説明

基地局装置、移動局装置、無線通信システム、プログラムおよび集積回路

【課題】アクセス方式の切り替えタイミングに応じて適切にTPCを動作させ、通信に誤りが生じることを防ぎ、また、無駄な電力を送信して他セルに与える影響を低減する。
【解決手段】複数種類の通信方式を切り替えて移動局装置と無線通信を行なう基地局装置であって、前記通信方式の切り替え時に、前記移動局装置の送信電力制御を行なうための制御情報を、前記移動局装置に対して送信する。移動局装置は、前記通信方式の切り替え時に、前記基地局装置から送信電力制御を行なうための制御情報を受信し、前記制御情報に基づいて送信電力を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の通信方式を切り替えて無線通信を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている無線通信技術においては、一般的に、アップリンク(上りまたは上りリンクとも呼称する。)とは、セルラ通信などにおいて、基地局装置と移動局装置とが通信を行なう際、移動局装置から基地局装置へデータを送信する回線を意味する。このアップリンクにおいて、基地局装置では、様々な移動局装置からの信号を同時に受信する。そのため受信電力が等しければ受信処理が容易になり、また、受信特性も優れる。これを実現するために、移動局装置が送信する信号の送信電力を制御するシステムが導入されており、これを送信電力制御(TPC:Transmit Power Control)と呼ぶ。
【0003】
3G(第3世代)の携帯電話で使用されている通信方式はCDMA(Code Division Multiple Access)であり、複数の移動局装置は使用する符号を異にし、同じ周波数を用いて基地局装置に同時にアクセスするため、一般的に精度の高く、高速なTPCが必要とされる。一方、次世代(3.9G)の携帯電話の規格では、アップリンクの通信方式としてDFT−S−OFDMA(Discrete Fourier Transform-Spread-Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が使用される予定であり、CDMAで使用されるTPCのように高精度、高速のTPCは必要とされていないが、隣接基地局装置への干渉量を適切に制御する目的でTPCが仕様化されている(非特許文献1)。
【0004】
TPC方法は大きく分けて2つあり、それぞれオープンループ、クローズドループと呼称される。アップリンクでTPCを使用することを想定し簡単に説明すると、オープンループのTPCとは、移動局装置が移動局装置の判断で送信電力を制御するものであり、クローズドループとは基地局装置からの指示により送信電力を制御するものである。
【0005】
オープンループには、基地局装置が送信している送信電力と実際移動局装置が受信した受信電力から信号の減衰量を推定し、推定した減衰量と基地局装置で必要となる受信電力から移動局装置の送信電力を決定する方法がある。一方、クローズドループには、基地局装置において受信電力を測定し、過不足を通知する方法や、送信される信号の誤り率などから、移動局装置の送信電力の増減を通知する方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3gpp ts 36.213 v8.5.0 5.1章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、次々世代(4G)では、アップリンクの通信方式として、複数のアクセス方式を切り替えて使用することが検討されている。具体的に検討されているアクセス方式は、連続するサブキャリアを使用するDFT−S−OFDMA(SC−FDMAとも呼称される。)、不連続のサブキャリアを使用するClustered DFT−S−OFDMA、更には、OFDMAである。また、これらの方式を切り替える際、セミスタティックスイッチング、すなわち、移動局装置に大きな移動がない限り比較的長い時間同じ方式を使用する方式や、ダイナミックスイッチング、すなわち、パケット単位でアクセス方式を切り替える方式が検討されている。
【0008】
アクセス方式が異なると、必要となる受信電力が異なったり、送信できる最大送信電力が異なったりする。このようなシステムに対し、3.9Gで用いられているTPCをそのまま4Gに適用すると、切り替えが生じた瞬間、基地局装置において必要となる受信電力が確保できずデータに誤りが生じるという問題が発生する。また、移動局装置が不必要に多くの電力を送信し、他セルへ干渉を与えてしまうという問題も生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アクセス方式の切り替えタイミングに応じて適切にTPCを動作させ、通信に誤りが生じることを防ぎ、また、無駄な電力を送信して他セルに与える影響を低減することができる基地局装置、移動局装置、無線通信システム、プログラムおよび集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線通信システムは、複数種類の通信方式を使用可能な送信装置および受信装置が通信方式を切り替えて無線通信を行なう無線通信システムであって、前記通信方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうことを特徴としている。
【0011】
このように、通信方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうので、通信に誤りが生ずることを防止すると共に、無駄な電力を送信することによる他セルへの影響を低減させることが可能となる。
【0012】
(2)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記通信方式の切り替え時に生ずる通信特性の変化に応じて、前記送信装置の送信電力制御を行なうことを特徴としている。
【0013】
このように、通信方式の切り替え時に生ずる通信特性の変化に応じて、送信装置の送信電力制御を行なうので、通信方式の切り替えの前後で通信特性の変化の影響を受けにくくすることが可能となる。
【0014】
(3)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記受信装置は、前記通信方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうための制御情報を、前記送信装置に対して送信し、前記送信装置は、前記制御情報に基づいて送信電力を決定することを特徴としている。
【0015】
このように、受信装置は、通信方式の切り替え時に、送信装置の送信電力制御を行なうための制御情報を、送信装置に対して送信するので、クローズドループ方式の送信電力制御を実施することが可能となる。
【0016】
(4)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記送信装置は、前記制御情報および通信方式の切り替えの有無を示す情報に基づいて送信電力を決定することを特徴としている。
【0017】
このように、送信装置は、前記制御情報および通信方式の切り替えの有無を示す情報に基づいて送信電力を決定するので、受信装置から同じ制御情報が送信された場合であっても、送信装置では、通信方式の切り替えの有無を示す情報に応じて、送信電力制御値を異なる値を解釈することが可能となる。その結果、新たな制御情報を用いる必要が無くなり、スループットの向上を図ることが可能となる。
【0018】
(5)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記送信装置は、前記通信方式の切り替え時に、送信装置毎に定められる値に基づいて、送信電力を決定することを特徴としている。
【0019】
このように、送信装置は、通信方式の切り替え時に、送信装置毎に定められる値に基づいて、送信電力を決定するので、オープンループ方式の送信電力制御を実施することが可能となる。
【0020】
(6)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記複数種類の通信方式は、相互にアクセス方式が異なることを特徴としている。
【0021】
この構成により、アクセス方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうので、通信に誤りが生ずることを防止すると共に、無駄な電力を送信することによる他セルへの影響を低減させることが可能となる。
【0022】
(7)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記アクセス方式は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)、DFT−S−OFDMA(Discrete Fourier Transform-Spread-Orthogonal Frequency Division Multiple Access)またはClustered DFT−S−OFDMAのうち、少なくとも2つであることを特徴としている。
【0023】
この構成により、アクセス方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうので、通信に誤りが生ずることを防止すると共に、無駄な電力を送信することによる他セルへの影響を低減させることが可能となる。
【0024】
(8)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記複数種類の通信方式は、送信ダイバーシチの有無または送信ダイバーシチの種類に応じて相互に異なることを特徴としている。
【0025】
この構成により、送信ダイバーシチの有無または送信ダイバーシチの種類の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうので、通信に誤りが生ずることを防止すると共に、無駄な電力を送信することによる他セルへの影響を低減させることが可能となる。
【0026】
(9)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記複数種類の通信方式は、使用するアンテナ数に応じて相互に異なることを特徴としている。
【0027】
この構成により、送信アンテナ数の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうので、通信に誤りが生ずることを防止すると共に、無駄な電力を送信することによる他セルへの影響を低減させることが可能となる。
【0028】
(10)また、本発明の基地局装置は、複数種類の通信方式を切り替えて移動局装置と無線通信を行なう基地局装置であって、前記通信方式の切り替え時に、前記移動局装置の送信電力制御を行なうための制御情報を、前記移動局装置に対して送信することを特徴としている。
【0029】
この構成により、通信方式の切り替え時に、送信装置の送信電力制御を行なうための制御情報を、送信装置に対して送信するので、クローズドループ方式の送信電力制御を実施することが可能となる。
【0030】
(11)また、本発明の移動局装置は、複数種類の通信方式を切り替えて基地局装置と無線通信を行なう移動局装置であって、前記通信方式の切り替え時に、前記基地局装置から送信電力制御を行なうための制御情報を受信し、前記制御情報に基づいて送信電力を決定することを特徴としている。
【0031】
この構成により、通信方式の切り替え時に、基地局装置から送信電力制御を行なうための制御情報を受信し、制御情報に基づいて送信電力を決定するので、クローズドループ方式の送信電力制御を実施することが可能となる。
【0032】
(12)また、本発明の通信方法は、複数種類の通信方式を使用可能な送信装置および受信装置が通信方式を切り替えて無線通信を行なう通信方法であって、前記通信方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうことを特徴としている。
【0033】
このように、通信方式の切り替え時に、前記送信装置の送信電力制御を行なうので、通信に誤りが生ずることを防止すると共に、無駄な電力を送信することによる他セルへの影響を低減させることが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、アクセス方式を含む送信方式が変わっても、適切に送信電力制御を行なうことができ、セル全体のスループットの低下を防ぐことができる。また、その為に必要となる制御情報の授受を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る移動局装置が備える送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3A】TPCコマンドの生成タイミングを示す図である。
【図3B】アクセス方式の切り替えタイミングを示す図である。
【図3C】TPCの制御データ生成タイミングを示す図である。
【図4A】TPCコマンドの生成タイミングを示す図である。
【図4B】アクセス方式の切り替えタイミングを示す図である。
【図4C】TPCの制御データ生成タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を説明するために、移動局装置から基地局装置へデータを送信するアップリンクを用いて説明するが、基地局装置から移動局装置へデータを送信するダウンリンクにも当然適用可能である。また、各端末は周波数を異にして、基地局装置にアクセスする方式を前提とするが、その際、複数のサブキャリアをグループ化(以降リソースブロック:RBと称する)して、そのグループ単位でアクセスする帯域を決定するものとする。従って、各アクセス方式は1あるいは複数のRBを使用することになる。また、以下に説明する第1および第2の実施形態では、使用する送信アンテナ数が1本であるということを想定している。
【0037】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る移動局装置が備える送信装置の概略構成を示すブロック図である。ただし、説明を簡単にするため、本発明を説明するために必要となる最小限のブロックを示している。スクランブル部100は、入力されたデータに対してランダム性を加えるため、あるいは、データの秘匿性を加えるためにスクランブルを施す。変調部101は、QPSK等の変調を行なう。DFT部102は、複数のデータに対してDFTを行なう。選択部103は、DFT部102の出力または変調部101の出力を、制御情報Aにより選択する。制御情報Aは、基地局装置から通知されるアクセス方式によって決定される。
【0038】
選択部103が、変調部101から出力された信号を選択した場合、OFDM信号生成部105において、OFDM信号が生成される。一方、DFT部102ら出力された信号を選択した場合、OFDM信号生成部105において、DFT−S−OFDM信号が生成される。リソースマップ部104は、使用するRBにデータを割り当てる。
【0039】
リソースマップ部104において、使用するRBの連続になっていて、選択部103がDFT部102の出力を選択している場合は、OFDM信号生成部105において、DFT−S−OFDM信号が生成される。一方、リソースマップ部104において、使用するRBが離散的になっていて、選択部103がDFT102の出力を選択している場合は、OFDM信号生成部105において、Clustered DFT−S−OFDM信号が生成される。従って、図1に示す送信装置では、OFDMA、DFT−S−OFDMA、Clustered DFT−S−OFDMAの3つのアクセス方式を切り替えることが可能になる。
【0040】
図2は、本実施形態に係る基地局装置の概略構成を示すブロック図である。図2において、受信装置200は、移動局装置からの信号を受信する。受信電力推定部201は、移動局装置毎の受信電力を算出する。TPC制御データ生成部202は、TPCを制御するためのデータを生成する。送信装置203は、移動局装置に対しデータやTPCに必要となる制御データを送信する。移動局制御データ生成部204は、移動局装置を制御するデータを生成する。
【0041】
この移動局制御データ生成部204は、移動局装置毎のTPC制御データの他、RBの割り当て、アクセス方式等を決定し、制御データを生成する。TPC制御データ生成部202は、移動局装置毎にTPCコマンドを生成し、移動局制御データ生成部204に通知し、移動局制御データ生成部204は、TPCコマンドが通知されるとTPC制御用のデータを生成し、送信装置203から移動局装置にTPC制御データを通知する。
【0042】
図3Aは、TPCコマンドの生成タイミングを示す図であり、図3Bは、アクセス方式の切り替えタイミングを示す図であり、図3Cは、TPCの制御データ生成タイミングを示す図である。図3A〜図3Cにおいて、横軸は時間であり、dB表示されている値は、TPCの制御量を示す。アクセス方式の切り替えタイミングは、そのタイミング以前と以後で使用するアクセス方式が異なるというタイミングを示す。従来のTPC制御データ生成タイミングは、TPCコマンド生成タイミングと同一周期で生成される。これに対し、本実施形態では、アクセス方式の切り替えタイミングを考慮して、TPC制御データを生成している。
【0043】
通信に影響がない限り、TPCコマンドの生成タイミング間隔は長い方が好ましい。これは、間隔が長い方がTPC制御データを送信する回数を減らすことができ、制御データの増加によるスループットの低下を防ぐことができるためである。また、受信電力からTPC制御を行なう場合など、瞬時の時間変動に対応しすぎると、制御データの送信間隔とのずれから、特性が劣化する場合があるためでもある。
【0044】
次に、アクセス方式の切り替えタイミングを考慮してTPC制御データを生成した場合の効果について、アクセス方式をClustered DFT−S−OFDMA(方式1と呼称する。)からDFT−S−OFDMA(方式2と呼称する。)に切り替える場合を例にして示す。まず、方式1と方式2の特徴を示す。方式1と方式2は使用するRBが「離散」、「連続」ということが違うのみで、基本的な通信方式の特性は全く同じである。ただし、方式1は、RBの離散配置が可能であるため、より精度の高いRBを選択できる可能性を持ち、両アクセス方式を用い同じ移動局装置が同送信電力でデータを送信した場合、方式1の方が受信特性は良くなる。
【0045】
また、方式1、2とも、特殊な受信装置を用いない限り、使用する伝搬路に周波数選択性フェージングが生じると、ISI(Inter-Symbol Interference:シンボル間干渉)が生じ、特性が劣化するといった問題を抱えている。DFT−S−OFDMの場合、伝搬路の周波数変動が大きいと、ISIの影響が大きくなる傾向にあるが、方式1では比較的良好なRBを選択できるため、方式2に比べてISIの影響を抑えることができる。ただし、方式2は時間領域の信号のPAPR(Peak to Average Power Ratio:瞬間電力と平均電力の比)特性が良好という特徴を持つことに対し、方式1では方式2と比べて、PAPR特性が悪化する。これは、実際のシステムでは最大送信電力に影響を及ぼす。つまり、同じ送信装置を使用した場合は、方式1に比べ方式2は最大送信電力を大きくすることが可能となる。
【0046】
次に、本実施形態の効果を示す。先の段落で同じ送信電力で通信を行なった場合は、方式1と方式2では受信特性が異なり、方式1の方が優れていることを示したが、本実施形態ではその差をX(dB)とする。このX(dB)は、方式2が方式1と同じ受信特性となるには、方式1の送信電力に対しX(dB)高い送信電力が必要となることを意味する。そして、アクセス方式が方式1から方式2に変化するタイミングでTPCを制御しないと、このXdBが受信特性の劣化となる。すなわち、図3Cのタイミングで制御する。先にも示したように、従来のTPCは受信電力などで制御しているため、受信電力の瞬時変動に追従すると逆に特性が劣化する場合があるが、このアクセス方式の変更は瞬時に追従しないと平均的にX(dB)の受信特性の劣化を引き起こすことになる。
【0047】
この例では、TPCコマンドの生成タイミングに加え、アクセス方式の切り替えタイミングでTPC制御データを生成するタイミングを増やす方法について示したが、アクセス方式の切り替えタイミングをTPCの制御データの生成タイミングと同一とする方法も考えられる。
【0048】
図4Aは、TPCコマンドの生成タイミングを示す図であり、図4Bは、アクセス方式の切り替えタイミングを示す図であり、図4Cは、TPCの制御データ生成タイミングを示す図である。ただし、図4A〜図4Cの場合、TPCコマンド生成タイミングで生成されるTPCの制御量Y(dB)に加え、X(dB)を考慮して、TPC制御データを作成する必要がある。
【0049】
ここでは、方式1から方式2にアクセス方式を変更する場合について詳細に示したが、OFDMA(方式3と呼称する。)から方式2にアクセス方式を変更する場合にも同様な効果を得ることができる。これは、方式3と方式2にも同じ送信電力で送信した場合に受信特性に差ができることに起因しており、方式3と方式2とを比べると、RBを離散的に使用することで精度の高いRB選択できるメリットに加え、方式3ではISIが生じないといったメリットがある。方式1と方式2の受信特性差より、方式3と方式2の受信特性差の方が大きくなる。
【0050】
次により詳細な制御について説明する。TPCには、大きく2つの方式があり、本実施例に示しているような基地局装置から通知される制御情報に基づいて送信電力を制御するクローズドループによるTPCと、移動局装置で基地局装置との距離等から減衰量を推定し、移動局装置で送信電力を制御するオープンループのTPCがある。この2つを併用することもあり、送信電力を決定する方法として、例を次式で示す。
【0051】
送信電力=Min{最大送信電力、OpTx+ClTx}…(1)
式(1)において、OpTxは移動局装置毎で決定する送信電力、ClTxは基地局装置からの通知による送信電力の補正値である。また、ClTxには、複数の通知方法があり、OpTxからの差分で通知する方法、通知されるClTxを累積していく方法、これらの併用する方法等がある。式(1)においてMinは{}内で示される値の最も小さい値を選ぶという関数である。
【0052】
非特許文献1では、ClTxを累積する方法とする場合、TPCの制御データ用に2ビット割り当て、−1、0、1、3(dB)の4種類が利用できる。この値は現在の送信電力からの増減を示す値である。アクセス方式の切り替えによる影響がこれらの値でない場合、例えば、−3dB、5dBの値が必要な場合、新たに制御用にデータを割く(現状では2ビットであらわせているものを3ビット以上にする)必要がある。また、アクセス方式が3以上使用されるシステムでは更に多くの制御用データが必要となり、制御データ量を多くする必要が生じる。
【0053】
このような制御データ量の増加を防ぐために、基地局装置から通知されるこのTPC制御量を、アクセス方式の切り替えが起こっているタイミングでは異なる値と認識することで、新たな制御情報を用意する必要がなくなる。表1に非特許文献1に示されるTPC用ビット2ビットをアクセス方式の切り替え通知があるなしで、どのように解釈するかを示す。ただし、表中のX、Zは正の数であり、表中の数値は全てdB表記としている。
【0054】
【表1】

このように同じTPC制御情報が基地局装置から送信された場合でも、移動局装置でアクセス方式の切り替えがあったか否かを判定し、TPCの制御値を異なる値と解釈することで、適切なTPCの制御を行なうことが可能になる。アクセス方式の切り替えについては、制御情報と通知する方法が最も容易に考えられるが、Clustered DFT−S−OFDMのDFT−S−OFDMは使用するRBの配置が連続であるか不連続であるかによって決まるため、基地局から通知されるRBの「連続性」により、アクセス方式を判定すれば新たに制御情報を通知する必要はない。ただし、ここに示した変形は例であり、様々な値をシステム仕様決定時に決めることが可能である。
【0055】
非特許文献1では、ClTxをOpTxからの差分とする方法の場合、TPCの制御データ用に2ビット割り当て、−4、−1、1、4(dB)の4種類が利用できる。この値は、移動局装置にRBの割り当てがあった時に同時に通知される制御データである。これの制御にアクセス方式の切り替えによる送信電力の差を付加することが可能であり、その場合、表1に対応するものは、表2のようになる。
【0056】
【表2】

また、他セルへの干渉が、TPCの制御が遅れることで増加することを許容すると、方式1あるいは3から方式2にアクセス方式が変わる際、即ち、受信特性の良いアクセス方式から悪いアクセス方式に変わる際のみ、TPCを制御するといった方法も考えられる。更に、その際に、もともと定義されているTPC制御値を使用し、その最大偏移量(表1では“11”)を使用するといった方法も考えられる。この場合、表1の場合は3dB、表2の場合は4dBが選択される。表1、表2中の±は移動局装置で判定する必要があり、方式1あるいは3から方式2にアクセス方式が変化した場合は+、その逆の場合は−が選択される。
【0057】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではアクセス方式の切り替えに応じて送信電力制御をする際、クローズドループで適切に制御する方法を示したが、本実施形態ではオープンループ(的)に送信電力を制御する方法について示す。第1の実施形態でも示したが、送信電力を決定する方法として、一般的に次式に示すように送信電力を決定する方法が考えられる。
【0058】
送信電力=Min{最大送信電力、OpTx+ClTx}…(1)
式(1)式において、OpTxは移動局装置毎で決定する送信電力、ClTxは基地局装置からの通知による送信電力の補正値である。本実施形態では更にアクセス方式の切り替えを考慮して、次式によって送信電力を決定する式とする。
【0059】
送信電力=Min{最大送信電力、(OpTx+AcOpTx)+ClTx}…(2)
AcOpTxは基地局装置から通知する値ではなく、移動局装置が指定されたアクセス方式から決定する値である。例えば、方式1(Clustered DFT−S−OFDM)から方式2(DFT−S−OFDM)にアクセス方式が変更されるシステムの場合、第1の実施形態のようにその受信性能差がX(dB)であるとすると、
AcOpTx=±X/2…(3)
とする。±は方式1から方式2への変化の場合、+が選択され、逆の遷移の場合は−が選択される。また、
AcOpTx = X (方式2の時)
= 0 (方式1の時) …(4)
とすることもできる。
【0060】
第1の実施形態に対するメリットは、基地局装置の制御や既存のTPC制御データを変更する必要がなく、アクセス方式の切り替えに対応する移動局装置のみが設定すればよいことである。第2の実施形態でも、アクセス方式の切り替えにより、受信特性が劣化しないこと、他セルへの影響を抑えられることといった効果は第1の実施形態と同様である。もちろん、第1の実施形態と同様、方式1、2の切り替えだけでなく、OFDMA(方式3)と方式2の切り替えにも適用できる。また、切り替える方式が3つ以上ある場合でも、式(4)を適用すれば容易に対応できる。
【0061】
(第3の実施形態)
第1、第2の実施形態では、通信方式が切り替わる例としてとしてアクセス方式が切り替わる場合を示したが、本実施形態では、使用する送信アンテナ数、送信ダイバーシチモードが切り替わる場合を示す。まずは、送信アンテナ数が切り替わる場合を示す。送信アンテナ数が切り替わる場合についても、基地局装置側で制御を行なう第1の実施形態の方式、移動局装置側で制御を行なう第2の実施形態の方式の双方をとることができるが、本実施形態では第2の実施形態同様に、移動局装置側で制御を行なう場合を示す。
【0062】
移動局装置側が複数アンテナを使用して送信を行なうということは、1本のアンテナで送信する場合に比べて最大送信電力が大きくなること、送信ダイバーシチができる等、基地局装置に対する送信可能エリアが広がる等メリットがあるが、一方で、消費電力が大きくなるといったデメリットがある。そこで、送信方式としてできる限り、使用するアンテナ数を減らし、通信効率が低下した段階でアンテナ数を増やす制御が考えられる。このような制御を基に本実施形態ではまず、使用するアンテナ数の増減に対応した送信電力制御の方法を示す。使用するアンテナ本数は1、2、4とする。これは実施形態の説明を簡単にするために例として使用する本数であり、この本数に本実施形態が制限されるわけではない。
【0063】
一般的に次式で示すように送信電力を決定する方法が考えられる。
【0064】
送信電力=Min{最大送信電力、OpTx+ClTx}…(1)
式(1)において、OpTxは移動局装置毎で決定する送信電力、ClTxは基地局装置からの通知による送信電力の補正値である。本実施形態では更に使用するアンテナ本数の切り替えの切り替えを考慮して、次式によって送信電力を決定する式とする。
【0065】
送信電力=Min{最大送信電力、(OpTx+NmOpTx(n))+ClTx}…(5)
NmOpTxは基地局装置から通知する値ではなく、移動局装置が使用する送信アンテナ数nから決定する値である。式(1)がdB表示であるとして、使用するアンテナ本数による制御値を(6)式のように決定する。
【0066】
NmOpTx(n) =−6 (n=4の時)
=−3 (n=2の時)
= 0 (n=1の時) …(6)
但し、ClTxも基地局装置に到達する電力により制御されている場合、基地局装置から通知されることによる補正値をアンテナ本数に依存して制御する必要がある。このように制御すれば、基地局装置からあるいは基地局装置へ送信使用アンテナ本数を通知されたり、通知したりすることなく適切に送信電力をコントロールできる。
【0067】
また、式(5)の場合、複数のアンテナから同一の送信電力でデータを送信することになるが、アンテナ毎に式(5)のような値を定義して、アンテナ毎に異なる送信電力とすることも可能である。
【0068】
ここまで示した例では、複数アンテナ使用時も単に同じデータを送信することを想定して実施形態を示したが、実際は、複数アンテナを使用する場合は、送信ダイバーシチ技術を使用した方が効率的な通信ができる。効率的という意味は、送信電力を大きくできることに加え、送信信号を符号化することにより得られるゲインがあるということである。すなわち、同じ電力で受信した場合、送信ダイバーシチを行なった方が、単純に同じデータを送った場合より、受信性能がよいことを意味する。この差を送信ダイバーシチゲインと定義する。式(5)にこの送信ダイバーシチゲインを考慮すると(7)式のようになる。
【0069】
送信電力=Min{最大送信電力、(OpTx+NmOpTx(n)+TDOpTx(n))+ClTx}…(7)
TDOpTx(n)は、基地から通知する値ではなく、移動局装置が使用する送信アンテナ数nから決定する値である。n=1のときは送信ダイバーシチを用いることはできないので、NmOpTx=0となる。
【0070】
また、複数の送信ダイバーシチ法を用いることも考えられる。これは、送信ダイバーシチによって得失が異なるため、通信環境により使い分けを行なった方が、システム全体として、性能が改善されるためである。
【0071】
この場合、TDOpTxをアンテナ本数n、送信ダイバーシチの方法mの2つのパラメータに依存した関数とすればよい。即ち(7)式は(8)式のようになる。
【0072】
送信電力=Min{最大送信電力、(OpTx+NmOpTx(n)+TDOpTx(n、m))+ClTx}…(8)
また、第2、第3の実施形態において送信電力を決定する式、(2)、(7)、(8)において、最大送信電力は変更しなかったが、この値を変更する必要もある。これは、アクセス方式を異なるものとした場合、アクセス方式毎に想定されるバックオフ(送信アンプの飽和領域からどれだけ低い値で送信すれば、信号に与える影響を少なくできるかを示した値)が異なるためである。例えば、連続するRBを使用するDFT−S−OFDMと離散的なRBを使用するClustered DFT−S−OFDMでバックオフがPb1(dB)異なるとすると(2)式は次式のように変更される。
【0073】
送信電力=Min{最大送信電力− Pb1×k 、(OpTx+AcOpTx)+ClTx}…(2’)
ここで、kはアクセス方式によるパラメータであり、DFT−S−OFDMの時は0、Clustered DFT−S−OFDMのときは1となる。
【0074】
また、送信ダイバーシチとして、SFBC(Space Frequency Block Coding)をDFT−S−OFDM信号に対して用いるときは、送信アンテナ毎に必要となるバックオフが異なる。アンテナ番号を#nとして、アンテナ毎のバックオフ量をPb(#n)と表すと、式(7)、(8)はそれぞれ次式のようになる。
【0075】
送信電力(#n)=Min{最大送信電力−Pb(#n)、(OpTx+NmOpTx(n)+TDOpTx(n))+ClTx}…(7’)
送信電力(#n)=Min{最大送信電力−Pb(#n、m)、(OpTx+NmOpTx(n)+TDOpTx(n、m))+ClTx}…(8’)
ここで、式(7’)、(8’)において、送信電力を#nとmの関数としたのは、アンテナ毎にバックオフ量が異なるため、結果的にアンテナ毎に送信電力が異なる場合があるためである。
【符号の説明】
【0076】
100 スクランブル部
101 変調部
102 DFT部
103 選択部
104 リソースマップ部
105 OFDM信号生成部
200 受信装置
201 受信電力推定部
202 TPC制御データ生成部
203 送信装置
204 移動局制御データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局装置と異なる2以上のアクセス方式を用いて通信を行なう基地局装置であって、
アクセス方式を指定する情報およびTPC(Transmit Power Control)制御データが含まれる制御情報を生成する移動局制御データ生成部と、
少なくとも前記アクセス方式を切り替えるタイミングにおいて、前記制御情報を移動局装置に通知する送信装置と、を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記アクセス方式のいずれか一つは周波数を連続的に使用する方式であり、いずれか他の一つは周波数を離散的に使用する方式であることを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
前記TPC制御データは、指定されるアクセス方式に関わらず、一定の情報量であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の基地局装置。
【請求項4】
前記移動局制御データ生成部は、前記移動局装置に割り当てるRB(Resource Block)を前記移動局装置に通知することによって、前記アクセス方式を指定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の基地局装置。
【請求項5】
基地局装置と異なる2以上のアクセス方式を用いて通信を行なう移動局装置であって、
前記基地局装置から、アクセス方式を指定する情報およびTPC(Transmit Power Control)制御データが含まれる制御情報を受信し、前記アクセス方式を指定する情報によりアクセス方式を切り替えると同時に前記TPC制御データにより送信電力を変更することを特徴とする移動局装置。
【請求項6】
前記アクセス方式を切り替えるタイミングと切り替えないタイミングとのそれぞれにおいて、前記TPC制御データが制御する送信電力の補正値を異なる値にすること特徴とする請求項5記載の移動局装置。
【請求項7】
前記各アクセス方式は、いずれも送信データをDFT処理し、前記DFT処理したデータをOFDM送信する方式であることを特徴とする請求項6記載の移動局装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の基地局装置と、請求項6または請求項7記載の移動局装置と、から構成されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
移動局装置と異なる2以上のアクセス方式を用いて通信を行なう基地局装置のプログラムであって、
アクセス方式を指定する情報およびTPC(Transmit Power Control)制御データが含まれる制御情報を生成する処理と、
少なくとも前記アクセス方式を切り替えるタイミングにおいて、前記制御情報を移動局装置に通知する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
基地局装置に実装されることによって、前記基地局装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
移動局装置と異なる2以上のアクセス方式を用いて通信を行なう機能と、
アクセス方式を指定する情報およびTPC(Transmit Power Control)制御データが含まれる制御情報を生成する機能と、
少なくとも前記アクセス方式を切り替えるタイミングにおいて、前記制御情報を移動局装置に通知する機能と、の一連の機能を、前記基地局装置に発揮させることを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2012−60659(P2012−60659A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240691(P2011−240691)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【分割の表示】特願2010−549417(P2010−549417)の分割
【原出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】