説明

基材表面の改質装置、および印刷装置

【課題】基材を加熱しながら、基材表面に紫外線照射を行うことにより基材表面の改質を行うことが可能な基材表面の改質装置、およびそれを備えた印刷装置を提供する。
【解決手段】基材表面の改質装置100は、基材としての半導体装置3の表面を加熱する赤外線照射ユニット103と、半導体装置3と相対して設けられ、半導体装置3に紫外線Vを照射する紫外線ランプ106と、紫外線Vを透過し、且つ半導体装置3から放射される熱エネルギーおよび赤外線照射ユニット103から照射される加熱エネルギーを遮断するように、半導体装置3および赤外線照射ユニット103と紫外線ランプ106との間に設けられた遮蔽部としての合成石英ガラス板105と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液滴によって基材の表面に描画を行う場合などに好適に用いることができる基材表面の改質装置、およびそれを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体素子(基材)などの表面にレーザー光線を用いて製造番号などが印字されていたが、近年半導体素子の薄型化などによりレーザー光線を直接半導体素子表面に照射して印字することが困難になってきた。
これに対し、例えば特許文献1に開示されているようなインクジェット法を用いた印字方法が開示されている。この方法では、半導体素子表面に吐出されたインク液滴の密着強度を得るため、半導体素子表面の改質処理(前処理)が必要となる。
そして、この改質処理に対応するための改質処理方法および装置としては、処理ガスを導入しながら半導体素子表面を加熱源によって加熱し、活性光線としての紫外線(以下、「UV」ともいう。)照射を行う改質方法を用いた装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80687号公報(図1参照)
【特許文献2】特開平10−36536号公報(図17参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献2に示されている半導体素子表面の改質方法を用いた装置では、半導体素子(基材)を加熱する加熱源としての赤外線ランプが、光線照射部としての紫外線ランプ(UVランプ)と半導体素子との間に設けられているため、赤外線ランプから赤外線(赤外光)を半導体素子に照射する際に紫外線ランプにも赤外線(加熱エネルギー)が照射されてしまう。また、加熱された半導体素子からの放射される熱エネルギーも紫外線ランプに到達してしまう。
このように、紫外線ランプは、赤外線および加熱された半導体素子から放射される熱エネルギーにより加熱されることになる。これにより、紫外線ランプのUV発光効率が低下してしまい、特許文献2に示す半導体素子表面の改質方法を用いた装置では、半導体表面の改質にばらつきが生じてしまうなど所望の改質ができ難くなってしまうという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る基材表面の改質装置は、基材表面を加熱する加熱エネルギーを照射する加熱源と、前記基材と相対して設けられ、前記基材に活性光線を照射する光線照射部と、前記基材および前記加熱源と前記光線照射部との間に設けられ、前記活性光線を透過し且つ前記基材から放射される熱エネルギーおよび前記加熱源から照射される加熱エネルギーを遮断する遮蔽部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本適用例に記載の基材表面の改質装置によれば、基材および加熱源と光線照射部との間に、活性光線を透過し、且つ基材から放射される熱エネルギーおよび加熱源から照射される加熱エネルギーを遮断するように遮蔽部が備えられているため、光線照射部に加熱エネルギーが達しない。これにより、光線照射部が加熱されることが防止されるため、光線照射部の温度上昇によって生ずる活性光線の発光効率の低下を防止することが可能となる。したがって、活性光線の発光効率の低下によって生じる基材表面の改質のばらつきを防ぐことができ、安定した基材表面の改質を行うことができる。
また、基材に対する活性光線の照射と加熱のための加熱エネルギーの照射を同時に行うことができるため基板表面の改質を短時間で行うことが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の基材表面の改質装置において、前記遮蔽部は、前記光線照射部の外周を覆うように設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記適用例に記載の基材の改質装置によれば、空気などの気流を用いて光線照射部の加熱を防止するための方策が光線照射部の外周を覆う遮蔽部の内部で行うことができるため、気流が遮蔽部によって遮断され基材周辺に達しない。したがって、気流が基材周辺に発生せず、基材に活性光線を照射し表面改質を行う際のラジカル酵素の濃度が気流によって変化してしまい基材表面の改質に影響を与えることを防止することが可能となり、安定した基材表面の改質を行うことができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に記載の基材表面の改質装置において、前記遮蔽部は、合成石英ガラスで形成されていることを特徴とする。
【0011】
本適用例に記載の基材表面の改質装置よれば、遮蔽部を簡便に安価に形成することが可能となる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に記載の基材表面の改質装置において、前記加熱源は、赤外線を照射する熱線源であることを特徴とする。
【0013】
本適用例に記載の基材表面の改質装置よれば、加熱源からの気流を生じないため、基材に活性光線を照射し表面改質を行う際のラジカル酵素の濃度が気流によって変化してしまい基材表面の改質に影響を与えることを防止することが可能となり、安定した基材表面の改質を行うことができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の基材表面の改質装置において、前記基材および前記加熱源と、前記光線照射部とが、前記遮蔽部を含む隔壁によって区分されていることを特徴とする。
【0015】
本適用例に記載の基材表面の改質装置よれば、基材および加熱源と光線照射部とが、遮蔽部を含む隔壁によって区分されて独立した空間となっているため、光線照射部に気流が存在しても、その気流が隔壁によって遮断され基材周辺に達しない。このため、基材に活性光線を照射し表面改質を行う際の、気流によるラジカル酵素の濃度の変化を防止することが可能となり、このラジカル酵素の濃度の変化によって生じる基材表面の改質のばらつきを防ぐことが可能となる。よって、安定した基材表面の改質を行うことができる。
また、基材および加熱源が区分されているため、気流などの制御が行い易く、気流による基材表面の改質への影響が基材周辺に及び難くなる。
【0016】
[適用例6]本適用例に記載の印刷装置は、前述の適用例のいずれかに記載の基材表面の改質装置と、前記基材表面の改質装置によって改質された基材表面に液滴を吐出して所望のパターンを描画する印刷部と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
本適用例に記載の印刷装置によれば、活性光線の発光効率の低下によって生じる基材表面の改質のばらつきを、備えられた基材表面の改質装置によって防ぐことができるため、基材表面に液滴が吐出されて形成された所望のパターンの描画(印刷)の基材表面との密着強度を安定的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】基材としての半導体基板を模式的に示す平面図。
【図2】第1実施形態にかかる基材表面の改質装置の概略を示し、(a)は正断面図、(b)は右側面断面図。
【図3】石英ガラスの光透過特性の一例を示すグラフ。
【図4】遮蔽部の変形例1、変形例2を説明するための正断面図。
【図5】遮蔽部の変形例3を説明するための基材表面の改質装置の概略を示し、(a)は正断面図、(b)は右側面断面図。
【図6】第2実施形態にかかる印刷装置の概要を示す模式平面図。
【図7】供給部を示す模式図。
【図8】基材表面の改質装置としての前処理部の構成を示す概略斜視図。
【図9】塗布部の構成を示す図であり、(a)は概略斜視図、(b)はキャリッジを示す模式側面図、(c)は、ヘッドユニットを示す模式平面図、(d)は、液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の基材表面の改質装置およびこの基材表面の改質装置を用いた印刷装置にかかる実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではない。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0020】
(半導体基板)
基材表面の改質装置の説明に先立って、この基材表面の改質装置によって表面が改質される対象の一例である基材としての半導体基板について図1を用いて説明する。図1は、基材としての半導体基板を示す模式的に示す平面図である。
【0021】
図1に示すように、基材としての半導体基板1は基板2を備えている。基板2は耐熱性があり半導体装置3を実装可能であれば良く、基板2にはガラスエポキシ基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板等を用いることができる。
【0022】
基板2上には半導体装置3が実装されている。そして、半導体装置3上には会社名マーク4、機種コード5、製造番号6等のマーク(印刷パターン、所定パターン)が描画されている。これらのマークは、後述する印刷装置によって、インクなどが用いられて描画されるが、この描画(印刷)されたインクと半導体装置3の表面との密着強度を向上させるための表面改質を行うため後述する基材表面の改質装置が用いられる。
【0023】
(第1実施形態:基材表面の改質装置)
次に、第1実施形態として、図2および図3を参照して基材表面の改質装置について説明する。図2は、第1実施形態にかかる基材表面の改質装置の概略を示す図であり、(a)は筐体を断面とした正断面図、(b)は右側面断面図である。図3は、遮蔽部に用いられる石英ガラスの光透過特性の一例を示すグラフである。
【0024】
図2に示すように、基材表面の改質装置100は、基台120を備え、基台120上にはステージ101が設けられている。ステージ101の上面には載置面102が設置され、載置面102には吸引式のチャック機構(図示せず)が形成されている。前述の半導体基板1を載置面102に載置した後、チャック機構を作動させることにより半導体基板1は載置面102に固定される。
さらに、基材表面の改質装置100には、一方の端部が基台120の上面に接続された複数の支持部104と、支持部104の他方端に接続された遮蔽部としての合成石英ガラス板105と、合成石英ガラス板105と載置面102に固定された半導体基板1との間に設けられた加熱源としての赤外線照射ユニット103と、が設けられている。
さらに、基材表面の改質装置100には、合成石英ガラス板105を挟み半導体基板1と対向するように設けられた、光線照射部としての紫外線ランプ(UVランプ)106が設けられている。そして、前述したそれぞれの構成部位が、基台120に接続された筐体123によって覆われ、基材表面の改質装置100は構成される。
【0025】
赤外線照射ユニット103は、半導体基板1上の基板2(図2では図示せず、以下の説明では省略する)に実装された半導体装置3の表面に描画されたインクの硬化を促進するために設けられており、半導体装置3の表面を加熱するための加熱エネルギーとしての赤外線Lを照射する赤外線光源としての機能を有している。
赤外線照射ユニット103は、赤外線Lを照射する赤外線ランプ121と、赤外線ランプ121と電気的に接続されて保持する赤外線ランプソケット122と、赤外線ランプ121から照射される赤外線Lが不要な方向への照射を遮断すると共に照射光を集光して所定の方向に反射する反射カバー108が設けられている。
本実施形態の赤外線照射ユニット103は、後に詳述する紫外線ランプ106の対向する領域から外れた位置にあって、斜め上方から半導体装置3の表面に赤外線Lを照射できるように2個設けられている。
赤外線照射ユニット103に用いられる赤外線ランプ121は、赤外線ハロゲンランプ、セラミックヒーター、遠赤外線ヒーターなどを用いることができる。しかしながら、後述する石英ガラスの赤外線の透過波長帯域(図3参照)から、赤外線の透過率が低くなる遠赤外線(4000nmを超える帯域)を照射することが可能な遠赤外線ヒーターを用いることが好ましい。
【0026】
支持部104は、4つの円筒状の支柱、例えば、ステンレスパイプなどを用いて構成されている。支持部104は、一方の端部が基台120の上面に接続され、他端に遮蔽部としての合成石英ガラス板105を接続支持している。なお、支持部104は、合成石英ガラス板105を、紫外線ランプ106と半導体装置3および赤外線照射ユニット103との間で支持できればよく、その形状は問わない。また、支持部104は、基台120以外の部位に接続されていてもよい。
【0027】
合成石英ガラス板105は、紫外線ランプ106から照射される紫外線Vを透過し、赤外線照射ユニット103から照射される赤外線Lと半導体装置3から反射される赤外線或いは半導体装置3からの輻射熱線、熱せられた気体の対流などを遮断するために設けられている。そのため、合成石英ガラス板105は、紫外線ランプ106と半導体装置3および赤外線照射ユニット103とを遮蔽するように、その主面(平面)が半導体基板1上に実装された半導体装置3の表面にほぼ並行するように支持部104によって支持されている。即ち、合成石英ガラス板105は、紫外線ランプ106と半導体装置3および赤外線照射ユニット103との間に設けられている。
【0028】
紫外線ランプ(UVランプ)106は、合成石英ガラス板105を挟み半導体基板1と対向するように4本が合成石英ガラス板105の平面方向に沿うように並列されて保持部107に保持されている。保持部107は、紫外線ランプ(UVランプ)106の電気的接続用のソケットも兼ねている。
紫外線ランプ106から照射された活性光線としての紫外線(UV)Vは、合成石英ガラス板105を透過し、半導体基板1に形成された半導体装置3(図1参照)の表面に照射される。紫外線ランプ(UVランプ)106としては、低圧水銀UVランプ、高圧水銀UVランプ、メタルハライドUVランプなどが用いられるが、本実施形態では低圧水銀UVランプを用いている。ここで照射される紫外線Vは、半導体装置3(図1参照)の表面状態の改質に用いられるため、254nm程度(185nmとの併用もある)の波長を有するものが用いられている。
【0029】
ここで、前述した合成石英ガラス板105を含む合成石英ガラスの光透過性について図3を用いて説明する。図3では、縦軸に光透過率(%)、横軸に光の波長(nm)として、3つの例の石英ガラスの概略の光透過性を示している。図3では、合成石英ガラスを符号G、溶融石英ガラスを符号Y、赤外光学石英ガラスを符号Sで示している。
図3に示すように、それぞれの石英ガラスは、前述した紫外線の波長帯域(185nmから254nm)も含め紫外線の波長帯域では80%以上の透過率を有している。また、それぞれの石英ガラスは、4000nmを超える遠赤外線の波長帯域では、その光線の透過率が50%以下になり、グラフには示していないが5000nmを超えると透過率が数%となって殆んど透過しなくなる。
【0030】
上述した第1実施形態にかかる基材表面の改質装置によれば、紫外線ランプ106から照射された紫外線Vを透過し、且つ半導体装置3から放射される熱エネルギーおよび赤外線ランプ121から照射される加熱エネルギーを遮断するように合成石英ガラス板105が備えられている。
これにより、紫外線ランプ106には、半導体装置3から放射される熱エネルギー(輻射熱)、熱せられた気体(空気)の対流、或いは赤外線ランプ121から照射される赤外線Lなどによる加熱エネルギーが殆んど到達することなく、且つ紫外線ランプ106から半導体装置3の表面に紫外線Vを照射することができる。
このように、第1実施形態にかかる基材表面の改質装置によれば、半導体装置3の表面を加熱しながら紫外線照射を行っても紫外線ランプ106の温度上昇によって生ずる紫外線の発光効率の低下を防止することが可能となる。これにより、紫外線Vの発光効率の低下によって生じる基材表面の改質のばらつきを防ぐことができ、安定した基材表面の改質を行うことができる。
【0031】
(遮蔽部の変形例)
ここで遮蔽部の変形例を、図4、および図5を用いて説明する。
【0032】
(変形例1、変形例2)
先ず、図4を用いて変形例1、および変形例2について説明する。図4は、遮蔽部の変形例を示し、(a)は変形例1を示す正断面図、(b)は変形例2を示す側面断面図である。
変形例1の遮蔽部は、図4(a)に示すように、紫外線ランプ106の外周を囲むように断面形状がトラック形状の合成石英ガラス管305で構成されている。
変形例2の遮蔽部は、図4(b)に示すように、紫外線ランプ106の外周を囲むように断面形状が直方体形状に形成された断面が方形の合成石英ガラス管305で構成されている。
【0033】
変形例1、変形例2に示すように、遮蔽部としては、前述の第1実施形態の合成石英ガラス板105にかえて、紫外線ランプ106の周囲を囲むような合成石英ガラス製の筒状管であってもよい。
このような変形例1、変形例2に示すような遮蔽部であっても、前述の実施形態と同様に紫外線を透過しながら赤外線などの熱線を遮断することができ第1実施形態と同様な効果を生じさせることが可能である。
【0034】
(変形例3)
次に、図5を用いて変形例3の遮蔽部について説明する。図5は、遮蔽部の変形例3を説明するための基材表面の改質装置の概略を示す投影図であり、(a)は正断面図、(b)は右側面断面図である。なお、図5で示す基材表面の改質装置200は、図2を用いて説明した第1実施形態の基材表面の改質装置100と遮蔽部の構成が異なることであるため、第1実施形態と同様な構成については同一符号を付けて、その説明を省略することもある。
【0035】
図5に示すように、基材表面の改質装置200は、基台120を備え、基台120上にはステージ101が設けられている。ステージ101の上面には載置面102が設置され、載置面102には吸引式のチャック機構(図示せず)が形成されている。前述の半導体基板1を載置面102に載置した後、チャック機構を作動させることにより半導体基板1は載置面102に固定される。
さらに、基材表面の改質装置200には、筐体223に接続された遮蔽部としての合成石英ガラス板205と、合成石英ガラス板205と載置面102に固定された半導体基板1との間に設けられた加熱源としての赤外線照射ユニット103と、が設けられている。
さらに、基材表面の改質装置200には、合成石英ガラス板205を挟み半導体基板1と対向するように設けられた、光線照射部としての紫外線ランプ(UVランプ)106が設けられている。そして、筐体223が、前述したそれぞれの構成部位を囲むように、基台120に接続されて設けられている。
【0036】
以下、変形例3の遮蔽部について説明するが、基台120、ステージ101、載置面102、半導体基板1、赤外線照射ユニット103、紫外線ランプ106の説明は省略する。
変形例3の遮蔽部としての合成石英ガラス板205は、紫外線ランプ106と半導体装置3および赤外線照射ユニット103とを遮蔽するように、その外周を筐体223に接続されて保持されている。換言すれば、合成石英ガラス板205と筐体223とによって形成され、紫外線ランプ106の設けられた区画210と、合成石英ガラス板205と筐体223とによって形成され、赤外線照射ユニット103と半導体装置3が設けられた区画211と、が区分された個別の区画となっている。このように、合成石英ガラス板205が隔壁となって、2つの区分された空間を形成している。
【0037】
このような変形例3によれば、遮蔽部としての合成石英ガラス板205によって、紫外線ランプ106の設けられた区画210が、他の区画211と区分されていることにより、前述の第1実施形態の効果に加えてさらに以下の効果を生ずることができる。
つまり、紫外線ランプ106の設けられた区画210が、他の区画211と区分されていることにより、独立した空間となっているため、半導体装置の改質を促進するための気流などを用いても、その気流が隔壁によって遮断され紫外線ランプ106に達することが無い。また、逆に紫外線ランプ106の冷却などの気流が紫外線ランプ106の設けられた区画210に存在しても、合成石英ガラス板205と筐体223とによって形成され、赤外線照射ユニット103と半導体装置3が設けられた区画211にその気流が達することが無く、その気流が半導体装置3の改質に影響を与えることが無い。
即ち、半導体装置3に紫外線Vを照射し表面改質を行う際の、気流によるラジカル酵素の濃度の変化を防止することが可能となり、このラジカル酵素の濃度の変化によって生じる基材表面の改質のばらつきを防ぐことが可能となる。
また、紫外線ランプ106の冷却も可能となり、安定した紫外線照射とランプの長寿命化も実現することが可能となる。
【0038】
上述した第1実施形態および変形例1から3の基材表面の改質装置100,200によれば、遮蔽部としての合成石英ガラス板105,205が設けられていることによって、紫外線ランプ106に、赤外線ランプ121から照射される赤外線Lなどの加熱エネルギーが殆んど到達することなく、且つ紫外線ランプ106から半導体装置3の表面に紫外線Vを照射することができる。
このように、半導体装置3の表面を加熱しながら紫外線照射を行っても紫外線ランプ106の温度上昇によって生ずる紫外線の発光効率の低下を防止することが可能となる。これにより、紫外線Vの発光効率の低下によって生じる基材表面の改質のばらつきを防ぐことができ、安定した基材表面の改質を行うことができる。さらに、紫外線ランプ106と半導体装置3との距離を接近させることも可能となり、効率よい表面改質ができると共に基材表面の改質装置100,200の小型化も可能となる。
【0039】
なお、上述の実施形態では、遮蔽部として合成石英ガラス板105を用いる例で説明したが、図3に示されているように、所定の波長の紫外線を透過し、赤外線帯域の波長の光線を遮断する機能を有していればよく、例えば、溶融石英ガラス、赤外光学石英ガラスなどであってもよい。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態で説明した基材表面の改質装置を用いた印刷装置の一例を、第2実施形態として図6〜図9を用いて説明する。
【0041】
(印刷装置)
図6は、第2実施形態にかかる印刷装置の概要を示す模式平面図である。図6に示すように、印刷装置7は主に供給部8、基材表面の改質装置としての前処理部9、塗布部(印刷部)10、冷却部11、収納部12、搬送部13及び制御部14から構成されている。
印刷装置7は、搬送部13を中心にして時計回りに供給部8、前処理部9、塗布部10、冷却部11、収納部12、制御部14の順に配置されている。そして、制御部14の隣には供給部8が配置されている。供給部8、制御部14、収納部12が並ぶ方向をX方向とする。X方向と直交する方向をY方向とし、Y方向には塗布部10、搬送部13、制御部14が並んで配置されている。そして、鉛直方向をZ方向とする。
【0042】
供給部8は、複数の半導体基板1が収納された収納容器を備えている。そして、供給部8は中継場所8aを備え、収納容器から中継場所8aへ半導体基板1を供給する。
【0043】
前処理部9は、基材としての半導体装置3の表面を加熱しながら改質する機能を有する。前処理部9により半導体装置3は吐出された液滴の広がり具合及び印刷するマークの密着性が調整される。前処理部9は第1中継場所9a及び第2中継場所9bを備え、処理前の半導体基板1を第1中継場所9aまたは第2中継場所9bから取り込んで表面の改質を行う。その後、前処理部9は処理後の半導体基板1を第1中継場所9aまたは第2中継場所9bに移動して、半導体基板1を待機させる。第1中継場所9a及び第2中継場所9bを合わせて中継場所9cとする。そして、前処理部9の内部で前処理が行われる場所を処理場所9dとする。
【0044】
冷却部11は、前処理部9で加熱及び表面改質が行われた半導体基板1を冷却する機能を有している。冷却部11は、それぞれが半導体基板1を保持して冷却する処理場所11a、11bを有している。処理場所11a、11bは、適宜、処理場所11cと総称するものとする。
【0045】
塗布部10は、半導体装置3に液滴を吐出してマークを描画(印刷)するとともに、描画されたマークを固化または硬化する機能を有する。塗布部10は中継場所10aを備え、描画前の半導体基板1を中継場所10aから移動して描画処理及び硬化処理を行う。その後、塗布部10は描画後の半導体基板1を中継場所10aに移動して、半導体基板1を待機させる。
【0046】
収納部12は、半導体基板1を複数収納可能な収納容器を備えている。そして、収納部12は中継場所12aを備え、中継場所12aから収納容器へ半導体基板1を収納する。操作者は半導体基板1が収納された収納容器を印刷装置7から搬出する。
【0047】
印刷装置7の中央の場所には、搬送部13が配置されている。搬送部13は2つの腕部を備えたスカラー型ロボットが用いられている。そして、腕部の先端には半導体基板1を把持する把持部13aが設置されている。中継場所8a,9c,10a,11c,12aは把持部13aの移動範囲13b内に位置している。従って、把持部13aは中継場所8a,9c,10a,11c,12a間で半導体基板1を移動することができる。制御部14は印刷装置7の全体の動作を制御する装置であり、印刷装置7の各部の動作状況を管理する。そして、搬送部13に半導体基板1を移動する指示信号を出力する。これにより、半導体基板1は各部を順次通過して描画されるようになっている。
【0048】
以下、各部の詳細について説明する。各部の説明には、印刷装置の概要を示す図6を参照しながら各部を示すそれぞれの図を用いて説明する。
(供給部)
図7は供給部を示す模式正面図である。
図7に示すように、供給部8は基台15を備えている。基台15の内部には昇降装置16が設置されている。昇降装置16はZ方向に動作する直動機構を備えている。この直動機構はボールネジと回転モーターとの組合せや油圧シリンダーとオイルポンプの組合せ等の機構を用いることができる。本実施形態では、例えば、ボールネジとステップモーターとによる機構を採用している。基台15の上側には昇降板17が昇降装置16と接続して設置されている。そして、昇降板17は昇降装置16により所定の移動量だけ昇降可能になっている。
【0049】
昇降板17の上には直方体状の収納容器18が設置され、収納容器18の中には複数の半導体基板1が収納されている。収納容器18はY方向の両面に開口部が形成され、開口部から半導体基板1が出し入れ可能となっている。収納容器18のX方向の両側に位置する側面18bの内側には凸状のレール18cが形成され、レール18cはY方向に延在して配置されている。レール18cはZ方向に複数等間隔に配列されている。このレール18cに沿って半導体基板1をY方向からまたは−Y方向から挿入することにより、半導体基板1がZ方向に配列して収納される。
【0050】
基台15のY方向側には支持部材21を介して、基板引出部22と中継台23とが設置されている。収納容器18のY方向側の場所において基板引出部22の上に中継台23が重ねて配置されている。基板引出部22はY方向に伸縮する腕部(図示せず)と腕部を駆動する直動機構とを備えている。腕部の一端には略矩形に折り曲げられた爪部22bが設置され、この爪部22bの先端は腕部と平行に形成されている。
【0051】
基板引出部22が腕部を伸ばすことにより、腕部が収納容器18内を貫通する。そして、爪部22bが収納容器18の−Y方向側に移動する。次に昇降装置16が半導体基板1を下降した後、基板引出部22が腕部を収縮させる。このとき、爪部22bが半導体基板1の一端を押しながら移動する。
【0052】
その結果、半導体基板1が収納容器18から中継台23上に移動させられる。中継台23は半導体基板1のX方向の幅と略同じ幅の凹部が形成され、半導体基板1はこの凹部に沿って移動する。そして、この凹部により半導体基板1のX方向の位置が決められる。中継台23上は中継場所8aであり、半導体基板1は中継場所8aの所定の場所にて待機する。供給部8の中継場所8aに半導体基板1が待機しているとき、搬送部13は把持部13aを半導体基板1と対向する場所に移動して半導体基板1を把持して移動する。
【0053】
この半導体基板1が搬送部13により中継台23上から移動した後、基板引出部22が腕部を伸長させる。次に、昇降装置16が収納容器18を降下させて、基板引出部22が半導体基板1を収納容器18内から中継台23上に移動させる。このようにして供給部8は順次半導体基板1を収納容器18から中継台23上に移動する。収納容器18内の半導体基板1を総て中継台23上に移動した後、操作者は空になった収納容器18と半導体基板1が収納されている収納容器18とを置き換える。これにより、供給部8に半導体基板1を供給することができる。
【0054】
(基材表面の改質装置としての前処理部)
図8は基材表面の改質装置としての前処理部の構成を示す概略斜視図である。図3に示すように、前処理部9は基台24を備え、基台24上にはX方向に延在するそれぞれ一対の第1案内レール25及び第2案内レール26が並んで設置されている。第1案内レール25上には第1案内レール25に沿ってX方向に往復移動する載置台としての第1ステージ27が設置され、第2案内レール26上には第2案内レール26に沿ってX方向に往復移動する載置台としての第2ステージ28が設置されている。第1ステージ27及び第2ステージ28は直動機構を備え、往復移動することができる。
【0055】
第1ステージ27の上面には載置面27aが設置され、載置面27aには吸引式のチャック機構が形成されている。搬送部13が半導体基板1を載置面27aに載置した後、チャック機構を作動させることにより前処理部9は半導体基板1を載置面27aに固定することができる。同様に、第2ステージ28の上面にも載置面28aが設置され、載置面28aには吸引式のチャック機構が形成されている。搬送部13が半導体基板1を載置面28aに載置した後、チャック機構を作動させることにより前処理部9は半導体基板1を載置面28aに固定することができる。
【0056】
第1ステージ27に対向する部位には、加熱装置としての赤外線照射ユニット(図示せず)が設けられており、載置面27aに載置された半導体基板1を、制御部14の制御下で所定温度に加熱する。同様に、第2ステージ28に対向する部位には、加熱装置としての赤外線照射ユニット103が設けられており、載置面28aに載置された半導体基板1を、制御部14の制御下で所定温度に加熱する。
【0057】
第1ステージ27がX方向側に位置するときの載置面27aの場所が第1中継場所9a(図6参照)となっており、第2ステージ28がX方向に位置するときの載置面28aの場所が第2中継場所9bとなっている。第1中継場所9a及び第2中継場所9bである中継場所9cは把持部13aの動作範囲内に位置しており、中継場所9cにおいて載置面27a及び載置面28aは露出する。従って、搬送部13は容易に半導体基板1を載置面27a及び載置面28aに載置することができる。半導体基板1に改質処理としての前処理が行われた後、半導体基板1は第1中継場所9aに位置する載置面27aまたは第2中継場所9bに位置する載置面28a上にて待機する。従って、搬送部13の把持部13aは容易に半導体基板1を把持して移動することができる。
【0058】
基台24の−X方向には平板状の支持部29が立設されている。支持部29のX方向側の面において上側にはY方向に延在する案内レール30が設置されている。そして、案内レール30と対向する場所には案内レール30に沿って移動するキャリッジ31が設置されている。キャリッジ31は直動機構を備え、往復移動することができる。
【0059】
キャリッジ31の基台24側には処理部32が設置されている。処理部32としては、例えば、活性光線を発光する低圧水銀ランプが例示できる。水銀ランプを用いる場合、半導体基板1に紫外線を照射することにより、半導体基板1の表面の撥液性を改質することができる。本実施形態では、水銀ランプを採用している。前処理部9は、加熱装置により半導体基板1を加熱した状態で、処理部32から紫外線を照射しながらキャリッジ31を往復運動させる。これにより、前処理部9は、処理場所9dの広い範囲に紫外線を照射することが可能になっている。
【0060】
処理部32と加熱装置としての赤外線照射ユニット103との間には、両者を遮蔽する遮蔽部としての合成石英ガラス板105が支持部29に固定されて設けられている。この合成石英ガラス板105は、紫外線を透過させると共に遠赤外線を遮断する機能を有しており、処理部32が加熱されること無く赤外線照射ユニット103による半導体基板1の表面を加熱することが可能となる。
【0061】
前処理部9は、外装部33により全体が覆われている。外装部33の内部には上下に移動可能な戸部34が設置されている。そして、第1ステージ27または第2ステージ28がキャリッジ31と対向する場所に移動したあと、戸部34が下降する。これにより、処理部32が照射する紫外線が前処理部9の外に漏れないようになっている。
【0062】
載置面27aもしくは載置面28aが中継場所9cに位置するとき、搬送部13は載置面27a及び載置面28aに半導体基板1を給材する。そして、前処理部9は半導体基板1が載置された第1ステージ27もしくは第2ステージ28を処理場所9dに移動して前処理を行う。前処理が終了した後、前処理部9は第1ステージ27もしくは第2ステージ28を中継場所9cに移動する。続いて、搬送部13は載置面27aもしくは載置面28aから半導体基板1を除材する。
【0063】
(冷却部)
冷却部11は、各処理場所11a、11bにそれぞれ設けられ、上面が半導体装置1の吸着保持面とされたヒートシンク等の冷却板110a、110bを有している。
処理場所11a、11b(冷却板110a、110b)は、把持部13aの動作範囲内に位置しており、処理場所11a、11bにおいて冷却板110a、110bは露出する。従って、搬送部13は容易に半導体基板1を冷却板110a、110bに載置することができる。半導体基板1に冷却処理が行われた後、半導体基板1は、処理場所11aに位置する冷却板110a上または処理場所11bに位置する冷却板110a上にて待機する。従って、搬送部13の把持部13aは容易に半導体基板1を把持して移動させることができる。
【0064】
(塗布部)
次に、半導体基板1に液滴を吐出してマークを形成する塗布部10について図9に用いて説明する。液滴を吐出する装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小な液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。
【0065】
図9(a)は、塗布部の構成を示す概略斜視図である。塗布部10により半導体基板1に液滴が吐出される。図9(a)に示すように、塗布部10には、直方体形状に形成された基台37を備えている。液滴を吐出するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とが相対移動する方向を主走査方向とする。そして、主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。副走査方向は改行するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とを相対移動する方向である。本実施形態ではX方向を主走査方向とし、Y方向を副走査方向とする。
【0066】
基台37の上面37aには、Y方向に延在する一対の案内レール38がY方向全幅にわたり凸設されている。その基台37の上側には、一対の案内レール38に対応する図示しない直動機構を備えたステージ39が取付けられている。そのステージ39の直動機構は、リニアモーターやネジ式直動機構等を用いることができる。本実施形態では、例えば、リニアモーターを採用している。そして、Y方向に沿って所定の速度で往動または復動するようになっている。往動と復動を繰り返すことを走査移動と称す。さらに、基台37の上面37aには、案内レール38と平行に副走査位置検出装置40が配置され、副走査位置検出装置40によりステージ39の位置が検出される。
【0067】
そのステージ39の上面には載置面41が形成され、その載置面41には図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。載置面41上に半導体基板1が載置された後、半導体基板1は基板チャック機構により載置面41に固定される。
【0068】
ステージ39が−Y方向に位置するときの載置面41の場所が中継場所10aとなっている。この載置面41は把持部13aの動作範囲内に露出するように設置されている。従って、搬送部13は容易に半導体基板1を載置面41に載置することができる。半導体基板1に塗布が行われた後、半導体基板1は中継場所10aである載置面41上にて待機する。従って、搬送部13の把持部13aは容易に半導体基板1を把持して移動することができる。
【0069】
基台37のX方向両側には一対の支持台42が立設され、その一対の支持台42にはX方向に延びる案内部材43が架設されている。案内部材43の下側にはX方向に延びる案内レール44がX方向全幅にわたり凸設されている。案内レール44に沿って移動可能に取り付けられるキャリッジ45は略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ45は直動機構を備え、その直動機構は、例えば、ステージ39が備える直動機構と同様の機構を用いることができる。そして、キャリッジ45がX方向に沿って走査移動する。案内部材43とキャリッジ45との間には主走査位置検出装置46が配置され、キャリッジ45の位置が計測される。キャリッジ45の下側にはヘッドユニット47が設置され、ヘッドユニット47のステージ39側の面には図示しない液滴吐出ヘッドが凸設されている。
【0070】
図9(b)は、キャリッジを示す模式側面図である。図9(b)に示すようにキャリッジ45の半導体基板1側にはヘッドユニット47と一対の照射部としての硬化ユニット48が配置されている。ヘッドユニット47の半導体基板1側には液滴を吐出する3個の液滴吐出ヘッド49が凸設されている。液滴吐出ヘッド49の個数や配置は特に限定されず、吐出する機能液の種類や描画パターンに合わせて設定できる。
【0071】
硬化ユニット48の内部には吐出された液滴を硬化させる紫外線を照射する照射装置が配置されている。硬化ユニット48は主走査方向においてヘッドユニット47を挟んだ位置に配置されている。照射装置は発光ユニットと放熱板等から構成されている。発光ユニットには多数のLED(Light Emitting Diode)素子が配列して設置されている。このLED素子は、電力の供給を受けて紫外線の光である紫外光を発光する素子である。
【0072】
キャリッジ45の図中上側には収容タンク50が配置され、収容タンク50には機能液が収容されている。液滴吐出ヘッド49と収容タンク50とは図示しないチューブにより接続され、収容タンク50内の機能液がチューブを介して液滴吐出ヘッド49に供給される。
【0073】
機能液は樹脂材料、硬化剤としての光重合開始剤、溶媒または分散媒を主材料とする。この主材料に顔料または染料等の色素や、親液性または撥液性等の表面改質材料等の機能性材料を添加することにより固有の機能を有する機能液を形成することができる。本実施形態では、例えば、白色の顔料を添加している。機能液の樹脂材料は樹脂膜を形成する材料である。樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール等を用いることができる。溶媒または分散媒は樹脂材料の粘度を調整するものである。機能液を液滴吐出ヘッドから吐出し易い粘度にすることにより、液滴吐出ヘッドは安定して機能液を吐出することができるようになる。
【0074】
図9(c)は、ヘッドユニットを示す模式平面図である。図9(c)に示すように、ヘッドユニット47には液滴吐出ヘッド49が配置され、液滴吐出ヘッド49の表面にはノズルプレート51が配置されている。ノズルプレート51には複数のノズル52が配列して形成されている。ノズル52及びヘッドの数及び配置は特に限定されず吐出するパターンに合わせて設定される。本実施形態においては、例えば、1個のノズルプレート51にはノズル52の配列が1列形成され、1つの列には15個のノズル52が配置されている。
【0075】
硬化ユニット48の下面には、照射口48aが形成されている。そして、照射装置が発光する紫外光が照射口48aから半導体基板1に向けて照射される。
【0076】
図9(d)は、液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図である。図9(d)に示すように、液滴吐出ヘッド49はノズルプレート51を備え、ノズルプレート51にはノズル52が形成されている。ノズルプレート51の上側であってノズル52と相対する位置にはノズル52と連通するキャビティ53が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド49のキャビティ53には機能液54が供給される。
【0077】
キャビティ53の上側には上下方向に振動してキャビティ53内の容積を拡大縮小する振動板55が設置されている。振動板55の上側でキャビティ53と対向する場所には上下方向に伸縮して振動板55を振動させる圧電素子56が配設されている。圧電素子56が上下方向に伸縮して振動板55を加圧して振動し、振動板55がキャビティ53内の容積を拡大縮小してキャビティ53を加圧する。それにより、キャビティ53内の圧力が変動し、キャビティ53内に供給された機能液54はノズル52を通って吐出される。
【0078】
液滴吐出ヘッド49が圧電素子56を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子56が伸張して、振動板55がキャビティ53内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド49のノズル52から縮小した容積分の機能液54が液滴57となって吐出される。機能液54が塗布された半導体基板1に対しては、照射口48aから紫外光が照射され、硬化剤を含んだ機能液54を固化または硬化させるようになっている。
【0079】
(収納部)
収納部12は、供給部8と同様な構造となっている。したがって図面を用いず簡単に説明する。収納部12は、基台を備えている。基台の内部には昇降装置が設置されている。昇降装置は供給部8に設置された昇降装置16と同様の装置を用いることができる。基台の上側には昇降板が昇降装置と接続して設置されている。そして、昇降板は昇降装置により昇降させられる。昇降板の上には直方体状の収納容器18が設置され、収納容器18の中には半導体基板1が収納されている。収納容器18は供給部8に設置された収納容器18と同じ容器が用いられている。
【0080】
収納部12は収納する半導体基板1を載置する中継場所12aを有している。搬送部13は半導体基板1を中継場所12aに載置するだけで、収納部12と連携して半導体基板1を収納容器18に収納することができる。
【0081】
(搬送部)
次に、半導体基板1を搬送する搬送部13について説明する。搬送部13は、支持台(図示せず)の内部にモーター、角度検出器、減速機等から構成される回転機構を有している。そして、モーターの出力軸は減速機と接続され、減速機の出力軸は支持台の上側に配置された腕部などと接続されている。また、モーターの出力軸と連結して角度検出器が設置され、角度検出器がモーターの出力軸の回転角度を検出する。これにより、回転機構は腕部の回転角度を検出して、所望の角度まで回転させることができる。また、搬送部13は、昇降装置も有しており上下運動も合わせて行うことができる。
【0082】
回転装置(図示せず)には把持部13aが配置されている。そして、把持部13aは回転装置の回転軸と接続されている。従って、搬送部13は回転装置を駆動することにより把持部13aを回転させることができる。さらに、搬送部13は昇降装置を駆動することにより把持部13aを昇降させることができる。
把持部13aには、半導体基板1を吸引して吸着させる吸着機構が形成されており、把持部13aはこの吸着機構を作動させて、半導体基板1を把持することができる。
【0083】
第2本実施形態に示した印刷装置7によれば、基材表面の改質装置としての前処理部9に、処理部32としての低圧水銀ランプが設けられ、その低圧水銀ランプから照射された紫外線を透過し、且つ半導体基板1から放射される熱エネルギーおよび赤外線ランプ121から照射される加熱エネルギーを遮断するように合成石英ガラス板105が備えられている。
この合成石英ガラス板105によって、処理部32と加熱装置としての赤外線照射ユニット103(赤外線ランプ1121)とが遮蔽されることにより処理部32が加熱されること無く赤外線照射ユニット103による半導体基板1の表面を加熱することが可能となる。これらにより、前処理部9は、半導体基板1の表面を加熱しながら紫外線照射を行っても処理部32としての低圧水銀ランプの温度上昇によって生ずる紫外線の発光効率の低下を防止することが可能となる。これにより、紫外線の発光効率の低下によって生じる基材表面(半導体基板1)の改質のばらつきを防ぐことができ、安定した基材表面の改質を行うことができる。
したがって、半導体基板1に液滴が吐出されて形成された所望のパターンの描画(印刷)の半導体基板1表面に対する密着強度を安定的に向上させることが可能な印刷装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…半導体基板、2…基板、3…基材としての半導体装置、4…会社名マーク、5…機種コード、6…製造番号、7…印刷装置、8…供給部、9…基材表面の改質装置としての前処理部、10…塗布部、11…冷却部、12…収納部,13…搬送部、14…制御部、100,200…基材表面の改質装置、101…ステージ、102…載置面、103…加熱源としての赤外線照射ユニット、104…支持部、105,205…遮蔽部としての合成石英ガラス板、106…光線照射部としての紫外線ランプ(UVランプ)、107…保持部、108…反射カバー、120…基台、121…赤外線ランプ、122…赤外線ランプソケット、123,223…筐体、305…遮蔽部としての合成石英ガラス管、V…紫外線、L…赤外線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面を加熱する加熱エネルギーを照射する加熱源と、
前記基材と相対して設けられ、前記基材に活性光線を照射する光線照射部と、
前記基材および前記加熱源と前記光線照射部との間に設けられ、前記活性光線を透過し且つ前記基材から放射される熱エネルギーおよび前記加熱源から照射される加熱エネルギーを遮断する遮蔽部と、が備えられていることを特徴とする基材表面の改質装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基材表面の改質装置において、
前記遮蔽部は、前記光線照射部の外周を覆うように設けられていることを特徴とする基材表面の改質装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基材表面の改質装置において、
前記遮蔽部は、合成石英ガラスで形成されていることを特徴とする基材表面の改質装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の基材表面の改質装置において、
前記加熱源は、赤外線を照射する熱線源であることを特徴とする基材表面の改質装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の基材表面の改質装置において、
前記基材および前記加熱源と、前記光線照射部とが、前記遮蔽部を含む隔壁によって区分されていることを特徴とする基材表面の改質装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の基材表面の改質装置と、
前記基材表面の改質装置によって改質された基材表面に液滴を吐出して所望のパターンを描画する印刷部と、を備えていることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191036(P2012−191036A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54019(P2011−54019)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】