説明

基材の処理方法、半導体装置および仮固定用組成物

【課題】層間絶縁膜等を損傷する恐れのある有機溶媒を使用しなくとも、支持体から基材を剥離した後の仮固定材残渣を低減または除去することが可能な基材の処理方法を提供する。
【解決手段】(1)アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)を含有する仮固定材を介して、支持体上に基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、ならびに(3)支持体から基材を剥離する工程を有する、基材の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定材を用いた基材の処理方法、半導体装置、および基材を処理する際に、基材を支持体上に仮固定するために用いることができる仮固定材の形成に好適な原料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基材を加工(例:裏面研削、フォトファブリケーション)や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように、仮固定材などを用いて基材と支持体とを仮固定する必要がある。そして、加工および/または移動終了後は、基材を支持体から剥離する必要がある。従来、基材の仮固定に使用可能と考えられる接着剤がいくつか提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ポリマーを溶媒に溶解あるいは分散させてなる接合用組成物から形成された接合層を介して、第1の基板と第2の基板とを接合して積層体を得て、続いて、前記接合層を軟化させるのに充分な温度に曝露し、剥離力を印加することにより、第1の基板と第2の基板とを分離する、ウエハの接合(分離)方法が開示されている。
【0004】
従来の方法では、支持体から基材を剪断剥離等により剥離した後の基材の剥離面に、仮固定材の残渣が通常は残存する。このため、前記残渣を除去するために、有機溶媒を使用することが多い。しかしながら、有機溶媒の使用によって、例えば、基材に形成されている有機物からなる層間絶縁膜などが損傷する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−506406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、層間絶縁膜等を損傷する恐れのある有機溶媒を使用しなくとも、支持体から基材を剥離した後の仮固定材残渣を低減または除去することが可能な基材の処理方法、半導体装置、および前記処理方法に好適に用いられる仮固定材の原料組成物(仮固定用組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する基材の処理方法により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[8]に関する。
【0008】
[1](1)アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)を含有する仮固定材を介して、支持体上に基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、ならびに(3)支持体から基材を剥離する工程を有する、基材の処理方法。
【0009】
[2]前記重合体(A)が、式(1)で表される繰返し構成単位を有する重合体(A1)、およびジエンモノマーと酸素とのラジカル交互共重合により得られる重合体(A2)から選ばれる少なくとも1種である前記[1]の基材の処理方法。
【0010】
【化1】

[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり;R3は、単結合または炭素数1〜10の二価の鎖状炭化水素基であり;R4〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、但し、R4〜R6の少なくとも1つは、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり;R5およびR6のいずれかとR4とが互いに結合して炭素数5〜20の環構造を形成してもよく;Xは、ハロゲン原子または一価の基である。]
【0011】
[3]前記仮固定材が、さらに、熱または光の作用により酸を発生する化合物(B)を含有する前記[1]または[2]の基材の処理方法。
[4]前記工程(3)が、(3-1)前記支持体から前記基材を剥離し、その後に、剥離後の基材に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程、および/または(3-2)前記積層体に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行い、支持体から基材を剥離する工程を有する前記[1]〜[3]のいずれか一項の基材の処理方法。
【0012】
[5]基材を、前記[1]〜[4]のいずれか一項の基材の処理方法によって加工して得られる半導体装置。
[6]アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)を含有する仮固定用組成物。
【0013】
[7]前記重合体(A)が、前記式(1)で表される繰返し構成単位を有する重合体(A1)、およびジエンモノマーと酸素とのラジカル交互共重合により得られる重合体(A2)から選ばれる少なくとも1種である前記[6]の仮固定用組成物。
[8]さらに、熱または光の作用により酸を発生する化合物(B)を含有する前記[6]または[7]の仮固定用組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、層間絶縁膜等を損傷する恐れのある有機溶媒を使用しなくとも、支持体から基材を剥離した後の仮固定材残渣を低減または除去することが可能な基材の処理方法、半導体装置、および前記処理方法に好適に用いられる仮固定材の原料組成物(仮固定用組成物)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において仮固定材とは、半導体ウエハなどの基材を加工(例:裏面研削、フォトファブリケーション(例:レジストパターンの形成、メッキ等による金属バンプ形成、化学気相成長等による膜形成、RIEなどによる加工))や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように基材を仮固定するために用いられる仮固定材のことである。
【0016】
本発明の基材の処理方法は、(1)下記特定の重合体(A)を含有する仮固定材を介して、支持体上に基材を仮固定することにより、積層体を得る工程(以下「工程(1)」ともいう。)、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程(以下「工程(2)」ともいう。)、ならびに(3)支持体から基材を剥離する工程(以下「工程(3)」ともいう。)を有する。
【0017】
工程(3)では、下記工程(3-1)および/または(3-2)を行うことが好ましい。
(3-1)前記支持体から前記基材を剥離し、その後に、剥離後の基材に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程(以下「工程(3-1)」ともいう。)。
(3-2)前記積層体に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行い、支持体から基材を剥離する工程(以下「工程(3-2)」ともいう。)。
【0018】
ここで、工程(3-1)および(3-2)を共に有する場合とは、前記積層体に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行い、支持体から基材を剥離した後に、さらに、剥離後の基材に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行うことを意味する。
【0019】
本発明では、アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)(以下「重合体(A)」ともいう。)を含有する仮固定材を介して、支持体上に基材が仮固定されている。重合体(A)は、熱または光の作用により酸を発生する化合物(B)(以下「酸発生剤(B)」ともいう。)の存在下に、加熱処理および/または光照射処理によって酸発生剤(B)から生じた酸の作用により、重合体の主鎖中の結合が切断されて分解し、モノマーレベルの低分子量化合物に変換される。このため、加熱処理および/または光照射処理によって重合体(A)を分解・蒸発・除去することができる。
【0020】
なお、重合体(A)の中には、酸発生剤(B)が存在しなくとも、加熱処理および/または光照射処理によって分解する重合体もある(例えば、後述するペルオキシド構造を有する重合体)ので、酸発生剤(B)の存在は必須ではないが、分解処理が良好に進行することから、酸発生剤(B)を重合体(A)とともに併用することが好ましい。
【0021】
このように重合体(A)が加熱処理および/または光照射処理によって容易に分解・除去されるので、例えば、支持体から基材を剥離した後の基材上の仮固定材残渣は、加熱処理および/または光照射処理によって分解・除去することができ(工程(3-1)に対応)、また、積層体中の仮固定材に対して加熱処理および/または光照射処理を行うことによって支持体から基材を剥離することができ、この場合には同時に仮固定材残渣も分解・除去することができる(工程(3-2)に対応)。
【0022】
本発明では、有機溶媒を使用せずに仮固定材残渣を低減または除去することができるので、基材が有する層間絶縁膜等にダメージを与える恐れのある有機溶媒の使用を回避することができる。
【0023】
以下、本発明の基材の処理方法で用いられる仮固定材の原料組成物である仮固定用組成物について説明した後、前記仮固定材を用いた基材の処理方法、前記基材の処理方法によって得られる半導体装置について説明する。
【0024】
〔仮固定用組成物〕
本発明の仮固定用組成物は、アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)を含有する。本発明の仮固定用組成物は、重合体(A)に加えて、熱または光の作用により酸を発生する化合物(B)を含有することが好ましい。加熱処理および/または光照射処理によって、酸発生剤(B)から酸が発生し、この酸の作用によって、重合体(A)の分解が良好に進行することになる。
【0025】
[重合体(A)]
アセタール構造とは、一つの炭素原子に二つの酸素原子(−O−)が結合した構造を指し、ペルオキシド構造とは、−O−O−で表される構造を指す。
【0026】
アセタール構造を有する重合体(A)としては、例えば以下の重合体(A1)が挙げられ、ペルオキシド構造を有する重合体(A)としては、例えば以下の重合体(A2)が挙げられる。これらの重合体は、加熱処理および/または光照射処理によって重合体の主鎖中の結合が切断され、低分子量化合物に変換されうる。
重合体(A)は、1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0027】
〈重合体(A1)〉
重合体(A1)は、式(1)で表される繰返し構成単位(以下「構成単位(1)」ともいう。)を有する。なお、重合体(A1)は、1種の構成単位(1)を有していてもよく、2種以上の構成単位(1)を有していてもよい。式(1)に示すように、構成単位(1)は、アセタール構造を含んでおり、また、ビニルエーテル誘導体由来の構造と、アルデヒド誘導体由来の構造とを含んでいるともいえる。
【0028】
重合体(A1)を用いる場合は、酸発生剤(B)も用いることが好ましい。
重合体(A1)は、アセタール構造を含む構成単位(1)を有することで、加熱処理や光照射処理により酸発生剤(B)から発生する酸の作用により、重合体の主鎖および側鎖において分解が起こる。すなわち構成単位(1)は、式(1)におけるR1が結合する炭素原子に、2つの酸素原子が結合する構造を有するため、前記酸の作用により、この炭素原子と酸素原子との結合が切れ、カルボニル誘導体およびアルコール誘導体等となる。その結果、重合体(A1)は、モノマーレベルの低分子量化合物に変換されるので、加熱処理や光照射処理のみでも、重合体(A1)を分解・蒸発・除去することが可能となる。
【0029】
【化2】

式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、好ましくは水素原子である。R3は、単結合または炭素数1〜10の二価の鎖状炭化水素基である。炭素数1〜10の二価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基、エタンジイル基またはプロパンジイル基が挙げられる。
【0030】
式(1)中、Xは、ハロゲン原子または一価の基である。
式(1)中、R4〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。但し、R4〜R6の少なくとも1つは、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。また、R5およびR6のいずれかとR4とが互いに結合して炭素数5〜20の環構造を形成してもよい。
【0031】
《式(1)中のX》
Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子が挙げられる。
Xで表される一価の基としては、例えば、電子吸引性基、脂環式基、酸解離性基、鎖状炭化水素基(例えば炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基、好ましくはイソブチル基)、複素環基(例えばラクトン基、スルトン基、環状カーボネート基、好ましくはラクトン基、より好ましくはδ−バレロラクトン基)が挙げられる。
【0032】
電子吸引性基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂環式炭化水素基置換オキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、スルホン酸エステル基、オキソアルキル基が挙げられる。
【0033】
脂環式基は、単環の脂環式基であっても多環の脂環式基であってもよく、例えば、式(2−1)〜(2−6)で表される脂環式基が挙げられ、これらの中でも、式(2−1)で表される脂環式基が好ましい。
【0034】
【化3】

式中、*は、式(1)におけるR3との結合部位を示す。
酸解離性基としては、例えば、式(3)で表される基が挙げられる。
【0035】
【化4】

式(3)中、R7〜R9は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R7およびR8は、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の脂環式基を形成していてもよい。式中、*は、式(1)におけるR3との結合部位を示す。
式(3)で表される基の中でも、式(3−1)〜(3−6)で表される基が好ましい。
【0036】
【化5】

式中、*は、式(1)におけるR3との結合部位を示す。
【0037】
重合体(A1)は、同一または異なる重合体中に、上記Xが互いに異なる構成単位(1)を有することが好ましい。なお、互いに異なる上記Xとしては、ハロゲン原子、電子吸引性基、脂環式基、酸解離性基、鎖状炭化水素基および複素環基から選択される複数の原子または基であることが好ましく、これらの中でも、重合体中の構成単位(1)の含有量を向上させる観点から、ハロゲン原子または電子吸引性基と脂環式基との組合せ、ハロゲン原子または電子吸引性基と複素環基との組合せ、酸解離性基と鎖状炭化水素基との組合せがより好ましい。
【0038】
《式(1)中のR4〜R6
4〜R6として例示される炭素数1〜10の鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基が挙げられる。
【0039】
4〜R6として例示される炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
5およびR6のいずれかとR4とが互いに結合して形成される炭素数5〜20の環構造としては、例えば、式(4−1)〜(4−10)で表される基が挙げられ、式(4−5)または(4−8)で表される基がより好ましい。
【0040】
【化6】

式中、*は、式(1)におけるR2が結合する炭素原子との結合部位を示す。
【0041】
《構成単位(1)の含有量》
重合体(A1)において、構成単位(1)の含有量は、全構成単位100モル%に対して、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。構成単位(1)の含有量を前記範囲とすることで、酸発生剤(B)から発生する酸の作用で起こる重合体の主鎖部分および側鎖部分の分解が高頻度で起こり、その結果、モノマーレベルの低分子量化合物まで分解が進む。構成単位(1)の含有量は、1H−NMR分析および13C−NMR分析により測定される。
【0042】
重合体(A1)は、構成単位(1)の他に、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位としては、カチオン重合可能な単量体由来の構成単位であれば特に限定されない。カチオン重合可能な単量体としては、例えば、脂肪族オレフィン、芳香族ビニル、ジエン、シラン類、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体が挙げられる。これらの単量体は、1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0043】
重合体(A1)は、公知のリビングカチオン重合法により合成することができ、例えば特開2010−261000号公報に記載の方法に準じて合成することができる。前記重合法に用いられる触媒系としては、カチオン重合をリビング的に進行させるものであれば特に制限されないが、例えば、特開昭60−228509号公報、特許第3096494号明細書、特公平7−2805号公報、特開昭62−257910号公報、特開平1−108202号公報および特開平1−108203号公報に記載の触媒系を採用することができる。
【0044】
〈重合体(A2)〉
重合体(A2)は、ジエンモノマーと酸素とのラジカル交互共重合により得られる、重合体の主鎖中にペルオキシド構造を有する分解性高分子である。
【0045】
重合体(A2)は、ペルオキシド構造を有することで、加熱処理や光照射処理により酸発生剤(B)から発生する酸の作用により、重合体の主鎖において分解が起こる。その結果、重合体(A2)は、モノマーレベルの低分子量化合物に変換されるので、加熱処理や光照射処理のみでも、重合体(A2)を分解・蒸発・除去することが可能となる。
【0046】
重合体(A2)は、熱または光によってペルオキシド構造部分で分解するので、酸発生剤(B)を用いなくともよいが、当該分解を良好に進めるという観点からは酸発生剤(B)を用いることが好ましい。
【0047】
重合体(A2)は、例えば、ジエンモノマーと酸素とのラジカル交互共重合を、反応開始剤を用いて、大気圧下、0〜50℃の温度範囲で行うことにより合成することができ、例えば国際公開第2004/087791号パンフレットに記載の方法に準じて合成することができる。
【0048】
ジエンモノマーは、ジエンの1位の炭素および/または4位の炭素に、電子吸引性基および/または電子供与性基を有することが好ましい。この構造を有するジエンモノマーは、例えば、ジエンモノマーの3位の炭素および4位の炭素が酸素と新しく結合をつくることによって、ラジカル交互共重合を行うことができる。
【0049】
ジエンモノマーとしては、例えば、ソルビン酸メチルエステル、ソルビン酸エチルエステル、ソルビン酸オクタデシルエステル、ソルビン酸2,2,2−トリフルオロエチルエステル、ソルビン酸アミド、2−トランス−5−メチル−2,4−ヘキサジエン酸エチル、ソルビン酸2−ヒドロキシエチル、ソルビン酸ビニルエステル等のソルビン酸誘導体;2,4−オクタジエン酸メチル、1,4−ジフェニルブタジエン、4−フェニルブタジエンカルボン酸エチル(5−フェニル−2,4−ペンタジエン酸エチル)、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンが挙げられる。これらの中でも、ラジカル交互共重合性の観点から、ソルビン酸誘導体が好ましい。
【0050】
反応開始剤としては、分解してラジカルを発生する開始剤であることが好ましく、例えば、過酸化物系開始剤、有機金属化合物系開始剤、酸化還元系開始剤、アゾ重合開始剤が挙げられ、具体的には、ジイソブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジ−tert−ブチルペルオキシオギザレート、トリエチルホウ素、セリウム塩−アルコールが挙げられる。
【0051】
〈重合体(A)の特性〉
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000〜500,000が好ましく、2,000〜400,000がより好ましい。
【0052】
重合体(A)のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.0がさらに好ましい。
MwおよびMnの測定方法の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0053】
〈重合体(A)の含有量〉
本発明の仮固定材組成物において、重合体(A)の含有量は、溶媒(C)を除いた固形分の通常50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%である。重合体(A)の含有量が前記範囲にあると、支持体から基材を容易に剥離できる点、仮固定材残渣を容易に除去できる点から好ましい。
【0054】
[酸発生剤(B)]
酸発生剤(B)は、熱または光の作用により酸を発生する化合物であり、例えば、熱の作用により酸を発生する化合物(B1)、光の作用により酸を発生する化合物(B2)が挙げられる。以下、これらをそれぞれ「酸発生剤(B1)」および「酸発生剤(B2)」ともいう。酸発生剤(B2)は、酸発生剤(B1)としても通常使用することができる。
【0055】
酸発生剤(B1)としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。
【0056】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩が挙げられる。
【0057】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが挙げられる。これらの中でも、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが好ましい。
【0058】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートが挙げられる。これらの中でも、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートが好ましい。
【0059】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートが挙げられる。これらの中でも、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0060】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが挙げられる。これらの中でも、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0061】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられ、具体的には、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0062】
ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられ、具体的には、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物が挙げられる。
【0063】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物、これらの化合物のα−ジアゾ化合物が挙げられ、具体的には、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンが挙げられる。
【0064】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート類が挙げられ、具体的には、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルp-トルエンスルホネートが挙げられる。
【0065】
ジアゾメタン化合物としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0066】
酸発生剤(B2)としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられ、具体例としては、上述の酸発生剤(B1)として例示した化合物等が挙げられる。
【0067】
酸発生剤(B)は、1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
本発明の仮固定用組成物において、酸発生剤(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常0〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。酸発生剤(B)の含有量が前記範囲にあると、支持体から基材を容易に剥離できる点、仮固定材残渣を容易に除去できる点から好ましい。
【0068】
[溶媒(C)]
本発明の仮固定用組成物の調製には、当該組成物の粘度を塗布に適した範囲に設定する点で、溶媒(C)を用いることが好ましい。溶媒(C)としては、少なくとも重合体(A)、酸発生剤(B)およびその他の成分を溶解可能な溶媒であれば特に限定されず、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒、エステル溶媒、炭化水素溶媒が挙げられる。
【0069】
アルコール溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル溶媒;
が挙げられる。
【0070】
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンが挙げられる。
【0071】
アミド溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンが挙げられる。
【0072】
エステル溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルが挙げられる。
【0073】
炭化水素溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素溶媒;
が挙げられる。
【0074】
溶媒(C)は、1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
溶媒(C)を用いることにより、本発明の仮固定用組成物の粘度を調整することが容易となり、したがって基材または支持体上に仮固定材を形成するのが容易となる。例えば、溶媒(C)は、仮固定用組成物の固形分濃度が通常1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%となる範囲で用いることができる。ここで固形分濃度とは、溶媒(C)以外の全成分の合計濃度である。
【0075】
[その他の成分]
本発明の仮固定用組成物は、必要に応じて、密着助剤;酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素などの金属酸化物粒子;エラストマー成分、酸化防止剤などを含有してもよい。
【0076】
[仮固定用組成物の調製]
本発明の仮固定用組成物の調製には、公知の撹拌混合装置を用いることができる。また、不純物を除く目的で、適宜、濾過を行うこともできる。
【0077】
[仮固定材用組成物の特性]
本発明の仮固定用組成物から形成された仮固定材に、加熱処理および/または光照射処理を行うことにより、重合体(A)が分解して、基材と仮固定材との界面における接着力が低減し、基材を容易に支持体から剥離することができる。また、剥離後の基材に加熱処理および/または光照射処理を行うことにより、仮固定材残渣を除去することができる。
【0078】
上記仮固定材は、重合体(A)の分解温度未満(例えば20〜200℃、好ましくは20〜100℃)において充分な接着力を有し、基材を仮固定することができる。接着力は、例えば剪断接着力で評価される。
【0079】
このように本発明の仮固定材は、重合体(A)の分解温度未満において、基材の処理(加工および/または移動等)時に付加される剪断力に対して充分な剪断接着力を有する。本発明の仮固定材は、25℃近辺で用いられる基材の薄膜化、フォトファブリケーション(例えば、25〜200℃程度での温度範囲で用いられるエッチング加工やスパッタ膜の形成、アニール処理、225〜100℃程度での温度範囲で用いられるメッキ処理)などにおいても、基材を支持体上に保持することができる。
【0080】
本発明の仮固定材用組成物から形成された仮固定材は、このような特性を有することから、現代の経済活動の場面で要求される様々な加工処理(例:各種材料表面の微細化加工処理、各種表面実装、半導体ウエハや半導体素子の運搬)などの際に、基材の仮止め材として好適に用いられる。
【0081】
〔基材の処理方法〕
本発明の基材の処理方法は、(1)上記特定の重合体(A)を含有する仮固定材を介して、支持体上に基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、ならびに(3)支持体から基材を剥離する工程を有する。
【0082】
[工程(1)]
工程(1)では、例えば、(1-1)支持体および/または必要に応じて表面処理した基材の表面に仮固定材(仮固定材層)を形成し、前記仮固定材を介して基材と支持体とを貼り合せることにより、あるいは(1-2)支持体の表面に仮固定材(仮固定材層)を形成し、前記仮固定材上に基材を形成することにより、基材を支持体上に仮固定することができる。このようにして形成される積層体は、支持体/仮固定材(仮固定材層)/基材という構成を有する。
【0083】
上述の仮固定材層の形成方法としては、例えば、(i)本発明の仮固定材用組成物を用いて、仮固定材層を、支持体上および/または基材上に直接形成する方法、(ii)本発明の仮固定材用組成物を用いて、仮固定材層を、離型処理が施されたPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム上に一定膜厚で成膜した後、支持体および/または基材へラミネート方式により転写する方法が挙げられる。膜厚均一性の点から、上記(i)の方法が好ましい。
【0084】
仮固定用組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、インクジェット法が挙げられる。スピンコート法では、例えば、回転速度が300〜3,500rpm(好ましくは500〜1,500rpm)、加速度が500〜15,000rpm/秒、回転時間が30〜300秒という条件のもと、仮固定用組成物をスピンコーティングする方法が挙げられる。
【0085】
仮固定用組成物を塗布して塗膜を形成した後は、例えば、ホットプレート等でベークして、溶媒を蒸発させることによって、仮固定材を形成することができる。ベーキングの条件は、例えば、温度が通常50〜150℃、好ましくは50〜100℃であり、時間が通常2〜15分、より好ましくは3〜10分である。
【0086】
上記仮固定材は、重合体(A)を含有し、さらに酸発生剤(B)を含有することが好ましい。これらの重合体(A)および酸発生剤(B)の例示および好適態様については、〔仮固定用組成物〕の欄に詳述したとおりである。
【0087】
上記(i)の方法において、基材と支持体とを貼り合せる方法としては、例えば、基材および支持体のいずれか一方または双方に仮固定材層を形成して、両者を貼り合せる方法が挙げられる。この際の温度は、各仮固定用組成物の含有成分、塗布方法等に応じて適宜選択される。このようにして、基材が支持体上に仮固定材層を介して強固に保持される。基材と支持体との圧着条件は、例えば、20〜100℃で1〜5分間、0.5〜30kgf/cm2である。
【0088】
加工(移動)対象物である前記基材としては、例えば、半導体ウエハ、半導体チップ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔、研磨パッド、樹脂塗膜が挙げられる。半導体ウエハやチップには、通常は絶縁膜などが形成されている。樹脂塗膜としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ;具体的には、感光性材料から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層などが挙げられる。
【0089】
支持体としては、ガラスやシリコンなどの取扱いが容易で且つ硬くて平坦な面を有する基板が挙げられる。工程(3)では光照射をする態様もあるため、支持体としてはガラス基板、石英基板などの透明基板が好ましい。
【0090】
仮固定材層を基材上に形成するに際して、仮固定材の面内への広がりを均一にするため、基材表面を予め表面処理することもできる。表面処理の方法としては、基材表面に予め表面処理剤を塗布する方法などが挙げられる。
【0091】
上記表面処理剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのカップリング剤が挙げられる。
【0092】
積層体における仮固定材層の厚さは、基材の仮固定面のサイズ、加工処理などで要求される密着性の程度に応じて任意に選択することができる。積層体における仮固定材層の厚さは、通常0.1μmを超えて2mm以下、好ましくは0.1μmを超えて1mm以下、より好ましくは0.1μmを超えて0.5mm以下である。仮固定材層の厚さが前記範囲にあると、保持力が充分であり、仮固定面からの基材の剥がれが生じることもない。
【0093】
[工程(2)]
工程(2)は、上記のように支持体上に仮固定された基材を加工し、および/または得られた積層体を移動する工程である。移動工程は、積層体をある装置から別の装置へ支持体とともに移動する工程である。また、上記のようにして支持体上に仮固定された基材の加工処理としては、例えば、基材の薄膜化(例:裏面研削);エッチング加工、スパッタ膜の形成およびメッキ処理などから選ばれる一以上の処理を含むフォトファブリケーションが挙げられる。
【0094】
特にフォトファブリケーションにおいては、基材が高温環境下に曝されることがある。例えば複数のチップをパッケージ内で積層して実装する所謂三次元実装などでは、ウエハまたはチップを支持体に仮固定して、例えばウエハまたはチップの加工(例:貫通孔形成、バンプ形成、再配線、ウエハの薄膜化)や、チップの積層(例:メッキをメルトフローさせ、チップ間を電気的に接続する)を行う。
【0095】
基材の加工処理は、仮固定材の保持力が失われない温度で行えば特に限定されない。
以下では、基材の加工処理として、三次元実装の際に行われる加工処理を一例として説明する。三次元実装では、基材の表面に対して垂直方向に延びる貫通電極を形成し、その貫通電極の端部や配線上に、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。このようにして形成された接続用電極同士を接続することで、積層した基材相互間を接続する。
【0096】
(i)工程(1)で仮固定材を介して支持体上に仮固定された基材上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、所定の形状にパターニングされたレジスト層を形成する。例えば、円形状のレジストパターンを基材上に複数形成すればよい。
【0097】
(ii)レジスト層をマスクとして、基材の所定形状にパターニングされた部分をエッチングし、開口部(ホール)を形成する。その後、レジスト層を剥離液あるいはアッシング(例:O2アッシング)などにより剥離する。エッチングにはドライエッチングやウェットエッチングを使用することができる。
【0098】
(iii)基材の開口部を形成した面上に、SiO2などからなる絶縁層を形成する。
(iv)絶縁層への導体の拡散を防ぐ目的で、TiWおよびTiNなどからなるバリア層をスパッタにより形成する。次に、銅などからなるシード層をスパッタにより形成する。
【0099】
(v)基材の開口部を形成した面上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、基材の開口部に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。次に、メッキ処理(Sn/Cuメッキなど)を施して、基材の開口部に導体を充填し、貫通電極を形成する。その後、レジスト層を除去し、バリア層およびシード層をドライエッチングにより除去する。
【0100】
(vi)このようにして加工処理がなされた基材の貫通電極上に、リフローにより、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。次に、形成された接続用電極同士を接続することで、積層した基材相互間を接続することができる。
【0101】
[工程(3)]
基材の加工処理または積層体の移動後は、支持体から基材を剥離する。
工程(3)では、下記工程(3-1)および/または(3-2)を行うことが好ましい。
(3-1)前記支持体から前記基材を剥離し、その後に、剥離後の基材に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程、および/または(3-2)前記積層体に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行い、支持体から基材を剥離する工程。
【0102】
工程(3-1)および(3-2)を共に行う工程でもよく、すなわち前記積層体に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行い、支持体から基材を剥離した後に、さらに、剥離後の基材に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程であってもよい。
【0103】
なお、剥離処理を行う際には、上述の加熱処理や光照射処理を行った後に剥離処理を行ってもよく、上述の加熱処理や光照射処理を行いながら剥離処理を行ってもよい。
加熱処理では、加熱温度は通常50〜300℃、好ましくは50〜250℃であり、加熱時間は通常0.5〜5分、好ましくは1〜3分である。加熱処理は、重合体(A)の分解が充分に進行する温度で行うことが好ましい。
【0104】
光照射処理では、紫外線が好ましく用いられる。紫外線としては、通常10〜380nm程度の波長の紫外線が採用され、150〜380nm程度の波長の近紫外線が特に好ましい。照射光の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、レーザーが挙げられ、これらの中でも高圧水銀灯が好ましく用いられる。照射条件は光源等の種類によって異なるが、高圧水銀灯の場合は、照射量は通常100〜10,000mJ/cm2、好ましくは1,000〜8,000mJ/cm2である。
【0105】
工程(3-1)では、支持体から基材を剥離し、その後に、剥離後の基材に対して、上述の条件で加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行うことによって、剥離後の基材上の仮固定材残渣を除去することができる。
【0106】
工程(3-2)では、積層体に対して、上述の条件で加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行うことによって、支持体から基材を剥離することができ、また基材上の仮固定材残渣も同時に除去することができる。ここでの加熱処理、光照射処理の条件は、例えば剪断力0.01〜5N/cm2の剪断処理により支持体から基材を剥離できるよう、上述した加熱処理、光照射処理の条件(加熱温度、加熱時間、照射量等)を設定すればよい。
【0107】
剥離処理としては、例えば、支持体と基材とをその仮固定面(支持体の表面)に略水平方向にずらすなどの剪断処理(通常0.01〜5N/cm2)により、支持体から基材を剥離する方法、支持体の表面に対して垂直方向に基材を剥離する方法が挙げられる。
【0108】
より具体的には、基材を支持体の表面に対して水平方向にスライドさせると同時に、支持体を固定する、あるいは前記基材に付加される力に拮抗する力を支持体に付加することによって、基材を支持体から剥離する方法が挙げられる。なお、本発明において「剪断」とは、支持体と基材との仮固定面の略平行方向に力を作用させることをいう。
【0109】
なお、本発明では、上述の加熱処理や光照射処理によって仮固定材残渣が除去され、洗浄に有機溶媒を用いる必要がないため、基材が有する層間絶縁膜等の損傷を防ぐことができる。
【0110】
〔半導体装置〕
本発明の半導体装置は、基材を、本発明の基材の処理方法によって加工して得られる。上述の仮固定材は半導体素子等の半導体装置の剥離時に容易に除去され、また仮固定材残渣の除去において有機溶媒の使用を回避することができるため、前記半導体素子等の半導体装置は仮固定材による汚染(例:シミ、焦げ)や層間絶縁膜等の損傷が極めて低減されたものとなっている。
【実施例】
【0111】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において特に言及しない限り、「部」および「%」は「質量部」および「質量%」を意味する。
【0112】
1.重合体の評価
1−1.分子量の測定
重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、東ソー(株)製のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を使用し、以下の条件により測定した。
・流量:1.0mL/分
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.2質量%
・試料注入量:100μL
・検出器:示差屈折計
・標準物質:単分散ポリスチレン
また、分散度(Mw/Mn)は、MwおよびMnの測定結果より算出した。
【0113】
1−2.NMR
1H−NMR分析および13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、JNM−EX270)により行った。なお、ベンズアルデヒド由来の構造の含有量は、1H−NMRを用い、芳香環の水素のピークとその他のピークとの面積比より求めた。また、ミルナールアルデヒド由来の構造の含有量は、ミルテナールの水素のピークとその他のピークとの面積比より求めた。
【0114】
2.重合体の合成
重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。また、合成した重合体の特性を表1に示す。表1中の「−」は、該当する構成単位の含有量の測定を行っていないことを示す。
【0115】
【化7】

【0116】
[合成例1]重合体(A−1)の合成
反応容器にトルエン2.96mL、1,4−ジオキサン0.43mL、化合物(M−1)0.3g(50モル%)、および化合物(M−2)0.3g(50モル%)を順次加えた。その後、エタンスルホン酸の200mMジクロロメタン溶液をトルエンで希釈した40mM溶液0.5mL、および塩化ガリウムの40mM溶液0.5mLを−78℃にて加え、48時間反応させた。次に、アンモニア性メタノール溶液を用いて反応を停止し、重合体(A−1)を得た。1H−NMR分析(CDCl3溶媒)の結果、化合物(M−2)由来の構成単位の含有量は47モル%であった。
【0117】
[合成例2]重合体(A−2)の合成
反応容器にトルエン2.96mL、1,4−ジオキサン0.43mL、化合物(M−3)0.36g(50モル%)、化合物(M−2)0.3g(50モル%)を順次加えた。その後、エタンスルホン酸の200mMジクロロメタン溶液をトルエンで希釈した40mM溶液0.5mL、エタンスルホン酸の200mMジクロロメタン溶液をトルエンで希釈した40mM溶液0.5mL、および四塩化スズの40mM溶液0.5mLを−20℃にて加え、20時間反応させた。次に、アンモニア性メタノール溶液を用いて反応を停止し、重合体(A−2)を得た。1H−NMR分析(CDCl3溶媒)の結果、化合物(M−2)由来の構成単位の含有量は43モル%であった。
【0118】
[合成例3]重合体(A−3)の合成
窒素フロー下において、トルエン中に(全体の系を5mLとして)、1,4−ジオキサン0.50mL、化合物(M−4)0.1g(20モル%)、化合物(M−1)0.1g(30モル%)、化合物(M−2)0.2g(50モル%)、CH3CH(iBu)OCOCH3の40mMトルエン溶液0.50mL、エタンスルホン酸の200mMジクロロメタン溶液をトルエンで希釈した40mM溶液0.5mLをこの順に加え、最後に塩化ガリウムの40mMトルエン溶液0.50mLを加えて、30℃においてリビングカチオン重合を2.5時間行った。次に、アンモニア性メタノール溶液を用いて反応を停止し、重合体(A−3)を得た。1H−NMR分析(CDCl3溶媒)の結果、化合物(M−2)由来の構成単位の含有量は43モル%であった。
【0119】
[合成例4]重合体(A−4)の合成
窒素フロー下において、トルエン中に(全体の系を5mLとして)、化合物(M−5)0.19g(20モル%)、化合物(M−6)0.12g(30モル%)、化合物(M−7)0.28g(50モル%)、1,4−ジオキサン0.50mL、CH3CH(iBu)OCOCH3の40mMトルエン溶液0.50mL、エタンスルホン酸の200mMジクロロメタン溶液をトルエンで希釈した40mM溶液0.3mLをこの順に加え、最後にFeCl3の200mMトルエン溶液0.50mLを加えて、0℃において重合を5時間行った。次に、アンモニア性メタノール溶液を用いて反応を停止し、重合体(A−4)を得た。1H−NMR分析(CDCl3溶媒)の結果、化合物(M−7)に由来するオレフィンユニットから計算される、化合物(M−7)由来の構成単位の含有量は50モル%であった。
【0120】
[合成例5]重合体(A−5)の合成
窒素フロー下において、トルエン中に(全体の系を5mLとして)、化合物(M−5)0.19g(20モル%)、化合物(M−6)を0.12g(30モル%)、化合物(M−8)(シンナムアルデヒド)0.25g(50モル%)、CH3CH(iBu)OCOCH3のトルエン溶液(40mM)0.50mLをこの順に加え、最後にFeCl3のトルエン溶液(200mM)0.50mLを加えて、0℃において反応を5時間行い、アンモニア性メタノール溶液を用いて反応を停止し、重合体(A−5)を得た。1H−NMR分析(CDCl3溶媒)の結果、化合物(M−8)由来の構成単位の含有量は40モル%であった。
【0121】
[合成例6]重合体(A−6)の合成
化合物(M−9)1gと、ジイソブチルパーオキサイド0.03gと、ジクロロメタン4.5gとを50mLのナス型フラスコに入れ、シリンジ針を用いて酸素を吹き込みながら、恒温槽(30℃)中にて12時間重合を行った。なお、反応中揮発するジクロロメタンは溶液量が5mlに保たれる様に随時補充した。反応後の重合混合物を400gのn−ヘキサン中に注ぎ、沈澱させることにより、下記構成単位を有する重合体(A−6)を得た。
【0122】
【化8】

【0123】
[合成例7]重合体(A−7)の合成
合成例6において、化合物(M−9)1gを化合物(M−10)1gに置き換えたこと以外は合成例6と同様の方法にて合成を行い、下記構成単位を有する重合体(A−7)を得た。
【0124】
【化9】

【0125】
【表1】

【0126】
3.仮固定用組成物の調製
[実施例1]
重合体(A−1)50部、重合体(A−2)50部、下記構造の酸発生剤(B−1)10部、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(C−1)700部およびテトラヒドロフラン(C−2)200部を混合し、得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、仮固定用組成物を調製した。
【0127】
[実施例2〜9]
実施例1において、配合組成を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、仮固定用組成物を調製した。
【0128】
【表2】

【0129】
【化10】

【0130】
4.仮固定用組成物の評価
得られた仮固定用組成物を用いて下記評価を行った。
【0131】
4−1.接着性
4インチガラスウエハ上に仮固定用組成物をスピンコート塗布してガラスウエハ表面に5μm厚みの仮固定材層を形成した。シリコンウエハを縦1cm、横1cmの大きさに切断して得られたチップを、仮固定材層を形成したガラスウエハに、仮固定材層を介して重ね合わせた。その後、ダイボンダー装置を用いて、80℃、5Kgf/cm2、2分の条件で圧着し、ガラスウエハ、仮固定材層およびチップをこの順に備える、剪断接着力の評価用基板を準備した。万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、剪断接着力の評価用基板の25℃での仮固定材の剪断接着力を測定した。剪断力はガラスウエハと平行方向に、500μm/秒の速度で加えた。評価基準は以下のとおりである。結果を表2に示す。
A:剪断接着力が100N/cm2より大きい。
B:剪断接着力が10〜100N/cm2である。
C:剪断接着力が10N/cm2未満である。
【0132】
4−2.耐熱性
上記「(A)接着性」評価で準備した同じ評価用基板を、万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、剪断接着力が0.5N/cm2まで低下する温度を測定した。
【0133】
4−3.残渣の有無
4インチガラスウエハ上に仮固定用組成物をスピンコート塗布してガラスウエハ表面に5μm厚みの仮固定材層を形成した。シリコンウエハを縦1cm、横1cmの大きさに切断して得られたチップを、仮固定材層を形成したガラスウエハに、仮固定材層を介して重ね合わせた。その後、ダイボンダー装置を用いて、80℃、5Kgf/cm2、2分の条件で圧着し、ガラスウエハ、仮固定材層およびチップをこの順に備える、積層体を準備した。
【0134】
上記積層体に対して、表3の「加熱および剥離処理、または光照射および剥離処理」に示す条件にて当該処理を行い、剥離後のチップを得た。得られたチップに対して、表3の「残渣除去処理」に示す残渣除去処理を行い、仮固定材の残渣量を重量法により計測(剥離処理前後の質量差と仮固定材層の質量とから算出)した。ただし、実施例17では、残渣除去処理を行わなかった。
【0135】
評価基準は以下のとおりである。
A:仮固定材の残渣量が仮固定層質量の0.1%未満である。
B:仮固定材の残渣量が仮固定層質量の0.1%以上である。
【0136】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)を含有する仮固定材を介して、支持体上に基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、
(2)前記基材を加工し、および/または前記積層体を移動する工程、ならびに
(3)支持体から基材を剥離する工程
を有する、基材の処理方法。
【請求項2】
前記重合体(A)が、式(1)で表される繰返し構成単位を有する重合体(A1)、およびジエンモノマーと酸素とのラジカル交互共重合により得られる重合体(A2)から選ばれる少なくとも1種である請求項1の基材の処理方法。
【化1】

[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり;R3は、単結合または炭素数1〜10の二価の鎖状炭化水素基であり;R4〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、但し、R4〜R6の少なくとも1つは、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり;R5およびR6のいずれかとR4とが互いに結合して炭素数5〜20の環構造を形成してもよく;Xは、ハロゲン原子または一価の基である。]
【請求項3】
前記仮固定材が、さらに、熱または光の作用により酸を発生する化合物(B)を含有する請求項1または2の基材の処理方法。
【請求項4】
前記工程(3)が、(3-1)前記支持体から前記基材を剥離し、その後に、剥離後の基材に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程、および/または(3-2)前記積層体に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行い、支持体から基材を剥離する工程
を有する請求項1〜3のいずれか一項の基材の処理方法。
【請求項5】
基材を、請求項1〜4のいずれか一項の基材の処理方法によって加工して得られる半導体装置。
【請求項6】
アセタール構造を含む繰返し構成単位およびペルオキシド構造を含む繰返し構成単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し構成単位を有する重合体(A)を含有する仮固定用組成物。
【請求項7】
前記重合体(A)が、式(1)で表される繰返し構成単位を有する重合体(A1)、およびジエンモノマーと酸素とのラジカル交互共重合により得られる重合体(A2)から選ばれる少なくとも1種である請求項6の仮固定用組成物。
【化2】

[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり;R3は、単結合または炭素数1〜10の二価の鎖状炭化水素基であり;R4〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、但し、R4〜R6の少なくとも1つは、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり;R5およびR6のいずれかとR4とが互いに結合して炭素数5〜20の環構造を形成してもよく;Xは、ハロゲン原子または一価の基である。]
【請求項8】
さらに、熱または光の作用により酸を発生する化合物(B)を含有する請求項6または7の仮固定用組成物。

【公開番号】特開2013−98305(P2013−98305A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238888(P2011−238888)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】