説明

基材表面からの水不溶性物質の除去方法

本発明は、ハイドロホービンを含む固体乾燥担体により基材表面から水不溶性物質を除去する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロホービン(hydrophobin)を含む固体乾燥担体による、基材表面からの水不溶性物質の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活、特に家庭から、水不溶性物質を基材から担体により除去する方法は公知である。これらの洗浄又は噴霧組成物の大部分、そしてまたメーキャップ又は皮膚クレンジングを除去するための化粧品組成物は、基材上の水不溶性物質を溶解するために、有機溶剤、例えばアルコール及び乳化剤又は洗剤を含む溶液に基づいている。加えて、当該組成物はまた、機械的摩擦により洗浄効果を生じさせる粒子、例えば擦り磨き剤又は剥離調製物を含むこともできる。これらの調製物の多くは基材に塗り付けられ、次いでテキスタイル製の布、紙又は脱脂綿で拭い取られ、こうして基材を洗浄する。
【0003】
近年、基材を洗浄するための対応する調製物を含む湿った材料がますます供給されるようになった。化粧品の分野では特に、対応する調製物を含む湿ったクレンジングワイプ(拭き取り物)又はいわゆる脱脂綿パッドが知られている。
【0004】
化粧品調製物におけるハイドロホービンの使用は自体公知である。ハイドロホービン類は、糸状菌、例えばシゾフィルム・コミューネ(Schizophyllum commune)に存在する、約100〜150個のアミノ酸の小さいタンパク質である。それらは一般に8個のシステイン単位を有する。ハイドロホービン類は天然源から単離することができるが、例えば、(特許文献1)又は(特許文献2)により開示されているように、遺伝子工学的方法により得ることもできる。
【0005】
(特許文献3)は、治療用物質を処理するための化粧品のための、シゾフィルム・コミューネ由来のハイドロホービンSC3の使用を記載している。ここでは、シャンプーによる数回の洗浄に耐える化粧品デポー(持続性薬剤)が形成される。
【0006】
この先行技術は、他の用途のためのハイドロホービン類の使用も提案している。
【0007】
(特許文献4)は、疎水性表面の親水性化のため、親水性基材の耐水性改善のため、水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンの製造のために、乳化剤、増粘剤、界面活性物質としてのハイドロホービン類の使用を提案している。さらに、医薬への用途、例えば軟膏又はクリームの製造、そしてまた化粧品への用途、例えば皮膚保護のため又はヘアシャンプーもしくはヘアリンスの製造のためにも提案されている。
【0008】
(特許文献5)は、ハイドロホービン類を含む溶液により種々の物質を30〜80℃で被覆することを開示している。さらに、例えば、乳化破壊剤として(特許文献6)、蒸発遅延剤として(特許文献7)又は汚れ抑制剤として(特許文献8)の使用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/082251号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/131564号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0217419号明細書
【特許文献4】国際公開第96/41882号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第1252516号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/103251号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2006/128877号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2006/103215号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、基材表面から水不溶性物質を除去するための多様な用途を有する方法を提供することであった。さらに、この方法は、基材表面に対して穏やかであるべきであった。加えて、この方法は、簡単であり、かつ僅かな処理で水不溶性物質の除去を可能にすべきであった。
【0011】
さらに、本発明の目的は、ハイドロホービンの新規な使用を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、冒頭に記載の方法及び本発明のさらなる対象によって達成される。本発明のもう一つの対象は、皮膚及び/又は毛髪表面を、ハイドロホービンを含む担体で処理する、皮脂及び/又はメーキャップを除去するための化粧方法に関する。さらに、水不溶性物質を除去するための、ハイドロホービンを含む担体の使用が、本発明によって提供される。本発明の特別の実施形態は、請求項、本発明の説明及び実施例に見出すことができる。その上、本発明はまた、好ましい実施形態の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】処理されたBasotect立方体を示す図である。
【図2】シクロメチコーン/スーダン・レッドに浸漬した後の処理されたBasotect立方体を示す図である。
【図3】水中の吸収されたシクロメチコーン油を含む被覆されたBasotect立方体を示す図である。
【図4】延長した待ち時間(30分)の後でさえ、ハイドロホービン被覆スポンジがSDS被覆スポンジとは対照的に油を放出しないことを示す図である。
【図5】水浴後にスライスされたBasotect立方体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の特別の特徴は、ハイドロホービンを負荷した固体乾燥担体が大量の水不溶性物質を吸収すると同時に、吸収された物質を少量しか再び放出しないという事実にある。
【0015】
本発明に係る方法において、ハイドロホービンを含む固体乾燥担体が用いられる。
【0016】
ハイドロホービン類は界面活性ポリペプチドである。それらは天然源から単離することができるが、遺伝子工学的方法により得ることもできる。
【0017】
原則として、何らかのタイプのハイドロホービン類が適している。
【0018】
「ハイドロホービン」又は「ハイドロホービン類」は、一般式(I)
【化1】

【0019】
〔式中、Xは20の天然に存在するアミノ酸(Phe、Leu、Ser、Tyr、Cys、Trp、Pro、His、Gln、Arg、Ile、Met、Thr、Asn、Lys、Val、Ala、Asp、Glu、Gly)のいずれであってもよい〕のポリペプチドを意味すると理解することができる。ここで、基Xは、それぞれ同一であってよく又は異なっていてもよい。ここで、Xの隣に位置するインデックスは、いずれの場合にも、個々の部分配列X中のアミノ酸の数であり、Cはシステイン、アラニン、セリン、グリシン、メチオニン又はトレオニンであり、ここで、Cで指定される基の少なくとも4個はシステインであり、そしてインデックスn及びmは互いに独立して自然数である。一般に、mとnのどちらもゼロではないが、一般に1以上である。例えば、m及びnは互いに独立して1〜500である。好ましくは、n及びmは互いに独立して15〜300である。C〜Cで指定されるアミノ酸は、好ましくはシステインである;しかしながら、それらは、類似の空間充填の他のアミノ酸、好ましくはアラニン、セリン、トレオニン、メチオニン又はグリシンで置き換えられていてもよい。しかしながら、位置C〜Cの少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、特に好ましくは少なくとも6個、特に7個は、システインであるべきである。本発明に係るタンパク質中のシステインは、還元形態又は互いのジスルフィド橋の形態のいずれで存在していてもよい。C−C橋の分子内形成、特に、少なくとも1個、好ましくは2個、特に好ましくは3個、実に特に好ましくは4個の分子内ジスルフィド橋を有するものが特別に好ましい。上記のシステインが類似の空間充填のアミノ酸で置き換えられている場合に、互いに分子内ジスルフィド橋を形成できるC位置の対が置き換えられていることが有利である。
【0020】
システイン、セリン、アラニン、グリシン、メチオニン又はトレオニンがXで言及される位置にも用いられているならば、一般式中のそれぞれのC位置の数は対応して変化することができる。
【0021】
本発明を実施するために、一般式(II)のハイドロホービン類
【化2】

【0022】
〔式中、X及びCは上記の意味を有し、そしてXの隣に位置するインデックスは上記の意味を有し、インデックスn及びmは自然数である〕を用いることが好ましい。一般に、mとnのどちらもゼロではないが、一般に1以上である。例えば、m及びnは互いに独立して1〜500であってよい。好ましくは、n及びmは互いに独立して15〜300であり、そしてCで指定される基の少なくとも6個はシステインである。特に好ましくは、基Cの全てはシステインである。
【0023】
一般式(III)のハイドロホービン類
【化3】

【0024】
〔式中、X及びCは上記の意味を有し、そしてXの横に位置するインデックスは上記の意味を有する〕を用いることが好ましい。特に、インデックスn及びmは1〜200の自然数である。一般に、Cで指定される基の少なくとも6個はシステインである。特に好ましくは、基Cの全てはシステインである。
【0025】
基X及びXは、ハイドロホービンの他の成分と天然に連結されているペプチド配列であってよい。しかしながら、一方又は両方の基にとって、これらはハイドロホービンの他の成分と天然に連結されていないペプチド配列であってもよい。これらは、タンパク質中に天然に存在するペプチド配列がタンパク質中に天然には存在しないペプチド配列によって延長されている基X及びXを意味すると理解することもできる。
【0026】
基X及び/又はXは、完全に又は部分的に、タンパク質中に天然には存在しないペプチド配列を含むことができる。タンパク質中に天然には存在しないペプチド配列(これらから基X及び/又はXが完全に又は部分的に構成される)は、以下で、融合パートナーとも呼ばれるだろう。これらの融合パートナーは、一般に少なくとも20、好ましくは少なくとも35のアミノ酸長である。これらは、例えば、20〜500、好ましくは30〜400、特に好ましくは35〜100アミノ酸の配列であってよい。
【0027】
融合パートナーは、例えば国際公開第2006/082251号パンフレット、国際公開第2006/082253号パンフレット及び国際公開第2006/131564号パンフレットに開示されている。
【0028】
融合パートナーは多数のタンパク質から選択することができる。たった一つの融合パートナーをポリペプチドの基に連結することができ、そうでなければ複数の融合パートナーをポリペプチドの基に連結することができる。しかしながら、例えば、位置X又はXにある二つの融合パートナーをポリペプチドの基に連結することもできる。
【0029】
特に適する融合パートナーは、微生物、特に大腸菌(Escherichia coli)又は枯草菌(Bacillus subtilis)に天然に存在するタンパク質である。当該融合パートナーの例は、配列yaad(国際公開第2006/082251号パンフレットの配列番号16)、yaae(国際公開第2006/082251号パンフレットの配列番号18)、ユビキチン及びチオレドキシンである。非常に適するものは、これら特定の配列の断片又は誘導体であって、特定の配列の一部だけ、例えば70〜99%、好ましくは5〜50%、特に好ましくは10〜40%を含むもの、又は個々のアミノ酸もしくはヌクレオチドが特定の配列と比べて変化しているものであり、パーセンテージデータはいずれの場合にもアミノ酸の数に関する。
【0030】
もう一つの好ましい実施形態において、ハイドロホービンは、特定の融合パートナーのほかに、基XもしくはXの一つとして又は当該基の末端成分として、いわゆる親和性ドメイン(親和性タグ/親和性テイル)をも有する。ここで、これらは、原理的に公知の方法で、一定の相補的基と相互作用でき、かつタンパク質のより容易な仕上げ処理及び精製に役立ちうるアンカー基である。当該親和性ドメインの例は、(His)、(Arg)、(Asp)、(Phe)又は(Cys)基を含み、ここで、kは一般に1〜10の自然数である。好ましくは、それは(His)基であり、ここで、kは4〜6である。ここで、基X及び/又はXは、もっぱらこのような親和性ドメインから構成されていてよく、そうでなければポリペプチドの基と天然に連結しているか又は天然には連結していないアミノ酸、及びこのような親和性ドメインから構成されていてよい。
【0031】
別の好ましい実施形態において、ハイドロホービンは、それらのポリペプチド配列が、例えば、グリコシル化、アセチル化により、そうでなければ例えばグルタルアルデヒドを用いる化学的架橋により修飾されていてもよい。
【0032】
用いられるハイドロホービン類の一つの生物学的特性は、表面、例えば担体の表面をタンパク質で被覆する場合に、表面特性が変化することである。
【0033】
表面特性の変化は、実験的に、例えば、表面をタンパク質で被覆する前及びその後の水滴の接触角を測定し、そして二つの測定値の差を確認することにより決定することができる。
【0034】
接触角の測定手順は、原理的に当業者に公知である。測定は、室温で5μlの水滴及び基材としてのプレートレットを用いて行われる。接触角を測定する適切な方法の例のための条件は、実験の部に記載される。そこで特定される条件下で、用いられるハイドロホービン類は接触角を広げることができる。したがって、ハイドロホービン類は接触角を、いずれの場合にも同じ大きさの水滴と被覆されていないガラス表面との接触角と比べて、例えば、少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°、特に好ましくは少なくとも30°;40°、特に50°だけ広げることができる。
【0035】
本発明を実施するために特に好ましいハイドロホービン類は、タイプdewA、rodA、hypA、hypB、sc3、basf1、basf2のハイドロホービン類である。これらのハイドロホービン類はそれらの配列を含めて、例えば国際公開第2006/82251号パンフレットに開示されている。別に記載しない限り、以下に記載される配列は、国際公開第2006/82251号パンフレットに開示された配列に関する。配列番号を含む概要の表は、国際公開第2006/82251号パンフレットの20頁に見出すことができる。
【0036】
本発明により特に適するものは、角括弧に記載のポリペプチド配列を有するハイドロホービン類yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号24)、そしてまたそれらをコードする核酸配列、特に配列番号19、21、23による配列である。特に好ましくはyaad−Xa−dewA−his(配列番号20)を用いることができる。また、配列番号20、22又は24に示されるポリペプチド配列から出発して、少なくとも1個、10個以下の、好ましくは5個のアミノ酸、特に好ましくは全アミノ酸の5%の置換、挿入又は欠失により生じるタンパク質、及び出発タンパク質の生物学的特性の少なくとも50%を依然として有するタンパク質は、特に好ましい実施形態である。ここで、タンパク質の生物学的特性は、既に記載した接触角の変化を意味すると理解される。
【0037】
本発明を実施するために特に適するハイドロホービン類は、yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号24)からyaad融合パートナーの短縮により誘導されるハイドロホービン類である。294のアミノ酸を有する完全なyaad融合パートナー(配列番号16)の代わりに、短縮yaad基を有利に用いることができる。しかしながら、この短縮基は少なくとも20、好ましくは少なくとも35のアミノ酸を含むべきである。例えば、20〜293、好ましくは25〜250、特に好ましくは35〜50、例えば35〜100のアミノ酸を有する短縮基を用いることができる。当該タンパク質の一例は、40アミノ酸まで短縮されたyaadを有するyaad40−Xa−dewA−his(PCT/EP2006/064720の配列番号26)である。
【0038】
融合パートナー又は融合パートナー類とポリペプチドの基との間の切断部位は、融合パートナーの切断除去のために用いることができる(例えばメチオニンにおけるBrCN切断、因子Xa切断、エンテロキナーゼ切断、トロンビン切断、TEV切断などによる)。
【0039】
担体に本発明により存在させるハイドロホービン類又は化粧品組成物の製造に用いられるハイドロホービン類は、ペプチド合成の公知方法により化学的に、例えばMerrifieldによる固相合成により製造することができる。
【0040】
天然に存在するハイドロホービン類は、天然源から適切な方法を用いて単離することができる。一例として、Woesten et. al., Eur. J Cell Bio. 63, 122-129 (1994)又は国際公開第96/41882号パンフレットを参照することができる。
【0041】
タラロマイセス・サーモフィルス(Talaromyces thermophilus)からの、融合パートナーを含まないハイドロホービン類の遺伝子組み換え製造方法は、例えば米国特許出願公開第2006/0040349号明細書により記載されている。
【0042】
融合パートナーを含むハイドロホービン類の製造は、遺伝子組み換え方法により好ましく製造され、この方法では、融合パートナーをコードする核酸配列及びポリペプチドの基をコードする核酸配列、特にDNA配列が、組み合わせられた核酸配列の宿主生物における遺伝子発現により、望ましいタンパク質が生産されるように組み合わせられる。一つの当該製造方法は、例えば、国際公開第2006/082251号パンフレット又は国際公開第2006/082253号パンフレットにより開示されている。融合パートナーは、ハイドロホービン類の製造をかなり容易にする。融合パートナーを含むハイドロホービン類は、遺伝子組み換え方法において、融合パートナーを含まないハイドロホービン類よりも良好な収率で製造される。
【0043】
遺伝子組み換え方法により宿主生物から生産されるハイドロホービン類は、原理的に公知の方法で仕上げ処理し、そして公知のクロマトグラフィー法を用いて精製することができる。
【0044】
一般に、精製されたハイドロホービン類が本発明を実施するために用いられる。
【0045】
好ましい実施形態において、国際公開第2006/082253号パンフレットの11/12頁に開示の簡易化仕上げ及び精製方法を用いることができる。
【0046】
このために、発酵細胞を最初に発酵ブロスから分離し、破壊し、細胞残屑を封入体から分離する。後者は遠心分離により有利に行うことができる。最後に、ハイドロホービン類を放出させるために、封入体を、例えば酸、塩基及び/又は洗剤により原理的に公知の方法で破壊することができる。本発明により用いられるハイドロホービン類を含む封入体は、ちょうど0.1mのNaOHを用いて約1時間以内に完全に溶解することができる。
【0047】
生成した溶液は、必要ならば、望ましいpHに調節した後、さらに精製することなく本発明を実施するために使用することができる。しかしながら、ハイドロホービン類はまた、溶液から固体として単離することもできる。好ましくは、単離は、国際公開第2006/082253号パンフレットの11頁に記載のように、噴霧造粒又は噴霧乾燥により行うことができる。簡易化仕上げ及び精製方法の後に得られる生成物は、細胞残屑の残留物のほかに、一般に約80〜90重量%のタンパク質を含む。発酵条件に応じて、ハイドロホービン類の量は、タンパク質の全量に関して一般に30〜80重量%である。
【0048】
ハイドロホービン類を含む単離生成物は固体として貯蔵することができる。
【0049】
ハイドロホービン類は、本発明を実施するために、そのままで又はそうでなければ切断して融合パートナーを分離した後に用いることができる。切断は、封入体の単離及びそれらの溶解の後に有利に行われる。
【0050】
本発明によれば、ハイドロホービンは固体乾燥担体に存在していてよい。さらに、固体乾燥担体は、ハイドロホービン又はそうでなければ異なるハイドロホービン類の組成物、例えば二つ以上のハイドロホービン類を含む組成物を含むことができる。
【0051】
担体は、固体であり、かつ乾燥している。ここで、乾燥は、水分含量を全く又は少量しか含まないことを意味する。この水分含量は、重量分析による残留水分の測定によって確認することができる。このために、最初に未負荷担体の重量を室温で確認する。担体の負荷の後、それを相応に乾燥する。乾燥の後、今は負荷された担体の重量を確認する。これらの値の差は残留水分を与え、これは未負荷担体の重量(100%)に基づくパーセンテージとして言及される。しかしながら、ここで、担体が負荷される物質(ハイドロホービンなど)も負荷担体の重量に同様に寄与することに注意すべきである。本発明に係る担体の残留水分は、25%までの残留水分、好ましくは12%までの残留水分、特に好ましくは7%までの残留水分、実に特に好ましくは3%までの残留水分である。しかしながら、担体は検出可能な残留水分を全く含まなくてもよい。
【0052】
好ましくは、担体は、それ自体が全体的に平滑ではなくて不規則な表面を有する物質である。例えば、いずれの表面も窪みを有していてよい。担体はまた、空洞、気泡及び/又は細孔を有していてもよい。しかしながら、担体は繊維質物質又は繊維を含む物質でできていてもよい。好ましくは、担体はフォーム、スポンジ、不織布、紙及び/又は脱脂綿である。
【0053】
一つの実施形態において、担体は親水性表面を有する。
【0054】
本発明の一つの実施形態において、表面は、それらが水をはじかないならば、親水性と呼ばれる。親水性表面は、90°未満の水に対する接触角を有する。
【0055】
加えて、特別の実施形態において、担体は小さい細孔径を有する。
【0056】
本発明の一つの実施形態において、担体はフォームである。フォームは、プラスチックであって、その表面が多数の気泡(空洞、基材により取り囲まれた細孔)により形成されているものである。実際上全てのプラスチックが発泡のために適している。実施形態の一つにおいて、化粧品用途に適するフォームが好ましい。
【0057】
本発明の特別の実施形態において、担体は、連続気泡フォーム、特にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂に基づくものである。
【0058】
ポリウレタンに基づくフォームの製造方法は、例えば国際公開第2005/103107号パンフレット又は国際公開第2006/008054号パンフレットから公知である。
【0059】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に基づくフォームの製造方法は、例えば欧州特許出願公開第17672号明細書、欧州特許出願公開第37470号明細書及び国際公開第01/94436号パンフレットに開示されている。それらによれば、水性媒質中に分散又は溶解されたメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物、発泡剤、分散剤及び硬化剤の混合物を加熱し、発泡させ、そして硬化させる。加熱は、例えば、熱風、水蒸気又はマイクロ波照射を用いて行うことができる。混合物中のメラミン/ホルムアルデヒド初期縮合物の濃度は、一般55〜85重量%、好ましくは63〜80重量%である。
【0060】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に基づく連続気泡フォームの粗密度は、一般に3〜100kg/mの範囲、好ましくは5〜20kg/mの範囲にある。「粗密度」という用語は、原理的に公知の方法で、細孔容積を含むフォームの密度を指す。気泡数は、普通は50〜300気泡/25mmである。平均細孔径は、普通は100〜250μmの範囲にある(測定方法:分子プローブ及び電子顕微鏡法を用いる系統的NMR分析)。引張強度は、好ましくは100〜150kPaの範囲にあり、そして破断点伸びは8〜20%の範囲にある(引張強度及び破断点伸びの測定方法:Werstoff-Fuehrer Kunststoffe, Hellerich, Harsch, Haenle, 9th edition, Carl Hansen Verlag, 2004 pp. 259-275)。
【0061】
本発明のもう一つの実施形態において、担体はスポンジ又はスポンジ様物質である。
【0062】
スポンジは、一般に、ガス充填の、例えば多面体形の気泡から構成される固体又は半固体の弾性フォームであって、該気泡が高粘性及び/又は固体の気泡支柱により限定されている弾性フォームを意味すると理解すべきである。天然に存在するスポンジ、半合成の又は合成で製造されるスポンジ様構造物のいずれも用いることができる。合成スポンジ様物質の例は、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルの単独重合体及び共重合体である。天然及び半合成重合体は、特に、セルロース、セルロースエーテル又はセルロースエステル、例えば酢酸セルロース及び酢酸フタル酸セルロースを包含する。天然重合体の例は、多糖、例えばアルギネート、トラガント、キサンタンゴム、糖ゴム、並びにそれらの塩及び誘導体である。キチン及びキチン誘導体を用いることができる。以下の本文において、繊維構造を有する物質、例えば硬タンパク質、例えばコラーゲン、ケラチン、コンカゲン(conchagen)、フィブロイン、エラスチン及びキチンを用いることが好ましい。さらに、互いに安定的に架橋されている多糖を用いることも可能である。
【0063】
本発明のもう一つの実施形態において、担体はテキスタイル、不織布、紙及び/又は脱脂綿からできている。
【0064】
これらの物質は織物もしくは編物であってよく又は複合材料の形態であってもよい。複合材料は、DIN 61210 T2(もはや施行されていない)によれば、不織布、紙、脱脂綿及びフェルトを包含し、これら全ては本発明により使用できる。不織布は、大部分がポリエチレン、ポリエステル又はビスコースから製造される紡糸繊維(すなわち、限られた長さを有する繊維)又はフィラメント(エンドレス繊維)でできている緩い物質であり、これらは繊維に固有の付着力によって一緒に保持されている。ここで、それぞれの繊維は、好ましい方向を有していてよく(延伸又は直交ウェブ)又は延伸されていなくてもよい(ランダムウェブ)。不織布は、強力な水ジェットによるニードル押し抜き、かみ合い又は渦巻きによって機械的に結合されていてよい。接着結合された不織布は、繊維を液状結合剤(例えばアクリレート重合体、SBR/NBR、ポリビニルエステル、ポリウレタンの分散液)で一緒に接着するか、又は製造中に不織布に添加されているいわゆる結合剤繊維を溶融もしくは溶解することにより形成することができる。凝集結合の間に、繊維表面は適切な化学薬品で部分的に溶解され、そして圧力で結合されるか又は高められた温度で溶融される[J. Falbe, M. Regnitz: Roempp-Chemie-Lexikon, 9th edition, Thieme-Verlag, Stuttgart (1992)]。
【0065】
本発明のもう一つの実施形態において、脱脂綿は、繊維堆積物からなり、かつ圧縮された緩い繊維塊を指し、繊維はそれらの自然な付着力によって一緒に保持されている。それらはコットンヘア、ウール、ティランジア属(tillandsia)植物、セルロース、そしてまた石英、特に鉱物繊維から構成される。脱脂綿は、好ましくは脱脂綿パッドもしくは綿棒の形態で又はそれらの組み合わせとして用いられる。
【0066】
本発明の目的のために、テキスタイルは、紡織繊維、繊維半完成品及び完成品、並びにそれらから製造された技術的目的に役立つ織物構造を有する物品を意味すると理解すべきである。テキスタイルは、天然起源の物質、例えば木綿、ウールもしくは亜麻、又は混合繊維、例えば木綿/ポリエステル、木綿/ポリアミドからできていてよい。テキスタイルはまた、ポリアクリロニトリル、ポリアミド及び特にポリエステル、又は天然起源の物質とポリアクリロニトリル、ポリアミド及び特にポリエステルとの混合物から構成されていてもよい。
【0067】
紙は、一般に、大部分が植物起源の機械的又は化学的に消化された60〜90%の繊維から構成される平たい物質であって、該繊維は水性懸濁液中で一緒に結合され、そして助剤を添加して篩上での脱水により統合されてシート形態を与える。紙は、繊維、助剤及び水からなる。化学パルプ由来の植物繊維のほかに、機械パルプ及びぼろ(例えば木綿、麻繊維)、動物、鉱物又は合成繊維が用いられる。加えて、二次繊維としての再生紙は、製紙のための量の観点から最も重要な繊維源である。
【0068】
特別の実施形態において、本発明に係る担体は、拭き取り物(ワイプ)の形態の紙、例えば紙ハンカチーフ、化粧品ワイプ、洗浄用布、紙ハンドタオル、紙クリーニング布又はキッチンワイプである。
【0069】
もう一つの実施形態において、固体乾燥担体はアプリケーターに取り付けられる。このアプリケーターは、例えば、プラスチック、ガラス、木材、金属又はテキスタイルでできていてよい。一つの担体、又はそうでなければ複数の同じ担体、例えば二つ又は三つのフォームを、アプリケーターに取り付けることができる。
【0070】
もう一つの実施形態において、担体の組み合わせをアプリケーターに取り付けることもできる。下記の表は、いずれの場合にも「x」により特徴付けられる物質の組み合わせから構成される担体T1〜T68を示す。
【表1】


【0071】
特定の担体にはハイドロホービンが負荷される。これは一つのハイドロホービン、又はそうでなければ異なるハイドロホービン類の混合物、例えば二つ又は三つの異なるハイドロホービン類の混合物であってよい。
【0072】
本発明の一つの実施形態において、担体にはハイドロホービンを含む混合物が負荷される。
【0073】
原理的に、担体にはいずれの方法によってもハイドロホービンを負荷することができる。当業者は負荷するための種々の方法を知っている。
【0074】
一つの変形において、担体を浸漬浴に浸漬するか又は浴を通して引き出す、いわゆる「浸漬法」が用いられる。
【0075】
第二の変形は、混合物を担体上に噴霧する「噴霧法」を構成する。
【0076】
用いられるさらなる方法は、いわゆるストリッピング法である。これらの方法において、担体は、例えば不織布、紙、テキスタイル又は複合ウェブとして、ハイドロホービン含有混合物が連続的に負荷されるストリッピングプレート、ビーム又はノズルを通り過ぎる。
【0077】
本発明の一つの実施形態において、ハイドロホービン及び少なくとも水又は水性溶剤混合物を含む混合物が、担体の負荷のために用いられる。
【0078】
適切な水性溶剤混合物は、水及び一つ以上の水混和性溶剤を含む。当該成分の選択は、ハイドロホービン類及び他の成分が混合物に十分な程度まで溶解せねばならないという限りにおいてしか、制限されない。一般に、当該混合物は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%の水を含む。実に特に好ましくは、水だけが用いられる。当業者は、混合物の望ましい性質に応じて、水混和性溶剤から適切な選択を行う。適切な水混和性溶剤の例は、1価アルコール、例えばメタノール、エタノール又はプロパノール、高級アルコール、例えばエチレングリコール又はポリエーテルポリオール、及びエーテルアルコール、例えばブチルグリコール又はメトキシプロパノールを含む。
【0079】
好ましくは、処理に用いられる混合物は、4以上、好ましくは6以上、特に好ましくは7以上のpHを有する。特に、pHは4〜11、好ましくは6〜10、特に好ましくは7〜9.5、実に特に好ましくは7.5〜9の範囲にある。例えば、pHは7.5〜8.5又は8.5〜9の範囲にあってよい。
【0080】
pH調節のために、混合物は好ましくは適切な緩衝剤を含む。当業者は、負荷に想定されるpH範囲に応じて適切な緩衝剤を選択する。例えば、リン酸二水素カリウム緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤(トリス緩衝剤)、ボラックス緩衝剤、炭酸水素ナトリウム緩衝剤及びリン酸水素ナトリウム緩衝剤を挙げることができる。トリス緩衝剤が好ましい。
【0081】
溶液中の緩衝剤の濃度は、混合物の望ましい特性に応じて当業者により決定される。当業者は、一般に、できるだけ最も一様に担体を負荷するのに十分な緩衝能を確保するだろう。0.001mol/l〜1mol/l、好ましくは0.005mol/l〜0.1mol/l、特に好ましくは0.01mol/l〜0.05mol/lの濃度が有用であることが証明された。
【0082】
混合物中のハイドロホービン類の濃度は、負荷の望ましい特性に応じて当業者により選択される。濃度が高いほど、速い負荷を一般に達成することができる。原則として、0.1μg/ml〜1000μg/ml、好ましくは1μg/ml〜500μg/ml、特に好ましくは10μg/ml〜250μg/ml、実に特に好ましくは30μg/ml〜200μg/ml、例えば50〜100μg/mlの濃度が有用であることが証明された。
【0083】
さらに、用いられる混合物は、任意によりさらなる成分を含むことができる。追加の成分の例は、界面活性剤を含む。適切な界面活性剤は、例えば、ポリアルコキシ基、特にポリエチレンオキシド基を含む非イオン界面活性剤である。その例は、ポリオキシエチレンステアレート、アルコキシル化フェノールなどを含む。適切な界面活性剤のさらなる例は、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween(登録商標)40)、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノステアレート(Tween(登録商標)60)、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、シクロヘキシルメチル−βD−マルトシド、シクロヘキシルエチル−βD−マルトシド、シクロヘキシル−n−ヘキシル−βD−マルトシド、n−ウンデシル−βD−マルトシド、n−オクチル−βD−マルトピラノシド、n−オクチル−βD−グルコピラノシド、n−オクチル−βD−グルコピラノシド、n−ドデカノイルスクロースを含む。さらなる界面活性剤は、例えば国際公開第2005/68087号パンフレットの9頁11行〜10頁2行に開示されている。界面活性剤の濃度は、いずれの場合にも調製物中の全成分の量に基づき、一般に0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.25重量%、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。
【0084】
さらに、金属イオン、特に二価金属イオンを混合物に加えることもできる。金属イオンは、より一様な負荷に寄与することができる。適切な二価金属イオンは、例えば、アルカリ土類金属イオン、例えばCa2+イオンを含む。当該金属イオンは、好ましくは製剤に溶解する塩として加えることができ、例えば塩化物、硝酸塩又は炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、水酸化物、乳酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩の形態で加えることができる。例えば、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを加えることができる。溶解性は、任意により適切な助剤、例えば錯化剤により高めることができる。存在するならば、当該金属イオンの濃度は、一般に0.01〜10mmol/l、好ましくは0.1〜5mmol/l、特に好ましくは0.5〜2mmol/lである。
【0085】
本発明の一つの実施形態において、担体には、ハイドロホービンを含む混合物に加えて、化粧品、例えばゲル、フォーム、スプレー、軟膏、クリーム、エマルジョン、懸濁液、ローション、ミルク又はペーストが負荷される。これらの化粧品は、皮膚及び毛髪に対してさらなるプラスの効果をもたらすことができる。
【0086】
化粧品は下記の成分を含むことができる:
・ 染料、例えば化粧品ハンドブックから当業者に公知のもの;
・ 美容上及び/又は皮膚科学上活性な成分、例えば染色活性成分、皮膚及び毛髪の着色剤、彩色剤、日焼け剤、漂白剤、ケラチン硬化物質、抗微生物活性成分、光フィルター活性成分、撥水活性成分、充血活性物質、角質溶解及び角質可塑化物質、ふけ予防活性成分、消炎剤、角化物質、抗酸化活性成分及びフリーラジカル捕捉剤として作用する活性物質、皮膚湿潤及び保湿物質、再加脂活性成分、抗紅斑又は抗アレルギー活性物質、並びにそれらの混合物;
・ 皮膚のケア及び保護用の化粧品組成物、装飾化粧品用のネイルケア組成物、皮膚化粧品組成物、例えばフェイストニック、フェイスマスク及び他の化粧用ローション。
【0087】
調製物は、上記のハイドロホービンを含む混合物を望ましい追加の上記成分と混合し、そして望ましい濃度に希釈することにより得ることができる。また当然のことながら、調製物は、単離固体ハイドロホービン類を相応に溶解することによっても得ることができる。
【0088】
担体は、全ての場合に、ハイドロホービンを含む混合物又はハイドロホービンを含む調製物で処理される。担体の一様な負荷を確保するために、担体は、該混合物又は組成物でできるだけ完全に飽和されるべきである。負荷は、特に担体の該混合物又は組成物中への浸漬、該混合物又は組成物での噴霧、該混合物又は組成物でのかん流により行うことができる。
【0089】
原則として、担体の負荷のためには一定の接触時間が必要である。当業者は、望ましい結果に応じて適切な接触時間を選択する。典型的な接触時間の例は、0.1〜12時間であるが、本発明をこれに限定するつもりはない。例えば、加圧又は減圧の適用により、接触時間に影響を与えることができる。
【0090】
原則として、接触時間は、温度、混合物又は調製物中のハイドロホービンの濃度に依存する。負荷過程が経過する間の温度が高いほど、そして濃度が高いほど、接触時間は短くてよい。負荷過程が経過する間の温度は室温であってよく、又はそうでなければ高められた温度であってよい。例えば、温度は、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110又は120℃である。15〜120℃、特に好ましくは20〜100、例えば40〜100℃又は70〜90℃の温度が好ましい。温度は、例えば、負荷すべき担体が浸漬される浴の加熱により導入することができる。しかしながら、浸漬された担体を、例えばIR線を用いて、引き続き加熱することも可能である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、ハイドロホービンによる負荷は、マイクロ波照射の存在下に行われる。原則として、接触時間を著しく大幅に短縮することができる。エネルギー入力に応じて、ある特定の状況では、担体にハイドロホービンを負荷するのに僅か2〜3秒で足りる。
【0092】
負荷した後、溶剤は担体から除去される。好ましくは、圧力をかけることにより、溶剤を担体から機械的に除去することができる。任意により、担体を水又は好ましくは水性溶剤混合物で前もって洗浄することもできる。溶剤の除去は、例えば、空気中での単純な蒸発により行うことができる。しかしながら、溶剤の除去は、温度の上昇及び/又は適切なガス流の使用及び/又は真空の適用により、より容易に行うこともできる。蒸発は、例えば、負荷された担体を乾燥室中で加熱するか又はそれらに加熱ガス流を吹き付けることにより、より容易に行うことができる。これらの方法を、例えば対流乾燥炉中又はトンネル乾燥機中での乾燥により、組み合わせることもできる。さらに、負荷された担体を、照射、特にIR照射により加熱して溶剤を除去することもできる。このために、全てのタイプの広域帯IRエミッター、例えばNIR、MIR又はNIRエミッターを用いることができる。しかしながら、例えばIRレーザーを用いることも可能である。当該放射線源は、種々の放射形状で市販されている。
【0093】
乾燥の経過中の温度及び乾燥時間は、当業者により定められる。一般に、30〜130℃、好ましくは50〜120℃、特に好ましくは70〜110℃、実に特に好ましくは75〜105℃、例えば85〜100℃の乾燥温度が有用であることが証明された。ここで意図されるのは、担体それ自体の温度である。乾燥機中の温度はもちろん、より高くてもよい。当然のことながら、乾燥温度が高いほど、乾燥時間は短い。同様に、乾燥を大気圧より低い圧力で行うならば、乾燥温度はより低くてよく、そして乾燥時間はより短くてよい。乾燥時間はまた、担体の望ましい残留水分含量により支配され、そしてこれに決定的な方法で影響を与えることができる。
【0094】
担体の負荷の経過中の温度処理及び乾燥は、互いに有利に組み合わせることができる。したがって、例えば、担体を最初に混合物又は組成物で室温で処理し、次いで乾燥し、そして高められた温度で熱処理することができる。この方法の好ましい実施形態において、二つの段階「負荷」又は「乾燥」の少なくとも一つに、高められた温度が適用される。好ましくは、室温より高い温度が両方の段階に適用される。
【0095】
負荷は、担体の製造工程の直後に、例えば担体の製造業者自身により、行うことができる。しかしながら、それは、より遅い時点になって初めて、例えば他の加工業者によるか又はエンドユーザーへの担体の配送後に彼自身により行うこともできる。
【0096】
本発明の第二の実施形態において、負荷された担体は、担体の製造をハイドロホービンの存在下に行うことにより得ることができる。
【0097】
本発明のもう一つの実施形態において、負荷されたフォームは、フォームの製造をハイドロホービンの存在下に行うことにより得ることができる。
【0098】
メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物に基づく連続気泡フォームを製造する場合には、このために、ハイドロホービン及び任意により上記のさらなる成分を、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物、発泡剤、分散剤及び硬化剤の上記の水溶液又は分散液と混合することができる。次いでこの混合物を原理的に公知の方法で加熱し、発泡させ、そして硬化させることができる。
【0099】
本発明に係る担体にとって、そしてまた本発明に係る方法にとって、ハイドロホービンは担体上で乾燥状態で安定なままであることも特に有利である。
【0100】
本発明に係る固体乾燥担体は、水不溶性物質を除去する方法に好ましく用いられる。
【0101】
原則として、これらは複数の物質であるが、一つだけの物質であってもよい。
【0102】
基材表面から本発明により除去される物質の水中溶解性は、本質的に水不溶性から完全に水不溶性までの範囲にあってよい。一般にこれらの物質の水中溶解性は、室温で約1g/lである。さらに、しかしながら、室温での水中溶解性は、1g/lより低くてもよい。
【0103】
本発明の一つの実施形態において、水不溶性陽性物質は、脂肪、油、ワックス及び/又は脂肪、ワックス及び/もしくは油を含む組成物である。油、脂肪及び/又はワックスのほかに、組成物はさらなる物質を含んでいてもよい。
【0104】
一つの実施形態において、組成物は油、脂肪及びワックの組み合わせを含むこともできる:
a)油、ワックス及び脂肪
b)油及びワックス
c)油及び脂肪
d)ワックス及び脂肪
【0105】
本発明の一つの実施形態において、油は、比較的に低い蒸気圧を有する水不溶性の液状有機化合物である。油は、脂肪油、精油、鉱油及びシリコーン油を包含する。
【0106】
脂肪油は、室温で液状である脂肪、すなわち脂肪酸トリグリセリドであるが、脂肪は室温で固体である。
【0107】
精油は、植物又は植物部分に由来する油状の水蒸気蒸発抽出物であって、元の植物に応じて強い特徴的な臭いを有するものである。それらは、大部分がテルペン類から構成される(例:レモン油)。しかしながら、精油は合成で製造することもできる。
【0108】
鉱油は、原油又は石炭から得られ、そして炭化水素化合物である。化学的観点から見ると、物質混合物中の大部分は、アルカン型のものである。
【0109】
シリコーン油は、ケイ素−酸素単位及び有機側鎖の重合体及び共重合体である。それらは、酸化、熱及び他の影響に対して比較的に非感受性である。
【0110】
本発明の一つの実施形態において、脂肪は三価アルコールグリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)と、三つの、大部分は異なる、主に偶数の、非分枝状の脂肪族モノカルボン酸、いわゆる脂肪酸とのエステルである。
【0111】
本発明の一つの実施形態において、ワックスは、現在はそれらの機械的物理的特性により定義される物質である。一方、それらの化学組成及び起源は非常に様々である。ある物質は、それが20℃で練ることができ、固体ないし脆い硬さであり、粗いないし微細な結晶構造を有し、色に関して半透明ないし不透明であるがガラス様ではなく、40℃超で分解することなく溶融し、融点より少し高い温度で易流動性(僅かに粘性)であり、高度に温度依存性の稠度及び溶解性を有し、そして軽い圧力で研磨できるならば、ワックスと呼ばれる。
【0112】
動物性及び植物性ワックスは、脂質を包含する。これらの物質混合物の主成分は、脂肪酸と、長鎖脂肪族第一級アルコールとのエステルである。ミリシンは、例えば、パルミチン酸とミリスチルアルコールとのエステルであり、そして蜜ロウの主成分である。これらのエステルは、それらの構造が、脂肪酸のトリグリセリドである脂肪とは異なる。
【0113】
動物性ワックスは、例えば、鯨ロウ及び蜜ロウである。植物性ワックスは、例えば、サトウキビロウ、ヤシロウのカルナウバロウである。ジョジョバ油はトリグリセリドではなく、したがって実際には油ではないが、化学的な点では液体ワックスである。
【0114】
地質学的地ロウ(オゾケライト及びそれから製造されるセレシン)は、本質的に炭化水素から構成されている。
【0115】
合成ワックスは、主として原油から得られる。主生成物は固形パラフィンであり、これは、例えば蝋燭又は靴墨に用いられる。特定の用途のために、天然ワックスは化学的に改質されるか又は完全に合成される(ポリエチレン、共重合体)。ダイズワックスは、ダイズから水素添加により製造することもできる。
【0116】
本発明の一つの実施形態において、水不溶性物質は、皮脂及び/又はメーキャップである。
【0117】
本発明の一つの実施形態において、メーキャップは、装飾化粧品又はメーキャップを意味すると理解すべきである。
【0118】
装飾化粧品は、(顔面)皮膚、唇、毛髪、爪に、それらの外観を、大部分は色に関して、短時間以内に相当程度まで変えるためだけの目的で又はそのための主な目的で、一人用に、しかし可逆的に適用される物質である。
【0119】
一般に、皮脂は、それほどではないにせよ、角質化の副生物である堅くなった脂肪からなり、そして皮脂腺から生じる皮膚表面の脂肪である。皮脂の平均組成は、トリグリセリド(19.5〜49.4%の質量含有率)、ワックス(22.6〜29.5%の質量含有率)、脂肪酸(7.9〜39.0%の質量含有率)、スクアレン(10.1〜13.9%の質量含有率)、ジグリセリド(1.3〜4.3%の質量含有率)、コレステロールエステル(1.5〜2.6%の質量含有率)、コレステロール(1.2〜2.3%の質量含有率)からなる。
【0120】
本発明の一つの実施形態において、ハイドロホービンを含む単体は、皮膚から皮脂を除去するための化粧方法に使用される。
【0121】
本発明のもう一つの実施形態において、ハイドロホービンを含む担体は、毛髪から皮脂を除去するための化粧方法に使用される。本発明のもう一つの実施形態において、ハイドロホービンを含む担体は、皮膚からメーキャップを除去するための化粧方法に使用される。本発明のもう一つの実施形態において、ハイドロホービンを含む担体は、毛髪からメーキャップを除去するための化粧方法に使用される。本発明のもう一つの実施形態において、ハイドロホービンを含む担体は、皮膚からメーキャップ及び皮脂を除去するための化粧方法に使用される。本発明のもう一つの実施形態において、ハイドロホービンを含む担体は、毛髪からメーキャップ及び皮脂を除去するための化粧方法に使用される。
【0122】
本発明に係る方法において、水不溶性物質は基材表面から除去される。
【0123】
用いられる基材は固体であってよい。固体は無定形、結晶性又は部分的に結晶性であってよい。基材は一つ以上の固体から構成されていてよい。基材は、ガス及び/又は液体含有物を含むことが可能である。
【0124】
本発明の一つの実施形態において、基材は、水又はガラス、プラスチック、木材、金属、テキスタイル、羽毛、毛皮、皮膚及び/又は毛髪からなる。
【0125】
水は、例えば、海、大洋、河川、小川、水溜り及び水泳プールの水を包含することができる。
【0126】
ガラスは、工業用ガラス、光学ガラス及び装飾ガラスを含むことができる。これらの例は、板ガラス、例えば窓ガラス及び鏡である。
【0127】
一般に、プラスチックは、固形物であって、その基礎成分が合成的又は半合成的に製造された有機基を有する重合体である。プラスチックは、極めて広い分野で、例えば自動車の構築、建築業、家事及び庭に用いられる。
【0128】
一般に、木材は、木質化植物組織を含む。一つの実施形態において、木材は、例えば、家具、寄せ木細工及び同様の床仕上げ材、並びに玩具の製造に用いられるような、塗装木材をも意味すると理解される。
【0129】
一般に、金属という用語は、水素、炭素、リン、セレン、ヨウ素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン及びウンウンオクチウムは別として、全ての化学元素を意味すると理解される。加えて、金属という用語は、ステンレス鋼、例えば屋内電気器具又は刃物類のものも包含する。ステンレス鋼(DIN EN 10020による)は、特定の純度を有する合金又は非合金鋼の名称、例えばその硫黄及びリン含有量(いわゆる鉄コンパニオン)が0.025%を超えない鋼の名称である。
【0130】
加えて、この用語は金属合金をも包含する。
【0131】
本発明の一つの実施形態において、毛皮という用語は、動物の毛皮に関する。本発明の一つの実施形態において、羽毛という用語は、動物の羽毛に関する。
【0132】
本発明の一つの実施形態において、皮膚は、ヒトの顔面皮膚に関する。
【0133】
基材表面は、処理されるべき基材の主として外層である。基材表面は、平滑であってよく、平らであってよく、全体が平滑でなく不規則であってよく、例えばそれぞれの表面は窪みを有していてよい。基材表面は、空洞、気泡及び/又は細孔を有していてもよい。
【0134】
本発明に係る方法は、ハイドロホービンを含む担体の簡単かつ容易な取り扱い(処理)を特徴としている。ハイドロホービンが負荷された固体乾燥担体は、基材表面の簡単な接触、例えば穏やかな圧力で拭き取るか又は軽くたたくという形での接触により、水不溶性物質を除去する。
【0135】
本発明に係る方法は、水不溶性が担体を用いて穏やかに除去されることを確保する。
【0136】
既に記載した化粧品分野で使用されることは別として、本発明は他の多くの分野、例えば住宅、環境、輸送及び工業に使用することができる。
【0137】
例えば、工業において、本発明に係る方法は、工業プラント又はプラントの部分を洗浄するために使用することができる。これは、主として、本発明に係る固体乾燥担体を用いて完全に洗浄できる水不含の帯域又は場所にとって非常に興味深い。
【0138】
本発明はまた、例えば、地上の及び/又は水中の油汚染を除去するために使用することができる。従来の方法に対する一つの利点は、本発明に係る方法を用いると、ハイドロホービンが負荷された担体がより多くの油を吸収し、そして該油が極めて少量しか再び放出されないことである。したがって、第一に、廃棄せねばならない油汚染物質が極めて少量しか生成せず、第二に、油放出の減少が環境及び人々のさらなる汚染を防止する。
【0139】
さらに、自動車又は自動車の部分、例えば車輪リムの洗浄を、本発明を用いて行うことができる。例えば車輪リムの汚れは本発明に係る担体により容易に吸収され、そして該担体が汚れを極めて少量しか再び放出しないので、洗浄を行う人は除去された汚れと接触することがない。
【0140】
極めて低い残留水分を有する本発明に係る乾燥ワイプはまた、平滑な表面、例えばプラスチック表面、鏡又はガラス製パンから汚れ(例えば指紋)を除去するために著しく適している。本発明に係る方法は、表面全体を洗浄する必要がなく、その代わりに洗浄を部分的に行うことができるという利点を有する。
【0141】
本発明の利点は、広く使用できる基材表面から水不溶性物質を除去する方法において得られる。さらに、本方法は基材表面に優しい。加えて、本方法は簡単であり、そして僅かな処理で水不溶性陽性物質の除去を可能にする。
【実施例】
【0142】
(実施例1)
ハイドロホービンが負荷されたフォームによる皮脂の除去
9kg/cmの密度を有する連続気泡メラミン−ホルムアルデヒドフォーム(Basotect(登録商標),BASF Aktiengesellschaft)の立方体形のサンプル(2.5cm×2.5cm×2.5cm)を、ハイドロホービンA(国際公開第2007/14897号パンフレットからの配列番号20)又はハイドロホービンB(国際公開第2007/14897号パンフレットからの配列番号26)の0.1g/lの溶液で飽和した。この飽和フォーム立方体を含む溶液を60℃で15時間加熱した。次いでこの水溶液をデカントで除去した。これらのフォーム立方体から大部分の吸収液体を絞って除去し、超純水で数回洗浄し、絞り、40℃で重量が一定になるまで乾燥した。
【0143】
天然皮脂の除去を、未処理ヒト皮膚上で、額の部分で試験した。皮膚を、小さい切断立方体(縁の長さ約2.5cm)で穏やかな圧力を加えて撫でた。
【0144】
皮膚上の残留天然皮脂の定量値を、Courage+Khazaka Electronic GmbHからのSebumeter SM810を用いて評価した。測定の前に、グリースを測定するために製造業者の指示によりフィルム上でゼロ調節を行う必要がある。
【表2】

【0145】
ここで、「K」は対照実験を意味し、そして「C」は本発明による比較実験を意味する。
【0146】
負荷されたフォーム立方体は、未処理ヒト皮膚上で測定して、天然皮脂の改善された除去を示した。
【0147】
(実施例2)
合成皮脂を吸収するためのハイドロホービンが負荷されたフォーム立方体
実験のために、20gの合成皮脂(組成については下記参照)を時計ガラスに入れ、9kg/cmの密度を有する連続気泡メラミン−ホルムアルデヒドフォーム(Basotect(登録商標),BASF Aktiengesellschaft)の縁の長さ15×15cmの立方体フォームを、1分間浸漬した。ここで、未処理のフォーム立方体、ハイドロホービンBが負荷されたフォーム立方体及びカゼインが「負荷」されたフォーム立方体(ハイドロホービンBの負荷と同様、実施例1参照)を比較した。
【0148】
この実験を、純粋なカプリン/カプリル酸トリグリセリド(Miglyol(登録商標)812,Sasol)を用いて同様に行った。
【0149】
皮脂/トリグリセリドの吸収量を化学天秤により確認した。
【0150】
皮脂/トリグリセリド吸収をフォーム立方体の重量に対して計算した。次いでフォーム立方体を濾紙(Poerringer型1243/90)上に30分間置いた。化学天秤を用いて再び重量を確認し、皮脂の移動を計算した。
【0151】
さらに、立方体を水の上に置き、それらの挙動を観察した。
【表3】

【0152】
本発明に係る担体(C3)は最大量の合成皮脂を吸収でき、次いで最小量の合成皮脂を移動したことが見出された。任意に選ばれた比較タンパク質(カゼイン)が負荷された担体は、皮脂吸収の明確な減少、そしてまたその後のより高い皮脂移動を示した。
【0153】
合成皮脂の組成:
41.0% トリグリセリド
25.0% ワックスエステル
16.0% 脂肪酸
13.0% スクアレン
1.0% ジグリセリド
2.0% コレステロールエステル
2.0% コレステロール
【0154】
(実施例3)
ハイドロホービンBによる脱脂綿パッドの負荷
【0155】
溶液の製造:
ハイドロホービンB:ハイドロホービンB(顆粒又は粉末)を最初に水に室温で予備溶解した。最大溶解性は50mg/ml(=5%)であった。
【0156】
速度を高めるために、溶液を60℃に加熱した。完全に溶解した後、タンパク質含量をブラッドフォードにより測定した。
【0157】
負荷緩衝剤:負荷緩衝剤は50mMトリス緩衝液であった。1mMCaClを加え、pHを32%HClで8に調節した。
【0158】
負荷の開始:
緩衝液をビーカーに注ぎ、予備溶解したハイドロホービンBを最終濃度が50μg/mlになるまで加え、攪拌した。
【0159】
脱脂綿パッドをビーカーに入れた。それらを完全に溶液に浸漬した。
【0160】
インキュベーション:
ビーカーを覆い、次いで乾燥室中で50℃で16時間インキュベートした。
【0161】
洗浄:
次いでパッドを脱塩流水で十分に洗浄した。
【0162】
乾燥:
脱脂綿パッドを乾燥室中で50℃で24時間乾燥した。
【0163】
活性:
次いで負荷の成功を1滴の水(約50μl)を脱脂綿パッド上に置くことにより調べた。水滴が、ハイドロホービンで処理されたパッドの表面上に、浸漬の代わりに未処理のパッドと比べて長く留まったならば、その負荷された脱脂綿パッドをさらに使用した。
【0164】
(実施例4)
合成皮脂を吸収するためのハイドロホービンが負荷された脱脂綿パッド
【0165】
1.実験:
実験のために20gの合成皮脂(組成は実施例2参照)を、又は実験変形ではカプリン/カプリル酸トリグリセリド(Miglyol(登録商標)812,Sasol)を時計ガラスに入れ、未処理の及びハイドロホービンBが負荷された脱脂綿パッドを1分間浸漬した(負荷は実施例3参照)。
【0166】
脱脂綿パッドは重みで垂れ下がり、次いで水を含む容器に入れた。
【0167】
2.実験:
水滴を未処理の及びハイドロホービンBが負荷された脱脂綿パッド上に置き、水滴がどれだけの速度で浸るかを観察した(負荷は実施例3参照)。
【0168】
結果:
実験1について:
未処理の脱脂綿パッドは皮脂/トリグリセリドを急速に再び移動させた。脱脂綿パッドはかなり膨潤した。
【0169】
ハイドロホービンBで処理された脱脂綿パッドは、皮脂/トリグリセリドをかなり良く保持し、また寸法が安定したままであった。
【0170】
実験2について:
未処理の脱脂綿パッドの場合に、水滴は直ちに浸み込んだが、ハイドロホービンBで処理された脱脂綿パッドは水滴を表面上に有意により長く保持した(ビーズ効果)。
【0171】
(実施例5)
ハイドロホービンで被覆されたフォームによる油又は皮脂の吸収又は封入
下記の実験は、ハイドロホービンで被覆されたBasotectスポンジが極めて良好な油吸収を示し、これらがハイドロホービン被覆の結果としてスポンジに留まることを示す。この効果は、ドデシル硫酸ナトリウムが示す効果との比較として推測できたように、界面活性剤特性に基づくものではない。
【0172】
いずれの場合にも、9kg/cmの密度を有する連続気泡メラミン−ホルムアルデヒドフォーム(Basotect(登録商標),BASF Aktiengesellschaft)の立方体形のサンプル(2.5cm×2.5cm×2.5cm)5個を、ガラスフラスコに入れ、ハイドロホービンA(国際公開第2007/14897号パンフレットからの配列番号20)又はハイドロホービンB(国際公開第2007/14897号パンフレットからの配列番号26)の0.1g/lの溶液で飽和した。同様に、比較のため、一つの立方体を1%濃度のSDS溶液で飽和した(ドデシル硫酸ナトリウム)。この飽和フォーム立方体を含む溶液を60℃で15時間加熱した。次いでこの水溶液をデカントで除去した。
【0173】
これらのフォーム立方体から大部分の吸収液体を絞って除去し、超純水で数回洗浄し、絞り、40℃で重量が一定になるまで乾燥した。
【0174】
図1〜5:
図1:処理されたBasotect立方体
次いで立方体を、可視化をより良くするためにスーダン・レッドで染色されたシクロメチコーンに浸漬した。
【0175】
図2:シクロメチコーン/スーダン・レッドに浸漬した後の処理されたBasotect立方体
次いで立方体を水に浸漬した。ここで、SDSで処理されたBasotectスポンジがシクロメチコーン油を直ちに再び放出し、そして油がスポンジに保持されないことがはっきりと目に見える。これとは対照的に、ハイドロホービンA又はBで被覆された立方体は油の放出をほとんど示さない。
【0176】
図3:吸収されたシクロメチコーン油を含む水中の被覆Basotect立方体
浸漬の直後に、SDS被覆スポンジのにじみが目に見えるが、ハイドロホービン被覆スポンジは油を放出しない。
【0177】
図4:延長した待ち時間(30分)の後でさえ、ハイドロホービン被覆スポンジは、SDS被覆スポンジとは対照的に、油を放出しないことが目に見える。
【0178】
浸漬操作の後、外科用メスを用いて立方体を注意深くスライスした。ここで、ハイドロホービン処理スポンジの強い赤色着色のために、油がスポンジに残っていることが見えたが、SDSで処理されたスポンジはスポンジの認めうる被覆をもたらさず、そして油をほとんど完全に再び放出した。
【0179】
図5:水浴後にスライスされたBasotect立方体。強い赤色の着色は、シクロメチコーン油がハイドロホービン被覆スポンジに残っていることを示す。これとは対照的に、SDSは見たところ被覆をもたらさず、そして油はスポンジから簡単に再び逃げ出す。
【0180】
同じ結果は、ハイドロホービンA、そしてまたハイドロホービンBの両者で得られた。シクロメチコーンの代わりに、他の油又は皮脂でも効果を示すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロホービン(hydrophobin)を含む固体乾燥担体による、基材表面から水不溶性物質を除去する方法。
【請求項2】
水不溶性物質が、脂肪、油、ワックス、又は脂肪、ワックス及び/もしくは油を含む組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水不溶性物質が、皮脂及び/又はメーキャップである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基材が、水又はガラス、プラスチック、木材、金属、テキスタイル、皮膚及び/又は毛髪である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
固体乾燥担体が、フォーム、スポンジ、テキスタイル、不織布、紙及び/又は脱脂綿から形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
皮膚及び/又は毛髪表面を、ハイドロホービンを含む固体乾燥担体で処理する、皮脂及び/又はメーキャップを除去するための化粧方法。
【請求項7】
基材表面から水不溶性物質を除去するための、ハイドロホービンを含む固体乾燥担体の使用。
【請求項8】
水不溶性物質が、脂肪、油、ワックス、又は脂肪、ワックス及び/もしくは油を含む組成物である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
水不溶性物質が、皮脂及び/又はメーキャップである、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
基材が、水又はガラス、プラスチック、木材、金属、テキスタイル、皮膚及び/又は毛髪である、請求項7〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
固体乾燥担体が、フォーム、スポンジ、テキスタイル、不織布、紙及び/又は脱脂綿から形成されている、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
皮膚及び/又は毛髪表面から皮脂及び/又はメーキャップを除去するための化粧方法における、ハイドロホービンを含む固体乾燥担体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540486(P2010−540486A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526269(P2010−526269)
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062677
【国際公開番号】WO2009/050000
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】