので、前記カーボンナノチューブ構造体を含む前記培養用基体に細胞を成長させることで、電気伝導性、熱伝導性及び発声特性などの細胞に対する影響を研究することができる。また前記培養用基体が透明構造体であるので、該培養用基体を利用して、細胞を培養する場合、染色剤で細胞を染色しなくても、光学顕微鏡を利用して、前記細胞の成長状況を観測することができる。前記親水層が無機材料からなり、前記親水層及び前記カーボンナノチューブ構造体が安定であるので、前記培養用基体は、保存しやすく、変質しにくくなり、細胞の成長に適する。前記培養用基体は、さらに支持体を含むことができ、前記カーボンナノチューブ構造体を前記支持体の表面に設置することによって、前記カーボンナノチューブ構造体を、移動に便利で、外力作用によって破損されにくく且つ他の物体に接着することを防止するようにすることができる。また前記支持体を含む培養用基体を直接利用し、細胞を培養することができ、培養用基体を設置するためのほかの器皿を使用する必要がない。
【0081】
本発明の実施例における培養用基体において、その表面が極性化処理された後、該培養用基体の表面に細胞を直接播種し、培養することができるので、簡単である。
【符号の説明】
【0082】
10、20、30 培養用基体
12、22 カーボンナノチューブ構造体
14 親水層
16 極性化表面
26 支持体
36 極性層
143a ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養することに用いられる培養体基体であって、
カーボンナノチューブ構造体及び親水層を含み、
該親水層が前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成されていることを特徴とする培養用基体。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブからなり、隣接するカーボンナノチューブが分子間力で接続され、自立構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載の培養用基体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造体であることを特徴とする、請求項2に記載の培養用基体。
【請求項4】
前記親水層が親水性を有する金属酸化物又は酸化物の半導体材料であることを特徴とする、請求項1に記載の培養用基体。
【請求項5】
培養用基体を提供するステップであって、該培養用基体がカーボンナノチューブ構造体及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された親水層を含むステップと、
前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップと、
前記親水層の極性化表面に複数の細胞を播種するステップと、
複数の前記細胞を培養するステップと、
を含むことを特徴とする培養用基体の使用方法。
【請求項6】
前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップにおいて、
前記親水層に対して、殺菌処理をするサブステップと、
アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液で殺菌処理された前記親水層を処理するサブステップと、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の培養用基体の使用方法。
【請求項7】
細胞を培養することに用いられる培養用基体であって、
カーボンナノチューブ構造体と、親水層と、極性層とを含み、
該親水層が前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成され、
前記極性層が前記親水層の前記カーボンナノチューブ構造体とは反対側の表面に設置されていることを特徴とする培養用基体。
【請求項1】
細胞を培養することに用いられる培養体基体であって、
カーボンナノチューブ構造体及び親水層を含み、
該親水層が前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成されていることを特徴とする培養用基体。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブからなり、隣接するカーボンナノチューブが分子間力で接続され、自立構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載の培養用基体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造体であることを特徴とする、請求項2に記載の培養用基体。
【請求項4】
前記親水層が親水性を有する金属酸化物又は酸化物の半導体材料であることを特徴とする、請求項1に記載の培養用基体。
【請求項5】
培養用基体を提供するステップであって、該培養用基体がカーボンナノチューブ構造体及び該カーボンナノチューブ構造体の表面に形成された親水層を含むステップと、
前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップと、
前記親水層の極性化表面に複数の細胞を播種するステップと、
複数の前記細胞を培養するステップと、
を含むことを特徴とする培養用基体の使用方法。
【請求項6】
前記親水層に極性化表面を形成するために、該親水層に対して、極性化処理を行うステップにおいて、
前記親水層に対して、殺菌処理をするサブステップと、
アミノ酸ポリマー溶液又はポリエーテルイミド溶液で殺菌処理された前記親水層を処理するサブステップと、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の培養用基体の使用方法。
【請求項7】
細胞を培養することに用いられる培養用基体であって、
カーボンナノチューブ構造体と、親水層と、極性層とを含み、
該親水層が前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成され、
前記極性層が前記親水層の前記カーボンナノチューブ構造体とは反対側の表面に設置されていることを特徴とする培養用基体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−157355(P2012−157355A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5494(P2012−5494)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
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