説明

基地局評価装置およびその信号抽出方法

【課題】マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置の評価を行う装置において、設定されたキャリア周波数や測定条件に応じて、中間周波数帯内の各信号成分を効率よく確実に抽出できるようにする。
【解決手段】解析部25は、受信記憶部21に記憶された波形データを読み出し、複数のキャリア周波数の信号成分にそれぞれ対応する周波数のローカル信号による周波数変換処理を行い、複数のキャリア周波数の各信号成分をそれぞれベースバンド帯に変換する信号抽出手段26を有し、この信号抽出手段26によってベースバンド帯に変換した各信号成分に対してそれぞれ設定された解析処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の移動体通信システムの基地局装置から出力された信号を解析してその評価を行う技術に関し、特に複数の異なる周波数帯域で同時に通信を行うマルチキャリア方式または複数の異なる通信規格に対応したマルチスタンダード方式に対応した基地局装置の評価を効率的に行えるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動体通信システムでは、基地局と端末との間で通信を行うための周波数帯(キャリア周波数)に複数のユーザの信号を時分割多重化して通信を行うが、ユーザ数が多くなると1つのキャリア周波数で多重化しきれなくなる。このため、1つの通信業者が複数のキャリア周波数を使用して、利用可能なユーザ数を増やしてきている。
【0003】
これに対応して、その基地局も複数のキャリア周波数を用いて同時に通信を行う所謂マルチキャリアと呼ばれる方式が採用されている。
【0004】
また、端末の変調方式の移行等に伴い、一つの通信業者で異なる通信規格(例えばGSMとW−CDMA)の通信を行うことも要求されてきており、これに対応するための基地局は複数の異なる通信規格の信号を用いて同時に通信を行う所謂マルチスタンダードと呼ばれる方式が採用されており、近年ではマルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置が必要とされている。
【0005】
そのため同一周波数バンドで複数のシステムを運用する場合の無線規格が、3GPPTS37.104で、Multi−Standard Radio(MSR)Base Station(BS)として定義された。その周波数バンドについては図9に示す通りである。
【0006】
図9において、マルチスタンダードの例を挙げれば、基地局の出力(Downlink)で定義されている周波数帯のうち、例えば869〜894MHz、925〜960MHzの周波数帯では、MSR and E−UTRA(LTE)と、UTRA(W−CDMA)と、GSM/EDGEの3つの異なるシステムが使用される。
【0007】
したがって、これら869〜894MHz、925〜960MHzの周波数帯内のキャリア周波数を通信に用いる基地局装置を評価するためには、各キャリア周波数の信号に対して、異なるシステムにそれぞれ応じた測定が必要となるが、従来の移動体通信機器に対する評価装置は、例えば次の特許文献1に記載されているように、1つのキャリア周波数(シングルキャリア)の信号を選択的に受信して評価に必要な処理を行うものであったので、マルチキャリアの測定を行う場合には、一つのキャリア周波数についての評価に必要な一連の試験を行ってから次のキャリア周波数に移行して同様の試験を行うという処理を繰り返す必要があり、手間と時間がかかるという問題があった。
【0008】
また、その測定原理から、複数のキャリア周波数を同時に用いる場合の帯域間相互の影響を把握することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−19741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題を解決するための技術として、測定対象となる複数のキャリア周波数の信号成分をヘテロダイン方式の広帯域な受信部により一括に受信して中間周波数帯に変換し、その中間周波数帯の信号の波形データを一定時間取り込んで記憶し、その記憶した波形データから個々のキャリア周波数の信号成分を抽出して解析処理を行う方式が考えられる。
【0011】
ところが、実際に上記方式の評価装置を構成するにあたり、測定対象の複数のキャリア周波数や、その周波数についてそれぞれ測定条件を任意に設定できるようにした場合、受信部の中間周波数帯内の各信号成分を効率よく確実に抽出する技術が必要となる。
【0012】
本発明は、この問題を解決し、マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置の評価を行う装置において、設定されたキャリア周波数や測定条件に応じて、中間周波数帯内の各信号成分を効率よく確実に抽出できる基地局評価装置およびその信号抽出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の基地局評価装置は、
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む信号を受け、該信号をローカル信号とミキシングして、前記複数の異なるキャリア周波数をカバーする帯域の中間周波帯に変換する広帯域受信部(22)、該広帯域受信部から出力される信号をサンプリングしてデジタルの波形データに変換するA/D変換器(23)および前記A/D変換器が変換した波形データを記憶する波形データメモリ(24)を有し、前記基地局装置が一定時間に出力した信号の波形データを取得する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
前記解析部に対し、各キャリア周波数およびキャリア周波数毎のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置であって、
前記解析部は、
前記受信記憶部に記憶された波形データを読み出し、該読み出した波形データに対して、前記複数のキャリア周波数の信号成分にそれぞれ対応する周波数のローカル信号による周波数変換処理を行い、前記複数のキャリア周波数の各信号成分をそれぞれベースバンド帯に変換する信号抽出手段(26)を有し、
該信号抽出手段によってベースバンド帯に変換した各信号成分に対してそれぞれ設定された解析処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の基地局評価装置の信号抽出方法は、
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む信号を受け、該信号をローカル信号とミキシングして、前記複数の異なるキャリア周波数をカバーする帯域の中間周波帯に変換する広帯域受信部(22)、該広帯域受信部から出力される信号をサンプリングしてデジタルの波形データに変換するA/D変換器(23)および前記A/D変換器が変換した波形データを記憶する波形データメモリ(24)を有し、前記基地局装置が一定時間に出力した信号の波形データを取得する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
前記解析部に対し、各キャリア周波数およびキャリア周波数毎のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置の前記解析部における信号抽出方法であって、
前記受信記憶部に記憶された波形データを読み出し、該読み出した波形データに対して、前記複数のキャリア周波数の信号成分の一つに対応する周波数のローカル信号による周波数変換処理を行い、前記複数のキャリア周波数の信号成分の一つをベースバンド帯に変換する処理を、前記複数のキャリア周波数の各信号成分について繰り返し行い、
該ベースバンド帯に変換した各信号成分に対してそれぞれ設定された解析処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明では、設定されたキャリア周波数や測定条件に応じて、中間周波数帯内の各信号成分をベースバンド帯に順次変換しているので、各キャリアの信号成分を効率よく確実に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図3】実施形態の要部の構成を示す図
【図4】実施形態の要部の動作を説明するためのフローチャート
【図5】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図6】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図7】実施形態の要部の動作を説明するためのフローチャート
【図8】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図9】基地局装置が使用する周波数帯と通信に用いるシステムとの関係を表す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した基地局評価装置20の構成を示している。
【0018】
図1において、受信記憶部21は、広帯域受信部22、A/D変換器23、波形データメモリ24とによって構成されている。
【0019】
広帯域受信部22は、マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した評価対象の基地局装置1が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む広い受信帯域(例えば、前記したように869〜894MHz、925〜960MHzの周波数帯域)を有し、その受信帯域の信号のうち、後述する設定部30によって指定された複数のキャリア周波数の信号成分を一括に受信する。
【0020】
広帯域受信部22は、ミキサ22a、ローカル信号発生器22bおよび中間周波フィルタ22cを含み、入力信号SINとローカル信号発生器22bから出力されたローカル信号SLOCとをミキサ22aに与えて混合し、その和と差の成分の一方(ここでは差の成分とする)を中間周波フィルタ22cによって抽出するヘテロダイン方式のものであり、中間周波フィルタ22cの帯域は、測定対象に指定される可能性のあるキャリア周波数の信号成分の全てを通過させるのに必要な幅Wを有している。
【0021】
例えば925〜960MHzの受信帯域全体が測定対象に指定される可能性のある場合には、少なくとも960−925=35MHzの幅が必要となる。
【0022】
また、ローカル信号SLOCの周波数fLOCは、中間周波フィルタ22cの通過中心周波数をfIFとすれば、設定部30によって実際に測定対象として指定されたキャリア周波数の信号成分の全てがfIF±W/2の中間周波帯内にヘテロダイン変換される値であればよく、前記した925〜960MHzの受信帯域全体の信号成分を中間周波帯に一括変換できるように、|(925+960)/2−fLOC|=fIFとしておけば、固定のローカル周波数fLOCで、受信帯域内のいずれのキャリア周波数が指定された場合も対応できる。数値例を上げれば、fIF=200MHz、fLOC=742.5MHz(または1142.5MHz)となる。
【0023】
しかし、測定対象のキャリア周波数(チャンネル)は測定者が任意に指定する項目であり、その指定キャリアが受信帯域の一端側にのみ集中している場合、その信号成分を周波数変換した場合、中間周波フィルタ22cの通過帯域のエッジに集中することになり、これはフィルタのエッジの特性(振幅や位相の変動)の影響を受けやすく、望ましくない。
【0024】
これを防ぐために測定者が自ら指定したキャリア周波数に基づいて、ローカル周波数を設定することも可能ではあるが、前記したキャリア周波数だけでなく、スロットの指定、測定項目の指定操作等のほかに、ローカル周波数の設定操作が加わるとその作業が非常に煩雑化する。
【0025】
このため、この基地局評価装置20では、ローカル信号発生器22bが出力するローカル信号の周波数fLOC(つまり受信周波数)を受信周波数制御手段50によって自動設定している。
【0026】
この受信周波数制御手段50は、設定部30によって設定された各キャリア周波数および測定項目情報に基づいて、測定に必要最小限の周波数範囲f1〜f2を求め、その周波数範囲の中心周波数(f1+f2)/2が中間周波数帯の通過中心周波数fIFに変換されるようにローカル信号の周波数fLOCを設定する。
【0027】
つまり、理解しやすいように、入力信号周波数よりローカル周波数が低い下側ヘテロダインとすれば、測定者によって任意に指定されるキャリア周波数の上限と下限および測定項目に応じて下限周波数f1と上限周波数f2に対し、
LOC=(f1+f2)/2−fIF
が成り立つローカル周波数を求めて、その周波数情報をローカル信号発生器22bに設定して、周波数fLOCのローカル信号を発生させる。上側ヘテロダインの場合には、
LOC=(f1+f2)/2+fIF
が成り立つローカル周波数を求めて設定する。
【0028】
なお、下限周波数f1、上限周波数f2は、下限や上限のキャリア周波数について隣接チャンネル漏洩の測定項目が指定されている場合も考慮して決定する。
【0029】
これによって、例えば図2の(a)のように、測定対象のキャリア周波数fc1〜fcnが受信帯域全体の低域側に偏って存在する場合でも、図2の(b)のように、中間周波帯のセンター近傍に集まって出力されることになり、フィルタのエッジの振幅特性や位相特性の暴れ等の影響を受けにくい。なお、図2は下側ヘテロダインの場合を示すが、上側ヘテロダインの場合、中間周波帯に変換される各信号成分の並びが図2の場合に対して反転する。
【0030】
中間周波数帯に変換された信号SIFは、A/D変換器23により所定周波数(中間周波数帯の上限周波数の2倍以上)でサンプリングされてデジタルの信号列D(k)に変換され、波形データメモリ24に一定時間分記憶される。
【0031】
解析部25は、信号抽出手段26、フレーム同期手段27および解析手段28を有しており、受信記憶部21の波形データメモリ24に記憶された波形データを解析し、各キャリア周波数の信号成分をベースバンド帯にそれぞれ変換して抽出し、その抽出したベースバンド成分に対して、フレーム同期処理等を行い、所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、そのスロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行い、その結果を表示部40に表示させる。
【0032】
信号抽出手段26は、受信記憶部21に記憶された波形データを読み出し、その読み出した波形データに対して、複数のキャリア周波数の信号成分にそれぞれ対応する周波数のローカル信号による周波数変換処理を行い、複数のキャリア周波数の各信号成分をそれぞれベースバンド帯に変換する。なお、この周波数変換処理は2つの直交ベースバンド成分を得るために直交検波処理を用いて行うが、後述するように、受信記憶部21において予め直交成分を検出する場合、信号抽出手段26は単純な単相型の周波数変換器で構成することができる。
【0033】
この信号抽出手段26は、例えば図3に示すように、2組のミキサ(乗算器)26a、26b、ローカル信号発生器26c、90度移相器26d、ベースバンドフィルタ26e、26f、ベースバンド信号メモリ26gおよびローカル周波数切替手段26hにより構成され、ローカル信号発生器26cと90度移相器26dによって生成される周波数fLLで直交位相のローカル信号L、L90をミキサ26a、26bに与え、そのミキサ出力からベースバンドフィルタ26e、26fにより周波数fLLを中心周波数とする信号成分をベースバンド帯(例えば0〜6MHz)の信号Ii、Qiに変換し、これをベースバンド信号メモリ26gに記憶する。また、ローカル周波数制御手段26hは、後述する設定部30により指定された測定対象の各キャリア周波数、受信記憶部21のローカル信号SLOCの周波数に基づいて、ローカル信号発生器26cが出力すべきローカル信号Lの周波数fLLを順次変更させる(なお、信号抽出手段26が扱う信号はデジタルのデータ列であるから、ミキサ26a、26b、ローカル信号発生器26c、90度移相器26d、ベースバンドフィルタ26e、26f等の各構成要素は、その機能と等価な演算処理によって実現される)。
【0034】
信号抽出手段26によってベースバンド帯に変換したキャリア毎のベースバンド成分Ii、Qiは、フレーム同期手段27によってキャリア毎に読み出され、そのフレームの先頭位置の特定が特定され、解析手段28に送られる。
【0035】
解析手段28は、フレームの所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、そのスロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行い、その結果を表示部40に表示させる。
【0036】
設定部30は、操作部45の操作にしたがい且つ表示部40に設定に必要な情報を表示させつつ、解析部25に対し、各キャリア周波数のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させるためのものである。
【0037】
ここで指定する情報は、キャリア周波数、そのキャリア周波数の信号成分のフレームおよびスロット、GMSK、8PSK等の変調方式と、Power、Modulation(変調誤差)、ORFS(隣接チャンネル漏洩)等の測定項目であり、指定したキャリア周波数の信号成分の所望のフレームの所望スロットに対して、指定した変調方式に基づく復調処理を行わせて、その結果に対して指定した項目の測定を行わせる。
【0038】
解析部25は、設定部30によって指定された情報を参照し、波形データメモリ24に記憶された波形データから各キャリア周波数fc1、fc2、……の信号成分(実際には中間周波帯に変換された信号成分)のベースバンド成分(I1、Q1)、(I2、Q2)、……を抽出し、各キャリア周波数の信号のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、そのスロットに対して指定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調処理および各種測定処理を行い、その結果を表示部40に表示させる。
【0039】
また、前記した受信周波数制御手段50は、設定部30によって指定されたキャリア周波数fc1、fc2、……、変調方式(占有帯域幅を特定する)および隣接チャンネル漏洩の有無により、広帯域受信部22の受信周波数を決定する。
【0040】
図4は、受信周波数制御手段50の処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて実施形態の受信周波数制御処理を説明する。
【0041】
始めに、設定部30によって測定対象に指定されたキャリア周波数(チャンネル)の中で、最高周波数のものの測定項目に隣接チャンネル漏洩(ORFSまたはACLR)の項目があるか否かを調べる(S1)。
【0042】
隣接チャンネル漏洩の項目がある場合には、図5の(a)のように、キャリア周波数の最高周波数の測定に必要な上限周波数f2′に、隣接チャンネル漏洩の測定に必要な周波数幅Waと所定のマージンαを加えて上限周波数f2を決定する(S2)。また、隣接チャンネル漏洩の項目がない場合には、図5の(b)のように、キャリア周波数の最高周波数のものについての測定に必要な上限周波数f2′に所定のマージンβを加えて上限周波数f2とする(S3)。
【0043】
次に設定部30によって測定対象に指定されたキャリア周波数(チャンネル)の中で、最低周波数のものの測定項目に隣接チャンネル漏洩(ACLRまたはORFS)の項目があるか否かを調べる(S4)。
【0044】
そして、隣接チャンネル漏洩の項目がある場合には、図6の(a)のように、キャリア周波数の最低周波数の測定に必要な下限周波数f1′から、隣接チャンネル漏洩の測定に必要な周波数幅Waと所定のマージンαをくわえたものを差し引いて下限周波数f1を決定する(S5)。また、隣接チャンネル漏洩の項目がない場合には、図6の(b)のように、キャリア周波数の最低周波数の測定に必要な下限周波数f1′から、所定のマージンβを差し引いて下限周波数f1とする(S6)。
【0045】
そして、その下限周波数f1と上限周波数f2の中心値fm=(f1+f2)/2を求め(S7)、その中心値fmが中間周波帯の通過中心周波数fIFに変換されるためのローカル周波数fLOCを、fLOC=fm−fIF(またはfLOC=fm+fIF)によって求め、その周波数情報をローカル信号発生器22bに設定する(S8)。
【0046】
上記処理によって波形データメモリ24には、測定対象に指定されたキャリア周波数の信号成分を含む信号が中間周波数帯に変換され、その信号の一定時間分の波形データが波形データメモリ24に記憶される。
【0047】
この波形データメモリ24に記憶された波形データは、所定タイミングに解析部25の信号抽出処理を受ける。
【0048】
即ち、測定対象のキャリア信号の周波数をfc1〜fcnとし、受信記憶部21において下側ヘテロダインを用いているとすれば、各キャリア周波数fc1〜fcnは、中間周波数帯の中の周波数(fc1−fLOC)〜(fcn−fLOC)に変換されることになる。
【0049】
したがって、信号抽出手段26による信号抽出処理では、図7に示すように、キャリアを指定する変数iを1に初期化し(S11)、ローカル信号L、L90の周波数fLLを(fci−fLOC)にセットして(S12)、波形データメモリ24に記憶された波形データに対する直交検波処理を行う。
【0050】
これによって、図8の(a)のように、中間周波数帯の周波数(fci−fLOC)を中心とする信号成分は、図8の(b)、(c)のように、周波数0を中心とするベースバンド成分Ii、Qiに変換され、その直交ベースバンド成分Ii、Qiが対応する変数iに対応するアドレスに記憶される(S13)。
【0051】
そして、上記S12、S13の処理を測定対象のキャリア周波数について繰り返し(S14、S15)、各キャリアについてのベースバンド成分(I1、Q1)〜(In、Qn)を求めて、前記したフレーム同期処理および解析処理を行い、所望の測定結果を得て、その測定結果を表示させる。
【0052】
このように、実施形態の基地局評価装置20では、設定部30によって設定されたキャリア周波数とそのフレーム内の測定対象のタイムスロットに対する測定項目に基づいて、
受信記憶部21の中間周波数帯に変換された各信号成分をベースバンド帯に順次変換しているので、各キャリアの信号成分を効率よく確実に抽出できる。
【0053】
なお、上記実施形態では、受信記憶部21において、測定に必要な上限周波数と下限周波数の中心が中間周波数帯の通過中心周波数に一致するように受信周波数を制御していたが、これは本発明を限定するものではなく、測定に必要な上限周波数から下限周波数の間が中間周波数帯に入っていれば、上記した各キャリアのベースバンド成分を抽出が可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、各キャリアの信号成分を直交ベースバンドに変換するために信号抽出手段26において直交検波処理を用いていたが、受信記憶部21において直交2相型の周波数変換処理を行い、受信信号を中間周波数帯の直交成分IIF、QIFに変換し、波形データメモリ24に記憶する構成も可能であり、その場合には、信号抽出手段26では、その波形データメモリ24に記憶された直交成分IIF、QIFを読み出して、それぞれ単相型の周波数変換器(例えば図3の各ミキサ26a、26bの信号入力を独立させ、両ミキサ26a、26bに同相のローカル信号を与える構成)に与えて、その周波数変換器のローカル周波数を各キャリアに合わせて順次変更して、各キャリアの信号成分を、周波数0を中心とするベースバンド成分(I1、Q1)〜(In、Qn)に順次変換すればよい。
【符号の説明】
【0055】
20……基地局評価装置、21……受信記憶部、22……広帯域受信部、22a……ミキサ、22b……ローカル信号発生器、22c……中間周波フィルタ、23……A/D変換器、24……波形データメモリ、25……解析部、26……信号抽出手段、27……フレーム同期手段、28……解析手段、30……設定部、40……表示部、45……操作部、50……受信周波数制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む信号を受け、該信号をローカル信号とミキシングして、前記複数の異なるキャリア周波数をカバーする帯域の中間周波帯に変換する広帯域受信部(22)、該広帯域受信部から出力される信号をサンプリングしてデジタルの波形データに変換するA/D変換器(23)および前記A/D変換器が変換した波形データを記憶する波形データメモリ(24)を有し、前記基地局装置が一定時間に出力した信号の波形データを取得する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
前記解析部に対し、各キャリア周波数およびキャリア周波数毎のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置であって、
前記解析部は、
前記受信記憶部に記憶された波形データを読み出し、該読み出した波形データに対して、前記複数のキャリア周波数の信号成分にそれぞれ対応する周波数のローカル信号による周波数変換処理を行い、前記複数のキャリア周波数の各信号成分をそれぞれベースバンド帯に変換する信号抽出手段(26)を有し、
該信号抽出手段によってベースバンド帯に変換した各信号成分に対してそれぞれ設定された解析処理を行うことを特徴とする基地局評価装置。
【請求項2】
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む信号を受け、該信号をローカル信号とミキシングして、前記複数の異なるキャリア周波数をカバーする帯域の中間周波帯に変換する広帯域受信部(22)、該広帯域受信部から出力される信号をサンプリングしてデジタルの波形データに変換するA/D変換器(23)および前記A/D変換器が変換した波形データを記憶する波形データメモリ(24)を有し、前記基地局装置が一定時間に出力した信号の波形データを取得する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
前記解析部に対し、各キャリア周波数およびキャリア周波数毎のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置の前記解析部における信号抽出方法であって、
前記受信記憶部に記憶された波形データを読み出し、該読み出した波形データに対して、前記複数のキャリア周波数の信号成分の一つに対応する周波数のローカル信号による周波数変換処理を行い、前記複数のキャリア周波数の信号成分の一つをベースバンド帯に変換する処理を、前記複数のキャリア周波数の各信号成分について繰り返し行い、
該ベースバンド帯に変換した各信号成分に対してそれぞれ設定された解析処理を行うことを特徴とする基地局評価装置の信号抽出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−182114(P2011−182114A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42974(P2010−42974)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】