説明

培養細胞観察用顕微鏡装置

【課題】培地の劣化の程度を客観的に判定することができる培養細胞観察用顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】照明手段は培地に照明光を照射する。検出手段は前記照明手段からの前記照明光に基づく前記培地の透過光または前記照明光に基づく前記培地からの反射光を検出する。算出手段は前記検出手段により検出された前記透過光または前記反射光に基づいて、複数の波長帯域の光についての前記培地の透過光強度または前記培地からの反射光強度の比を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地で培養されている細胞を観察する培養細胞観察用顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞分野の研究において、細胞を長期に培養しながら細胞における現象を観察することが行われている。ここで細胞を長期間培養するために、細胞は培地と呼ばれる細胞に生育環境を与える液体もしくはゲル内で培養される。そして、この培地は細胞の増殖に伴い劣化が起こるため、適宜培地を交換することが必要となっている。下記特許文献1には、生きた細胞を長期間培養するための培養装置とともに、細胞を培養する培地の劣化によって培地の色調が変化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−236547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞を長期間培養する場合に培地の交換時期を適切に管理するためには、培地の劣化の程度を客観的に判定する必要がある。しかし、従来は培地の状態を培地の色調に基づいて客観的に検出できる装置は開発されていない。また、生細胞を蛍光観察する顕微鏡装置により培地の状態を客観的に検出することも行われていない。
【0005】
本発明の目的は、培地の劣化の程度を客観的に判定することができる培養細胞観察用顕微鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の培養細胞観察用顕微鏡装置は、培地で培養されている細胞を観察する培養細胞観察用顕微鏡装置において、前記培地に照明光を照射する照明手段と、前記照明手段からの前記照明光に基づく前記培地の透過光または前記照明光に基づく前記培地からの反射光を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記透過光または前記反射光に基づいて、複数の波長帯域の光についての前記培地の透過光強度または前記培地からの反射光強度の比を算出する算出手段と、を備えることを特徴とする。
この培養細胞観察用顕微鏡装置によれば、複数の波長帯域の光についての培地の透過光強度または前記培地からの反射光強度の比を算出するので、培地の劣化の程度を客観的に判定することができる。
【0007】
前記照明手段は、前記細胞を観察するための透過光観察用光源であり、前記算出手段は、前記透過光に基づいて前記培地の透過光強度の比を算出してもよい。
【0008】
前記検出手段は、前記透過光を受ける透過光観察用の撮像素子であってもよい。
【0009】
前記照明手段は、前記細胞を観察するための蛍光励起光を照射する蛍光励起光源であり、前記算出手段は、前記反射光に基づいて前記放射光強度の比を算出してもよい。
【0010】
前記検出手段は、前記蛍光励起光により励起された蛍光を受ける蛍光観察用の撮像素子であってもよい。
【0011】
前記複数の波長帯域の一つは550nm〜600nmの範囲に含まれる波長帯域であり、前記複数の波長帯域の他の一つは600nm以上の範囲に含まれる波長帯域であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の培養細胞観察用顕微鏡装置によれば、複数の波長帯域の光についての培地の透過光強度または前記培地からの反射光強度の比を算出するので、培地の劣化の程度を客観的に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の培養細胞観察用顕微鏡装置の構成を示す上面図。
【図2】図1のII−II線方向から見た正面図。
【図3】ディスクユニットの機能を示す斜視図。
【図4】レーザユニットの構成を示す図。
【図5】試料をセットする際の状態を示す共焦点顕微鏡の上面図。
【図6】培地からの反射光に基づいて培地の状態を検出する場合の構成例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による培養細胞観察用顕微鏡装置の実施形態について説明する。
【0015】
図1は一実施形態の培養細胞観察用顕微鏡装置の構成を示す上面図、図2は図1のII−II線方向から見た正面図である。図3はディスクユニットの機能を示す斜視図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施形態の培養細胞観察用顕微鏡装置は、培養された細胞を観察するための共焦点顕微鏡100と、共焦点顕微鏡100を制御するとともに、共焦点顕微鏡100により得られた観察画像の画像信号に基づく演算を実行する制御演算装置200と、を備える。
【0017】
図1および図2に示すように、共焦点顕微鏡100は、装置内部を保護する保護筐体1と、保護筐体1に収容された温調チャンバー2と、レーザ光を出力するレーザユニット5と、観察画像を得るための高感度CCD6(図1)と、を備える。
【0018】
温調チャンバー2には、レーザユニット5からのレーザ光を受けるディスクユニット21と、ディスクユニット21を通った光を平行光に変換するチューブレンズ22と、光路を折り曲げるミラー23と、対物レンズ24(図2)と、対物レンズ24をZ方向に駆動する駆動ユニット25(図2)と、対物レンズ24の上方にセットされるガラスボトムディッシュなどの試料31を収容する試料カセット32と、試料カセット32が着脱可能とされた駆動部33aを具備し、駆動部33aを介して試料31をXY方向に駆動するXY駆動機構33と、XY駆動機構33の上方に設けられた、透過観察のためのハロゲン光源などの白色光源27(図2)と、白色光源27からの光を試料31に導くコンデンサレンズ28(図2)と、ディスクユニット21内に設けられたダイクロイックミラー41(図1)と、ダイクロイックミラー41により折り曲げられた光を受けるリレーレンズ42(図1)と、リレーレンズ42を通過した光を折り曲げるミラー43(図1)と、透過特性の異なる複数のフィルターが取り付けられたフィルターホイール44(図1)と、フィルターホイール44を回転するためのモータ45(図1)と、フィルターホイール44のフィルターを通過した光を受けるリレーレンズ46(図1)と、が収容される。
【0019】
図1〜図3に示すように、ディスクユニット21は、多数のマイクロレンズ21L(図3)が螺旋状のパターンに配置された円盤状のマイクロレンズディスク21aと、マイクロレンズ21Lと同一の螺旋状のパターンで、マイクロレンズ21Lと同数のピンホール21h(図3)が形成された円盤状のピンホールディスク21bと、マイクロレンズディスク21aおよびピンホールディスク21bとを連結するハブ21cと、マイクロレンズディスク21aおよびピンホールディスク21bを回転させるためのモータ21dと、を備える。
【0020】
マイクロレンズディスク21aに配置されたマイクロレンズ21Lと、ピンホールディスク21bに形成されたピンホール21hとは一対一に対応しており、マイクロレンズ21Lを通った光は対応するピンホール21h上で焦点を結ぶように構成されている。
【0021】
マイクロレンズディスク21aとピンホールディスク21bとの間には、ダイクロイックミラー41が不図示の固定部材で固定されている。このダイクロイックミラー41は、レーザユニット5からのレーザ光(後述する)は透過し、それらのレーザ光による蛍光は反射するものを用いる。例えば、488nm、561nm、635nm近辺の波長の光は透過し、500nm〜540nm、570nm〜620nm、650nm〜700nmの光、および後述する透過照明光に相当する波長の光は反射するようなものが選択される。
【0022】
図4はレーザユニット5の構成を示す図である。
【0023】
図4に示すように、レーザユニット5には、3種類の波長が異なるレーザ51、レーザ52およびレーザ53が設けられ、これらのレーザは個々に制御演算装置200によりオン/オフが制御される。これらのレーザはその内部で平行光になるように調整されている。これらのレーザとして、半導体レーザおよび固体レーザを使用できる。
【0024】
図4に示すように、レーザ51の前方にはミラー51aが、レーザ52の前方にはレーザ52から出射される波長のレーザ光を反射し、レーザ51から出射される波長のレーザ光を透過させるダイクロイックミラー52aが、レーザ53の前方にはレーザ53から射出される波長のレーザ光を反射し、レーザ51から出射される波長のレーザ光およびレーザ52から出射される波長のレーザ光を透過させるダイクロイックミラー53aが、それぞれ配置されている。また、レーザ51、レーザ52およびレーザ53の光軸上には、ミラー54が設けられている。
【0025】
レーザ51、レーザ52およびレーザ53はそれぞれコリメートされており、ミラー54およびダイクロイックミラー51a,52a,53aによって光軸が同軸となるように調整されている。これら3つのレーザ51、レーザ52およびレーザ53からの光は、ミラー54によってディスクユニット21に導かれる。レーザ51、レーザ52およびレーザ53のレーザ光の波長は、例えば、それぞれ、488nm、561nm、635nmとすることができる。
【0026】
次に、本実施形態の培養細胞観察用顕微鏡装置の動作について説明する。
【0027】
図5は、試料をセットする際の状態を示す共焦点顕微鏡の上面図である。
【0028】
図5に示すように、試料をセットする際には、XY駆動機構33により試料カセット32をY方向の所定位置に移動させることで、温調チャンバー2および保護筐体1の開口部(不図示)から試料カセット32を外側に出し、試料カセット32を取り出してその内部に培地および細胞を入れたガラスボトムディッシュなどの試料31をセットする。その後、XY駆動機構33により試料31を装置内に引き込む。培地の交換時にも同様の手順が適用される。
【0029】
温調チャンバー2に収容された試料31には、細胞の培養に最適な環境になるような水分、二酸化炭素などが供給されるとともに、温調チャンバー2内は最適な温度(例えば30℃)が維持される。一般的に、細胞を長期間培養するために、例えば、ガラスボトムディッシュ内部には培地と呼ばれる細胞を培養する際に好適な環境を形成する液体が封入されている。この培地には一般的にフェノールレッドという色素が添加されており、培地環境のPHによってその色が変化するように構成されている。これによって培地はその環境が好適な場合にはPHがほぼ中性となり、この状態では培地の色は概ね赤色に保たれる。ところが細胞の増殖などによって培地の環境が劣化してくることにより培地のPHは酸性に傾き、これに伴って培地の色は黄色に変化する。ここで、赤色に見える状態では、主に、400nm〜580nmの波長の光を培地が吸収するために、その補色となる赤色が反射および透過されて赤く観察される。また、黄色に見える状態では、主に、400nm〜520nmの波長の光を培地が吸収するために、その補色となる黄色が反射および透過されて黄色に観察される。
【0030】
次に、対物レンズ24を介して観察される光の光路について説明する。
【0031】
レーザユニット5からの光は、ディスクユニット21のマイクロレンズディスク21a上のマイクロレンズ21L,21L,・・・(図3)によって集光され、ダイクロイックミラー41を透過し、ピンホールディスク21b上の対応するピンホール21h,21h,・・・(図3)上で焦点を結ぶ。ここで、この焦点を正確にピンホール21h,21h,・・・上に位置付けるためには、上記のレーザ光の位置や傾きを正確に調整することが必要である。
【0032】
ピンホールディスク21bを通った光は、チューブレンズ22によって、ピンホール21hの位置に対応した傾きを有する平行光となる。この平行光はミラー23によって上方に曲げられ、対物レンズ24によってそれぞれ焦点を結ぶ。焦点位置に蛍光染色された試料がある場合、この蛍光の一部は再び対物レンズ24に入射し、上記のレーザ光と同様の光路を戻り、ミラー23によって折り曲げられ、さらにチューブレンズ22によってそれぞれ対応するピンホール21h,21h,・・・上で再び焦点を結ぶ。ここでピンホール21hを通過した光は、ダイクロイックミラー41によって反射され、リレーレンズ42を通りミラー43で反射されてフィルターホイール44を通過し、リレーレンズ46に導かれる。
【0033】
ここで、2枚のリレーレンズ42,46によってピンホール21h上のそれぞれの焦点は、高感度CCD6上の対応する位置に転送される。
【0034】
また、制御演算装置200は、レーザユニット5のレーザ51、レーザ52およびレーザ53から1つを選択した場合に、このレーザの波長に対応する蛍光のみを透過する最適なフィルターをフィルターホイール44の中から選択する。
【0035】
この状態において、モータ21dによりディスクユニット21のマイクロレンズディスク21aおよびピンホールディスク21bを回転させた時の動作について、以下、図3を参照して説明する。
【0036】
上記のようにマイクロレンズディスク21aを通った光は、ピンホールディスク21bの対応するピンホール21hで集光されて、そのピンホール21hを通過した光はチューブレンズ22、対物レンズ24の作用で対物レンズ24の焦点面24A(図3)上の対応する位置で、焦点を結ぶ。なお、図3では、チューブレンズ22および対物レンズ24の作用を模式的に1枚のレンズの作用として表現している。
【0037】
この焦点面24A上の焦点からの蛍光は、同じ光路を通って再び同じピンホール21hを通過してダイクロイックミラー41で反射され、リレーレンズ42,46によって高感度CCD6に結像される。なお、図3では、リレーレンズ42,46の作用を模式的に1枚のレンズの作用として表現している。
【0038】
ここで、モータ21dによってマイクロレンズディスク21aおよびピンホールディスク21bを一体的に回転させることによって、対応する焦点面24A上の焦点も移動し、さらに高感度CCD6上に結像された蛍光も移動する。
【0039】
このように、複数のレーザ光の焦点が高速で焦点面24Aを走査し、焦点面24Aからの蛍光が高感度CCD6上に結像される。この画像は制御演算装置200によってモニタ(不図示)に表示させ、あるいは記憶装置(不図示)に保存させることができる。
【0040】
ここで、焦点面24Aを外れた光による蛍光は、レーザ光と同じ光路を通ることがないため、対応するピンホール21hにはほとんど入ることがない。したがって、高感度CCD6で観察される像は、焦点面24Aのごく近傍の共焦点画像となる。
【0041】
また、制御演算装置200によってZ駆動ユニット25を駆動することによって、試料上の最適な位置に焦点を合わせ、あるいは深さの異なる断層像を撮影することが可能である。また、XY駆動機構33によって、試料31の所望の位置を観察することができる。
【0042】
また、制御演算装置200によって使用するレーザ(レーザ51,52,53のいずれか)を切り替えるとともに、フィルターホイール44の中の最適なフィルターを選択することによって、他の波長の透過画像の取得も可能である。
【0043】
さらに、レーザ光を切った状態で、白色光源27からの光による照明で透過光観察を行うこともできる。この際に透過光は蛍光と同じ光路を通り、ディスクユニット21のピンホールディスク21bによってその焦点面24A付近からの光が選択される。さらにこの透過光の一部はダイクロイックミラー41で反射される。例えば、ダイクロイックミラー41によって500nm〜540nm、570nm〜620nm、650nm〜700nmの光は反射された後に、蛍光と同様の光路を通り、高感度CCD6上に結像される。ここでフィルターホイール44の中から最適なフィルターを選択することにより、各波長に対応した透過画像を得ることができる。
【0044】
次に、培地の状態を検出する手順について説明する。
【0045】
培地の状態を検出する際には、レーザ光を切った状態で、白色光源27からの光による照明で透過光観察を行う状態とする。
【0046】
次に、フィルターホイール44により波長域570nm〜590nmの黄色の帯域を透過するフィルターを選択し、この波長域の画像を撮影、取得する。次に、フィルターホイール44により波長域650nm〜680nmの赤色の帯域を透過するフィルターを選択し、この波長域の画像を撮影、取得する。両者の画像は、波長域のみが異なる同一領域の画像である。これらの画像の画像データは制御演算装置200に取り込まれる。
【0047】
次に、制御演算装置200において、黄色の波長域で得られた画像の各画素の光強度の平均Avy、および赤色の波長域で得られた画像の各画素の光強度の平均Avrを算出する。
【0048】
次に、制御演算装置200において、平均Avyおよび平均Avrの比Avy/Avrを算出する。
【0049】
培地の状態が良好な場合には、培地は赤色を示し、黄色の波長帯域の光を吸収し、赤色の帯域の光を透過するため、Avy/Avrの値は比較的小さい値を示す。しかし培地の状態が劣化してきた場合には、培地は黄色を示し、主として黄色の帯域の光を透過するためAvy/Avrの値は比較的大きな値となる。
【0050】
したがって、Avy/Avrの値が一定値以上になった場合には、培地交換を促す表示し、あるいは、共焦点顕微鏡100における自動的な培地交換の動作を開始させることができる。
【0051】
また、Avy/Avrの値を指標値とする代わりに、培地の状態で最も差が出る黄色の帯域における透過光強度を指標値とし、この指標値を計測することによって培地の劣化を検出することができる。
【0052】
上記実施形態では、フィルターホイール44を高感度CCDの近傍に配置しているが、フィルターの位置は任意である。また、照明光の波長帯域を変えて透過画像を取得してもよく、この場合、例えば、白色光源27の下方にフィルターホイールを配置することで、黄色の波長帯域の照明光および赤色の波長帯域の照明光を得ることができる。
【0053】
また、白色光源に代えて黄色の波長帯域の照明光および赤色の波長帯域の照明光が得られる光源を用いてもよい。例えば、複数色のLEDを用いてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、黄色および赤色の波長帯域における透過光の平均強度を算出する際に全画素の光強度の平均を求めているが、各画素の光強度のヒストグラムにおいて一定の頻度以上の分布の平均値を算出し、この平均値に基づいて培地の状態を検出してもよい。この場合には、培地の状態を検出するのに必要な光量を抑制できるため、細胞への影響を軽減できる。
【0055】
また、上記実施形態では、培地を透過する光の色調に基づいて培地の状態を検出しているが、対物レンズの側から培地に照明光を照射し、培地からの反射光に基づいて培地の状態を検出してもよい。
【0056】
以上のように、上記実施形態の培養細胞観察用顕微鏡装置によれば、細胞を培養しながら培地の色調の変化を検知できるため、培地の劣化状況を容易に把握することができる。
【0057】
また、上記実施形態の培養細胞観察用顕微鏡装置によれば、照明手段として透過観察用の白色光源を利用して培地の色調を取得しているため、装置の構成を簡素化することができる。また、培地の色調を取得するための検出手段として透過光観察および蛍光観察のための共焦点光学系を利用しているので、装置の構成を簡素化することができる。さらに、培地の色調を取得するための検出手段として透過光観察および蛍光観察のためのCCDを利用しているので、装置の構成を簡素化することができる。
【0058】
図6は培地からの反射光に基づいて培地の状態を検出する場合の構成例を示す上面図である。図6において、図1と同一要素には同一符号を付している。
【0059】
図6に示すように、共焦点顕微鏡100Aには、波長580nmの緑色LEDおよび波長630nmの赤色LEDを具備する光源27Aと、コンデンサレンズ28の下方に設けられたビームスプリッタ61と、ビームスプリッタ61からの反射光を受けるフォトダイオード62と、が設けられている。
【0060】
培地の状態を検出する際には、緑色LEDをオンして光源27Aから培地に緑色の照明光を当て、赤色LEDのみをオンして光源27Aから培地に赤色の照明光を当てる。培地からの反射光の一部はピームスプリッタ61で反射して、フォトダイオード62で受光される。
【0061】
フォトダイオード62で検出された反射光強度は制御演算装置200に入力され、制御演算装置200において黄色の帯域の反射光強度と赤色の帯域の反射光強度との比(黄色の帯域の反射光強度/赤色の帯域の反射光強度)が算出される。
【0062】
培地の状態が良好な場合には、培地は赤色を示し、黄色の波長帯域の光を吸収し、赤色の帯域の光の反射が大きくなるため、上記の比の値は比較的小さい値を示す。しかし培地の状態が劣化してきた場合には、培地は黄色を示し、主として黄色の帯域の光を反射するため上記の比の値は比較的大きな値となる。
【0063】
したがって、上記の比の値が一定値以上になった場合には、培地交換を促す表示し、あるいは、共焦点顕微鏡100Aにおける自動的な培地交換の動作を開始させることができる。
【0064】
また、上記の比の値を指標値とする代わりに、培地の状態で最も差が出る黄色の帯域における反射光強度を指標値とし、この指標値を計測することによって培地の劣化を検出することができる。
【0065】
培地の状態を検出する際の照明手段として、白色光源27(図2)あるいは光源27A(図6)を使用する構成例を示したが、レーザユニット5からのレーザ光を用いることもできる。この場合には、光源27Aに代えて、単色のLEDを透過観察用の光源として用いればよい。
【0066】
培地の状態を検出する際には、レーザユニット5に設けた黄色(561nm)のレーザからレーザ光を出射し、培地を透過した光の一部をフォトダイオード62で受光し、次に、レーザユニット5に設けた赤色(635nm)のレーザからレーザ光を出射し、培地を透過した光の一部をフォトダイオード62で受光する。
【0067】
次に、制御演算装置200において、フォトダイオード62で検出された反射光強度に基づき、黄色の帯域の透過光強度と赤色の帯域の透過光強度との比(黄色の帯域の透過光強度/赤色の帯域の透過光強度)を算出する。
【0068】
培地の状態が良好な場合には、培地は赤色を示し、黄色の波長帯域の光を吸収し、赤色の帯域の光を透過するため、上記の比の値は比較的小さい値を示す。しかし培地の状態が劣化してきた場合には、培地は黄色を示し、主として黄色の帯域の光を透過するため上記の比の値は比較的大きな値となる。
【0069】
したがって、上記の比の値が一定値以上になった場合には、培地交換を促す表示し、あるいは、共焦点顕微鏡100Aにおける自動的な培地交換の動作を開始させることができる。
【0070】
また、上記の比の値を指標値とする代わりに、培地の状態で最も差が出る黄色の帯域における透過光強度を指標値とし、この指標値を計測することによって培地の劣化を検出することができる。
【0071】
この場合、レーザユニット5を培地の状態を検出する際の照明手段として利用できるため、装置の構成を簡素化することができる。
【0072】
上記各実施形態では、黄色の帯域における光強度と赤色の帯域における光強度に基づいて培地の状態を検出する構成を示したが、光の帯域はこれに限定されない。例えば、550nm〜600nmの範囲に含まれる波長帯域の透過光または反射光の光強度と、600nm以上の範囲に含まれる透過光または反射光の波長帯域の光強度と、に基づいて培地の状態を検出することができる。
【0073】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、培地で培養されている細胞を観察する培養細胞観察用顕微鏡装置に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
6 高感度CCD(検出手段)
27 白色光源(照明手段、透過)
27A 光源(照明手段)
200 制御演算装置(算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地で培養されている細胞を観察する培養細胞観察用顕微鏡装置において、
前記培地に照明光を照射する照明手段と、
前記照明手段からの前記照明光に基づく前記培地の透過光または前記照明光に基づく前記培地からの反射光を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記透過光または前記反射光に基づいて、複数の波長帯域の光についての前記培地の透過光強度または前記培地からの反射光強度の比を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする培養細胞観察用顕微鏡装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記細胞を観察するための透過光観察用光源であり、
前記算出手段は、前記透過光に基づいて前記培地の透過光強度の比を算出することを特徴とする請求項1に記載の培養細胞観察用顕微鏡装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記透過光を受ける透過光観察用の撮像素子であることを特徴とする請求項2に記載の培養細胞観察用顕微鏡装置。
【請求項4】
前記照明手段は、前記細胞を観察するための蛍光励起光を照射する蛍光励起光源であり、
前記算出手段は、前記反射光に基づいて前記放射光強度の比を算出することを特徴とする請求項1に記載の培養細胞観察用顕微鏡装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記蛍光励起光により励起された蛍光を受ける蛍光観察用の撮像素子であることを特徴とする請求項4に記載の培養細胞観察用顕微鏡装置。
【請求項6】
前記複数の波長帯域の一つは550nm〜600nmの範囲に含まれる波長帯域であり、前記複数の波長帯域の他の一つは600nm以上の範囲に含まれる波長帯域であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の培養細胞観察用顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215609(P2012−215609A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79090(P2011−79090)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】