説明

培養観察装置

【課題】 培養容器を交換する処理に係る時間を短縮するとともに、簡易な構成で培養容器の蓋の着脱を実行する。
【解決手段】 細胞が培養される培養容器が複数保管された保管庫と、培養容器にて培養される細胞を観察する観察装置と、保管庫及び観察装置の一方から他方に向けて、培養容器を搬送する搬送装置と、を有し、搬送装置は、培養容器を個別に保持することが可能な複数の保持機構と、複数の保持機構を個別に動作させる駆動機構と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養を行う培養観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
培養される細胞を自動的に観察する装置として培養観察装置が知られている。この培養観察装置は、その内部に設けられた恒温室内に、細胞が培養される培養容器を複数保管する保管庫(以下、ストッカー)や、培養容器内の細胞を観察する顕微鏡などの観察装置や、ストッカーと観察装置との間で培養容器を搬送する搬送装置などが配置される。この培養観察装置は、培養する細胞の観察や、試薬添加などのスケジュールが培養容器毎に設定され、このスケジュールに基づいて、各処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4334432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の培養容器のそれぞれに培養される細胞を連続して観察する場合、上述した搬送装置は、観察を行った細胞が培養される培養容器を観察装置からストッカーに搬送した後、新たな培養容器をストッカーから観察装置に搬送する。このため、培養容器を交換する処理に時間がかかるという問題がある。また、このような培養観察装置においては、細胞を培養する過程で培養容器内の培地に対して試薬添加を行うことがある。この試薬添加の処理の際には、培養容器の蓋を一旦取り外すことから、培養観察装置内に吸着機構などの蓋着脱装置を設けることが望ましい。しかしながら、培養観察装置の小型化を考慮すると、蓋着脱装置を配置するスペースを確保することが難しい。
【0005】
本発明は、培養容器を交換する処理に係る時間を短縮するとともに、簡易な構成で培養容器の蓋の着脱を実行することができるようにした培養観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の培養観察装置は、細胞が培養される培養容器が複数保管される保管庫と、前記培養容器にて培養される前記細胞を観察する観察装置と、前記保管庫及び前記観察装置の一方から他方に向けて、前記培養容器を搬送する搬送装置と、を有し、前記搬送装置は、前記培養容器を個別に保持することが可能な複数の保持機構と、前記複数の保持機構を個別に動作させる駆動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記搬送装置は、前記複数の保持機構により複数の前記培養容器を同時に、且つ個別に保持するものである。
【0008】
また、前記培養容器は、前記細胞及び該細胞を培養する培養液が充填される容器本体と、前記容器本体に対して着脱自在な蓋部材と、を有し、前記複数の保持機構は、前記培養容器の前記容器本体又は前記蓋部材の何れか一方をそれぞれ保持することが好ましい。
【0009】
この場合、前記搬送装置は、前記複数の保持機構のいずれかによって前記培養容器の前記容器本体を保持したときに、他の保持機構による前記蓋部材の取り外し、又は前記蓋部材の取り付けを行うものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養容器を交換する処理に係る時間を短縮するとともに、簡易な構成で培養容器の蓋の着脱を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】培養観察装置の概略を示す正面図である。
【図2】外扉を開放した培養観察装置の概略を示す正面図である。
【図3】恒温室内部の構成を示す概略図である。
【図4】(a)は容器搬送装置の要部の構成を示す正面図、(b)は、容器搬送装置の要部の構成を示す上面図である。
【図5】(a)は、Y方向において、第2保持機構の位置と、観察する培養容器の位置とが同一位置となる状態を示す図、(b)は、第2保持機構によってストッカー内部の培養容器が保持された状態を示す図、(c)は、培養容器をストッカーから搬出した直後の状態を示す図である。
【図6】(a)は、第2保持機構により保持された培養容器を観察装置に搬入する直前の状態を示す図、(b)は、観察装置の容器載置面に培養容器を載置した直後の状態を示す図である。
【図7】(a)は、次に観察予定の培養容器を搬送する直前の状態を示す図、(b)は、第1保持機構により培養容器を保持した状態を示す図である。
【図8】(a)は、観察装置の容器載置面に載置される培養容器を第2保持機構を用いて搬出する直前の状態を示す図、(b)は、観察装置の容器載置面に載置される培養容器を第2保持機構により保持した状態を示す図、(c)は、観察装置の容器載置面に載置される培養容器を第2保持機構を用いて搬出した後、第1保持機構により保持した培養容器を観察装置の容器載置面に載置した状態を示す図である。
【図9】(a)は、第1保持機構により培養容器の蓋部材を、第2保持機構により培養容器の容器本体を、それぞれ保持した状態を示す図、(b)は、培養容器の蓋部材を容器本体から取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の培養観察装置の構成を詳細に示す。なお、以下に示す培養観察装置は一例であり、本実施形態に示す培養観察装置の構成に限定されるものではない。図1から図3に示すように、培養観察装置10は、微生物や細胞などの試料を培養する第1筐体11と、制御装置13を収納する第2筐体12とを備えている。培養観察装置10の組立状態において、第1筐体11は第2筐体12の上部に配置される。
【0013】
第1筐体11は、内部が断熱材で覆われた恒温室15を備えている。この恒温室15は、第1筐体11の正面に形成された正面開口16によって外部と連絡している。第1筐体11の正面開口16は、内扉17と2枚の外扉18a,18bによって閉塞される。この内扉17及び外扉18a,18bの背面側の周縁部にはパッキン等が設けられ、それぞれの扉を閉じたときに恒温室15の内部が気密に保持される。つまり、内扉17のみが閉じられた場合や、内扉17だけでなく2枚の外扉18a,18bがそれぞれ閉じられた場合には、培養観察装置10の外部から恒温室15の内部への熱の流入や、恒温室15の内部から培養観察装置10の外部への熱の流出が防止される。なお、恒温室15の内部は、図示を省略した温度調整装置、噴霧装置などにより予め定めた環境条件(温度、湿度、二酸化炭素濃度等)となるように管理される。
【0014】
上述した外扉18a,18bのうち、外扉18bには搬入用扉22が設けられる。この搬入用扉22は、培養容器31を収納したキャリア25をキャリア設置台26に搬入する、又はキャリア設置台26に設置されたキャリア25を搬出する際に開放される。この搬入用扉22を開放すると、開口23を介して内扉17に設けられた小扉24が露呈される。内扉17及び小扉24は、ガラスや透明な合成樹脂から形成されており、外扉18a,18bを開放した場合であっても、その内部の環境条件が急激に変化しないようになっている。この内扉17に設けられる小扉24を開放することで、培養容器31が収納されたキャリア25をキャリア設置台26に搬入する、又はキャリア設置台26に設置されたキャリア25を搬出することが可能となる。なお、キャリア25は、例えば培養容器31を所定の間隔を空けて3個上下に収納することができる。
【0015】
恒温室15の内部には、キャリア設置台26、ストッカー27、観察装置28、容器搬送装置29等が配置される。なお、図示は省略するが、この恒温室15の内部には、培地交換を行う培地交換機構や、細胞の播種を行う播種機構などが設けられている。
【0016】
上述したように、キャリア設置台26は、その上部にキャリア25が載置される。図示は省略するが、キャリア設置台26には、側面にガイドレールが設けられている。このガイドレールは、キャリア25の下面にガイドレールが入り込む間隔を空けて設けられた案内溝に入り込むことで、搬入又は搬出されるキャリア25の移動方向を規制する。なお、この案内溝の延出方向は、培養容器31をキャリア25に搬入する方向、又は培養容器31をキャリア25から搬出する方向と直交している。
【0017】
ストッカー27は、第1筐体11の正面からみて恒温室15の左側部に配置される。ストッカー27は上下方向に複数の棚を有しており、各々の棚には培養容器31が収納される。なお、このストッカー27においては、各培養容器31を収納する位置(以下、収納位置と称する)が予め設定されている。収納位置のそれぞれには、他の収納位置と識別するための識別番号が対応付けられており、この識別番号により、培養する細胞の観察スケジュールや観察時に得られる画像データなどが一括で管理される。上述した培養容器31には、細胞など培養対象となる試料が培養液33とともに保持される。
【0018】
観察装置28は、その本体が第2筐体12の内部に設置され、観察装置28の上部が、第1筐体11の下方から内部に入り込むように配置される。観察装置28は、第1筐体11の正面からみて恒温室15の右側部に配置される。また、観察装置28は第1筐体11の底面の開口に嵌め込まれて配置される。なお、観察装置28の構成については省略するが、観察装置28としては、位相差観察や蛍光観察、微分干渉観察等の観察方法を行うことができる顕微鏡が挙げられる。
【0019】
観察装置28は、キャリア設置台26に設置した直後のキャリア25に収納される培養容器31や、ストッカー27に収納されてから定着時間が経過した培養容器31に培養される細胞を観察する。この観察の際に、培養容器31の全体の画像データや、培養される細胞の画像データが取得される。この観察装置28にて取得される各画像データは制御装置13に出力される。制御装置13は、観察装置28や容器搬送装置29などを制御する他に、ストッカー27の各収納位置に対応付けられた識別番号毎に、培養される細胞の種類、観察スケジュールなどの情報や、観察装置28にて取得された画像データを関連づけて記憶する。
【0020】
図2から図4に示すように、容器搬送装置29は、第1筐体11の正面からみて恒温室15の略中央に配置される。この容器搬送装置29は、キャリア25に収納された培養容器31をストッカー27や観察装置28に向けて(又はその逆)搬送する、或いはストッカー27に収納された培養容器31を、キャリア25、観察装置28に向けて(又はその逆)搬送する。
【0021】
容器搬送装置29は、X方向,Y方向およびZ方向の3方向の直線動作と、Z方向に平行な軸を中心とした回転動作とを、それぞれ独立して実行する駆動機構を備えた装置である。
【0022】
下部ベースプレート41は、ガイド軸42,43及び駆動軸44に取り付けられる。これらガイド軸42,43及び駆動軸44は、その軸方向がY方向に平行となるように設けられる。モータ45は駆動軸44を回転させる。この駆動軸44の回転に合わせて、下部ベースプレート41がガイド軸42,43に沿って移動する。
【0023】
下部ベースプレート41の略中央にはモータ46が設けられる。モータ46の駆動軸47は、上部ベースプレート48に取り付けられる。モータ46が駆動すると、駆動軸47が回転する。この駆動軸47の回転により、上部ベースプレート48がZ方向に平行な軸を中心として回転する。
【0024】
上部ベースプレート48の上面には駆動軸49,50が所定間隔を空けて設けられる。この駆動軸49,50は、それぞれZ方向に平行となるように設けられる。駆動軸49は、モータ51の駆動により回転し、後述する第1昇降台55を上昇又は下降させる。同様に、駆動軸50は、モータ52の駆動により回転し、第2昇降台65を上昇又は下降させる。これら駆動軸49,50の間には、ガイドレール53,54が設けられる。ガイドレール51は、第1昇降台55の凹部55aに入り込む。このガイドレール51を設けることで、第1昇降台55の移動方向がZ方向に規制され、また、駆動軸49の回転に合わせた第1昇降台55の回転が防止される。同様に、ガイドレール52は、第2昇降台65の凹部65aに入り込む。このガイドレール52を設けることで、第2昇降台65の移動方向がZ方向に規制され、また、駆動軸50の回転に合わせた第2昇降台65の回転が防止される。
【0025】
図4(b)に示すように、第1昇降台55は、上部ベースプレート48のY方向の中心Cに対して下方側に配置される。この第1昇降台55は、その下面側に、例えばX方向に延出されたガイドレール57を備えている。このガイドレール57は、第1搬送台60の移動方向を規制する。第1昇降台55の側方には、軸方向がガイドレール57の延出方向と平行となるように設けられた駆動軸58が設けられている。この駆動軸58は、第1搬送台60に取り付けられる。この駆動軸58は、モータ(図示省略)を介して回転する。駆動軸58が回転すると、第1搬送台60がガイドレール57の延出方向に沿って移動する。
【0026】
第1搬送台60には、第1保持機構61が設けられる。この第1保持機構61は、2つの保持片62,63と、これら保持片62,63を移動させる駆動部64からなる。保持片62は、駆動部64と連結される連結部62a、連結部62aに対して直交する支持部62b、支持部62bに対して直交する保持部62cから構成される。同様にして、保持片63は、連結部63a、支持部63b及び保持部63cから構成される。なお、第1昇降台55は、図4(b)中、上部ベースプレート48のY方向の中心Cから下方にずれた位置に配置される。この容器搬送装置29は、上部ベースプレート48のY方向の中心Cに培養容器31の短手方向の中心が位置するように保持される。つまり、保持片62の支持部62bは、保持片63の支持部63bよりも長く形成される。
【0027】
これら保持片62,63は、駆動部64により互いに近づく方向、又は互いに離れる方向に移動する。この2つの保持片62,63が互いに近づく方向に移動したときに、培養容器31の短手方向における一側面に保持片62の保持部62cが押圧され、培養容器31の短手方向における他側面に保持片63の保持部63cが押圧される。これら押圧により、培養容器31が保持片62,63によって挟持される。なお、駆動部64は、例えばエア圧、油圧を利用した駆動部や、モータ及びギヤを利用した駆動部からなる。
【0028】
図4(b)に示すように、第2昇降台65は、上部ベースプレート48のY方向の中心Cに対して上方側に配置される。この第2昇降台65は、その上面側に、例えばX方向に延出されたガイドレール66を備えている。このガイドレール66は、第2搬送台70の移動方向を規制する。第2昇降台65の側方には、軸方向がガイドレール66の延出方向と平行となるように設けられた駆動軸67が設けられている。この駆動軸67は、第2昇降台65に取り付けられる。この駆動軸67は、モータ(図示省略)を介して回転する。駆動軸67が回転すると、第2搬送台70がガイドレール66の延出方向に沿って移動する。
【0029】
第2搬送台70には、第2保持機構71が設けられる。この第2保持機構71は、2つの保持片72,73と、これら保持片72,73を移動させる駆動部74からなる。保持片72は、駆動部74と連結される連結部72a、連結部72aに対して直交する支持部72b、支持部72bに対して直交する保持部72cから構成される。同様にして、保持片73は、連結部73a、支持部73b及び保持部73cから構成される。なお、第2昇降台65は、図4(b)中、上部ベースプレート48のY方向の中心Cから上方側にずれた位置に配置される。この容器搬送装置29は、上部ベースプレート48のY方向の中心Cに、培養容器31の短手方向の中心が位置するように保持される。つまり、保持片72の支持部72bは、保持片73の支持部73bよりも短く形成される。
【0030】
これら保持片72,73は、駆動部74により互いに近づく方向、又は互いに離れる方向に移動する。この2つの保持片72,73が互いに近づく方向に移動したときに、培養容器31の短手方向における一側面に保持片72の保持部72cが押圧され、培養容器31の短手方向における他側面に保持片73の保持部73cが押圧される。これら押圧により、培養容器31が保持片72,73によって挟持される。なお、駆動部74は、例えばエア圧、油圧を利用した駆動部や、モータ及びギヤを利用した駆動部からなる。
【0031】
上述した構成の容器搬送装置29は、各部の位置(座標)や回転角度は、エンコーダ等を介して制御装置13にモニタリングされる。この制御装置13は、キャリア25、ストッカー27及び観察装置28の位置のデータを予め記憶しており、これらデータと、容器搬送装置29のモニタリングにより得られるデータとから、容器搬送装置29の各部を駆動制御する。
【0032】
以下、複数の培養容器にて培養される細胞をそれぞれ連続して観察する場合の容器搬送装置の動作について、図5〜図9を用いて説明する。
【0033】
制御装置13は、容器搬送装置29のY方向の位置を確認し、細胞の観察を行う培養容器31のY方向の位置と同一位置にあるか否かを判定する。容器搬送装置29のY方向の位置と、細胞の観察を行う培養容器31のY方向の位置が異なる場合には、制御装置13は、モータ45を駆動させ、駆動軸44を回転させる。この駆動軸44の回転により、下部ベースプレート41がY方向に移動する。そして、図5(a)に示すように、容器搬送装置29のY方向における位置が、細胞の観察を行う培養容器31のY方向における位置と同一位置となる場合に、制御装置13は、モータ45の駆動を停止する。これを受けて、駆動軸44の回転が停止され、下部ベースプレート41の移動が停止する。なお、容器搬送装置29のY方向の位置と、ストッカー27の内部に保管される培養容器31のY方向の位置とが同一位置となる場合には、この動作は行われない。
【0034】
次に、制御装置13は、上部ベースプレート48の回転位置を判定する。上部ベースプレート48の回転位置が、容器搬送装置29の第1搬送台60及び第2搬送台70がストッカー27に向けて移動できる回転位置にない場合には、モータ46を駆動させ、駆動軸47を回転させる。この駆動軸47の回転に合わせて、上部ベースプレート48が回転する。そして、上部ベースプレート48が180°回転したときに、制御装置13は、モータ46の駆動を停止する。これにより、駆動軸47の回転が停止し、容器搬送装置29の第1搬送台60及び第2搬送台70がストッカー27に向けて移動できる状態となる(図5(a)参照)。なお、容器搬送装置29の第1搬送台60及び第2搬送台70がストッカー27に向けて移動できる状態、言い換えれば図5(a)に示す状態にある場合には、上述した動作は行われない。
【0035】
その後、制御装置13は、第1昇降台55及び第2昇降台65のZ方向の位置を判定する。例えば第2昇降台65のZ方向の位置が、第2保持機構71によりストッカー27の培養容器31を保持できる位置にない場合には、モータ52を駆動し、駆動軸50を回転させる。この駆動軸50の回転により、第2昇降台65が上昇、又は下降する(Z方向に移動する)。なお、第2昇降台65には、第2保持機構71に取り付けられていることから、第2昇降台65の上昇又は下降により、第2保持機構71も上昇又は下降する。そして、制御装置13は、第2昇降台65のZ方向における位置が第2保持機構71によりストッカー27の培養容器31を保持できる位置に到達したときに、モータ52の駆動を停止させる。これにより、第2昇降台65のZ方向の移動が停止する。
【0036】
例えば第2昇降台65を上昇させるときに、制御装置13は、第1保持機構61が第2昇降台65の上昇に影響する位置にあるか否かを判定する。なお、第2昇降台65の上昇に影響する位置とは、例えば目的の位置まで第2昇降台65を上昇させる過程で、第1保持機構61に第2保持機構71とがぶつかるときの第1昇降台55の位置が挙げられる。第1昇降台55が第2昇降台65の上昇に影響する位置にあると判定した場合には、制御装置13は、モータ51を駆動させ、駆動軸49を回転させる。この駆動軸49の回転により、第1昇降台55が上昇する。そして、制御装置13は、第1保持機構61が第2昇降台65の上昇に影響しない位置まで第1昇降台55を上昇させる。
【0037】
なお、第1保持機構61が第2昇降台65の上昇に影響する位置にないと判定した場合、制御装置13は、モータ51の駆動を行わない。また、第2昇降台65のZ方向の位置が、第2保持機構71による培養容器31の保持を行うことができる位置にある場合には、上述した動作は実行されない。
【0038】
次に、制御装置13は、駆動部74を介して、第2保持機構71の保持片72,73を互いに離れる方向、言い換えれば保持片72をY1方向に、保持片73をY2方向に移動させる。同時に、制御装置13は、モータ(図示省略)を駆動させ、駆動軸67を回転させる。この駆動軸67の回転により、第2搬送台70がX1方向に移動する。この第2搬送台70のX1方向への移動時に、保持片72と保持片73の間に培養容器31が入り込む。その後、制御装置13は、駆動軸54の回転を停止させる。これにより、第2搬送台70のX1方向の移動が停止される。
【0039】
第2搬送台70のX1方向の移動が停止された後、制御装置13は、駆動部67を介して保持片72,73を互いに近づける方向(言い換えれば、保持片72をY1方向に、保持片73をY2方向に)に移動させる。これにより、培養容器31が、保持片72,73により挟持される(図5(b)参照)。これら保持片72,73により培養容器31が挟持されることで、培養容器31が第2保持機構71に保持される。培養容器31が第2保持機構71に保持された後、制御装置13は駆動軸67を回転させて、搬送台をX2方向に移動させる。これにより、培養容器31がストッカー27の収納位置から搬出される。そして、第2保持機構71に保持される培養容器31が第1昇降台55の下方の位置に到達したときに、制御装置13は、駆動軸67の回転を停止させる。これにより、第2搬送台70の移動が停止する(図5(c)参照)。
【0040】
その後、制御装置13は、モータ46を駆動させる。これにより、上部ベースプレート48が回転する。制御装置13は、上部ベースプレート48が180°回転したときにモータ46の駆動を停止させる。これにより、容器搬送装置29が、第1搬送台60及び第2搬送台70を観察装置28に向けて移動させることができる状態となる(図6(a)参照)。
【0041】
上部ベースプレート48の回転が停止した後、制御装置13は、第2保持機構71のY方向における位置と、観察装置28のY方向における位置とを確認する。第2保持機構71のY方向における位置と、観察装置28のY方向における位置が異なる場合には、制御装置13は、モータ45を駆動させ、下部ベースプレート41を移動させる。なお、第2保持機構71のY方向における位置と、観察装置28のY方向における位置が一致している場合には、制御装置13は、モータ45の移動を行わない。
【0042】
制御装置13は、駆動軸67を回転させる。この駆動軸67の回転により、第2搬送台70がX2方向に移動する。そして、第2搬送台70が観察装置28の容器載置面28aの上方まで移動したことを受けて、制御装置13は駆動軸67の回転を停止する。制御装置13は、モータ52を駆動させて、第2昇降台65を下降させる。なお、この第2昇降台65を下降させる量は、第2保持機構71に保持される培養容器31の下面と観察装置28の容器載置面28aとの間に生じる隙間に相当する量である。この第2昇降台65の下降により、培養容器31が観察装置28の容器載置面28aに載置される(図6(b)参照)。制御装置13は、駆動部74を介して、第2保持機構71の保持片72,73を、互いに離れる方向に、つまり、保持片72をY2方向に、保持片73をY1方向にそれぞれ移動させる。その状態で、制御装置13は、駆動軸67を回転させ、第2搬送台70をX1方向に移動させる。この移動により、第2保持機構71が観察装置28から退避する。最後に、制御装置13は、駆動部74を介して、保持片72、73を互いに近づける方向に移動させる。これにより、培養容器31がストッカー27から観察装置28に搬送される。
【0043】
観察装置28において培養容器31にて培養される細胞の観察が開始されると、制御装置13は、モータ46を駆動させ、上部ベースプレートを180°回転させる。この回転の後、制御装置13は、第1保持機構61のY方向及びZ方向の位置を確認する。ストッカー27の内部に保管される培養容器31のうち、次に細胞の観察を行う培養容器31が第1保持機構61により保持できる位置にないと判定された場合には、制御装置13は、モータ45、モータ51の順で駆動させ、第1保持機構61におけるY方向及びZ方向の位置と、対象となる培養容器31におけるY方向及びZ方向の位置とを一致させる。第1保持機構61におけるY方向及びZ方向の位置が、ストッカー27の内部に保管される培養容器が保持できる位置となる場合に、制御装置13はモータ45又はモータ51の回転を停止させる(図7(a)参照)。その後、制御装置13は、駆動部64を駆動させ、保持片62及び保持片63を互いに離れる方向に(保持片62をY1方向に、保持片63をY2方向に)移動させる。同時に、制御装置13は、駆動軸58を回転させ、第1搬送台60をX1方向に移動させる。この第1搬送台60の移動のより、保持片62及び保持片63の間に培養容器31が入り込む。制御装置13は、駆動軸58の回転を停止させた後、駆動部64を介して、保持片62及び保持片63を互いに近づける方向に移動させる。これにより、培養容器31が保持片62,63により挟持される。つまり、培養容器31が第1保持機構61に保持される。
【0044】
図7(b)に示すように、制御装置13は駆動軸58を回転させて、第1搬送台60をX2方向に移動させる。第1搬送台60が元の位置まで移動すると、制御装置13は、駆動軸58の回転を停止する。これにより、次に観察する細胞が培養される培養容器31がストッカー27から搬出される。そして、制御装置13は、モータ46を駆動させて、上部ベースプレート48を180°回転させる。最後に、制御装置13は、第2搬送台70に取り付けられる第2保持機構71によって、観察装置28に搬入された培養容器31を搬出できる状態となるように、容器搬送装置29を駆動する。
【0045】
図8(a)に示すように、観察装置28による培養容器31中の細胞の観察が終了すると、制御装置13は、第2搬送台70をX2方向に移動させた後、観察装置28の容器載置台28aに載置された培養容器31を、第2保持機構71により保持させる。そして、制御装置13は、第2搬送台70をX1方向に移動させる。これにより、第2保持機構71により保持された培養容器31が観察装置28から搬出される(図8(b)参照)。
【0046】
図8(c)に示すように、第2保持機構71により保持された培養容器31を観察装置28から搬出した後、制御装置13は、第1保持機構61に保持された培養容器31を観察装置28の容器載置台28aに搬入する。このとき、制御装置13は、駆動軸58を回転させて、第1搬送台60をX2方向に移動させる。そして、制御装置13は、モータ51を駆動させ、駆動軸49を回転させる。この駆動軸49の回転により、第1昇降台55が下降し、第1保持機構61に保持された培養容器31が観察装置28の容器載置台28aに載置される。
【0047】
その後、制御装置13は、駆動部64を介して保持片62及び保持片63を互いに離れる方向に移動させることで、保持片62及び保持片63による培養容器31の挟持を解除する。その状態で、制御装置13は、モータ51の駆動による駆動軸49の回転、及び駆動軸58の回転を実行し、第1昇降台55及び第1搬送台60を、培養容器31を搬入する直前の位置に戻す。これにより、新たに観察する培養容器31を観察装置28に搬入する処理が終了する。その後、制御装置13は、第2保持機構71にて保持した培養容器31をストッカー27の所定位置まで搬送する。
【0048】
例えば搬送台及び保持機構が1つのみの容器搬送装置の場合には、観察装置28による細胞の観察が終了するたびに、培養容器31を観察装置28からストッカー27に搬送し、新たに観察を行う培養容器31をストッカー27から観察装置28に搬送することから、これら処理に係る処理時間を考慮した各培養容器31の観察スケジュールを設定し、この観察スケジュールに合わせて各培養容器31を管理する必要がある。しかしながら、本実施形態においては、観察装置28における細胞の観察が実行されているときに、容器搬送装置29によって、次に細胞の観察を行う培養容器31をストッカー27から搬出する。そして、観察装置28における細胞の観察が終了したときに、容器搬送装置29は観察が終了した培養容器31を観察装置28から搬出した直後に、次の培養容器31を観察装置28に搬入することができる。つまり、ある培養容器に対する細胞の観察から、次の培養容器に対する細胞の観察までに係る時間を短縮することが可能になる。
【0049】
本実施形態においては、容器搬送装置29に設けられる第1保持機構61、第2保持機構71のうちの一方の保持機構を利用して、ストッカー27に保管された培養容器31を搬送する例を取り上げているが、これに限定される必要はなく、第1保持機構61、第2保持機構71のそれぞれで培養容器31を同時に保持し、搬送することも可能である。
【0050】
本実施形態では、第1保持機構61、第2保持機構71を設けた場合について説明しているが、これに限定する必要はなく、3以上の保持機構を設けることも可能である。
【0051】
本実施形態では、第1保持機構61又は第2保持機構71の何れか一方により培養容器31を保持し、培養容器31をストッカー27と観察装置28との間で搬送する場合について説明しているが、これに限定される必要はなく、例えば一方の保持機構により保持された培養容器から、他方の保持機構を用いて蓋部材を取り外す、又は蓋部材を取り付けることも可能である。
【0052】
例えば、本実施形態の培養観察装置10においては、培養容器31の内部の細胞に試薬を添加する試薬添加装置80を備えている場合がある。このような場合、制御装置13は、容器搬送装置29を駆動させて、第2保持機構71により保持された培養容器31を試料添加装置80まで搬送する。図9(a)に示すように、試料添加装置80まで培養容器31を搬送した後、制御装置13は、第2保持機構71に保持された培養容器31の蓋部材31bを第1保持機構61により保持させる。そして、制御装置13は、第1昇降台55を上昇させる。これにより、培養容器31の容器本体31aから蓋部材31bが取り外される。図9(b)に示すように、試料添加装置80のノズル80aが容器本体31aの上部から、その内部に入り込む。このノズル80aを介して試料添加装置80による試料の添加が実行される。この試料の添加が終了した後、制御装置13は、第1昇降台55を下降させる。これにより、第2保持機構71に保持される蓋部材31bが、第2保持機構71に保持される培養容器31の容器本体31aに取り付けられる。
【0053】
なお、培養観察装置10に上述した試料添加装置80を備えていない場合には、ユーザが搬入用扉22を開けて試料を添加する場合もあるので、このような場合には、制御装置13は、培養容器31が保持された状態の第2保持機構71を搬入用扉22の近傍まで搬送した後、第1保持機構61により培養容器31の蓋部材31bを取り外す。そして、ユーザがピペッターなどを用いて試薬を添加した後、第1保持機構61に保持された培養容器31の蓋部材31bを、第2保持機構71に保持された培養容器31の容器本体31aに取り付ける。これによれば、培養容器31の蓋部材31bを容器本体31aから取り外す、又は培養容器31の蓋部材31bを培養容器31の容器本体31aに取り付ける装置を培養観察装置10に新たに設ける必要がなく、培養観察装置10をコンパクトにすることができる。
【0054】
本実施形態では、ストッカー27及び観察装置28の間に容器搬送装置29を配置した例を取り上げているが、培養容器31を搬送する容器搬送装置であれば、恒温室内におけるストッカー27、観察装置28及び容器搬送装置のレイアウトは、本実施形態に限定する必要はない。
【符号の説明】
【0055】
10…培養観察装置、13…制御装置、27…ストッカー、28…観察装置、29…容器搬送装置、31…培養容器、45,51,52…モータ、44,49,50,58,67…駆動軸、55…第1昇降台、65…第2昇降台,60…第1搬送台,70…第2搬送台、61…第1保持機構、71…第2保持機構、62,63,72,73…保持片、64,74…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が培養される培養容器が複数保管される保管庫と、
前記培養容器にて培養される前記細胞を観察する観察装置と、
前記保管庫及び前記観察装置の一方から他方に向けて、前記培養容器を搬送する搬送装置と、を有し、
前記搬送装置は、
前記培養容器を個別に保持することが可能な複数の保持機構と、
前記複数の保持機構を個別に動作させる駆動機構と、
を備えたことを特徴とする培養観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の培養観察装置において、
前記搬送装置は、前記複数の保持機構により複数の前記培養容器を同時に、且つ個別に保持することを特徴とする培養観察装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の培養観察装置において、
前記培養容器は、前記細胞及び該細胞を培養する培養液が充填される容器本体と、前記容器本体に対して着脱自在な蓋部材と、を有し、
前記複数の保持機構は、前記培養容器の前記容器本体又は前記蓋部材の何れか一方をそれぞれ保持することが可能であることを特徴とする培養観察装置。
【請求項4】
請求項3に記載の培養観察装置において、
前記搬送装置は、前記複数の保持機構のいずれかによって前記培養容器の前記容器本体を保持したときに、他の保持機構による前記蓋部材の取り外し、又は前記蓋部材の取り付けを行うことを特徴とする培養観察装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate