説明

基体の変性方法

【解決手段】 本発明は、
− 基体を、アミノセルロースの少なくとも1種類の誘導体を含有する及び/又は
− NH−(オルガノ)ポリシロキサンの少なくとも1種類の誘導体を含有する変性用溶液と接触させ、
− 基体とアミノセルロース誘導体とよりなる及び/又は基体とNH−(オルガノ)ポリシロキサンとよりなる基体複合材料を生成する
各段階のある基体の変性方法に関する。
この様に製造された基体複合材料はインプラント、センサー又はラスターゾンデ−ティップの製造に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基体を変性する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多官能性及び/又は二官能性特性を有する基体材料のナノスケールの表面変性は、殆ど全ての未来のテクノロジー、即ちバイオセンサーによるバイオ電子機能デバイスを持つナノエレクトリニクスから生体適合性材料までの未来のテクノロジー、例えばインプラント又は有効物質キャリヤーに関係するナノテクノロジーの重要な部門である。
【0003】
ベリン(Berlin)等(Berlin P.、Klemm D.、Jung A.、Liebegott H.、Riesler R.、Tiller J.)の “Film-forming aminocellulose derivatives as enzyme-compatible support matrices for biosensor developments. Cellulose(バイオセンサー開発のための酵素適合性支持体マトリックスとしての造膜性アミノセルロース誘導体) 2003”、第10巻、第343-367頁から、ガラス基体にアミノセルロース誘導体(ACD)を適用することは公知である。この様に製造された比較的に厚い約100〜200ナノメータのACD−フィルムは、通常、共有結合で固定された生物分子を有するバイオチップ表面を形成するために提供されそして相補性組織の検査のために使用されている。
【0004】
ヤング(Jung)等(Jung A.、Berlin P.、Wolters B.)の“Biomolecule-compatible support structures for biomolecule coupling to physical measuring principle surfaces、IEE Proceedings Nanobiotechnol. 2004”、第151巻、No.3、第87〜94頁から、フィルム形成の別の変法が公知である。アミノセルロース誘導体から出発して及びカルボキシル基を持つ3−メルカプトプロピオン酸によって官能性化された金製基体から出発して、共有結合で固定された酵素蛋白質を持つバイオチップ表面を提供することが公知である。
【0005】
共有結合で固定化された酵素蛋白質を持つフィルム粒子は、水性溶液とバイオチップ表面が接触した際に基体表面から脱離される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、確り固定された多官能性或いは二官能性表面構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、特定クレームに記載の方法によって及び併合クレームに従う材料によって解決される。特に有利な実施態様は従属形式の請求項から明らかである。
【0008】
この方法は本発明に従う以下の各段階で構成されている:
基体を、アミノセルロースの少なくとも1種類の誘導体及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンの少なくとも1種類の誘導体と接触させる。
【0009】
基体とアミノセルロース誘導体とから及び/又は基体とNH−(オルガノ)ポリシロキサンとから基体複合材料を生成することを特徴とする。
【0010】
基体複合材料という概念は、ここでは複合材料と同義語である。製造された基体複合材料は、表面特性が単一成分のそれより優れている確り結合した材料である。
【0011】
確り結合したとは、表面構造が色々な電解質組成の溶剤中で例えば超音波処理のもとでも溶解され得ないことを意味する。共有結合で固定化された生物機能性分子も基体複合材料から脱剥されない。
【0012】
有利にも、本発明の方法によって沢山の本発明の基体複合材料が種々の用途の要求次第で提供される。
【0013】
基体複合材料は、基体が変性用溶液と接触した際に、中に含まれるアミノセルロース誘導体或いはNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体の自発的な接着的自己組織化によって形成される。この場合、アミノセルロース−ポリマー鎖及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンよりなる単分子層が基体上に基体表面構造の影響のもとで形成される。
【0014】
本発明の方法によって製造される基体複合材料は、少なくとも2種類の異なる材料、即ちアミノセルロース誘導体を有する基体或いはNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体を有する基体である。関与する成分次第で、単一成分が有していない新規で、かつ、有利な性質を有する。
【0015】
基体複合材料が3種類以上の材料を有することが考えられる。例えばアミノセルロース誘導体及びNH−(オルガノ)ポリシロキサンを有する基体が考えられる。
【0016】
基体と変性用溶液との接触の際に、各成分の相補的に接着する電子構造によって及びそれからの後続の自己組織化によってポリマーの単分子層の相互作用構造が生じる。各成分は相互の共同電子バンド構造化によって狭い複合体をもたらす。
【0017】
一般に基体を変性用溶液と簡単な手段で接触させれば十分であることは非常に有利である。これには単なる旋回、浸漬、短時間の保管等がある。難しい方法、例えば回転塗り、浸漬塗装、エア−ブラシ法、ミクロ接触印刷(μCP)も使用できるが、これらを使用する必要もない。
【0018】
回転塗りは例えば1から20,000回転/分、特に15,000回転/分及び3〜10分の回転時間で使用する。浸漬塗装の場合には、基体を例えば5〜60秒、特に好ましくは30秒間、変性用溶液に浸漬することができる。
【0019】
変性用溶液は本発明の別の一つの実施態様においてはポリマー、特にポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)よりなるミクロ−又はナノ構造化されたスタンプによって、ミクロ−又はナノ接触印刷(μCP)によって基体に塗布してもよい。
【0020】
この場合、表面構造は基体材料上に用途特有の線間隔及び線幅を有する例えばナノスケールの線パターンの状態でスタンプするのが有利である。この目的のために、スタンプは変性用溶液で湿らせそしてその後に2〜15分の間に基体表面と接触させる。中でも、スタンプを変性用溶液中で1〜3時間の期間、振ることによって浸漬しそして浸漬後に1〜2分間、アルゴン流の中に放置する。
【0021】
基体複合材料表面は、水接触角を変更するために、即ち疎水性/親水性−バランスを変えるために及び/又は(生物)機能性分子又はナノ粒子とNH−反応性二官能性試薬によって共有結合するために、NH−反応性二官能化試薬によって官能化或いは化学的に活性化することができる。
【0022】
NH−反応性官能化は用途特有に有利に選択することができる。それによってプラス又はマイナスの電荷分布、pH−、キレート−、レドックス−又は色原体特性を基体複合材料表面に全く平らに又は構造パターンの状態で製造することが有利にも実現される。
【0023】
この方法では高温も他の触媒も必要なく、室温でも自然接着が生じるので有利である。
【0024】
本発明では、基体への自然接着が一般に既に数分(<5分)後に行われることは驚くべきことである。それ故に本発明の方法では一般に基体と変性用溶液とを短時間接触させることが考慮される。
【0025】
この方法は任意の小さい基体寸法を全面的に変性するために又はマイクロ流体(センサー)系で表面変性するために又はミクロ又はナノスケールの表面構造パターンをミクロ接触印刷の原理に従って製造するために使用することができる。
【0026】
使用されるアミノセルロース誘導体及びNH−(オルガノ)ポリシロキサンの濃度は高過ぎないように選択しなければならない。さもないと使用するポリマー誘導体の凝集物が基体表面上に堆積する。これは本発明の意味での基体複合材料と見なされない。
【0027】
変性用溶液として0.05〜05%濃度の式(I)のアミノセルロース誘導体溶液を使用するのが特に有利である(後記参照)。5%までの比較的に高い濃度を使用することが考えられる。その場合には勿論、洗浄工程を強化しなければならない。
【0028】
本発明の一つの別の実施態様においては、変性用溶液として一般式P1〜P5(後記参照)の0.03〜1%濃度のNH−(オルガノ)ポリシロキサン溶液を使用する。約0.03〜0.1%の濃度が特に有利である。
【0029】
基体を変性用溶液と接触させた後にその都度、溶剤で洗浄する。例えば複数倍の溶剤を使用して震盪することによって又は超音波浴中で洗浄する。
【0030】
この様に実施した基体処理の場合には、基体上に<1〜3ナノメータの厚さで配置されたポリマー鎖が存在する。
【0031】
これはアミノセルロース誘導体の場合には、基体の上に適用された相応するポリマー鎖の1つだけの単分子層に相当する。
【0032】
このポリマー鎖は基体の上に前述の共通の電子ベルト構造により確り固定されそして生じた基体複合材料に、後続の用途との関係で新規の品質を付与する。
【0033】
本発明においては、使用されるアミノセルロース誘導体及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンの種類次第で、更に有利な生物物理的に又は生物医薬的用途のための基体に初めて構造設計を可能とすることがわかった。
【0034】
セルロース構造の状態の多糖類構造を用いる場合の基本的な長所は、多糖類がタンパク質或いは細胞と一緒に自然に生じそしてこれに結合することである。
【0035】
本発明の別の一つの実施態様においては、用途の種類次第で選択できる、機能性分子を有する基体複合材料が提供される。それによって、アミノセルロース誘導体及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンよりなる単分子層の上に別の分子、例えば静電的に又は共有結合によって生物機能性分子を適用せせることが有利に実現される。これは、例えば相補的構造を持つ検体を検出する時に役立つ。
【0036】
この種の構造設計によって蛋白質又は細胞接着又は生体防御反応を促進し或いは回避することを考えることができる。
【0037】
本発明の基体複合材料は、例えば改善された生物適合性表面特性を持つバイオチップ及びインプラントを製造する際に生体適合性を改善する意味で利用される。適当な繊維製基体、例えば木綿も所望の変性用溶液を用いて構造化するのが特に有利である。
【0038】
本発明の方法及び基体複合材料は、特にナノ構造化生物機能性インプラント表面を開発するために使用される。
【0039】
この場合、本発明の表面構造設計は生物医学的に関連するあらゆる基体材料或いは生物適合性と認識された表面構造、例えば疎水性、親水性、静電的に負の、生物機能化された、ナノスケールの構造パターン、及び細胞接着及び/又は局所的に限定された表面を造るために使用することができる。
【0040】
この様な性質及び可能用途分野は本発明の基体複合材料でだけ可能であるが、個々の成分も未変性の基体或いはインプラントでは不可能である。
【0041】
アミノセルロース誘導体又はNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体と基体複合材料を生じる基体は、それら誘導体の関係で相補的接着電子構造を好ましくは酸素官能基或いはヒドロキシ官能基によって、アミノセルロース誘導体或いはNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体の接着的自己組織化を特にNH−基を介して実現しそしてそれ故に確りした結合をもたらす基体表面に有している点で共通している。
【0042】
基体を選択する場合には制限がないので特に有利である。
【0043】
アミノセルロース誘導体及び/又 NH−(オルガノ)ポリシロキサンと自発的接着によって上記の性質を持つ基体複合材料を形成するのに適するものである限り、生物物理的及び医薬的に関連するか又は繊維である基体を選択することができる。
【0044】
変性用溶液と接触する際に接着性を僅かだけしか乃至全く発揮しない基体は、本発明の別の一つの実施態様において予めに酸素プラズマ又は他の酸素官能基又はOH−基を生じさせる方法によって処理する。
【0045】
この目的のためには<1〜2ナノメータの厚さの超薄いSiO−ポリマーフィルムで予めに被覆するのが特に有利である。
【0046】
本発明においては、種々の基体を平面に相前後して例えばアレイ(Array)を形成するために、配置することも容易に考えられる。
【0047】
基体としては以下のものを使用することができる:ガラス製基体(親水性化された又は熱分解SiO−ポリマーを被覆されたもの)、天然に又は熱的に生成されたSiO−ポリマー層を有するSi−又はSiO−基体又は熱分解的にSiO−ポリマーで被覆されたもの及び金属/酸化金属製基体。これらには例えば金、銀、白金、チタン、タンタル、アルミニウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅及びそれらの酸化物がある。
【0048】
巨大分子基体、例えばセラミック、例えば酸化ジルコニウム又はナノ粒子、例えば金−、SiO−又は金属酸化物ナノ粒子も同様に包含される。
【0049】
更に水酸基或いは酸素官能基を持つポリマー、例えば多糖類(繊維又は木材繊維のセルロース及び平面状又は管状の細菌セルロース)、ポリシロキサン或いは(オルガノ)ポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、NH−(オルガノ)ポリシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNiPAM)、ポリグリコール−コ−ラクチド(PGL)がある。カルボキシル基又はスルホ基を持つポリマー(ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、カチオン結合性ポリスチレン)、蛋白質(コラーゲン、グリコ蛋白質)及び繊維性基体、例えば木綿、羊毛も適する。
【0050】
基体複合材料の多官能性表面構造は薄い1〜3ナノメータの厚みに特徴がある。
【0051】
これらは、比較的小さい40°乃至比較的に大きい90°の水接触角に特徴のある、親水性或いは疎水性平衡において高い変化を示す。
【0052】
更にこのものは、0.2〜5nmol/cm(基体表面)のNH−アンカー基密度から出発して共有結合での官能化可能性の大きな構造的多様性を示す。
【0053】
AFMにより測定される0.5〜2ナノメータのRMS−粗面度の規定の表面形態が一般的である。基体を変性する前にプラズマで、特にアルゴンー又は酸素プラズマで処理する限り、特に有利な比較的に小さい0.5ナノメータの小さいRMS粗面度の基体複合材料表面が形成される。
【0054】
変性用溶液の調製のためにアミノセルロース誘導体を好ましくは二度蒸留した水又はジメチルアセトアミド(DMA)に溶解する。NH−(オルガノ)ポリシロキサンは好ましくはメタノール、エタノール又は2−プロパノールに溶解する。これらは好ましくは0.2〜0.45μmの孔幅の遠心分離濾過管によって濾過する。
【0055】
1. アミノセルロース誘導体及びNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体
アミノセルロース誘導体としては例えば以下の化学式1で表されるあらゆる化合物が適する:
【0056】
【化1】

【0057】
AGUの可能な置換基には以下のものがある:
S = Sの置換度(AGUのC2/C3の所のDSS: 0< DSS <2)次第で、アセテーロ−、ベンゾエート−、カルバニレート(Carbanilat)−、プロピオナート−、トシレート− 又はメトキシ基であり、
(X) = スペーサー基、AGUのC6の所の-NH(X)NH2 の置換度(DSNH(X)NH2 0 < DSNH(X)NH2 < 1):化学式1中のタイプa〜d参照。
n= 100〜1500、好ましくは200。
【0058】
一般式Iに従うアミノセルロース先導構造の誘導体には以下のものがある:
タイプa: (X)= アルキレン基 (CH2)i;i= 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11又は12;
タイプb: (X)= オリゴアミン残基、例えば異性体としての
-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-,(“DETA-セルロース”) 又は
-CH2-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-CH2-,(“DPTA-セルロース”) 又は
-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-,(“セルロース”) 又は
-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-NH-CH2-CH2-,(“TEPA-セルロース”)又は
【0059】
【化2】

【0060】
タイプbのこれら誘導体は好ましくは置換器Sとしてトシレート(この場合には誘導体は水に溶解される)又はカルバニレート(この場合には誘導体はDMAに溶解される)を有する。
【0061】
タイプc:(X)= アリール又はアリールアルキレン基、例えば
【0062】
【化3】

【0063】
(1) = PDA-セスローストシレート又は
(4a)= XDAo-セルロースカルバニレート
(4b)= XDAm-セルロースカルバニレート
(4c)= XDAp-セルロースカルバニレート
タイプd:N,N−ジ置換PDA−セルロース(レドックス−発色特性を有する)、例えば
【0064】
【化4】

【0065】
式(1)に従う前述の誘導体は、トシルセルロース或いはトシルセルロース誘導体をジアミン類、オリゴアミン類或いはポリアミン類で更に誘導体化することによって拡張することができる。
【0066】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体としては例えば以下の化学式(2)に示す化合物が該当する。
【0067】
【化5】

【0068】
一般式II
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体P1〜P3はNH−(オルガノ)シランと水とを1:3(P1)、1:2(P2)及び1:1(P3)のモル比で混合することによって製造される。
【0069】
残基は以下の通り記載される:
1及びR2= H又はメチル或いはエチルでありそして
R、R3及びR4= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造であるか、
又は
1及びR =H又はメチル或いはエチルでありそして
R、R及びR4= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造であるか、
又は
及びR4= H又はメチル或いはエチルでありそして
R、R及びR=NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造であるか、
又は
及びR =H又はメチル或いはエチルでありそして
R、R及びR4= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造である。
【0070】
〜Pの置換基(X)は以下の通りである:
【0071】
【化6】

【0072】
しかしながらNH−ポリシロキサン誘導体として以下の化合物P4〜P5も使用することができる。
【0073】
【化7】

【0074】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体P4及びP5はNH−(オルガノ)シランと水とを1:2(P4)又は1:1(P5)のモル比で混合することによって製造される。
【0075】
残基については以下の通りである:
1及びR2=H又はメチル或いはエチルでありそして
3 及びR4= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造であるか、
又は
1及びR=H又はメチル或いはエチルでありそして
及びR4= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造であるか、
又は
1及びR=H又はメチル或いはエチルでありそして
及びR= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造であるか、
又は
及びR=H又はメチル或いはエチルでありそして
及びR= NH−(オルガノ)ポリシロキサン−構造である。
【0076】
P4〜P5中の置換基(X)は以下の通りである:
【0077】
【化8】

【0078】
化学式2に従う前述のNH−ポリシロキサン誘導体は、基体複合材料の本発明に従う構造設計の際にアミノセルロース誘導体と組み合わせても特に有利に使用することができる。
【0079】
本発明の別の一つの実施態様においては、基体を本発明に従うNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体による構造設計の場合に予めに1〜2ナノメータより薄い厚みの親水性SiO−ポリマーによって熱的に変性することができる。このことは2.3に従う方法によって基体を簡単でかつ短時間の、即ち1秒より短い継続時間での処理によって有利に達成される。
【0080】
本発明の方法は、反応式1及び2に従う誘導体と自然接着する表面構造を形成しない基体材料の場合にも使用することができる。
【0081】
2.1 アミノセルロース誘導体を用いての基体の表面構造設計
アミノセルロース先導構造を誘導する基本はAGU(一般式I参照)のC6或いはC2/C3の所のOH−官能基の異なるSN2−反応性にある。
【0082】
一般的な誘導体付着処理は例えば6(2)−O−トシルセルロース誘導体、好ましくは市販の6(2)−O−トシルセルロース又は6(2)−O−トシルセルロースカルバニレートから出発する。これらはAGUのC6の所に反応性トシレート残基をそしてAGUのC2/C3の所に色々な置換度DS(0<DS<2)の可溶性化置換基(“S”:一般式I参照)、例えばトシレート又はカルバニレートを有している。
【0083】
C6の所のトシレート残基は変性反応混合物中でジアミン化合物又はオリゴアミン化合物HN−(X)−NH”によって置換される(式Iの(X)参照)。この目的のためにはトシルセルロース或いはトシルセルロースカルバニレートをジメチルスルホキシド(DMSO)中で変性用試薬HN−(X)−NH((X):化学式1のタイプa〜d参照)と混合しそして70〜100℃に3〜6時間加熱する。冷却後に反応混合物を容器中にテトラヒドロフランと一緒に注ぎ込む。その際に所望のアミノセルロース誘導体が固体として沈殿する。この誘導体を単離し、テトラヒドロフラン及びエタノールで洗浄しそしてその後に乾燥する。アミノセルロース誘導体は置換基Sの構造(一般式I参照)及びC2/C3の所の置換基S及び置換度DS次第で水又はジメチルアセトアミド(DMA)に溶解する。
【0084】
このようにして化学式1のアミノセルロースのあらゆる誘導体が製造される。
【0085】
それ故に本発明の方法は一般的な誘導体化法によってアミノセルロースの多様な構造的な変性可能性を特に有利にもベースとしている。
【0086】
この多方面の誘導体化処理は、一般的な誘導体化処理をAGUのC2/C3の所の置換基S、例えばアセテート、プロピオナート、ベンゾエート、メトキシ基を有するトシルセルロース誘導体から開始しそして別のジアミン、オリゴアミン又はポリアミンをC6の所で置換反応させた場合に、有利にも完結される。
【0087】
2.1.1 AGUのC6の所で(X)によるスペーサー効果及び構造的性質パターン
セルロース鎖に対するNH−末端基の差異のある間隔(スペーサー効果)は、AGUのC6の位置で、一般式(I)の(X)がアルキレン、アリール、アラルキレン又はオリゴアミン構造である(化学式1の(X)のタイプa〜d参照)ことによって既に調整される。例えば、反応式1の一連のタイプa或いはbの構造(X)を有する誘導体を使用する場合に、約0.4〜2nmの間でマトリックス間隔が変化する。
【0088】
一連のタイプa〜cの構造(X)によって特に反応性或いは自然接着性もpH−特性並びに親水性−或いは疎水性平衡もアミノセルロースポリマー鎖に沿って変性される。
【0089】
例えば化学式1のタイプaに従うアルキレン鎖長の増加につれて相応する誘導体の疎水性特性パターンが支配的になりそしてスペーサー効果を益々多く調整できる。
【0090】
基体変性材料の特別な電子移動特性を所望する場合には、EDA−残基(タイプb、i=2)又はオリゴアミン残基(タイプb)を有するアミノセルロース誘導体を使用することができる。何故ならばこれらの誘導体は、それの使用の際に相応する基体表面に特に電子移動特性を付与する重金属イオンを有するキレート、例えば青色に着色したCu2+−キレート(λmax−値=560〜630nm)を形成するからである。それ故にこのものは、特にCu−蛋白質を有する生物レドックス系と結合するのに特に重要である。
【0091】
タイプc及びdのスペーサー構造(X)を持つ誘導体はレドックス活性或いはレドックス発色性が有利である。これらの性質は基体表面に接着固定する際に構造(X)及びレドックス発色後続反応次第で特別な電子移動特性を示す。
【0092】
アミノセルロースポリマー鎖に沿った(X)による構造的変性の程度は置換度DSNH(X)NH2によって変えることができる。
【0093】
これは、基体表面への側方からの(lateral)転写の際に官能基の密度、及び置換S或いはDSとの関係で基体表面の官能特性を決める。
【0094】
2.1.2 AGUのC2/C3の所のSによる溶解性及び親水性或いは疎水性平衡
有利な性質は、アミノセルロース誘導体がC2/C3の所のOH−基を種々のエステル基によって置換することによっても得られる。これはアミノセルロース誘導体の溶解性に決定的な影響を及ぼす。置換度DS、即ち(アミノセルロース)ポリマー鎖の所のOH基とエステル基との比が、誘導体が水に溶解するか又は有機溶剤、例えばDMAに溶解するかどうかを決定する。即ち、更にDSは親水性或いは疎水性平衡に影響を及ぼす。また、AGUのC2/C3の場所の構造(OH−或いはエステル基)によってもアミノセルロースポリマー鎖の接着性電子構造特性への影響が判る。
【0095】
例えばEDA−セルロース誘導体(タイプa、i=2)或いは化学式1の(X)の一連のタイプbのアミノセルロース誘導体は0.1〜0.2のDSトシレート−値の場合に水に溶解する。水性媒体中においてこの誘導体の場合には10〜11のpH−値が生じる。
【0096】
この構造設計のためには、例えば5nのHClを用いて滴定することによって生物分子関連の最適なpH値、例えばpH5.5〜8に調整する。
【0097】
2.2 NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体による基体の表面構造設計
化学式2の一般式P1〜P5のNH−(オルガノ)ポリシロキサンは、NH−(オルガノ)アルコキシシラン/水−混合物又はNH−(オルガノ)アルコキシシラン/水/エタノール−混合物又はNH−(オルガノ)アルコキシシラン/水/メタノール−混合物又は好ましくはNH−(オルガノ)アルコキシシラン/水/2−プロパノール−混合物から生成する。これらの組成物は、例えば(オルガノ)アルコキシシランと水とのモル比を1:3、1:2又は1:1で変えることができそして触媒量の1nのHClを添加して3から4時間攪拌する。
【0098】
得られるNH−(オルガノ)ポリシロキサンは有利には例えばメタノール、エタノール又は2−プロパノール中で0.03〜1%に溶解し、次いで本発明の表面変性に備える。
【0099】
NH−(オルガノ)ポリシロキサンを製造するための(オルガノ)アルコキシシランとしては、例えば3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリメトキシシラン、3(2−アミノエチルアミノ)プロピル−トリメトキシシラン、好ましくは3(2−アミノエチルアミノ)プロピル−トリメトキシシラン、或いはNH−(オルガノ)アルコキシシランの混合物又はNH−(オルガノ)アルコキシシランと(オルガノ)アルコキシシラン(NH−基を有していない)との混合物又はNH−(オルガノ)アルコキシシランとテトラアルコキシシランとの混合物が使用される。
【0100】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体は好ましくはエタノール溶液又は2−プロパノール溶液の状態で使用しそしてそれを使用する前に例えば遠心分離濾過管(孔幅、例えば0.2〜0.45μm)によって濾過する。
【0101】
比較的に疎水性のNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体をアミノセルロース誘導体と組み合わせて使用するのが特に有利である。
【0102】
例えば、ミクロ−及びナノスケールのパターンを配置した疎水性でそしてNH−基含有の表面構造又はNH−基含有と種々のスペーサー(X)とを交互に有する表面構造を持つ基体複合材料は、NH−(オルガノ)ポリシロキサン変性した基体表面とμCPとから出発して相応するアミノセルロース誘導体によって製造するのが有利である。
【0103】
適当な繊維質基体を疎水化するために又は酸化アルミニウム或いは酸化ジルコニウム−セラミック又はバイオチップの表面構造設計の際に、ガラス製−、Si/SiO−、金−、PDMS−基体から出発してNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体を使用しそして次いで生物機能性化、例えばマイクロ流体センサー系での生物機能性化するのも有利である。
【0104】
基体複合材料を製造するためにNH−(オルガノ)ポリシロキサンとアミノセルロース先導構造の誘導体との別の併用形態では、例えば以下の通り行う:SiO−ポリマー変性したガラス製基体又はSi/SiO−基体から出発して、基体表面を化学式2に従うNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体によって変性する。次いで例えば0.1nのHClによってプロトン化しそしてその後に例え化学式1の(X)−タイプbに従うEDA−セルロースカルバニレート(タイプa、i=2)の変性用溶液で処理する。
【0105】
沢山の又は僅かの垂直に配列されたポリマー鎖束中にアミノセルロース−ポリマー鎖を配向させるのが特に有利である。
【0106】
この配向も自動調節的であり、その結果一方においてはアミノセルロース−ポリマー鎖が基体表面に反撥配向しそしてもう一方では鎖接着的に凝集する。このことは、AFM−測定で、基体表面に典型的なポリマー鎖束或いはブラシ状のトポグラフィーが現れる。
【0107】
変性された基体表面をAFM測定する場合には、ポリマー鎖束の間に細長い窪み又は溝状トポグラフィーを見ることができる。
【0108】
高度の生物機能を有する基体表面を必要とする場合、バイオチップ開発のためにこの特別なトポグラフィー表面構造が特に有利である。
【0109】
何故ならばアミノセルロース構造のこのトポグラフィーの場合には、約100nmの理想鎖長の場合にポリマー鎖に沿ってAGUのC6の所でのNH−(X)−NHによって沢山のNH−アンカー基が生物機能化のために使用されるからである。
【0110】
更に、誘導体の種類は基体表面上のポリマー鎖相互の間の環境条件を調整するのに有利である。このことは、基体表面を変性する際にその構造(X)及びS並びに置換度DSNH(X)NH2及びDSによってその都度の生体特異性環境条件が予想されるアミノセルロース誘導体を使用するとい可能性を明らかにしている。
【0111】
基体複合材料表面上の環境条件の影響は、生物機能性分子として酵素蛋白質を使用する相応する実験でわかる通り、共有結合的な生物機能化の場合にNH−反応性結合試薬から出る。
【0112】
2.3 親水性SiO−ポリマーによる基体の表面変性
シリコーティング法(Silicoatingverfahren)は、短時間熱安定性である基体材料を超薄のSiOx−ポリマー構造の形成によって親水性化するには、驚くべきことに卓越的に適している。この方法の核心はパイロシルガス混合物(Pyrosilgas−gemisch)で充填されているバーナーである。このガス混合物は本発明の方法でSiO/シリケート混合物を形成しながら火炎熱分解する有機珪素化合物を含有している。
【0113】
例えばガラス製基体、珪素基体又は金属基体表面を上記バーナーの炎に短時間(<1秒)曝すことによってSiO/シリケート混合物を生じ、それから短時間後にガラス様SiO−ポリマーを1〜2nmの寸法の超薄く透明な表面組織を生じさせる。SiO−ポリマー変性された基体表面は600℃の熱で生じるSiO−ポリマー層と同様の小さいRMS−粗面度をSi基体試料の上に有している。
【0114】
著しく親水性のSiO−ポリマー(水接触角が小さく10〜15°である)は、前述の通り、アミノセルロース誘導体及び/又はHN−(オルガノ)ポリシロキサンで表面変性することによって最初からではなく目的を達成する基体複合材料を本発明に従って生成する場合に使用される。
【0115】
しかしながらSiO−ポリマーの明らかに高いOH−基密度或いは親水性も考えられ、即ち更に機能化することなく、例えば官能性蛋白質、細胞又は他の生物機能性分子による接着的生物機能化又は通例のOH−反応性試薬による共有結合での生物機能化のために使用することができる。
【0116】
2.4 可能な変法
表面変性を基体試料と化学式1のアミノセルロース誘導体を蒸留水或いはジメチルアセトアミド(DMA)に溶解した変性用溶液及び/又は化学式2のNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体を例えば2−プロパノールに溶解した変性用溶液と混合することで簡単に行われる。
【0117】
例えば0.03〜0.1%濃度の濾過済み誘導体溶液を基体試料と接触させる。
【0118】
如何なる方法を用いるかは、実質的に基体材料及び必要な品質及び変性された基体の用途目的による。しかしながら基体表面の予備処理の種類、例えば洗浄又は前もってのプラズマ処理又はSiOx−ポリマーによる基体の変性がこの目的に役立つ。
【0119】
以下のことが実証されている:
− 混合物の、例えば1分〜6時間の間の震盪;
− 超音波浴中での混合物の、例えば5〜30分の震盪;
− 混合物の好ましくは室温での放置;
− 誘導体溶液の回転塗り;
− 誘導体溶液の滴加;
− 誘導体溶液中への短時間の浸漬(浸漬塗装);又は
− 誘導体溶液の噴霧塗装(エアブラシ法)。
【0120】
次いで、場合によっては蒸留水又はDMA又はメタノール、エタノール又は2−プロパノールでの例えば震盪下での又は超音波中で何度も洗浄する。続いて基体複合材料をアルゴン流中で乾燥する。この場合、基体複合材料は互いに固定したままである。基体表面の変性は、基体材料及びそれの前処理次第で一般に1〜5分間震盪し、次いで蒸留水又はMDAで強く洗浄しそしてその後にアルゴン流中で乾燥して終了する。
【0121】
ナノテクノロジーにとって特に重要なのは、本発明の方法を
− μCPと組合せて、基体複合材料を製造するために表面構造のナノスケールのパターンと一緒に又は
− マイクロ流体センサー系の分析感性バイオチップを製造する際に使用することである。
【0122】
AU(III)−基体表面上の、偏光解析で測定されそしてAFMによって確かめられた厚みPDA−セルローストシレートポリマー鎖(化学式1参照)のD≫0.5〜1ナノメータから、PDA−セルロース鎖の厚みについてのコンピュータ分子モデル法によっての計算値D≫0.8ナノメータと比較した場合に、アミノセルロースポリマー鎖の擬似単分子層が基体表面に転写されていると推定される。
【0123】
ポリマー鎖単分子層の分子モデルのコンピュータ支援計算により、EDA−セルロース(化学式1のaタイプ、i=2参照)についてD≫1ナノメータが得られそしてTEPA−セルロース(化学式1、タイプb参照)についてD≫3ナノメータが得られる。
【0124】
変性された基体複合材料或いはそれの表面は略0.1〜1.5ナノメータの僅かな粗面度の規定されたトモグラフィーを有しているのが好ましい。
【0125】
基体を変性用溶液で短時間処理した後でも表面構造は化学式1及び2に従う誘導体によって基体表面に、NH−反応性連結試薬との後続反応、超音波浴中での変性された基体試料の溶剤又は変動する電解質組成の水溶液での処理並びにマイクロ流体センサー系での変性された基体試料の質量測定の際の動的測定条件のもとで示される様に、強固に固定される。
【0126】
若干の場合には基体複合材料を例えば1%濃度グルタルアルデヒド(GDA)水溶液で約10〜30秒の期間の短時間処理し、次いで蒸留水で過剰のGDAが無くなるまで数回洗浄する。
【0127】
表面構造或いはアミノセルロースポリマー鎖の部分架橋の効果は、GDA以外のNH−反応性試薬によっても達成される。部分架橋は例えば3ナノメータより大きな厚みを有する表面構造、即ち基体表面に分子多層が必要とされる場合のような特別な場合に使用される。
【0128】
基体複合材料を特徴付ける本質的パラメータとしては、表面構造の厚み寸法、それぞれの基体試料表面のNH−密度或いは濃度、水接触角及びRMS粗面度の値が考慮される。
【0129】
表面構造のNH−基、平均アミノセルロースポリマー鎖(化学式1の(X)=タイプa〜d参照)及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサン−ポリマー鎖(化学式2)の(X)=a〜c参照)によって基体表面に側方向からの転写される表面構造のNH−基は中でも共有結合的な生物機能化のための(NH)−固定基として役立つ。基体表面当たりのNH−固定基の密度或いは濃度は本発明の基体複合材料の使用性にとって重要な寸法数字である。水接触角KWは表面構造の疎水性平衡或いは親水性平衡の目安として役立つ。
【0130】
本発明の別の一つの実施態様においては、基体表面を酸素プラズマ或いはアルゴンプラズマで約30秒〜2分の間処理する。変性用溶液で本発明に従って後から処理する場合には、得られる基体複合材料はしばしば最も少ない厚み寸法及びRMS−粗面性を有する。
【0131】
変性された基体表面はそれの製造後に以下の目的のために時間的に無制限に保管することができるのが有利である;
− 例えばμCO又はNH−反応性試薬によって或いは用途特有の表面特性、例えばpH値、電荷分布、親水性平衡又は疎水性平衡、レドックス活性又は光吸収特性を調整する目的のために官能化ことによって完全に表面変性するために及び/又は
− 機能性分子と、例えば機能性生物分子或いは蛋白質又は細胞或いは細胞成分の機能性分子と静電気的に又は共有結合で連結するために。
【0132】
総括すれば、本発明では先ず第一に将来の技術に関連する基体材料の広範な構造設計のための簡単な方法が使用される。この場合、この構造設計は用途及び以下を根拠とする:
− AGU−位置C6の所のスペーサー構造(X)及びC2/C3の所のエステル基Sによって並びに置換基DSNH(X)NH2及びセルロースポリマー鎖に沿っているDSSの変更によって容易に、かつ、多重に変性できるセルロース構造の構造形成特性及び生物適応性でアミノセルロース導電性構造P−CH−NH−(X)−NH (P−CH=セルロース−C6、化学式1参照)によって変性すること;
− 特別なNH2−(オルガノ)ポリシロキサン(化学式2参照)を特にμCPとの組合せて変性すること;
− 更に官能化するために、特に生物物理的及び生物薬学的用途のために基体表面の生物官能化するための多重のNH2−反応性二感応性試薬。
【0133】
式(I)に従うアミノセルロース以外の別の適当なNH−ポリマー、例えばアミノ多糖類を組み入れることによって本発明の方法は更に完全にできる。
【0134】
以下に、本発明の方法の用途及びこの様にして製造される基体複合材料の用途を例示的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0135】
3.用途分野:
【0136】
3.1 生物物理学的用途分野
【0137】
3.1.1 ラスター試料法のためのSi−ティップ(Spitzen)の表面変性
変性されたSi−ティップは、例えば官能化された基体表面、例えばバイオチップ表面の力間隔測定或いは力調節測定のためのAFM(原子間力顕微鏡)の場合又は基体表面、例えばバイオチップの側方からのナノ構造化のためのラスター試料リソグラフィー技術の場合に必要とされる。
【0138】
Si−ティップを変性するために以下の通りに実施する:
いわゆるカンチレバーの所に固定されているSi−ティップは、このカンチレバーによってゲル−パックに接着固定されているので、Si−ティップが空間に現れている。次にSi−ティップを適当な方法で予め浄化或いは前処理し、次いで化学式1又は2に従う適当な誘導体の変性用溶液に濡らす。その場合、方法に適合する通例の溶液及び濃度を使用する。約30分〜3時間の濡らし期間の後に変性用溶液を除去しそして変性されたSi−ティップを30〜50μLの溶剤(例えば二度蒸留した水、MDA又は2−プロパノール)で3〜5度洗浄する。その後にゲル−パックの所に固定されたカンチレバーをアルゴン流中で乾燥しそして次に、変性効果を適当な試験体表面によって特徴付けるためにAFM−測定で使用する。
【0139】
変性効果は、例えばラスター力顕微鏡による非接触モードにおいて変性されたSi−ティップを未変性Si−ティップと一緒に、表面に数ナノメーターの寸法のSi−ベースの円錐状物が存在する検査用試料をAFM−測定することによって、図示されるトポグラフィー特性に関して比較した場合に、特に明らかに知ることができる。
【0140】
この検査用試料の寸法の場合の特別な効果は、それぞれAFM−装置においてカンチレバーにより、存在するSi−ティップがトポグラフィー的に示されることである。従って未変性のSi−ティップは代表的な円錐状トポグラフィーで示される。前記の変性されたSi−ティップの場合にはそうではない。このことはトポグラフィー的(3D)−表示が円錐状ティップの分裂、即ち擬似二重ティップを示す。
【0141】
このトポグラフィーはSi−ティップ上に存在するアミノセルロースーポリマー鎖を写しているのである。顕微鏡的接平面上のコンセプトは、約100nmの理想化された鎖長を有する接着固定されたポリマー鎖がSi−ティップよりある程度周囲に縁状に突き出ることである。このことは検査用試料を脱ラスター化する(Abrastern)際に伸びた人工的な或いは裂けたティップとしてトポグラフィー的に形成される。
【0142】
本発明に従って変性されたSi−ティップを、ラスター試料技術をそれぞれに用いるのに関連する機能性分子との前述のNH−反応性結合によって更に官能化することが特に有利である。ラスター試料関連物には、例えば、変性された基体表面をAFM測定する際の力間隔効果或いは力調節効果を誘発するか又はラスター試料リソグラフィー技術の場合に機能性分子を介して基体表面に横方向からの構造転写を可能とする機能性分子がある。
【0143】
3.1.2:PDMS−基体の表面変性
ポリジメチルシロキサン(PDMS)は柔らかく、かつ、容易に変形可能なポリマーとして、及び有利な物理的、化学的及び生物適合性のためにミクロ−及びナノ技術において、例えばμCPのためのスタンプとして又はインプラント材料として特別な役割を果たし、特にシラン化学のために酸素プラズマ処理されたPDMSの変性可能性にも役立つ。この場合、PDMS−表面を出来るだけ用途特異的に、例えば分析感度又は生物機能的に変性することに注意する。PDMS−表面は酸素プラズマでの処理によってOH−基(20°より小さい水接触角)を生じる。OH−基は公知の通り、シラン化合物によって変性される。
【0144】
本発明の方法によって例えば分子プリントのためのPDMS−スタンプが、前述の簡単な方法で相互作用特有の構造領域、例えば疎水性の、静電気配向した又は補助的な或いは生物活性構造領域で変性される。全ての上述の用途のためには化学式1及び2に従う多様な誘導体を使用する。例えば酸素プラズマで処理されたPDMS−表面を本発明に従う簡単な方法でその都度の変性用溶液と短時間接触させることによって変性される。この場合、小さい1〜2nmの表面構造、小さい0.2〜0.5nmのRMS粗面度、小さい50°〜大きな90°の水接触角及び基体表面積(cm)当たり0.5〜1.5nmolのNH−基密度を有するPDMS−複合材料が生じる。
【0145】
3.1.3:μCPによる本発明の方法
ポリマー材料よりなる規則的にミクロ構造化又はナノ構造化されたスタンプによって、表面構造が化学式1及び2に従う誘導体により基体表面に相応するミクロ或いはナノスケールのパターンでスタンプされる。適当なミクロ及びナノスタンプは好ましくはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)から公知の方法で、例えばSylgard 184 A及びSylgard 184 BよりなるSylgard 184−キットから製造される。スタンプパターンとしては例えば200nm〜4μmの線幅及び200nm〜200μmの線長さの平行に配置された線を使用する。PDMS以外の材料よりなるミクロ或いはナノ接触スタンプも使用することができる。
【0146】
例として使用したSi/SiO−基体表面の場合には、μCPの場合アミノセルロース誘導体から出発しそして化学式1或いは2に従うNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体から出発して次の様に実施する。即ちPDMS−スタンプの線パターン(例えば線間隔:200nm〜50μm)に、5〜10μLのアミノセルロース線構造物の誘導体の0.05〜0.5%濃度溶液、例えばDMA中PDA−セルローストシレート溶液を滴加する。次いでスタンプ1〜5を湿潤した側に濾紙に押しつけそしてその直後に、好ましくは2〜15分間の間に、Si/SiO−基体表面に弱く押しつけて接触させる。その後、スタンプを基体表面から除きそしてこれをDMA−相の複数回交換しながらDMA中で5〜30分間震盪する。その後に、スタンプを押した基体表面をアルゴン流中で乾燥しそして線パターンは例えば(偏光フィルターを有した)(反射光式)顕微鏡によって写し出される偏光解析データ及びAFMで特徴付けられる。スタンプを押した基体表面を顕微鏡で観察する際に、表面構造のミクロスケールの線パターンが視認できそして写される偏光解析データによって線状表面構造が映像化されそして測定される。(使用される誘導体次第で)<1〜3nmの表面構造を有する基体複合材料が提供される。表面構造のこの偏光解析で測定される厚さの寸法はAFMによって実証される。AFMによって、使用されるミクロ或いはナノスタンプの200nm〜4μmの設定値に一致する線幅が測定される。
【0147】
μCP−法は上に規定した基体表面の場合には化学式2に従うNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体P1〜P5の変性用溶液でも使用される。
【0148】
例えばSi/SiO−基体表面にμCPによって2〜200μmの間隔で線構造パターンがスタンプされる。この目的のためにPDMS−スタンプは、例えばNH−(オルガノ)ポリシロキサン(例えばP2bタイプ)の0.03〜0.1%濃度2−プロパノール溶液5〜10μLを滴らせそしてその後にμCPの場合と同様にアミノセルロース誘導体を用いて実施する。基体表面からスタンプを除いた後に、これを2−プロパノール相を複数回交換しながら2−プロパノール中で5〜15分間震盪する。その後に、スタンプを押した基体表面をアルゴン流中で乾燥しそして線パターンがμCPの場合と同様にアミノセルロース誘導体によって示される。AFMによって、<1〜2nmの厚さ寸法及びスタンプの設定値と同じ線幅を有する線状の表面構造が測定される。
【0149】
両方の方法、要するに本発明の方法及びμCPの変法は、例えば生物官能化或いは生物物理的用途のための又は蛋白質及び細胞接着のための性質パターン或いは相互作用パターンを有する基体表面を相乗的に可能としそして個々の用途分野の規準に従って更に最適化できる。
【0150】
この場合、化学式1及び2に従う誘導体が使用される。適当なミクロ又はナノスタンプによって線パターン以外の構造パターンも製造される。本発明の方法及びμCPを展開する種々の変法を以下に実施例によって説明する:
[実施例1]
【0151】
基体表面を用途次第でCu−キレート生成性の一連のタイプb(例えばTETAT−セルロース誘導体)のアミノセルロース誘導体によって本発明に従って変性し、次いでμCPによって(レドックス色素体の性質を有する)PDA−セルローストシレートよりなるパターンをスタンプする。(AGUの)C6の所のPDA−残基のNH−固定基に例えばいわゆるCu−蛋白質の様なレドックス活性蛋白質を固定する。
[実施例2]
【0152】
基体表面を用途の要求次第でCu−キレートの生成又は蛋白質に関連するpH値の調整を目的として一連のタイプbのアミノセルロース誘導体、例えばDPTA−セルロース誘導体によって又は一連のタイプcのレドックス活性アミノセルロース誘導体によって本発明に従って変性し、次いでμCPによってスペーサー効果を有するタイプaのアミノセルロース誘導体又はNH(オルガノ)−ポリシロキサン誘導体P1〜P5よりなるパターンをスタンプする。遊離のNH−固定基を生物官能性に一致するNH−反応性連結試薬によって生物官能化する。
[実施例3]
【0153】
基体表面を用途の要求次第でSiOx−ポリマーによって親水性化し、次いでμCPによって一連のタイプa又はbのアミノセルロース誘導体或いはNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体P1〜P5よりなるパターンを、遊離のNH−固定基の所に構造的に一致した生物分子種を通例のNH−反応性連結試薬で固定するためにスタンプする。
[実施例4]
【0154】
基体表面を用途の要求次第でNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体P1〜P5によって本発明に従って変性しそして次にμCPによってアミノセルロース誘導体又は一連のタイプa〜cの誘導体混合物よりなるパターンを、NH−反応後続反応によって生物関連特性(例えばpH値、電荷分布、水接触角)を調整するためにスタンプしそして(生物)機能性分子を固定する。
【0155】
他のμCP−実施態様の場合にはスタンプ表面を(スタンプ−インクとしての)誘導体溶液でスタンプ受け台において濡らす。例えばPDMS−スタンプ受け台(寸法:約10×10mm、厚さ約1〜3mm)を“PDMS Sylgard 184”材料で注型し、その後に変性用溶液を用いて約3時間、攪拌下に浸漬しそして次いでアルゴン流中で1〜2分間乾燥する。PDMS−スタンプを、予め準備したスタンプ受け台に押し付け、次いで基体表面と約2分間接触させる。スタンプされた基体試料を次いで前述の通り、予備処理しそして特徴付ける。
【0156】
3.1.4:金ナノ粒子を有する表面構造パターン
化学式1又は2に従う誘導体でμCPにより基体表面にスタンプされた構造パターンに金ナノ粒子を、市販の金コロイド溶液を用いて接触させて接着固定させる。基体表面上に、代わりの構造パターンを、例えば一方では金ナノ粒子を接合するためにそしてもう一方では生物官能化するために製造する。この場合には、使用する生物官能性の構造的或いは官能的要求に相応する化学式1及び2の誘導体を使用する。金ナノ粒子は例えば基体表面上で、バイオチップ開発又は生物の際に又はバイオ電子機能ブロックの場合に官能性生物分子或いは蛋白質と共同して重要な役割を果たす。
【0157】
接着固定された金ナノ粒子及び生物機能よりなる構造化されたパターンを含有する基体表面を本発明に従って製造する場合には、例えば以下の通り実施する:即ち、基体表面を化学式1又は2に従う誘導体を用いてスタンプする。その後にスタンプされた基体表面を市販の金コロイド溶液(金ナノ粒子:3〜30nm)で処理し、次いで化学式1又は2の誘導体よりなる生体分子種で表面構造を本発明に従って変性する。その後に変性された基体表面のNH−固定基のところにNH−反応性の二官能薬剤によってバイオ官能分子を共有結合的に連結する。
【0158】
或いは基体表面を生物種の要求次第で例えばSiO−ポリマーによって親水性化しそして式1のタイプbの銅(Cu)−キレート形成性アミノセルロース誘導体によって変性しそして次にCu−イオン溶液で処理する。その後にCu−イオン変性された基体表面を例えば化学式1又は2の誘導体よりなる表面構造を持つ、例えば線状のμCPによってスタンプ処理し、次いで市販の金コロイド溶液(金ナノ粒子:3〜30nm)で処理する。こうして変性された基体表面を生物種NH−反応性連結試薬によって生物機能化するか又は基体試料を化学式1又は2の誘導体の変性用溶液でもう一度、金ナノ粒子に接着連結のために処理しそしてその後に通例の通り生物機能性分子、例えばDNA−シークエンスを共有結合的に固定する。
【0159】
3.1.5 バイオチップ
SAWチップは(石英)単結晶から切り出した石英薄片よりなる。この石英表面にシグナル伝導層として約5μmの厚さを有するSiO−ポリマー層が存在する。従来技術のシラン化学法によって、SAWチップのSiOポリマー表面に生物機能性分子、例えばDNA−又はRNA−アプタマーを再現可能な連結を達成することは不可能である。
【0160】
本発明の方法は、特に有利なには、シグナル伝導性のSiOポリマー表面のすぐ上の官能性バイオチップに又は、SAWがマイクロ流体センサー系に存在する場合に該表面上に提供される金(Au)層の上の官能性バイオチップまでのSAW−チップの表面変性を可能とする。Au−被覆されたSAW−チップの場合には、本発明の方法を使用する前にAu−表面を通例の方法で浄化するか或いはアルゴンプラズマによって前処理する。
【0161】
検体感性のSAW−チップを、例えばマイクロ流体センサー系においてシグナル伝導性のSiOポリマー層の上に次の各段階で製造する:
【0162】
段階1:
例えば0.5%濃度の水性TETRT−セルローストシレート溶液をSAW−チップ上に案内する(流動速度:約25μL/分、流動期間:約9分)。通常に測定される変化として観察されるSAWチップの相変化は、約3分後に終了する。その後に、二度蒸留した水を、チップ表面に存在する接着していないTETAT−セルローストシレートを溶解除去するために、マイクロ流体センサー系に導入する(流速:約25μL/分、流動期間:約9分)。この段階の間にいかなるシグナル変化も観察されない。すなわち、質量の低下はない。段階1を同じTETAT−セルローストシレート溶液を用いて同じ流動条件で繰り返す。SAWチップの質量変化或いはシグナル変化は観察されず、続く、二度蒸留した水の導入(流動条件は前記と同じ)の際にも観察されない。即ち、TETAT−セルローストシレートによるSAW−チップ表面の変性は3分の流動期間の間に終了する。
【0163】
段階2:
アミノセルロースで変性されたSAW−チップ表面を通例のNH−反応性二官能性薬剤、例えばグルタルアルデヒド(GDA)により官能化する。この目的のために25%濃度GDA−水溶液を、変性されたSAW−チップ表面上に案内する(流動速度:約50μL/分、流動期間:約5分)。次いで、SAW−チップ表面の未反応の薬剤を、二度蒸留された水によって同じ流動速度及び期間に除去する。測定された相変化或いは質量増加は、SAW−チップ表面がGDAで官能化されたことがシグナルで伝えられた。
【0164】
段階3:
GDA−官能化されたSAWチップ表面から出発し、抗トロンビン−RNA−アプタマーによって検体(トロンビン)感性SAWチップ(SAW−センサーチップ)を製造する。この目的のために、二度蒸留した水中の抗トロンビン−RNA−アプタマ−溶液(1μモル)をSAW−チップ表面上に導く(流動速度:約25μL/分、流動期間:約9分)。生じる相変化は、SAWチップ表面にアプタマーが固定され存在することをシグナルで示した。このSAWセンサーチップは、検体としてトロンビンを測定するために使用する準備ができている。
【0165】
センサー試験段階或いは測定段階:
マイクロ流体センサー系の試験又は測定状態はSELEX−緩衝剤(1mmol、pH8)によって約25μL/分の流速で調整する。SAW−センサーチップはトロンビン特異性であり、トロンビン或いはエラスターゼ及びウシ血清アルブミンの各溶液による一連の試験によってSELEX−緩衝剤中で示される様な非特異性蛋白質結合を有していない。測定段階の後にセンサー表面に存在するトロンビンは0.1モルのNaOH溶液によって溶解される。SELEX−緩衝液中でのトロンビン溶液の続く新たな測定で、SAW−センサーチップが再生可能でありそして再生可能な測定値が得られることが確認できた。
【0166】
上記で記載した方法で、センサーチップ表面も、SAW方式以外の測定方式のためにマイクロ流体センサー系の条件のもとで変性される。この場合には、センサーチップは2.のところで規定した様に色々な基体材料で造られていてもよい。表面構造に関しては化学式1及び2に従うあらゆる種類の誘導体を少なくとも使用することができる。更に、構造の差異は、既に述べた通り、別のジアミン、オリゴアミン又はポリアミンを一般的な誘導体化法で追加的に組み入れることによって著しく拡大することができる。
【0167】
3.2 生物医学の用途分野
【0168】
3.2.1 生体外での細胞培養或いは細胞接着のための基体表面の構造設計
蛋白質或いは生きた細胞の界面或いは基体表面への接着又は反撥は極めて複雑な方法である。医学的インプラント開発の目的で表面での生体外培養をベースとする細胞接着、細胞成長、細胞分化、プログラム化された細胞死の相関関係を再生医療又は細胞(神経等)の生物物理学的用途の原理を用いて分析する目的のために、影響因子を変性された基体表面をベースとして探求する。生体外細胞培養或いは細胞接着のための従来公知の変性された基体表面の構造的不均質はこれらの相互関係を検知するのに余り適していない。例えば横方向コントラスト、例えば疎水性或いは親水性を有する交互の構造領域を基体表面に製造するために、しばしばポリ又はオリゴ(エチレングリコール)、デキストリン等が蛋白質耐性の及び細胞耐性のマトリックス構造として使用される。
【0169】
細胞接着を研究するために、接着を要求される蛋白質、例えば細胞外蛋白質、プロテオグルカン、繰り返しシーケンスGly−Pro−Proを持つコラーゲン又はフィブロネクチン、フィブロノゲン、ラミニン等の規定されたパターンを持つ基体表面もしばしば使用され、これらはメチル末端基を持つ表面領域と相互に作用する。場合によってはオリゴペプチドを介して細胞接着領域と結合しても又は共有結合しても並びに非特異的に結合した抗体と結合してもよい。
【0170】
共有結合の形成並びに基体表面と蛋白質或いは細胞との間の疎水性表面領域の脱水による相互作用は、不活性化、移動又は表面構造が横方向にずれながらの再組織化に対しての蛋白質及び細胞の作用にとって重要な面である。複雑さは、蛋白質、及び細胞及び培養媒体の物質が基体表面と相互作用を生じるので、細胞が接触する場合に更に増加する。これらの相互作用は水素ブリッジによるか又は静電気、ファンデルワールド力(分散的)並びに共有結合による。
【0171】
細胞培養技術の使用で数年来目指して来たインプラント技術における全く新規な開発を考慮にいれると、生物材料開発のための細胞特異性基体表面の構造設計の方法は極めて重要である。再生医療の場合、新規の組織は、患者に移植するために体外の細胞特異性の支持体構造上の官能性細胞から出発する。再生医療はインプラント開発の未来のために多大な期待が持たれている。細胞外マトリックスの機能をシュミレーションしそしてレセプターをベースとする被移植組織と特異的な反応に参加する表面の製造が目的である。
【0172】
本発明の方法によって、細胞と基体表面との間の交互作用に関する疑問の意味で一般式Iのアミノセルロースタイプの天然のポリマーの先導構造の誘導体化を基礎として基体材料表面、特にインプラント目的のためのそれをμCPとの組合せて構造的に変性することが初めて可能なのである。
【0173】
3.2.2 インプラント材料の表面構造設計
適当な金属/金属酸化物及び合金、セラミックス又はポリマー又は繊維材料をベースとする慣用のインプラント開発法にも、インプラント表面の生物官能性を増加させるために及びインプラント/組織又はインプラント/血液の境界面での加工をできる限り制御しそしてインプラントの定着を最適化するために表面変性する方法が必要である。それ故にこの場合、中でもインプラント、例えばステント(人工血管支持体)、人工血管、サポートインプラント等と接触での免疫反応及び血液凝固カスケードの二種類の重大な危険を実質的に避けることである。
【0174】
二つの重要なルートを追求する:
1.改善された血液挙動又は定着挙動を有するナノ構造化された生物機能性表面の開発及び
2.細胞の成長を有効に制御するためにインプラント表面への生体信号を結び付ける。即ち、表面構造物の上で細胞を特に良好に成長させるか又は用途目的次第で例えばしばしば狭窄の残留の危険に関連するステントの場合の様に直接的に定着できないようなナノテクノロジー的観点で設計されている表面構造が必要であることを意味している。どのような表面構造が最適な生体官能性又は生体適合性を持つのかという疑問に関しては、適用条件及びインプラントの滞留時間にも依存する従来技術に従う異なる考えが存在する。例えばロータス効果を持つ疎水性表面又は蛋白質、例えばアルブミンによる不可逆的表面安定化、親水性の又は負に荷電した表面(蛋白質接着の最少化)又は機能性分子を有する表面、例えば抗血栓剤、例えばヘパリン、ホンダパリヌクス、イズロン酸等を有する表面が重要な役割を果たす。しかしながらインプラント表面のトポグラフィー(粗面度)も生物適合性に影響を及ぼす。
【0175】
表面構造設計の本発明の方法は、インプラント表面の変性の前述の挑戦が適合するための全前提条件である。これは種々のインプラント材料の内包物にも生物機能性表面特性の多様な構造の製造にも適合する。
【0176】
本発明の方法は以下のインプラント材料に原則として使用できる:ステンレス鋼、クロム合金、コバルト合金、ニッケル合金、金、白金、チタン/酸化チタン、タンタル/酸化タンタル、セラミックス、セラミック−酸化ジルコニウム、セルロース或いは平面状又はチューブ状のバクテリアセルロース、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリメチルメラクリレート(PMMA、プレキシガラス)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNiPMA)、ポリグリコリド−コ−ラクチド(PGL)、カルボキシル基又はスルホ基を持つポリマー、例えばポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)。
【0177】
種々の基体材料、特に上述のインプラント材料の上に、例えば疎水性或いは分散性、親水性、静電気性或いは反応性並びにスペーサー効果又は低い粗面性を固有に有する構造パターン或いは構造領域を製造するために本発明の方法は特に適している。更に、生体適合性を改善するために、インプラント複合材料の表面に前述のNH−反応性二官能性薬剤を介して機能性分子と連結することもできる。例えば化学式1及び2の誘導体よりなる表面構造はカルボキシル官能化された或いはスルホ官能化された抗血栓剤、例えばヘパリン、ホンダパリヌクス、イズロン酸等を静電気的に固定するのに適している。
【0178】
現時点では、種々の基体材料の構造性表面変性を特に(化学式1の)誘導体によってあるポリマー構造及び同じポリマー構造、即ち例えばセルロース構造を生じさせることは本質的に新規である。
【0179】
式1に従う先導構造の誘導体化の際に機能性をAGU−位置C6のところでポリマー鎖に沿って変性するが、生体適合性、構造形成性、立体配座で接着性のような共通の基本特性を維持したままであるのが有利である。
【0180】
更に一般式Iの全ての誘導体は上記の基本特性を維持したまま、前述の単分子層様の厚さ寸法の自然接着性及び自己機能化によって同様に異なる基体材料の表面上に立体配座的に一様のポリマー鎖として横方向に向って転写される。最後に多様に変性可能な構造特徴或いは(アミノセルロース)ポリマー鎖の相互作用域がμCPによってマイクロスケール又はナノスケールのパターンに基体材料表面に横方向に転写される。基体材料の表面変性の可能性は、先導構造誘導体とNH−(オリゴ)ポリシロキサン及び/又はSiOx−ポリマー変性との組合せによって著しく拡張される。
【0181】
更に先導構造誘導体の多様性は式パターン1に従う例によって決して使い尽くされることはなく、一般的な誘導体化処方に別のジアミン、オリゴアミン又はポリアミンを入れることによって最終的には基体材料表面或いはインプラント材料表面の構造的な調整の可能性を顕著に拡大することができる。
【0182】
前記の結果から、非特異的な蛋白質接着性を有していないままのアミノセルロース変性された基体複合材料が公知である。他方、本発明の基体複合材料がそれの生物学的機能を維持しながら、生物機能化のために、例えば過敏な酵素蛋白質、DNA−又はRNA−アプタマーとの結合のために卓越的に優れていることも公知である。この結果及び基体複合材料の前述の有利な表面特性が、種々のインプラント材料又は生体材料の生体適合性の表面構造設計の基礎をなしている。
【0183】
3.2.3 有効成分キャリヤのためでの本発明の方法の利用
診断或いは治療において、薬剤送達システムに大きな希望がある。これは例えば体内の作用場所に有効成分を搬送する搬送手段として役立つ、SiO−ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子よりなる表面変性されたナノ粒子である。
【0184】
本発明の方法はナノ粒子の表面を変性することによって必要な有効成分搬送性を提供するのに有利にも使用することができる。
【0185】
更に本発明を特異的実施態様によって更に詳細に説明する。
【0186】
珪素(Si)−ベースの基体試料:
Si−タイプの基体として、6×6mmの寸法或いは直径10mmの長方形の又は円形のSi−基体試料を使用する。天然の酸化珪素層或いはSiO−ポリマー層を有するSi−基体試料及び熱で又は熱分解で製造されたSiO或いはSiO−ポリマー層を有する基体試料を<1〜2nm又は6nm(熱)〜6mμの(SAW−チップの場合)の色々な厚さで使用する。
【0187】
ガラスタイプの基体としては10×10mm或いはD=10mmの寸法の長方形の及び円形の顕微鏡カバーグラス(MD)を使用する。MDは使用する前にエクストラン溶液(Extran solution )の様な洗浄剤及び/又はアセトンで超音波浴中で10分間前処理してもよい。ピラニア(piranha)溶液又は濃い硫酸又は塩酸での10〜30分間の前処理及び続いての二度蒸留した水での洗浄も可能である。試料を次いで酸素プラズマ又はアルゴンプラズマで約1〜2分間処理した。
【0188】
金属酸化物基体試料(Al−酸化物)Si−チップ(10×10mm)を、パルスレーザー堆積法(PLD)によって酸化アルミニウム(Al−酸化物)で被覆し(厚さ:5〜6nm、KW:70〜80°、RMS粗面度:0.1〜0.15nm)そして前処理せずに使用する。
【0189】
Au−基体試料:
Si−ウエハーを第一段階でクロムで(厚さ:約2〜3nm)そして第二段階で公知の様に金層でスパッタリング或いは蒸着処理する(厚さ:約100nm)。次いで金で被覆されたSi−ウエハーを6×6mm或いはD=10mmの長方形又は円形のAu基体試料を切り取る。Au−基体試料を使用前に色々な方法で前処理する。例えば5%濃度のエクストラン洗浄剤水溶液で超音波浴中で1〜5分間処理する。その後に、二度蒸留した水及び無水エタノールで洗浄し、次いでアルゴン流中で乾燥するか又はピラニア溶液で処理し、最後に前述の通りに洗浄しそして乾燥するか、又は本発明の表面変性の際に特に僅かなRMS−粗面度或いは鋼品質を達成するために、酸素プラズマ或いはアルゴンプラズマで処理する。
【0190】
AU(III)−基体試料:
Au(III)−試料表面(D=約5mm)を研磨した。それぞれを使用する前にAu(III)−試料表面を約12〜24時間、濃硫酸で処理し、最後に二度蒸留した水及び無水エタノールで洗浄しそしてアルゴン流中で乾燥した後にブタンガスバーナーによって予めに5〜10分間、黄色を呈するまで加熱する。Au(III)試料表面を室温に冷却した後にただちに使用するか又は使用前に更にピラニア溶液で処理する。
【0191】
PDMS基体試料:
PDMS−基体試料をSylgard 184 A及びSylgard 184 BよりなるSylgard 184−キット(Dow Corning社)によって製造した。この目的のために“A”と“B”とを10:1の比で混合しそしてヘキサンで希釈する(1:1000)。各5μLのこの混合物からPDMS−基体試料を回転塗り(20,000回転/分)によって円形のSi−チップ(D=10mm)上に生成する(PDMS厚さ=2〜4nm)。使用するために、PDMS−基体試料を酸素プラズマで予めに処理する(期間:約30秒、試料を金属性スクリーンで覆う)。酸素プラズマで処理した後に、PDMS−層の厚さは1〜2nmになった。このPDMS−基体試料を本発明の表面変性でただちに使用した。
【0192】
親水性SiO−ポリマーでの処理:
接着技術及び歯科技術からの慣用の珪素被覆法が、極薄のSiOx−ポリマーフィルムの生成によって耐熱性基体を短時間で親水性にするために使用される。この目的のために、基体材料表面を、珪素−有機化合物との燃焼性“パイロシル(pyrosil)”ガス混合物を用いてライター様装置の炎に極めて短時間(<1秒)曝す。その際に生じるSiO/シリケート−混合物を短時間後に極薄の透明なフィルム(厚さ:<1〜2nm)としてガラス様の“SiO−ポリマー”になる。この方法では短時間(<1秒)安定なあらゆる基体材料が使用できる。
【0193】
表面変性された基体(基体複合材料):
一般的な方法処方:特に少ないRMS−粗面度或いは高い表面品質を有する基体複合材料について基体表面を酸素プラズマによって予備処理する。
【0194】
表面変性或いは基体複合材料は、基体試料に色々な方法で、かつ、色々な時間接触させられるいわゆる変性用溶液によって製造する。変性用溶液は、二度蒸留された水又はジメチルアセトアミド(DMA)に一般式I或いは化学式1のアミノセルロース誘導体が溶解された0.05〜0.5%濃度溶液よりなるか又はメタノール、エタノール又は2−プロパノールに化学式2のNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体P1〜P5を溶解した0.03〜0.1%濃度溶液よりなる。これらの変性用溶液はそれらの使用前に好ましくは遠心分離フィルター管(孔幅:約0.2〜0.45μm)によって濾過する。用途目的次第で基体材料、予備処理及び色々な変法を表面変性のために使用する。例えば
− 震盪(1分〜6時間)
− 超音波浴中での震盪(5〜30分)
− 放置(1時間〜12時間)
− 回転塗り(1000〜20,000回転/分の回転数)
− 滴加塗装法(application in drops)及び5〜10分の滞留時間
− 浸漬塗装(5〜60秒)
− エアブラシ塗装及び5〜10分の滞留時間
− ミクロ−及びナノ接触プリント法(μCP)。
【0195】
μCPの場合には、変性用溶液をポリマー、好ましくはPDMSよりなるミクロ或いはナノ構造化されたスタンプを基体表面と接触させる。PDMS−スタンプを市販の“PDMS−Sylgard 184”から、例えば用途目的に従ってミクロ又はナノ構造化された線パターン或いは線間隔で製造する。変性用溶液をスタンプインクとしてスタンプ表面に色々なやり方で塗布する。
【0196】
全面を又はスタンプで表面変性された基体試料又は基体複合材料を、基体表面に付着固定されていない誘導体が存在しないようにそれぞれ溶剤で数度、そして例えば超音波浴中で震盪下に十分に洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0197】
基体試料の種類及び前処理次第で及び必要な変性特性、例えば表面構造物の厚さ、面積当たりのNH−基濃度、RMS−粗面度等の指定次第で、変性操作は殆ど1〜5分の震盪、続く溶剤での洗浄及び後続のアルゴン流中での乾燥で終了する。
【0198】
変性された基体試料をそれの製造直後に又は放置時間の後に、例えば無制限の保存時間の後に、
− 疎水性の、親水性の、負荷された、レドックス活性の構造或いはpH又は光吸収性を持つ更なる(例えばNH−反応性)機能化のために及び/又は
− 機能性分子、例えば生物機能性分子、例えば蛋白質、DNA−、RNA−又は蛋白質アプタマーとの結合のために、細胞或いは細胞成分又は有効物質の接着的又は共有結合で固定するために
使用する。
【実施例1】
【0199】
アミノセルローストシレートによるSi−複合材料
Si−基体試料をアミノセルローストシレート(化学式1のタンプb)の0.05%濃度水溶液中で例えば室温で
− 5分間震盪するか又は
− 超音波浴中で5分間処理するか又は
− 3時間放置する。
【0200】
その後に、変性されたSi−基体試料をそれぞれ0.5〜1cmの二度蒸留の水で3〜4度、例えば超音波浴中で1分間3度洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0201】
表面構造特性、例えば厚さ(偏光解析):<1〜3nm、KW:60〜80°、RMS−粗面度:0.8〜2nm、NH−基濃度:0.2〜1.3nmol/cm
【実施例2】
【0202】
アミノセルロースカルバニレ−トによるSi−複合材料
Si−基体試料をDMA中にアミノセルロースカルバニレート(化学式1のタンプa)を溶解した0.1%濃度溶液中で例えば室温で
− 1分間震盪するか又は
− 超音波浴中で5分間処理するか又は
− 1時間放置する。
【0203】
その後に、変性されたSi−基体試料をそれぞれ0.5〜1cmのDMAで3〜4度、各約5分震盪するか又は超音波浴中で2度洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0204】
表面構造特性:例えば厚さ(偏光解析):<1〜2nm、KW:55〜70°、RMS−粗面度:0.2〜0.5nm、NH−基濃度:0.2〜1.3nmol/cm
【実施例3】
【0205】
回転塗りによるEDA−セルロースでのSi−複合材料
Si−基体試料(D=10mm)を,DMA中にEDA−セルロースカルバニレート(タンプa、i=2)を溶解した0.5%濃度溶液1又は2μLを室温で滴加する(回転時間:3〜5分)。その後に、変性されたSi−基体試料を超音波浴(時間:約10分)中でそれぞれ1cmのDMAで2度洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0206】
表面構造特性:例えば厚さ(偏光解析):<1〜2nm、水接触角(KW):60〜75°、RMS−粗面度:<1〜2nm、NH−基濃度:0.2〜1nmol/cm
【実施例4】
【0207】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体によるSi−複合材料
Si−基体試料を、好ましくは例えばエタノール又は2−プロパノールにNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体(P1〜P5、化学式2)を溶解した0.05〜0.09%濃度溶液中で室温で
− 1〜5分間震盪するか又は
− 超音波浴中で15分間処理するか又は
− 6時間放置する。
【0208】
その後に、変性されたSi−基体試料をそれぞれ300〜500μLのエタノール又は2−プロパノールと一緒に3〜4度震盪処理するか又は超音波浴中で2度(時間:各約5〜15分)洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。特に式2に従うNH−(オルガノ)ポリシロキサンの混合物、例えばP3aとP5、P3aとP3c、P2aとP5の混合物もエタノール又は2−プロパノール中で使用する。
【0209】
回転塗りを使用する場合には、Si−基体試料(D=10mm)を約20,000回転/分でそれぞれ1〜2μLのNH−(オルガノ)ポリシロキサン溶液を(回転時間:約3〜5分)滴加し、次いで上述の通り処理する。
【0210】
表面構造特性はNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体に依存して該誘導体溶液の濃度及び色々の操作条件によって変化する。
【0211】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<1〜3.5nm、水接触角(KW):45〜70°、RMS−粗面度:0.5〜1.7nm(可能最大値)及びNH−基濃度:0.1〜2nmol/cm
【実施例5】
【0212】
PDA−セルローストシレートによるレドックス活性のSi−複合材料
Si−基体試料をSiO−ポリマーで処理しそしてその後にPDA−セルローストシレート(化学式1のタンプc)を溶解した0.1%濃度溶液中で例えば室温で
− 30分間震盪するか又は
− 超音波浴中で15分間処理するか又は
− 3時間放置する。
【0213】
その後に、変性されたSi−基体試料をそれぞれ0.5〜1cmのDMAで3〜4度、震盪処理することで洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0214】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<1〜1.5nm、水接触角(KW):70〜80°、RMS−粗面度:<1〜1.5nm、NH−基濃度:0.4〜1nmol/cm
【実施例6】
【0215】
TETAT−セルローストシレートによるガラス複合材料
(a)前述の通り予備処理されたMD−基体試料を、TETAT−セルローストシレートの0.5%濃度水溶液中で室温で30分震盪し、その後に各0.5〜1cmの二度蒸留の水との3〜4度の震盪又は超音波浴中での2度の洗浄を行い、そして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0216】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<3nm、水接触角(KW):60〜75°、RMS−粗面度:<1nm、NH−基濃度:2〜4nmol/cm
(b)MD−基体試料を、SiO−ポリマーで処理しそしてその後にTETAT−セルローストシレートの0.05%濃度水溶液中で室温で1分震盪し、その後に各0.5〜1cmの二度蒸留の水との3〜4度の震盪で洗浄し、そして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0217】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<3nm、水接触角(KW):60〜75°、RMS−粗面度:<1.5〜2.5nm、NH−基濃度:4.5〜5.5nmol/cm
【実施例7】
【0218】
アミノセルロース誘導体によるAl−酸化物複合材料
Al−酸化物基体試料をアミノセルロース誘導体(例えば化学式1のタンプb)の0.05%濃度水溶液中で例えば室温で
− 5分間震盪するか又は
− 1〜2時間放置する。
【0219】
その後に、変性されたAl−酸化物基体試料をそれぞれ0.5〜1cmの使用される溶剤(DMA又は二度蒸留の水)で3〜4度、震盪によって洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0220】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<1.5〜3nm、水接触角(KW):65〜80°、RMS−粗面度:0.5〜1nm、NH−基濃度:0.5〜1nmol/cm(例えばEDA−セルローストシレートによって変性する)。又は、厚さ(偏光解析):<1〜2nm、水接触角(KW):60〜75°、RMS−粗面度:0.4〜1nm、NH−基濃度:0.3〜0.5nmol/cm(例えばEDA−セルロースカルバニレートによって変性する)。
【実施例8】
【0221】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体によるAl−酸化物複合材料
Al−酸化物基体試料を例えばエタノール又は2−プロパノールにNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体(例えば化学式2のP4b或いはP5b)を溶解した0.04〜0.1%濃度溶液中で例えば室温で
− 5分間震盪するか又は
− 3時間放置するか又は
− 超音波浴中で30分間処理する。
【0222】
その後に、変性されたAl−酸化物基体試料をそれぞれ0.5〜1cmの2−プロパノールで3〜4度、震盪によって洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0223】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<1〜3nm、KW:65〜80°、RMS−粗面度:0.24〜0.5nm、NH−基濃度:0.5〜1.2nmol/cm
【実施例9】
【0224】
アミノセルロースカルバニレートによるAu−複合材料
Au−基体試料を,DMAにアミノセルロースカルバニレート(化学式1のタンプa或いはb)を溶解した0.05〜0.1%濃度溶液中で例えば室温で
− 15分間震盪するか又は
− 超音波浴中で15分間処理するか又は
− 3時間放置する。
【0225】
その後に、変性されたAu−基体試料をそれぞれ0.5〜1cmのDMAで3〜4度、震盪処理することで洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0226】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):0.5〜1nm、水接触角(KW):65〜70°、RMS−粗面度:0.3〜0.5nm、NH−基濃度:0.2〜1.3nmol/cm
【実施例10】
【0227】
アミノセルロース誘導体によるPDMS−複合材料
PDMS−基体試料を酸素プラズマで処理し、次いでアミノセルロース誘導体(例えば化学式1のタンプa及びb)の0.05〜0.1%濃度溶液中で例えば室温で
− 10分間震盪するか又は
− 3時間放置する。
【0228】
その後に、変性されたPDMS−基体試料をそれぞれ0.5〜1cmの使用される溶剤(DMA又は二度蒸留の水)で3〜4度、震盪によって洗浄しそして次にアルゴン流中で乾燥する。
【0229】
表面構造特性:厚さ(偏光解析):<2〜3nm、水接触角(KW):65〜80°、RMS−粗面度:<0.7nm、NH−基濃度:0.8〜1.2nmol/cm(例えばEDA−セルローストシレート、タイプa、i=2によって変性する)。又は、厚さ(偏光解析):<1〜2nm、RMS−粗面度:0.3〜0.6nm、NH−基濃度:0.5〜1nmol/cm(例えばEDA−セルロースカルバニレートによって変性する)。
【実施例11】
【0230】
μCPによるSi−複合材料
(a)Si−基体試料をTETAT−セルローストシレート−構造パターンを持つPDMS−スタンプによって周期的に異なる線間隔(即ち2μm、1μm、500nm及び200nm)及び異なる線幅(即ち2μm、1μm、500nm及び200nm)でスタンプする。この目的のために、PDMS−スタンプに、TETAT−セルローストシレートの0.05〜0.5%濃度水溶液5〜10μLを滴加する。次いでスタンプを濡れた側で濾紙に予め1〜5秒間押し付けそしてその後ただちに2〜15分間、Si−基体試料表面に僅かな押し圧のもとで接触させる。
【0231】
その後にスタンプをSi−表面から離し、スタンプされたSi−基体試料を二度蒸留水中で15〜30分間、水性相の交換しながら震盪し、次いでアルゴン流中で乾燥する。
【0232】
表面構造特性:(線の)厚さ(偏光解析):<1〜2nm。AFM測定の場合、色々な間隔及び線幅を有する周期的な線パターンが検証された。線幅については略所望の値が測定されそして<1〜3nmの(線の)厚さが測定された。
(b)他の一つの実施態様の場合、同じPDMS−スタンプから出発し、Si−基体試料及び0.05〜0.5%濃度のTETAT−セルローストシレート水溶液を使用した。これのために“PDMS−Sylgard 184”−材料でDMS−インク台(寸法:約1×1cm、厚さ:約3mm)を注型しそしてTETAT−セルローストシレート溶液に攪拌下に約3時間浸漬する。PDMS−スタンプを予め処理したスタンプ段に押し付け、次いでSi−基体試料表面と約5分間接触させる。スタンプした基体試料を(a)のところで説明した様に処理しそして特徴を示す。その際に(a)のところで説明した通りのスタンプ作業の結果が確認された。
【実施例12】
【0233】
マイクロ流体センサー系のSAW−(センサー)チップの表面変性
SAW−チップを変性する場合、種々のSAW−チップ表面から出発する。例えば
(a)シグナル伝導相としてのSiO−ポリマー表面又は
(b)シグナル伝導層としての、SiO−ポリマー上のAu−表面。
【0234】
SAW−チップ(b)をマイクロ流体センサー系に挿入する前にAu−表面を下記のやり方で前処理する。
【0235】
段階1:
二度蒸留した水にTETAT−セルローストシレートを溶解した0.5%濃度溶液をSAW−チップの上に導く(流速:約25μL/分、流動期間:約9分)。層変化のシグナル、即ち、SAW−チップの質量増加SAWrは約3分後に一定であった。その後に、二度蒸留した水をマイクロ流体センサー系に導き(流速:約25μL/分、流動期間:約9分)、チップ表面に接着していない場合によって存在するTETAT−セルローストシレートを溶解除去する。この場合、シグナル変化は殆どなかった。即ち質量の低下は殆ど観察されなかった。段階1を0.5%濃度TETAT−セルローストシレート溶液を用いて同じ流動条件で繰り返した。後続の、二度蒸留した水を通した場合(流動条件は前述の通り)にも、SAW−チップの質量変化或いはシグナル変化は観察されなかった。従ってAu−表面或いはSAW−チップのSiO−ポリマー表面のTETAT−セルローストシレートでの変性は3分の流動期間の間に終了した。
【0236】
段階2:
変性されたSAW−チップ表面をNH−反応性二官能性試薬、例えばグルタルアルデヒド(GDA)によって官能化した。この目的のために25%濃度グルタルアルデヒド水溶液を、変性されたSAW−チップ表面の上に導く(流速:約50μL/分、期間:約5分)。次いでSAW−チップ表面のところの未反応の二官能性試薬を、二度蒸留した水によって同じ流動速度及び期間で除去した。測定された相変化或いは質量増加が、SAW−チップ表面がGDAによって官能化されたことをシグナルでしめした。
【0237】
段階3:
変性されたSAW−チップ表面から出発し、例えば抗トロンビン−RNA−アプタマーによって検体(トロンビン)−感性SAW−センサーチップを製造した。この目的のために、二度蒸留した水中の抗トロンビン−RNA−アプタマ−溶液(1μモル)をSAW−チップ表面上に導く(流動速度:約25μL/分、流動期間:約9分)。生じる相変化は、SAWチップ表面にアプタマーが固定され存在することをシグナルで示した。次いで、二度蒸留した水を導いた場合(流動速度:約25μL/分、流動期間:約9分)、アプタマーが溶解されないことが分った。即ち、トロンビンを検体として測定するのに、SAWセンサーチップが適している。
【0238】
センサー試験段階或いは測定段階:
マイクロ流体センサー系の試験又は測定状態はSELEX−緩衝剤(1mmol、pH8)によって約25μL/分の流速で調整した。SAW−センサーチップはトロンビン
特異性があり、トロンビン或いはエラスターゼ及びウシ血清アルブミンの各溶液による一連の試験によってSELEX−緩衝剤中で示される様な非特異性蛋白質結合を有していない。測定段階の後にセンサー表面に存在するトロンビンは0.1モルのNaOH溶液によって溶解された。SELEX−緩衝液中でのトロンビン溶液の続く新たな測定で、SAW−センサーチップが再生可能でありそして再生可能な測定値が得られることが確認できた。
【0239】
SAW−(センサー)チップSAWrの変性はNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体によっても及びNH−反応性試薬或いは生体機能性分子タイプを変えても成功した。
【実施例13】
【0240】
NH−反応性二官能性試薬による官能化
官能化は上述の表面特性の変性、特に生体官能化に役立つ。
【0241】
一般的な方法:
官能化のために基体複合材料を、NH−反応性二官能性試薬の殆ど飽和した溶液中で5〜60分間震盪するか又は放置した。その後に官能化した基体試料を震盪しながら何度も洗浄し、アルゴン流中で乾燥しそして用途目的のために、特に生体官能化の際に使用した。
【0242】
水接触角、pH又は電荷分布特性を変えるために及び/又は生体官能化のために二官能性試薬として好ましくは以下のものを使用する:
L−アスコルビン酸、1,3−ベンゼン−ジスルホニルクロライド、1,4−ベンゼン−ジスルホニルクロライド、フタルジアルデヒド、イソフタルジアルデヒド、1,4−ジアセチルベンゼン、1,3−ジアセチルベンゼン、グルタルアルデヒド、ベンゾキノン、1,3−ベンゼン−ジカルボン酸ジクロライド、1,4−ベンゼンジカルボン酸ジクロライド、シアヌルクロライド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 基体を、アミノセルロースの少なくとも1種類の誘導体を含有する及び/又は
− NH−(オルガノ)ポリシロキサンの少なくとも1種類の誘導体を含有する変性用溶液と接触させ、
− 基体とアミノセルロース誘導体とよりなる及び/又は基体とNH−(オルガノ)ポリシロキサンとよりなる基体複合材料を生成する
各段階のある基体の変性方法。
【請求項2】
変性された基体がその都度使用されたアミノセルロース誘導体或いはNH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体の溶剤で少なくとも1度洗浄する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基体複合材料をNH−反応性及び/又はOH−反応性試薬によって生成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基体複合材料が特にL−アスコルビン酸、1,3−ベンゼン−ジスルホニルクロライド、1,4−ベンゼン−ジスルホニルクロライド、フタルジアルデヒド、イソフタルジアルデヒド、1,4−ジアセチルベンゼン、1,3−ジアセチルベンゼン、グルタルアルデヒド、ベンゾキノン、1,3−ベンゼン−ジカルボン酸ジクロライド、1,4−ベンゼンジカルボン酸ジクロライド、シアヌルクロライドの溶液で官能化されているか化学的に活性化されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
基体複合材料の表面変性を二官能性試薬、好ましくはNH−反応性の二官能性試薬により及び機能性分子、好ましくは生物機能性分子を連結することにより実施する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
基体を、変性用溶液と接触する前に、OH−基を生じるためにSiO−ポリマーで予備処理する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
(生物)機能性分子として蛋白質、核酸、DNA−、RNA−又は蛋白質アプタマー、細胞或いは細胞構成成分、抗血栓剤(Antithrombotika)又は有効物質を選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ガラス、金属、貴金属、金属酸化物、セラミック、珪素、多糖類、ポリマー又は蛋白質を含めた基体を選択する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
基体を、アミノセルロース誘導体及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンで変性する前に酸化する、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
基体としてポリシロキサン、特にポリ(ジメチルポリシロキサン)(PDMS)を選択する、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
アミノセルロース誘導体の0.05〜0.5%濃度の変性用溶液を使用する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
変性用溶液の溶剤として二度蒸留した水又はジメチルアセトアミド(DMA)を使用する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
0.03〜1%濃度のNH−(オルガノ)ポリシロキサン変性用溶液、特に0.03〜0.1%濃度変性用溶液を用いる、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン用溶剤としてメタノール、エタノール又は2−プロパノールを使用する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基体を、一般式P1b、P2b、P3b、P4b又はP5bのNH−(オルガノ)ポリシロキサンを2−プロパノールに溶解した0.05〜0.09%濃度溶液と接触させる、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
基体を最初にNH−(オルガノ)ポリシロキサン溶液と接触させ、次いでアミノセルロース誘導体溶液と接触させる、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
化学式2の一般式P1b、P2b、P3b、P4b又はP5bのNH−(オルガノ)ポリシロキサン及び化学式1のタイプa〜cのアミノセルロース誘導体を使用する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
NH−(オルガノ)ポリシロキサン誘導体で変性した後に塩酸、硫酸又は酢酸での処理を行う、請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
基体を変性用溶液と一緒に1分〜6時間、特に5分間震盪する、請求項1〜18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
基体を、超音波浴、回転塗り、浸漬塗装、エア−ブラシ法、ミクロ接触印刷(μCP)、震盪によって変性用溶液と接触させる、請求項1〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
アミノセルロース誘導体及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンを基体の上に単分子層の状態で配列する請求項1〜20のいずれか一つに記載の方法で製造された基体複合材料。
【請求項22】
厚みが<5ナノメータである請求項21に記載の基体複合材料。
【請求項23】
アミノセルロース誘導体及び/又はNH−(オルガノ)ポリシロキサンが接着固体されている、請求項21又は22に記載の基体複合材料。
【請求項24】
基体複合材料のRSM−粗さが<0.2〜2ナノメ−タである、請求項21〜23のいずれか一つに記載の基体複合材料。
【請求項25】
インプラント、チップ、ナノ粒子又はラスターゾンデ−テイップの製造のための、請求項21〜24のいずれか一つに記載の基体複合材料の用途。

【公表番号】特表2008−531250(P2008−531250A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556483(P2007−556483)
【出願日】平成18年1月21日(2006.1.21)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000093
【国際公開番号】WO2006/089499
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】