説明

基地局及び補正値算出方法

【課題】基地局が取得する下り通信品質の精度を向上することが可能な技術を提供する。
【解決手段】基地局1では、下り無線リソースと、通信端末において既知信号の送信に使用される上り無線リソースとに関して、当該既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められている。補正値算出部126は、通信端末が既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースを用いて送信される信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す信号に基づいて、当該通信端末が求めた下り品質値に対する第1補正値を算出し、通信端末が既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない下り無線リソースを用いて送信される信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す信号に基づいて、当該通信端末が求めた下り品質値に対する第2補正値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、複数の無線通信装置が、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式を使用して無線通信を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−536003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基地局と通信端末を備える無線通信システムでは、通信端末は、基地局からの信号に基づいて下り通信品質を求めて、それを基地局にフィードバックする。基地局は、通信端末から取得した下り通信品質に基づいて、下り無線リソースのスケジューリング等を行う。基地局が取得した下り通信品質の精度が十分でないと、基地局の性能が劣化する可能性があることから、当該下り通信品質の精度を高めることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、基地局が取得する下り通信品質の精度を高めることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る基地局は、複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、通信端末が前記通信部が送信する信号に基づいて求めた下り通信品質を示す下り品質値に対する補正値を求める補正値算出部とを備え、下り無線リソースと、通信端末において前記既知信号の送信に使用される上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記補正値算出部は、通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースを用いて前記通信部が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、当該通信端末が求めた前記下り品質値に対する第1補正値を算出し、通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースを用いて前記通信部が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、当該通信端末が求めた前記下り品質値に対する第2補正値を算出する。
【0007】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記通信部が通信端末と下り通信を行う際に使用する使用下り無線リソースを当該通信端末に割り当てる下りスケジューリングを行うスケジューリング実行部がさらに設けられ、前記スケジューリング実行部は、前記下りスケジューリングを行う際には、前記第1補正値で補正された前記下り品質値が示す下り通信品質を、前記対応下り無線リソースを用いて下り通信が行われる際の下り通信品質として使用するとともに、前記第2補正値で補正された前記下り品質値が示す下り通信品質を、前記非対応下り無線リソースを用いて下り通信が行われる際の下り通信品質として使用する。
【0008】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記通信部が送信する送信信号に適用するMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定するMCS決定部がさらに設けられ、前記MCS決定部は、前記対応下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用するMCSについては、前記第1補正値で補正された前記下り品質値に基づいて決定し、前記非対応下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用するMCSについては、前記第2補正値で補正された前記下り品質値に基づいて決定する。
【0009】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記補正値算出部は、前記第1補正値に対して第1調整値を加算あるいは減算することによって、当該第1補正値を更新し、前記第2補正値に対して第2調整値を加算あるいは減算することによって、当該第2補正値を更新し、前記第2調整値は、前記第1調整値よりも小さく設定されている。
【0010】
また、本発明に係る補正値算出方法は、複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局で行われる、下り通信品質を示す下り品質値についての補正値算出方法であって、前記基地局では、下り無線リソースと、通信端末において前記既知信号の送信に使用される上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、(a)通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースを用いて前記基地局が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、前記基地局が送信する信号に基づいて当該通信端末が求めた下り通信品質を示す下り品質値に対する第1補正値を算出する工程と、(b)通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースを用いて前記基地局が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、当該通信端末が求めた前記下り品質値に対する第2補正値を算出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基地局が取得する下り通信品質の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】基地局の構成を示す図である。
【図3】TDDフレームの構成を示す図である。
【図4】TDDフレームの構成の詳細を示す図である。
【図5】SRS送信可能帯域が周波数ホッピングする様子を示す図である。
【図6】SRS0とSRS1を示す図である。
【図7】SRS用上り無線リソースを示す図である。
【図8】SRSの送信周波数帯域が周波数ホッピングする様子を示す図である。
【図9】SRS用上り無線リソースと下り無線リソースとの対応付けを示す図である。
【図10】通信端末に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図11】ビームフォーミング及びヌルステアリングを説明するための図である。
【図12】ビームフォーミング及びヌルステアリングを説明するための図である。
【図13】無線通信システムの動作を示す図である。
【図14】無線通信システムの動作を示す図である。
【図15】補正値算出部の動作を示すフローチャートである。
【図16】MCS決定部でのMCSの決定方法を示す図である。
【図17】MCS決定部でのMCSの決定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本実施の形態に係る無線通信システム100の構成を示す図である。無線通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTE(Long Term Evolution)であって、複数の基地局1を備えている。LTEは、「E−UTRA」とも呼ばれている。
【0014】
各基地局1は、複数の通信端末2と通信を行う。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。基地局1と通信端末2との通信には、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
【0015】
図1に示されるように、各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局1だけしか示されていないため、1つの基地局1に対して周辺基地局1が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局1に対して例えば6つの周辺基地局1が存在することがある。
【0016】
複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
【0017】
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。基地局1は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御することが可能である。
【0018】
図2に示されるように、基地局1は、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12とを備えている。無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
【0019】
また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
【0020】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12では、CPU及びDSPがメモリ内の各種プログラムを実行することによって、送信信号生成部120、受信データ取得部121、スケジューリング実行部122、送信ウェイト処理部123、受信ウェイト処理部124、MCS決定部125及び補正値算出部126などの機能ブロックが形成される。
【0021】
MCS決定部125は、基地局1が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定する。MCSは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調方式と誤り訂正符号の符号化率との組み合わせを示している。MCS決定部125は、通信端末2に送信される送信信号に適用されるMCSを、当該送信信号の周波数帯域での基地局1と当該通信端末2との間の下り通信品質に基づいて決定する。
【0022】
送信信号生成部120は、通信対象の通信端末2に送信する送信データを生成する。送信データには制御データ及びユーザデータが含まれる。そして、送信信号生成部120は、生成した送信データを含むベースバンドの送信信号を、MCS決定部125で決定されたMCSに基づいて生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
【0023】
送信ウェイト処理部123は、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号に対して、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信ウェイト処理部123は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に出力する。
【0024】
受信ウェイト処理部124は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行った後に、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、受信ウェイト処理部124は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号(以後、「合成受信信号」と呼ぶ)を生成する。
【0025】
受信データ取得部121は、受信ウェイト処理部124で生成された合成受信信号に対して、逆離散フーリエ変換や復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データ及びユーザデータを取得する。
【0026】
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信ウェイト処理部123及び受信ウェイト処理部124によって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら複数の通信端末2と通信を行う通信部13が構成されている。通信部13は、通信端末2と通信する際に、アレイアンテナ110の受信指向性及び送信指向性のそれぞれを制御する。具体的には、通信部13は、受信ウェイト処理部124において、受信信号に乗算する受信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での受信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。また、通信部13は、送信ウェイト処理部123において、送信信号に乗算する送信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での送信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。送信ウェイトは受信ウェイトから求めることができ、受信ウェイトは通信端末2からの既知信号に基づいて求めることができる。
【0027】
スケジューリング実行部122は、データの下り通信を行う通信端末2を決定するとともに、当該通信端末2に対して、当該通信端末2とのデータの下り通信で使用する下り無線リソース(以後、「使用下り無線リソース」と呼ぶ)を割り当てる下りスケジューリングを行う。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に割り当てた使用下り無線リソースに基づいて、当該通信端末2に送信すべきデータを含む送信信号を生成するとともに、当該使用下り無線リソースに基づいたタイミングで当該送信信号を送信ウェイト処理部123に入力する。これにより、通信端末2に送信すべきデータを含む送信信号が、当該通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースを用いて通信部13から送信される。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に割り当てた使用下り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、自装置宛てのデータの送信で使用される使用下り無線リソースを知ることができ、基地局1からの自装置宛てのデータを適切に受信することができる。
【0028】
またスケジューリング実行部122は、データの上り通信を行う通信端末2を決定するとともに、当該通信端末2に対して、当該通信端末2とのデータの上り通信で使用する上り無線リソース(以後、「使用上り無線リソース」と呼ぶ)を割り当てる上りスケジューリングを行う。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に割り当てた使用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、基地局1へのデータの送信に使用する使用上り無線リソースを知ることができ、当該使用上り無線リソースを用いて基地局1にデータを無線送信する。
【0029】
さらにスケジューリング実行部122は、通信端末2が、既知信号である後述のサウンディング基準信号(SRS)を送信する際に使用する上り無線リソース(以後、「使用SRS用上り無線リソース」と呼ぶ)を当該通信端末2に対して割り当てる。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に対して割り当てた使用SRS用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、当該通信端末2は、基地局1へのSRSの送信に使用する使用SRS用上り無線リソースを知ることができ、当該使用SRS用上り無線リソースを用いて基地局1にSRSを無線送信する。
【0030】
補正値算出部126は、通信端末2から送信される、当該通信端末2と基地局1との間の下り通信品質を示す下り品質値に対する補正値を算出する。後述するように、通信端末2から通知される下り品質値(下り通信品質)の精度は十分ではないことから、補正値算出部126では、その下り品質値の補正に使用する補正値を算出する。各通信端末2は、基地局1から送信される既知信号に基づいて、基地局1との間の下り通信品質を求める。そして、各通信端末2は、求めた下り通信品質を示す下り品質値、具体的にはCQI(Channel Quality Indicator)を含む送信信号を基地局1に送信する。LTEにおいては、CQIの値として、“1”〜“15”の15種類の値が規定されている。CQIは、その値が大きいほど、通信品質が良いことを示している。基地局1では、補正値算出部126が、通信端末2から通知されるCQIに対する補正値を算出する。補正値算出部126で求められた補正値で補正されたCQIは、MCS決定部125でのMCSの決定に使用されたり、スケジューリング実行部122での下りスケジューリングで使用されたりする。補正値算出部126の動作について後で詳細に説明する。
【0031】
<TDDフレームの構成>
次に基地局1と通信端末2との間で使用されるTDDフレーム300について説明する。TDDフレーム300は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される。基地局1は、TDDフレーム300から、各通信端末2に対して割り当てる使用上り無線リソース、使用下り無線リソース及び使用SRS用上り無線リソースを決定する。
【0032】
図3はTDDフレーム300の構成を示す図である。図3に示されるように、TDDフレーム300は、2つのハーフフレーム301で構成されている。各ハーフフレーム301は、5個のサブフレーム302で構成されている。つまり、TDDフレーム300は10個のサブフレーム302で構成されている。サブフレーム302の時間長は1msである。以後、TDDフレーム300を構成する10個のサブフレーム302を、先頭から順に第0〜第9サブフレーム302とそれぞれ呼ぶことがある。
【0033】
各サブフレーム302は、時間方向に2つのスロット303を含んで構成されている。各スロット303は、7個のシンボル期間304で構成されている。したがって、各サブフレーム302は、時間方向に14個のシンボル期間304を含んでいる。このシンボル期間304は、OFDMA方式の下り通信では、OFDMシンボルの1シンボル期間となり、SC−FDMA方式の上り通信では、DFTS(Discrete Fourier Transform Spread)−OFDMシンボルの1シンボル期間となる。
【0034】
以上のように構成されるTDDフレーム300には、上り通信専用のサブフレーム302と下り通信専用のサブフレーム302とが含められる。以後、上り通信専用のサブフレーム302を「上りサブフレーム302」と呼び、下り通信専用のサブフレーム302を「下りサブフレーム302」と呼ぶ。通信端末2は、上りサブフレーム302で基地局1にデータを送信し、基地局1は、下りサブフレーム302で通信端末2にデータを送信する。
【0035】
LTEでは、TDDフレーム300において、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、時間方向に7シンボル期間304(1スロット303)を含む領域(無線リソース)が「リソースブロック(RB)」と呼ばれている。リソースブロックには、12個のサブキャリアが含まれる。スケジューリング実行部122は、通信端末2に対して使用上り無線リソースを割り当てる場合、あるいは通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てる場合には、時間方向においては連続する2つのリソースブロック単位、つまり1つのサブフレーム302単位で、周波数方向においては1つのリソースブロック単位で、当該通信端末2に対して使用上り無線リソースあるいは使用下り無線リソースを割り当てる。以後、説明の便宜上、「RB」と言えば、周波数方向と時間方向で特定される本来の意味のリソースブロックを示すのではなく、リソースブロックの周波数帯域だけを示すものとする。
【0036】
また、LTEでは、TDDフレーム300の構成については、上りサブフレーム302と下りサブフレーム302の組み合わせが異なる7種類の構成が規定されている。LTEでは、0番〜6番までのTDDフレーム300の構成が規定されている。
【0037】
図4は、1番の構成を有するTDDフレーム300の構成を示す図である。図4では、「D」で示されるサブフレーム302は、下りサブフレーム302を意味し、「U」で示されるサブフレーム302は、上りサブフレーム302を意味している。また、「S」で示されるサブフレーム302は、無線通信システム100において、下り通信から上り通信への切り替えが行われるサブフレーム302を意味している。このサブフレーム302を「スペシャルサブフレーム302」と呼ぶ。
【0038】
図4に示されるように、1番の構成を有するTDDフレーム300では、第0,第4,第5及び第9サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2,第3,第7,第8サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1及び第6サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。本実施の形態に係る無線通信システム100では、例えば、1番の構成を有するTDDフレーム300が使用されるものとする。
【0039】
図4に示されるように、スペシャルサブフレーム302は、時間方向に、下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351と、ガードタイム(GP)350と、上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352とを含んでいる。ガードタイム350は、下り通信から上り通信に切り替えるために必要な無信号期間であって、通信には使用されない。
【0040】
LTEでは、下りパイロットタイムスロット351、ガードタイム350及び上りパイロットタイムスロット352の時間長の組み合わせについて、複数種類の組み合わせが規定されている。図4の例では、下りパイロットタイムスロット351の時間長は11シンボル期間304に設定されており、上りパイロットタイムスロット352の時間長は2シンボル期間304に設定されている。
【0041】
本実施の形態に係る無線通信システム100では、下りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の下りパイロットタイムスロット351においても下り通信を行うことが可能である。また、本無線通信システム100では、上りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352においても上り通信を行うことが可能である。
【0042】
本実施の形態では、基地局1は、下りパイロットタイムスロット351の各シンボル期間304においてデータを通信端末2に送信する。また、各通信端末2は、上りパイロットタイムスロット352の2つのシンボル期間304のうちのどちらか一方、あるいは両方においてSRSと呼ばれる既知信号を送信する。SRSは、複数のサブキャリアを変調する複数の複素シンボルで構成されている。本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352において送信されるSRSを、送信ウェイトを算出するために使用する。つまり、基地局1の通信部13は、通信端末2が上りパイロットタイムスロット352で送信するSRSに基づいてアレイアンテナ110の送信指向性の制御を行うことが可能となっている。以後、アレイアンテナ110の送信指向性の制御を「アレイ送信制御」と呼ぶ。
【0043】
なお、SRSは、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304においても送信可能である。つまり、通信端末2は、上りサブフレーム302において、最後のシンボル期間304を除く各シンボル期間304ではデータを送信可能であり、最後のシンボル期間304ではSRSを送信可能である。アレイ送信制御には、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304で送信されるSRSを使用することも可能であるが、本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352で送信されるSRSを使用するものとする。
【0044】
以後、特に断らない限り、SRSと言えば、上りパイロットタイムスロット352を使用して送信されるSRSを意味するものとする。また、通信端末2がSRSを送信することが可能な上りパイロットタイムスロット352に含まれる前方のシンボル期間304及び後方のシンボル期間304を「第1SRS用上り通信期間370a」及び「第2SRS用上り通信期間370b」とそれぞれ呼ぶ。また、第1SRS用上り通信期間370aと第2SRS用上り通信期間370bを特に区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS用上り通信期間」と呼ぶ。
【0045】
ここで、スペシャルサブフレーム302の第1SRS用上り通信期間370aの先頭から、その次のスペシャルサブフレーム302の第1SRS用上り通信期間370aの先頭までの期間を「単位期間360」と呼ぶ。通信端末2に対する使用下り無線リソース等の無線リソースの割り当ては、この単位期間360が基準となる。本無線通信システム100では、単位期間360が繰り返し現れることになる。
【0046】
本実施の形態では、基地局1と通信する各通信端末2は、スケジューリング実行部122による使用SRS用上り無線リソースの割り当てによって、例えば、1つの単位期間360ごとに少なくとも1回SRSを送信する。つまり、基地局1と通信する各通信端末2は、各単位期間360において、当該単位期間360に含まれる第1SRS用上り通信期間370a及び第2SRS用上り通信期間370bのうちのどちらか一方、あるいは両方においてSRSを送信する。
【0047】
<SRS送信可能帯域の周波数ホッピング>
本無線通信システム100では、通信端末2がSRSの送信に使用可能な周波数帯域450(以後、「SRS送信可能帯域450」と呼ぶ)が、1つの単位期間360ごとに周波数ホッピングするようになっている。図5はSRS送信可能帯域450が周波数ホッピングする様子を示す図である。
【0048】
図5に示されるように、SRS送信可能帯域450は、1つの単位期間360ごとに、システム帯域400において高周波側及び低周波側に交互に寄せて配置されるようになっている。したがって、各単位期間360においては、システム帯域400における高周波側端部あるいは低周波側端部がSRSの送信に使用することができない帯域となっている。以後、この帯域を「SRS送信不可帯域460」と呼ぶ。各基地局1は、SRS送信不可帯域460に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースを使用SRS用上り無線リソースとして通信端末2に割り当てることはできない。
【0049】
なお、SRS送信不可帯域460は各基地局1において同一である。したがって、各単位期間360において、ある基地局1が通信端末2に対してSRSの送信用として割り当てることができないSRS送信不可帯域460と、その基地局1の周辺に位置する周辺基地局1が通信端末2に対してSRSの送信用として割り当てることができないSRS送信不可帯域460とは一致している。
【0050】
本実施の形態のように、システム帯域幅が10MHzの場合には、システム帯域400には、50個のRBが含まれる。この場合、SRS送信可能帯域450の帯域幅は、40個のRB分の周波数帯域幅となり、SRS送信不可帯域の帯域幅は10個のRB分の周波数帯域幅となる。以後、x個のRB分の周波数帯域幅を「xRB」と呼ぶ。
【0051】
<SRSの構成>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、“transmissionComb”と呼ばれるパラメータkTCで識別される2種類のSRSが規定されている。各通信端末2は、この2種類のSRSのうちのどちらか一方のSRSを、第1SRS用上り通信期間370a及び第2SRS用上り通信期間370bの少なくとも一方で送信する。
【0052】
パラメータkTCは“0”あるいは“1”の値をとることが可能である。パラメータkTC=0で特定されるSRS(以後、「SRS0」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、連続的に配置されているのではなく、櫛歯状に配置されている。言い換えれば、SRS0のキャリア周波数は周波数方向において櫛歯状に配置されている。同様にして、パラメータkTC=1で特定されるSRS(以後、「SRS1」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において櫛歯状に配置されている。そして、SRS0とSRS1とが同じ周波数帯域で送信される場合には、当該SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0と、当該SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において交互に配置される。したがって、SRS0のキャリア周波数とSRS1のキャリア周波数とは周波数方向において互いに重なることはない。
【0053】
図6は、ある周波数帯域470において、SRS0とSRS1との両方が送信される様子を示している。図6に示されるように、SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。同様に、SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。そして、同じ周波数帯域470に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは、周波数方向において交互に配置されている。
【0054】
このように、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する複数のサブキャリアは周波数方向において櫛歯状に配置されていることから、当該通信端末2がSRSの送信に使用する周波数帯域での複数のサブキャリアの半分がSRSの送信に使用される。そして、同じ周波数帯域に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは交互に配置されることから、SRS0を送信する通信端末2と、SRS1を送信する通信端末2とは、同じSRS用上り通信期間において同じ周波数帯域を使用することができる。基地局1側から見れば、基地局1は、同じSRS用上り通信期間において同じ周波数帯域で送信されるSRS0及びSRS1を区別することができる。
【0055】
LTEの規格上では、各通信端末2に、第1SRS用上り通信期間370aにおいてSRS1を送信させることは可能であるが、本実施の形態では、第1SRS用上り通信期間370aにおいて各通信端末2にSRS1を送信させないようになっている。
【0056】
以後、第1SRS用上り通信期間370aと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「第1SRS用上り無線リソース500a」と呼ぶ。また、第2SRS用上り通信期間370bと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「第2SRS用上り無線リソース500b」と呼ぶ。そして、第2SRS用上り通信期間370bと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS1の送信にすることが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特性される上り無線リソースを「第3SRS用上り無線リソース500c」と呼ぶ。
【0057】
図7は、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500cを示す図である。図7に示されるように、同一の単位期間360に含まれる、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500cは、時間方向及び周波数方向の少なくとも一方で互いに異なっている。以後、これらの上り無線リソースを区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS用上り無線リソース」と呼ぶ。
【0058】
<SRSの送信周波数帯域の周波数ホッピング>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、SRSの送信周波数帯域を、SRS送信可能帯域450内において周波数ホッピングさせることができる。また、本無線通信システム100では、SRSの送信周波数帯域幅は変更可能となっている。本無線通信システム100では、SRSの送信周波数帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、例えば、40RB、20RB及び4RBの3種類の帯域幅が定められている。
【0059】
図8は、端末番号1の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480aと端末番号2の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480bとがSRS送信可能帯域450内で周波数ホッピングする様子の一例を示す図である。図8には連続する複数の単位期間360における各サブフレーム302が示されている。図8では横方向が時間方向を示し、縦方向が周波数方向を示している。また図8の一番左に示されている0〜49の数字は、周波数方向に並ぶ50個のRBの番号を示している。RBの番号が大きいほど、当該RBが大きくなっている。また図8に示される「SP」はスペシャルサブフレーム302を意味し、「Up」は上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352を意味し、「Dw」は下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351を意味している。また、図8に示される「UL」及び「DL」は、上りサブフレーム302及び下りサブフレーム302をそれぞれ意味している。
【0060】
図8の例では、端末番号1及び2の通信端末2のそれぞれは、各単位期間360において1回SRSを送信している。また、端末番号1及び2の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅のそれぞれは20RBに設定されている。図8の例では、端末番号1の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480aと、端末番号2の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480bとは、1つの単位期間360ごとに、SRS送信可能帯域450において低周波側及び高周波側に交互に寄せて配置されている。
【0061】
より詳細には、送信周波数帯域480aは、SRS送信可能帯域450が高周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において低周波側に寄せて配置され、SRS送信可能帯域450が低周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において高周波側に寄せて配置されている。これにより、送信周波数帯域480aは、システム帯域の中央部における30RBの周波数帯域(10番〜39番のRB)内において周波数ホッピングする。したがって、システム帯域の低周波側の10RBの端部及び高周波側の10RBの端部のそれぞれでは、端末番号1の通信端末2からSRSが送信されない。
【0062】
これに対して、送信周波数帯域480bは、SRS送信可能帯域450が高周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において高周波側に寄せて配置され、SRS送信可能帯域450が低周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において低周波側に寄せて配置されている。これにより、送信周波数帯域480bは、システム帯域の低周波側及び高周波側に交互に寄せて配置される。したがって、システム帯域の中央部の10RBの周波数帯域(20番〜29番のRB)では、端末番号2の通信端末2からSRSが送信されない。
【0063】
本実施の形態に係るスケジューリング実行部122は、基地局1が通信する各通信端末2についてのSRSの送信態様を決定する。具体的には、スケジューリング実行部122は、各通信端末2について、使用するSRS用上り通信期間、SRSパラメータkTCの値、SRSの送信周波数帯域幅、SRSの送信周波数帯域の周波数ホッピングの態様などを決定する。これにより、基地局1が通信する各通信端末2に対して使用SRS用上り無線リソースが割り当てられる。
【0064】
送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に対して割り当てた使用SRS用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データ、言い換えれば、スケジューリング実行部122で決定された、当該通信端末2が送信するSRSの送信態様を当該通信端末2に通知するための制御データ(以後、「SRS制御データ」と呼ぶ)を含む送信信号を生成する。この送信信号は、下りサブフレーム302が使用されて通信部13から当該通信端末2に送信される。これにより、各通信端末2にはSRS制御データが送信され、各通信端末2は、SRSを送信する際に使用する上り無線リソースを知ることができる。言い換えれば、各通信端末2は、自身が送信するSRSの送信態様を知ることができる。各通信端末2は、基地局1から通知された使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSを送信する。
【0065】
なお、SRS制御データには、SRSの送信開始を指示するための送信開始データあるいはSRSの送信停止を指示するための送信停止データも含められる。SRSを送信していない通信端末2が、送信開始データを含むSRS制御データを受信すると、当該SRS制御データで通知される使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSの送信を開始する。また、SRSを送信している通信端末2が、送信停止データを含むSRS制御データを受信すると、SRSの送信を停止する。通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースを変更する際には、新たな使用SRS用上り無線リソースを通知するためのSRS制御データが当該通信端末2に通知される。SRS制御データは、LTEでは、“RRCConnectionReconfiguration message”と呼ばれている。
【0066】
<アレイ送信制御について>
本実施の形態に係るアレイ送信制御では、通信部13が通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際には、当該使用下り無線リソースの周波数帯域で当該通信端末2が送信するSRSに基づいて送信ウェイトが求められる。
【0067】
また、本実施の形態に係るアレイ送信制御では、ヌルステアリング及びビームフォーミングが同時に行われる。通信部13では、例えば、RLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズム等の逐次更新アルゴリズムを用いて受信ウェイトを複数回更新し、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求めることによって、ヌルステアリングとビームフォーミングの両方を同時に行う。
【0068】
また、本実施の形態に係るアレイ送信制御では、送信ウェイトが、例えば、1つのRBごとに求められる。例えば、通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースの周波数帯域が4つのRBで構成されているとすると、当該通信端末2についてのアレイ送信制御では、当該4つのRBのそれぞれについて送信ウェイトが求められる。使用下り無線リソースの周波数帯域に含まれるある1つのRBを用いて通信端末2に送信される信号に対して適用する送信ウェイトは、当該1つのRBで当該通信端末2が送信するSRSを構成する複数の複素シンボルに基づいて受信ウェイトが複数回更新されて、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトが求められる。
【0069】
<下り無線リソースとSRS用上り無線リソースとの対応付け>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、下り無線リソースとSRS用上り無線リソースとに関して、SRSに基づいたヌルステアリング及びビームフォーミングのための対応付けが定められている。各基地局1が、この対応付けに基づいて、SRSを送信する通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てるとともにアレイ送信制御を行うことによって、各基地局1はヌルステアリング及びビームフォーミングを適切に行うことが可能となる。以後、この対応付けを「アレイ制御用リソース対応付け」と呼ぶ。以下に、アレイ制御用リソース対応付けについて説明する。
【0070】
なお、以後、単位期間360に含まれる2つの下りサブフレーム302について、先の下りサブフレーム302を「第1下りサブフレーム302a」と呼び、後の下りサブフレーム302を「第2下りサブフレーム302b」と呼ぶ。また、単位期間360に含まれる、スペシャルサブフレーム302における下りパイロットタイムスロット351を含む部分については、下りサブフレーム302ではないが、便宜上、「第3下りサブフレーム302c」と呼ぶ。以後、下りサブフレーム302には、この第3下りサブフレーム302cも含まれるものとする。また、説明の対象の単位期間360を「対象単位期間360」と呼び、説明の対象の通信端末2を「対象通信端末2」と呼ぶ。
【0071】
図9は、対象単位期間360での下り無線リソースと、SRS用上り無線リソースとの対応付けを説明するための図である。以下の説明は各単位期間360について言えることである。
【0072】
本実施の形態では、対象単位期間360の第1下りサブフレーム302aのうち、SRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600aに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360の第1SRS用上り無線リソース500aにおける、当該下り無線リソースの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースと対応付けられる。つまり、対象単位期間360での下り無線リソース600aに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360での第1SRS用上り無線リソース500aにおいて、当該下り無線リソースの周波数帯域と同じ周波数帯域を有する上り無線リソースと対応付けられる。
【0073】
また、対象単位期間360の第2下りサブフレーム302bのうち、SRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600bに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360の第2SRS用上り無線リソース500bにおける、当該下り無線リソースの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースと対応付けられる。
【0074】
そして、対象単位期間360の第3下りサブフレーム302cのうち、SRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600cに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360の第3SRS用上り無線リソース500cにおける、当該下り無線リソースの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースと対応付けられる。
【0075】
各基地局1では、このようなアレイ制御用リソース対応付けに基づいて、通信端末2に対して使用下り無線リソースが割り当てられるとともにアレイ送信制御が行われる。
【0076】
具体的には、スケジューリング実行部122は、対象単位期間360の下り無線リソースから対象通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てる際には、対象通信端末2が当該使用下り無線リソースに対応付けられた上り無線リソースを用いてSRSを送信しているような当該使用下り無線リソース(以後、「SRS対応使用下り無線リソース」と呼ぶ)だけをできる限り割り当てるようにする。
【0077】
ただし、対象単位期間360において対象通信端末2と下り通信を行う際に、SRS対応使用下り無線リソースだけでは足り無い場合には、スケジューリング実行部122は、対象通信端末2に対して、それに対応付けられた上り無線リソースを用いて対象通信端末2がSRSを送信していないような使用下り無線リソースあるいはSRS送信不可帯域460の少なくとも一部を周波数方向に含む使用下り無線リソース(以後、両方の当該使用下り無線リソースを総称して「SRS非対応使用下り無線リソース」と呼ぶ)を対象単位期間360の下り無線リソースから割り当てる。言い換えれば、スケジューリング実行部122は、対象単位期間360において対象通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない下り無線リソースを使用下り無線リソースとして割り当てる。
【0078】
また、各基地局1では、通信部13は、スケジューリング実行部122において対象通信端末2に割り当てられたSRS対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う場合には、当該SRS対応使用下り無線リソースに対応付けられた上り無線リソースを用いて対象通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0079】
一方で、各基地局1では、通信部13は、スケジューリング実行部122において対象通信端末2に割り当てられたSRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う場合に、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域を用いて対象通信端末2がSRSを送信しているときには、当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行う。また、各基地局1では、通信部13は、スケジューリング実行部122において対象通信端末2に割り当てられたSRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う場合に、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域を用いて対象通信端末2がSRSを送信していないときには、アレイ送信制御を行わない。つまり、このときには、通信部13はオムニ送信を行う。
【0080】
上述のように、SRSの送信周波数帯域は、SRS送信可能帯域450内において周波数ホッピングすることから(図8参照)、対象通信端末2に対して、対象単位期間360の下り無線リソースからSRS非対応使用下り無線リソースを割り当てる場合に、対象通信端末2は、対象単位期間360の前において、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域を用いてSRSを送信していることがある。このような場合には、通信部13は当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0081】
図10は、対象単位期間360での端末番号1〜6の通信端末2に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。図10の例では、端末番号1の通信端末2に対して、第1SRS用上り無線リソース500aから使用SRS用上り無線リソース611が割り当てられており、端末番号2の通信端末2に対して、第1SRS用上り無線リソース500aから使用SRS用上り無線リソース612が割り当てられている。また、端末番号3の通信端末2に対して、第2SRS用上り無線リソース500bから使用SRS用上り無線リソース613が割り当てられており、端末番号4の通信端末2に対して、第2SRS用上り無線リソース500bから使用SRS用上り無線リソース614が割り当てられている。そして、端末番号5の通信端末2に対して、第3SRS用上り無線リソース500cから使用SRS用上り無線リソース615が割り当てられており、端末番号6の通信端末2に対して、第3SRS用上り無線リソース500cから使用SRS用上り無線リソース616が割り当てられている。
【0082】
また図10の例においては、端末番号2の通信端末2に対しては、使用SRS用上り無線リソース612と同じ周波数帯域のSRS対応使用下り無線リソース602aが割り当てられており、SRS非対応使用下り無線リソースは割り当てられていない。端末番号4の通信端末2に対しては、使用SRS用上り無線リソース614の周波数帯域に含まれる周波数帯域を有するSRS対応使用下り無線リソース604aが割り当てられており、SRS非対応使用下り無線リソースは割り当てられていない。そして、端末番号5の通信端末2に対しては、使用SRS用上り無線リソース615と同じ周波数帯域のSRS対応使用下り無線リソース605aが割り当てられており、SRS非対応使用下り無線リソースは割り当てられていない。
【0083】
これに対して、端末番号1の通信端末2に対しては、使用SRS用上り無線リソース611と同じ周波数帯域のSRS対応使用下り無線リソース601aだけではなく、SRS非対応使用下り無線リソース601bが割り当てられている。端末番号3の通信端末2に対しては、使用SRS用上り無線リソース613と同じ周波数帯域のSRS対応使用下り無線リソース603aだけではなく、SRS非対応使用下り無線リソース603bが割り当てられている。そして、端末番号6の通信端末2に対しては、使用SRS用上り無線リソース616と同じ周波数帯域のSRS対応使用下り無線リソース606aだけではなく、SRS非対応使用下り無線リソース606bが割り当てられている。
【0084】
SRS非対応使用下り無線リソース603b及びSRS非対応使用下り無線リソース606bの周波数帯域は、対象単位期間360においてSRSが送信されないSRS送信不可帯域460に含まれている。端末番号1の通信端末2に割り当てられるSRS非対応使用下り無線リソース601bの周波数帯域は、端末番号4の通信端末2に割り当てられてい使用SRS用上り無線リソース614の周波数帯域に含まれている。
【0085】
図10に示されるように、本実施の形態では、対象単位期間360において、通信端末2に対してSRS対応使用下り無線リソースとSRS非対応使用下り無線リソースが割り当てられる際には、それらは互いに異なった下りサブフレーム302から割り当てられるようになっている。したがって、一つの下りサブフレーム302においては、同一の通信端末2に対して、SRS対応使用下り無線リソースとSRS非対応使用下り無線リソースの両方が割り当てられることはない。つまり、スケジューリング実行部122は、各下りサブフレーム302において、一つの通信端末2に対してはSRS対応使用下り無線リソース及びSRS非対応使用下り無線リソースのどちらか一方だけを割り当てるようになっている。
【0086】
本無線通信システム100では、各基地局1が通信端末2との下り通信にSRS対応使用下り無線リソースを用いることによって、各基地局1は適切にビームフォーミング及びヌルステアリングを行うことができる。以下にこの点について説明する。
【0087】
図11,12は、基地局1aとその周辺に位置する基地局1bがSRS対応使用下り無線リソースを用いることによって、基地局1a,1bのそれぞれにおいてビームフォーミング及びヌルステアリングが適切に行われる点を説明するための図である。図11には、対象単位期間360における、基地局1a,1bでのSRS対応使用下り無線リソースの割り当て例が示されている。また図12には、対象単位期間360における、基地局1a,1bでの送信指向性に関するビーム及びヌルが示されている。
【0088】
図11,12の例では、対象単位期間360において、基地局1aは、SRS対応使用下り無線リソース650aを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行っており、基地局1bは、SRS対応使用下り無線リソース650aと同じSRS対応使用下り無線リソース650bを用いて端末番号5の通信端末2と下り通信を行っている。したがって、基地局1aが端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際に、その周辺に位置する基地局1bと下り通信する端末番号5の通信端末2に対して干渉を与える可能性がある。同様に、基地局1bが端末番号5の通信端末2と下り通信を行う際に、その周辺に位置する基地局1aが下り通信する端末番号1の通信端末2に対して干渉を与える可能性がある。
【0089】
また図11,12の例では、SRS対応使用下り無線リソース650aは、第1下りサブフレーム302aにおける、対象単位期間360でのSRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600aから、端末番号1の通信端末2に対して割り当てられている。同様に、SRS対応使用下り無線リソース650bは、第1下りサブフレーム302aにおける、対象単位期間360でのSRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600aから、端末番号5の通信端末2に対して割り当てられている。
【0090】
基地局1aはSRS対応使用下り無線リソース650aを用いて下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650aに対応付けられた上り無線リソース、つまり、対象単位期間360での第1SRS用上り無線リソース500aにおける、SRS対応使用下り無線リソース650aの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソース660aを用いて端末番号1の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。また、基地局1bはSRS対応使用下り無線リソース650bを用いて下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650bに対応付けられた上り無線リソース、つまり、対象単位期間360での第1SRS用上り無線リソース500aにおける、SRS対応使用下り無線リソース650bの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソース660bを用いて端末番号5の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0091】
このように、基地局1aは、SRS対応使用下り無線リソース650aを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650aの周波数帯域と一致する周波数帯域で端末番号1の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行っている。したがって、図12に示されるように、基地局1aでの送信指向性に関するビーム700aは、通信対象の端末番号1の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1aでは適切にビームフォーミングが行われる。
【0092】
同様に、基地局1bは、SRS対応使用下り無線リソース650bを用いて端末番号5の通信端末2と下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650bの周波数帯域と一致する周波数帯域で端末番号5の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行っている。したがって、基地局1bでの送信指向性に関するビーム700bは、通信対象の端末番号5の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1bでは適切にビームフォーミングが行われる。
【0093】
また、本例のように、基地局1aと、その周辺に位置する基地局1bとが、同じSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際には、基地局1aがアレイ送信制御を行う際に使用するSRSの送信に使用される上り無線リソース660aと、基地局1bがアレイ送信制御を行う際に使用するSRSの送信に使用される上り無線リソース660bとは一致するようになる。したがって、基地局1aが端末番号1の通信端末2から上り無線リソース660aで受信するSRSには、基地局1bが通信する端末番号5の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。よって、基地局1aが、上り無線リソース660aにおいて端末番号1の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、SRS対応使用下り無線リソース650aを用いて端末番号1の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、図12に示されるように、基地局1aでの送信指向性に関するヌル701aは、干渉を与えたくない、基地局1bと通信する端末番号5の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1aでは適切にヌルステアリングが行われる。
【0094】
基地局1b側から見れば、基地局1bが端末番号5の通信端末2から上り無線リソース660bで受信するSRSには、基地局1aが通信する端末番号1の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。よって、基地局1bが、上り無線リソース660bにおいて端末番号5の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、SRS対応使用下り無線リソース650bを用いて端末番号5の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、図12に示されるように、基地局1bでの送信指向性に関するヌル701bは、干渉を与えたくない、基地局1aと通信する端末番号1の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1bでは適切にヌルステアリングが行われる。
【0095】
このように、基地局1とその周辺に位置する周辺基地局1とが、同じSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う場合に、当該基地局1及び当該周辺基地局1のそれぞれにおいて適切にビームフォーミング及びヌルステアリングが行われるようになる。 これに対して、基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合には、ビームフォーミングは適切に行われることはあっても、ヌルステアリングを適切に行うことができない。
【0096】
基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合であって、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域と同じ周波数帯域で当該通信端末2がSRSを送信している場合には、基地局1は当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行う。したがって、この場合には、基地局1のアレイアンテナ110の送信指向性に関するビームは当該通信端末2に向くようになって、SRS対応使用下り無線リソースを用いる場合と同様にビームフォーミングを適切に行うことができる。
【0097】
一方で、基地局1とその周辺に位置する周辺基地局1とが同じ使用下り無線リソースを用いて下り通信する場合であって、基地局1ではSRS非対応使用下り無線リソースが使用されるとともに、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域と同じ周波数帯域において基地局1での通信対象の通信端末2がSRSを送信し、周辺基地局1ではSRS対応使用下り無線リソースが使用される場合には、上述の説明から理解できるように、基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSと、周辺基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSとは、互いに異なった上り無線リソースを用いて送信されることになる。よって、基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSには、周辺基地局1が通信する通信端末2からのSRSは干渉波成分として含まれず、周辺基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSには、基地局1が通信する通信端末2からのSRSは干渉波成分として含まれないことになる。よって、基地局1はアレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを、周辺基地局1が通信する通信端末2に向けることはできず、周辺基地局1はアレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを、基地局1が通信する通信端末2に向けることはできない。その結果、基地局1及び周辺基地局1のそれぞれにおいて適切にヌルステアリングを行うことができなくなる。
【0098】
このように、基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合には、ヌルステアリングを適切に行うことができないことから、上述のように、各基地局1では、通信端末2に対してできる限りSRS対応使用下り無線リソースを割り当てるようにしている。
【0099】
<基地局が通信端末からのCQIを受信する動作>
図13は、基地局1が対象通信端末2からのCQIを受信する際の無線通信システム100の動作の一例を示す図である。本実施の形態に係る基地局1では、通信部13が、各通信端末2に対して、CQIの送信を指示するCQI送信指示信号を定期的に送信する。CQI送信指示信号の送信周期801は、例えば10msである。図13の例では、基地局1は、対象通信端末2に対して、各TDDフレーム300の第4サブフレーム302においてCQI送信指示信号を送信している。
【0100】
各通信端末2は、基地局1からCQI送信指示信号を受信すると、それを受信したサブフレーム302において基地局1が送信するリファレンス信号に基づいて、基地局1との間の下り通信品質、例えば、SINR(信号対干渉雑音電力比:Signal to Interference plus Noise power Ratio)を求める。リファレンス信号は既知信号であって、基地局1は、複数の通信端末2に対してリファレンス信号を同報送信する。したがって、基地局1の通信部13は、リファレンス信号を送信する際にはアレイ送信制御を行わずに、リファレンス信号をオムニ送信する。
【0101】
各通信端末2は、基地局1との間の下り通信品質を求めると、当該下り通信品質を示すCQIを生成する。そして、各通信端末2は、CQI送信指示信号を受信したサブフレーム302から、例えば4つ後のサブフレーム302において、生成したCQIを含む送信信号を基地局1に送信する。図13の例では、対象通信端末2は、各TDDフレーム300の第8サブフレーム302においてCQIを送信している。
【0102】
なお、通信端末2では、基地局1との間の下り通信品質は、1つのRBごとに求められる。したがって、通信端末2ではCQIも1つのRBごとに生成される。通信端末2は、システム帯域400に含まれる各RBについてのCQIを基地局1に通知する。
【0103】
基地局1は、通信端末2からCQIを受信すると、それを受信したサブフレーム302の末尾から、遅延時間800だけ後のサブフレーム302以降の下り通信に関する処理で、受信したCQIを使用する。この下り通信に関する処理には、例えば、下りサブフレーム302についての下りスケジューリングや、下りサブフレーム302で送信される送信信号に適用されるMCSの決定処理などがある。遅延時間800は例えば5msである。
【0104】
そして、基地局1は、通信端末2から新たなCQIを受信すると、それを受信したサブフレーム302の末尾から、遅延時間800だけ後のサブフレーム302以降の下り通信に関する処理で、新たに受信したCQIを使用する。
【0105】
本実施の形態では、通信端末2からは10msごとにCQIが送信されることから、基地局1は、CQIを受信したサブフレーム302の末尾から、遅延時間800だけ後のサブフレーム302(図13の例では第4サブフレーム302)以降の10個のサブフレーム302の間での下り通信に関する処理で、受信したCQIを使用する。この10個のサブフレーム302の期間を「CQI適用期間」と呼ぶ。
【0106】
このように、通信端末2がCQIを生成してから、基地局1において当該CQIが下りスケジューリングやMCSの決定に反映されるまでには、ある程度の時間がかかることから、基地局1は、精度の悪化したCQIに基づいて下り通信に関する処理を行う可能性がある。
【0107】
そこで、本実施の形態では、後述するように、通信端末2から受信するCQIを補正して、当該CQIの精度を高めている。
【0108】
<基地局が通信端末からのACK/NACK信号を受信する動作>
本実施の形態では、各通信端末2は、下りサブフレーム302を用いて基地局1が送信する送信信号を受信すると、当該送信信号に含まれるデータを適切に受信したか否かを示す応答信号であるACK/NACK信号を、下りサブフレーム302単位で基地局1に通知する。つまり、各通信端末2は、一つの下りサブフレーム302を用いて基地局1が送信する送信信号に対して、一つのACK/NACK信号を送信する。ACK/NACK信号には、データを適切に受信したことを示すACK信号あるいはデータを適切に受信できなかったことを示すNACK信号のどちらか一方が含まれる。
【0109】
図14は、基地局1が対象通信端末2からのACK/NACK信号を受信する際の無線通信システム100の動作の一例を示す図である。図14に示されるように、基地局1が第4サブフレーム302である下りサブフレーム302において、対象通信端末2に対してデータを送信すると、対象通信端末2は、当該データを適切に受信したか否かを示すACK/NACK信号を生成する。そして、対象通信端末2は、当該データを受信した下りサブフレーム302から、例えば4サブフレーム302後に、生成したACK/NACK信号を基地局1に送信する。
【0110】
基地局1は、対象通信端末2からACK/NACK信号を受信すると、それを受信したサブフレーム302の末尾から、遅延時間810だけ後のサブフレーム302以降の下り通信に関する処理、例えば、下りスケジューリングや再送制御などに、受信したACK/NACK信号を使用する。遅延時間810は例えば5msである。
【0111】
このように、通信端末2がACK/NACK信号を生成してから、基地局1において当該ACK/NACK信号が下りスケジューリングや再送制御に反映されるまでには、ある程度の時間がかかる。
【0112】
<CQIに対する補正値の算出方法>
本実施の形態に係る補正値算出部126は、通信端末2から通知されるCQIに対する補正値を、当該通信端末2から送信されるACK/NACK信号に基づいて算出する。そして、基地局1は、補正値算出部126で補正値が算出されると、当該補正値を用いて通信端末2から通知されるCQIを補正し、補正後のCQIを用いて、下りスケジューリングや下り通信で使用するMCSの決定など、下り通信に関する処理を行う。
【0113】
また本実施の形態に係る補正値算出部126は、CQIに対する補正値として、SRS対応使用下り無線リソースに対応する第1補正値と、SRS非対応使用下り無線リソースに対応する第2補正値とを求める。そして、基地局1は、通信端末2から通知されるCQIを第1補正値で補正して得られる補正後のCQIが示す下り通信品質を、SRS対応使用下り無線リソースを用いて当該通信端末2と下り通信を行う際の下り通信品質として使用する。一方で、基地局1は、通信端末2から通知されるCQIを第2補正値で補正して得られる補正後のCQIが示す下り通信品質を、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて当該通信端末2と下り通信を行う際の下り通信品質として使用する。
【0114】
補正値算出部126では、通信端末2についての第1補正値は、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を当該通信端末2が適切に受信したか否かを示す、当該通信端末2からのACK/NACK信号に基づいて算出される。また、通信端末2に対する第2補正値は、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を当該通信端末2が適切に受信したか否かを示す、当該通信端末2からのACK/NACK信号に基づいて算出される。以下に、補正値算出部126の動作について詳細に説明する。
【0115】
なお、以後、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて通信端末2に送信する送信信号を当該通信端末2が適切に受信したか否かを示す、当該通信端末2からのACK/NACK信号を「SRS対応ACK/NACK信号」と呼ぶ。また、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて通信端末2に送信する送信信号を当該通信端末2が適切に受信したか否かを示す、当該通信端末2からのACK/NACK信号を「SRS非対応ACK/NACK信号」と呼ぶ。
【0116】
図15は通信部13が対象通信端末2からACK/NACK信号を受信した際の補正値算出部126の動作を示すフローチャートである。補正値算出部126は、通信部13が対象通信端末2からACK/NACK信号を受信するたびに、図15に示される処理を実行する。また、補正値算出部126は、通信中の各通信端末2について、図15に示される処理を実行する。
【0117】
本実施の形態では、補正値算出部126は、SRS対応ACK/NACK信号に基づいて、現在の第1補正値に対して第1調整値を加算あるいは減算するかを決定する。そして、補正値算出部126は、現在の第1補正値に対して第1調整値を加算あるいは減算することによって当該第1補正値を更新して、新たな第1補正値を算出する。
【0118】
同様に、補正値算出部126は、SRS非対応ACK/NACK信号に基づいて、現在の第2補正値に対して第2調整値を加算あるいは減算するかを決定する。そして、補正値算出部126は、現在の第2補正値に対して第2調整値を加算あるいは減算することによって当該第2補正値を更新して、新たな第2補正値を算出する。
【0119】
通信部13が対象通信端末2からのACK/NACK信号を受信し、当該ACK/NACK信号が受信データ取得部121で取得されると、図15に示されるように、ステップs1において、補正値算出部126は、当該ACK/NACK信号がSRS対応ACK/NACK信号及びSRS非対応ACK/NACK信号のどちらであるかを判定する。
【0120】
ステップs1において、通信部13で受信されたACK/NACK信号がSRS対応ACK/NACK信号であると判定されると、ステップs2において、補正値算出部126は、SRS対応ACK/NACK信号の受信回数X1に“1”を加算する。そして、ステップs3において、補正値算出部126は、受信されたSRS対応ACK/NACK信号にNACK信号が含まれているかを判定する。補正値算出部126は、受信されたSRS対応ACK/NACK信号にNACK信号が含まれていると判定すると、ステップs4において、SRS対応ACK/NACK信号に含まれるNACK信号の受信回数Y1に“1”を加算する。受信回数Y1は、SRS対応使用下り無線リソースを用いて基地局1から送信される送信信号についての対象通信端末2での受信エラー回数を示していると言える。
【0121】
一方で、ステップs3において、補正値算出部126は、受信されたSRS対応ACK/NACK信号にNACK信号が含まれていないと判定すると、後述のステップs8を実行する。
【0122】
ステップs4が実行されると、ステップs5において、補正値算出部126は、受信回数Y1が第1のしきい値TH1よりも大きいかを判定する。つまり、補正値算出部126は、SRS対応使用下り無線リソースを用いて基地局1から送信される送信信号についての対象通信端末2での受信エラー回数が第1のしきい値TH1よりも大きいかを判定する。そして、補正値算出部126は、受信回数Y1が第1のしきい値TH1よりも大きいと判定すると、ステップs6において、対象通信端末2での受信エラー率が大きいと判定して、対象通信端末2からのCQIに対する現在の第1補正値に対して第1調整値を減算する。つまり、補正値算出部126は、対象通信端末2についての受信エラー回数が第1のしきい値TH1よりも大きい場合には、SRS対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の実際の下り通信品質が、現在の第1補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質よりも悪いと判定して、現在の第1補正値に対して第1調整値を減算して、対象通信端末2からのCQIを小さくする。
【0123】
ステップs6で調整された第1補正値は、対象通信端末2からの最新のCQIに対して加算されて、当該CQIが補正される。補正後のCQIは、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の下り通信品質を示す下り品質値として、基地局1での下り通信に関する処理で使用される。
【0124】
一方で、ステップs5において、受信回数Y1が第1のしきい値TH1よりも大きくないと判定されると、補正値算出部126はステップs8を実行する。
【0125】
ステップs6が実行されると、ステップs7において、補正値算出部126は、受信回数X1,Y1を初期化して、それぞれを“0”に設定する。その後、補正値算出部126はステップs8を実行する。
【0126】
ステップs8においては、補正値算出部126は、SRS対応ACK/NACK信号の受信回数X1が第2のしきい値TH2(>TH1)よりも大きいかを判定する。ステップs8において、受信回数X1が第2のしきい値TH2よりも大きいと判定されると、ステップs9において、補正値算出部126は、対象通信端末2での受信エラー率が小さいと判定して、対象通信端末2からのCQIに対する第1補正値に対して第1調整値を加算する。つまり、補正値算出部126は、受信回数Y1が第1のしきい値TH1を超えることなく受信回数X1が第2のしきい値TH1よりも大きくなった場合には、SRS対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の実際の下り通信品質が、現在の第1補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質よりも良いと判定して、現在の第1補正値に対して第1調整値(>0)を加算して、対象通信端末2からのCQIを大きくする。
【0127】
ステップs9で調整された第1補正値は、対象通信端末2からの最新のCQIに対して加算されて、当該CQIが補正される。補正後のCQIは、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の下り通信品質を示す下り品質値として、基地局1での下り通信に関する処理で使用される。
【0128】
ステップs9が実行されると、ステップs10において、補正値算出部126は、受信回数X1,Y1を初期化して、それぞれを“0”に設定する。
【0129】
以上のようにして、SRS対応使用下り無線リソースに対応する第1補正値は、第1調整値が加算あるいは減算されることによって調整される。そして、第1補正値が調整されるたびに、調整後の第1補正値は、最新のCQIに対して加算されて、当該CQIが補正される。第1補正値で補正されたCQIは、それに対応する上述のCQI適用期間における下り通信に関する処理で使用される。
【0130】
上述のステップs1において、通信部13で受信されたACK/NACK信号がSRS非対応ACK/NACK信号であると判定されると、上述のステップs2〜s10と同様の処理が行われる。
【0131】
ステップs1において、通信部13で受信されたACK/NACK信号がSRS非対応ACK/NACK信号であると判定されると、ステップs12において、補正値算出部126は、SRS非対応ACK/NACK信号の受信回数X2に“1”を加算する。そして、ステップs13において、補正値算出部126は、受信されたSRS非対応ACK/NACK信号にNACK信号が含まれているかを判定する。補正値算出部126は、受信されたSRS非対応ACK/NACK信号にNACK信号が含まれていると判定すると、ステップs14において、SRS非対応ACK/NACK信号に含まれるNACK信号の受信回数Y2に“1”を加算する。受信回数Y2は、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて基地局1から送信される送信信号についての対象通信端末2での受信エラー回数を示している。
【0132】
一方で、ステップs13において、補正値算出部126は、受信されたSRS非対応ACK/NACK信号にNACK信号が含まれていないと判定すると、後述のステップs18を実行する。
【0133】
ステップs14が実行されると、ステップs15において、補正値算出部126は、受信回数Y2が第1のしきい値TH1よりも大きいかを判定する。つまり、補正値算出部126は、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて基地局1から送信される送信信号についての対象通信端末2での受信エラー回数が第1のしきい値TH1よりも大きいかを判定する。そして、補正値算出部126は、受信回数Y2が第1のしきい値TH1よりも大きいと判定すると、ステップs16において、対象通信端末2での受信エラー率が大きいと判定して、対象通信端末2からのCQIに対する第2補正値に対して第2調整値(>0)を減算する。つまり、補正値算出部126は、対象通信端末2についての受信エラー回数が第1のしきい値TH1よりも大きい場合には、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の実際の下り通信品質が、現在の第1補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質よりも悪いと判定して、現在の第1補正値に対して第1調整値を減算して、対象通信端末2からのCQIを小さくする。
【0134】
ステップs16で調整された第2補正値は、対象通信端末2からの最新のCQIに対して加算されて、当該CQIが補正される。補正後のCQIは、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の下り通信品質を示す下り品質値として、基地局1での下り通信に関する処理で使用される。
【0135】
一方で、ステップs15において、受信回数Y2が第1のしきい値TH1よりも大きくないと判定されると、補正値算出部126はステップs18を実行する。
【0136】
ステップs16が実行されると、ステップs17において、補正値算出部126は、受信回数X2,Y2を初期化して、それぞれを“0”に設定する。その後、補正値算出部126はステップs18を実行する。
【0137】
ステップs18においては、補正値算出部126は、SRS非対応ACK/NACK信号の受信回数X2が第2のしきい値TH2(>TH1)よりも大きいかを判定する。ステップs18において、受信回数X2が第2のしきい値TH2よりも大きいと判定されると、ステップs19において、補正値算出部126は、対象通信端末2での受信エラー率が小さいと判定して、対象通信端末2からのCQIに対する第2補正値に対して第2調整値を加算する。つまり、補正値算出部126は、受信回数Y2が第1のしきい値TH1を超えることなく受信回数X2が第2のしきい値TH1よりも大きくなった場合には、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の実際の下り通信品質が、現在の第2補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質よりも良いと判定して、現在の第2補正値に対して第2調整値を加算して、対象通信端末2からのCQIを大きくする。
【0138】
ステップs19で調整された第2補正値は、対象通信端末2からの最新のCQIに対して加算されて、当該CQIが補正される。補正後のCQIは、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の下り通信品質を示す下り品質値として、基地局1での下り通信に関する処理で使用される。
【0139】
ステップs19が実行されると、ステップs20において、補正値算出部126は、受信回数X2,Y2を初期化して、それぞれを“0”に設定する。
【0140】
以上のようにして、SRS非対応使用下り無線リソースに対応する第2補正値は、第2調整値が加算あるいは減算されることによって調整される。そして、第2補正値が調整されるたびに、調整後の第2補正値は、最新のCQIに対して加算されて、当該CQIが補正される。第2補正値で補正されたCQIは、それに対応するCQI適用期間における下り通信に関する処理で使用される。
【0141】
このように、本実施の形態では、対象通信端末2についての第1補正値は、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を対象通信端末2が適切に受信したか否かを示すACK/NACK信号(SRS対応ACK/NACK信号)に基づいて算出される。そして、対象通信端末2に対する第2補正値は、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を対象通信端末2が適切に受信したか否かを示すACK/NACK信号(SRS非対応ACK/NACK信号)に基づいて算出される。
【0142】
ここで、上述のように、基地局1とその周辺基地局1とが、同じSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う場合には、当該基地局1及び当該周辺基地局1のそれぞれにおいて適切にビームフォーミング及びヌルステアリングが行われるようになる。そして、各基地局1は、通信端末2に対してSRS対応使用下り無線リソースをできる限り割り当てるようにすることから、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて通信端末2と下り通信を行う場合には、下り通信を行う周辺基地局1が当該通信端末2に対してヌルを向けてくれる可能性が高くなる。つまり、通信端末2は、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を受信する際には、周辺からの干渉を受けにくくなる。したがって、通信端末2は、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を適切に受信し易くなる。よって、通信端末2では、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号についての受信エラー率が小さくなる。
【0143】
一方で、基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合には、上述の説明から理解できるように、下り通信を行う周辺基地局1が、当該通信端末2にヌルを向ける可能性は低い。つまり、通信端末2は、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を受信する際には、周辺からの干渉を受けやすくなる。したがって、通信端末2は、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を受信し難くなる。よって、通信端末2では、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号についての受信エラー率が大きくなる。
【0144】
このように、通信端末2では、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号についての受信エラー率が小さくなる傾向にあり、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号についての受信エラー率が大きくなる傾向にある。したがって、対象通信端末2に関して、SRS対応使用下り無線リソースに対応する第1補正値と、SRS非対応使用下り無線リソースに対応する第2補正値との関係については、例えば、第1補正値が“+4”、第2補正値が“+1”といったように、第1補正値が第2補正値よりも大きくなる傾向にある。
【0145】
なお、第1補正値を調整するための第1調整値と、第2補正値を補正するための第2調整値とは、同じであっても良いし、異なっていても良いが、第2調整値を第1調整値よりも小さくすることがより好ましい。以下にその理由を説明する。
【0146】
基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合には、下り通信を行う周辺基地局1が、当該通信端末2にヌルを向ける可能性は低いことから、当該通信端末2は、基地局1からの信号を受信する際に周辺からの干渉を受けやすくなる。したがって、当該通信端末2と基地局1との間の下り通信品質は変化しやすい。
【0147】
このように、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う通信端末2については、基地局1との間の下り通信品質が変化しやすいことから、当該通信端末2についての第2補正値を調整するための第2調整値を大きくして、当該第2補正値の1回の調整量を大きくすると、調整後の第2補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質が、当該通信端末2と基地局1との間の実際の下り通信品質と大きく異なる可能性がある。この点に鑑み、第2調整値は第1調整値よりも小さく設定することが好ましい。
【0148】
<CQIを用いたMCSの決定方法について>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、変調方式及び符号化率の組み合わせが互いに異なるM個(M≧2)のMCSが規定されている。LTEにおいては、29個のMCSが規定されている。そして、M個のMCSに対しては、0段階から(M−1)段階までのランクがそれぞれ付与されており、ランクが上がるほど、それに対応するMCSでの変調方式及び符号化率の組み合わせで決定される基地局1の瞬時の送信スループットが大きくなっている。MCS決定部125は、通信部13が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSをM個のMCSから決定する。
【0149】
また、本実施の形態では、SRS対応使用下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用されるMCS(以後、「SRS対応MCS」と呼ぶ)については、第1補正値で補正されたCQIに基づいて決定される。つまり、MCS決定部125は、第1補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質を、SRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信する際の下り通信品質として、当該SRS対応使用下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用されるMCSを決定する。
【0150】
一方で、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用されるMCS(以後、「SRS非対応MCS]と呼ぶ)については、第2補正値で補正されたCQIに基づいて決定される。つまり、MCS決定部125は、第2補正値で補正されたCQIが示す下り通信品質を、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて下り通信する際の下り通信品質として、当該SRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用されるMCSを決定する。
【0151】
また、本実施の形態では、SRS対応MCS及びSRS非対応MCSのそれぞれは、下りサブフレーム302ごとに決定される。
【0152】
以下に、SRS対応MCS及びSRS非対応MCSのそれぞれの決定方法について詳細に説明する。以後、説明の対象の下りサブフレーム302を「対象下りサブフレーム302」と呼ぶ。
【0153】
図16は対象下りサブフレーム302でのSRS対応MCSの決定方法を説明するための図である。図16では、一番左側に補正前のCQIが示され、左から2番目に第1補正値で補正されたCQIが示されている。そして、図16では、右から2番目に補正後のCQIの平均値が示され、一番右側に決定されたSRS対応MCSのランクが示されている。
【0154】
図16の例では、対象通信端末2に対して、周波数方向に8個のRB840a〜840hを含むSRS対応使用下り無線リソースが対象下りサブフレーム302から割り当てられている。そして、対象通信端末2から通知される、8個のRB840a〜840hにそれぞれ対応する8個のCQIの値が、それぞれ、“8”、“7”、“6”、“8”、“6”、“5”、“7”、“8”となっている。図16では、RBを示す四角内に、当該RBに対応するCQIの値が示されている。
【0155】
図16に示されるように、上述の図15のようにして調整された第1補正値が例えば“+4”であるとすると、MCS決定部125は、対象通信端末2から通知された、8個のRB840a〜840hにそれぞれ対応する8個のCQIの値のそれぞれに対して“+4”を加算する。その結果、第1補正値で補正された8個のCQIの値は、それぞれ、“12”、“11”、“10”、“12”、“10”、“9”、“11”、“12”となる。
【0156】
次に、MCS決定部125は、第1補正値で補正された8個のCQIの平均値を求める。図16の例では、当該平均値は“10.9”となる。そして、MCS決定部125は、第1補正値で補正された8個のCQIの平均値に応じたMCSをM個のMCSから決定する。つまり、MCS決定部125は、対象通信端末2と基地局1との間の下り通信品質が、当該平均値が示す下り通信品質の場合に、対象通信端末2が基地局1からの送信信号を適切に受信することが可能なMCS、つまり変調方式及び符号化率を決定する。図16の例では、当該平均値が“10.9”であり、それに応じたMCSは、ランク15のMCSとなっている。このようにして決定されたMCSがSRS対応MCSとなる。MCS決定部125は、下りサブフレーム302単位でSRS対応MCSを決定する。
【0157】
通信部13は、対象下りサブフレーム302において、対象通信端末2とSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際には、当該SRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号に対して、MCS決定部125で決定された、対象下りサブフレーム302でのSRS対応MCSを設定する。これにより、対象通信端末2は、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を適切に受信できる。
【0158】
図17は対象下りサブフレーム302でのSRS非対応MCSの決定方法を説明するための図である。図17では、図16と同様に、一番左側に補正前のCQIが示され、左から2番目に第2補正値で補正されたCQIが示されている。そして、図17では、右から2番目に補正後のCQIの平均値が示され、一番右側に決定されたSRS非対応MCSのランクが示されている。
【0159】
図17の例では、対象通信端末2に対して、周波数方向に8個のRB850a〜850hを含むSRS非対応使用下り無線リソースが対象下りサブフレーム302から割り当てられている。そして、対象通信端末2から通知される、8個のRB850a〜850hにそれぞれ対応する8個のCQIの値が、それぞれ、“8”、“7”、“5”、“6”、“8”、“6”、“7”、“8”となっている。図17でも、RBを示す四角内に、当該RBに対応するCQIの値が示されている。
【0160】
図17に示されるように、上述の図15のようにして調整された第2補正値が例えば“+1”であるとすると、MCS決定部125は、対象通信端末2から通知された、8個のRB850a〜850hにそれぞれ対応する8個のCQIの値のそれぞれに対して“+1”を加算する。その結果、第2補正値で補正された8個のCQIの値は、それぞれ、“9”、“8”、“6”、“7”、“9”、“7”、“8”、“9”となる。
【0161】
次に、MCS決定部125は、第2補正値で補正された8個のCQIの平均値を求める。図17の例では、当該平均値は“7.9”となる。そして、MCS決定部125は、第2補正値で補正された8個のCQIの平均値に応じたMCSをM個のMCSから決定する。図17の例では、当該平均値が“7.9”であり、それに応じたMCSは、ランク10のMCSとなっている。このようにして決定されたMCSがSRS非対応MCSとなる。MCS決定部125は、下りサブフレーム302単位でSRS非対応MCSを決定する。
【0162】
通信部13は、対象下りサブフレーム302において、対象通信端末2とSRS非対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際には、当該SRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号に対して、MCS決定部125で決定された、対象下りサブフレーム302でのSRS非対応MCSを設定する。これにより、対象通信端末2は、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて送信する送信信号を適切に受信できる。
【0163】
<CQIを用いた下りスケジューリング>
スケジューリング実行部122では、通信端末2から通知されるCQIについて、第1補正値で補正された当該CQIが示す下り通信品質を、当該通信端末2とSRS対応使用下り無線リソースを用いて基地局1が下り通信する際の下り通信品質とするとともに、第2補正値で補正された当該CQIが示す下り通信品質を、当該通信端末2とSRS非対応使用下り無線リソースを用いて基地局1が下り通信する際の下り通信品質として、下りスケジューリングを行う。
【0164】
例えば、対象通信端末2が対象単位期間360で送信するSRSの送信周波数帯域がA個(A>1)のRBで構成されている場合を考える。このような場合に、スケジューリング実行部122は、対象単位期間360での下りサブフレーム302から、対象通信端末2に対してSRS対応使用下り無線リソースを割り当てる際には、当該A個のRBにそれぞれ対応する、対象通信端末2からのA個のCQIのそれぞれに対して、対象通信端末2について求められた第1補正値を加算する。そして、スケジューリング実行部122は、第1補正値で補正した当該A個のCQIのうち、所定値以上となっているCQIを特定する。このCQIがB個(B≦A)あるとする。スケジューリング実行部122は、上記のA個のRBのうち、所定値以上となっているB個のCQIにそれぞれ対応するB個のRBだけを、つまり、対象通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域のうち下り通信品質が良い周波数帯域だけを周波数方向に含むようにSRS対応使用下り無線リソースを対象通信端末2に割り当てる。
【0165】
また例えば、SRS送信不可帯域460がC個(C>1)のRBで構成されており、スケジューリング実行部122が、対象通信端末2に対して、SRS送信不可帯域460の少なくとも一部を周波数方向に含むSRS非対応使用下り無線リソースを割り当てる場合を考える。このような場合には、スケジューリング実行部122は、SRS送信不可帯域を構成するC個のRBにそれぞれ対応する、対象通信端末2からのC個のCQIのそれぞれに対して、対象通信端末2について求められた第2補正値を加算する。そして、スケジューリング実行部122は、第2補正値で補正した当該C個のCQIのうち、所定値以上となっているCQIを特定する。このCQIがD個(D≦C)あるとする。スケジューリング実行部122は、上記のC個のRBのうち、所定値以上となっているD個のCQIにそれぞれ対応するD個のRBだけを、つまり、SRS送信不可帯域460のうち下り通信品質が良い周波数帯域だけを周波数方向に含むようにSRS非対応使用下り無線リソースを対象通信端末2に割り当てる。
【0166】
以上のように、本実施の形態では、CQIに対する補正値として、SRS対応ACK/NACK信号に基づいて第1補正値を求めるとともに、SRS非対応ACK/NACK信号に基づいて第2補正値を求めている。基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際の下り通信品質と、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際の下り通信品質とは異なることから、SRS対応使用下り無線リソースを用いて基地局1から送信される送信信号に対するACK/NACK信号であるSRS対応ACK/NACK信号に基づいて求められた第1補正値でCQIを補正し、SRS非対応使用下り無線リソースを用いて基地局1から送信される送信信号に対するACK/NACK信号であるSRS非対応ACK/NACK信号に基づいて求められた第2補正値でCQIを補正することによって、精度の高いCQIを得ることができる。つまり、基地局1で得られる下り通信品質の精度を向上することができる。
【0167】
これに対して、本実施の形態とは異なり、SRS対応ACK/NACK信号とSRS非対応ACK/NACK信号の区別を行わずに、対象通信端末2から通知されるACK/NACK信号に基づいてCQIに対する1種類の補正値を求める場合を考える。上述の図15に対応させると、対象通信端末2から通知されるACK/NACK信号の受信回数Xが第2のしきい値TH2を超えるまでに、当該ACK/NACK信号に含まれるNACK信号の受信回数Yが第1のしきい値TH1を超える場合には、CQIの補正値(1種類の補正値)に対して調整値を減算し、当該NACK信号の受信回数Yが第1のしきい値TH1を超えるまでに、当該ACK/NACK信号の受信回数Xが第2のしきい値TH2を超える場合には、CQIの補正値に対して調整値を加算するような場合を考える。
【0168】
このような場合には、 当該補正値で補正されたCQIは、基地局1がSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際の下り通信品質と、基地局1がSRS非対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際の下り通信品質とが実際には異なるにもかかわらず、両者の下り通信品質を示すものとして扱われることになる。したがって、精度の高いCQIを得ることが難しくなる。つまり、基地局1で得られる下り通信品質の精度が不十分である可能性が高くなる。このような精度の低いCQIに基づいて、下りスケジューリングや下り通信でのMCSの決定などの下り通信に関する処理を行う場合には、適切な処理が行うことができない。
【0169】
本実施の形態では、CQIに対する補正値として、SRS対応ACK/NACK信号に基づいて第1補正値を求めるとともに、SRS非対応ACK/NACK信号に基づいて第2補正値を求めることによって、精度の高いCQIを得ることができることから、このような精度の高いCQIに基づいて下り通信に関する処理を行うことによって、当該処理を適切に行うことができる。よって、基地局1の下り通信性能が向上する。例えば、精度の高いCQIを用いて下りスケジューリングを行うことによって、下り通信品質を向上することができる。また、精度の高いCQIを用いて下り通信でのMCSを決定することによって、下り通信のスループットを向上することができる。
【0170】
なお、上記の例では、通信端末2から通知されるCQIに基づいて下り通信に関する処理を行っていたが、通信端末2から通知されるCQIをSINRに変換し、当該SINRに基づいて、下りスケジューリングや下り通信でのMCSの決定などの下り通信に関する処理を行っても良い。この場合には、補正値算出部126は、CQIに対する補正値を算出する場合と同様にして、SINRに対する補正値を算出することになる。CQIもSINRも下り通信品質を示す下り品質値である。
【0171】
なお、SINRの単位はデシベルであることから、CQIに対する補正値を求める場合と、SINRに対する補正値を求める場合とでは、上述の第1及び第2調整値等は異なるようになる。
【0172】
また、上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の無線通信システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0173】
1,1a,1b 基地局
2 通信端末
13 通信部
110a アンテナ
122 スケジューリング実行部
125 MCS決定部
126 補正値算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
通信端末が前記通信部が送信する信号に基づいて求めた下り通信品質を示す下り品質値に対する補正値を求める補正値算出部と
を備え、
下り無線リソースと、通信端末において前記既知信号の送信に使用される上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記補正値算出部は、
通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースを用いて前記通信部が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、当該通信端末が求めた前記下り品質値に対する第1補正値を算出し、
通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースを用いて前記通信部が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、当該通信端末が求めた前記下り品質値に対する第2補正値を算出する、基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記通信部が通信端末と下り通信を行う際に使用する使用下り無線リソースを当該通信端末に割り当てる下りスケジューリングを行うスケジューリング実行部をさらに備え、
前記スケジューリング実行部は、前記下りスケジューリングを行う際には、前記第1補正値で補正された前記下り品質値が示す下り通信品質を、前記対応下り無線リソースを用いて下り通信が行われる際の下り通信品質として使用するとともに、前記第2補正値で補正された前記下り品質値が示す下り通信品質を、前記非対応下り無線リソースを用いて下り通信が行われる際の下り通信品質として使用する、基地局。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記通信部が送信する送信信号に適用するMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定するMCS決定部をさらに備え、
前記MCS決定部は、
前記対応下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用するMCSについては、前記第1補正値で補正された前記下り品質値に基づいて決定し、
前記非対応下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用するMCSについては、前記第2補正値で補正された前記下り品質値に基づいて決定する、基地局。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記補正値算出部は、
前記第1補正値に対して第1調整値を加算あるいは減算することによって、当該第1補正値を更新し、
前記第2補正値に対して第2調整値を加算あるいは減算することによって、当該第2補正値を更新し、
前記第2調整値は、前記第1調整値よりも小さく設定されている、基地局。
【請求項5】
複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局で行われる、下り通信品質を示す下り品質値についての補正値算出方法であって、
前記基地局では、下り無線リソースと、通信端末において前記既知信号の送信に使用される上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
(a)通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースを用いて前記基地局が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、前記基地局が送信する信号に基づいて当該通信端末が求めた下り通信品質を示す下り品質値に対する第1補正値を算出する工程と、
(b)通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースを用いて前記基地局が当該通信端末に送信する信号を当該通信端末が適切に受信したか否かを示す応答信号に基づいて、当該通信端末が求めた前記下り品質値に対する第2補正値を算出する工程と
を備える、補正値算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−74486(P2013−74486A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212420(P2011−212420)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】