説明

培養観察装置

【課題】 培養容器の搬送時の回転動作に起因する細胞の移動を防止する。
【解決手段】 細胞が培養される培養容器が複数保管された保管庫と、培養容器にて培養される細胞を観察する観察装置と、培養容器を水平方向に移動する直線動作と、培養容器の水平方向に垂直な軸を回転中心として回転する回転動作とを組み合わせた搬送動作により、培養容器を保持した状態で培養容器を保管庫及び観察装置の一方から他方に向けて搬送する搬送装置と、を有し、搬送装置は、回転動作の回転方向と相反する方向に回転させて、培養容器の姿勢を、搬送装置に保持された直後の姿勢に維持する第1の回転機構を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養を行う培養観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
培養される細胞を自動的に観察する装置として培養観察装置が知られている。この培養観察装置は、その内部に設けられた恒温室内に、細胞が培養される培養容器を保管する保管庫(以下、ストッカー)や、培養容器内の細胞を観察する顕微鏡などの観察装置や、ストッカーと観察装置との間で培養容器を搬送する搬送装置などが配置される。この培養観察装置は、ストッカーと観察装置とが対向し、これら装置の間に搬送装置がそれぞれ配置された、所謂、培養容器の搬送効率等を考慮したレイアウトとなっている(特許文献1参照)。このようなレイアウトにより、搬送装置は、x方向、y方向及びz方向の3方向に対する直線動作と回転動作とを組み合わせた搬送動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4334432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した細胞は培養容器の培養液中に均等に播種される。しかしながら、培養容器の搬送時に搬送装置による回転動作が実行されると、播種された直後の細胞や、培養容器の底面に接着していない細胞など、培養容器内の培養液中を浮遊する細胞は、培養容器内の所定位置に集まってしまい、細胞の分布にムラが生じてしまう。このような細胞の分布のムラは、培養容器内の細胞を均一に成長させることができない原因となる他、細胞を観察できない位置や多くの細胞が観察できる位置が発生するなどの細胞の観察に影響を与えるという問題がある。
【0005】
本発明は、培養容器の搬送時の回転動作に起因する細胞の移動を防止することで、培養容器内の細胞を均一に成長させ、且つ、細胞の観察に影響を与えずに済むことができるようにした培養観察装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の培養観察装置は、細胞が培養される培養容器が複数保管された保管庫と、前記培養容器にて培養される前記細胞を観察する観察装置と、前記培養容器を水平方向に移動する直線動作と、前記培養容器の水平方向に垂直な軸を回転中心として回転する回転動作とを組み合わせた搬送動作により、前記培養容器を保持した状態で該培養容器を前記保管庫及び前記観察装置の一方から他方に向けて搬送する搬送装置と、を有し、前記搬送装置は、前記回転動作の回転方向と相反する方向に回転させて、前記培養容器の姿勢を、前記搬送装置に保持された直後の姿勢に維持する第1の回転機構を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記第1の回転機構における回転量は前記搬送装置における前記回転動作時の回転量と同一であり、前記第1の回転機構における前記培養容器の回転は、前記搬送装置の回転動作に合わせて実行されるものである。
【0008】
また、前記搬送装置は、前記回転動作を行う第2の回転機構を備え、前記第1の回転機構及び前記第2の回転機構は、それぞれ独立して設けられるものである。
【0009】
また、前記搬送装置は、前記培養容器を保持する保持部と、前記直線動作を実行する移動機構と、をさらに備え、前記第1の回転機構は、前記保持部を回転させる機構からなり、前記第2の回転機構は、前記移動機構及び前記第2の回転機構を同時に回転させる機構からなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養容器の搬送時の回転動作による細胞の移動を防止することで、培養容器内の細胞を均一に成長させ、且つ、細胞の観察に影響を与えずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】培養観察装置の概略を示す正面図である。
【図2】外扉を開放した培養観察装置の概略を示す正面図である。
【図3】恒温室内部の構成を示す概略図である。
【図4】(a)は搬送ユニットの要部の構成を示す正面図、(b)は、搬送ユニットの要部の構成を示す側面図である。
【図5】(a)培養容器を保持する前の容器搬送装置、(b)保持機構により培養容器を保持した容器搬送装置、(c)保持した培養容器をストッカーから搬出した直後の容器搬送装置を示す上面図である。
【図6】(a)培養容器を保持したまま回転動作した直後の容器搬送装置、(b)培養容器を観察装置の容器載置面に載置した直後の容器搬送装置、(c)培養容器を搬送した直後の容器搬送装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の培養観察装置の構成を詳細に示す。なお、以下に示す培養観察装置は一例であり、本実施形態に示す培養観察装置の構成に限定されるものではない。図1から図3に示すように、培養観察装置10は、微生物や細胞などの試料を培養する第1筐体11と、制御装置13を収納する第2筐体12とを備えている。培養観察装置10の組立状態において、第1筐体11は第2筐体12の上部に配置される。
【0013】
第1筐体11は、内部が断熱材で覆われた恒温室15を備えている。この恒温室15は、第1筐体11の正面に形成された正面開口16によって外部と連絡している。第1筐体11の正面開口16は、内扉17と2枚の外扉18a,18bによって閉塞される。この内扉17及び外扉18a,18bの背面側の周縁部にはパッキン等が設けられ、それぞれの扉を閉じたときに恒温室15の内部が気密に保持される。つまり、内扉17のみが閉じられた場合や、内扉17だけでなく2枚の外扉18a,18bがそれぞれ閉じられた場合には、培養観察装置10の外部から恒温室15の内部への熱の流入や、恒温室15の内部から培養観察装置10の外部への熱の流出が防止される。なお、恒温室15の内部は、図示を省略した温度調整装置、噴霧装置などにより予め定めた環境条件(温度、湿度、二酸化炭素濃度等)となるように管理される。
【0014】
上述した外扉18a,18bのうち、外扉18bには搬入用扉22が設けられる。この搬入用扉22は、培養容器31を収納したキャリア25をキャリア設置台26に搬入する、又はキャリア設置台26に設置されたキャリア25を搬出する際に開放される。この搬入用扉22を開放すると、開口23を介して内扉17に設けられた小扉24が露呈される。内扉17及び小扉24は、ガラスや透明な合成樹脂から形成されており、外扉18a,18bを開放した場合であっても、その内部の環境条件が急激に変化しないようになっている。この内扉17に設けられる小扉24を開放することで、培養容器31が収納されたキャリア25をキャリア設置台26に搬入する、又はキャリア設置台26に設置されたキャリア25を搬出することが可能となる。なお、キャリア25は、例えば培養容器31を所定の間隔を空けて3個上下に収納することができる。
【0015】
恒温室15の内部には、キャリア設置台26、ストッカー27、観察装置28、容器搬送装置29等が配置される。なお、図示は省略するが、この恒温室15の内部には、培地交換を行う培地交換機構や、細胞の播種を行う播種機構などが設けられている。
【0016】
上述したように、キャリア設置台26は、その上部にキャリア25が載置される。図示は省略するが、キャリア設置台26には、側面にガイドレールが設けられている。このガイドレールは、キャリア25の下面にガイドレールが入り込む間隔を空けて設けられた案内溝に入り込むことで、搬入又は搬出されるキャリア25の移動方向を規制する。なお、この案内溝の延出方向は、培養容器31をキャリア25に搬入する方向、又は培養容器31をキャリア25から搬出する方向と直交している。
【0017】
ストッカー27は、第1筐体11の正面からみて恒温室15の左側部に配置される。ストッカー27は上下方向に複数の棚を有しており、各々の棚には培養容器31が収納される。なお、このストッカー27においては、各培養容器31を収納する位置(以下、収納位置と称する)が予め設定されている。収納位置のそれぞれには、他の収納位置と識別するための識別番号が対応付けられており、この識別番号により、培養する細胞の観察スケジュールや観察時に得られる画像データなどが一括で管理される。上述した培養容器31には、細胞など培養対象となる試料が培養液33とともに保持される。
【0018】
観察装置28は、その本体が第2筐体12の内部に設置され、観察装置28の上部が、第1筐体11の下方から内部に入り込むように配置される。観察装置28は、第1筐体11の正面からみて恒温室15の右側部に配置される。また、観察装置28は第1筐体11の底面の開口に嵌め込まれて配置される。なお、観察装置28の構成については省略するが、観察装置28としては、位相差観察や蛍光観察、微分干渉観察等の観察方法を行うことができる顕微鏡が挙げられる。
【0019】
観察装置28は、キャリア設置台26に設置した直後のキャリア25に収納される培養容器31や、ストッカー27に収納されてから定着時間が経過した培養容器31に培養される細胞を観察する。この観察の際に、培養容器31の全体の画像データや、培養される細胞の画像データが取得される。この観察装置28にて取得される各画像データは制御装置13に出力される。制御装置13は、観察装置28や容器搬送装置29などを制御する他に、ストッカー27の各収納位置に対応付けられた識別番号毎に、培養される細胞の種類、観察スケジュールなどの情報や、観察装置28にて取得された画像データを関連づけて記憶する。
【0020】
図2から図4に示すように、容器搬送装置29は、第1筐体11の正面からみて恒温室15の略中央に配置される。この容器搬送装置29は、キャリア25に収納された培養容器31をストッカー27や観察装置28に向けて(又はその逆)搬送する、或いはストッカー27に収納された培養容器31を、キャリア25、観察装置28に向けて(又はその逆)搬送する。
【0021】
容器搬送装置29は、X軸,Y軸およびZ軸の3軸方向の直線動作と、軸Z1を中心にした回転動作及び軸Z2を中心にした回転動作と、をそれぞれ独立して実行する駆動機構を備えた装置である。
【0022】
下部ベースプレート41は、ガイド軸42,43及び駆動軸44に取り付けられる。モータ45が駆動すると駆動軸44が回転する。この駆動軸44の回転に合わせて、下部ベースプレート41がガイド軸42,43に沿って(Y軸方向に)移動する。
【0023】
下部ベースプレート41の略中央にはモータ46が設けられる。モータ46の駆動軸47は、上部ベースプレート48に取り付けられる。モータ46が駆動すると、駆動軸47が回転し、上部ベースプレート48が軸Z1を中心にして回転する。
【0024】
上部ベースプレート48の上面にはガイド軸49,50及び駆動軸51が設けられる。これらガイド軸49,50及び駆動軸51には、搬送台52が取り付けられる。モータ53が駆動すると駆動軸51が回転する。この駆動軸51の回転に合わせて、搬送台52がガイド軸49,50に沿って(Z軸方向に)移動する。
【0025】
搬送台52は、その下面側に搬送台55が取り付けられる。搬送台55は、その一端部に設けられたレール溝などの案内溝に搬送台52の下面に設けられたガイドレール52aが挿通される。モータ(図示省略)が駆動すると駆動軸54が回転し、搬送台55をガイドレール52aに沿って(X軸方向に)移動させる。
【0026】
搬送台55の他端部には、モータ56が設けられる。このモータ56の駆動軸57は、保持機構58に取り付けられる。モータ56が駆動すると、駆動軸57が回転し、保持機構58が軸Z2を中心にして回転する。
【0027】
保持機構58は、所定の間隔を空けて配置される2つの把持片59,60を備えている。これら把持片59,60は、例えばエア圧、油圧を利用した駆動機構や、モータ及びギヤを利用した駆動機構により、図4(b)中実線の位置と、二点鎖線の位置との間でそれぞれ移動する。これら把持片59,60は、培養容器31を保持する際に図4(b)中実線の位置に移動し、その位置で保持される。このとき、培養容器31が、その短手方向において把持片59,60によって挟持される。つまり、培養容器31が把持片59,60に保持される。また、培養容器31が把持片59,60により保持された状態のときに、把持片59,60が互いに離れる方向に図中二点差線の位置まで移動すると、把持片59,60による培養容器31の挟持が解除される。つまり、培養容器31の保持が解除される。
【0028】
なお、容器搬送装置29の各部の位置(座標)や回転角度は、エンコーダ等を介して制御装置13にモニタリングされる。この制御装置13は、キャリア25、ストッカー27及び観察装置28の位置のデータを予め記憶しており、これらデータと、容器搬送装置29のモニタリングにより得られるデータとから、容器搬送装置29の各部を駆動制御する。
【0029】
次に、本実施形態の容器搬送装置29の動作について説明する。以下、ストッカー27に保管される培養容器31を観察装置28に向けて搬送する場合について説明する。
【0030】
まず、制御装置13は、容器搬送装置29のY方向の位置を確認し、細胞の観察を行う培養容器31のY方向の位置と同一位置にあるか否かを判定する。容器搬送装置29のY方向の位置と、細胞の観察を行う培養容器31のY方向の位置が異なる場合には、制御装置13は、モータ45を駆動させ、駆動軸44を回転させる。この駆動軸44の回転により、下部ベースプレート41が方向、又は方向に移動する。そして、容器搬送装置29が、細胞の観察を行う培養容器31とY方向において同位置となる場合に、制御装置13は、モータ45の駆動を停止する。これにより、駆動軸44の回転が停止され、下部ベースプレート41の移動が停止される。なお、容器搬送装置29のY方向の位置と、ストッカー27の内部に保管される培養容器31のY方向の位置とが同一となる場合には、この動作は行われない。
【0031】
次に、制御装置13は、搬送台52の回転位置を判定する。例えば、容器搬送装置29の搬送台52が図4(a)に示す状態となる回転位置である場合には、モータ46を駆動させ、駆動軸47を回転させる。この駆動軸47の回転に合わせて、上部ベースプレート48が回転する。そして、上部ベースプレート48が180°回転したときに、制御装置13は、モータ46の駆動を停止する。これにより、駆動軸47の回転が停止する。これにより、上部ベースプレート48が180°回転した状態となる(図5(a)参照)。一方、搬送台52の回転位置が図5(a)の状態である場合には、上述した動作は行われない。
【0032】
制御装置13は、保持機構58のZ方向の位置を判定する。例えば保持機構58がストッカー27の培養容器31を把持できる位置にない場合には、モータ53を駆動し、駆動軸51を回転させる。この駆動軸51の回転により、搬送台52が上昇、又は下降する。制御装置13は、保持機構58がストッカー27の培養容器31を把持できる位置に到達したときにモータ53の駆動を停止させる。これにより、搬送台52の移動が停止する。なお、保持機構58がストッカー27の培養容器31を把持できる位置にある場合には、上述した動作は実行されない。
【0033】
次に、制御装置13は、モータ(図示省略)を駆動させ、駆動軸54を回転させる。この駆動軸54の回転により、搬送台55がX1方向に移動する。この搬送台55のX1方向への移動の際に、制御装置13は、保持機構58の把持片59,60を互いに離れる方向に移動させる。そして、X方向における把持片59,60の中心位置が培養容器31の長手方向の中央に到達すると、制御装置13は、駆動軸54の回転を停止させる。これにより、搬送台55のX1方向の移動が停止される。
【0034】
搬送台55のX1方向の移動が停止された後、制御装置13は、保持機構58の把持片59,60を互いに近づける方向に移動させる。これにより、図5(b)に示すように、培養容器31が、把持片59,60により挟持される。これら把持片59,60による培養容器31の挟持により、培養容器31が保持機構58に保持される。制御装置13はモータ53を駆動させ、搬送台52を所定量上昇させる。これにより、保持機構58により保持される培養容器31がストッカー27の棚板27aから浮いた状態となる。制御装置13は、駆動軸54を回転させて、搬送台55をX2方向に移動させる。これにより、培養容器31がストッカー27の収納位置から搬出される。そして、保持機構58に保持される培養容器31が搬送台52の下方の位置に到達したときに、制御装置13は、駆動軸54の回転を停止させる。これにより、搬送台52の移動が停止する(図5(c)参照)。
【0035】
その後、制御装置13は、モータ46を駆動させる。これにより、上部ベースプレート48が軸Z1を中心にしてR1方向に回転する。制御装置13は、上部ベースプレート48が軸Z1を中心にして方向に180°回転したときにモータ46の駆動を停止させる。これにより、上部ベースプレート48の回転が停止する。
【0036】
制御装置13は、モータ46の駆動に併せて、モータ57を駆動する。このモータ57の駆動により、保持機構58が軸Z2を中心にしてR2方向に回転する。保持機構58が180°回転すると、制御装置13はモータ57の駆動を停止する。これにより、保持機構58の回転が停止される。つまり、上部ベースプレート48のR1方向への回転動作が開始されると、保持機構58のR2方向への回転動作(保持機構58の回転方向は上部ベースプレート48が開始される。そして、上部ベースプレート48のR1方向への回転動作が停止されると、保持機構58のR2方向への回転動作も停止される。つまり、保持機構58は、上部ベースプレート48の回転に対して逆方向に回転する。また、この保持機構58の回転時の回転量は、上部ベースプレート48の回転量と同一となる。
【0037】
上部ベースプレート48の回転が停止した後、制御装置13は、駆動軸54を回転させる。この駆動軸54の回転により、搬送台55がX2方向に移動する。そして、搬送台55が観察装置28の容器載置面28aの上方まで移動したことを受けて、制御装置13は駆動軸54の回転を停止する。これにより、搬送台55のX2方向への移動が停止される(図6(b)参照)。制御装置13は、モータ53を駆動させて、搬送台52を下降させる。なお、この搬送台52の下降量は、培養容器31の下面と観察装置28の容器載置面28aとの間に生じる隙間に相当する量である。この搬送台52の下降により、培養容器31が観察装置28の容器載置面28aに載置される。そして、制御装置13は、保持機構58の把持片59,60を、互いに離れる方向に移動させる。その状態で、制御装置13は、モータ53を駆動させて、搬送台52を上昇させる。なお、このときの搬送台52を上昇させる量は、搬送台52を下降させる量と同一量である。最後に、制御装置13は、駆動軸54を回転させ、搬送台55をX1方向に移動させる(図6(c)参照)。これにより、容器搬送装置29によって培養容器31が、ストッカー27から観察装置28に搬送される。
【0038】
なお、培養容器31をストッカー27からキャリア25に搬送する場合も同様の動作が実行される。また、培養容器31をキャリア25からストッカー27に搬送する場合や、観察装置28からストッカー27に搬送する場合には、上述した動作の逆の動作が容器搬送装置29によって実行される。つまり、これら動作の際にも、保持機構58は、上部ベースプレート48の回転に対して逆方向に回転し、その回転量が上部ベースプレート48の回転量と同一となる。
【0039】
上述した容器搬送装置29における培養容器31の搬送時において、ストッカー27から搬出された直後の培養容器31は、その長手方向における一端側の側面31aはストッカー27に対面し、他端側の側面31bは観察装置28に対面している。通常、軸Z1を中心にして上部ベースプレート48をR1方向に180°回転させると、培養容器31は、側面31aが観察装置28に対面し、側面31bはストッカー27に対面する。この回転に併せて、軸Z2を中心にして保持機構58をR1方向とは反対方向となるR2方向に180°回転させている。このため、これら回転動作を行った後の培養容器31は、回転動作を行う前と同様に、側面31aはストッカー27に対面し、側面31bは観察装置28に対面した状態が維持される。
【0040】
これら回転動作のうち、上部ベースプレート48のR1方向への回転動作を行った場合、培養容器31の培養液中を浮遊する細胞(浮遊細胞)は、軸Z1を中心にした上部ベースプレート48の回転による慣性モーメントを受ける。このため、回転動作が停止されたときには、浮遊細胞は培養液中を移動する。しかしながら、本実施形態の場合には、上部ベースプレート48のR1方向への回転動作に併せて、保持機構58をR1方向とは反対方向となるR2方向に180°回転動作させている。このため、浮遊細胞58には、上部ベースプレート48のR1方向への回転による慣性モーメントの他に、保持機構58のR2方向への回転による慣性モーメントが生じる。また、これら慣性モーメントは、相反する方向に発生することから、これら慣性モーメントが相殺される。このため、培養容器31の培養液中の浮遊細胞は移動せずに、元の位置に保たれる。これにより、細胞の分布ムラの発生が防止できるので、培養容器内の細胞を均一に成長させることができる。また、細胞を観察できない位置や多くの細胞が観察できる位置が発生するなどの細胞の観察に影響を与えることもない。
【0041】
本実施形態では、ストッカー27及び観察装置28の間に容器搬送装置29を配置した例を取り上げているが、直線動作及び回転動作を行って、培養容器31を搬送する容器搬送装置であれば、恒温室内におけるストッカー27、観察装置28及び容器搬送装置のレイアウトは、本実施形態に限定する必要はない。
【符号の説明】
【0042】
10…培養観察装置、13…制御装置、27…ストッカー、28…観察装置、29…容器搬送装置、31…培養容器、46,56…モータ、47,57…駆動軸、58…保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が培養される培養容器が複数保管された保管庫と、
前記培養容器にて培養される前記細胞を観察する観察装置と、
前記培養容器を水平方向に移動する直線動作と、前記培養容器の水平方向に垂直な軸を回転中心として回転する回転動作とを組み合わせた搬送動作により、前記培養容器を保持した状態で該培養容器を前記保管庫及び前記観察装置の一方から他方に向けて搬送する搬送装置と、
を有し、
前記搬送装置は、前記回転動作の回転方向と相反する方向に回転させて、前記培養容器の姿勢を、前記搬送装置に保持された直後の姿勢に維持する第1の回転機構を備えたことを特徴とする培養観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の培養観察装置において、
前記第1の回転機構における回転量は、前記搬送装置における前記回転動作時の回転量と同一であり、
前記第1の回転機構における前記培養容器の回転は、前記搬送装置の回転動作に合わせて実行されることを特徴とする培養観察装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の培養観察装置において、
前記搬送装置は、前記回転動作を行う第2の回転機構を備え、
前記第1の回転機構及び前記第2の回転機構は、それぞれ独立して設けられていることを特徴とする培養観察装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の培養観察装置において、
前記搬送装置は、
前記培養容器を保持する保持部と、
前記直線動作を実行する移動機構と、
をさらに備え、
前記第1の回転機構は、前記保持部を回転させる機構からなり、
前記第2の回転機構は、前記移動機構及び前記第2の回転機構を同時に回転させる機構からなることを特徴とする培養観察装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate