培養装置
【課題】 棚板と棚受けとが互いに接触する部分にも殺菌ガスを行き渡り易くする。
【解決手段】 培養物が載置される棚板と、棚板を略水平に保持する棚受けと、棚受けを略水平に保持する複数の棚支柱とを、殺菌する際に殺菌ガスを循環させる培養室の内部に備える培養装置において、棚受けは、培養室の各側面から離間する方向に延在し、棚板の下面の両側端が載置される一対の載置片を有し、一対の載置片は、棚板の下面の両側端に対し、棚板が棚受けに略水平に保持される際に線接触することを特徴とする。
【解決手段】 培養物が載置される棚板と、棚板を略水平に保持する棚受けと、棚受けを略水平に保持する複数の棚支柱とを、殺菌する際に殺菌ガスを循環させる培養室の内部に備える培養装置において、棚受けは、培養室の各側面から離間する方向に延在し、棚板の下面の両側端が載置される一対の載置片を有し、一対の載置片は、棚板の下面の両側端に対し、棚板が棚受けに略水平に保持される際に線接触することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば細胞や微生物等の培養物を培養室内で培養する培養装置がある。この培養装置は、例えば、培養物を載置する棚板と、この棚板を水平に保持する棚受けと、この棚受けを水平に保持する複数の棚支柱とを培養室の内部に備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
培養の後に次の培養を開始する前には、培養室内を清掃する必要がある。そこで、先の培養に使用した棚板、棚受け、及び棚支柱をそのままの状態にして、培養室内で、例えば過酸化水素(H2O2)ガス等の殺菌ガスをファンによって循環させて、これら棚に係る部材や培養室の内面等に付着した先の培養に起因する菌を殺菌する(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−275号公報
【特許文献2】特開2007−259715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した棚板と棚受けとの間には面接触によって殺菌ガスの行き渡り難い場所があるため、この場所の殺菌が不十分となる虞がある。このため、培養装置の殺菌効果が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための発明は、培養物が載置される棚板と、前記棚板を略水平に保持する棚受けと、前記棚受けを略水平に保持する複数の棚支柱とを、殺菌する際に殺菌ガスを循環させる培養室の内部に備える培養装置であって、前記棚受けは、前記培養室の各側面から離間する方向に延在し、前記棚板の下面の両側端が載置される一対の載置片を有し、前記一対の載置片は、前記棚板の下面の両側端に対し、前記棚板が前記棚受けに略水平に保持される際に線接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、棚板及び棚受け、更に棚受け及び棚支柱が互いに接触する部分にも殺菌ガスが行き渡り易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0008】
===培養装置の構成===
図1及び図2を参照しつつ、本実施の形態の培養装置1の構成例について説明する。尚、図1は、本実施の形態の培養装置1の構成例の側面断面図であり、図2は、殺菌運転を行なう場合の図1の培養装置1の構成例の側面断面図である。
【0009】
図1に例示されるように、培養装置1は、棚板43と、棚受け42と、棚支柱41とを培養室4b内に備えている。尚、この培養室4b内では、例えば細胞や微生物等の培養物が培養される。
【0010】
培養室4bは内箱4の内部に形成され、この内箱4は外箱2の内部に外気と断熱した状態で収容されている。内箱4は、例えばステンレス製の略直方形状の箱であり、外箱2は、例えばステンレス製且つ内箱4と略相似形状の箱である。内箱4の前方側(+Y側)の開口には、内扉4aが所定のヒンジ(不図示)を介して開閉可能に設けられている。この内扉4aは、例えば強化ガラス製で平板形状をなしており、内箱4の開口に対しパッキン(不図示)を介して閉じると、内箱4内が外部に対し気密になる。外箱2の前方側の開口には、外扉3が所定のヒンジ(不図示)を介して開閉可能に設けられている。この外扉3は、例えば金属製で平板形状をなしている。
【0011】
棚板43は、培養物を載置するための例えばステンレス製の板部材である。
棚受け42は、棚板43を水平(XY面と平行)に保持するための例えばステンレス製の部材であり、培養室4bの一方の側面側(+X側)にその長手方向を水平方向(Y軸方向)にして配設される。この棚受け42と、培養室4bの他方の側面側(−X側)に配設される棚受け42’(後述する図8参照)とは、培養室4b内の対向する側面間の中央で当該側面に平行な平面(不図示)を境として、互いに鏡面対称な形状を有している。以後、棚受け42’の説明については、後述する図8を参照する説明以外は、棚受け42の説明と同様であるとして省略する。
【0012】
棚支柱41は、内箱4の±X側に棚受け42を水平に配設するための例えばステンレス製の部材であり、±X側の内面にその長手方向を垂直方向(Z軸方向)にして例えば2本ずつ配設される。この棚支柱41はその長手方向に沿って例えば一定間隔で複数の嵌入孔411bを有しており、この嵌入孔411bを介して棚受け42が係止可能となっている。
【0013】
尚、外箱2の内面には、保温のための断熱材(不図示)が設けられており、この断熱材と内箱4との間には更なる保温のために例えば空気の循環路としてのエアジャケット6が形成されている。エアジャケット6には、培養室4b内の温度を調節するためのヒータ(不図示)が取り付けられている。また、外箱2の後方側(−Y側)の外面には、例えば、培養室4b内の温度を検出するためのセンサ(不図示)、培養室4b内に二酸化炭素等のガスを噴射するためのノズル(不図示)、培養室4b内の二酸化炭素等の濃度を検出するためのセンサ(不図示)等を有するセンサボックス7が設けられている。ノズル及びセンサは、例えば、外箱2の後方側の外面から内箱2の後方側の内面にかけて穿設された孔(不図示)を通じて外箱2の外部から取り付けられている。また、センサは、例えば、配線(不図示)を介して制御基板(不図示)と電気的に接続されている。外箱2の後方側の外面及びセンサボックス7は、内側に断熱材(不図示)を有するカバー21で覆われている。
【0014】
また、外扉3は、保温のための断熱材(不図示)や培養室4b内の温度を調節するためのヒータ(不図示)等が内側に設けられた金属製の扉本体31と、この扉本体31における外箱2の開口と対向する凸部31aに取り付けられたパッキン33とを有している。外扉3は、扉本体31の前方側に、制御パネル32を更に有している。この制御パネル32は、培養室4b内の温度や二酸化炭素の濃度等を設定するためのキー(不図示)及びこれらの現在値を表示するためのディスプレイ(不図示)を有している。
【0015】
更に、内箱4の後方側の壁と、例えばステンレス製の壁板5とは、空気の風路を形成するためのダクト44を構成している。このダクト44内の上方(+Z側)には、ファン5a(シロッコファン)が設けられ、下方(−Z側)には、同ダクト43を通過する空気に含まれる雑菌及び同ダクト43の下方に置かれた加湿トレイ45内の加湿水に含まれる雑菌を殺菌するための紫外線ランプ52が設けられている。
【0016】
図1の白抜きの矢印で示されるように、培養室4b内で培養物を培養する場合、ファン5aの一定方向の回転によって、培養室4b上方の棚板43側の空気は、吸入口51aを通じてダクト44内に流入し、同ダクト44内を上方から下方へ流れ、加湿トレイ45内の加湿水で加湿された後、この加湿された空気は、カバー46の前方側の孔46aを通過して、棚板43側に戻るようになっている。このような空気の循環によって、培養室4b内は、例えば、略均一な温度、湿度、及び二酸化炭素等のガス濃度に維持される。
【0017】
図2に示されるように、培養室4b内を殺菌する場合、培養室4bの底面から加湿トレイ45及びカバー46を取り外し、ガス発生器47を置いて、これに例えば過酸化水素ガスを発生させつつ、ダクト44内のファン5aを一定方向に回転させる。尚、ガス発生器47は、例えば、過酸化水素水(過酸化水素ガスが溶解した水溶液)を貯蔵するタンク(不図示)と、このタンク内の過酸化水素水を霧化するための超音波振動子(不図示)とを有している。
【0018】
===棚支柱・棚受け・棚板の構成===
図3乃至図5を参照しつつ、前述した棚支柱41、棚受け42、及び棚板43の構成例についてより詳細に説明する。尚、図3(a)は、図1の棚支柱41を−Z方向に見た図であり、図3(b)は、図1の棚支柱41を+X方向に見た図である。図4(a)は、図1の棚受け42を−Y方向に見た図であり、図4(b)は、図1の棚受け42を+X方向に見た図であり、図4(c)は、図1の棚受け42を+Y方向に見た図である。図5(a)は、図1の棚板43を−Z方向に見た図であり、図5(b)は、図1の棚板43を+X方向に見た図である。
【0019】
<<<棚支柱>>>
図3(a)及び図3(b)に例示されるように、棚支柱41は、例えば、1枚の板部材に穿孔加工及び折り曲げ加工を施して形成されるものである。この棚支柱41は、折り曲げ板(曲板)411と、一対の側片412と、一対の当接片413とを有している。
【0020】
折り曲げ板411は、その長手方向(Z軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)の中央線411aを折り目として、折り曲げ板411から当接片413への向きに見て山折となるように折り曲げられた板状の部材である。図3(a)に示す折り曲げ角度θは、例えば170度である。図3(b)に例示されるように、折り曲げ板411は、複数の矩形状の嵌入孔411bを、中央線411aに沿って、例えば一定間隔で有している。尚、図3(b)に例示されるように、折り曲げ板411は、Z軸方向の両端部のそれぞれにおいて、中心のずれた異径の円を重ねた形状の孔411cを有している。内箱4の内面からの所定の突起部材(不図示)をこれらの孔411cに嵌入させることによって、同内面に対し棚支柱411が着脱可能に配設されるようになっている。
【0021】
一対の側片412は、折り曲げ板411のY軸方向に沿った両側端にそれぞれ連接しつつ折れ曲がって、略X軸方向に延在する板状の部材である。尚、図3(a)の例示では、一対の側片412は、それぞれ折り曲げ板411から培養室4bの側面に近づくほど相互のY軸方向に沿った間隙が狭くなる方向に折れ曲がっている。
【0022】
一対の当接片413は、一対の側片412の折り曲げ板411と連接していない側の端部にそれぞれ連接しつつ折れ曲がって、略Y軸方向に延在する板状の部材である。尚、図3(a)の例示では、一対の当接片413は、それぞれが連接する側片412からY軸方向に沿って中央側へ向かうほど培養室4bの側面から離間する方向に折れ曲がっている。
【0023】
<<<棚受け>>>
図4(a)、図4(b)、及び図4(c)に例示されるように、棚受け42は、例えば、1枚の板部材に穿孔加工及び折り曲げ加工を施して形成されるものである。この棚受け42は、垂直板421と、載置片422とを有している。また、この棚受け42は、案内片423と、係止片424及び係止片425と、停止片426とを有している。
【0024】
垂直板421は、長手方向の両端部がその中央部に比べて上下方向(Z軸方向)に幅広な板状の部材である。
載置片422は、垂直板421の下端(−Z側端)に連接しつつ培養室4bの側面から離間する方向(即ち、棚板43に近づく方向)(−X方向)に折れ曲がって、この垂直板421に対し角度θ’をなして延在する板状の部材である。図3(a)に示す折り曲げ角度θ’は、例えば80度である。
【0025】
案内片423は、垂直板421の上端(+Z側端)に連接しつつ培養室4bの側面から離間する方向に折れ曲がって、この垂直板421に対し直交して延在する板状の部材である。
係止片424は、垂直板421の前方側(+Y側)の端部において、3辺の隙間424a、424b、424cで画成され、1辺の折り目424dでつながっている舌片であって、この舌片は、折り目424dで、培養室4bの側面に近づく方向(+X方向)に折れ曲がって、L字形状をなして上下方向に延在する。
【0026】
係止片425は、垂直板421の後方側(−Y側)の端部において、3辺の隙間425a、425b、425cで画成され、1辺の折り目425dでつながっている舌片であって、この舌片は、折り目425dで、培養室4bの側面に近づく方向(+X方向)に折れ曲がって、L字形状をなして前後方向に延在する。
このような鉤形状の向きが互いに異なる係止片424及び係止片425を2つの嵌入孔411bにそれぞれ嵌入させることによって、棚支柱41に対し棚受け42がはずれ難くなる。
停止片426は、垂直板421における後方側端に連接しつつ培養室4bの側面から離間する方向に折れ曲がって、この垂直板421に対し直交して延在する板状の部材である。
【0027】
<<<棚板>>>
図5(a)及び図5(b)に例示されるように、棚板43は、例えば、1枚の板部材に穿孔加工及び折り曲げ加工を施して形成されるものである。この棚板43は、底面板431と、側面片432と、正面片433と、背面片434とを有している。
底面板431は平板部材であり、一対の側面片432は底面板431の±X側端に連接しつつ上側(+Z側)に直角に折れ曲がった板状の部材であり、正面片433は底面板431の+Y側端に連接しつつ下側(−Z側)に90度以上折れ曲がった板状の部材であり、背面片434は底面板431の−Y側端に連接しつつ上側に90度以上折れ曲がった板状の部材である。
尚、底面板431は、培養室4b内を循環する空気が通過するための複数の孔431aを有している。
【0028】
===棚支柱・棚受け・棚板間の接触関係===
図6乃至図8を参照しつつ、前述した構成を備えた棚支柱41、棚受け42、及び棚板43の間での接触関係について説明する。尚、図6は、図1の棚支柱41及び棚受け42を+X方向に見た図である。図7は、図1の棚支柱41及び棚受け42を−Z方向に見た図である。図8は、図7のA−A’面における内箱4の内面、棚支柱41、及び棚受け42の断面と、同断面における棚板43及び棚受け42’の断面とを示す断面図である。
【0029】
図6に例示されるように、2本の棚支柱41は、培養室4bの側面に沿って水平方向(Y軸方向)に並列して配設されており、棚受け42は、高さが等しい一対の嵌入孔411bに対して係止片424及び係止片425がそれぞれ係止されることによって、培養室4bの側面に沿って水平方向に保持される。
【0030】
図7に例示されるように、棚支柱41の一対の当接片413における培養室4bの側面に近づく側(+X側)の面と、内箱4の内面とは、長手方向に沿った線Qでそれぞれ線接触している。これにより、内箱4の内面及び棚支柱41の間における互いに接触している部分が線Qに限られるため、当該線Qの周囲近傍における露出面に対し略等しく殺菌ガスが行き渡り得る。よって、当該露出面の殺菌が十分となり、これは、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。
【0031】
また、図7に例示されるように、棚支柱41の折り曲げ板411における培養室4bの側面から離間する側(−X側)の面と、棚受け42の垂直板421における培養室4bの側面に近づく側の面とは、長手方向に沿った線P(即ち、中央線411a)で線接触している。また、棚支柱41の折り曲げ板411における培養室4bの側面に近づく側の面と、棚受け42の係止片424における培養室4bの側面から離間する側の面の前後方向両端(±Y側端)とは、一対の長手方向に沿った線Rで線接触している。また、棚支柱41の折り曲げ板411における培養室4bの側面に近づく側の面と、棚受け42の係止片425における培養室4bの側面から離間する側の面の後方側端(−Y側端)とは、長手方向に沿った線Sで線接触している。これにより、棚支柱41及び棚受け42の間における互いに接触している部分が線P、R、及びSに限られるため、当該線P、R、及びSのそれぞれの周囲近傍における露出面に対し略等しく殺菌ガスが行き渡り得る。よって、当該露出面の殺菌が十分となり、これは、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。また、このような線P、R、及びSでの線接触を、折り曲げ板411のなす角度θを180度未満とする構成によって実現できる。
【0032】
図8に例示されるように、一対の棚受け42、42’に棚板43を載置する際の載置片422における培養室4bの側面から離間する側(−X側)の先端と、底面板431の下面の+X側端とは、前後方向(Y軸方向)に沿った線Tで線接触している。
【0033】
また、これと、培養室4b内の対向する側面間の中央で当該側面に平行な平面(不図示)を境として鏡面対称の関係をもって、一対の棚受け42、42’に棚板43を載置する際の載置片422’における培養室4bの側面から離間する側(+X側)の先端と、底面板431の下面の−X側端とは、前後方向に沿った線Tで線接触している。つまり、一対の載置片422、422’が、培養室4bの各側面から離間するほど斜め上方に延在することによって、一対の棚受け42、42’に棚板43を載置する際に、この棚板43は、その下面の両側端が載置片422及び載置片422’それぞれの先端に対し線接触しつつ水平に保持される。これにより、棚受け42及び棚板43の間における互いに接触している部分が線Tの部分に限られるため、当該線Tの周囲近傍における露出面に対し略等しく殺菌ガスが行き渡り得る。よって、当該露出面の殺菌が十分となり、これは、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。また、このような線Tでの線接触を、垂直板421に対する載置片422のなす角度θ’を90度未満とする構成によって実現できる。
【0034】
尚、図示していないが、培養室4b内における棚板43の前後方向(Y軸方向)の位置は、この棚板43の底面板431の後方側端(−Y側端)が、棚受け42の停止片426に線接触して当接することによって定まる。この線接触は、棚板43の背面片434が底面板431の後方側端(−Y側端)に連接しつつ上方(+Z側)に90度以上折れ曲がっていることによる。この線接触も、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。
【0035】
===その他の実施の形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0036】
前述した実施の形態では、一対の載置片422、422’は、培養室4bの各側面から離間するほど斜め上方に延在するもの(図4(a)の角度θ’(<90度))であったが、これに限定されるものではない。載置片422は、垂直板421に対し直交するように折り曲げられているとしても、培養室4bの側面から離間する側の先端が例えば上方(+Z側)に再度折り曲げられて、当該先端で棚板43の底面板431の下面と線接触するものであってもよい。
【0037】
前述した実施の形態では、折り曲げ板411は、中央線411aを折り目として折り曲げられていたが、これに限定されるものではない。折り曲げ板411は、当該折り曲げ板411上で長手方向と直交する方向に沿った略中央で、培養室4bの側面から最も離間するような形状をなすものであれば、例えば単に湾曲面をなすものであってもよい。
【0038】
前述した実施の形態では、載置片422と底面板431の下面との線Tでの接触は、載置片422の垂直板421に対する角度θ’(<90度)によって実現されたが、これに限定されるものではない。図9に例示されるように、例えば、棚受け92の垂直板921に対して載置片922が直交していても、棚板43’が底面板431’と側面片432’との間の下側(−Z側)に曲げ突起435’を有し、載置片922と曲げ突起435’とが線T’で線接触するものであってもよい。尚、図9は、図8と同様の断面における棚受け92及び棚板43’の断面図である。
【0039】
前述した実施の形態では、内箱4の内面、棚支柱41、棚受け42、及び棚板43は互いに線P、Q、R、S、及びTで線接触するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、図10及び図11に例示されるように、これらの接触のし方は点接触であってもよい。尚、図10は、図7と同様の方向から見た内箱4の内面、棚支柱81、及び棚受け82の図であり、図11は、図8と同様の断面における内箱4の内面、棚支柱81、棚受け82、及び棚板43の断面図である。
【0040】
図10に例示されるように、棚支柱81の一対の当接片813における培養室4bの側面に近づく側(+X側)の面(YZ面と平行)の略半球面形状の突起813aと、内箱4の内面とは点Q’で点接触している。また、棚支柱81の平板811における培養室4bの側面から離間する側(−X側)の面(YZ面と平行)の略半球面形状の突起811aと、棚受け82の垂直板821の+X側の面とは点P’で点接触している。また、棚支柱81の平板811における培養室4bの側面に近づく側(+X側)の面(YZ面と平行)の略半球面形状の突起811bと、棚受け82の係止片824における培養室4bの側面から離間する側の面の±Y側端とは点R’で点接触している。
【0041】
図11に例示されるように、棚受け82の載置片822の上面(XY面と平行)の略半球面形状の突起822aと、棚板43の底面板431の下面の+X側端とは点T”で点接触している。
【0042】
尚、図10及び図11で例示した突起811a、811b、813a、822aは、例えば板部材に対し、当該突起が形成される側と相反する側の面から当該突起と相似形状の工具でこれらの突起が生じる程度に押圧して形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態の培養装置の一例の側面断面図である。
【図2】殺菌運転を行なう場合の図1の培養装置1の構成例の側面断面図である。
【図3】(a)は、図1の棚支柱を−Z方向に見た図であり、(b)は、図1の棚支柱を+X方向に見た図である。
【図4】(a)は、図1の棚受けを−Y方向に見た図であり、(b)は、図1の棚受けを+X方向に見た図であり、(c)は、図1の棚受けを+Y方向に見た図である。
【図5】(a)は、図1の棚板を−Z方向に見た図であり、(b)は、図1の棚板を+X方向に見た図である。
【図6】図1の棚支柱及び棚受けを+X方向に見た図である。
【図7】図1の棚支柱及び棚受けを−Z方向に見た図である。
【図8】図7のA−A’面における内箱の内面、棚支柱、及び棚受け42の断面と、同断面における棚板及び棚受け42’の断面とを示す断面図である。
【図9】図8と同様の断面における棚受け及び棚板の断面図である。
【図10】図7と同様の方向から見た内箱の内面、棚支柱、及び棚受けの図である。
【図11】図8と同様の断面における内箱の内面、棚支柱、棚受け、及び棚板の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 培養装置 2 外箱 3 外扉
4 内箱 4a 内扉 4b 培養室
5 壁板 5a ファン 6 エアジャケット
7 センサボックス 21 カバー 31 扉本体
31a 凸部 32 制御パネル 33 パッキン
41 棚支柱 42、42’ 棚受け 43 棚板
44 ダクト 45 加湿トレイ 46 カバー
46a 孔 47 ガス発生器 51a 吸入口
52 紫外線ランプ 411 折り曲げ板 411a 中央線
411b 嵌入孔 411c 孔 412 側片
413 当接片 421 垂直板 422 載置片
423 案内片 424、425 係止片 426 停止片
431 底面板 432 側面片 433 正面片
434 背面片
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば細胞や微生物等の培養物を培養室内で培養する培養装置がある。この培養装置は、例えば、培養物を載置する棚板と、この棚板を水平に保持する棚受けと、この棚受けを水平に保持する複数の棚支柱とを培養室の内部に備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
培養の後に次の培養を開始する前には、培養室内を清掃する必要がある。そこで、先の培養に使用した棚板、棚受け、及び棚支柱をそのままの状態にして、培養室内で、例えば過酸化水素(H2O2)ガス等の殺菌ガスをファンによって循環させて、これら棚に係る部材や培養室の内面等に付着した先の培養に起因する菌を殺菌する(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−275号公報
【特許文献2】特開2007−259715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した棚板と棚受けとの間には面接触によって殺菌ガスの行き渡り難い場所があるため、この場所の殺菌が不十分となる虞がある。このため、培養装置の殺菌効果が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための発明は、培養物が載置される棚板と、前記棚板を略水平に保持する棚受けと、前記棚受けを略水平に保持する複数の棚支柱とを、殺菌する際に殺菌ガスを循環させる培養室の内部に備える培養装置であって、前記棚受けは、前記培養室の各側面から離間する方向に延在し、前記棚板の下面の両側端が載置される一対の載置片を有し、前記一対の載置片は、前記棚板の下面の両側端に対し、前記棚板が前記棚受けに略水平に保持される際に線接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、棚板及び棚受け、更に棚受け及び棚支柱が互いに接触する部分にも殺菌ガスが行き渡り易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0008】
===培養装置の構成===
図1及び図2を参照しつつ、本実施の形態の培養装置1の構成例について説明する。尚、図1は、本実施の形態の培養装置1の構成例の側面断面図であり、図2は、殺菌運転を行なう場合の図1の培養装置1の構成例の側面断面図である。
【0009】
図1に例示されるように、培養装置1は、棚板43と、棚受け42と、棚支柱41とを培養室4b内に備えている。尚、この培養室4b内では、例えば細胞や微生物等の培養物が培養される。
【0010】
培養室4bは内箱4の内部に形成され、この内箱4は外箱2の内部に外気と断熱した状態で収容されている。内箱4は、例えばステンレス製の略直方形状の箱であり、外箱2は、例えばステンレス製且つ内箱4と略相似形状の箱である。内箱4の前方側(+Y側)の開口には、内扉4aが所定のヒンジ(不図示)を介して開閉可能に設けられている。この内扉4aは、例えば強化ガラス製で平板形状をなしており、内箱4の開口に対しパッキン(不図示)を介して閉じると、内箱4内が外部に対し気密になる。外箱2の前方側の開口には、外扉3が所定のヒンジ(不図示)を介して開閉可能に設けられている。この外扉3は、例えば金属製で平板形状をなしている。
【0011】
棚板43は、培養物を載置するための例えばステンレス製の板部材である。
棚受け42は、棚板43を水平(XY面と平行)に保持するための例えばステンレス製の部材であり、培養室4bの一方の側面側(+X側)にその長手方向を水平方向(Y軸方向)にして配設される。この棚受け42と、培養室4bの他方の側面側(−X側)に配設される棚受け42’(後述する図8参照)とは、培養室4b内の対向する側面間の中央で当該側面に平行な平面(不図示)を境として、互いに鏡面対称な形状を有している。以後、棚受け42’の説明については、後述する図8を参照する説明以外は、棚受け42の説明と同様であるとして省略する。
【0012】
棚支柱41は、内箱4の±X側に棚受け42を水平に配設するための例えばステンレス製の部材であり、±X側の内面にその長手方向を垂直方向(Z軸方向)にして例えば2本ずつ配設される。この棚支柱41はその長手方向に沿って例えば一定間隔で複数の嵌入孔411bを有しており、この嵌入孔411bを介して棚受け42が係止可能となっている。
【0013】
尚、外箱2の内面には、保温のための断熱材(不図示)が設けられており、この断熱材と内箱4との間には更なる保温のために例えば空気の循環路としてのエアジャケット6が形成されている。エアジャケット6には、培養室4b内の温度を調節するためのヒータ(不図示)が取り付けられている。また、外箱2の後方側(−Y側)の外面には、例えば、培養室4b内の温度を検出するためのセンサ(不図示)、培養室4b内に二酸化炭素等のガスを噴射するためのノズル(不図示)、培養室4b内の二酸化炭素等の濃度を検出するためのセンサ(不図示)等を有するセンサボックス7が設けられている。ノズル及びセンサは、例えば、外箱2の後方側の外面から内箱2の後方側の内面にかけて穿設された孔(不図示)を通じて外箱2の外部から取り付けられている。また、センサは、例えば、配線(不図示)を介して制御基板(不図示)と電気的に接続されている。外箱2の後方側の外面及びセンサボックス7は、内側に断熱材(不図示)を有するカバー21で覆われている。
【0014】
また、外扉3は、保温のための断熱材(不図示)や培養室4b内の温度を調節するためのヒータ(不図示)等が内側に設けられた金属製の扉本体31と、この扉本体31における外箱2の開口と対向する凸部31aに取り付けられたパッキン33とを有している。外扉3は、扉本体31の前方側に、制御パネル32を更に有している。この制御パネル32は、培養室4b内の温度や二酸化炭素の濃度等を設定するためのキー(不図示)及びこれらの現在値を表示するためのディスプレイ(不図示)を有している。
【0015】
更に、内箱4の後方側の壁と、例えばステンレス製の壁板5とは、空気の風路を形成するためのダクト44を構成している。このダクト44内の上方(+Z側)には、ファン5a(シロッコファン)が設けられ、下方(−Z側)には、同ダクト43を通過する空気に含まれる雑菌及び同ダクト43の下方に置かれた加湿トレイ45内の加湿水に含まれる雑菌を殺菌するための紫外線ランプ52が設けられている。
【0016】
図1の白抜きの矢印で示されるように、培養室4b内で培養物を培養する場合、ファン5aの一定方向の回転によって、培養室4b上方の棚板43側の空気は、吸入口51aを通じてダクト44内に流入し、同ダクト44内を上方から下方へ流れ、加湿トレイ45内の加湿水で加湿された後、この加湿された空気は、カバー46の前方側の孔46aを通過して、棚板43側に戻るようになっている。このような空気の循環によって、培養室4b内は、例えば、略均一な温度、湿度、及び二酸化炭素等のガス濃度に維持される。
【0017】
図2に示されるように、培養室4b内を殺菌する場合、培養室4bの底面から加湿トレイ45及びカバー46を取り外し、ガス発生器47を置いて、これに例えば過酸化水素ガスを発生させつつ、ダクト44内のファン5aを一定方向に回転させる。尚、ガス発生器47は、例えば、過酸化水素水(過酸化水素ガスが溶解した水溶液)を貯蔵するタンク(不図示)と、このタンク内の過酸化水素水を霧化するための超音波振動子(不図示)とを有している。
【0018】
===棚支柱・棚受け・棚板の構成===
図3乃至図5を参照しつつ、前述した棚支柱41、棚受け42、及び棚板43の構成例についてより詳細に説明する。尚、図3(a)は、図1の棚支柱41を−Z方向に見た図であり、図3(b)は、図1の棚支柱41を+X方向に見た図である。図4(a)は、図1の棚受け42を−Y方向に見た図であり、図4(b)は、図1の棚受け42を+X方向に見た図であり、図4(c)は、図1の棚受け42を+Y方向に見た図である。図5(a)は、図1の棚板43を−Z方向に見た図であり、図5(b)は、図1の棚板43を+X方向に見た図である。
【0019】
<<<棚支柱>>>
図3(a)及び図3(b)に例示されるように、棚支柱41は、例えば、1枚の板部材に穿孔加工及び折り曲げ加工を施して形成されるものである。この棚支柱41は、折り曲げ板(曲板)411と、一対の側片412と、一対の当接片413とを有している。
【0020】
折り曲げ板411は、その長手方向(Z軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)の中央線411aを折り目として、折り曲げ板411から当接片413への向きに見て山折となるように折り曲げられた板状の部材である。図3(a)に示す折り曲げ角度θは、例えば170度である。図3(b)に例示されるように、折り曲げ板411は、複数の矩形状の嵌入孔411bを、中央線411aに沿って、例えば一定間隔で有している。尚、図3(b)に例示されるように、折り曲げ板411は、Z軸方向の両端部のそれぞれにおいて、中心のずれた異径の円を重ねた形状の孔411cを有している。内箱4の内面からの所定の突起部材(不図示)をこれらの孔411cに嵌入させることによって、同内面に対し棚支柱411が着脱可能に配設されるようになっている。
【0021】
一対の側片412は、折り曲げ板411のY軸方向に沿った両側端にそれぞれ連接しつつ折れ曲がって、略X軸方向に延在する板状の部材である。尚、図3(a)の例示では、一対の側片412は、それぞれ折り曲げ板411から培養室4bの側面に近づくほど相互のY軸方向に沿った間隙が狭くなる方向に折れ曲がっている。
【0022】
一対の当接片413は、一対の側片412の折り曲げ板411と連接していない側の端部にそれぞれ連接しつつ折れ曲がって、略Y軸方向に延在する板状の部材である。尚、図3(a)の例示では、一対の当接片413は、それぞれが連接する側片412からY軸方向に沿って中央側へ向かうほど培養室4bの側面から離間する方向に折れ曲がっている。
【0023】
<<<棚受け>>>
図4(a)、図4(b)、及び図4(c)に例示されるように、棚受け42は、例えば、1枚の板部材に穿孔加工及び折り曲げ加工を施して形成されるものである。この棚受け42は、垂直板421と、載置片422とを有している。また、この棚受け42は、案内片423と、係止片424及び係止片425と、停止片426とを有している。
【0024】
垂直板421は、長手方向の両端部がその中央部に比べて上下方向(Z軸方向)に幅広な板状の部材である。
載置片422は、垂直板421の下端(−Z側端)に連接しつつ培養室4bの側面から離間する方向(即ち、棚板43に近づく方向)(−X方向)に折れ曲がって、この垂直板421に対し角度θ’をなして延在する板状の部材である。図3(a)に示す折り曲げ角度θ’は、例えば80度である。
【0025】
案内片423は、垂直板421の上端(+Z側端)に連接しつつ培養室4bの側面から離間する方向に折れ曲がって、この垂直板421に対し直交して延在する板状の部材である。
係止片424は、垂直板421の前方側(+Y側)の端部において、3辺の隙間424a、424b、424cで画成され、1辺の折り目424dでつながっている舌片であって、この舌片は、折り目424dで、培養室4bの側面に近づく方向(+X方向)に折れ曲がって、L字形状をなして上下方向に延在する。
【0026】
係止片425は、垂直板421の後方側(−Y側)の端部において、3辺の隙間425a、425b、425cで画成され、1辺の折り目425dでつながっている舌片であって、この舌片は、折り目425dで、培養室4bの側面に近づく方向(+X方向)に折れ曲がって、L字形状をなして前後方向に延在する。
このような鉤形状の向きが互いに異なる係止片424及び係止片425を2つの嵌入孔411bにそれぞれ嵌入させることによって、棚支柱41に対し棚受け42がはずれ難くなる。
停止片426は、垂直板421における後方側端に連接しつつ培養室4bの側面から離間する方向に折れ曲がって、この垂直板421に対し直交して延在する板状の部材である。
【0027】
<<<棚板>>>
図5(a)及び図5(b)に例示されるように、棚板43は、例えば、1枚の板部材に穿孔加工及び折り曲げ加工を施して形成されるものである。この棚板43は、底面板431と、側面片432と、正面片433と、背面片434とを有している。
底面板431は平板部材であり、一対の側面片432は底面板431の±X側端に連接しつつ上側(+Z側)に直角に折れ曲がった板状の部材であり、正面片433は底面板431の+Y側端に連接しつつ下側(−Z側)に90度以上折れ曲がった板状の部材であり、背面片434は底面板431の−Y側端に連接しつつ上側に90度以上折れ曲がった板状の部材である。
尚、底面板431は、培養室4b内を循環する空気が通過するための複数の孔431aを有している。
【0028】
===棚支柱・棚受け・棚板間の接触関係===
図6乃至図8を参照しつつ、前述した構成を備えた棚支柱41、棚受け42、及び棚板43の間での接触関係について説明する。尚、図6は、図1の棚支柱41及び棚受け42を+X方向に見た図である。図7は、図1の棚支柱41及び棚受け42を−Z方向に見た図である。図8は、図7のA−A’面における内箱4の内面、棚支柱41、及び棚受け42の断面と、同断面における棚板43及び棚受け42’の断面とを示す断面図である。
【0029】
図6に例示されるように、2本の棚支柱41は、培養室4bの側面に沿って水平方向(Y軸方向)に並列して配設されており、棚受け42は、高さが等しい一対の嵌入孔411bに対して係止片424及び係止片425がそれぞれ係止されることによって、培養室4bの側面に沿って水平方向に保持される。
【0030】
図7に例示されるように、棚支柱41の一対の当接片413における培養室4bの側面に近づく側(+X側)の面と、内箱4の内面とは、長手方向に沿った線Qでそれぞれ線接触している。これにより、内箱4の内面及び棚支柱41の間における互いに接触している部分が線Qに限られるため、当該線Qの周囲近傍における露出面に対し略等しく殺菌ガスが行き渡り得る。よって、当該露出面の殺菌が十分となり、これは、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。
【0031】
また、図7に例示されるように、棚支柱41の折り曲げ板411における培養室4bの側面から離間する側(−X側)の面と、棚受け42の垂直板421における培養室4bの側面に近づく側の面とは、長手方向に沿った線P(即ち、中央線411a)で線接触している。また、棚支柱41の折り曲げ板411における培養室4bの側面に近づく側の面と、棚受け42の係止片424における培養室4bの側面から離間する側の面の前後方向両端(±Y側端)とは、一対の長手方向に沿った線Rで線接触している。また、棚支柱41の折り曲げ板411における培養室4bの側面に近づく側の面と、棚受け42の係止片425における培養室4bの側面から離間する側の面の後方側端(−Y側端)とは、長手方向に沿った線Sで線接触している。これにより、棚支柱41及び棚受け42の間における互いに接触している部分が線P、R、及びSに限られるため、当該線P、R、及びSのそれぞれの周囲近傍における露出面に対し略等しく殺菌ガスが行き渡り得る。よって、当該露出面の殺菌が十分となり、これは、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。また、このような線P、R、及びSでの線接触を、折り曲げ板411のなす角度θを180度未満とする構成によって実現できる。
【0032】
図8に例示されるように、一対の棚受け42、42’に棚板43を載置する際の載置片422における培養室4bの側面から離間する側(−X側)の先端と、底面板431の下面の+X側端とは、前後方向(Y軸方向)に沿った線Tで線接触している。
【0033】
また、これと、培養室4b内の対向する側面間の中央で当該側面に平行な平面(不図示)を境として鏡面対称の関係をもって、一対の棚受け42、42’に棚板43を載置する際の載置片422’における培養室4bの側面から離間する側(+X側)の先端と、底面板431の下面の−X側端とは、前後方向に沿った線Tで線接触している。つまり、一対の載置片422、422’が、培養室4bの各側面から離間するほど斜め上方に延在することによって、一対の棚受け42、42’に棚板43を載置する際に、この棚板43は、その下面の両側端が載置片422及び載置片422’それぞれの先端に対し線接触しつつ水平に保持される。これにより、棚受け42及び棚板43の間における互いに接触している部分が線Tの部分に限られるため、当該線Tの周囲近傍における露出面に対し略等しく殺菌ガスが行き渡り得る。よって、当該露出面の殺菌が十分となり、これは、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。また、このような線Tでの線接触を、垂直板421に対する載置片422のなす角度θ’を90度未満とする構成によって実現できる。
【0034】
尚、図示していないが、培養室4b内における棚板43の前後方向(Y軸方向)の位置は、この棚板43の底面板431の後方側端(−Y側端)が、棚受け42の停止片426に線接触して当接することによって定まる。この線接触は、棚板43の背面片434が底面板431の後方側端(−Y側端)に連接しつつ上方(+Z側)に90度以上折れ曲がっていることによる。この線接触も、培養装置1の殺菌効果の向上等につながる。
【0035】
===その他の実施の形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0036】
前述した実施の形態では、一対の載置片422、422’は、培養室4bの各側面から離間するほど斜め上方に延在するもの(図4(a)の角度θ’(<90度))であったが、これに限定されるものではない。載置片422は、垂直板421に対し直交するように折り曲げられているとしても、培養室4bの側面から離間する側の先端が例えば上方(+Z側)に再度折り曲げられて、当該先端で棚板43の底面板431の下面と線接触するものであってもよい。
【0037】
前述した実施の形態では、折り曲げ板411は、中央線411aを折り目として折り曲げられていたが、これに限定されるものではない。折り曲げ板411は、当該折り曲げ板411上で長手方向と直交する方向に沿った略中央で、培養室4bの側面から最も離間するような形状をなすものであれば、例えば単に湾曲面をなすものであってもよい。
【0038】
前述した実施の形態では、載置片422と底面板431の下面との線Tでの接触は、載置片422の垂直板421に対する角度θ’(<90度)によって実現されたが、これに限定されるものではない。図9に例示されるように、例えば、棚受け92の垂直板921に対して載置片922が直交していても、棚板43’が底面板431’と側面片432’との間の下側(−Z側)に曲げ突起435’を有し、載置片922と曲げ突起435’とが線T’で線接触するものであってもよい。尚、図9は、図8と同様の断面における棚受け92及び棚板43’の断面図である。
【0039】
前述した実施の形態では、内箱4の内面、棚支柱41、棚受け42、及び棚板43は互いに線P、Q、R、S、及びTで線接触するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、図10及び図11に例示されるように、これらの接触のし方は点接触であってもよい。尚、図10は、図7と同様の方向から見た内箱4の内面、棚支柱81、及び棚受け82の図であり、図11は、図8と同様の断面における内箱4の内面、棚支柱81、棚受け82、及び棚板43の断面図である。
【0040】
図10に例示されるように、棚支柱81の一対の当接片813における培養室4bの側面に近づく側(+X側)の面(YZ面と平行)の略半球面形状の突起813aと、内箱4の内面とは点Q’で点接触している。また、棚支柱81の平板811における培養室4bの側面から離間する側(−X側)の面(YZ面と平行)の略半球面形状の突起811aと、棚受け82の垂直板821の+X側の面とは点P’で点接触している。また、棚支柱81の平板811における培養室4bの側面に近づく側(+X側)の面(YZ面と平行)の略半球面形状の突起811bと、棚受け82の係止片824における培養室4bの側面から離間する側の面の±Y側端とは点R’で点接触している。
【0041】
図11に例示されるように、棚受け82の載置片822の上面(XY面と平行)の略半球面形状の突起822aと、棚板43の底面板431の下面の+X側端とは点T”で点接触している。
【0042】
尚、図10及び図11で例示した突起811a、811b、813a、822aは、例えば板部材に対し、当該突起が形成される側と相反する側の面から当該突起と相似形状の工具でこれらの突起が生じる程度に押圧して形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態の培養装置の一例の側面断面図である。
【図2】殺菌運転を行なう場合の図1の培養装置1の構成例の側面断面図である。
【図3】(a)は、図1の棚支柱を−Z方向に見た図であり、(b)は、図1の棚支柱を+X方向に見た図である。
【図4】(a)は、図1の棚受けを−Y方向に見た図であり、(b)は、図1の棚受けを+X方向に見た図であり、(c)は、図1の棚受けを+Y方向に見た図である。
【図5】(a)は、図1の棚板を−Z方向に見た図であり、(b)は、図1の棚板を+X方向に見た図である。
【図6】図1の棚支柱及び棚受けを+X方向に見た図である。
【図7】図1の棚支柱及び棚受けを−Z方向に見た図である。
【図8】図7のA−A’面における内箱の内面、棚支柱、及び棚受け42の断面と、同断面における棚板及び棚受け42’の断面とを示す断面図である。
【図9】図8と同様の断面における棚受け及び棚板の断面図である。
【図10】図7と同様の方向から見た内箱の内面、棚支柱、及び棚受けの図である。
【図11】図8と同様の断面における内箱の内面、棚支柱、棚受け、及び棚板の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 培養装置 2 外箱 3 外扉
4 内箱 4a 内扉 4b 培養室
5 壁板 5a ファン 6 エアジャケット
7 センサボックス 21 カバー 31 扉本体
31a 凸部 32 制御パネル 33 パッキン
41 棚支柱 42、42’ 棚受け 43 棚板
44 ダクト 45 加湿トレイ 46 カバー
46a 孔 47 ガス発生器 51a 吸入口
52 紫外線ランプ 411 折り曲げ板 411a 中央線
411b 嵌入孔 411c 孔 412 側片
413 当接片 421 垂直板 422 載置片
423 案内片 424、425 係止片 426 停止片
431 底面板 432 側面片 433 正面片
434 背面片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物が載置される棚板と、前記棚板を略水平に保持する棚受けと、前記棚受けを略水平に保持する複数の棚支柱とを、殺菌する際に殺菌ガスを循環させる培養室の内部に備える培養装置において、
前記棚受けは、前記培養室の各側面から離間する方向に延在し、前記棚板の下面の両側端が載置される一対の載置片を有し、
前記一対の載置片は、前記棚板の下面の両側端に対し、前記棚板が前記棚受けに略水平に保持される際に線接触する
ことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記一対の載置片は、前記棚板の下面の両側端に対し、前記培養室の各側面から離間する側の先端で線接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記一対の載置片は、前記培養室の各側面から離間するほど斜め上方向に延在する
ことを特徴とする請求項2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記棚受けは、前記培養室の各側面に沿う水平方向に延在し、前記一対の載置片と結合されると共に前記複数の棚支柱に係止される一対の垂直板を有し、
前記複数の棚支柱は、長手方向の略中央が前記培養室の側面から最も離間するように形成された曲板を有し、前記一対の垂直板が係止される際に前記一対の垂直板が前記略中央に線接触する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の培養装置。
【請求項5】
前記曲板は、前記略中央が前記培養室の側面から離間する方向に折れ曲がる
ことを特徴とする請求項4に記載の培養装置。
【請求項1】
培養物が載置される棚板と、前記棚板を略水平に保持する棚受けと、前記棚受けを略水平に保持する複数の棚支柱とを、殺菌する際に殺菌ガスを循環させる培養室の内部に備える培養装置において、
前記棚受けは、前記培養室の各側面から離間する方向に延在し、前記棚板の下面の両側端が載置される一対の載置片を有し、
前記一対の載置片は、前記棚板の下面の両側端に対し、前記棚板が前記棚受けに略水平に保持される際に線接触する
ことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記一対の載置片は、前記棚板の下面の両側端に対し、前記培養室の各側面から離間する側の先端で線接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記一対の載置片は、前記培養室の各側面から離間するほど斜め上方向に延在する
ことを特徴とする請求項2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記棚受けは、前記培養室の各側面に沿う水平方向に延在し、前記一対の載置片と結合されると共に前記複数の棚支柱に係止される一対の垂直板を有し、
前記複数の棚支柱は、長手方向の略中央が前記培養室の側面から最も離間するように形成された曲板を有し、前記一対の垂直板が係止される際に前記一対の垂直板が前記略中央に線接触する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の培養装置。
【請求項5】
前記曲板は、前記略中央が前記培養室の側面から離間する方向に折れ曲がる
ことを特徴とする請求項4に記載の培養装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−51218(P2010−51218A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218615(P2008−218615)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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