説明

基地局装置

【課題】ブロードキャスト送信を効率的に実行する技術を提供する。
【解決手段】
生成部36は、端末装置に報知すべき信号を生成する。変復調部24、RF部22は、端末装置が信号を報知可能な第1期間に時間分割多重された第2期間において、生成した信号を報知する。ここでは、所定の単位期間において、第1期間よりも第2期間の方が長くなるように規定されている。また、所定の単位期間において、第2期間が最大値になった場合においても、第1期間として、一定期間が確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に所定の情報が含まれた信号を報知する基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号が送信される。
【0005】
一方、ITS(Intelligent Transport Systems)のような車車間通信に無線LANを適用する場合、不特定多数の端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。しかしながら、交差点などでは、車両数の増加、つまり端末装置数の増加がトラヒックを増加させることによって、パケット信号の衝突の増加が想定される。その結果、パケット信号に含まれたデータが他の端末装置へ伝送されなくなる。このような状態が、車車間通信において発生すれば、交差点の出会い頭の衝突事故を防止するという目的が達成されなくなる。さらに、車車間通信に加えて路車間通信が実行されれば、通信形態が多様になる。その際、路車間通信によってブロードキャスト送信されるデータ量もさまざまである。周波数の利用効率を向上させるために、効率的な通信が望まれる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブロードキャスト送信を効率的に実行する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の基地局装置は、端末装置に報知すべき信号を生成する生成部と、端末装置が信号を報知可能な第1期間に時間分割多重された第2期間において、生成部において生成した信号を報知する報知部とを備える。所定の単位期間において、第1期間よりも第2期間の方が長い。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブロードキャスト送信を効率的に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1の基地局装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)−(d)は、図1の通信システムにおいて規定されるフレームのフォーマットを示す図である。
【図4】図4(a)−(b)は、図1の通信システムにおいて規定されるレイヤの構成を示す図である。
【図5】図5(a)−(b)は、図1の通信システムにおいて規定されるフレームの別のフォーマットを示す図である。
【図6】図1の車両に搭載された端末装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、前述の情報をもとに車両の接近等を認識する。ここで、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。
【0012】
制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。つまり、端末装置が制御情報の内容を認識することによって、路車間通信と車車間通信との干渉が低減される。なお、基地局装置からの制御情報を受信できない端末装置、つまり基地局装置によって形成されたエリアの外に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なくCSMA方式にてパケット信号を送信する。
【0013】
ここで、ひとつのフレームを構成しているサブフレーム数の最大値、ひとつの路車送信期間の最大値は、それぞれ規定されている。しかしながら、このような規定が望ましくない場合がある。ひとつ目は、基地局装置からブロードキャスト送信すべきデータのサイズが大きくなる場合である。ひとつのサブフレームに設定された路車送信期間にてブロードキャスト送信可能なデータのサイズよりも、ブロードキャスト送信すべきデータのサイズが大きい場合、基地局装置は、ふたつ以上のサブフレームのそれぞれに路車送信期間を設定する。その結果、受信側の端末装置において、受信を開始してから終了するまでの期間が長くなり、処理すべきデータの遅延処理がさらに必要になる。これは、受信処理の複雑化をまねく。そのため、路車送信期間を延長することが望まれる。また、路車送信期間を延長した場合であっても、車車間通信のために車車送信期間を確保することが望まれる。
【0014】
ふたつ目は、ある程度狭いエリアに設置された基地局装置数が増加する場合である。ひとつのフレームを構成しているサブフレーム数を超えた数の基地局装置が設置される場合、複数の基地局装置が同一のサブフレームに路車送信期間を設定する。複数の基地局装置間の距離が小さければ、干渉が発生する。そのため、ひとつのフレームを構成しているサブフレーム数を増加することが望まれる。このような状況に対応するために、実施例に係る基地局装置は、サブフレームにおいて、車車送信期間よりも長くなるような路車送信期間を設定する。ブロードキャスト送信すべきデータのサイズが大きくなる場合、路車送信期間が長くされる。なお、その場合であっても、車車送信期間は確保される。一方、多重化すべき基地局装置数が増加する場合、サブフレーム数が増加される。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク202を含む。ここでは、第1車両12aのみに示しているが、各車両12には、端末装置14が搭載されている。また、エリア212が、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214が、エリア212の外側に形成されている。
【0016】
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
【0017】
通信システム100において、基地局装置10は、交差点に固定して設置される。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、フレーム中の複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。路車送信期間において、複数のパケット信号が報知されることもある。パケット信号には、路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報やフレームに関する制御情報も含まれる。また、パケット信号には、制御情報の他に、道路線形、エリア、障害物に関する情報や、信号情報等のデータが必要に応じて含まれる。
【0018】
端末装置14は、前述のごとく、車両12に搭載されているので、移動可能である。端末装置14は、基地局装置10からのパケット信号を受信すると、パケット信号に含まれた制御情報、特に路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報やフレームに関する情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置14のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。端末装置14は、車車送信期間においてパケット信号を報知する。車車送信期間の説明は後述するが、これは、フレーム中の路車送信期間とは異なった期間であるといえる。ここで、車車送信期間においてCSMA/CAが実行される。
【0019】
端末装置14は、データを取得し、データをパケット信号に格納する。データには、例えば、存在位置に関する情報が含まれる。また、端末装置14は、基地局装置10から受信した制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置14によって転送される。一方、端末装置14は、エリア外214に存在していると推定した場合、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。
【0020】
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、制御部28、ネットワーク通信部30を含む。また、処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
【0021】
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置14や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
【0022】
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0023】
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0024】
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。さらに、フレーム規定部32は、フレームに含まれるサブフレーム数に関する指示を外部から受けつける。フレーム規定部32は、指示に応じてフレームを分割することによって、複数のサブフレームを生成する。なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。
【0025】
図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。これは、端末装置14が報知に使用可能なサブフレームを時間多重することによってフレームが形成されているといえる。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。Nは、8以外であってもよい。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
【0026】
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。ここでは、選択すべきサブフレームに関する指示を外部から受けつける。選択部34は、指示に応じたサブフレームを選択する。なお、フレームに含まれた各サブフレームには、基地局装置10が報知に使用可能な路車送信期間を設定可能である。
【0027】
これとは別に、選択部34は、自動的にサブフレームを選択してもよい。その際、選択部34は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置14からの復調結果を入力する。選択部34は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。
【0028】
これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
【0029】
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間に続いて車車送信期間を設定する。そのため、これらは時間分割多重されている。車車送信期間とは、端末装置14がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間においてパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置14がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
【0030】
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、路車送信期間を設定するために、互いに異なったサブフレームを選択する。図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
【0031】
生成部36は、選択部34から、サブフレームの番号を受けつける。また、生成部36は、路車送信期間の長さに関する指示を外部から受けつける。生成部36は、受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに、受けつけた長さの路車送信期間を設定し、路車送信期間において、端末装置14に報知すべきパケット信号を生成する。ひとつの路車送信期間において複数のパケット信号が送信される場合、生成部36は、それらを生成する。パケット信号は、例えば、制御情報、データペイロードによって構成されている。制御情報には、フレームを構成しているサブフレーム数、路車送信期間を設定したサブフレーム番号、路車送信期間の長さに関する情報等が含まれている。
【0032】
また、生成部36は、データをデータペイロードに格納させる。これらのデータは、ネットワーク通信部30によって、図示しないネットワーク202から取得される。処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。路車送信期間において複数のパケット信号がブロードキャスト送信される場合、それらは、SIFS(Short Inter Frame Space)で配置される。制御部28は、基地局装置10全体の処理を制御する。
【0033】
以下では、路車送信期間の設定、静的データおよび動的データに関する処理を詳細に説明する。図4(a)−(b)は、通信システム100において規定されるレイヤの構成を示す。図4(a)が送信処理のレイヤ構成であり、図4(b)が受信処理のレイヤ構成である。そのため、路車間通信の場合、前者が基地局装置10におけるレイヤ構成に相当し、後者が端末装置14におけるレイヤ構成に相当する。ここでは、図4(a)を説明する。送信制御レイヤ、セキュリティレイヤ、MACレイヤ、PHYレイヤは、図2の変復調部24、処理部26に含まれ、無線信号送信は、図2のRF部22に含まれる。また、セキュリティレイヤ、MACレイヤ、PHYレイヤは、ベースバンド処理としてまとめられるとともに、無線信号送信は、RF処理としてまとめられる。
【0034】
さらに、説明を具体的にするために、規定された最大値の路車送信期間で送信可能なデータサイズは4kBであり、送信対象となるデータのサイズは4kB以下であり、データペイロードの最大サイズは1.5kBであるとする。なお、これらの値に限定されるものではない。また、上記の値では、セキュリティ処理や符号化によって生成される冗長ビットを無視しており、それらが考慮されてもよい。
【0035】
送信制御レイヤは、データを取得する。送信制御レイヤは、データをセキュリティレイヤに出力する。セキュリティレイヤは、データにセキュリティ処理を実行する。MACレイヤは、セキュリティレイヤからのデータをもとにMACフレームを生成する。その際、データペイロードの最大サイズよりも小さくなるように、セキュリティレイヤからのデータが分割される。その結果、複数のMACフレームが生成される。PHYレイヤは、MACフレームを格納するようにパケット信号を生成し、IFFTを実行する。MACフレームが複数であれば、生成されるパケット信号も複数である。図4(b)については、後述する。
【0036】
以下では、基地局装置10によって設定される路車送信期間を説明する。本実施例に係る通信システム100では、サブフレームにおいて、車車送信期間よりも路車送信期間の方が長くなるような設定が規定される。このような規定は、次の2種類のフォーマットによって実現される。ひとつ目では、サブフレーム数を増加させ、サブフレーム内の路車送信期間が相対的に車車送信期間よりも長くなるように設定される。その結果、多重可能な基地局装置10の数が増加する。
【0037】
ふたつ目では、サブフレーム数を増加させずに、サブフレーム内の路車送信期間が相対的に車車送信期間よりも長くなるようになされる。その結果、ひとつの路車送信期間において送信可能なデータのサイズが増加する。なお、以上のふたつの場合において、サブフレームでの路車送信期間が大きくなっても、車車送信期間として、一定期間が確保されている。
【0038】
このような設定は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36への指示の入力によって実現される。具体的には、図示しない操作部を介して、フレーム規定部32は、フレームに含まれるサブフレーム数に関する指示を受けつけ、選択部34は、選択すべきサブフレームに関する指示を受けつけ、生成部36は、路車送信期間の長さに関する指示を受けつける。その際に、前述のふたつの場合に対応した値が入力される。特に、サブフレームの長さは、周囲の基地局装置10と同一の値に設定する必要があるので、これを考慮した値が入力される。
【0039】
図5(a)−(b)は、通信システム100において規定されるフレームの別のフォーマットを示す。図5(a)は、ひとつ目の場合におけるフレームフォーマットを示す。ここでは、サブフレーム数Nは、「24」であるとする。路車送信期間は、車車送信期間よりも長くなっている。
【0040】
図5(b)は、ふたつ目の場合におけるフレームフォーマットを示す。サブフレーム数Nは、「16」であるとする。ここでは、路車送信期間の長さが、図5(a)の場合よりも長くなっている。その結果、路車送信期間は、図5(a)の場合と同様に、車車送信期間よりも長くなっている。
【0041】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0042】
図6は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58を含む。処理部56は、タイミング特定部60、転送決定部62、取得部64、生成部66、通知部70を含む。タイミング特定部60は、抽出部72、キャリアセンス部74を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。ここでは差異を中心に説明する。
【0043】
変復調部54は、処理部56は、受信処理において、図示しない他の端末装置14や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信し、車車送信期間において、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。
【0044】
抽出部72は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。具体的に説明すると、抽出部72は、パケット信号に含まれた制御情報をもとに、基地局装置10からのパケット信号であるか否かを判定する。また、抽出部72は、サブフレームのタイミングと、制御情報に含まれたタイミング情報とをもとに、フレームを生成する。その結果、抽出部72は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。パケット信号の報知元が、他の端末装置14である場合、抽出部72は、同期したフレームの生成処理を省略する。
【0045】
抽出部72は、制御情報をもとに、使用されている路車送信期間を特定した後、残りの車車送信期間を特定する。抽出部72は、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部74へ出力する。一方、抽出部72は、基地局装置10からのパケット信号を受けつけていない場合、つまり基地局装置10に同期したフレームを生成していない場合、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部72は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、フレームの構成に関係のないキャリアセンスの実行をキャリアセンス部74に指示する。これは、図1のエリア外214での動作に相当する。
【0046】
キャリアセンス部74は、抽出部72から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部74は、車車送信期間内でCSMA/CAを開始することによって送信タイミングを決定する。一方、キャリアセンス部74は、抽出部72から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMA/CAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部74は、決定した送信タイミングを変復調部54、RF部52へ通知し、パケット信号をブロードキャスト送信させる。
【0047】
転送決定部62は、制御情報の転送を制御する。転送決定部62は、制御情報のうち、転送対象となる情報を抽出する。転送決定部62は、抽出した情報をもとに、転送すべき情報を生成する。ここでは、この処理の説明を省略する。転送決定部62は、転送すべき情報、つまり制御情報のうちの一部を生成部66に出力する。取得部64は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部64は、位置情報を生成部66へ出力する。
【0048】
生成部66は、取得部64から位置情報を受けつけ、転送決定部62から制御情報の一部を受けつける。生成部66は、制御情報の一部を制御情報に格納し、位置情報をペイロードに格納することによって、パケット信号を生成する。通知部70は、路車送信期間において、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、車車送信期間において、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部70は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。制御部58は、端末装置14の動作を制御する。
【0049】
図4(b)は、前述のごとく、受信処理のレイヤ構成である。受信制御レイヤ、セキュリティレイヤ、MACレイヤ、PHYレイヤは、図6の変復調部54、処理部56に含まれ、無線信号受信は、図6のRF部52に含まれる。また、セキュリティレイヤ、MACレイヤ、PHYレイヤは、ベースバンド処理としてまとめられるとともに、無線信号受信は、RF処理としてまとめられる。これらは、図4(a)に示された各レイヤに対応した処理を実行する。
【0050】
特に、路車送信期間を拡大した場合、端末装置14は、路車送信期間において複数のパケット信号を受信する。MACレイヤは、各パケット信号のデータペイロードに格納されたデータ、つまりMACフレームを取得する。前述のごとく、これらのデータは、送信処理において、セキュリティレイヤからのデータを分割したそれぞれに相当する。そのため、MACレイヤは、これに対応した処理を実行するために、複数のデータが揃うまで待機し、揃ったときにそれらを結合してセキュリティレイヤに転送する。しかしながら、そのような処理を実行する場合、転送処理遅延を考慮する必要が生じる。そこで、本実施例に係る端末装置14におけるMACレイヤは、すべてのデータが揃うまで待たずに、データを取得すると、当該データをセキュリティレイヤに随時転送する。セキュリティレイヤでは、結合すべきすべてのデータを取得したタイミングでセキュリティ処理を開始する。
【0051】
本発明の実施例によれば、車車送信期間よりも路車送信期間を長くするので、基地局装置からの報知の優先度を向上できる。その結果、基地局装置における送信処理を簡易にできる。また、路車送信期間を長くした場合であっても、サブフレーム中に一定期間の車車送信期間を確保するので、車車間通信の機会を確保できる。また、路車送信期間の規定を変えずに、サブフレームを短くすることによって、フレームに含まれるサブフレーム数を増加できる。その結果、多重化可能な基地局装置数を増加でき、また、通信システムを運用する事業者数を増加できる。
【0052】
また、サブフレームの長さの規定を変えずに、路車送信期間を長くすることによって、ひとつの路車送信期間において基地局装置が報知可能なデータサイズを増加できる。その結果、ひとつの基地局装置に複数の路車送信期間を使用させずにすむので、処理を簡易にできる。また、路車送信期間が長くなるので、通信速度の低い変調方式等を使用できる。また、通信速度の低い変調方式等が使用されるので、通信品質を向上できる。また、路車送信期間が長くなるので、同一のデータを緊急時に2回送るなど、サービスの要求条件に応じた制御を実現できる。また、車車間通信に対し、路車間通信のサービス重要度に応じて、柔軟に無線リソースを割り当てることが可能になり、有効なサービスを提供すると同時に、周波数の有効利用を図ることが可能となる。
【0053】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0054】
10 基地局装置、 12 車両、 14 端末装置、 20 アンテナ、 22 RF部、 24 変復調部、 26 処理部、 28 制御部、 30 ネットワーク通信部、 32 フレーム規定部、 34 選択部、 36 生成部、 50 アンテナ、 52 RF部、 54 変復調部、 56 処理部、 58 制御部、 60 タイミング特定部、 62 転送決定部、 64 取得部、 66 生成部、 70 通知部、 72 抽出部、 74 キャリアセンス部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置に報知すべき信号を生成する生成部と、
端末装置が信号を報知可能な第1期間に時間分割多重された第2期間において、前記生成部において生成した信号を報知する報知部とを備え、
所定の単位期間において、第1期間よりも第2期間の方が長いことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
所定の単位期間において、第2期間が最大値になった場合においても、第1期間が確保されていることを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−77963(P2013−77963A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216430(P2011−216430)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】