説明

基材レス両面粘着シート

【課題】 基材レス両面粘着シートを用いて部材を結合する工程において用いられた際に、粘着層に積層された両面の離型ポリエステルフィルムを目視で容易に判別することができる基材レス両面粘着シートを提供する。
【解決手段】 離型層を有するポリエステルフィルム2枚の当該離型層面が粘着層の両面にそれぞれ積層されてなる基材レス両面粘着シートであり、一方のポリエステルフィルムが着色されていることを特徴とする基材レス両面粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材レス両面粘着シートに関し、例えば、タッチパネル等の光学用部材の結合用として好適に用いられる基材レス両面粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体間を面接着する粘着シートは種々知られており、粘着シートの1つとして基材レス両面粘着シートが知られている。
【0003】
基材レス両面粘着シートは、粘着剤層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離シートと、剥離力の相対的に高い重剥離シートが積層されて構成され、両面の剥離シートを除去した後には、支持基材を有さない粘着剤層のみとなる両面粘着シートである。
【0004】
基材レス両面粘着シートは、まず軽剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の一方の面が物体面に接着され、その接着後、さらに重剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の他方の面が、異なる物体面に接着され、これにより物体間が面接着される。
【0005】
近年、基材レス両面粘着シートは、その用途が広がりつつあり、各種光学用途の部材等にも用いられている。例えば、光学用途としのタッチパネルは、透明導電膜等の部材が積層された積層体であり、その部材を接合するために基材レス両面粘着シートが使用されている。
【0006】
基材レス両面粘着シートを部材と貼り合せる工程では、先に剥離力の軽い離型フィルムを剥すが、無色透明なポリエステルフィルムからなる離型フィルムでは、どちらの面に剥離力が軽い離型フィルムが貼られているか判別するのが難しいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−220496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、基材レス両面粘着シートを用いて部材を結合する工程において、粘着層に積層された両面の離型フィルムを目視で容易に判別することができる基材レス両面粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有する基材レス両面粘着シートによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、離型層を有するポリエステルフィルム2枚の当該離型層面が粘着層の両面にそれぞれ積層されてなる基材レス両面粘着シートであり、一方のポリエステルフィルムが着色されていることを特徴とする基材レス両面粘着シートに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着シートの両面に積層された離型フィルムが容易に判別でき、部材を結合する工程での生産ロス等の問題を解決するものであり、本発明の工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る基材レス両面粘着シートを示す模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、基材レス両面粘着シート10は、粘着剤層11の両面に、第1および第2離型フィルムが積層されて構成される。
【0014】
第1剥離フィルム31は、いわゆる軽剥離シートであって、ポリエステルフィルム13に第1離型剤層14が設けられ、第1離型剤層14が粘着剤層11に剥離可能に仮着されている。
【0015】
第2離型フィルム32は、いわゆる重剥離シートであって、ポリエステルフィルム23に第2離型剤層24が設けられ、第2離型剤層24が粘着剤層11に剥離可能に仮着されている。
【0016】
離型フィルム13と14に用いる基材を形成するポリエステルとしては、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他には、ポリエチレンイソフタレート、ポリ−1,4−ブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸およびオキシモノカルボン酸等のエステル形成性誘導体を使用することができる。
【0018】
また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。ポリエチレンテレフタレートにブレンドする樹脂の例としては、例えばイソフタル酸共重合体、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレングリコール共重合体等の各種共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび共重合ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムの極限粘度は、通常0.40〜0.90、好ましくは0.45〜0.80、さらに好ましくは0.50〜0.70の範囲である。極限粘度が0.40未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向があり、極限粘度が0.90を超える場合は、溶融粘度が高くなり、押出機に負荷がかかったり、製造コストが増大したりする等の問題が生じる場合がある。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、フィルム原料の製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0021】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0022】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの範囲である。平均粒径が0.05μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0023】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0024】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリマーを製造する任意の段階において添加することができる。
【0025】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0026】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0027】
本発明は、粘着シートの両面に積層した一方の離型フィルムに用いるポリエステルフィルムが着色されていることを特徴とする。
【0028】
あらかじめ軽剥離側と重剥離側のどちらに着色したポリエステルフィルムを使用するか決めておけば、粘着シートより離型フィルムを剥す必要がなく、離型フィルムの判別を容易にし、部材を結合する工程での間違いを防止することができる。
【0029】
部材の結合工程では、離型フィルムを剥す速度等の条件を離型フィルムの剥離力に合わせて設定しているため、剥す離型フィルムを間違えると生産歩留等が低下し好ましくない。
【0030】
着色したポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上のポリエステル層が積層されたフィルムであることが好ましく、さらに詳しくは、全ての層が押出口金から共に溶融押し出しされる、いわゆる共押出法により押し出されたフィルムである。また、フィルムは未延伸の状態や一軸延伸フィルムではなくて、縦方向および横方向の二軸方向に延伸して配向させ、その後に熱固定を施したフィルムであることが必要である。このような積層フィルムは、両面に共押出表層を有し、その間には共押出中間層を有するが、この共押出中間層自体が積層構造となっていてもよい。
【0031】
ポリエステルフィルが単層構成である場合には、添加した染料がフィルム表面に湧き出す現象(ブリードアウト)、およびそれが昇華する現象が発生しやすく、これによってフィルム製膜機の汚染されるため、生産自体ができない場合が多く、仮に作成できたとしても、その表層にはブリードアウトによるフィルム内部からの湧出物が存在して、それによって後加工に悪影響を及ぼすことが多い。
【0032】
本発明で使用するポリエステルフィルムは、その積層構造の内層(中間層)に、ポリエステルに実質的に溶解する染料を含有することが好ましい。本発明で言う実質的に溶解するとは、ポリエステルの溶融状態で混練りしたときに、凝集体などが残らずに均一に混ざることを意味する。
【0033】
用いる染料は、ポリエステルの成型温度で分解が少ないものが好ましい。このような染料は化学構造的にはアントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、アゾメチン系、複素環系染料等が好ましく挙げられ、染色処方的には分散性染料、油溶性染料が好適である。また一般に顔料として分類されているものであっても、上記のように溶融ポリエステル中で溶解するものであれば、本発明では染料として用いることができる。この例としては、フタロシアニン系などの銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロムなどの金属イオンとの錯塩染料などを挙げることができる。
【0034】
上記の染料は、例えばグレー調やブラウン調に調色するために、適宜選択して数種混合して使用されるのが一般的で、またこれら染料のポリエステル中の含有量は、通常0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜5.0重量%の範囲から適宜選ぶことができる。
【0035】
本発明における染料およびその他の添加剤をポリエステルに添加する方法は、フィルムを溶融成型する際に、これらの粉体やペーストあるいは液体などとして添加する方法でもよいが、装置の汚染の問題や銘柄切り替えのしやすさを考慮すると、あらかじめ染料等のマスターバッチを作成しておき、フィルムの溶融成型時にこれらのマスターバッチをクリアーレジンで希釈しながら添加することが好ましい。またこれらの溶融成型の際には、ポリエステルに分散良く混練りしながら行うために、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
【0036】
本発明に用いる離型フィルムのフィルムヘーズは通常10%以下、好ましくは8%以下である。本発明の基材レス両面粘着シートは、光学用に用いられるために、異物等の欠点がある場合は、目視や自動欠点検出機等で取り除く必要があるが、フィルムヘーズが10%を超える場合は、異物等に欠点検出に支障をきたすことがある。また、着色されたポリエステルフィルムに関しても、同じ理由でフィルムヘーズは10%以下、さらには8%以下が好ましい。
【0037】
粘着剤層11を形成する粘着剤としては、通常はアクリル系粘着剤が使用される。アクリル系粘着剤は、官能基含有モノマーと、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の他のモノマーとを共重合して得られるアクリル系共重合体が主成分として構成され、必要に応じて溶媒、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0038】
官能基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマー全体を基準(100質量%)として、モノマー単位として0.3〜5.0質量%含むことが好ましい。
【0039】
アクリル系共重合体は、官能基を含有することにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができ、粘着剤の基材からのはみ出しを抑制すると共に、粘着力および耐熱性を向上させることができる。粘着剤に使用される架橋剤としては、特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において慣用されているものの中から適宜選択して用いられ、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが用いられ、好ましくはポリイソシアネート化合物が用いられる。
【0040】
第1離型フィルム14と第2離型フィルム24の離型層は、離型性を有する材料を含有していれば、特に限定されるものではない。その中でも、硬化型シリコーン樹脂を含有するものによれば離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0041】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0042】
具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0043】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0044】
本発明における離型層の塗布量は、通常0.01〜1g/mの範囲である。
【0045】
本発明において、離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、塗布層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0046】
軽剥離側に相当する第1離型フィルム31の剥離力は、通常3〜50mN/cmであり、好ましくは5〜25mN/cmである。第1離型フィルム31の剥離力を低く抑えることにより、第2離型フィルム32の剥離力を低くしても、両離型フィルム31、32の剥離力差を大きくすることができる。
【0047】
また、第1離型フィルム31の剥離力を一定の値以上とすることによって、使用前に第1離型フィルム31が粘着剤層11から不意に剥がれたり、第1離型フィルム31が粘着剤層11から浮いたりすることが防止される。
【0048】
重剥離側に相当する第2離型フィルムト32の剥離力は、20〜100mN/cmの範囲が好ましく、さらに好ましくは30〜70mN/cmである。第2離型フィルム32の剥離力を低く抑えることによって、第2離型フィルム2を剥離したときに生じる、第2離型フィルム32への粘着剤の残留や、ジッピング等を防止することができる。
【0049】
第2離型フィルム32の剥離力は、第1離型フィルム31の剥離力の通常2.0倍以上、好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3.0倍以上とする。第2離型フィルム32の剥離力が第1離型フィルム31の剥離力の2.0倍未満では、軽剥離側の第1離型フィルム31を剥がした時に、第2離型フィルム32が粘着剤層11から浮く現象が生じたり、第2離型フィルム32への粘着剤の残留や、ジッピング等が生じたりすることがある。
【0050】
本発明の第1離型フィルム31と、第2離型フィルム32の基材として用いる二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、通常16μm以上であり、好ましくは20μm以上である。離型フィルムの厚さが16μm未満では、フィルムに腰がなく、離型フィルムを剥す時に粘着剤と離型フィルムが剥離される境界で剥離角度が大きくなるため、粘着剤層の厚さが厚い場合には、離型フィルムへの粘着剤の残留や、ジッピングが生じてしまうことがある。
【0051】
次に本発明の離型フィルムの基材となるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0052】
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、3層からなるポリエステルフィルムの場合は、複数台の押出機、複数層のマルチマニホールドダイまたはフィ−ドブロックを用い、それぞれのポリエステルを積層して口金から複数層の溶融シートを押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。
【0053】
この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0054】
また、本発明においては離型フィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法とは、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【実施例】
【0055】
次に、実施例を挙げて本説明をさらに説明する。ただし、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下のとおりである。
【0056】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0057】
(2)平均粒径(d50)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0058】
(3)フィルムヘーズ
JISーK6714に準じ、日本電色工業社製分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムの濁度を測定した。
【0059】
(4)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0060】
(5)実用特性
<ポリエステルフィルムの連続製膜性>
ポリエステルフィルムの生産状況より評価した。
○:長時間の生産で問題の発生が見られず、連続しての生産が可能
×:生産を継続できない問題が発生し、連続での生産が不可能
<離型フィルムの判別性>
目視により、両面に離型フィルムを設けた基材レス両面粘着シートを観察し、どちらの面に軽剥離側の離型フィルムが使用されているか判別した。
○:軽剥離側の離型フィルムが判別できた
×:軽剥離側の離型フィルムができない
【0061】
<異物検査性>
両面に離型フィルムを設けた、基材レス両面粘着シートを観察し、異物の検出し易さを評価した。
○:容易にフィルム中の異物が検出できる
△:容易ではないが、異物が検出できる
×:異物の検出ができない
<ジッピングの発生状況>
剥離力を測定する時に、粘着剤と離型フィルムの剥離状況を観察し、ジッピングの発生を3段階で評価した。
○:極めて円滑に剥離し、剥離スジがなく、剥離音も発生しない
△:わずかな剥離スジが見られ、剥離の音がわずかに発生すし、わずかにジッピングが発生する
×:剥離スジが見られ、剥離の音が発生し、ジッピングが発生する
【0062】
<第1、第2離型フィルムの剥離性>
軽剥離側の第1離型フィルムを剥がした時の、第2離型層と粘着剤界面の状況により評価した。
○:第2離型層と粘着剤界面に異常が見られない
△:第2離型層と粘着剤界面で、わずかに浮きが見られるが、実用上問題ないレベル
×:第2離型層と粘着剤界面で、明確な浮きが見られる
【0063】
<ポリエステルAの製造>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後系内を常圧に戻し、実質的に微粒子を含まないポリエステルAを得た。このポリエステルの固有粘度は0.70であった。
【0064】
<ポリエステルBの製造>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、平均粒子径1.4μmのシリカ粒子を2.0部含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加し、さらにエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後系内を常圧に戻しポリエステルBを得た。得られたポリエステルBのシリカ粒子含有量は1.0重量%であった。またこのポリエステルの固有粘度は0.70であった。
【0065】
<ポリエステルCの製造>
ポリエステルBの製造方法において、平均粒子径1.4μmのシリカ粒子に変えて、平均粒子径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子を用いた以外は、ポリエステルBの製造方法と同様の方法を用いてポリエステルCを得た。
【0066】
<ポリエステルDの製造>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、三菱化学(株)製ダイアレジンレッドHS 3.0重量%、同ブルーH3G 5.5重量%、および同イエローF 1.5重量%の各濃度となるように混合して添加し、溶融混練りを行ってチップ化を行い、染料マスターバッチ ポリエステルDを作成した。
【0067】
<ポリエステルフィルム1の製造>
ポリエステルA、Dの各チップを92:2の割合で、それぞれ中間層用レジンとして中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを70:30の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。それぞれの押出機はいずれもベント付きの異方向二軸押出機であり、レジンは乾燥すること無しに290℃の溶融温度で押出しを行い、その後溶融ポリマーをフィードブロック内で合流して積層した。その後静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して3層構成の厚さ約1500μmの積層無定形シートを得た。得られたシートを85℃で縦方向に3.3倍延伸し、100℃で横方向に3.6倍延伸し、210℃にて熱固定を行ない、厚さ38μmの二軸配向フィルムを得た。このフィルムの各層の厚みは3/32/3μmの構成であった。
【0068】
<ポリエステルフィルム2〜4の製造>
ポリエステルフィルムの製造において、原料配合を表1記載のようにした以外はポリエステルフィルム1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。
【0069】
【表1】

【0070】
<ポリエステルフィルム5の製造>
ポリエステルA、B、Dの各チップを89:5:6の割合でベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して単層構造の厚さ約1500μmの無定形フィルムを得た。得られたシートを85℃で縦方向に3.3倍延伸し、100℃で横方向に3.6倍延伸し、210℃にて熱固定を行ない厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムは、溶融シート作成する際、冷却ドラム上に昇華物が徐々に付着して行く現象(ポリエステルフィルム1〜4では全く観察されなかった)が観察され、そのまま長時間生産することは不可能だった。
【0071】
<離型層>
ポリエステルフィルムの製造で得られた二軸配向ポリエステルフィルムに、下記に示す離型層組成からなる塗料を、塗布量が0.1g/m(乾燥後)になるように設けて離型フィルムを得た。
・離型層組成1
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T: 信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
・離型層組成2
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 95部
重剥離コントロール剤(SD−7292:東レ・ダウコーニング製) 3部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶剤(混合比率は1:1) 1500部
・離型層組成3
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 95部
重剥離コントロール剤(SD−7292:東レ・ダウコーニング製) 5部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶剤(混合比率は1:1) 1500部
【0072】
・離型層組成4
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 95部
重剥離コントロール剤(SD−7292:東レ・ダウコーニング製) 10部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶剤(混合比率は1:1) 1500部
・離型層組成5
硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−4: 信越化学製) 10部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
・離型層組成6
硬化型シリコーン樹脂(KS−723A:信越化学製) 100部
硬化型シリコーン樹脂(KS−723B:信越化学製) 5部
硬化剤(PS−3:信越化学製) 5部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0073】
実施例1:
<第1離型フィルムの製造>
ポリエステルフィルム1に離型組成1を塗布量が0.1g/m(乾燥後)になるように設けて第1離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの特性を下記表1〜3に示す。
<第2離型フィルムの製造>
ポリエステルフィルム2に離型組成5を塗布量が0.1g/m(乾燥後)になるように設けて第1離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの特性を下記表1〜3に示す。
<基材レス両面粘着シートの製造>
得られた第2離型フィルムの離型剤層の上に、アクリル系粘着剤溶液を乾燥後の膜厚が25μmとなるように、アプリケータを用いて塗工した後、その塗工膜を120℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成した。アクリル系粘着剤溶液は、アクリル酸ブチルとアクリル酸とのモノマー基準の質量比が99:1の共重合体溶液(溶媒:トルエン、固形分濃度40質量%)100質量部に、ポリイソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造(株)製、商品名「BHS8515」、固形分濃度37.5質量%)1質量部を添加混合して得られたものであった。次いで、第1離型フィルムの離型剤層と粘着剤層とを貼り合わせて実施例1の基材レス両面粘着シートを得た。
【0074】
実施例2〜7、比較例1:
実施例1の第1離型フィルムの製造と、第2離型フィルムの製造において、離型フィルムに用いたポリエステルと、離型層組成を下記表2のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして第1離型フィルムと第に離型フィルムを得た。得られた離型フィルムを用いて、実施例1と同様にして実施例2〜8の基材レス両面粘着シートを得た。
【0075】
【表2】

【0076】
各実施例、比較例で得られたフィルムの評価結果をまとめて下記表3および4に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
表3および表4中、*1の剥離力比は、第2離型フィルム剥離力÷第1離型フィルム剥離力を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の基材レス両面粘着シートは、粘着シートの両面に設けられた離型フィルムの判別が容易であるため、部材を結合する工程での製造ロスを抑えることができ、異物の検査性にも優れるため光学用の基材レス両面粘着シートとして、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 基材レス両面粘着シート
11 粘着剤層
13 第1離型フィルム基材
14 第1離型剤層
23 第2離型フィルム基材
24 第2離型剤層
31 第1離型フィルム(軽剥離シート)
32 第2離型フィルム(重剥離シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層を有するポリエステルフィルム2枚の当該離型層面が粘着層の両面にそれぞれ積層されてなる基材レス両面粘着シートであり、一方のポリエステルフィルムが着色されていることを特徴とする基材レス両面粘着シート。
【請求項2】
着色されたポリエステルフィルムが、少なくとも3層からなる共押出積層フィルムであり、中間層に実質的にポリエステルに溶解する染料を含有する請求項1に記載の基材レス両面粘着シート。
【請求項3】
一方の粘着層の面と離型層面との剥離力がもう一方の粘着層の面と離型層面との剥離力の2.0倍以上である請求項1または2に記載の基材レス両面粘着シート。

【図1】
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