説明

基材の処理方法、半導体装置および仮固定用組成物

【課題】基材の剥離時に基材の破損を良好に防ぐことが可能な、すなわち歩留まりのよい基材の処理方法を提供する。
【解決手段】(1)支持体上に、シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する仮固定材を介して、基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、(3)支持体側から仮固定材に紫外線を照射する工程、ならびに(4)支持体から基材を剥離する工程をこの順で有する、基材の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定材を用いた基材の処理方法、半導体装置、および基材を処理する際に、基材を支持体上に仮固定するために用いることができる仮固定材の形成に好適な原料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基材を加工(例:裏面研削、フォトファブリケーション)や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように、仮固定材などを用いて基材と支持体とを仮固定する必要がある。そして、加工および/または移動終了後は、基材を支持体から剥離する必要がある。従来、基材の仮固定に使用可能と考えられる接着剤がいくつか提案されている(下記特許文献1〜2参照)。
【0003】
特許文献1には、シクロオレフィン樹脂などを溶剤に溶解あるいは分散させてなる組成物から形成された接合用組成物層を介して、第1の基板と第2の基板とを接合して積層体を得て、続いて、前記接合層を軟化させるのに充分な温度に曝露することにより、第1の基板と第2の基板とを分離する、ウエハの接合(分離)方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板のそれぞれの周縁部を接合する接着剤層と、前記接着剤層により形成された中心空間に充填された充填材料からなる剥離層とを有する積層体を経由する、第1の基板および第2の基板の仮止め方法が開示されている。
【0005】
上記特許文献に記載の仮固定方法は、処理対象が耐熱性に優れるバンプ(例えば、銅からなるバンプ)を有する半導体ウエハの場合、歩留まりよく行える。しかしながら、処理対象が耐熱性に劣るバンプ(例えば、銅部分とハンダ部分とからなるバンプ)を有する半導体ウエハの場合、ウエハ剥離時の加熱処理によって、ハンダ部分が弱り、バンプが破損するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−506406号公報
【特許文献2】米国公開特許公報2009/0218560
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、基材の剥離時に基材の破損を良好に防ぐことが可能な、すなわち歩留まりのよい基材の処理方法、半導体装置、および前記処理方法に好適に用いられる仮固定材の原料組成物(仮固定用組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する基材の処理方法により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[8]に関する。
[1](1)支持体上に、シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する仮固定材を介して、基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、(3)支持体側から仮固定材に紫外線を照射する工程、ならびに(4)支持体から基材を剥離する工程をこの順で有する、基材の処理方法。
【0009】
[2]前記工程(2)において、フォトファブリケーションにより前記基材を加工する工程を含む前記[1]の基材の処理方法。
[3]前記工程(1)における前記仮固定材が、前記紫外線吸収剤(B)として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を少なくとも含有する前記[1]または[2]の基材の処理方法。
[4]前記工程(1)における前記仮固定材が、前記シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)を1〜50質量部含有する前記[1]〜[3]のいずれか一項の基材の処理方法。
【0010】
[5]基材を、前記[1]〜[4]のいずれか一項の基材の処理方法によって加工して得られる半導体装置。
[6]シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する仮固定用組成物。
[7]前記紫外線吸収剤(B)として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を少なくとも含有する前記[6]の仮固定用組成物。
[8]前記シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)を1〜50質量部含有する前記[6]または[7]の仮固定用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材の剥離時に基材の破損を良好に防ぐことが可能な、すなわち歩留まりのよい基材の処理方法、半導体装置、および前記処理方法に好適に用いられる仮固定材の原料組成物(仮固定用組成物)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において仮固定材とは、半導体ウエハなどの基材を加工(例:裏面研削、フォトファブリケーション(例:レジストパターンの形成、メッキ等による金属バンプ形成、化学気相成長等による膜形成、RIEなどによる加工))や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように基材を仮固定するために用いられる仮固定材のことである。
【0013】
以下、本発明の基材の処理方法で用いられる仮固定材の原料組成物である仮固定用組成物について説明した後、前記仮固定材を用いた基材の処理方法、前記基材の処理方法によって得られる半導体装置について説明する。
【0014】
〔仮固定用組成物〕
本発明の仮固定用組成物は、シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する。本発明の仮固定用組成物は、熱可塑性樹脂(C)(ただし、シクロオレフィン重合体(A)を除く。)および溶剤(D)から選択される少なくとも1種の成分を含有してもよい。
【0015】
〈シクロオレフィン重合体(A)〉
本発明の仮固定用組成物は、シクロオレフィン重合体(A)を含有する。基材の処理において高温環境下(例:225〜300℃)での作業工程が存在する場合、基材自体や基材に形成された各部材(例:バンプ)の破損を防ぐため、当該基材を保護する役割も担う仮固定材には、高い耐熱性が要求される。本発明の仮固定用組成物は、耐熱性に優れるシクロオレフィン重合体(A)を含有することから、これから形成される仮固定材は高い耐熱性を有する。
【0016】
シクロオレフィン重合体(A)としては、例えば、環状オレフィンと非環状オレフィンとの付加共重合体、1種または2種以上の環状オレフィンの開環メタセシス重合体、前記開環メタセシス重合体を水素化して得られる重合体が挙げられる。このようなシクロオレフィン重合体(A)の合成方法は従来公知である。
【0017】
環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン、およびこれらの誘導体が挙げられる。前記誘導体としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、アルキリデン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキリデン基)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜18のアラルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜18のシクロアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基)、アセチル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、芳香環、エーテル結合、およびエステル結合などによる置換誘導体が挙げられる。
【0018】
環状オレフィンの好ましい例として、式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】

式(1)中の置換基は以下のとおりである:R1およびR2はそれぞれ独立に水素またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)である。R3はそれぞれ独立に水素、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜18のシクロアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜18のアリール基)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜18のアラルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数1〜11のアルコキシカルボニル基)、アルデヒド基、アセチル基、ニトリル基である。
【0020】
非環状オレフィンとしては、炭素数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状または分岐鎖状のオレフィンが挙げられ、より好ましくはエチレン、プロピレン、ブテンであり、特に好ましくはエチレンである。
【0021】
付加共重合体
環状オレフィンと非環状オレフィンとの付加共重合体は、例えば、式(I)で表される構成単位と、非環状オレフィンに由来する構成単位(非環状オレフィンの重合性二重結合の反応に基づく構成単位)とを有する重合体である。
【0022】
【化2】

式(I)中のR1〜R3は式(1)中のR1〜R3とそれぞれ同義である。
【0023】
付加共重合体の市販品としては、例えば、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製の「TOPAS(トパス)」、三井化学(株)製の「APEL(アペル)」が挙げられる。
【0024】
開環メタセシス重合体およびその水添体
1種または2種以上の環状オレフィンの開環メタセシス重合体は、例えば、式(II)で表される構成単位を有する重合体であり、前記開環メタセシス重合体を水素化して得られる重合体は、例えば、式(III)で表される構成単位を有する重合体である。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

式(II)および(III)中のR1〜R3は式(1)中のR1〜R3とそれぞれ同義である。
【0027】
開環メタセシス重合体の市販品としては、例えば、日本ゼオン(株)製の「ZEONOR(ゼオノア)」や「ZEONEX(ゼオネックス)」、JSR(株)製の「ARTON(アートン)」が挙げられる。
【0028】
シクロオレフィン重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、通常10,000〜100,000、好ましくは30,000〜100,000である。シクロオレフィン重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される数平均分子量をMnとするとき、Mw/Mnで示される分子量分布は、通常2〜4、好ましくは3〜4である。
【0029】
シクロオレフィン重合体(A)の含有量は、本発明の仮固定材用組成物の、紫外線吸収剤(B)以外の全固形分を100質量%とするとき、通常1〜100質量%である。
〈紫外線吸収剤(B)〉
本発明の仮固定用組成物は、紫外線吸収剤(B)を含有する。前記組成物から形成された仮固定材に紫外線を照射することによって、仮固定材の含有成分である紫外線吸収剤(B)が紫外線を吸収し、理由は定かではないが、シクロオレフィン重合体(A)に何らかの影響を及ぼし、結果として仮固定材の接着力が低減する。これによって、加熱処理を特に必要とすることなく(よって加熱処理に起因する基材の破損を防ぐことができる。)、支持体から基材を容易に剥離することができる。
【0030】
紫外線吸収剤(B)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、感放射線性ラジカル重合開始剤、光感応性酸発生剤などの有機系紫外線吸収剤が挙げられ、これら有機系紫外線吸収剤が、シクロオレフィン重合体(A)と良好に混ざり合うことで、基材の剥離性が向上することから好ましい。
【0031】
これらの中でも、基材の剥離性の観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤が好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0032】
本発明の仮固定用組成物において、紫外線吸収剤(B)の含有量は、シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは5〜20質量部である。紫外線吸収剤(B)の含有量が前記範囲にあると、基材の剥離性の観点から好ましい。
【0033】
《ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤》
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル}−2H−ベンゾトリアゾール(例:商品名「RUVA93」、大塚化学社製)、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(例:商品名「TINUVIN PS」、BASF社製)、3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸C7〜9アルキルエステル(例:商品名「TINUVIN 99−2」、商品名「TINUVIN 384−2」、BASF社製)、3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクチルと3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸2−エチルヘキシルとの混合物(例:商品名「TINUVIN 109」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(例:商品名「TINUVIN 900」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(例:商品名「TINUVIN 928」、BASF社製)、3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルとポリエチレングリコール300との反応生成物(例:商品名「TINUVIN 1130」、BASF社製)が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
《ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤》
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10−16アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(例:商品名「TINUVIN 400」、BASF社製)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)グリシド酸エステルとの反応生成物(例:商品名「TINUVIN 405」、BASF社製)、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(例:商品名「TINUVIN 460」、BASF社製)、水分散したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(例:商品名「TINUVIN 477−DW」、BASF社製)、下記式で表される化合物(例:商品名「TINUVIN 479」、BASF社製)が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
【化5】

式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
【0036】
《ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびサリチル酸系紫外線吸収剤》
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびサリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、フェニルサリチレート、サリチル酸グリコールが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
《感放射線性ラジカル重合開始剤》
感放射線性ラジカル重合開始剤(以下「ラジカル重合開始剤」ともいう。)としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのアシルフォスフィンオキサイド類;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾールが挙げられる。また、市販品としては、例えば、ルシリンTPO(BASF社製)、イルガキュア651(BASF社製)が挙げられる。
【0038】
ラジカル重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
《光感応性酸発生剤》
光感応性酸発生剤(以下「酸発生剤」ともいう。)は、光照射によって酸を発生する化合物である。酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。
【0039】
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩が挙げられる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートが挙げられる。
【0040】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0041】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物およびこれらの化合物のα−ジアゾ化合物が挙げられる。好ましいスルホン化合物の具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンが挙げられる。
【0042】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類が挙げられる。好ましいスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートが挙げられる。
【0043】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドが挙げられる。
【0044】
ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンが挙げられる。
【0045】
酸発生剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〈熱可塑性樹脂(C)〉
本発明の仮固定用組成物は、仮固定材を介して基材と支持体とを貼り合せる際の温度を制御する目的で、熱可塑性樹脂(C)(ただし、シクロオレフィン重合体(A)を除く。)を含有することが好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂(C)としては、例えば、石油樹脂、ノボラック樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、シクロオレフィン重合体(A)との相溶性をコントロールするのが容易なため、石油樹脂が好ましい。
【0047】
本発明の仮固定用組成物において、熱可塑性樹脂(C)を用いる場合、熱可塑性樹脂(C)の含有量は、シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜100質量部である。熱可塑性樹脂(C)の含有量が前記範囲にあると、耐熱性と剥離性の両立の観点から好ましい。
【0048】
《石油樹脂》
石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5系/C9系混合石油樹脂、ビニル置換芳香族化合物の重合体、オレフィンとビニル置換芳香族化合物との共重合体、シクロペンタジエン系化合物とビニル置換芳香族化合物との共重合体、これらの水素添加物、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5系/C9系混合石油樹脂、ビニル置換芳香族化合物の重合体、これらの水素添加物、およびこれらの混合物が好ましい。C5系石油樹脂としては脂肪族系樹脂が好ましく、C9系石油樹脂としては脂環族系樹脂が好ましい。これらの中でも、C9系石油樹脂およびその水素添加物が特に好ましい。
【0049】
石油樹脂のGPC法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、通常20000以下、好ましくは100〜20000、さらに好ましくは200〜10000、特に好ましくは300〜5000である。
【0050】
《ノボラック樹脂》
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを触媒(例:シュウ酸)の存在下で縮合させることにより得ることができる。
【0051】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトールが挙げられる。
【0052】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドが挙げられる。
ノボラック樹脂の好ましい具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂が挙げられる。
【0053】
ノボラック樹脂のGPCにより測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、通常2000以上、好ましくは2000〜20000である。ノボラック樹脂のGPC法により測定される数平均分子量をMnとするとき、Mw/Mnで示される分子量分布は、通常1〜10、好ましくは1.5〜5である。
【0054】
〈溶剤(D)〉
本発明の仮固定用組成物の調製には、当該組成物の粘度を塗布に適した範囲に設定する点で、溶剤(D)を用いることが好ましい。溶剤(D)としては、例えば、リモネン、メシチレン、ジペンテン、ピネン、ビシクロヘキシル、シクロドデセン、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン、ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シクロオレフィン重合体(A)の溶解性等の観点から、炭化水素類が好ましい。
【0055】
溶剤(D)を用いることにより、本発明の仮固定用組成物の粘度を調整することが容易となり、したがって基材または支持体上に仮固定材を形成するのが容易となる。例えば、溶剤(D)は、仮固定用組成物の固形分濃度が通常10〜50質量%、好ましくは30〜50質量%となる範囲で用いることができる。ここで固形分濃度とは、溶剤(D)以外の全成分の合計濃度である。
【0056】
〈その他の成分〉
本発明の仮固定用組成物は、必要に応じて、密着助剤;酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素などの金属酸化物粒子;ポリスチレン架橋粒子などを含有してもよい。
【0057】
〈仮固定用組成物の調製〉
本発明の仮固定用組成物の調製には、熱可塑性樹脂の加工に用いる公知の装置、例えば、二軸押出機、単軸押出機、連続ニーダー、ロール混練機、加圧ニーダー、バンバリーミキサーを用いることができる。また、不純物を除く目的で、適宜、濾過を行うこともできる。
【0058】
〈仮固定材用組成物の特性〉
本発明の仮固定用組成物から形成された仮固定材に、紫外線照射処理を行うことにより、例えば基材と仮固定材との界面における接着力が低減し、基材を容易に支持体から剥離することができる。
【0059】
また、上記仮固定材は、例えば300℃以下という温度で基材を仮固定できるとともに、高温環境下(例:225〜300℃)でも、基材の処理時に基材を保持(若しくは保護)しうる保持力を維持できる。保持力は、例えば剪断接着力で評価される。このように本発明の仮固定材は、基材の処理(加工および/または移動等)時に付加される剪断力に対して充分な保持力(剪断接着力)を有する。本発明の仮固定材は、25℃近辺で用いられる基材の薄膜化、フォトファブリケーション(例えば、25〜300℃程度での温度範囲で用いられるエッチング加工やスパッタ膜の形成、225〜300℃程度での温度範囲で用いられるメッキ処理やメッキリフロー処理)などにおいても、基材を支持体上に保持することができる。
【0060】
本発明の仮固定材用組成物から形成された仮固定材は、このような特性を有することから、現代の経済活動の場面で要求される様々な加工処理(例:各種材料表面の微細化加工処理、各種表面実装、半導体ウエハや半導体素子の運搬)などの際に、基材の仮止め材として好適に用いられる。
【0061】
〔基材の処理方法〕
本発明の基材の処理方法は、(1)支持体上に、シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する仮固定材を介して、基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、(3)支持体側から仮固定材に紫外線を照射する工程、ならびに(4)支持体から基材を剥離する工程をこの順で有する。以下、前記各工程をそれぞれ、工程(1)〜工程(4)ともいう。
【0062】
《工程(1)》
工程(1)では、例えば、(1-1)支持体および/または必要に応じて表面処理した基材の表面に仮固定材(仮固定材層)を形成し、前記仮固定材を介して基材と支持体とを貼り合せることにより、あるいは(1-2)支持体の表面に仮固定材(仮固定材層)を形成し、前記仮固定材上に基材を形成することにより、基材を支持体上に仮固定することができる。このようにして形成される積層体は、支持体/仮固定材(仮固定材層)/基材という構成を有する。
【0063】
上述の仮固定材層の形成方法としては、例えば、(i)本発明の仮固定材用組成物を用いて、仮固定材層を、支持体上および/または基材上に直接形成する方法、(ii)本発明の仮固定材用組成物を用いて、仮固定材層を、離型処理が施されたPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム上に一定膜厚で成膜した後、支持体および/または基材へラミネート方式により転写する方法が挙げられる。膜厚均一性の点から、上記(i)の方法が好ましい。
【0064】
仮固定用組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、インクジェット法が挙げられる。スピンコート法では、例えば、回転速度が300〜3,500rpm(好ましくは500〜1,500rpm)、加速度が500〜15,000rpm/秒、回転時間が30〜300秒という条件のもと、仮固定用組成物をスピンコーティングする方法が挙げられる。
【0065】
仮固定用組成物を塗布して塗膜を形成した後は、例えば、ホットプレート等でベークして、溶剤を蒸発させることによって、仮固定材を形成することができる。ベーキングの条件は、例えば、温度が通常150〜275℃、好ましくは150〜260℃であり、時間が通常2〜15分、より好ましくは3〜10分である。
【0066】
上記仮固定材は、シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有し、さらに熱可塑性樹脂(C)を含有してもよい。これらのシクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)その他熱可塑性樹脂(C)の例示および好適態様については、〔仮固定用組成物〕の欄に詳述したとおりである。
【0067】
上記仮固定材において、紫外線吸収剤(B)の含有量は、シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは5〜20質量部である。紫外線吸収剤(B)の含有量が前記範囲にあると、基材の剥離性の観点から好ましい。
【0068】
上記仮固定材において、熱可塑性樹脂(C)を用いる場合、熱可塑性樹脂(C)の含有量は、シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜100質量部である。熱可塑性樹脂(C)の含有量が前記範囲にあると、耐熱性と剥離性の両立の観点から好ましい。
【0069】
上記(i)の方法において、基材と支持体とを貼り合せる方法としては、例えば、基材および支持体のいずれか一方または双方に仮固定材層を形成して、両者を貼り合せる方法が挙げられる。この際の温度は、各仮固定用組成物の含有成分、塗布方法等に応じて適宜選択される。このようにして、基材が支持体上に仮固定材層を介して強固に保持される。圧着条件は、例えば、150〜300℃で1〜5分間、0.05〜3MPaの圧力を付加することにより行えばよい。
【0070】
加工(移動)対象物である前記基材としては、例えば、半導体ウエハ、半導体チップ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔、研磨パッド、樹脂塗膜が挙げられる。半導体ウエハやチップには、通常はバンプや配線、絶縁膜などが形成されている。樹脂塗膜としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ;具体的には、感光性材料から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層などが挙げられる。
【0071】
支持体としては、ガラスやシリコンなどの取扱いが容易で且つ硬くて平坦な面を有する基板が挙げられる。工程(3)で紫外線照射をして仮固定材を変質させるため、支持体としてはガラス基板、石英基板などの透明基板が好ましい。
【0072】
本発明の基材の処理方法は、バンプを有する半導体ウエハ等、特に、耐熱性に乏しいピラーバンプ(例:銅部分とハンダ部分とからなるピラーバンプ)を有する半導体ウエハ等に対しても適用することができる。
【0073】
仮固定材層を基材上に形成するに際して、仮固定材の面内への広がりを均一にするため、基材表面を予め表面処理することもできる。表面処理の方法としては、基材表面に予め表面処理剤を塗布する方法などが挙げられる。
【0074】
上記表面処理剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのカップリング剤が挙げられる。
【0075】
積層体における仮固定材層の厚さは、基材の仮固定面のサイズ、加工処理などで要求される密着性の程度に応じて任意に選択することができる。積層体における仮固定材層の厚さは、通常0.1μmを超えて2mm以下、好ましくは0.1μmを超えて1mm以下、より好ましくは0.1μmを超えて0.5mm以下である。仮固定材層の厚さが前記範囲にあると、保持力が充分であり、仮固定面からの基材の剥がれが生じることもない。
【0076】
《工程(2)》
工程(2)は、上記のように支持体上に仮固定された基材を加工し、および/または得られた積層体を移動する工程である。移動工程は、積層体をある装置から別の装置へ支持体とともに移動する工程である。また、上記のようにして支持体上に仮固定された基材の加工処理としては、例えば、基材の薄膜化(例:裏面研削);エッチング加工、スパッタ膜の形成、メッキ処理およびメッキリフロー処理などから選ばれる一以上の処理を含むフォトファブリケーションが挙げられる。
【0077】
特にフォトファブリケーションにおいては、基材が高温環境下に曝されることがある。例えば複数のチップをパッケージ内で積層して実装する所謂三次元実装などでは、ウエハまたはチップを支持体に仮固定して、例えばウエハまたはチップの加工(例:貫通孔形成、バンプ形成、再配線、ウエハの薄膜化)や、チップの積層(例:メッキをメルトフローさせ、チップ間を電気的に接続する)を行う。したがって、仮固定材は、メッキリフロー処理などに対する耐性(耐熱性)を有することが望まれる。本発明で用いられる仮固定材は、シクロオレフィン重合体(A)を含有することから、高温環境下でも略溶融せずに基材を保護可能な、耐熱性に優れる仮固定材であるので、基材の加工時に例えば半導体チップの破損やバンプの破損を防ぐことができる。
【0078】
基材の加工処理は、仮固定材の保持力が失われない温度で行えば特に限定されない。本発明では、上記仮固定材層が、低温および高温環境下においても加工処理時に基材を保持(若しくは保護)しうる保持力を有している。
【0079】
以下では、基材の加工処理として、三次元実装の際に行われる加工処理を一例として説明する。三次元実装では、基材の表面に対して垂直方向に延びる貫通電極を形成し、その貫通電極の端部や配線上に、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。このようにして形成された接続用電極同士を接続することで、積層した基材相互間を接続する。
【0080】
(i)工程(1)で仮固定材を介して支持体上に仮固定された基材上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、所定の形状にパターニングされたレジスト層を形成する。例えば、円形状のレジストパターンを基材上に複数形成すればよい。
【0081】
(ii)レジスト層をマスクとして、基材の所定形状にパターニングされた部分をエッチングし、開口部(ホール)を形成する。その後、レジスト層を剥離液あるいはアッシング(例:O2アッシング)などにより剥離する。エッチングにはドライエッチングやウェットエッチングを使用することができる。
【0082】
(iii)基材の開口部を形成した面上に、SiO2などからなる絶縁層を形成する。
(iv)絶縁層への導体の拡散を防ぐ目的で、TiWおよびTiNなどからなるバリア層をスパッタにより形成する。次に、銅などからなるシード層をスパッタにより形成する。
【0083】
(v)基材の開口部を形成した面上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、基材の開口部に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。次に、メッキ処理(Sn/Cuメッキなど)を施して、基材の開口部に導体を充填し、貫通電極を形成する。その後、レジスト層を除去し、バリア層およびシード層をドライエッチングにより除去する。
【0084】
(vi)このようにして加工処理がなされた基材の貫通電極上に、リフローにより、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。次に、形成された接続用電極同士を接続することで、積層した基材相互間を接続することができる。
【0085】
《工程(3)および工程(4)》
基材の加工処理または積層体の移動後は、支持体側から仮固定材に紫外線を照射する。
紫外線照射により、理由は定かではないが、仮固定材の含有成分である紫外線吸収剤(B)が紫外線を吸収し、シクロオレフィン重合体(A)に何らかの影響を及ぼし、結果として仮固定材の接着力が低減する。
【0086】
したがって、仮固定材に対する紫外線照射の後であれば、仮固定材の加熱処理を特に必要とすることなく、支持体から基材を容易に剥離することができる。従来技術では、仮固定材の接着力を低減させるために剥離時に加熱処理を行うことがあるが、基材が耐熱性に劣るピラーバンプ(例:銅部分とハンダ部分とからなるピラーバンプ)を有する半導体ウエハ等の場合、剥離時の加熱によってピラーバンプ(例:ハンダ部分)が弱り、ピラーバンプが破損する危険があった。本発明では、剥離時に加熱処理を行う必要が特にないため、耐熱性に劣るピラーバンプの破損を防ぐことができる。
【0087】
紫外線としては、通常10〜380nm程度の波長の紫外線が採用され、150〜380nm程度の波長の近紫外線が特に好ましい。照射光の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、レーザーが挙げられ、これらの中でも、レーザーが好ましい。
【0088】
レーザーとしては、例えば、固体レーザー(例:YAGレーザー)、液体レーザー(例:色素レーザー)、ガスレーザー(例:エキシマレーザー)が挙げられる。これらの中でも、YAGレーザーおよびエキシマレーザーが好ましい。
【0089】
エキシマレーザーとしては、例えば、F2エキシマレーザー(発振波長:157nm)、ArFエキシマレーザー(同193nm)、KrFエキシマレーザー(同248nm)、XeClエキシマレーザー(同308nm)、XeFエキシマレーザー(同351nm)が挙げられる。
【0090】
照射条件は光源等の種類によって異なるが、XeClエキシマレーザーの場合、出力は通常1000mJ/cm2以下、好ましくは500mJ/cm2以下、より好ましくは300mJ/cm2以下であり(下限値は10mJ/cm2程度である。);照射時間は通常60秒以下、好ましくは40秒以下、より好ましくは10〜30秒である。YAGレーザーの場合、出力は通常100,000mJ/cm2以下、好ましくは50,000mJ/cm2以下、より好ましくは10,000mJ/cm2以下である(下限値は10mJ/cm2程度である。)。
【0091】
剥離処理としては、例えば、支持体と基材とをその仮固定面(支持体の表面)に略水平方向にずらすなどの剪断処理(通常0.01〜5N/cm2、好ましくは0.01〜0.5N/cm2)により、支持体から基材を剥離する方法、支持体の表面に対して垂直方向に基材を剥離する方法が挙げられる。
【0092】
より具体的には、基材を支持体の表面に対して水平方向にスライドさせると同時に、支持体を固定する、あるいは前記基材に付加される力に拮抗する力を支持体に付加することによって、基材を支持体から剥離する方法が挙げられる。なお、本発明において「剪断」とは、支持体と基材との仮固定面の略平行方向に力を作用させることをいう。
【0093】
なお、剥離後の基材に仮固定用組成物が残存している場合は、上述の仮固定用組成物を調製する際に使用されうる溶剤(洗浄液)で洗浄して除去することができる。洗浄方法としては、基材を洗浄液に浸漬する方法、基材に洗浄液をスプレーする方法、基材を洗浄液に浸漬しながら超音波を加える方法などが挙げられる。洗浄液の温度は特に限定されないが、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜50℃である。
【0094】
溶剤としては、例えば、リモネン、メシチレン、ジペンテン、ピネン、ビシクロヘキシル、シクロドデセン、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン、ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられる。
【0095】
〔半導体装置〕
本発明の半導体装置は、基材を、本発明の基材の処理方法によって加工して得られる。上述の仮固定材は半導体素子等の半導体装置の剥離時に容易に除去されるため、前記半導体素子等の半導体装置は仮固定材による汚染(例:シミ、焦げ)が極めて低減されたものとなっている。また、本発明の半導体装置は、基材自体や基材が有する各部材の破損・損耗が極めて低減されたものとなっている。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の一実施態様を、実施例をもとにより具体的に説明する。
1.仮固定用組成物の準備
仮固定材を形成するための組成物として、下記仮固定用組成物を用いた。
【0097】
[実施例1]仮固定用組成物1の調製
100質量部のシクロオレフィン重合体(商品名「Zeonex 480R」、日本ゼオン(株)製)と、50質量部の水添C9系石油樹脂(商品名「アルコンP−140」、荒川化学工業(株)製)と、10質量部のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名「TINUVIN 479」、BASF社製)と、300質量部のメシチレンとを混合することにより、仮固定用組成物1を調製した。
【0098】
[実施例2、調製例1]
実施例1において、配合組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、仮固定用組成物2〜3を調製した。
【0099】
【表1】

・シクロオレフィン樹脂(A):
商品名「Zeonex 480R」、日本ゼオン(株)製、Mw=40,000
商品名「ARTON R5300」、JSR(株)製、Mw=60,000
・紫外線吸収剤(B):
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤
(商品名「TINUVIN 479」、BASF社製)
・熱可塑性樹脂(C):
水添C9系石油樹脂
(商品名「アルコンP−140」、荒川化学工業(株)製)
【0100】
2.仮固定材の評価
[実施例3]
仮固定用組成物1を、スピンコート法で、複数のピラーバンプを有する直径4インチのシリコンウエハ(ピラーバンプのサイズは、縦100μm、横100μm、高さ100μmである。ピラーバンプの下半分は銅からなり、上半分はハンダからなる。)上に塗布し、ホットプレートを用いて200℃で10分間加熱し、シリコンウエハと厚さ40μmの塗膜(仮固定材)とを有する基板を得た。この基板とガラス基板(支持体)とを、ダイボンダー装置を用いて、200℃で50Nの力を90秒間加え、シリコンウエハとガラス基板とが仮固定材を介して積層された、積層体を得た。得られた積層体を縦1cm、横1cmにカットし、試験用積層体1を準備した。
【0101】
(1)試験用積層体1を溶剤(N−メチル−2−ピロリジノン(NMP))にディップ(23℃、0.5時間)した。ディップ後の評価用積層体1のガラス基板およびシリコンウエハに、万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、ガラス基板と平行方向に剪断力(500μm/秒の速度で、23℃で20N/cm2)を加えた(以下「剪断処理A」ともいう。)が、シリコンウエハおよびガラス基板はずれずに保持していることが確認できた。
【0102】
(2)試験用積層体1に、支持体側からYAGレーザー(光線波長:355nm、出力:4500mJ/cm2)を照射した(以下「照射処理A」ともいう。)。レーザー照射後、支持体から基材を剥離した後の剥離状態を目視にて確認したところ、シリコンウエハ上のピラーバンプが折れたり、もげたりせずに、初期状態を保持していた。
【0103】
[実施例4]
実施例3において、仮固定用組成物1の代わりに仮固定用組成物2を用いたこと以外は実施例3と同様にして、試験用積層体2を得た。上記ディップ後の試験用積層体2に対して剪断処理Aを行った結果、シリコンウエハおよびガラス基板はずれずに保持していることが確認できた。試験用積層体2に対して照射処理Aを行い、支持体から基材を剥離した後の剥離状態を目視にて確認したところ、シリコンウエハ上のピラーバンプが折れたり、もげたりせずに、初期状態を保持していた。
【0104】
[実施例5]
実施例3で得られた試験用積層体1に、支持体側からエキシマレーザー(光線波長:308nm、出力:200mJ/cm2)を照射した。レーザー照射後、支持体から基材を剥離した後の剥離状態を目視にて確認したところ、シリコンウエハ上のピラーバンプが折れたり、もげたりせずに、初期状態を保持していた。
【0105】
[比較例1]
実施例3において、仮固定用組成物1の代わりに仮固定用組成物3を用いたこと以外は実施例3と同様にして、試験用積層体3を得た。上記ディップ後の試験用積層体3に対して剪断処理Aを行った結果、シリコンウエハおよびガラス基板はずれずに保持していることが確認できた。
【0106】
試験用積層体3のガラス基板およびシリコンウエハに、万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、ガラス基板と平行方向に剪断力(500μm/秒の速度で、250℃で1N/cm2以下)を加えたところ、シリコンウエハをガラス基板から剥離することができた。支持体から基材を剥離した後の剥離状態を目視にて確認したところ、シリコンウエハ上のピラーバンプが折れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)支持体上に、シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する仮固定材を介して、基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、
(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、
(3)支持体側から仮固定材に紫外線を照射する工程、ならびに
(4)支持体から基材を剥離する工程
をこの順で有する、基材の処理方法。
【請求項2】
前記工程(2)において、フォトファブリケーションにより前記基材を加工する工程を含む請求項1の基材の処理方法。
【請求項3】
前記工程(1)における前記仮固定材が、前記紫外線吸収剤(B)として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を少なくとも含有する請求項1または2の基材の処理方法。
【請求項4】
前記工程(1)における前記仮固定材が、前記シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)を1〜50質量部含有する請求項1〜3のいずれか一項の基材の処理方法。
【請求項5】
基材を、請求項1〜4のいずれか一項の基材の処理方法によって加工して得られる半導体装置。
【請求項6】
シクロオレフィン重合体(A)および紫外線吸収剤(B)を含有する仮固定用組成物。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤(B)として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を少なくとも含有する請求項6の仮固定用組成物。
【請求項8】
前記シクロオレフィン重合体(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)を1〜50質量部含有する請求項6または7の仮固定用組成物。