説明

基材を用いた積層造形法

本発明は、カチオン硬化性化合物を30〜80重量%含む放射線硬化性液状樹脂を基材上にコーティングし、放射線硬化性液状樹脂を既硬化層と接触させ、液状放射線硬化性層の層を化学線に選択的に露光させることにより硬化層を形成し、基材の硬化層を分離し、三次元物体を構築するのに十分な回数、これらの工程を繰り返すことによる、積層造形による基材を用いた三次元物体の形成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、基材を用いた積層造形法に関する。
[背景技術]
【0002】
[001]三次元物品を製造するための積層造形法が当該技術分野で知られている。積層造形法は、物体のコンピュータ支援設計(CAD)データを使用して、三次元部品を1層ずつ構築する。これらの三次元部品は、液状樹脂、粉末、または他の材料から形成されてもよい。
【0003】
[002]積層造形法の非限定例としては、光造形(SL)がある。光造形は、模型、試作品、パターン、および特定の用途の製造部品を迅速に製造するための周知の方法である。SLは物体のCADデータを使用し、このデータを三次元物体の薄い断面に変換する。データをコンピュータにロードし、コンピュータで、バットに収容されている放射線硬化性液状樹脂組成物中で断面のパターンをトレースするレーザービームを制御し、断面に対応する薄い樹脂層を凝固させる。凝固した層に樹脂をリコーティングし、レーザービームで別の断面をトレースして、前の層の上に別の樹脂層を硬化させる。三次元物体が完成するまで、このプロセスを1層ずつ繰り返す。最初に形成されるとき、三次元物体は、一般に、完全に硬化されないため、必要に応じて後硬化を行う場合がある。米国特許第4,575,330号明細書にSL法の一例が記載されている。
【0004】
[003]放射線硬化性液状樹脂から部品を製造するのに最もよく使用される方法は、光造形である。光造形は、バットを用いた積層造形法である。バットを用いたシステムは、大型の放射線硬化性液状樹脂貯溜槽またはバットからなり、その中で造形を行う。垂直方向に移動可能なエレベータプラットフォームがバットの中に浸漬され、固体三次元物体の構築時にそれを支持するために使用される。さらに、次の放射線硬化性液状樹脂層の形成を助けるために、リコーターが存在する。リコーターは放射線硬化性液状樹脂の表面に存在し、次の放射線硬化性液状樹脂層の形成を助けるために、この表面全体を移動可能である。
【0005】
[004]典型的には、バットを用いたシステム中での構築プロセスは、次の繰り返し工程からなる反復プロセスである:1)三次元物体の所望の断面をレーザーでトレースすることにより、放射線硬化性液状樹脂の表面を適切な造形用放射線に露光し、このようにして固体層を形成する;2)垂直方向に移動可能なエレベータを下方に放射線硬化性液状樹脂の表面のずっと下に平行移動させる;3)次の放射線硬化性液状樹脂層の形成を助けるため、リコーターを放射線硬化性液状樹脂の表面全体にわたって移動させる;および4)放射線硬化性液状樹脂の表面と形成されたばかりの三次元物体の固体層との間の距離が形成される層の所望の厚みに等しくなるように、エレベータを上方に平行移動させる。任意選択により、均一な層厚が確実に得られるように放射線硬化性液状樹脂を平衡化させるため、工程を繰り返す前に停止時間がプログラムされていてもよい。
【0006】
[005]一般に、光造形プロセスには処理速度を抑制する2つの要素、即ち、1)レーザービームのトレース、ならびに2)リコーティングプロセスおよび任意選択による停止時間がある。最近、1層ずつ行う処理速度を改善することを目的とした新規な積層造形システムが開発された。
【0007】
[006]第1に、光造形プロセスにおけるレーザービームのトレースは、構築速度を抑制する。トレース工程の速度は、断面の面積と複雑さに大きく依存する。より大きくより複雑な断面の方が、より小さく比較的単純な断面よりも多くのトレースを行わなければならない。
【0008】
[007]造形工程が断面の複雑さにあまり依存しないようにするために、造形用放射線源としてレーザーを使用しない積層造形システムが開発された。主に、新規な造形源としては、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)またはLCD(液晶ディスプレイ)プロジェクタからの投影がある。DMDを用いたシステムは、像の画素に対応する何千もの微小鏡面を備える特殊チップを使用する。積層造形法にこのようなシステムを使用すると、断面の複雑さに依存しない造形時間を達成することができる。このタイプの造形源を使用するシステムの一例については、米国特許第7052263号明細書を参照されたい。像の解像度を改善するために第2の照明が有益な場合もある;例えば、欧州特許第1744871B1号明細書を参照されたい。
【0009】
[008]第2に、リコーティングプロセスと任意選択の停止時間は、光造形法の速度を遅らせる。バット内に大量の放射線硬化性液状樹脂が存在するため、現在の光造形法および放射線硬化性液状樹脂技術では、リコーティングプロセスと停止時間を完全に取り除くことはできない。リコーティングプロセスの速度と停止時間は、大部分、放射線硬化性液状樹脂の特性、主に粘度に依存する。
【0010】
[009]箔またはフィルムを使用して各層の形成を助けるように変更されている、バットを用いたシステムを使用して造形を行うシステムが開発された。このような方法は、例えば、米国特許第5171490号明細書、同第7052263号明細書、および同第7438846号明細書に開示されている。
【0011】
[010]バットレスシステム(vat−less system)として知られている、他の積層造形システムが開発されている。バットレスシステムは、造形工程を放射線硬化性液状樹脂貯溜槽内で行わないという点が、従来のバットを用いたシステムと異なる。代わりに、放射線硬化性液状樹脂層を一度に1層ずつ造形領域に送給する。バットレスシステムの例は、例えば、欧州特許第1710625号明細書ならびに米国特許第6547552号明細書、同第7614866号明細書、同第7758799号明細書および同第7731887号明細書に開示されている。市販のバットレスシステムの例としては、3Dシステムズ社(3D Systems,Inc.)から入手可能なV−FLASH(登録商標)システムがある。
【0012】
[O11]これらの例に共通した1つの特徴は、それらが硬化したばかりの固体層を分離層、またはフィルム、箔、ガラス、もしくはプレートなどの支持体から分離する工程を必要とするということである。このような分離層および支持体は、本特許出願全体を通し、総称して基材と称する。さらに、これらの装置のそれぞれが倒立構築プラットフォームを使用し、ここで、部品の構築時に、部品を従来の光造形装置におけるように垂直方向下方ではなく、垂直方向上方に平行移動させる。
【0013】
[012]積層造形法で基材を使用すると、従来のバットを用いたシステムと比較して幾つかのことが改善されるが、基材の使用には問題点も幾つかある。例えば、基材を用いたプロセスでは、基材に放射線硬化性液状樹脂を正確にコーティングする複雑さが加わる。さらに、処理速度が大きいと、基材から適切に剥離し、既硬化層に結合し易くするために適切な生強度を発現することが必要となる。最後に、基材への放射線硬化性液状樹脂の接着に対処しなければならない。
【0014】
[013]幾つかの特許出願は、基材を用いた積層造形法に有用な樹脂配合物について論述している。国際公開第2010/027931号パンフレット(3Dシステムズ社に付与)は、フリーラジカル重合性化合物しか含まない放射線硬化性液状樹脂を開示している。国際公開第2010/027931号パンフレットの組成物は、(メタ)アクリレート類とウレタン(メタ)アクリレート類のブレンドを含む。3Dシステムズ社に譲渡された米国特許第7358283号明細書は、基材から容易に剥離するとされている全アクリレート放射線硬化性液状樹脂を開示している。これらの組成物もまた(メタ)アクリレート類とウレタン(メタ)アクリレート類のブレンドを必要とする。
【0015】
[014]ハイブリッド放射線硬化性液状樹脂が機械的特性の最も望ましい組み合わせを有する硬化三次元物品を製造することは、放射線硬化性液状樹脂の分野で周知である。ハイブリッド放射線硬化性液状樹脂は、フリーラジカル重合性成分とカチオン重合性成分の両方と光開始剤を含む放射線硬化性液状樹脂である。また、主に放射線硬化性液状樹脂のカチオン重合性成分により、硬化三次元物品の機械的特性の望ましい組み合わせが得られるが、放射線硬化性液状樹脂のカチオン重合性成分はフリーラジカル重合性成分より重合速度がずっと遅いことも周知である。そのため、硬化三次元物品の機械的特性は、ハイブリッド放射線硬化性液状樹脂の初期硬化後、徐々に発現する。基材を用いた既知の積層造形法がより複雑であることも、基材を用いた積層造形法用の放射線硬化性液状樹脂の配合が困難となる一因となる。
【0016】
[015]従って、基材を用いた積層造形法における硬化時に、優れた機械的特性を有する硬化三次元物品を形成することができるハイブリッド放射線硬化性液状樹脂を開発することが望ましい。
[発明の概要]
【0017】
[016]請求する本発明の第1の態様は、
1)少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を30〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含む放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程;
2)放射線硬化性液状樹脂層を既硬化層と接触させる工程;
3)放射線硬化性液状樹脂層を化学線源によって提供される化学線に選択的に露光させ、それによって既硬化層に接着する硬化層を形成する工程;
4)分離遅延時間を設け、分離遅延時間の終了後に硬化層と基材を分離する工程;および
5)三次元物体を構築するのに十分な回数、工程1〜4を繰り返す工程;
を含む三次元物体の形成方法であり、
分離遅延時間は、放射線硬化性液状樹脂を1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で硬化させる時、実時間動的機械分析装置(Real Time−Dynamic Mechanical Analyzer)で放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を測定する場合、化学線への放射線硬化性液状樹脂層の最初の露光から、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)が、露光の開始から測定した時、約9.0×10Paより大きい、好ましくは1.0×10Paより大きい、より好ましくは2.0×10Paより大きい(G’)値に達したことが測定される時点までの時間である。
【0018】
[017]請求する本発明の第2の態様は、請求する本発明の第1の態様の方法により製造される三次元物体である。
【0019】
[018]請求する本発明の第3の態様は、
1)少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を30〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含 む放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程;
2)放射線硬化性液状樹脂層を既硬化層と接触させる工程;
3)放射線硬化性液状樹脂層を化学線源によって提供される化学線に選択的に露光させ、それによって既硬化層に接着する硬化層を形成する工程;
4)硬化層と基材を分離する工程;および
5)三次元物体を構築するのに十分な回数、工程1〜4を繰り返す工程;
を含む三次元物体の形成方法であり、
放射線硬化性液状樹脂を1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で硬化させる時、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を実時間動的機械分析装置で測定する場合、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)が、露光の開始から2.0秒で約7.5×10Paより大きい、好ましくは8.5×10Paより大きい、より好ましくは9.5×10Paより大きい(G’)値に達したことが測定される。
【0020】
[019]請求する本発明の第4の態様は、請求する本発明の第3の態様の方法により製造される三次元物体である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】365nmの干渉フィルタが生成するスペクトル出力を示す図である。
【図2】RT−DMA装置の概略図を示す図である。
【図3】分離時間試験装置を示す図である。[発明の詳細な説明]
【0022】
[020]米国仮特許出願第61/287620号明細書は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0023】
[021]請求する本発明の第1の態様は、
1)少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を30〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含む放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程;
2)放射線硬化性液状樹脂層を既硬化層と接触させる工程;
3)放射線硬化性液状樹脂層を化学線源によって提供される化学線に選択的に露光させ、それによって既硬化層に接着する硬化層を形成する工程;
4)分離遅延時間を設け、分離遅延時間の終了後に硬化層と基材を分離する工程;および
5)三次元物体を構築するのに十分な回数、工程1〜4を繰り返す工程;
を含む三次元物体の形成方法であり、
分離遅延時間は、放射線硬化性液状樹脂を1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で硬化させる時、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を実時間動的機械分析装置で測定する場合、化学線への放射線硬化性液状樹脂層の最初の露光から、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)が、露光の開始から測定した時、約9.0×10Paより大きい、好ましくは1.0×10Paより大きい、より好ましくは2.0×10Paより大きい(G’)値に達したことが測定される時点までの時間である。
【0024】
[022]基材は、放射線硬化性液状樹脂に照射した後、放射線硬化性液状樹脂を分離することができる表面を提供する任意の材料である。基材の非限定例としては、プレート、プラスチック、または可撓性の箔がある。可撓性箔基材は、米国特許第7438846(エンビジョンテック(Envisiontec)に付与)において好ましいシリコーンフィルムなどのように弾性であってもよく、または、薄いマイラー(Mylar)もしくはTPXフィルムなどのように実質的に非弾性であってもよい。好ましくは、フィルムは硬化中の移動によって起こるどのような影響も低減されるように非弾性である。
【0025】
[023]好ましくは、基材の厚みは、約75〜200ミクロン、好ましくは約90ミクロン〜約160ミクロンである。一実施形態では、新たに硬化した層を基材から剥離することを助ける材料が基材にコーティングされる。別の実施形態では、基材は、異なる材料の層から形成される。一実施形態では、基材は、少なくとも2層、好ましくは2層または3層である。多層箔は、樹脂に接触する少なくとも1つのバリア層と、樹脂に接触しない下層または中間層を有してもよい。樹脂に接触するバリア層は良好な耐薬品性と剥離性を付与し、樹脂に接触しない下層または中間層は熱的および機械的特性、靭性、剛軟度、および/または耐疲労性を付与する。3層の実施形態では、下層は樹脂に接触する層と同じである。別の実施形態では、下層は樹脂に接触するバリア層と異なる。樹脂に接触するバリア層は、コーティング層であってもよい。
【0026】
[024]基材の選択は、積層造形法の完全性に重要である。基材は、好ましくは実質的に放射線透過性であるが、基材は、依然として、放射線、例えば、紫外線を繰り返し露光することにより損傷するおそれがある。放射線、例えば、紫外線の特定の波長の存在下で迅速に分解する基材は、再生されなければならない。各層の硬化後に、新しい基材を提供しなければならない場合もある。
【0027】
[025]請求する本発明の第1の態様の第1の工程は、放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程である。コーティングは、例えば、グラビアローラー(メイヤーバー)、アプリケータを使用することにより、または基材にスプレーコートすることにより達成することができる。薄い放射線硬化性液状樹脂層が望ましい。一実施形態では、放射線硬化性液状樹脂層は、厚み(think)1〜1000ミクロンである。好ましくは、放射線硬化性液状樹脂層は、厚み約25ミクロン〜約250ミクロン、より好ましくは25ミクロン〜125ミクロン、より好ましくは25ミクロン〜75ミクロンであり、厚みが実質的に均一である。
【0028】
[026]請求する本発明の第1の態様の第2の工程は、基材上の放射線硬化性液状樹脂を既硬化層と接触させる工程である。これは、例えば、基材を移動させて、放射線硬化性液状樹脂と既硬化層を接触させることにより、または既硬化層を基材上の放射線硬化性液状樹脂と接触するように移動させることにより行ってもよい。三次元物体の第1の層では、放射線硬化性液状樹脂を構築パッドまたは固体プレートなどの固体構築プラットフォームと接触させてもよい。最初の層では、この部分の凝集力は問題ではないため、構築プラットフォームに十分接着することを確実にするために、遅い構築速度と比較的高い放射線量を使用することが望ましい場合がある。
【0029】
[027]請求する本発明の第1の態様の第3の工程は、放射線硬化性液状樹脂層を化学線に選択的に露光させ、それによって既硬化層に接着する硬化層を形成する工程である。化学線は、例えば、レーザー、ランプ、LED、またはレーザーダイオードなどの任意の適した線源から出射したものであってもよい。放射線硬化性液状樹脂中の光開始剤の吸収スペクトルと十分重なる任意の適切な発光波長が適している。好ましくは、光の波長は300〜475nm、好ましくは340〜400nm、より好ましくは350〜375nm、より好ましくは約365nmである。好ましくは、光源はLEDまたはLEDアレイである。
【0030】
[028]例えば、放射線硬化性液状樹脂全体にわたり化学線源を移動させることにより、および/または、所望の露光プロファイルに従って化学線源の電源をオン・オフすることにより選択的露光を行ってもよい。別の実施形態では、化学線はマスク露光により選択的に照射される。別の実施形態では、化学線はDMDからの投影を使用して照射される。一実施形態では、化学線は、まず、基材を透過して放射線硬化性液状樹脂に到達しなければならない。一実施形態では、例えば、単一の投影、または同時に行われる複数の投影を使用することにより、1段階で層全体の露光を行ってもよい。別の実施形態では、徐々に露光を行ってもよい。例えば、放射線硬化性液状樹脂の表面全体にわたり露光パターンを移動させてもよい。この方法では、同じ放射線硬化性液状樹脂層の複数の特定の領域が、選択的に露光される放射線硬化性液状樹脂層のサイズに応じ、時間を著しく違えて、例えば、15秒より大きい間隔を開けて、またはさらには30秒より大きい間隔を開けて、化学線に露光されてもよい。別の実施形態では、多段階で露光を行う。例えば、放射線硬化性液状樹脂は第1の照射線量に露光され、その少し後に第2の照射線量に露光される。
【0031】
[029]請求する本発明の第1の態様の第4の工程は、選択的露光の時間から測定した時、分離遅延時間を超える時間に、放射線硬化性液状樹脂を基材から除去する工程である。この工程は、硬化層を移動させることにより、基材を移動させることにより、またはその両方により行ってもよい。好ましくは、基材は可撓性である。可撓性基材は、最初に照射される放射線硬化性液状樹脂の領域が一般に最初に基材から剥離される、「先入れ先出し」剥離を可能にする。「先入れ先出し」剥離が可能な装置の説明については、国際公開第2010/74566号パンフレット(TNOに付与)(参照によりその内容全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0032】
[030]本明細書に開示される貯蔵剪断弾性率分析により詳述されるように、分離遅延時間は一定であるが、層の様々な領域が露光されるまたは基材から分離される時間は、変わり得る。分離時間は、放射線硬化性液状樹脂の化学線への選択的露光から、硬化層と基材を分離する時点までの時間である。分離時間は、硬化される各領域に特有である。「先入れ先出し」剥離プロセス、または放射線硬化性液状樹脂層の選択的露光を徐々に行う類似のプロセスでは、硬化層の様々な領域の分離時間は同一でなくてもよい。例えば、層を形成するとき、同じ放射線硬化性液状樹脂層の複数の特定の領域が、異なる時間にコーティングされても、露光されても、または剥離されてもよい。幾つかの実施形態では、硬化層の特定の領域は、放射線硬化性液状樹脂の他の領域が基材上にコーティングされる前に、分離されてもよい。「硬化層の分離」とは、硬化層の全領域が、化学線への露光後、分離遅延時間を経過した後に分離されることを意味するが、異なる領域は異なる時間に分離されてもよい。分離時間は硬化される各領域に特有であるため、分離遅延時間を経たか否かは、硬化される放射線硬化性液状樹脂の各領域について判定されなければならない。
【0033】
[031]硬化層の異なる領域は、露光と分離の間の時間間隔が他の層と異なっていてもよい。例えば、第1の領域である領域Aは、露光時間が時間J、分離時間がKであり、第2の領域である領域Bは、露光時間が時間L、分離時間がMである。(時間K−時間J)は、(時間M−時間L)と同じであっても、等しくても、またはそれより小さくてもよい。ここで、このプロセスの分離遅延時間が、本出願に開示される貯蔵剪断弾性率分析法により決定される時、分離遅延時間Xであると決定された場合、(時間K−時間J)と(時間M−時間L)は両方とも、分離遅延時間Xを超えなければならない。他の実施形態では、領域Aと領域Bは、露光時間が同じであるが、分離時間が異なってもよい。
【0034】
[032]領域とは、放射線硬化性液状樹脂の実質的な硬化を引き起こすのに十分な量の放射線に露光された放射線硬化性液状樹脂の部分を意味する。迷放射線または放射線硬化性液状樹脂の実質的な硬化を引き起こすのに不十分な放射線は、領域を画成しない。例えば、放射線硬化性液状樹脂層の第1の領域がまず、実質的な硬化を引き起こすのに十分な強度の光源によって照明され、同じ層の放射線硬化性液状樹脂の第2の領域が後で実質的な硬化を引き起こすのに十分な強度の同じまたは異なる光源によって照明される場合、2つの領域が形成される。領域は部分的に重ってもよい。
【0035】
[033]請求する本発明の第1の態様の方法の次の成分は、放射線硬化性液状樹脂である。基材を用いた積層造形法では、放射線硬化性液状樹脂の新たに硬化した層は、層が凝固する時、既硬化層に対する凝集力と基材に対する接着強度の両方を発現する。基材を用いた積層造形法に使用される放射線硬化性液状樹脂を配合する場合、放射線硬化性液状樹脂の新たに硬化した層が基材から完全に剥離することが重要である。放射線硬化性液状樹脂の新たに硬化した層の基材からの剥離は、接着破壊として知られている。
【0036】
[034]既硬化層に対する十分な凝集力が迅速に発現することが全ての積層造形用途に重要である。放射線硬化性液状樹脂の新たに硬化した層から基材を剥離することによりさらなる力(接着力)が生じるため、基材を用いた積層造形法では、凝集力がより重要となる。放射線硬化性液状樹脂の新たに硬化した層が基材に対して強力に接着すると、凝集破壊が起こることがある。放射線硬化性液状樹脂の新たに硬化した層が、既硬化層よりも基材によく接着し、基材から完全に分離しないか、または既硬化層中に何らかの分離を引き起こす場合、凝集破壊が起こる。このような凝集破壊は、1層ずつ行う部品構築にとって破局的である。要約すると、構築物のどの層についても凝集破壊の前に接着破壊が起こるように放射線硬化性液状樹脂の硬化を制御できなければ、構築物は不合格となる。
【0037】
[035]さらに複雑なことは、硬化層が破壊または他に崩壊することなく基材から完全に分離できるように、硬化層がそれ自体で十分な強度を発現しなければならないということである。一般に、この特性は、実時間動的機械分析(RT−DMA)を使用して、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)として測定することができる。しかし、硬化層が十分な貯蔵剪断弾性率を発現する場合でも、依然として、基材に対する過大な接着強度が発現し、そのため凝集破壊または不完全な剥離が起こることがある。一般に、放射線硬化性液状樹脂が迅速に貯蔵剪断弾性率を発現でき、剥離前に基材に対して低い接着強度を有することが望ましい。剥離が起こると、その部分の凝集力が迅速に増加し、次の層を構築するときに凝集破壊が起こらなくなることが望ましい。
【0038】
[036]基材を使用しない積層造形用途、例えば、光造形用途では、ハイブリッド放射線硬化性液状樹脂配合物が好まれてきた。一般に、放射線硬化性液状樹脂におけるカチオン重合速度は、放射線硬化性液状樹脂に十分な量のフリーラジカル重合性成分が組み込まれない限り、ラピッドプロトタイピング用途には遅過ぎると考えられる。光開始フリーラジカル重合速度は非常に速く、光開始カチオン重合速度よりずっと速い。この速い重合は、ラピッドプロトタイピング用途に必要な生強度や凝集力の増加に重要である。しかし、フリーラジカル重合性成分は、重合収縮が大きく、酸素阻害を受け、硬化後の機械的特性がかなり低い。フリーラジカル重合性成分にこれらの欠点があるにもかかわらず、フリーラジカル重合性成分を含まない放射線硬化性液状樹脂は、一般に、ラピッドプロトタイピング用途に使用するには硬化が遅すぎる。
【0039】
[037]さらに、フリーラジカル重合性成分が発現する基材に対する接着強度は、一般に、カチオン硬化性成分よりも低い。そのため、基材を用いた積層造形法に使用される放射線硬化性液状樹脂を配合しようとする以前の試みは、全部フリーラジカルベースの組成物となった。このような組成物は、一般に、様々な(メタ)アクリレート類および/またはウレタン(メタ)アクリレート類の混合物を含有する。米国特許第7358283号明細書および国際公開第2010/027931号パンフレット(共に3Dシステムズ社に付与)を参照されたい。ウレタン(メタ)アクリレート類は、カチオン硬化系とほとんど非相溶性であることが広く知られている。Vabrik et al.,Journal of Applied Polymer Science,Vol.68,111−119(1998);(2)米国特許第4,920,156号明細書を参照されたい(“当業者にはもちろん、このような窒素含有化合物を光開始剤と共に使用する場合、重合反応を阻害しないようにするため塩基性有機窒素含有化合物は少量しか使用できないことが分かる。”)
【0040】
[038]ハイブリッド放射線硬化性液状樹脂の硬化は比較的遅くなるため、カチオン硬化性成分の量が増加するにつれ、十分高い貯蔵剪断弾性率を発現することがずっと困難になる。さらに、ハイブリッド硬化樹脂系は、全部フリーラジカル硬化性成分から構成される放射線硬化性液状樹脂よりも、基材に対する接着強度が高い。従って、基材を用いた積層造形法においてハイブリッド放射線硬化性液状樹脂を硬化させる場合の理想的なシナリオは、生強度、凝集力、またはバルク強度を迅速に発現するが、過大な接着強度を発現しないように最初はカチオン硬化性成分の硬化速度が遅いことである。剥離が起こった後、三次元物体が十分な生強度を発現し、次の層で凝集破壊が起こらないようにするため、カチオン硬化性成分は迅速に硬化しなければならない。従って、剥離後の時間は、積層造形法の成功に重要であり、放射線硬化性液状樹脂の硬化性および接着性に適合しなければならない。
【0041】
[039]基材を用いた様々な積層造形法が知られている。これらの方法にはそれぞれ様々な複雑さがあり、放射線硬化性液状樹脂の配合者にとって様々な問題点がある。
【0042】
[040]米国特許第7438846号明細書(エンビジョンテックに付与)は、剪断作用と剥離作用の組み合わせを促進することにより硬化樹脂と基材が分離し易くなるようにするため、シリコーンまたはラテックス製の基材などの高弾性基材の利点を教示している(3段落、16〜22行目)。この機構では、基材は、その部分を保持するエレベータの垂直方向の移動により硬化樹脂層から分離される。この特許は、また、分離プロセス中に角度が変化する、力の水平成分の重要性についても論述している(3段落、42〜54行目および図3Bおよび図3C)。
【0043】
[041]米国特許第7731887号明細書(3Dシステムズに付与)は、剪断プロセスにより基材から硬化層を分離する機構を開示している(14段落、65行目〜15段落、5行目)。この特許に開示されている機構は、主に、非弾性基材、例えばPTFE(12段落33〜48行目)を使用する。米国特許第7614866号明細書(3Dシステムズに付与)は、基材を用いた類似の積層造形方法を開示している。硬化樹脂の分離は主に剪断作用によって基材から分離されるが、除去し易くするためにエレベータプラットフォームを傾斜させてもよい。(25段落、31行目〜26段落、21行目、ならびに図62および図63)。さらに、基材を除去し易くするためにエレベータまたは基材を捩じってもよいと記載されている。
【0044】
[042]国際公開第2010/74566号パンフレット(TNOに付与)は、造形と剥離を同時に行う積層造形法を教示している。換言すれば、放射線硬化性液状樹脂層の1つの位置の造形を行うと同時に、新たに硬化した同じ層の異なる位置を基材から分離する。構築プロセス全体を通して剥離角度は一定である。
【0045】
[043]請求する本発明の第1の態様によれば、放射線硬化性液状樹脂は、8mmのプレートを有し、試料間隙を0.10mmにした実時間動的機械分析装置で放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を測定する場合、約9.0×10Paより大きい、好ましくは1.0×10Paより大きい、より好ましくは2.0×10Paより大きい(G’)値を達成することができ、ここで、前記貯蔵剪断弾性率(G’)は、1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で放射線硬化性液状樹脂を硬化させる時、測定される。一実施形態では、貯蔵剪断弾性率は周囲温度20〜23℃および相対湿度パーセント25〜35%で測定される。分離遅延時間までに前述の貯蔵剪断弾性率値が得られることにより、放射線硬化性液状樹脂は、一体の状態で基材から十分剥離されるのに十分な初期強度を発現することができる。放射線硬化性液状樹脂が分離遅延時間までにこの貯蔵剪断弾性率の値を達成することができない場合、基材を用いたプロセスでは、請求する本発明のプロセスと比較して望ましくない三次元物品が製造されることが本発明者らにより見出された。カチオン硬化性成分は比較的硬化が遅いという特性を有するため、かなりの量の、例えば、30重量%より多いカチオン硬化性成分を含む放射線硬化性液状樹脂が、分離遅延時間に完全な剥離を可能にする十分高い貯蔵剪断弾性率を達成することは、一般に、より困難となる。
【0046】
[044]請求する本方法によれば、新たに硬化した層は、分離遅延時間後に基材から分離されなければならない。新たに硬化した層は、必ずしもちょうど分離遅延時間に剥離されなければならないわけではない。代わりに、分離を行うよりしばらく前に、分離遅延時間を経なければならない。さらに、本発明者らは、特定の上限時間までに硬化層と基材が分離されない場合、構築物は不合格となるおそれがあることを見出した。上限時間後に基材と硬化層の分離を試みると、既硬化層中で凝集破壊が起こる、新たに硬化した層の既硬化層に対する凝集力が欠如する、および/または硬化層が基材から部分的にしか分離しないことになるであろう。一実施形態では、この上限時間は30.0秒、好ましくは25.0秒、より好ましくは 20.0秒、より好ましくは18.0 秒、より好ましくは15.0秒、より好ましくは10.0秒、最も好ましくは6.0秒である。
【0047】
[045]本発明者らは、驚くべきことに、優れた機械的特性を有する三次元物体の形成を可能にするのに十分な量のカチオン硬化性成分を含み、請求する本発明の第1の態様に従い、基材を用いた積層造形法で三次元物体をうまく構築することができるハイブリッド放射線硬化性液状樹脂を見出した。複数の実施形態では、放射線硬化性液状樹脂は、カチオン重合性成分、カチオン光開始剤、フリーラジカル重合性成分、およびフリーラジカル光開始剤を含む。当業者には、この特許出願が、これらの4つの成分の様々な含有量範囲を互いに組み合わせて開示しており、別々に記載されているこれらの範囲のどれを組み合わせても、これらの成分が記載の範囲内で組み合わせられる場合、本明細書に開示されていない新規な発明は得られないことが分かる。
【0048】
[046]本発明のプロセスに使用される放射線硬化性液状樹脂は、少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を少なくとも30重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含む。別の実施形態では、放射線硬化性液状樹脂は、少なくとも1種類のカチオン重合性化合物を少なくとも40重量%、より好ましくは40〜80重量%、より好ましくは40〜75重量%、より好ましくは40〜70重量%含む。
【0049】
[047]一実施形態によれば、本発明の放射線硬化性液状樹脂は、少なくとも1種類のカチオン重合性成分、即ち、カチオンによりまたは酸発生剤の存在下で開始される重合を経る成分を含む。カチオン重合性成分は、モノマーであっても、オリゴマーであっても、および/またはポリマーであってもよく、脂肪族、芳香族、脂環式、芳香脂肪族、複素環式部分、およびこれらの任意の組み合わせを含有してもよい。適した環状エーテル化合物は、環状エーテル基を側鎖基、または脂環式もしくは複素環式環系の一部を形成する基として含んでもよい。
【0050】
[048]カチオン重合性成分は、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロ−オルトエステル化合物、環状ラクトン化合物、およびビニルエーテル化合物、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
[049]カチオン重合性成分の例としては、エポキシ化合物およびオキセタン類などの環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロ−オルトエステル化合物、およびビニルエーテル化合物が挙げられる。カチオン重合性成分の具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−1,4−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンオキサイド、リモネンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ビシクロヘキシル−3,3’−エポキシド、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(CH−、−CBr、−C(CBr−、−C(CF−、−C(CC1−、または−CH(C)−の結合を有するビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロジオクチルフタレート、エポキシヘキサヒドロ−ジ−2−エチルヘキシルフタレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールなどの脂肪族多価アルコールに1つ以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類、長鎖脂肪族二塩基酸のジグリシジルエステル類、高級脂肪族アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またはこれらの化合物にアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類、高級脂肪酸のグリシジルエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアリン酸、エポキシオクチルステアリン酸、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(3−ヒドロキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(5−ヒドロキシペンチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、ビス((1−エチル(3−オキセタニル))メチル)エーテル、3−エチル−3−((2−エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3−エチル−((トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−(メタ)−アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[l−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[l−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]−ベンゼン、[l−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カチオン重合性である多官能性材料の例としては、デンドリマー、リニアデンドリティックポリマー、デンドリグラフトポリマー、ハイパーブランチポリマー、スターブランチポリマー、およびエポキシ官能基またはオキセタン官能基を有するハイパーグラフトポリマーなどの樹枝状ポリマーが挙げられる。樹枝状ポリマーは、1種類の重合性官能基を含有しても、または複数の異なる種類の重合性官能基、例えば、エポキシ官能基とオキセタン官能基を含有してもよい。
【0052】
[050]本発明の複数の実施形態では、カチオン重合性成分は、脂環式エポキシとオキセタンからなる群から選択される少なくとも1つである。特定の実施形態では、カチオン重合性成分は、オキセタン、例えば、2つまたは3つ以上のオキセタン基を含有するオキセタンである。別の特定の実施形態では、カチオン重合性成分は、脂環式エポキシ、例えば、2つまたは3つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシである。
【0053】
[051]一実施形態では、エポキシドは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド(CELLOXIDE)(商標)2021Pとしてダイセル化学工業(株)(Daicel Chemical)から、またはサイラキュア(CYRACURE)(商標)UVR−6105としてダウ・ケミカル(Dow Chemical)から入手可能)、水添ビスフェノールA−エピクロロヒドリンをベースにするエポキシ樹脂(エポネックス(EPONEX)(商標)1510としてHexionから入手可能)、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(ヘロキシ(HELOXY)(商標)107としてヘキソンから入手可能)、ジシクロヘキシルジエポキシドとナノシリカの混合物(ナノポックス(NANOPOX)(商標)として入手可能)、およびこれらの任意の組み合わせである。
【0054】
[052]本発明者らは、驚くべきことに、エポキシ化ポリブタジエンをハイブリッド放射線硬化性液状樹脂に添加すると、新たに硬化した樹脂の支持基材からの剥離特性を著しく改善できることを見出した。エポキシ化ポリブタジエン材料の種類と等級、および組成物中の任意のアクリレートの濃度に応じて、エポキシ化ポリブタジエンを約5〜約20重量%、好ましくは約5〜約10重量%添加すると、皮膜形成が良好で生強度の増加が速い組成物が得られる。このような組成物により、例えば、マイラー(即ち、ポリエステル)、TPX(即ち、PMP)、スライドガラスまたはガラス板などの様々な種類の支持基材からの剥離特性が改善されてきた。請求する本発明に使用されるエポキシ化ポリブタジエンの適した例としては、ダイセル化学工業(株)から入手可能なエポリード(Epolead)(登録商標)PB3600、およびサートマー(Sartomer)から入手可能なポリbd(Poly bd)(登録商標)600Eがある。
【0055】
[053]前述のカチオン重合性化合物は、単独で使用されても、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0056】
[054]一実施形態によれば、放射線硬化性液状樹脂の重合性成分は、フリーラジカル重合とカチオン重合の両方で重合可能である。このような重合性成分の例としては、ビニルオキシ化合物、例えば、ビス(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものがある。このような重合性成分の他の例としては、同じ分子上にアクリレートとエポキシ基、またはアクリレートとオキセタン基を含有するものが挙げられる。
【0057】
[055]本発明の複数の実施形態では、本発明のプロセスに使用される放射線硬化性液状樹脂は、カチオン光開始剤も含む。一実施形態によれば、放射線硬化性液状樹脂は、カチオン光開始剤を含む。カチオン光開始剤は、光照射時に光酸を発生する。それらは照射時にブレンステッド酸またはルイス酸を発生する。例えば、オニウム塩、ハロニウム塩、ヨードシル塩、セレン塩、スルホニウム塩、スルホキソニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン塩、イソキノリニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、トロピリウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、チオピリリウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、スルホニウムアンチモン酸塩、フェロセン類、ジ(シクロペンタジエニル鉄)アレーン塩化合物、およびピリジニウム塩、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものなどの任意の適したカチオン光開始剤を使用してもよい。オニウム塩、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩およびフェロセン類は、それらが熱的に安定であるという利点を有する。従って、残留光開始剤は照射光の除去後は硬化を継続しない。カチオン光開始剤には、それらが大気中に存在する酸素に対して敏感でないという利点がある。
【0058】
[056]本発明の複数の実施形態は、少なくとも1種類のカチオン光開始剤を含む放射線硬化性液状樹脂を含み、カチオン光開始剤は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセンをベースにする化合物、芳香族ホスホニウム塩およびシラノールアルミニウム錯体、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、カチオン光開始剤は、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、およびメタロセンをベースにする化合物、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、カチオン光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、およびメタロセンをベースにする化合物、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
[057]特定の実施形態では、カチオン光開始剤は、BF、AsF、SbF、PF、B(C、パーフルオロアルキルスルホネート類、パーフルオロアルキルホスフェート類、およびカルボランアニオンからなる群から選択されるアニオンを有する。
【0060】
[058]一実施形態では、カチオン光開始剤は、SbF、PF、B(C、パーフルオロアルキルスルホネート、パーフルオロアルキルホスフェート、および(CH11Clからなる群から選択される少なくとも1つのアニオンを有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、およびメタロセンをベースにする化合物からなる群から選択されるカチオンを有する。
【0061】
[059]特定の実施形態では、カチオン光開始剤は、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−ヒドロキシエチルオキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−ヒドロキシエチルオキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−ヒドロキシエチルオキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシエトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−メトキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−メトキシカルボニルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(2−ヒドロキシメチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−メチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−フルオロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(2−メトキシカルボニルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム
ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、およびビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される芳香族スルホニウム塩をベースにするカチオン光開始剤である。
【0062】
[060]別の実施形態では、カチオン光開始剤は、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(l−メチルエチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(l−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(l−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、および4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される芳香族ヨードニウム塩をベースにするカチオン光開始剤である。
【0063】
[061]特定の実施形態では、カチオン光開始剤は、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウム、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−[4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、(4−チオフェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、S,S,S’,S’−テトラフェニルチオビス(4,1−フェニレン)ジスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、(クロロフェニル)ジフェニルスルホニウム、クロロ[S−(フェニル)チアントレニウム]、S−(フェニル)チアントレニウム、ジフェニル−4−(4’−チオフェノキシ)チオフェノキシフェニルスルホニウム、フェニルジ(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、S−(4−チオフェノキシフェニル)チアントレニウム、および(チオジ−4,1−フェニレン)ビス[ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニウム、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−[[2−[[[[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]オキシ]テトラデシル]オキシ]フェニル]ヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、[4−(l−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)ヨードニウムのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩またはヘキサフルオロアンチモネート塩、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0064】
[062]例示的実施形態では、放射線硬化性液状樹脂は、トリアリールスルホニウムSbF、トリアリールスルホニウムボレート、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジアリールヨードニウムボレート、ヨードニウム[4−(l−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオン光開始剤を含む。非求核性アニオンが、対イオンの役割を果たす。このようなアニオンの例としては、BF、AsF、SbF、PF、B(C、パーフルオロアルキルスルホネート、パーフルオロアルキルホスフェート、および、(CH11Clなどのカルボランアニオンが挙げられる。
【0065】
[063]増感剤を用いることなく300〜475nm、特に365nmの紫外線で硬化するのに有用なカチオン光開始剤の例としては、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および、実施例の組成物の幾つかに使用されるチバ(Ciba)製のトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(イルガキュア(IRGACURE)(登録商標)PAG 290としても知られるGSID4480−1)が挙げられる。
【0066】
[064]幾つかの実施形態では、放射線硬化性液状樹脂が光増感剤を含むことが望ましい。「光増感剤」という用語は、光開始重合速度を増加させるか、または重合が起こる波長をシフトさせる任意の物質を指すのに使用される;G.Odianによる教科書、Principles of Polymerization、第3版、1991年、222頁を参照されたい。光増感剤の例としては、メタノン類、キサンテノン類、ピレンメタノール類、アントラセン類、ピレン、ペリレン、キノン類、キサントン類、チオキサントン類、ベンゾイルエステル類、ベンゾフェノン類、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。光増感剤の特定の例としては、[4−[(4−メチルフェニル)チオ]フェニル]フェニルメタノン、イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−ピレンメタノール、9−(ヒドロキシメチル)アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブチルオキシアントラセン、9−アントラセンメタノールアセテート、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンおよび2−メチル−9,10−ジエトキシアントラセン、アントラセン、アントラキノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、チオキサントン類およびキサントン類、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、l−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾイルギ酸メチル、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および、これらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0067】
[065]さらに、300〜475nmの波長領域で発光するLED光源を用いて硬化を行う場合、光増感剤は光開始剤と組み合わせると有用である。適した光増感剤の例としては:2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、および2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン類およびキサントン類、ベンゾイルギ酸メチル(チバ製のダロキュア(Darocur)MBF)、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート(チャイテック(Chitec)製のChivacure OMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(チャイテック製のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(チャイテック製のChivacure EMK)が挙げられる。
【0068】
[066]一実施形態では、光増感剤は、フルオロン、例えば、5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、5,7−ジヨード−3−ヒドロキシ−6−フルオロン、9−シアノ−5,7−ジヨード−3−ヒドロキシ−6−フルオロンであるか、または光増感剤は、
【化1】



、および、これらの任意の組み合わせである。
【0069】
[067]放射線硬化性液状樹脂は、任意の適切な量の光増感剤を含んでもよく、例えば、特定の実施形態では組成物の約10重量%以下、特定の実施形態では組成物の約5重量%以下、別の実施形態では組成物の約0.05重量%〜約2重量%の量の光増感剤を含んでもよい。
【0070】
[068]光増感剤を使用する場合、比較的短波長で吸収する他の光開始剤を使用してもよい。このような光開始剤の例としては:ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、およびジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ならびに1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(l−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−l−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、および4−イソプロピルフェニル(l−ヒドロキシイソプロピル)ケトンなどの1−ヒドロキシフェニルケトン類、ベンジルジメチルケタール、およびオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−l−[4−(l−メチルビニル)フェニル]プロパノン](ランベルティ(Lamberti)製のEsacure KIP 150)が挙げられる。これらの光開始剤は、光増感剤と組み合わせて使用すると、約100〜約300nmの波長で発光するLED光源に使用するのに適している。
【0071】
[069]可視光を発するLED光源も知られている。約400nmより大きい、例えば、約475nm〜約900nmの波長の光を発するLED光源では、適した光開始剤の例としては:カンファーキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(チャイテック製のChivacure EMK)、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーのケトン)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ製のイルガキュア819またはBAPO)、ビス(η5−2−4−シクロペンタジエン−l−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(lH−ピロール−l−イル)フェニル]チタン(チバ製のイルガキュア784)などのメタロセン類、ならびにH−Nu 470、H−Nu−535、H−Nu−635、H−Nu−Blue−640、およびH−Nu−Blue−660などのSpectra Group Limited,Inc.製の可視光光開始剤が挙げられる。
【0072】
[070]光増感剤または共開始剤を使用して、カチオン光開始剤の活性を改善してもよい。それは、光開始重合の速度を増加させるか、または重合が起こる波長をシフトさせるためのものである。前述のカチオン光開始剤と組み合わせて使用される増感剤は、特に制限されない。複素環式および縮合環芳香族炭化水素、有機染料、および芳香族ケトンを含む様々な化合物を光増感剤として使用することができる。増感剤の例としては、J.V.CrivelloによりAdvances in Polymer Science,62,1(1984)に、およびJ.V.Crivello & K.Dietlikerにより“Photoinitiators for Cationic Polymerization”in Chemistry & technology of UV & EB formulation for coatings,inks & paints.Volume III,Photoinitiators for free radical and cationic polymerization.by K.Dietliker;[Ed.by P.K.T.Oldring],SITA Technology Ltd,London,1991に開示されている化合物が挙げられる。具体例としては、アントラセン、ピレン、ペリレンおよびそれらの誘導体などのポリ芳香族炭化水素およびそれらの誘導体、チオキサントン類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、アクリジンオレンジ、およびベンゾフラビンが挙げられる。
【0073】
[071]既知の技術的実績のある適したカチオン光開始剤が多数ある。それらには、例えば、求核性の弱いアニオンのオニウム塩が挙げられる。例としては、ハロニウム塩、ヨードシル塩またはスルホニウム塩(欧州特許出願公開第153904号明細書および国際公開第98/28663号パンフレットに記載のものなど)、スルホキソニウム塩(例えば、欧州特許出願公開第35969号明細書、同第44274号明細書、同第54509号明細書および同第164314号明細書に記載のものなど)、またはジアゾニウム塩(例えば、米国特許第3,708,296号明細書および同第5,002,856号明細書に記載のものなど)がある。これらの開示の8つ全部が参照によりその内容全体が本明細書に援用される。他のカチオン光開始剤には、メタロセン塩(例えば、欧州特許出願公開第94914および同第94915号明細書に記載のものなど)があり、これらの特許文献は共に参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0074】
[072]現在使用されている他のオニウム塩開始剤および/またはメタロセン塩の概要は、“UV Curing,Science and Technology”,(Editor S.P.Pappas,Technology Marketing Corp.,642 Westover Road,Stamford,Conn.,U.S.A.)または“Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings,Inks & Paints”,Vol.3(P.K.T.Oldring編)に記載されている。
【0075】
[073]適したフェロセンタイプのカチオン光開始剤としては、例えば、中国特許第101190931号明細書に開示されている式(I):
【化2】



(式中、アニオンMXnは、BF4、PF6、SbF6、AsF6、(C6F5)4B、ClO4、CF3SO3、FSO3、CH3SO3、C4F9SO3から選択され、Arは縮合環または多環式アレーンである)のジ(シクロペンタジエニル鉄)アレーン塩化合物が挙げられる。
【0076】
[074]他の例示的フェロセンタイプのカチオン光開始剤としては、例えば、(η6−カルバゾール)(η5−シクロペンタ−ジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート塩、特に、窒素原子上にそれぞれC4およびC8アルキル鎖を有する、[シクロペンタジエン−Fe−N−ブチルカルバゾール]ヘキサフルオロ−ホスフェート(C4−CFS PF6)および[シクロペンタジエン−Fe−N−オクチル−カルバゾール]ヘキサフルオロホスフェート(C8−CFS PF6)(Polymer Eng.& Science(2009),49(3),613−618を参照されたい);フェロセニウムジカチオン塩、例えば、Chinese J.Chem.Engnrng(2008),16(5),819−822およびPolymer Bulltn(2005),53(5−6),323−331に開示されている、ビフェニルビス[(π−シクロペンタジエニル)鉄]ヘキサフルオロホスフェート([ビス(Cp−Fe)−ビフェニル](PF6)2)および直鎖状シクロペンタジエン−鉄−ビフェニルヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−ビフェニル]+PF6−);J Photochem.& Photobiology,A:Chemistry(2007),187(2−3),389−394およびPolymer Intnl(2005),54(9),1251−1255に開示されている、シクロペンタジエニル−Fe−カルバゾールヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−カルバゾール]+PF6−)、シクロペンタジエニル−Fe−N−エチルカルバゾールヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−n−エチルカルバゾール]+PF6−)およびシクロペンタジエニル−Fe−アミノナフタレンヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−アミノナフタレン]+PF6−);アルコキシ置換フェロセニウム塩、例えば、Chinese J.of Chem Engnrng(2006),14(6),806−809に開示されている[シクロペンタジエン−Fe−アニソール]PF6、[シクロペンタジエン−Fe−アニソール]BF4、[シクロペンタジエン−Fe−ジフェニルエーテル]PF6、[シクロ−ペンタジエン−Fe−ジフェニルエーテル]BF4、および[シクロペンタジエン−Fe−ジエトキシ−ベンゼン]PF6;シクロペンタジエン−鉄−アレーンテトラフルオロボレート、例えば、Imaging Science J(2003),51(4),247−253に開示されている、シクロペンタジエン−鉄−ナフタレンテトラフルオロボレート([Cp−Fe−Naph]BF4)塩;Ganguang Kexue Yu Guang Huaxue(2003),21(1),46−52に開示されている、フェロセニルテトラフルオロボレート([Cp−Fe−CP]BF4);Ganguang Kexue Yu Guang Huaxue(2002),20(3),177−184に開示されている[CpFe(η6−tol)]BF4、Int.J of Photoenergy(2009),Article ID 981065に開示されている、フェロセニウム塩(η6−α−ナフトキシベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート(NOFC−1)および(η6−β−ナフトキシベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート(NOFC−2);Progress in Organic Coatings(2009),65(2),251−256に開示されている、(η6−ジフェニル−メタン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェートおよび(η6−ベンゾフェノン)(η5−シクロペンタ−ジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート;Chem Comm(1999),(17),1631−1632に開示されている、[CpFe(η6−イソプロピル−ベンゼン)]PF6;ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0077】
[075]適したオニウムタイプのカチオン光開始剤としては、例えば、特開2006−151852号に開示されているヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。他の例示的オニウムタイプの光開始剤としては、例えば、米国特許第5,639,413号明細書、同第5,705,116号明細書;同第5,494618号明細書;同第6,593,388号明細書;およびChemistry of Materials(2002),14(11),4858−4866に開示されている、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリール−ジアゾニウム塩、フェロセニウム塩、ジアリールスルホキソニウム塩、ジアリール−ヨードキソニウム塩、トリアリール−スルホキソニウム塩、ジアルキルフェナシル−スルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシ−フェニルスルホニウム塩、フェナシル−トリアリールホスホニウム塩、および窒素含有複素環式化合物のフェナシル塩;米国特許出願公開第2008/0292993号明細書に開示されている、芳香族スルホニウム塩またはヨードニウム塩;米国特許出願公開第2008260960号明細書、およびJ.Poly Sci,Part A(2005),43(21),5217に開示されている、ジアリール−、トリアリール−、またはジアルキルフェナシルスルホニウム塩;Macromolecules(2008),41(10),3468−3471に開示されている、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Ph2I+PF6−);例えば、SbF6−の代わりに毒性の少ないアニオンを使用するオニウム塩使用するオニウム塩が挙げられる。ネットワークポリマー(2007),28(3),101−108に開示されている、B(C6F5)4−、Ga(C6F5)4−およびパーフルオロアルキルフルオロホスフェート、PFnRf(6−n)−;Eur Polymer J(2002),38(9),1845−1850に開示されている、構造中にベンゾフェノン部分を含有する光活性アリルアンモニウム塩(BPEA);Polymer(1997),38(7),1719−1723に開示されている、l−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロアンチモネート;およびこれらの任意の組み合わせなどのアニオンが挙げられる。
【0078】
[076]例えば、例示的ヨードニウムタイプのカチオン光開始剤としては、例えば、米国特許出願公開第2006041032号明細書に開示されている、(4−n−ペンタデシルオキシ−フェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのヘキサフルオロ−ホスフェート等の対イオンを有するジアリールヨードニウム塩;米国特許第4394403号明細書およびMacromolecules(2008),41(2),295−297に開示されている、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;Polymer(1993),34(2),426−8に開示されているジフェニルヨードニウムイオン;Yingyong Huaxue(1990),7(3),54−56に開示されている、四フッ化ホウ素を有するジフェニルヨードニウム塩(Ph2I+BF4−);Nuclear Inst.& Methods in Physics Res,B(2007),264(2),318−322に開示されている、SR−1012、ジアリールヨードニウム(diaryldiodonium)塩;ジアリールヨードニウム塩、例えば、J Polymr Sci,Polymr Chem Edition(1978),16(10),2441−2451に開示されている、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニル−ヨードニウムヘキサフルオロアーセネート;J Polymr Sci,Poly Sympos(1976),56,383−95に開示されている、ジフェニルヨードニウムフルオロボレートなどの金属ハロゲン化物錯アニオンを含有するジアリールヨードニウム塩;および、これらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0079】
[077]例示的スルホニウムタイプのカチオン光開始剤としては、例えば、特開2007−126612号に開示されている、UVI 6992(スルホニウム塩);特開平10−101718号に開示されている次式:
【化3】



(式中、Rl〜R2=F;R3=イソプロピル;R4=H;X=PF6である)の化合物;例えば、米国特許第6,054,501号明細書に開示されている、次式:
【化4】



のチオキサントンをベースにするスルホニウム塩;米国特許第5,159,088号明細書に開示されている、R−xS+R3xA−タイプの(アシルオキシフェニル)スルホニウム塩(式中、A−は、AsF−などの非求核性アニオンであり、R3は下記に示すフェニル基:
【化5】



であってもよい);9,10−ジチオフェノキシアントラセンアルキルジアリールスルホニウム塩、例えば、米国特許第4,760,013号明細書に開示されている、エチルフェニル(9−チオフェノキシ−アントラセニル−10)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等;など;米国特許第4,245,029号明細書に開示されている、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩;J Poly Sci,Part A(2003),41(16),2570−2587に開示されている、S,S−ジメチル−S−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩;J Photochem & Photobiology,A:Chemistry(2003),159(2),161−171に開示されているアントラセン結合スルホニウム塩;J Photopolymer Science & Tech(2000),13(1),117−118、およびJ Poly Science,Part A(2008),46(11),3820−29に開示されている、トリアリールスルホニウム塩;J Macromol Sci,Part A(2006),43(9),1339−1353に開示されている、S−アリール−S,S−シクロアルキルスルホニウム塩;UV & EB Tech Expo & Conf,May 2−5,2004,55−69およびACS Symp Ser(2003),847,219−230に開示されている、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩;ACS 224th Natnl Meeting,August 18−22,2002,POLY−726に開示されている、ジアルキル(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、およびそれらの異性体のジアルキル(2−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩;ドデシル(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートおよびドデシル以外の類似のアルキル類似体。ACS Polymer Preprints(2002),43(2),918−919に開示されている、テトラヒドロ−l−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)チオフェニウムヘキサフルオロホスフェートおよびテトラヒドロ−l−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)チオフェニウムヘキサフルオロホスフェート;J Polymr Sci,Part A(2000),38(9),1433−1442に開示されている、一般構造式、Ar’S+CH3(C12H25)SbF6−(式中、Ar’はフェナシル(I)、2−インダノニル(II)、4−メトキシフェナシル(III)、2−ナフトイルメチル(IV)、1−アンスロイルメチル(V)、または1−ピレノイルメチル(VI)である)を有する光開始剤;J Polymr Sci,Part A(1996),34(16),3231−3253に開示されている、BF4、AsF6、PF6、およびSbF6などの金属ハロゲン化物錯アニオンを有する、トリアリールスルホニウム塩Ar3S+MXn−;Macromolecules(1981),14(5),1141−1147に開示されている、ジアルキルフェナシルスルホニウムおよびジアルキル(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩;J.Polymr.Sci,Polymr Chem Edition(1979),17(4),977−99に開示されているトリアリールスルホニウム塩R2R1S+MFn−(R,Rl=Phまたは置換フェニル;M=B、As、P;n=4または6)および、次式(I):
【化6】



のスルホニウム塩;例えば、PF6−アニオンを有する芳香族スルホニウム塩、例えば、特開2000−239648に開示されている、UVI 6970;および、これらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0080】
[078]適したピリジニウムタイプのカチオン光開始剤としては、例えば、Turkish J of Chemistry(1993),17(1),44−49に開示されている、N−エトキシ2−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(EMP+PF6−);Polymer(1994),35(11),2428−31に開示されている、ピリジニウム塩と芳香族電子供与体(ヘキサメチル−ベンゼンおよび1,2,4−トリメチオキシ(trimethyoxy)−ベンゼン)の電荷移動錯体;Macromolecular Rapid Comm(2008),29(11),892−896に開示されている、N,N’−ジエトキシ−4,4’−アゾビス(ピリジニウム)ヘキサフルオロホスフェート(DEAP);および、これらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0081】
[079]他の適したカチオン光開始剤としては、例えば、オニウム塩の存在下におけるアシルゲルマンをベースにする光開始剤、例えば、Macromolecules(2008),41(18)6714−6718に開示されている、ベンゾイルトリメチルゲルマン(BTG)とジフェニル−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Ph2I+PF6−)またはN−エトキシ−2−メチル−ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(EMP+PF6−)などのオニウム塩;Macromolecular Symposia(2006),240,186−193に開示されているDi−Phジセレニド(DPDS);Macromol Rapid Comm.(2002),23(9),567−570に開示されている、N−フェナシル−N,N−ジメチル−アニリニウムヘキサフルオロアンチモネート(PDA+SbF6−);Designed Monomers and Polymers(2007),10(4),327−345に開示されている、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロ−アンチモネート(1A)とトリルクミル−ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロ−フェニル)ボレート(IB)との相乗的ブレンド、およびクメンシクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートとIAおよびIBとの相乗的ブレンド;ジアゾニウム塩、例えば、ACS Symp Series(2003),847,202−212に開示されている、錯アニオンを有する4−(ヘキシルオキシ)置換ジアゾニウム塩;J Poly Sci,Part A(2002),40(20),3465−3480に開示されている5−アリールチアントレニウム塩;ならびに、これらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0082】
[080]他の適したカチオン光開始剤としては、例えば、長波長紫外線を吸収するように変性されたトリアリールスルホニウムボレート類などのトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。このような変性ボレート類の例示的な例としては、例えば、Denkaから入手可能なSP−300、チバ/BASFから入手可能なトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(GSID4480−1)、ならびに国際公開第1999028295号パンフレット;国際公開第2004029037号パンフレット;国際公開第2009057600号パンフレット;米国特許第6368769号明細書 国際公開第2009047105号パンフレット;国際公開第2009047151号パンフレット;国際公開第2009047152号パンフレット;米国特許出願公開第20090208872号明細書;および米国特許第7611817号明細書に開示されている光開始剤が挙げられる。
【0083】
[081]好ましいカチオン光開始剤としては、ビス[4−ジフェニルスルホニウムフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート;チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(チャイテックからChivacure 1176として入手可能);トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(チバ/BASF製のGSID4480−1)、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ヨードニウム、[4−(l−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)−、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア(Rhodia)からロードルシル(Rhodorsil)2074として入手可能)、4−[4−(2−クロロベンゾイル])フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(SP−172)およびSP−300として(共にADEKAから入手可能)の混合物が挙げられる。
【0084】
[082]放射線硬化性液状樹脂は、任意の適切な量のカチオン光開始剤、例えば、特定の実施形態では組成物の約20重量%以下、別の実施形態では組成物の約0.5重量%〜約10重量%、別の実施形態では組成物の約1〜約5重量%の量のカチオン光開始剤を含んでもよい。一実施形態では、上記の範囲は、エポキシモノマーに使用するのに特に適している。
【0085】
[083]本発明の一実施形態によれば、本発明の放射線硬化性液状樹脂は、少なくとも1種類のフリーラジカル重合性成分、即ち、フリーラジカルによって開始される重合を経る成分を含む。フリーラジカル重合性成分は、モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーであり;それらは一官能性または多官能性材料である、即ち、フリーラジカル開始によって重合することができ、(1つ以上の)脂肪族、芳香族、脂環式、芳香脂肪族、複素環式部分、またはこれらの任意の組み合わせを含有し得る、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100またはそれより多くの官能基を有する。多官能性材料の例としては、デンドリマー、リニアデンドリティックポリマー、デンドリグラフトポリマー、ハイパーブランチポリマー、スターブランチポリマー、およびハイパーグラフトポリマーなどの樹枝状ポリマーが挙げられ;例えば、米国特許出願公開第2009/0093564Al号明細書を参照されたい。樹枝状ポリマーは、1種類の重合性官能基を含有しても、または複数の異なる種類の重合性官能基、例えば、アクリレートおよびメタクリレート官能基を含有してもよい。
【0086】
[084]フリーラジカル重合性成分の例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレートなどのアクリレート類およびメタクリレート類が挙げられる。
【0087】
[085]多官能性フリーラジカル重合性成分の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−l,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート;3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンジ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノ−およびジ(メタ)アクリレート、C−C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メト)クリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、および前述のモノマーのいずれかのアルコキシル化変種(例えば、エトキシ化および/またはプロポキシ化)、ならびにビスフェノールAへのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAへのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルエーテルのビスフェノールAの(メタ)アクリレート付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、およびヒドロキシエチルアクリレートの付加物などの(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。
【0088】
[086]一実施形態によれば、多官能性成分の多官能性(メタ)アクリレートとしては、全てのメタクリロイル基、全てのアクリロイル基、またはメタクリロイル基とアクリロイル基の任意の組み合わせを挙げることができる。一実施形態では、フリーラジカル重合性成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化またはプロポキシ化ビスフェノールAまたはビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メト)クリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびプロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、および、これらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
[087]別の実施形態では、フリーラジカル重合性成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、およびプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、および、これらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
[088]特定の実施形態では、本発明の積層造形用の光硬化性樹脂組成物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および/またはプロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの1つ以上、より詳細にはビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、および/またはプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートの1つ以上を含む。
【0091】
[089]放射線硬化性液状樹脂は、任意の適切な量のフリーラジカル重合性成分、例えば、特定の実施形態では組成物の約60重量%以下、特定の実施形態では組成物の約50重量%以下の量のフリーラジカル重合性成分を含んでもよい。別の実施形態では組成物の約15重量%〜約50重量%、他の実施形態では組成物の約15〜約40重量%。
【0092】
[090]放射線硬化性液状樹脂は、フリーラジカル光開始剤を含んでもよい。典型的には、フリーラジカル光開始剤は、「ノリッシュI型」として知られる開裂によりラジカルを形成するものと、「ノリッシュII型」として知られる水素引抜によりラジカルを形成するものとに分類される。ノリッシュII型光開始剤は、フリーラジカル源の役割を果たす水素供与体を必要とする。開始が2分子反応に基づくため、ノリッシュII型光開始剤は、一般に、単分子反応によるラジカル形成に基づくノリッシュI型光開始剤よりも遅い。他方、ノリッシュII型光開始剤の方が、近紫外分光領域における光吸収特性が優れている。アルコール、アミン、またはチオールなどの水素供与体の存在下におけるベンゾフェノン、チオキサントン、ベンジルおよびキノンなどの芳香族ケトンの光分解により、カルボニル化合物から生成するラジカル(ケチルタイプのラジカル)と水素供与体から誘導される別のラジカルが形成される。ビニルモノマーの光重合は、通常、水素供与体から生成されるラジカルによって開始される。ケチルラジカルは、不対電子の立体障害と非局在化のため、通常、ビニルモノマーに対して反応しない。
【0093】
[091]請求するプロセスに有用な放射線硬化性液状樹脂組成物をうまく配合するために、組成物中に存在する(1種類以上の)光開始剤の波長感度を調べ、それらが硬化光を提供するために選択されるLED光によって活性化されるかどうか判定する必要がある。
【0094】
[092]一実施形態によれば、放射線硬化性液状樹脂は、少なくとも1種類のフリーラジカル光開始剤、例えば、ベンゾイルホスフィンオキサイド類、アリールケトン類、ベンゾフェノン類、ヒドロキシル化ケトン類、1−ヒドロキシフェニルケトン類、ケタール類、メタロセン類、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0095】
[093]一実施形態では、放射線硬化性液状樹脂は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−l−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−l,2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−l−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−l−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−l−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーのケトン)、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピルケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−l−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、カンファーキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ビス(η5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(lH−ピロール−1−イル)フェニル]チタン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のフリーラジカル光開始剤を含む。
【0096】
[094]300〜475nmの波長領域で発光するLED光源、とりわけ、365nm、390nm、または395nmで発光するLED光源に関して、この領域で吸収する適したフリーラジカル光開始剤の例としては:例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF製のルシリン(Lucirin)TPO)および2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルなどのベンゾイルホスフィンオキサイド類、エトキシホスフィンオキサイド(BASF製のルシリンTPO−L)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ製のイルガキュア819またはBAPO)、2−メチル−l−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(チバ製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ製のイルガキュア369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−l−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(チバ製のイルガキュア379)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(チャイテック製のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(チャイテック製のChivacure EMK)、および4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーのケトン)が挙げられる。これらの混合物も適している。
【0097】
[095]さらに、光増感剤は、この波長領域で発光するLED光源で硬化を行う場合、光開始剤と併用すると有用である。適した光増感剤の例としては:2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、および2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン類およびキサントン類、ベンゾイルギ酸メチル(チバ製のダロキュアMBF)、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート(チバ製のChivacure OMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(チバ製のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(チバ製のChivacure EMK)が挙げられる。
【0098】
[096]LED紫外線光源が比較的短波長の光を発するように設計することが可能である。約100〜約300nmの波長で発光するLED光源では、光増感剤を光開始剤と共に使用することが望ましい。前述のものなどの光増感剤が配合物中に存在する場合、比較的短波長で吸収する他の光開始剤を使用してもよい。このような光開始剤の例としては:ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、およびジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ならびに1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−l−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、および4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンなどの1−ヒドロキシフェニルケトン類、ベンジルジメチルケタール、およびオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−l−[4−(l−メチルビニル)フェニル]プロパノン](ランベルティ製のEsacure KIP 150)が挙げられる。
【0099】
[097]LED光源は、また、可視光を発するように設計されてもよい。約475nm〜約900nmの波長の光を発するLED光源に関して、適したフリーラジカル光開始剤の例としては:カンファーキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(チャイテック製のChivacure EMK)、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーのケトン)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ製のイルガキュア819またはBAPO)、ビス(η5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−l−イル)フェニル]チタン(チバ製のイルガキュア784)などのメタロセン類、ならびに、H−Nu 470、H−Nu−535、H−Nu−635、H−Nu−Blue−640およびH−Nu−Blue−660などのSpectra Group Limited,Inc.製の可視光光開始剤が挙げられる。
【0100】
[098]請求する本発明の一実施形態では、LEDによって発せられる光は、約320〜約400nmの波長を有する放射線である紫外線Aである。請求する本発明の一実施形態では、LEDが発する光は、約280〜約320nmの波長を有する放射線である紫外線Bである。請求する本発明の一実施形態では、LEDによって発せられる光は、約100〜約280nmの波長を有する放射線である紫外線Cである。
【0101】
[099]本発明の複数の実施形態は、樹脂のカチオン硬化を遅延させる特性を有するフリーラジカル光開始剤を約0.5重量%以下含む。本発明者らは、驚くべきことに、このような成分を約0.5重量%以下組み込むと、基材からの剥離の改善を可能にするのに十分、放射線硬化性液状樹脂のカチオン硬化を遅延できることを見出した。速いカチオン硬化が望ましいため、通常、カチオン硬化を遅延させるフリーラジカル光開始剤はハイブリッド放射線硬化性液状樹脂には使用されない。このようなフリーラジカル光開始剤の特に好ましい例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ製のイルガキュア819またはBAPO)がある。一実施形態では、カチオン硬化を部分的に抑制するフリーラジカル光開始剤は約0.05〜約0.25重量%の量で存在する。
【0102】
[0100]放射線硬化性液状樹脂は、任意の適切な量のフリーラジカル光開始剤、例えば、特定の実施形態では組成物の約15重量%以下、特定の実施形態では組成物の約10重量%以下、別の実施形態では組成物の約2重量%〜約8重量%の量のフリーラジカル光開始剤を含んでもよい。
【0103】
[0101]一実施形態によれば、放射線硬化性液状樹脂組成物は、さらに、連鎖移動剤、特に、カチオンモノマー用の連鎖移動剤を含んでもよい。連鎖移動剤は、活性水素を含有する官能基を有する。活性水素含有官能基の例としては、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、スルホ基、およびチオール基が挙げられる。一実施形態では、連鎖移動剤は、1種類の重合、即ち、カチオン重合またはフリーラジカル重合の生長反応を停止させ、異なる種類の重合、即ち、フリーラジカル重合またはカチオン重合を開始させる。一実施形態によれば、異なるモノマーへの連鎖移動が好ましい機構である。複数の実施形態では、連鎖移動により、分岐分子または架橋分子が生成する傾向がある。従って、連鎖移動は、硬化樹脂組成物の分子量分布、架橋密度、熱的特性、および/または機械的特性を制御する方法を提供する。
【0104】
[0102]任意の適切な連鎖移動剤を使用してもよい。例えば、カチオン重合性成分用の連鎖移動剤は、2つのヒドロキシル基、または3つ以上のヒドロキシル基を含有する化合物などのヒドロキシル含有化合物である。一実施形態では、連鎖移動剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒドロキシル基を有するエトキシ化またはプロポキシ化脂肪族または芳香族化合物、樹枝状ポリオール、ハイパーブランチポリオールからなる群から選択される。ポリエーテルポリオールの例としては、式[(CHO](式中、nは1〜6であってもよく、mは1〜100であってもよい)のアルコキシエーテル基を含むポリエーテルポリオールがある。
【0105】
[0103]連鎖移動剤の特定の例としては、TERATHANE(商標)などのポリテトラヒドロフランがある。
【0106】
[0104]放射線硬化性液状樹脂組成物は、任意の適切な量の連鎖移動剤、例えば、特定の実施形態では組成物の約50重量%以下、特定の実施形態では組成物の約30重量%以下、他の特定の実施形態では組成物の約3重量%〜約20重量%、他の実施形態では約5〜約15重量%の量の連鎖移動剤を含んでもよい。
【0107】
[0105]本発明の放射線硬化性液状樹脂組成物は、さらに、消泡剤(bubble breakers)、酸化防止剤、界面活性剤、酸掃去剤、顔料、染料、増粘剤、難燃剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、樹脂粒子、コアシェル粒子耐衝撃性改良剤、可溶性ポリマーおよびブロックポリマー、サイズが8ナノメートル〜約50ミクロンの範囲の有機、無機、または有機−無機ハイブリッド充填剤からなる群から選択される1種類以上の添加剤を含んでもよい。
【0108】
[0106]粘度の増加、例えば、立体造形(solid imaging)プロセスにおける使用中の粘度の増加を防止するために、組成物に安定剤を添加することが多い。一実施形態では、安定剤としては、米国特許第5,665,792号明細書に記載のものが挙げられ、この開示内容全体が参照により本明細書に援用される。このような安定剤は、通常、IA族およびIIA族の金属の炭化水素カルボン酸塩である。他の実施形態では、これらの塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸ルビジウムである。本発明の配合物には炭酸ルビジウムが好ましく、推奨量は組成物の0.0015〜0.005重量%の範囲である。代替の安定剤としては、ポリビニルピロリドン類およびポリアクリロニトリル類が挙げられる。他の可能な添加剤としては、染料、顔料、充填剤(例えば、シリカ粒子−好ましくは円柱状または球状のシリカ粒子−−、タルク、ガラス粉末、アルミナ、アルミナ水和物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩鉱物、珪藻土、ケイ砂、シリカ粉末、酸化チタン、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、亜鉛粉末、銅粉末、鉛粉末、金粉末、銀粉、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、カーボンウィスカー、サファイヤウィスカー、ベリリアウィスカー、炭化ホウ素ウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、金属酸化物およびチタン酸カリウムウィスカー)、酸化防止剤、湿潤剤、フリーラジカル光開始剤用の光増感剤、連鎖移動剤、レベリング剤、脱泡剤、および界面活性剤等が挙げられる。
【0109】
[0107]本発明の一実施形態によれば、放射線硬化性液状樹脂組成物は、開始剤および/または重合性成分の適切な比を選択することにより所望の感光性が得られるように、重合性成分を含有する。成分の比および開始剤の比は、放射線硬化性液状樹脂組成物または硬化物品の感光性、硬化速度、硬化度、架橋密度、熱的特性(例えば、T)、および/または機械的特性(例えば、引張強度、貯蔵弾性率、損失弾性率)に影響を及ぼす。
【0110】
[0108]従って、一実施形態では、カチオン光開始剤とフリーラジカル光開始剤の重量比(CPI/RP1)は、約0.1〜約2.0、好ましくは約0.1〜約1.0、より好ましくは約0.2〜約0.8である。
【0111】
[0109]一実施形態によれば、放射線硬化性液状樹脂組成物のカチオン重合性成分とフリーラジカル重合性成分の重量比(CPC/RPC)は、約0.8〜約4.5、約1.0〜約4.0、より好ましくは約1.0〜約3.5である。
【0112】
[0110]請求する本発明の第4の態様は、請求する本発明の第1の態様の方法で製造される三次元物体である。
【0113】
[0111]請求する本発明の第3の態様は、
1)少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を30〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含む放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程;
2)放射線硬化性液状樹脂層を既硬化層と接触させる工程;
3)放射線硬化性液状樹脂層を化学線源によって提供される化学線に選択的に露光させ、それによって既硬化層に接着する硬化層を形成する工程;
4)硬化層と基材を分離する工程;および
5)三次元物体を構築するのに十分な回数、工程1〜4を繰り返す工程;
を含む三次元物体の形成方法であり、
放射線硬化性液状樹脂を1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で硬化させる時、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を実時間動的機械分析装置で測定する場合、放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)が、露光の開始から2.0秒で、約7.5×10Paより大きい、好ましくは8.5×10Paより大きい、より好ましくは9.5×10Paより大きい(G’)値に達したことが測定される。
【0114】
[0112]請求する本発明の第4の態様は、請求する本発明の第3の態様の方法で製造される三次元物体である。
【0115】
[0113]以下の実施例は、さらに本発明の実施形態を説明するが、もちろん、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0116】
[実施例]
[0114][実時間動的機械分析(RT−DMA)]
[0115]貯蔵剪断弾性率(G’)を含む実時間動的機械分析(RT−DMA)は、8mmのプレートを有し、間隙を0.1mmにしたStressTech Rheometer(Reologicia Instruments AB、スウェーデン)を使用し、光路に配置される365nmの干渉フィルタ(EXFOから入手可能)と光源からレオメータに光を伝送するための液体充填光導波路を装備した水銀ランプ光源(EXFOから入手可能なオムニキュアシリーズ(OMNICURE Series)2000)を備えるように変更して、硬化される組成物について周囲実験室条件(20〜23℃および25〜35%RH)で行う。365nmの干渉フィルタは、図1に示すスペクトル出力を生成する。次のパラメータで試料を評価する:平衡時間10秒;周波数10Hz;XRL140B検出器を備えたIL 1400放射計(インターナショナルライト(International Light)、マサチューセッツ州ニューベリーポート)による光強度50mW/cm2;露光(データ収集の開始から2.0秒後に開始)1.0秒間;曲線のFFT平滑化;G’、付属のデータ解析ソフトウェアを使用してデータ収集の開始から2.5秒後、2.7秒後、3秒後、4秒後および6秒後に測定。
【0117】
[0116]図2は、RT−DMA装置の概略図を示す。放射線硬化性液状樹脂(1)は、平面(2)上に配置される。使用される液状樹脂の量は、おおよそ図に示す量でなければならない。平面は、StressTech Rheometerと共に販売されている水晶板である。8mmのプレート(3)は、プレートと平面との間隙(4)が0.1mmとなるように位置決めされる。間隙は、StressTech Rheometerに付属するソフトウェアで設定する。光(5)は、平面(2)を通して提供される。RT−DMAに関する詳細については、http://reologicainstruments.com/PDF%20fiies/BobJohnsonUVpaper.pdf.で入手可能な出版物、“Dynamic Mechanical Analysis of UV−Curable Coatings While Curing”、Robert W.Johnson著(この文献は参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0118】
[0117][分離時間試験装置]
[0118]図3に示す試験装置を使用して、分離時間を測定する。試験装置は、4つのローラー(19、19’、19”および19’”)の往復動キャリッジ(18)と365nmのLEDライト(32)とを備える。LEDライトは、日亜化学工業(株)製(Nichia Co.)のNCSU033A型であり、樹脂表面に投影される焦点スポット径を1mmとする。厚み100ミクロンのTPX製の可撓性放射線透過性箔基材(6)を装置上に位置決めし、教示通り引張する。エレベータ(14)はxy方向で静止し、z方向で移動可能である。システムは、放射線硬化性液状樹脂層(10)を塗布するための主動塗布ローラー(19’”)と従動塗布ローラー(19)とを備える。塗布ローラーは、基材(6)上に実質的に均一な放射線硬化性液状樹脂層(10)を塗布することができる溝付ローラーローラー(メイヤーバー)である。システムは、また、主動ガイドローラー(19”)と従動ガイドローラー(19’)も備える。ガイドローラーは、基材(6)を適切な位置に移動させたり、適切な位置から移動させることにより、基材から新たに硬化した層(10’)を分離させる。
【0119】
[0119]装置が第1の方向(73)に移動するとき、主動塗布ローラー(19”’)は、基材(6)上に実質的に均一な放射線硬化性液状樹脂層(10)を塗布する。次いで、基材上の放射線硬化性液状樹脂を既硬化層(14)またはエレベータの構築面と接触させる。次いで、LED(32)が部分(5)の下を通過し、放射線硬化性液状樹脂(10)を硬化させることにより、新たに硬化した放射線硬化性液状樹脂層(10’)が形成される。次いで、従動ガイドローラー(19’)は、既硬化層(14)に接着した新たに硬化した層(10’)から基材(6)を離すことにより、新たに硬化した放射線硬化性液状樹脂層から基材を剥離する役割を果たす。次いで、エレベータ(14)を1層の厚みの量だけ、通常、50ミクロン上方に移動させる。次いで、キャリッジの方向を逆にし(方向73と反対の方向にし)、このプロセスを繰り返す。
【0120】
[0120]往復動キャリッジの速度は調節可能である。光源から従動剥離ローラーの中心までの直線距離は5.5cmである。ガイドローラー(19’および19”)は直径1cmである。従って、10mm/秒の構築時間は、分離時間5.5秒に等しい。
【0121】
[0121][実施例1〜18および比較例1および2]
[0122]本発明に従い、様々な放射線硬化性液状樹脂を試験した。放射線硬化性液状樹脂の成分に関する情報を表1に示す。組成物自体については、表2、表3、および表4に示す。各成分の量は、全組成物の重量%として記載する。実施例はExで示し、比較例は(Comp)で示すが、比較例を本発明の実施例と解釈すべきではない。
【0122】
【表1】



【0123】
【表2】



【0124】
【表3】



【0125】
【表4】



【0126】
[0123]前述の試験装置の運転速度を5mm/sに調節し、構築速度10mm/sから開始し、試験部品をうまく形成することができる本発明のハイブリッド硬化樹脂に関する可能な最速の分離遅延時間まで増加させた。試験は、周囲温度20〜25℃および湿度20〜40%RHで行った。樹脂表面に投影されるスポット径が1mmとなるようにLEDライト(NCSU033A、日亜)の焦点合わせを行った。Programmable Power Supply(型番PSS−3203;GWインステック(GW Instek))から3.65V/100mAの直流出力でLEDライトの電力を供給した。TPXオピュラン(Opulent)箔(X−88BMT4;単層フィルム;両面艶消し;厚み100ミクロン;三井化学アメリカ社(Mitsui Chemicals America,Inc))を基材として使用した。前述の手順に従い貯蔵剪断弾性率(G’)を記録した。貯蔵剪断弾性率値はPaで記載する。照明から剥離までの距離(55mm)を最大構築速度で割ることにより、許容できる最速の分離遅延時間を算出した。結果を表5、表6、および表7に示す。
【0127】
【表5】



【0128】
【表6】



【0129】
【表7】



【0130】
[0124][結果の考察]
[0125]実施例1〜18はそれぞれ、測定した最速の分離遅延時間までに9.0×10Paより大きいG’値を達成することができる。G’値は表示された間隔でしか記録されなかったため、データに何らかの補間を行うには、最速の分離遅延時間でG’を測定する必要がある。比較例1は、20mm/sの速度で構築することができない樹脂を示すために記載されている。構築速度20mm/sは、本分離時間試験装置では、最小分離遅延時間3秒に等しい。比較例1は、2.75秒までに9.0×10Paより大きいG’値を達成することができず、20mm/sの構築速度では不合格となる。比較例1は、20mm/sより遅い構築速度では試験しなかった。比較例2は、10mm/sの構築速度を達成することができなかった。硬化層は、基材から十分に分離せず、前の層に固着した。比較例は、点灯2.0秒後までに7.5×10PaのG’値を達成することができず、全てこの値を達成することができる本発明の実施例と対照的である。
【0131】
[0126]本明細書に引用される出版物、特許出願、および特許を含む参照文献は全て、各参考文献が参照により援用されることが個々に明確に示され、その内容全体が本明細書に記載されるのと同程度、参照により本明細書に援用される。
【0132】
[0127]本発明を説明する文脈(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈)における「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語ならびに類似の指示物の使用は、特記しない限り、または文脈により明確に否定されない限り単数形と複数形の両方を包含するものと解釈すべきである。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ことを意味する)と解釈すべきである。本明細書における値の範囲の記載は、特記しない限り、その範囲に入る各別々の値に個々に言及する速記法の役割を果たすことを意図するに過ぎず、各別々の値は、それが個々に本明細書に記載されるかのごとく、本明細書に援用される。本明細書に記載の方法は全て、特記しない限り、または文脈により明確に否定されない限り、任意の適切な順番で行うことができる。特記しない限り、本明細書に記載の全ての実施例または例示の言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより明らかにすることを目的とするに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言語はいずれも、請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0133】
[0128]本発明者らに既知の本発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。前述の説明を読むと、当業者にはこれらの好ましい実施形態の変形形態が明らかになり得る。本発明者らは当業者がこのような変形形態を適切なものとして使用することを期待し、本発明者らは、本発明が本明細書に明記されている以外の方法でも実施され得るものと考える。従って、適用法により認可されているように、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の対象の全ての変更形態および均等物を含む。さらに、特記しない限り、または文脈により明確に否定されない限り、前述の要素の全ての可能な変形形態のどのような組み合わせも本発明に包含されるものとする。
【0134】
[0129]本発明を詳細に、その特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、請求される本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な改変および変更を行い得ることができることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を30〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含む放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程;
2)前記放射線硬化性液状樹脂層を既硬化層と接触させる工程;
3)前記放射線硬化性液状樹脂層を化学線源によって提供される化学線に選択的に露光させ、それによって前記既硬化層に接着する硬化層を形成する工程;
4)分離遅延時間を設け、前記分離遅延時間の終了後に前記硬化層と前記基材を分離する工程;および
5)三次元物体を構築するのに十分な回数、工程1〜4を繰り返す工程;
を含む三次元物体の形成方法であって、
前記分離遅延時間は、前記放射線硬化性液状樹脂を1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で硬化させる時、前記放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を実時間動的機械分析装置で測定する場合、前記放射線硬化性液状樹脂層の化学線への最初の露光から、前記放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)が、前記露光の開始から測定した時、約9.0×10Paより大きい、好ましくは1.0×10Paより大きい、より好ましくは2.0×10Paより大きい(G’)値に達したことが測定される時点までの時間である、方法。
【請求項2】
前記放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率が、周囲温度20〜23℃および相対湿度パーセント25〜35%で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記実時間動的機械分析装置が8mmのプレートを有し、試料間隙0.10mmとなるように設定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率が、周波数10Hzおよび平衡時間10秒で測定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化層が前記基材に接着せず、前記既硬化層に接着する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
実時間動的機械分析装置で測定する場合、前記放射線硬化性液状樹脂が、露光開始の2.0秒後に約7.5×10より大きい貯蔵剪断弾性率を達成することができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記50mW/cmの光強度が、約365nmのピークを有するスペクトル出力を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記50mW/cmの光強度と前記化学線源が、ほぼ同じスペクトル出力、好ましくは同じスペクトル出力を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記化学線源が1つ以上のLEDである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のLEDが、300〜450nm、好ましくは340〜400nm、より好ましくは350〜375nmの波長の、より好ましくは約365nmにピークを有する光を発する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記分離遅延時間が、30秒、より好ましくは25.0秒、より好ましくは20.0秒、より好ましくは18.0秒、より好ましくは15.0秒、より好ましくは10.0秒を超えない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線硬化性液状樹脂が、さらに、少なくとも1種類のカチオン光開始剤を約0.5〜約10重量%;少なくとも1種類のフリーラジカル重合性成分を15〜40重量%;および、少なくとも1種類のフリーラジカル光開始剤を約1〜約10重量%含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種類のカチオン光開始剤が、トリアリールスルホニウム塩を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トリアルリ(triarly)スルホニウム塩が、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記放射線硬化性液状樹脂が、2種類以上のフリーラジカル光開始剤を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
フリーラジカル光開始剤がBAPOであり、前記放射線硬化性液状樹脂の0.5重量%未満の量で存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材が実質的に非弾性である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記基材が厚み250ミクロン未満である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記カチオン重合性化合物の量が、約40重量%〜約60重量%である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
カチオン重合性成分がエポキシ化ポリブタジエンであり、好ましくは約5重量%〜約20重量%の量で存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記放射線硬化性液状樹脂層が、厚み約25ミクロン〜約250ミクロンである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記化学線が前記基材を透過し、前記放射線硬化性液状樹脂に到達しなければならない、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法で製造される三次元物体。
【請求項25】
1)少なくとも1種類のカチオン硬化性化合物を30〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、より好ましくは35〜70重量%含む放射線硬化性液状樹脂層を基材上にコーティングする工程;
2)前記放射線硬化性液状樹脂層を前記既硬化層と接触させる工程;
3)前記放射線硬化性液状樹脂層を化学線源によって提供される化学線に選択的に露光させ、それによって前記既硬化層に接着する硬化層を形成する工程;
4)前記硬化層と前記基材を分離する工程;および
5)三次元物体を構築するのに十分な回数、工程1〜4を繰り返す工程;
を含む三次元物体の形成方法であって、
前記放射線硬化性液状樹脂を1.0秒の露光時間、50mW/cmの光強度で硬化させる時、前記放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)を実時間動的機械分析装置で測定する場合、前記放射線硬化性液状樹脂の貯蔵剪断弾性率(G’)が、前記露光の開始から2.0秒で約7.5×10Paより大きい、好ましくは8.5×10Paより大きい、より好ましくは9.5×10Paより大きい(G’)値に達したことが測定される、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法で製造される三次元物体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514213(P2013−514213A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544820(P2012−544820)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060722
【国際公開番号】WO2011/084578
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】