説明

基地局および基地局の制御方法

【課題】自局が混雑している状況で、端末が自局へ無駄にハンドオフしてくるのを防ぐことができる基地局および基地局の制御方法を提供する。
【解決手段】フェムトセルFAPは、自局の送信するパイロットビーコンを受信した端末から待ち受け要求を受信した場合、当該端末を自局の通信周波数に引き込み、自局の通信周波数で待ち受けさせる。フェムトセルFAPは、現在フェムトセルで待ち受けている端末数が事前に設定された上限待ち受け端末数を越えているかどうかを判定し、待ち受け端末数が上限待ち受け端末数より大きい場合は、パイロットビーコンの送信を停止し、他の端末をこれ以上自局にハンドオフさせないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局およびその基地局の制御方法に関し、特に、一般回線を介して移動体通信網に接続する基地局およびその基地局の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムにおいて、フェムトセル(Home eNode B)と呼ばれる、従来の基地局(広域基地局、マクロセル)に比べてごく小さいエリアをカバーする基地局の方式が提案されている。フェムトセルは、例えば家の中や小さなオフィス等に設置される小型基地局であり、従来の携帯電話のセル、つまり1つの広域基地局がカバーするエリアが半径1キロメートル〜数キロメートル程度であるのに対し、フェムトセルがカバーするエリアは、数メートル〜数10メートル程度である。このフェムトセルは、各家庭に引込まれている一般回線(ADSLなどのブロードバンド回線)を介して移動体通信網に接続される。一般回線はアクセス回線として一般に普及しているため、マクロセルのエリア外だったユーザでも、ブロードバンド回線があればマクロセルと同様の携帯電話サービス(通話、メール機能、SMS(Short Message Service)、WEBブラウジング等)を安価でかつ容易に使用できるようになる。さらに、通信事業者としては、フェムトセル及びブロードバンド回線の利用によって、本来消費されるはずであった既存の広域基地局のリソース(帯域など)を使わずに済み、低コストで携帯電話のエリア改善ができるメリットがある。
【0003】
このように、2GHz帯やそれ以上の周波数帯域で運用される第3世代(3G)や第3.9世代(3.9G)およびIMT−ADVANCEDにおいては、屋外の広域基地局と屋内のフェムトセルの組み合わせは必須になっていくものと予想される。さらに、フェムトセルは、少数の端末が利用するため、複数の端末により混雑するマクロセルと比べ、より高速、高品質なデータ通信環境を提供できる等の利点があり、今後大きな普及が見込まれる。
【0004】
フェムトセルでは、通信用の電波に、マクロセルと異なる周波数を使用することが検討されているため、フェムトセルは、オフィスやショッピングセンター、コンサートホールなど、人が密集する場所に設置され、マクロセルとの併用により通信の負荷を分散させることを目的として利用されることもある。この場合のフェムトセルは、フェムトセルに登録された端末が利用可能なクローズドアクセスのものではなく、利用に登録を必要としない、全端末が利用可能なオープンアクセスのものである。しかしながら、このように人が密集する場所にオープンアクセスのフェムトセルが設置された場合、多くの端末がフェムトセルを利用することになり、フェムトセルを利用しても結果的にマクロセルを利用した場合よりも良好な通信性能が得られない場合もある。
【0005】
この問題への対策として、従来技術に、特定の無線基地局にアクセスが集中し、無線チャネルが輻輳していることを検出すると、輻輳状態にある無線通信エリアを構成する無線通信システムとは異なる無線通信システムにハンドオフ可能な端末を判定し、判定した端末を前記の無線通信システムに強制的にハンドオフさせる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−270919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、オープンアクセスのフェムトセルにおいては、多くの端末が利用することによりフェムトセルが混雑し、フェムトセルを利用してもマクロセルを利用したときより通信性能が悪くなる場合には、端末をフェムトセルにハンドオフさせるべきではない。
【0008】
また、特許文献1に記載の方法では、輻輳が起こっているシステムへ別の端末がハンドオフしてくることは、防ぐことができない。無駄なハンドオフは可能な限り抑えることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、自局が混雑している状況で、端末が自局へ無駄にハンドオフしてくるのを防ぐことができる基地局および基地局の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、移動体通信システムのオープンアクセスの基地局であって、自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信する送信部と、自局で待ち受けている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するように前記送信部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記制御部は、前記パイロットビーコンの送信を停止している状態で、自局で待ち受けていた移動機が前記移動体通信システムの他の基地局にハンドオフしたことを検知した場合に、前記パイロットビーコンの送信を開始するように前記送信部を制御することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、移動体通信システムのオープンアクセスの基地局であって、自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信する送信部と、自局を利用して通信を行っている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するように前記送信部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
前記制御部は、前記パイロットビーコンの送信を停止している状態で、自局を利用して通信を行っていた移動機が前記移動体通信システムの他の基地局にハンドオフしたことを検知した場合に、前記パイロットビーコンの送信を開始するように前記送信部を制御することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、移動体通信システムのオープンアクセスの基地局であって、自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信する送信部と、自局の通信環境が前記移動体通信システムの他の基地局の通信環境よりも悪い場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するように前記送信部を制御することを特徴とする。
【0015】
前記制御部は、前記パイロットビーコンの送信を停止している状態で、自局の通信環境が前記他の基地局の通信環境より良いことを検知した場合に、前記パイロットビーコンの送信を開始するように前記送信部を制御することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、移動体通信システムのオープンアクセスの基地局の制御方法であって、自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信するステップと、自局で待ち受けている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、移動体通信システムのオープンアクセスの基地局の制御方法であって、自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信するステップと、自局を利用して通信を行っている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、移動体通信システムのオープンアクセスの基地局の制御方法であって、自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信するステップと、自局の通信環境が前記移動体通信システムの他の基地局の通信環境よりも悪い場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、端末をフェムトセルへ無駄にハンドオフさせるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】フェムトセルとマクロセルとを含む移動体通信システムの概略構成図である。
【図2】パイロットビーコンの送信時に、端末がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動しようとしている時の概念図である。
【図3】パイロットビーコンの送信時に、端末がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動した時の概念図である。
【図4】パイロットビーコンの停止時に、端末がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動しようとしている時の概念図である。
【図5】パイロットビーコンの停止時に、端末がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動した時の概念図である。
【図6】本発明のフェムトセルの第1の実施形態に示す概略ブロック図である。
【図7】第1の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン送信中の動作を説明するフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン停止中の動作を説明するフローチャートである。
【図9】パイロットビーコンの停止時に、端末がフェムトセルエリアからマクロセルエリアへ移動しようとしている時の概念図である。
【図10】端末がフェムトセルエリアからマクロセルエリアへ移動し、フェムトセルがパイロットビーコンの送信を再開した時の概念図である。
【図11】本発明のフェムトセルの第2の実施形態に示す概略ブロック図である。
【図12】第2の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン送信中の動作を説明するフローチャートである。
【図13】第2の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン停止中の動作を説明するフローチャートである。
【図14】本発明のフェムトセルの第3の実施形態に示す概略ブロック図である。
【図15】第3の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン送信中の動作を説明するフローチャートである。
【図16】第3の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン停止中の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、これ以降では、移動体通信システムとしてCDMA2000 1xEV−DOを想定して説明する。
【0022】
図1は、フェムトセルとマクロセルとを含む移動体通信システムの概略構成図である。図に示すように、移動体通信システム100は、マクロセル(広域基地局)AN、EV−DOコアネットワークCN、フェムトセルネットワークゲートウェイFNG、広域ネットワークNET、フェムトセルFAP、複数の端末(移動機)AT1〜AT3を含む。EV−DOコアネットワークCNは、図示しないPDSN(Packet Data Serving Node:パケットデータサービスノード)、PCF(Packet Control Function:パケット制御器)等を含む移動体通信ネットワークの基幹部分である。フェムトセルネットワークゲートウェイFNGは、広域ネットワークNETとEV−DOコアネットワークCNとの間の接続を中継する。
【0023】
移動体通信システム100において、マクロセルANは、周波数F1のマクロセル電波を送信している。フェムトセルFAPは、マクロセルANと通信している端末をフェムトセルに引き込む(ハンドオフさせる)ため、マクロセル電波と同じ周波数F1のパイロットビーコンを送信することができる。フェムトセルFAP自体は、自局と端末との間の通信に、周波数F2のフェムトセル電波(通信用電波)を用いる。
【0024】
図2は、フェムトセルFAPがパイロットビーコンを送信している状態で、端末AT1がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動しようとしている時の概念図である。フェムトセルエリアへ移動しようとしている端末AT1は、パイロットビーコンによりフェムトセルFAPの存在を検知する。
【0025】
図3は、フェムトセルFAPがパイロットビーコンを送信している状態で、端末AT1がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動した時の概念図である。フェムトセルエリアへ移動した端末AT1は、パイロットビーコンによりフェムトセルFAPの通信周波数F2に引き込まれ、フェムトセルFAPで待ち受ける。
【0026】
図4は、フェムトセルFAPがパイロットビーコンを停止している状態で、端末AT1がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動しようとしている時の概念図である。フェムトセルエリアへ移動しようとしている端末AT1は、パイロットビーコンが送信されていないので、フェムトセルFAPの存在を検知できない。
【0027】
図5は、フェムトセルFAPがパイロットビーコンを停止している状態で、端末AT1がマクロセルエリアからフェムトセルエリアへ移動した時の概念図である。フェムトセルエリアへ移動した端末AT1は、フェムトセルFAPの通信周波数F2には引き込まれず、引き続きマクロセルANで待ち受ける。
【0028】
次に、本発明のフェムトセル(基地局)の実施形態について説明する。本発明のフェムトセルは、自局に登録された端末が利用可能なクローズドアクセスのものではなく、アクセスに自局への登録を必要としない、全端末が利用可能なオープンアクセスのものである。図6は、本発明のフェムトセルの第1の実施形態に示す概略ブロック図である。図6に示すように、フェムトセルFAPは、アンテナANTと、制御部110(制御部)と、無線通信部120と、記憶部140と、有線通信部150を備える。
【0029】
無線通信部120は、パイロットビーコン送信部122(送信部)と、端末送受信部126を備える。パイロットビーコン送信部122は、端末(移動機)をフェムトセルFAPに引き込むためのパイロットビーコンを送信する。端末送受信部126は、アンテナANTを介して、端末とセルラー通信を行うためのフェムトセル電波(通信用電波)の送受信を行う。
【0030】
制御部110は、パイロットビーコン送信制御部111と、端末待ち受け数判定部112と、ハンドオフESN判定部113を備え、また、フェムトセルFAP全体の制御を行う。パイロットビーコン送信制御部111は、パイロットビーコン送信部122を制御してパイロットビーコンの送信開始・停止の制御を行う。端末待ち受け数判定部112は、現在フェムトセルで待ち受けている端末数が上限待ち受け端末数を越えているかどうかを判定する。ハンドオフ端末ESN判定部113は、フェムトセル管理サーバから通知されたESNと待ち受け端末のESNを比較する。ESNとは、端末が持つ固有番号(端末識別子)であり、端末が携帯電話である場合は、例えば電話番号等から算出することができる。
【0031】
記憶部140は、上限待ち受け端末数記憶部141と、待ち受け端末数記憶部142と、待ち受け端末ESN記憶部143を備える。上限待ち受け端末数記憶部141は、フェムトセルで待ち受け可能な上限端末数を記憶する。待ち受け端末数記憶部142は、現在フェムトセルで待ち受けている端末数を記憶する。待ち受け端末ESN記憶部143は、現在フェムトセルで待ち受けている端末のESNを記憶する。
【0032】
有線通信部150は、ルータや一般回線(ADSL等のブロードバンド回線)を介して、インターネット等の広域ネットワークNETに接続される。
【0033】
図7は、第1の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン送信中の動作を説明するフローチャートである。フェムトセルFAPは、パイロットビーコンを送信している間はループ1(ステップS11〜S17)を繰り返す。
【0034】
フェムトセルFAPは、自局の送信するパイロットビーコンを受信した端末から待ち受け要求を受信した場合(S12でYESの場合)、当該端末を自局の通信周波数に引き込み、自局の通信周波数で待ち受けさせる(S13)。その後、引き込んだ端末の識別子(例えばESN)を自局の保持する待ち受け端末リストに記憶し(S14)、自局の保持する待ち受け端末数に1を加える(S15)。その際、引き込んだ端末の識別子は、フェムトセルの管理を行うフェムトセル管理サーバへも通知するようにする。端末待ち受け数判定部112にて、現在フェムトセルで待ち受けている端末数が事前に設定された上限待ち受け端末数を越えているかどうかを判定し(S16)、待ち受け端末数が上限待ち受け端末数より大きい場合(S16でYESの場合)、フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を停止し、他の端末をこれ以上自局にハンドオフさせないようにする(S18)。
【0035】
なお、ステップS12にてパイロットビーコンを受信した端末から待ち受け要求を受信しない場合(NOの場合)、および、S16にて待ち受け端末数が上限待ち受け端末数以下である場合(NOの場合)には、ステップS14へ進み、ループ1の処理が継続され、パイロットビーコンの送信を継続する。
【0036】
図8は、第1の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン停止中の動作を説明するフローチャートである。フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を停止している間はループ2(ステップS21〜S23)を繰り返す。
【0037】
フェムトセルFAPは、ハンドオフ端末ESN判定部113にて、フェムトセル管理サーバから通知されたESNと待ち受け端末のESNを比較し(S22)、パイロットビーコン停止中に自局で待ち受けていた端末がマクロセルANへハンドオフしたことを検知した場合(S22でYESの場合)、ハンドオフした端末のESNを自局の保持する待ち受け端末リストから削除し(S24)、自局の保持する待ち受け端末数から1を引く(S25)。その後、フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を開始し、他の端末が自局にハンドオフできるようにする(S26)。
【0038】
図9は、フェムトセルFAPがパイロットビーコンを停止している状態で、端末AT2がフェムトセルエリアからマクロセルエリアへ移動しようとしている時の概念図である。マクロセルエリアへ移動しようとしている端末AT2は、フェムトセルFAPの電波が弱くなると、マクロセルANへのハンドオフ動作を開始する。
【0039】
図10は、端末AT2がフェムトセルエリアからマクロセルエリアへ移動し、フェムトセルFAPがパイロットビーコンの送信を再開した時の概念図である。マクロセルエリアへ移動した端末AT2は、マクロセルANで待ち受け、フェムトセルエリアに存在したがマクロセルANで待ち受けていた端末AT1は、パイロットビーコンによりフェムトセルFAPの通信周波数F2に引き込まれ、フェムトセルFAPで待ち受ける。
【0040】
なお、フェムトセルFAPで待ち受けていた端末がマクロセルANへハンドオフしたことは、フェムトセル管理サーバから通知されるESNにより検知してもよいし、フェムトセル自局がKeep Aliveにより一定時間おきに待ち受け端末の確認を行うことで検知してもよい。前者の場合は、フェムトセル管理サーバが周辺のマクロセルANから待ち受け端末の識別子情報を取得し、事前にフェムトセルFAPより通知された識別子と一致するものがあれば、当該識別子をフェムトセルFAPに通知することで行う。
【0041】
第1の実施形態では、パイロットビーコン停止中に任意の端末がマクロセルANへハンドオフしたことを検知した場合、すなわち、待ち受け端末数が上限待ち受け端末数に戻った場合にパイロットビーコンの送信を再開するものとしているが、フェムトセルFAPでの待ち受け端末数は、ある程度短い時間で変動することが考えられるので、パイロットビーコンの送信停止と送信再開を頻繁に繰り返すことを防ぐために、送信停止と送信再開の判定用待ち受け端末数は別の値としてもよい。すなわち、フェムトセルFAPは、待ち受け端末数が停止判定待ち受け端末数X以上となった場合にパイロットビーコンを停止し、端末のマクロセルANへのハンドオフを何度か検知し、待ち受け端末数が再開判定待ち受け端末数Y(X>Y)以下となった場合にパイロットビーコンの送信を再開するようにしてもよい。
【0042】
次に、本発明のフェムトセル(基地局)の第2の実施形態について説明する。図11は、本発明のフェムトセルの第2の実施形態に示す概略ブロック図である。図11に示すように、フェムトセルFAPは、アンテナANT、制御部210(制御部)と、無線通信部220と、記憶部240と、有線通信部250を備える。
【0043】
無線通信部220は、パイロットビーコン送信部222(送信部)と、端末送受信部226を備える。パイロットビーコン送信部222は、端末(移動機)をフェムトセルFAPに引き込むためのパイロットビーコンを送信する。端末送受信部226は、アンテナANTを介して、端末とセルラー通信を行うためのフェムトセル電波(通信用電波)の送受信を行う。
【0044】
制御部210は、パイロットビーコン送信制御部211と、接続端末数判定部212を備え、また、フェムトセルFAP全体の制御を行う。パイロットビーコン送信制御部211は、パイロットビーコン送信部222を制御してパイロットビーコンの送信開始・停止の制御を行う。接続端末数判定部212は、現在フェムトセルを利用して通信を行っている端末数が上限接続端末数を越えているかどうかを判定する。
【0045】
記憶部240は、上限接続端末数記憶部241と、接続端末数記憶部242を備える。上限接続端末数記憶部241は、フェムトセルを利用して通信可能な上限端末数を記憶する。接続端末数記憶部242は、現在フェムトセルを利用して通信を行っている端末数を記憶する。
【0046】
有線通信部250は、ルータや一般回線(ADSL等のブロードバンド回線)を介して、インターネット等の広域ネットワークNETに接続される。
【0047】
図12は、第2の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン送信中の動作を説明するフローチャートである。フェムトセルFAPは、パイロットビーコンを送信している間はループ3(ステップS31〜S36)を繰り返す。
【0048】
フェムトセルFAPは、パイロットビーコン送信中に自局の通信周波数で待ち受けている端末から接続要求を受信した場合(S32でYESの場合)、当該端末との通信を確立し(S33)、自局の保持する接続端末数に1を加える(S34)。接続端末数判定部212にて、現在フェムトセルを利用して通信を行っている端末数(接続端末数、トラフィックチャネルが割り当てられている端末数)が事前に設定された上限接続端末数を越えているかどうかを判定し(S35)、接続端末数が上限接続端末数より大きい場合(S35でYESの場合)、フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を停止し、他の端末をこれ以上自局にハンドオフさせないようにする(S37)。
【0049】
なお、ステップS32にて待ち受けている端末から接続要求を受信しない場合(NOの場合)、および、S35にて接続端末数が上限接続端末数以下である場合(NOの場合)には、ステップS36へ進み、ループ3の処理が継続され、パイロットビーコンの送信を継続する。
【0050】
図13は、第2の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン停止中の動作を説明するフローチャートである。フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を停止している間はループ4(ステップS41〜S48)を繰り返す。
【0051】
フェムトセルFAPは、パイロットビーコン停止中に自局と通信を行っていた端末との接続を解放した場合(S42でYESの場合)、自局の保持する接続端末数から1を引く(S43)。接続端末数判定部212にて、現在フェムトセルを利用して通信を行っている端末数(接続端末数)が事前に設定された上限接続端末数を越えているかどうかを判定し(S44)、接続端末数が上限接続端末数以下の場合(S44でYESの場合)、フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を開始し、他の端末が自局にハンドオフできるようにする(S49)。また、S42にて端末との接続を解放しない場合(NOの場合)、および、S44にて接続端末数が事前に設定された上限接続端末数より多い場合(NOの場合)において、パイロットビーコン停止中に自局の通信周波数で待ち受けている端末から接続要求を受信した場合(S45でYESの場合)は、当該端末との通信を確立し(S46)、自局の保持する接続端末数に1を加える(S47)。
【0052】
すなわち、フェムトセルFAPは、パイロットビーコン停止中も接続端末数のカウントを行い、フェムトセルFAPと通信を行っていた端末との接続、解放を繰り返し、接続端末数がパイロットビーコンを停止する起因となった上限接続端末数以下になるまでは、パイロットビーコンの送信は再開しない。
【0053】
第2の実施形態では、パイロットビーコンの停止を判定するための上限接続端末数とパイロットビーコンの送信再開を判定するための接続端末数は同一のものとしているが、接続の確立と解放は頻繁に行われ、接続端末数もある程度短い時間で変動することが考えられるので、パイロットビーコンの送信停止と送信再開を頻繁に繰り返すことを防ぐために、送信停止と送信再開の判定用接続端末数は別の値としてもよい。すなわち、フェムトセルFAPは、接続端末数が停止判定接続端末数X以上となった場合にパイロットビーコンを停止し、接続端末数が再開判定接続端末数Y(X>Y)以下となった場合にパイロットビーコンの送信を再開するようにしてもよい。
【0054】
次に、本発明のフェムトセル(基地局)の第3の実施形態について説明する。図14は、本発明のフェムトセルの第3の実施形態に示す概略ブロック図である。図14に示すように、フェムトセルFAPは、アンテナANTと、制御部310(制御部)と、無線通信部320と、通信環境測定部330と、測定タイマ340と、有線通信部350を備える。
【0055】
無線通信部320は、パイロットビーコン送信部322(送信部)と、端末送受信部326を備える。パイロットビーコン送信部322は、端末(移動機)をフェムトセルFAPに引き込むためのパイロットビーコンを送信する。端末送受信部326は、アンテナANTを介して、端末とセルラー通信を行うためのフェムトセル電波(通信用電波)の送受信を行う。
【0056】
制御部310は、パイロットビーコン送信制御部311と、通信環境判定部312を備え、また、フェムトセルFAP全体の制御を行う。パイロットビーコン送信制御部311は、パイロットビーコン送信部322を制御してパイロットビーコンの送信開始・停止の制御を行う。通信環境判定部312は、マクロセルとフェムトセルの通信環境の測定結果を比較する。
【0057】
通信環境測定部330は、マクロセルやフェムトセルの通信環境を測定する。測定タイマ340は、通信環境を測定する間隔をカウントするためのタイマである。
【0058】
有線通信部350は、ルータや一般回線(ADSL等のブロードバンド回線)を介して、インターネット等の広域ネットワークNETに接続される。
【0059】
図15は、第3の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン送信中の動作を説明するフローチャートである。フェムトセルFAPは、パイロットビーコンを送信している間はループ5(ステップS51〜S57)を繰り返す。なお、本フローチャートの処理が開始されると、測定タイマ340が起動されるものとする。
【0060】
フェムトセルFAPは、パイロットビーコン送信中に測定タイマ340が満了した場合(S52でYESの場合)、通信環境測定部330にて、マクロセルの通信環境(例えばスループット)とフェムトセルの通信環境の測定を行い(S53、S54)、通信環境判定部312にて、マクロセルANとフェムトセルFAPの通信環境の測定結果を比較する(S55)。その結果、マクロセルANの通信環境がフェムトセルFAPの通信環境よりも良好であった場合(S55でYESの場合)、フェムトセルFAPは、測定タイマ340をリセットし(S56)、パイロットビーコンの送信を停止することで、他の端末をこれ以上自局にハンドオフさせないようにする(S59)。なお、マクロセルANの通信環境がフェムトセルFAPの通信環境よりも悪い場合(S55でNOの場合)には、フェムトセルFAPは、測定タイマ340をリセットし(S57)、パイロットビーコンの送信を継続する。
【0061】
マクロセルANやフェムトセルFAPの通信環境の測定は、フェムトセルFAPに接続されているテスト用端末(ユーザが利用する端末ではなく、フェムトセルFAPに付属している測定用端末)が、実際に両基地局を利用して通信を行ってみることで測定するものとする。
【0062】
第3の実施形態では、パイロットビーコン送信中は、測定タイマが満了した際に通信環境の測定を行うものとしているが、測定のタイミングはこの限りではなく、フェムトセルFAPで待ち受けや接続を行っている端末が増加した場合や、一定数以上となった場合に測定を行ってもよい。
【0063】
図16は、第3の実施形態に係るフェムトセルのパイロットビーコン停止中の動作を説明するフローチャートである。フェムトセルFAPは、パイロットビーコンの送信を停止している間はループ6(ステップS61〜S68)を繰り返す。なお、本フローチャートの処理が開始されると、測定タイマ340が起動されるものとする。
【0064】
フェムトセルFAPは、パイロットビーコン停止中に測定タイマ340が満了した場合(S62でYESの場合)、通信環境測定部330にて、マクロセルANの通信環境(例えばスループット)とフェムトセルFAPの通信環境の測定を行う(S63、S64)。その結果、フェムトセルFAPの通信環境がマクロセルANの通信環境よりも良好であった場合(S65でYESの場合)、フェムトセルFAPは、測定タイマ340をリセットし(S66)、パイロットビーコンの送信を再開することで、他の端末が自局にハンドオフできるようにする(S69)。なお、マクロセルANの通信環境がフェムトセルFAPの通信環境よりも悪い場合(S65でNOの場合)には、フェムトセルFAPは、測定タイマ340のリセットのみを行う(S57)。
【0065】
第3の実施形態では、フェムトセルFAPは、パイロットビーコン停止中は測定タイマが満了した際に通信環境の測定を行うものとしているが、測定のタイミングはこの限りではなく、フェムトセルFAPで待ち受けや接続を行っている端末が減少した場合や、一定数以下となった場合に測定を行ってもよい。
【0066】
このように、本発明によれば、フェムトセル(基地局)で待ち受けている端末が一定数以上になった場合、またはフェムトセルを利用して通信を行っている端末が一定数以上になった場合、またはフェムトセルを利用して通信を行ったときの通信性能がマクロセルを利用して通信を行ったときの通信性能よりも悪くなった場合にパイロットビーコンの送信を停止するので、フェムトセルが混雑している状況で、端末をフェムトセルへ無駄にハンドオフさせるのを防ぐことができる。また、本発明によれば、パイロットビーコンの送信を適切に制御するので、フェムトセルの通信環境を良好に保った状態で、マクロセルとフェムトセルに通信の負荷を分散させることができる。さらに、マクロセルと同じ周波数で送信されるパイロットビーコンの送信を控えることにより、マクロセルとの干渉を防ぐことができる。また、パイロットビーコンの送信を控えることにより、無駄な電力消費を減らすことができる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、移動体通信システムとしてCDMA2000 1xEVDOを想定して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、LTE(Long Term Evolution)、UMB(Ultra Mobile Broadband)等のシステムにも適用することができるものである。
【符号の説明】
【0068】
100 移動体通信システム
110、210、310 制御部
111、211、311 パイロットビーコン送信制御部
112 端末待ち受け数判定部
113 ハンドオフESN判定部
120、220、320 無線通信部
122、222、322 パイロットビーコン送信部
126、226、326 端末送受信部
140、240 記憶部
141 上限待ち受け端末数記憶部
142 待ち受け端末数記憶部
143 待ち受け端末ESN記憶部
150、250、350 有線通信部
212 接続端末数判定部
241 上限接続端末数記憶部
242 接続端末数記憶部
312 通信環境判定部
330 通信環境測定部
340 測定タイマ
ANT アンテナ
AT1〜AT3 端末(移動機)
AN マクロセル
CN EV−DOコアネットワーク
FNG フェムトセルネットワークゲートウェイ
NET 広域ネットワーク
FAP フェムトセル
F1 マクロセル電波、パイロットビーコン
F2 フェムトセル電波(通信用電波)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信システムのオープンアクセスの基地局であって、
自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信する送信部と、
自局で待ち受けている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するように前記送信部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記制御部は、前記パイロットビーコンの送信を停止している状態で、自局で待ち受けていた移動機が前記移動体通信システムの他の基地局にハンドオフしたことを検知した場合に、前記パイロットビーコンの送信を開始するように前記送信部を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
移動体通信システムのオープンアクセスの基地局であって、
自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信する送信部と、
自局を利用して通信を行っている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するように前記送信部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項4】
前記制御部は、前記パイロットビーコンの送信を停止している状態で、自局を利用して通信を行っていた移動機が前記移動体通信システムの他の基地局にハンドオフしたことを検知した場合に、前記パイロットビーコンの送信を開始するように前記送信部を制御する、ことを特徴とする請求項3に記載の基地局。
【請求項5】
移動体通信システムのオープンアクセスの基地局であって、
自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信する送信部と、
自局の通信環境が前記移動体通信システムの他の基地局の通信環境よりも悪い場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するように前記送信部を制御することを特徴とする基地局。
【請求項6】
前記制御部は、前記パイロットビーコンの送信を停止している状態で、自局の通信環境が前記他の基地局の通信環境より良いことを検知した場合に、前記パイロットビーコンの送信を開始するように前記送信部を制御する、ことを特徴とする請求項5に記載の基地局。
【請求項7】
移動体通信システムのオープンアクセスの基地局の制御方法であって、
自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信するステップと、
自局で待ち受けている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するステップと、
を含むことを特徴とする基地局の制御方法。
【請求項8】
移動体通信システムのオープンアクセスの基地局の制御方法であって、
自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信するステップと、
自局を利用して通信を行っている移動機が一定数以上となった場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するステップと、
を含むことを特徴とする基地局の制御方法。
【請求項9】
移動体通信システムのオープンアクセスの基地局の制御方法であって、
自局を移動機に検出させるためのパイロットビーコンを送信するステップと、
自局の通信環境が前記移動体通信システムの他の基地局の通信環境よりも悪い場合に、前記パイロットビーコンの送信を停止するステップと、
を含むことを特徴とする基地局の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−115564(P2013−115564A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259186(P2011−259186)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】