説明

基材の賦型性の評価方法およびFRPの製造方法

【課題】
本発明は樹脂未含浸である布帛基材の賦型性のパラメータの定量化方法を提供せんとするものである。
【解決手段】
強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸である基材の賦型性を評価する方法であって、該基材の面内にせん断荷重をシワが発生するまで加えた後、該せん断荷重を解放し、残留したせん断変形角を賦形限界せん断変形角として得て、その賦形限界せん断変形角に基づいて賦型性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂未含浸である布帛基材について、賦形性のパラメータである賦形限界せん断変形角を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FRPはその比強度、比弾性率の高さから、航空機用途、一般産業用途、スポーツ用途等の様々な分野で多く利用されている。
【0003】
連続繊維を用いたFRPの代表的な製造方法としては、布帛基材に予めマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグ基材を用い、このプリプレグ基材を積層毎に強化繊維の配列方向がずれるように積層(例えば疑似等方積層)し、マトリックス樹脂を硬化させるオートクレーブ成形法がある。しかしながら、オートクレーブを用いたFRPの製造は成形コストが高く、またプリプレグ基材は複雑形状へ沿いにくい、などの問題があることから、近年樹脂注入成形法が注目されるようになってきた。この方法は、織物基材や、強化繊維を並行に配列したシートを交差積層してステッチ糸にて一体化したいわゆる多軸ステッチ基材など、樹脂未含浸の布帛基材を任意の形状に賦形しながら積層し、その積層体にマトリックス樹脂を注入し、硬化させる成形法である。オートクレーブ成形法に比べ成形コストが低減出来る他、一般的に樹脂未含浸の布帛基材はプリプレグ基材など樹脂含浸基材に比べ賦形性が高く、より複雑な形状のFRPを製造することが出来る。
【0004】
このように、樹脂注入成形法においては、樹脂未含浸の布帛基材を賦形・積層することによりFRP成形前駆体であるプリフォームを作成するが、布帛基材の種類ごとに複雑形状に賦形した時の型への沿いやすさが異なる。いわば、布帛基材ごとに特有の賦形性を有すると言える。したがって従来、複雑形状に布帛基材が賦形可能であるか、プリフォーム作成が可能であるかは、型に実際に使用する布帛基材を賦形して確認していた。またカットパターンや賦形の手順などを決定する、プリフォームの設計にあたっては、実際に基材に切れ込みなどを入れながら試作を行い設計していた。しかしながら、トライアンドエラー方式のプリフォーム設計には大変な労力がかかり、かつ人手による設計は精度を欠き、安定生産を困難にしていた。
【0005】
一方、近年のCAE技術の発達により、布帛基材特有の賦形性を定量化することで、実際に賦形を行わなくてもシミュレーションによりプリフォーム設計が可能となってきた。精度の良いシミュレーションが実施可能となれば、人手による恣意性の入る余地がないことから安定生産性に優れた精度の良いプリフォーム設計が可能となる。従って、いかに布帛基材特有の賦形性を精度良く定量化するかが精度の良いプリフォーム設計の鍵となっている。
【0006】
かかる布帛基材の賦型性のパラメータについては、従来よりピクチャーフレーム法やバイアスエクステンション法などの手法により定量化することが提案されてきた(例えば、非特許文献1)。ピクチャーフレーム法とは、正方形に切り出した0°/90°基材(正方形の辺を0°および90°とした際、強化繊維が0°および90°方向に配向している布帛基材)の4辺を写真盾のように矩形フレームで固定し、対角線上に引張ることで布帛基材にせん断変形を起こし、その際の荷重をフレーム同士のなす角度に相当するせん断変形角で除したせん断剛性を賦形性のパラメータとする試験法である。また、バイアスエクステンション法とは、長方形に切り出した+45°/−45°基材(長方形の長辺を0°、短辺を90°とした際、強化繊維が45°およびー45°方向に配向している布帛基材)の短辺を把持して引張り、その際の荷重を引張ひずみで除した引張剛性を賦形性のパラメータとする試験法である。
【0007】
しかしながら、これら試験法は標準化されておらず寸法に依存するため、同じ条件下で行った試験片同士で結果を比較するだけの相対評価であるという問題点がある。また、上記試験法において測定しているパラメータは、いずれも布帛基材がせん断変形を起こす際の抵抗、すなわち、布帛基材のせん断剛性を代表する指標値である。賦形への抵抗を示しているため、布帛基材を成形型の上にふわっと置いただけで型に沿うかどうかなど、小さな力で賦形を実施する際の指標とはなるものの、一般的な賦形工程では手で押したりプレス機などで大きな力を加えながら行われるため、実用的な賦型性の指標とはなり得ないという問題点もある。
【非特許文献1】"Liquid moulding technologies", C D Rudd, A C Long, K N Kendall and C G E Mangin, Woodhead publishing limited, PP220-228
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり布帛基材の賦型性を評価するパラメータの適当な定量化手法がないばかりでなく、妥当なパラメータすら見いだされていないという問題があった。従って、本発明は、布帛基材の妥当な賦型性のパラメータを見いだし、かかるパラメータの定量化手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
(1)強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸である基材の賦型性を評価する方法であって、該基材の面内にせん断荷重をシワが発生するまで加えた後、該せん断荷重を解放し、残留したせん断変形角を賦形限界せん断変形角として得て、その賦形限界せん断変形角に基づいて賦型性を評価することを特徴とする基材の賦型性の評価方法。
(2)強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸である基材の賦型性を評価する方法であって、強化繊維が長辺方向に関してα°方向と−α°方向とに配され、かつ、短辺長さWと長辺長さLとの比L/Wが2/tanα以上である長方形の前記基材を用意し、該基材の短辺を固定して長辺方向に該基材の引張最大荷重の20%にあたる引張荷重を負荷した後、該荷重を解放し、対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さW’を測定し、次式に従って得られるせん断変形角φを賦形限界せん断変形角として得て、その賦形限界せん断変形角に基づいて賦型性を評価することを特徴とする基材の賦型性の評価方法。
【0010】
【数2】

【0011】
(3)前記基材は、強化繊維が実質的に直交する2方向に配されたものであり、かつ、前記αが45である、上記(2)に記載の基材の賦型性の評価方法。
(4)前記基材が平織物基材である、上記(2)または(3)に記載の基材の賦型性の評価方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法を用いて基材の賦型性を評価し、得られた賦形限界せん断変形角をプリフォーム全域で超えないようにプリフォーム設計を行い、FRPを製造する、FRPの製造方法
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強化繊維が2方向に配された樹脂未含浸である布帛基材の賦形性を精度良く定量化できる。かかる賦形性の定量化により、シミュレーションと連動してプリフォーム設計を精度良く実施できる。精度の良いプリフォーム設計によりプリフォーム製造にあたって精度の良いカットパターンや正確な賦形の手順を適用でき、プリフォームを再現性よく製造可能となることで、FRPの安定生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、FRP製造のためのプリフォーム設計にあたって好適に用いられる、強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸である基材の賦型性を評価する方法であって、基材の面内にせん断荷重をシワが発生するまで加えた後、該せん断荷重を解放し、残留したせん断変形角を賦形限界せん断変形角として得て、その賦形限界せん断変形角に基づいて賦型性を評価するものである。
【0014】
なお、実質的に樹脂未含浸であるとは、布帛基材における強化繊維以外の樹脂介在物が基材全体の20%未満であることを指す。樹脂含浸した布帛基材、例えばプリプレグ基材などは、本発明の測定法に従いシワが発生するまでせん断荷重を加えると、樹脂が粘着性を有するためシワが固定されてしまい、せん断荷重を解放してもシワがなくなることがないため、無緊張状態でシワが発生しない最大のせん断変形角である賦形限界せん断変形角を正確に測定できない。同様に、布帛基材の固着剤として樹脂が大量に用いられているなどの理由で、一旦シワが固定されてしまうと、無緊張状態でもシワが解放されないような布帛基材は正確に測定できない。したがって、本発明は、実質的に樹脂未含浸である基材に適用する。
また、本発明は強化繊維が2方向に配された布帛基材に適用するものである。すなわち、連続する強化繊維が実質的に2方向に配されていればよく、局所的にクリンプやうねりが生じていてもよい。布帛基材を複雑形状に賦形する際には、シワが発生しないよう基材面内で変形を吸収する必要がある。通常、FRP製造に用いられる布帛基材は強化繊維が拘束されて布帛状となっているので、実質的に強化繊維が引き抜けることはない。そのため、図1のb)のように、強化繊維が3方向以上に配されている場合、強化繊維同士の交錯点の拘束を守ったまま、基材面内で変形するためには、強化繊維を伸ばして変形するしかない。しかしながら、強化繊維を伸ばすことは困難であるため、一般的に強化繊維が3方向以上に配されている布帛基材においては、基材面内で変形できず、賦形性が極端に悪い。
【0015】
また、図1のc)に示すような、強化繊維が1方向のみに配され、樹脂などの固着材料で拘束されている布帛基材(例えば一方向配向のプリプレグ基材)は、せん断変形を起こすよりも強化繊維同士を引き離す方が簡単であり、複雑な形状に賦形した場合、強化繊維が存在しない部分ができてしまい品位が悪くなることがある。すなわち、賦形性をせん断変形性により評価できない。
【0016】
一方、図1のa)のように強化繊維が2方向に配されている布帛基材では強化繊維同士の交錯点の拘束を守ったまま、強化繊維の存在しない方向へ変形、すなわちせん断変形を起こすことができ、基材面内で容易に変形可能である。すなわち、布帛基材はせん断変形を起こすことで面内の変形を吸収しており、特に強化繊維が2方向に配された布帛基材のせん断変形性に注目することで賦形性を評価できる。
【0017】
なお、強化繊維が3方向以上に配されている場合でも若干の賦形性を有する布帛基材があるが、局所的な強化繊維の引き抜けなどによるものである。
【0018】
ここで、本発明における強化繊維とは、FRP用の強化材となるものであれば特に制限はなく、例えば、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、および、アラミド、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアリレート等の有機繊維等が挙げられ、これらの1種または2種類以上を併用したものを使用することができる。そして、強化繊維が2方向に配されるとは、局所的にクリンプやうねりを有している強化繊維であっても、連続する強化繊維が実質的に2方向の直線状に配向している状態をいう。例えば2軸ステッチ基材などの強化繊維がこれに相当し、それを編んで一体化しているステッチ糸のようなループ状の繊維はこれには相当しない。
【0019】
そして、本発明においては、前述のように、布帛基材のせん断剛性は賦形への抵抗を示し、賦形性のひとつの指標となり得るが、一般的には布帛基材の賦形抵抗に比べ大きな力を加えて賦形実施するため、これ以上複雑な形状には賦形できない、という賦形の限界点の方が賦形性の実用的な指標となり得ることを見出したことが特徴のひとつである。
【0020】
かかる賦形の限界点は、布帛基材が無緊張状態でシワが発生しない最大のせん断変形角を用いて定量化することが出来る。したがって、本発明はかかる最大のせん断変形角、すなわち賦形限界せん断変形角に注目して賦形性の定量化を行い、その基材の賦型性を評価する。
【0021】
図2はせん断変形角θを説明する模式図である。図2のa)において、正方形状の布帛基材4は、面内にせん断荷重を加えるとひし形状に変形する。この際、角部の変形角度量6がひし形状となった布帛基材5のせん断変形角θを示している。図2のb)では、直接強化繊維に注目してせん断変形角を説明している。せん断変形前の強化繊維の配向方向7のなす角度9(2α)とせん断変形後の強化繊維の配向方向8のなす角度10(2β)の差、2α−2βがせん断変形角θに相当する。
【0022】
シワとは、布帛基材面内でせん断変形を飲み込むことが出来ず、厚みの薄い布帛基材が座屈して面外に変形した現象を表す。そして、布帛基材を面外に変形しないように無理に拘束した状態でせん断荷重を加えた場合には、賦形限界せん断変形角を越えてもシワが発生しないこともあるが、無緊張状態に戻した瞬間にシワが発生、もしくはせん断変形量が小さくなってしまうため、FRPの製造上問題が生じる。例えば樹脂注入成形において布帛基材成形前駆体であるプリフォーム作成時、プレスなどにより一旦は布帛基材を複雑な形状に賦形することが出来たとしても、プレス圧から解放された瞬間、シワが発生したり、せっかく賦形された形状が変わってしまう可能性がある。そこで、本発明では、無緊張状態で保持可能な最大のせん断変形角を賦形限界せん断変形角とすることで、実用的な賦形性の指標とする。
【0023】
なお、樹脂による層間固着が施された布帛基材などは加熱により樹脂が軟化し、強化繊維同士の拘束が緩くなる。そのため、室温における賦形限界せん断変形角と高温における賦形限界せん断変形角は自ずと異なる。したがって、せん断変形負荷と賦形限界せん断変形角の測定は同一雰囲気下で行われなければならない。2軸ステッチ基材のステッチ糸として熱可塑性樹脂を適用している場合にも、加熱によりステッチ糸の変形抵抗が小さくなり、強化繊維の拘束が緩くなり、結果限界せん断変形角が向上することがある。したがって、同一の温度条件下で取得した限界せん断変形角を比較することで、かかる温度における賦形性の定量的な比較が可能となる。
【0024】
図3、4に、布帛基材の面内にせん断荷重を加える装置の一例を示す。
【0025】
図3では、2方向に配された強化繊維のうち一方がフレーム11に対して垂直方向に配されるよう長方形状に布帛基材を切り出した試験片をフレーム11とそれに平行なフレーム12にクランプしてセットする。フレーム12には錘13がつるされており端部には紐14が結ばれている。錘13はセット時に強化繊維がぴんと張るレベルの重量であり、強化繊維が破断するような大きな重量は加えない。紐14を左右どちらかに引張ることで、布帛基材にせん断荷重を加えることが出来る。強化繊維の配向方向や補助糸などの存在により、左に引張るか右に引張るかでせん断変形性が異なり、その結果、方向により賦形限界せん断変形角が異なることもある。
【0026】
図4では、フレーム17、18がひし形を形成するように配され各頂点がピン19で固定された、対角線方向に可動な冶具に、2方向に配列した強化繊維がそれぞれ2辺に並行となるように切り出した平行四辺形状(強化繊維が直交している場合には長方形状)の布帛基材の試験片を、2方向に配向した強化繊維がそれぞれフレーム17、フレーム18に平行となるようセットされている。フレーム18は布帛基材をピン19とピン19を結ぶラインをクランプの境界線として試験片を挟み込めるようになっている。方向15に引張荷重を加えることで、せん断荷重を布帛基材に伝達することが出来る。
【0027】
図3、4に挙げたような装置を用いて、強化繊維が2方向に配された樹脂未含浸である布帛基材の面内に、クランプ部や自由端部から少なくとも1cm以上離れた中央部にシワが発生するまでせん断荷重を加えた後、クランプを解除してせん断荷重を解放し、布帛基材を無緊張状態とする。その後、クランプ部や自由端などの周辺の影響を受けにくい試験体のかかる中央部を観察して、残留したせん断変形角を測定する。測定方法は図2のb)に示したように、試験前に測定した2方向の強化繊維がなす角度9(2α)から、試験後に測定した2方向の強化繊維がなす角度10(2β)を差し引いた、2β−2αが測定時のせん断変形角θとなる。こうして得たせん断変形角θを賦形限界せん断変形角φとして得る。
【0028】
せん断変形角測定時には試験片に反りやシワがなく、平滑な状態でなければならない。図3、4などの方法によりシワが発生するまでせん断荷重を加えた後、素速く解放し試験体を平滑な面に置き、上からガラス板など透明で平滑な板を置く。上から置く板は置くだけで試験体の形状が変わってしまうほど極端に重くない方が好ましい。上から平滑な板を置くことにより、試験体の端部の反りや残留したシワを平滑にすることができる。シワがない状態で残留したせん断変形角θを測定し、賦形限界せん断変形角φとして得る。
【0029】
さらに好ましくは、強化繊維が長辺方向に関してα°方向と−α°方向とに配され、かつ、短辺長さWと長辺長さLとの比L/Wが2/tanα以上である長方形の前記基材を用意し、該基材の短辺を固定して長辺方向に該基材の引張最大荷重の20%にあたる引張荷重を負荷した後、該荷重を解放し、対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さW’を測定し、次式に従って得られるせん断変形角φを賦形限界せん断変形角として得る(以下、かかる一連の測定手順を測定法Aとする)のがよい。
【0030】
【数3】

【0031】
具体的には、まず、強化繊維が2方向に配された樹脂未含浸である布帛基材を長方形に切り出し、試験片を用意する。図5の拡大図のように、2方向の強化繊維のなす角度34が2α°である時、長辺方向31を0°とした時に強化繊維がα°方向33と−α°方向32に配されるよう、調整して切り出す。長辺長さLと短片長さWの比は少なくとも2/tanα以上でなくてはならない。また、測定精度を保証するため、少なくともWは25mm以上でなくてはならず、好ましくは50mm以上1000mm以下であるのがよい。さらに好ましくは100mm以上300mm以下がよい。
【0032】
測定法Aを用いて測定できる条件は、強化繊維の弾性率に比べ、せん断剛性が無視できるほど小さいことである。金属や紙のように面内等方性である基材はせん断剛性が無視できないが、FRPに用いられる一般的な2軸の基材は、強化繊維の配向されている方向は剛性が高い一方、簡単にせん断変形出来ることから、本発明の手法で評価するのに適している。
【0033】
また、測定法Aにおいて試験片を引張った場合、図5のような幾何学的な関係性が現れる。領域24においては強化繊維が突っ張り、強化繊維同士の関係が崩れず変形しない。従って、角度36は2α°で保存される。領域25においては強化繊維交錯点の拘束が外れ端部から解れが起こる。領域26ではせん断変形が起こる。L/Wが2/tanα未満の場合、図6のa)のように領域26が両長辺の端部にまで広がらず、対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さW’からはせん断変形角が求まらない。L/Wが2/tanαの場合に初めて、図6のb)のようにちょうど領域26が両長辺の端部にまで届く。好ましくは図6のc)のようにL/Wが2/tanαより大きく、L/Wが2/tanα+0.5以上、2/tanα+3以下であれば十分なW’の測定領域が得られてよい。さらに好ましくは2/tanα+1以上、2/tanα+2以下がよい。なお、長辺長さLにはつかみ部長さは含まれておらず、引張荷重を加えるためのつかみ部35はクランプ部の大きさに応じて、適宜長さを付け足さなければならない。
【0034】
なお、2方向の強化繊維が完全に直交していない限り、強化繊維同士のなす角度には2種類の取り方が可能となる。したがって、同一基材であっても、強化繊維の配行方向が異なる2種類の試験体が必要となる。一般的にはこのような基材は2方向のせん断変形性を持ち、同一基材に2つの賦形限界せん断変形角が規定される。
【0035】
条件を満たした試験片が用意できたら、次に引張最大荷重を計測する。両短辺を完全固定した状態で引張荷重を加える。例えば万能試験機に試験片のつかみ部をクランプした冶具を取り付け、試験片に引張荷重を加える。引張速度は静的な試験となるよう一定速度で低速に、L/1000mm/分以上、Lmm/分以下で行う。さらに好ましくはL/100mm/min以上、L/10mm/min以下がよい。引張荷重を加えると、図5のように、試験片形状が変形する。
【0036】
図10に一般的な炭素繊維平織物の引張試験の荷重−変位曲線の一例を示した。最初、緩やかに荷重が上昇する段階49では、領域26がせん断変形を起こしており、主に試験機より与えられた変位により発生する繊維同士の摩擦力が荷重として現れているといえる。測定は一定速度で行わなければならない。指数関数的に荷重が上昇する段階50では織物であれば強化繊維同士によって、2軸ステッチ基材であればステッチ糸によって強化繊維がきつく拘束されており、強化繊維が容易に移動できなくなっている。強化繊維糸条が締め付けられ変形することによる荷重上昇が起き、さらには面内で変形しきれずに面外に変形して反りやシワが発生し始める。さらに荷重上昇の傾きがピークを越え、最終的に荷重が頭打ちになる段階51では試験片の端部の解れ、特に領域25で強化繊維が拘束を外れて布帛組織が壊れ始め、ついには引張荷重が最大値47を迎える。このような最大引張荷重測定試験を少なくともN数=3以上で実施し、その平均をその水準の最大引張荷重とする。好ましくはN数=5以上がよい。
【0037】
こうして取得した引張最大荷重47の20%の引張荷重48を別に用意した同水準の試験片に対して加える。強化繊維が2方向に配向した樹脂未含浸の試験基材について検討したところ、引張最大荷重の20%を加えた際、いずれの基材も領域50の範囲内であることが分かった。領域51に到達するまで引張荷重を加えてしまうと、布帛組織が破壊されてしまうため、正確な賦形限界せん断変形角の測定が出来ない。試験条件は引張最大荷重47を取得した時と同等であり、20%まで引張荷重が達したところで、試験片のクランプを解き、無緊張状態とする。例えば、強化繊維がスポット的に樹脂などで固着されている基材の場合、初期に荷重が大きく上がった後、固着が解かれ荷重が低下する布帛基材もあるが、最初に引張最大荷重20%を超過した点で負荷を停止する。無緊張状態とすることで、反りやシワなど面外の変形や、無緊張下では保持できない強化繊維糸条の変形などを解放することが出来、純粋にせん断変形角の限界が測定可能となる。なお、引張荷重の除荷には圧縮荷重を加えないよう注意して行わなければならない。
【0038】
除荷後、領域26に注目して、図2のb)で示したように強化繊維の配向方向を直接分度器などで測定することにより、せん断変形角を求めることも可能であるが、本発明においては幾何学的に試験片の幅からせん断変形角を計算できることを利用し、対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さである試験片中央幅W’を測定する。図8のように、強化繊維が糸条単位で移動して、試験片端部がギザギザになっている場合もある。それぞれの強化繊維糸条端部はもともと同一線上に乗っていたので、その移動平均をとり、強化繊維糸条の最も出っ張った部分43とへっこんだ部分44の中間線45を試験片長辺端部と認識し、両長辺の中間点を結んだ線の長さW’を測定する。測定する際には、測定部に反りやシワがないことが条件になるため、図7のように平坦な台38の上に最大引張荷重の20%が負荷された試験片40を載せ、その上からガラス板など透明で平滑な板39をおいてW’を測定する。引張試験後長時間が経過すると強化繊維糸条の変形が回復し幅W’が大きくなる傾向がある布帛基材もある。好ましくは引張最大荷重の20%の引張荷重を負荷してから1分以内にW’の測定を行うのがよい。さらに好ましくは30秒以内がよい。少なくとも最大引張荷重の20%を負荷した試験片をN数=3以上で測定し、それらの平均値を賦形限界せん断変形角として得る。好ましくはN数=5以上で測定するのがよい。
【0039】
本発明は、αが45である場合、すなわち強化繊維が2方向に直交する樹脂未含浸の布帛基材の賦型性を評価する方法として特に適している。この場合、強化繊維が長辺方向に関して45°方向と−45°方向とに配される。強化繊維が直交しているため、強化繊維が存在しない2つの方向領域が、−45°〜45°および45°〜135°と共に90°となる。補助糸やステッチ糸など点対称性を崩す介在物が存在しない場合には、両方向とも同等のせん断変形性を有するため、片方の方向のみ試験すればよい。かかる布帛基材としては、平織、綾織などの2軸織物基材、ステッチ糸によって強化繊維を拘束した2軸のステッチ基材などがある。特に、平織物基材の場合、樹脂注入成形などに最も汎用的に適用され、賦型性の定量化が求められているので、特に好ましい。
【0040】
上記のような手法で布帛基材特有の賦形限界せん断変形角を測定し、かかる布帛基材を賦形してプリフォームを作成するには、プリフォーム全域でかかる賦形限界せん断変形角を越えないようにプリフォーム設計を行い、かかるプリフォームを用いてFRPを製造するのが好ましい。それによりプリフォームにシワが発生しないことが保証されるので、欠陥のない品位の良いFRPを作成することが可能となる。具体的には、例えば賦形シミュレーションソフトを活用してプリフォーム設計を行う。プリフォーム上の繊維配向をシミュレーションし、せん断変形角が賦形限界せん断変形角を越える部位を計測する。かかる賦形限界せん断変形角を越える部位が存在しなくなるまで、賦形方向の変更や布帛基材への切れ込みを工夫することで、プリフォーム全域で賦形限界せん断変形角を超えないプリフォームを設計できる。
【実施例】
【0041】
(使用した基材)
賦型限界せん断変形角を測定する、強化繊維が2方向に配列している基材として、以下の5種類のものを用意した。
・平織物基材CO6343B(東レ社製):炭素繊維フィラメントが3000本束ねられ2軸に直交して平織組織した織物
・平織物基材BT70−30(東レ社製):炭素繊維フィラメントが12000本束ねられ2軸に直交して平織組織した織物
・UD織物基材UT70−30(東レ社製):炭素繊維フィラメントが12000本束ねられ補助糸であるガラス繊維により直交して強化繊維が一方向(UD)に組織した織物
・2軸ステッチ基材A:+45°/−45°ステッチ基材であり、0°方向の鎖編で一体化されているもの
・2軸ステッチ基材B:+22.5°/−22.5°ステッチ基材であり、変則1/1トリコット編で一体化されているもの
(実施例1)
上記5種類の布帛基材に対して、測定法Aを適用して賦形限界せん断変形角を測定した。すべての試験手順は室温(25℃)中で実施した。
【0042】
上記5種類の布帛基材から、それぞれ、100mm×340mm(内、両端のつかみ部がそれぞれ100mm×20mm)の長方形状に試験片を切り出すにあたり、強化繊維方向をγ°と−γ°として、0°方向に長辺、90°方向に短辺を取った0°方向試験片、90方向に長辺、0°方向に短辺を取った90°方向試験片の2種類の試験片を6枚ずつ切り出した。例えば2軸ステッチ基材Bに関しては、0°方向試験片に関してはα=22.5°、90°方向試験片に関してはα=67.5°となる。
【0043】
引張最大荷重を測定するため、試験片を万能試験機INSTRON5566にセットする。長方形試験片の短辺を両方、長手方向につかみ部20mmでチャックに完全固定し、図5のように長辺長さL、すなわちチャック間28が300mm、短辺長さW、すなわち試験片幅27が100mmとした。引張速度が10mm/minとなるように試験片を一定速度で引張った。万能試験機から出力された、変位と荷重の関係とを見比べながら、引張最大荷重を測定した。続けて同様の試験を行い、各基材の0°方向試験片および90°方向試験片に対してそれぞれN数=3で測定を行い、それらの平均から各試験片の引張最大荷重を測定した。図10は平織物基材CO6343Bの0°方向試験片の荷重−変位曲線、図11のa)、b)は2軸ステッチ基材Aの0°方向試験片、90°方向試験片それぞれの荷重−変位曲線を示す。
【0044】
次に、各水準残りの3本の試験片に対し、引張最大荷重の20%を同様の試験により負荷した。荷重が20%に達したところで下部チャック、上部チャックの順に試験片のつかみ部を解放し、1分後に、図7のような平滑な台38の上に試験片40を置いてガラス板39で試験片を平滑にならし、対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さW’を測定した。その際、長辺端部のギザギザは図8の基準に従い、強化繊維糸条端部の最も出っ張った部分43と引っ込んだ部分44の中間線45を長辺端部と認識し、W’の測定を行った。
【0045】
こうして測定された賦形限界せん断変形角を表1にまとめた。
【0046】
【表1】

【0047】
一般的に賦形性が高いとされる平織物基材CO6343Bおよび平織物基材BT70−30は0°方向試験片、90°方向試験片何れも30°以上の限界せん断変形角を有していた。一方、2軸ステッチ基材Aは、0°方向試験片と90°方向試験片で限界せん断変形角が異なるという結果が得られた。0°方向試験片の場合には、図9のa)が示すように、引張方向に鎖編が施されており、ステッチ糸自体が突っ張って抵抗となり変形を妨げていたため、低い限界せん断変形角となった。一方、90°方向試験片の場合には、図9のb)が示すように引張方向と垂直に鎖編が施されており、変形を阻害するものが存在しないため、だらだらと変形した。2軸ステッチ基材Bは本実施例の中で唯一強化繊維が直交しておらず、0°方向試験片と90°方向試験片とで賦形限界せん断変形角が異なった。0°方向試験片では−22.5°〜22.5°の45°、90°方向試験片では22.5°〜157.5°の135°と理屈上、せん断変形可能な領域が試験方向によって異なるため、表1のように賦形性に異方性が発現したものと考えられる。このように、基材によっては2種類の賦形限界せん断変形角を持つことが分かった。
(実施例2)
賦形限界せん断変形角の妥当性を検証するために、実際の賦形実験と賦形限界せん断変形角を用いた賦形シミュレーションを比較した。
【0048】
図12に賦形実験の様子を示す。500×500mmに切り出した布帛基材57を210mm直径の穴が空いたプレート58と59とで挟み込み、直径200mmの半球状の型60に押しつけた。布帛基材57はプレート58と59の間で滑りながら、半球状の賦形型60に賦形された。平織物基材CO6343BとUD織物基材UT70−30について、該賦形実験を実施したところ、CO6343Bは一部にシワが発生したものの、ほぼ全面できれいな表面品位となった一方、UT70−30はほぼ全面でシワが発生し、きれいに賦形出来なかった。
【0049】
一方、図13には汎用シミュレーションソフトFiberSIM(Vistagy社)を用いた半球状賦形型へのシミュレーション結果を示す。図中の網目が基材の強化繊維の配向を示しており、せん断変形角の段階に応じて3段階のトーンに色分けされている。実施例1によると賦形限界せん断変形角は、平織物基材CO6343Bが両方向とも44°、UD織物基材UT70−30が両方向とも20°という結果であった。これら賦形限界せん断変形角を賦形の限界値としてシミュレーションに代入した。賦形限界せん断変形角を越えた部位52を丸枠で囲んだ。
【0050】
図13のa)は賦形限界せん断変形角44°のシミュレーション例である。半球状では側面部の一部にせん断変形角が44°を越える部位があるものの、ほぼ全面で下回っており、平織物基材CO6343Bは半球上にある程度きれいに賦形出来ることを示している。一方、図13のb)は賦形限界せん断変形角20°のシミュレーション例である。半球状の大部分で20°を越えており、UD織物基材UT70−30は半球状に賦形出来ないことを示している。
【0051】
このように、実験結果とシミュレーション結果に整合性が取れており、賦形限界せん断変形角の測定値が妥当なものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の評価方法を用いれば、強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸の布帛基材の賦形性を精度良く定量化することができ、かかる布帛基材を用いたプリフォームを精度良く設計でき、望ましいFRPを安定生産可能となる。
【0053】
かかるFRPは、FRP型、輸送機器(自動車、船舶、航空機、自転車など)、スポーツ用品および構造物の補修・補強をはじめ、その他の一般産業に用いられるFRPの強化材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】布帛基材の種類による変形性の違いを示した模式図である。a)強化繊維が2方向に配向した布帛基材の模式図b)強化繊維が4方向に配向した布帛基材の模式図c)強化繊維が1方向に配向した布帛基材の模式図
【図2】せん断変形角θの計測方法の模式図である。a)せん断変形角θのマクロな計測方法の模式図b)せん断変形角θのミクロな計測方法の模式図
【図3】布帛基材にせん断荷重を加える試験装置の一例である。
【図4】布帛基材にせん断荷重を加える試験装置の一例である。
【図5】布帛基材にせん断荷重を加える試験装置の一例である(測定法Aに適用される)。
【図6】測定法Aにおける試験片寸法の重要性を示す模式図である。a)試験片寸法L/Wが2/tanαより小さい例b)試験片寸法L/Wが2/tanαの例c)試験片寸法L/Wが2/tanαより大きい例
【図7】賦形限界せん断変形角測定法を示す模式図である。
【図8】測定法Aにおける試験片端部の認識方法を示す模式図である。
【図9】鎖編により一体化された2軸ステッチ基材のせん断変形性の差を示す模式図である。a)せん断変形方向にステッチ糸が配列している2軸ステッチ基材の模式図b)せん断変形方向と垂直にステッチ糸が配列している2軸ステッチ基材の模式図
【図10】測定法Aの最大引張荷重を測定する試験における荷重−変位曲線の一例を示す図である。(CO6343B)
【図11】測定法Aの最大引張荷重を測定する試験における荷重−変位曲線の一例を示す図である。(鎖編を用いた2軸ステッチ基材)a)せん断変形方向にステッチ糸が配列している2軸ステッチ基材の荷重−変位曲線の一例b)せん断変形方向と垂直にステッチ糸が配列している2軸ステッチ基材の荷重−変位曲線の一例
【図12】半球状賦形型への賦形試験の様子
【図13】半球状賦形のシミュレーション結果の一例を示す図である。a)UD織物UT70−30のシミュレーション結果b)平織物CO6343Bのシミュレーション結果
【符号の説明】
【0055】
1 強化繊維糸条
2 せん断変形の方向
3 目隙
4 せん断変形前の布帛基材
5 せん断変形中の布帛基材
6 せん断変形角θ
7 せん断変形前の強化繊維の方向
8 せん断変形中の強化繊維の方向
9 せん断変形前の2方向の強化繊維のなす角2α
10 せん断変形中の2方向の強化繊維のなす角2β
11 基材をクランプしたフレーム(上)
12 基材をクランプしたフレーム(下)
13 錘
14 紐
15 引張荷重を加える方向
16 せん断変形前のフレーム位置
17 せん断変形中のフレーム位置(基材のクランプ無し)
18 せん断変形中のフレーム位置(基材のクランプ有り)
19 フレーム同士をリンク結合するピン
20 測定法Aの引張試験前の布帛基材
21 測定法Aの引張試験中の布帛基材
22 測定法Aの引張試験前の強化繊維方向
23 測定法Aの引張試験中の強化繊維方向
24 強化繊維が突っ張り変形しない領域
25 強化繊維同士の拘束が端部から解ける領域
26 せん断変形領域(網掛部)
27 測定法Aの試験片短辺長さW
28 測定法Aの試験片長辺長さL
29 測定法Aの試験中の対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さ
30 測定法Aの引張変位量
31 測定法Aの試験片長辺方向(0°方向)
32 測定法Aの試験前試験片の強化繊維方向(θ°方向)
33 測定法Aの試験前試験片の強化繊維方向(−θ°方向)
34 測定法Aの試験前試験片の2方向の強化繊維のなす角
35 測定法Aの試験片つかみ部
36 試験前の2方向の強化繊維がなす角2αと等価
37 試験中の2方向の強化繊維がなす角2βと等価
38 平坦な台
39 透明で平滑な板
40 測定法Aで最大引張荷重の20%を負荷された後の試験片
41 測定法Aにおいて試験片の対向する2辺の長辺の中間点を結んだ線
42 測定法Aにおいて試験片の対向する2辺の長辺の中間点を結んだ線の試験後の幅W’
43 強化繊維糸条の最も出っ張った線
44 強化繊維糸条の最もへっこんだ線
45 43と44の中間線
46 鎖編のステッチ糸
47 測定法Aで測定した最大引張荷重
48 測定法Aで測定した最大引張荷重の20%
49 領域26においてせん断変形が起こる段階
50 シワや反りが発生する段階
51 試験片の強化繊維同士の拘束が破壊される段階
52 限界せん断変形角を超過した部位
56 半球賦形試験押しつけ圧
57 布帛基材
58 押さえ治具上プレート
59 押さえ治具下プレート
60 半球状の賦形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸である基材の賦型性を評価する方法であって、該基材の面内にせん断荷重をシワが発生するまで加えた後、該せん断荷重を解放し、残留したせん断変形角を賦形限界せん断変形角として得て、その賦形限界せん断変形角に基づいて賦型性を評価することを特徴とする基材の賦型性の評価方法。
【請求項2】
強化繊維が2方向に配された実質的に樹脂未含浸である基材の賦型性を評価する方法であって、強化繊維が長辺方向に関してα°方向と−α°方向とに配され、かつ、短辺長さWと長辺長さLとの比L/Wが2/tanα以上である長方形の前記基材を用意し、該基材の短辺を固定して長辺方向に該基材の引張最大荷重の20%にあたる引張荷重を負荷した後、該荷重を解放し、対向する2つの長辺の中間点を結んだ線の長さW’を測定し、次式に従って得られるせん断変形角φを賦形限界せん断変形角として得て、その賦形限界せん断変形角に基づいて賦型性を評価することを特徴とする基材の賦型性の評価方法。
【数1】

【請求項3】
前記基材は、強化繊維が実質的に直交する2方向に配されたものであり、かつ、前記αが45である、請求項2に記載の基材の賦型性の評価方法。
【請求項4】
前記基材が平織物基材である、請求項2または3に記載の基材の賦型性の評価方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法を用いて基材の賦型性を評価し、得られた賦形限界せん断変形角をプリフォーム全域で超えないようにプリフォーム設計を行い、FRPを製造する、FRPの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−162185(P2007−162185A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362935(P2005−362935)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】