説明

培養装置および培養方法

【課題】培養室内の交換剤の含有量を有効に統御でき、工業化が容易となる培養装置および培養方法を提供する。
【解決手段】有機物質を格納して微生物を培養する少なくとも1つの培養室5と、前記培養室5と隣接する少なくとも1つの交換室6と、前記培養室5と交換室6の間に設けられ、当該培養室5と交換室6の間で交換剤を選択的に交換可能な少なくとも1つの分離部3と、を有する培養装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置および培養方法に関し、より詳細には、有機廃棄物質を発酵させる培養装置および培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または産業
廃棄物質など(以下、「有機物質」ともいう)から、発酵等の方法により堆肥等を作成する作業が、農業者等により普遍的に行われてきている。また、近年のリサイクル活動の向上の結果、関連法令の整備等により、有機物質の堆肥化等に関し幾つかの発明がされてきている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−48721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来より行われている方法は、一般に各々の農業者の経験に依存する所が多く、又堆肥化等に連なる一連の過程で天候、気温、湿度、細菌叢等の物理、化学、生物学的変化により、容易に腐敗化し完成に至らない可能性が高い。また、特許文献1に記載の方法では、有機物質の堆肥化等に関して大きな課題である有機物質の含有水分量の調節、及び微生物学的、生物化学的過程である一連の有機物質の分解過程に関して、有効な統御方法は充分に確立されているとは言えない現状がある。
【0004】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、有機物質の含有水分量の調節を持続的に行うと伴に、特に有機物質の水分含有量及び微生物等の有機物質内での細菌叢の構成の点に於いて、一連の有機物質の分解過程の全部若しくは一部を統御可能とするものであり、有機物質の堆肥化等の作成において、経験に頼る部分を極小化させ、工業化を容易に成らしめる培養装置および発酵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明に係る培養装置は、有機物質を格納して微生物を培養する少なくとも1つの培養室と、前記培養室と隣接する少なくとも1つの交換室と、前記培養室と交換室の間に設けられ、当該培養室と交換室の間で交換剤を選択的に交換可能な少なくとも1つの分離部と、を有することを特徴とする。
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る培養方法は、培養室内に有機物質を格納して微生物を培養する際に、当該培養室に隣接する交換室と培養室の間で、当該培養室と交換室の間に設けられる分離部を介して交換剤を選択的に交換させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明に係る培養装置は、培養室と交換室の間で所定の交換剤を選択的に交換可能な分離部が設けられるため、培養室内の交換剤(例えば水)の含有量を有効に統御でき、工業化が容易となる。
【0008】
上記のように構成した本発明に係る発酵方法は、培養室と交換室の間に設けられる分離部を介して所定の交換剤を選択的に交換させるため、培養室内の交換剤(例えば水)の含有量を有効に統御でき、工業化が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
本発明は、発酵物質、有機肥料、堆肥、厩肥等(以下、堆肥等と称する場合がある)の原材料である有機物質中に含まれる含有水分量を、例えば、半透膜、親水性コンクリート、親水性セラミック等(以下分離機能部等と称す。なお、分離機能部については、後に詳述する。)を有する構造体を用いて、迅速に原材料中に含まれる水分含有量を調節する培養装置およびこれに不随する発酵方法に関するものである。また、本発明は、原材料が、真菌、細菌、古細菌等の微生物(以下、微生物と称す)の有気、無気呼吸等(以下、発酵等と称す)によって堆肥等へ変化する微生物学的、化学的変化過程において、物理学的、化学的、及び生物学的手法を用いることにより、人為的に自由度の高い調節を可能とする装置、及びこれに付随する培養方法に関するものであり、同過程においてエタノ―ル、メタン等の物質若しくはイオンを分離採取可能とするものである。
【0011】
更に本発明は有機物質の種類を基本的に選ばず、また微生物の種類の性状が嫌気性、好気性、偏性嫌気性、偏性好気性である等に関係せず、また微生物の呼吸過程及び微生物叢の変化により有気、無気又は両者の併用、若しくは変化の如何を問わず対応可能であることも特徴とする。更に本発明は単に堆肥化等に限らず、いわゆる発酵食品(例えば、ヨーグルト、アルコール製品)等の製造に関しても有益である。更に本発明の過程に於いて、エタノール、メタン等の有機ガス物質、イオン、塩等を分離し採取、抽出が可能であり、地球温暖化防止、二酸化炭素発生抑制に資するものである。
【0012】
なお、本明細書中の「発酵」とは、解糖系の酸化過程のみならず、古細菌、真正細菌、真核生物である微生物が行う無気呼吸、有気呼吸を含めた有機物、無機物の異化若しくは同化過程を言い、場合により、光合成、化学合成をも含む。
【0013】
[一般構造]
初めに、本発明に係る培養装置の一般的構造について説明する。
【0014】
本発明に係る培養装置は、図1,2に示すように、内部に空間を有し、開口部4が形成された本体1と、開口部4に取り付けられる蓋部2とを備えている。本体1の内部には、内部空間を2分する分離機能部3が設けられる。分離機能部3により分離された内部空間の一方は、原材料を格納して発酵させる培養室5であり、他方は、培養室5内と物質、イオン、プラズマ、微生物、電子、電気等(以下、物質と称することがある)を交換する交換室6である。交換される交換剤は、例えば、培養室5内の浸透圧を調整するための浸透圧調整剤に含まれる水である。
【0015】
交換剤は、例えば、固体、固形物、液体、液状物、気体、プラズマ、素粒子、生物からなる群より選択される一種以上でありえる。気体としては、空気、酸素、アンモニアガス、硫化水素ガス、有機ガス、エタノールガス、メタンガス、活性酸素、オゾンからなる群より選択される一種以上でありえる。液体としては、水、水を溶媒とした液体混合物、コロイド溶液からなる群より選択される一種以上であえる。水を溶媒とした液体混合物としては、陽イオン、陰イオン、無機物質、有機物質からなる群より選択される一種以上でありえる。素粒子としては、電子流、電流からなる群より選択される一種以上でありえる。生物としては、古細菌、真正細菌、原生生物、真核生物からなる群より選択される一種以上でありえる。
【0016】
開口部4は、培養室5側に設けられており、蓋部2は、開口部4を開閉可能であり所望により取り外すことができる構造となっている。
【0017】
分離機能部3は、交換剤を透過可能な構造体であり、半透膜、親水性コンクリート、親水性セラミック等が適用できる。
【0018】
なお、上述の構造は、本発明に係る培養装置の一般構造であり、他の構造に種々変形することができる。例えば、培養室5および交換室6は、かならずしも同一の本体の内部に設けられなくてもよい。
【0019】
<蓋部>
蓋部2は、原材料を収容した培養室5を覆うものであり、例えば、図3に示すように、スクリュー構造7が設けられて、開口部4に形成されるスクリュー溝(不図示)にねじ込まれることで、開口部4に連結される。培養室5内の原材料を、嫌気性菌や偏性嫌気性菌により分解する過程が必要な場合、必要に応じて、パッキン8等を用いて密閉構造とすることが可能である。
【0020】
また、蓋部2は、本体1と接合、係合、もしくは一体化することも可能である。図4は、蓋部2が本体1に対して蝶番9により接合された形態を示す。また、図5は、シャッター構造10を備えた蓋部2が、本体1と一体化した形態を示す。
【0021】
また、図6に示すように、蓋部2に分離機能部3を設けることもできる。分離機能部3は、蓋部2のみでなく、図7に示すように、本体1にも設けることができる。なお、図62の形態では、培養室5または交換室6が、分離機能部3を挟んで本体1の外側に位置することとなる。
【0022】
また、蓋部2は、図8に示すように、分離機能部3を備えるとともに、本体1の内部を摺動可能な摺動部11として設けられてもよい。このとき、摺動部11は、培養室5と交換室6の間で移動可能な壁面を構成し、培養室5および交換室6の容積を変更させることができる。なお、蓋部2とは別構造として、摺動部11が設けられる場合もある。
【0023】
また、蓋部2は、図9に示すように、外部もしくは装置の他の部位と連通するための連絡孔12を有することができる。連絡孔12は、例えば通気孔として使用される(図9(A)参照)。また、連絡孔12には、流通を制限するための流通制限部として、開閉自在なシャッター13(図9(B)参照)、逆流防止弁14(図9(C)参照)、またはフィルター15(図9(D)参照)等が設けられてもよい。
【0024】
シャッター13は、連絡孔を必要に応じて開閉し、逆流防止弁14は、一方向のみの流通を可能とし、フィルター15は、本体内部と外部もしくは装置の他の部位との流通に関して、一定の制限を与えることを可能とする。
【0025】
これらの弁14、シャッター13、およびフィルター15等の構造は、本体1内部と外部もしくは装置の他の部位との連通を、人為的もしくは科学的(物理的、化学的または生物学的)に制御可能とする。
【0026】
<本体>
本体1は、図10に示すように、分離機能部3を介して少なくとも2室に分けられている。なお、分けられた少なくとも2室は、図10では同一構造体に設けられるが、必ずしも同一構造体に設けられる必要はなく、互いに異なる構造体に設けられてもよい。図11〜13の例では、交換室6が、分離機能部3が設けられる培養室5に着脱可能な別構造体で形成されている。図12では、分離機能部3が、交換室6と培養室5の間に、径の小さい小径流路部16が形成されており、この小径流路部16に、分離機能部3が設けられている。図13は、交換室6および培養室5が円柱形状で形成され、交換室6と培養室5の間に、径の小さい小径流路部17が形成されており、分離機能部3が、この小径流路部17に設けられている。
【0027】
本体1の壁面は、1層もしくは多層の固体、または固体ではないが固形形状を形成可能な固形体により形成される。図14の例では、本体1は、一層のセラミック材料18から形成される。図15の例では、本体1は、セラミック材料の外層18に、アルミニウム合金の内層19が設けられた2層構造で形成されている。
【0028】
本体1の壁面には、少なくとも一部に、液体、気体またはプラズマを含む流体や、前述のような流体ではないが流動可能な流動体(例えば、粒状体)等を内包することができる。図16の例では、アルミニウム合金の内層19に、周方向に形成される環形状の流体収容空間20(温度調節手段)が形成され、この流体収容空間20に、例えば水が内包されている。
【0029】
また、流体収容空間20が、外部との間で連絡されて、液体、気体、プラズマまたは流動体が循環する構造であってもよい。図17の例では、壁面内にコイル状チューブ21を配し、このチューブ21(流体収容空間)内に、温水を循環させている。チューブ21は、例えばステンレス製である。このような構造とすることで、保温等の温度調整が容易となり、本体1内の培養室5および/または交換室6の温度条件を一定に保ち、もしくは任意に変更するように制御できる。
【0030】
本体1は、内容物の攪拌や切り返し等を目的として、動体運動が可能であってもよい。図18は、本体1が回転軸を有する例を示しており、円柱形状の本体1が、中心軸に沿って回転可能となっている。
【0031】
また、図19は、球状の本体1自体が、水平面で回転移動する例を示し、図20は、球状の本体1自体が、鉛直面で回転移動する例を示している。
【0032】
また、本体1は、振動が付与されたり、上下左右等の直線運動が可能であってもよい。図21は、円柱形状の本体1が、上下方向へ移動可能であり、かつ振動が付与される例である。このように、様々な運動を、組み合わせることが可能である。
【0033】
また、本体1は、本体内への収容物の搬入や搬出のために、図22,23に示すように、傾ける等の運動が可能であってもよい。
【0034】
<培養室>
培養室5は、上述したように、主として有機物質を含む原材料を格納し、微生物により生物化学的に変化させて堆肥等を製造するための室または槽である。培養室5には、生物化学的変化を生じさせる一連の工程の全部もしくは一部における、原材料から堆肥等へ至るまでのいずれかの物質が貯蔵される。なお、培養室5に格納される原材料には、有機物質のみではなく、無機物を含んでもよい。
【0035】
図24(A)は、培養室5の一般的構造を示す断面図であるが、このように、培養室5の一方側が解放して開口部4が形成され、他方側に分離機能部3が設けられている。また、図24(B)は、培養室5の他の例を示す断面図であるが、培養室5に、分離機能部3以外の膜や弁等22が設けられてもよい。図25(A)は、培養室5に弁23を設けた例を示す断面図であり、弁23は、外部もしくは他の室に通じている。図25(B)は、培養室5にフィルター24を設けた例を示す断面図である。フィルター24は、例えば金属膜フィルターであり、フィルター24の外部には管25が設けられて、外部もしくは他の室に通じている。
【0036】
培養室5は、図26(A)〜(C)に示すように、上述した蓋部2によって、密閉もしくは半密閉されることができる。ここで半密閉とは、図26(B),(C)のように、通気弁26を設けたり、全透膜等27を設けることを意味している。
【0037】
培養室5は、図27に示すように、内部に膜等28(半透膜、不透膜、全透膜等)や、固体、固形体(個体ではないが形状を保持できるもの)等により分離された小室29を有してもよい。または、図28に示すように、別構造の小室が通路部30で連結されて、全体として1つの培養室5を構成してもよい。なお、この通路部30には、膜等が設けられる場合もあれば、設けられない場合もある。
【0038】
なお、培養室5内の分離機能部3に隔てられた1つ以上の小室29を、交換室6と見なすこともできる。
【0039】
<培養室の加圧、減圧構造>
培養室5には、必要に応じて、培養室5内の浸透圧の調整のために、培養室5内を加減圧する移動力発生部31が設けられる。
【0040】
移動力発生部31は、図29に示すように、培養室5の内壁に接して擦動可能な摺動部32が、培養室5の外壁を貫通する軸部33に固定されて形成される。摺動部32は、軸部33が外部の加圧源によって進退動されることで移動し、培養室5内の収容物を加圧もしくは減圧することができる。
【0041】
移動力発生部31は、図30(A)に示すように、軸部33が蓋部2を貫通する場合がある。または、移動力発生部31は、図30(B)に示すように、摺動部32に分離機能部3が設けられる場合がある。
【0042】
<培養室の攪拌構造>
培養室5は、収容物の攪拌や切り返し等のために、内部に攪拌部が設けられる場合がある。攪拌部は、培養室5に接合、係合、または独立して設けられる。
【0043】
図31(A)は、培養室5の内壁に、突出した少なくとも1つ以上の攪拌部35が形成される例を示している。この攪拌部35は、培養室5が回転することで、収容物の攪拌や切り返しを行う。
【0044】
図31(B)は、培養室5の内部に、培養室5と係合する少なくとも1つ以上の球状体である攪拌部36が設けられる例を示している。攪拌部36は、培養室5が回転することで、培養室5の内部で移動し、収容物の攪拌や切り返しを行う。この攪拌部36は、収容物の攪拌や切り返しを良好に行えるように、内容物よりも比重が高いことが好ましく、例えば重金属等により形成される。
【0045】
図31(C)は、培養室5の内部に、培養室5と独立して回転可能な攪拌翼(プロペラ)である攪拌部37が設けられた例を示す断面図である。攪拌翼37は、スクリュー形状を呈しており、培養室5の壁面を貫通する軸部38に固定されている。この攪拌部37(攪拌翼)は、軸部38を外部からの動力で回転駆動することで、収容物の攪拌や切り返しを行う。
【0046】
図32(A),(B)は、培養室5の内部に、攪拌部が設けられた他の例を示す。図32(A)のように、攪拌翼37が取り付けられた軸部38が、分離機能部3を貫通するように構成してもよく、また、図32(B)のように、蓋部2(摺動部)を培養室5の内壁に沿って摺動可能とし、この蓋部2の培養室5側の面に、突出した攪拌部39を形成してもよい。
【0047】
培養室5は、前述した蓋部2と同様に、外部もしくは装置の他の部位と連通する連絡孔を有する場合がある(図9参照)。
【0048】
培養室5は、場合により、主たる収容物(有機物質)が収容される主室40と、主たる収容物とは異なる副収容物を収容するための副室41とを有する。副収容物は、例えば空気をも含みえるものであり、固体、液体および流体の全てを含みえる。図33は、培養室5に副室41が設けられた例を示す。培養室5の主室40と副室41の間には、フィルター42等の構造物を設けることもでき、これにより、主室40と副室41の間における収容物および副収容物の一部の流通が、部分的もしくは全体的に制限される。
【0049】
副室41は、前述した蓋部2と同様に、外部もしくは装置の他の部位と連通する連絡孔を有する場合がある(図9参照)。
【0050】
<分離機能部>
分離機能部3は、交換剤を透過可能な構造体であり、半透膜、親水性コンクリート、親水性セラミック、イオンチャージ物質、活性炭、砂、土、合成高分子物質、天然高分子物質、金属等が適用できる。分離機能部3は、分離機能を有する有形物(物質、若しくはイオン、塩、コロイド等)及び/又は無形物(電場、磁場等)若しくは両者の複合体より形成された部位である。
なお、半透膜とは、一部の物質は透過するが、一部の物質は透過しない膜を意味し、逆浸透膜、限界濾過膜等を含むものである。分離機能部3を透過する物質(交換剤)としては、例えば、水、培養室5内で発生するエタノールやメタン、活性酸素やオゾン等が想定されるが、これらに限定されない。また、本発明では、交換剤に微生物が含まれる場合もある。
【0051】
分離機能部3は、少なくとも一部が、強度保持の目的で、他の物質からなる分離機能部支持部で支持される場合がある。
【0052】
分離機能部3の例として、図34に示すように、複数の孔を備えたガラスからなる分離機能部支持部42によって、分離機能部3を保持することができる。更に、分離機能部3を、スポンジ状の物質からなる分離機能部保護体43で覆って保護することもできる。
【0053】
分離機能部3は、特性の異なる複数の分離機能部3からなる場合がある。図35は、分離機能部3が複数設けられる例を示す斜視図である。図35の例として、アルミ合金からなる分離機能部支持部42に、分離機能部3A,3Bとして、限界濾過膜と気体分離機能部が設けられる。または、図35の他の例として、アルミ合金からなる分離機能部支持部42に、分離機能部3A,3Bとして、親水性コンクリートと親水性セラミックが設けられる。
【0054】
分離機能部3は、少なくとも1つの交換室6と接続するが、場合によって、分離機能部3の一部が、外部に開放、もしくは装置の他の部位に接続することがある。図36は、分離機能部3の一部が、外部に開放した例を示す。図36では、限界拡散膜3Aが交換室6と接続し、ガス分離膜3Bが外部に開放して設けられている。
【0055】
分離機能部3は、物理的、化学的、もしくは生物化学的変化の過程において不要となった場合に、取り除かれる場合がある。また分離機能部3は、物理的、化学的、もしくは生物化学的手法を用いて分離機能部3の機能が無効化される場合がある。ここで、分離機能部3の機能が無効化されると、分離機能部3おける流通が抑制されるか、または流通の制限が解放されることとなる。
【0056】
図37は、分離機能部3が取り除かれる例を示し、図38は、物理的構成により分離機能部を閉じる例を示す。図37に示すように、分離機能部3が取り除かれると、培養室5と交換室6の間の流通が解放される。また、図38に示すように、開閉可能な絞り環44が分離機能部3に設けられることで、培養室5と交換室6の間の流通が抑制される。
【0057】
なお、本発明に適用される分離機能部3は、必ずしも膜の形態に限定されず、物質の移動が可能であればよいため、本明細書中では、上述の分離機能部3の機能を備えた部材をより一般的に分離部と称する場合がある。
【0058】
<交換室>
交換室6は、図39に示すように、分離機能部3を介して培養室5と隣接する室または槽である。交換室6は、浸透圧、加圧、減圧、イオン交換等の電気力、磁気力、拡散等の物理的、または化学的現象、若しくは微生物の運動等の生物現象を利用し、分離機能部3を介して、培養室5に格納された収容物との間で、物質(交換剤)の交換を行う。すなわち、交換室6と培養室5の各々に、圧、電圧または付与される磁束密度等が異なる調整剤を収容することで、交換室6と培養室5の間で、交換剤を移動させることができる。
【0059】
電圧を印加する際には、例えば、分離機能部3を介して培養室5と交換室6の両側に少なくとも1つの電極(アノード電極およびカソード電極)を設けて電圧を付与することで、培養室5と交換室6の間で電子またはイオンを交換できる。電子を交換させる際には、分離機能部3は導電性を有する例えば金属であることが好ましく、イオンを交換させる際には、イオンを交換可能な分離膜を用いることが好ましい。
【0060】
磁束密度を付与する際には、例えば、分離機能部3を介して培養室5と交換室6の両側に、磁界を発生させる電磁コイルを設けることで、培養室5と交換室6の間で金属を含む物質や生物(例えば、金属原子、金属イオン、または金属粒子等を含む細菌等の微生物)を交換できる。金属を含む微生物としては、例えば、菌体内にマグネタイトの微粒子を有する磁性細菌が挙げられる。金属を含む物質や生物を交換させる際には、例えば、始めに交換室6側の電磁コイルにより磁界を生じさせて交換室6内の金属を含む物質や生物を分離機能部3の近傍に引き寄せる。この後、交換室6側の電磁コイルの作動を停止し、培養室5内の電磁コイルを作動させることで、培養室5側に磁界を生じさせて、金属を含む物質や生物を分離機能部3を介して培養室5側に移動させることができる。この後、培養室5側の電磁コイルの作動を停止すると、金属を含む物質や生物が、培養室5内に拡散される。
【0061】
交換室6は、培養室5と一体的に構成されてもよく(図10参照)、また培養室5と別構造であってもよい(図11〜13参照)。
【0062】
交換室6は、図40(A)に示すように、複数設けられてもよい。または、交換室6が複数の小室45を有し、これらの小室45が組み合わされて、全体として1つの交換室6を構成してもよい。交換室6が複数設けられる場合には、互いに交通可能とすることができ、または、交通しないようにすることができる。互いに交通させる場合には、図40(B)に示すように、膜等46(半透膜、不透膜、全透膜等)が介在される場合がある。
【0063】
交換室6は、前述の蓋部2や培養室5と同様に、外部もしくは装置の他の部位と連通する連絡孔を有する場合がある(図9参照)。交換室6の内部には、交換剤(例えば、水)を含む材料(例えば、浸透圧調整剤)が内包される。交換室6には、液体、気体またはプラズマを含む流体や、流体ではないが流動可能な流動体(例えば、粒状体)等を内包することができる。なお、交換室6側から分離機能部3を吸引し、陰圧的に培養室5との間で内容物の一部を交換する場合、交換室6が一次的に真空状態(少なくとも、培養室5よりも減圧した状態)となる場合がある。すなわち、培養室5と交換室6の間に差圧を与えることで、交換剤が培養室5側から交換室6側へのみ移動するならば、交換室6には、必ずしも交換剤が設けられなくてもよい。
【0064】
また、交換室6の内部に、他の構造体を有する場合があり、更に前記構造体は分離機能を有する場合もあり得る。また、前述の図32(A)の例では、交換室6の内部に攪拌翼37の軸部38が内在されている。また、図41の例では、交換室6の内部に、微生物を通すことができる孔を有する小包体47が、少なくとも1つ内在される。小包体47の内部には、微生物を含む溶質が内在している。分離機能部3は、当該微生物が通ることができる孔を有しており、微生物も交換剤と言える。したがって、小包体47内の微生物は、交換室6から分離機能部3を通して、徐々に培養室5内に供給される。
【0065】
図42の例は、交換室6の内部に、気体分離機能を備えた気体分離膜からなる気体分離管48(第2気体分離部)が設けられている。交換室6には、交換室6内の気体を吸引する吸引管49と、吸引管49により吸引される気体が内部を流通する気体分離管48とが設けられる。また、交換室6には、気体分離管48の管壁を介して管内部の気体を吸引する交換室用気体排出管50が設けられる。したがって、交換室用気体排出管50により、気体分離管48を介して所定の気体(例えば、メタン等)を分離して収集し、残気を吸引管49にて吸引して排出できる。なお、第2気体分離部は、気体分離管48のような管形状に限定されず、例えば面形状等の他の形態で設けることも可能である。
【0066】
<交換剤分離方法>
本装置を用いて、逆浸透膜法、限界濾過法若しくは精密濾過法により、培養室5から例えば水分を除去することができる。図43は、培養室5側を加圧する場合を示す断面図、図44は、交換室6側を減圧する場合を示す断面図である。
【0067】
逆浸透膜法もしくは限界濾過法では、例えば水、イオン、活性化酸素やオゾン等を除去できる。精密濾過法は、逆浸透膜法や限界濾過法よりも大きな物質を除去するために用いられる。なお、例えば限界濾過膜法では、交換室6には高分子化合物溶液等の浸透圧調整剤を入れることになる。また、交換室6の方が浸透圧が低い場合、何らかの方法、例えば培養室5を加圧する、交換室6を減圧する等が必要になる。浸透圧調整剤は、例えば高濃度の電解質溶液、高濃度易水溶性物質等の液体、塩等の固体、吸水性固体物等を用いうる。
【0068】
また、分離機能部を構成する物質が電荷を帯びることで、電荷を帯びた物質若しくはイオンの通過を選択的に阻害することもできる。
【0069】
図43の例では、培養室5の内壁を摺動する摺動部51に固定された軸部52を押圧することで、培養室5内を加圧し、培養室5内の例えば水を交換室6へ移動させることができる。図44の例では、交換室6の内壁を摺動する摺動部53に固定された軸部54を引っ張ることで、交換室6内を減圧し、培養室5内の例えば水を交換室6へ移動させることができる。
【0070】
<第1,第2実施形態>
以下、本発明を適用した第1,第2実施形態について説明する。
【0071】
第1,第2実施形態に係る培養装置は、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または産業廃棄物質など、すなわち「有機物質」からのエタノール抽出を行うエタノール製造方法において使用される。エタノール製造方法では、上述の有機物質を原材料として用い、微生物学的処理サイクルの段階を設け、前記段階を適宜循環させつつ、その循環段階中にセルロース、へミセルロース、リグニン等を含む高分子有機化合物を分解しつつ適宜エタノールを抽出するとともに、最終物質を肥料としている。以下では、エタノール製造方法の工程に沿って説明を進めつつ、第1,第2実施形態に係る培養装置を説明する。
【0072】
エタノール製造方法は、図45に示すように、第1工程と、第2工程に大別される。第1工程は、有機物質を準備するである。第2工程は、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される一種以上を用いてエタノール発酵を行うことにより、前記有機物質からエタノールを抽出し、肥料前駆成分を得る段階(a)と、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、前記肥料前駆成分を微生物に分解させることにより、有機物質を得るとともに、場合によりエタノールを抽出しうる段階(b)と、微生物の同化作用によって無機物質から有機物質を得るとともに、場合によりエタノール抽出しうる段階(c)と、からなる群より選択されるいずれか2種以上の段階を1回以上有する工程である。
【0073】
なお、必要な場合には、上記のいずれか一以上の工程(または後述する段階)において、1回以上の加熱殺菌、酸もしくはアルカリ投与による菌増殖の阻止、または滅菌処理などを行ってもよい。また、有機物質が容積の大きな固形物を含む場合には、処理速度を大きくするために粉砕または細断するのが通常である。
【0074】
本製造方法は、所望により第3の工程をさらに設けてもよく、該工程によって、微生物を用いて、前記段階(a)で得られる前記肥料前駆成分から肥料を生成することも可能である。
【0075】
本発明に係る第1実施形態は、本製造方法の第1工程〜第3工程の全ての工程を1つの装置で実施可能なエタノール製造装置(培養装置)である。
【0076】
第2実施形態は、本製造方法の第3工程に用いられる堆肥製造装置(培養装置)であるが、第1実施形態と同様に、第1,第2工程に適用することもできる。
【0077】
なお、本明細書で挙げられる微生物の分類(門、目、属、種など)については、本願の出願時における分類に従って記載している。将来において、かかる微生物の分類が変更になった場合には、変更後の分類もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0078】
[第1工程]
本製造方法の第1工程(有機物質を準備する工程)は、有機物質の種類や組成によっては本工程における下記の操作の一部または全部を省略してもよい。すなわち、単に有機物質を後工程のために「用意」するだけであってもよい(以下、「未処理の有機物質」ともいう)。具体的には、有機化合物が比較的低分子である場合には、次工程の段階(b)にそのまま進んでもよい。
【0079】
一方、有機物質が高分子の有機化合物を含む場合には、かかる有機物質を「前処理」しておくことが必要となりうる。前記有機物質中の前記高分子の有機化合物の含有率は、有機化合物の種類によって様々であり、特に限定されることはない。
【0080】
前記高分子の有機化合物を含む有機物質として、以下に限定されることはないが、例えば植物、動物排泄物、生ゴミまたは鉱物などが挙げられる。前記植物の例として枯葉、木材、紙などが挙げられ、前記動物排泄物の例として鶏糞や馬糞などが挙げられる。なかでも、後述する微生物群が好適に利用(資化)できるという観点より、鶏糞などの動物排泄物が好ましい。具体的にいえば、前記有機物質が、好ましくはセルロースを構成する2分子のグルコースからなる二糖類の分子量より大きな高分子有機化合物、より好ましくはオリゴ糖の分子量より大きな高分子有機化合物を含む場合には、微生物及び/または二酸化炭素、酸溶液もしくは酸性塩溶液を用いてアンモニウムイオンを前記高分子有機化合物中に固定し、場合によってpHを調節した後、麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いて前記高分子有機化合物を分解することを含むのが好ましい。また、第1工程である前処理を行うことにより、例えば、有機物質が微生物によって汚染されているような場合であっても、腐敗を防止し、アンモニアや有機ガス等の状態で、エタノール生成に必要となる水素、酸素及び炭素が大気中へ放出することを防ぐこと、並びに、反応に必要な自由エネルギーを反応系中に保存することができる。
【0081】
このようにして、本工程は、第2の工程に必要な物質(元素やイオン等)、並びに自由エネルギーの確保及び第2工程に必要な環境条件を整えることを目的とする。以下、より具体的に、上記の好ましい前処理について詳細に説明する。
【0082】
1.腐敗菌の数を減少させる段階
植物及び動物の排泄物、生ゴミ、鉱物並びに食品(製品を含む)などの有機物質中に存在しうる腐敗菌が、後述する第2の工程における微生物に起因する反応を阻害しうる。これは、第2の工程におけるエタノール発酵やメタン発酵により得られるはずの有用物質(エタノール、メタン及び/または肥料前駆物質)が生成阻害を受けるため、好ましくない。さらに、該有害物質が現に、人体への悪影響のみならず、地球環境の汚染や破壊に繋がっていることは周知の事実である。そのため、第1の工程で腐敗菌数を減少させておくことは非常に有益であるといえる。
【0083】
腐敗菌の数を減少させるために、槽内の収容物に電圧を印加する殺菌法を利用することが、非常に効果的である。かかる殺菌法は2つに大別されるため、以下、順を追って説明する。
【0084】
第1に、電圧の印加に伴い、電流が収容物に流れ、電流を腐敗菌に通電させることにより、腐敗菌が感電を起こして死滅させることが可能となる。また、電流が収容物に流れるに従って、付随的に熱エネルギーが発生し、かかる熱エネルギーを利用して、腐敗菌を熱殺菌することもできる。このような電気エネルギーに起因した電気化学的殺菌(滅菌)及び/またはこれに付随して生じる熱エネルギーに起因した熱殺菌(滅菌)によって、収容物中に存在する腐敗菌が殺菌(滅菌)される。
【0085】
また、電流の通流に伴って放電現象が発生する。なかでも、気体放電が典型的な例である。気体放電を行うための装置については後述するが、一般には、アノードの電極及びカソードの電極のうち一以上を前記収容物中ではなく空中(収容物外)に存在させることとなりうる。気体放電(電子の発生)の種類としては、従来公知のものであれば特に制限されることはないが、例えば、火花放電、アーク放電、コロナ放電(高電圧直流電流を利用)やグロー放電などが挙げられる。また、高電圧直流電流を利用するコロナ放電の他に、高電圧交流電流を利用した放電もありうる。特に、高度に電離した気体(プラズマ)の発生に伴うプラズマの照射が、腐敗菌の効率的な殺菌(滅菌)の観点より好ましい。前記収容物は、有機物質を含む限り、固体状、半固体状、液体状のいずれであってもよい。有機物質に存在する腐敗菌を、電圧の印加によって効率的に死滅させる観点からいえば、前記収容物は液体状であることが好ましい。また、放電による殺菌(滅菌)処理(以下、単に「放電処理」ともいう)は、大気中で行われても水中で行われてもよい。このうち、放電処理が水中で行われる場合には、水中に存在するイオン量によって条件が異なってくる。放電処理が大気中、水中のいずれであっても好適に実行される観点からいえば、放電処理の処理条件として、印加電圧は1kV〜100億Vであることが好ましく、100kV〜10億Vであることがより好ましく、1万kV〜10億Vであることがより好ましい。また、処理時間は特に制限されることはないが、好ましくは1回の放電当たり10−4秒程度である。このような放電処理を必要に応じて複数回繰り返してもよい。なお、処理温度は特に制限されることはない。
【0086】
前記培養室内の収容物に電圧を印加することによる電気化学的殺菌は、電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極が共に前記収容物外に存在するか、もしくは前記収容物中に存在するか、または電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極のうち一以上が前記収容物中に存在すればよい。かような場合、所望の殺菌を行うことが可能となる。このうち、アノードの電極及びカソードの電極が共に前記収容物外に存在するか、一以上の電極のみが前記収容物中に存在する場合、通電処理(気体放電処理)は「断続的」に行われうる。なお、「アノードの電極及びカソードの電極のうち一以上」とは、アノードの電極及びカソードの電極が、それぞれ1本ずつ存在している形態、いずれか一方が1本存在し、他方が2本以上存在する形態、あるいは、共に2本以上存在する形態における、1本以上の電極を意味する。そして、アノードの電極及び/またはカソードの電極が2本以上存在する場合には、電極ごと(アノード、カソードの別を問わない)に独立して、収容物中に存在していても空中(収容物外)に存在していてもよい。
【0087】
気体放電処理に関するいくつかの形態のうち、アノードの電極及びカソードの電極のうち一以上の電極を収容物中に存在させる場合であって、特に前記収容物が液体状の場合には、かかる電極が溶液に直接浸されることとなって電極に物質が付着しうる。そこで、好ましくは、一方の電極のみが前記収容物中に存在することによる殺菌を行うとよい。例えば、カソードの電極のみを収容物中に存在させる形態においては、アノードの電極から流れる電流に起因して発生する熱、若しくは電子自体の運動エネルギーによる収容物の攪拌が期待される。すなわち、収容物を攪拌しつつ電流を収容物に通流させることは、腐敗菌の効率的な殺菌(滅菌)に繋がりうる。さらに、アノードの電極のみを収容物中に存在させる形態においては、電流に起因して発生する熱、若しくは電子自体の運動エネルギーによる収容物の攪拌効果に加えて、空中(収容物外)に存在するカソードから放出された電子が、収容物中に存在するアノードへと移動する際、収容物表面(界面)において非常に大きな衝撃波(後述)の発生が期待できる。かような大きな衝撃波の取扱いに対し、安全上適した装置などを使用することによって、腐敗菌を非常に効果的に殺菌(滅菌)させることが可能となりうる。安全面等を重視するならば、アノードの電極のみが、前記収容物中に存在することによる殺菌を行うことがより好ましい。アノードの電極に付着しうるイオンは、水酸基、硫酸イオンや硝酸イオンなどであるため、これらが電極に付着しても導電性に及ぼす影響は、カソードの電極のみの場合と比較して、一般に小さいためである。
【0088】
図46は、第1実施形態に係る培養装置90を示す斜視図である。本培養装置90は、特に、嫌気性条件下でのエタノール発酵に適しているが、好気性条件化での発酵等にも適用できる。本培養装置90は、内部に空間が形成された本体91と、蓋部92を備えている。本体91は、上端に開口部が形成された円柱形状を有し、この開口部に蓋部92が開閉自在に設けられている。本体91の内部には、内部空間を上下に分割する分離構造部93(分離部)および加減圧構造体94(移動力発生部、分離部)が設けられる。本培養装置90では、分離構造部93と加減圧構造体94の間の空間に、培養室95が設けられる。また、分離構造部93の下方には、培養室95と水を交換して培養室95内の浸透圧を調整するための浸透圧調整室96(交換室)が設けられ、加減圧構造体94の上方の空間には、培養室95にて発生するエタノールを回収するための気体回収室97(交換室)が形成される。
【0089】
分離構造部93は、図49に示すように、本体91に固定された分離機能部支持部99と、分離機能部支持部99により支持される複数の分離機能部100と、分離機能部100の培養室95側を覆って分離機能部100を保護する上側分離機能部保護体101を有している。上側分離機能部保護体101は、耐圧性のスポンジ状物質からなり、培養室95内の内容物から分離機能部100を保護している。
【0090】
本体91の浸透圧調整室96には、浸透圧調整剤(交換剤)としての液体を注入する調整剤注入管102と、浸透圧調整剤を排出する調整剤排出管103が連結されている。浸透圧調整剤は、例えば培養室95にて用いられる液体培地の濃度が異なるものが適用できるが、必ずしも液体培地に限定されず、例えば塩等の濃度の異なる物質でもよい。なお、調整剤の注入と排出の両機能を備えた調整剤注排出管が連結されてもよい。
【0091】
本体91の培養室95には、脱酸素気体を注入する培養室用気体注入管104と、微生物を投入するための微生物投入管105が連結されている。培養室用気体注入管104および微生物投入管105には、逆流防止弁が設けられる。微生物投入管105からは、発酵に必要な微生物が投与可能であり、微生物の不足等の発酵等の進行を妨げる要因が生じた場合に、繰り返し微生物を投与することができる。
【0092】
加減圧構造体94は、図48に示すように、本体91の内面に沿って摺動可能な摺動部106と、本体91の外部から蓋部92を貫通し、摺動部106に固定された軸部107とを有している。摺動部106は、気体分離機能部108と、気体分離機能部108を支持する摺動分離機能部支持部109と、気体分離機能部108を保護する下側分離機能部保護体110を有している。なお、気体分離機能部108は、非多孔質膜でもありえる。非多孔質膜は、気体を分離する際に気体が孔を通過せず、気体が溶解、拡散、脱溶解の過程で膜を通過するものである。
【0093】
下側分離機能部保護体110は、耐圧性のスポンジ状物質からなり、培養室95内の内容物から気体分離機能部108を保護している。なお、本体91の内面と摺動する摺動部106の外周面、および軸部107と摺動する蓋部92の貫通孔には、密封を確保するために、Oリング等のシール部材が設けられることが好ましい。
【0094】
軸部107は、本体91の外側に位置する一端側から内部を貫通するエタノール排出流路111が形成され、エタノール排出流路111は、気体回収室97に位置する軸部107の外周面で開口する複数の回収孔112と連通する。
【0095】
また、蓋部92には、外部から脱酸素気体を注入する脱酸素気体注入管113が連結されている。この気体注入管113から脱酸素気体を注入すると、気体回収室97内のエタノールを含む気体が、回収孔112、エタノール排出流路111を通って、外部のエタノール分離装置へ排出される。なお、本装置を好気性条件下で使用することもでき、この際には、気体注入管113から脱酸素気体ではなく、酸素を含む気体を注入することもできる。また、エタノール排出流路111を、エタノール以外の気体の排出に使用することもできる。
【0096】
本体91は、図47に示すように、内面を構成する内筒114が熱伝導性に優れたアルミニウム合金等製であり、この内筒114の外側に、温水等の流体を流通させることが可能な熱交換用チューブ115が螺旋状に巻回されている。熱交換用チューブ115の一端は、温水注入口116であり、他端は、温水排出口117である。熱交換用チューブ115の外側には、熱伝導性に劣る樹脂やゴム等からなる保温部118が形成され、保温部118の外側は、合金等からなる外壁119に覆われている。なお、内筒114の更に内側には、後述する電極からの電流から絶縁するために、樹脂等の絶縁材が被覆されてもよい。
【0097】
また、本体91には、必要に応じて培養室95内の腐敗菌を殺菌(滅菌)するためのアノード電極98Aおよびカソード電極98Bが設けられる。電極98は、培養室95内に通電、若しくは放電可能であれば、培養室95の内外を問わず取り付け位置は限定されないが、例えば、電極98の一方が培養室95に設けられ、電極98の他方が浸透圧調整室96に設けられる。このように取り付ける際には、分離機能部100も導電性を有することが好ましい。本実施形態では、アノードの電極98A及びカソードの電極98Bが共に収容物中に存在する(培養室95および浸透圧調整室96内の溶液に直接浸っている)が、アノードの電極98A及びカソードの電極98Bが共に培養室95に存在してもよい。培養室95および浸透圧調整室96は、安全性の観点より、少なくともその最内層が樹脂やコンクリート等からなる絶縁性材料で構成されていることが好ましい。蓋部92も上記と同様、安全性の観点より、少なくともその最内層がコンクリート等からなる絶縁性材料で構成されていることが好ましい。そして、放電環境を作り出すために、カソード電極98Bおよびアノード電極98Aの間にコンデンサー61および電源63がスイッチ62を介して接続される。したがって、スイッチ62が入ると、カソード電極98Bより電子がアノード電極98Aの方向へ向かって放電される。このようにして作り出された放電環境によって、培養室95及び/または浸透圧調整室96内に投入された有機物質に存在する腐敗菌は死滅する一方、有機物質自体への損傷を抑制できる。なお、安全のため、培養室95または浸透圧調整室96にアース64を設置する。なお、放電処理を「持続的」に行う場合には、コンデンサー61は特に必要でないため、なくてもよい。
【0098】
一方、電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極のうち、アノードの電極のみが前記収容物中に存在し、カソードの電極は大気中(空中)に存在してもよく、または、両方が大気中(空中)に存在してもよい。本実施形態では、培養室95は収容物で満たされているが、培養室95の上部に収容物で満たされない部分を設け、ここにカソードの電極やアノードの電極を設けたり、または気体回収室97にカソードの電極やアノードの電極を設けることで実現できる。
【0099】
本工程において第1実施形態に係る培養装置90を使用する際には、まず、培養室95内に有機物質を収容する。次に、本体91に蓋部92および加減圧構造体94を取りつけて、培養室95および気体回収室97を密封する。この後、調整剤注入管102から浸透圧調整剤を浸透圧調整室96(交換室)に注入し、調整剤排出管103から排出して、浸透圧調整剤を流通させる。または、調整剤注入管102から注入した浸透圧調整剤を、調整剤排出管103から排出せずに浸透圧調整室96に一定時間保持してもよい。更に、軸部107をコンプレッサー等の駆動源により加圧する。この際の加圧力は、条件に応じて任意に設定することが好ましい。これにより、培養室95の収容物は、浸透圧調整室96内の浸透圧調整剤との間の圧力差に応じて、分離機能部100を介して水分が移動し、最適な含有水分量が保たれる。
【0100】
この後、スイッチ62をオンにすることにより電源63が入り、カソード電極98Bより電子がアノード電極98Aの方向へ向かって放電される。このようにして作り出された放電環境によって、培養室95内に投入された有機物質に存在する腐敗菌は死滅する一方、有機物質自体への損傷を抑制できる。
【0101】
さらに、培養装置90により、有機物質が容積の大きな固形物(一般に、高分子有機化合物を主成分とする塊)を含む場合には、処理速度を大きくするために破砕(粉砕)または細断することが好ましいが、かかる培養装置90により前記固形物を破砕できる。具体的には、前記槽内の収容物に電圧を印加することによる電気化学的殺菌において、印加された電圧により発生する衝撃波が前記有機物質に存在する固形物を破砕するため、該有機物質の処理速度を大きくすることができる。これにより、有機物質の均一化処理を腐敗菌数の減少処理と併せて行うことができる。
【0102】
このような、有機物質中の固形物の破砕による均一化は、上記した有機物質が容積の大きな固形物を含む場合に行うことが好ましい。一方で、前記固形物が大量に含まれる場合であって、かつ、前記固形物が主に低分子物質からなる場合には、原料の均一化をあえて行わなくても、例えば上記の滅菌処理により腐敗菌の作用を効果的に抑制することができる。前記均一化の方法は特に制限されることはないが、例えば、ホモジナイザー等が一般に使用可能である。好ましくは、腐敗菌の数の減少と固形物の破砕による均一化とを同時に達成できるという観点より、上記した放電現象に伴って発生する衝撃波を用いる方法である。なお、上記の図46で示した装置は、かかる衝撃波が相当大きなものであっても安全上問題のないといえるものである。
【0103】
第2に、電圧の印加に伴って放出された電子の運動エネルギーを直接的または間接的に用いた殺菌が挙げられる。「直接的」に用いる場合とは、電子自体がその運動エネルギーにより腐敗菌と衝突し、腐敗菌が死滅する場合を意味する。なお、「電子自体」とは、前記放出された電子そのものと、かかる電子が後述するように収容物中のイオンや分子等と衝突することにより該イオンや分子等から2次的(3次的以降も含む)に放出される電子とを両方含む。一方、「間接的」に用いる場合とは、電子がその運動エネルギーにより、イオン(錯イオンや金属イオン等)及び/または分子(水分子等)に衝突し、衝突されたイオン及び/または分子が腐敗菌と衝突する結果、腐敗菌が死滅する場合を意味する。なかでも、水分子など、水素結合や分子間力などによっていわゆる「重合」形態をとるものに対し、放出された電子が衝突した場合、かかる「重合」形態の崩壊とともに、大きな衝撃波が生じうる。上述したように、かような大きな衝撃波を利用することによって、腐敗菌を非常に効果的に殺菌(滅菌)させることが可能となりうる。なお、本「第2の」殺菌は、上記した「第1の」殺菌とともに生じることもありうる。また、本「第2の」殺菌は、上記の図46に示された装置においても実施可能である。
【0104】
なお、好気性条件下でのエタノール発酵を行う場合には、上記装置に別途、酸素などの気体を供給するための気体注入口を設けることが好ましい。図50は、好気性条件下で使用するための、第1実施形態に係る培養装置の変形例であり、第1実施形態に掛かる装置90と同様に、第1工程〜第3工程までの全ての工程を実施できるものである。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0105】
第1実施形態の変形例である培養装置121は、図50に示すように、培養室95内にモータ122等により駆動される攪拌翼123が設けられており、外部から供給される電流によって駆動される。攪拌翼123は、図51に示すように、分離構造部93に設けられる凹部124に載置されて、分離機能部支持部99に固定される。
【0106】
本培養装置121では、培養室95に連結される培養室用気体注入管104から、酸素を含む気体が注入される。また、気体回収室97に連結される気体注入管113からも、酸素を含む気体が注入される。
【0107】
攪拌翼123は、回転することで混合溶液120を切り返し、混合溶液120の全体に酸素を行き渡らせることができる。また、軸部107をコンプレッサー等の駆動源により加減圧することで、混合溶液120内の空気等有酸素ガス含有量を調整することもできる。
【0108】
本培養装置121によっても、前述の培養装置90と同様に、アノード電極98A及びカソード電極98Bに電圧を付与することで、混合溶液の水分含有率を調整しつつ、培養室95内の腐敗菌を滅菌できる。
【0109】
2.アンモニウムイオンの有機物質中への固定化、及び腐敗菌の不活性化
一般に、有機物質は微生物学的に汚染されていることが多いため、腐敗によってアンモニアガスや有機ガス等が発生し易い環境にある。本過程は、アンモニウムイオンを有機物質中に固定すると共に、腐敗菌を不活性化させることによって腐敗菌による有機ガスの発生を防止することを目的とする。なお、以下の(1)微生物学的方法及び(2)化学的方法は、いずれか一方のみにより前処理を施してもよいし、両方により前処理を施してもよい。
【0110】
(1)微生物学的方法
微生物を用いてアンモニウムイオンを前記高分子有機化合物中に固定することができる。前記微生物は、窒素同化作用を有する光合成細菌であることが好ましい。なかでも、アンモニア及び尿酸を同化可能な菌株であることがより好ましい。このような光合成細菌としては、特に限定されることはないが、例えば、藍色細菌、紅色光合成細菌、紅色硫黄細菌、緑色硫黄細菌、糸状光合成細菌(緑色非硫黄細菌)及びヘリオバクテリアからなる群より選択される1種以上の細菌が挙げられる。その際、有機物質における水分含有率などの条件に応じて、1種単独または2種以上を併用することができる。上記した菌の培養条件については、藍色細菌など好気性細菌の場合には好気性条件、及びその他の嫌気性細菌の場合には嫌気性条件とする必要がある。具体的な好気性条件または嫌気性条件、すなわち温度やpHなどについては、使用する菌の種類によって様々であると共に、当業者であれば適宜、適切な条件の設定が可能であるため、ここでは特に制限されることはない。
【0111】
光合成細菌に光合成を好適に行わせるため、非遮光容器または建造物中に有機物質を収納し、前記光合成細菌を前記有機物質中に投入してもよい。藍色細菌など好気性の光合成細菌を用いる場合には、有機物質中に必要量の酸素(空気を含む酸素含有気体または純酸素)が供給可能となるように非遮光容器または建造物を利用し、必要により攪拌装置を併設してもよい。微生物学的方法も、上述の培養装置90,121にて実施可能である。
【0112】
培養装置90または培養装置121を用いる際には、微生物投入管105から必要な微生物を投与し、培養室用気体注入管104から所望により酸素を含む気体を注入することで、アンモニア固定を行わせることができる。また、培養装置121を用いる際には、必要に応じて攪拌翼123を回転させることができる。
【0113】
さらに、アンモニア固定(アンモニウムイオンの有機物質中への固定)後、腐敗菌の不活性化、及び後述の「2.」を実行する前に、あらかじめ酸溶液または酸性塩溶液を投入しておき、有機物質(前処理後の有機物質)を弱酸性に調整しておくことが好ましい。前記酸溶液または酸性塩溶液に用いられる酸または酸性塩の具体例については、後述の「(2)」で挙げるものと同様である。
【0114】
さらに、光合成細菌の代わりに、例えば、特開2002−335952号公報に開示されている酵母が参照により本願に引用されうる。また、一般に、光合成細菌は、酸性環境を好む菌が多いため、酸溶液または水中で酸性塩を投入し、前処理後の有機物質を弱酸性に保った後、光合成細菌を投入することもできる。ただし、例えば、特開2005−168508号公報に開示されているような、塩基性下で機能を発揮する光合成細菌を使用することも場合によってはありうることである。かかる場合に、原材料用の細菌を弱酸性下に置くことは不利となりうるので、あらかじめ塩基性溶液または塩基性塩溶液を投入しておき、有機物質(前処理後の有機物質)を弱塩基性に調整しておくとよい。
【0115】
(2)化学的方法
酸性や塩基性の溶液などを用いてアンモニウムイオンを前記高分子有機化合物中に固定できる。前記有機物質中でのアンモニアは、アンモニア、アンモニウムイオンまたは錯イオン、あるいはこれらの塩もしくは化合物の形態で存在している。これらのアンモニアに対して、二酸化炭素、酸もしくは酸性塩の化合物、塩基性もしくは塩基性塩の化合物、またはそれらのイオン化合物を前記有機物質に投入することによって、アンモニアの気化蒸発を防止することができる。このような観点より、アンモニウム塩とアンモニウムイオンとの間で化学平衡状態を作り出すことのできる化合物またはそのイオンを使用することが好ましい。具体的には、炭酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸、亜硫酸、亜硝酸、酸性及び塩基性アミノ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カリウムまたはリン酸カリウムなどが挙げられる。なかでも固体状の炭酸水素カルシウムを用いることがより好ましい。前記酸性塩化合物またはそのイオンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、投入後の有機物質(前処理後の有機物質)は複雑な緩衝溶液系に含まれることとなる。前記緩衝溶液系を概説すると、内部に存在する陽イオン及び/または陰イオンが主体となり、さらにそれらがイオン結合した塩もしくは錯イオン、または、錯イオンとイオンもしくは錯イオンとが結合した塩よりなる。
【0116】
前記陽イオンとして、以下に限定されることはないが、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、水素イオンもしくはカルシウムイオン等が挙げられる。一方、前記陰イオンとして、以下に限定されることはないが、例えば塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンもしくは炭酸イオン等が挙げられる。
【0117】
本化学的方法も、上述の培養装置90,121にて実施可能である。
【0118】
培養装置90または培養装置121を用いる際には、かかる装置の開口部から、または微生物投入管105や培養室用気体注入管104から、上述の炭酸水素カルシウムなどの固体状成分及び水や、物質若しくはイオンを含む液体、若しくは塩素ガス等の気体などを投入し、有機物質及び固体状成分の混合溶液とする。また、培養装置121を用いる際には、必要に応じて攪拌翼123を回転させて攪拌を行うことができる。混合溶液の調製手段としては、特に制限されることはないが、酸溶液の生成過程で発熱しうるため、0℃を越えて14℃程度まで(好ましくは0℃を越えて10℃程度まで)の水などをあらかじめ投入しておき、攪拌しながら固体状成分を少しずつ投入することが好ましい。また、温度を確認しながら、固体状成分と水とを同時に投入することも好ましい。固体状成分の使用割合は、腐敗を効果的に防止する観点より、混合溶液の全質量に対して、20〜30質量%であることが好ましい。また、有機物質の使用割合は、特に限定されることはないが、混合溶液の全質量に対して、50〜80質量%であることが好ましく、55〜65質量%であることがより好ましい。
【0119】
この後、有機物質及び酸溶液からなる混合溶液を静置させることにより、アンモニウムイオンが有機物質中に固定される。その際に発生するガスは、排出流路111を通じて排出される。そのため、アンモニア固定を効率良く行わせることができるとともに、残渣が効果的に排除して、有機物質及び新鮮な酸溶液を逐次的に供給できるという利点がある。前記酸溶液中の液体状成分の使用割合は、特に限定されない。
【0120】
3.麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いた、前記高分子有機化合物の分解
本明細書における「麹菌」とは、アスペルギウス属、モナスカス属(紅麹菌など)、リゾープス属(テンペ等)、ノイロスポア属(オンジョム等)、及び麦芽を意味する。麹菌を上記した前処理後の有機物質に直接加えてもよいし、または麹菌を繁殖させた、主に有機物からなる物質を前記前処理後の有機物質に加えてもよい。後者の場合、麹菌は生存していても生存していなくてもよい。さらに、麹菌より抽出した麹菌由来の酵素を使用してもよい。
【0121】
場合によっては、麹菌に必要な環境を整えてもよい。その際、例えば、水分含有量の調節を目的として、前処理後の有機物質に水分含有率の低い有機物質、例えばバーク材や落葉などを任意に加えてもよい。このように、麹菌を用いて、セルロース、へミセルロース、リグニン、澱粉及び蛋白質などの高分子有機化合物を低分子の糖類などに分解させた後、後述の第2工程に進むことができる。麹菌は、培養装置90または培養装置121に、微生物投入管105から投入される。
【0122】
[第2工程]
第2工程は、様々な態様がありうる。
【0123】
本工程は、段階(a)と段階(b)と段階(c)とからなる群より選択されるいずれか2種以上の段階を1回以上有し、前記選択された段階のうち任意の2種の段階を1回以上反復して行う。このような任意の2種の段階を1回以上反復して行う過程を、本明細書において「サイクル」と称することもある。
【0124】
前記サイクルとしては、いくつかの種類が挙げられる。すなわち、前記段階(a)及び前記段階(b)からなるサイクル経路(以下、「第1のサイクル」とも称する)、前記段階(a)及び前記段階(c)からなるサイクル経路(以下、「第2のサイクル」とも称する)、並びに前記段階(b)及び前記段階(c)からなるサイクル経路である(以下、「第3のサイクル」とも称する)。
【0125】
なかでも、前記段階(a)及び前記段階(b)を1回以上反復して行うことが好ましい。その際、所望により、前記段階(a)及び前記段階(c)、並びに/または前記段階(b)及び前記段階(c)を1回以上反復して行ってもよい。より好ましくは、前記段階(a)及び前記段階(b)を1回以上反復して行い、且つ前記段階(a)及び前記段階(c)を1回以上反復して行う。また、前記段階(a)及び前記段階(b)を1回以上反復して行い、且つ前記段階(b)及び前記段階(c)を1回以上反復して行うこともより好ましい。特に好ましくは、前記段階(a)及び前記段階(b)、前記段階(a)及び前記段階(c)、且つ前記段階(b)及び前記段階(c)を1回以上反復して行うことである。これらのサイクルは、互いに独立的に機能してもよいし、複数のサイクルが従属的に(同時に)機能してもよい。特に、上記サイクルが2種以上存在するような第2工程の場合には、効率化の観点より、これらのサイクルが従属的に機能することが好ましい。なお、サイクル経路に属さない段階については、1回終了型の「直線状」経路でありうる。
【0126】
なお、上記の各段階に用いられる微生物は、サイクルの初発にのみ投入されてもよく、サイクルの継続中、すなわち中途の過程でさらに投入されてもよい。
【0127】
以下、上記した3種類のサイクルについて、構成する段階を説明しつつ詳細に説明する。
【0128】
<第1のサイクル>
本サイクルは、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される一種以上を用いてエタノール発酵を行うことにより、前記有機物質からエタノールを抽出し、肥料前駆成分を得る段階(a)と、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、前記肥料前駆成分を微生物に分解させることにより、有機物質を得るとともに、場合によりエタノールを抽出しうる段階(b)と、を反復して行う段階である。
【0129】
本サイクルは、本発明の生成方法において中心的な部分を構成しうる。概略についていえば、上記段階(a)と段階(b)とからなる環状の反応経路であって、前記反応経路を用いて微生物学的なエタノール抽出処理が行われる。なお、エタノールの抽出に伴い、微生物による異化反応は、より段階(b)側にシフトすることとなりうるが、段階(b)の処理中にエタノール抽出を行うこともありうる。さらに、エタノール抽出は、段階(b)終了後で段階(a)開始前もありうる。また、本段階は通常、段階(a)から開始されるが、場合によっては段階(b)から開始してもよい。さらに、後述のように、段階(a)及び段階(b)は共に、好気性条件及び嫌気性条件のいずれのパターンも採りうるため、計4パターンが存在しうる。以下、段階(a)及び段階(b)について詳細に説明する。
【0130】
1.段階(a)
段階(a)を実行するための装置として、前述の培養装置90が適用できる。当該装置中で、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される一種以上を投入し、適宜必要により攪拌を加えながら、エタノール発酵を行わせることにより、有機物質(未処理及び/または前処理後)からエタノールを抽出する。段階(a)において用いられる真菌は、エタノール発酵を行うことのできる菌であれば特に制限されることはないが、酵母及びRhizopus oryzaeよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。酵母の属としては、エタノール発酵を効率的に行えるという点より、Saccharomyces属、Candida属、Zygosaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Kluyveromyces属、Pastoris属、Saccharomycopsi属、Pastoris属、Pachysolen属などが挙げられる。より具体的には、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、Saccharomyces exiguous、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Zygosaccharomyces rouxii、Schizosaccharomyces japonicus、Schizosaccharomyces optosporus、Schizosaccharomyces pombe、Pastoris Pichia、Candida albicansが好ましい。なお、アルコール生成能を有する酵母は、一般には嫌気性菌(通性嫌気性菌、偏性嫌気性菌)である。また、へテロ型乳酸菌としては、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus.reuteri)(好気性菌)、及びラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus.fermentum)(通性嫌気性菌)等が挙げられ、なかでもラクトバチルス・ロイテリが好ましい。また、糸状菌であるRhizopus oryzaeは、好気性菌である。具体的な好気性条件または嫌気性条件については、菌ごとに様々であり、当業者であれば適宜最適条件(温度やpHなど)を設定可能であるため、ここでは説明を省略する。
【0131】
本工程において第1実施形態に係る培養装置90,121を使用する際には、培養室95内には既に有機物質(未処理及び/または前処理後)が収容されているため、ここに微生物投入管105からアルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される一種以上を投入して、混合溶液120とする。
【0132】
次に、調整剤注入管102から浸透圧調整剤を浸透圧調整室96(交換室)に注入し、調整剤排出管103から排出して、浸透圧調整剤を流通させる。または、調整剤注入管102から注入した浸透圧調整剤を、調整剤排出管103から排出せずに浸透圧調整室96に一定時間保持してもよい。更に、軸部107をコンプレッサー等の駆動源により加圧する。この際の加圧力は、条件に応じて任意に設定することが好ましい。これにより、混合溶液120は、浸透圧調整室96内の浸透圧調整剤との間の圧力差に応じて、分離機能部100を介して水分が移動し、発酵等に最適な含有水分量が保たれる。また、熱交換用チューブ115に温水を流通させることで、培養室95内を最適な温度に保持できる。また、必要に応じて、微生物注入管105(微生物注入口)から微生物を投与する。
【0133】
発酵等が進行すると、混合溶液120内にエタノールが発生する。このエタノールは、摺動部106に設けられる気体分離機能部108を介して気体回収室97に移動する。このとき、熱交換用チューブ115に概ね摂氏90度程度の温水を注入し、培養室内のエタノールを沸騰若しくは共沸させ、エタノールを気化させて抽出しても良い。気体回収室97に移動したエタノールは、気体注入管113から注入される脱酸素気体とともに、回収孔112、エタノール排出流路111を通って、外部のエタノール分離装置へ排出される。
【0134】
本培養装置90,121における工程が終了すると、後述する第3工程に移行する。
【0135】
本段階中で混合溶液120に含まれる有機化合物のうち、低分子化合物は、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される一種以上の微生物の栄養要求に起因してエタノールに変換する結果、減少する。かかる低分子化合物として、単糖類、二糖類、ペプチド、アミノ酸などが挙げられる。
【0136】
その結果、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される一種以上に利用(資化)されずに残る残渣(前記有機物質の一部)については、段階(b)において微生物により分解されることとなる。生成されたエタノールは、段階(a)における蒸発物を回収するか、段階(a)の一回終了後に分留するか、または段階(b)中に蒸発した物を回収する。前記分留については、図46に示すように、気体状のエタノールをエタノール排出流路111を通じてエタノール分留を行う経路と、嫌気培養装置中の残渣を、一端別の分留槽に貯蔵し、空気、水蒸気、窒素もしくはアルゴン等の不活性ガス、あるいは二酸化炭素などの気体を投入した後にエタノール分留を行う経路とがありうる。かかる気体は、エタノールと反応せず、エタノールと親和性がよいため好適であり、さらに二酸化炭素の場合には原料としての菌にとって有利であるため好ましい。
【0137】
なお、段階(b)に移行する前段階として、必要な場合には、例えば、納豆菌を用いる場合、塩基性化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)または塩基性塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)を投与し有機物質(未処理及び/または前処理後)のpHを塩基性としておくことが好ましい。工程上、段階(a)から段階(b)へ移行する場合に、段階(b)における好ましいpHの範囲内にあらかじめ調節しておくためである。一方、酸性下で活性を有する枯草菌を用いる場合には、上記のような前処理は不要となりうる。pHとしては、用いる菌によって異なるため、特に限定されない。なお、移送方法については、単に配管やポンプを介した移送であってもよいし、一旦別の装置に移しておいてから段階(b)を行う装置へと移送してもよい。このうち、一旦別の装置に移しておく手段は、かかる装置においてpHや温度などの調節を行えるという点で好ましい。特に、段階(a)と段階(b)との間で、好気性条件及び嫌気性条件の「切り替え」を行うことを必須とするような場合に、上記の一旦別の装置に移しておく手段は好適なものとなりうる。後述するその他のサイクル間での移送手段についても基本的には同様である。一方で、上述の培養装置90,121を用いて、移送をせずに段階(a)及び段階(b)を同一の装置内で実施することがより好ましい。その際、場合によっては上記の「切り替え」操作などを行うことにより条件を適宜変えてもよい。培養装置90,121の培養室用気体注入管104から注入される気体を変更することで、発酵過程の一部を嫌気性条件下で行い、一部を好気性条件下で行うこともできる。
【0138】
また、段階(a)により、エタノール以外に、無機物質、及び異化されなかった(異化反応により分解されなかった)有機物質も得られる。前記無機物質は、アンモニア、窒素化合物、炭素化合物(二酸化炭素など)、リン酸、硫化物、硫化水素、無機酸、無機アルカリ及び無機塩(硫酸塩、亜硫酸塩など)よりなる群から選択される1種以上でありうる。上記した無機物質のほとんどは、外界に排出されると地球環境破壊が進行することが一般に知られており、深刻な問題となっている。しかし、本方法では、このような無機物質を後述する段階(c)において微生物に同化させることにより、外界に放出することなく、かつ、エタノールや後述の肥料を一層大量に得ることができる。かかる点において、本方法は、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または産業廃棄物質などを出発物質として、二酸化炭素や硫化水素などの大気中への排出を防ぎつつ、エタノールを高い収率で生成することができる点で、地球環境の保護などに大いに貢献できるのである。
【0139】
一方、本方法では、従来残渣として廃棄されていたような有機物質を、微生物を用いて肥料にすることもできる。すなわち、上記した異化されなかった(異化反応により分解されなかった)有機物質は、炭水化物(セルロース、ヘミセルロース、リグニン等)、脂質、グリセリン、高級アルコール、脂肪酸、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質等が挙げられるが、これらの有機物質は肥料前駆成分となりうる。肥料の生成については、以下の段階(b)において詳述する。
【0140】
なお、段階(a)と段階(b)とがサイクルとして反復する場合、本段階(a)中に段階(b)で投入された微生物が生きて存在する場合がある。かかる場合には、本段階(a)において、後述の段階(b)で本来行われうる分解反応(異化)が起こりうる。
【0141】
2.段階(b)
段階(b)においても、上記培養装置90,121を適用できる。この際、段階(a)に使用した装置をそのまま使用する(段落(a)および段階(b)を同一の装置で行う)か、または異なる他の装置を用いてもよい。好気性条件もしくは嫌気性条件の装置中で、前記段階(a)で用いられた微生物によって資化されなかった残渣をもとに、段階(a)から段階(b)へと移送されてきた生きた酵母によってエタノールが抽出されうる。一方、段階(a)から移動してきた抽出液中の酵母がほぼ死滅しているような場合には、段階(b)でのエタノール抽出はほとんど行われない。なお、本発明における前記残渣は、図45で示したように、段階(b)によって分解される場合と、肥料前駆成分として前記成分から肥料が生成される場合とがある。ここで、前記残渣とは、前記有機物質(前処理後の有機物質)の構成成分の一部に相当する。前記有機物質としては、使用する菌種や環境条件によっても様々であるが、上述の通り、炭水化物(セルロース、ヘミセルロース、リグニン等)、脂質、グリセリン、高級アルコール、脂肪酸、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質等が挙げられ、主にセルロース、へミセルロース及びリグニンが挙げられる。また、段階(b)に使用可能な微生物は、好気性菌の中では、偏性好気性菌もしくはラクトバチルス属が好ましい。より具体的には、好気性菌の中で、特にセルロースを分解する微生物として、枯草菌(Bacillus subtilis)、納豆菌(枯草菌の亜種)、ペニシリウム属、グオクラディウム属または木材腐朽菌(褐色腐朽菌、白色腐朽菌や軟腐菌)が好ましい。また、好気性菌の中で、特にリグニンを分解する微生物として、ケトミウム属が好ましい。さらに好ましくはバチルス属であり、特に好ましくは、枯草菌または納豆菌であり、最も好ましくは納豆菌である。一方、嫌気性菌の中で、特にセルロースを分解する微生物として、Clostridium thermocellum、Clostridium cellulovorans、Clostridium josui、Clostridium cellulolyticum、Acetivibrio cellulolyticus、Bacteroices cellulosolvens、Rumonococcus flavefaciensまたはClostridium acetobutylicum、あるいはセルロース分解能を有するツボカビ門(Chitridiomycota)またはTrichoderma reeseiが好ましい。より好ましくは、Clostridium thermocellum、Clostridium cellulovorans、Clostridium josui、Clostridium cellulolyticum、Acetivibrio cellulolyticus、Bacteroices cellulosolvensまたはRumonococcus flavefaciens、あるいはセルロース分解能を有するツボカビ門(Chitridiomycota)である。また、嫌気性菌の中でリグニン分解能を有する微生物(細菌、真菌)もまた、好適に使用できうる。
【0142】
なお、具体的な好気性条件もしくは嫌気性条件については、使用する微生物によって様々であり、当業者であれば適宜最適条件(温度やpHなど)を設定可能であるため、ここでは説明を省略する。
【0143】
図46または55に示された一例としての装置90,121は、異化反応にも適用できる。図46または55に示された一例としての培養装置90,121において、酸素、二酸化炭素及び窒素のいずれか1種以上を含む気体48を培養室用気体注入管104から注入しながら混合溶液120を攪拌させるか、または攪拌翼によって適宜攪拌し、必要な場合には、空気を含む酸素含有気体または純酸素を前記残渣(有機物質)に投入してもよい。かような環境下で、培養室95内の水分含有率を望ましい条件に維持しつつ、上記した段階(b)で投入される微生物が、段階(a)において異化(分解)されなかったセルロース、へミセルロースやリグニン等を栄養分として異化を進める。ここで、前記微生物が異化により無機物質を大量に作り出す前に、段階(b)に使用される装置をあらかじめ嫌気化(無気化)しておくことで、前記微生物の活動を一時的に不活性化にさせること、換言すれば休止状態とすることができる。なお、段階(b)を実行する前に再度活性化することができうる。次いで、段階(a)用の装置におけるpHを調整しつつ、有機物質(未処理及び/または前処理後)及び段階(b)で得られた低分子有機物を段階(a)に移行させて、段階(a)においてエタノール抽出を再度行う。なお、段階(b)でもエタノール抽出が行われうることは上述した通りである。このように、段階(a)と段階(b)とを反復して行う「サイクル」段階によって、経時的にエタノールを抽出することができる。
【0144】
一般に、段階(b)に使用される微生物が前記残渣を分解する過程において、前記残渣が高温となるため、段階(b)においてエタノールを分留して回収してもよい。
【0145】
有機物質(前処理後の有機物質)のうち、微生物が栄養要求する物質が枯渇した時点で本サイクルは停止する。しかし、かかる場合に、栄養要求する物質が異なる微生物を投入することによって、本サイクルを維持継続することができる。また、微生物に栄養要求されている物質を補給することによっても本サイクルの維持継続が可能となる。
【0146】
また、これまで説明してきた第1のサイクルを効率的に維持継続させる手段として、別途、第2のサイクルを設けることもできる。この第2のサイクルは、第1のサイクルの継続維持が不能となった時点、またはエタノールの抽出量が第1のサイクルを維持させるのに十分な量でなくなった時点で初めて使用してもよい。また、第1のサイクルと第2のサイクルとを同時に機能させてもよい。地球環境の保護の観点などからいえば、第1のサイクルと第2のサイクルとを同時に機能させることが好ましい。以下、第2のサイクルについて詳細に説明する。
【0147】
<第2のサイクル>
本段階は、前記段階(a)と、無機物質を微生物に同化させることにより、前記有機物質を得る段階(c)と、を反復して行う段階である。なお、前記無機物質として、後述するように、例えば、前記段階(a)で得られる無機物質や、自然界に存在する無機物質などが挙げられる。
【0148】
1.段階(a)
段階(a)については上記第1のサイクルにおいて既に詳説したため、ここでは説明を省略する。すなわち、段階(a)は、第1のサイクルと本第2のサイクルの双方に含まれるという特徴を有する。
【0149】
2.段階(c)
段階(c)は、エタノールの抽出に伴って生成された無機物質、すなわち第1のサイクルのうちの段階(a)で用いられる微生物による異化作用によって生じた無機物質を再度同化させ、有機物質を生成する。これにより、得られた有機物質を段階(a)に供給し、上記第1のサイクルの系内に投入することを特徴とする。本段階が存在することにより、二酸化炭素や硫化水素などの大気中への排出を防ぎつつ、エタノールを高い収率で生成することができる点で、地球環境の保護などに大いに貢献できるのである。段階(c)を実行においても、上述した第1実施形態に係る培養装置90または変形例121を適用することができる。
【0150】
前記微生物は、好気性菌及び嫌気性菌のいずれであってもよい。別の観点からいえば、独立栄養生物であっても従属栄養生物であってもよい。前記独立栄養生物は、光合成独立栄養生物及び化学合成独立栄養生物に大別され、前記従属栄養生物は、光合成従属栄養生物及び化学合成従属栄養生物に大別される。これらの生物については、従来より公知の真菌や細菌であれば特に限定されない。なお、前記化学合成独立栄養生物としては、無機化合物(硫化水素、アンモニアなど)を酸化してエネルギーを得る、公知の真菌または細菌(独立栄養細菌)が挙げられる。なかでも、光合成細菌、窒素固定細菌、酵母、硝酸還元菌及び亜硝酸還元菌のうちのいずれか1種を含むことが好ましく、光合成細菌、窒素固定細菌のうちのいずれか1種を含むことがより好ましい。好気性菌として、特に限定されることはないが、Cyanophita門 Chroococcales目、Pleurocapsales目、scillatoriales目、ostocales目、Stigonematales目、Prochlorales目などが挙げられる。これらの属・種については特に限定されることはないが、例えば、Acetobacteraceae Acidiphilium、Rhodobacteraceae Roseobacter、Sphingomonadaceae Erythrobacterなどが挙げられる。一方、嫌気性菌として、特に限定されることはないが、Rhodospirillum Rhodocista、Acetobacteraceae Rhodopila、Rhodobacter Rhodovulum、Bradyrhizobiaceae hodopseudomonas、Hyphomicrobiaeceae Rshodomicrobiuum、Blastochloris Rhodoplanes、Rhodobiaceae Rhodobium、Comamonasdaceae Rhodoferax、Rhodocyclaceae Rhodocyclus、Chromatium okenii、Lamprocystis denticulata、Lamprocystis fastigata、Lamprocystis hahajimana、Lamprocystis hornbosteli、Lamprocystis misella、Chlorobaculum tepidum、Chloronema giganteum、Heliothrix oregonensis、Roseiflexus castenholzii、Oscillochloris chrysea、Oscillochloris trichoides、Heliobacterium chlorum、Heliobacterium gestii、Heliobacterium modesticaldum、Heliobacterium sulfidophilum、Heliobacterium undosumなどが挙げられる。
【0151】
前記好気性菌として、窒素固定能を有するという観点より、好ましくはシアノバクテリアであるCyanophita門 Chroococcales目、Pleurocapsales目、scillatoriales目、ostocales目、Stigonematales目、Prochlorales目である。より好ましくは、硫黄粒を生じないという観点より、Rhodospirillaceae Rhodospirillum、Rhodospirillaceae Rhodocistaである。一方、嫌気性菌として、好ましくはHeliobacterium chlorum、Heliobacterium gestii、Heliobacterium modesticaldum、Heliobacterium sulfidophilum、Heliobacterium undosumである。一般に、通性嫌気性菌は、有酸素下で光合成をせずに呼吸してしまい、消費してしまうものが多い。その中で、上記の菌は、酸素下では光合成をせず異化もせず不活性化しているため、光合成の効率が有意に優れているからである。
【0152】
上記のような同化作用が進むにつれて、次第に無機物質、特に窒素や炭素といった成分が欠乏してくる場合がある。このような場合に、一般に、段階(c)において用いられる上記の微生物は、窒素ガス等に由来の窒素及び/または二酸化炭素などに由来の炭素を同化することができる。かかる窒素源や炭素源は、大気中など自然界に存在するものを使用することもできる。そして、かかる同化作用により、再度、単糖などの有機物質を得ることが可能になり、段階(a)で用いられる微生物が得られた有機物質を原料としてエタノール発酵を行う結果、さらにエタノールが抽出される。その際生成される無機物質より、再度、段階(c)において有機物質を生成(同化)することができる。このように、段階(a)と段階(c)とを反復して行う第2の「サイクル」段階によって、経時的に、段階(a)で発生する無機物質の外界への放出を抑制するとともにエタノールを一層大量に抽出することができる。
【0153】
段階(c)に用いられる微生物が窒素や炭素以外の微量元素を要求する場合には、かかる元素を種々の形態で補給してもよい。なお、段階(c)に用いられる微生物の培養条件については、上述の通り、好気性菌、嫌気性菌のいずれもあり得、また、使用する菌の種類によって様々であるため、特に限定されることはない。さらに、嫌気性条件や好気性条件については、使用する菌の種類によって、当業者であれば適宜最適条件(温度やpHなど)を設定可能であるため、ここでは説明を省略する。
【0154】
段階(c)の原料である無機物質については、上記した段階(a)で得られる無機物質と、自然界に存在する無機物質とを共に用いてもよいし、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0155】
なお、段階(a)と段階(c)とがサイクルとして反復する場合、例えば、段階(a)中に段階(c)で投入された微生物が生きて存在する場合がある。かかる場合には、段階(a)において、段階(c)で本来行われうる同化が起こりうる。逆の場合、すなわち段階(c)において、段階(a)で本来行われうるエタノール発酵が起こる場合もありうる。
【0156】
<第3のサイクル>
上記した段階(b)と段階(c)とを反復することを特徴とする。これにより、段階(b)において段階(a)の酵母が残存するか残存させたような場合に、段階(c)において生成されたグルコースなどを原料として該酵母がエタノール抽出することが可能となる。
【0157】
好ましくは、第1のサイクルと同時に、より好ましくは第1及び第2のサイクルと同時に機能させることにより、地球環境の保護の観点で非常に優れたエタノールの生産システムを構築することができる。
【0158】
なお、段階(b)と段階(c)とがサイクルとして反復する場合、例えば、段階(b)中に段階(c)で投入された微生物が生きて存在する場合がある。かかる場合には、段階(b)において、段階(c)で本来行われうる同化が起こりうる。逆の場合、すなわち段階(c)において、段階(b)で本来行われうる異化が起こる場合もありうる。
【0159】
[第3工程]
本製造方法は、微生物を用いて、前記段階(a)で得られる前記肥料前駆成分から肥料を生成する第3工程をさらに含んでもよい。第2実施形態は、第3工程に用いられる堆肥製造装置である。本製造方法は、上述した通り、段階(a)により、エタノール以外に、異化されなかった(異化反応により分解されなかった)有機物質(未処理及び/または前処理後)も得られる。従来から、かかる有機物質(未処理及び/または前処理後)は大量に廃棄されているが、本発明では、このような有機物質を原料として微生物を用いて肥料を生成する。本段階が存在することによって、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または産業廃棄物質などを有効利用するのみならず、これらの物質をほとんど余すところなく利用して、最終的にエタノールに加えて肥料をも効率良く生成することができるのである。
【0160】
段階(a)で得られる残渣(肥料前駆成分)中に、窒素分及び/または炭素分が肥料の生成に適さない程しか存在しない場合、本段階において用いられる微生物は、大気中など自然界に存在する窒素ガス等に由来の窒素及び/または二酸化炭素などに由来の炭素を同化することができる。これは、上記段階(c)と同様の同化作用(反応)が使用可能であることを意味する。特に、ジアゾ栄養生物のうち硝化細菌を用いると、硝酸塩を反応系内に取り込ませることができ、肥料の品質上好ましいものとなりうる。得られる肥料の炭素分と窒素分との比率を考慮し、場合によっては光合成細菌及び窒素固定細菌のいずれか一方のみを使用してもよい。なお、肥料を生成することは、他のサイクルなしに、第1のサイクルのみ存在している系でも可能であり、さらにいえば、段階(a)からなるエタノール生成系でも可能である。このような場合、簡易なプロセスであることに起因して、肥料を迅速に生産することができる点で有利である。
【0161】
前記肥料前駆成分中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が、肥料の生成に適する程度に存在する場合には、肥料前駆成分から肥料への生成にそのまま移行することができる。
【0162】
したがって、本段階は、前記肥料前駆成分中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分に応じて、用いる微生物の種類が変化しうる。なお、前記肥料前駆成分の水分含有率が高い場合、本段階の最初に、加熱などによって水分含有率を減少させてもよい。
【0163】
前記肥料前駆成分中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分に応じた好適に用いられる微生物の種類を、有機態窒素分及び/または有機態炭素分の多い順から挙げる。
【0164】
前記肥料前駆成分中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が余分な場合、枯草菌、乳酸菌、光合成細菌、酵母、放線菌及び腐朽菌よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、枯草菌、放線菌を用いることがより好ましい。なお、腐朽菌(木材腐朽菌)としては、セルロース、へミセルロースやリグニン等を分解できることを特徴としており、褐色腐朽菌、白色腐朽菌や軟腐菌が挙げられる。腐朽菌は、リグニン等が非常に大量に残存しているような場合に特に好適に用いられうる。次に、前記肥料前駆成分中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が適度な場合、放線菌を必須に用いると共に、光合成細菌及び/または放線菌を併用することが好ましく、放線菌のみを用いることがより好ましい。そして、前記肥料前駆成分中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が欠乏している場合、光合成細菌、酵母及び放線菌を必須に用いると共に、窒素固定細菌を併用することが好ましく、光合成細菌、酵母及び放線菌を用いることがより好ましい。上記の場合、用いられる微生物は主に太陽光線をエネルギーとして使用し、化石燃料からのエネルギーをほとんど必要としないため、地球上の貴重な天然資源の消費を抑えつつ、肥料を生産することが可能となる。
【0165】
以上の微生物を1種ずつまたは複数種を同時に本段階に投入することにより、所望の肥料を生成することができる。
【0166】
第3工程においても、前述の培養装置90,121が適用されえる。本培養装置90,121を使用する際には、第1工程、第2工程から連続して使用されえる。
【0167】
本工程において第1実施形態に係る培養装置90,121を使用する際には、培養室95内には既に有機物質が収容されているため、ここに微生物投入管105から所定の微生物を投入して、混合溶液とする。
【0168】
次に、工程1,2の場合と同様に、調整剤注入管102から浸透圧調整剤を浸透圧調整室96(交換室)に注入し、調整剤排出管103から排出して、浸透圧調整剤を流通させる。または、調整剤注入管102から注入した浸透圧調整剤を、調整剤排出管103から排出せずに浸透圧調整室96に一定時間保持してもよい。更に、軸部107をコンプレッサー等の駆動源により加圧する。この際の加圧力は、条件に応じて任意に設定することが好ましい。これにより、混合溶液120は、浸透圧調整室96内の浸透圧調整剤との間の圧力差に応じて、分離機能部100を介して水分が移動することで、発酵等に最適な含有水分量が保たれる。また、熱交換用チューブ115に温水を流通させることで、培養室95内を最適な温度に保持する。
【0169】
発酵等が進行することで発生する気体は、摺動部106に設けられる気体分離機能部108を介して気体回収室97に移動し、排出流路111を通って排出される。
【0170】
本培養装置90,121における工程が終了すると、蓋部92を開いて、製造された肥料が取り出される。
【0171】
なお、本工程3を、以下に示す第2実施形態に係る肥料製造装置(培養装置)で実施することもできる。図52は、第2実施形態に係る肥料製造装置130を示す図である。なお、下記の本肥料製造装置130を、第1、第2工程に適用することも可能である。
【0172】
第2実施形態に係る培養装置130は、内部に空間が形成された本体131と、蓋部132を備えている。本体131は、上端に開口部が形成された円柱形状を有し、この開口部に蓋部132が開閉自在に設けられている。本体131の内部には、内部空間を上下に分割する加減圧構造体133(移動力発生部)が設けられる。本培養装置130では、加減圧構造体133と蓋部132の間の空間に培養室134が設けられ、加減圧構造体133の下方に浸透圧調整室135(交換室)が設けられる。
【0173】
蓋部132には、蓋部132が設けられて開閉可能な開口孔136が設けられる。開口孔136を開くことで、培養室134を好気性条件下とし、開口孔136を閉じることで、培養室134を嫌気性条件下とすることができる。また、蓋部132には、図54に示すように、培養室134内の内圧を調整するための内圧調整弁138が設けられる。内圧調整弁138は、開閉自在な絞り環139と、逆流防止弁140と、気体分離機能部141とを備える。
【0174】
加減圧構造体133は、図53に示すように、本体131の内面に沿って摺動可能な摺動部143と、本体131の下端面を外側から貫通し、摺動部143に固定された軸部144とを有している。摺動部143は、分離機能部145と、分離機能部145を支持する摺動分離機能部支持部146と、分離機能部145を保護する上側分離機能部保護体147を有している。上側分離機能部保護体147は、耐圧性のスポンジ状物質からなり、培養室134内の内容物から分離機能部145を保護している。なお、本体131の内面と摺動する摺動部143の外周面、および軸部144と摺動する本体131の下端面には、密封を確保するために、Oリング等のシール部材が設けられることが好ましい。
【0175】
軸部144は、本体131の外側に位置する一端側から内部を貫通する通気流路148(培養室用気体注入管)が形成され、通気流路148は、摺動分離機能部支持部146の培養室134側の面で開口する複数の孔149と連通する。
【0176】
本培養装置130を使用する際には、まず蓋部132を開け、装置の培養室134内に、肥料前駆成分および微生物を投入して、混合溶液とする。
【0177】
次に、本体131の蓋部132を閉じる。このとき、培養室134を好気性条件下とするならば、蓋部132の開口孔136を開き、培養室134を嫌気性条件下とするならば、開口孔136を閉じた状態とする。
【0178】
この後、調整剤注入管102から浸透圧調整剤を調整室135に注入し、調整剤排出管103から排出して、浸透圧調整剤を流通させる。更に、軸部144をコンプレッサー等の駆動源により上下動させる。この際の加圧力は、条件に応じて任意に設定することが好ましい。これにより、混合溶液120は、浸透圧調整室135との間の圧力差に応じて、分離機能部145を介して水分が移動し、発酵等に最適な水分含有率を保つことができる。なお、分離機能部145には、混合溶液120の自重も作用するため、この自重により分離機能部145を介して水分を移動させることもできる。
【0179】
発酵の過程では、通気流路148から空気、酸素を含む気体、または窒素等を供給し、培養室134内の混合溶液120の切り返しの役割を行わせる。培養室134が嫌気性条件下にある場合に、培養室134内の内圧が上昇すると、供給された気体または発酵過程において発生した気体が、気体分離機能部141を通って内圧調整弁138から排出される。なお、蓋部132の開口孔136が開いて培養室134が好気性条件下にあるならば、内圧調整弁138は機能せずともよい。
【0180】
なお、所望により、加減圧構造体133の培養室134側に、図51の如き攪拌装置を図32に示した如く格納部に設けて、攪拌の補助とすることも可能である。
【0181】
本培養装置130における工程が終了すると、蓋部132を開いて、製造された肥料が取り出される。
【0182】
<第3実施形態>
本発明の第3の実施形態は、堆肥等を製造するための小規模の堆肥等製造装置(培養装置)である。図55は、本実施形態に係る培養装置150を示す斜視図である。
【0183】
第3の実施形態に係る培養装置150は、内部に空間が形成された本体151と、蓋部152を備えている。本体151は、一方端に開口部が形成された円柱形状を有し、この開口部に蓋部152が開閉自在に設けられている。本体151の内部には、内部空間を本体151の軸方向に分割する分離構造部153(分離部)および加減圧構造体154(移動力発生部)が設けられる。本培養装置150では、分離構造部153と加減圧構造体154の間の空間に、培養室155が設けられ、分離構造部153を挟んで培養室155の反対側に、培養室155と水(交換剤)を交換して浸透圧を調整するための浸透圧調整室156(交換室)が設けられる。
【0184】
分離構造部153は、本体151に固定された分離機能部支持部と、分離機能部支持部により支持される分離機能部と、分離機能部の培養室155側を覆って分離機能部を保護する分離機能部保護体を有している。
【0185】
培養室155の内部には、分離構造部153および本体151を貫通して回転可能な回転翼シャフト158に固定される切り返し用回転翼157が設けられる。切り返し用回転翼157は、外部の一端に例えばハンドルが連結されており、回転翼シャフト158を外部から回転させることで、培養室155内で切り返し用回転翼157を回転させることができる。
【0186】
本体151の浸透圧調整室156には、浸透圧調整剤としての液体を注入する調整剤注入管159と、浸透圧調整剤浸透圧調整室156を排出する調整剤排出管160が連結されている。浸透圧調整剤は、例えば培養室155にて用いられる液体培地の濃度が異なるものが適用できるが、必ずしも液体培地に限定されず、例えば塩等の濃度の異なる物質でもよい。
【0187】
本体151の培養室155には、気体を注入する培養室用気体注入管161と、気体を排出する培養室用気体排出管162が連結されている。培養室用気体注入管161および培養室用気体排出管162には、逆流防止弁が設けられる。培養室用気体注入管161および培養室用気体排出管162で注入、排出される気体は、培養室155内を嫌気性条件下とする際には、例えば二酸化炭素や窒素等であり、培養室155内を好気性条件下とする際には、例えば酸素を含む気体や純酸素である。なお、気体の注入と排出の両機能を備えた培養室用気体注排出管が連結されてもよい。
【0188】
加減圧構造体154は、本体151の内面に沿って摺動可能な摺動部163と、本体151の外部から蓋部152を貫通し、摺動部163に回転可能に連結された軸部164とを有している。軸部164にはネジ山が形成されており、ネジ溝が形成された蓋部152の貫通穴に螺合する。軸部164は、本体151の外側に位置する一端が、軸部164を回転させるためのハンドル165と連結されている。したがって、手動でハンドル165を回転させることで、蓋部152に螺合する軸部164が進退動し、摺動部163を本体151内で摺動させることができる。なお、本体151の内面と摺動する摺動部163の外周面、および蓋部152と本体151の間には、密封を確保するために、Oリング等のシール部材が設けられることが好ましい。
【0189】
本体151には、図56に示すように、傾斜角調整歯車166が固定されており、当該傾斜角調整歯車166と噛み合う回転歯車167を回転させることで、本体151の傾斜角を変更可能である。回転歯車167は、ハンドル(不図示)が取り付けられて手動で回転可能であるか、またはモータ等で駆動されてもよい。
【0190】
本培養装置150を使用する際には、まず、蓋部152および加減圧構造体154を取り外した装置の培養室155内に、有機物質、並びに一種以上の微生物を投入して、混合溶液とする。
【0191】
次に、本体151に蓋部152および加減圧構造体154を取りつけて、培養室155を密封する。この後、調整剤注入管159から浸透圧調整剤を浸透圧調整室156に注入し、調整剤排出管160から排出して、浸透圧調整剤を流通させる。または、調整剤注入管159から注入した浸透圧調整剤を、調整剤排出管160から排出せずに調整室156に一定時間保持してもよい。更に、軸部164をハンドル165によって回転させて、摺動部163を移動させて、培養室155内を加圧する。この際の加圧力は、条件に応じて任意に設定することが好ましい。これにより、混合溶液は、浸透圧調整剤との間の圧力差に応じて、分離機能部を介して水分が移動され、混合溶液の水分含有量が調整されて、発酵等に最適な水分量が保たれる。なお、本体151は、傾斜角調整歯車166を回転させることで、各々の工程に適した姿勢に保たれる。
【0192】
発酵等の過程に際し、培養室155内を嫌気性条件とするならば、培養室用気体注入管161から二酸化炭素や窒素等の酸素を含まない気体を、微生物の種類や他の条件に応じて適宜注入し、培養室用気体排出管162から排出する。
【0193】
発酵等の過程に際し、培養室155内を好気性条件とするならば、培養室用気体注入管161から酸素を含む気体を、微生物の種類や他の条件に応じて適宜注入し、培養室用気体排出管162から排出する。
【0194】
また、発酵の過程では、攪拌翼157を適宜回転させて、培養室155内の混合溶液の切り返しを行うことができる。
【0195】
本培養装置150における工程が終了すると、蓋部152および加減圧構造体154を取り外し、内容物を次の工程を行う装置へ移動させる。
【0196】
図57は、第3実施形態に係る培養装置の変形例を示す図である。なお、第3実施形態と同一の機能を有する部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0197】
第3実施形態の変形例では、攪拌翼157が設けられず、その替わりに、培養室155の内部に突出した攪拌用突出部168(攪拌部)が複数設けられる。さらに、この変形例では、傾斜角調整歯車166が設けられず、本体151の外周面に歯が形成された周方向歯車169と、周方向歯車と噛み合う回転歯車170を備える。この回転歯車170を回転させることで、本体151を軸心を中心として回転させることが可能である。回転歯車170は、ハンドル(不図示)が取り付けられて手動で回転可能であるか、またはモータ等で駆動されてもよい。
【0198】
本変形例では、周方向歯車169を用いて本体151を回転させることで、攪拌用突起部168により混合溶液を攪拌することができる。
【0199】
本実施形態によっても、分離機能部を介して培養室155内の混合溶液の水分含有率を調整しつつ、有機材料を発酵等させることができる。
【0200】
図58は、第3実施形態に係る培養装置の他の変形例を示す図である。なお、第3実施形態と同一の機能を有する部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0201】
第3実施形態の他の変形例では、図58,64に示すように、攪拌翼157が設けられず、その替わりに、本体151および分離構造部153を貫通して培養室155に達する送気装置171(攪拌部)が設けられる。送気装置171は、本体151外部に位置する一端側から1つの送気流路が形成され、送気流路172が、培養室155内で複数の分岐部173に分岐されて開口している。したがって、送気流路172を介して気体を注入することで、培養室155内の複数の分岐部173から泡状の気体が供給されて、混合溶液が攪拌される。なお、複数の分岐部173の各々には、必要に応じて、逆流防止弁やフィルター等を設けてもよい。
【0202】
<第4実施形態>
本発明の第4の実施形態は、第3実施形態よりも小型の培養装置である。図60は、第4実施形態に係る培養装置180を示す図である。
【0203】
第4実施形態に係る培養装置180は、図60,66に示すように、内部に空間が形成された本体181と、本体181の上端に設けられる蓋部182と、本体181の下端に設けられるカセット183を備えている。本体181は、上端に開口部が形成された円柱形状を有し、この開口部に蓋部182が開閉自在に設けられている。また本体181は、下端において、側方へ開口する側方開口部184が形成され、側方開口部184に、カセット183が出し入れ可能に挿入される。カセット183は、手動で引き出すための握り部185が設けられて上端が開いた形状を有しており、上端の開口部に、分離部186が設けられる。カセット183は、内部に浸透圧調整剤が収納されて、浸透圧調整室(交換室)として機能する。
【0204】
分離部186は、カセット183に固定された分離機能部支持部と、分離機能部支持部により支持される分離機能部と、分離機能部の外側を(後述する培養室側)を覆って分離機能部を保護する分離機能部保護体を有していることが好ましい。
【0205】
本体181の内部には、内部空間を上下に分割する加減圧構造体187が設けられる。本培養装置180では、分離部186と加減圧構造体187の間の空間に、培養室188が設けられる。
【0206】
加減圧構造体187は、本体181の内面に沿って摺動可能な摺動部189と、本体181の外部から蓋部182を貫通し、摺動部189に回転可能に連結された軸部190とを有している。軸部190にはネジ山が形成されており、ネジ溝が形成された蓋部182の貫通穴に螺合する。軸部190は、本体181の外側に位置する一端が、軸部190を回転させるためのハンドル191と連結されている。したがって、手動でハンドル191を回転させることで、蓋部182に螺合する軸部190が進退動し、摺動部189を本体181内で摺動させることができる。軸部190は、内部が貫通した中空軸状に形成され、内部に、図62に示す弁解放ノブ192が貫通している。弁解放ノブ192は、培養室188内の一端に、摺動部189と密接可能な弁193が設けられ、他端に、ノブ194が設けられる。軸部190の上端とノブ194の間には、弁解放ノブ192を上方へ付勢するためのばねが設けられる。通常、弁解放ノブ192はばね195により上方へ付勢されることで、下端の弁が摺動部189と密着している。ここで、ノブ192を下方へ押すと、弁193が押し下げられて摺動部189から離れ、軸部190の内側と弁解放ノブ192の間の隙間を通って、培養室188内の気体を排出することができる。
【0207】
本培養装置180を使用する際には、まず、蓋部182および加減圧構造体187を取り外した装置の培養室188内に、有機物質、並びに一種以上の微生物を投入して、混合溶液とする。
【0208】
次に、本体181に蓋部182および加減圧構造体187を取りつけて、培養室188を密封する。更に、カセット183内に浸透圧調整剤を収容して分離部186を取り付けて、本体181に挿入する。この後、軸部190をハンドル191によって回転させて、摺動部189を移動させ、培養室188内を加圧する。この際の加圧力は、条件に応じて任意に設定することが好ましい。これにより、混合溶液は、浸透圧調整剤との間の圧力差に応じて、分離機能部を介して水分が移動され、混合溶液の水分含有量が調整されて、発酵等に最適な水分量が保たれる。
【0209】
本培養装置180は、培養室188内が密封されるため、嫌気性条件下での発酵等に好ましいが、培養室188内へ酸素を供給する機能を追加すれば、好気性条件下での発酵等にも使用できる。
【0210】
本培養装置180における工程が終了すると、蓋部182および加減圧構造体187を取り外し、内容物を次の工程を行う装置へ移動させる。
【0211】
なお、本培養装置180において、カセット183内に浸透圧調整剤が収納されなくてもよい。この場合には、培養室188内の混合溶液が、加圧されることで分離機能部を通り、カセット183内に移動することとなる。
【0212】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る培養装置200は、堆肥等を製造するだけでなく、チーズ、ヨーグルト、発酵バター等の発酵食品の製造にも適する。図63は、第5実施形態に係る培養装置200を示す図である。
【0213】
本培養装置200は、内部に空間が形成された本体201と、複数の開口部を有する蓋部202を備えており、本体201の内部には、内部空間を本体201の軸方向に分割する分離構造部203(分離部)および加減圧構造体204(移動力発生部)が設けられる。本培養装置200では、分離構造部203と加減圧構造体204の間の空間に、培養室205が設けられ、分離構造部203を挟んで培養室205の反対側に、培養室205と水を交換して浸透圧を調整するための浸透圧調整室206(交換室)が設けられる。
【0214】
本体201の浸透圧調整室206には、浸透圧調整剤としての液体を注入する調整剤注入管207と、浸透圧調整剤を排出する調整剤排出管208が連結されている。調整剤注入管207および調整剤排出管208には、逆流防止弁が設けられる。
【0215】
分離構造部203は、分離機能部支持部209と、分離機能部支持部209により支持される分離機能部210と、分離機能部210の培養室205側を覆って分離機能部210を保護する分離機能部保護体を有していることが好ましい。
【0216】
加減圧構造体204は、本体201の内面に沿って摺動可能な摺動部211と、本体201の外部から蓋部202を貫通し、摺動部211に回転可能に連結された軸部212とを有しており、第4実施形態と同様にハンドル191を回転させることで、蓋部202に螺合する軸部212が進退動し、摺動部211を本体201内で摺動させることができ、培養室205内の混合溶液の圧力を調整できる。
【0217】
摺動部211には、気体を注入できる逆流防止弁付きの気体注入管213が連結されている。また、この気体注入管213から、微生物を注入することも可能である。
【0218】
本実施形態によっても、分離機能部210を介して培養室205内の混合溶液の水分含有率を調整しつつ、有機材料を発酵等させることができる。
【0219】
なお、本培養装置200において、浸透圧調整室206(交換室)に浸透圧調整剤が収納されなくてもよい。この場合には、培養室205内の混合溶液が、加圧されることで分離機能部210を通り、浸透圧調整室206内に移動することとなる。
【0220】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る培養装置220は、第5実施形態同様に、堆肥等を製造するだけでなく、チーズ、ヨーグルト、発酵バター等の発酵食品の製造にも適するものである。図64は、第6実施形態に係る培養装置220を示す図である。
【0221】
本培養装置220は、第5実施形態と同様に、内部に空間が形成された本体221の内部に、内部空間を本体221の軸方向に分割する分離構造部222(分離部)および加減圧構造体223が設けられる。本培養装置220では、分離構造部222と加減圧構造体223の間の空間に培養室224が設けられ、分離構造部222を挟んで培養室224の反対側に、培養室224と水を交換して浸透圧を調整するための浸透圧調整室225(交換室)が設けられる。
【0222】
本体221の浸透圧調整室225には、浸透圧調整剤としての液体を注入する調整剤注入管227と、浸透圧調整剤を排出する調整剤排出管226が連結されている。調整剤注入管227および調整剤排出管226には、逆流防止弁が設けられる。
【0223】
分離構造部222は、分離機能部支持部228と、分離機能部支持部228により支持される分離機能部229と、分離機能部229の培養室224側を覆って分離機能部229を保護する分離機能部保護体を有していることが好ましい。
【0224】
加減圧構造体223は、図65に示すように、本体221の内面に沿って摺動可能な摺動部230と、摺動部230から上方へ延びる錘装着軸231とを有しており、錘装着軸231に、環状の錘部材232を装着可能となっている。錘装着軸231に装着する錘部材232の重さや枚数を変更することで、任意の重さに設定することが可能であり、培養室224内の混合溶液の圧力を調整できる。
【0225】
摺動部230には、逆流防止弁付きの管挿通部233が設けられており、一方の管挿通部233には気体注入管234が挿入可能であり、他方の管挿通部233には気体排出管235が挿入可能である。管挿通部233の逆流防止弁は、気体注入管234または気体排出管235が挿入されることで押し下げられて開通し、気体注入管234または気体排出管235が引き抜かれると、閉鎖される。
【0226】
気体注入管234の端部には、錘236が取り付けられ、気体排出管235の端部には、浮玉237が取り付けられる。これにより、錘236が取り付けられて培養室224の下方に位置する気体注入管234から発酵等に必要な気体を注入し、上方へ移動した気体を、浮玉237が取り付けられて培養室224の上方に位置する気体排出管235から脱気することができ、これにより一種の攪拌作用が生じる。なお、必要に応じて、気体注入管234および気体排出管235に取り付けられる錘236や浮玉237を任意に変更でき、または取り付けなくてもよい。
【0227】
本実施形態によっても、分離機能部229を介して培養室224内の混合溶液の水分含有率を調整しつつ、有機材料を発酵等させることができる。
【0228】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る培養装置240は、嫌気性条件下における発酵等に用いられる装置であり、堆肥等の製造に適する。図66は、第7実施形態に係る培養装置240を示す図である。
【0229】
本培養装置240は、内部に空間が形成された本体241の内部に、内部空間を上下に分割する分離構造部242(分離部)が設けられる。本培養装置240では、分離構造部242の下方に培養室244が設けられ、分離構造部242の上方に、培養室244と水を交換して浸透圧を調整するための浸透圧調整室243(交換室)が設けられる。
【0230】
分離構造部242は、本体241の内面に沿って摺動可能な摺動支持部245と、摺動支持部245により支持される分離機能部246と、分離機能部246の培養室244側を覆って分離機能部246を保護する分離機能部保護体を有している。摺動支持部245には、上方へ延びる錘装着軸247が設けられており、錘装着軸247に、環状の錘部材248を装着可能となっている。錘装着軸247に装着する錘部材248の重さや枚数を変更することで、任意の重さに設定することが可能であり、培養室244内の混合溶液の圧力を調整できる。
【0231】
培養室244内には、攪拌部249が設けられる。攪拌部249は、図69に示すように、分離構造部242と本体241の底面との間に設けられ、外周面に螺旋状の溝が形成されて伸縮可能な伸縮軸部250と、この伸縮軸部250が伸縮することで螺旋状の溝により回転される攪拌翼251とを備えている。したがって、錘部材248を載置した分離構造部242が下降することで、攪拌翼251が回転し、混合溶液を攪拌することができる。
【0232】
本体241は、図67,73の断面図で示されるように、内側面252が、熱伝導性に優れる例えばアルミニウム合金製であり、外側面253が、熱伝導性の低い例えばセラミック製である。内側面252と外側面253の間には、環状の空間が設けられ、本体241の上端の孔254から空気や熱水等を入れることができる。これにより、培養室244内の温度を調整しつつ、望ましい温度に長時間保持することができる。
【0233】
本実施形態によれば、錘部材248を載置した分離構造部242が下降することで、攪拌翼251が回転して混合溶液を攪拌しつつ、培養室244内の水を分離機能部246を介して上方の浸透圧調整室243に移動させることができる。
【0234】
<第8実施形態>
第8実施形態に係る培養装置260は、大量の堆肥等を製造するための大型の培養装置である。図70は、第8実施形態に係る培養装置260を示す図である。
【0235】
本培養装置260は、図70に示すように、大型で上方が解放された槽構造(プール状)の本体261と、本体261内部に設けられる交換部262と備えている。本体261の内部が、培養室263となる。培養室263の上面には、培養室263内を保護するために、ビニール(蓋部)等を被せることができ、不要であれば、設けなくてもよい。
【0236】
本体261は、例えばコンクリート等からなり、側面に開閉可能な開閉扉267が設けられる。開閉扉267は、開くことで、大型の培養装置260の内部の作業(例えば、製造された堆肥等の取り出し作業)を容易にすることができるものである。
【0237】
交換部262は、表面の少なくとも一部に分離部263が設けられ、内部に交換室264が設けられる。交換室264には、複数の注入管265および排出管266が連結されている。分離部263は、可能であれば分離機能部のみから形成されてもよいが、分離機能部支持部と、分離機能部支持部により支持される分離機能部と、分離機能部の培養室263側を覆って分離機能部を保護する分離機能部保護体を有していることが好ましい。
【0238】
本培養装置260を使用する際には、まず、開閉扉を閉じ、本体261(培養室)内に、有機物質、並びに一種以上の微生物を投入して、混合溶液とする。
【0239】
次に、交換部262に浸透圧調整剤を注入管265、排出管266を用いて流通させて、分離機能部を介して混合溶液の水分含有率を調整しつつ、発酵等を行わせる。この後、交換部262に空気等を注入管265、排出管266を用いて流通させて、交換室264内を浸透圧調整剤から空気に置換し、分離機能部を介して空気等を培養室263内に供給する。これにより、混合溶液の切り返しを行うことができる。
【0240】
なお、交換部262は、例えば上下に重なるように複数設けてもよく、これにより、複数の流体(例えば、浸透圧調整剤と空気)が別個に収容された複数の交換室264を容易に設けることができ、異なる交換剤(例えば、水と空気)を同時に移動させることもできる。
【0241】
<第9実施形態>
第9実施形態に係る培養装置270は、発酵食品を製造するための中規模の培養装置である。図72は、第9実施形態に係る培養装置270を示す図である。
【0242】
本培養装置270は、上方が解放された槽構造(プール状)の本体271と、本体271内部に設けられる少なくとも1つの移動培養部272と備えている。本体271の内部が、交換室273となり、移動培養部272の内部が培養室274となる。交換室273の上面には、交換室273の保護のために、ビニール等を被せることができ、不要であれば、設けなくてもよい。
【0243】
移動培養部272は、上端が開口した壺型で形成され、内部に培養室274が設けられる。開口部には、必要に応じて蓋部275(密封手段)が設けられる。移動培養部272の下方には、例えば金属製の重比重構造体276が設けられ、上方には、例えば内部に空気が収容された浮き輪状の軽比重構造体277が設けられる。
【0244】
移動培養部272の側面(及び/または下面)には、複数の開口部が形成されて、当該開口部に分離機能部278が設けられる。
【0245】
本培養装置270を使用する際には、まず、移動培養部272(培養室)内に、有機物質、並びに一種以上の微生物を投入して、混合溶液とし、必要であれば蓋部275で密封する。
【0246】
次に、交換室273に浸透圧調整剤を収容し、当該交換室273内に、移動培養部272を投入する。このとき、移動培養部272は、重比重構造体276と軽比重構造体277を備えているため、蓋部275側を上側として姿勢を保ちつつ交換室273内に浮遊することなる。この移動培養部272は、送風や作業者の手によって揺することができ、これにより混合溶液内の微生物に有気呼吸を行わせ、切り返しが可能となる。
【0247】
この後、培養室274内で発酵等を行わせるが、水分含有率が適正化された混合溶液を別所に移動させて発酵等させてもよい。
【0248】
本実施形態によっても、分離機能部278を介して培養室274内の混合溶液の水分含有率を調整しつつ、有機材料を発酵等させることができる。
【0249】
なお、移動培養部272内の内圧が、交換室273内の内圧に劣り、培養室274内内の水分が分離機能部を介して交換室273に移動しない場合には、加圧空気等を培養室274内に充填して蓋部275で密封することで、培養室274内の水を、分離機能部を介して交換室273に透過させることもできる。
【0250】
<第10実施形態>
第10実施形態に係る培養装置280は、堆肥を製造するための中規模の培養装置である。図74は、第10実施形態に係る培養装置280を示す図である。なお、本装置は、発酵食品の製造に適用することもできる。
【0251】
本培養装置280は、図74に示すように、上方が解放された槽構造(プール状)の本体281と、本体281内部に設けられる少なくとも1つの移動交換部282と備えている。本装置280では、本体281の内部が培養室283となり、移動交換部282の内部が交換室284となる。培養室283の上面には、培養室283内を保護するために、ビニール(蓋部)等を被せることができ、不要であれば、設けなくてもよい。
【0252】
移動交換部282は、上端が開口した筒型で形成され、内部に交換室284が設けられる。移動交換部282は、例えばプラスチック等からなるが、材料は特に限定されない。開口部には、必要に応じて蓋部が設けられる。移動交換部282の下方には、例えば金属製の重比重構造体285が設けられ、上方には、例えば内部に空気が収容された浮き輪状の軽比重構造体286が設けられる。
【0253】
交換部の側面(及び/または下面)には、複数の開口部が形成されて、当該開口部に分離機能部287が設けられる。
【0254】
本培養装置280を使用する際には、まず、本体281(培養室283)内に、有機物質、並びに一種以上の微生物を投入して、混合溶液とする。
【0255】
次に、移動交換部282に浸透圧調整剤を収容して蓋部で密封し、また不要であれば密封せずに、培養室283内に投入する。このとき、移動交換部282は、重比重構造体285と軽比重構造体286を備えているため、開口部側を上側として姿勢を保ちつつ培養室283内に浮遊することなる。
【0256】
分離機能部287を介して培養室283内の混合溶液の水分含有率が適正化された後、移動交換部282を取り出し、移動交換部282の内部を空気等に置換して、再び培養室283に投入する。更に、この移動交換部282を送風や作業者の手によって揺することで、切り返しの効率を向上させることができる。
【0257】
交換室284内の内圧が、培養室283内の内圧に劣り、交換室284内の酸素が分離機能部287を介して培養室283に拡散しない場合には、酸素発生剤や加圧空気等を交換室284に充填して蓋部で密封することで、交換室284内の酸素を、分離機能部287を介して培養室283に拡散させることができる。
【0258】
<第11実施形態>
第11実施形態に係る培養装置290は、堆肥等を製造するための大型の培養装置である。図76は、第11実施形態に係る培養装置290を示す図である。なお、本装置は、発酵食品の製造にも適している。
【0259】
本培養装置290は、上方が解放された槽構造(プール状)の本体291と、本体291を側面から貫通する複数の管形状の交換部293が設けられる。本体291の内部が、培養室292となり、交換部293の内部が交換室297となる。培養室292の上面には、培養室292内を保護するために、ビニール(蓋部)等を被せることができ、好気性条件とするために不要であれば、設けなくてもよい。
【0260】
交換部293は、本体291を一側面から他側面まで貫通しており、一側面側で注入管294に連結し、他側面側で排出管295に連結される。交換部293は、培養室292内に位置する部位が分離機能部296で形成されている。
【0261】
培養室292の底部には、交換部293(分離機能部296)の周囲を覆うように、通気性を備えた構造体である硬質耐圧スポンジ状構造が設けられる。
【0262】
本培養装置290を使用する際には、まず、本体291(培養室292)内に、有機物質、並びに一種以上の微生物を投入して、混合溶液とする。次に、必要であれば、ビニールを混合溶液上に被せる。
【0263】
次に、注入管294から交換部293に浸透圧調整剤を流通させる。これにより、水分が分離機能部296を介して移動し、培養室292内の水分含有率が適正化される。
【0264】
この後、好気性条件での発酵であれば、注入管294から交換室297へ酸素を含む気体(例えば空気)を、与圧を与えつつ供給する。これにより、酸素を含む気体が分離機能部296を通過し、硬質耐圧スポンジ状構造内で広く分散して、混合溶液へ広い接触面積から供給されて、切り返しが行われる。なお、本培養装置290は、排出管296から排出された流体において、培養室292との物質交換により減少または過剰となった物質を、追加もしくは取り除き、コンプレッサー等を用いて再び注入管294へ循環させる循環半閉鎖型となっている。
【0265】
本実施形態では、交換部293の管に流通させる交換剤を、発酵工程に応じて適宜変更することができる。
【0266】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、上述した実施の形態は、記載された培養過程以外にも適用でき、第3〜第11実施形態に係る培養装置150,180,200,220,240,260,270,280,290を、上記のエタノール製造サイクル(図45参照)に適用することもできる。また、第1,第2実施形態に係る培養装置90,121,130は、上記のエタノール製造サイクル(図45参照)以外にも、例えばメタン生成過程等を含め多種の発酵過程等に当然に適用できる。メタン発酵は、嫌気的に行われる反応であるため、省エネルギー化に寄与するとともに、非燃焼タイプの反応であるため、有害物質が発生しないという利点がある。メタン発酵は、発酵温度の観点より、55℃程度の高温型メタン発酵と37℃程度の中温型メタン発酵に大別される。なかでも好ましくは高温型である。なぜなら、高温型は、中温型よりもメタン生成能力が2倍程度高く、発酵の効率に優れているためであり、さらに、上記の残余物質のうち、セルロースなどの繊維質を分解する能力も非常に高い。そのため、生ゴミや排泄物などの有機物質を原料とする場合の高温型メタン発酵は、本発明の目的に鑑みて、まさに好適であるといえる。メタン生成菌については、従来公知のものであれば特に制限されることはないが、例えば、Methanobacterium属、Methanosarcina属やMethanosaeta属などが挙げられる。
【0267】
メタン生成菌は、一般に腐敗菌のうちの鉄細菌や硫酸還元菌と増殖に関して拮抗するため、特に硫酸の存在がメタン生成菌の増殖の妨げとなりうる。かかる場合には、硫酸還元細菌または硫酸還元古細菌によって硫酸イオンをあらかじめ除去しておくことが好ましい。なお、一般にメタン生成菌の要求する栄養成分は、水素及び二酸化炭素、水素並びに乳酸、酢酸及び蟻酸などの有機酸、あるいは水素及びエタノール等であるため、各菌種に合わせて発酵の環境を設定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】本発明に係る培養装置の基本構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る培養装置の側面図である。
【図3】本発明のスクリュー構造を備えた蓋部を示す斜視図である。
【図4】本発明の蝶番により本体に連結された蓋部を示す斜視図である。
【図5】本発明のシャッター構造を備えた蓋部が、本体と一体化した形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の蓋部に分離機能部が設けられた形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の本体の分離機能部が設けられた形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の摺動部に分離機能部が設けられた形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の連絡孔および流通制限部が設けられた蓋部を示す斜視図である。
【図10】培養装置の本体の一般構造を示す側面図である。
【図11】培養室と交換室が別構造で形成される例を示す側面図である。
【図12】培養室と交換室が別構造で形成される他の例を示す側面図である。
【図13】培養室と交換室が別構造で形成される更に他の例を示す斜視図である。
【図14】1層構造の本体の壁面を示す断面図である。
【図15】2層構造の本体の壁面を示す断面図である。
【図16】流体収容空間を備えた2層構造の本体の壁面を示す断面図である。
【図17】壁面内のコイル状チューブを示す斜視図である。
【図18】中心軸に沿って回転可能な本体を示す斜視図である。
【図19】球状の本体自体が水平面で回転移動する例を示す斜視図である。
【図20】球状の本体自体が鉛直面で回転移動する例を示す斜視図である。
【図21】上下方向へ移動可能であり、かつ振動が付与される円柱形状の本体を示す斜視図である。
【図22】本体内への収容物の搬入や搬出のために、傾けられる円柱形状の本体を示す側面図である。
【図23】本体内への収容物の搬入や搬出のために、傾けられる球形状の本体を示す側面図である。
【図24】培養室を示す断面図である。
【図25】培養室の他の例を示す断面図である。
【図26】蓋部により密封される培養室を示す斜視図である。
【図27】小室を備えた培養室を示す断面図である。
【図28】小室が1つの培養室を構成する例を示す断面図である。
【図29】培養室内の移動力発生部を示す断面図である。
【図30】培養室内の移動力発生部の他の例を示す断面図である。
【図31】培養室内の攪拌部を示す断面図である。
【図32】培養室内の攪拌翼の例を示す断面図である。
【図33】培養室に副室が設けられた例を示す断面図である。
【図34】分離機能部の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図35】複数の分離機能部が設けられる例を示す斜視図である。
【図36】分離機能部の一部が、外部に開放した例を示す断面図である。
【図37】分離機能部が取り除かれる例を示す側面図である。
【図38】物理的構成により分離機能部を閉じる例を示す平面図である。
【図39】交換室を示す斜視図である。
【図40】交換室が複数設けられる例を示す斜視図である。
【図41】交換室の内部に小包体を設けた例を示す斜視図である。
【図42】交換室の内部に気体分離管を設けた例を示す斜視図である。
【図43】培養室側を加圧する場合を示す断面図である。
【図44】交換室側を減圧する場合を示す断面図である。
【図45】第1,第2実施形態に係る培養装置が適用されるエタノールの製造方法の各工程及び後述する段階を示したフローチャートである。
【図46】第1実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図47】同培養装置の本体の壁面内を示す斜視図である。
【図48】同培養装置の加減圧構造体を示す斜視図である。
【図49】同培養装置の分離構造部を示す斜視図である。
【図50】好気性条件下で使用するための、第1実施形態に係る培養装置の変形例を示す斜視図である。
【図51】分離構造部に設けられる攪拌翼を示す斜視図である。
【図52】第2実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図53】同培養装置の加減圧構造体を示す斜視図である。
【図54】同培養装置の内圧調整弁を示す斜視図である。
【図55】第3実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図56】第3実施形態に係る培養装置の傾斜角調整歯車を示す斜視図である。
【図57】第3実施形態に係る培養装置の変形例を示す図である。
【図58】第3実施形態に係る培養装置の他の変形例を示す図である。
【図59】第3実施形態に係る培養装置の他の変形例の送気装置を示す図である。
【図60】第4実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図61】同培養装置のカセットを示す斜視図である。
【図62】同培養装置の弁解放ノブを示す斜視図である。
【図63】第5実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図64】第6実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図65】同培養装置の加減圧構造部を示す斜視図である。
【図66】第7実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図67】同培養装置の本体の周方向断面図である。
【図68】同培養装置の本体の部分縦断面図である。
【図69】同培養装置の攪拌部を示す斜視図である。
【図70】第8実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図71】第8実施形態に係る培養装置の交換部を示す斜視図である。
【図72】第9実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図73】第9実施形態に係る培養装置の移動培養部を示す斜視図である。
【図74】第10実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図75】第10実施形態に係る培養装置の移動交換部を示す斜視図である。
【図76】第11実施形態に係る培養装置を示す斜視図である。
【図77】第11実施形態に係る培養装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0269】
1,91,131,151,181,201,221,241,261,271,281,291 本体、
2,92,132,152,182,202 蓋部、
3,100,141,145,210,229,246,278,287,296 分離機能部、
4 開口部、
5,95,134,155,188,205,224,244,263,274,283,292 培養室、
6,96,135,156,206,225,243,264,273,284,297 浸透圧調整室(交換室)、
20 流体収容空間、
21 コイル状チューブ、
29 小室、
31,94,133,154,187,204,223 加減圧構造体(移動力発生部)、
35,36,37,39,123,157,249 攪拌部、
45 小室、
47 小包体、
48 気体分離管(第2気体分離部)、
49 吸引管、
50 交換室用気体排出管、
90,121,130,150,180,200,220,240,260,270,280,290 培養装置、
93,153,186,203,222,242,263 分離構造部(分離部)、
97 気体回収室(交換室)、
98 電極、
102,159,207,227,265,294 調整剤注入管、
103,160,208,226,266,295 調整剤排出管、
104,161,234 培養室用気体注入管、
162,235 培養室用気体排出管、
105 微生物注入管、
108 気体分離機能部、
111 エタノール排出流路、
113,210 気体注入管、
115 熱交換用チューブ、
166 傾斜角調整歯車(攪拌部)、
168 攪拌用突起部(攪拌部)、
169 周方向歯車(攪拌部)、
171 送気装置(培養室用気体注入管)、
231,247 錘装着軸、
232,248 錘部材、
233 管挿通部、
236 錘、
237 浮玉、
262,293 交換部、
267 開閉扉、
272 移動培養部、
276,285 重比重構造体、
277,286 軽比重構造体、
282 移動交換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を格納して微生物を培養する少なくとも1つの培養室と、
前記培養室と隣接する少なくとも1つの交換室と、
前記培養室と交換室の間に設けられ、当該培養室と交換室の間で交換剤を選択的に交換可能な少なくとも1つの分離部と、を有することを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記交換室および培養室の各々は、圧力、浸透圧、印加される電圧、または付与される磁束密度が異なる調整剤を収容することを特徴とする請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記培養室と交換室の間で、圧力、浸透圧、印加される電圧、または付与される磁束密度に差を生じさせる移動力発生部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記培養室及び/若しくは前記交換室内には、微生物を注入可能な微生物注入口が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項5】
前記培養室内及び/若しくは交換室内の収容物に電圧を印加する少なくとも1つの電極を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項6】
前記電極は、アノード電極及びカソード電極を有し、当該アノード電極及びカソード電極が共に前記培養室の収容物外に存在するか、もしくは前記収容物中に存在するか、またはアノード電極及びカソード電極のうち一以上が前記収容物中に存在することを特徴とする請求項5に記載の培養装置。
【請求項7】
前記アノード電極及びカソード電極のうち、アノード電極のみが前記収容物中に存在する、請求項6に記載の培養装置。
【請求項8】
前記電極は、交換室及び/若しくは交換室内の収容物に電流を流し、及び/若しくは放電し、場合によりプラズマを発生させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項9】
前記分離部が、導電性を備えることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項10】
前記交換室には、前記交換剤を含む調整剤を注入する調整剤注入管および調整剤を排出する調整剤排出管の少なくとも一方が連結されるか、若しくは注入および排出の両機能を備えた少なくとも一つの調整剤注排出管が連結されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項11】
前記分離部は液体及び/若しくは流動体の分離機能を有し、前記交換剤は液体及び/若しくは流動体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項12】
前記液体及び/若しくは流動体は、水であることを特徴とする請求項11に記載の培養装置。
【請求項13】
前記分離部は気体分離機能を有し、前記交換剤は気体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項14】
前記交換室には、前記気体分離機能を有する分離部を透過した気体を外部へ排出する交換室用気体排出管が連結されることを特徴とする請求項13に記載の培養装置。
【請求項15】
前記交換室には、前記分離部を透過した気体から、更に所定の気体を選択的に分離する第2気体分離部が設けられ、
前記交換室用気体排出管は、前記第2気体分離部を透過した気体を吸引することを特徴とする請求項14に記載の培養装置。
【請求項16】
前記交換室に、前記交換室内の気体を吸引する吸引管を有し、
第2気体分離部は、前記吸引管により吸引される気体が内部を流通する管形状で形成され、
前記交換室用気体排出管は、前記第2気体分離部の管壁を介して管内部の気体を吸引することを特徴とする請求項15に記載の培養装置。
【請求項17】
前記交換室には、当該交換室内へ気体を注入する交換室用気体注入管が連結されることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項18】
前記交換室には、前記分離部を透過可能な物質を内包して前記交換室内へ供給する小包体が設けられることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項19】
前記培養室には、気体を注入する培養室用気体注入管および気体を排出する培養室用気体排出管の少なくとも一方が連結されるか、若しくは注入および排出の両機能を備えた少なくとも一つの培養室用気体注排出管が連結されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項20】
前記培養室および交換室の少なくとも一方には、開口部が設けられることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項21】
前記開口部は、開閉可能な蓋部で覆われることを特徴とする請求項20に記載の培養装置。
【請求項22】
前記移動力発生部は、前記培養室または交換室の内壁に沿って摺動して培養室または交換室の容積を変化させる摺動部を有することを特徴とする請求項3に記載の培養装置。
【請求項23】
前記分離部が、前記摺動部に設けられることを特徴とする請求項22に記載の培養装置。
【請求項24】
前記摺動部は、外部から回転させることでねじ構造により移動する軸部に連結されて進退可能であることを特徴とする請求項22または23に記載の培養装置。
【請求項25】
前記摺動部は、上下方向へ摺動可能であり、錘部材を載置可能であることを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項26】
前記錘部材は、前記摺動部から延びる錘装着軸に嵌合する形状で形成されることを特徴とする請求項25に記載の培養装置。
【請求項27】
前記培養室を運動させて、内部の収容物を攪拌する攪拌部を有することを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項28】
前記培養室の内部に、当該内部の収容物と接して攪拌を行う攪拌部を有することを特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項29】
前記培養室の内部に、前記摺動部の移動によって回転する攪拌翼を備えた攪拌部を有することを特徴とする請求項22〜26のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項30】
前記培養室に気体を注入する培養室用気体注入管および培養室から気体を排出する培養室用気体排出管の少なくとも一方が、前記摺動部に設けられるか、若しくは注入および排出の両機能を備えた少なくとも一つの培養室用気体注排出管が連結されることを特徴とする請求項22〜26,29のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項31】
前記摺動部は、前記培養室用注入管または前記培養室用排出管を挿通可能であり、及び/若しくは逆流防止弁が設けられた管挿通部を有することを特徴とする請求項30に記載の培養装置。
【請求項32】
前記培養室用注入管または前記培養室用排出管には、開口する端部に、錘もしくは浮部が設けられることを特徴とする請求項31に記載の培養装置。
【請求項33】
前記分離部は、前記分離機能を備えた分離機能部と、前記分離機能部を支持する分離機能部支持部と、前記分離機能部の培養室側を覆って分離機能部を保護する保護体と、を有することを特徴とする請求項1〜32のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項34】
前記培養室の内部に収容されて、前記調整剤用注入管、調整剤用排出管及び/または調整剤用注排出管が連結されて内部に交換室を形成する交換部を有し、当該交換部の表面の少なくとも一部に前記分離部が設けられることを特徴とする請求項10に記載の培養装置。
【請求項35】
前記分離部は、前記培養室を貫通する少なくとも1つの管形状で形成される前記交換部に設けられることを特徴とする請求項34に記載の培養装置。
【請求項36】
前記分離部の培養室側に、通気性を備えた構造体を備えることを特徴とする請求項1〜35のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項37】
前記交換室は、前記培養室内で移動可能な少なくとも1つの移動交換部に設けられ、当該移動交換部の側壁及び/若しくは下壁に分離部が設けられることを特徴とする請求項1〜36のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項38】
前記移動交換部は、下方に重比重構造体が設けられ、上方に軽比重構造体が設けられることを特徴とする請求項37に記載の培養装置。
【請求項39】
前記移動交換部は、内部に与圧を付与しつつ密封可能な密封手段を有することを特徴とする請求項37または38に記載の培養装置。
【請求項40】
前記交換部を複数備え、前記交換部によって交換剤が異なることを特徴とする請求項34,35,37〜39のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項41】
前記培養室は、前記交換室内で移動可能な少なくとも1つの移動培養部に設けられ、当該移動培養部の側壁及び/若しくは下壁に分離部が設けられることを特徴とする請求項1〜33のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項42】
前記移動培養部は、下方に重比重構造体が設けられ、上方に軽比重構造体が設けられることを特徴とする請求項41に記載の培養装置。
【請求項43】
前記移動培養部は、内部に与圧を付与しつつ密封可能な密封手段を有することを特徴とする請求項41または42に記載の培養装置。
【請求項44】
前記培養室および交換室の少なくとも一方の壁面には、流体が内包された温度調節手段が設けられることを特徴とする請求項1〜43のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項45】
前記温度調節手段内の流体は、外部と循環可能であることを特徴とする請求項44に記載の培養装置。
【請求項46】
前記培養室または交換室は、上方が開口した槽構造で形成され、側方に開閉扉が設けられることを特徴とする請求項1〜45のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項47】
前記培養室および交換室の少なくとも一方は、互いに流通が制限された複数の小室に分割されることを特徴とする請求項1〜46のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項48】
前記蓋部に、内外を連絡させる連絡孔が設けられることを特徴とする請求項21に記載の培養装置。
【請求項49】
前記連絡孔に、流通を制限する流通制限部が設けられることを特徴とする請求項48に記載の培養装置。
【請求項50】
前記分離部は、半透膜、親水性コンクリート、親水性セラミック、イオンチャージ物質、活性炭、砂、土、合成高分子物質、天然高分子物質、金属からなる群より選択される一種以上を有することを特徴とする請求項1〜49のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項51】
前記分離部を構成する物質が電荷を帯びており、電荷を帯びた物質若しくはイオンの通過を選択的に阻害することを特徴とする請求項1〜50のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項52】
前記交換剤は、固体、固形物、液体、液状物、気体、プラズマ、素粒子、生物からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項1〜51のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項53】
前記気体は、空気、酸素、アンモニアガス、硫化水素ガス、有機ガス、エタノールガス、メタンガス、活性酸素、オゾンからなる群より選択される一種以上であり、
前記液体は、水、水を溶液とした液体混合物、コロイド溶液からなる群より選択される一種以上であり、
前記水を溶媒とした液体混合物は、陽イオン、陰イオン、無機物質、有機物質からなる群より選択される一種以上であり、
前記素粒子は、電子流、電流からなる群より選択される一種以上であり、
前記生物は、古細菌、真正細菌、原生生物、真核生物からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項52に記載の培養装置。
【請求項54】
培養室内に有機物質を格納して微生物を培養する際に、当該培養室に隣接する交換室と培養室の間で、当該培養室と交換室の間に設けられる分離部を介して交換剤を選択的に交換させることを特徴とする培養方法。
【請求項55】
前記交換室および培養室の各々に、圧、電圧または磁束密度が異なる調整剤を収容することで、前記分離部を介して前記交換剤を交換することを特徴とする請求項54に記載の培養方法。
【請求項56】
前記培養室と交換室の間で、圧力、浸透圧、印加される電圧、または付与される磁束密度に差を生じさせて、前記分離部を介して交換剤を移動させることを特徴とする請求項54または55に記載の培養方法。
【請求項57】
前記培養室内の収容物に電圧を印加することで、当該培養室内の腐敗菌を殺菌することを特徴とする請求項54〜56のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項58】
前記培養室内の収容物に電圧を印加することによる殺菌は、電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極が共に前記収容物外に存在するか、もしくは前記収容物中に存在するか、または電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極のうち一以上が前記収容物中に存在することを特徴とする請求項56または57に記載の培養方法。
【請求項59】
前記電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極のうち、アノードの電極のみが前記収容物中に存在することを特徴とする請求項58に記載の培養方法。
【請求項60】
前記培養室内の収容物に電圧を印加することによる殺菌において、印加された電圧により発生する衝撃波を利用して前記有機物質に存在する固形物を破砕し、前記有機物質の均一化が併せて行われることを特徴とする請求項57〜59のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項61】
前記培養室及び/若しくは交換室内の収容物に電流を流し、及び/若しくは放電し、場合によりプラズマを発生させることを特徴とする請求項57〜60のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項62】
前記分離部は液体及び/若しくは流動体の分離機能を有し、当該分離部を介して培養室と交換室の間で液体及び/若しくは流動体を移動させることを特徴とする請求項54〜61のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項63】
前記液体及び/若しくは流動体は、水であることを特徴とする請求項62に記載の培養方法。
【請求項64】
前記分離部は気体分離機能を有し、当該分離部を介して培養室から交換室へ気体を分離することを特徴とする請求項54〜61のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項65】
前記培養室または当該培養室内に設けられる攪拌部を運動させることで、当該培養室の内部の収容物を攪拌することを特徴とする請求項54〜64のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項66】
前記交換剤が異なる交換室を複数設けて、異なる交換剤を前記培養室との間で同時に移動させることを特徴とする請求項54〜65のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項67】
前記交換室の内部の交換剤を、培養する工程に応じて変更することを特徴とする請求項54〜66のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項68】
前記培養室を内部に有し、側壁及び/若しくは下壁に分離部を設けた少なくとも1つの移動培養部を、前記交換室内で移動させつつ培養することを特徴とする請求項54〜67のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項69】
前記交換室を内部に有し、側壁及び/若しくは下壁に分離部を設けた少なくとも1つの移動交換部を、前記培養室内で移動させつつ培養することを特徴とする請求項54〜68のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項70】
前記培養室および交換室の少なくとも一方の壁面に流体を内包もしくは循環させて、前記培養室または交換室の温度を調節することを特徴とする請求項54〜69のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項71】
前記分離部は、半透膜、親水性コンクリート、親水性セラミック、イオンチャージ物質、活性炭、砂、土、合成高分子物質、天然高分子物質、金属からなる群より選択される一種以上を有することを特徴とする請求項54〜70のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項72】
前記分離部を構成する物質が電荷を帯びており、電荷を帯びた物質若しくはイオンの通過を選択的に阻害することを特徴とする請求項54〜71のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項73】
前記交換剤は、固体、固形物、液体、液状物、気体、プラズマ、素粒子、生物からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項54〜72のいずれか1項に記載の培養方法。
【請求項74】
前記気体は、空気、酸素、アンモニアガス、硫化水素ガス、有機ガス、エタノールガス、メタンガス、活性酸素、オゾンからなる群より選択される一種以上であり、
前記液体は、水、水を溶媒とした液体混合物、コロイド溶液からなる群より選択される一種以上であり、
前記水を溶媒とした液体混合物は、陽イオン、陰イオン、無機物質、有機物質からなる群より選択される一種以上であり、
前記素粒子は、電子流、電流からなる群より選択される一種以上であり、
前記生物は、古細菌、真正細菌、原生生物、真核生物からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項73に記載の培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【公開番号】特開2009−273399(P2009−273399A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127189(P2008−127189)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(508104570)旭川ポートリー株式会社 (4)
【出願人】(508104581)株式会社久保組 (4)
【出願人】(507060642)医療法人社団瓔玉会 (4)
【出願人】(508103986)
【出願人】(508104592)
【出願人】(508104606)
【Fターム(参考)】