説明

培養観察装置

【課題】生菌の増殖と生菌数の正確な計数とを両立する培養装置を提供する。
【解決手段】培養観察装置100は、半円筒と直方体とを結合させた立体形状を有し、上ケース102と下ケース104とで構成される。上ケース102には、その内側に照明ユニット120が取り付けられ、照明ユニット120は、ガラス板110に載置されたシャーレ200内の寒天培地へ側方から照明光を照射する。この装置によると、シャーレ200内で生菌を培養できるとともに、シャーレ200上蓋の内側の結露の影響を受けることなく培養された生菌数を正確に、かつ、連続的に自動計数することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、この発明は、微生物を培養する装置に関し、特に、培地で微生物を培養する場合に、その微生物を正確に観察できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微生物を寒天培地で培養して、一定時間経過後の生菌数(以下、コロニー数と記載する場合がある)を検出することにより、食品の微生物汚染を検査することが行われている。この検査方法は、食品の検査試料1gまたは1ml中に生存する生菌数を用いて、食品の微生物汚染の指標としている。このような検査方法における生菌数の計数は、たとえば、混釈法で行われている。混釈法では生菌の試料と標準寒天培地をシャーレでよく混ぜ、培養に適した条件で(35℃で48時間)培養した後に、増殖して形成されたコロニー数を計数する。このような計数方法では、長時間の培養の結果、コロニーどうしが重なってしまい、正確な計数が困難であるという問題がある。
【0003】
特開2003−85533号公報(特許文献1)は、このような問題を解決する個数計数方法を開示する。この個数計数方法は、測定対象を通過した光をエリアセンサで受け、エリアセンサが所定時間ごとに取得した画像を2値化して順次に2値化画像を得る2値化ステップと、基準となる2値化画像を画像記憶手段に記憶する画像記憶ステップと、基準となる2値化画像を得た後に得た2値化画像の中に所定の画素連結領域をそれぞれ内部に含む判定領域を設定する領域設定ステップと、基準となる2値化画像で判定領域に対応する比較領域の中に存在する画素連結領域の個数を計数する領域内計数ステップと、領域内計数ステップで計数された個数が0または1のとき、比較領域を判定領域で置き換え、領域内計数ステップで計数された個数が2以上のとき、比較領域を維持して、画像記憶手段に記憶された2値化画像を更新する更新ステップと、画像記憶手段に記憶された2値化画像の中の画素連結領域の個数を計数する個数計数ステップとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−85533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された個数計数方法においては、生菌数の計数方法として混釈法を採用し、コロニー増殖過程を顕微鏡で逐次拡大計測し、コンピュータで画像処理することによりコロニー数を計数する。この計数方法では、コロニーにレーザー等の光を照射してCCDエリアセンサでコロニーの陰影像を拡大観測する方法、および、培地を入れる容器の結露を防ぐ構造を、採用している。この計数方法では、培養開始時から、試料を顕微鏡で拡大して観測し、一定時間間隔で逐次画像情報をコンピュータに取り込み画像処理を行う。この場合において、増殖して大きくなったコロニーから順次検出され、新たに検出されるコロニーが無くなった時に総生菌数を確定させる。従って、培養開始時間から短時間で生菌数を確定することが可能である。さらに、コロニーが重ならない段階から観測するために、正確な計数が可能である。
【0006】
この個数計数方法においては、インキュベータ内でコロニーを増殖させる容器に工夫が施されている。混釈法で用いる通常のシャーレの場合、シャーレの上蓋の内側に結露が発生することにより正確な計測が困難になる。この問題を解決するために、この個数計数方法においては、計測する領域の培地表面が空気層に接触しないように密閉するとともに、全ての培地表面を密閉しないで空気層と接触する培地領域をつくった、培地容器を採用している。このような培地容器の構造によると、空気層と接触する培地領域は結露するが、密閉した培地領域は結露することなく連続自動計測が可能である。このようにして、培地の乾燥とシャーレの結露とをともに防ぎ、長時間の連続自動計測を実現している。
【0007】
しかしながら、この培地容器では、計測領域の培地表面が空気層に接触しないために、シャーレ−の蓋の内側が結露することを防止できても、生菌の増殖に空気を必要とする場合には生菌が増殖しなくなり、正確にコロニー数を計測できない。
その一方、このような特別な形状の培地容器を用いないで2次元画像センサによりシャーレ内の生菌の状態を撮像してコロニー数を計測する場合、特許文献1を含め公知の技術では、シャーレの結露の影響を排除できない。通常のシャーレでこの影響を排除しようとすると、シャーレの上蓋を開けて結露を拭き取ってから培地を撮像するか、シャーレの上蓋を開いて培地を撮像することになる。このように撮像すると撮像の度にシャーレの上蓋を開けなければならず、培養条件が変化して培養の障害になったり、自動計測が困難になったり、上蓋を開けることによりシャーレの位置が変化してしまい正確な計数が困難になったりする。また、結露の影響を排除するためにシャーレの上方から強い照度で照明すると、シャーレの中央部にハレーションが発生して正確な計数が困難になる。その結果、特許文献1に開示された個数計数方法でも公知の技術でも、生菌の増殖と、生菌数の正確な計数とを両立できない。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、生菌の増殖と、生菌数の正確な計数とを両立できる培養観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
本発明に係る培養観察装置は、シャーレ内の平板状の培地で微生物を培養する。この培養観察装置は、シャーレを載置する載置台と、シャーレの側方に設けられ、培地の側方から光を培地へ向けて光を照射する照明ユニットと、載置台を通してシャーレの底皿側から培地を撮像する撮像手段と、載置台と照明ユニットと撮像手段とを内蔵し、且つ微生物を培養するに適した環境を内部に形成可能な筐体とを有する。
【0010】
好ましくは、照明ユニットは、シャーレの周囲に離散的に設けられた照明であるように構成することができる。さらに好ましくは、照明ユニットは、シャーレの外径よりも大きな内径を備えた円筒形状の照明であるように構成することができる。さらに好ましくは、照明ユニットの光源は、培地へ向けて青白色光を照射するLEDであるように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、撮像手段は、CMOSからなる2次元エリアセンサであるように構成することができる。
さらに好ましくは、筐体内部のシャーレが載置された空間の温度を調整する温度調整ユニットを有するように構成することができる。
さらに好ましくは、筐体は、上方が開口された開口部を備えた本体と、開口部を閉鎖する蓋体とを備えるように構成することができる。この場合、載置台は、開口部に設けられ、撮像手段は、本体の内底部に、上方を撮像するように配備され、照明ユニットは、蓋体を閉じた際にシャーレの側方に位置する蓋体内側に設けられ、蓋体を閉じた際に培地の側方から培地へ向けて光を照射可能に配置されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る培養観察装置によると、生菌の増殖と、生菌数の正確な計数とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る培養観察装置の斜視図である。
【図2】図1の培養観察装置の透過斜視図である。
【図3】図1(A)に示す矢示C方向の断面図である。
【図4】図1(A)に示す矢示A方向の断面図である。
【図5】図1(A)に示す矢示B方向の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る培養観察装置におけるシャーレと照明装置との詳細な位置関係を側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る培養観察装置の斜視図である。
【図8】図4に対応する断面図である。
【図9】図6に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
<第1の実施形態>
[装置構成]
図1に培養観察装置100の全体斜視図を示す。この培養観察装置100は、半円筒と直方体とを結合させた立体形状の筐体を有し、大きくは上ケース102と下ケース104とで構成される。図1(A)に上ケース102が閉じられている状態を、図1(B)に上ケース102が開かれている状態を、それぞれ示す。図1(B)に示すように、上ケース102には、その内側に照明ユニット120が取り付けられている。その詳細な構成は後述するが、照明ユニット120は、透明のガラス板110に載置されたシャーレ200内の寒天培地へ光を照射する。なお、下ケース104には、ガラス板110上に載置されるシャーレ200の位置決めガイドを兼ねた第1プレート106が備えられている。この第1プレート106は、貫通部108を備える。下ケース104内に設けられた電気ヒータ(たとえば、下ケース104内の側面に貼付されたフィルムヒータ)で暖められた空気(培養に適した温度とされた空気)が、シャーレ200が載置された上ケース102内の空間に、この貫通部108を通じて流れる。
【0015】
図2に、培養観察装置100の透過斜視図を示す。なお、この透過斜視図は図1(B)に対応する。図2においては、透過斜視図に一部外観図を重ねて示す。図2に示すように、培養観察装置100の上ケース102と下ケース104とは、2つのフラットトルクヒンジ132により開閉自在に接合され、カフスラッチファスナー130により上ケース102を閉状態に保持することができる。上ケース102を閉状態に保持して微生物が培養される。
【0016】
さらに、図3に図1(A)に示す矢示C方向の断面図を、図4に図1(A)に示す矢示A方向の断面図を、図5に図1(A)に示す矢示B方向の断面図を、それぞれ示す。これらの図1〜図5を用いて培養観察装置100の内部構造を説明する。
培養観察装置100の内部には、シャーレ200を載置する透明のガラス板110と、シャーレ200内の培地を照明する照明ユニット120と、シャーレ200の底皿に設けられた培地を下方から撮像するカメラユニット150とを含む。
【0017】
ガラス板110は、シャーレ200の底皿の直径D(1)より大きな直径D(2)を備えた円形状である。このガラス板110は、直径D(2)よりも小さい直径D(3)の円形穴部を備えた第2プレート112に載置されている。このガラス板110の上方には、直径D(1)よりも大きく直径D(2)よりも小さい直径D(4)の円形穴部を備えた第1プレート106が載置されている。シャーレ200を第1プレート106の円形穴部へ載置することにより、シャーレ200のガラス板110上での位置を規制することができる。このように構成されているので、ガラス板110上のシャーレ200を簡単に位置決めできるとともに、シャーレ200の底皿に敷き詰められた培地の全体をカメラユニット150により撮像することができる。
【0018】
なお、図1に示したように、第1プレート106には、温度調節用の貫通部108を備える。第2プレート112も第1プレート106と同じ位置に同じ形状の貫通部を備える。
照明ユニット120は、シャーレ200を取り囲むように四方に設けられる。それぞれの照明ユニット120は、LEDユニット122と、LEDユニット122を保持する保持ユニット124とで構成される。LEDユニット122は、白色光〜青色光を発生するLEDを用いている。なお、照明ユニット120は、シャーレ200の培地に向けて側方から白色光〜青色光(以下、まとめて青白色光と記載する)を照射し培地を略均一に照明することができるものであればよく、4ヶ所に限定されるものではない。
【0019】
照明された培地は、下ケース104に設けられたカメラユニット150によりガラス板110を通して撮像される。このとき、培地上に培養された生菌のコロニーが陰影となってカメラユニット150により撮像される。
カメラユニット150は、CMOSイメージセンサから構成されるカメラセンサ152と、カメラセンサ152を保持するカメラプレート154とを含む。CMOSイメージセンサは、2次元エリアセンサの一例である。
【0020】
計数対象とする生菌の大きさは0.1mmである。ここでは、カメラセンサ152の画素数を、130万画素とした。シャーレ200の大きさが直径90mmであるため、1画素あたり0.0872mmとなる。これ以上の分解能であると、培地の表面凹凸等を撮像して、正確な計数を却って阻害する。カメラセンサ152からの撮像信号は、USBハーネス140を経由して、たとえばビデオキャプチャボードへ取り込まれる。このとき、取得画像の画素数は、一例として、640×480で各画素が8ビットのカラー階調を備える。このような諸元は限定されるものではなく、シャーレ200の培地で培養された生菌またはコロニーが観察できるものであればよい。なお、カメラセンサ152にCMOSを用いることにより、CCDに比較して、安価であり、素子が小さいことから消費電力も少なく、原理的にスミアやブルーミングが発生せず、高速読み出しできるという長所がある。
【0021】
さらに、下ケース104には、電気ヒータ160が備えられ、下ケース104内の空気を暖める。暖まった空気は上昇して貫通部108を通って、シャーレ200が載置された上ケース102内の空間へ流れる。シャーレ200が載置された上ケース102内の空間には、図示しない温度センサ(たとえば熱電対)が設けられ、温度センサは温度調整ユニットに接続されている。温度調整ユニットは、設定温度(たとえば35℃)±2.5℃程度になるように電気ヒータをオンオフ制御したり、設定温度を目標値として電気ヒータをPID制御したりする。
【0022】
さらに、本実施形態に係る培養観察装置100の特徴的な構成である、照明ユニット120とシャーレ200との詳細な位置関係について図6を用いて説明する。図6は、照明ユニット120およびシャーレ200の拡大図である。図6に示すように、照明ユニット120のLEDユニット122は、シャーレ200の底皿220に敷き詰められた平板上の培地300を、そのやや上側の側方またはその側方(これらをまとめて側方と記載する)から青白色光を照射する。培地300は、たとえば寒天培地であって、生菌増殖のための栄養分を含有する。このため、培養する生菌の種類により培地の種類が異なる。培地300には様々な種類があるが、LEDユニット122から青白色光を培地300の側方から照射することにより、導光板の機能を発現する培地300が多い。4ヶ所のLEDユニット122からの青白色光の照射および培地300が導光板の機能を発現することにより、培地300を均一に光らせることができる。なお、図3に示すように、シャーレ200の底皿220の直径D(1)は、第1プレート106の円形穴部の直径D(4)よりも小さく、第1プレート106の円形穴部の端部と底皿220の底面端部との間には空間があるので、この空間を通ってLEDユニット122から照射された光が培地300へ到達する。
【0023】
LEDユニット122の位置(培地との相対的な位置)、照射角度、波長および照度は、培地300が導光板として機能して、培地300を均一に光らせることができればよい。このように培地300が導光板として機能するように、LEDユニット122が、シャーレ200の周囲に設けられ、培地300の側方から光を培地300へ向けて光を照射する。すなわち、側方とは、培地300が導光板として機能する全ての方向を含む。なお、培地の種類によりLEDユニット122から照射される光の波長および照度の少なくとも一方を変更するようにしても構わない。
【0024】
このようにして、LEDユニット122から青白色光が照射された培地300をガラス板110を通してカメラユニット150で撮像することにより、シャーレ200の上蓋210の内側に発生する結露の影響を完全に排除できる。このため、培地に増殖したコロニー数の正確な計数が可能となる。特に、シャーレ200の上蓋を開けて結露を拭き取る必要がないために、シャーレ200の位置を動かす必要もなく、正確にかつ連続的な自動計数することができる。詳しくは、シャーレ200の位置を動かす必要がないので、一定時間間隔で観察(計数)しているときに、一定時間前のコロニーの状態と現在のコロニーの状態とを正確に比較することができる。
【0025】
なお、図6に示すLEDユニット122の位置は一例であって、第1プレート106に干渉しなければ、LEDユニット122の位置は、図6に示す位置よりも下方であっても構わない。下方にあるとLEDユニット122は、培地300を、より側方から青白色光を照射することができる。
また、微生物等の培養に光の影響がある場合を除いてLEDユニット122へ連続的に通電しても構わない。このようにすることにより、LEDユニット122から発生する熱により、電気ヒータの消費電力を低減させることが可能になる。
【0026】
[作動態様]
上述した本実施形態に係る培養観察装置100を用いて、微生物の培養を行いつつ、微生物の増加状況を観察(コロニー数の計測)する態様について説明する。
培地300が敷き詰められたシャーレ200の底皿220に微生物(菌)を塗布する。このときシャーレ200内で培養する菌に適した培地300が選択されている。
【0027】
菌が塗布されたシャーレ200を培養観察装置100のガラス板110に載置する。このとき、第1プレート106の穴部が、シャーレ200の底皿220のガイドとなる。その後、上ケース102を閉じて、カフスラッチファスナー130により上ケース102を閉状態に保持する。
照明ユニット120を点灯して、カメラユニット150により初期画像を撮像する。電気ヒータ160に通電すると、下ケース104内の空気が暖められて、暖まった空気は上昇して貫通部108を通って、シャーレ200が載置された上ケース102内の空間へ流れ、シャーレ200の周囲温度が培養に適した温度に維持される。なお、このときに、培養の阻害にならなければ、照明ユニット120を点灯していても構わない。
【0028】
予め設定した時間間隔(たとえば3時間間隔)で、培地300上で増殖した菌の状態(コロニーの状態)をカメラユニット150により撮像する。撮像画像に画像処理を行い、コロニー数を計数する。
このとき、カメラユニット150で撮像した画像からコロニー数をカウントする処理(画像処理)は、当業者に定法のものが採用可能である。たとえば、一定の時間間隔で撮像された画像から初期画像を減算して、最初からシャーレ200についているゴミなどの影響を排除する。減算画像を二値化して、二値化画像で連続した画素領域を連かつ処理して、画素領域をラベリングして、連結した画素領域を1つのコロニーとして計数する。
【0029】
以上の処理によって、コロニー数を計数可能となる。なお、この計数処理は、培養観察装置100の外部のパーソナルコンピュータでも実行しても構わないし、培養観察装置100内に画像処理装置を設けて処理しその画像処理の結果を外部のコンピュータへ転送しても構わない。このように、カメラユニット150と外部のコンピュータ等とは、たとえばUSBハーネス140を経由したり、LAN通信ユニットを経由したりして接続される。
【0030】
[効果]
以上のようにして、本実施形態に係る培養観察装置によると、シャーレ内で所望の生菌を培養できるとともに、上蓋の内側の結露の影響を受けることなくシャーレ内で培養されたコロニー数を正確に、かつ、連続的に自動計数することができる。このようにすると、オンラインでの連続観察も可能となる。
【0031】
<第2の実施形態>
以下に、図7〜図9を参照して、本発明の第2の実施形態に係る培養観察装置400について説明する。図7は図1(B)に対応する培養観察装置400の斜視図、図8は図4に対応する断面図、図9は図6に対応する側面図である。
これらの図に示すように、本実施形態にかかる培養観察装置400は、第1の実施形態に係る培養観察装置100とは異なる照明ユニット420を備える。その他の構成は第1の実施形態と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
照明ユニット420は、培養観察装置400の上ケース402に設けられ、シャーレ200の周囲を取り囲む中空円筒部426と中空円筒部426を上ケース402内に保持する保持部424とを有する。中空円筒部426の内部には、シャーレ200内の培地300を均一に照明するようにLEDユニット422が配置されている。中空円筒部426と保持部424とは、たとえば一体成型された樹脂で構成される。
【0033】
中空円筒部426は、ポリプロピレンなどで形成され、LEDユニット422からの光を拡散する拡散板の役目を担っている。
LEDユニット422は、第1の実施形態のLEDユニット122と同じLEDを用いている。ここでも、照明ユニット420は、シャーレ200の培地に向けて側方から青白色光を照射し、培地を略均一に照明することができるものであればよく、LEDユニット422は図示した12個に限定されるものではない。
【0034】
さらに、本実施形態に係る培養観察装置400の特徴的な構成である、照明ユニット420とシャーレ200との詳細な位置関係について図9を用いて説明する。図9は、照明ユニット420およびシャーレ200の拡大図である。図9に示すように、照明ユニット420のLEDユニット422は、シャーレ200の底皿220に敷き詰められた培地300を、その上方または側方から青白色光を照射する。LEDユニット422から青白色光を照射することにより、多くの培地300が導光板の機能を発現して、LEDユニット422からの青白色光の照射により、培地300を均一に光らせることができる。
【0035】
このようにして、LEDユニット422から青白色光が照射された培地300をガラス板110を通してカメラユニット150で撮像することにより、シャーレ200の上蓋210の内側に発生する結露の影響を完全に排除できる。
なお、図9に示すLEDユニット422の位置は一例であって、第1の実施形態と同様に、第1プレート106に干渉しなければ、LEDユニット422の位置は、図9に示す位置よりも下方であっても構わない。下方にあるとLEDユニット422は、培地300を、より側方から青白色光を照射する。ここで、側方の意味は、第1の実施形態と同じである。
【0036】
本実施形態に係る培養観察装置400の作動態様は、第1の実施形態に係る培養観察装置100と同じである。
以上のようにして、本実施形態に係る培養観察装置によると、第1の実施形態と同様に、シャーレ内で所望の生菌を培養できるとともに、上蓋の内側の結露の影響を受けることなくシャーレ内で培養された生菌またはコロニー数を正確に、かつ、連続的に自動計数することができる。
【0037】
以上、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
100、400 培養観察装置
102 上ケース
104 下ケース
106 第1プレート
108 貫通部
110 ガラス板
112 第2プレート
120、420 照明ユニット
122、422 LEDユニット
124 保持ユニット
130 カフスラッチファスナー
132 フラットトルクヒンジ
140 USBハーネス
150 カメラユニット
152 カメラセンサ
154 カメラプレート
200 シャーレ
300 培地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーレ内の平板状の培地で微生物を培養する培養観察装置であって、
前記シャーレを載置する載置台と、
前記シャーレの側方に設けられ、前記培地の側方から光を前記培地へ向けて光を照射する照明ユニットと、
前記載置台を通して前記シャーレの底皿側から前記培地を撮像する撮像手段と、
前記載置台と照明ユニットと撮像手段とを内蔵し、且つ微生物を培養するに適した環境を内部に形成可能な筐体と、
を有することを特徴とする培養観察装置。
【請求項2】
前記照明ユニットは、前記シャーレの周囲に離散的に設けられた照明であることを特徴とする請求項1に記載の培養観察装置。
【請求項3】
前記照明ユニットは、前記シャーレの外径よりも大きな内径を備えた円筒形状の照明であることを特徴とする請求項1に記載の培養観察装置。
【請求項4】
前記照明ユニットの光源は、前記培地へ向けて青白色光を照射するLEDであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の培養観察装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、CMOSからなる2次元エリアセンサであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の培養観察装置。
【請求項6】
前記筐体内部の前記シャーレが載置された空間の温度を調整する温度調整ユニットを有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の培養観察装置。
【請求項7】
前記筐体は、
上方が開口された開口部を備えた本体と、前記開口部を閉鎖する蓋体とを備え、
前記載置台は、前記開口部に設けられ、
前記撮像手段は、前記本体の内底部に、上方を撮像するように配備され、
前記照明ユニットは、前記蓋体を閉じた際にシャーレの側方に位置する前記蓋体内側に設けられ、前記蓋体を閉じた際に前記培地の側方から前記培地へ向けて光を照射可能に配置された
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の培養観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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