基底細胞様遺伝子型癌の処置
被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる、癌を有する被験体を処置する方法が提供される。DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。さらに、DDX3のN末端CARD、N末端CARDを欠損するDDX3、および80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)へ選択的に結合する抗体が提供される。上記方法はまた、乳癌細胞において80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質を検出することを含んでなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、2009年11月5日に出願された、米国仮出願第61/258,274号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、乳癌患者の大きな割合(約20〜25%)を占める。TNBCは、HER2、エストロゲン受容体(ER)、およびプロゲステロン受容体(PR)を有さないことが特徴である。TNBCの予後は悪く、今日までに治療法を標的としたアプローチは見出されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
癌を有する被験体を処置する方法が提供される。該方法は、基底細胞様遺伝子型癌であり、かつHER2非増幅である乳癌を有する被験体を選択すること、および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる。
【0004】
該方法は任意に、管腔細胞、HER2増幅、または基底細胞様遺伝子型からなる群より選択される特性の1以上を有する乳癌を有する被験体を選択すること;該被験体にIAP阻害剤を投与すること;および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる。
【0005】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は、癌細胞の基底細胞様表現型を検出すること;HER2非増幅である癌細胞を検出すること;および癌細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルの、コントロールに比較した減少を検出することを含んでなる。
【0006】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は任意に、細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルを検出すること、およびそれをコントロールと比較することを含んでなる。細胞の複合体のレベルがコントロールに比較して低いときに、応答性が示される。
【0007】
該方法は任意に、乳癌細胞においてN末端カスパーゼ結合動員ドメイン(caspase−associated recruitment domain:CARD)を欠損するDDX3を検出することを含んでなる。N末端CARDを欠損するDDX3は、乳癌細胞がDR5アゴニストに応答性であることを示す。
【0008】
該方法は任意に、乳癌細胞において80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質を検出することを含んでなる。80kDaバキュロウイルスIAPリピートは、乳癌細胞がDR5アゴニストに非応答性であることを示す。
【0009】
さらに、DDX3のN末端CARDへ選択的に結合する抗体が提供される。N末端CARDを欠損するDDX3へ選択的に結合する抗体もまた提供される。80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を含むIAPタンパク質へ選択的に結合する抗体もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、トリプルネガティブ乳癌細胞株が、TRA−8を用いた処理によってアポトーシスを起こすことを明示するグラフを示した図である。トリプルネガティブ乳癌細胞株をTRA−8によって24時間in vitroで処理した。ATPレベルを測定するためのルシフェラーゼに基づくアッセイを用いて、細胞生存率を評価した。値を、未処理のコントロール細胞に対する平均および標準偏差(n=6、反復)として表す。
【図2A】図2Aおよび2Bは、TRA−8と化学療法剤との併用処理が、基底細胞A型および基底細胞B型の乳癌細胞株に対して相加的または相乗的な効果を導くことを示した図である。図2Aは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ基底細胞B型SUM159乳癌細胞における、アポトーシスの増大を明示するグラフを示す。図2Bは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ上皮基底細胞A型HCC1937乳癌細胞における、アポトーシスの増大を示すグラフを示す。SUM159およびHCC1937乳癌細胞は、化学療法剤で24時間前処理した後、TRA−8抗体でさらに24時間処理した。細胞を、TRA−8抗体単独、化学療法化合物単独、またはTRA−8と化学療法化合物の併用によって処理した。ATPレベルの測定によって細胞生存率を評価した。値を平均および標準偏差(n=4、反復)として表す。
【図2B】図2Aおよび2Bは、TRA−8と化学療法剤との併用処理が、基底細胞A型および基底細胞B型の乳癌細胞株に対して相加的または相乗的な効果を導くことを示した図である。図2Aは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ基底細胞B型SUM159乳癌細胞における、アポトーシスの増大を明示するグラフを示す。図2Bは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ上皮基底細胞A型HCC1937乳癌細胞における、アポトーシスの増大を示すグラフを示す。SUM159およびHCC1937乳癌細胞は、化学療法剤で24時間前処理した後、TRA−8抗体でさらに24時間処理した。細胞を、TRA−8抗体単独、化学療法化合物単独、またはTRA−8と化学療法化合物の併用によって処理した。ATPレベルの測定によって細胞生存率を評価した。値を平均および標準偏差(n=4、反復)として表す。
【図3】図3は、DR5/DDX3/IAPアポトーシス抑制性複合体のモデルを示した図である。
【図4A】図4は、siRNAを介したDDX3のノックダウンが、DR5を介したアポトーシスに対する抵抗性を逆転させることを示した図である。図4Aは、DDX3 mRNAに対するsiRNAによって処理した細胞における、DDX3タンパク質発現の減少を明示するウェスタンブロット像を示す。図4Bは、TRA−8抗体で処理され、DDX3の発現が減少した細胞におけるアポトーシスの増大を明示するグラフを示す。
【図4B】図4は、siRNAを介したDDX3のノックダウンが、DR5を介したアポトーシスに対する抵抗性を逆転させることを示した図である。図4Aは、DDX3 mRNAに対するsiRNAによって処理した細胞における、DDX3タンパク質発現の減少を明示するウェスタンブロット像を示す。図4Bは、TRA−8抗体で処理され、DDX3の発現が減少した細胞におけるアポトーシスの増大を明示するグラフを示す。
【図5A】図5は、DR5結合型DDX3がcIAP1を動員し、DDX3 CARDを通じてアポトーシスを阻害することを示した図である。図5Aは、完全長DDX3が、DR5へのcIAP1の動員を通じてアポトーシスを阻害することを明示するウェスタンブロット像を示す。CARD−切断型DDX3(DN)を発現する細胞は、FADDの動員によって示されるように、TRA−8を用いた処理により、デスドメイン誘導シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)機能を回復した。図5Bは、CARDを欠損するDDX3を発現するDR5抵抗性の腫瘍細胞が、TRA−8誘導性のアポトーシスに対してさらに感受性になることを明示するグラフを示す。
【図5B】図5は、DR5結合型DDX3がcIAP1を動員し、DDX3 CARDを通じてアポトーシスを阻害することを示した図である。図5Aは、完全長DDX3が、DR5へのcIAP1の動員を通じてアポトーシスを阻害することを明示するウェスタンブロット像を示す。CARD−切断型DDX3(DN)を発現する細胞は、FADDの動員によって示されるように、TRA−8を用いた処理により、デスドメイン誘導シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)機能を回復した。図5Bは、CARDを欠損するDDX3を発現するDR5抵抗性の腫瘍細胞が、TRA−8誘導性のアポトーシスに対してさらに感受性になることを明示するグラフを示す。
【図6A】図6は、DR5/DDX3/cIAP1複合体が、TRA−8感受性および抵抗性細胞において定量できることを示した図である。図6Aは、TRA−8感受性のMDA231PおよびUL−3CP細胞株において、DR5結合型DDX3およびcIAP1が、TRA−8抵抗性のMDA231RおよびUL−3CR細胞株よりも低いことを明示するグラフを示す。図6Bは、TRA−8抵抗性の細胞株が、TRA−8感受性細胞株の一群に比較して、より高いレベルのDR5結合型DDX3およびcIAP1タンパク質を発現することを明示するヒストグラムを示す。
【図6B】図6は、DR5/DDX3/cIAP1複合体が、TRA−8感受性および抵抗性細胞において定量できることを示した図である。図6Aは、TRA−8感受性のMDA231PおよびUL−3CP細胞株において、DR5結合型DDX3およびcIAP1が、TRA−8抵抗性のMDA231RおよびUL−3CR細胞株よりも低いことを明示するグラフを示す。図6Bは、TRA−8抵抗性の細胞株が、TRA−8感受性細胞株の一群に比較して、より高いレベルのDR5結合型DDX3およびcIAP1タンパク質を発現することを明示するヒストグラムを示す。
【図7】図7は、トリプルネガティブおよび非トリプルネガティブ乳癌細胞株におけるDR5/DDX3/cIAP1複合体の相違を示した図である。図7Aは、DR5結合型DDX3およびcIAP1が、トリプルネガティブ乳癌細胞株(SUM149、SUM159、SUM102、2LMP、HCC38、BT20)において比較的低いことを明示するグラフを示す。図7Bは、幾つかのトリプルネガティブ乳癌細胞株において、DR5と共免疫沈降するDDX3の分子量が、N末端CARDを欠損しているために、非トリプルネガティブ乳癌細胞におけるものよりも小さいことを明示するウェスタンブロット像を示す。
【図8A】図8は、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)を認識する新規抗体(3H4)の特性を示した図である。図8Aは、3H4の、cIAP1、cIAP2、XIAP、およびサバイビンに対する結合特性を示す。図8Bは、3H4によって認識される共有エピトープの配列を示す。上の配列はcIAP1の2番目のBIRドメイン(配列番号:31);中央の配列はcIAP2の2番目のBIRドメイン(配列番号:32);下の配列はXIAPの2番目のBIRドメイン(配列番号:33)を示す。図8Cは、3H4による、ヒト膵癌細胞株のパネルに由来する全細胞ライセートのウェスタンブロット分析を示す。レーン1:MIAcapa;2:BXPC3;3:Panc1;4:Panc2.03;5 S2013;6:S2VP10。
【図8B】図8は、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)を認識する新規抗体(3H4)の特性を示した図である。図8Aは、3H4の、cIAP1、cIAP2、XIAP、およびサバイビンに対する結合特性を示す。図8Bは、3H4によって認識される共有エピトープの配列を示す。上の配列はcIAP1の2番目のBIRドメイン(配列番号:31);中央の配列はcIAP2の2番目のBIRドメイン(配列番号:32);下の配列はXIAPの2番目のBIRドメイン(配列番号:33)を示す。図8Cは、3H4による、ヒト膵癌細胞株のパネルに由来する全細胞ライセートのウェスタンブロット分析を示す。レーン1:MIAcapa;2:BXPC3;3:Panc1;4:Panc2.03;5 S2013;6:S2VP10。
【図8C】図8は、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)を認識する新規抗体(3H4)の特性を示した図である。図8Aは、3H4の、cIAP1、cIAP2、XIAP、およびサバイビンに対する結合特性を示す。図8Bは、3H4によって認識される共有エピトープの配列を示す。上の配列はcIAP1の2番目のBIRドメイン(配列番号:31);中央の配列はcIAP2の2番目のBIRドメイン(配列番号:32);下の配列はXIAPの2番目のBIRドメイン(配列番号:33)を示す。図8Cは、3H4による、ヒト膵癌細胞株のパネルに由来する全細胞ライセートのウェスタンブロット分析を示す。レーン1:MIAcapa;2:BXPC3;3:Panc1;4:Panc2.03;5 S2013;6:S2VP10。
【図9A】図9は、DDX3/IAP複合体におけるIAPの発現低下を示した図である。図9Aは、AT−406とTRA−8の併用処理が、DR5によるアポトーシスに対して抵抗性の膵細胞におけるIAPタンパク質の発現を低下させることを示す。2つのヒト膵癌細胞株、S2013(左パネル)およびS2VP10(右パネル)を、コントロール培地(レーン1)、または1000ng/mlのTRA−8(レーン2)、または10μMのAT406(レーン3)、または両方(レーン4)によって一晩処理した。全細胞ライセート中のIAPタンパク質を、3H4抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。図9Bは、DDX3複合体中のIAPタンパク質を示す。上記の処理細胞由来の細胞ライセートを、抗DDX3抗体(クローン3E4)によって免疫沈降した。沈降したタンパク質のウェスタンブロットを行い、3H4抗体によってIAPタンパク質を検出した。
【図9B】図9は、DDX3/IAP複合体におけるIAPの発現低下を示した図である。図9Aは、AT−406とTRA−8の併用処理が、DR5によるアポトーシスに対して抵抗性の膵細胞におけるIAPタンパク質の発現を低下させることを示す。2つのヒト膵癌細胞株、S2013(左パネル)およびS2VP10(右パネル)を、コントロール培地(レーン1)、または1000ng/mlのTRA−8(レーン2)、または10μMのAT406(レーン3)、または両方(レーン4)によって一晩処理した。全細胞ライセート中のIAPタンパク質を、3H4抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。図9Bは、DDX3複合体中のIAPタンパク質を示す。上記の処理細胞由来の細胞ライセートを、抗DDX3抗体(クローン3E4)によって免疫沈降した。沈降したタンパク質のウェスタンブロットを行い、3H4抗体によってIAPタンパク質を検出した。
【図10】図10は、乳癌細胞株における、IAPに対するAT−406のin vitroでの効果を示した図である。ヒト乳癌細胞株(MB436および2LMP(図10A)、SUM159およびSUM149(図10B)、BT474およびMB468(図10C)を、コントロール培地(レーン1)、または1000ng/mlのTRA−8(レーン2)、または10μMのAT406(レーン3)、または両方(レーン4)によって一晩処理した。処理細胞由来の細胞ライセートを、抗DDX3抗体(クローン3E4)によって免疫沈降した。沈降したタンパク質のウェスタンブロットを行い、3H4抗体によってIAPタンパク質を検出した。
【図11】図11は、TRA−8とAT406の併用処理によって生じた細胞傷害性を示した図である。細胞をAT−406で1時間処理した後、TRA−8とAT−406によって24時間処理した。TRA−8添加後24時間目に、ATPレベルの測定によって細胞生存率を決定した。
【図12】図12は、AT−406が、アドリアマイシンとの併用によってTRA−8のin vitro細胞傷害性を増強することを示した図である。TRA−8、AT−406、およびアドリアマイシンは、単一薬剤として、または併用して使用した。アドリアマイシンはAT−406の24時間前に添加し、TRA−8はAT−406の1時間後に添加した。TRA−8添加後24時間目に、ATPレベルの測定によって細胞生存率を決定した。
【図13A】図13は、胸腺欠損ヌードマウスにおける同所性の基底細胞Bの異種移植に対する、TRA−8単独、またはアブラキサンもしくはアドリアマイシンのin vivoでの効力を示した図である。SUM159(図13A)または2LMP(図13B)細胞を乳房脂肪パッド内に移植し、腫瘍が十分に定着した14日後に処置を開始した。矢印は抗体が投与された間隔を示す(n=9〜10マウス/群)。
【図13B】図13は、胸腺欠損ヌードマウスにおける同所性の基底細胞Bの異種移植に対する、TRA−8単独、またはアブラキサンもしくはアドリアマイシンのin vivoでの効力を示した図である。SUM159(図13A)または2LMP(図13B)細胞を乳房脂肪パッド内に移植し、腫瘍が十分に定着した14日後に処置を開始した。矢印は抗体が投与された間隔を示す(n=9〜10マウス/群)。
【図14】図14は、胸腺欠損ヌードマウスにおける、2LMPによる同所性の基底細胞Bの異種移植に対する、AT−406と併用したTRA−8またはアブラキサンのin vivoでの効力を示した図である。2LMP細胞を乳房脂肪パッド内に移植し、腫瘍が十分に定着した10日後に処置を開始した。バーは抗体が投与された間隔を示す(n=10マウス/群)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
癌を有する被験体を処置する方法が提供される。該方法は、基底細胞様遺伝子型癌であり、かつHER2増幅である乳癌を有する被験体を選択すること、および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる。任意に、デスレセプターアゴニストはDR5アゴニストである。任意に、DR5アゴニストは抗体である。任意に、デスレセプターアゴニストは3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される。
【0012】
該方法は例えば、管腔細胞、HER2増幅、または基底細胞様遺伝子型からなる群より選択される特性の1以上を有する乳癌を有する被験体を選択すること;該被験体にIAP阻害剤を投与すること;および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなってよい。任意に、IAP阻害剤はAT−406である。
【0013】
該方法は任意に、患者に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる。化学療法剤は任意に、3週間ごとに静脈内投与される。化学療法剤は任意に、アドリアマイシン、パクリタキセル、アブラキサン、シスプラチン、およびカルボプラチンからなる群より選択される。
【0014】
乳癌は、例えばエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方であってよい。任意に、乳癌はコントロールに比較して、DR5/DDX3/cIAP1複合体レベルの減少を示す。任意に、乳癌は機能的なN末端CARDを欠損するDDX3を含んでなる。例えば、機能的なN末端CARDを欠損するDDX3は、切断型、または欠失型のN末端CARDを有する。あるいは、機能的なCARDを欠損するDDX3は、N末端CARD内に変異を有する。
【0015】
任意に、乳癌は、デスレセプターアゴニストの非存在下で化学療法剤に対して抵抗性である。乳癌は例えば、アドリアマイシンに対して抵抗性であってよい。任意に、乳癌はパクリタキセルに対して抵抗性である。任意に、乳癌はシスプラチンまたはカルボプラチンに対して抵抗性である。
【0016】
デスレセプターを介した腫瘍細胞のアポトーシスの誘導は、癌療法に対する有望なアプローチである。全てではないとしても、ほとんどの治療法において、幾つかの標的細胞は抵抗性である。例としてTRA−8は、肝細胞への細胞傷害性をもたず(Ichikawa et al., Nat. Med. 7:954−960 (2001))、動物モデルにおいて強力な抗癌効力を示し(Buchsbaum et al., Clin. Cancer Res. 9:3731−3741 (2003))、かつ非ヒト霊長類の毒性試験において安全性を示した、ヒト癌細胞のアポトーシスを誘導する独特なアゴニストモノクローナル抗DR5抗体である。従って、本明細書ではTRA−8を例として用いるが、デスレセプター(例えばDR4またはDR5)の活性化を通してアポトーシスを誘導するその他の薬剤もまた、本明細書で教示する方法において用いることができる。TRA−8ならびにそのヒト化型およびヒトバージョンは、抗癌療法として臨床開発されているが、幾つかの腫瘍細胞株は、合理的なDR5発現量にもかかわらず、TRA−8を介するアポトーシスに対して抵抗性である。これらの観察により、抵抗性は、受容体の発現よりもむしろ、DR5によって惹起されるシグナル伝達機構に関連することが示唆される。確実に、DR5を介したアポトーシスは一般的な化学療法剤によって有意に増大され得る(Ohtsuka and Zhou, J. Biol. Chem. 277:29294−29303 (2002); Ohtsuka et al., Oncogene 22:2034−2044 (2003))。特定の細胞株はTRA−8を介したアポトーシスに抵抗性であるが、その他の細胞株はTRA−8を介したアポトーシスに感受性である。本明細書では、基底細胞様の表現型を有することが知られている乳癌のクラスが、TRA−8を介したアポトーシスに感受性であることが同定された。本明細書に示すように、基底細胞様乳癌細胞株は、DR5/DDX3/cIAP複合体にTRA−8抵抗性の癌細胞株を形成する変化を含む。
【0017】
乳癌は、遺伝子発現、細胞形態、および処置に対する応答に基づいて、少なくとも5つの異なる分子サブタイプに分けることができる。乳癌は最初に、2つの大きな群であるエストロゲン受容体(ER)陽性およびER陰性に分けることができる。これらの2つの群は、生物学的および臨床的に重要な、追加の異なる亜群へさらに細分することができる。ER陽性腫瘍は、エストロゲン受容体、ER応答性遺伝子、および管腔上皮細胞のその他のタンパク質を発現する。従って、ER陽性腫瘍は「管腔腫瘍」であり、これは特徴的な遺伝子発現パターンによって、管腔Aおよび管腔B腫瘍にさらに分類することができる。
【0018】
ER陰性腫瘍は、3つの群:HER−2陽性、基底細胞様腫瘍、および正常乳腺様腫瘍(normal breast−like tumors)にさらに分類することができる。HER−2陽性腫瘍は、第17染色体上の位置17q21の、HER2アンプリコンに位置する、HER−2および増殖因子受容体結合タンパク質7(GRB7)を含む遺伝子を高レベルで発現する。これらはまた、高度に活性化された核内因子(NF)−κBも有し、かつ転写因子GATA4を高レベルで発現するが、ERおよびGATA3を発現していない。正常乳腺様腫瘍(normal breast−like tumors)は正常乳腺組織サンプルに類似しており、脂肪細胞およびその他の非上皮細胞型に特徴的な多くの遺伝子を比較的高レベルで発現するが、管腔上皮細胞遺伝子の発現レベルは低い。
【0019】
基底細胞様腫瘍は、基底細胞に特徴的な遺伝子を発現する。基底細胞様遺伝子産物は、癌の特徴である、細胞増殖、アポトーシス、細胞遊走、および/または浸潤の抑制に関わる。基底細胞様腫瘍は、ER、ER応答性遺伝子、および管腔上皮細胞に特徴的なその他の遺伝子を発現しないか、または低レベルで発現する。基底細胞様腫瘍についての完全な総説は、Rakha et al., J. Clin. Oncol. 26:2568−81 (2008)を参照されたい。
【0020】
「トリプルネガティブ乳癌」は、エストロゲン受容体(ER)陰性、プロゲステロン受容体(PR)陰性、およびHER2陰性の乳癌を意味する。トリプルネガティブ乳癌は、ER、PR、またはHER2を発現しない。
【0021】
「HER2非増幅」は、第17染色体上の位置17q12−q21に位置するHER2アンプリコンを増幅しないことを意味する。HER2アンプリコンの増幅は、Mano et al., Cancer Treat. Rev. 33:64−77 (2007)に記載される、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを用いて決定することができる。HER2の増幅はHER2陽性の癌に見られるが、HER2は基底細胞様表現型の乳癌では増幅されない。
【0022】
「デスレセプター」は、リガンドがいったん結合すると、細胞のアポトーシスを誘導する受容体を意味する。デスレセプターには、例えば、デスドメイン(例えばTNFRI、Fas、DR3、4、5、6)を有する腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバーが含まれる。
【0023】
例えばDR5を通したシグナル伝達は、DR5を介したアポトーシスの制御における重要な機構である。TNFRスーパーファミリーのデスレセプターに共通する特色は、それらが全て、保存された「デスドメイン」を細胞質側末端に有することである(Zhou et al., Immunol. Res. 26:323−336 (2002))。DR5を介したアポトーシスがデスドメインにおいて惹起されることは十分に確立されている。TRAILまたはアゴニスト抗DR5抗体による細胞表面のDR5の架橋は、DR5のオリゴマー化を導き、その直後にDR5のデスドメインへFADDが動員される(Bodmer et al., Nat. Cell Biol. 2:241−243 (2000); Chaudhary et al., Immunity 7:821−830 (1997); Kuang et al., J. Biol. Chem. 275:25065−25068 (2000); Schneider et al., Immunity 7:831−836 (1997); Sprick et al., Immunity 12:599−609 (2000))。FADDが会合したデスドメインは、イニシエータであるプロカスパーゼ8および/またはプロカスパーゼ10をさらに動員し、同種親和性のDD相互作用を通してデスドメイン誘導性シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)を形成する(Krammer, Nature 407:789−795 (2000))。活性化されたカスパーゼ8および10は、カスパーゼ3を直接活性化し得るか、またはBH3を含むタンパク質であるBidを切断し、チトクロムCの放出およびカスパーゼ9の活性化を通してミトコンドリア依存性のアポトーシス経路を活性化し得る(Desagher and Martinou, Trends Cell Biol. 10:369−377 (2000); Scaffidi et al., EMBO J. 17:1675−1687 (1998))。デスドメイン複合体の形成後、カスパーゼ、NF−κB、およびJNK/p38のような幾つかのシグナル伝達経路が活性化される。これらのシグナル伝達経路の活性化により、Bcl−2およびIAPファミリーのタンパク質を通して、デスレセプターを介したアポトーシスが導かれる。
【0024】
「アゴニスト」は、細胞上の受容体(例えばデスレセプター)に結合することができ、内在性のリガンドの結合によって典型的に生じる同一の反応または活性(例えばアポトーシス)を開始する物質(分子、薬物、タンパク質など)を意味する。本方法のアゴニストはデスレセプターリガンドであってよい。従って、アゴニストはTNF、Fasリガンド、またはTRAILであってよい。さらに、アゴニストはデスレセプター結合ドメインを含んでなるこれらのリガンドの断片であってもよく、該断片は結合してデスレセプターを活性化することができる。さらに、アゴニストはデスレセプター結合ドメインを含んでなる融合タンパク質であってもよく、該融合タンパク質は結合してデスレセプターを活性化することができる。さらに、アゴニストはTNF、Fas、またはTRAILに対して少なくとも85%の相同性があるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよく、このホモログは結合してデスレセプターを活性化することができる。
【0025】
さらに、アゴニストはデスレセプターに結合するアポトーシス誘導性抗体であってもよい。「抗体」はモノクローナル、ポリクローナル、キメラ、単鎖、ヒト化、完全ヒト抗体、またはそれらのFabもしくはF(ab’)2断片のいずれであってもよい。「アポトーシス誘導性抗体」は、本明細書に提供する方法を用いた活性化の前または後に、プログラムされた細胞死を引き起こす抗体を意味する。従って本方法のアゴニストは、Fas、TNFR1、またはTRAILデスレセプターに特異的な抗体であってよく、該抗体はデスレセプターを活性化する。アゴニストは、DR4またはDR5に特異的な抗体であってよい。アゴニストは、同一のエピトープ特異性を有するか、またはATCC受入番号PTA−1428(例えばTRA−8抗体)、ATCC受入番号PTA−1741(例えばTRA−1抗体)、ATCC受入番号PTA−1742(例えばTRA−10抗体)のマウス−マウスハイブリドーマから分泌されるDR5抗体であってよい。アゴニストは、同一のエピトープ特異性を有するか、またはATCC受入番号PTA−3798(例えば2E12抗体)のハイブリドーマから分泌される抗体であってよい。
【0026】
本方法の抗体が標的とするTRAIL受容体は、DR4またはDR5であってよい。このような受容体については、それらにおいて教示される受容体についての全体が参照により本明細書に取り込まれる、特許出願公開公報である国際公開第99/03992号、国際公開第98/35986号、国際公開第98/41629号、国際公開第98/32856号、国際公開第00/66156号、国際公開第98/46642号、国際公開第98/5173号、国際公開第99/02653号、国際公開第99/09165号、国際公開第99/11791号、国際公開第99/12963号、および米国特許第6,313,269号の全てに記載される。これらの受容体に特異的なモノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて産生することができる。例えば、その両方におけるこれらの方法についての全体が参照により本明細書に取り込まれる、Kohler and Milstein, Nature, 256:495−497 (1975)、およびEur. J. Immunol. 6:511−519 (1976)を参照されたい。また、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、特許出願公開公報である国際公開第01/83560号において教示される方法も参照されたい。
【0027】
「CARD」は、カスパーゼ結合動員ドメイン(caspase−associated recruitment domain)を意味する。CARDを含むタンパク質はデスレセプターへの結合能によって特徴付けられ、結合は任意にデスドメインの外側であり、前記デスレセプターのデスドメインによってアポトーシスの活性化を調節する。DDX3は、CARDを含むことによって特徴付けられるタンパク質ファミリーの代表的なメンバーである。
【0028】
CARDを含むタンパク質は、細胞死の重要な制御因子として確立されてきた。CARDは、特定のカスパーゼのプロドメインのN末端に見出される、保存されたアルファヘリックス束から構成される。CARDはまた、様々なその他のタンパク質にも見出され得る。デスドメインタンパク質のように、CARDは、CARD/CARD相互作用を通してタンパク質の連絡を可能にする、同型のタンパク質相互作用モチーフとして機能する。CARDを有するタンパク質は、アポトーシス促進性または抗アポトーシス性のいずれかであってよい。アポトーシス促進性のCARDドメインタンパク質には、アポトーシスの開始に重要な役割を果たす、カスパーゼ2、4、および9のような特定のカスパーゼならびにApaf1が含まれる。代表的な抗アポトーシス性CARDタンパク質には、カスパーゼのCARDと相互作用し、それらのバキュロウイルスIAPリピート(BIR)ドメインを通じてカスパーゼの活性化を阻害する、cIAP1およびcIAP2が含まれる。このタンパク質ファミリーの機能についての多くの態様は、癌の処置における新規な薬物標的としての、それらの潜在的な有用性に向けられている。幾つかのCARD含有タンパク質は、調節不全の場合に腫瘍形成を促進し、化学療法に対する腫瘍の抵抗性に顕著に寄与する、保存された細胞死機構の決定的な構成要素である。幾つかの癌では不活性化されている、アポトーシス促進性タンパク質のApaf1は、ミトコンドリア誘導性アポトーシスに不可欠のCARDタンパク質である。IAPファミリータンパク質のようなその他の抗アポトーシス性CARDタンパク質が、細胞死の刺激から腫瘍を保護し、特定の型の癌に過剰発現することが示されている。従って、CARDタンパク質を活性化または阻害する治療薬は、従来の化学療法と併用する際に、化学療法剤の増感剤として、またはアポトーシスの修飾因子として利用することができる。
【0029】
CARD含有タンパク質のCARDは、ウイルス感染の間にホスト細胞のアポトーシスを抑制するアポトーシス阻害物質(IAP)の動員に関与する(Crook et al., J. Virol. 67:2168−2174 (1993))。IAPファミリーは、成熟カスパーゼと相互作用し、その酵素活性を阻害することによって細胞死に拮抗する。XIAP、c−IAP1、c−IAP2、およびML−IAP/Livinを含む、8つの異なる哺乳類IAPが同定されている(例えば、Ashhab et al., FEBS Lett. 495:56−60 (2001); Kasof and Gomes, J. Biol. Chem. 276:3238−3246 (2001); Vucic et al., Curr. Biol. 10:1359−1366 (2000)を参照)。全てのIAPは、1〜3のバキュロウイルスIAPリピート(BIR)ドメインを含み、相同配列を有する。BIRドメインを通し、IAP分子はカスパーゼに結合して直接に阻害する(Deveraux and Reed, Genes Dev. 13:239−252 (1999); Deveraux et al., Nature 388:300−304 (1997))。ミトコンドリアタンパク質であるSmac/DIABLOは、IAPに結合して、これに拮抗することができ(Suzuki et al., J. Biol. Chem. 276:27058−27063 (2001))、IAPの機能を抑制する(Wieland et al., Oncol. Res. 12:491−500 (2000))。
【0030】
DR5/DDX3/cIAP複合体は、基底細胞様表現型の乳癌細胞において、変化させるか、またはレベルを減少させることができる。以下に示すように、DR5/DDX3/cIAP1複合体は、例えばN末端CARDを欠損するDDX3、またはN末端CARDに変異を有するDDX3を含むことによって変化させることができる。機能的なN末端CARDを欠損したDDX3を含む複合体は、一般に、デスレセプターアゴニストを用いた処置によって分離し、DRを介したアポトーシスを可能にする。DDX3またはcIAPの発現レベルが低いことは、乳癌細胞内のDR5/DDX3/cIAP複合体のレベルが低いことの一因ともなり得る。複合体のレベルが低い細胞もまた、DRを介したアポトーシスを可能にする、デスレセプターアゴニストによる処置に感受性である。
【0031】
被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる、癌を有する被験体を処置する方法が提供される。デスレセプターアゴニストは、例えばIAP阻害剤と共に投与されてよい。任意に、IAP阻害剤はAT406である。デスレセプターアゴニストはまた、その他の化学療法剤と併用して投与されてもよい。化学療法剤の例には、アドリアマイシン、ブレオマイシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン類、シクロホスファミド、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、メルファラン、メトトレキサート、マイトマイシン、6−メルカプトプリン、パクリタキセル、テニポシド、6−チオグアニン、ビンクリスチン、およびビンブラスチンが含まれる。化学療法剤のさらなる例は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 18th Ed., Berkow et al., eds, Rahway, NH (2005)、およびSladek et al., Metabolism and Action of Anti−Cancer Drugs, Powis et al., eds., Taylor and Francis, New York, NY (1987)に見出される。
【0032】
癌を有する被験体を処置する方法が提供される。このような方法には、有効量のデスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、またはそれらの組み合わせを投与することが含まれる。任意に、デスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせは医薬組成物中に含まれる。
【0033】
本明細書に提供されるデスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせ、ならびに本明細書に記載される、薬剤的に許容される担体を含む組成物が提供される。本明細書に提供される組成物は、in vitroまたはin vivoでの投与に適する。薬剤的に許容される担体は、生物学的にまたはその他により望ましくないものではない物質を意味し、すなわち該物質は望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、または該物質が含まれる医薬組成物のその他の構成要素と有害な方法で相互作用することなく、被験体に投与される。担体は、有効成分の分解が最少となり、かつ被験体における有害な副作用が最少となるように選択される。
【0034】
適切な担体およびそれらによる製剤については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams & Wilkins (2005)に記載される。典型的には、製剤を等張にするため、適切な量の薬剤的に許容される塩が製剤中に使用される。薬剤的に許容される担体の例には、無菌水、生理食塩水、リンゲル液のような緩衝液、およびデキストロース溶液が含まれるが、これらに限定されない。溶液のpHは一般に約5〜約8、または約7〜7.5である。その他の担体には、免疫原性ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスのような、持続放出製剤が含まれる。マトリックスは形態のあるもの、例えばフィルム、リポソーム、または微粒子の形である。例えば投与経路、および投与される組成物の濃度に依存して、特定の担体がさらに好ましい可能性がある。担体は、デスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせを、ヒトまたはその他の被験体に投与するために適したものである。
【0035】
組成物は、局所性の処置が望まれるかまたは全身性の処置が望まれるかに依存して、および処置される領域に依存して、幾つかの方法によって投与される。組成物は、局所的、経口的、非経口的、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮的、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入を含む幾つかの投与経路のいずれかを通して、または気管支鏡を通した導入によって投与される。任意に、組成物は経口吸入、経鼻吸入、または鼻腔内粘膜投与によって投与される。吸入薬による組成物の投与は、スプレーもしくは液滴機構による送達を通じて、鼻または口を通すことができる。
【0036】
非経口投与のための製剤には、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝液を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、ラクトリンゲル、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、体液および栄養素補液、電解質補液(リンゲルのデキストロースを基にしたようなもの)などが含まれる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどのような、保存料ならびにその他の添加物が任意に存在する。
【0037】
局所投与のための製剤には、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐薬、スプレー、液剤、および散剤が含まれる。従来の医薬担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤などが任意に必要とされるか、または望ましい。
【0038】
経口投与のための組成物には、散剤または顆粒、水もしくは非水性溶媒中の懸濁液または溶液、カプセル、サシェ、または錠剤が含まれる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が任意に望ましい。
【0039】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は、癌細胞の基底細胞様表現型を検出すること;HER2非増幅である癌細胞を検出すること;および癌細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルの、コントロールに比較した減少を検出することを含んでなる。該方法はさらに、例えば、癌細胞がエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方であると決定することを含んでなってよい。任意に、DR5アゴニストは抗体である。任意に、乳癌細胞は乳房生検に由来する。
【0040】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞(例えばトリプルネガティブ)をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は、例えば、細胞内のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルを検出すること、およびそれをコントロールと比較することを含んでなってよい。細胞の複合体のレベルがコントロールに比較して低いときに、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることが示される。該方法は、例えば、乳癌細胞内に機能的なN末端CARDを欠損するDDX3を検出することを含んでなってよい。機能的なN末端CARDを欠損するDDX3は、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることを示す。該方法は、例えば、乳癌細胞内に80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を含むIAPタンパク質を検出することを含んでなってよい。80kDa BIRは、乳癌細胞がDR5アゴニストに非応答性であることを示す。
【0041】
サンプル中のDDX3、機能的なN末端CARDを欠損するDDX3、および80kDa BIRを含むIAPタンパク質の発現レベルを決定するために用いることのできるアッセイ技術は、当業者に公知である。このようなアッセイ法には、放射性免疫測定法(RIA)、免疫組織化学法、in situハイブリダイゼーション法、競合的結合法、ウェスタンブロット分析、およびELISA法が含まれる。アッセイにはまた、マイクロアレイ法、遺伝子チップ法、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法、ワンステップPCR法、およびリアルタイム定量(qRT)−PCR法からなる群より選択されるアッセイを用いてRHAのレベルを決定することも含まれる。タンパク質またはRNAの発現を決定するための分析技術は公知である。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)を参照されたい。
【0042】
DR5/DDX3/cIAP複合体のレベルを決定するための技術もまた、当業者に公知である。複合体のレベルを決定するためのアッセイは、免疫沈降法、共免疫沈降法、およびゲルを用いないアプローチ、例えばマススペクトロメトリーまたは共局在アッセイのようなタンパク質相互作用のプロファイリングからなる群より選択されてよい。アッセイは当該技術分野において公知である。例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2001); Dickson, Methods Mol. Biol. 461:735−44 (2008)、およびZinchuk et al., Acta Histochem. Cytochem. 40:101−11 (2007)を参照されたい。
【0043】
DDX3のN末端CARDへ選択的に結合する抗体、N末端CARDを欠損するか、または機能的なN末端CARDを欠損するDDX3へ選択的に結合する抗体、および80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質に結合する抗体もまた提供される。
【0044】
本明細書において抗体の語は広い意味で用いられ、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方が含まれる。この語はまた、ヒト抗体および/またはヒト化抗体も指す。ヒトモノクローナル抗体産生のための技術の例には、Coleらにより(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985))、およびBoernerらにより(J. Immunol. 147(1):86−95 (1991))記載されるものが含まれる。ヒト抗体(およびその断片)はまた、ファージディスプレイライブラリーを用いても産生することができる(Hoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))。開示するヒト抗体はまた、トランスジェニック動物を用いても得ることができる。例えば、免疫誘導に応答してヒト抗体の全レパトアを産生できるトランスジェニック、変異マウスについて記載されている(例えばJakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551−5 (1993); Jakobovits et al., Nature 362:255−8 (1993); Bruggermann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993)を参照)。
【0045】
本明細書で用いられるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の語は、大まかにはペプチド結合によって連結された2以上のアミノ酸を意味する。本明細書では、タンパク質、ペプチド、およびポリペプチドもまた、アミノ酸配列に言及するために互換的に用いられる。本明細書では、ポリペプチドの語は分子を含んでなるアミノ酸の特定のサイズまたは数を示唆するものとしては用いられず、かつ本発明のペプチドは数個まで、またはそれ以上のアミノ酸残基を含んでよいことが認識されなければならない。
【0046】
全体を通して用いられる被験体は脊椎動物であってよく、さらに詳細には哺乳類(例えばヒト、ウマ、ネコ、イヌ、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、およびモルモット)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、およびその他の動物のいずれであってもよい。この語は特定の年齢または性別を意味しない。従って、成体および新生仔の被験体が、雄性または雌性を問わずに網羅されることが意図される。本明細書で用いられる患者または被験体は互換的に使用されてよく、疾病または疾患(例えば癌)を有する被験体を指してよい。患者または被験体の語には、ヒトおよび獣医学の被験体が含まれる。
【0047】
本明細書に教示される方法に従い、被験体には有効量のデスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、またはそれらのいずれかの組み合わせが投与される。有効量および有効投与量の語は互換的に用いられる。有効量の語は、望ましい生理的応答を生じさせるために必要ないずれかの量として定義される。デスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせを投与するための有効量およびスケジュールは経験的に決定されてよく、このような決定がなされることは当該技術分野における技能の範囲内である。投与のための投与量の範囲は、疾病または疾患の1以上の症状が影響される(例えば減少するかまたは遅延する)、望ましい効果を生むために十分に広い。投与量は、望まれない交差反応、アナフィラキシー反応などのような、実質的に有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投与量は年齢、状態、性別、疾病の型、疾病もしくは疾患の程度、投与経路、またはその他の薬物が投与計画に含まれるか否かによって変動する可能性があり、当業者によって決定することができる。投与量は、いずれかの禁忌の事象において、個別の医師によって調節され得る。投与量は変動してよく、1以上の用量投与によって毎日、1日または数日間投与されてよい。任意に、デスレセプターアゴニストは3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される。任意に、化学療法剤は3週間ごとに投与される。ガイダンスは、医薬製品の所定の種類のための、適切な投与量についての文献に見出すことができる。
【0048】
本明細書で用いられる処置、処置する、または処置しているという語は、疾病もしくは状態または疾病もしくは状態の症状の影響を減少させる方法を指す。従って開示される方法において、処置は、確立された疾病もしくは状態または疾病もしくは状態の症状の重症度における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の減少を指してよい。例えば疾病を処置する方法は、被験体における疾病の1以上の症状が、コントロールに比較して10%減少した場合、処置であるとみなされる。従って、減少は10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または天然もしくはコントロールレベルに比較した10%〜100%のいずれのパーセントの減少であってもよい。処置は、必ずしも疾病、状態、または疾病もしくは状態の症状の治癒または完全な消失を指すものではないことが理解される。
【0049】
「任意の」または「任意に」は、続いて記載される現象、状況、もしくは物質が、起こり得るか起こり得ないか、または存在し得るか存在し得ないことを意味し、現象、状況、もしくは物質が起こるかまたは存在する場合、およびそれが起こらないかまたは存在しない場合が含まれる。
【0050】
開示する方法および組成物のために使用できるか、該方法および組成物と併用して使用できるか、該方法および組成物の調製において使用できるか、または該方法および組成物の産物である、物質、組成物、および構成要素が開示される。本明細書ではこれらおよびその他の物質について開示するが、これらの物質の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される一方で、これらの化合物の様々な個別の、および集合的な組み合わせならびに置換それぞれの特定の参照について明確に開示され得ない場合でも、それぞれは具体的に意図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば方法について開示および考察され、幾つかの分子になされ得る、方法を含む幾つかの改変について考察される場合、それぞれの、および全ての方法の組み合わせならびに置換、および可能性のある改変は、特に反する指示がない限り具体的に意図される。同様に、これらのいずれのサブセットまたは組み合わせも具体的に意図され、かつ開示される。この概念は、開示する組成物を用いる方法における工程を含むがこれに限定されない、この開示の全ての態様に適用される。従って、実施できる様々な追加の工程が存在する場合、これら追加の工程のそれぞれは、開示する方法の特定の方法工程または方法工程の組み合わせのいずれによっても実施でき、かつこのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットのそれぞれは具体的に意図され、開示されるとみなされなければならないことが理解される。
【0051】
本明細書に引用される出版物およびそれらに引用される材料は、それらの全体が参照により本明細書に詳細に取り込まれる。
【実施例】
【0052】
一般法
細胞株、抗体、および試薬
ヒト乳癌細胞株であるMDA−MB−231は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)(マナッサス、バージニア州)から購入した。ヒト卵巣癌細胞株であるUL−3Cを得た。細胞は、10% 熱不活化FCS、50μg/ml ストレプトマイシン、および50U/mL ペニシリンを加えたDMEMまたはRPMI 1640(Cellgro, Mediatech, Inc.,マナッサス、バージニア州)中で維持した。
【0053】
抗ヒトDR4(クローン:2E12)および抗ヒトDR5(クローン:TRA−8)モノクローナル抗体については以前に記載されている(Ichikawa et al., 2003; Ichikawa et al., 2001)。抗ヒトDR5(クローン:2B4)は、フローサイトメトリーおよび免疫沈降法のために開発された。組み換え可溶性TRAILはAlexis Biochemicals(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。ポリクローナル抗カスパーゼ3および抗カスパーゼ8抗体は、BD Pharmingen(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。モノクローナル抗ヒトカスパーゼ2、3、8、9、および10抗体、ならびにモノクローナル抗ヒトBcl−2、Bcl−xL、Bax、cIAP−1、cIAP−2、XIAP、およびサバイビン抗体は調製した。抗PARP抗体はCell Signaling Technology, Inc.(ベバリー、マサチューセッツ州)から購入した。抗βアクチン抗体はSigmaから購入した。抗FADDはTransduction Laboratories(レキシントン、ケンタッキー州)から購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合の二次的試薬は全てSouthern Biotechnology Associates, Inc.(バーミングハム、アラバマ州)から購入した。
【0054】
活性化カスパーゼ−1、カスパーゼ−2、カスパーゼ−3、カスパーゼ−6、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、カスパーゼ−10はEMD Biosciences, Inc(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。蛍光ペプチド誘導体Ac−Val−Asp−Val−Ala−Asp−AMC(Ac−VDVAD−AMC、260060M001、配列番号:1)、Ac−Asp−Glu−Val−Asp−アミノ−4−メチルクマリン(Ac−DEVD−AMC、260031M001、配列番号:2)、およびAc−カルボニル−Ile−Glu−Thr−Asp−7−アミド−4−メチルクマリン(Z−IETD−AMC、260042M001、配列番号:3)は、Alexis Biochemicals;サンディエゴ、カリフォルニア州から購入した。カスパーゼ−2、−3、−8、−10阻害剤(FMKSP01)はR&D Systems, Inc(ミネアポリス、ミネソタ州)から購入した。
TRA−8、2E12、およびTRAILを介するアポトーシスに対する腫瘍細胞の感受性についての、細胞傷害性の分析
細胞(ウェルあたり1,000細胞)を96ウェルプレートへ、8通りの濃度(1000ng/mlからの2倍連続希釈)のTRA−8、2E12、またはTRAILと共に三重にまいた。一晩培養した後、ATPLITE(商標)アッセイ(Packard Instruments、メリデン、コネティカット州)を製造者の指示に従って用いることにより、細胞生存率を決定した。結果を、培地コントロールウェルに比較した処理ウェル中の生細胞のパーセンテージとして示す。
フローサイトメトリー
細胞(106)をPBSで1回洗浄し、一次抗体(1μg/mlのTRA−8)を含む1mlの冷たいFACS緩衝液(5% FBSおよび0.01% NaN3を含むPBS)に再懸濁した。細胞を氷上で60分間染色し、3mlの冷たいFACS緩衝液で洗浄した後、二次抗体(1:100希釈したPE結合ヤギ抗マウスIgG)で4℃60分間、暗所にてインキュベートした。3mlのFACS緩衝液でさらに洗浄した後、サンプルあたり10,000細胞をFACSCANフローサイトメーター(BD Biosciences;サンノゼ、カリフォルニア州)によって分析した。
アポトーシス関連タンパク質のウェスタンブロット分析
腫瘍細胞(3×106)を冷たいPBSで2回洗浄し、10mM Tris−HCl(pH7.6)、150mM NaCl、0.5mM EDTA、1mM EGTA、0.1% SDS、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、およびプロテアーゼ阻害剤の混合物(1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1μg/ml ペプスタチンA、2μg/ml アプロチニン)を含む溶解緩衝液、300μlによって溶解した。細胞ライセートを10秒間超音波処理し、12,000gにて20分間遠心分離した。等量の総タンパク質を含む細胞ライセートを、SDS−PAGEサンプル緩衝液と共に5分間煮沸した。全細胞ライセートを、8%、10%、または12% SDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜へ電気泳動的に転写した。ブロットをTBST緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、および0.1% Tween20)中の5%無脂肪ドライミルクによってブロックし、ブロッキング緩衝液中の一次抗体と共に4℃にて一晩インキュベートした。ブロットをTBSTで3回洗浄し、HRP結合二次抗体によって1時間室温でプローブした。TBSTで4回洗浄した後、ECL Western blotting detection system(Amersham Biosciences;ピッツバーグ、ペンシルベニア州)を製造者の指示に従って用いることにより、プローブしたタンパク質を可視化した。
siRNAを介したDDX3のノックダウン
RNAiの設計:オンラインによる設計ツールであるBLOCK−iT RNAi Designer(Invitrogen;カールズバッド、カリフォルニア州)を用いて、DDX3を標的とするRNAiを同定した。最も高いスコアを有するRNAi標的の上位10から、5つの標的siRNA配列を選択した(表1を参照)。
【0055】
【表1】
これらを次にBLOCK−iT U6エントリーベクター内へクローン化した。siRNAはU6プロモーターによって駆動され、分裂しているかまたはしていない哺乳類細胞型のほとんどに、一過性に発現させることができる。RNAi応答のため、LIPOFECTAMINE 2000(Invitrogen;カールズバッド、カリフォルニア州)を用いて、抵抗性細胞にRNAiをトランスフェクトした。トランスフェクション後36時間目に、抗DDX3抗体を用いたウェスタンブロット分析によってDDX3の発現の減少を判定した。いったんDDX3の発現の減少が達成されると、siRNAオリゴを合成した(標的配列:GGAGAAATTATCATGGGAAAC(配列番号:14):センスRNA 5’−Fl−GGAGAAAUUAUCAUGGGAAAC(Fl−配列番号:15)(Fl=フルオレセイン);アンチセンスRNA 5’−GUUUCCCAUGAUAAUUUCUCC−3’(配列番号:16)。RNAiコントロールオリゴ(RI−010−DP)はMolecula(コロンビア、メリーランド州)から購入した。
発現ベクターの作製
完全長DDX3を、DDX3のN末端のHisタグによってpcDNA3.1プラスミド(Invitrogen)内にクローン化した。DDX3およびDR5のcDNAを、MDA231細胞から抽出した全RNAにより、以下のプライマー対:BamHIを有するDDX31順方向プライマー:5’−acggatccaaatgagtcatgtggcagtgga−3’(配列番号:17);XhoIを有するDDX3662逆方向プライマー:5’−ctctcgagcaaagcaggctcagttaccc−3’(配列番号:18)を用いて行った逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって作製した。KpnIを有するDR5−1順方向プライマー:5’−aaaggtaccagccatggaacaacggggacag−3’(配列番号:19);EcoVを有するDR5−441逆方向プライマー:5’−aaagatatcttaggacatggcagagtctgcatt−3’(配列番号:20);単離されたDDX3のポリメラーゼ連鎖反応断片を、インフレームでpcDNA3.1−Hisベクター(Invitrogen)へ挿入した。DR5のcDNAをpshutter−CMVベクター内へクローン化した。DNA配列決定によって正確な配列を確認した。
【0056】
BamHIとXhoI部位の間のDDX3配列を欠失させることにより、DDX3/pcDNA3.1−His発現プラスミドを作製した。BamHIを有するDDX3151順方向プライマー:5’−acggatccaaatgttttctggaggcaacactggg−3’(配列番号:21);以下のプライマー:EcoRVを有するDR5−340逆方向プライマー:5’−aaagatatcttactgtctcagagtctcagtgggatc−3’(配列番号:22);EcoRVおよびXhoIを有するDR5−330逆方向プライマー:5’−aaagatatcctcgagatttgctggaaccagcagcct−3’(配列番号:23)を用いてDR5配列を欠失させることにより、DR5/pshutter−CMV発現プラスミドを作製した。
細菌におけるDDX3の発現プラスミドの構築
DDX3またはcIAP1断片をTOPO100ベクター(Invitrogen)内へ挿入した。得られたプラスミドによりE.coli株BL21(DE3)を形質転換した後、これをLB培地中で対数期まで増殖させ、0.4mM イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシドによって3時間誘導した。細胞をペレットにして、溶解緩衝液(30mM Tris−HCl,pH7.5、0.1mM NaCl、1mM DTT、0.1mM EDTA、1% ノニデットP−40、および20μg/ml PMSF)中に再懸濁した後、超音波処理した。14,000×g、15分間の遠心分離後の上清をNiカラムによって精製した。タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)によって決定した後、一定分量を80℃にて保管した。
293または3T3細胞の一過性トランスフェクション
LIPOFECTAMINE(商標)2000(Invitrogen)を用いて、発現ベクターを293または3T3細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、それぞれのモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析により、タンパク質の発現を決定した。共免疫沈降法による分析のため、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む免疫沈降−溶解緩衝液によって細胞を溶解した。
共免疫沈降法
抗DDX3または抗DR5抗体をセファロースビーズに結合させた(Sigma;セントルイス、ミズーリ州)。DR5 DISCの組成物は以下のように決定した。5×106の細胞(他に指示のない限り)を500ng/mlのTRA−8によって、指示する時間37℃にて処理した後、免疫沈降溶解緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、0.2% ノニデットP40および10%グリセロール、ならびにコンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で溶解するか、または処理なしで溶解した(無刺激条件)。次にDR5 DISCを30μlのビーズによって4℃で一晩沈降した。免疫沈降後、ビーズを溶解緩衝液で4回洗浄した。次にビーズを10mM Tris緩衝液で5回洗浄し、SDS−PAGEおよび免疫ブロット分析のためのローディング緩衝液に再懸濁した。
カスパーゼ活性のin vitroアッセイ
蛍光定量アッセイを96ウェルの透明底プレート内で行い、全ての測定は三重のウェルで行った。100μlのアッセイ緩衝液(10mM HEPES pH7.0、50mM NaCl、2mM MgCl2、5mM EDTA、および1mM DTT)を添加した。各ウェルに、活性化カスパーゼ8およびペプチド基質(Ac−IETD−AMC)を最終濃度が100ng/μlになるように添加した。共免疫沈降の溶出画分を添加して反応を開始させた。アッセイ緩衝液、基質、および細胞ライセートを含まない溶解緩衝液を入れたウェル中でバックグラウンド蛍光を測定した。アッセイプレートを37℃で1時間インキュベートした。355nmの励起および440nmの発光に設定した蛍光プレートリーダー(Bio−Tek;ウィヌースキ、バーモント州)において、蛍光を測定した。
In vitroカスパーゼ切断アッセイ
カスパーゼがDDX3を切断する能力を、In vitroアッセイによって調べた。10μlのDR5共IP由来の抽出画分、10μlの反応緩衝液(10mM HEPES[pH7.0]、50mM NaCl、2mM MgCl2、5mM EGTA、1mM DTT、2mM ATP)、および5μl(0.1U/μl)の組み換え活性化型カスパーゼを含む切断反応を、37℃で30分間行った。切断は、抗DDX3抗体を用いたウェスタンブロットによって判定した。
実施例1
TRAIL−R2を介するアポトーシスにおけるDDX3の役割
抵抗性細胞においてDR5のデスドメイン遮断を引き起こす、候補となるタンパク質であるDDX3のプロテオミクス解析。
【0057】
デスレセプターを標的とする、治療薬としてのTRAILおよびアゴニスト抗体に自発的に発生するかまたは誘導されるアポトーシス抵抗性は、これらの薬剤による癌の有効な処置における主要な障害である。抵抗性細胞において、DR5デスドメイン複合体の別の組成物が存在するか否かを判定するため、TRA−8感受性の親細胞およびTRA−8抵抗性のMDA231細胞において、現存するDR5結合タンパク質のプロテオミクスプロファイルを、TRA−8による処理の前と後に、二次元プロテオミクスおよびマススペクトロメトリー解析によって比較した。SYPRO(商標)ruby(Molecular Probes;ユージーン、オレゴン州)によって染色した二次元ゲルの実験にて、約〜80kDaのタンパク質スポットが見出された。このタンパク質とDR5との結合がDR5デスドメイン誘導シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)の形成を遮断することで、TRA−8抵抗性が引き起こされる。SDS−PAGEから〜80kDaのタンパク質を切り出し、トリプシンによって消化した後、ペプチド配列をマススペクトロメトリーによって解析した。6つの消化断片からのタンパク質のアミノ酸配列は、GenbankのヒトDDX3配列と100%同一であったことから(表2)、TRA−8誘導性アポトーシスの間にDDX3はDR5から解離することが示される。このタンパク質がDR5結合タンパク質複合体に結合したままである場合、これはFADDの動員を阻止して、DISC形成の不全を引き起こし得る。
【0058】
【表2】
DDX3は、DR5を介するアポトーシスにおけるDR5結合タンパク質である。
【0059】
DDX3が実際にDR5に結合しているか否かを判定するため、DDX3の完全長(アミノ酸1〜662)、N末端断片(アミノ酸1〜316)、およびC末端断片(アミノ酸310〜662)を、N末端の6−Hisタグを用いてPCDNAIII3.1内にクローン化した。これらの発現ベクターをMDA231親細胞にトランスフェクトして、DDX3の組み換え完全長および欠失変異体の過剰発現を達成した。抗6−His抗体を用いた共免疫沈降法分析とそれに続くウェスタンブロット分析によって検出されたように、完全長DDX3のみがDR5に結合しており、そのN末端およびC末端欠失変異体は結合していなかった。これらの結果により、完全長DDX3がDR5に結合していることが確認された。DDX3は、MDA231細胞において抗DR5により免疫沈降された。
【0060】
DDX3とDR5の結合についてさらに確認するため、DDX3のN末端欠失バージョン、C末端欠失バージョン、および完全長バージョンをE.coliに発現させた。タンパク質を精製し、DDX3に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のパネルを産生するための抗原として使用した。マウス抗DDX3モノクローナル抗体を用いた共免疫沈降法およびウェスタンブロット分析により、DR5に結合したDDX3を検出した。この結果により、DDX3は、非アポトーシス性の親細胞および抵抗性細胞の両方において、DR5と共に共免疫沈降されることが示された。アポトーシスの間に、TRA−8感受性細胞において時間に依存したDDX3の減少が見られたが、TRA−8抵抗性細胞では見られなかった。加えてTRA−8誘導性アポトーシスの間に、ウェスタンブロット分析により、DR5に結合したDDX3の迅速な減少および切断が観察された。これにより、DDX3の切断はカスパーゼ依存性であることが示された。これらの結果に基づいてDDX3配列のN末端における潜在的な切断部位を詳しく調べ、アミノ酸129〜135に比較的保存されたカスパーゼ切断モチーフDKSDEDD(配列番号:30)が見出された。DISCに切断が起こり、DDX3の決定的な機能的エレメントがDR5から放出されることは明らかである。このデータは、惹起されたカスパーゼがDR5へ迅速に動員され、DDX3を容易に切断することを示唆する後述のモデルに適合している。加えて、FADDとカスパーゼ−8がDR5に動員され、結合してDISCが形成されることにより、次に、DR5に結合したDDX3の切断に関連するカスパーゼカスケードの活性化が導かれる。このことは、DDX3が特定の環境下でアポトーシスプログラムに必須であることを示し、DDX3はDR5に結合して、DR5を介したアポトーシス抵抗性に関与すると説明される。
DDX3とDR5の相互作用領域のマッピング
DR5を介したシグナル伝達におけるDDX3の調節についてさらに理解するため、DDX3の欠失変異体をコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトされたHEK293A細胞を用いて、DR5に結合するために必要なおおよそのDDX3の領域を決定した。DR5に結合したTRA−8、完全長DDX3、DDX3Δ201−662、またはDDX3Δ1−400を用い、共免疫沈降法によって組み換えDDX3とDR5の相互作用を決定した。しかしながら、DDX3Δ251−662またはDDX3Δ1−350のいずれもDR5に結合できなかった。これにより、DDX3はDR5に対する2つの結合モチーフを有することが示される。1つはN末端(アミノ酸200〜250)に位置し;もう1つはアミノ酸350〜400に隣接する。同じ細胞からのライセートのウェスタンブロット分析によって野生型DDX3およびDDX3の欠失断片の産生量は同程度であることが確認されたことから、これらの結果に対する説明として、タンパク質発現における相違は除外された。
【0061】
DDX3は持続的にDR5に結合しており、TRA−8抵抗性細胞におけるFADDの動員の遮断に関連することから、DR5に結合したDDX3はFADDの動員を阻止することが示される。DDX3とFADDの間にはDR5を通した結合が存在し得る。予め結合したDDX3がFADDの動員に干渉するように、DR5のデスドメインにおいてDDX3およびFADDが共通の結合モチーフを共有するか、または2つの結合モチーフが互いに近接しているかについて調べるため、DR5におけるDDX3の結合ドメインの位置を決定した。完全長DR5、およびデスドメインの完全な欠失を含む、DR5の一連のアミノ末端ドメイン欠失をコードするベクターを構築した。DDX3の機能を評価し、かつ内在性のヒトDR5を排除するための類似のアプローチにおいて、ヒトDR5とDDX3の共発現のためのホスト細胞としてマウス線維芽細胞株であるNIH3T3を選択した。3T3細胞に、His−タグ化DDX3および完全長DR5、DDX3およびDR5の一連の欠失変異体、ならびにDDX3単独をコードするプラスミドを共トランスフェクトした。細胞表面のDR5の発現を、TRA−8染色を用いたフローサイトメトリーによって調べた。トランスフェクトした細胞は全て同等レベルの細胞表面DR5を示したことから、細胞内ドメインの欠失は細胞表面DR5を変化させなかったことが示される。加えて、抗6−his抗体を用いた全細胞ライセートのウェスタンブロット分析によって検出されたように、トランスフェクトした細胞は全て同等レベルの組み換えDDX3を発現していた。組み換えDDX3とDR5の欠失変異体との結合を、TRA−8を用いた共免疫沈降法および抗6−His抗体を用いたウェスタンブロット分析によって調べた。DR5とDDX3の相互作用は、DR5のデスドメインとは無関係である。DR5結合モチーフをさらに正確に定義するため、DR5のさらなる欠失変異体であるD330、およびDR5の切断型(T300−330)を構築し、DDX3と共に3T3細胞へ共トランスフェクトした後、それらの相互作用について分析した。この結果により、DDX3はDR5デスドメインに結合しないが、デスドメイン(アミノ酸340〜420)に近い膜の近位領域(アミノ酸300〜330)に結合することが示された。これによりDDX3は、DR5シグナル伝達において、以前に同定されたデスドメイン結合タンパク質とは異なる役割を果たし得ることが示される。加えて、この領域はDR4およびDcR2との高い相同性をもつ。これらのデータにより、DDX3は、デスレセプターファミリーメンバーに結合する共通のアダプタータンパク質であることが示される。
DDX3はCARDを含む
次にDR5を介したアポトーシスにおけるDDX3の機能的な重要性を、この分子の特異的な性質を分析することによって調べた。最近、カスパーゼ動員ドメイン(CARD)を含む、DEADボックスタンパク質ファミリーの少なくとも2つのRNAヘリカーゼが同定された。これらのRNAヘリカーゼにおいて、CARDはアポトーシスの制御因子として機能する。DR5を介したアポトーシスの調節においてDDX3は重要な役割を果たすことから、DEADボックスタンパク質ファミリーのヘリカーゼのメンバーであるDDX3も同様にCARDを有し、DDX3のアポトーシス抑制性機能は直接CARDに依存する可能性がある。従って、DDX3がCARDタンパク質である可能性について調べた。アミノ酸のアラインメント解析により、DDX3はアミノ酸50〜150の間に、MDA5およびRIGIのように保存された作用モチーフを含むことが示された。CARDは同型の相互作用モチーフである。CARDを含むタンパク質は、このドメインを通して互いに相互作用できる。DDX3は新規であり、かつ高度に保存されたCARD含有ヘリカーゼであることから、その他のCARDタンパク質と相互作用することができる。同様にCARD含有タンパク質であるcIAP1は、カスパーゼの阻害剤として広く認識されており、TNFRIおよびTNFRIIへ動員されてTNFRIを介したアポトーシスを調節する。DDX3がcIAP1と相互作用できるか否かについて、抗DDX3または抗DR5抗体を用いて共免疫沈降実験により調べた。cIAP1は、TRA−8により処理されていない親細胞および抵抗性細胞の両方において、DDX3およびDR5抗体によって容易に共免疫沈降できると決定された。しかしながら、cIAP1はTRA−8感受性細胞においてDR5−DDX3複合体から迅速に放出され、このことは親細胞におけるDDX3の切断と関連していた。対照的に、DR5−DDX3複合体におけるcIAP1のレベルは、抵抗性細胞においてTRA−8による処理後に増大した。これらの結果により、DDX3は、DR5とcIAP1の間を連結するものとして役立つことが示される。
DDX3のノックダウンによる抵抗性の逆転
DR5シグナル伝達におけるDDX3の役割について研究するため、TRA−8誘導性のアポトーシスにおける内在性DDX3の重要性について調べた。DDX3は、TRA−8誘導性アポトーシスの間に抵抗性細胞において減少しなかったことから、癌細胞をアポトーシスに対して感受性にするためには、DDX3の発現レベルの減少が必要とされ得る。DR5を介したアポトーシスに対する抵抗性におけるDDX3の役割を決定するため、RNAiストラテジーを用いた。オンラインによる設計ツールであるBLOCK−IT(商標)RNAi Designer(Invitrogen)を用いて、DDX3を標的とするRNAiを同定した。最も高いスコアを有するRNAi標的の上位10から、5つの標的siRNA配列を選択して、BLOCK−IT(商標)U6エントリーベクター内へクローン化した。TRA−8抵抗性のMDA231細胞に5つのRNAiコンストラクトをトランスフェクトして、トランスフェクションから48時間後に、モノクローナル抗DDX3抗体を用いたウェスタンブロット分析により、DDX3のタンパク質発現レベルを決定した。調べた5つのRNAiコンストラクトのうちの4つは、トランスフェクトしていないか、またはGFPをトランスフェクトしたコントロールに比較して、DDX3発現の非常に効果的な(50%を超える減少)阻害物質であった。これらのコンストラクトのうち最も効果的な#2を、TRA−8を介したアポトーシスにおけるDDX3ノックダウンの効果を分析するために選択した。DDX3発現のノックダウンが、TRA−8抵抗性細胞においてTRA−8に対する感受性を逆転させるか否かを判定するため、TRA−8抵抗性のMDA231細胞に、RNAiベクター(コンストラクト#2)およびトランスフェクトした細胞の指標としてのGFP発現ベクターを共トランスフェクトした。トランスフェクション後48時間目に、DDX3をDR5と共に共免疫沈降した。予想されたように、DDX3の発現はコントロール細胞に比較して有意に減少した。GFP陽性細胞を選別し、様々な濃度のTRA−8と共に一晩培養した。ATPLITE(商標)アッセイによると、GFPおよびコントロールベクターをトランスフェクトしたMDA231細胞はTRA−8による処理後にアポトーシスを起こさなかったことから、細胞はTRA−8に対する抵抗性を保持していたことが示された。しかしながら、DDX3 RNAiとGFPを共トランスフェクトした細胞は、TRA−8による用量依存性の細胞死を示した。TUNEL染色によると、著しい数のDDX3ノックダウン細胞がアポトーシスを起こしていることが見出された。これらの結果により、DDX3の発現減少がTRA−8に対する抵抗性を逆転させたことが示される。DR5を介したアポトーシスの原因となるDDX3の役割をさらに決定するため、腫瘍細胞のパネルにおいてDDX3の発現を減少させ、TRA−8誘導性アポトーシスに対するそれらの感受性を分析した。DDX3 RNAiは内在性DDX3の量を減少させ、幾つかの自発性の抵抗性細胞を含む腫瘍細胞のパネルにおいて、TRA8誘導性アポトーシスを増大させた。対照的に、コントロールオリゴヌクレオチドをトランスフェクトした細胞は通常のDDX3の発現を示し、TRA−8誘導性アポトーシスに対して抵抗性のままであった。従って、DDX3はDR5シグナル伝達装置の決定的な構成要素であり、かつDR5を介したアポトーシスに対する抵抗性に必須のものである。
DDX3結合領域をもたないDR5はアポトーシス促進性である
DDX3結合モチーフが、DR5のデスドメイン機能を調節する新規な負の調節性ドメインを表しているか否かについて調べるため、変異型DR5のアポトーシス誘導性機能を野生型DR5と比較した。デスドメインをもたないDR5をトランスフェクトした細胞はTRA−8による処理に応答しないようにみえるが、切断型のDDX3結合ドメインを有するDR5をトランスフェクトした細胞はアポトーシス促進性であるようにみえ、かつ野生型のDR5をトランスフェクトした細胞に比較して、TRA−8誘導性のアポトーシスに対するより高い感受性を示した。DDX3には、DR5を介したアポトーシスを抑制し得る明白な抑制効果が存在した。これらの知見により、DDX3は、DR5を介したアポトーシスに対する抑制性メディエーターであることが示される。
DDX3は、DR5を介したアポトーシスを調節するCARDタンパク質である。
【0062】
DR5−DDX3−cIAP1のシグナル伝達を分析するため、そのcIAP1への結合に必要とされる領域を調べた。CARDはDDX3のN末端に存在してcIAP1と相互作用すると思われることから、この領域がcIAP1の結合に関与する可能性がある。HEK293A細胞に、His−タグ化完全長DDX3、DDX3Δ51−662、DDX3Δ101−662、DDX3Δ151−662、またはDDX3Δ1−350をコードするプラスミドをトランスフェクトした。完全長およびC末端を欠失したDDX3の両方はcIAP1と共免疫沈降することができ、最初の100アミノ酸を欠失したDDX3はcIAP1と共免疫沈降することができなかった。これらの結果により、DDX3のN末端CARDは、DR5複合体へのcIAP1の動員に関与することが確認された。cIAP1結合モチーフは、切断部位であるアミノ酸129〜135(DKSDEDD;配列番号:30)の直前の、DDX3のアミノ酸50〜100に位置することもまた示される。DDX3がDR5を介したアポトーシスの間に切断される場合、cIAP1と結合したDDX3のN末端断片はDR5複合体から離脱する可能性があり、これによってcIAP1の細胞死シグナル伝達に対する抑制が取り除かれる。従ってDDX3は、アポトーシス抵抗性のためにcIAP1とデスレセプターを結合させる候補である。
【0063】
この概念をさらに実証するため、アミノ酸1〜150を欠損したドミナントネガティブ変異体DDX3を用いた。この変異体DDX3ΔCARD(DDX3Δ151−662)はcIAP1と相互作用できないが、DR5にはなお結合することができる。従って、DDX3Δ151−662が、DR5に結合する野生型DDX3と競合する内在性DDX3のドミナントネガティブ阻害物質となり得るか否かについて評価した。4つの型の細胞に、DDX3ΔCARDをトランスフェクトした。DDX3ΔCARDをトランスフェクトした細胞は、内在性の完全長DDX3に比較してより高いレベルのDDX3ΔCARDの発現を示したことから、切断型のDDX3はDR5への結合に対して内在性DDX3と競合できることが示唆される。DR5との共IPならびに抗DDX3および抗cIAP1抗体によりプローブするウェスタンブロッティングによって分析されたように、cIAP1は完全長DDX3と共免疫沈降されたが、DDX3ΔCARDとは共免疫沈降されなかった。さらにATPLITE(商標)アッセイを用いて、トランスフェクトした細胞のTRA−8を介したアポトーシスに対する感受性を調べた。調べた全ての細胞がTRA−8による処理後に抵抗性のままであったことから、完全長組み換えDDX3の発現は、TRA−8を介したアポトーシスに対する感受性を変化させなかった。しかしながら、高レベルのDDX3ΔCARDを発現したTRA−8抵抗性の腫瘍細胞は、DR5に結合したcIAP1の減少後に、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対するそれらの感受性を回復した。これらのデータにより、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対するcIAP1による阻害は、DDX3の未変化のCARDによって仲介されることが示される。N末端CARDを欠損したDDX3は、TRA−8に対する抵抗性を部分的に逆転させるドミナントネガティブとして役立ち得る。TRA−8により誘導されるアポトーシスに対する癌細胞の潜在的な感受性は、DR5結合複合体におけるDDX3とcIAP1のレベルによって調節され得る。
DR5−DDX3−cIAP1複合体はカスパーゼ−8の活性化を阻害する
細胞内に存在するDDX3のレベルが、DR5 DISCにおけるカスパーゼ−8の動員および処理にどのように関わるかを調べるため、DDX3を定量した。MDA231ならびにUL−3Cの親細胞および抵抗性細胞をTRA−8で4時間処理した後、DR5を、TRA−8とは異なるDR5のエピトープを認識する新規な抗DR5モノクローナル抗体(クローン2B4)によって免疫沈降した。DR5/DDX3/cIAP1複合体をビーズから遊離させ、DR5に結合したDDX3およびcIAP1を、抗DDX3および抗cIAP1抗体を用いる免疫ブロッティングおよびサンドイッチELISA分析に供した。ELISAプレートに2B4抗DR5抗体をコートして、免疫沈降されたDR5を捕捉した後、DDX3(3E2)およびcIAP1に対する特異的なモノクローナル抗体によってDDX3およびcIAP1を測定した。TRA−8による処理は、感受性の親細胞または誘導された抵抗性の腫瘍細胞いずれのDR5タンパク質レベルも変化させなかった。しかしながら、DR5に結合したDDX3のレベルは、感受性および抵抗性細胞の両方において、TRA−8処理により有意に変化した。第1に、3E2抗DDX3抗体によって検出されたように、未処理の抵抗性細胞は、未処理の感受性細胞に比較して、DR5に結合したDDX3を高レベルで発現した。重要なことには、TRA−8による処理後に、DR5に結合したDDX3はTRA−8抵抗性細胞において有意に増加したが、感受性細胞では顕著な減少が示された。DR5複合体におけるcIAP1のレベルもまた、DDX3と同じパターンで変化した。これらの結果により、アポトーシスの間にTRA−8感受性細胞ではDDX3のCARDドメインが切断されてDR5複合体からDDX3が遊離するが、DDX3およびcIAP1は、感受性細胞よりもむしろ抵抗性細胞において、TRA−8の刺激によってDR5に動員されることが示唆された。
【0064】
機能的なDISCを形成するためには、TRA−8により誘導されるアポトーシスの間に、癌細胞がDR5複合体からcIAP1を遊離して、カスパーゼに対するその抑制を減少させることが必須である。この過程はDDX3の切断を必要とすることから、この工程はフィードフォワードのアポトーシス増幅ループを開始するために重要であることが示される。DR5に結合したDDX3の切断に対する抵抗性は、抵抗性細胞におけるDISC形成の不全に関連していることから、DR5−DDX3−cIAP1複合体におけるDDX3切断に対する感受性は、親細胞と抵抗性細胞の間で異なっている。異なるカスパーゼによる、DR5に結合したDDX3切断の可能性を、両細胞において分析した。DR5−DDX3−cIAP1複合体を、抗DR5抗体によって共免疫沈降した。ビーズからの溶出画分を、活性化カスパーゼ−2および−8と共にインキュベートした。DDX3の切断を、抗DDX3抗体を用いたウェスタン分析によって検出した。これらの結果とELISA分析との組み合わせにより、抵抗性細胞におけるカスパーゼ−8によるDDX3の切断は、感受性細胞に比較して高度に減弱していたが、カスパーゼ−2は、両細胞において同等のプロテアーゼとしての可能性を提示したことが示された。これらの結果により、TRA−8感受性細胞と抵抗性細胞の間には、DDX3複合体の機能的な相違があることが示された。また、デスレセプターに結合した最初のカスパーゼによるDDX3切断の不全が、TRA−8に対する抵抗性の発生における重要な工程であることも示された。
【0065】
誘導された抵抗性細胞においてDDX3の切断が阻害されたことにより、DDX3がDR5を介したアポトーシスを阻害する、アポトーシスシグナル伝達における工程を決定するための研究が促された。DDX3/cIAP1複合体はカスパーゼ−8の活性化を阻害すると予測されることから、受容体活性化後の最初の検出可能な現象の1つとしての、DR5−DDX3−cIAP1複合体におけるカスパーゼ−8の活性化について調べた。カスパーゼ−8の活性化におけるDR5−DDX3−cIAP1複合体の効果を評価するため、蛍光基質であるAc−IETD−AMCを用い、活性化カスパーゼ−8と感受性親細胞または誘導された抵抗性細胞由来のDDX3共IP溶出画分をインキュベートして、カスパーゼ活性を測定した。抵抗性細胞由来のDR5共IP溶出画分において、広範囲の希釈度にわたり、感受性細胞に比較してカスパーゼ−8活性の用量依存性の阻害が観察された。加えて、精製したcIAP1もまた、カスパーゼ−8のプロテアーゼ活性を完全に抑制した。DDX3に結合したcIAP1は、カスパーゼ−8の最初の活性化における阻害物質であり、それによってDDX3の切断が阻止されるということには説得力がある。従ってこれらのデータにより、DDX3−cIAP1がカスパーゼ−8活性を調節し得ることの直接の証拠が提供され、かつDDX3−cIAP1はDR5によって結合されたカスパーゼ−8の特異的な制御因子であることが示される。
【0066】
カスパーゼ−8の活性化におけるDR5−DDX3−cIAP1の効果を、cIAP1により阻害されたカスパーゼ−8の直接の分析により、カスパーゼアッセイによるDDX3の切断と組み合わせて調べることで、DDX3−cIAP1は新規な型のカスパーゼ阻害物質としても機能することが示された。DDX3−cIAP1複合体は、カスパーゼ−8の活性化を抑制することでデスレセプターによるアポトーシス促進性のシグナルを抑止することができ、これによって最初のカスパーゼによるDR5に結合したDDX3の切断を阻害する。このモデルにより、DDX3は、cIAP1の動員を通してTRA−8誘導性アポトーシスから細胞を保護し、癌細胞における細胞死のシグナル伝達経路の遮断に寄与することが示される。
実施例2
トリプルネガティブ(TN)基底細胞型乳癌細胞株に対する、抗DR5を介した細胞傷害性
表3および4に要約するように、基底細胞型(基底細胞A型および基底細胞B型)に分類された15の細胞株、HER−2過剰発現基底細胞型である2の細胞株、および管腔表現型を示す9の細胞株を含む26の乳癌細胞株のパネルを、TRA−8(DR5)抗体に対する細胞傷害性応答と乳癌の亜型との間の関連性を調べるために用いた。TRA−8は15のトリプルネガティブ乳癌細胞(TNBC)細胞株(基底細胞型)のうちの12に死滅を誘導し、IC50値は0.9〜4.8ng/mlの範囲であった(表3)。基底細胞B型である亜型の4細胞株に対するTRA−8の細胞傷害性を図1に示す。TRAILによって同等の細胞傷害性が生じた。9の管腔乳癌細胞株は全てTRA−8に対して抵抗性であった(表4)。TRA−8抗体と、アドリアマイシン、シスプラチン、およびカルボプラチンを含む化学療法剤との併用処理によって、基底細胞A型および基底細胞B型の乳癌細胞株に相加的から相乗的な死滅が生じた(図2)。TRA−8に対して抵抗性である、BRCA−1変異型細胞株のHCC1937は、TRA−8と化学療法の併用によって相乗的な細胞傷害性を示した(図2)。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
実施例3
DR5/DDX3/cIAP1アポトーシス抑制性複合体の性質決定
上記のようにDR5/DDX3/cIAP1は、DISCの形成および機能に拮抗する負の調節複合体として役立つ。従って、DR5に結合したDDX3および動員されたアポトーシス阻害物質は、DR5を介したアポトーシスに対する癌細胞の感受性のバイオマーカーであることが予測される。モデルを図3に示す。このモデルにおいて、DDX3はDR5のデスドメインの近位領域に結合する。RNAヘリカーゼファミリーのその他のメンバーと同様に、DDX3はそのN末端に、CARD/CARD相互作用を通したアポトーシス阻害物質(IAP)の動員に関与するCARDを含む。さらに、動員されたIAPは、そのバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を通してカスパーゼの活性を阻害することによって、デスドメインにおけるアポトーシスシグナル伝達の開始を阻害する。このモデルの新規性は、DR5の細胞質側末端が、DR5のアポトーシスシグナル伝達を決定するために互いに相互作用する、少なくとも2の機能的に異なるドメインを含むことである。DDX3/IAP複合体がデスドメイン複合体よりも優位であるとき、癌細胞はDR5を介したアポトーシスに対する抵抗性へとシフトする。従って、DR5に結合したDDX3とcIAP1は、抗DR5(TRA−8)を介したアポトーシスに対する腫瘍細胞の応答を予測するバイオマーカーとして役立ち、かつDR5を介したアポトーシスを増大させるための薬物標的としても役立ち得る。
【0069】
TRA−8を介したアポトーシスに対して確定された感受性を有する癌細胞のパネルにおける、DR5結合タンパク質のタンパク質プロファイルについて調べた。これにより、DR5のデスドメインにおいてアポトーシス抵抗性を仲介する、新規なDR5結合アダプタータンパク質としてのDDX3の同定が導かれた。
DDX3結合ドメインを欠損したDR5は、さらにアポトーシス促進性である
上記のように、DDX3結合ドメインは、DR5の細胞質側末端のアミノ酸300〜330の領域にマップされた。この領域が切断された変異体DR5(D7)はDDX3の結合を喪失したが、DR5の表面発現は変化しなかった。切断型DR5は、野生型DR5を発現する細胞に比較して、自発性アポトーシスおよびTRA−8により誘導されるアポトーシスの増大を示した。これらの結果により、DR5の細胞質側末端は、DDX3の結合を通してDR5のアポトーシスシグナル伝達を負に調節する機能的領域を有することが示される。
DDX3のノックダウンは、DR5によるアポトーシスに対する抵抗性を逆転する
誘導性(MDA231RおよびUL−3CR)ならびに自発性の抵抗性細胞(SKW620、HT29、およびSKW11l6)の両方を含む、DR5によるアポトーシスに対して抵抗性の細胞において、siRNAによりDDX3の発現をノックダウンして(図4A)、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対する腫瘍細胞の感受性を分析した。アポトーシス抵抗性は、全ての抵抗性細胞においてDDX3の発現が減少した後に逆転されたことから(図4B)、DDX3は、DR5を介したアポトーシスの負の制御因子であることが示される。
DDX3は、cIAP1を動員してDR5を介したアポトーシスを阻害するCARDタンパク質である
MDA5およびRIG−1のようなその他のヘリカーゼタンパク質と同様に、DDX3はそのN末端に保存されたCARDを有する。共免疫沈降法により、野生型DDX3はcIAP1をプルダウンすることが示された(図5A)。しかしながら、DDX3の最初の100残基の切断型(DN)では、cIAP1の共免疫沈降は失われた。TRA−8による処理後のFADDの動員によって示されるように、DISC機能は、CARD−切断型DDX3を発現する細胞において回復した。CARDを欠損するDDX3を発現するDR5抵抗性の腫瘍細胞は、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対してさらに感受性となった(図5B)。これらの結果により、DDX3はDR5のアダプタータンパク質として機能することが示される。DDX3がDR5に結合する一方で、そのCARDがcIAP1を動員することによって、デスドメインにおいてDR5を介したアポトーシスを阻害する。
DR5/DDX3/cIAP1タンパク質複合体はDR5を介したアポトーシスを予測するバイオマーカーである
全細胞ライセートを用いたDR5/DDX3/cIAP1複合体の定量のためのアッセイを開発した。DR5の共免疫沈降後、DR5、DDX3、およびcIAP1の量をサンドイッチELISAによって測定した。感受性の親細胞(MDA231PおよびUL−3CP)ならびに抵抗性細胞(MDA231RおよびUL−3CR)の両方においてDR5が同等に沈降されたとき、結合したDDX3およびcIAP1は、感受性細胞では少なかったが、抵抗性細胞ではかなり多かった(図6A)。確定されたTRF−8に対する感受性を有するヒト癌細胞株のパネルについてさらに分析した。TRA−8抵抗性細胞の一群は、TRA−8感受性細胞の一群に比較して、かなり高レベルのDR5結合DDX3およびcIAP1を発現していた(図6B)。これらの結果により、DR5に結合したDDX3およびcIAP1は、誘導された抵抗性細胞のみではなく、自発性の抵抗性を発生した細胞においてもTRA−8抵抗性を誘導することが示される。
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞におけるDR5/DDX3/cIAP1タンパク質複合体
最近、全てのTNBC細胞は細胞表面DR5を発現し、かつTRA−8により誘導されるアポトーシスに感受性であるが、非TNBC細胞は一貫して抵抗性であることが示された。従って、DR5/DDX3/cIAP1複合体をTNBC細胞株のパネルにおいて調べた。DR5に結合したDDX3およびcIAP1は、TNBC細胞において低めであった(図7Aおよび表5)。興味深いことに幾つかのTNBC細胞では、抗C末端DDX3抗体である3E4によって示されるように、DR5と共免疫沈降されたDDX3の分子量はより小さかった(図7B)。このことは、N末端CARDに特異的な抗DDX3抗体である3E2によって判定されたように、N末端CARDの喪失によるものであった。これらのTNBC細胞では、CARDの喪失に対応して、結合したcIAP1もまた減少していた。DDX3の2D−SDS−PAGEによるプロテオミクス分析により、TNBC細胞におけるDDX3タンパク質プロファイルは変化していることが明らかになった。これらの結果により、DR5/DDX3/cIAP1複合体はTNBC細胞において変化している可能性があり、このことが、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対するこれらの細胞の高い感受性を説明し得ることが示唆された。
新規抗体はBIRを認識する
抗IAPモノクローナル抗体のプールをスクリーニングする間に、独特なモノクローナル抗体(3H4)が同定された。3H4抗体はcIAP1、cIAP2、およびXIAPに対して同等に結合したが、サバイビンには結合しなかった(図8A)。これらのタンパク質に共通な唯一のエピトープまたは構造はBIRドメインであることから、この特定の抗体はBIRドメイン特異的な抗体であると思われた。一連の切断型IAPタンパク質を3H4抗体のエピトープをマップするために使用して、3H4により認識されるエピトープが、サバイビンには存在しない、cIAP1、cIAP2、およびXIAPの第2BIRドメインであることを見出した(図8B)。ウェスタンブロット分析により、3H4抗体は68kDaのcIAP1またはcIAP2、および58kDaのXIAPを検出することが示された。これらの既知のIAPタンパク質に加え、3H4は、膵癌細胞株のパネルに示すように、未知の80kDaのタンパク質もまた検出した(図8C)。
【0070】
【表5】
DDX3/IAP複合体におけるIAPの発現低下
Ascenta Pharmaceuticalsによって開発されたAT−406は、cIAP1、cIAP2、およびXIAPを含む複数のIAPタンパク質に、低いナノモル親和性で結合する。AT−406は、TRAILを介したアポトーシスを相乗的に増大させることが示されてきた。AT−406が、DR5によるアポトーシスに対する膵癌細胞の抵抗性を克服できるか否かを決定するため、TRA−8により誘導されるアポトーシスにおけるAT406の効果を、その両方がTRA−8を介したアポトーシスに対して高度に抵抗性である2つのヒト膵癌細胞株、S013およびS2VP10に対して調べた。1000ng/mlのTRA−8による処理後、アポトーシス細胞はほとんどみられなかった。10μMのAT406単独による処理では、有意な細胞死は誘導されなかった。しかしながら、併用処理では70%を超える細胞死がもたらされた。全細胞ライセートのウェスタンブロット分析によって示されるように、AT−406単独では総IAPタンパク質の発現は変化しなかった(図9A)。しかしながら、併用処理では全てのIAPが減少したことから、アポトーシスの相乗的な誘導は、AT−406により誘導されるIAPタンパク質の分解を促進することが示された。DR5/DDX3/cIAP1タンパク質複合体におけるAT−406の効果を判定するため、DR5共IPによってcIAP1の量を調べた。AT406単独および併用処理後に、DR5複合体においてcIAP1の劇的な減少がみられた(図9B)。DDX3がDR5と同等に共免疫沈降されたことから、これはDR5に結合したDDX3の減少によるものではなかった。これらの結果により、AT−406は、DR5/DDX3タンパク質複合体中のcIAP1を選択的に標的とすることが示された。
乳癌のIAPにおけるAT406のin vitro効果
DDX3複合体中のIAPタンパク質の発現におけるAT406の効果を、トリプルネガティブおよび非トリプルネガティブ株を含む乳癌細胞株のパネルにおいて分析した。以前に示したように、4つのトリプルネガティブ乳癌細胞株、MB435、2LMP(図10A)、SUM159、およびSUM149(図10B)は、DDX3と共免疫沈降した際、TRA−8を介したアポトーシスに対して抵抗性であった2つの非トリプルネガティブ株、BT474およびMB468(図10C)に比較して、低レベルのcIAP1またはcIAP2タンパク質を発現していた。TRA−8単独による処理は、IAPタンパク質のレベルを変化させなかった。しかしながら、AT406単独(図10A〜10C、レーン3)またはTRA−8との併用(図10A〜10C、レーン4)は、DDX3に結合したIAPタンパク質のレベルを有意に減少させた。
TRA−8およびAT406により生じる細胞傷害性
乳癌細胞株に対するTRA−8を介したアポトーシスにおけるAT−406の効果を調べた。BT−474、BT−549、および2LMP細胞に対するAT−406とTRA−8の相互作用の証拠が存在した(図11)。AT−406およびTRA−8を介したアポトーシスにおけるアドリアマイシンの効果もまた調べた。2LMP細胞のAT−406、アドリアマイシン、およびTRA−8による併用処理後に細胞傷害性は増大した(図12)。
TNBC異種移植に対するTRA−8およびアドリアマイシンまたはアブラキサンのin vivoでの有効性
TRA−8単独およびアブラキサンまたはアドリアマイシンとの併用によるin vivoでの抗腫瘍の有効性を、胸腺欠損ヌードマウスにおける2LMPおよびSUM159の同所性の基底細胞B型異種移植モジュールを用いて調べた。腫瘍直径が約6mmとなり、腫瘍がいったん十分に定着した後に処置を開始し、時間と共に腫瘍サイズをモニターした。未処理のSUM159腫瘍の平均腫瘍サイズは、17.9日で倍になった。SUM159腫瘍を有するマウスのTRA−8単独での処置による腫瘍の倍加時間は、図13Aに示すように81.3日であり、腫瘍増殖は未処置のコントロール腫瘍に比較して有意に阻害されたが、アドリアマイシンまたはアブラキサン単独での処置によっては、平均腫瘍倍加時間はそれぞれ41.9および49.3日に及んだ。TRA−8とアドリアマイシンの併用処置によって、TRA−8単独による腫瘍増殖の阻害を反映する平均腫瘍サイズの減少がもたらされ、平均腫瘍倍加時間は84.7日であり、1/10の完全な腫瘍退縮がみられたが、TRA−8単独で処置したマウスでは完全な腫瘍退縮は起こらなかった。TRA−8およびアブラキサンで処置した動物には、TRA−8単独またはTRA−8とアドリアマイシンで処置したものと同様の腫瘍増殖の阻害がみられ、平均腫瘍倍加時間は74.7日であった。
【0071】
図13Bに示すように、未処置マウスにおける2LMP腫瘍の平均サイズは8.6日で倍になったことから、この悪性度の高い同所性腫瘍モデルの迅速な増殖が示される。アブラキサン単独での処置によって1/10の完全な腫瘍退縮がもたらされ、腫瘍倍加時間は46.2日に延長された。2LMP異種移植に対する単独薬剤としてアドリアマイシンはアブラキサンよりもさらに有効であり、腫瘍倍加時間は51.1日に増大した。TRA−8単独での処置によって2LMP腫瘍の増殖は有意に阻害され、腫瘍倍加時間は58.4日に延長され、2/10の完全な腫瘍退縮がもたらされた。TRA−8とアドリアマイシンとの併用処置によって平均腫瘍サイズの有意な減少がもたらされ、平均腫瘍倍加時間は78.2日に延長された。TRA−8とアブラキサンとの併用処置は最も有効な措置であり、平均倍加時間は87.2日に延長され、2/9の完全な腫瘍退縮がもたらされた。これらの結果により、基底細胞B型腫瘍の異種移植に対して化学療法剤をTRA−8と併用して用いることの、in vivoでの増強された有効性が示される。
TRA−8、アブラキサン、およびAT−406のin vivoでの有効性
2LMP腫瘍を有するマウスをTRA−8およびAT−406、TRA−8およびアブラキサン、またはTRA−8とアブラキサンおよびAT−406で処置することにより、TRA−8、アブラキサン、またはAT−406単独による処置に比較して腫瘍倍加時間は延長した(図14)。これらの結果により、AT−406の添加によって腫瘍の阻害は増強されることが示される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、2009年11月5日に出願された、米国仮出願第61/258,274号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、乳癌患者の大きな割合(約20〜25%)を占める。TNBCは、HER2、エストロゲン受容体(ER)、およびプロゲステロン受容体(PR)を有さないことが特徴である。TNBCの予後は悪く、今日までに治療法を標的としたアプローチは見出されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
癌を有する被験体を処置する方法が提供される。該方法は、基底細胞様遺伝子型癌であり、かつHER2非増幅である乳癌を有する被験体を選択すること、および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる。
【0004】
該方法は任意に、管腔細胞、HER2増幅、または基底細胞様遺伝子型からなる群より選択される特性の1以上を有する乳癌を有する被験体を選択すること;該被験体にIAP阻害剤を投与すること;および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる。
【0005】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は、癌細胞の基底細胞様表現型を検出すること;HER2非増幅である癌細胞を検出すること;および癌細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルの、コントロールに比較した減少を検出することを含んでなる。
【0006】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は任意に、細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルを検出すること、およびそれをコントロールと比較することを含んでなる。細胞の複合体のレベルがコントロールに比較して低いときに、応答性が示される。
【0007】
該方法は任意に、乳癌細胞においてN末端カスパーゼ結合動員ドメイン(caspase−associated recruitment domain:CARD)を欠損するDDX3を検出することを含んでなる。N末端CARDを欠損するDDX3は、乳癌細胞がDR5アゴニストに応答性であることを示す。
【0008】
該方法は任意に、乳癌細胞において80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質を検出することを含んでなる。80kDaバキュロウイルスIAPリピートは、乳癌細胞がDR5アゴニストに非応答性であることを示す。
【0009】
さらに、DDX3のN末端CARDへ選択的に結合する抗体が提供される。N末端CARDを欠損するDDX3へ選択的に結合する抗体もまた提供される。80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を含むIAPタンパク質へ選択的に結合する抗体もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、トリプルネガティブ乳癌細胞株が、TRA−8を用いた処理によってアポトーシスを起こすことを明示するグラフを示した図である。トリプルネガティブ乳癌細胞株をTRA−8によって24時間in vitroで処理した。ATPレベルを測定するためのルシフェラーゼに基づくアッセイを用いて、細胞生存率を評価した。値を、未処理のコントロール細胞に対する平均および標準偏差(n=6、反復)として表す。
【図2A】図2Aおよび2Bは、TRA−8と化学療法剤との併用処理が、基底細胞A型および基底細胞B型の乳癌細胞株に対して相加的または相乗的な効果を導くことを示した図である。図2Aは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ基底細胞B型SUM159乳癌細胞における、アポトーシスの増大を明示するグラフを示す。図2Bは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ上皮基底細胞A型HCC1937乳癌細胞における、アポトーシスの増大を示すグラフを示す。SUM159およびHCC1937乳癌細胞は、化学療法剤で24時間前処理した後、TRA−8抗体でさらに24時間処理した。細胞を、TRA−8抗体単独、化学療法化合物単独、またはTRA−8と化学療法化合物の併用によって処理した。ATPレベルの測定によって細胞生存率を評価した。値を平均および標準偏差(n=4、反復)として表す。
【図2B】図2Aおよび2Bは、TRA−8と化学療法剤との併用処理が、基底細胞A型および基底細胞B型の乳癌細胞株に対して相加的または相乗的な効果を導くことを示した図である。図2Aは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ基底細胞B型SUM159乳癌細胞における、アポトーシスの増大を明示するグラフを示す。図2Bは、TRA−8抗体と化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、およびアドリアマイシン)の併用によって処理したトリプルネガティブ上皮基底細胞A型HCC1937乳癌細胞における、アポトーシスの増大を示すグラフを示す。SUM159およびHCC1937乳癌細胞は、化学療法剤で24時間前処理した後、TRA−8抗体でさらに24時間処理した。細胞を、TRA−8抗体単独、化学療法化合物単独、またはTRA−8と化学療法化合物の併用によって処理した。ATPレベルの測定によって細胞生存率を評価した。値を平均および標準偏差(n=4、反復)として表す。
【図3】図3は、DR5/DDX3/IAPアポトーシス抑制性複合体のモデルを示した図である。
【図4A】図4は、siRNAを介したDDX3のノックダウンが、DR5を介したアポトーシスに対する抵抗性を逆転させることを示した図である。図4Aは、DDX3 mRNAに対するsiRNAによって処理した細胞における、DDX3タンパク質発現の減少を明示するウェスタンブロット像を示す。図4Bは、TRA−8抗体で処理され、DDX3の発現が減少した細胞におけるアポトーシスの増大を明示するグラフを示す。
【図4B】図4は、siRNAを介したDDX3のノックダウンが、DR5を介したアポトーシスに対する抵抗性を逆転させることを示した図である。図4Aは、DDX3 mRNAに対するsiRNAによって処理した細胞における、DDX3タンパク質発現の減少を明示するウェスタンブロット像を示す。図4Bは、TRA−8抗体で処理され、DDX3の発現が減少した細胞におけるアポトーシスの増大を明示するグラフを示す。
【図5A】図5は、DR5結合型DDX3がcIAP1を動員し、DDX3 CARDを通じてアポトーシスを阻害することを示した図である。図5Aは、完全長DDX3が、DR5へのcIAP1の動員を通じてアポトーシスを阻害することを明示するウェスタンブロット像を示す。CARD−切断型DDX3(DN)を発現する細胞は、FADDの動員によって示されるように、TRA−8を用いた処理により、デスドメイン誘導シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)機能を回復した。図5Bは、CARDを欠損するDDX3を発現するDR5抵抗性の腫瘍細胞が、TRA−8誘導性のアポトーシスに対してさらに感受性になることを明示するグラフを示す。
【図5B】図5は、DR5結合型DDX3がcIAP1を動員し、DDX3 CARDを通じてアポトーシスを阻害することを示した図である。図5Aは、完全長DDX3が、DR5へのcIAP1の動員を通じてアポトーシスを阻害することを明示するウェスタンブロット像を示す。CARD−切断型DDX3(DN)を発現する細胞は、FADDの動員によって示されるように、TRA−8を用いた処理により、デスドメイン誘導シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)機能を回復した。図5Bは、CARDを欠損するDDX3を発現するDR5抵抗性の腫瘍細胞が、TRA−8誘導性のアポトーシスに対してさらに感受性になることを明示するグラフを示す。
【図6A】図6は、DR5/DDX3/cIAP1複合体が、TRA−8感受性および抵抗性細胞において定量できることを示した図である。図6Aは、TRA−8感受性のMDA231PおよびUL−3CP細胞株において、DR5結合型DDX3およびcIAP1が、TRA−8抵抗性のMDA231RおよびUL−3CR細胞株よりも低いことを明示するグラフを示す。図6Bは、TRA−8抵抗性の細胞株が、TRA−8感受性細胞株の一群に比較して、より高いレベルのDR5結合型DDX3およびcIAP1タンパク質を発現することを明示するヒストグラムを示す。
【図6B】図6は、DR5/DDX3/cIAP1複合体が、TRA−8感受性および抵抗性細胞において定量できることを示した図である。図6Aは、TRA−8感受性のMDA231PおよびUL−3CP細胞株において、DR5結合型DDX3およびcIAP1が、TRA−8抵抗性のMDA231RおよびUL−3CR細胞株よりも低いことを明示するグラフを示す。図6Bは、TRA−8抵抗性の細胞株が、TRA−8感受性細胞株の一群に比較して、より高いレベルのDR5結合型DDX3およびcIAP1タンパク質を発現することを明示するヒストグラムを示す。
【図7】図7は、トリプルネガティブおよび非トリプルネガティブ乳癌細胞株におけるDR5/DDX3/cIAP1複合体の相違を示した図である。図7Aは、DR5結合型DDX3およびcIAP1が、トリプルネガティブ乳癌細胞株(SUM149、SUM159、SUM102、2LMP、HCC38、BT20)において比較的低いことを明示するグラフを示す。図7Bは、幾つかのトリプルネガティブ乳癌細胞株において、DR5と共免疫沈降するDDX3の分子量が、N末端CARDを欠損しているために、非トリプルネガティブ乳癌細胞におけるものよりも小さいことを明示するウェスタンブロット像を示す。
【図8A】図8は、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)を認識する新規抗体(3H4)の特性を示した図である。図8Aは、3H4の、cIAP1、cIAP2、XIAP、およびサバイビンに対する結合特性を示す。図8Bは、3H4によって認識される共有エピトープの配列を示す。上の配列はcIAP1の2番目のBIRドメイン(配列番号:31);中央の配列はcIAP2の2番目のBIRドメイン(配列番号:32);下の配列はXIAPの2番目のBIRドメイン(配列番号:33)を示す。図8Cは、3H4による、ヒト膵癌細胞株のパネルに由来する全細胞ライセートのウェスタンブロット分析を示す。レーン1:MIAcapa;2:BXPC3;3:Panc1;4:Panc2.03;5 S2013;6:S2VP10。
【図8B】図8は、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)を認識する新規抗体(3H4)の特性を示した図である。図8Aは、3H4の、cIAP1、cIAP2、XIAP、およびサバイビンに対する結合特性を示す。図8Bは、3H4によって認識される共有エピトープの配列を示す。上の配列はcIAP1の2番目のBIRドメイン(配列番号:31);中央の配列はcIAP2の2番目のBIRドメイン(配列番号:32);下の配列はXIAPの2番目のBIRドメイン(配列番号:33)を示す。図8Cは、3H4による、ヒト膵癌細胞株のパネルに由来する全細胞ライセートのウェスタンブロット分析を示す。レーン1:MIAcapa;2:BXPC3;3:Panc1;4:Panc2.03;5 S2013;6:S2VP10。
【図8C】図8は、バキュロウイルスIAPリピート(BIR)を認識する新規抗体(3H4)の特性を示した図である。図8Aは、3H4の、cIAP1、cIAP2、XIAP、およびサバイビンに対する結合特性を示す。図8Bは、3H4によって認識される共有エピトープの配列を示す。上の配列はcIAP1の2番目のBIRドメイン(配列番号:31);中央の配列はcIAP2の2番目のBIRドメイン(配列番号:32);下の配列はXIAPの2番目のBIRドメイン(配列番号:33)を示す。図8Cは、3H4による、ヒト膵癌細胞株のパネルに由来する全細胞ライセートのウェスタンブロット分析を示す。レーン1:MIAcapa;2:BXPC3;3:Panc1;4:Panc2.03;5 S2013;6:S2VP10。
【図9A】図9は、DDX3/IAP複合体におけるIAPの発現低下を示した図である。図9Aは、AT−406とTRA−8の併用処理が、DR5によるアポトーシスに対して抵抗性の膵細胞におけるIAPタンパク質の発現を低下させることを示す。2つのヒト膵癌細胞株、S2013(左パネル)およびS2VP10(右パネル)を、コントロール培地(レーン1)、または1000ng/mlのTRA−8(レーン2)、または10μMのAT406(レーン3)、または両方(レーン4)によって一晩処理した。全細胞ライセート中のIAPタンパク質を、3H4抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。図9Bは、DDX3複合体中のIAPタンパク質を示す。上記の処理細胞由来の細胞ライセートを、抗DDX3抗体(クローン3E4)によって免疫沈降した。沈降したタンパク質のウェスタンブロットを行い、3H4抗体によってIAPタンパク質を検出した。
【図9B】図9は、DDX3/IAP複合体におけるIAPの発現低下を示した図である。図9Aは、AT−406とTRA−8の併用処理が、DR5によるアポトーシスに対して抵抗性の膵細胞におけるIAPタンパク質の発現を低下させることを示す。2つのヒト膵癌細胞株、S2013(左パネル)およびS2VP10(右パネル)を、コントロール培地(レーン1)、または1000ng/mlのTRA−8(レーン2)、または10μMのAT406(レーン3)、または両方(レーン4)によって一晩処理した。全細胞ライセート中のIAPタンパク質を、3H4抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。図9Bは、DDX3複合体中のIAPタンパク質を示す。上記の処理細胞由来の細胞ライセートを、抗DDX3抗体(クローン3E4)によって免疫沈降した。沈降したタンパク質のウェスタンブロットを行い、3H4抗体によってIAPタンパク質を検出した。
【図10】図10は、乳癌細胞株における、IAPに対するAT−406のin vitroでの効果を示した図である。ヒト乳癌細胞株(MB436および2LMP(図10A)、SUM159およびSUM149(図10B)、BT474およびMB468(図10C)を、コントロール培地(レーン1)、または1000ng/mlのTRA−8(レーン2)、または10μMのAT406(レーン3)、または両方(レーン4)によって一晩処理した。処理細胞由来の細胞ライセートを、抗DDX3抗体(クローン3E4)によって免疫沈降した。沈降したタンパク質のウェスタンブロットを行い、3H4抗体によってIAPタンパク質を検出した。
【図11】図11は、TRA−8とAT406の併用処理によって生じた細胞傷害性を示した図である。細胞をAT−406で1時間処理した後、TRA−8とAT−406によって24時間処理した。TRA−8添加後24時間目に、ATPレベルの測定によって細胞生存率を決定した。
【図12】図12は、AT−406が、アドリアマイシンとの併用によってTRA−8のin vitro細胞傷害性を増強することを示した図である。TRA−8、AT−406、およびアドリアマイシンは、単一薬剤として、または併用して使用した。アドリアマイシンはAT−406の24時間前に添加し、TRA−8はAT−406の1時間後に添加した。TRA−8添加後24時間目に、ATPレベルの測定によって細胞生存率を決定した。
【図13A】図13は、胸腺欠損ヌードマウスにおける同所性の基底細胞Bの異種移植に対する、TRA−8単独、またはアブラキサンもしくはアドリアマイシンのin vivoでの効力を示した図である。SUM159(図13A)または2LMP(図13B)細胞を乳房脂肪パッド内に移植し、腫瘍が十分に定着した14日後に処置を開始した。矢印は抗体が投与された間隔を示す(n=9〜10マウス/群)。
【図13B】図13は、胸腺欠損ヌードマウスにおける同所性の基底細胞Bの異種移植に対する、TRA−8単独、またはアブラキサンもしくはアドリアマイシンのin vivoでの効力を示した図である。SUM159(図13A)または2LMP(図13B)細胞を乳房脂肪パッド内に移植し、腫瘍が十分に定着した14日後に処置を開始した。矢印は抗体が投与された間隔を示す(n=9〜10マウス/群)。
【図14】図14は、胸腺欠損ヌードマウスにおける、2LMPによる同所性の基底細胞Bの異種移植に対する、AT−406と併用したTRA−8またはアブラキサンのin vivoでの効力を示した図である。2LMP細胞を乳房脂肪パッド内に移植し、腫瘍が十分に定着した10日後に処置を開始した。バーは抗体が投与された間隔を示す(n=10マウス/群)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
癌を有する被験体を処置する方法が提供される。該方法は、基底細胞様遺伝子型癌であり、かつHER2増幅である乳癌を有する被験体を選択すること、および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる。任意に、デスレセプターアゴニストはDR5アゴニストである。任意に、DR5アゴニストは抗体である。任意に、デスレセプターアゴニストは3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される。
【0012】
該方法は例えば、管腔細胞、HER2増幅、または基底細胞様遺伝子型からなる群より選択される特性の1以上を有する乳癌を有する被験体を選択すること;該被験体にIAP阻害剤を投与すること;および該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなってよい。任意に、IAP阻害剤はAT−406である。
【0013】
該方法は任意に、患者に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる。化学療法剤は任意に、3週間ごとに静脈内投与される。化学療法剤は任意に、アドリアマイシン、パクリタキセル、アブラキサン、シスプラチン、およびカルボプラチンからなる群より選択される。
【0014】
乳癌は、例えばエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方であってよい。任意に、乳癌はコントロールに比較して、DR5/DDX3/cIAP1複合体レベルの減少を示す。任意に、乳癌は機能的なN末端CARDを欠損するDDX3を含んでなる。例えば、機能的なN末端CARDを欠損するDDX3は、切断型、または欠失型のN末端CARDを有する。あるいは、機能的なCARDを欠損するDDX3は、N末端CARD内に変異を有する。
【0015】
任意に、乳癌は、デスレセプターアゴニストの非存在下で化学療法剤に対して抵抗性である。乳癌は例えば、アドリアマイシンに対して抵抗性であってよい。任意に、乳癌はパクリタキセルに対して抵抗性である。任意に、乳癌はシスプラチンまたはカルボプラチンに対して抵抗性である。
【0016】
デスレセプターを介した腫瘍細胞のアポトーシスの誘導は、癌療法に対する有望なアプローチである。全てではないとしても、ほとんどの治療法において、幾つかの標的細胞は抵抗性である。例としてTRA−8は、肝細胞への細胞傷害性をもたず(Ichikawa et al., Nat. Med. 7:954−960 (2001))、動物モデルにおいて強力な抗癌効力を示し(Buchsbaum et al., Clin. Cancer Res. 9:3731−3741 (2003))、かつ非ヒト霊長類の毒性試験において安全性を示した、ヒト癌細胞のアポトーシスを誘導する独特なアゴニストモノクローナル抗DR5抗体である。従って、本明細書ではTRA−8を例として用いるが、デスレセプター(例えばDR4またはDR5)の活性化を通してアポトーシスを誘導するその他の薬剤もまた、本明細書で教示する方法において用いることができる。TRA−8ならびにそのヒト化型およびヒトバージョンは、抗癌療法として臨床開発されているが、幾つかの腫瘍細胞株は、合理的なDR5発現量にもかかわらず、TRA−8を介するアポトーシスに対して抵抗性である。これらの観察により、抵抗性は、受容体の発現よりもむしろ、DR5によって惹起されるシグナル伝達機構に関連することが示唆される。確実に、DR5を介したアポトーシスは一般的な化学療法剤によって有意に増大され得る(Ohtsuka and Zhou, J. Biol. Chem. 277:29294−29303 (2002); Ohtsuka et al., Oncogene 22:2034−2044 (2003))。特定の細胞株はTRA−8を介したアポトーシスに抵抗性であるが、その他の細胞株はTRA−8を介したアポトーシスに感受性である。本明細書では、基底細胞様の表現型を有することが知られている乳癌のクラスが、TRA−8を介したアポトーシスに感受性であることが同定された。本明細書に示すように、基底細胞様乳癌細胞株は、DR5/DDX3/cIAP複合体にTRA−8抵抗性の癌細胞株を形成する変化を含む。
【0017】
乳癌は、遺伝子発現、細胞形態、および処置に対する応答に基づいて、少なくとも5つの異なる分子サブタイプに分けることができる。乳癌は最初に、2つの大きな群であるエストロゲン受容体(ER)陽性およびER陰性に分けることができる。これらの2つの群は、生物学的および臨床的に重要な、追加の異なる亜群へさらに細分することができる。ER陽性腫瘍は、エストロゲン受容体、ER応答性遺伝子、および管腔上皮細胞のその他のタンパク質を発現する。従って、ER陽性腫瘍は「管腔腫瘍」であり、これは特徴的な遺伝子発現パターンによって、管腔Aおよび管腔B腫瘍にさらに分類することができる。
【0018】
ER陰性腫瘍は、3つの群:HER−2陽性、基底細胞様腫瘍、および正常乳腺様腫瘍(normal breast−like tumors)にさらに分類することができる。HER−2陽性腫瘍は、第17染色体上の位置17q21の、HER2アンプリコンに位置する、HER−2および増殖因子受容体結合タンパク質7(GRB7)を含む遺伝子を高レベルで発現する。これらはまた、高度に活性化された核内因子(NF)−κBも有し、かつ転写因子GATA4を高レベルで発現するが、ERおよびGATA3を発現していない。正常乳腺様腫瘍(normal breast−like tumors)は正常乳腺組織サンプルに類似しており、脂肪細胞およびその他の非上皮細胞型に特徴的な多くの遺伝子を比較的高レベルで発現するが、管腔上皮細胞遺伝子の発現レベルは低い。
【0019】
基底細胞様腫瘍は、基底細胞に特徴的な遺伝子を発現する。基底細胞様遺伝子産物は、癌の特徴である、細胞増殖、アポトーシス、細胞遊走、および/または浸潤の抑制に関わる。基底細胞様腫瘍は、ER、ER応答性遺伝子、および管腔上皮細胞に特徴的なその他の遺伝子を発現しないか、または低レベルで発現する。基底細胞様腫瘍についての完全な総説は、Rakha et al., J. Clin. Oncol. 26:2568−81 (2008)を参照されたい。
【0020】
「トリプルネガティブ乳癌」は、エストロゲン受容体(ER)陰性、プロゲステロン受容体(PR)陰性、およびHER2陰性の乳癌を意味する。トリプルネガティブ乳癌は、ER、PR、またはHER2を発現しない。
【0021】
「HER2非増幅」は、第17染色体上の位置17q12−q21に位置するHER2アンプリコンを増幅しないことを意味する。HER2アンプリコンの増幅は、Mano et al., Cancer Treat. Rev. 33:64−77 (2007)に記載される、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを用いて決定することができる。HER2の増幅はHER2陽性の癌に見られるが、HER2は基底細胞様表現型の乳癌では増幅されない。
【0022】
「デスレセプター」は、リガンドがいったん結合すると、細胞のアポトーシスを誘導する受容体を意味する。デスレセプターには、例えば、デスドメイン(例えばTNFRI、Fas、DR3、4、5、6)を有する腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバーが含まれる。
【0023】
例えばDR5を通したシグナル伝達は、DR5を介したアポトーシスの制御における重要な機構である。TNFRスーパーファミリーのデスレセプターに共通する特色は、それらが全て、保存された「デスドメイン」を細胞質側末端に有することである(Zhou et al., Immunol. Res. 26:323−336 (2002))。DR5を介したアポトーシスがデスドメインにおいて惹起されることは十分に確立されている。TRAILまたはアゴニスト抗DR5抗体による細胞表面のDR5の架橋は、DR5のオリゴマー化を導き、その直後にDR5のデスドメインへFADDが動員される(Bodmer et al., Nat. Cell Biol. 2:241−243 (2000); Chaudhary et al., Immunity 7:821−830 (1997); Kuang et al., J. Biol. Chem. 275:25065−25068 (2000); Schneider et al., Immunity 7:831−836 (1997); Sprick et al., Immunity 12:599−609 (2000))。FADDが会合したデスドメインは、イニシエータであるプロカスパーゼ8および/またはプロカスパーゼ10をさらに動員し、同種親和性のDD相互作用を通してデスドメイン誘導性シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)を形成する(Krammer, Nature 407:789−795 (2000))。活性化されたカスパーゼ8および10は、カスパーゼ3を直接活性化し得るか、またはBH3を含むタンパク質であるBidを切断し、チトクロムCの放出およびカスパーゼ9の活性化を通してミトコンドリア依存性のアポトーシス経路を活性化し得る(Desagher and Martinou, Trends Cell Biol. 10:369−377 (2000); Scaffidi et al., EMBO J. 17:1675−1687 (1998))。デスドメイン複合体の形成後、カスパーゼ、NF−κB、およびJNK/p38のような幾つかのシグナル伝達経路が活性化される。これらのシグナル伝達経路の活性化により、Bcl−2およびIAPファミリーのタンパク質を通して、デスレセプターを介したアポトーシスが導かれる。
【0024】
「アゴニスト」は、細胞上の受容体(例えばデスレセプター)に結合することができ、内在性のリガンドの結合によって典型的に生じる同一の反応または活性(例えばアポトーシス)を開始する物質(分子、薬物、タンパク質など)を意味する。本方法のアゴニストはデスレセプターリガンドであってよい。従って、アゴニストはTNF、Fasリガンド、またはTRAILであってよい。さらに、アゴニストはデスレセプター結合ドメインを含んでなるこれらのリガンドの断片であってもよく、該断片は結合してデスレセプターを活性化することができる。さらに、アゴニストはデスレセプター結合ドメインを含んでなる融合タンパク質であってもよく、該融合タンパク質は結合してデスレセプターを活性化することができる。さらに、アゴニストはTNF、Fas、またはTRAILに対して少なくとも85%の相同性があるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよく、このホモログは結合してデスレセプターを活性化することができる。
【0025】
さらに、アゴニストはデスレセプターに結合するアポトーシス誘導性抗体であってもよい。「抗体」はモノクローナル、ポリクローナル、キメラ、単鎖、ヒト化、完全ヒト抗体、またはそれらのFabもしくはF(ab’)2断片のいずれであってもよい。「アポトーシス誘導性抗体」は、本明細書に提供する方法を用いた活性化の前または後に、プログラムされた細胞死を引き起こす抗体を意味する。従って本方法のアゴニストは、Fas、TNFR1、またはTRAILデスレセプターに特異的な抗体であってよく、該抗体はデスレセプターを活性化する。アゴニストは、DR4またはDR5に特異的な抗体であってよい。アゴニストは、同一のエピトープ特異性を有するか、またはATCC受入番号PTA−1428(例えばTRA−8抗体)、ATCC受入番号PTA−1741(例えばTRA−1抗体)、ATCC受入番号PTA−1742(例えばTRA−10抗体)のマウス−マウスハイブリドーマから分泌されるDR5抗体であってよい。アゴニストは、同一のエピトープ特異性を有するか、またはATCC受入番号PTA−3798(例えば2E12抗体)のハイブリドーマから分泌される抗体であってよい。
【0026】
本方法の抗体が標的とするTRAIL受容体は、DR4またはDR5であってよい。このような受容体については、それらにおいて教示される受容体についての全体が参照により本明細書に取り込まれる、特許出願公開公報である国際公開第99/03992号、国際公開第98/35986号、国際公開第98/41629号、国際公開第98/32856号、国際公開第00/66156号、国際公開第98/46642号、国際公開第98/5173号、国際公開第99/02653号、国際公開第99/09165号、国際公開第99/11791号、国際公開第99/12963号、および米国特許第6,313,269号の全てに記載される。これらの受容体に特異的なモノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて産生することができる。例えば、その両方におけるこれらの方法についての全体が参照により本明細書に取り込まれる、Kohler and Milstein, Nature, 256:495−497 (1975)、およびEur. J. Immunol. 6:511−519 (1976)を参照されたい。また、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、特許出願公開公報である国際公開第01/83560号において教示される方法も参照されたい。
【0027】
「CARD」は、カスパーゼ結合動員ドメイン(caspase−associated recruitment domain)を意味する。CARDを含むタンパク質はデスレセプターへの結合能によって特徴付けられ、結合は任意にデスドメインの外側であり、前記デスレセプターのデスドメインによってアポトーシスの活性化を調節する。DDX3は、CARDを含むことによって特徴付けられるタンパク質ファミリーの代表的なメンバーである。
【0028】
CARDを含むタンパク質は、細胞死の重要な制御因子として確立されてきた。CARDは、特定のカスパーゼのプロドメインのN末端に見出される、保存されたアルファヘリックス束から構成される。CARDはまた、様々なその他のタンパク質にも見出され得る。デスドメインタンパク質のように、CARDは、CARD/CARD相互作用を通してタンパク質の連絡を可能にする、同型のタンパク質相互作用モチーフとして機能する。CARDを有するタンパク質は、アポトーシス促進性または抗アポトーシス性のいずれかであってよい。アポトーシス促進性のCARDドメインタンパク質には、アポトーシスの開始に重要な役割を果たす、カスパーゼ2、4、および9のような特定のカスパーゼならびにApaf1が含まれる。代表的な抗アポトーシス性CARDタンパク質には、カスパーゼのCARDと相互作用し、それらのバキュロウイルスIAPリピート(BIR)ドメインを通じてカスパーゼの活性化を阻害する、cIAP1およびcIAP2が含まれる。このタンパク質ファミリーの機能についての多くの態様は、癌の処置における新規な薬物標的としての、それらの潜在的な有用性に向けられている。幾つかのCARD含有タンパク質は、調節不全の場合に腫瘍形成を促進し、化学療法に対する腫瘍の抵抗性に顕著に寄与する、保存された細胞死機構の決定的な構成要素である。幾つかの癌では不活性化されている、アポトーシス促進性タンパク質のApaf1は、ミトコンドリア誘導性アポトーシスに不可欠のCARDタンパク質である。IAPファミリータンパク質のようなその他の抗アポトーシス性CARDタンパク質が、細胞死の刺激から腫瘍を保護し、特定の型の癌に過剰発現することが示されている。従って、CARDタンパク質を活性化または阻害する治療薬は、従来の化学療法と併用する際に、化学療法剤の増感剤として、またはアポトーシスの修飾因子として利用することができる。
【0029】
CARD含有タンパク質のCARDは、ウイルス感染の間にホスト細胞のアポトーシスを抑制するアポトーシス阻害物質(IAP)の動員に関与する(Crook et al., J. Virol. 67:2168−2174 (1993))。IAPファミリーは、成熟カスパーゼと相互作用し、その酵素活性を阻害することによって細胞死に拮抗する。XIAP、c−IAP1、c−IAP2、およびML−IAP/Livinを含む、8つの異なる哺乳類IAPが同定されている(例えば、Ashhab et al., FEBS Lett. 495:56−60 (2001); Kasof and Gomes, J. Biol. Chem. 276:3238−3246 (2001); Vucic et al., Curr. Biol. 10:1359−1366 (2000)を参照)。全てのIAPは、1〜3のバキュロウイルスIAPリピート(BIR)ドメインを含み、相同配列を有する。BIRドメインを通し、IAP分子はカスパーゼに結合して直接に阻害する(Deveraux and Reed, Genes Dev. 13:239−252 (1999); Deveraux et al., Nature 388:300−304 (1997))。ミトコンドリアタンパク質であるSmac/DIABLOは、IAPに結合して、これに拮抗することができ(Suzuki et al., J. Biol. Chem. 276:27058−27063 (2001))、IAPの機能を抑制する(Wieland et al., Oncol. Res. 12:491−500 (2000))。
【0030】
DR5/DDX3/cIAP複合体は、基底細胞様表現型の乳癌細胞において、変化させるか、またはレベルを減少させることができる。以下に示すように、DR5/DDX3/cIAP1複合体は、例えばN末端CARDを欠損するDDX3、またはN末端CARDに変異を有するDDX3を含むことによって変化させることができる。機能的なN末端CARDを欠損したDDX3を含む複合体は、一般に、デスレセプターアゴニストを用いた処置によって分離し、DRを介したアポトーシスを可能にする。DDX3またはcIAPの発現レベルが低いことは、乳癌細胞内のDR5/DDX3/cIAP複合体のレベルが低いことの一因ともなり得る。複合体のレベルが低い細胞もまた、DRを介したアポトーシスを可能にする、デスレセプターアゴニストによる処置に感受性である。
【0031】
被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる、癌を有する被験体を処置する方法が提供される。デスレセプターアゴニストは、例えばIAP阻害剤と共に投与されてよい。任意に、IAP阻害剤はAT406である。デスレセプターアゴニストはまた、その他の化学療法剤と併用して投与されてもよい。化学療法剤の例には、アドリアマイシン、ブレオマイシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン類、シクロホスファミド、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、メルファラン、メトトレキサート、マイトマイシン、6−メルカプトプリン、パクリタキセル、テニポシド、6−チオグアニン、ビンクリスチン、およびビンブラスチンが含まれる。化学療法剤のさらなる例は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 18th Ed., Berkow et al., eds, Rahway, NH (2005)、およびSladek et al., Metabolism and Action of Anti−Cancer Drugs, Powis et al., eds., Taylor and Francis, New York, NY (1987)に見出される。
【0032】
癌を有する被験体を処置する方法が提供される。このような方法には、有効量のデスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、またはそれらの組み合わせを投与することが含まれる。任意に、デスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせは医薬組成物中に含まれる。
【0033】
本明細書に提供されるデスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせ、ならびに本明細書に記載される、薬剤的に許容される担体を含む組成物が提供される。本明細書に提供される組成物は、in vitroまたはin vivoでの投与に適する。薬剤的に許容される担体は、生物学的にまたはその他により望ましくないものではない物質を意味し、すなわち該物質は望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、または該物質が含まれる医薬組成物のその他の構成要素と有害な方法で相互作用することなく、被験体に投与される。担体は、有効成分の分解が最少となり、かつ被験体における有害な副作用が最少となるように選択される。
【0034】
適切な担体およびそれらによる製剤については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams & Wilkins (2005)に記載される。典型的には、製剤を等張にするため、適切な量の薬剤的に許容される塩が製剤中に使用される。薬剤的に許容される担体の例には、無菌水、生理食塩水、リンゲル液のような緩衝液、およびデキストロース溶液が含まれるが、これらに限定されない。溶液のpHは一般に約5〜約8、または約7〜7.5である。その他の担体には、免疫原性ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスのような、持続放出製剤が含まれる。マトリックスは形態のあるもの、例えばフィルム、リポソーム、または微粒子の形である。例えば投与経路、および投与される組成物の濃度に依存して、特定の担体がさらに好ましい可能性がある。担体は、デスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせを、ヒトまたはその他の被験体に投与するために適したものである。
【0035】
組成物は、局所性の処置が望まれるかまたは全身性の処置が望まれるかに依存して、および処置される領域に依存して、幾つかの方法によって投与される。組成物は、局所的、経口的、非経口的、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮的、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入を含む幾つかの投与経路のいずれかを通して、または気管支鏡を通した導入によって投与される。任意に、組成物は経口吸入、経鼻吸入、または鼻腔内粘膜投与によって投与される。吸入薬による組成物の投与は、スプレーもしくは液滴機構による送達を通じて、鼻または口を通すことができる。
【0036】
非経口投与のための製剤には、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝液を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、ラクトリンゲル、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、体液および栄養素補液、電解質補液(リンゲルのデキストロースを基にしたようなもの)などが含まれる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどのような、保存料ならびにその他の添加物が任意に存在する。
【0037】
局所投与のための製剤には、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐薬、スプレー、液剤、および散剤が含まれる。従来の医薬担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤などが任意に必要とされるか、または望ましい。
【0038】
経口投与のための組成物には、散剤または顆粒、水もしくは非水性溶媒中の懸濁液または溶液、カプセル、サシェ、または錠剤が含まれる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が任意に望ましい。
【0039】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は、癌細胞の基底細胞様表現型を検出すること;HER2非増幅である癌細胞を検出すること;および癌細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルの、コントロールに比較した減少を検出することを含んでなる。該方法はさらに、例えば、癌細胞がエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方であると決定することを含んでなってよい。任意に、DR5アゴニストは抗体である。任意に、乳癌細胞は乳房生検に由来する。
【0040】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞(例えばトリプルネガティブ)をスクリーニングする方法もまた提供される。該方法は、例えば、細胞内のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルを検出すること、およびそれをコントロールと比較することを含んでなってよい。細胞の複合体のレベルがコントロールに比較して低いときに、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることが示される。該方法は、例えば、乳癌細胞内に機能的なN末端CARDを欠損するDDX3を検出することを含んでなってよい。機能的なN末端CARDを欠損するDDX3は、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることを示す。該方法は、例えば、乳癌細胞内に80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を含むIAPタンパク質を検出することを含んでなってよい。80kDa BIRは、乳癌細胞がDR5アゴニストに非応答性であることを示す。
【0041】
サンプル中のDDX3、機能的なN末端CARDを欠損するDDX3、および80kDa BIRを含むIAPタンパク質の発現レベルを決定するために用いることのできるアッセイ技術は、当業者に公知である。このようなアッセイ法には、放射性免疫測定法(RIA)、免疫組織化学法、in situハイブリダイゼーション法、競合的結合法、ウェスタンブロット分析、およびELISA法が含まれる。アッセイにはまた、マイクロアレイ法、遺伝子チップ法、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法、ワンステップPCR法、およびリアルタイム定量(qRT)−PCR法からなる群より選択されるアッセイを用いてRHAのレベルを決定することも含まれる。タンパク質またはRNAの発現を決定するための分析技術は公知である。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)を参照されたい。
【0042】
DR5/DDX3/cIAP複合体のレベルを決定するための技術もまた、当業者に公知である。複合体のレベルを決定するためのアッセイは、免疫沈降法、共免疫沈降法、およびゲルを用いないアプローチ、例えばマススペクトロメトリーまたは共局在アッセイのようなタンパク質相互作用のプロファイリングからなる群より選択されてよい。アッセイは当該技術分野において公知である。例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2001); Dickson, Methods Mol. Biol. 461:735−44 (2008)、およびZinchuk et al., Acta Histochem. Cytochem. 40:101−11 (2007)を参照されたい。
【0043】
DDX3のN末端CARDへ選択的に結合する抗体、N末端CARDを欠損するか、または機能的なN末端CARDを欠損するDDX3へ選択的に結合する抗体、および80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質に結合する抗体もまた提供される。
【0044】
本明細書において抗体の語は広い意味で用いられ、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方が含まれる。この語はまた、ヒト抗体および/またはヒト化抗体も指す。ヒトモノクローナル抗体産生のための技術の例には、Coleらにより(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985))、およびBoernerらにより(J. Immunol. 147(1):86−95 (1991))記載されるものが含まれる。ヒト抗体(およびその断片)はまた、ファージディスプレイライブラリーを用いても産生することができる(Hoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))。開示するヒト抗体はまた、トランスジェニック動物を用いても得ることができる。例えば、免疫誘導に応答してヒト抗体の全レパトアを産生できるトランスジェニック、変異マウスについて記載されている(例えばJakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551−5 (1993); Jakobovits et al., Nature 362:255−8 (1993); Bruggermann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993)を参照)。
【0045】
本明細書で用いられるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の語は、大まかにはペプチド結合によって連結された2以上のアミノ酸を意味する。本明細書では、タンパク質、ペプチド、およびポリペプチドもまた、アミノ酸配列に言及するために互換的に用いられる。本明細書では、ポリペプチドの語は分子を含んでなるアミノ酸の特定のサイズまたは数を示唆するものとしては用いられず、かつ本発明のペプチドは数個まで、またはそれ以上のアミノ酸残基を含んでよいことが認識されなければならない。
【0046】
全体を通して用いられる被験体は脊椎動物であってよく、さらに詳細には哺乳類(例えばヒト、ウマ、ネコ、イヌ、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、およびモルモット)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、およびその他の動物のいずれであってもよい。この語は特定の年齢または性別を意味しない。従って、成体および新生仔の被験体が、雄性または雌性を問わずに網羅されることが意図される。本明細書で用いられる患者または被験体は互換的に使用されてよく、疾病または疾患(例えば癌)を有する被験体を指してよい。患者または被験体の語には、ヒトおよび獣医学の被験体が含まれる。
【0047】
本明細書に教示される方法に従い、被験体には有効量のデスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、またはそれらのいずれかの組み合わせが投与される。有効量および有効投与量の語は互換的に用いられる。有効量の語は、望ましい生理的応答を生じさせるために必要ないずれかの量として定義される。デスレセプターアゴニスト、IAP阻害剤、化学療法剤、およびそれらの組み合わせを投与するための有効量およびスケジュールは経験的に決定されてよく、このような決定がなされることは当該技術分野における技能の範囲内である。投与のための投与量の範囲は、疾病または疾患の1以上の症状が影響される(例えば減少するかまたは遅延する)、望ましい効果を生むために十分に広い。投与量は、望まれない交差反応、アナフィラキシー反応などのような、実質的に有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投与量は年齢、状態、性別、疾病の型、疾病もしくは疾患の程度、投与経路、またはその他の薬物が投与計画に含まれるか否かによって変動する可能性があり、当業者によって決定することができる。投与量は、いずれかの禁忌の事象において、個別の医師によって調節され得る。投与量は変動してよく、1以上の用量投与によって毎日、1日または数日間投与されてよい。任意に、デスレセプターアゴニストは3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される。任意に、化学療法剤は3週間ごとに投与される。ガイダンスは、医薬製品の所定の種類のための、適切な投与量についての文献に見出すことができる。
【0048】
本明細書で用いられる処置、処置する、または処置しているという語は、疾病もしくは状態または疾病もしくは状態の症状の影響を減少させる方法を指す。従って開示される方法において、処置は、確立された疾病もしくは状態または疾病もしくは状態の症状の重症度における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の減少を指してよい。例えば疾病を処置する方法は、被験体における疾病の1以上の症状が、コントロールに比較して10%減少した場合、処置であるとみなされる。従って、減少は10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または天然もしくはコントロールレベルに比較した10%〜100%のいずれのパーセントの減少であってもよい。処置は、必ずしも疾病、状態、または疾病もしくは状態の症状の治癒または完全な消失を指すものではないことが理解される。
【0049】
「任意の」または「任意に」は、続いて記載される現象、状況、もしくは物質が、起こり得るか起こり得ないか、または存在し得るか存在し得ないことを意味し、現象、状況、もしくは物質が起こるかまたは存在する場合、およびそれが起こらないかまたは存在しない場合が含まれる。
【0050】
開示する方法および組成物のために使用できるか、該方法および組成物と併用して使用できるか、該方法および組成物の調製において使用できるか、または該方法および組成物の産物である、物質、組成物、および構成要素が開示される。本明細書ではこれらおよびその他の物質について開示するが、これらの物質の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される一方で、これらの化合物の様々な個別の、および集合的な組み合わせならびに置換それぞれの特定の参照について明確に開示され得ない場合でも、それぞれは具体的に意図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば方法について開示および考察され、幾つかの分子になされ得る、方法を含む幾つかの改変について考察される場合、それぞれの、および全ての方法の組み合わせならびに置換、および可能性のある改変は、特に反する指示がない限り具体的に意図される。同様に、これらのいずれのサブセットまたは組み合わせも具体的に意図され、かつ開示される。この概念は、開示する組成物を用いる方法における工程を含むがこれに限定されない、この開示の全ての態様に適用される。従って、実施できる様々な追加の工程が存在する場合、これら追加の工程のそれぞれは、開示する方法の特定の方法工程または方法工程の組み合わせのいずれによっても実施でき、かつこのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットのそれぞれは具体的に意図され、開示されるとみなされなければならないことが理解される。
【0051】
本明細書に引用される出版物およびそれらに引用される材料は、それらの全体が参照により本明細書に詳細に取り込まれる。
【実施例】
【0052】
一般法
細胞株、抗体、および試薬
ヒト乳癌細胞株であるMDA−MB−231は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)(マナッサス、バージニア州)から購入した。ヒト卵巣癌細胞株であるUL−3Cを得た。細胞は、10% 熱不活化FCS、50μg/ml ストレプトマイシン、および50U/mL ペニシリンを加えたDMEMまたはRPMI 1640(Cellgro, Mediatech, Inc.,マナッサス、バージニア州)中で維持した。
【0053】
抗ヒトDR4(クローン:2E12)および抗ヒトDR5(クローン:TRA−8)モノクローナル抗体については以前に記載されている(Ichikawa et al., 2003; Ichikawa et al., 2001)。抗ヒトDR5(クローン:2B4)は、フローサイトメトリーおよび免疫沈降法のために開発された。組み換え可溶性TRAILはAlexis Biochemicals(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。ポリクローナル抗カスパーゼ3および抗カスパーゼ8抗体は、BD Pharmingen(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。モノクローナル抗ヒトカスパーゼ2、3、8、9、および10抗体、ならびにモノクローナル抗ヒトBcl−2、Bcl−xL、Bax、cIAP−1、cIAP−2、XIAP、およびサバイビン抗体は調製した。抗PARP抗体はCell Signaling Technology, Inc.(ベバリー、マサチューセッツ州)から購入した。抗βアクチン抗体はSigmaから購入した。抗FADDはTransduction Laboratories(レキシントン、ケンタッキー州)から購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合の二次的試薬は全てSouthern Biotechnology Associates, Inc.(バーミングハム、アラバマ州)から購入した。
【0054】
活性化カスパーゼ−1、カスパーゼ−2、カスパーゼ−3、カスパーゼ−6、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、カスパーゼ−10はEMD Biosciences, Inc(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。蛍光ペプチド誘導体Ac−Val−Asp−Val−Ala−Asp−AMC(Ac−VDVAD−AMC、260060M001、配列番号:1)、Ac−Asp−Glu−Val−Asp−アミノ−4−メチルクマリン(Ac−DEVD−AMC、260031M001、配列番号:2)、およびAc−カルボニル−Ile−Glu−Thr−Asp−7−アミド−4−メチルクマリン(Z−IETD−AMC、260042M001、配列番号:3)は、Alexis Biochemicals;サンディエゴ、カリフォルニア州から購入した。カスパーゼ−2、−3、−8、−10阻害剤(FMKSP01)はR&D Systems, Inc(ミネアポリス、ミネソタ州)から購入した。
TRA−8、2E12、およびTRAILを介するアポトーシスに対する腫瘍細胞の感受性についての、細胞傷害性の分析
細胞(ウェルあたり1,000細胞)を96ウェルプレートへ、8通りの濃度(1000ng/mlからの2倍連続希釈)のTRA−8、2E12、またはTRAILと共に三重にまいた。一晩培養した後、ATPLITE(商標)アッセイ(Packard Instruments、メリデン、コネティカット州)を製造者の指示に従って用いることにより、細胞生存率を決定した。結果を、培地コントロールウェルに比較した処理ウェル中の生細胞のパーセンテージとして示す。
フローサイトメトリー
細胞(106)をPBSで1回洗浄し、一次抗体(1μg/mlのTRA−8)を含む1mlの冷たいFACS緩衝液(5% FBSおよび0.01% NaN3を含むPBS)に再懸濁した。細胞を氷上で60分間染色し、3mlの冷たいFACS緩衝液で洗浄した後、二次抗体(1:100希釈したPE結合ヤギ抗マウスIgG)で4℃60分間、暗所にてインキュベートした。3mlのFACS緩衝液でさらに洗浄した後、サンプルあたり10,000細胞をFACSCANフローサイトメーター(BD Biosciences;サンノゼ、カリフォルニア州)によって分析した。
アポトーシス関連タンパク質のウェスタンブロット分析
腫瘍細胞(3×106)を冷たいPBSで2回洗浄し、10mM Tris−HCl(pH7.6)、150mM NaCl、0.5mM EDTA、1mM EGTA、0.1% SDS、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、およびプロテアーゼ阻害剤の混合物(1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1μg/ml ペプスタチンA、2μg/ml アプロチニン)を含む溶解緩衝液、300μlによって溶解した。細胞ライセートを10秒間超音波処理し、12,000gにて20分間遠心分離した。等量の総タンパク質を含む細胞ライセートを、SDS−PAGEサンプル緩衝液と共に5分間煮沸した。全細胞ライセートを、8%、10%、または12% SDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜へ電気泳動的に転写した。ブロットをTBST緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、および0.1% Tween20)中の5%無脂肪ドライミルクによってブロックし、ブロッキング緩衝液中の一次抗体と共に4℃にて一晩インキュベートした。ブロットをTBSTで3回洗浄し、HRP結合二次抗体によって1時間室温でプローブした。TBSTで4回洗浄した後、ECL Western blotting detection system(Amersham Biosciences;ピッツバーグ、ペンシルベニア州)を製造者の指示に従って用いることにより、プローブしたタンパク質を可視化した。
siRNAを介したDDX3のノックダウン
RNAiの設計:オンラインによる設計ツールであるBLOCK−iT RNAi Designer(Invitrogen;カールズバッド、カリフォルニア州)を用いて、DDX3を標的とするRNAiを同定した。最も高いスコアを有するRNAi標的の上位10から、5つの標的siRNA配列を選択した(表1を参照)。
【0055】
【表1】
これらを次にBLOCK−iT U6エントリーベクター内へクローン化した。siRNAはU6プロモーターによって駆動され、分裂しているかまたはしていない哺乳類細胞型のほとんどに、一過性に発現させることができる。RNAi応答のため、LIPOFECTAMINE 2000(Invitrogen;カールズバッド、カリフォルニア州)を用いて、抵抗性細胞にRNAiをトランスフェクトした。トランスフェクション後36時間目に、抗DDX3抗体を用いたウェスタンブロット分析によってDDX3の発現の減少を判定した。いったんDDX3の発現の減少が達成されると、siRNAオリゴを合成した(標的配列:GGAGAAATTATCATGGGAAAC(配列番号:14):センスRNA 5’−Fl−GGAGAAAUUAUCAUGGGAAAC(Fl−配列番号:15)(Fl=フルオレセイン);アンチセンスRNA 5’−GUUUCCCAUGAUAAUUUCUCC−3’(配列番号:16)。RNAiコントロールオリゴ(RI−010−DP)はMolecula(コロンビア、メリーランド州)から購入した。
発現ベクターの作製
完全長DDX3を、DDX3のN末端のHisタグによってpcDNA3.1プラスミド(Invitrogen)内にクローン化した。DDX3およびDR5のcDNAを、MDA231細胞から抽出した全RNAにより、以下のプライマー対:BamHIを有するDDX31順方向プライマー:5’−acggatccaaatgagtcatgtggcagtgga−3’(配列番号:17);XhoIを有するDDX3662逆方向プライマー:5’−ctctcgagcaaagcaggctcagttaccc−3’(配列番号:18)を用いて行った逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって作製した。KpnIを有するDR5−1順方向プライマー:5’−aaaggtaccagccatggaacaacggggacag−3’(配列番号:19);EcoVを有するDR5−441逆方向プライマー:5’−aaagatatcttaggacatggcagagtctgcatt−3’(配列番号:20);単離されたDDX3のポリメラーゼ連鎖反応断片を、インフレームでpcDNA3.1−Hisベクター(Invitrogen)へ挿入した。DR5のcDNAをpshutter−CMVベクター内へクローン化した。DNA配列決定によって正確な配列を確認した。
【0056】
BamHIとXhoI部位の間のDDX3配列を欠失させることにより、DDX3/pcDNA3.1−His発現プラスミドを作製した。BamHIを有するDDX3151順方向プライマー:5’−acggatccaaatgttttctggaggcaacactggg−3’(配列番号:21);以下のプライマー:EcoRVを有するDR5−340逆方向プライマー:5’−aaagatatcttactgtctcagagtctcagtgggatc−3’(配列番号:22);EcoRVおよびXhoIを有するDR5−330逆方向プライマー:5’−aaagatatcctcgagatttgctggaaccagcagcct−3’(配列番号:23)を用いてDR5配列を欠失させることにより、DR5/pshutter−CMV発現プラスミドを作製した。
細菌におけるDDX3の発現プラスミドの構築
DDX3またはcIAP1断片をTOPO100ベクター(Invitrogen)内へ挿入した。得られたプラスミドによりE.coli株BL21(DE3)を形質転換した後、これをLB培地中で対数期まで増殖させ、0.4mM イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシドによって3時間誘導した。細胞をペレットにして、溶解緩衝液(30mM Tris−HCl,pH7.5、0.1mM NaCl、1mM DTT、0.1mM EDTA、1% ノニデットP−40、および20μg/ml PMSF)中に再懸濁した後、超音波処理した。14,000×g、15分間の遠心分離後の上清をNiカラムによって精製した。タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)によって決定した後、一定分量を80℃にて保管した。
293または3T3細胞の一過性トランスフェクション
LIPOFECTAMINE(商標)2000(Invitrogen)を用いて、発現ベクターを293または3T3細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、それぞれのモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析により、タンパク質の発現を決定した。共免疫沈降法による分析のため、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む免疫沈降−溶解緩衝液によって細胞を溶解した。
共免疫沈降法
抗DDX3または抗DR5抗体をセファロースビーズに結合させた(Sigma;セントルイス、ミズーリ州)。DR5 DISCの組成物は以下のように決定した。5×106の細胞(他に指示のない限り)を500ng/mlのTRA−8によって、指示する時間37℃にて処理した後、免疫沈降溶解緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、0.2% ノニデットP40および10%グリセロール、ならびにコンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で溶解するか、または処理なしで溶解した(無刺激条件)。次にDR5 DISCを30μlのビーズによって4℃で一晩沈降した。免疫沈降後、ビーズを溶解緩衝液で4回洗浄した。次にビーズを10mM Tris緩衝液で5回洗浄し、SDS−PAGEおよび免疫ブロット分析のためのローディング緩衝液に再懸濁した。
カスパーゼ活性のin vitroアッセイ
蛍光定量アッセイを96ウェルの透明底プレート内で行い、全ての測定は三重のウェルで行った。100μlのアッセイ緩衝液(10mM HEPES pH7.0、50mM NaCl、2mM MgCl2、5mM EDTA、および1mM DTT)を添加した。各ウェルに、活性化カスパーゼ8およびペプチド基質(Ac−IETD−AMC)を最終濃度が100ng/μlになるように添加した。共免疫沈降の溶出画分を添加して反応を開始させた。アッセイ緩衝液、基質、および細胞ライセートを含まない溶解緩衝液を入れたウェル中でバックグラウンド蛍光を測定した。アッセイプレートを37℃で1時間インキュベートした。355nmの励起および440nmの発光に設定した蛍光プレートリーダー(Bio−Tek;ウィヌースキ、バーモント州)において、蛍光を測定した。
In vitroカスパーゼ切断アッセイ
カスパーゼがDDX3を切断する能力を、In vitroアッセイによって調べた。10μlのDR5共IP由来の抽出画分、10μlの反応緩衝液(10mM HEPES[pH7.0]、50mM NaCl、2mM MgCl2、5mM EGTA、1mM DTT、2mM ATP)、および5μl(0.1U/μl)の組み換え活性化型カスパーゼを含む切断反応を、37℃で30分間行った。切断は、抗DDX3抗体を用いたウェスタンブロットによって判定した。
実施例1
TRAIL−R2を介するアポトーシスにおけるDDX3の役割
抵抗性細胞においてDR5のデスドメイン遮断を引き起こす、候補となるタンパク質であるDDX3のプロテオミクス解析。
【0057】
デスレセプターを標的とする、治療薬としてのTRAILおよびアゴニスト抗体に自発的に発生するかまたは誘導されるアポトーシス抵抗性は、これらの薬剤による癌の有効な処置における主要な障害である。抵抗性細胞において、DR5デスドメイン複合体の別の組成物が存在するか否かを判定するため、TRA−8感受性の親細胞およびTRA−8抵抗性のMDA231細胞において、現存するDR5結合タンパク質のプロテオミクスプロファイルを、TRA−8による処理の前と後に、二次元プロテオミクスおよびマススペクトロメトリー解析によって比較した。SYPRO(商標)ruby(Molecular Probes;ユージーン、オレゴン州)によって染色した二次元ゲルの実験にて、約〜80kDaのタンパク質スポットが見出された。このタンパク質とDR5との結合がDR5デスドメイン誘導シグナル複合体(Death Domain Inducing Signal Complex:DISC)の形成を遮断することで、TRA−8抵抗性が引き起こされる。SDS−PAGEから〜80kDaのタンパク質を切り出し、トリプシンによって消化した後、ペプチド配列をマススペクトロメトリーによって解析した。6つの消化断片からのタンパク質のアミノ酸配列は、GenbankのヒトDDX3配列と100%同一であったことから(表2)、TRA−8誘導性アポトーシスの間にDDX3はDR5から解離することが示される。このタンパク質がDR5結合タンパク質複合体に結合したままである場合、これはFADDの動員を阻止して、DISC形成の不全を引き起こし得る。
【0058】
【表2】
DDX3は、DR5を介するアポトーシスにおけるDR5結合タンパク質である。
【0059】
DDX3が実際にDR5に結合しているか否かを判定するため、DDX3の完全長(アミノ酸1〜662)、N末端断片(アミノ酸1〜316)、およびC末端断片(アミノ酸310〜662)を、N末端の6−Hisタグを用いてPCDNAIII3.1内にクローン化した。これらの発現ベクターをMDA231親細胞にトランスフェクトして、DDX3の組み換え完全長および欠失変異体の過剰発現を達成した。抗6−His抗体を用いた共免疫沈降法分析とそれに続くウェスタンブロット分析によって検出されたように、完全長DDX3のみがDR5に結合しており、そのN末端およびC末端欠失変異体は結合していなかった。これらの結果により、完全長DDX3がDR5に結合していることが確認された。DDX3は、MDA231細胞において抗DR5により免疫沈降された。
【0060】
DDX3とDR5の結合についてさらに確認するため、DDX3のN末端欠失バージョン、C末端欠失バージョン、および完全長バージョンをE.coliに発現させた。タンパク質を精製し、DDX3に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のパネルを産生するための抗原として使用した。マウス抗DDX3モノクローナル抗体を用いた共免疫沈降法およびウェスタンブロット分析により、DR5に結合したDDX3を検出した。この結果により、DDX3は、非アポトーシス性の親細胞および抵抗性細胞の両方において、DR5と共に共免疫沈降されることが示された。アポトーシスの間に、TRA−8感受性細胞において時間に依存したDDX3の減少が見られたが、TRA−8抵抗性細胞では見られなかった。加えてTRA−8誘導性アポトーシスの間に、ウェスタンブロット分析により、DR5に結合したDDX3の迅速な減少および切断が観察された。これにより、DDX3の切断はカスパーゼ依存性であることが示された。これらの結果に基づいてDDX3配列のN末端における潜在的な切断部位を詳しく調べ、アミノ酸129〜135に比較的保存されたカスパーゼ切断モチーフDKSDEDD(配列番号:30)が見出された。DISCに切断が起こり、DDX3の決定的な機能的エレメントがDR5から放出されることは明らかである。このデータは、惹起されたカスパーゼがDR5へ迅速に動員され、DDX3を容易に切断することを示唆する後述のモデルに適合している。加えて、FADDとカスパーゼ−8がDR5に動員され、結合してDISCが形成されることにより、次に、DR5に結合したDDX3の切断に関連するカスパーゼカスケードの活性化が導かれる。このことは、DDX3が特定の環境下でアポトーシスプログラムに必須であることを示し、DDX3はDR5に結合して、DR5を介したアポトーシス抵抗性に関与すると説明される。
DDX3とDR5の相互作用領域のマッピング
DR5を介したシグナル伝達におけるDDX3の調節についてさらに理解するため、DDX3の欠失変異体をコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトされたHEK293A細胞を用いて、DR5に結合するために必要なおおよそのDDX3の領域を決定した。DR5に結合したTRA−8、完全長DDX3、DDX3Δ201−662、またはDDX3Δ1−400を用い、共免疫沈降法によって組み換えDDX3とDR5の相互作用を決定した。しかしながら、DDX3Δ251−662またはDDX3Δ1−350のいずれもDR5に結合できなかった。これにより、DDX3はDR5に対する2つの結合モチーフを有することが示される。1つはN末端(アミノ酸200〜250)に位置し;もう1つはアミノ酸350〜400に隣接する。同じ細胞からのライセートのウェスタンブロット分析によって野生型DDX3およびDDX3の欠失断片の産生量は同程度であることが確認されたことから、これらの結果に対する説明として、タンパク質発現における相違は除外された。
【0061】
DDX3は持続的にDR5に結合しており、TRA−8抵抗性細胞におけるFADDの動員の遮断に関連することから、DR5に結合したDDX3はFADDの動員を阻止することが示される。DDX3とFADDの間にはDR5を通した結合が存在し得る。予め結合したDDX3がFADDの動員に干渉するように、DR5のデスドメインにおいてDDX3およびFADDが共通の結合モチーフを共有するか、または2つの結合モチーフが互いに近接しているかについて調べるため、DR5におけるDDX3の結合ドメインの位置を決定した。完全長DR5、およびデスドメインの完全な欠失を含む、DR5の一連のアミノ末端ドメイン欠失をコードするベクターを構築した。DDX3の機能を評価し、かつ内在性のヒトDR5を排除するための類似のアプローチにおいて、ヒトDR5とDDX3の共発現のためのホスト細胞としてマウス線維芽細胞株であるNIH3T3を選択した。3T3細胞に、His−タグ化DDX3および完全長DR5、DDX3およびDR5の一連の欠失変異体、ならびにDDX3単独をコードするプラスミドを共トランスフェクトした。細胞表面のDR5の発現を、TRA−8染色を用いたフローサイトメトリーによって調べた。トランスフェクトした細胞は全て同等レベルの細胞表面DR5を示したことから、細胞内ドメインの欠失は細胞表面DR5を変化させなかったことが示される。加えて、抗6−his抗体を用いた全細胞ライセートのウェスタンブロット分析によって検出されたように、トランスフェクトした細胞は全て同等レベルの組み換えDDX3を発現していた。組み換えDDX3とDR5の欠失変異体との結合を、TRA−8を用いた共免疫沈降法および抗6−His抗体を用いたウェスタンブロット分析によって調べた。DR5とDDX3の相互作用は、DR5のデスドメインとは無関係である。DR5結合モチーフをさらに正確に定義するため、DR5のさらなる欠失変異体であるD330、およびDR5の切断型(T300−330)を構築し、DDX3と共に3T3細胞へ共トランスフェクトした後、それらの相互作用について分析した。この結果により、DDX3はDR5デスドメインに結合しないが、デスドメイン(アミノ酸340〜420)に近い膜の近位領域(アミノ酸300〜330)に結合することが示された。これによりDDX3は、DR5シグナル伝達において、以前に同定されたデスドメイン結合タンパク質とは異なる役割を果たし得ることが示される。加えて、この領域はDR4およびDcR2との高い相同性をもつ。これらのデータにより、DDX3は、デスレセプターファミリーメンバーに結合する共通のアダプタータンパク質であることが示される。
DDX3はCARDを含む
次にDR5を介したアポトーシスにおけるDDX3の機能的な重要性を、この分子の特異的な性質を分析することによって調べた。最近、カスパーゼ動員ドメイン(CARD)を含む、DEADボックスタンパク質ファミリーの少なくとも2つのRNAヘリカーゼが同定された。これらのRNAヘリカーゼにおいて、CARDはアポトーシスの制御因子として機能する。DR5を介したアポトーシスの調節においてDDX3は重要な役割を果たすことから、DEADボックスタンパク質ファミリーのヘリカーゼのメンバーであるDDX3も同様にCARDを有し、DDX3のアポトーシス抑制性機能は直接CARDに依存する可能性がある。従って、DDX3がCARDタンパク質である可能性について調べた。アミノ酸のアラインメント解析により、DDX3はアミノ酸50〜150の間に、MDA5およびRIGIのように保存された作用モチーフを含むことが示された。CARDは同型の相互作用モチーフである。CARDを含むタンパク質は、このドメインを通して互いに相互作用できる。DDX3は新規であり、かつ高度に保存されたCARD含有ヘリカーゼであることから、その他のCARDタンパク質と相互作用することができる。同様にCARD含有タンパク質であるcIAP1は、カスパーゼの阻害剤として広く認識されており、TNFRIおよびTNFRIIへ動員されてTNFRIを介したアポトーシスを調節する。DDX3がcIAP1と相互作用できるか否かについて、抗DDX3または抗DR5抗体を用いて共免疫沈降実験により調べた。cIAP1は、TRA−8により処理されていない親細胞および抵抗性細胞の両方において、DDX3およびDR5抗体によって容易に共免疫沈降できると決定された。しかしながら、cIAP1はTRA−8感受性細胞においてDR5−DDX3複合体から迅速に放出され、このことは親細胞におけるDDX3の切断と関連していた。対照的に、DR5−DDX3複合体におけるcIAP1のレベルは、抵抗性細胞においてTRA−8による処理後に増大した。これらの結果により、DDX3は、DR5とcIAP1の間を連結するものとして役立つことが示される。
DDX3のノックダウンによる抵抗性の逆転
DR5シグナル伝達におけるDDX3の役割について研究するため、TRA−8誘導性のアポトーシスにおける内在性DDX3の重要性について調べた。DDX3は、TRA−8誘導性アポトーシスの間に抵抗性細胞において減少しなかったことから、癌細胞をアポトーシスに対して感受性にするためには、DDX3の発現レベルの減少が必要とされ得る。DR5を介したアポトーシスに対する抵抗性におけるDDX3の役割を決定するため、RNAiストラテジーを用いた。オンラインによる設計ツールであるBLOCK−IT(商標)RNAi Designer(Invitrogen)を用いて、DDX3を標的とするRNAiを同定した。最も高いスコアを有するRNAi標的の上位10から、5つの標的siRNA配列を選択して、BLOCK−IT(商標)U6エントリーベクター内へクローン化した。TRA−8抵抗性のMDA231細胞に5つのRNAiコンストラクトをトランスフェクトして、トランスフェクションから48時間後に、モノクローナル抗DDX3抗体を用いたウェスタンブロット分析により、DDX3のタンパク質発現レベルを決定した。調べた5つのRNAiコンストラクトのうちの4つは、トランスフェクトしていないか、またはGFPをトランスフェクトしたコントロールに比較して、DDX3発現の非常に効果的な(50%を超える減少)阻害物質であった。これらのコンストラクトのうち最も効果的な#2を、TRA−8を介したアポトーシスにおけるDDX3ノックダウンの効果を分析するために選択した。DDX3発現のノックダウンが、TRA−8抵抗性細胞においてTRA−8に対する感受性を逆転させるか否かを判定するため、TRA−8抵抗性のMDA231細胞に、RNAiベクター(コンストラクト#2)およびトランスフェクトした細胞の指標としてのGFP発現ベクターを共トランスフェクトした。トランスフェクション後48時間目に、DDX3をDR5と共に共免疫沈降した。予想されたように、DDX3の発現はコントロール細胞に比較して有意に減少した。GFP陽性細胞を選別し、様々な濃度のTRA−8と共に一晩培養した。ATPLITE(商標)アッセイによると、GFPおよびコントロールベクターをトランスフェクトしたMDA231細胞はTRA−8による処理後にアポトーシスを起こさなかったことから、細胞はTRA−8に対する抵抗性を保持していたことが示された。しかしながら、DDX3 RNAiとGFPを共トランスフェクトした細胞は、TRA−8による用量依存性の細胞死を示した。TUNEL染色によると、著しい数のDDX3ノックダウン細胞がアポトーシスを起こしていることが見出された。これらの結果により、DDX3の発現減少がTRA−8に対する抵抗性を逆転させたことが示される。DR5を介したアポトーシスの原因となるDDX3の役割をさらに決定するため、腫瘍細胞のパネルにおいてDDX3の発現を減少させ、TRA−8誘導性アポトーシスに対するそれらの感受性を分析した。DDX3 RNAiは内在性DDX3の量を減少させ、幾つかの自発性の抵抗性細胞を含む腫瘍細胞のパネルにおいて、TRA8誘導性アポトーシスを増大させた。対照的に、コントロールオリゴヌクレオチドをトランスフェクトした細胞は通常のDDX3の発現を示し、TRA−8誘導性アポトーシスに対して抵抗性のままであった。従って、DDX3はDR5シグナル伝達装置の決定的な構成要素であり、かつDR5を介したアポトーシスに対する抵抗性に必須のものである。
DDX3結合領域をもたないDR5はアポトーシス促進性である
DDX3結合モチーフが、DR5のデスドメイン機能を調節する新規な負の調節性ドメインを表しているか否かについて調べるため、変異型DR5のアポトーシス誘導性機能を野生型DR5と比較した。デスドメインをもたないDR5をトランスフェクトした細胞はTRA−8による処理に応答しないようにみえるが、切断型のDDX3結合ドメインを有するDR5をトランスフェクトした細胞はアポトーシス促進性であるようにみえ、かつ野生型のDR5をトランスフェクトした細胞に比較して、TRA−8誘導性のアポトーシスに対するより高い感受性を示した。DDX3には、DR5を介したアポトーシスを抑制し得る明白な抑制効果が存在した。これらの知見により、DDX3は、DR5を介したアポトーシスに対する抑制性メディエーターであることが示される。
DDX3は、DR5を介したアポトーシスを調節するCARDタンパク質である。
【0062】
DR5−DDX3−cIAP1のシグナル伝達を分析するため、そのcIAP1への結合に必要とされる領域を調べた。CARDはDDX3のN末端に存在してcIAP1と相互作用すると思われることから、この領域がcIAP1の結合に関与する可能性がある。HEK293A細胞に、His−タグ化完全長DDX3、DDX3Δ51−662、DDX3Δ101−662、DDX3Δ151−662、またはDDX3Δ1−350をコードするプラスミドをトランスフェクトした。完全長およびC末端を欠失したDDX3の両方はcIAP1と共免疫沈降することができ、最初の100アミノ酸を欠失したDDX3はcIAP1と共免疫沈降することができなかった。これらの結果により、DDX3のN末端CARDは、DR5複合体へのcIAP1の動員に関与することが確認された。cIAP1結合モチーフは、切断部位であるアミノ酸129〜135(DKSDEDD;配列番号:30)の直前の、DDX3のアミノ酸50〜100に位置することもまた示される。DDX3がDR5を介したアポトーシスの間に切断される場合、cIAP1と結合したDDX3のN末端断片はDR5複合体から離脱する可能性があり、これによってcIAP1の細胞死シグナル伝達に対する抑制が取り除かれる。従ってDDX3は、アポトーシス抵抗性のためにcIAP1とデスレセプターを結合させる候補である。
【0063】
この概念をさらに実証するため、アミノ酸1〜150を欠損したドミナントネガティブ変異体DDX3を用いた。この変異体DDX3ΔCARD(DDX3Δ151−662)はcIAP1と相互作用できないが、DR5にはなお結合することができる。従って、DDX3Δ151−662が、DR5に結合する野生型DDX3と競合する内在性DDX3のドミナントネガティブ阻害物質となり得るか否かについて評価した。4つの型の細胞に、DDX3ΔCARDをトランスフェクトした。DDX3ΔCARDをトランスフェクトした細胞は、内在性の完全長DDX3に比較してより高いレベルのDDX3ΔCARDの発現を示したことから、切断型のDDX3はDR5への結合に対して内在性DDX3と競合できることが示唆される。DR5との共IPならびに抗DDX3および抗cIAP1抗体によりプローブするウェスタンブロッティングによって分析されたように、cIAP1は完全長DDX3と共免疫沈降されたが、DDX3ΔCARDとは共免疫沈降されなかった。さらにATPLITE(商標)アッセイを用いて、トランスフェクトした細胞のTRA−8を介したアポトーシスに対する感受性を調べた。調べた全ての細胞がTRA−8による処理後に抵抗性のままであったことから、完全長組み換えDDX3の発現は、TRA−8を介したアポトーシスに対する感受性を変化させなかった。しかしながら、高レベルのDDX3ΔCARDを発現したTRA−8抵抗性の腫瘍細胞は、DR5に結合したcIAP1の減少後に、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対するそれらの感受性を回復した。これらのデータにより、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対するcIAP1による阻害は、DDX3の未変化のCARDによって仲介されることが示される。N末端CARDを欠損したDDX3は、TRA−8に対する抵抗性を部分的に逆転させるドミナントネガティブとして役立ち得る。TRA−8により誘導されるアポトーシスに対する癌細胞の潜在的な感受性は、DR5結合複合体におけるDDX3とcIAP1のレベルによって調節され得る。
DR5−DDX3−cIAP1複合体はカスパーゼ−8の活性化を阻害する
細胞内に存在するDDX3のレベルが、DR5 DISCにおけるカスパーゼ−8の動員および処理にどのように関わるかを調べるため、DDX3を定量した。MDA231ならびにUL−3Cの親細胞および抵抗性細胞をTRA−8で4時間処理した後、DR5を、TRA−8とは異なるDR5のエピトープを認識する新規な抗DR5モノクローナル抗体(クローン2B4)によって免疫沈降した。DR5/DDX3/cIAP1複合体をビーズから遊離させ、DR5に結合したDDX3およびcIAP1を、抗DDX3および抗cIAP1抗体を用いる免疫ブロッティングおよびサンドイッチELISA分析に供した。ELISAプレートに2B4抗DR5抗体をコートして、免疫沈降されたDR5を捕捉した後、DDX3(3E2)およびcIAP1に対する特異的なモノクローナル抗体によってDDX3およびcIAP1を測定した。TRA−8による処理は、感受性の親細胞または誘導された抵抗性の腫瘍細胞いずれのDR5タンパク質レベルも変化させなかった。しかしながら、DR5に結合したDDX3のレベルは、感受性および抵抗性細胞の両方において、TRA−8処理により有意に変化した。第1に、3E2抗DDX3抗体によって検出されたように、未処理の抵抗性細胞は、未処理の感受性細胞に比較して、DR5に結合したDDX3を高レベルで発現した。重要なことには、TRA−8による処理後に、DR5に結合したDDX3はTRA−8抵抗性細胞において有意に増加したが、感受性細胞では顕著な減少が示された。DR5複合体におけるcIAP1のレベルもまた、DDX3と同じパターンで変化した。これらの結果により、アポトーシスの間にTRA−8感受性細胞ではDDX3のCARDドメインが切断されてDR5複合体からDDX3が遊離するが、DDX3およびcIAP1は、感受性細胞よりもむしろ抵抗性細胞において、TRA−8の刺激によってDR5に動員されることが示唆された。
【0064】
機能的なDISCを形成するためには、TRA−8により誘導されるアポトーシスの間に、癌細胞がDR5複合体からcIAP1を遊離して、カスパーゼに対するその抑制を減少させることが必須である。この過程はDDX3の切断を必要とすることから、この工程はフィードフォワードのアポトーシス増幅ループを開始するために重要であることが示される。DR5に結合したDDX3の切断に対する抵抗性は、抵抗性細胞におけるDISC形成の不全に関連していることから、DR5−DDX3−cIAP1複合体におけるDDX3切断に対する感受性は、親細胞と抵抗性細胞の間で異なっている。異なるカスパーゼによる、DR5に結合したDDX3切断の可能性を、両細胞において分析した。DR5−DDX3−cIAP1複合体を、抗DR5抗体によって共免疫沈降した。ビーズからの溶出画分を、活性化カスパーゼ−2および−8と共にインキュベートした。DDX3の切断を、抗DDX3抗体を用いたウェスタン分析によって検出した。これらの結果とELISA分析との組み合わせにより、抵抗性細胞におけるカスパーゼ−8によるDDX3の切断は、感受性細胞に比較して高度に減弱していたが、カスパーゼ−2は、両細胞において同等のプロテアーゼとしての可能性を提示したことが示された。これらの結果により、TRA−8感受性細胞と抵抗性細胞の間には、DDX3複合体の機能的な相違があることが示された。また、デスレセプターに結合した最初のカスパーゼによるDDX3切断の不全が、TRA−8に対する抵抗性の発生における重要な工程であることも示された。
【0065】
誘導された抵抗性細胞においてDDX3の切断が阻害されたことにより、DDX3がDR5を介したアポトーシスを阻害する、アポトーシスシグナル伝達における工程を決定するための研究が促された。DDX3/cIAP1複合体はカスパーゼ−8の活性化を阻害すると予測されることから、受容体活性化後の最初の検出可能な現象の1つとしての、DR5−DDX3−cIAP1複合体におけるカスパーゼ−8の活性化について調べた。カスパーゼ−8の活性化におけるDR5−DDX3−cIAP1複合体の効果を評価するため、蛍光基質であるAc−IETD−AMCを用い、活性化カスパーゼ−8と感受性親細胞または誘導された抵抗性細胞由来のDDX3共IP溶出画分をインキュベートして、カスパーゼ活性を測定した。抵抗性細胞由来のDR5共IP溶出画分において、広範囲の希釈度にわたり、感受性細胞に比較してカスパーゼ−8活性の用量依存性の阻害が観察された。加えて、精製したcIAP1もまた、カスパーゼ−8のプロテアーゼ活性を完全に抑制した。DDX3に結合したcIAP1は、カスパーゼ−8の最初の活性化における阻害物質であり、それによってDDX3の切断が阻止されるということには説得力がある。従ってこれらのデータにより、DDX3−cIAP1がカスパーゼ−8活性を調節し得ることの直接の証拠が提供され、かつDDX3−cIAP1はDR5によって結合されたカスパーゼ−8の特異的な制御因子であることが示される。
【0066】
カスパーゼ−8の活性化におけるDR5−DDX3−cIAP1の効果を、cIAP1により阻害されたカスパーゼ−8の直接の分析により、カスパーゼアッセイによるDDX3の切断と組み合わせて調べることで、DDX3−cIAP1は新規な型のカスパーゼ阻害物質としても機能することが示された。DDX3−cIAP1複合体は、カスパーゼ−8の活性化を抑制することでデスレセプターによるアポトーシス促進性のシグナルを抑止することができ、これによって最初のカスパーゼによるDR5に結合したDDX3の切断を阻害する。このモデルにより、DDX3は、cIAP1の動員を通してTRA−8誘導性アポトーシスから細胞を保護し、癌細胞における細胞死のシグナル伝達経路の遮断に寄与することが示される。
実施例2
トリプルネガティブ(TN)基底細胞型乳癌細胞株に対する、抗DR5を介した細胞傷害性
表3および4に要約するように、基底細胞型(基底細胞A型および基底細胞B型)に分類された15の細胞株、HER−2過剰発現基底細胞型である2の細胞株、および管腔表現型を示す9の細胞株を含む26の乳癌細胞株のパネルを、TRA−8(DR5)抗体に対する細胞傷害性応答と乳癌の亜型との間の関連性を調べるために用いた。TRA−8は15のトリプルネガティブ乳癌細胞(TNBC)細胞株(基底細胞型)のうちの12に死滅を誘導し、IC50値は0.9〜4.8ng/mlの範囲であった(表3)。基底細胞B型である亜型の4細胞株に対するTRA−8の細胞傷害性を図1に示す。TRAILによって同等の細胞傷害性が生じた。9の管腔乳癌細胞株は全てTRA−8に対して抵抗性であった(表4)。TRA−8抗体と、アドリアマイシン、シスプラチン、およびカルボプラチンを含む化学療法剤との併用処理によって、基底細胞A型および基底細胞B型の乳癌細胞株に相加的から相乗的な死滅が生じた(図2)。TRA−8に対して抵抗性である、BRCA−1変異型細胞株のHCC1937は、TRA−8と化学療法の併用によって相乗的な細胞傷害性を示した(図2)。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
実施例3
DR5/DDX3/cIAP1アポトーシス抑制性複合体の性質決定
上記のようにDR5/DDX3/cIAP1は、DISCの形成および機能に拮抗する負の調節複合体として役立つ。従って、DR5に結合したDDX3および動員されたアポトーシス阻害物質は、DR5を介したアポトーシスに対する癌細胞の感受性のバイオマーカーであることが予測される。モデルを図3に示す。このモデルにおいて、DDX3はDR5のデスドメインの近位領域に結合する。RNAヘリカーゼファミリーのその他のメンバーと同様に、DDX3はそのN末端に、CARD/CARD相互作用を通したアポトーシス阻害物質(IAP)の動員に関与するCARDを含む。さらに、動員されたIAPは、そのバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を通してカスパーゼの活性を阻害することによって、デスドメインにおけるアポトーシスシグナル伝達の開始を阻害する。このモデルの新規性は、DR5の細胞質側末端が、DR5のアポトーシスシグナル伝達を決定するために互いに相互作用する、少なくとも2の機能的に異なるドメインを含むことである。DDX3/IAP複合体がデスドメイン複合体よりも優位であるとき、癌細胞はDR5を介したアポトーシスに対する抵抗性へとシフトする。従って、DR5に結合したDDX3とcIAP1は、抗DR5(TRA−8)を介したアポトーシスに対する腫瘍細胞の応答を予測するバイオマーカーとして役立ち、かつDR5を介したアポトーシスを増大させるための薬物標的としても役立ち得る。
【0069】
TRA−8を介したアポトーシスに対して確定された感受性を有する癌細胞のパネルにおける、DR5結合タンパク質のタンパク質プロファイルについて調べた。これにより、DR5のデスドメインにおいてアポトーシス抵抗性を仲介する、新規なDR5結合アダプタータンパク質としてのDDX3の同定が導かれた。
DDX3結合ドメインを欠損したDR5は、さらにアポトーシス促進性である
上記のように、DDX3結合ドメインは、DR5の細胞質側末端のアミノ酸300〜330の領域にマップされた。この領域が切断された変異体DR5(D7)はDDX3の結合を喪失したが、DR5の表面発現は変化しなかった。切断型DR5は、野生型DR5を発現する細胞に比較して、自発性アポトーシスおよびTRA−8により誘導されるアポトーシスの増大を示した。これらの結果により、DR5の細胞質側末端は、DDX3の結合を通してDR5のアポトーシスシグナル伝達を負に調節する機能的領域を有することが示される。
DDX3のノックダウンは、DR5によるアポトーシスに対する抵抗性を逆転する
誘導性(MDA231RおよびUL−3CR)ならびに自発性の抵抗性細胞(SKW620、HT29、およびSKW11l6)の両方を含む、DR5によるアポトーシスに対して抵抗性の細胞において、siRNAによりDDX3の発現をノックダウンして(図4A)、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対する腫瘍細胞の感受性を分析した。アポトーシス抵抗性は、全ての抵抗性細胞においてDDX3の発現が減少した後に逆転されたことから(図4B)、DDX3は、DR5を介したアポトーシスの負の制御因子であることが示される。
DDX3は、cIAP1を動員してDR5を介したアポトーシスを阻害するCARDタンパク質である
MDA5およびRIG−1のようなその他のヘリカーゼタンパク質と同様に、DDX3はそのN末端に保存されたCARDを有する。共免疫沈降法により、野生型DDX3はcIAP1をプルダウンすることが示された(図5A)。しかしながら、DDX3の最初の100残基の切断型(DN)では、cIAP1の共免疫沈降は失われた。TRA−8による処理後のFADDの動員によって示されるように、DISC機能は、CARD−切断型DDX3を発現する細胞において回復した。CARDを欠損するDDX3を発現するDR5抵抗性の腫瘍細胞は、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対してさらに感受性となった(図5B)。これらの結果により、DDX3はDR5のアダプタータンパク質として機能することが示される。DDX3がDR5に結合する一方で、そのCARDがcIAP1を動員することによって、デスドメインにおいてDR5を介したアポトーシスを阻害する。
DR5/DDX3/cIAP1タンパク質複合体はDR5を介したアポトーシスを予測するバイオマーカーである
全細胞ライセートを用いたDR5/DDX3/cIAP1複合体の定量のためのアッセイを開発した。DR5の共免疫沈降後、DR5、DDX3、およびcIAP1の量をサンドイッチELISAによって測定した。感受性の親細胞(MDA231PおよびUL−3CP)ならびに抵抗性細胞(MDA231RおよびUL−3CR)の両方においてDR5が同等に沈降されたとき、結合したDDX3およびcIAP1は、感受性細胞では少なかったが、抵抗性細胞ではかなり多かった(図6A)。確定されたTRF−8に対する感受性を有するヒト癌細胞株のパネルについてさらに分析した。TRA−8抵抗性細胞の一群は、TRA−8感受性細胞の一群に比較して、かなり高レベルのDR5結合DDX3およびcIAP1を発現していた(図6B)。これらの結果により、DR5に結合したDDX3およびcIAP1は、誘導された抵抗性細胞のみではなく、自発性の抵抗性を発生した細胞においてもTRA−8抵抗性を誘導することが示される。
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞におけるDR5/DDX3/cIAP1タンパク質複合体
最近、全てのTNBC細胞は細胞表面DR5を発現し、かつTRA−8により誘導されるアポトーシスに感受性であるが、非TNBC細胞は一貫して抵抗性であることが示された。従って、DR5/DDX3/cIAP1複合体をTNBC細胞株のパネルにおいて調べた。DR5に結合したDDX3およびcIAP1は、TNBC細胞において低めであった(図7Aおよび表5)。興味深いことに幾つかのTNBC細胞では、抗C末端DDX3抗体である3E4によって示されるように、DR5と共免疫沈降されたDDX3の分子量はより小さかった(図7B)。このことは、N末端CARDに特異的な抗DDX3抗体である3E2によって判定されたように、N末端CARDの喪失によるものであった。これらのTNBC細胞では、CARDの喪失に対応して、結合したcIAP1もまた減少していた。DDX3の2D−SDS−PAGEによるプロテオミクス分析により、TNBC細胞におけるDDX3タンパク質プロファイルは変化していることが明らかになった。これらの結果により、DR5/DDX3/cIAP1複合体はTNBC細胞において変化している可能性があり、このことが、TRA−8により誘導されるアポトーシスに対するこれらの細胞の高い感受性を説明し得ることが示唆された。
新規抗体はBIRを認識する
抗IAPモノクローナル抗体のプールをスクリーニングする間に、独特なモノクローナル抗体(3H4)が同定された。3H4抗体はcIAP1、cIAP2、およびXIAPに対して同等に結合したが、サバイビンには結合しなかった(図8A)。これらのタンパク質に共通な唯一のエピトープまたは構造はBIRドメインであることから、この特定の抗体はBIRドメイン特異的な抗体であると思われた。一連の切断型IAPタンパク質を3H4抗体のエピトープをマップするために使用して、3H4により認識されるエピトープが、サバイビンには存在しない、cIAP1、cIAP2、およびXIAPの第2BIRドメインであることを見出した(図8B)。ウェスタンブロット分析により、3H4抗体は68kDaのcIAP1またはcIAP2、および58kDaのXIAPを検出することが示された。これらの既知のIAPタンパク質に加え、3H4は、膵癌細胞株のパネルに示すように、未知の80kDaのタンパク質もまた検出した(図8C)。
【0070】
【表5】
DDX3/IAP複合体におけるIAPの発現低下
Ascenta Pharmaceuticalsによって開発されたAT−406は、cIAP1、cIAP2、およびXIAPを含む複数のIAPタンパク質に、低いナノモル親和性で結合する。AT−406は、TRAILを介したアポトーシスを相乗的に増大させることが示されてきた。AT−406が、DR5によるアポトーシスに対する膵癌細胞の抵抗性を克服できるか否かを決定するため、TRA−8により誘導されるアポトーシスにおけるAT406の効果を、その両方がTRA−8を介したアポトーシスに対して高度に抵抗性である2つのヒト膵癌細胞株、S013およびS2VP10に対して調べた。1000ng/mlのTRA−8による処理後、アポトーシス細胞はほとんどみられなかった。10μMのAT406単独による処理では、有意な細胞死は誘導されなかった。しかしながら、併用処理では70%を超える細胞死がもたらされた。全細胞ライセートのウェスタンブロット分析によって示されるように、AT−406単独では総IAPタンパク質の発現は変化しなかった(図9A)。しかしながら、併用処理では全てのIAPが減少したことから、アポトーシスの相乗的な誘導は、AT−406により誘導されるIAPタンパク質の分解を促進することが示された。DR5/DDX3/cIAP1タンパク質複合体におけるAT−406の効果を判定するため、DR5共IPによってcIAP1の量を調べた。AT406単独および併用処理後に、DR5複合体においてcIAP1の劇的な減少がみられた(図9B)。DDX3がDR5と同等に共免疫沈降されたことから、これはDR5に結合したDDX3の減少によるものではなかった。これらの結果により、AT−406は、DR5/DDX3タンパク質複合体中のcIAP1を選択的に標的とすることが示された。
乳癌のIAPにおけるAT406のin vitro効果
DDX3複合体中のIAPタンパク質の発現におけるAT406の効果を、トリプルネガティブおよび非トリプルネガティブ株を含む乳癌細胞株のパネルにおいて分析した。以前に示したように、4つのトリプルネガティブ乳癌細胞株、MB435、2LMP(図10A)、SUM159、およびSUM149(図10B)は、DDX3と共免疫沈降した際、TRA−8を介したアポトーシスに対して抵抗性であった2つの非トリプルネガティブ株、BT474およびMB468(図10C)に比較して、低レベルのcIAP1またはcIAP2タンパク質を発現していた。TRA−8単独による処理は、IAPタンパク質のレベルを変化させなかった。しかしながら、AT406単独(図10A〜10C、レーン3)またはTRA−8との併用(図10A〜10C、レーン4)は、DDX3に結合したIAPタンパク質のレベルを有意に減少させた。
TRA−8およびAT406により生じる細胞傷害性
乳癌細胞株に対するTRA−8を介したアポトーシスにおけるAT−406の効果を調べた。BT−474、BT−549、および2LMP細胞に対するAT−406とTRA−8の相互作用の証拠が存在した(図11)。AT−406およびTRA−8を介したアポトーシスにおけるアドリアマイシンの効果もまた調べた。2LMP細胞のAT−406、アドリアマイシン、およびTRA−8による併用処理後に細胞傷害性は増大した(図12)。
TNBC異種移植に対するTRA−8およびアドリアマイシンまたはアブラキサンのin vivoでの有効性
TRA−8単独およびアブラキサンまたはアドリアマイシンとの併用によるin vivoでの抗腫瘍の有効性を、胸腺欠損ヌードマウスにおける2LMPおよびSUM159の同所性の基底細胞B型異種移植モジュールを用いて調べた。腫瘍直径が約6mmとなり、腫瘍がいったん十分に定着した後に処置を開始し、時間と共に腫瘍サイズをモニターした。未処理のSUM159腫瘍の平均腫瘍サイズは、17.9日で倍になった。SUM159腫瘍を有するマウスのTRA−8単独での処置による腫瘍の倍加時間は、図13Aに示すように81.3日であり、腫瘍増殖は未処置のコントロール腫瘍に比較して有意に阻害されたが、アドリアマイシンまたはアブラキサン単独での処置によっては、平均腫瘍倍加時間はそれぞれ41.9および49.3日に及んだ。TRA−8とアドリアマイシンの併用処置によって、TRA−8単独による腫瘍増殖の阻害を反映する平均腫瘍サイズの減少がもたらされ、平均腫瘍倍加時間は84.7日であり、1/10の完全な腫瘍退縮がみられたが、TRA−8単独で処置したマウスでは完全な腫瘍退縮は起こらなかった。TRA−8およびアブラキサンで処置した動物には、TRA−8単独またはTRA−8とアドリアマイシンで処置したものと同様の腫瘍増殖の阻害がみられ、平均腫瘍倍加時間は74.7日であった。
【0071】
図13Bに示すように、未処置マウスにおける2LMP腫瘍の平均サイズは8.6日で倍になったことから、この悪性度の高い同所性腫瘍モデルの迅速な増殖が示される。アブラキサン単独での処置によって1/10の完全な腫瘍退縮がもたらされ、腫瘍倍加時間は46.2日に延長された。2LMP異種移植に対する単独薬剤としてアドリアマイシンはアブラキサンよりもさらに有効であり、腫瘍倍加時間は51.1日に増大した。TRA−8単独での処置によって2LMP腫瘍の増殖は有意に阻害され、腫瘍倍加時間は58.4日に延長され、2/10の完全な腫瘍退縮がもたらされた。TRA−8とアドリアマイシンとの併用処置によって平均腫瘍サイズの有意な減少がもたらされ、平均腫瘍倍加時間は78.2日に延長された。TRA−8とアブラキサンとの併用処置は最も有効な措置であり、平均倍加時間は87.2日に延長され、2/9の完全な腫瘍退縮がもたらされた。これらの結果により、基底細胞B型腫瘍の異種移植に対して化学療法剤をTRA−8と併用して用いることの、in vivoでの増強された有効性が示される。
TRA−8、アブラキサン、およびAT−406のin vivoでの有効性
2LMP腫瘍を有するマウスをTRA−8およびAT−406、TRA−8およびアブラキサン、またはTRA−8とアブラキサンおよびAT−406で処置することにより、TRA−8、アブラキサン、またはAT−406単独による処置に比較して腫瘍倍加時間は延長した(図14)。これらの結果により、AT−406の添加によって腫瘍の阻害は増強されることが示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する被験体を処置する方法であって、
(a)基底細胞様遺伝子型癌であり、かつHER2非増幅である乳癌を有する被験体を選択すること;および
(b)該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
デスレセプターアゴニストがDR5アゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DR5アゴニストが抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乳癌がエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
乳癌が、コントロールに比較して、DR5/DDX3/cIAP1複合体レベルの減少を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
DR5/DDX3/cIAP1複合体レベルが全細胞ライセートアッセイを用いて検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
乳癌が機能的なN末端CARDを欠損するDDX3を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
機能的なN末端CARDを欠損するDDX3が、切断型、または欠失型のN末端CARDを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
乳癌がデスレセプターアゴニストの非存在下で化学療法剤に対して抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
乳癌がアドリアマイシンに対して抵抗性である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
乳癌がパクリタキセルに対して抵抗性である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
乳癌がシスプラチンまたはカルボプラチンに対して抵抗性である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
被験体に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
化学療法剤が3週間ごとに静脈内投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
デスレセプターアゴニストが3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
癌を有する被験体を処置する方法であって、
(a)管腔細胞、HER2増幅、または基底細胞様遺伝子型からなる群より選択される特性の1以上を有する乳癌を有する被験体を選択すること;
(b)該被験体にIAP阻害剤を投与すること;および
(c)該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる方法。
【請求項17】
IAP阻害剤がAT−406である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被験体に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
化学療法剤が、アドリアマイシン、パクリタキセル、アブラキサン、シスプラチン、およびカルボプラチンからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
デスレセプターアゴニストが3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
化学療法剤が3週間ごとに静脈内投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、
(a)癌細胞の基底細胞様表現型を検出すること;
(b)HER2非増幅である癌細胞を検出すること;および
(c)癌細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルの、コントロールに比較した減少を検出することを含んでなる方法。
【請求項23】
癌細胞がエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方であるかを決定することをさらに含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
DR5アゴニストが抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
乳癌細胞が乳房生検に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルを検出すること、およびそれをコントロールと比較することを含んでなり、細胞の複合体のレベルがコントロールに比較して低いときに、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることが示される方法。
【請求項27】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、乳癌細胞内にN末端CARDを欠損するDDX3を検出することを含んでなり、N末端CARDを欠損するDDX3によって、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることを示す方法。
【請求項28】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、乳癌細胞内に80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質を検出することを含んでなり、80kDaバキュロウイルスIAPリピートによって、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることを示す方法。
【請求項29】
DDX3のN末端CARDへ選択的に結合する抗体。
【請求項30】
N末端CARDを欠損するDDX3へ選択的に結合する抗体。
【請求項31】
80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を含むIAPタンパク質に結合する抗体。
【請求項1】
癌を有する被験体を処置する方法であって、
(a)基底細胞様遺伝子型癌であり、かつHER2非増幅である乳癌を有する被験体を選択すること;および
(b)該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
デスレセプターアゴニストがDR5アゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DR5アゴニストが抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乳癌がエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
乳癌が、コントロールに比較して、DR5/DDX3/cIAP1複合体レベルの減少を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
DR5/DDX3/cIAP1複合体レベルが全細胞ライセートアッセイを用いて検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
乳癌が機能的なN末端CARDを欠損するDDX3を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
機能的なN末端CARDを欠損するDDX3が、切断型、または欠失型のN末端CARDを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
乳癌がデスレセプターアゴニストの非存在下で化学療法剤に対して抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
乳癌がアドリアマイシンに対して抵抗性である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
乳癌がパクリタキセルに対して抵抗性である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
乳癌がシスプラチンまたはカルボプラチンに対して抵抗性である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
被験体に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
化学療法剤が3週間ごとに静脈内投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
デスレセプターアゴニストが3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
癌を有する被験体を処置する方法であって、
(a)管腔細胞、HER2増幅、または基底細胞様遺伝子型からなる群より選択される特性の1以上を有する乳癌を有する被験体を選択すること;
(b)該被験体にIAP阻害剤を投与すること;および
(c)該被験体にデスレセプターアゴニストを投与することを含んでなる方法。
【請求項17】
IAP阻害剤がAT−406である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被験体に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
化学療法剤が、アドリアマイシン、パクリタキセル、アブラキサン、シスプラチン、およびカルボプラチンからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
デスレセプターアゴニストが3週間、2週間、または1週間の間隔で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
化学療法剤が3週間ごとに静脈内投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
DR5アゴニストに応答性の乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、
(a)癌細胞の基底細胞様表現型を検出すること;
(b)HER2非増幅である癌細胞を検出すること;および
(c)癌細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルの、コントロールに比較した減少を検出することを含んでなる方法。
【請求項23】
癌細胞がエストロゲン受容体陰性(ER陰性)、プロゲステロン受容体陰性(PR陰性)、またはER陰性およびPR陰性の両方であるかを決定することをさらに含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
DR5アゴニストが抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
乳癌細胞が乳房生検に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、細胞のDR5/DDX3/cIAP1複合体のレベルを検出すること、およびそれをコントロールと比較することを含んでなり、細胞の複合体のレベルがコントロールに比較して低いときに、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることが示される方法。
【請求項27】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、乳癌細胞内にN末端CARDを欠損するDDX3を検出することを含んでなり、N末端CARDを欠損するDDX3によって、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることを示す方法。
【請求項28】
DR5アゴニストに応答性のトリプルネガティブ乳癌細胞をスクリーニングする方法であって、乳癌細胞内に80kDaバキュロウイルスIAPリピートを含むIAPタンパク質を検出することを含んでなり、80kDaバキュロウイルスIAPリピートによって、乳癌細胞がDR5アゴニストに対して応答性であることを示す方法。
【請求項29】
DDX3のN末端CARDへ選択的に結合する抗体。
【請求項30】
N末端CARDを欠損するDDX3へ選択的に結合する抗体。
【請求項31】
80kDaバキュロウイルスIAPリピート(BIR)を含むIAPタンパク質に結合する抗体。
【図6A】
【図7A】
【図7B】
【図8B】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6B】
【図8A】
【図8C】
【図9A】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図7A】
【図7B】
【図8B】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6B】
【図8A】
【図8C】
【図9A】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【公表番号】特表2013−510171(P2013−510171A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538038(P2012−538038)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055664
【国際公開番号】WO2011/057099
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(506387487)ザ ユーエービー リサーチ ファンデーション (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055664
【国際公開番号】WO2011/057099
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(506387487)ザ ユーエービー リサーチ ファンデーション (4)
【Fターム(参考)】
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