説明

基地局

【課題】干渉波による通信不能を防ぐことを目的とする。
【解決手段】基地局が、受信信号を増幅するAGC増幅器と前記AGC増幅器の後段に設けられた信号処理部とから構成される受信部を複数有する基地局であって、前記信号処理で処理される干渉波のレベルに応じて、複数の前記受信部の中の少なくとも1つの受信部の前記AGC増幅器の利得を制御する制御部を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式の通信システムの基地局の置局形態は、高出力のマクロセル基地局がカバーしきれないエリアに低出力のマイクロセル基地局が配置されるという構成になっている。これにより、マクロセル基地局のセル外の端末でも通信を実行または継続することが可能になる。その際、端末は、一定電力の電波が基地局に届くように送信パワーを制御する。基地局では、AGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)アンプにより受信電波が増幅された後にA/Dコンバータによりデジタル信号が生成され、当該デジタル信号に基づいて処理が実行される(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009‐246434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術において端末がマクロセル基地局のセルのエッジに存在する場合に、端末はマクロセル基地局に電波を到達させるために高い電力(場合によっては最大電力)で電波を出力する。しかし、このことは、マクロセル基地局に隣接するマイクロセル基地局にとって干渉波である電波が高い電力で出力されることになる。これにより、マイクロセル基地局の受信性能は低下してしまう。特に無線通信部のA/Dコンバータの許容入力レベル範囲(ダイナミックレンジ)を超える干渉波が入力されると、A/Dコンバータが飽和してしまってマイクロセル基地局は通信不能になってしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、干渉波による通信不能を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、基地局に係る第1の解決手段として、受信信号を増幅するAGC増幅器と前記AGC増幅器の後段に設けられた信号処理部とから構成される受信部を複数有する基地局であって、前記信号処理で処理される干渉波のレベルに応じて、複数の前記受信部の中の少なくとも1つの受信部の前記AGC増幅器の利得を制御する制御部を具備するという手段を採用する。
【0007】
本発明では、基地局に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部は、前記干渉波が前記信号処理部の許容入力レベル範囲に収まらない場合に、複数の前記受信部の中の少なくとも1つの受信部の前記AGC増幅器の利得を下げるという手段を採用する。
【0008】
本発明では、基地局に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、2つの前記受信部を具備し、前記制御部は、一方の受信部の前記AGC増幅器の利得を下げるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、基地局に係る第4の解決手段として、上記第1〜3のいずれかの解決手段において、前記制御部は、複数の前記受信部の中の特定の受信部の前記AGC増幅器の利得を下げるという手段を採用する。
【0010】
本発明では、基地局に係る第5の解決手段として、上記第1〜4のいずれかの解決手段において、送信部を具備し、前記制御部は、前記AGC増幅器の利得を下げても通信ができない場合に、通信中の端末に向けて電波の送信電力を上げるように指示を送信部に送信させるという手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号処理部で処理される干渉波のレベルに応じて少なくとも1つの受信部のAGC増幅器の利得を制御するので、干渉波のレベルが原因で信号処理部の処理が阻害され、受信部が通信不能になることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るマイクロセル基地局A1を備える無線通信システムSを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマイクロセル基地局A1の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るマイクロセル基地局A1の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るマイクロセル基地局A1のAGC増幅器1eの利得を下げる前(a)と下げた後(b)の希望波及び干渉波を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
無線通信システムSは、図1に示すように本実施形態に係るマイクロセル基地局A1、マクロセル基地局A2及び端末Bから構成されている。
マイクロセル基地局A1及びマクロセル基地局A2と端末Bとは、直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式で通信し、または、さらに時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式を組み合わせた通信方式で相互に通信する通信装置である。マイクロセル基地局A1は、低出力の基地局であり、高出力のマクロセル基地局A2及びその他のマクロセル基地局(図示略)のセルの隙間に配置されおり、セルSL1を形成している。また、マクロセル基地局A2は、セルSL2を形成している。端末Bは、マクロセル基地局A2のセルSL2内に存在、すなわちマクロセル基地局A2と通信中であり、マクロセル基地局A2と相互に信号を送受信することで音声通信またはデータ通信を行う。
【0014】
次に、マイクロセル基地局A1の機能構成を、図2を参照して説明する。
マイクロセル基地局A1は、第1の受信部1、第2の受信部2、送信部3及び制御部4から構成されている。第1の受信部1は、アンテナ1a、LNA(Low Noise Amplifier)1b、ミキサ1c、局部信号発振器1d、AGC(Automatic Gain Control)増幅器1e、A/Dコンバータ1f及びOFDMA復調処理部1gから構成される。
【0015】
第2の受信部2は、アンテナ2a、LNA2b、ミキサ2c、局部信号発振器2d、AGC増幅器2e、A/Dコンバータ2f及びOFDMA復調処理部2gから構成される。送信部3は、アンテナ3a及び送信回路部3bから構成される。なお、第2の受信部2の機能構成要素は、第1の受信部1の機能構成要素と同一の機能を有するので、説明を省略する。
【0016】
アンテナ1aは、端末Bから受信した受信信号をLNA1bに出力する。
LNA1bは、雑音指数の低い増幅器であり、アンテナ1aから入力された受信信号を増幅し、ミキサ1cに出力する。
ミキサ1cは、LNA1bから入力された受信信号と、局部信号発振器1dから入力される局部信号とをミキシングすることで、受信信号をIF周波数に周波数変換(ダウンコンバート)し、IF受信信号としてAGC増幅器1eに出力する。
【0017】
局部信号発振器1dは、IF周波数変換用の局部信号を生成し、ミキサ1cに出力する。
AGC増幅器1eは、制御部4の制御に基づいて利得が制御される可変利得増幅器であり、ミキサ1cから入力されるIF受信信号を増幅してA/Dコンバータ1fに出力する。
【0018】
A/Dコンバータ1fは、AGC増幅器1eから入力されるIF受信信号をデジタル変換し、デジタルIF受信信号としてOFDMA復調処理部1gに出力する。
OFDMA復調処理部1gは、A/Dコンバータ1fから入力されたデジタルIF受信信号にフーリエ変換、デジタル復調、パラレル−シリアル変換などのOFDMA方式に基づく信号の復調処理を施し、ベースバンド受信信号として制御部4に出力する。また、OFDMA復調処理部1gは、A/Dコンバータ1fに入力されるIF受信信号のRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信電界強度)を検出し、この検出結果を制御部4に出力する。
【0019】
アンテナ3aは、送信回路部3bから入力された送信信号を外部に送信する。
送信回路部3bは、制御部4の制御の下、アンテナ1aに送信信号を出力する。
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される内部メモリと上記第1の受信部1、第2の受信部2及び送信部3と信号の入出力をそれぞれ行うインタフェース回路などから構成されており、上記ROMに記憶された制御プログラム、第1の受信部1及び第2の受信部2が受信する信号に基づいてマイクロセル基地局A1の全体動作を制御する。なお、ROMに記憶されている制御プログラムにはAGC増幅器制御プログラムが含まれており、制御部4はこのAGC増幅器制御プログラムに基づいてAGC増幅器1eの利得を制御する。なお、制御部4が実行する処理の詳細については、以下にマイクロセル基地局A1の動作として説明する。
【0020】
次に、上記構成の本実施形態に係るマイクロセル基地局A1の動作について図3を参照して説明する。
まず、マイクロセル基地局A1の制御部4は、第1の受信部1のAGC増幅器1eの利得と第2の受信部2のAGC増幅器2eの利得とを同じにする(ステップS1)。制御部4は、ステップS1の後に、第1の受信部のOFDMA復調処理部1gから入力されたIF受信信号のRSSIの検出結果に基づいてA/Dコンバータ1fの許容入力レベル範囲を超えているか否か判定する(ステップS2)。なお、制御部4は、RSSIが許容最大値になっているか否かでA/Dコンバータ1fの許容入力レベル範囲を超えているか否か判定する。
【0021】
制御部4は、ステップS2において『NO』と判定した場合には、すなわちA/Dコンバータ1fの許容入力レベル範囲を超えていない場合には、セルSL1内の通信中の端末(図示略)との通信を継続する(ステップS3)。
制御部4は、ステップS2において『YES』と判定した場合には、すなわちA/Dコンバータ1fの許容入力レベル範囲を超えている場合には、A/Dコンバータ1fに入力されるIF受信信号のRSSIが許容入力レベル範囲を超えないレベルまで第1の受信部1のAGC増幅器1eの利得を下げる(ステップS4)。この際、制御部4は、第2の受信部2のAGC増幅器2eの利得を初期状態のままにする。
【0022】
A/Dコンバータ1fが飽和するのは、マクロセル基地局A2のセルSL2内の端末Bの電波が干渉波としてマイクロセル基地局A1に入力されるからである。端末Bは、図1に示すようにセルSL2のエッジに存在する場合に、電波を到達させるために高い電力(場合によっては最大電力)で電波をマクロセル基地局A2に送信する。これにより、マイクロセル基地局A1には、干渉波である端末Bの電波が入力される。
【0023】
すると、マイクロセル基地局A1では、図4の(a)に示すように干渉波のRSSIがA/Dコンバータ1fの許容入力レベル範囲内を超えてしまう。そのような場合に、ステップS4においてAGC増幅器1eの利得を下げることで図4の(b)に示すように干渉波をA/Dコンバータ1fの許容入力レベル範囲内におさめることができる。また、第2の受信部2のAGC増幅器2eの利得を初期状態のままにすることで、低いRSSIの希望波を受信できる。
【0024】
図3に戻り、制御部4は、ステップS4の後にAGC増幅器1eの利得を下げた状態で通信ができるか否か判定する(ステップS5)。なお、制御部4は、例えば復調処理が正常に完了しているか否か、またはRSSIが許容最大値になっているか否かで通信できるか否か判定する。制御部4は、ステップS5において『YES』と判定した場合には、すなわち通信できる場合には、ステップS3において自身のセルSL1内の通信中の端末との通信を継続する。制御部4は、ステップS5において『NO』と判定した場合には、すなわち通信できない場合には、セルSL1内の通信中の端末に向けて送信電力を上げるように指示を送信部3に送信させる(ステップS6)。制御部4は、上記ステップS4において利得を急激に下限値まで下げてもよいが、利得を一定速度で下限値まで下げてもよい。一定速度で下げる場合には、制御部4は、ステップS5において、所定時間間隔で通信できるか否か判定し、下限値まで下げても通信できない時にステップS6を実行するようにする。
【0025】
上記ステップS6においてマイクロセル基地局A1が、自身のセルSL1内の通信中の端末(端末B以外)に送信電力を上げるように指示するのは、ステップS4においてAGC増幅器1eの利得を下げる、つまり希望波のRSSIが下がることが原因でセルSL1内の端末からの電波を十分に増幅できていない可能があるからである。しかし、AGC増幅器1eの利得を元に戻すと、再びA/Dコンバータ1fが飽和してしまうので、セルSL1内の端末に送信電力を上げて電波を出力させる。
【0026】
制御部4は、ステップS6の後に通信ができるか否か判定する(ステップS7)。なお、制御部4は、復調処理が正常に完了しているか否か、またはRSSIが許容最大値になっているか否かで通信できるか否か判定する。制御部4は、ステップS7において『YES』と判定した場合には、すなわち通信できる場合には、ステップS3において自身のセルSL1内の通信中の端末との通信を継続する。制御部4は、ステップS7において『NO』と判定した場合には、すなわち通信できない場合には、セルSL1内の通信中の端末に向けてハンドオーバするように指示を送信部3に送信させる(ステップS8)。
【0027】
以上のように、マイクロセル基地局A1において制御部4は、他のセルSL2において通信中の端末Bから入力される干渉波によりA/Dコンバータが飽和してしまうと、一方の受信部(第1の受信部1)のAGC増幅器1eの利得を下げる。これにより、第1の受信部1のA/Dコンバータ1fの飽和を防いで通信を維持できる。また、他方の受信部(第2の受信部2)のAGC増幅器2eの利得を初期状態のままにすることで、低いRSSIの希望波を受信できる。
そして、制御部4は、上述した動作を行うことが原因で通信ができなくなった場合に、自身のセルSL1内の端末に送信電力を上げさせる。これにより、マイクロセル基地局A1は、通信ができなくなった端末との通信を再開するこおができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)マイクロセル基地局A1は、2つの受信部(第1の受信部1及び第2の受信部2)を備えているが、本発明はこれに限定されない。
マイクロセル基地局A1は、2つ以上の受信部を備え、少なくとも1つの受信部のAGC増幅器の利得を下げるようにすればよい。
【0029】
(2)マイクロセル基地局A1では、特定の受信部(第1の受信部1)のAGC増幅器1eの利得を下げたが、第1の受信部1のAGC増幅器1eと第2の受信部2のAGC増幅器2eとを交代で利得を下げるようにしてもよい。また、最も受信品質の悪い(例えばRSSIが最も大きい)受信部のAGC増幅器の利得を下げるようにしてもよい。
【0030】
(3)本発明の実施形態では、マクロセルに隣接するマイクロセル基地局A1について説明したが、本発明の基地局では、特にマクロセル基地局A2からの干渉波の影響に限定されず、種々の干渉波の影響に対応することができる。
【0031】
(4)本発明の実施形態において、第1の受信部1のAGC増幅器1eと第2の受信部2のAGC増幅器2eとの利得が異なる状態、すなわち第1の受信部1と第2の受信部2との受信信号の許容レベルが異なる状態では、第1の受信部1及び第2の受信部2のぞれぞれと1つの端末とが異なるパスを介して同時に信号を送受信するMIMO(Multi Input Multi Output)方式に基づいて通信することは困難であるが、マイクロセル基地局A1に入力される干渉波のレベルが低くて第1の受信部1のAGC増幅器1e及び第2の受信部2のAGC増幅器2eの利得が初期状態のままである場合には、MIMO方式に基づいて通信するようにしてもよい(干渉波のレベルが所定値よい小さい場合は、MIMO方式に基づいて通信する)。
【0032】
(5)本発明の実施形態では、本発明の信号処理部をA/Dコンバータとして説明しているが、本発明では、A/Dコンバータには特に限定されない。
【0033】
(6)本発明の実施形態では、制御部4は、第1の受信部1のAGC増幅器1eの利得を下げたが、干渉が回復したらAGC増幅器1eの利得を元に戻すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
S…無線通信システム、A1…マイクロセル基地局、A2…マクロセル基地局、B…端末、1…第1の受信部、1a…アンテナ、1b…LNA、1c…ミキサ、1d…局部信号発振器、1e…AGC増幅器、1f…A/Dコンバータ、1g…OFDMA復調処理部、2…第2の受信部、2a…アンテナ、2b…LNA、2c…ミキサ、2d…局部信号発振器、2e…AGC増幅器、2f…A/Dコンバータ、2g…OFDMA復調処理部、3…送信部、3a…アンテナ、3b…送信回路部、4…制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を増幅するAGC増幅器と前記AGC増幅器の後段に設けられた信号処理部とから構成される受信部を複数有する基地局であって、
前記信号処理で処理される干渉波のレベルに応じて、複数の前記受信部の中の少なくとも1つの受信部の前記AGC増幅器の利得を制御する制御部を具備することを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記制御部は、前記干渉波が前記信号処理部の許容入力レベル範囲に収まらない場合に、複数の前記受信部の中の少なくとも1つの受信部の前記AGC増幅器の利得を下げることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
2つの前記受信部を具備し、
前記制御部は、一方の受信部の前記AGC増幅器の利得を下げることを特徴とする請求項1または2に記載の基地局。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記受信部の中の特定の受信部の前記AGC増幅器の利得を下げることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基地局。
【請求項5】
送信部を具備し、
前記制御部は、前記AGC増幅器の利得を下げても通信ができない場合に、通信中の端末に向けて電波の送信電力を上げるように指示を送信部に送信させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基地局。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−171914(P2011−171914A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32527(P2010−32527)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】