説明

基地局、無線通信システム、及び無線通信方法

【課題】ゲストの通信を維持しつつ、サブスクライバからの要求を満たすことである。
【解決手段】フェムト基地局10は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、第1の通信方式と第2の通信方式とを用いて通信する。フェムト基地局10は、第1通信部11とルータ機能部13とを有する。第1通信部11は、フェムト基地局10に登録されているサブスクライバ20からのフェムト基地局10に対する要求を受信する。ルータ機能部13は、上記要求に応じて、上記第1の通信方式を用いてサブスクライバ20に通信させる。ルータ機能部13は、サブスクライバ20との通信が上記要求を満たさない場合、フェムト基地局10に登録されていないゲスト30の通信方式を、上記第1の通信方式から、上記第2の通信方式に変更する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内通信環境やネットワーク容量の改善のため、従来のマクロ基地局よりも通信エリアの狭いフェムト基地局が普及しつつある。フェムト基地局には、LTE(Long Term Evolution)や3G(Generation)に限らず、WiFi(登録商標)やブルートゥースといった無線通信方式による通信を併せて提供可能なものも提案されている。通常、フェムト基地局は、所定の通信品質やセキュリティを確保するため、接続可能な移動局を制限している。制限方法としては、例えば、フェムト基地局に登録済の移動局(以下、「サブスクライバ」と記す。)のみが接続可能なCSG(Closed Subscriber Group)方式、あるいは、サブスクライバと未登録の移動局(以下、「ゲスト」と記す。)とを区別して接続させるHOM(Hybrid Operation Mode)方式がある。これらの方式の内、フェムト基地局は、自局近傍のマクロ基地局に接続する移動局からの干渉を極力低減する観点から、後者のHOM方式を採ることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−536309号公報
【特許文献2】特表2010−536311号公報
【特許文献3】特表2010−512101号公報
【特許文献4】特開2010−16602号公報
【特許文献5】特開2010−93775号公報
【特許文献6】特開2011−50057号公報
【特許文献7】特表2011−511557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フェムト基地局がHOM方式を採る場合、フェムト基地局に接続するゲストの数によっては、サブスクライバが、要求する周波数帯域やQoS(Quality of Services)のサービスを受けられないことがある。例えば、LTEと無線LAN(Local Area Network)の機能を併せもつフェムト基地局に、2つのサブスクライバと8つのゲストが無線LANにより接続されている場合、ゲストの存在によって、サブスクライバに提供される帯域やサービスの品質が制限される。これにより、サブスクライバのユーザは、本来フェムト基地局を介して受信可能な50Mbpsの映像を視聴することができなくなる。かかる問題点を解消するため、ゲストに対する帯域やQoSを代替的にサブスクライバに充当する方法もあるが、この方法では、ゲストの通信品質が劣化するだけでなく、カンファレンスの様に、不特定多数の移動局がフェムト基地局に接続する環境では、サブスクライバとゲスト双方の通信品質が劣化するという問題点がある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ゲストの通信を維持しつつ、サブスクライバからの要求を満たすことのできる基地局、無線通信システム、及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願の開示する基地局は、移動局との間で、第1の通信方式と第2の通信方式とを用いて通信する。前記基地局は、受信部と制御部とを有する。前記受信部は、前記基地局に登録されている登録移動局からの前記基地局に対する要求を受信する。前記制御部は、前記要求に応じて、前記第1の通信方式を用いて前記登録移動局に通信させる。また、前記制御部は、前記登録移動局との通信が前記要求を満たさない場合、前記基地局に登録されていない未登録移動局の通信方式を、前記第1の通信方式から、前記第2の通信方式に変更する制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する基地局の一つの態様によれば、ゲストの通信を維持しつつ、サブスクライバからの要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、フェムト基地局の機能構成を示す図である。
【図2】図2は、フェムト基地局のハードウェア構成を示す図である。
【図3】図3は、実施例1において、新しいサービス要求が検出された場合におけるフェムト基地局の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図4は、実施例1において、フェムト基地局がサブスクライバに最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、実施例1において、フェムト基地局がゲストに最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、実施例1において、メッセージが送受信される様子を説明するためのシーケンス図である。
【図7】図7は、実施例2において、メッセージが送受信される様子を説明するためのシーケンス図である。
【図8】図8は、実施例2において、フェムト基地局がサブスクライバに最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2に係る通信方式リストの一例を示す図である。
【図10】図10は、実施例2において、フェムト基地局がゲストに最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、変形例1におけるサービス要求取得処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、実施例3に係るフェムト基地局の動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、実施例3に係る通信方式リストの一例を示す図である。
【図14】図14は、実施例4において、フェムト基地局がサブスクライバに最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】図15は、実施例4に係る通信方式リストの一例を示す図である。
【図16】図16は、実施例4において、フェムト基地局がゲストに最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する基地局、無線通信システム、及び無線通信方法の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施例により、本願の開示する基地局、無線通信システム、及び無線通信方法が限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
まず、本願の開示する一実施例に係る無線通信システムの構成を説明する。無線通信システム1は、フェムト基地局10と、サブスクライバ20、ゲスト30、40とを少なくとも有する。サブスクライバ20、ゲスト30、40は何れも、複数の無線通信方式(例えば、LTE、3G等の携帯電話、WiFi(登録商標)、ブルートゥース)による通信の可能な携帯型端末である。サブスクライバ20は、フェムト基地局10に登録されている移動局であり、ゲスト30、40は、フェムト基地局10に登録されていない移動局である。但し、上記登録の有無に拘らず、サブスクライバ20、ゲスト30、40は何れも、フェムト基地局10との間で、複数の無線通信方式を用いた通信が可能である。
【0011】
図1は、フェムト基地局10の機能構成を示す図である。図1に示すように、フェムト基地局10は、第1通信部11と、第2通信部12と、ルータ機能部13と、サービス判定部14と、移動局管理部15と、ネットワークIF(Inter Face)16とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0012】
第1通信部11は、無線通信方式としてブルートゥースを用い、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で通信を行う。第2通信部12は、無線通信方式としてLTEを用い、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で通信を行う。ルータ機能部13は、サブスクライバ20、ゲスト30、40からのサービス要求があると、サブスクライバ20からのサービス要求を満たすように、必要に応じて、各移動局の無線通信方式を切り替える制御を行う。無線通信方式の切替え制御は、検知されたサービス要求のサービスレベルに基づき、サブスクライバ20からの要求を、ゲスト30、40からの要求よりも優先して実行される。これにより、ルータ機能部13は、サブスクライバ20に対し、所定の通信品質、すなわち、スループットや許容伝送遅延、あるいは保証帯域を確保する。
【0013】
サービス判定部14は、例えば、ルータ機能部13から、サービス要求の発信元である移動局のID及び種別の通知を受けると、当該サービス要求を、後述する移動局管理部15に通知する。移動局管理部15は、サービス要求の送信元であるサブスクライバ20のハンドオーバ先の無線通信方式の通知を、ルータ機能部13に要求する。また、移動局管理部15は、ルータ機能部13に対する肯定応答として、ルータ機能部13の選択した無線通信方式へのゲスト30のハンドオーバを指示する。更に、移動局管理部15は、ゲスト30の無線通信方式を、ハンドオーバ元の無線通信方式から、ハンドオーバ先の無線通信方式に更新する。ネットワークIF(Inter Face)16は、有線回線を介して、LANやWAN(Wide Area Network)等の外部ネットワークに接続される。ネットワークIF16は、他の装置(例えば、RNC(Radio Network Controller)、HLR(Home Location Register))との間で、一方向又は双方向に、各種信号やデータの送受信を行う。
【0014】
次に、フェムト基地局10のハードウェア構成を説明する。図2は、フェムト基地局10のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、フェムト基地局10は、プロセッサ10aと、メモリ10bと、データベース10cと、RF(Radio Frequency)回路10d、10eと、バックホールIF(Inter Face)10fとが、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。プロセッサ10aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)である。メモリ10bは、例えば、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAMである。データベース10cは、例えば、HD(Hard Disk)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置により構成される。RF回路10d、10eは、それぞれアンテナA1、A2を有する。
【0015】
図1に示した第1通信部11と第2通信部12とはそれぞれ、ハードウェアとしてのRF回路10d、10eにより実現される。また、ルータ機能部13とサービス判定部14と移動局管理部15とは、ハードウェアとしてのプロセッサ10aにより実現される。そして、ネットワークIF16は、ハードウェアとしてのバックホールIF10fにより実現される。
【0016】
次に、フェムト基地局10の動作を説明する。動作説明の前提として、以下、移動局としてのサブスクライバ20、ゲスト30、40を纏めて“X”により表し、移動局Xからフェムト基地局10へのサービス要求を“Y” により表し、サービス要求Yを受けた無線通信方式を“Z”により表す。図3は、実施例1において、新しいサービス要求が検出された場合におけるフェムト基地局10の動作を説明するためのフローチャートである。
【0017】
まず、フェムト基地局10のプロセッサ10aは、移動局Xからサービス要求Yを取得する(S1)と、当該サービス要求の送信元である移動局Xに現在適用されている無線通信方式を、データベース10cから取得する(S2)。S3では、プロセッサ10aは、サービス要求に含まれる移動局IDに基づき、データベース10cを参照して、移動局が、サブスクライバ及びゲストの内、何れの種別であるかを判定する。
【0018】
上記判定の結果、サービス要求元の移動局がサブスクライバ20である場合(S3;サブスクライバ)、プロセッサ10aは、S1で取得されたサービス要求Yに従い、サブスクライバ20にとって最適な無線通信方式Zを選択する(S4)。本実施例1では、最適な無線通信方式Zとして、スループットが高く、かつ、伝送遅延が小さい無線通信方式が優先的に選択される。S5では、プロセッサ10aは、通信速度の観点から、S4で選択された無線通信方式Zが、S1で取得されたサービス要求Yを満たすか否かの判定を行う(S5)。
【0019】
S5における判定の結果、無線通信方式Zがサービス要求Yを満たす場合(S5;Yes)には、上記一連の処理を終了する。一方、フェムト基地局10がサブスクライバ20のサービス要求Yを受け入れた結果、無線通信方式Zがサービス要求Yを満たさなくなった場合(S5;No)には、プロセッサ10aは、無線通信方式Zに接続するゲストの有無を判定する(S6)。そして、ゲスト30、40の何れかが無線通信方式Zに接続している場合(S6;Yes)、プロセッサ10aは、無線通信方式Zがサービス要求Yを満たすまで、接続中のゲストを、別の無線通信方式Zにハンドオーバさせる(S7)。なお、無線通信方式Zに接続しているゲストが存在しない場合(S6;No)には、上記一連の処理を終了する。
【0020】
S3における判定の結果、サービス要求元の移動局がゲスト30、40の何れかである場合(S3;ゲスト)、プロセッサ10aは、サービス要求Yが、Zに既に接続しているサブスクライバに与える影響の有無に基づき、サービス要求Yの受入れ可否を判定する(S8)。無線通信方式Zがサービス要求Yを受入れ可能な場合(S8;No)、プロセッサ10aは、ゲスト30、40の何れかをハンドオーバせず、上記一連の処理を終了するが、受入れ不能な場合(S8;Yes)には、サービス要求Yを送信したゲストに最適な無線通信方式Zを選択し(S9)、処理を終了する。ゲストに対する無線通信方式Zの選択に際しても、本実施例1では、サブスクライバ20と同様に、通信速度の観点から、スループットが高く、かつ、伝送遅延が小さい無線通信方式が優先的に選択される。
【0021】
続いて、S4において実行される通信方式選択処理について、詳細に説明する。図4は、実施例1において、フェムト基地局10がサブスクライバ20に最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。S11では、プロセッサ10aは、サブスクライバ20から送信されたサービス要求Yを取得する。次に、プロセッサ10aは、S11で取得されたサービス要求Yの要求するサービスに発生している遅延が遅延限界に達しているか否かの判定を行う(S12)。当該判定の結果、上記遅延が限界に達している場合(S12;Yes)には、プロセッサ10aは、QoSをサポートしている無線通信方式Z(例えば、LTE)の中から、遅延が最小値をとる、又はスループットが最大値をとる無線通信方式Zを、サブスクライバ20の接続先として選択する(S13)。これに対して、上記S12における判定の結果、上記遅延が許容範囲内にある場合(S12;No)には、プロセッサ10aは、現時点で最大のスループットを発揮している無線通信方式Zを、サブスクライバ20の接続先として選択する(S14)。
【0022】
次いで、S9において実行される通信方式選択処理について、詳細に説明する。図5は、実施例1において、フェムト基地局10がゲスト30、40に最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。図5に示すフェムト基地局10の動作は、通信方式選択処理がゲスト30、40について実行される点を除き、図4に示した動作と同様であるため、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図5のステップS21〜S23は、図4に示したステップS11〜S13にそれぞれ対応する。
【0023】
図5と図4とでは、ゲストからのサービス要求Yの要求するサービスに発生している遅延が許容範囲内にある場合(S22;No)に、フェムト基地局10の実行する処理が異なる。すなわち、図5では、プロセッサ10aは、現時点で、ゲスト30、40によるサービス要求先の無線通信方式Zの次にスループットの高い無線通信方式Zを、ゲスト30、40の接続先として選択する(S24)。S25では、プロセッサ10aは、ゲスト30、40の新たな接続先の無線通信方式Zにおいて、ゲスト30、40の送信するサービス要求Yが、既に接続しているサブスクライバに与える影響の有無に基づき、ゲスト30、40の接続する無線通信方式Zを選択する(S25)。
【0024】
すなわち、ゲスト30、40が、S24で選択された無線通信方式Zに接続しても、その無線通信方式Zに既に接続しているサブスクライバのスループットが維持される場合(S25;No)には、上記一連の処理を終了する。これに対して、ゲスト30、40が、S24で選択された無線通信方式Zに接続した場合に、サブスクライバの要求が満たせなくなる場合(S25;Yes)には、再びS24に戻り、プロセッサ10aは、ゲスト30、40のために、更に別の無線通信方式Zを選択する。これにより、ゲスト30、40は、ハンドオーバ先のサブスクライバ20の通信を阻害することなく、自らも、できる限りスループットの高い無線通信方式で通信を行うことが可能となる。
【0025】
次に、サブスクライバ20によるサービス要求Yに伴い、ゲスト30がハンドオーバする場合を例に採り、図6を参照しながら、無線通信システム1内においてメッセージが送受信される様子を説明する。図6は、実施例1において、メッセージが送受信される様子を説明するためのシーケンス図である。T1では、フェムト基地局10のルータ機能部13は、サブスクライバ20から送信されたサービス要求Yの入力を受ける。ルータ機能部13は、サービス要求Yの入力を契機として、その発信元である移動局のID及び種別を、サービス判定部14に通知する(T2)。サービス判定部14は、ルータ機能部13からの当該通知を受けると、サービス要求Yを、移動局管理部15に通知する(T3)。
【0026】
サービス要求Yを検知した移動局管理部15は、サービス要求Yの送信元であるサブスクライバ20のハンドオーバ先の無線通信方式Zの通知を、ルータ機能部13に要求する(T4)。T5では、ルータ機能部13は、当該通知要求の入力に伴い、サブスクライバ20からのサービス要求Yの指示するサービスレベルに合わせて、ハンドオーバ先の無線通信方式Zを選択し、選択結果を移動局管理部15に通知する。移動局管理部15は、ルータ機能部13に対する肯定応答として、ルータ機能部13の選択した無線通信方式Zへのゲスト30のハンドオーバを指示する(T6)。併せて、移動局管理部15は、データベース10cにおける、ゲスト30の無線通信方式Zを、ハンドオーバ元の無線通信方式から、ハンドオーバ先の無線通信方式に更新する。更新後、移動局管理部15からハンドオーバ指示の入力を受けたルータ機能部13は、ゲスト30に対して、無線通信方式Zの切替え(ハンドオーバ)を命令する(T7)。
【0027】
以上説明したように、無線通信システム1は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、ブルートゥースとLTEとを用いて通信するフェムト基地局10と、該フェムト基地局10と通信するサブスクライバ20、ゲスト30、40とを有する。フェムト基地局10は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、ブルートゥースとLTEとを用いて通信する。フェムト基地局10は、第1通信部11とルータ機能部13とを有する。第1通信部11は、フェムト基地局10に登録されているサブスクライバ20からのフェムト基地局10に対する要求を受信する。ルータ機能部13は、上記要求に応じて、上記ブルートゥースを用いてサブスクライバ20に通信させる。ルータ機能部13は、サブスクライバ20との通信が上記要求を満たさない場合、フェムト基地局10に登録されていないゲスト30の通信方式を、上記ブルートゥースから、上記LTEに変更する制御を行う。ここで、本実施例1において、上記要求は、サブスクライバ20とフェムト基地局10との間の通信が所定の通信品質を満たすことの要求である。
【0028】
すなわち、本実施例では、フェムト基地局10の周辺に別の無線通信方式のエリアがオーバラップして存在した通信環境を想定する。かかる通信環境において、フェムト基地局10は、サブスクライバ20からのサービス要求(QoS)に応えるべく、サブスクライバ20の保証帯域を確保可能でない場合、ゲスト30、40をハンドオーバさせる。これにより、フェムト基地局10は、サブスクライバ20のサービスレベルを妥協することなく、上記サービス要求を満たすように、サブスクライバ20のためのリソースを確保することができる。その結果、輻輳状態は解消される。但し、ゲスト30、40のハンドオーバは、一時的なものであってもよく、フェムト基地局10が、再びゲスト30、40を受入れ可能な状態になった場合には、ゲスト30、40の参加を受け入れることができる。換言すれば、フェムト基地局10は、サブスクライバの要求するサービスの種類(例えば、帯域、VoIP:Voice over Internet Protocol、ビデオ等)に基づき、サブスクライバ20、ゲスト30、40の無線通信方式を選択する。例えば、サービス要求を受けたフェムト基地局10は、サブスクライバの要求するサービスレベルを維持できない場合には、当該サービスレベルの要求する帯域を、サブスクライバのために優先的に確保する。その結果、ゲスト30、40による他の無線通信方式への切替え(ハンドオーバ)が必要となった場合には、フェムト基地局10は、強制的なハンドオーバによる、ゲスト30、40の追出しを行う。一方、ゲスト30、40の接続を拒否することなく、サブスクライバ用の帯域を確保可能な場合には、フェムト基地局10は、ゲスト30、40をハンドオーバさせず、従前の無線通信方式を用いて、各移動局との通信を行う。したがって、フェムト基地局10は、ゲスト30、40の通信を維持しつつ、サブスクライバ20からのサービス要求を満たすことができる。
【実施例2】
【0029】
次に、実施例2について説明する。実施例2に係る無線通信システムの構成は、図1に示した実施例1に係る無線通信システムの構成と同様である。また、実施例2に係るフェムト基地局の構成は、図1に示した実施例1に係るフェムト基地局の構成と同様である。したがって、実施例2では、実施例1と共通する構成要素には、同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。実施例2が実施例1と異なる点は、サブスクライバ20にとって最適な無線通信方式の判断基準である。具体的には、実施例1では、フェムト基地局10は、より通信速度の高い無線通信方式を、サブスクライバ20にとって最適な無線通信方式として選択したのに対し、実施例2では、より省電力化の可能な無線通信方式を最適な無線通信方式として選択する。以下においては、このような実施例2に係るフェムト基地局10の動作を、図7〜図10を参照しながら、実施例1との相違点を中心として説明する。
【0030】
図7は、実施例2において、メッセージが送受信される様子を説明するためのシーケンス図である。T11では、フェムト基地局10のルータ機能部13は、サブスクライバ20から送信された省電力化要求の入力を受ける。なお、当該省電力化要求は、上述のゲスト30から送信されるものであってもよい。ルータ機能部13は、省電力化要求を受信すると、サービス判定部14を介することなく、当該要求を移動局管理部15に転送する(T12)。移動局管理部15は、省電力化要求の入力を契機として、当該要求から、その発信元である移動局のID及び種別を取得し、これらの情報をサービス判定部14に通知する(T13)。移動局管理部15は、サービス判定部14から受信応答の返信を受けると(T14)、データベース10cにおける、省電力化要求元のサブスクライバ20の無線通信方式Zを、ハンドオーバ元の無線通信方式から、ハンドオーバ先の無線通信方式に更新する。更新後、移動局管理部15は、省電力化要求元のサブスクライバ20に対して、無線通信方式Zの切替え(ハンドオーバ)を命令する(T15)。これにより、サブスクライバ20は、自局にとって、より消費電力の低くなる無線通信方式と接続することが可能となる。
【0031】
図8は、実施例2において、フェムト基地局10がサブスクライバ20に最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。図8は、実施例1に係る動作の説明において参照した図4と、共通するステップを含むため、これらのステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図8のステップS31及びS32は、図4に示したステップS11及びS12にそれぞれ対応する。
【0032】
S33では、プロセッサ10aは、S32における判定の結果、伝送遅延が限界に達している場合(S32;Yes)には、QoSをサポートしている無線通信方式Zのリストを作成し、データベース10cに格納する。一方、上記S32における判定の結果、上記伝送遅延が許容範囲内にある場合(S32;No)には、プロセッサ10aは、現時点でフェムト基地局10の提供可能な全ての無線通信方式Zのリストを作成し、データベース10cに格納する(S34)。
【0033】
図8のS35では、プロセッサ10aは、S33又はS34でデータベース10cに格納されたリスト上の無線通信方式を、消費電力量の低い順に並べ替える。このとき作成される無線通信方式リストの一例を図9に示す。図9は、実施例2に係る通信方式リストの一例を示す図である。図9に示すように、無線通信方式としては、消費電力量の昇順に、2mWと最も消費電力量の少ないブルートゥース、10mWのLTE、消費電力が20mWと最大の無線LANが格納されている。したがって、プロセッサ10aは、通信方式リストL1の最上段にある無線通信方式Zを選択することで、消費電力の最も少ない無線通信方式を選択することができる(S36)。但し、無線通信方式Zが、S31で取得されたサービス要求Yを満たさない場合(S37;No)には、プロセッサ10aは、次に低消費電力の無線通信方式を選択する(S36)。そして、上記サービス要求Yを満足する無線通信方式Zが選択された時点(S37;Yes)で、一連の処理は終了する。
【0034】
上記一連の処理は、ゲスト30、40についても同様に実行される。図10は、実施例2において、フェムト基地局10がゲスト30、40に最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。図10は、本実施例に係る動作の説明において参照した図8と、S48の処理を除き同様であるため、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図10のステップS41〜S47は、図8に示したステップS31〜S37にそれぞれ対応する。図10のS48では、フェムト基地局10のプロセッサ10aは、S41で取得された、ゲスト30、40からのサービス要求Yが、サブスクライバ20のサービス要求に影響を与えるか否かを判定する(S48)。与えない場合(S48;No)には、プロセッサ10aは、一連の処理を終了するが、サービス要求Yが影響を与える場合(S48;Yes)には、サブスクライバ20のサービス要求を優先し、通信方式リストL1から、次なる無線通信方式Zの候補を選択する(S46)。無線通信方式Zの選択処理は、ゲスト30、40からのサービス要求Yがサブスクライバ20に与える影響が無くなるまで繰り返し実行され、当該影響を与えない無線通信方式Zが選択された時点(S48;No)で、終了する。
【0035】
上述したように、無線通信システム1は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、ブルートゥースとLTEとを用いて通信するフェムト基地局10と、該フェムト基地局10と通信するサブスクライバ20、ゲスト30、40とを有する。フェムト基地局10は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、ブルートゥースとLTEとを用いて通信する。フェムト基地局10は、第1通信部11とルータ機能部13とを有する。第1通信部11は、フェムト基地局10に登録されているサブスクライバ20からのフェムト基地局10に対する要求を受信する。ルータ機能部13は、上記要求に応じて、上記ブルートゥースを用いてサブスクライバ20に通信させる。ルータ機能部13は、サブスクライバ20との通信が上記要求を満たさない場合、フェムト基地局10に登録されていないゲスト30の通信方式を、上記ブルートゥースから、上記LTEに変更する制御を行う。ここで、本実施例2において、上記要求は、サブスクライバ20とフェムト基地局10との間の通信による消費電力を低減させる要求である。なお、低減される消費電力は、サブスクライバ20にて消費される電力であってもよいし、フェムト基地局10にて消費される電力であってもよい。
【0036】
ここで、図11は、変形例1におけるサービス要求取得処理を説明するためのフローチャートである。変形例1は、サービスレベルの定義が不可の場合におけるフェムト基地局10の態様であり、上述の実施例1、2の何れにも適用可能である。
【0037】
サービス要求取得処理は、図3のS1に示した処理において実行される。まずS51では、プロセッサ10aは、検出されたサービス要求Yの合計値を算出する。次に、プロセッサ10aは、サービスレベルの定義の可否を判定し(S52)、サービスレベルの定義が可能である場合(S52;No)には、そのまま処理を終了するが、定義が不可である場合(S52;Yes)、要求元の移動局種別を判定する(S53)。当該判定の結果、サービス要求Yの送信元である移動局がサブスクライバ20である場合には、プロセッサ10aは、スループットと伝送遅延とを、サブスクライバ端末のデフォルト値に設定する(S54)。一方、サービス要求Yの送信元である移動局がゲスト30、40の何れかである場合には、プロセッサ10aは、スループットと伝送遅延とを、ゲスト端末のデフォルト値に設定する(S55)。これにより、フェムト基地局10は、サービス要求Yからサービスレベルを判別できない場合にも、移動局の種別に拘らず、各移動局にとって最適な無線通信方式を選択することができる。したがって、フェムト基地局10の対応可能なサービス要求Yの数が増加する。その結果、無線通信システム1の柔軟性、汎用性が向上する。
【0038】
なお、サービスレベルのデフォルト値は、フェムト基地局10のユーザやオペレータによって、事前に設定することも可能である。
【実施例3】
【0039】
次に、実施例3について説明する。実施例3に係る無線通信システムの構成は、図1に示した実施例1に係る無線通信システムの構成と同様である。また、実施例3に係るフェムト基地局の構成は、図1に示した実施例1に係るフェムト基地局の構成と同様である。したがって、実施例3では、実施例1と共通する構成要素には、同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。実施例3では、移動局がフェムト基地局に新しく接続する場合を想定するが、実施例3は、上述した実施例1、2への適用が可能である。以下においては、このような実施例3に係るフェムト基地局10の動作を、図12、図13を参照しながら説明する。
【0040】
図12は、実施例3に係るフェムト基地局10の動作を説明するためのフローチャートである。S61では、プロセッサ10aは、無線通信方式が、消費電力量、アクセス時間、接続移動局数、及びオープンスポット数に対応付けられた通信方式リストL2を、データベース10c内に作成する。このとき作成される通信方式リストL2を図13に示す。図13は、実施例3に係る通信方式リストL2の一例を示す図である。図13に示すように、例えば、ブルートゥースの無線通信方式に関し、アイドルモードでの消費電力量として“0.02mW”が格納され、アクセス時間としては“200ms”が格納されている。また、接続移動局数として“2”が格納され、オープンスポット数として“10”が格納されている。同様に、LTEに関しては、“0.5mW”、“70ms”、“0”、“4”の各値がそれぞれ格納され、無線LANについては、“1mW”、“50ms”、“8”、“20”の各値がそれぞれ格納されている。
【0041】
S62では、プロセッサ10aは、接続要求に含まれる移動局IDに基づき、移動局Xが、サブスクライバ及びゲストの内、何れの種別であるかを判定する。当該判定の結果、接続を要求した移動局Xがサブスクライバ20である場合(S62;サブスクライバ)、プロセッサ10aは、接続を要求された無線通信方式Zに空きリソースが有るか否かを判定する(S63)。空きリソースが有る場合(S63;Yes)には、プロセッサ10aは、サブスクライバ20の要求を受け入れ、サブスクライバ20を無線通信方式Zに接続させた後、処理を終了する。一方、空きリソースが存在しない場合(S63;No)には、プロセッサ10aは、現時点で無線通信方式Zに接続されているゲストの有無を判定する(S64)。当該判定の結果、無線通信方式Zにゲストの接続が有る場合(S64;Yes)、プロセッサ10aは、接続を要求したサブスクライバ20が無線通信方式Zに接続可能となるまで、上記ゲストを、他の最適な無線通信方式Zにハンドオーバさせる(S65)。
【0042】
上記S62における判定の結果、接続要求元の移動局がゲスト30、40の何れかである場合(S62;ゲスト)、プロセッサ10aは、通信方式リストL2の最上段にある無線通信方式Z(例えば、図13のLTE)を選択する(S66)。S67では、プロセッサ10aは、S66で選択された、ハンドオーバ先候補の無線通信方式Zに、ゲストを接続させるための空きリソースが有るか否かの判定を行う。空きリソースが有る場合(S67;Yes)には、プロセッサ10aは、ゲストからの接続要求を受け入れ、ゲストを無線通信方式Zに接続させた後、処理を終了する。これに対して、S66でハンドオーバ先の候補として選択された無線通信方式Zに、接続要求元のゲストを受け入れ可能なリソースが存在しない場合(S67;No)には、プロセッサ10aは、通信方式リストL2から次善の候補(例えば、図13の無線LAN)を選択する。S66、S67の各処理は、ゲストの接続先の無線通信方式Zが決定するまで繰り返し実行され、これにより、ゲストは、サブスクライバ20の要求に影響を与えない範囲内で最適の無線通信方式Zに接続されることとなる。なお、何れの無線通信方式Zにも空きリソースが無い場合には、フェムト基地局10へのゲストの接続は拒否される。
【0043】
また、上記S64における判定の結果、無線通信方式Zに何れのゲストも接続されていない場合(S64;No)には、プロセッサ10aは、上述したS66の処理と同様の処理を実行する。すなわち、プロセッサ10aは、ハンドオーバ先候補として、S63で空きリソースの判定対象となった無線通信方式Z(例えば、図13のブルートゥース)の次の候補(例えば、図13のLTE)を、通信方式リストL2から選択する(S68)。その後は再びS63に戻り、プロセッサ10aは、S63以降の処理を繰り返し実行する。
【0044】
すなわち、フェムト基地局10は、サービス要求元の移動局の種別、無線通信方式Zの空き状態、及び、無線通信方式Zに対するゲスト接続の有無に応じて、各移動局のハンドオーバの要否を決定する。その際、フェムト基地局10は、実施例1、2と同様に、ゲスト30、40よりもサブスクライバ20の接続を優先する。フェムト基地局10は、サブスクライバ20からのサービス要求を満たすように、必要に応じて、サブスクライバ20へのサービス提供に影響を与えるゲスト30、40を、他の無線通信方式Zにハンドオーバさせる。また、ゲスト30、40のハンドオーバ先となる無線通信方式Zは、通信方式リストL2に掲載された消費電力量、アクセス時間、接続移動局数等を考慮して、各ゲストに最適な無線通信方式が選択される。これにより、フェムト基地局10は、新規のユーザが自局に接続した場合にも、移動局の種別に拘らず、各移動局にとって最適な無線通信方式を選択することができる。したがって、フェムト基地局10の対応可能なシチュエーションが増加する。その結果、無線通信システム1の柔軟性、汎用性が向上する。
【実施例4】
【0045】
次に、実施例4について説明する。実施例4に係る無線通信システムの構成は、図1に示した実施例1に係る無線通信システムの構成と同様である。また、実施例4に係るフェムト基地局の構成は、図1に示した実施例1に係るフェムト基地局の構成と同様である。したがって、実施例4では、実施例1と共通する構成要素には、同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。実施例4が実施例1と異なる点は、サブスクライバ20及びゲスト30、40にとって最適な無線通信方式の判断基準である。具体的には、実施例1では、フェムト基地局10は、より通信速度の高い無線通信方式を、サブスクライバ20にとって最適な無線通信方式として選択したのに対し、実施例4では、より接続移動局数の多い無線通信方式を最適な無線通信方式として選択する。以下においては、このような実施例4に係るフェムト基地局10の動作を、図14〜図16を参照しながら、実施例1との相違点を中心として説明する。
【0046】
図14は、実施例4において、フェムト基地局10がサブスクライバ20に最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。図14は、実施例1に係る動作の説明において参照した図8と、共通するステップを含むため、これらのステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図14のステップS71、S72、S76、及びS77は、図8に示したステップS31、S32、S36、及びS37にそれぞれ対応する。
【0047】
以下、図14と図8との相違点であるステップS73、S74の各処理について、説明する。まずS73では、プロセッサ10aは、S72における判定の結果、伝送遅延が限界に達している場合(S72;Yes)には、QoSをサポートしている無線通信方式Zのリストを作成し、そのリストを、接続移動局数の多い順(降順)にソートする。作成されたリストは、データベース10cに格納される。このとき作成される無線通信方式リストの一例を図15に示す。図15は、実施例4に係る通信方式リストL3の一例を示す図である。図15に示すように、通信方式リストL3には、各無線通信方式が、接続移動局数をパラメータとして格納される。現時点での各無線通信方式(無線LAN、ブルートゥース、LTE)の接続移動局数は、それぞれ“8”、“2”、“0”であることから、接続移動局数が最多の無線通信方式である無線LANが、第1候補として、通信方式リストL3の筆頭に格納される。
【0048】
一方、上記S72における判定の結果、上記伝送遅延が許容範囲内にある場合(S72;No)には、プロセッサ10aは、現時点でフェムト基地局10の提供可能な全ての無線通信方式Zのリストを作成し、S73と同様に、現在の接続移動局数に基づくソートを行う(S74)。接続移動局数の降順にソートされた通信方式リストL3は、データベース10cに格納される。
【0049】
上記一連の処理(S71〜S77)は、ゲスト30、40についても実行される。図16は、実施例4において、フェムト基地局10がゲスト30、40に最適な通信方式を選択する処理を説明するためのフローチャートである。図16に示す各処理は、S87の処理を除き、図14を参照して説明した処理と同様である。したがって、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図16のステップS81〜S86は、図14に示したステップS71〜S76にそれぞれ対応する。
【0050】
図16のS87では、フェムト基地局10のプロセッサ10aは、S81で取得された、ゲスト30、40からのサービス要求Yが、サブスクライバ20からのサービス要求に影響を与えるか否かを判定する(S87)。与えない場合(S87;No)には、プロセッサ10aは、一連の処理を終了するが、サービス要求Yが上記影響を与える場合(S87;Yes)には、サブスクライバ20からのサービス要求を優先し、通信方式リストL3から、次善の無線通信方式Zの候補を選択する。無線通信方式Zの選択処理は、ゲスト30、40からのサービス要求Yがサブスクライバ20に与える影響が無くなるまで繰り返し実行され、当該影響を与えない無線通信方式Zが選択された時点(S87;No)で、終了する。
【0051】
上述したように、無線通信システム1は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、ブルートゥースとLTEとを用いて通信するフェムト基地局10と、該フェムト基地局10と通信するサブスクライバ20、ゲスト30、40とを有する。フェムト基地局10は、サブスクライバ20、ゲスト30、40との間で、ブルートゥースとLTEとを用いて通信する。フェムト基地局10は、第1通信部11とルータ機能部13とを有する。第1通信部11は、フェムト基地局10に登録されているサブスクライバ20からのフェムト基地局10に対する要求を受信する。ルータ機能部13は、上記要求に応じて、上記ブルートゥースを用いてサブスクライバ20に通信させる。ルータ機能部13は、サブスクライバ20との通信が上記要求を満たさない場合、フェムト基地局10に登録されていないゲスト30の通信方式を、上記ブルートゥースから、上記LTEに変更する制御を行う。ここで、本実施例4において、上記要求は、ブルートゥースとLTEとの内、接続する移動局数の多い通信方式に接続する要求である。
【0052】
実施例4に係る無線通信システム1によれば、フェムト基地局10は、各移動局にとって最適な無線通信方式を、接続移動局数の多い無線通信方式に設定する。これにより、サブスクライバ20の接続先として、接続移動局数が現時点で最多の無線通信方式(例えば、無線LAN)が選択される。更に、ゲスト30、40の接続先として、サブスクライバ20によるサービス要求に影響を与えない範囲で接続移動局数が最多の無線通信方式(例えば、無線LAN)が選択される。これにより、各移動局の接続先は、移動局の種別を問わず、接続移動局数の多い無線通信方式Zに集中すると共に、他の無線通信方式(例えば、ブルートゥースやLTE)の接続移動局数は減少する。したがって、フェムト基地局10は、接続移動局数の減少した無線通信方式のRF回路を省電力モードに移行させる、あるいは、電力供給を停止することで、低消費電力化を図ることができる。その結果、無線通信システム1全体の省電力化が実現される。
【0053】
なお、節電の対象となる無線通信方式は、必ずしも、接続移動局数が“0”となっている必要は無く、フェムト基地局10が、省電力モードへ移行するための閾値を予め設定しておき、例えば、接続局数が2以下の無線通信方式を節電の対象とする様にしてもよい。あるいは、フェムト基地局10は、接続移動局数に応じて、電力供給のレベルを段階的に変更するものとしてもよい。かかる態様では、フェムト基地局10は、接続移動局数が3以上の無線通信方式には通常の電力供給を行い、1以上3未満の無線通信方式を省電力モードに移行させ、接続移動局数が0の無線通信方式への電力供給を停止するといった制御を行うことができる。例えば、図15においては、無線LANの接続移動局数は“8”であるので、無線LANのRF回路には通常量の電力が供給されるが、ブルートゥースの接続移動局数は“2”であるので、そのRF回路は省電力モードに移行する。更に、LTEの無線通信方式には移動局が接続されていないため、LTEのRF回路には電力が供給されないこととなる。これにより、接続移動局数の多い、換言すれば電力消費量の大きい無線通信方式には、より多くの電力が供給されると共に、あまり電力を必要としない無線通信方式に対する電力供給は、抑制されることとなる。その結果、無線通信方式毎の接続移動局数に応じた効率的な電力制御が可能となる。
【0054】
なお、上記各実施例では、ゲスト30、40のハンドオーバ契機となるサービス要求の種類として、スループットの向上や伝送遅延の縮小を始めとする通信品質の改善要求、フェムト基地局10の消費電力の低減要求、あるいは、接続移動局数が最多の無線通信方式への接続要求を例示した。しかしながら、サービス要求の種類は、これらに限らない。換言すれば、フェムト基地局10は、サブスクライバ20にとって最適な無線通信方式であるか否かの判断を、上記各実施例に例示した要求内容以外の観点から行うものとしてもよい。すなわち、フェムト基地局10は、サービス要求の種類として、例えば、通信コストの低廉化要求、QoSサービスを提供可能な無線通信方式への接続要求、よりアクセス時間を短縮可能な無線通信方式への接続要求を用いることもできる。更に、フェムト基地局10は、例えば、用途、帯域幅、電波到達距離、使用周波数帯域、受信電力強度、干渉やノイズの有無、変調方式、接続移動局の比率等の観点からの、サブスクライバ20による要求を満たす様に、ゲスト30、40をハンドオーバさせるものとしてもよい。あるいは、フェムト基地局10は、無線通信方式毎の移動局種別の割合に基づき、サブスクライバ又はゲストの比率が最大又は最小の無線通信方式への接続要求を、サービス要求として用いてもよい。
【0055】
また、上記各実施例では、フェムト基地局10は、異なる複数の無線通信方式による通信機能を併せ持つ構成とした。しかしながら、第1通信部11と第2通信部12とは、必ずしも1つのフェムト基地局が有するものでなくてもよく、別体に構成された複数の基地局の各々が、異なる無線通信方式に対応した通信部(例えば、第1通信部11と第2通信部12)を有する構成としてもよい。また、上記各実施例では、フェムト基地局10の有する通信部の無線通信方式が2種類である場合を例示したが、無線通信方式及び通信部は、3種類以上であってもよい。更に、無線通信方式は、上述したLTE、3G、WiFi(登録商標)等の無線LAN、ブルートゥースに限らず、例えば、ZigBee(登録商標)、GSM(登録商標、Global System for Mobile communications)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、HSPA(High Speed Packet Access)、赤外線通信であってもよく、これらの組合せについても、任意の組合せが可能である。
【0056】
更に、無線通信方式間におけるハンドオーバの対象となる移動局に関しても、必ずしもゲストに限らず、サブスクライバであってもよい。すなわち、フェムト基地局10が、サブスクライバ内で優先順位を予め設定しておき、ゲストをハンドオーバさせることによっても、特定のサブスクライバ20からの要求を満足できない場合には、優先順位の低いサブスクライバから順にハンドオーバをさせる。但し、サブスクライバに対するハンドオーバ命令は、ハンドオーバ元の無線通信方式が上記サブスクライバ20からの要求を満足したことを契機として解除される一時的なものであってもよい。また、サブスクライバ間の優先順位を決定するためのパラメータについても、フェムト基地局10への登録順位、ハンドオーバ元の無線通信方式からの受信電力強度、通信料金、バッテリ残量、メモリ残量等に基づき、多様な設定が可能である。
【0057】
また、フェムト基地局10が3種類以上の無線通信方式に対応した通信部を有する態様において、サブスクライバ20からのサービス要求によりハンドオーバされるゲスト30、40のハンドオーバ先は、必ずしも同一の無線通信方式である必要はない。すなわち、フェムト基地局10は、各ゲスト毎に、ハンドオーバ先の無線通信方式を適宜変更するものとしてもよい。ハンドオーバ先の無線通信方式を決定する基準としては、例えば、ゲストからのサービス要求の種別、フェムト基地局10への接続順位、ハンドオーバ先の無線通信方式からの受信電力強度、ハンドオーバ先での通信料金等を用いることができる。かかる態様によれば、フェムト基地局10は、ハンドオーバ元の無線通信方式に接続されていたゲストを、各ゲストの特性に応じて、その特性に適した無線通信方式に再接続させることができる。したがって、ゲストは、ハンドオーバ先においても、新たな無線通信方式に容易かつ迅速に適応することができ、ハンドオーバの前後を問わず、良好な通信を維持することが可能となる。その結果、無線通信システム1の通信安定性、ひいては信頼性が向上する。
【0058】
上記各実施例では、移動局として、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)を想定して説明したが、本発明は、移動局に限らず、基地局に対するサービス要求を行う様々な通信機器に対して適用可能である。
【0059】
更に、図1に示したフェムト基地局10の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的態様は、図示のものに限らず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、ルータ機能部13と移動局管理部15をそれぞれ1つの構成要素として統合してもよい。反対に、図1のルータ機能部13に関し、サブスクライバ20からのサービス要求に応じてゲスト30、40のハンドオーバの要否を決定する部分と、移動局管理部15からの指示に従い、ゲスト30、40に対してハンドオーバを命令する部分とに分散してもよい。また、メモリ10bを、フェムト基地局10の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
【0060】
また、上記説明では、個々の実施例毎に個別の構成、及び動作を説明した。しかしながら、各実施例に係る無線通信システムは、他の実施例や変形例に特有の構成要素を併せて有するものとしてもよい。また、実施例、変形例毎の組合せについても、2つに限らず、3つ以上の組合せ等、任意の形態を採ることが可能である。例えば、実施例1や実施例2に係る無線通信システム1が、実施例4のように、より接続移動局数の多い無線通信方式を最適な無線通信方式として選択するものとしてもよい。また、変形例1に示したデフォルト値の設定に係る技術は、実施例1、2のみならず、実施例3、4に係るフェムト基地局10にも適用可能である。更に、1つの無線通信システムが、実施例1〜4及び変形例1において説明した全ての構成要素を併有するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 無線通信システム
10 フェムト基地局
10a プロセッサ
10b メモリ
10c データベース
10d、10e RF回路
10f バックホールIF
11 第1通信部
12 第2通信部
13 ルータ機能部
14 サービス判定部
15 移動局管理部
16 ネットワークIF
20 サブスクライバ
30、40 ゲスト
A1、A2 アンテナ
L1、L2、L3 通信方式リスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局との間で、第1の通信方式と第2の通信方式とを用いて通信する基地局であって、
前記基地局に登録されている登録移動局からの前記基地局に対する要求を受信する受信部と、
前記要求に応じて、前記第1の通信方式を用いて前記登録移動局に通信させると共に、前記登録移動局との通信が前記要求を満たさない場合、前記基地局に登録されていない未登録移動局の通信方式を、前記第1の通信方式から、前記第2の通信方式に変更する制御を行う制御部と
を有することを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記要求は、前記登録移動局と前記基地局との間の通信が所定の通信品質を満たすことの要求であることを特徴とする請求項1記載の基地局。
【請求項3】
前記要求は、前記登録移動局と前記基地局との間の通信による消費電力を低減させる要求であることを特徴とする請求項1記載の基地局。
【請求項4】
前記要求は、前記第1の通信方式と前記第2の通信方式との内、接続する移動局数の多い通信方式に接続する要求であることを特徴とする請求項1記載の基地局。
【請求項5】
移動局との間で、第1の通信方式と第2の通信方式とを用いて通信する基地局と、該基地局と通信する移動局とを有する無線通信システムであって、
前記基地局は、
前記基地局に登録されている登録移動局からの前記基地局に対する要求を受信する受信部と、
前記要求に応じて、前記第1の通信方式を用いて前記登録移動局に通信させると共に、前記登録移動局との通信が前記要求を満たさない場合、前記基地局に登録されていない未登録移動局の通信方式を、前記第1の通信方式から、前記第2の通信方式に変更する制御を行う制御部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
移動局との間で、第1の通信方式と第2の通信方式とを用いて通信する基地局における無線通信方法であって、
前記基地局は、
前記基地局に登録されている登録移動局からの前記基地局に対する要求を受信しと、
前記要求に応じて、前記第1の通信方式を用いて前記登録移動局に通信させると共に、前記登録移動局との通信が前記要求を満たさない場合、前記基地局に登録されていない未登録移動局の通信方式を、前記第1の通信方式から、前記第2の通信方式に変更する制御を行う
ことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−106209(P2013−106209A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249119(P2011−249119)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】