説明

基地局装置およびスケジューリング方法

【課題】送信側の消費電力を低減可能な基地局装置を得ること。
【解決手段】データの送受信に割り当て可能な無線リソース量と、データの送受信処理にかかるサイクル数と、端末との間の無線回線品質から求めたモデムパラメータと、を用いて自装置で処理可能なデータ量を算出するモデム処理可能データ量算出部14と、処理可能データ量に基づいて、データを送信または受信する端末をスケジューリングするスケジューリング部1と、を備え、モデム処理可能データ量算出部14は、残無線リソース量で送受信可能なデータ量および残サイクル数で処理可能なデータ量を算出し、スケジューリング部1は、端末との間で送信または受信するデータ量のうち、前記残無線リソース量で送受信可能なデータ量および前記残サイクル数で処理可能なデータ量の小さい方のデータ量の分をスケジューリングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケジューリングを行う基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3.9世代セルラ通信方式であるLTE(Long Term Evolution)において、送信側(基地局)は、送信データを分割したトランスポートブロックを、さらにターボ符号の内部インタリーバサイズに分割してコードブロックを生成し、コードブロック毎に誤り検出のためのCRC(Cyclic Redundancy Check)ビットを付与している。この際、規定のコードブロックサイズに分割できない場合は、既知であるフィラービットを挿入後分割する。既知系列であるフィラービットは復号性能が良いため、受信側(端末)では、フィラービットが多いほどCRCビットにて誤り検出となる確率は少なくなり、フィラービットが少ないほどCRCビットにて誤り検出となる確率は多くなる。
【0003】
従来、送信側のスケジューラは、受信側で早期に無線誤りを検出できるようにデータの送信順を決定することで、受信側の低消費電力化を実現していた。このような技術が、下記特許文献1において開示されている。具体的に、送信側では、フィラービットの少ないコードブロックから送信するようスケジューラからマッピング部に指示することにより、受信側では早期に誤りを検出し処理を中断することができ、受信側の消費電力低減を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/041067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、受信側の消費電力の低減のみを目的としている。そのため、送信側の消費電力の低減には寄与しない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、送信側の消費電力を低減可能な基地局装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の端末との間でデータの送受信を行う基地局装置であって、データの送受信に割り当て可能な無線リソース量と、データの送受信処理にかかるサイクル数と、端末との間の無線回線品質から求めたモデムパラメータと、を用いて自装置で処理可能なデータ量を算出するモデム処理可能データ量算出手段と、前記モデム処理可能データ量算出手段で算出された処理可能データ量に基づいて、データを送信または受信する端末をスケジューリングするスケジューリング手段と、を備え、前記モデム処理可能データ量算出手段は、残無線リソース量で送受信可能なデータ量および残サイクル数で処理可能なデータ量を算出し、前記スケジューリング手段は、端末との間で送信または受信するデータ量のうち、前記残無線リソース量で送受信可能なデータ量および前記残サイクル数で処理可能なデータ量の小さい方のデータ量の分をスケジューリングする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送信側の消費電力を低減できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ラウンドロビンアルゴリズムによるスケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施の形態1の基地局装置の構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1のスケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、モデム処理可能データ量算出部に入出力される情報を示す図である。
【図5】図5は、スケジューリング処理の処理サイクルと無線リソースの変化の様子を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2の基地局装置におけるスケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、スケジューリング処理の処理サイクルと無線リソースの変化の様子を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態3のスケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図9】図9は、スケジューリング処理の処理サイクルと無線リソースの変化の様子を示す図である。
【図10】図10は、基地局装置からの距離と無線回線品質との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる基地局装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
基地局装置のスケジューリング部の動作として、1つの端末への送信データの送出順を決定する他、基地局装置から複数端末への送信順、あるいは複数端末から基地局装置への送信順を決定する動作がある。このような複数端末を対象とするスケジューリングアルゴリズムとして、最も一般的なラウンドロビンアルゴリズムの動作について簡単に説明する。図1は、ラウンドロビンアルゴリズムによるスケジューリング処理を示すフローチャートである。ここでは無線フレームごとに動作する処理を示す。
【0012】
まず、スケジューリングを行う基地局装置では、記憶している処理開始端末番号(i)を読み出し、本無線フレームでの最初の処理対象端末とする(ステップS1)。データを有するすべての端末のスケジューリングが完了していない場合(ステップS2:No)、基地局装置では、処理対象端末Aiの無線回線品質から適切なモデムパラメータ(変調方式または符号化率等)を決定する(ステップS3)。
【0013】
つぎに、基地局装置では、使用可能な残無線リソース(周波数、時間あるいは拡散コード)を使用して処理対象端末Aiが送信あるいは受信可能なデータ量Nr(Ai)を算出し(ステップS4)、処理対象端末Aiが実際に送信あるいは受信するデータ量のうち、算出したデータ量Nr(Ai)分をデータ量N(Ai)として無線リソースの割り当ておよびモデム処理のパラメータ設定を行うスケジューリングをする(ステップS5)。
【0014】
基地局装置は、スケジューリング後に残無線リソースの有無を確認する(ステップS6)。残無線リソースが有る場合(ステップS6:No)、基地局装置は、送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を移行する(ステップS7)。そして、ステップS2の処理に戻って上記処理を繰り返し実行する。
【0015】
データを有するすべての端末のスケジューリングが完了した場合(ステップS2:Yes)、またはスケジューリング後に残無線リソースが無い場合(ステップS6:Yes)、基地局装置は、次の無線フレームでの最初の処理対象端末として送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を記憶して(ステップS8)、処理を終了する。
【0016】
つづいて、本実施の形態においてスケジューリングを行う基地局装置について説明する。図2は、本実施の形態の基地局装置の構成例を示す図である。基地局装置は、スケジューリング部1と、送信側MAC(Media Access Control)処理部2と、CRC符号化部コードブロック分割部3と、CRC符号化部ターボ符号化部レートマッチング部4と、変調部5と、マッピング部6と、無線送信処理部7と、アンテナ部8と、無線受信処理部9と、復調部10と、レートデマッチング部チャネル復号部CRC復号部11と、コードブロック結合部CRC復号部12と、受信側MAC処理部13と、モデム処理可能データ量算出部14と、を備える。
【0017】
スケジューリング部1は、モデム処理可能データ量算出部14で算出された処理可能データ量に基づいて、基地局装置において端末との間で行うデータの送受信をスケジューリングする。送信側MAC処理部2は、図示しない上位装置等から入力したデータを分割し、トランスポートブロックのサイズで出力する。CRC符号化部コードブロック分割部3は、送信側MAC処理部2から入力したトランスポートブロックに対してCRC符号化を行い、さらにコードブロックに分割する。CRC符号化部ターボ符号化部レートマッチング部4は、入力したコードブロックに対してCRC符号化およびターボ符号化を行い、さらにレートマッチングする。変調部5は、CRC符号化部ターボ符号化部レートマッチング部4から入力したコードブロックを変調し、データシンボルを生成する。マッピング部6は、スケジューリング部1からのスケジューリング情報に基づいて、変調部5から入力したデータシンボルをマッピングする。無線送信処理部7は、マッピング後のデータシンボルに対してD/A変換等の送信処理を行ってアンテナ部8から送信を行う。アンテナ部8は、端末との間でデータの送受信を行う。
【0018】
無線受信処理部9は、アンテナ部8で受信したデータに対してA/D変換等の受信処理を行う。復調部10は、無線受信処理部9で受信処理されたデータを復調する。レートデマッチング部チャネル復号部CRC復号部11は、復調されたデータをレートデマッチングし、さらにチャネル復号およびCRC復号を行う。コードブロック結合部CRC復号部12は、レートデマッチング部チャネル復号部CRC復号部11から入力したコードブロックのデータを結合してトランスポートブロックのサイズとし、さらにCRC復号を行う。受信側MAC処理部13は、トランスポートブロックを結合したデータを、図示しない上位装置等へ出力する。モデム処理可能データ量算出部14は、無線リソースやサイクル数等の情報を用いて無線フレーム単位で処理可能なデータ量を算出する。
【0019】
なお、図1に示すように、CRC符号化部コードブロック分割部3、CRC符号化部ターボ符号化部レートマッチング部4、変調部5、マッピング部6、復調部10、レートデマッチング部チャネル復号部CRC復号部11、およびコードブロック結合部CRC復号部12は、レイヤ1処理プロセッサに実装されているものとする。また、スケジューリング部1、送信側MAC処理部2、受信側MAC処理部13、およびモデム処理可能データ量算出部14は、レイヤ2処理プロセッサに実装されているものとする。スケジューリング部1は、スケジューリングした結果に基づいて、レイヤ1処理プロセッサに実装されている各構成を制御する。
【0020】
レイヤ1のモデム処理が主にプロセッサで動作するソフトウエアにて実現される場合、基地局装置は、低クロックのプロセッサを用いることで消費電力を低減できると考えられる。しかしながら、低クロックのプロセッサを用いた場合、モデムソフトウエアの処理破綻が問題となる。そのため、本実施の形態では、低クロックのプロセッサを用いる場合にも、基地局装置において、モデムソフトウエアの処理破綻を回避可能なスケジューリング処理について説明する。
【0021】
つづいて、本実施の形態におけるスケジューリング処理について説明する。図3は、本実施の形態のスケジューリング処理を示すフローチャートである。図1のフローチャートと同一の処理については同一番号を付与する。ここでは、図1に追加した処理を中心に説明する。なお、図1に示すフローチャートの処理において、基地局装置では、モデム処理可能データ量算出部14がステップS4の処理を行い、その他の処理はスケジューリング部1が行う。
【0022】
基地局装置では、モデム処理可能データ量算出部14が、処理対象端末Aiが送信あるいは受信可能なデータ量Nr(Ai)を算出後(ステップS4)、つぎに、処理対象端末Aiとの送受信を行うにあたりモデム処理プロセッサの残サイクル数から処理可能なデータ量Ns(Ai)を算出する(ステップS11)。
【0023】
つぎに、基地局装置では、スケジューリング部1が、求めたデータ量Ns(Ai)と、ステップS4ですでに求めている残無線リソースで送受信可能なデータ量Nr(Ai)から小さい方の数値をデータ量N(Ai)として求める(ステップS12)。スケジューリング部1は、処理対象端末Aiが実際に送信あるいは受信するデータ量のうちデータ量N(Ai)分について無線リソースの割り当ておよびモデム処理のパラメータ設定を行うスケジューリングを行う(ステップS5)。
【0024】
スケジューリング後に残無線リソースが有る場合(ステップS6:No)、スケジューリング部1は、残サイクル数が0か否かを確認する(ステップS13)。残サイクルが有る場合(ステップS13:No)、スケジューリング部1は、送信データあるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を移行する(ステップS7)。一方、残サイクルが0の場合(ステップS13:Yes)、スケジューリング部1は、次の無線フレームでの最初の処理対象端末として送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を記憶して(ステップS8)、処理を終了する。
【0025】
ここで、モデム処理可能データ量算出部14における処理可能データ量の算出処理について説明する。モデム処理可能データ量算出部14は、図3に示すフローチャートのステップS4、S11においてスケジューリング部1から呼び出される。図4は、モデム処理可能データ量算出部14に入出力される情報を示す図である。モデム処理可能データ量算出部14は、無線リソース量、モデムパラメータ、およびサイクル数を入力すると、処理可能データ量を出力する。
【0026】
モデム処理可能データ量算出部14は、ステップS4ではサイクル数を無制限として処理可能データ量を出力し、ステップS11では無線リソース量を無制限として処理可能データ量を出力する。なお、モデム処理可能データ量算出部14は、これらの2つの処理を分けることなく一連の処理で行うことも可能である。
【0027】
モデム処理可能データ量算出部14は、入力パラメータから処理可能なデータ量を導出する計算式あるいは導出テーブルをあらかじめ保持している。例えば、モデムパラメータには依存せず、サイクル数(所要サイクル数)、処理可能データ量(データ量)、および無線リソース量の間に以下に示す式(1)の関係がある場合、この式(1)を用いて処理可能データ量を求めることができる。
【0028】
所要サイクル数=11.5×データ量+672×無線リソース量 …(1)
【0029】
なお、式(1)の構成あるいは各係数は、モデム処理の実装に依存する。式(1)の導出手段は、例えば、実測値のプロファイリングなどがあるが、これに限定するものではなく、その他の手法を用いてもよい。また、式ではなく、テーブル引き、あるいはそれらの組合せなど、算出方法は1つの方法に限定するものではない。
【0030】
図5は、スケジューリング処理の処理サイクルと無線リソースの変化の様子を示す図である。図5(a)の縦軸は処理サイクル、図5(b)の縦軸は無線リソース、横軸はそれぞれ時間(無線フレーム)を示す。2番目の無線フレームでは、端末1の送信あるいは受信データ量は十分多く、また、無線リソースもまだ上限に達していないものの、処理サイクルが上限に達している。そのため、スケジューリング部1では、データ量を制限し処理サイクルの上限を超過しないようにスケジューリングを実施している。なお、無線リソースとしては、周波数があるがこれに限定するものではなく、時間や拡散コード等がある。
【0031】
レイヤ1のモデム処理が主にプロセッサで動作するソフトウエアにて実現されることを前提とした場合に、基地局装置は、各無線信号処理の所要サイクル数情報をあらかじめ保持し、その情報を利用してプロセッサのトータルサイクルを超過しないように端末数あるいはデータ量を制限するスケジューリングを行う。このようなスケジューリングを行うことにより、基地局装置では、モデムソフトウエアの処理破綻を回避することが可能となる。
【0032】
すなわち、基地局装置では、例えば、低クロックのプロセッサを用いる場合にも、上記スケジューリングを行うことでモデムソフトウエアの処理破綻を回避することが可能となる。そのため、基地局装置は、低クロックのプロセッサを用いた場合に、モデムソフトウエアの処理破綻を回避したスケジューリングを行うことができ、かつ、消費電力を低減することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態では、基地局装置は、自装置の処理性能に応じて、割り当て可能な無線リソース、またはデータの送信または受信に必要な処理サイクルを超えない範囲でスケジューリングを行うこととした。これにより、基地局装置では、低クロックのプロセッサを用いた場合に、モデムソフトウエアの処理破綻を回避しつつ、自装置の消費電力を低減することができる。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態1では、プロセッサのトータルサイクルを超過しないように端末数あるいはデータ量を制限してスケジューリングすることで、モデムソフトウエアの処理破綻を回避し、消費電力を低減した。本実施の形態では、無線リソースを使い切る前に割り当てを停止することになった場合には、無線リソースを使いきるように再スケジューリングを実施する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0035】
基地局装置においてスケジューリングする際、無線リソース量を変えずに処理サイクル数を削減するためには、送信あるいは受信データ量の削減が必要である。この場合、同一端末であればデータ量を削減すると必要な無線リソース量も少なくなるが、無線回線品質がより悪い端末であれば無線リソース量が同じでも送信あるいは受信データ量は少なくなるので必要な無線リソースが少なくならない。従って、本実施の形態では、基地局装置は、より無線回線品質の悪い端末を選択し直すことによって、無線リソースを使いきるように再スケジューリングを実施する。
【0036】
つづいて、本実施の形態におけるスケジューリング処理について説明する。図6は、本実施の形態のスケジューリング処理を示すフローチャートである。図3のフローチャートと同一の処理については同一番号を付与する。ここでは、図3に追加した処理を中心に説明する。なお、基地局装置の構成は実施の形態1(図2参照)と同一である。
【0037】
本実施の形態では、後述するように端末選択処理を追加していることから、スケジューリング部1では、処理の始めに端末選択処理フラグをOFFにする処理を追加する(ステップS21)。その後のステップS1〜S13までの処理の処理は実施の形態1(図3参照)と同一である。
【0038】
スケジューリング部1では、端末Aiをスケジューリングした結果、残無線リソースは有るが残サイクルが無い場合(ステップS13:Yes)、まず、端末Aiを割り当てた場合の、残無線リソース量を記憶し(ステップS22)、端末Aiのスケジューリングをキャンセルして残無線リソース量および残サイクル量を、端末Aiに割り当てる前の値に戻す(ステップS23)。
【0039】
スケジューリング部1では、以降、残無線リソース量が少なくなるような端末を選択する処理に移行することを示す端末選択処理フラグをONし(ステップS24)、送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を移行する(ステップS7)。そして、ステップS2の処理に戻って図6に示す前述の処理を繰り返し実行する。
【0040】
データを有するすべての端末のスケジューリングが完了した場合(ステップS2:Yes)、スケジューリング部1は、端末選択処理フラグがONかどうかを確認する(ステップS25)。端末選択処理フラグがONの場合(ステップS25:Yes)、スケジューリング部1は、ステップS22で記憶した端末Aiを割り当てた場合の残無線リソース量のうち、最も残リソースが少なくなる端末Aiをスケジューリングする(ステップS26)。その後、スケジューリング部1は、次の無線フレームでの最初の処理対象端末として送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を記憶して(ステップS8)、処理を終了する。
【0041】
一方、データを有するすべての端末のスケジューリングが完了したが(ステップS2:Yes)、端末選択処理フラグがOFFの場合(ステップS25:No)、スケジューリング部1は、次の無線フレームでの最初の処理対象端末として送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を記憶して(ステップS8)、処理を終了する。
【0042】
また、残無線リソースが0になった場合(ステップS6:Yes)、スケジューリング部1は、端末選択処理フラグがON/OFFに係わらず、次の無線フレームでの最初の処理対象端末として送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を記憶して(ステップS8)、処理を終了する。
【0043】
なお、図6に示すフローチャートでは、スケジューリング部1は、データを有するすべての端末についてスケジューリングした場合の残無線リソース量を導出し、残無線リソース量が最も少ない端末をスケジューリングする(ステップS26)こととしているが、例えば、処理を簡単化するために「すべての端末について」ではなくその数に制約をつけてもよい。これにより、伝送遅延の悪化を防止することができる。
【0044】
図7は、スケジューリング処理の処理サイクルと無線リソースの変化の様子を示す図である。実施の形態1では、2番目の無線フレームでは無線リソースに余りが生じていた。本実施の形態では、端末1よりも無線回線品質が悪いためにデータ量が少なくなり処理サイクル数が少ない端末2を選択し直す。これにより、無線リソースを使い切ることが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態では、基地局装置は、無線リソースに余りがある場合には無線リソースを使いきるように、端末の再選択を実施することとした。これにより、無線リソースを余らすことがなくなることから、実施の形態1の効果に加えて、さらに、無線リソースの利用効率を向上させることができる。
【0046】
実施の形態3.
実施の形態2では、無線リソースに余りがある場合には無線リソースを使いきるように端末の再選択を実施することで、無線リソースの余りを削減して有効に利用した。本実施の形態では、処理サイクル当りのデータ量を増加させることで効率化を図り処理サイクル数を低減する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0047】
図1に示す従来のラウンドロビンアルゴリズムでは、小さなデータでも順番が回ってきた場合にはリソース割り当てを実施する。一方、モデム処理においては、小さなデータ量を処理するよりも大きなデータ量をまとめて処理する方が、処理サイクル当りのデータ量を増加させることが可能な場合がある。具体的には、小さなデータについてはすぐに送信せず、データ量が増えるまでデータを溜めてから送ることで、割り当てサイズを大きくし、1回に割り当てる無線リソース量を多くすることで効率化を図ることが可能である。
【0048】
つづいて、本実施の形態におけるスケジューリング処理について説明する。図8は、本実施の形態のスケジューリング処理を示すフローチャートである。図3のフローチャートと同一の処理については同一番号を付与する。ここでは、図3の処理に追加した処理を中心に説明する。なお、基地局装置の構成は実施の形態1(図2参照)と同一である。
【0049】
ステップS12でデータ量N(Ai)を求めた後、スケジューリング部1は、端末Aiで伝送可能なデータ量N(Ai)と実際の端末Aiのデータ量を比較する(ステップS31)。実際の端末Aiのデータ量の方が小さい場合(ステップS31:Yes)、スケジューリング部1は、さらに、端末Aiの割り当てをスキップした回数をカウントしているSkip回数(Ai)とあらかじめ規定される閾値(TH)とを比較する(ステップS32)。
【0050】
Skip回数(Ai)が閾値以下の場合(ステップS32:No)、スケジューリング部1は、このときの端末Aiのデータ量を記憶し(ステップS33)、Skip回数(Ai)に1を加算して(ステップS34)、送信あるいは受信データを有する次の端末に処理対象端末を移行する(ステップS7)。そして、ステップS2の処理に戻って図8に示す前述の処理を繰り返し実行する。
【0051】
一方、Skip回数(Ai)が閾値より大きい場合(ステップS32:Yes)、スケジューリング部1は、これ以上のSkipは伝送遅延の悪化となることから、小さなデータ量での割り当てを実施する。具体的には、ステップS33で記憶していた端末Aiのデータ量の中から、最も大きいデータ量の端末Aiを割り当てるスケジューリングを行う(ステップS35)。そして、スケジューリング部1は、Skip回数(Ai)を0に初期化する(ステップS36)。
【0052】
すなわち、スケジューリング部1は、伝送可能なデータ量N(Ai)よりも実際の端末Aiのデータ量の方が小さい場合、前記閾値の数だけ複数の端末Aiのデータ量を確認し、その中から最も大きなデータ量をもつ端末Aiをスケジューリングする。
【0053】
なお、実際の端末Aiのデータ量がデータ量N(Ai)以上の場合(ステップS31:No)、スケジューリング部1は、データ量N(Ai)分について無線リソースの割り当ておよびモデム処理のパラメータ設定を行うスケジューリングを行う(ステップS5)。
【0054】
図9は、スケジューリング処理の処理サイクルと無線リソースの変化の様子を示す図である。実施の形態1では、2番目の無線フレームでは無線リソースに余りが生じていた。本実施の形態では、データ量の大きい端末1を選択し、端末1のデータ量を増加させることで無線リソースの利用効率を向上させた。これにより、無線リソースを使い切ることが可能となる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態では、基地局装置は、伝送可能なデータ量よりも大きいデータ量をもつ端末が無い場合、データ量の大きい端末を選択することにより、処理サイクル当りのデータ量を増加させることで効率化を図る。そして、処理サイクル数を低減して効率を向上することで、無線リソースを余らすことがなくなることから、実施の形態1の効果に加えて、さらに、無線リソースの利用効率を向上させることができる。
【0056】
実施の形態4.
実施の形態3では、処理効率向上の手法として1度に処理するデータ量を増加させた。本実施の形態では、無線品質過多の場合における受信処理を簡易化することで所要サイクル数の削減を実施する。実施の形態1〜3と異なる部分について説明する。
【0057】
図10は、基地局装置からの距離と無線回線品質との関係を示す図である。基地局装置に近いほど無線回線品質が良いことを示す。また、スケジューリング部1は、例えば、基地局装置に近いところではQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、遠いところでは16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)の変調方式を選択し、また、各変調方式において、基地局装置に近いところでは符号化率を大きく、遠いところでは符号化率を小さくすることを示す。
【0058】
スケジューリング部1において各端末の無線回線品質に応じて変調方式および符号化率を選択しても、図10に示すように基地局装置の近傍の端末では無線回線品質が高く、変調方式や符号化率を調整してもまだ品質過多となる場合がある。そこで、スケジューリング部1は、品質過多となる端末に対しては、受信モデム処理のためのサイクル数を削減するため、簡易な受信処理を選択する。
【0059】
例えば、スケジューリング部1は、イコライザ処理を簡単化する。イコライザ処理は、受信後に無線伝送路の特性によって変化を受けた信号波形の復元や変化の最小化を目的に、受信信号の周波数特性を調整する処理である。このイコライザ処理には種類があり、信号波形の復元効果の違いおよび所要サイクル数の違いがある。
【0060】
また、他の方法としては、スケジューリング部1は、受信アンテナ数を削減する。例えば、MIMO(Multiple Input Multiple Output)では、複数アンテナを用いて受信を行う。ここで、無線回線品質が過多の場合には、受信するアンテナ数を削減し、MIMO信号処理量を削減する。
【0061】
つづいて、本実施の形態における基地局装置の動作について説明する。なお、基地局装置の構成は、実施の形態1と同一である。スケジューリング部1の動作については、実施の形態1〜3のフローチャートにおけるステップS5において、変調方式および符号化率の選択に加え、さらにイコライザ処理の処理種別あるいは受信アンテナ数の選択を追加する。また、モデム処理可能データ量算出部14は、実施の形態1〜3の動作に加え、イコライザ処理の処理種別ごと、および受信アンテナ数ごとに処理サイクル数あたりの処理可能データ量が導出できる機能を追加する。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態では、基地局装置は、無線品質過多の場合、受信処理を簡易化する。これにより、所要サイクル数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる基地局装置は、端末とのデータの送受信に有用であり、特に、複数の端末とのデータの送受信に適している。
【符号の説明】
【0064】
1 スケジューリング部
2 送信側MAC処理部
3 CRC符号化部コードブロック分割部
4 CRC符号化部ターボ符号化部レートマッチング部
5 変調部
6 マッピング部
7 無線送信処理部
8 アンテナ部
9 無線受信処理部
10 復調部
11 レートデマッチング部チャネル復号部CRC復号部
12 コードブロック結合部CRC復号部
13 受信側MAC処理部
14 モデム処理可能データ量算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末との間でデータの送受信を行う基地局装置であって、
データの送受信に割り当て可能な無線リソース量と、データの送受信処理にかかるサイクル数と、端末との間の無線回線品質から求めたモデムパラメータと、を用いて自装置で処理可能なデータ量を算出するモデム処理可能データ量算出手段と、
前記モデム処理可能データ量算出手段で算出された処理可能データ量に基づいて、データを送信または受信する端末をスケジューリングするスケジューリング手段と、
を備え、
前記モデム処理可能データ量算出手段は、残無線リソース量で送受信可能なデータ量および残サイクル数で処理可能なデータ量を算出し、
前記スケジューリング手段は、端末との間で送信または受信するデータ量のうち、前記残無線リソース量で送受信可能なデータ量および前記残サイクル数で処理可能なデータ量の小さい方のデータ量の分をスケジューリングする、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記スケジューリング手段は、スケジューリング後の残無線リソース量および残サイクルを確認し、確認した結果、いずれも0でないときは他の端末についてスケジューリングを行い、一方、いずれかまたは両方が0のときはスケジューリングを終了し、
前記モデム処理可能データ量算出手段は、前記他の端末について、残無線リソース量で送受信可能なデータ量および残サイクル数で処理可能なデータ量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記スケジューリング手段は、スケジューリング後の残無線リソース量および残サイクルを確認し、確認した結果、いずれも0でないときは他の端末についてスケジューリングを行い、残無線リソース量が0のときはスケジューリングを終了し、残無線リソース量は有るが残サイクル数が無い場合、スケジューリングされなかった他の端末をスケジューリングしたときの残無線リソース量を確認し、残無線リソース量が最も小さくなる端末を再スケジューリングし、
前記モデム処理可能データ量算出手段は、前記他の端末について、残無線リソース量で送受信可能なデータ量および残サイクル数で処理可能なデータ量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スケジューリング手段は、端末が送信または受信するデータ量が前記小さい方のデータ量よりも小さい場合、規定の数の端末についてデータ量を確認し、最もデータ量の大きい端末をスケジューリングする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記スケジューリング手段は、端末との間の無線回線品質が規定値以上の場合、受信処理に必要な一部の処理を削減し、受信処理にかかるサイクル数を削減する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基地局装置。
【請求項6】
複数の端末との間でデータの送受信を行う基地局装置のスケジューリング方法であって、
データの送受信に割り当て可能な無線リソース量と、データの送受信処理にかかるサイクル数と、端末との間の無線回線品質から求めたモデムパラメータと、を用いて、残無線リソース量で送受信可能なデータ量および残サイクル数で処理可能なデータ量を算出する処理可能データ量算出ステップと、
前記残無線リソース量で送受信可能なデータ量および前記残サイクル数で処理可能なデータ量の小さい方のデータ量を求めるデータ量決定ステップと、
端末との間で送信または受信するデータ量のうち、前記小さい方のデータ量の分をスケジューリングするスケジューリングステップと、
を含むことを特徴とするスケジューリング方法。
【請求項7】
さらに、
前記スケジューリングステップにおけるスケジューリング後の残無線リソース量および残サイクルを確認し、確認した結果、いずれも0でないときは他の端末について前記処理可能データ量算出ステップから前記スケジューリングステップまでの処理を繰り返し実行し、一方、いずれかまたは両方が0のときはスケジューリングを終了するスケジューリング終了判定ステップ、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のスケジューリング方法。
【請求項8】
さらに、
前記スケジューリングステップにおけるスケジューリング後の残無線リソース量および残サイクルを確認し、確認した結果、いずれも0でないときは他の端末について前記処理可能データ量算出ステップから前記スケジューリングステップまでの処理を繰り返し実行し、一方、残無線リソース量が0のときは処理を終了するスケジューリング終了判定ステップと、
前記スケジューリングステップで端末をスケジューリングした結果、残無線リソース量は有るが残サイクル数が無い場合、スケジューリングされなかった他の端末をスケジューリングしたときの残無線リソース量を確認し、残無線リソース量が最も小さくなる端末を再スケジューリングする再スケジューリングステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のスケジューリング方法。
【請求項9】
前記スケジューリングステップでは、端末が送信または受信するデータ量が前記小さい方のデータ量よりも小さい場合、規定の数の端末についてデータ量を確認し、最もデータ量の大きい端末をスケジューリングする、
ことを特徴とする請求項6または7に記載のスケジューリング方法。
【請求項10】
さらに、
端末との間の無線回線品質が規定値以上の場合、受信処理に必要な一部の処理を削減し、受信処理にかかるサイクル数を削減するサイクル数削減ステップ、
を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載のスケジューリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate