基材及びターゲットプレート(substrateandtargetplate)
【課題】
基材の擬制表面について高められる多数の高化構造の整然配列を有する造成表面を備える基材が提供される。1nm〜100μmの少なくとも2つの寸法で、造成表面は、微結晶の結晶化を起こさせるか、又は疎水特性を向上させる。多数の基材を備えるターゲットプレートも、同様に開示される。
【解決手段】
基材の擬制表面に高められた多数の高化構造の整然配列を含む造成表面を備え、上記高化構造の少なくとも2つの寸法は、1nm〜100μmの範囲にあり、上記造成表面は、微結晶の円滑な結晶化を起こさせるか、又は基材の疎水特性を向上させる、基材が提供される。
基材の擬制表面について高められる多数の高化構造の整然配列を有する造成表面を備える基材が提供される。1nm〜100μmの少なくとも2つの寸法で、造成表面は、微結晶の結晶化を起こさせるか、又は疎水特性を向上させる。多数の基材を備えるターゲットプレートも、同様に開示される。
【解決手段】
基材の擬制表面に高められた多数の高化構造の整然配列を含む造成表面を備え、上記高化構造の少なくとも2つの寸法は、1nm〜100μmの範囲にあり、上記造成表面は、微結晶の円滑な結晶化を起こさせるか、又は基材の疎水特性を向上させる、基材が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材及びターゲットプレート(substrate and target plate)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリマー材料、シリコン、金属、又は合金のような固体の表面を液体によって濡らすことで、固体及び液体分子の表面間の相互作用(液体の固体表面への吸着)、固体と液体間の競争的な吸着現象、液体分子間の結合を引き起こす。吸着よりも結合が強い場合には、水和性は低減し、吸着よりも結合が弱い場合には、水和性は増加する。
【0003】
液体である水への水和性の良さは親水特性で表され、上記水和性の悪さは疎水特性で表される。
【0004】
このような水和性は、量的に固体表面の接触角を測定することによって評価される。疎水特性は、主に表面の化学的特性、より具体的には、ミクロ及びナノ構造の化学的特性に依存する。
【0005】
表面構造を修飾することによって疎水性の表面を造るための様々な方法が報告されてきている(例えば、特許文献1。)。これまで、疎水性の表面は、例えば、ポリプロピレンエッチング、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、プラズマポリマー化、ポリブタジエンのプラズマフッ素化、マイクロ波によるアルミナの陽極酸化、アルキルケテンの二量体の固化、カーボンフィルムのナノ構造化、ポリプロピレンのコーティング、カーボンナノチューブの直線状化、ポリビニルアルコールナノファイバーの形成、ポリジメチルシロキサンポーラス表面の形成、又は酸素プラズマ処理による、表面エネルギーを変える化学的処理で、又は、表面粗さを変える化学的処理で造られている。
【0006】
例えば、たんぱく質を解析するための生命科学の診断学では、当該たんぱく質が液体中に溶けていて、結晶化基質、後に当該結晶化基質の組み合わせの小滴と呼ばれていて、基材の表面に適用される分析物とも呼ばれている。結晶化基質は蒸発して、たんぱく質/基質の混合物は、基材の表面で結晶化する。その後結晶化したたんぱく質は、例えば、質量分光手法で分析される。
【0007】
知られている結晶化基質は、例えば、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、ピコリン酸、又は、3−ヒドロキシピコリン酸のような化合物を有し、それら夫々の溶媒及び適用例は、図7に示されていて、図7では、分析用に使用されるUV領域での波長も示している。更に、例えば、ジトラノール(Dithranol)と呼ばれる基質をポリマーが探すように、基質は使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2007/0013106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、分析手法の効率や精度において、更なる改良が求められていた。そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、分析手法を改良するための基材及びターゲットプレート(substrate and target plate)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、請求項1〜20に係る基材及びターゲットプレートによって解決される。上記発明の更なる詳細は、図と詳細な説明から明らかとなる。
【0011】
より具体的には、上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基材の擬制表面に高められた多数の高化構造の整然配列を含む造成表面を備え、上記高化構造の少なくとも2つの寸法は、1nm〜100μmの範囲にあり、上記造成表面は、微結晶の円滑な結晶化を起こさせるか、又は基材の疎水特性を向上させる、基材が提供される。
【0012】
また、上記配列の基本ユニットは、上記擬制表面に平行な第1の方向に沿って引き伸ばされ、上記第1の方向に対する第1の断面図の垂線を含む第1の高化構造を備え、上記配列は、第1の方向に沿って引き伸ばされ、上記第1の方向に対する第2の断面図の垂線を含む第2の高化構造を更に備え、上記第2の断面図は、上記第1の断面図よりも小さくてもよい。
【0013】
また、上記第1の断面図及び上記第2の断面図が、長方形であってもよい。
【0014】
また、上記第1の断面図及び上記第2の断面図が、正方形であってもよい。
【0015】
また、上記配列において、上記第1の高化構造及び上記第2の高化構造間の上記第1の方向に垂直な第1の距離が、上記第2の高化構造と上記次の第1の高化構造間の第2の距離とは異なってもよい。
【0016】
また、上記第1の断面図の第1サイドと上記第1の距離の長さが等しく、上記第2の断面図の第1サイドと上記第2の距離の長さが等しくてもよい。
【0017】
また、上記第1の断面図及び上記第2の断面図が三角形であってもよい。
【0018】
また、上記第1の断面図の上記擬制表面に対する垂線の長さは、上記第2の断面図の上記擬制表面に対する垂線の長さの2倍であってもよい。
【0019】
また、上記配列が均一に間隔を空けた錐体を備えてもよい。
【0020】
また、上記錐体の底面の側線は、夫々平行に形成されてもよい。
【0021】
また、上記配列の基本ユニットは、第1の体積を有する第1の直方体及び第2の体積を有する第2の直方体を備え、上記第2の体積は、上記第1の体積よりも小さくてもよい。
【0022】
また、上記第1の直方体及び上記第2の直方体は、立方体であってもよい。
【0023】
また、上記第2の体積は、上記第1の体積の8分の1の大きさであってもよい。
【0024】
また、上記擬制表面に垂直な上記第1の直方体の第1の高さは、上記擬制表面に垂直な上記第2の直方体の第2の高さの2倍であってもよい。
【0025】
また、上記第1の直方体及び上記第2の直方体の基本ユニットは、基材の上記擬制表面に平行な第1の方向と、上記擬制表面に平行で上記第1の方向に垂直な第2の方向とに繰り返されてもよい。
【0026】
また、上記第1の直方体及び上記第2の直方体は、夫々上記第1の方向及び上記第2の方向に平行になるように形成されてもよい。
【0027】
また、上記少なくとも2つの寸法は、1nm〜50μmの範囲にあってもよい。
【0028】
また、上記少なくとも2つの寸法は、1nm〜2μmの範囲にあってもよい。
【0029】
また、上記構造は、上記擬制表面の溝が転化することで形成されてもよい。
【0030】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の基材を備える、ターゲットプレートが提供される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、分析手法の効率及び精度は改善される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】本発明の第1の実施形態に係る基材を示す説明図である。
【図1b】同実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図1c】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図1d】同実施形態に係る基材を図1bのA−A線で切断した場合の断面図である。
【図1e】同実施形態に係る基材について図1dに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図1f】同実施形態に係る基材について図1eに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図1g】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図2a】本発明の第2の実施形態に係る基材を示す説明図である。
【図2b】同実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図2c】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図2d】同実施形態に係る基材を図2bのA−A線で切断した場合の断面図である。
【図2e】同実施形態に係る基材について図2dに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図2f】同実施形態に係る基材について図2eに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図2g】同実施形態に係る基材について図2fに係る断面図の一部を更に拡大した説明図である。
【図2h】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図3a】本発明の第3の実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図3b】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図3c】同実施形態に係る基材について図3aに係る上から見た様子を拡大した説明図である。
【図3d】同実施形態に係る基材について図3cに係る上から見た様子を更に拡大した説明図である。
【図3e】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図4a】本発明の第4の実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図4b】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図4c】同実施形態に係る基材について図4aに係る上から見た様子を拡大した説明図である。
【図4d】同実施形態に係る基材について図4bに係る横から見た様子を拡大した説明図である。
【図4e】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係るターゲットプレートを上から見た様子を示す説明図である。
【図6】造成表面と組み立てられていない表面とを比較した典型的な表である。
【図7】既知の結晶化基質とそれらの適用例に関する表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
[第1の実施形態]
ここで記載される種々の実施例の特徴は、特に明記されない限り互いに結合されてもよい。図1aにおいて、本発明の第1の実施形態に係る基材100が、組み立てられた表面102(以下、造成表面102と呼ぶ。)と共に説明される。基材100は、ポリマー、処理されたポリマー、金属、合金であってよく、又はセラミックスに基づいていてもよい。造成表面102は、かたどって造ること(mold)、浮き上がらせること(emboss)、エッチングすること(etching)、あるいは当業者に知られているその他のあらゆる表面組み立て方法によるものであると認識される。
【0035】
基材100を上から見た図1bに記載されているが、基材100の直径Dは、1.5mmである。しかし、直径を有する上記基材100の形状は、例えば、四角形、長方形、又は特異的な形状にもなりうる。上記基材100は、特異的に形成された部材の上に積層されたり、置かれたりする結果、当該部材上に造成表面を提供することができる。
【0036】
図1cに示すように、横から見た場合、上記基材100の厚みtは、0.3mmであり、他の厚みは、同様であってもよい。
【0037】
図1dでは、図1aのA−A線で切断した場合の基材100の断面図を示しており、また、図1eでは、図1dの当該断面図の一部を拡大した図を示しており、より具体的には、Zでラベルされた領域に対応する部分を示している。図1fでは更に拡大された詳細、又は図1のYでラベルされた領域を示している。
【0038】
図1gでは、第1実施形態の造成表面102の眺望図を示している。図1gで示すように、より顕著には、図1fで示すように、造成表面102は、多数の高められた構造(以下、高化構造106と呼ぶ。)の規則正しい配列104(以下、整然配列104と呼ぶ。)を含んでいて、上記の高化構造の106、108が有する少なくとも2つの寸法は1nm〜100μmの範囲にあり、好ましくは1nm〜50μmの範囲にあり、更に好ましくは1nm〜2μmの範囲にある。上記の高化構造は、上記の基材100の擬制表面110についてまで高められる。上記構造が転化する際、例えば、上記構造が擬制表面にまで高められずに、上記の擬制表面の下にある溝である際に、類似した円滑な結晶化の効果が、達成可能である。
【0039】
更に、分析物の小滴が基材100上に滴下される際、造成表面102は、微結晶の円滑な結晶化を蓄積するように構成される。
【0040】
微細構造とも表現できる、造成表面102は、同時に基材100の疎水特性を高める。
【0041】
造成表面102の性質、寸法、及び形態は、結晶化基質の特性及び疎水特性と同様に、サイズ、結晶化形態、及び微結晶の形態を考慮に入れることによって決定される。
【0042】
整然、又は均一な配列は、均一な、又は円滑な結晶化を引き起こす。一方、ほぼ完全なまでに平らな光沢のある表面で異なる流体及び結晶化基質の微結晶は、自己組織化のルールに従い、堅固な樹状型結晶構造又は他の主に自己類似型(self−similar)結晶構造を形成する。上記結晶構造は、例えば、単結晶又は鎖状のクラスターの密集した層と同等の結晶配列である。このような配列は、ほぼ完全なまでに平らな表面に不規則なばらつきを有し、例えば、微結晶を気化するために用いられるレーザが、上記基材の表面に不規則な微結晶配列のため、異なる微結晶量を気化することとなり、分析装置に均一でないシグナルをもたらす。
【0043】
高化構造106、108の整然配列104は、表面102上の滴の接触角又は塗布角(coating angle)を高め、それによって、基質滴の広がりを低減することができ、また分析物と基質との接触表面を低減することができ、上記の用いられている基質の結晶化のためのコアを提供する。これによって、より円滑で、より均質な結晶化が実現される。また、結晶に要する時間が低減され、分析装置の処理量が増加する。
【0044】
上記基材は、生命科学、又は、例えば、環境的/化学的な解析学、犯罪学でたんぱく質を分析するため、及びポリマー、糖、脂質、代謝物等のような他の分析物に用いられる。
【0045】
付加的な表面処理又は更なる表面の化学的性質は不要である。
【0046】
図1a〜図1gで説明されている本願の第1実施形態は、第1の高化構造106及び第2の高化構造108の基本ユニットを含み、それら構造106、108は、表面102に平行である第1の方向であるxに沿って引き伸ばされる。上記第1の高化構造106の断面図は、上記第2の高化構造108の断面図よりも大きい。引き伸ばされた構造又は隆起部の基本ユニットを異なる断面図で規則正しく繰り返す配列は、非常に円滑な結晶化をもたらすことが見出されている。前記第1の断面図及び前記第2の断面図が、長方形であってよく、さらに、正方形であってもよい。前記第1の高化構造及び前記第2の高化構造間の前記第1の方向に垂直な第1の距離が、前記第2の高化構造と前記次の第1の高化構造間の第2の距離とは異なってもよい。また、第1の断面図及び前記第2の断面図が三角形であってもよい。
【0047】
上記配列において、上記第1の高化構造106と上記第2の高化構造108との間の第1の距離d1は、上記第2の高化構造108と次の第1の高化構造106との間の第2の距離d2とは異なる場合、結晶化の円滑さが更に改善される。
【0048】
上記第1の距離d1と上記第1の断面図の第1の側l1とが長さについて等しく、上記第2の距離d2と上記第2の断面図の第1の側l2とが長さについて等しい場合、配列はより改善される。図1fにおいて、上記第1の距離は0.000792mmであって、上記第2の距離は0.000396mmである。
【0049】
上記の擬制表面110に垂直な上記第1の断面図の高さh1は、上記の擬制表面110に垂直な上記第2の断面図の高さh2の2倍である場合、更に配列は改善される。図1fでは、上記第1の高さh1は、0.000792mmであって、上記第2の高さh2は、0.000396mmである。
【0050】
[第2の実施形態]
図2a〜図2hでは、本願の第2実施形態に係る基材が異なる角度から示されている。図2aは、第2の表面202を有する第2の基材200の眺望図で概略的なものを示している。図2bは、上から見た図を示し、図2cは、横から見た図を示し、図2dは、図2bのA−A線で切断した場合の断面図を示し、図2eは、図2dでの断面図の“Z”を表す部分を拡大したものであり、図2fは、図2eでの断面図の“Y”を表す部分をより拡大したものであり、図2gは、図2hでの断面図の“X”を表す部分を上記寸法で共に、より拡大したものであり、図2hは、より拡大した眺望図を示している。
【0051】
基材200の直径Dは、1.5mmである。上記表面の構造の配列は、第3の高化構造206及び第4の高化構造208の基本ユニットを含み、それらの構造206、208は、例えば、図2hに示されているように表面202に平行な第1の方向xを引き伸ばす。上記第3の高化構造206及び第4の高化構造208の断面図は、三角形である。また、図2gで示されているように、上記第3の高化構造206の断面図は、上記第4の高化構造208の断面図よりも大きい。
【0052】
擬制表面210に関する上記第3の高化構造の高さh3は、0.001mmにされ、このようにh3は、擬制表面210に関する上記第4の高化構造の高さh4の2倍であり、h4は、0.0005mmである。上記第3の高化構造の幅w1は、0.001mmとされ、上記第4の高化構造の幅は、0.0005mmとされる。
【0053】
[第3の実施形態]
図3a〜図3eでは、本願の第3の実施形態に係る基材が異なる角度から示されている。第3の組み立てられた構造302を有する基材300は、図3aでは上から見た図として示されていて、図3bでは横から見た図として示されている。Zとして表されている図3aの上から見た図についての拡大した図が、図3cで示されていて、Yとして表されている図3cの上から見た図の更に拡大した図が、図3dで示されている。図3は、多数の高化構造304を有する表面の眺望を示している。
【0054】
上記配列の基本ユニットとして、上記の高化構造304は正方形の底面を含む錐体の形状を有し、異なる錐体の底面の側線が、夫々平行に形成される。例えば、側線は、0.001725mmの幅を有し、0.001584mmの幅を互いに隔てて位置している。擬制表面310に関する錐体の高さは、0.0011mmとされている。
【0055】
[第4の実施形態]
図4a〜図4eでは、本願の第4の実施形態に係る基材が異なる角度から示されている。図4aでは、第4の基材400を上から見た図を示していて、図4bは、図4aに対応した、横から見た図を示している。図4cは、図4aに示した上から見た図のZとして表されている部分を拡大した図を示していて、図4dは、図4bに示した横から見た図のYとして表されている部分を拡大した図を示している。図4eは、第4の基材400の表面402の眺望図を示している。
【0056】
第4の実施形態として使われる配列は、第5の高化構造と第6の高化構造の基本ユニットを含んでいる。上記第5の高化構造と第6の高化構造は、異なった体積を有した第1の立方体404と第2の立方体406として形成される第4の実施形態内で、上記第1の立方体404の側線は、上記第2の立方体406の側線の2倍の長さを有しており、その結果として、上記第1の立方体404の体積は、上記第2の立方体406の体積の8倍となる。
【0057】
上記第1の立方体404の側線の長さc1は、0.016032mmとされていて、上記第2の立方体406の側線の長さc1は、0.008016mmとされている。上記の配列は、上記第1の立方体404及び上記第2の立方体406の整然配列から形成され、上記第1の立方体404及び上記第2の立方体406は、第1の方向x及び第2の方向yに広がる擬制表面410に平行になるように、交互に平行に配列され、それらxとyとは、擬制表面410に平行であって、互いに垂直である。
【0058】
上記第1の立方体404及び上記第2の立方体406の側線は、夫々が上記第1の方向x及び上記第2の方向yに平行になるように配列される。
【0059】
造成表面を形成するために立方体を用いる代わりに、もしくは立方体と共に、異なる側線の長さを有する直方体を利用することも可能である。
【0060】
[ターゲットプレートについて]
図5では、多数の基材502及び基材504を備える、ターゲットプレート500について上から見た図が示されている。基材502及び基材504は、上記第1〜第4の実施形態において説明した造成表面を備える。このようなターゲットプレートでは、多数の異なった分析における滴が、基材502や基材504などに滴下される。
【0061】
基材502、基材504は、同一の造成表面又は異なる造成表面を有することができる。
【0062】
多数の基材が同一の造成表面を有することで、多数の異なった分析を瞬時に分析することができる。
【0063】
多数の基材が異なった造成表面を有することで、分析方法における異なった造成表面の効果を分析することができる。
【0064】
当業者にとって明らかであるように、上記の高化構造の備え付けられた寸法は、他の応用例に変えられうる。当該応用例としては、例えば、他の結晶化基質が挙げられる。例えば、類似の効果を得るために同一量だけ寸法の割合を増すことも可能である。
【0065】
示された実施形態は、一つの造成表面を含むが、当業者であれば、上または下の両方の、基材の表面に造成表面を利用することも可能である。更に、ターゲットプレート502及び504の間にある、領域506は、例えば、基材502、基材504に使われるよりも他の構造によって組み立てられうる。
【0066】
図6では、表が示され、当該表は、微結晶化の結果を比較している。同一の基質、分析物、及び溶剤からなる0.5μlの滴が、ポリマー基材の組み立てられていない表面に滴下される。当該ポリマー基材は、ダイヤモンドライクカーボン(表中央)でコーティングされる。または、上記滴は、ポリプロピレン基材の本願の実施形態に係る造成表面に滴下される(表左)。表の最上段にある顕微鏡画像が、上記の造成されていない表面の場合には強いクラスタリングを示し、上記の造成表面の場合には円滑な結晶化を示している。
【0067】
提案された基材及びターゲットプレートでは、微細構造は、微結晶の円滑な結晶化を蓄積することが提案される。上記基材及び上記ターゲットプレートは、また、組み立てられていない表面と比較して、上記表面の疎水特性を高める、強める、増加する、又は影響を及ぼすために使われる。
【0068】
特別の実施形態は、ここで記載又は説明されたが、当業者の通常の知識によって理解される。類似した円滑な結晶化の効果は、上記構造が転化された際に得られる。例えば、上記構造が擬制表面について高められずに、それぞれ断面図及び寸法において上記擬制表面以下に溝として形成される。このように転化された構造は上記高化構造の負の方向の画像として解釈されることも可能である。
【0069】
図は、具体例の更なる理解を与えるために含まれ、明細書中に取り入れられ、一部を成している。図は、具体例を説明して、明細書と共に主要な具体例を説明している。他の具体例及びその多くの意図された効果は、上記の詳細な説明を参照することによってより理解されるものであると認識される。図面の要素は必ずしも互いに適切に縮小されている必要はない。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
100、200、300、400 基材
102、202 表面
104 整然配列
106、108、206、208 高化構造
110 擬制表面
500 ターゲットプレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材及びターゲットプレート(substrate and target plate)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリマー材料、シリコン、金属、又は合金のような固体の表面を液体によって濡らすことで、固体及び液体分子の表面間の相互作用(液体の固体表面への吸着)、固体と液体間の競争的な吸着現象、液体分子間の結合を引き起こす。吸着よりも結合が強い場合には、水和性は低減し、吸着よりも結合が弱い場合には、水和性は増加する。
【0003】
液体である水への水和性の良さは親水特性で表され、上記水和性の悪さは疎水特性で表される。
【0004】
このような水和性は、量的に固体表面の接触角を測定することによって評価される。疎水特性は、主に表面の化学的特性、より具体的には、ミクロ及びナノ構造の化学的特性に依存する。
【0005】
表面構造を修飾することによって疎水性の表面を造るための様々な方法が報告されてきている(例えば、特許文献1。)。これまで、疎水性の表面は、例えば、ポリプロピレンエッチング、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、プラズマポリマー化、ポリブタジエンのプラズマフッ素化、マイクロ波によるアルミナの陽極酸化、アルキルケテンの二量体の固化、カーボンフィルムのナノ構造化、ポリプロピレンのコーティング、カーボンナノチューブの直線状化、ポリビニルアルコールナノファイバーの形成、ポリジメチルシロキサンポーラス表面の形成、又は酸素プラズマ処理による、表面エネルギーを変える化学的処理で、又は、表面粗さを変える化学的処理で造られている。
【0006】
例えば、たんぱく質を解析するための生命科学の診断学では、当該たんぱく質が液体中に溶けていて、結晶化基質、後に当該結晶化基質の組み合わせの小滴と呼ばれていて、基材の表面に適用される分析物とも呼ばれている。結晶化基質は蒸発して、たんぱく質/基質の混合物は、基材の表面で結晶化する。その後結晶化したたんぱく質は、例えば、質量分光手法で分析される。
【0007】
知られている結晶化基質は、例えば、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、ピコリン酸、又は、3−ヒドロキシピコリン酸のような化合物を有し、それら夫々の溶媒及び適用例は、図7に示されていて、図7では、分析用に使用されるUV領域での波長も示している。更に、例えば、ジトラノール(Dithranol)と呼ばれる基質をポリマーが探すように、基質は使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2007/0013106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、分析手法の効率や精度において、更なる改良が求められていた。そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、分析手法を改良するための基材及びターゲットプレート(substrate and target plate)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、請求項1〜20に係る基材及びターゲットプレートによって解決される。上記発明の更なる詳細は、図と詳細な説明から明らかとなる。
【0011】
より具体的には、上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基材の擬制表面に高められた多数の高化構造の整然配列を含む造成表面を備え、上記高化構造の少なくとも2つの寸法は、1nm〜100μmの範囲にあり、上記造成表面は、微結晶の円滑な結晶化を起こさせるか、又は基材の疎水特性を向上させる、基材が提供される。
【0012】
また、上記配列の基本ユニットは、上記擬制表面に平行な第1の方向に沿って引き伸ばされ、上記第1の方向に対する第1の断面図の垂線を含む第1の高化構造を備え、上記配列は、第1の方向に沿って引き伸ばされ、上記第1の方向に対する第2の断面図の垂線を含む第2の高化構造を更に備え、上記第2の断面図は、上記第1の断面図よりも小さくてもよい。
【0013】
また、上記第1の断面図及び上記第2の断面図が、長方形であってもよい。
【0014】
また、上記第1の断面図及び上記第2の断面図が、正方形であってもよい。
【0015】
また、上記配列において、上記第1の高化構造及び上記第2の高化構造間の上記第1の方向に垂直な第1の距離が、上記第2の高化構造と上記次の第1の高化構造間の第2の距離とは異なってもよい。
【0016】
また、上記第1の断面図の第1サイドと上記第1の距離の長さが等しく、上記第2の断面図の第1サイドと上記第2の距離の長さが等しくてもよい。
【0017】
また、上記第1の断面図及び上記第2の断面図が三角形であってもよい。
【0018】
また、上記第1の断面図の上記擬制表面に対する垂線の長さは、上記第2の断面図の上記擬制表面に対する垂線の長さの2倍であってもよい。
【0019】
また、上記配列が均一に間隔を空けた錐体を備えてもよい。
【0020】
また、上記錐体の底面の側線は、夫々平行に形成されてもよい。
【0021】
また、上記配列の基本ユニットは、第1の体積を有する第1の直方体及び第2の体積を有する第2の直方体を備え、上記第2の体積は、上記第1の体積よりも小さくてもよい。
【0022】
また、上記第1の直方体及び上記第2の直方体は、立方体であってもよい。
【0023】
また、上記第2の体積は、上記第1の体積の8分の1の大きさであってもよい。
【0024】
また、上記擬制表面に垂直な上記第1の直方体の第1の高さは、上記擬制表面に垂直な上記第2の直方体の第2の高さの2倍であってもよい。
【0025】
また、上記第1の直方体及び上記第2の直方体の基本ユニットは、基材の上記擬制表面に平行な第1の方向と、上記擬制表面に平行で上記第1の方向に垂直な第2の方向とに繰り返されてもよい。
【0026】
また、上記第1の直方体及び上記第2の直方体は、夫々上記第1の方向及び上記第2の方向に平行になるように形成されてもよい。
【0027】
また、上記少なくとも2つの寸法は、1nm〜50μmの範囲にあってもよい。
【0028】
また、上記少なくとも2つの寸法は、1nm〜2μmの範囲にあってもよい。
【0029】
また、上記構造は、上記擬制表面の溝が転化することで形成されてもよい。
【0030】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の基材を備える、ターゲットプレートが提供される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、分析手法の効率及び精度は改善される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】本発明の第1の実施形態に係る基材を示す説明図である。
【図1b】同実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図1c】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図1d】同実施形態に係る基材を図1bのA−A線で切断した場合の断面図である。
【図1e】同実施形態に係る基材について図1dに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図1f】同実施形態に係る基材について図1eに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図1g】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図2a】本発明の第2の実施形態に係る基材を示す説明図である。
【図2b】同実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図2c】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図2d】同実施形態に係る基材を図2bのA−A線で切断した場合の断面図である。
【図2e】同実施形態に係る基材について図2dに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図2f】同実施形態に係る基材について図2eに係る断面図の一部を拡大した説明図である。
【図2g】同実施形態に係る基材について図2fに係る断面図の一部を更に拡大した説明図である。
【図2h】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図3a】本発明の第3の実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図3b】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図3c】同実施形態に係る基材について図3aに係る上から見た様子を拡大した説明図である。
【図3d】同実施形態に係る基材について図3cに係る上から見た様子を更に拡大した説明図である。
【図3e】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図4a】本発明の第4の実施形態に係る基材を上から見た様子を示す説明図である。
【図4b】同実施形態に係る基材を横から見た様子を示す説明図である。
【図4c】同実施形態に係る基材について図4aに係る上から見た様子を拡大した説明図である。
【図4d】同実施形態に係る基材について図4bに係る横から見た様子を拡大した説明図である。
【図4e】同実施形態に係る基材の表面の眺望図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係るターゲットプレートを上から見た様子を示す説明図である。
【図6】造成表面と組み立てられていない表面とを比較した典型的な表である。
【図7】既知の結晶化基質とそれらの適用例に関する表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
[第1の実施形態]
ここで記載される種々の実施例の特徴は、特に明記されない限り互いに結合されてもよい。図1aにおいて、本発明の第1の実施形態に係る基材100が、組み立てられた表面102(以下、造成表面102と呼ぶ。)と共に説明される。基材100は、ポリマー、処理されたポリマー、金属、合金であってよく、又はセラミックスに基づいていてもよい。造成表面102は、かたどって造ること(mold)、浮き上がらせること(emboss)、エッチングすること(etching)、あるいは当業者に知られているその他のあらゆる表面組み立て方法によるものであると認識される。
【0035】
基材100を上から見た図1bに記載されているが、基材100の直径Dは、1.5mmである。しかし、直径を有する上記基材100の形状は、例えば、四角形、長方形、又は特異的な形状にもなりうる。上記基材100は、特異的に形成された部材の上に積層されたり、置かれたりする結果、当該部材上に造成表面を提供することができる。
【0036】
図1cに示すように、横から見た場合、上記基材100の厚みtは、0.3mmであり、他の厚みは、同様であってもよい。
【0037】
図1dでは、図1aのA−A線で切断した場合の基材100の断面図を示しており、また、図1eでは、図1dの当該断面図の一部を拡大した図を示しており、より具体的には、Zでラベルされた領域に対応する部分を示している。図1fでは更に拡大された詳細、又は図1のYでラベルされた領域を示している。
【0038】
図1gでは、第1実施形態の造成表面102の眺望図を示している。図1gで示すように、より顕著には、図1fで示すように、造成表面102は、多数の高められた構造(以下、高化構造106と呼ぶ。)の規則正しい配列104(以下、整然配列104と呼ぶ。)を含んでいて、上記の高化構造の106、108が有する少なくとも2つの寸法は1nm〜100μmの範囲にあり、好ましくは1nm〜50μmの範囲にあり、更に好ましくは1nm〜2μmの範囲にある。上記の高化構造は、上記の基材100の擬制表面110についてまで高められる。上記構造が転化する際、例えば、上記構造が擬制表面にまで高められずに、上記の擬制表面の下にある溝である際に、類似した円滑な結晶化の効果が、達成可能である。
【0039】
更に、分析物の小滴が基材100上に滴下される際、造成表面102は、微結晶の円滑な結晶化を蓄積するように構成される。
【0040】
微細構造とも表現できる、造成表面102は、同時に基材100の疎水特性を高める。
【0041】
造成表面102の性質、寸法、及び形態は、結晶化基質の特性及び疎水特性と同様に、サイズ、結晶化形態、及び微結晶の形態を考慮に入れることによって決定される。
【0042】
整然、又は均一な配列は、均一な、又は円滑な結晶化を引き起こす。一方、ほぼ完全なまでに平らな光沢のある表面で異なる流体及び結晶化基質の微結晶は、自己組織化のルールに従い、堅固な樹状型結晶構造又は他の主に自己類似型(self−similar)結晶構造を形成する。上記結晶構造は、例えば、単結晶又は鎖状のクラスターの密集した層と同等の結晶配列である。このような配列は、ほぼ完全なまでに平らな表面に不規則なばらつきを有し、例えば、微結晶を気化するために用いられるレーザが、上記基材の表面に不規則な微結晶配列のため、異なる微結晶量を気化することとなり、分析装置に均一でないシグナルをもたらす。
【0043】
高化構造106、108の整然配列104は、表面102上の滴の接触角又は塗布角(coating angle)を高め、それによって、基質滴の広がりを低減することができ、また分析物と基質との接触表面を低減することができ、上記の用いられている基質の結晶化のためのコアを提供する。これによって、より円滑で、より均質な結晶化が実現される。また、結晶に要する時間が低減され、分析装置の処理量が増加する。
【0044】
上記基材は、生命科学、又は、例えば、環境的/化学的な解析学、犯罪学でたんぱく質を分析するため、及びポリマー、糖、脂質、代謝物等のような他の分析物に用いられる。
【0045】
付加的な表面処理又は更なる表面の化学的性質は不要である。
【0046】
図1a〜図1gで説明されている本願の第1実施形態は、第1の高化構造106及び第2の高化構造108の基本ユニットを含み、それら構造106、108は、表面102に平行である第1の方向であるxに沿って引き伸ばされる。上記第1の高化構造106の断面図は、上記第2の高化構造108の断面図よりも大きい。引き伸ばされた構造又は隆起部の基本ユニットを異なる断面図で規則正しく繰り返す配列は、非常に円滑な結晶化をもたらすことが見出されている。前記第1の断面図及び前記第2の断面図が、長方形であってよく、さらに、正方形であってもよい。前記第1の高化構造及び前記第2の高化構造間の前記第1の方向に垂直な第1の距離が、前記第2の高化構造と前記次の第1の高化構造間の第2の距離とは異なってもよい。また、第1の断面図及び前記第2の断面図が三角形であってもよい。
【0047】
上記配列において、上記第1の高化構造106と上記第2の高化構造108との間の第1の距離d1は、上記第2の高化構造108と次の第1の高化構造106との間の第2の距離d2とは異なる場合、結晶化の円滑さが更に改善される。
【0048】
上記第1の距離d1と上記第1の断面図の第1の側l1とが長さについて等しく、上記第2の距離d2と上記第2の断面図の第1の側l2とが長さについて等しい場合、配列はより改善される。図1fにおいて、上記第1の距離は0.000792mmであって、上記第2の距離は0.000396mmである。
【0049】
上記の擬制表面110に垂直な上記第1の断面図の高さh1は、上記の擬制表面110に垂直な上記第2の断面図の高さh2の2倍である場合、更に配列は改善される。図1fでは、上記第1の高さh1は、0.000792mmであって、上記第2の高さh2は、0.000396mmである。
【0050】
[第2の実施形態]
図2a〜図2hでは、本願の第2実施形態に係る基材が異なる角度から示されている。図2aは、第2の表面202を有する第2の基材200の眺望図で概略的なものを示している。図2bは、上から見た図を示し、図2cは、横から見た図を示し、図2dは、図2bのA−A線で切断した場合の断面図を示し、図2eは、図2dでの断面図の“Z”を表す部分を拡大したものであり、図2fは、図2eでの断面図の“Y”を表す部分をより拡大したものであり、図2gは、図2hでの断面図の“X”を表す部分を上記寸法で共に、より拡大したものであり、図2hは、より拡大した眺望図を示している。
【0051】
基材200の直径Dは、1.5mmである。上記表面の構造の配列は、第3の高化構造206及び第4の高化構造208の基本ユニットを含み、それらの構造206、208は、例えば、図2hに示されているように表面202に平行な第1の方向xを引き伸ばす。上記第3の高化構造206及び第4の高化構造208の断面図は、三角形である。また、図2gで示されているように、上記第3の高化構造206の断面図は、上記第4の高化構造208の断面図よりも大きい。
【0052】
擬制表面210に関する上記第3の高化構造の高さh3は、0.001mmにされ、このようにh3は、擬制表面210に関する上記第4の高化構造の高さh4の2倍であり、h4は、0.0005mmである。上記第3の高化構造の幅w1は、0.001mmとされ、上記第4の高化構造の幅は、0.0005mmとされる。
【0053】
[第3の実施形態]
図3a〜図3eでは、本願の第3の実施形態に係る基材が異なる角度から示されている。第3の組み立てられた構造302を有する基材300は、図3aでは上から見た図として示されていて、図3bでは横から見た図として示されている。Zとして表されている図3aの上から見た図についての拡大した図が、図3cで示されていて、Yとして表されている図3cの上から見た図の更に拡大した図が、図3dで示されている。図3は、多数の高化構造304を有する表面の眺望を示している。
【0054】
上記配列の基本ユニットとして、上記の高化構造304は正方形の底面を含む錐体の形状を有し、異なる錐体の底面の側線が、夫々平行に形成される。例えば、側線は、0.001725mmの幅を有し、0.001584mmの幅を互いに隔てて位置している。擬制表面310に関する錐体の高さは、0.0011mmとされている。
【0055】
[第4の実施形態]
図4a〜図4eでは、本願の第4の実施形態に係る基材が異なる角度から示されている。図4aでは、第4の基材400を上から見た図を示していて、図4bは、図4aに対応した、横から見た図を示している。図4cは、図4aに示した上から見た図のZとして表されている部分を拡大した図を示していて、図4dは、図4bに示した横から見た図のYとして表されている部分を拡大した図を示している。図4eは、第4の基材400の表面402の眺望図を示している。
【0056】
第4の実施形態として使われる配列は、第5の高化構造と第6の高化構造の基本ユニットを含んでいる。上記第5の高化構造と第6の高化構造は、異なった体積を有した第1の立方体404と第2の立方体406として形成される第4の実施形態内で、上記第1の立方体404の側線は、上記第2の立方体406の側線の2倍の長さを有しており、その結果として、上記第1の立方体404の体積は、上記第2の立方体406の体積の8倍となる。
【0057】
上記第1の立方体404の側線の長さc1は、0.016032mmとされていて、上記第2の立方体406の側線の長さc1は、0.008016mmとされている。上記の配列は、上記第1の立方体404及び上記第2の立方体406の整然配列から形成され、上記第1の立方体404及び上記第2の立方体406は、第1の方向x及び第2の方向yに広がる擬制表面410に平行になるように、交互に平行に配列され、それらxとyとは、擬制表面410に平行であって、互いに垂直である。
【0058】
上記第1の立方体404及び上記第2の立方体406の側線は、夫々が上記第1の方向x及び上記第2の方向yに平行になるように配列される。
【0059】
造成表面を形成するために立方体を用いる代わりに、もしくは立方体と共に、異なる側線の長さを有する直方体を利用することも可能である。
【0060】
[ターゲットプレートについて]
図5では、多数の基材502及び基材504を備える、ターゲットプレート500について上から見た図が示されている。基材502及び基材504は、上記第1〜第4の実施形態において説明した造成表面を備える。このようなターゲットプレートでは、多数の異なった分析における滴が、基材502や基材504などに滴下される。
【0061】
基材502、基材504は、同一の造成表面又は異なる造成表面を有することができる。
【0062】
多数の基材が同一の造成表面を有することで、多数の異なった分析を瞬時に分析することができる。
【0063】
多数の基材が異なった造成表面を有することで、分析方法における異なった造成表面の効果を分析することができる。
【0064】
当業者にとって明らかであるように、上記の高化構造の備え付けられた寸法は、他の応用例に変えられうる。当該応用例としては、例えば、他の結晶化基質が挙げられる。例えば、類似の効果を得るために同一量だけ寸法の割合を増すことも可能である。
【0065】
示された実施形態は、一つの造成表面を含むが、当業者であれば、上または下の両方の、基材の表面に造成表面を利用することも可能である。更に、ターゲットプレート502及び504の間にある、領域506は、例えば、基材502、基材504に使われるよりも他の構造によって組み立てられうる。
【0066】
図6では、表が示され、当該表は、微結晶化の結果を比較している。同一の基質、分析物、及び溶剤からなる0.5μlの滴が、ポリマー基材の組み立てられていない表面に滴下される。当該ポリマー基材は、ダイヤモンドライクカーボン(表中央)でコーティングされる。または、上記滴は、ポリプロピレン基材の本願の実施形態に係る造成表面に滴下される(表左)。表の最上段にある顕微鏡画像が、上記の造成されていない表面の場合には強いクラスタリングを示し、上記の造成表面の場合には円滑な結晶化を示している。
【0067】
提案された基材及びターゲットプレートでは、微細構造は、微結晶の円滑な結晶化を蓄積することが提案される。上記基材及び上記ターゲットプレートは、また、組み立てられていない表面と比較して、上記表面の疎水特性を高める、強める、増加する、又は影響を及ぼすために使われる。
【0068】
特別の実施形態は、ここで記載又は説明されたが、当業者の通常の知識によって理解される。類似した円滑な結晶化の効果は、上記構造が転化された際に得られる。例えば、上記構造が擬制表面について高められずに、それぞれ断面図及び寸法において上記擬制表面以下に溝として形成される。このように転化された構造は上記高化構造の負の方向の画像として解釈されることも可能である。
【0069】
図は、具体例の更なる理解を与えるために含まれ、明細書中に取り入れられ、一部を成している。図は、具体例を説明して、明細書と共に主要な具体例を説明している。他の具体例及びその多くの意図された効果は、上記の詳細な説明を参照することによってより理解されるものであると認識される。図面の要素は必ずしも互いに適切に縮小されている必要はない。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
100、200、300、400 基材
102、202 表面
104 整然配列
106、108、206、208 高化構造
110 擬制表面
500 ターゲットプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の擬制表面に高められた多数の高化構造の整然配列を含む造成表面を備え、
前記高化構造の少なくとも2つの寸法は、1nm〜100μmの範囲にあり、
前記造成表面は、微結晶の円滑な結晶化を起こさせるか、又は基材の疎水特性を向上させる、基材。
【請求項2】
前記配列の基本ユニットは、前記擬制表面に平行な第1の方向に沿って引き伸ばされ、前記第1の方向に対する第1の断面図の垂線を含む第1の高化構造を備え、
前記配列は、第1の方向に沿って引き伸ばされ、前記第1の方向に対する第2の断面図の垂線を含む第2の高化構造を更に備え、
前記第2の断面図は、前記第1の断面図よりも小さい、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記第1の断面図及び前記第2の断面図が、長方形である、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
前記第1の断面図及び前記第2の断面図が、正方形である、請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記配列において、前記第1の高化構造及び前記第2の高化構造間の前記第1の方向に垂直な第1の距離が、前記第2の高化構造と前記次の第1の高化構造間の第2の距離とは異なる、請求項3又は4に記載の基材。
【請求項6】
前記第1の断面図の第1サイドと前記第1の距離の長さが等しく、前記第2の断面図の第1サイドと前記第2の距離の長さが等しい、請求項5に記載の基材。
【請求項7】
前記第1の断面図及び前記第2の断面図が三角形である、請求項3に記載の基材。
【請求項8】
前記第1の断面図の前記擬制表面に対する垂線の長さは、前記第2の断面図の前記擬制表面に対する垂線の長さの2倍である、請求項2〜7のいずれか1項に記載の基材。
【請求項9】
前記配列が均一に間隔を空けた錐体を備える、請求項1に記載の基材。
【請求項10】
前記錐体の底面の側線は、夫々平行に形成される、請求項9に記載の基材。
【請求項11】
前記配列の基本ユニットは、第1の体積を有する第1の直方体及び第2の体積を有する第2の直方体を備え、
前記第2の体積は、前記第1の体積よりも小さい、請求項1に記載の基材。
【請求項12】
前記第1の直方体及び前記第2の直方体は、立方体である、請求項11に記載の基材。
【請求項13】
前記第2の体積は、前記第1の体積の8分の1の大きさである、請求項11又は12に記載の基材。
【請求項14】
前記擬制表面に垂直な前記第1の直方体の第1の高さは、前記擬制表面に垂直な前記第2の直方体の第2の高さの2倍である、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記第1の直方体及び前記第2の直方体の基本ユニットは、基材の前記擬制表面に平行な第1の方向と、前記擬制表面に平行で前記第1の方向に垂直な第2の方向とに繰り返される、請求項11〜14に記載の基材。
【請求項16】
前記第1の直方体及び前記第2の直方体は、夫々前記第1の方向及び前記第2の方向に平行になるように形成される、請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記少なくとも2つの寸法は、1nm〜50μmの範囲にある、請求項1〜16に記載の基材。
【請求項18】
前記少なくとも2つの寸法は、1nm〜2μmの範囲にある、請求項17に記載の基材。
【請求項19】
前記構造は、前記擬制表面の溝が転化することで形成される、請求項1〜18に記載の基材。
【請求項20】
請求項1〜19に記載の基材を備える、ターゲットプレート。
【請求項1】
基材の擬制表面に高められた多数の高化構造の整然配列を含む造成表面を備え、
前記高化構造の少なくとも2つの寸法は、1nm〜100μmの範囲にあり、
前記造成表面は、微結晶の円滑な結晶化を起こさせるか、又は基材の疎水特性を向上させる、基材。
【請求項2】
前記配列の基本ユニットは、前記擬制表面に平行な第1の方向に沿って引き伸ばされ、前記第1の方向に対する第1の断面図の垂線を含む第1の高化構造を備え、
前記配列は、第1の方向に沿って引き伸ばされ、前記第1の方向に対する第2の断面図の垂線を含む第2の高化構造を更に備え、
前記第2の断面図は、前記第1の断面図よりも小さい、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記第1の断面図及び前記第2の断面図が、長方形である、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
前記第1の断面図及び前記第2の断面図が、正方形である、請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記配列において、前記第1の高化構造及び前記第2の高化構造間の前記第1の方向に垂直な第1の距離が、前記第2の高化構造と前記次の第1の高化構造間の第2の距離とは異なる、請求項3又は4に記載の基材。
【請求項6】
前記第1の断面図の第1サイドと前記第1の距離の長さが等しく、前記第2の断面図の第1サイドと前記第2の距離の長さが等しい、請求項5に記載の基材。
【請求項7】
前記第1の断面図及び前記第2の断面図が三角形である、請求項3に記載の基材。
【請求項8】
前記第1の断面図の前記擬制表面に対する垂線の長さは、前記第2の断面図の前記擬制表面に対する垂線の長さの2倍である、請求項2〜7のいずれか1項に記載の基材。
【請求項9】
前記配列が均一に間隔を空けた錐体を備える、請求項1に記載の基材。
【請求項10】
前記錐体の底面の側線は、夫々平行に形成される、請求項9に記載の基材。
【請求項11】
前記配列の基本ユニットは、第1の体積を有する第1の直方体及び第2の体積を有する第2の直方体を備え、
前記第2の体積は、前記第1の体積よりも小さい、請求項1に記載の基材。
【請求項12】
前記第1の直方体及び前記第2の直方体は、立方体である、請求項11に記載の基材。
【請求項13】
前記第2の体積は、前記第1の体積の8分の1の大きさである、請求項11又は12に記載の基材。
【請求項14】
前記擬制表面に垂直な前記第1の直方体の第1の高さは、前記擬制表面に垂直な前記第2の直方体の第2の高さの2倍である、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記第1の直方体及び前記第2の直方体の基本ユニットは、基材の前記擬制表面に平行な第1の方向と、前記擬制表面に平行で前記第1の方向に垂直な第2の方向とに繰り返される、請求項11〜14に記載の基材。
【請求項16】
前記第1の直方体及び前記第2の直方体は、夫々前記第1の方向及び前記第2の方向に平行になるように形成される、請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記少なくとも2つの寸法は、1nm〜50μmの範囲にある、請求項1〜16に記載の基材。
【請求項18】
前記少なくとも2つの寸法は、1nm〜2μmの範囲にある、請求項17に記載の基材。
【請求項19】
前記構造は、前記擬制表面の溝が転化することで形成される、請求項1〜18に記載の基材。
【請求項20】
請求項1〜19に記載の基材を備える、ターゲットプレート。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
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【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−244267(P2009−244267A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86435(P2009−86435)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(595044111)ソニー デーアーデーツェー オーストリア アクチェンゲゼルシャフト (21)
【氏名又は名称原語表記】Sony DADC Austria AG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(595044111)ソニー デーアーデーツェー オーストリア アクチェンゲゼルシャフト (21)
【氏名又は名称原語表記】Sony DADC Austria AG
【Fターム(参考)】
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