説明

基材レス両面粘着シート

【課題】製造工程で発生する異物による不具合を押さえ、光学検査性に優れ、作製した粘着剤シートを別部材に貼り合せる工程での歩留まりが高い基材レス両面粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着層11の一方の面に第1離型フィルム31、他方の面に第2離型フィルム32それぞれが積層されてなる基材レス両面粘着シート10であって、第1離型フィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムに離型層を有し、該離型層中に、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有し、移行成分を含むシリコーン樹脂と、白金系触媒とを含有し、該離型層の残留接着率が60〜90%の範囲であり、300mm/分での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲、10000mm/分での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であり、該離型フィルムの該離型層の115°三角錐圧子、0.10mNの試験力でのマルテンス硬度が400N/mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材レス両面粘着シートに関し、特に製造工程で粘着剤貼り合わせ時の生産性に優れ、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合がある)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する場合がある)、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する場合がある)等の光学用途に用いられる基材レス両面粘着シート用に関するものである。
【0002】
従来、物体間を面接着する粘着シートは種々知られており、粘着シートの1つとして基材レス両面粘着シートが知られている。基材レス両面粘着シートは、粘着剤層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離シートと、剥離力の相対的に高い重剥離シートが積層されて構成され、両面の剥離シートを除去した後には、支持基材を有さない粘着剤層のみとなる両面粘着シートである。基材レス両面粘着シートは、まず軽剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の一方の面が物体面に接着され、その接着後、さらに重剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の他方の面が、異なる物体面に接着され、これにより物体間が面接着される。
【0003】
近年、基材レス両面粘着シートは、その用途が広がりつつあり、各種光学用途の部材等にも用いられている。例えば、LCDの部材として、基材レス両面粘着剤シートの剥離力の軽い方の離型フィルムを剥がして、その面に偏光板を貼り合わせて、その反対面側に剥離力の重い離型フィルムを用いることがある。
【0004】
生産上の作業性から、ある程度高速域での加工が考えられるが、軽剥離の離型フィルムにおいて、軽い剥離力を達成するのはもちろんだが、それを達成しつつ、加工速度を上げても、できるだけ重剥離の離型フィルムとの剥離力差が縮まらないことを同時に達成することは非常に難しい(特許文献1)。もし、重剥離の離型フィルムとの剥離力差が縮まったならば、剥離工程において、両面のフィルムが同時に剥がれる、また、剥離力差が小さくなるために粘着剤も一緒に剥がれる等の問題が起こり、加工性、生産性に不具合をきたすことになる(特許文献2)。
【0005】
上記の剥離力差の制御は非常に難しく、シリコーン成分の種々選択とコントロールが必要であり(特許文献1および2)、しかも、シリコーン塗布膜の硬さのコントロールも必要であると考えられる。
【0006】
また、基材レス両面粘着シートにおいて、タッチパネルやモニターの比較的面積の小さなフラットパネルなどの外側に使用される用途では、製品にした時に人の目が近く、異物などの輝点が目立つと視覚的に不具合が生じるために、検査を強化する場合がある。このとき、基材レス両面粘着シートに離型フィルムを貼り合わせたままの検査が行なわれることもある。その場合、フィルムの異物が少ないものは当然として、検査容易化のために、フィルムの光軸、つまり、分子の配向を管理する必要性が出てくる(特許文献3)。
【0007】
さらに、上記に述べた異物の1つには、ポリエステルフィルム起因のオリゴマーといわれる低分子成分が起因することがある(以後、オリゴマーをOLと略する)。このOLを防ぐことができたならば、上記の生産時の異物不具合を押さえることができ、かつ、フィルム、および、その先の工程汚染を防ぐ事ができる。なお、本発明おいて、OLとは、熱処理後、結晶化してフィルム表面に析出する低分子量物のうちの環状三量体と定義する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−220496号公報
【特許文献2】特開平10−158519号公報
【特許文献3】特開2003−231214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、光学用途、例えば、タッチパネル、液晶偏向板、位相差板等において使用する際、剥離速度依存性を最小限に抑えることを可能にし、生産性、コストなどの問題を解決し、かつ、OLを防止性、検査性を付与することで、工程汚染や粘着剤への異物軽減を図った、基材レス両面粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有する両面粘着シートによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、粘着層の一方の面に第1離型フィルム、他方の面に第2離型フィルムそれぞれが積層されてなる基材レス両面粘着シートであって、第1離型フィルムがシリコーン系離型層を有する二軸配向ポリエステルフィルムにて構成され、シリコーン系離型層は、官能基としてアルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)、アルキル基を有するシリコーン樹脂(b)、粘着層への移行成分(c)、および、白金系触媒(d)を含有し、残留接着率が60〜90%の範囲であり、かつ、300mm/分での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲、10000mm/分での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であり、115°三角錐圧子、0.10mNの試験力でのマルテンス硬度が400N/mm以上であることを特徴とする基材レス両面粘着シートに存する。
【0012】
そして、本発明の好ましい態様の層構成においては、ポリエステルフィルムとシリコーン系離型層との間にポリビニルアルコールを含有する塗布液を塗布して得られた塗布層を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造工程で発生する異物(例えばオリゴマー等)による不具合を押さえて光学検査性に優れ、作製した粘着剤シートを別部材に貼り合せる工程での歩留まりが高くて高い生産性を発揮できる基材レス両面粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る基材レス両面粘着シートを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、基材レス両面粘着シート10は、粘着剤層11の両面に、第1離型フィルム31および第2離型フィルム32が積層されて構成される。
【0016】
第1剥離フィルム31は、いわゆる軽剥離シートであって、ポリエステルフィルムからなる離型フィルム基材13、塗布層14、第1離型剤層15が積層されて構成され、第1離型剤層15が粘着剤層11に剥離可能に仮着されている。
【0017】
第2離型フィルム32は、いわゆる重剥離シートであって、ポリエステルフィルムからなる離型基材23、塗布層24、第2離型剤層25が積層されて構成され、第2離型剤層25が粘着剤層11に剥離可能に仮着されている。塗布層24は特に好ましい態様として設けられる。
【0018】
<ポリエステルフィルム>
本発明の離型フィルムの基材であるポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
【0019】
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレート等が例示される。
【0020】
フィルム中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0021】
一方、粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0022】
また、粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こし易くなり、生産性の面で問題になることがある。
【0023】
さらに粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0024】
フィルム中に粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0025】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0026】
なお、フィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0027】
ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは38〜125μm、さらに好ましくは、50〜100μmの範囲である。フィルム厚みが10μmより薄い場合、本用途で粘着剤シートを加工するときに工程等で発生した外部異物を粘着剤に転写させてしまう、また、離型フィルム加工の際に、塗工性が悪く、生産性を悪化させてしまう、等の問題が挙げられる。フィルム厚みが厚い場合、コストがかかる不具合が生じる。
【0028】
次に、ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常90〜140℃、好ましくは95〜120℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常90〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0029】
また、ポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常90〜140℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0030】
<ポリビニルアルコールを含有する塗布液を塗布して得られた塗布層>
上記の塗布層は、OL封止目的の他、OLによる工程汚染、また、粘着剤層へ貼り合せる際の汚染を防ぐために設けられる。
【0031】
塗布層におけるポリビニルアルコールの含有量は、通常10〜100重量%、好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは30〜90重量%である。ポリビニルアルコールの含有量が10重量%未満では、OL封止効果が不十分で好ましくない。
【0032】
ポリビニルアルコールは、通常の重合反応によって合成することができ、水溶性であることが好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000である。重合度が100以下の場合、塗布層の耐水性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、99.9モル%以下である。
【0033】
塗布層には、必要に応じて上記のポリビニルアルコール以外の水溶性または水分散性のバインダー樹脂を併用してもよい。バインダー樹脂とは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アクリレート樹脂、等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン、アクリレート樹脂グラフトポリエチレングリコール、等が挙げられる。バインダー成分の配合量は、塗布層に対する重量部で50重量部以下、さらには30重量部以下の範が好ましい。
【0034】
さらに塗布層中には、必要に応じて架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物としては、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系などの化合物、ポリアミン類、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤、金属キレート、有機酸無水物、有機過酸化物、熱または光反応性のビニル化合物や感光性樹脂などの多官能低分子化合物および高分子化合物から選択される。
【0035】
架橋反応性化合物は、塗布層に含まれる樹脂が有する官能基と架橋反応することで、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。例えば、易接着樹脂の官能基が水酸基の場合、架橋反応性化合物としては、メラミン系化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機酸無水物などが好ましく、易接着ポリエステルの官能基が有機酸およびその無水物の場合、架橋反応性化合物としてはエポキシ系化合物、メラミン系化合物、オキサゾリン系化合物、金属キレートなどが好ましく、易接着樹脂の官能基がアミン類の場合、架橋反応性化合物としてはエポキシ系化合物などが好ましく、易接着樹脂に含まれる官能基と架橋反応効率が高いものを選択して用いることが好ましい。メラミン化合物としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。
【0036】
架橋反応性化合物は反応性官能基が1分子中に2官能以上必ず含まれる限りにおいて、低分子量化合物であっても、反応性官能基を有する高分子重合体のいずれであってもよい。架橋反応性化合物の配合量は、塗布層に対する重量部で50重量部以下、さらには30重量部以下、特に15重量部以下の範囲が好ましい。
【0037】
バインダー樹脂と架橋剤とを任意割合で配合した場合、塗布層が密にバリア層を形成するためOLを一層効果的に抑制することができる。このため、ポリエステルフィルムからのOLを極力、粘着剤に付着させない、また、先の加工工程内で出さない効果がある。
【0038】
塗布層中は、必要に応じて塗布層の滑り性改良のために不活性粒子を含んでいてもよい。不活性粒子としては、無機不活性粒子、有機不活性粒子があり、無機不活性粒子としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。有機不活性粒子としては、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂による単独あるいは共重合体を含む微粒子、またはこれらと架橋成分を複合した架橋粒子に代表される有機粒子が挙げられる。これらの不活性粒子は軟化温度または分解温度が約200℃以上、さらには250℃以上、特に300℃以上であることが好ましい。不活性粒子の平均粒径(d)は、塗布層の平均膜厚を(L)とした際、1/3≦d/L≦3、さらには1/2≦d/L≦2の関係を満足するように選択するのが好ましい。
【0039】
塗布層は、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、低分子帯電防止剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を少量含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面のみに形成する場合、その反対面には必要に応じて別種の塗布層を形成させ、さらに他の特性を付与することもできる。なお、塗布液のフィルムへの塗布性および接着性を改良するため、塗布前のフィルムに化学処理や放電処理等を施してもよい。
【0040】
塗布層の形成に使用する塗布液は、通常、安全性や衛生性の観点から水を主たる媒体として調整されていることが好ましい。水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的あるいは造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、主たる媒体である水と混合して使用する場合、水に溶解する範囲で使用することが好ましいが、長時間の放置で分離しないような安定した乳濁液(エマルジョン)であれば、水に溶解しない状態で使用してもよい。有機溶剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0041】
ポリエステルフィルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。
【0042】
塗布層を設ける方法は、特に制限されないが、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法(インラインコーティング)が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、二軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの中では、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布後、フィルムに熱処理を行う過程で同時に塗布層を乾燥硬化する方法が経済的である。また、塗布層を形成する方法として、必要に応じ、前述の塗布方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、第二層を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。
【0043】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0044】
ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、例えば、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。さらにポリエステルフィルムには、あらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0045】
離型フィルムがポリビニルアルコールを含む塗布層を有する場合、離型フィルムを熱処理(180℃、10分間)した後、塗布層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるOL量は1.0mg/m以下であることが好ましい。OLが1.0mg/mを超える場合、工程汚染があり、粘着剤貼り合わせ時に、異物が発生し、製品の歩留まりが落ちるなどの不具合が生じることがある。
【0046】
塗布層の膜厚は、通常0.002〜1.0g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mの範囲である。膜厚が0.002g/m未満の場合は十分な密着性が得られない可能性があり、1.0g/mを超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
【0047】
なお、本発明においては、通常のOL含有量のポリエステルからなる層の少なくとも片側の表面に、OL含有量の少ないポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、かかる構造を有する場合、本発明の離型フィルムにおいて、析出したOLによる輝点を防止する効果が得られ、特に好ましい。
【0048】
<離型層>
本発明における離型層は、官能基としてアルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)、官能基としてアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)、粘着層への移行成分(c)、および、白金系触媒(d)を含有するシリコーン系離型層である。
【0049】
まず、アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、ジオルガノポリシロキサンとして、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。
【0050】
次に、アルキル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。
【0051】
本発明の離型フィルムは、離型層を基材レス両面粘着シートの粘着層に張り合わせて使用されるが、上記のシリコーン樹脂は、粘着層への移行成分を含有する。移行成分として典型的にはシリコーンオイルが使用される。シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルと称されるシリコーンオイルであり、以下のようなものが挙げられる。ストレートシリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。また、変性シリコーンオイルとしては、側鎖型タイプのポリエーテル変性、アラルキル変性、フロロアルキル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、ポリエーテル・長鎖アルキル変性・アラルキル変性、フェニル変性、両末端型のポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性などが挙げられる。ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイル共に、非反応性の無官能オイルである。
【0052】
移行成分の含有量は、5〜20重量%、好ましくは10〜13重量%、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%である。移行成分の含有量が5%より低いと後述する速度依存性が高くなり、20重量%を超えると、硬化性が著しく低下し、密着性も悪化する不具合がある。
【0053】
本発明で使用し得るシリコーン系樹脂塗剤の具体例としては、信越化学工業(株)製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461;ダウ・コーニング・アジア(株)製のDKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210;東芝シリコーン(株)製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721;東レ・ダウ・コーニング(株)製のLTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、SRX357、BY24−749、SD7333、BY24−179、SP7015、SP7259、SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0054】
上記のシリコーン系樹脂塗剤は、官能基としてアルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)、官能基としてアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)、粘着層への移行成分(c)から成るが、官能基としてアルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)、官能基としてアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)の比率は、(b)/(a)は、通常0.5〜2重量比である。なお、本発明においては官能基としてアルケニル基およびアルキル基を有するシリコーン樹脂を使用してもよい。
【0055】
ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、前述の塗布層の場合と同様に、従来公知の塗工方式を用いることができる。離型層を形成する際の塗布量は、通常0.01〜1g/mの範囲である。
【0056】
離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、OL析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0057】
本発明においては、離型層をきれいかつ頑丈にするため、付加型の反応を促進する白金系触媒を用いる。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。離型層中の白金系触媒含有量は、通常0.3〜3.0重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲が良い。離型層中の白金系触媒含有量が0.3重量%よりも低い場合、剥離力の不具合や、塗布層での硬化反応が不十分になるため、面状悪化などの不具合を生じる場合があり、一方、離型層中の白金系触媒含有量が3.0重量%を超える場合には、コストがかかる、また、反応性が高まり、ゲル異物が発生する等の工程不具合を生じてしまうことがある。
【0058】
また、付加型の反応は非常に反応性が高いため、場合によっては、反応抑制剤として、アセチレンアルコールを添加することがある。その成分は、炭素−炭素3重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される化合物である。
【0059】
<残留接着率>
本発明における残留接着率とは、移行成分の移行量を示す指標であり、熱処理前後の剥離力の差を利用した方法である。本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31の日東電工株式会社製No.31Bテープによる残留接着率は、60%〜90%、好ましくは65%〜85%、さらに好ましくは、70%〜80%である。残留接着率が60%より低い場合は、移行性分が多すぎ、粘着剤加工時にロール汚れや粘着剤面に移行して、粘着剥離力低下などが生じる。また、残留接着率が90%を超える場合は、速度依存性を小さく抑えることができない。
【0060】
<剥離力>
本発明において、剥離力を調整する方法は、離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用できる。具体的には、所望の剥離力に応じて、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を変更する方法が挙げられる。さらには、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法が挙げられる。
【0061】
本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31の剥離力とは、両面粘着テープ(日東電工製「No.502」および「No.31B」)を離型層面に貼り付け、室温にて1時間放置した後に、基材フィルムと剥離角度180°、任意の引張速度でテープを剥離したときに引張試験機で測定した値で示される。
【0062】
本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31のNo.502テープに対する剥離力は、300mm/分で、通常3〜50mN/cm、好ましくは5〜25mN/cm、さらに好ましくは、10〜20mN/cmである。第1離型フィルムの剥離力が3mN/cm未満の場合は、容易に剥がれるため、製造工程で発生する少しの外力で離型フィルムが剥離する。また、第1離型フィルムの剥離力が50mN/cmを超える場合は、第1離型フィルムを剥す工程で第2離型フィルムと粘着層の間に剥がれによる気泡を咬み込む隙間が生じる。
【0063】
本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31のNo.31Bテープに対する300mm/分での剥離力の値(低速剥離力)は、通常10〜20mN/cmの範囲である。低速剥剥離力が10mN/cm未満の場合は、剥離力が軽くなりすぎて本来剥離する必要がない場面においても容易に剥離する不具合を生じる。低速剥剥離力が20mN/cmを超える場合は、剥離力の重い方の離型フィルムとの剥離力差が小さくなり、剥離工程で不具合を生じる。また、剥離力の重い方の離型フィルムの選定幅が狭くなる等の問題がある。
【0064】
さらに、本発明においては、加工性を考慮に入れた10000mm/分での高速剥離力が上記低速剥離力の2.5倍以下である必要がある。当該剥離力の比が2.5倍よりも大きい場合、剥離力が重い方の離型フィルムとの剥離力差が小さくなり、剥離工程で剥離が上手くできない、もしくは、粘着剤ごと剥がれてしまう等の不具合を生じる。
【0065】
本発明における重剥離側に相当する第2離型フィルム32の剥離力とは、両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)を離型層面に貼り付け、室温にて1時間放置した後に、基材フィルムと剥離角度180°、任意の引張速度でテープを剥離したときに引張試験機で測定した値を言う。本発明において剥離力を調整する方法としては、離型層中の組成を選択する方法やその他の手段を採用できる。具体的には、所望の剥離力に応じてシリコーン離型層の離型剤の種類を変更する方法が好ましい。また、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法も好ましい。
【0066】
重剥離側に相当する第2離型フィルム32のNo.502テープに対する剥離力は、300mm/分で、通常20〜100mN/cm、好ましくは30〜60mN/cmである。第2離型フィルムの剥離力が20mN/cm未満の場合は、第1離型フィルムを剥す時に、第2離型フィルムの一部が剥離する。また、第2離型フィルムの剥離力が100mN/cmを超えた場合は、第2離型フィルムに粘着剤が残留するなどの問題が生じる。
【0067】
本発明の基材レス両面粘着シート10は、上述した剥離力に加え、第1離型フィルムと第2離型フィルムの剥離比を設けることが好ましい。
【0068】
第2離型フィルム32のNo.502テープに対する剥離力は、第1離型フィルム31のNo.502テープに対する剥離力の通常2.0倍以上、好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3.0倍以上とする。第2離型フィルム32の剥離力が第1離型フィルム31の剥離力の2.0倍未満の場合は、基材レス両面粘着シート10を作製した後、軽剥離側の第1離型フィルム31を粘着剤層11から剥離した時に、第2離型フィルム32が粘着剤層11から浮く現象が生じたり、第2離型フィルム32への粘着剤の残留や、ジッピング等が生じたりすることがある。上記の浮くという現象は、剥離の際に剥離力が弱く、一部の粘着剤層が剥離し、空気等を噛みこみ、外観が悪くなる現象のことを言う。
【0069】
また、本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31の粘着剤層11に対する剥離力は、3〜50mN/cm、好ましくは5〜25mN/cmである。第1離型フィルムの剥離力が3mN/cm未満では、容易に剥がれるため、製造工程で発生する少しの外力で離型フィルムが剥がれてしまい、好ましくない。また、第1離型フィルムの剥離力が、50mN/cmを超えた場合は、第1離型フィルムを剥す工程で第2離型フィルムと粘着層の間で浮きと呼ばれる剥がれが生じてしまい好ましくない。
【0070】
第1離型フィルム31の粘着剤層11に対する剥離力を低く抑えることにより、第2離型フィルム32の剥離力を低くしても、両離型フィルム31、32の剥離力比を大きくすることができる。
【0071】
また、第1離型フィルム31の粘着剤層11に対する剥離力を一定の値以上とすることによって、使用前に第1離型フィルム31が粘着剤層11から不意に剥がれたり、第1離型フィルム31が粘着剤層11から浮いたりすることが防止される。
【0072】
重剥離側に相当する第2離型フィルム32の粘着剤層11に対する剥離力は、20〜100mN/cmが好ましく、さらに好ましくは30〜60mN/cmである。第2離型フィルムの剥離力が20mN/cm未満では、第1離型フィルムを剥す時に、第2離型フィルムの一部が剥がれてしまい好ましくない。また、第2離型フィルムの剥離力が100mN/cmを超えた場合は、第2離型フィルムに粘着剤が残留するなどの問題が生じるため好ましくない。
【0073】
<マルテンス硬度>
本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31の剥離速度依存性を達成させるためには、離型層表面のマルテンス硬度も重要なファクターである。
【0074】
マルテンス硬度とは、三角錐型の圧子を使用した硬度測定機を用いて、任意試験力、任意負荷速度、任意負荷・除荷保持時間における表層の計装化押し込み硬さ試験によって求められるものをいう。
【0075】
本発明における軽剥離側に相当する第1離型フィルム31のマルテンス硬度は400N/mm以上である。400N/mmより小さい場合は、粘着剤層11の硬さとマッチせずに、剥離速度依存性が高く、ジッピング等の現象を引き起こしやすく、生産性が悪くなる。また、シリコーン系離型層が柔らかいがために、スクラッチなどが入りやすく、それが起因してOLが出やすくなり、工程汚染や、粘着剤汚染を引き起こす不具合等が生じる可能性がある。
【0076】
<OL封止層>
離型フィルム、少なくとも第1離型フィルム31は、二軸配向ポリエステルフィルム13、離型剤層15の順に設けられる。生産工程汚染を防ぐために、好ましくは、OL封止層である塗布層14が設けられた方がよい。その場合、二軸配向ポリエステルフィルム13、塗布層14、離型剤層15の順に設けられる。
【0077】
本発明の第1離型フィルム31におけるOL封止層(第1塗布層14)、および、第2離型フィルム32におけるOL封止層(第2塗布層24)は、OLによる工程汚染、また、粘着剤層11や他の貼り合せる基材への汚染を防ぐためにあった方が好ましい。
【0078】
本発明において、第1離型フィルム31が第1塗布層14を、さらに、第2離型フィルム32が第2塗布層24を有する場合、それらの離型フィルムを熱処理(180℃、10分間)した後、塗布層(A)表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるOL量は、1.0mg/m以下であることが好ましい。OLが1.0mg/mを超える場合、工程汚染があり、粘着剤貼り合わせ時に、異物が発生し、製品の歩留まりが落ちるなどの不具合が生じることがある。
【0079】
離型フィルは、少なくとも第2離型フィルム32は、二軸配向ポリエステルフィルム23、離型剤層25の順に設けられる。生産工程汚染を防ぐために、好ましくは、OL封止層である塗布層24が設けられた方がよい。その場合、二軸配向ポリエステルフィルム23、塗布層24、および、離型剤層25の順に設けられる。
【0080】
塗布層14および24が設けられない場合は、基材レス両面粘着シートの製造工程でOLが発生しやすくなる。
【0081】
<MOR_C値>
本発明の重剥離側の第2離型フィルム32は、用途によって、基材レスレス粘着剤シート11加工後に軽剥離側フィルム31を剥離し、別基材に貼り合わせたときに、工程内の光学検査が必要になる場合がある。
【0082】
本発明の第2離型フィルム32において、工程の光学検査等で異物や光干渉色の発生を低減するには、離型フィルムをマイクロ波方式分子配向計で測定したMOR_C値の最適化が非常に重要である。
【0083】
本発明の第2離型フィルム32のMOR_C値は1.5〜3.0であり、好ましくは1.8〜2.7、さらに好ましくは2.1〜2.4である。MOR_C値が3.0よりも大きい場合には、離型層の均一性に欠けたり、光学検査において、光干渉色が見えやすくなる等の不具合が生じたりする。MOR_C値が1.5よりも小さい場合には、離型フィルム自体の生産歩留まり悪くなってしまう等の問題がある。
【0084】
本発明の第2離型フィルム32のMOR_C値の範囲を満足させるための手段は、製膜時に所望のフィルム厚みに対して、延伸条件を創意工夫することにある。
【0085】
<粘着剤>
粘着剤層11を形成する粘着剤としては、通常、アクリル系粘着剤が使用される。アクリル系粘着剤は、官能基含有モノマーと、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の他のモノマーとを共重合して得られるアクリル系共重合体が主成分であり、必要に応じ、溶媒、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0086】
官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマー全体を基準(100質量%)として、モノマー単位として、0.3〜5.0質量%含むことが好ましい。
【0087】
アクリル系共重合体は、官能基を含有することにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができ、粘着剤の基材からのはみ出しを抑制すると共に、粘着力および耐熱性を向上させることができる。粘着剤に使用される架橋剤としては、特に制限されず、従来アクリル系粘着剤において慣用されているものの中から適宜選択して用いられる。例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが用いられ、特にポリイソシアネート化合物が好適に用いられる。
【0088】
<離型フィルムの厚み>
離型フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で、かつ、離型フィルムとしての加工が可能であれば特に限定されないが、通常10〜300μm、好ましくは30〜188μm、さらに好ましくは50〜75μmの範囲である。フィルム厚みが10μm未満の場合は、フィルムに腰がなく、工程内の異物を転写することがあり、また、離型フィルムを剥がす工程でトラブルを生じるおそれがある。フィルム厚みが300μmを超える場合は、製膜や加工時に生産性が悪くなり、製造コストが上がることになる。
【0089】
本発明においては、基材レス両面粘着シート10の両側に、異なる厚さの離型フィルムを用いるのが好ましい。具体的には、第2離型フィルムの厚さが、第1離型フィルムの厚さの通常1.2倍以上、好ましくは1.4倍以上とするのがよい。軽剥離側の第1離型フィルムのフィルム厚さを薄くすることにより、第1離型フィルムを剥離する時に第2離型フィルムと粘着層の界面で発生する浮きを防ぐことができる。
【0090】
また、第2離型フィルムの離型面上に粘着剤を塗布した場合は、工程上の異物や凹凸の影響をなくすために、製造コストを考慮し、凹凸や異物の影響をより受けやすい第2離型フィルムのフィルム厚さを厚くした方が好ましい。
【0091】
第2離型フィルムの厚さと、第1離型フィルムの厚さの比が1.2倍未満の場合は、コストへの関与が少なくなる傾向がある。
【0092】
<基材レス両面粘着シート>
基材レス両面粘着シート10は、例えば、第2離型フィルム32の第2離型層25の上に、粘着剤が塗工された後乾燥されて粘着剤層11が形成され、次いで、その離型層11の上に第1離型フィルム31がラミネートされることにより製造されるが、前記塗布層24が設けられない場合は、製造工程で発生したOLにより、工程汚染の他に、粘着剤層を電子基材に貼り合せた時にOLの影響で、電子部品に不具合を発生させてしまうため好ましくない。
【0093】
また、基材レス両面粘着シート10を、第1離型フィルム31の第1離型層15の上に粘着剤層11を形成する場合に、第1離型フィルム31に塗布層14が設けられないと、第2離型フィルム32と同様の現象が生じ好ましくない。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0095】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定:
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0096】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定:
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0097】
(3)塗布層中触媒量測定:
SAICASを用いて、試料フィルムに斜め切削を行い、断面を露出させた。その後、TOF−SIMS(飛行時間型質量分析マススペクトル)を用いて、ポリエステルフィルム塗布層中に含まれる白金を含む触媒量を求めた。
【0098】
(4)離型層組成中の移行成分量測定:
トルエンで固形分濃度4重量%に希釈したシリコーン樹脂(離型層組成のシリコーン)15gに対して白金触媒0.02重量%0.004gを添加し、攪拌後、テフロン(登録商標)製のシートで作成した箱に入れ、150℃、1時間熱硬化する(サンプル1)。移行成分を添加する場合(後述の比較例2に該当する)は、シリコーン樹脂の固形分に対して30重量%添加する。サンプル1を1日トルエンに浸漬し、取り出したサンプルを、120℃で30分乾燥し、室温になるまで、放冷する(サンプル2)。下記式より移行成分量を算出した。
移行成分量(重量%)=(サンプル1の重量−サンプル2の重量)÷サンプル1の重量×100
【0099】
(5)離型フィルムの移行性評価接着率:残留接着率:
試料フィルムをA4大に切り取り、離型面に75μm厚の2軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製:ダイアホイルT100−75)を重ねて温度60℃、圧力1MPaの条件で2時間プレスする。この離型面に押し当てた75μm厚フィルムを移行性評価フィルムとする。未処理のPETフィルムにも同様にして75μm厚2軸延伸PETフィルム(同)を押し当て、基準フィルムとする。それぞれのフィルムの押し当てた面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度0.3(m/分)の条件下、180°剥離を行った。
残留接着率(%)=(移行性評価フィルムの剥離力÷基準フィルムの剥離力)×100 移行性の大きなフィルムでは押し当てたフィルムに多くのシリコーンが付着するため、粘着テープの剥離力が小さくなり、移行性評価接着率(%)も低下する。
【0100】
(6)離型フィルムのNo.502テープによる剥離力の評価:
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」、および、「No.31B」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。次のような基準で判断する。
【0101】
(7)離型フィルムのNo.31Bテープによる剥離力の評価:
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分、さらに、10000mm/分の条件下、180°剥離を行った。次のような基準で判断する。
【0102】
<300mm/分での剥離力>
○:10〜20mN/cmの範囲
×:10mN/cmより小さい、もしくは、20mN/cmより大きい
【0103】
<10000mm/分での剥離力と300mm/分での剥離力の比較>
下式にて求めた値で判断した。
(10000mm/分剥離力(mN/cm))÷(300mm/分剥離力(mN/cm))
○:2.5以下
×:2.5より大きい
【0104】
(8)表層のマルテンス硬さ:
ポリエステルフィルムの表層に対して、島津製作所社製のダイナミック超微小高度計(DUH−211)を用いて、三角錐圧子(稜間角115°、ベルコビッチタイプ)、試験力:0.10mN、負荷保持速度:0.0060mN/sec.、負荷保持時間:2sec.の条件で測定を行ない、上記試験力に対する押込み深さからマルテンス硬さを算出した。なお、測定回数は12回で、それらの平均値を採った。
【0105】
(9)アンカー層表面から抽出されるOLの測定:
あらかじめ、未熱処理の離型フィルムを空気中、180℃で10分間加熱する。その後、熱処理をした該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmの箱の内面にできるだけ密着させて箱形の形状とする。塗布層を設けている場合は塗布層面が内側となるようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のOL量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面OL量(mg/m)とする。
【0106】
DMF中のOL量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、あらかじめ分取したOL(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
【0107】
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0108】
(10)ポリエステルフィルムのマイクロ波分子配向計によるMOR_C値測定:
王子計測機器株式会社製のマイクロ波方式分子配向計を用い、透過マイクロ波強度パターンからMOR_C値を求めた。
【0109】
(11)ポリエステルフィルムのマイクロ波分子配向計によるMOR_C値測定:
王子計測機器株式会社製のマイクロ波方式分子配向計を用い、透過マイクロ波強度パターンからMOR_C値を求めた。次のような基準で判断する。
○:2.0〜2.5
△:1.5〜1.9、もしくは、2.6〜3.0
×:1.5%よりも低い、もしくは、3.0よりも高い
【0110】
(12)実用特性:
<第1、第2離型フィルムの剥離性>
上記No.502テープでの剥離力の比を比較し、評価した。
○:2.0倍以上:第2離型層と粘着剤界面に以上が見られない、もしくは、第2離型層と粘着剤界面で、わずかに浮きが見られるが、実用上問題ないレベル。
×:2.0倍よりも小さい:第2離型層と粘着剤界面で、明確な浮きが見られる。
【0111】
<加工時工程汚染度合い>
粘着剤、および、貼り合せ加工時、離型フィルムからの異物、OL、および、移行成分による工程中のロール、等、の汚染度合いを目視で検査した。
「判定基準」
○:6000m以上走行しても汚染がほとんど見られない。
△:1000〜6000m走行すると、ロール等が白くなり、汚染が見られる。
×:1000m以下でロール等が白くなり、汚染が見られる。
(○および△のものが実使用上問題のないレベルである)
【0112】
<ジッピングの発生状況>
剥離力を測定する時に、粘着剤と離型フィルムの剥離状況を観察し、ジッピングの発生を3段階で評価した。
○:極めて円滑に剥離し、剥離スジがなく、剥離音も発生しない。
△:わずかな剥離スジが見られ、剥離の音がわずかに発生し、わずかにジッピングが発生する。
×:剥離スジが見られ、剥離の音が発生し、ジッピングが発生する。
(○および△のものが実使用上問題のないレベルである)
【0113】
<反射光下での目視検査性:目視検査性>
偏光板検査を考慮に入れて、フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、蛍光灯反射下で偏光板を目視にて観察し、反射光下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、A4サイズのサンプルを切り出して実施した。
「判定基準」
○:検査性良好
△:ほぼ問題なく検査できる
×:検査性不良
(○および△のものが実使用上問題のないレベルである)
【0114】
<クロスニコル下での目視検査性:偏光検査性>
偏光板検査を考慮に入れて、フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とした。ここで上記偏光板を作成する際、粘着剤と偏光フィルムとの間に50μm以上の大きさを持つ黒色の金属粉(異物)を50個/mとなるように混入させた。このようにして得られた異物を混入させた偏光板離型フィルム上に配向軸が離型フィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下で粘着剤と偏光フィルムとの間に混入させた異物を見いだせるかどうかを下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムの幅方向に対し中央部と両端部の計3ヶ所から、それぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。
「判定基準」
○:異物認知性良好
△:比較的問題なく異物認知できる。
×:異物認知性不良
(○および△のものが実使用上問題のないレベルである。)
【0115】
(13)総合評価:
製膜性、生産性、検査特性等、全てを考慮に入れた評価を行う。次のような基準で判断する。
○:生産しても充分に製品として供給できる
△:生産性が良い、かつ、光学検査での不具合の頻度が少ない
×:生産性が悪い。光学検査での不具合が多発する。
【0116】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(a)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.61のポリエステル(a)を得た。
【0117】
<ポリエステル(b)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(b)を得た。得られたポリエステル(b)は極限粘度0.60であった。
【0118】
<ポリエステル(c)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.45に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(c)を得た。このポリエステルの固有粘度は0.45であった。
【0119】
<ポリエステル(d)の製造>
このポリエステルチップを固相重縮合法にて固有粘度を上げた。予備結晶化槽にて170℃の窒素雰囲気化にて0.5時間処理した後、不活性ガスを流す塔式乾燥機を用い、200℃の温度下にて水分率が0.005%になるまで乾燥した。その後固相重合槽へ送り、240℃にて3時間、固相重合を行い固有粘度0.70のポリエステル(d)を得た。
【0120】
<ポリエステル(e)の製造>
ポリエステル(d)を製造する際、固相重合槽にて5時間固相重合を行い、固有粘度0.80のポリエステル(e)を得た。
【0121】
実施例1:
<ポリエステルフィルムの製造>
表層の原料としてポリエステル(e)70重量%と、ポリエステル(b)30重量%を混合し、中間層の原料として、ポリエステル(a)84重量%とポリエステル(b)16重量%を混合し、2台のベント付き押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に3.0倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、次に下記塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.03g/mになるように塗布した、その後、テンターに導き、テンター内で予熱工程を経て120℃で4.3倍の横延伸を施した後、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4000mmのマスターロールを得た。このマスターロールの端から1400mmの位置よりスリットを行い、コアに1000m巻き取りし、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは50μm(層構成:表層2.5μm/中間層45μm/表層2.5μm)であった。ただし、本発明の場合、OL封止能を狙った塗布層(図1の14,24に該当する)を設ける場合のみ、必要に応じて、縦方向の延伸後に塗布加工をしながら、横方向の延伸を行なうものとする。
【0122】
<塗布層>
塗布層14、15を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ケン化度88モル%、重合度350のポリビニルアルコールバインダーポリマー:A・メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)バインダーポリマー:B
・架橋剤 ヘキサメトキシメラミン架橋剤:C
・粒子 コロイダルシリカ(平均粒径:70nm):D
固形分配合比:A/B/C/D=30/24/42/4
【0123】
軽剥離シート31、重剥離シート32において、延伸処方とフィルムの厚みを種々変更した(表1参照)。
【0124】
得られた軽剥離シート31、重剥離シート32用のポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤をそれぞれ塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
<離型層>
ポリエステルフィルムの製造で得られた二軸配向ポリエステルフィルムに、下記に示す離型層組成からなる塗料を、塗布量が0.1g/m(乾燥後)になるように設けて離型フィルムを得た。
【0126】
・離型層組成−1:
硬化型シリコーン樹脂(LTC303E:東レ・ダウコーニング製) 20部
付加型白金触媒(SRX212:東レ・ダウコーニング製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−1の移行性分量:15重量%
【0127】
・離型層組成−2:
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 20部
付加型白金触媒(PL−50T:信越化学製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−2の移行性分量:5重量%
【0128】
・離型層組成−3:
硬化型シリコーン樹脂(LTC303E:東レ・ダウコーニング製) 20部
シリコーンオイル(KS−64−100cs) 0.18部
付加型白金触媒(SRX212:東レ・ダウコーニング製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−3の移行性分量:23重量%
【0129】
・離型層組成−4:
硬化型シリコーン樹脂(X−62−5039:信越化学社製) 14部
剥離コントロール剤(KS−3800:信越化学社製) 6.0部
架橋剤(X−92−185:信越化学社製) 0.4部
触媒(PL−5000:信越化学社製) 1.0部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
【0130】
・離型層組成−5:
硬化型シリコーン樹脂(X−62−5039:信越化学社製) 12部
剥離コントロール剤(KS−3800:信越化学社製) 8.0部
架橋剤(X−92−185:信越化学社製) 0.4部
触媒(PL−5000:信越化学社製) 1.0部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
【0131】
・離型層組成−6:
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 20部
付加型白金触媒(PL−50T:信越化学製) 0.2部
シリコーンオイル(KS−64−100cs) 0.04部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−6の移行性分量:6重量%
【0132】
・離型層組成−7:
硬化型シリコーン樹脂(LTC303E:東レ・ダウコーニング製) 20部
シリコーンオイル(KS−64−100cs) 0.09部
付加型白金触媒(SRX212:東レ・ダウコーニング製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−7の移行性分量:23重量%
【0133】
<離型フィルム付き偏光板の製造>
得られた離型フィルムについて、偏光板による光学特性の検査性を確認した。偏光板に下記に示すアクリル粘着剤を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉内を30秒で通過させた後、離型フィルムを貼り合わせ、粘着剤を介して離型フィルムと偏光フィルムが密着された離型フィルム付き偏光板を作成した。フィルムの貼り合せ方向は、離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように行った。・アクリル粘着剤塗布液:
アクリル粘着剤(オリバインBPS429−4:東洋インキ製) 100部
硬化剤(BPS8515:東洋インキ製) 3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 50部
【0134】
<基材レス両面粘着シートの製造>
得られた第2離型フィルムの離型剤層の上に、アクリル系粘着剤溶液を乾燥後の膜厚が25μmとなるように、アプリケータを用いて塗工した後、その塗工膜を120℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成した。アクリル系粘着剤溶液は、アクリル酸ブチルとアクリル酸とのモノマー基準の質量比が99:1の共重合体溶液(溶媒:トルエン、固形分濃度40質量%)100質量部に、ポリイソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造(株)製、商品名「BHS8515」、固形分濃度37.5質量%)1質量部を添加混合して得られたものであった。次いで、第1離型フィルムの離型剤層と粘着剤層とを貼り合わせて実施例1の基材レス両面粘着シートを得た。得られた結果を表1に示す。
【0135】
実施例2〜4:
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の延伸倍率、フィルム厚さ、塗工膜設置有無を変更する、また、ポリエステルフィルム上にシリコーン層加工時に、シリコーン組成を変更する、コート厚みを変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0136】
比較例1〜4:
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の延伸倍率、フィルム厚さ、塗工膜設置有無を変更する、また、ポリエステルフィルム上にシリコーン層加工時に、シリコーン組成を変更する、コート厚みを変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のフィルムは、検査性に優れ、かつ、剥離特性に優れるために歩留まりが良く、良品率が高い粘着剤シートとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0140】
10 基材レス両面粘着シート
11 粘着剤層
13 第1離型フィルム基材
14 第1塗布層
15 第1離型剤層
23 第2離型フィルム基材
24 第2塗布層
25 第2離型剤層
31 第1離型フィルム(軽剥離シート)
32 第2離型フィルム(重剥離シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層の一方の面に第1離型フィルム、他方の面に第2離型フィルムそれぞれが積層されてなる基材レス両面粘着シートであって、第1離型フィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムに離型層を有し、当該離型層中に、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有し、かつ、移行成分を含むシリコーン樹脂と、白金系触媒とを含有し、当該離型層の残留接着率が60〜90%の範囲であり、かつ、300mm/分での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲、10000mm/分での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であり、当該離型フィルムの該離型層の115°三角錐圧子、0.10mNの試験力でのマルテンス硬度が400N/mm以上であることを特徴とする基材レス両面粘着シート。
【請求項2】
二軸配向ポリエステルフィルムとシリコーン系離型層との間にポリビニルアルコールを含有する塗布液を塗布して得られた塗布層を有する請求項1に記載の基材レス両面粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2013−91785(P2013−91785A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221756(P2012−221756)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】