説明

培養組織の包装容器、これに使用するユニット、およびこれを使用した培養組織の包装体

【課題】培養組織を容易に取り出すことのできる包装容器を提供する。
【解決手段】培養組織の包装容器2を、容器本体4と、容器本体4に施蓋可能な蓋体20と、容器本体4と蓋体20とによって形成される空間内に収容可能であって培養組織100を載置可能な載置面を有するインナートレイ30と、把持可能なハンドル部52を有し、容器本体4に収容されたインナートレイ30を操作可能に前記空間に収容されるインナートレイ操作部50を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養組織の包装容器、特に、培養軟骨などの三次元形態を有する培養組織にも適用可能な包装容器、該包装容器を用いる包装体、および包装容器用のユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞や組織片を培養することによって培養組織を作製し、この培養組織を研究用や医療用として利用することが行われるようになってきている。一般に培養組織は各種条件に対して繊細であるため輸送時においては温度等の管理のほか培養組織への外力の付加を最小限に抑制する必要等がある。このため種々の輸送用の容器(包装容器)が案出されている。例えば、特許文献1〜特許文献5に記載された包装容器が挙げられる。また、医療用に供する場合には、移植にあたってのトリミング、洗浄および移植操作において、できるだけ清潔な環境で作業する必要がある。
【0003】
特許文献1は、表皮細胞で構成された皮膚創傷包帯(skin wound dressing)を基質シートで保持して、トレイとシート状リッドで包装した培養組織の包装体が開示されている。また、特許文献2は、生体組織由来の平膜状の膜組織をシート状物で挟持し、円筒状に巻いてチューブ内に挿入した培養組織の包装体を開示している。特許文献3は、培養細胞シートを支持体で支持し、さらに上下のネット状の介在部材で挟持してトレイとリッドで包装した培養組織の包装体を開示している。特許文献4は、膜状生体由来組織全体を容器本体と容器蓋面に設けられた突起部で保持する培養組織の包装体を開示している。特許文献5は、付着組織相当物を伴う担体をトレイ中に置き、窪みを有する蓋で包装する包装体を開示している。
【特許文献1】特許第2733800号公報
【特許文献2】特開2003−009845号公報
【特許文献3】特開2004−187518号公報
【特許文献4】特開2005−047866号公報
【特許文献5】特表平11−501298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1から特許文献5に記載された包装容器は、いずれもシート状の培養組織を想定した包装体であり、培養軟骨などの三次元形状の培養組織などには適切ではない。また、特許文献1から特許文献4の包装体では、培養組織等を包装体から直接取り出し、別の容器で洗浄した後、移植創に移植する。このため、包装容器から別容器への移動や容器から移植創への移動に際して、培養組織等を落下させるリスクを含んでいる。また、いずれの容器においても、トレイ側面が底面から屹立した形状であるため、培養組織を取り出しにくい。さらに、特許文献5の包装体では、トレイから担体を取り出すことによって、付着組織相当物も併せて取り出すことができるが、担体がトレイ形状に沿って側面が底面から屹立した形状であるため、培養組織を担体から取り出しにくい。さらに、培養組織が担体に付着しているため、培養組織を取るためにはさらに剥離作業を行う必要があった。また、特許文献1から特許文献5に記載された包装容器は、いずれもシート状の培養組織を想定した包装体であり、三次元形状の培養組織の輸送には適しているとは限らない。このように、いずれの包装容器においても、包装容器の開封後に培養組織を取り出して持ち運んだりあるいは移植創へと移したりすることまで考慮されていないし、三次元形状の培養組織を想定していなかった。
【0005】
そこで、本発明は、培養組織を容易に取り出すことのできる包装容器を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、加えて培養組織を包装容器内で安定保持できる包装容器を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明の発明は、培養組織の取り出し後においても培養組織の取り扱い性に優れる包装容器を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討した結果、培養組織を包装する包装容器内において、培養組織をインナートレイに載置して収容するとともに、該インナートレイの容器本体からの取り出しを容易化するためのインナートレイ操作部を予め包装容器内に準備しておくことを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0007】
本発明によれば、培養組織の包装容器であって、容器本体と、該容器本体に施蓋可能な蓋体と、前記容器本体と前記蓋体とによって形成される空間内に収容可能であって前記培養組織を載置可能な載置面を有するインナートレイと、把持可能なハンドル部を有し、前記容器本体に収容されたインナートレイを操作可能に前記空間に収容されるインナートレイ操作部と、を備える、包装容器が提供される。
【0008】
本包装容器において、前記ハンドル部は、前記容器本体の内壁から離間して備えられることが好ましく、また、前記容器本体に収容される前記インナートレイの上方であってかつ容器本体の中央側に備えられることも好ましい。また、前記ハンドル部は、前記インナートレイに対して可倒式に形成されていてもよい。
【0009】
本包装容器において、前記インナートレイ操作部は、前記空間内に収容された状態において、前記蓋体を施蓋したときに前記蓋体が当接する当接部を有することができる。
【0010】
本包装容器において、前記インナートレイ操作部は、前記インナートレイ支持部を備えることができる。前記インナートレイ支持部は、着脱可能に前記インナートレイを支持することが好ましく、前記インナートレイ支持部は、前記インナートレイと分離して前記容器本体の底部近傍に収容可能に形成されていることも好ましい。さらに、前記空間内に収容された状態において、前記蓋体を施蓋したときに前記蓋体が当接する前記ハンドル部と、前記インナートレイを載置または係止可能であって、前記インナートレイを前記空間の所定の位置に収容した後には前記容器本体の底部近傍に収容可能な前記支持部と、を有することができる。
【0011】
本包装容器において、前記容器本体は、前記インナートレイの前記空間内収容時、前記インナートレイを前記容器本体内の底部から離間した高さにおいて保持可能な保持部を有することができる。
【0012】
本包装容器において、前記インナートレイが前記空間内に収容された状態において、前記載置面上の前記培養組織の上方移動を抑制可能な規制部を有することができる。前記規制部は、貫通孔を有していてもよい。また、前記規制部は、前記インナートレイ操作部の一部であってもよく、さらに、前記規制部は、ハンドル部と一体化されていてもよい。また、前記規制部は前記蓋体の一部とすることもできる。
【0013】
本包装容器において、前記インナートレイが前記空間内に収容された時、前記インナートレイを前記容器本体内の底部から離間して保持可能な保持部を有し、前記インナートレイ操作部は、前記空間内に収容された状態において、前記蓋体を施蓋したときに前記蓋体が当接する前記ハンドル部と、前記インナートレイを載置または係止により着脱可能であって、前記インナートレイを前記空間所定の位置に収容した後には前記容器本体の底部に収容可能なインナートレイ支持部と、前記インナートレイが前記空間内に収容された状態において前記載置面上の前記培養組織の上方移動を抑制可能な規制部と、を有することができる。
【0014】
本包装容器において、前記インナートレイは、前記載置面の側壁において開口部位および/またはスロープ状部位を有することができる。こうした開口部位およびスロープ状部位は、前記培養組織の移出部とすることができる。
【0015】
本包装容器において、前記インナートレイの前記載置面は透明性を有していることが好ましい。また、本包装容器において、前記インナートレイの側壁および前記載置面のいずれかには少なくとも1つの貫通孔を有していてもよい。
【0016】
また、本発明によれば、培養組織の包装容器に用いるユニットであって、前記包装容器は、容器本体と蓋体と容器本体に収容されるインナートレイとを備え、前記ユニットは、前記包装容器内に収容可能に形成されるとともに、前記容器本体内に収容されるインナートレイを支持する支持部と、前記ユニットの前記容器本体内収容時において前記容器本体の内壁から離間した位置で把持可能なハンドル部と、を備える、ユニットが提供される。
【0017】
さらに、本発明によれば、培養組織の包装体であって、上記いずれかに記載の包装容器と、前記包装容器の前記インナートレイの前記載置面上に載置された培養組織と、を備える包装体が提供される。
【0018】
さらにまた、本発明によれば、培養組織の包装方法であって、上記いずれかの包装容器の前記インナートレイの前記載置面上に培養組織を載置する工程を備える、包装方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、容器本体と、該容器本体に施蓋可能な蓋体と、前記容器本体と前記蓋体とによって形成される空間内に収容可能であって前記培養組織を載置可能な載置面を有するインナートレイと、把持可能なハンドル部を有し、前記容器本体に収容されたインナートレイ(以下、単にトレイともいう。)を操作可能に前記空間に収容されるインナートレイ操作部(以下、単にトレイ部ともいう。)と、を備える、包装容器等に関する。
【0020】
本発明の培養組織の包装容器(以下、本包装容器ともいう。)によれば、培養組織を載置するトレイとともにトレイを容器本体から取り出し可能に把持できるハンドル部を有するトレイ操作部を包装容器内に収容されている。このため、包装容器から容易にトレイを取り出すことができ、結果として、培養組織を容易にかつ安全に取り出すことができる。
【0021】
本発明は、本包装容器のほか、培養組織の包装体、培養組織の包装容器に用いる操作ユニット、培養組織の包装方法にも関している。以下、本発明の実施形態について、本発明の説明のために示す本包装容器の一例である図1等を適宜図面を参照しながら説明する。なお、図1に示す本包装容器は一例であって本発明を限定するものではない。
【0022】
(培養組織の包装容器)
図1に示すように、本包装容器2は、容器本体4と、蓋体20と、トレイ30と、トレイ操作部50とを備えている。図1には、包装容器2の全体の概略を示し、図2および図3には、それぞれ容器本体4にトレイ30とトレイ操作部50を収容して蓋体20で施蓋した状態の断面図を示している。
【0023】
(容器本体)
容器本体4は、培養組織を保存、維持するための液体(以下「保存培地」という)の液密性を確保できる液密性材料で形成されていればよい。容器本体4は、培養組織100の取り扱い性から上方に開口4aを有する形態であることが好ましい。容器本体4の全体形状は、円筒状、方形の箱状等各種の形態を取ることができる。
【0024】
(蓋体)
蓋体20は、容器本体4に注入された保存培地に対して、液密性を確保できる程度に容器本体4の開口4aに対して施蓋できればよく、液密性材料で形成されることが好ましい。容器本体4の開口4aに対する蓋体20の装着形態としては、図1に示すような螺合のほか、嵌合などの形状に依存する機械的な結合によるものであってもよいし、接着剤や溶着など化学的な結合相を介したものであってもよい。螺合や嵌合によって蓋体20を容器本体4に対して装着する場合には、螺合や嵌合による蓋体20の容器本体4への装着動作に伴って、後述するようにトレイ30や操作部50を容器本体4の底部方向に押圧固定が容易にできるとともに、その固定強度も容易に確保することができる。
【0025】
(トレイ)
図1〜図3に示すように、トレイ30は、容器本体4と蓋体20によって形成される空間内に収容可能であればよい。包装用の空間は、容器本体4の開口4aが蓋体20によって施蓋されることによって形成される。したがって、「包装用の空間に収容される」とは、包装容器2に収容されることと同義である。一方、「容器本体4に収容される」という場合には、蓋体20によって施蓋されていない状態の容器本体4に収容された状態あるいは収容されることを意味している。
【0026】
図1および図4に示すように、トレイ30は、培養組織100を載置可能な載置面32を有している。載置面32は、培養組織100を載置可能であればよく、その表面形状、平面形態および大きさは特に限定されない。載置面32は、おおよそ平坦状に形成されていることが好ましい。また、培養組織100を載置する載置面32の全体あるいは少なくとも培養組織100が載置される領域は透明性を有していることが好ましい。透明性を有することで、例えば、トレイ30を包装容器2から取り出した後、目盛りなどのスケール表示や所定形状の型紙などの上に載置することで、載置面32の透明領域を介してその下方の目盛り等を視認することができ、培養組織100をこうした目盛り等を利用して必要な大きさおよび形状にカットすることができる。また、載置面32が透明性を有することで、トレイ30に培養組織100を載せたまま、所望位置に移動させた際にトレイ30の下方状況を確認しやすい。例えば、移植部位にトレイ30を運び、トレイ30から培養組織100を移出して移植部位に転移させるときにおいても、移植部位周囲の状況を視認しやすく、移植作業を確実に行うことができる。載置面32の全体がこうした透明性を有していることが好ましく、より好ましくは側壁34、特に後述する移出部40となる側壁が透明性を有していることが好ましく、さらにはトレイ30の全体がこうした透明性を有することが好ましい。
【0027】
載置面32の周囲には側壁34を備えることができる。側壁34は、載置面32の周縁に沿うように備えられるが、載置面32に培養組織100を載置して保持するときに、培養組織100が載置面32から落下するのを抑制できる程度の高さおよび部位に形成されていることが好ましい。なお、側壁34は載置面32の周縁全体に備えられていなくてもよいし、垂直に立ち上がった縦壁状でなくてもよい。
【0028】
載置面32の側壁34の一例が図4に示されている。図4のトレイ30は、縦壁状の側壁36と、スロープ状の側壁38とを有している。いずれの側壁形態も通常の使用時においては培養組織100が載置面32の外方へ放出されるのを防止する役割を果たしている。
【0029】
トレイ30の形状は、トレイ30が容器本体4に収容された際にトレイ30が位置する部分の水平断面形状に略一致する形状を有していてもよいが、少なくともトレイ30の連通した一部が容器本体4の内壁から離間している外周形態を有していることが好ましい。すなわち、トレイ30の少なくとも一部において、載置面32および側壁34が容器本体4の内壁から離間した外周形状を有することで、トレイ30を容器本体4にセットした際、容器本体4の内壁とトレイ30との間に通液用の空間35を形成でき、トレイ30上方や載置面32内への良好な通液性が確保できるとともに、後述するように容器本体4からトレイ30の取り出しが容易な当接部46のレイアウトの自由度が高くなる。さらに、後述するトレイ操作部50の一部が挿通可能なスペースを確保できる。こうした離間部位は、少なくとも1箇所あればよいが、好ましくは2箇所以上であり、より好ましくはトレイ30において対称的に備えられることである。
【0030】
例えば、図4に示すトレイ30は、円形断面の容器本体4に内挿される略長方形状の外周形状を有しており、包装容器2のトレイとして使用できる。すなわち、略円形状の載置面32の周縁の側壁34のうちスロープ状の側壁38は円弧形状を有しており、縦壁状の側壁36は容器本体4の内壁から離れた直線形状に形成されている。このため、図3に示すように、縦壁状の側壁36と容器本体4との間に通液用の空間35が形成されている。なお、容器本体4の内壁から離間するトレイ30の部位は、内壁から離間して内壁との間に空間が形成されればよく、図1に示す形態のほか、トレイ30側を部分的に凹状に形成してもよい。
【0031】
図4に示すように、トレイ30は、載置面32に載置した培養組織100をトレイ3から移出できる移出部40を有することができる。移出部40は、培養組織100を載置面32上から他の容器や培養組織100の移植部位などへ移す場合に培養組織100を載置面32外へ移出させるための部位である。移出部40は培養組織100をトレイ30の外へ移動させるのに適した構造を有していればよい。したがって、例えば、トレイ30の一部を開口部位および/またはスロープ状部位にすることによって移出部40を形成することが好ましい。これらの形態によれば、トレイ30を傾けるだけで容易に培養組織100をトレイ30外へ移出することができる。図1および図4に示す形態では、移出部40は、培養組織100が追従可能なスロープ状の側壁38として形成されており、図5(a)に示す形態では、載置面の外周縁における側壁34の開口部位37として形成されている。また、図5(b)に示すように、開口部位37から下方へ指向するスロープ状部位39aを有していてもよい。さらに、図5(c)に示すように、移出部40を他の側壁34よりも壁の高さを低くしかつスロープ状の側壁部分39bとしてもよい。さらには、図5(d)に示すように、培養組織100の移出のために先端側が狭まった形状のスロープ状の側壁39cを有していてもよい。このような移出部40をトレイ30に設けることは、ピンセット等で把持することが困難な比較的柔らかい培養組織において特に好ましい。
【0032】
移出部40が側壁34における開口部位である場合には、載置面32の端縁からそのまま培養組織100は移出され、移出部40が側壁34のスロープ状部位38である場合には、スロープ状の側壁34を伝わって培養組織100は移出される。なお、スロープ状部位38は、凹面など曲面であってもよいし、直線状の斜面であってもよいし、微細な階段状であってもよい。殊に載置面32から側壁に掛けてスロープ状に形成されていることが好ましい。さらに、移出部40の表面には、培養組織100の移出を制御可能に適当な凹凸が形成されていてもよい。例えば、培養組織100の移出方向に沿って縦筋状あるいはドット状に凹凸部が形成されていてもよい。移出方向に沿った凸状ガイドを設けることによって、移出方向を規制することもできる。また、培養組織100を滑りにくく、あるいは滑りやすくするように適当な表面処理がなされていてもよい。例えば、親水性を高めたり、撥水性を高めたりするなどの処理が挙げられる。
【0033】
トレイ操作部50は、トレイ30が容器本体4の受け部8により所定位置に収納されたとき、トレイ30の上端縁の少なくとも一部が当接して押圧可能なトレイ押圧部56を備えていることが好ましい。こうすることで、容器本体4に蓋体20が装着され、当接部54が蓋体20の下面によって押圧されるとき、トレイ押圧部56を介してトレイ30が受け部8に対して確実に押圧されることになる。この結果、トレイ30が確実にかつ安定して受け部8に支持される。こうしたトレイ押圧部56、図3、図9(b)、図10(b)および図11(b)に示すように、トレイ操作部50の規制部90の一部に設けることができる。また、こうしたトレイ押圧部58は、トレイ30の上端縁の一部を収容可能な凹状部としてもよい。凹状部とすることで、安定してトレイ30を容器本体4の受け部8に対して押圧することができる。また、トレイ押圧部56は、トレイ30に設けた当接部46と対向する位置に設けられることが好ましい。すなわち、トレイ30の当接部46の反対側の上端縁を押圧するようにすることで、一層安定してトレイ30を受け部8において保持できるようになる。さらに、図のようにトレイ押圧部56を後述する規制部90に対して凹部形状とし、トレイ30の上端縁が嵌るようにすることによって、輸送時における揺動に対して、トレイ30の左右動を効果的に抑制することができる。
【0034】
こうした移出部40は、少なくとも一箇所備えられていることが好ましいが、2箇所以上に設けられていてもよい。
【0035】
図4に示すように、トレイ30は貫通孔42を有することができる。貫通孔42を有することで、載置面32に培養組織100を載置した状態で洗浄液や保存培地などの液体をトレイ30に容易に注入・排出することができる。具体的には、トレイ30を保存培地が充てんされた容器本体4に浸漬するときには、貫通孔42から保存培地が侵入することで抵抗なくスムーズに浸漬させることができる。逆に保存培地から取り出すときには、貫通孔42から保存培地が排出されることで容易に上方移動させることができる。また、トレイ30を容器本体4内に充てんされた保存培地から出し入れする際にトレイ30の上下動をスムーズに行うことができるほか、包装された状態において容器本体4内の保存培地をトレイ30上の培養組織にも行き渡らせることができる。さらに、取り出したトレイ30をシャーレ等の容器の上に置き、洗浄液をトレイ30に注入すれば、培養組織100が洗浄されるとともに、洗浄液は貫通孔42から随時排出される。貫通孔42の形成箇所は特に限定しないが、載置面32や側壁34などに設けることができる。貫通孔42が載置面32または側壁34の底部近傍にある場合には、液体の侵入も排出も容易であり、特にトレイ30を保存培地が充てんされた容器本体4から取り出したときには、載置面32に液体が残存するのを効果的に回避できる。図4には、トレイ底部近傍に形成した貫通孔42を示し、図5(a)、(b)および(e)には、側壁34に形成した貫通孔42を示す。
【0036】
このようなトレイ30は、容器本体4の所定部位に保持可能に形成されていることが好ましい。トレイ30は、容器本体4の底部に載置して収容されるものであってもよいが、容器本体4からの取り出しやすさを考慮すれば、トレイ30は底部近傍よりも開口4aに近傍に保持されていることが好ましい。トレイ30を容器本体4の底部以外に保持するには、トレイ30の係止や係合等により保持する保持部位を容器本体4の内壁あるいは開口4aの端縁に設けることができる。
【0037】
図1および図6には、トレイ30を保持する位置において内壁を絞り形状にすることによって、トレイ30のスロープ状の側壁38の下面側を保持するようにした構成が記載されている。殊に、図6に示すように、容器本体4の内壁を切り欠きにして受け部8を形成し、トレイ30側にも受け部8に係止する係合部44を設けるようにすると、トレイ30を安定して保持することができる。また、他の例としては、容器本体4の内壁に内側を指向して張り出した受け部を形成したり、トレイ30の上部端縁の一部に容器本体4の開口4aの端縁に係止可能な係止片を設けたりすることもできる。トレイ30の容器本体4への装着および取り出しを考慮すれば、トレイ30を下方から支持する保持構造が好ましい。
【0038】
トレイ30は、施蓋時において蓋体20の下面に当接可能な当接部46を備えることができる。当接部46が蓋体20によって当接され押圧されることで、トレイ30を受け部8において安定して保持させることができる。こうした当接部46は、トレイ30から上方を指向して蓋体20の下面に当接可能に形成されていれば形状は特に限定されない。殊にトレイ30の外周縁の一部から上方を指向していることが好ましい。また、こうした当接部46は、トレイ30から上方を指向して形成されているため、トレイ30を単独で持ち運ぶ場合のハンドル部としても機能することができる。図4に示すトレイ30においては、トレイ30の縦壁状の側壁36から上方に向かって突出するタブ状の当接部46を有している。
【0039】
トレイ30は、トレイ操作部50の支持部60によって支持可能に形成されていることが好ましい。トレイ30を操作部50によって操作可能に形成することで、トレイ30自体に操作者が手を触れる機会を低減でき、取り扱いミスを低減できる。後述するように支持部60は、下方からトレイ30を支持する構成を有することが好ましい。殊に、こうした支持を可能または確実にするために、トレイ30の下面には支持部60に容易に係止されるような係合部48を有していることが好ましい。こうした係合部48は、例えば、図6に示すように、リング状の支持部60に対してトレイ30が位置ずれしないような下方に突出する凸部として形成することができる。
【0040】
(トレイ操作部)
次に、トレイ操作部(以下、単に操作部ともいう。)50について説明する。操作部50は、トレイ30を容器本体4に収容したり、取り出したり、あるいは持ち運ぶためのものである。操作部50は、手指やピンセットあるいはロボットなどによって把持(挟持、係止などを含む)される1個または2個以上のハンドル部52を有している。操作部50は、トレイ30を操作可能であればよく、トレイ30に一体に設けられていてもよいが、トレイ30とは別体であってもよい。
【0041】
図1に示す包装容器2の操作部50は、トレイ30とは別体に形成され、トレイ30を下方から支持する支持部60を有し、ハンドル部52を支持部60に連結して有している。支持部60の形態は、トレイ30を支持して持ち運び可能であれば特に限定されず、係止、嵌合、載置および挟持などの形態でトレイ30を支持することができるが、トレイ30を下方から支持可能に形成されていると取り扱いが容易である。
【0042】
なかでも、支持部60は、トレイ30の出し入れ時においてトレイ30を所定部位に容易に着脱させるために、トレイ30の支持状態を容易に解除できるようになっていることが好ましい。トレイ30は操作性の観点から容器本体4内の所定部位に固定するのが好ましい。また、収容時において、トレイ30が支持部60で支持されていなくても容器本体4内の所定位置で保持される構成とすることにより、トレイ30の容器本体4における保持構造や操作部50自体の保持構造の自由度が向上する。こうした観点からトレイ30の支持状態の解除は容易であることが好ましく、支持部60は係止や載置によってトレイ30を下方から支持するようになっていることが好ましい。なお、トレイ30を下方から支持する形態であると、トレイ30を安定して支持できるとともに、支持部60を容器本体4の下方側に収納できるので培養組織100の収納形態を制限することもなく容器本体4の下方スペースを有効利用できる。
【0043】
トレイ30を下方から載置または係止により支持する支持部60としては、図1に示すリング状等のフレーム状のほか、トレイ状、ネット状、シート状等の形態を採ることができる。容器本体4に液体が充てんされた状態での移動の抵抗等を考慮すると、フレーム状やネット状等であることが好ましい。
【0044】
トレイ30を下方から支持する形態の支持部60は、包装容器2への収容時、容器本体4の底部に載置可能に形成されることが好ましい。後述するように、操作部50の一部が蓋体20によって押圧固定されるとき、支持部60が底部に載置されていることにより、操作部50を安定して包装容器2内に保持させることができる。なお、容器本体4内に底部とは別に支持部60を支持する部分を別途設けて、底部近傍あるいは底部以外で支持するようにしてもよい。また、支持部60は、容器本体4の内壁(好ましくは底部の内壁)によって底部上での移動が抑制されるような外形形状を有していることが好ましい。こうすることで、支持部60の容器本体4への収容位置が位置決めされるとともに容器本体4の内壁によって支持部60、延いては操作部50を保持することができる。
【0045】
操作部50は、ハンドル部52を支持部60に連結して備えることができる。ハンドル部52は、手指やピンセットあるいはロボット等で把持、係止、あるいは挟持などによって操作できるものであればよく、その形態は特に限定されない。したがって、ツメ若しくはツマミなどの小片状、スティック状、アーム状、リング状、アーチ状等とすることができる。ハンドル部52は、少なくともトレイ30の持ち運びができるようにトレイの搬送用ハンドル部として機能することができる。
【0046】
ハンドル部52は、容器本体4からトレイ30を取り出す取出し用ハンドル部としても機能することができる。容器本体4内において容器本体4の内壁との干渉を回避または抑制してピンセットなどで把持されるように、容器本体4の内壁から離間した位置に配置されていることが好ましい。例えば、支持部60から上方または斜め上方を指向して延出され、容器本体4の内壁から離間したスティック状体の一部位をハンドル部52とすることができる。また、容器本体4の中央寄りの部分で把持されるよう湾曲ないし屈曲させると、トレイ30を安定して支持することができる。例えば、支持部60から上方を指向し、容器本体4の中央側にカンチレバー状に張り出した部分をハンドル部52とすることができる。さらに、容器本体4における収納性を考慮すれば、必要なときにのみ把持容易または把持可能な状態となるように、トレイ30に対して可動式または可倒式であることも好ましい。
【0047】
ハンドル部52が取出し用ハンドルとして機能する場合、図1にしめすように、ハンドル部52は、支持部60から上方を指向して延出され、さらに容器本体4の中央側に屈曲した連結部分の先端であって、トレイ30の上方、容器本体4の中央部に備えるようにすることができる。すなわち、図1に示す操作部50では、収容時においてハンドル部52がトレイ30の上方に位置するように、支持部60から所定距離離間した上方にハンドル部52が備えられている。また、ハンドル部52は、図7(a)に示すように、支持部60から上方を指向したスティック状として設けることもできる。また、図7(b)に示すように、容器本体4の中央側に湾曲するアーム状に設けることもできる。さらに、図7(c)に示すように、トレイ30をまたぐようなアーチ状とすることができる。これらのいずれの形態においても、包装容器2内における収容性を考慮して可倒式にすることができる。図7(d)には、図7(c)のアーチ状ハンドルのアーチ部分がトレイ30に対して可倒式に形成され、折り畳まれた状態を示す。
【0048】
こうした操作部50には、操作部50自身を包装容器2内に保持するための保持構造を有していることが好ましい。例えば、操作部50は、容器本体4に操作部50が収容され施蓋された時において、蓋体20の下面に当接される当接部54を有することができる。当接部54は、支持部60やハンドル部52の一部であってもよいし、ハンドル部52自体であってもよい。こうすることで、施蓋によって、操作部50自身が包装容器2内に安定して保持される。支持部60が容器本体4の底部に載置されているときには、容器本体4の底部と蓋体20とによって一層安定して保持される。図1に示す操作部50は、ハンドル部52を当接部54に兼用し、ハンドル部52の上端が施蓋時において蓋体20の下面に当接されるようになっている。なお、図7に示したいずれのハンドル部52も当接部54を兼用することができる。
【0049】
以上説明したトレイ操作部50は、本発明の培養組織の包装容器に用いる操作ユニットに相当している。
【0050】
(規制部)
本包装容器2には、収容されるトレイ30の載置面32上の培養組織100の上方移動を抑制可能な規制部90を備えることができる。規制部90は、少なくとも載置面32の上方を遮蔽して載置面32の高さ範囲程度に培養組織100の上下動範囲を規制するものであることが好ましい。したがって、載置面32の上方のみに形成して上下動を規制してもよいし、トレイ30の開口を完全に遮蔽する蓋体のように形成してもよい。規制部90によるトレイ30の遮蔽状態は、少なくとも包装時において形成されていればよい。
【0051】
規制部90は、図1に示すように、操作部50に一体に設けることもできる。こうした規制部90は、操作部50に対して種々の形態で形成することができるが、図1に示すように、包装時においてトレイ30の上方に設けられるハンドル部52に一体に設けることができる。こうすることで、ハンドル部52を安定支持できる。また、ハンドル部52が当接部54を兼ねる場合には、規制部90が当接部54を介して蓋体20によってトレイ30側に押圧固定されることになり、操作部50および規制部90が所定位置に安定的に保持されるとともにトレイ30も同時に安定して受け部8により保持できるようになる。また、こうした構成によれば、包装時にはトレイ30は規制部90によって遮蔽されているが、トレイ30を取り出す際には、操作部50のハンドル部52を持って操作部50を上動させることで、トレイ30から規制部90が上方に相対移動してトレイ30が開放されることになる。そして、取り出し後において、トレイ30から十分に離れた上方に規制部90があることで規制部90が邪魔になることもなく、その後の操作が容易になる。
【0052】
なお、規制部90は、他の形態とすることもできる。例えば、トレイ30の全体でなく載置面32の上方のみを規制するようにしてもよい。また、図8(a)に示すように、ハンドル部52など適当な部材を回動中心として水平方向に規制部90を回転させてトレイ30を開閉可能に構成してもよい。また、図8(b)に示すように、トレイ30を水平方向に出し入れ可能なボックス状体に形成してもよい。さらに、規制部90は操作部50と別個に設けることもできる。例えば、蓋体20の一部(下面)であってもよい。当接部46がトレイ30の周縁に設けられるかあるいは可倒式などとして、トレイ30の開口を蓋体20が遮蔽するのを妨げない場合には、施蓋時に蓋体20の下面がトレイ30の開口を遮蔽するように包装容器2を形成することで、別途部材を増やすことなく規制部90を構成できる。
【0053】
こうした規制部90は、容器本体4に充てんされる保存培地の還流性や規制部90の操作性を確保するため、および規制部90によって制限されたトレイ30内の気泡を排除するために1個以上の貫通孔92を有することが好ましい。また、規制部90は、培養組織100の上方移動を抑制できる限りにおいて、通液可能なネット状や不織布状とすることもできる。また、規制部90は必ずしも貫通孔92を有する必要はなく、例えば、トレイ30の上部端縁と規制部90との間に適当な空間があれば、還流性や気泡の排出性を確保することができる。例えば、意図的に規制部90の下面を斜めに形成し、トレイ30の上端縁と規制部90の一部が当接しないように形成するなどして両者間に隙間が発生するようにしてもよい。また、規制部90の外周形状をトレイ30の開口よりも小径にしてもよい。
【0054】
次に、トレイ30を用いて培養組織100を包装する方法、および培養組織100が包装容器2に包装されて得られる包装体200、さらにこの包装体200からトレイ30を用いて培養組織100を取り出して使用する方法について説明する。なお、培養組織の作製方法に関しては、本発明との関係が少ないことから説明は省略する。
【0055】
(包装方法)
以下、包装方法について図9〜図11を参照して説明する。作業者は、清潔な台の上にトレイ30の下面が台に接するようにトレイ30を載置して準備するとともに、支持部60が台に接するようにして載置した操作部50、容器本体4、および蓋体20を準備する。その後、作製した培養組織100をスパーテル等で培養容器から剥離し、剥離した培養組織100をスパーテルですくい上げ、培養容器に接していた面が下方となるようにトレイ30の載置面32上に静かに載置する。
【0056】
培養組織100を載置面32に載置した後、作業者はトレイ30をピンセットで摘み上げ、操作部50の支持部60上に静かに載置する。その後、ハンドル部52を把持し、操作部50を持ち上げることでトレイ30を持ち上げ、図9に示すように、容器本体4の内部に支持部60から挿入する。
【0057】
図10に示すように、操作部50を容器本体4の底部に挿入する途中において、トレイ30は容器本体4の内壁の一部に形成された受け部8に係止されて保持される。そして、最終的には、図11に示すように、支持部60はそのまま容器本体4の底部にまで到達しそこに載置され、同時に規制部90がトレイ30の開口全体を覆うように位置され、規制部90がトレイ30に対してセットされる。
【0058】
トレイ30および操作部50を容器本体4に配置した後、所定量の保存培地を容器本体4に静かに注入する。ここでいう所定量とは、載置面32に載置されている培養組織100の種類に応じて適宜設定すればよいが、少なくとも培養組織100が浸漬する程度の量が好ましい。保存培地としては、輸送等による移送期間の間、包装された培養組織100を維持・保存できる液体であれば何でもよく、包装する培養組織100に合わせて適宜設定すればよい。具体的には、基礎培地、生理食塩水、リンゲル液、リン酸緩衝液(PBS)などが挙げられる。
作業者が保存培地を通液用の空間35を介して容器本体4内に静かに注入する。保存培地が徐々に蓄積され、トレイ30の底面に達すると、保存培地は貫通孔42を通ってトレイ30内に侵入し、載置面32に載置された培養組織100を浸漬する。さらに、注入された保存培地によって、容器本体4内の空気は空間35、貫通孔42および貫通孔92を通って上方で排除される。したがって、トレイ30と規制部90で構成された収容空間からは空気が排除され、保存培地で満たされる。なお、上記説明においては、トレイを挿入した容器本体に保存培地を注入したが、予め保存培地を注入した容器本体にトレイを挿入してもよい。また、トレイに培養組織100を載置した後、トレイを支持部に載置したが、支持部に載置した状態のトレイに培養組織100を載置してもよい。
【0059】
この後、作業者は、蓋体20を容器本体4に対して螺合する。これにより、図2および図3に示す形態で培養組織100を載置したトレイ30および操作部50が収容された包装体200が得られる。蓋体20を容器本体4の所定位置まで螺合することによって、蓋体20の下面(天井面)がトレイ30の当接部46に当接され所定の力で押圧するので、トレイ30は、蓋体20と受け部8とによって保持される。同時に、ハンドル部52の上端も蓋体20の下面に当接されて押圧されることで操作部50が容器本体4の底部と蓋体20とによって保持される。さらに、ハンドル部52が押圧されることでハンドル部52に一体に設けた規制部90がトレイ30の開口に押圧固定され、トレイ30全体が安定して受け部8に保持される。また、操作部50のハンドル部52が押圧されることで、トレイ押圧部56がトレイ30を受け部に対して押圧して、トレイ30が受け部8に確実に保持される。こうして培養組織100が包装容器2のトレイ30内において保持された包装体200を得ることができる。
【0060】
(包装体)
このような包装体200は、包装容器2内にトレイ30を操作する操作部50を合わせて収容しているため、開封後の培養組織100の取り出しが容易になっている。また、操作部50は容器本体4と蓋体20とによって包装容器2内に安定的に保持されており、培養組織100の輸送を妨げないようになっている。また、トレイ30は、当接部46と受け部8とによって包装容器2内に保持されているとともに、当接部54および規制部90によっても押圧されているため、安定して保持される。一方、操作部50も容器本体4内で安定して保持されている。
【0061】
また、トレイ30と規制部90とによって包装容器2内に形成された培養組織100の収容空間には、貫通孔42、92によって保存培地の流通性が確保されるとともに保存培地の充てん状態が維持される。また、収容空間が狭く構成され、培養組織100の移動が規制されているため、包装容器2が振動しても培養組織100の振動を効果的に抑制し安全な輸送を実現できる。
【0062】
(培養組織の取り出し等)
培養組織100の使用にあたって、包装体200は清潔な台の上に載置され、作業者は蓋体20の螺合を解除し、包装容器2を開封する。作業者は操作部50のハンドル部52を把持し、操作部50とトレイ30とを上方に引き上げる。規制部90に貫通孔92を有しているため、規制部90上の保存培地は貫通孔92を介して流下するため、容易に操作部50を引き上げることができる。ハンドル部52をさらに引き上げていくと、支持部60がトレイ30を係止して支持し、さらに操作部50を引き上げることによって、支持部60がトレイ30を支持した状態で操作部50が容器本体4から取り出される。保存培地からの引き上げの際、トレイ30内の保存培地は貫通孔42から排出されるため、容易に引き上げることができる。すなわち、培養組織100が載置されたトレイ30からは保存培地が除去され、培養組織100が載置面32に載置された状態となっている。また、取り出し後においては、規制部90はハンドル部52とともにトレイ30から離れた上方に位置されており、トレイ30内の培養組織100は開放されている。
【0063】
取り出した操作部50からトレイ30の当接部46をピンセット等で把持してトレイ30を取り出し、移植創300の大きさに沿って書いた型紙の上にトレイ30を載置する。トレイ30の載置面32は透明性を有しているため、載置面32の下の型紙を載置面32の上方から視認することができる。そして、載置面32を介して視認できる型紙に沿って培養組織100の不要部分を切除(トリミング)する。
【0064】
なお、必要に応じて洗浄工程を加えても良い。この場合、シャーレ等の窪みのある容器にトレイ30を培養組織100とともに載置し、洗浄液をトレイ30に加えて培養組織100を洗浄する。トレイ30は貫通孔42を有しているため、洗浄液は貫通孔42を介して容器とトレイ30に蓄積する。トレイ30を洗浄液から引き上げることで洗浄液が貫通孔32を抜けて落下するので、トレイ30には培養組織100だけを残して洗浄を完了することができる。
【0065】
培養組織100のトリミング後、切除した不要部分をトレイ30からピンセットで除去する。移植創300に合わせてトリミングした培養組織100を載置したトレイ30を移植創300の近傍まで移送した後、図12に示すように、トレイ30を傾け、培養組織100をその移出部40から移植創300へと移動させ、移植を行う。移出部40は、培養組織100が追従可能なスロープ状部位38を有しているため、目的の移植創300に向けて確実に培養組織100を移すことができる。この際、載置面32やトレイ30が透明であるため、移植創300がトレイ30の下にあっても移植創300を確認しながら培養組織100の移植を行うことができる。移出部40には、培養組織100の移出時の方向性やスピードを制御する凹凸や表面処理等が施されている場合には、一層スムーズまたは確実に培養組織100の移植を行うことができる。
【0066】
以上説明したように本発明のトレイを用いた包装容器によれば、培養組織の包装、輸送および移植までをスムーズに行うことができる。さらに、本発明のトレイは、培養組織の輸送のみならず保存にも利用することができる。また、本発明のトレイは、培養組織の包装、取り出し、持ち運び、トリミングや洗浄等の処理、さらには、移植部位への培養組織の移植等を容易に行うことができる。さらに、本発明のトレイに使用されるトレイ操作部(操作ユニット)によれば、培養組織の包装、取り出し、持ち運びを容易に行うことができるほか、包装容器内でトレイを安定して保持したり培養組織の揺動や振動を抑制したりすることもできる。
【0067】
また、本発明の包装方法によれば、本発明の包装容器を用いることで保存や輸送等に適した状態で培養組織が包装され、しかも開封後の使い勝手のよい包装体を容易に得ることができる。さらに、本発明の包装体によれば、本発明の包装容器を用いることで良好な状態で培養組織を保存し輸送できるとともに、開封後の使い勝手が優れた包装体となっている。
【0068】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定することなく種々の形態で実施することが可能である。例えば、上記実施形態では、トレイ操作部50をトレイ30に対して別個に設ける構成としたが、これに限定するものではなく、図13に示すように、トレイ操作部150をトレイ30に対して一体に設けることもできる。こうすることでトレイ30を包装容器2のインナートレイとしてだけでなく、包装容器2と独立して単独で取り扱うときにでも操作がしやすい。この場合のハンドル部152の形態は、操作部50をトレイ30に対して別に設ける場合と同様に各種態様を採ることができ、可倒式とすることもできる。すなわち、トレイ30の外周縁から上方を指向したスティック状、タブ状のほか、さらに容器本体4の中央側に屈曲または湾曲したアーム状、さらには、図14(a)に示すようにアーチ状等とすることができる。トレイ30の外周において容器本体4の内壁から離間した部位を有している場合、当該離間部位から上方に指向するようにハンドル部152を設けることで簡易に操作容易なハンドル部152を形成することができる。また、これら各種形態のハンドル部152は、搬送用ハンドル部として利用可能であるとともに、搬送用ハンドル部および取出し用ハンドル部として利用可能である。さらに、こうしたハンドル部152を、実施形態のハンドル部52と同様に、蓋体20への当接部154として利用して、操作部150を包装容器2内に安定して保持させることができる。なお、当接部154は操作部150に別途設けてもよい。また、この変容例では、トレイ30と操作部150とは一体であるので、蓋体20の下面に当接されるハンドル部152は、トレイ30を包装容器2に固定するための当接部146としても機能することができる。さらに、こうした操作部150においても、規制部90を、トレイ30または載置面32上方を開閉可能に設けることができるし、図14(b)に示すように、ハンドル部152を可倒式などとすることで、蓋体20の下面を規制部90として利用することも可能である。さらにまた、本発明においては、包装容器内においてトレイ30を安定して保持させるために、トレイ30またはトレイ操作部50、150から蓋体20に指向した当接部46、54、154を設けたが、蓋体20からトレイ30またはトレイ操作部50、150に指向した当接部を設けてもよい。また、トレイ操作部50、150からトレイ30に指向する当接部を設けてもよい。
【0069】
本発明を利用できる培養組織は、培養表皮、培養皮膚、培養軟骨、培養骨、培養角膜上皮などの種々のものが挙げられるが、三次元形状のスキャフォールドと組み合わせて培養される培養組織に好適である。また、培養容器に接着した状態で培養した培養組織を剥離して輸送するような場合に好適である。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の説明に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を同じくするものに関して、変容することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の包装容器、操作ユニット、包装体および包装方法は、移植現場における培養組織の移送や、製造元から移植先への培養組織の輸送に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の包装容器の一例の概略を示す図。
【図2】図1に示す包装容器のA−A線断面を示す図。
【図3】図1に示す包装容器のB−B線断面を示す図。
【図4】図1に示す包装容器のトレイの拡大図。
【図5】トレイの移出部の他の例を示す図。
【図6】トレイの容器本体における保持構造の例を示す図。
【図7】ハンドル部の他の例を示す図。
【図8】規制部の他の例を示す図。
【図9】容器本体へのトレイの挿入時の状態を示す図であり、(a)はA−A線断面を示す図、(b)はB−B線断面を示す図。
【図10】容器本体へのトレイの挿入途中の状態を示す図であり、(a)はA−A線断面を示す図、(b)はB−B線断面を示す図。
【図11】容器本体へのトレイの収容状態を示す図であり、(a)はA−A線断面を示す図、(b)はB−B線断面を示す図。
【図12】培養組織を移植創へ移動させている状態を示す図。
【図13】トレイ操作部の他の例を示す図。
【図14】トレイの他の例を示す図。
【符号の説明】
【0073】
2 包装容器、4 容器本体、4a 開口、8 受け部、20 蓋体、30 インナートレイ、32 載置面、34 側壁、35通液用の空間、36 縦壁状側壁、38 スロープ状側壁、40 移出部、42 貫通孔、44 係合部、46、54、154 当接部、48 係合部、50、150 インナートレイ操作部、52、152 ハンドル部、54、154、60 支持部、56 トレイ押圧部、90 規制部、92 貫通孔、100 培養組織、200 包装体、300 移植創。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養組織の包装容器であって、
容器本体と、
該容器本体に施蓋可能な蓋体と、
前記容器本体と前記蓋体とによって形成される空間内に収容可能であって前記培養組織を載置可能な載置面を有するインナートレイと、
把持可能なハンドル部を有し、前記容器本体に収容されたインナートレイを操作可能に前記空間に収容されるインナートレイ操作部と、
を備える、包装容器。
【請求項2】
前記ハンドル部は、前記容器本体に収容される前記インナートレイの上方であってかつ容器本体の中央側に備えられる、請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記ハンドル部は、前記インナートレイに対して可倒式に形成されている、請求項1または2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記インナートレイ操作部は、前記空間内に収容された状態において、前記蓋体を施蓋したときに前記蓋体が当接する当接部を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の包装容器。
【請求項5】
前記インナートレイ操作部は、前記インナートレイを支持する支持部を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の包装容器。
【請求項6】
前記支持部は、着脱可能に前記インナートレイを支持する、請求項5に記載の包装容器。
【請求項7】
前記支持部は、前記インナートレイと脱離して前記容器本体の底部近傍に収容可能に形成されている、請求項6に記載の包装容器。
【請求項8】
前記インナートレイ操作部は、
前記空間内に収容された状態において、前記蓋体を施蓋したときに前記蓋体が当接する前記ハンドル部と、
前記インナートレイを載置または係止可能であって、前記インナートレイを前記空間の所定の位置に収容した後には前記容器本体の底部近傍に収容可能な前記支持部と、
を有している、請求項5〜7のいずれかに記載の包装容器。
【請求項9】
前記容器本体は、前記インナートレイが前記空間内に収容された時、前記インナートレイを前記容器本体内の底部から離間した高さにおいて保持可能な保持部を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の包装容器。
【請求項10】
前記インナートレイが前記空間内に収容された状態において、前記載置面上の前記培養組織の上方移動を抑制可能な規制部を有している、請求項1〜9のいずれかに記載の包装容器。
【請求項11】
前記規制部は、貫通孔を有している、請求項10に記載の包装容器。
【請求項12】
前記規制部は、前記インナートレイ操作部の一部である、請求項10または11に記載の包装容器。
【請求項13】
前記規制部は前記蓋体の一部である、請求項10または11に記載の包装容器。
【請求項14】
前記容器本体は、前記インナートレイが前記空間内に収容された時、前記インナートレイを前記容器本体内の底部から離間して保持可能な保持部を有し、
前記インナートレイ操作部は、前記空間内に収容された状態において、前記蓋体を施蓋したときに前記蓋体が当接する前記ハンドル部と、前記インナートレイを載置または係止により着脱可能であって、前記インナートレイを前記空間所定の位置に収容した後には前記容器本体の底部に収容可能なインナートレイ支持部と、前記インナートレイが前記空間内に収容された状態において前記載置面上の前記培養組織の上方移動を抑制可能な規制部と、を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の包装容器。
【請求項15】
前記インナートレイは、前記載置面の周縁の側壁の少なくとも一部に開口部位および/またはスロープ状部位を有している、請求項1〜14のいずれかに記載の包装容器。
【請求項16】
前記開口部位および前記スロープ状部位は、前記培養組織の移出用である、請求項15に記載の包装容器。
【請求項17】
前記インナートレイの前記載置面は透明性を有している、請求項1〜16のいずれかに記載の包装容器。
【請求項18】
前記インナートレイの側壁および前記載置面のいずれかには少なくとも1つの貫通孔を有する、請求項1〜17のいずれかに記載の包装容器。
【請求項19】
培養組織の包装容器に用いるユニットであって、
前記包装容器は、容器本体と蓋体と容器本体に収容されるインナートレイとを備え、
前記ユニットは、前記包装容器内に収容可能に形成されるとともに、前記容器本体内に収容されるインナートレイを支持する支持部と、前記ユニットの前記容器本体内収容時において把持可能なハンドル部と、を備える、ユニット。
【請求項20】
培養組織の包装体であって、
請求項1〜18のいずれかに記載の包装容器と、
該包装容器の前記インナートレイの前記載置面上に載置された培養組織と、
を備える包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−269327(P2007−269327A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94270(P2006−94270)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成11年度、科学技術振興事業団、新技術開発委託契約、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(399051858)株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング (21)
【Fターム(参考)】