説明

基材の表面改質方法、シール部材、及びそのシール部材を備えた車両支持用ハブユニット

【課題】低摩擦性及び低摩耗性を有する基材の表面改質方法、高密閉性を実現するシール部材、及びそのシール部材を備えた低トルク性を実現する車輪支持用ハブユニットを提供する。
【解決手段】カーボンブラックを含有する高分子化合物を有する基材を、大気圧雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことによって、基材の表面にイオンが照射されて、ダイヤモンド結合やグラファイト結合の炭素を有する低摩擦性及び低摩耗性を備えた表面に改質される。また、基材の表面に被膜を形成しないため、成膜のための真空設備を必要とせず、基材の表面を直接改質するため、装置及び処理に要するコストを低減し、被膜が剥がれることがないので耐久性が高い効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両(自動車)の車輪を懸架装置に支持するため車輪支持用ハブユニットの開口端部を塞ぐシール部材、及びそのシール部材を構成する基材の表面改質方法、並びに前記シール部材を備えた車輪支持用ハブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高分子化合物からなる基材の表面に低摩擦能を付与する技術として、特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示された技術は、高分子化合物からなる基材を、メタン−アルゴン混合ガスを用いるCVDプラズマ処理に供して、炭素中間層膜を形成させる工程と、炭素中間層膜を形成させた前記基材を、炭化水素含有ガスを用いるCVDプラズマ処理に供して、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成させる工程とを含む方法により、前記基材の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を形成する技術である。特許文献1では、この方法により形成されたDLC層が、その本来の優れた諸特性(超硬度、低摩擦性、高い耐摩耗性、高い耐食性、凝着防止性など)を備えているのみならず、基材に対する高度の密着性を発揮し、DLC層を設けた高分子材料の応用分野を大幅に拡大することができると説明されている。
【0003】
また、車両(自動車)の車輪を懸架装置に支持するための車輪支持用ハブユニットに組み込まれるシール部材は、図4及び5に示すように2種類のものが知られている。
図4に示すように、2種類のシール部材のうちの一方のシール部材114aは、芯金115と、スリンガ116と、シール部材117とを備えている。芯金115は、外輪101の端部内周面に嵌合される芯金円筒部118と、当該芯金円筒部118の軸方向内側の端部から径方向内側に延出する芯金環状板部119とを備えて、断面略L字形状で形成される。
なお、ここでいう軸方向とは図の左右方向、径方向とは図の上下方向を示している。
【0004】
また、スリンガ116は、芯金115に対向するように配され、内輪105の端部外周面に嵌合されるスリンガ円筒部120と、当該スリンガ円筒部120の軸方向外側の端部から径方向外側に延出するスリンガ環状板部121とを備え、断面略L字形状で形成される。
そして、シール部材117は、前記芯金115の軸方向外側の周面及び端面に固着され、シール部材の先端が、前記スリンガ116のスリンガ円筒部120の外周面、及びスリンガ環状板部121の軸方向内側の端面に摺接する。
これにより、転動体103が配される環状空間の開ロ部一端を塞いでいる。
【0005】
さらに、図5に示すように、2種類のシール部材のうちの他方のシール部材114bは、芯金125とシール部材126とから構成される。このうちの芯金125は、外輪101の軸方向外側の端部内周面に歓合される芯金円筒部125aと、当該芯金円筒部125aの軸方向外端緑(図5の左端縁)から径方向内側に折れ曲がった、断面略S字形で全体を円環状に形成された支持板部125bとを備えている。
【0006】
また、前記シール部材126は、例えばゴムなどの樹脂弾性体より形成されて、前記芯金125の軸方向外側の周面に固着されている。そして、前記シール部材126の先端部(シールリップ)は、車輪支持用ハブユニットを車輪に取付ける取付フランジ109の基端部内側面から当該基端部内側面とハブ本体104の中間部外周面まで、全周に亙って摺接されている。
上述のようなシール部材が組み込まれる車輪支持用ハブユニットには、外部からの雨水や水道水、泥水などの浸入を防ぐ密封性と、耐摩耗性、低トルクなどの機能が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−002377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、基材に低摩擦能を付与するために当該基材の表面に被膜(DLC層)を形成する手段を採用しているため、その被膜が剥離してしまい、結果として低摩擦能の減衰を招来させる可能性がある。
また、特許文献1に記載された技術では、被膜形成のための大規模な設備を必要とするため、製造コストを増大させる。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、低摩擦性及び低摩耗性を有する基材の表面改質方法、高密閉性を実現するシール部材、及びそのシール部材を備えた低トルク性を実現する車輪支持用ハブユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、炭素を含む高分子化合物からなる基材の表面を、大気圧近傍の圧力雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことにより、低摩擦性及び低摩耗性を備えた表面に改質することを知見した。
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、上記課題を解決するための本発明の請求項1に係る基材の表面改質方法は、カーボンブラックを含有する高分子化合物を有する基材を、大気圧雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことを特徴としている。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、炭素を含む高分子化合物からなる基材を、大気圧近傍の圧力雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことによって、基材の表面にイオンが照射されて、ダイヤモンド結合やグラファイト結合の炭素を有する、低摩擦性及び低摩耗性を備えた表面に改質される。
具体的には、表面が改質された基材は、その改質された表面の層において、炭素と高分子化合物との強固な結合が継承されることから、被膜(DLC層)に見られるような被膜と基材との界面における剥離や、内部応力を原因とした剥離が発生しない。また、基材の変形に対して追従性がよく、DLC層を表面に被膜した基材を変形させたときに発生するようなひび割れが発生しない。
【0011】
また、基材の表面に被膜を形成しないため、成膜のための真空設備を必要とせず、基材の表面を直接改質するため、装置及び処理に要するコストを低減し、被膜が剥がれることがないので耐久性が高い効果を奏する。
また、請求項2に係る基材の表面改質方法は、請求項1に記載の基材の表面改質方法において、大気、希ガス、炭化水素ガス、水素ガス、及び窒素ガスのうち少なくとも1つを前記雰囲気に導入し、プラズマを発生させることを特徴としている。
【0012】
また、請求項3に係るシール部材は、互いに相対回転する内輪相当部材の外周面と外輪相当部材の内周面との間に存在する環状空間を塞ぐシールリップを備えたシール部材において、前記シールリップのうち少なくとも前記内輪相当部材と摺動する部分が、前記請求項1又は2に記載の基材の表面改質方法によって作製された基材よりなることを特徴としている。
請求項3に係る発明によれば、大気圧近傍の圧力雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことによって低摩擦性、高耐久性及び耐候性に優れた表面に改質された基材をこれらの能力を必要とするシールリップに適用することができる。
【0013】
また、請求項4に係る車輪支持用ハブユニットは、内周面に外輪軌道を有する外輪相当部材と、外周面に内輪軌道を有する内輪相当部材と、当該外輪軌道と当該内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、前記外輪相当部材の内周面と前記内輪相当部材の外周面との間に存在する環状空間の端部開口を塞ぐシール部材と、を備えた車輪支持用ハブユニットにおいて、
前記シール部材が、前記請求項3に記載のシール部材であることを特徴としている。
請求項4に係る発明によれば、大気圧近傍の圧力雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことによって低摩擦性、高耐久性及び耐候性に優れた表面に改質された基材を車輪支持用ハブユニットのシールリップとして適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低摩擦性及び低摩耗性を有する基材の表面改質方法、高密閉性を実現するシール部材、及びそのシール部材を備えた低トルク性を実現する車輪支持用ハブユニットを提供することができる。
また、真空引きした環境下においてプラズマによる基材の表面の改質処理をする従来工法に比べて真空引きのための装置類を排除でき、大気圧下にて処理を行えるため、容易に、かつ省スペースにて安価にプラズマによる基材の表面の改質が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車輪支持用ハブユニットの構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るシール部材を示す、図1のA部の拡大要部断面図である。
【図3】本発明に係る別のシール部材を示す、図1のB部の拡大要部断面図である。
【図4】従来例を示す車輪支持用ハブユニットに組込まれるシール部材の要部断面図である。
【図5】従来例を示す車輪支持用ハプユニットに組込まれる、別のシール部材の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る基材の表面改質方法の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態は、カーボンブラックを含有する高分子化合物を有する基材を、大気圧雰囲気下で発生させたプラズマに曝す工程を含む。
改質処理は大気圧(例えば、90kPa〜200kPa)の雰囲気で行われる。このような環境下で行うことで、装置及び処理に要するコストを低減するだけでなく、大気圧下での処理が容易で、密度の高いプラズマが得やすい。プラズマの発生条件としての雰囲気圧力が高いほど高い電圧が必要なことから、200kPa以上の圧力での処理では生産コストが増大するので好ましくない。
ここで、雰囲気に導入するガスは、希ガスを用いると、プラズマが発生しやすい点で好ましく、大気(雰囲気物質としての大気)及び窒素ガスを用いると、コストを低減させる点で好ましく、炭化水素ガス及び水素ガスを用いると、その還元作用によって材料表面が酸化しない点で好ましい。
【0017】
また、基材にはカーボンブラックが0.01wt%〜60wt%の含有量(基材重量比)で含まれることが好ましい。カーボンブラックの含有量を0.01wt%〜60wt%としたのは、炭素がダイヤモンド結合やグラファイト結合に改質されやすくするためであり、基材に含まれるカーボンブラックの含有量が60wt%超であると、基材のゴム弾性が失われ、耐久性が低下するので好ましくない。
なお、改質処理は、高周波パルス電力を対向する電極間に印加して、電極間に発生させたプラズマに基材を通して処理すると、高密度なプラズマに材料を直接曝すことができるので処理時間が短く、また、複雑な形状の材料を処理することができるので好ましい、
【0018】
また、他の改質処理として、高周波パルス電力を対向する電極間に印加して、電極間にプラズマを発生させると共に、電極同士の隙間に一定方向のガスを流し、下流側に設置した基材にプラズマを吹き付ける方法を用いると、処理する材料が電極から離れているため、電極から発生する磁界や電界による材料へのダメージがなく、好ましい。
このように、本実施形態によれば、成膜のための真空設備を必要とせず、基材の表面を直接改質するため、装置及び処理に要するコストを低減し、被膜が剥がれることがないので耐久性が高いという効果を奏する。
また、本実施形態で表面が改質された基材は、低摩擦性だけでなく、高耐久性及び耐候性に優れているので、これらの能力を必要とする部品や、製品に適用することができる。
また、本実施形態は、低コストでインライン化が可能な表面改質技術なので、大量生産品にも適用することができる。
【0019】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るシール部材及びそのシール部材を備えた車輪支持用ハブユニットの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1は本発明に係るシール部材を用いた車輪支持用ハブユニット断面図、図2は本発明の実施形態であるシール部材の要部断面図、図3は本発明の実施形態である、他方のシール部材の要部断面図である。
【0020】
図1は、本発明に係るシール部材を備えた車輪支持用軸受装置の1例として、車両(自動車)の駆動輪を懸架装置に回転自在に支持するための構造を示している。
当該車輪支持用軸受装置は、外輪相当部材に相当する外輪1と、内輪相当部材に相当するハブ2と、複数の転動体である玉3,3とから構成される。このうちハブ2は、ハブ本体4と内輪素子5とを組み合わせて構成される。
【0021】
また、玉3、3は、外輪1の内周面に形成された複列の外輪軌道6,6と、ハブ2の外周面に形成された複列の内輪軌道7,7との間に、それぞれ複数個ずつ、転動自在に配されている。
このような車輪支持用ハブユニットでは、玉3,3が配される環状空間13にグリースが充填され、これら玉3,3の転動面と、外輪軌道6,6及び内輪軌道7,7との転がり接触部を潤滑している。また、外輪1の両端部内周面と、内輪素子5の軸方向外側の端部外周面及びハブ本体4の軸方向中間部外周面との間には、それぞれシール部材14a,14bが配設され、環状空間13の両端開口部が塞がれている。
【0022】
これらシール部材14a,14bのうち、環状空間13の軸方向外側で等速ジョイント11側に位置する開口部(図1の右側)を塞ぐシール部材14aは、図2に示すように構成される。即ち、当該シール部材14aは、芯金15と、スリンガ16と、シール部材17とから構成される。
シール部材17は、例えばゴムなどの樹脂弾性体より形成されて、先端部に3本のシールリップ22,23,24を備え、当該3本のシールリップ22,23,24は基端部で芯金15に固着されている。これらのシールリップはそれぞれ、スリンガ16と全周に亙って摺接させている。
【0023】
ここで、シール部材17の先端部に設けられたシールリップ22,23,24は、シール部材17を基材として、上述した表面改質方法を用いて大気圧近傍の圧力下でプラズマに曝されることにより表面処理されている。この表面改質方法においては、シール部材17の表面全体に表面改質処理を施してもよいし、シール部材17のシールリップ22,23,24の部分を選択的に表面改質処理してもよい。
【0024】
一方、取付フランジ9の基端部に位置する、環状空間13の他端の開ロ部を塞ぐシール部材14bは、図3に示すように構成され、芯金25とシール部材26とから構成される。シール部材26は、例えばゴムなどの樹脂弾性体により形成されて、3本のシールリップ27,28,29を備え、芯金25にその基端部が固着されている。そして、これらのシールリップの先端縁はそれぞれ、取付フランジ9と全周に瓦って摺接させている。
【0025】
ここで、シール部材14bの先端部に設けられたシールリップ27,28,29も、シール部材14bを基材として、上述した表面改質方法を用いて大気圧近傍の圧力下でプラズマに曝されることにより表面処理されている。この表面改質方法においては、シール部材14bの表面全体に表面改質処理を施してもよいし、シール部材14bのシールリップ27,28,29の部分を選択的に表面改質処理してもよい。
したがって、本実施形態によれば、シールリップとそれに摺接する部材との間の摩擦が低く、ゴムなどの樹脂弾性体により形成されたシールリップの耐摩耗性が高いため、外部に泥水などが存在する環境においても、長期間、高い密封性と低トルクを同時に実現でき、高機能な車輪支持用ハブユニットが得られる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
以下、カーボンブラックを20wt%含有する板状のニトリルゴムからなる基材の表面を、大気圧プラズマで改質し、摩擦試験を行った例について説明する。
まず、空気に高周波電力を印加して電離させ、板状のニトリルゴムにプラズマを吹き付けて表面の改質を行った。プラズマ発生口と基材の表面との距離は2cmであり、5分間処理を行った。
【0027】
その後、直径3/8inchのSUJ2鋼球を相手材とし、ストローク長さ30mm、速さ50mm/sec、荷重2kgで、試料上を無潤滑で揺動させた。
その際のニトリルゴムのみの試料、ニトリルゴムにDLCを成膜した試料、プラズマによりニトリルゴムの表面改質を行った試料の摩擦係数を表1に示す。表1に示すように、プラズマによりニトリルゴムの表面改質を行った試料の摩擦係数は、未処理のニトリルゴムと比べて半分程度であり、DLCを成膜した試料と同等であった。
【0028】
【表1】

【0029】
(実施例2)
以下、大気圧プラズマにより表面を改質した円筒状のニトリルゴム(カーボンブラックを20wt%含有)の耐久性を評価した例について説明する。
まず、空気に高周波電力を印加して電離させ、円筒状のニトリルゴム(φ10mm、長さ15mm)にプラズマを吹き付けて表面改質を行った。プラズマ発生ロと試料の表面との距離は2cmであり、5分間処理を行った。その後、SUJ2の板材(算術平均粗さRa:0.1μm)を相手材とし、ストローク長さ30mm、速さ50mm/sec、荷重2kgで、グリ−ス潤滑により摺動させた。なお、円筒状ニトリルゴムの円周面を板材と線接触させて試験を行った。
【0030】
表2に、ニトリルゴムにDLCを成膜した試料とニトリルゴムにプラズマによる表面改質を行った試料の潤滑寿命比を示す。表2では、摩擦係数0.4(未処理のニトリルゴムの摩擦係数)を超えるまでの摺動回数を潤滑寿命比とし、ニトリルゴムにDLCを成膜した試料の潤滑寿命を1とした。プラズマによる表面改質を行った試料は、DLCを成膜した試料と同等の摩擦係数を示し、潤滑寿命はDLCの100倍以上を示す結果が得られた。
【0031】
【表2】

【0032】
(実施例3)
以下、上記第2の実施形態に則した好適な実施例について説明する。
ニトリルゴムからなるシール部材のシールリップに、表3に示す条件で、表面改質処理を施し、シール単体回転試験機に組み込んで、泥水に曝しつつ回転試験を行った。試験条件は以下の通りである。
<試験条件>
内径:60mm
回転速度:1000rpm
回転時間:72時間
偏心:0.5mmTIR
泥水への曝露条件:毎分2リットルを放水(放水10秒−停止20秒のサイクルの繰り返し)
回転試験の結果を表3に示す。なお、表3中の摩耗量及びトルクは、実施例1の摩耗量及びトルクを1としたときの相対値である。また、密封性は、シール部材に塗布したグリース中に含まれる試験後の水分量が1%以下であれば○(良好)、2%以上であれば×(不良)とした。
【0033】
【表3】

【0034】
表3に示すように、本発明の表面改質方法を施したシール部材では、摩耗量が低く、このシール部材を備えた車両支持用ハブユニットでは、トルクが低いことがわかる。
また、シールリップの摩耗が抑えられたことで、初期の密封性が維持され、泥水の浸入がないこともわかる。
以上のように、本実施形態を用いることで、低トルク及び高密封性を兼ね備えた車輪支持用ハブユニットを得ることができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、車輪支持用ハブユニットに適用したシール部材について説明したが、高熱環境下、高負荷環境下などの過酷な環境下で本発明を適用したシール程、顕著な効果を奏する。具体的には、高温環境下に晒される鉄鋼用軸受シール、自動車関連のモータシール、高負荷になるリニアガイドのサイドシールなどへの適用も好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 外輪(外輪相当部材)
2 ハブ(内輪相当部材)
5 内輪素子(内輪相当部材)
14a,14b シール部材
15,25 芯金
16 スリンガ
17,26 シール部材
50a,50b プラズマ処理面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを含有する高分子化合物を有する基材を、大気圧雰囲気下で発生させたプラズマに曝すことを特徴とする基材の表面改質方法。
【請求項2】
大気、希ガス、炭化水素ガス、水素ガス、及び窒素ガスのうち少なくとも1つを前記雰囲気に導入し、プラズマを発生させることを特徴とする請求項1に記載の表面改質方法。
【請求項3】
互いに相対回転する内輪相当部材の外周面と外輪相当部材の内周面との間に存在する環状空間を塞ぐシールリップを備えたシール部材において、前記シールリップのうち少なくとも前記内輪相当部材と摺動する部分が、前記請求項1又は2に記載の基材の表面改質方法によって作製された基材よりなることを特徴とするシール部材。
【請求項4】
内周面に外輪軌道を有する外輪相当部材と、外周面に内輪軌道を有する内輪相当部材と、当該外輪軌道と当該内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、前記外輪相当部材の内周面と前記内輪相当部材の外周面との間に存在する環状空間の端部開口を塞ぐシール部材と、を備えた車輪支持用ハブユニットにおいて、
前記シール部材が、前記請求項3に記載のシール部材であることを特徴とする車輪支持用ハブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132480(P2011−132480A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295671(P2009−295671)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】